沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(6月7日夕刊、8日)

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

自民、意見書採択へ調整/「集団自決」修正

 

 県議会最大会派の自民党は七日、県議会内で役員会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書採択に向けた調整に入る方針を決めた。八日に議員総会を開き、協議する。同党は五月三十日の議員総会で賛否が割れ、六月定例会での採択に賛成できない方針を確認していた。役員会では「軍の何らかの関与があったのは事実」という認識を一致させ、議員総会で結論を出す方針を固めた。一部には反対論もあり、総会の議論に注目が集まる。

 

 役員会後、新垣哲司幹事長は「問題の重要性を踏まえ、自民党としての意見集約を図りたい」と述べた。伊波常洋政調会長は「文科省の検定意見の趣旨など事実確認し、戦争体験者や国会議員ら幅広い意見を聴き、結論を出す」と説明した。

 

 議員総会で採択に向けた意見集約後は、文案などの調整を進める見込みだ。

 

 三十日の議員総会では、「『集団自決』は歴史的な事実であり、多くの証言がある。記述を修正すべきではない」という賛成意見が出た一方、「軍命の有無が係争中の裁判で焦点になっている段階での意見書は、司法への政治介入になる」という反対があった。

 

 中には「司法の判断が出ていない段階で、従来の記述を修正すべきではない」との賛成意見もあった。総会で、意見がまとまらず、意見書に賛成できない状況になっていた。

 

 検定意見書に抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない県民大会実行委員会」は六月五日、県庁内で会見し、意見書に賛成しない方針を固めた自民党県連に対し、賛成するように再考を求める要望書を手渡す意向を表明している。新垣幹事長は「日程調整し、対応する」と述べた。

 

 要望書では、各市町村議会が「集団自決」に対する軍関与を不明瞭にした修正意見の撤回を求め、意見書を採択していることについて、「保革を超えた大きな県民の声だ」と指摘。その上で「意見書に対する態度の再考を自民党に求め、県民の代表者として県民の声に応える議会の発言と働きを強く求める」とした。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_01.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

東門市長「容認できぬ」/米軍燃料漏れ

 

 【沖縄】米軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出して土壌に浸透した問題について、沖縄市の東門美津子市長は七日開会した市議会六月定例会の冒頭あいさつで、「米軍と国の対応については大変遺憾であり、とても容認できるものではない」と厳しく批判し、「地元への連絡が一週間遅れた上、各自治体への説明も異なっているなど米軍と国の連絡体制のずさんさが露呈した」と指摘した。

 

 今後の対応は沖縄市嘉手納町北谷町の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」で八日に、米軍に対し(1)原因究明とその対策(2)事故の再発防止(3)速やかな情報提供(4)具体的な環境汚染対策を求めて抗議する方針を示した。

 

周辺水質異常なし

 

 【中部】米軍嘉手納基地のジェット燃料流出を受け、基地内や周辺の十九井戸で水質調査を実施した県は七日、ベンゼンなどの揮発性有機化合物(VOC)は、厚生労働省が定める水道水質基準の基準値の十分の一以下で、異常はなかったとの分析結果をまとめた。県は五日に取水、VOC十九項目などについて調査した。

 

現状確認で県 午後立ち入り

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は七日午後、現状確認のため基地内に立ち入り、米軍から説明を受ける。

 

 県はサンプル採取など流出現場での調査についても米軍に要請しているが、同日午前の段階で米軍は許可しておらず、調整を続けている。

 

 県は同日午後、花城順孝企業局長らが同基地を訪ね、同基地司令官に原因究明と公表、再発防止と安全管理の徹底を申し入れる。那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所にも同様の申し入れをする予定。

 

                    

 

嘉手納町、現場確認/三連協あす立ち入り

 

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で先月二十五日から四日間にわたってジェット燃料が流出した問題で、嘉手納町は七日までに流出が起きた燃料タンクを確認した。同町基地渉外課は、那覇防衛施設局が示した地図や航空写真などを照らし合わせた上で「流出のあったタンクに間違いない」としている。

