沖縄タイムス 関連記事・社説(6月14日)

2007年6月14日(木) 朝刊 1面

 

文科省「検定撤回無理」/「集団自決」修正

 

 【東京】自民党県連の伊波常洋政調会長と國場幸之助幹事長代理は十三日、文部科学省に布村幸彦審議官らを訪ね、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した教科書検定の経過や今後の見通しを聞き取りした。両氏によると、布村審議官は検定の撤回について「検定制度の信頼性を損ねる恐れがある。ほぼ無理だろう」との見解を示したという。伊波氏は「広く沖縄戦の実相を後世に伝える教科書にしてほしい」と検定の修正を要望した。

 

 布村審議官は「集団自決」への日本軍の広い意味での「責任、関与」については「自覚している」と認めた。一方で、教科用図書検定調査審議会の議論では「渡嘉敷、座間味の両島で部隊長による直接の命令があったかどうかは断定できない」との意見で委員が一致したと指摘した。

 

 このため、沖縄戦で起きた「集団自決」のすべてに軍命があったとは言い切れないという判断から、軍命を削除する検定意見に至ったとの趣旨の説明をしたという。

 

 大阪で係争中の「集団自決」に関する民事訴訟の影響には「(審議会での)検証のきっかけにはなったが、検定意見を左右するものでない」と述べた。

 

 伊波氏らは教科書検定で住民虐殺が問題となった一九八四年、当時の森喜朗文部相の国会答弁などをきっかけに検定が撤回された例を指摘した。布村審議官は「当時は県民感情に配慮する政治判断があった」と述べ、事務レベルで撤回を実現するのは困難とした。

 

 國場氏は「文科省の説明は軍命をあまりにも狭義の意味にとらえ、限定し過ぎている気がした」と述べた。

 

 自民党県連は十四日午前十一時から、議員総会を開き、両氏の今回の聞き取り結果を受けながら、意見集約に向け協議する。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706141300_02.html

 

2007年6月14日(木) 朝刊 29面

 

抗議署名7万人超/「集団自決」修正

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定に対する抗議の署名が最終集計日の十三日、目標の五万人分を大きく上回り七万七十八人分となった。呼び掛けた「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は「沖縄を含め全国から数多く集まった。歴史の事実を隠すのはよくないという意思の表れだ」と予想以上の反応を評価した。

 

 実行委によると、署名は十四日以降も届く予定。このため十三日までの分を一次分として集計し、その後は二次分として扱う。現段階で締め切り日は設定せず、今後予定している文科省への「第二弾、第三弾の要請行動」(同実行委)の際に直接届けるという。

 

 日本史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除・修正した検定問題に対する反発は県内で広がっている。実行委は「基地問題は組織対応が一般的だが、今回は市民の反応が目につく。『十九人分集めたが、子どもの件で手が離せない。妹に託すのでよろしく』という主婦もいた」と話した。

 

 実行委代表は十五日、文科省に大会決議と署名を手渡して検定意見の撤回を要請する。また衆議院第一会館で国会議員らを招いての院内集会や同省での記者会見を開き、全国に抗議の輪をさらに広げていく考えだ。

 

 署名は、検定の修正指示を撤回し、「軍命」が記述された申請時の文章に戻すよう求めている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706141300_03.html

 

2007年6月14日(木) 朝刊 28面

 

沖国大1年生へヘリ墜落を説明

 

 【宜野湾】沖縄国際大学のヘリ墜落事故を一年生にも考えてもらおうと、同大の教員百十五人でつくる「米軍ヘリ墜落事故を考える会」は十三日、同大の事故現場前で事故当時の様子や日米地位協定について説明した。集まった約百人の学生は、事故が与えた影響などを身近に感じた様子だった。

 

 同会は毎月同じ日に集会を開いており、三十四回目を数えた。今回は当時を知る学生が四年生のみになったことから、同会は「事故を風化させない」と、特に一年生の参加を呼び掛けて開催した。

 

 集会では、墜落したCH53大型輸送ヘリの模型を示しながら、事故の概要を説明。米兵が大学内で立ち入り規制を行ったことや、日米地位協定が「壁」となり、県警が求める捜査ができなかったことなどが話された。

