琉球新報 社説(6月11日)、沖縄タイムス 関連記事(6月12日)

琉球新報 社説

 

「歪曲」撤回要求・「過去」直視してこそ未来も 

 

 文部科学省の高校教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」記述から日本軍の関与が修正・削除されたことに、県民の反発が広がっている。那覇市内で9日開催された「沖縄戦の歴史歪曲(わいきょく)を許さない県民大会」には主催者発表で3500人が集い、「子どもたちに沖縄戦の実相を伝えよう」と訴えた。

 62年前の沖縄戦で過酷な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民の、これだけは絶対に譲れないという一線をあらためて見た思いがする。

 政府は、大会決議にある「今なお証言し続けている体験者の叫びを無視し(一個人の名誉棄損の)裁判の原告の主張のみを一方的に取り上げることは、体験者を愚弄(ぐろう)するばかりか、県史や各市町村の沖縄戦の調査を否定しようとするもの」との指摘を重く受け止め、歴史的事実と真正面から向き合ってほしい。

 高校教科書の沖縄戦をめぐる記述は、1982年に「日本軍の住民虐殺」が削除され、問題になっている。「出典の県史は第一級資料ではない」などが理由だった。生存者多数の証言を含む公式の戦争記録を「参考にならない」とでも言うような感覚を疑うほかないが、県民の怒りを受け止めざるを得なくなった政府は結局、検定意見を撤回している。

 2001年には、中学の歴史教科書で、アジアへの加害の記述を大幅に簡略化する流れが顕著になった。沖縄戦に関しても戦争を美化するような記述が見られ、ひめゆり学徒を「部隊」と軍隊化し、「勇敢に戦った」と記述した教科書がそのまま認められた。

 ひめゆり学徒の生存者は「私たちは看護要員として戦争に巻き込まれた」と証言しており、当該教科書がいかに事実関係を踏まえていないかが分かる。

 今回の「軍命」削除問題もしかり。県民大会では「沖縄戦の集団死・『集団自決』が『軍による強制・強要・命令・誘導等』で引き起こされたことは否定できない事実」だとし、「その事実がゆがめられることは到底容認できない」との決議が採択された。

 第二次世界大戦で多大な犠牲を払ったドイツの元大統領、ワイツゼッカー氏は1999年に来沖した際、名護市で開催されたティーチインで「過去に目をつぶる者は過ちを繰り返してしまう危険がある」「逆に過去に対して目を見開く者は、将来に向け平和の証しを体現できる」と話した。

 過去に正しく向き合ってこそ、平和な未来も開けるという大切な教えだ。歴史をゆがめることは許されまい。次代を担う子どもたちにもそのことを伝え、事実を見極める力を養うことが私たち大人の責務である。

 

 

(6/11 9:40)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24518-storytopic-11.html

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊 1面

 

 

 

ヘリパッド受け入れ 金武町長きょう表明

 

 

 

ギンバル返還「判断材料整う」

 

 

 

 【金武】金武町の米軍ギンバル訓練場の返還をめぐり、儀武剛町長は十二日開会する町議会六月定例会の冒頭、懸案となっていた返還条件のブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の受け入れを表明する。十一日、同訓練場の跡地利用事業を二〇〇八年度予算概算要求に盛り込むとする内閣府沖縄担当部局の文書と、ヘリパッド移設後の周辺住民の生活に配慮するとした防衛省の通知があったことを受け、儀武町長は「判断材料は整った」との意向を固め、議会関係者などに伝えた。

 

 

 

 内閣府は、金武町がギンバル跡地で予定している「ふるさとづくり整備事業」の財政支援について、「ギンバル訓練場の返還のめどが立ち、具体的な事業計画が策定されることを前提に、引き続き所要の支援を行うべく、関係機関と調整する」としている。

 

 

 

 防衛省は、(1)ブルービーチ訓練場で米軍が使用していた場所のうち、一カ所を活用して整備(2)ヘリパッドはコンクリート舗装などの恒久的なものではなく、ランディングマットを敷く程度の撤去可能なものとする(3)ヘリ訓練による航空機騒音は地元の要望を踏まえ、騒音を調査するなどと明記している。

 

 

 

 儀武町長は、跡地利用事業の財政支援を内閣府に要請。さらに、町などが各区で開いた住民説明会で、米軍ヘリの飛行ルートや騒音被害を懸念する声が相次いだため、防衛省の対応を文書で回答するよう求めていた。