 

 燃料タンクの位置は同町役場から南へ六百二十メートルの地点。同基地北側滑走路に隣接し、土に覆われたタンクが二基(高さ約二メートル)並んでいる。滑走路に近い一基は、表面の芝生が茶色に変色している。

 

 「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は八日、同基地への抗議後に現場を確認することになった。嘉手納基地から七日午前、立ち入りを認めるとの連絡があった。これまでに日本側が現場確認したのは一日の那覇防衛施設局のみ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_02.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

読谷飛行場跡にフッ素/鉛検出問題

 

 【東京】二〇〇六年七月末と同年九月にそれぞれ返還された読谷村の米軍読谷補助飛行場跡地、瀬名波通信施設跡地の土壌から基準値を超える鉛などが検出された問題で、防衛施設庁は七日までに詳細な調査結果をまとめた。読谷補助飛行場跡地では、南側地域で鉛のほかに特定有害物質のフッ素も検出されたことが明らかになった。同飛行場では油分も含め、土壌の汚染は全体で約五千七百立方メートルに及んだ。瀬名波通信施設跡地では鉛、油臭による汚染土量が約四百立方メートルと確認された。

 

 施設庁は今後、調査結果に基づいて原状回復作業を行う予定。七日午後に読谷村に説明する。

 

 読谷飛行場ではこれまでに、土壌一キロ当たりの含有量で、基準値の八十倍、溶出量で基準値の約二十倍の鉛などが検出されていた。今回の詳細な調査では汚染場所を解体業者の廃車置き場や作業場、冷蔵庫などの不法投棄場所、水道工事業者作業場付近と特定。

 

 範囲は面積約四千六百平方メートル、地下三メートルに及び、約五千七百立方メートルの汚染土壌のうち、約五千立方メートルが鉛、フッ素を含んでいたことが分かった。

 

 一方、瀬名波通信施設でもこれまでに、土壌一キロ当たりの含有量で基準値の一・九倍に当たる鉛が見つかっていた。汚染が確認されたのはガソリンスタンド跡地、自家発電施設跡地で、面積約三百平方メートル、地下二メートルに及ぶ範囲で、約四百立方メートルの汚染土壌のうち、約百立方メートルが鉛によるものだった。〇三年に返還された北谷長のキャンプ桑江北側部分でこれまでに見つかった汚染土壌は約四万九千立方メートルで、そのうち鉛、ヒ素、六価クロムの特定有害物質を含む土壌は約八百立方メートルだった。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_03.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 4面

 

戦語る864人 迫力の写真展/佐喜眞美術館

 

 比嘉豊光写真展「わったー『島クトゥバで語る戦世』684」(主催・佐喜眞美術館)が六日から、宜野湾市の同美術館で始まった。入場無料。七月二日まで。会場には、自らの戦争体験を語る高齢者八百六十四人の写真を展示。来場者は作品を通して沖縄戦の記憶を継承することの重要性を再認識していた。

 

 写真展は、一九九七年から沖縄戦を地域の方言(島クトゥバ)で体験者に語ってもらい、映像と写真で記録する活動を継続している写真家、比嘉豊光さんの作品を展示した。

 

 二十三、二十四日の午後には同美術館でシンポジウムがある。問い合わせは同美術館、電話098(893)5737。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_07.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 1面

 

米軍、土壌・水の採取拒否/嘉手納・燃料流出

 

県の立ち入り調査難航

 

 【嘉手納】嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は七日、基地内に立ち入り、環境への影響を調査した。県は流出現場の土壌や水の採取などを求めたが、米軍に拒否された。理由は説明しなかったという。県は「土壌や水が採取できず、基地外の環境に影響があるのか結論を出すことは難しい」としている。一方、県の花城順孝企業局長らは同日、同基地と那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所に原因究明と再発防止を申し入れた。花城局長によると、同基地第一八施設大隊のマイケル・ハス司令官は、米軍の調査結果の公表について「上部機関と相談する」との回答にとどめたという。