 

 参加した同大一年の友利ひとみさん(19)=浦添市=は「記憶は薄れてしまうが、記録として何かを残すことが大切だと思う」と話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706141300_08.html

 

2007年6月14日(木) 朝刊 28面

 

み霊4000人の冥福祈る/旧海軍司令部壕で慰霊祭

 

 【豊見城】旧日本海軍関係者や現地招集された住民ら約四千人のみ霊を慰める旧海軍司令部壕慰霊祭(主催・沖縄観光コンベンションビューロー)が十三日、豊見城市豊見城の同壕慰霊塔前広場で開かれた。

 

 県外遺族二十七人を含む約百十人の遺族や関係者が出席。海軍壕や周辺壕などで犠牲となった人々にささげる献茶や焼香を行い、冥福を祈った。

 

 同ビューローの仲吉朝信会長は、遺族らを前に「肉親を失った悲しみを乗り越え、郷土の発展に貢献してきた皆さまの苦労に深く敬意を表す」とあいさつし、慰霊碑に献花した。

 

 戦時中、同壕で通信兵として従事した福本博さん(83)=大阪府=は「平和の思いを継承する施設として壕公園を活用してほしい」と語った。沖縄海友会顧問の太田直松さん(91)=那覇市=は「悲惨な戦争を生き残った私たちは平和の大切さを後世まで語り継がなければならない」と決意を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706141300_09.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月14日朝刊)

 

[集団的自衛権]

 

行使容認の結論は拙速だ

 

 結論はもう出ているようだ。集団的自衛権に関する政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)の議論は、そう見える。

 

 懇談会では、公海上での自衛隊艦船による米軍艦船防護の可否について、「集団的自衛権行使」と位置付けた上で、実施可能にすべきとの意見が大勢を占めた。今秋にまとめる報告書で、少なくとも米軍艦船防護に関して、集団的自衛権行使を容認するための憲法の解釈変更や改正を求める方向というから、あまりに手回しが良すぎる。というより、拙速にすぎないか。

 

 一言で米軍艦船の防護というが、実際にはさまざまな場面、状況が想定される。懇談会では、想定される主な状況として(1)平時(2)情勢緊迫時(3)我が国に対する武力発生時に区分し、六つの類型について議論したというが、十分に議論が尽くされたとは思えない。

 

 事実、懇談会後の記者説明で、柳井座長は「実際には色々なケースがあり得、まとめて議論するのは難しいので『平時』『情勢緊迫時』『武力攻撃発生時』と横軸で分け、米艦との距離を縦軸で考えた」と述べ、実際の状況想定の複雑さを認めている。

 

 そもそも、この懇談会は、さまざまな立場の有識者を集めて議論させ、意見を集約する形式とは程遠い。共同通信の調べでは、メンバー十三人のうち十二人は過去に国会に参考人として呼ばれた際の発言や論文などで、集団的自衛権の行使は違憲とする政府解釈を批判したり、解釈変更を求めている。設置当初から「結論ありき」との批判が付きまとうゆえんだ。

 

 安倍晋三首相が、こうした懇談会の報告書を踏まえ、集団的自衛権行使の一部容認に向け動き出すことは想像に難くない。

 

 七月の参院選は「年金」が大きな争点になりそうだが、有権者は集団的自衛権行使の取り扱いについても注視すべきだろう。安倍政権の「シナリオ」は着々進んでおり、国民は年金問題だけに目を奪われてはならない。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070614.html#no_2

 

2007年6月14日(木) 夕刊 1面

 

自民、意見書に賛成/「集団自決」修正撤回要求

 

 県議会最大会派の自民党は十四日、県議会内で議員総会を開き、結論を先送りしていた高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する撤回などを求める意見書への対応を協議し、賛成する方針を決めた。同問題に対する意見書は全会派の同意を得て、六月定例会で可決される見通しになった。今後、所管の文教厚生委員会(前島明男委員長)を中心に文案調整に入る。

 

 総会では、文科省の布村幸彦審議官と十三日に面談した伊波常洋政調会長や国場幸之助幹事長代理が、同省の見解や検定で軍命が削除された経緯を説明した。

 

