琉球新報・沖縄タイムス 関連ニュース・社説(4月23日、24日)

参院補選・生活者視点で国政に風を/「基地」もまな板に載せたい
 夏の参院選の前哨戦とされた参院沖縄、福島両選挙区の補欠選挙が投開票され、沖縄は無所属新人で元那覇市議の島尻安伊子氏が初当選した。「台所から政治を変える」と訴えた島尻氏は自民、公明両党の推薦を受け、25万5000票余を獲得。社民、社大、共産、民主、国民新の野党5党が推薦した前連合沖縄会長の狩俣吉正氏、会社代表金城宏幸氏を破った。
 一方、福島は民主党の元衆院議員が自民党の元県会議長ら2人を破った。党首クラスを入れて激しい選挙戦を展開した統一補選の与野党対決は、一勝一敗の痛み分けとなった。夏に決着を持ち越し、予断を許さない状況だ。

「現実」路線を選択

 沖縄に関して言えば、有権者は昨年11月の県知事選に続く全県選挙で、「反基地・平和」を鮮明にして政府と対立する野党共闘よりも、安倍政権と協調しつつ負担軽減と経済振興策を引き出す「現実対応」路線を選択した形だ。
 沖縄の保守系では初の女性国会議員となる島尻氏には、若さや政治経験の短さ、市議会所属会派のくら替え経緯などを懸念する声もあるが、県民の負託に応え、選挙戦で訴えた「生活者の視点」を崩すことなく、国政に新しい風を吹かせてほしい。基地負担の軽減、格差社会の解消、少子化社会への対応、政治とカネの問題一掃など難題が待ち構えるが、敢然と立ち向かい、沖縄の主体性を発揮すれば存在感を示せるはずだ。
 島尻氏は選挙戦で、基地か経済かの二者択一を迫る旧来選挙に疑問を呈し「教育、医療、福祉、子育てなど家庭での身近な諸問題が置き去りにされてきた」と指摘した。政策チラシにもエプロン姿で登場し「妻として、母として、働く女性として、子育て真っ最中の体験を生かす」と力説した。
 政策目標では個性・特質を生かす教育、子育て環境の整備、基地内の医療施設活用、総合的な中小企業対策などを掲げ、家庭と政治の懸け橋をアピール。こうしたイメージ戦略が有権者に「政治は身近なもの」として映り、政党支持者に加え、無党派層をも取り込んだとみられる。庶民感覚は政治家に欠かせない資質の一つだ。
 ただ、政府は与党勝利を受け、米軍基地問題で一段と攻勢に出るだろう。この間、地元自治体の頭越しに移設計画を推進してきた経緯もあり、警戒しなければいけない。過重な基地負担は格差社会の典型ともいえる。
 島尻氏は、県内への新基地建設に反対した野党の狩俣氏が負けたとはいえ22万8000票余を集めたことや、宜野湾市長選で米軍普天間飛行場のグアムなど米国移転を主張した伊波洋一氏が再選を果たしたことも、念頭に置く必要がある。政府の言いなりではなく、民意を踏まえて「是々非々」の対応をしてもらいたい。

投票率は過去最低

 台所の知恵を絞りつつ、沖縄の基地問題についても政府任せでなく、国民注視という名の“まな板”に載せてうまく“料理”するくらいの積極的な姿勢を求めたい。
 今年最大の政治決戦となる7月の参院選は昨年9月に就任した安倍晋三首相が推し進める「美しい国」づくり政策に国民の審判が下る。格差社会を解消する抜本策、教育や社会保障など各種改革に加え、憲法改正の是非も争点になる可能性がある。
 国民的論議になっていない憲法問題を争点とすることには異論もあるが、国民投票法を成立させたい安倍政権が改憲の是非を国民に問う可能性は強い。
 政治とカネの問題も避けて通れない。不祥事、疑惑続きの閣僚らを抱えたまま選挙戦に臨み、どう政治への信頼を取り戻すというのか。政権側は明確な説明を迫られるだろう。
 そんな中で、沖縄補選の投票率の低さは気になる。本紙などが告示後に実施した電話世論調査では有権者の8割近くが選挙に関心を示し、投票に「必ず行く」「たぶん行く」と答えた人は9割を超えていた。ところが実際の投票率は47%台と初めて50%を割り、過去最低となった。これでは民主主義もおぼつかない。
 両陣営とも有権者への訴えが足りず、高い関心を投票行動に結び付けられなかった責任は重い。夏の本選では、政策論争を活発化させ、有権者の政治参加ムードを高めたい。それが国民の暮らしを向上させ、沖縄の難題にも道筋を付けることにつながるからだ。
(4/23 9:59)
琉球新報 社説
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23208-storytopic-11.html