 

 立ち入り調査で、県は燃料が流出したタンク周辺の土壌や側溝などの水を採取し、揮発性有機化合物(VOC)の有無や量などを調べることにしていた。

 

 県によると、米軍は燃料流出の経緯や量などを説明した。

 

 燃料が浸透した土壌の範囲や深さなどについて「作業の中で判明するだろう」とし、把握していなかった。取り除いた土壌を基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング」と呼ばれる手法で浄化すると説明。早ければ今月中旬に着工する。

 

 調査には県職員約十人ほどが立ち会った。芝生の枯れていた給油用タンクで、わずかに燃料のにおいがしたという。

 

 一方、花城局長は、ハス司令官に対し、嘉手納基地と周辺地域の地下水を水源とした「嘉手納井戸群」が県民の重要な水道水源であることから、「地域の生活環境の保全に支障が生じることが懸念される」と指摘。県などが流出事故の連絡を受けたのは発生から七日後だったことについても、「米軍の施設の管理運用体制に疑念を抱かせるもので誠に遺憾」と訴えた。

 

 施設局の岡田康弘施設部長や外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は、県の基地内への立ち入り調査が継続できるよう米軍に協力を働き掛ける意向を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_01.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 31面

 

抗議署名2万8177人に/「集団自決」修正

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定への抗議の輪が沖縄から全国へ広がっている。「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会が県内外の関係団体に署名を呼び掛けたところ、七日現在で二万八千百七十七人分が集まった。実行委は五万人を目標に置いているが、「これを超えると期待している」と話している。

 

 そのうち約一万八千人分は全国の分。日教組が第一次分として集約したものが大半で各県の教員が署名した。実行委は「実際に教科書を手に取る先生の署名が多いのはありがたい。今、何が起きているのかを学校現場でも知ってもらいたい」と語る。

 

 日本史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の部分から日本軍の関与部分の記述を削除・修正した今回の検定問題が逆に、戦後六十二年を経て、埋もれがちだった沖縄戦に対する全国の関心をあらためて呼び起こす機会になれば、と期待している。

 

 一方、県内分は約一万人だが、実行委に参加している六十三団体のうち提出したのは二団体にとどまっているため、最終集計予定日の十三日には「まとまった数になる」(実行委)と話している。

 

 実行委は、九日午後二時から那覇市の県庁前の県民広場で開く県民大会の会場でも署名を呼び掛けることにしている。集まった署名は十五日に実行委代表らが文部科学省側に大会決議とともに手渡すことにしている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_03.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 1面

 

自民、きょう意見集約/「集団自決」修正

 

県議会意見書採択へ調整

 

 県議会最大会派の自民党は七日、県議会内で役員会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書採択に向け調整に入る方針を決めた。八日の議員総会で協議する。自民党は五月三十日の議員総会で賛否が割れ、六月定例会での採択に賛成できない状況だった。役員会では「軍の何らかの関与があったのは事実」との認識を一致させ、議員総会で所属県議に考えを示し、再度協議、結論を出すとしている。一部には慎重論や反対論も根強く、議員総会の協議の行方が注目される。

 

 役員会後、新垣哲司幹事長は「問題の重要性を踏まえ、自民党としての意見集約を図りたい」と述べた。伊波常洋政調会長は「文科省の検定意見の趣旨など事実確認し、戦争体験者や国会議員ら幅広い意見を聴き、結論を出す」と説明した。

 

 議員総会でまとまれば、所管する文教厚生委員会(前島明男委員長)を中心に、文案などの調整を進める見込みだ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_04.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 31面

 

久間防衛相「反自衛隊」分類 不適切/陸自市民監視

 

 【東京】共産党が自衛隊関係者から入手した「内部文書」で、自衛隊のイラク派遣に反対する国会議員の発言などを「反自衛隊活動」と分類していたことについて、久間章生防衛相は七日午後の参院外交防衛委員会で、「反自衛隊というレッテルを張るわけにはいかない」と述べ、好ましくないとの見解を示した。白眞勲氏(民主)への答弁。