 

 

 

 返還条件のブルービーチ訓練場へのヘリパッドの移設をめぐっては、一九九六年と二〇〇六年に隣接する並里区が移設に反対する決議を行っている。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_01.html

 

 

 

 

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊

 

 

 

首相「早期に結論」/那覇空港拡張

 

 

 

 【東京】安倍晋三首相は十一日の参院決算委員会で那覇空港の拡張整備について「沖縄の発展には那覇空港の能力の増強は必要。できるだけ早期に結論を出し、実現に向けて取り組んでいきたい」と述べ、積極的に取り組む姿勢を示した。西銘順志郎氏(自民)への答弁。「集団自決(強制集団死)」への日本軍の関与に関する記述が高校の歴史教科書から削除された問題で、西銘氏が「速やかに見直すべき」と訴えたが、安倍首相は「個別の検定意見に、内閣の長として意見を申し上げることは差し控えたい」と従来の見解を繰り返した。

 

 

 

 久間章生防衛相は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部の現況調査(事前調査)に海上自衛隊が動員されたことに県民の反発があるとの指摘に、「戦前の軍隊と一緒に見られるというのは、自衛隊にとっても大変気の毒なこと。そういう間違った考え方をぜひ沖縄の人はやめていただきたい」と訴えた。

 

 

 

 那覇空港の拡張について、冬柴鉄三国土交通相は「福岡空港に次いで乗降客の多い空港」としつつ、「今、最終段階にある調査の結果を踏まえて、ゴーということになれば、総力を挙げて頑張っていきたい」と述べ、政府を挙げて取り組む考えを強調した。

 

 

 

 安倍首相は「沖縄はアジアの中心に位置し極めて有利な点がある。グローバル化の時代で空港がいかに整備されているかということで競争していかなければならない」と述べ、同空港の拡張整備の必要性を指摘した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_03.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊 2面

 

 

 

自民、検定経過確認へ/「集団自決」修正

 

 

 

県議代表、あす文科省訪問

 

 

 

 県議会最大会派の自民党の伊波常洋政調会長ら代表は十三日、文部科学省を訪ね、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した教科書検定の経過や同省の見解などを確認する。伊波政調会長は「検定内容の事実を十分確認した上で、早い時期に議員総会を開き、意見書採択に向け意見を集約したい」と述べた。

 

 

 

 同問題に対する意見書への対応については、自民内部で賛否の意見が割れ、結論が先送りされている。

 

 

 

 執行部は会派全体の同意を得るため、検定内容の事実確認が必要と判断。伊波政調会長らは文科省初等中等教育局教科書課長らに聞き取りをする予定。

 

 

 

 八日の総会で、多くの県議が「『集団自決』は事実。修正すべきではない」「採択を見送れば、県民の反発を招く」など賛成する意向を示した。一方で「軍命の有無に対する事実関係が確かではない」「裁判で争われている。意見書は司法への政治介入になる」など反対意見も根強く、まとまらなかった。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_04.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊 26面

 

 

 

海自の不発弾調査 広報/うるま市が事前に

 

 

 

「辺野古と混同避けた」

 

 

 

 【うるま】うるま市は十一日、海上自衛隊などが十三日から同市沖合で実施する不発弾調査を事前広報した。名護市辺野古の米軍普天間飛行場の移設に向けた海洋調査に政府が海自艦船を投入したことが問題視されているため、不要な刺激を与えないための措置という。

 

 

 

 事前広報はこれが初めてで、うるま市役所総務課は「(辺野古で行われた)海自の海域調査支援と混同を避けたい」としている。

 

 

 

 中城海上保安署と海自は同日早朝から十五日午後五時にかけて、同市昆布沖合三キロ地点で不発弾現地調査を行う。自衛隊の水中処分母船(三千トン)一隻と関係機関のボートが現地に停泊する。

 

 

 

 三月初旬に漁業関係者が潜水中、昆布沖合十三メートルの海底で、長さ四十センチほどの不発弾らしき物体約三十個が沈んでいるのを発見した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_05.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 夕刊 1面

 

 

 

ギンバル返還ヘリパッド移設受諾/金武町長「跡地利用を推進」

 

 

 

 【金武】金武町の米軍ギンバル訓練場の返還問題で、儀武剛町長は十二日午前、開会した町議会六月定例会の冒頭で、返還条件となっている町内のブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設を受け入れることを表明した。儀武町長は「日米両政府間で合意された日米特別行動委員会(SACO)最終合意に基づき、基地の整理・縮小という観点から、ギンバル訓練場の返還条件を受け入れ、跡地利用計画推進を図っていくことを決断した」と述べた。

