沖縄タイムス 関連記事・社説(6月8日夕刊、9日)

2007年6月8日(金) 夕刊

 

「軍命あったと思う」/「集団自決」知事が初言及

 

 仲井真弘多知事は八日午前の定例記者会見で、文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に日本軍が関与したとする記述が高校の歴史教科書から削除された問題について、「当時の社会状況から考えると、広い意味での軍命というか、そういうものはあったのではないかというのが個人の率直な気持ち」と述べた。

 

 仲井真知事が、「軍命」の有無に具体的に言及するのは初めて。これまでは、日本軍関与の文言を削除・修正する検定内容に対しては「遺憾」との認識を表明する一方、「軍命」の有無については「専門家の検証が必要だろう」と述べ、コメントを避けてきた。

 

 また、同検定の見直しを求める意見書採択が市町村議会で相次いでいることについては「それぞれの考えでなされているというのは、重く受け止めるべきではないかと考える」と述べた。

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した上、米軍の通報が遅れたことについて、仲井真知事は「対応の鈍さは極めて遺憾」と強い口調で批判した。

 

 七日に県が基地内に立ち入った際、米軍が土壌などのサンプル採取を許可しなかったことについても「言語道断。民間事業者だったら少なくともしばらく、活動停止に値する」と述べ、今後も調査を求める考えを示した。

 

 米海軍の掃海艦が与那国島への寄港を通知していることについて「米軍の艦船はホワイトビーチや那覇軍港など専用の港が決まっており、本来そこを使用すべきだ。民間の目的に応じて造られている港は使用すべきではなく、今回も自粛すべきだ」と主張した。

 

 日米地位協定で管理者の県も寄港拒否できない実情に一定の理解を示した上で、「緊急事態など互いに、やむを得ないという理解が成立するラインというのはある。米軍の都合のいい時にいいように利用するのはいかがなものか」と不快感を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_01.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 1面

 

北谷議会、抗議決議へ/米軍燃料漏れ

 

 【北谷】米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は八日午前、基地対策委員会(照屋正治委員長)を開き、十二日の六月定例会本会議で流出の原因究明と再発防止、地元の立ち入り調査などを求める抗議決議・意見書を提案することを決めた。

 

 委員らは「想像がつかないほどの大量な流出だ。基地内からは住民の使用する地下水が採取されている」など事態の重大性を指摘。七日の県による立ち入り調査が目視にとどまったことに関して「土壌を採取しないと環境汚染は把握できない」など米軍の対応を批判する声が上がった。

 

 照屋委員長は「流出はタンクのシステム上の異常と、気付くのに遅れた人的ミスが重なり起きた。あらゆる面で米軍の安全管理がずさんだったということ。米軍はしっかりとした地元の調査を認めるべきだ」と述べた。

 

 同基地司令官あての抗議文は直接基地を訪れて渡す予定で、抗議行動後の現場立ち入りも求める。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_02.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 1面

 

「象のオリ」消えた/全アンテナ撤去

 

 【読谷】二〇〇六年十二月に全面返還され、地主に引き渡すため撤去作業が進む読谷村の米軍楚辺通信所(約五三・四ヘクタール)のアンテナが八日までに、全て撤去された。同通信所は高さ約四十メートルのアンテナ三十本が直径約二百メートルの円を描くように配置され、その姿から「象のオリ」と呼ばれていた。

 

 地主の一人、知花昌一村議は「象のオリは反基地闘争の象徴だった。五十年以上この場所にあり、風景の一部になっていたこともあり、少しの寂しさもある。跡地利用計画は定まっていないが、今後は平和の象徴となるような場所にしたい」と話した。

 

 同通信所は一九九六年に日米特別行動委員会(SACO)で返還合意された。那覇防衛施設局によると、六月の工期終了までに更地にし、地主に引き渡される。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_04.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 7面

 

戦場の幼い命 悲惨さ伝える/平和祈念資料館で企画展

 

 【糸満】二十三日の慰霊の日を前に、子どもたちが戦争と平和について考える機会にしようと、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館で八日、企画展「子どもたちと沖縄戦」が始まった。七月十七日まで。

 

 沖縄戦で米兵が撮影した写真の中から、子どもをメーンに据えた約三十点をパネル展示。地上戦で傷つき息絶えた少年少女の写真など、幼い命を巻き込んだ戦争の悲惨さを伝えている。

 

 また、沖縄戦を題材にした絵本「つるちゃん」(泡瀬小学校教諭、金城明美さん作)を十七枚のパネルで紹介している。

 

 八日午前には、平和学習などのため沖縄本島を訪れた、渡名喜村立渡名喜小学校の児童十八人が見学。

 

 六年の比嘉輝君(12)は「戦争と関係のない、普通の人たちが犠牲になったなんてかわいそう」と話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_08.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 1・29面

 

自民、結論先送り/「集団自決」意見書

 

 県議会最大会派の自民党は八日、那覇市内で議員総会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書への対応を協議したが、賛否の意見が分かれたため、結論は先送りした。

 