 

 久間氏は「記入した人の私見にかかわるものだ。評価を省として下していれば問題だが、そういう判断を下しているわけではない。上がってきた事実を束ねているだけだ」と述べ、問題にはならないとの認識を示した。

 

 「反自衛隊」の分類の中に、騒音に関する基地への苦情も含まれていたことについて「それを親自衛隊か、反自衛隊かという二つを選択するとなると、そちら(反自衛隊)の方に書いたとしてもやぶさかではない」と述べつつ、「苦情は苦情だ」と述べ、「反自衛隊」とするべきでないとの認識を示した。

 

 一方、「内部文書」について「全く根も葉もないということではないと思う」と述べ、一定の信ぴょう性があるとの認識を示したが、「全部本物かチェックできないので分からない」と述べた。

 

 今後本物かどうかを調査するかについては、保存義務がない類であることを強調した上で「内部(報告書)の話ですから、調査する必要はないと思っている」と語った。

 

 「反自衛隊」の分類については、守屋武昌防衛次官も同日の定例会見で「(反自衛隊と)決め付けることに目的があったのではない」とし、隊員士気の堅持、家族の不安を払しょくするための必要性を強調した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_05.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 2面

 

与那国寄港 自粛を要請/県、米海軍司令官に電話

 

 米軍艦船二隻が与那国町への寄港を検討している問題で、県の上原昭知事公室長は七日、在日米海軍司令官のジェームズ・ケリー少将あてに、寄港の自粛を口頭で申し入れた。

 

 上原公室長は政務補佐官を通じ電話で「民間港湾および漁港は、民間船舶の運航や漁業の施設として設置されたもので、緊急時以外、米軍艦船の使用は自粛してもらいたいというのが県の一貫した方針。久部良漁港および祖納港の使用自粛を要請する」と伝えた。

 

 石垣海上保安部から六日、県八重山支庁あてに米軍艦船二隻が与那国町の祖納港および久部良漁港を使用するとの通知を受けて要請した。

 

 通知によると、使用期間は二十四日午前九時入港、二十六日午前九時出港となっている。入港するのは米海軍佐世保基地(長崎県)所属の掃海艦「パトリオット」と「ガーディアン」(いずれも排水量一三一二トン)。寄港目的は「親善・友好訪問および乗組員の休養」となっている。上原公室長は七日、社民党県連の新里米吉書記長らが与那国への寄港を拒否するよう求めたことに、「日米地位協定の問題もある。控えてほしいと考えているが、ノーと言えるかは別問題」と語った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月8日朝刊)

 

[陸自市民監視]

 

この人権感覚は問題だ

 

 共産党の志位和夫委員長は、陸上自衛隊の情報保全隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体のほか政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向をまとめた「内部文書」を入手した。

 

 調査リストには自衛隊のイラク派遣に反対する集会やデモなどの関連だけで四十一都道府県の二百八十九団体・個人に上り、高校生も含まれている。

 

 県内ではイラク戦争に反対した市民団体ら十三団体のデモ行進やビラ配りなど十五件も入っていた。

 

 そもそも自衛隊のイラク派遣に反対する市民運動は、監視が必要な異常な行為なのか。政府批判、自衛隊批判は「言論の自由」「報道の自由」によって保障された人権の一つではないか。

 

 今回リストアップされた個人や団体のメンバーらはさぞ驚き、自衛隊への不信感を募らせたことだろう。

 

 文書は百六十六ページ。陸自東北方面情報保全隊がまとめた「情報資料」(二〇〇四年一二月)と、情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(〇三年十一月〇四年二月)の二種類。

 

 志位氏は「個人のプライバシーに対する侵害行為で憲法違反だ」と鈴木政二官房副長官に中止を要請したが、塩崎恭久官房長官は記者会見で「法律にのっとって行われる調査活動や情報収集は当然、受け入れられるべきだ」と述べ、許容範囲との認識を示した。

 