 多くの県議が「『集団自決』は事実。修正すべきではない」「採択を見送れば、県民の反発を招く」など賛成する意向を示した。

 

 一方で、「軍命の有無に対する事実関係が確かではない」「裁判で争われている。意見書は司法への政治介入になる」など反対意見も根強かったが、相次ぐ市町村議会の意見書可決の流れや、採択されない場合の県民からの反発を懸念する意見が大勢を占め、採択賛成の方向でまとまった。

 

 伊波、国場両氏と面談した文科省の布村審議官は、検定の撤回について「検定制度の信頼性を損ねる恐れがある。ほぼ無理だろう」との見解を示したという。「集団自決」への日本軍の広い意味での「責任、関与」については「自覚している」と認めた。

 

 一方で、教科書用図書検定審議会は「渡嘉敷、座間味の両島で部隊長の直接の命令があったかどうかは断定できない」との意見で一致。「『集団自決』のすべてに軍命があったとは言い切れないという判断から、軍命を削除する検定意見に至った」との趣旨を説明したという。

 

 同問題に対する意見書で、自民党内部は賛否の意見が割れ、定例会冒頭の採択に賛成できない方針を固めていた。だが、相次ぐ市町村議会での意見書採択や県民からの反響が大きく、事態を重視した執行部は「軍の何らかの関与があったのは事実」という認識で一致、賛成の方向で調整に入っていた。

 

                    

 

渡嘉敷村議会が意見書/名護・西原も可決

 

 【渡嘉敷】渡嘉敷村議会(島村武議長)は十四日午前、六月定例会の本会議で、日本軍による自決強制の記述を削除するよう求めた文部科学省の高校教科書検定について、「歴史的事実を直視しない押し付けの教科書であり、到底容認できない」と抗議、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。

 

 意見書は安倍晋三首相や伊吹文明文部科学相あてで、「日本軍による命令、強制、誘導などなしに『集団自決』は起こり得なかったことは紛れもない事実。(検定は)体験者による数多くの証言や歴史的事実を否定しようとするものだ」と批判した。

 

 渡嘉敷島に米軍が上陸した翌日の一九四五年三月二十八日、住民ら三百二十九人が手りゅう弾や農具などを使い、家族同士で命を奪い合うなどの「集団自決」が起きた。

 

 名護市議会と西原町議会も同日、同様の意見書を全会一致で可決した。これで四十一市町村のうち二十六の議会で意見書が可決された。

 

 県議会も意見書を可決する方向で調整中で、意見集約ができていない自民党県連は十四日午前の議員総会で協議する。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706141700_01.html

 

2007年6月14日(木) 夕刊 1面

 

金武町議会が容認決議/ヘリパッド移設

 

 【金武】金武町議会(松田義政議長)は十四日の六月定例会最終本会議で、米軍ギンバル訓練場の返還問題で儀武剛町長が町内のブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設条件を受け入れると表明したことを受けて、町長表明を容認する宣言文を、賛成多数で可決した。

 

 宣言文では、二〇〇六年十月に久間章生防衛庁長官(当時)がブルービーチに「新たな恒久的施設は造らない」と明言したことについて「前進と言える」と評価。ヘリパッド移設後は、「訓練が住民生活への影響に配慮され、住民負担の軽減が図られるものである」としている。

 

 ギンバル訓練場跡地に町が計画している「金武町ふるさと整備事業」の先端医療施設や免疫療法施設、長期滞在宿泊施設などの整備について、「大型プロジェクトとして、町発展の起爆剤となるものと確信する。町の命運を決する一大事業と位置付けられ、計画が確実に早期実現するよう望む」と期待している。

 

 提案した外間現一郎氏は「ベストではないが、ベターな選択だ。数カ所あるギンバル訓練場、ブルービーチ内のヘリパッドを一つに集約すると認識しており、基地被害は軽減されると考えている」と述べた。仲間政治氏の質問に答えた。

 

 反発する議員からは、「住民の合意が得られておらず、演習の固定化につながるのではないか」との声が上がった。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706141700_03.html

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