 

 

 

 儀武町長は、町がギンバル訓練場跡地で予定している「ふるさとづくり整備事業」の財政支援について、内閣府が「引き続き所要の支援を行うべく、関係機関と調整する」としたことや、防衛省が「ブルービーチ訓練場で米軍が使用していた場所のうち、一カ所を活用して整備し、ヘリパッドは撤去可能なものとする。ヘリ訓練による航空機騒音は地元の要望を踏まえ、騒音の調査を実施する」と説明があったことを報告。

 

 

 

 その上で、儀武町長は「大変苦渋の選択であるが、約六十ヘクタールの基地の整理・縮小が進み、跡地利用事業で基地依存経済から脱却して自立経済を進めることにつながる」として、返還条件を受け入れると述べた。

 

 

 

 議会後の会見で、儀武町長は「百パーセントではないが、ベターな選択だと思っている」と話し、今後、地域住民や町民に十分な説明を行い、跡地利用の推進を進めていくとした。

 

 

 

 ギンバル訓練場の跡地利用事業を二〇〇八年度予算概算要求に盛り込むとする内閣府沖縄担当部局の文書と、ヘリパッド移設後の周辺住民の生活に配慮するとした防衛省の通知があったことを受け、儀武町長は十一日、「判断材料は整った」との意向を固め、議会関係者などに伝えていた。

 

 

 

 返還条件のブルービーチ訓練場へのヘリパッドの移設をめぐっては、一九九六年と二〇〇六年に隣接する並里区が移設に反対する決議をしている。

 

 

 

 同区の与那城直也区長は「町から正式な説明を受けていない」とした上で「今後区として行政委員会を開いて対応を協議したい」と話した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121700_01.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 夕刊

 

 

 

那覇市長「大変遺憾」/辺野古海自投入

 

 

 

 翁長雄志那覇市長は十二日の市議会六月定例会で、那覇防衛施設局による名護市辺野古での米軍普天間飛行場の代替施設建設に向けた現況(事前)調査に、海上自衛隊が掃海母艦「ぶんご」や潜水要員を投入したことについて「大変遺憾である」との見解を示した。

 

 

 

 また、陸上自衛隊の情報保全隊が特定の個人や市民団体などの活動を監視・調査していたことについて「大変残念なこと。(方言の言論弾圧など)県民の歴史体験から踏まえると反省しなければならない」として、「自衛隊に話をする機会がある時は話をしていきたい」と述べた。

 

 

 

 米軍再編促進特措法の成立については「大変遺憾である。沖縄戦と米軍支配を経験した県民感情への配慮と県民的合意もなく成立し、SACO(日米特別行動委員会)の合意に比べると問題解決について若干後退した感は否めない」と見解を述べた。

 

 

 

 古堅茂治氏(共産)の代表質問への答弁。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121700_02.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 夕刊 5面

 

 

 

米軍燃料流出に抗議決議/嘉手納・北谷町議会

 

 

 

 【嘉手納・北谷】米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出し、地元への連絡が遅れた問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)と北谷町議会(宮里友常議長)は十二日午前、それぞれ臨時会と六月定例会本会議で、米軍に事故原因の究明と調査結果の公表、再発防止の徹底、迅速な情報開示などを求める抗議決議と意見書を、全会一致で可決した。

 

 

 

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長らはその後、嘉手納基地に在沖米空軍第一八航空団のダニー・ジョンソン広報部長を訪ね、ブレット・ウィリアムス司令官あての抗議文を手渡した。

 

 

 

 流出現場を視察した田仲委員長らは「タンク周辺の芝生が枯れており、かなりの量が流出していたことを物語っていた」と指摘し、あらため環境への影響に懸念を示した。

 

 

 

 ジョンソン広報部長は「燃料流出は残念だ。環境汚染や事故原因の調査結果を公表するかどうかは上級司令部で検討中」と述べ、通報の遅れについては「基地外への影響はなく、(日本側への)通報は米軍の規則に従って実施した」と説明したという。

 

 

 

 嘉手納、北谷の両町議会の決議は、事故発生から四日間も燃料の垂れ流しを続ける一方、周辺自治体への連絡も一週間後だったことに関し、「到底容認できるものではない」と米軍を批判している。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121700_03.html

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