[島尻氏初当選]
生活者の視点を国政に
低投票率の意味を問え
 参院沖縄選挙区補欠選は自民、公明両党が推薦した諸派で前那覇市議の島尻安伊子氏が前連合沖縄会長の狩俣吉正氏=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=と無所属新人の会社代表・金城宏幸氏を破り初当選した。
 福島選挙区補選とともに、結果が夏の参院選での与野党逆転の鍵を握ることから全国的にも関心度は高かった。
 だが、投票率は47・81%と過去最低を記録。有権者の半分も投票しなかったことは慨嘆せざるを得ない。
 基地問題や経済の地域間格差、高齢者医療、少子化対策など暮らしや福祉について考える課題は多い。一票に“切実な思い”を託すべきであったのであり、残念というしかない。
 島尻氏は「台所から政治を変える。台所には女性たちの知恵がつまっている」と生活者の視点で政治を訴えた。
 「沖縄は子育て政策が遅れている。日本で一番の子育て政策の推進県にしたい」との考えが有権者の賛同を得たのは確かだろう。
 しかし、日米軍事同盟が強化され在日米軍再編の動きの中で米軍基地の機能強化が図られているいま、「沖縄問題=基地問題」を脇に置いていいものかどうか。
 格差是正を訴えた狩俣氏もあえて争点にしなかった。両候補の選挙戦が有権者の関心を投票行動につなげられなかった遠因と見ることもできよう。
 補選とはいえ国政選挙だ。島尻氏は、安倍政権の基地政策を沖縄選挙区の当選者としてどこまで容認するのか。
 考え方、手法が違うのであれば、県民を代表してどう訴えていくのか。有権者が聞きたかったのはそこであり、政治家としての信条を今後しっかりと示してもらいたい。
 島尻氏が言うように「沖縄の主要な選挙は基地か経済かという二者択一だった」のは間違いない。「同じように暮らしの問題をもっと議論すべき」だということも確かだろう。
 だが、米軍基地が県民の暮らしを圧迫してきた歴史的事実から目をそらしてはなるまい。
 普天間飛行場の危険性の除去や名護市辺野古沿岸に建設が予定された代替施設の問題にどう対処していくのか。女性の目で見た沖縄問題の取り組みに注目したい。
まず「普天間」問題だ
 宜野湾市長選では現職の伊波洋一氏=社民、社大、共産、民主推薦=が、前市教育委員会教育部長の外間伸儀氏=自民、公明推薦=を破り再選を果たした。市民はさらに四年間の市政を伊波氏に託した。
 参院補選とは趣を変え、市長選は普天間飛行場問題を最大の争点に争われたといっていい。
 だが国、県、地元自治体の移設に伴う協議も宙に浮いた中で、「普天間」問題の行方は依然として不透明だ。
 伊波氏は「グアムまたはハワイ、米本国への移設」を訴え、県内移設によらず「普天間」問題の解決を目指している。であれば、マニフェスト(公約集)で掲げた普天間飛行場の「危険性除去と一日も早い返還のため、グアム移設」をどう進めていくのか。
 県内移設を推し進める日米両政府とも対峙するだけに、市民の負託を背景にどう独自性を出していくかが問われてくるはずだ。
 再選はまた、伊波氏の指導力に対する期待であり、経済振興や雇用対策にどう向き合うかも示すべきだろう。
「決戦の場」は参院選に
 参院補選では福島で民主党公認の増子輝彦氏が当選し、自公が勝った沖縄補選と「一勝一敗」となった。
 参院の定数は二四二。与野党が勝敗ラインとした過半数の百二十二議席獲得までに必要な議席数は与野党双方が一つずつ減った形だ。与党は六四、野党が五九で、その差は「五」のままである。
 結果として過半数獲得に向けた決戦の場は夏の参院選に持ち越された。各党は統一地方選で示された民意をどう実現していくのか。
 選挙結果を左右する無党派層をどう取り込んでいくかも与野党にとっては重要な鍵となろう。
 教育基本法を変え、憲法の改正手続きである国民投票法案を与党単独で採決した安倍政権を信任するのか、NOを突きつけるのか。夏の参院選が「天下分け目」となる。
沖縄タイムス 社説(2007年4月23日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070423.html#no_1

F22・空自 26日から共同訓練
 航空自衛隊那覇基地は23日、米軍嘉手納基地に一時配備中の米空軍F22Aラプター戦闘機と航空自衛隊との初めての共同訓練を、26、27の両日に実施すると発表した。訓練には那覇基地の第83航空隊所属のF4戦闘機2―4機、小松基地(石川)の第6航空団からF15戦闘機2―4機が参加する。 実際の飛行訓練は27日に行われる。沖縄周辺の訓練空域で、1回につき1―1時間半の空中戦闘訓練を数回実施する。このため自衛隊機は那覇基地から、米軍機は嘉手納基地から、それぞ
れ離着陸を繰り返す予定。
 共同訓練には、日本側から戦闘機のほか浜松基地(静岡)のE767早期空中警戒管制機1機も参加する。訓練に備え、25日までに那覇基地に飛来する。
 米軍側からは嘉手納基地の第18航空団のF15やE3空中早期警戒管制機1機が加わる。戦闘機の機数は各機種2―4機で、管制機も合わせて日米で延べ約30機が参加する。
 27日の実地訓練に先立ち26日は事前説明を行う。
(4/24 9:37) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23231-storytopic-1.html

事前調査きょう着手 普天間代替
 米軍普天間飛行場移設先の環境現況調査(事前調査)をめぐり、那覇防衛施設局は24日、名護市辺野古周辺の海域で事前調査の準備段階となる潜水作業に着手する。辺野古への基地建設に反対する市民団体らは、手法を明らかにしない事前調査ではなく、環境影響評価(アセスメント)法による手続きを取るべきだと抗議し、海上で抗議行動する予定だ。
 着手するのは、調査に伴う海域使用について県の同意を得る必要のない作業。潜水士によるサンゴなど海底の目視調査などを行う見込み。
 調査着手を急ぐ防衛省は20日、県庁に担当者を派遣、事前調査の海域使用で県の同意を早期に出してもらうよう促した。
 県は23日、施設局から提出されている事前調査に伴う海域使用申請で、庁内で取りまとめた県の意見について沖縄総合事務局財務部との協議に入った。事務局との調整がつき次第、海域使用に同意を出す。
(4/24 9:41) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23233-storytopic-3.html

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