 久間章生防衛相は「自衛隊が情報収集活動をするのは当然」とした。防衛省の守屋武昌事務次官は、反対集会などの情報を集めていたことを認めた上で「自衛隊法に基づく調査研究で違法性はない」と説明している。

 

 しかし、自衛隊の調査・情報収集に何の限定も加えない発言はおかしい。「自衛」の名目であれば何をしても許されるというわけでもあるまい。調査にもおのずから限界があるはずだ。

 

 集会の自由、デモ行進の自由などを含む「表現の自由」は、民主主義社会では最も尊重されるべき人権である。写真撮影などで市民のプライバシーを脅かし、市民運動を委縮させるようなことがあってはならない。

 

 シビリアン・コントロール(文民統制)の原則を忘れるべきではない。このような調査は自衛隊による民の統制につながる本末転倒の発想で、自衛隊の市民監視と批判されるゆえんだ。

 

 特に沖縄は広大な基地を抱え、歴史的体験を踏まえればイラク派遣への反対運動が起きるのも当然ではないか。

 

 約五年前、自衛隊で情報公開請求者の個人情報リストを作成していたことが問題になったが、プライバシーを軽視する自衛隊の人権感覚はおかしい。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070608.html#no_1

 

琉球新報 社説

 

自衛隊の国民監視 矛先の向かう先が違う

 いつから自衛隊は国民に矛先を向けるようになったのだろうか。陸上自衛隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体や政党、労組、ジャーナリストなどの動向を調査した内部文書の存在が6日、明らかになった。国民を守るべき自衛隊が、自衛隊を守るために国民を監視する。本末転倒だ。

 共産党が入手・公表した自衛隊の「内部文書」は2種。「イラク派遣に対する国内情勢の反対動向」(2003年11月04年2月)と「一般情勢」(04年12月)で、いずれも陸上自衛隊の情報保全隊が作成したものだ。

 文書にはイラク派遣に反対する集会やデモ、ビラ配布などを行った289の団体・個人の動きが詳細に記録されている。

 県内でも沖縄弁護士会や沖縄平和運動センターなど15団体、5個人の活動が「監視対象」となっていた。

 7日の参院外交防衛委員会で、久間章生防衛相は、「監視活動」が陸上自衛隊に限らず、海上、航空自衛隊でも行われていた可能性を認めている。

 反対集会への参加者の撮影も行われていた。「撮影は違法」との野党の指摘に久間防衛相は、マスコミ取材を例に「取材が良くて自衛隊が駄目だという法律の根拠はない」と反論している。マスコミの取材と自衛隊の監視を同列に並べる感覚も、いかがなものか。

 自衛隊による「国民監視」の事実を内部文書で暴露された防衛省は「部隊の保全のために必要な情報活動」「情報収集はイラク派遣時に限ったこと」と釈明している。

 これに対し野党は「個人のプライバシーに対する侵害行為で、憲法違反」(共産党)「シビリアンコントロール(文民統制)が全く効いていない」(民主党)「税金を使った憲法違反の行為で言語道断」(社民党)と批判している。

 戦前、戦中は特高警察が国民を監視し、発言によっては逮捕・拘留し、反戦の声を抑えた。加えて、負け戦すら勝ち戦にすり替える軍の「大本営発表」で情報操作し、国民を戦争に駆り立て、多くの国民を死に追いやった歴史がある。

 自衛隊による「国民監視」に、市民からは「戦前の特高警察の復活を思わせる」「戦前回帰に身震いする」などの声が上がっている。

 自衛隊は、存在自体が憲法違反との意見もある。改憲論争の焦点の一つに「9条改正」による自衛隊の軍隊化もある。

 国の平和と独立を守り、直接・間接侵略に対処するのが自衛隊の主任務のはずだ。しかし実態が、戦前の特高警察を想起させる国民の監視機関だとするならば、やがて矛先を国民に向ける軍隊に変わりかねない。そんな自衛隊なら、民主国家・日本には不要だ。

 

(6/8 9:49)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24442-storytopic-11.html

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