 執行部は全員の同意を得るため、文科省の検定意見の経過や真意を確認する必要があると判断。執行部代表が十三日にも上京し、関係機関で事実確認する。新垣哲司幹事長は「意見の真意などを確認した上、議員総会で協議し、速やかに結論を出したい」と述べた。

 

 総会では、多くの県議が「『集団自決』は事実。修正すべきではない」「採択を見送れば、県民の反発を招く」など賛成する意向を示した。一方で、「軍命の有無に対する事実関係が確かではない」「裁判で争われている。意見書は司法への政治介入になる」など反対意見も根強く、まとまらなかった。

 

 同問題への意見書で、自民内部は賛否の意見が割れ、定例会冒頭の採択に賛成できない方針を固めていた。だが、相次ぐ市町村議会での意見書採択や県民からの反響が大きく、事態を重視した執行部は七日、役員会で「軍の何らかの関与があったのは事実」という認識で一致させ、賛成の方向で調整に入ることを決めた。

 

                    

 

 文部科学省の検定で高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除・修正された問題に抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」(主催・同実行委員会)が九日午後二時から、那覇市の県庁前県民広場で開かれる。

 

 大会決議として、検定意見に抗議し「『集団自決』に関する検定意見を直ちに撤回すること」を求め、文部科学大臣、内閣総理大臣、県知事、県議会議長あてに送る。

 

 実行委には県内の六十三団体が参加。歴史教科書執筆者らでつくる「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し、沖縄の真実を広める首都圏の会」のメンバーも全国から集う。主催者側は五千人の参加を見込んでいる。

 

 一方、五万人を目標に実行委が呼び掛けている署名は八日現在、二万九千三百九十五人となった。大会当日、会場でも署名を受け付ける。

 

 雨天の場合、会場は宜野湾市民会館大ホールに変更されるが、少雨だと県民広場で開催される。

 

 会場の決定は同実行委員会が九日正午までに決定する。問い合わせは実行委事務局、電話098(887)1661。

 

 実行委によると、RBCiラジオで午後零時十分、二十分、三十分の三回、番組中に会場のお知らせを行う。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_04.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 28面

 

ひめゆり説明員 県外から初

 

【糸満】「ひめゆり学徒隊」の生存者が、自らの沖縄戦体験を語る糸満市の「ひめゆり平和祈念資料館」に八日までに、学徒隊に代わり沖縄戦を語り継ぐ「説明員」に、三重県出身の尾鍋拓美さん(26)が就任した。(仲本利之)

 

 二〇〇五年から説明員を務める仲田晃子さん(30)に続き二人目、県外出身者としては初めて。今後、学徒隊の「証言員」との語らいや資料研究などを通じて「ひめゆり」の知識を深め、半年後に展示室に立つことを目指す。

 

 本村つる館長(81)は「私たちのすべてを継承するつもりで平和の後継者になってほしい」と期待する。

 

 尾鍋さんは一九八一年生まれ。地元三重の高校を卒業後、京都文教大学で文化人類学、琉球大学大学院で社会科教育を専攻し、昨年三月に同大学院を修了した。

 

 「ひめゆり」にかかわわるきっかけは、京都文教大二年のフィールドワーク。「沖縄戦の記憶を学ぶ」を研究テーマに選んだ尾鍋さんは、沖縄に足を運び、学徒隊について調査研究。フィールドワークでまとめた報告書を同資料館の学芸員に送付し返事の手紙をもらうなどの交流を深めた。

 

 昨年八月、戦史研究などを通じて親交があった琉大出身の仲田さんの紹介で同資料館の臨時職員に。以来約十カ月間、来館者の感想文を文集にまとめたり、企画会議の事務補助などの業務に当たってきた。

 

 証言員の津波古ヒサさん(79)は「私たちは自ら体験したことしか語れないが、尾鍋さんは証言員みんなの話に耳を傾け、何でも学ぼうとする姿勢がある」と話す。家族のように受け入れる証言員の心の広さに尾鍋さんは「県外出身であることを意識したことはない」と笑う。

 

 「資料館を訪れた人々が地元に帰り、平和の大切さを家族や友人に語り継ぐ、そのきっかけをつくる説明員になりたい」と意欲的だ。

 

 一九八九年の開館当初二十八人でスタートした証言員は現在十五人。年々証言員が少なくなる中、次世代への「語り継ぎ」は一歩一歩進んでいる。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_05.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 29面

 

海自反対派調査「有無」食い違い

 

 【東京】陸上自衛隊の情報保全隊が、イラク派遣活動など自衛隊の活動に批判的な全国の市民団体などの動向を調査していた問題で、社民党の福島瑞穂党首は八日、防衛省に守屋武昌事務次官を訪ね「憲法違反だ」と抗議、同保全隊の収集情報をすべて公開するよう求めた。

 

 福島党首によると、守屋氏は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う周辺海域の現況調査に海上自衛隊を動員したことに反対する動きについて「事後的に、海自の情報保全隊が、任務に従事した隊員がどう評価されているのか、情報収集はしているだろう」と述べたという。

 

 しかし、守屋氏本人は記者団に対し「一般論として『当然海上自衛隊も関心を持っているだろう』と言っただけ。福島氏には『(反対の動きへの情報収集について)報告も受けていない』と何度も伝えた」と語り、両氏の話が食い違っている。

 

 一方、福島氏によると守屋氏は、イラク派遣活動に関する情報収集の事実は認めた上で、隊員士気の堅持、家族の不安を払拭するために必要な活動であったことを強調したという。そのほか、情報保全隊の規模について陸自が六百六十八人、海自が百三人、空自が百五十六人であることも明らかにしたという。

 

 同保全隊の収集情報が記録された「内部文書」の信用性については否定しつつ「これは本来出るべきものではなかった」と語り、文書の存在を事実上認めたという。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月9日朝刊)

 

[米軍燃料流出]

 

「同じ水」を飲みながら

 

 米空軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は同基地内に立ち入り、流出現場の土や水の採取などを求めたが、米軍にあえなく拒否された。

 

 県は、燃料が流出したタンク周辺の土壌や側溝などの水をサンプリングし、揮発性有機化合物などの有無、量などを調べる予定だった。

 

 土や水の採取は、住民が不安を抱いている環境汚染を調べる上で、最低限必要だ。

 

 だが、写真撮影すら拒まれ、目視調査のみに終わっている。これでは、基地外の環境に影響があるのかどうか、結論を出すのは到底困難だ。

 

 米軍は何のために基地内への立ち入りを許可したのか。地元の調査を「一応、受け入れた」というアリバイづくりと疑われても仕方あるまい。

 

 またしても、日米地位協定の「壁」が背景に立ちはだかっている。

 

 同協定三条は、米軍の管理権を認める一方、「立ち入りが軍の運用を妨げることなく行われる限りにおいて、立ち入り申請に対してすべての妥当な考慮を払う」と定めている。

 

 今回、立ち入りは認められたものの、基地内での実質的な調査は拒否された。基地内調査が「米軍の裁量」に委ねられているからにほかならない。

 

 同三条は、その三項で「施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない」とも定めている。

 

 だが、「公共の安全」よりも「基地管理権」や「米軍の裁量」が優先されているのが日米同盟、そして沖縄の現実といえよう。

 

 本土復帰後も過重な基地負担の中で、県民はこの不公平、不平等な地位協定によって苦悩を強いられてきた。

 

 苦悩解消には、政府も本気で取り組んでこなかったし、今後も取り組む気配さえなく、対米従属の姿勢を見せている。

 

 嘉手納基地には、周辺を含め計二十三の「嘉手納井戸群」と呼ばれる地下水源がある。県企業局北谷浄水場が一日約二万トンを取水し、地元など七市町村に給水している。

 

 県内の米軍基地の水道は、そのほとんどが近隣市町村を通じて給水を受けている。広大な嘉手納基地も、主な供給源は北谷浄水場である。

 

 「同じ水」を飲みながら、なぜ、ジェット燃料の流出事故を県民と米軍が共通の問題として対処できないのか。

 

 憲法で保障された「平和的生存権」がいかに米軍基地によって脅かされているか、地位協定の理不尽さをあらためて考えざるを得ない。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070609.html#no_2

 

2007年6月10日(日) 朝刊 1面

 

歴史歪曲 3500人抗議/「集団自決」修正

 

63団体が県民大会/検定意見撤回求め決議

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除、修正されたことに抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」(主催・同実行委員会)が九日、那覇市の県民広場で開かれた。約三千五百人(主催者発表)が参加。文科省に対し、検定意見の撤回を求める大会決議を採択した。

 

 六十三団体でつくる実行委員会を代表し、あいさつした高嶋伸欣琉球大学教授は「生徒がこの教科書を使う来年四月までまだ時間がある。県民の声を文科省にぶつけて検定意見を撤回させることは一九八二年の前例もあり、十分可能だ」と強調。「会場の熱気に勇気づけられた。来週予定している伊吹文明大臣との交渉では、過去の経緯などを含めて厳しく追及し、成果につなげたい」と力を込めた。

 

 沖教組の大浜敏夫委員長は「日本軍の命令がなかったことにされれば、住民自ら死を選んだことになり、軍国美談にされかねない。文科省による歴史歪曲に対し、県民の怒りは頂点に達している。大きなうねりを全国の世論へとつなげていこう」と呼び掛けた。

 

 「文科省による教科書検定意見を撤回させる」「県議会に民意を踏まえた意見書をただちに採択させる」「沖縄戦の実相を子どもたちに伝えていく」の三項目を掲げたスローガンを採択。県政野党各党や労組、市民団体が連帯あいさつをしたほか、県外から出版関係者や日教組の代表らも駆け付けた。

 

 参加者らは「ガンバロー三唱」で気勢を上げた後、「子どもたちに戦争の実相を伝えよう」「県民は沖縄戦の歪曲を許さない」などと訴え、国際通りをデモ行進した。

 

 大会決議は文科相、首相、知事、県議会議長あてに送付する。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706101300_01.html

コメントを残す