沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(6月16日、17日)

2007年6月16日(土) 朝刊 1面

 

県政与野党 文科省批判/「集団自決」削除指示

 

「検定制度ゆがめる」

 

 来年度から使用される高校の教科書検定で文部科学省が、教科書を審査する「教科図書検定調査審議会」に、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述について、日本軍関与の削除を求める意見書を提出していたことが明らかになった十五日、県内では反発や危惧の声が広がった。県内各政党は「文科省が『集団自決』の歴史を変え、審議会の中立性を損ない、検定制度の在り方をゆがめる」と批判、検定意見の撤回を求めた。

 

 十三日に文科省の審議官と面談した自民党県連の伊波常洋政調会長は「事実であれば遺憾。審議官は文科省の関与を否定していた。結論ありきでは、検定そのものの在り方が問われる」と厳しく指摘した。

 

 社民党県連の照屋寛徳委員長は「沖縄戦の実相を歪曲し、犠牲者を冒涜している」と批判。「文科相の責任で検定を撤回すべきだ。撤回がなければ首相は、慰霊の日に来県する資格はない」と訴えた。

 

 公明党県本の糸洲朝則代表は「政府の介入があってはいけない。審議会の中立性を損なう」とし、「省や審議会は沖縄戦の実態を調査し、生の声を真摯に聞くべきだ」と述べた。

 

 社大党の喜納昌春委員長は「自公政権ぐるみで、沖縄戦の歴史を改ざんする行為は明らか」と反発。「今回の問題を機に、先の大戦の歴史や日本軍の行為を問い直す国民論議が必要」とした。

 

 共産党県委の赤嶺政賢委員長は「文科省主導で日本軍の関与削除を行った事実が明白となった。検定を撤回すべきだ」と憤った。その上で「戦前回帰を狙う安倍政権の本質を露呈した」と述べた。

 

 政党「そうぞう」の下地幹郎代表は「沖縄戦に対する認識を変更させようとする重大な問題だ」と強調。「意見書通りでは審議会は同省の下請け機関になる。撤回すべきだ」とした。

 

 民主党県連の喜納昌吉代表は「歴史の歪曲は断じて許せない」と反発、検定の撤回を訴えた。「文科省と安倍政権が一体となった改ざんで、沖縄に対する巧妙な政治的暴力だ」と述べた。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_01.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 27面

 

「自決」せず生きた祖父へ/戦没者追悼式 思い込め「平和の

 

詩」朗読

 

「『集団自決』せず、生きてくれた祖父の心を伝えたい」。二十三日の沖縄全戦没者追悼式で朗読する「平和の詩」に、沖縄尚学高校附属中学校二年の匹田崇一朗君(13)=浦添市=の「写真の中の少年」が選ばれた。沖縄戦で座間味島に上陸した米軍が撮影した写真、そこに写った祖父のまなざしから、平和のイメージを膨らませた。

 

 祖父の松本忠芳さん=二〇〇五年死去=は母の八重さんらと避難していたガマから、米兵の呼び掛けに応じて出た直後にこの写真を撮られた。

 

 「お母さんと死ぬならいいと思って出た」。写真集を見た匹田君に、松本さんは震える声で語ったという。恐怖にうずくまる姿、直接聞いた体験談が、おじいちゃん子だった匹田君が詩を書くきっかけになった。

 

 「自分が生きているのは、祖父母が頑張って生き抜いた印。戦争は恐ろしいが、命の大切さを気付かせるものでもある。自殺や殺人が多いが、簡単に命を落としてはいけないと思う」。時折涙ぐみながら語った。

 

 追悼式では、知事の平和宣言に続いて詩を読み上げる。「無理。気を失うと思う」と笑う匹田君。母の尚美さん(44)は「同じ世代の子どもたちに、命を思う気持ちが伝われば」と期待を寄せた。

 

入選作品決定

 

 県平和記念資料館は十五日、慰霊の日に合わせて募集した「児童・生徒の平和メッセージ」審査結果を発表した。百六十校、三千八百八十三点の応募の中から、各部門の入選作品が決まった。作品は県平和記念資料館(二十三日七月十日)を皮切りに、県内四会場で展示される。

 

 各部門の最優秀賞は次の通り。(敬称略)

 

 【図画】山下あかね(さつき小六年)仲間清香(高嶺中三年)金城愛香(普天間高三年)【作文】嘉納佳子(読谷小六年)與儀かれん(那覇中一年)【詩】嘉納英佑(読谷小三年)匹田崇一朗(沖縄尚学高附属中二年)仲地愛(球陽高一年)

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_02.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 26面

 

「海鳴りの像」に1438人の刻銘板/戦時遭難船舶遺族会

 

 太平洋戦争中に遭難した船舶犠牲者の碑「海鳴りの像」の台座の上に、十五日現在判明した犠牲者千四百三十八人の名前が刻銘されることになった。慰霊の日の二十三日に除幕式を行う。戦時遭難船舶遺族会は、遺族からの申し出があれば、刻銘を常時追加する。

 

 刻銘板には、赤城丸、開城丸、台中丸、嘉義丸、湖南丸の犠牲者の名前が刻まれる。

 

 喜屋武隆徳さん(82)は、「嘉義丸」の沈没で父と弟の家族四人を失った。大阪に弟の遺骨を受け取りに出た家族を約一カ月、那覇港で待ち続けたが、四人は帰らぬ人となった。生き残った人から家族の死を聞いたが、なかなか実感がわかなかったという。碑の建立から二十年目の今年、刻銘の実現に「やっと家族に日の目が当たり、うれしい」と喜びをかみしめた。

 

 湖南丸で叔父を亡くした大城敬人会長代行(66)は「亡くなった遺族も多く、刻銘の確認しようがない人もいた。追加があれば申し入れてほしい」と話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_03.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 2面

 

土壌入れ替え入札へ/米軍燃料漏れ

 

施設庁長官 立ち入り再要請

 

 【東京】北原巖男防衛施設庁長官は十五日の定例会見で、米軍嘉手納基地で大量の航空機燃料が流出したことを受け、米軍が来週、汚染土壌の入れ替え工事に関する入札を予定していることを明らかにした。一方、儀武剛金武町長が米軍ギンバル訓練場の返還条件となっているブルービーチ訓練場へのヘリパッド移設受け入れを表明したことに「心から感謝申し上げる」と述べた。

 

 県が現場の土壌や水のサンプル採取を含む基地内での立ち入り調査を再要請していることについては、「十三日に同基地第一八航空団司令官に県の申請に配慮するよう文書で要請した」と明かした上で「引き続き働き掛けを進めてまいりたい」と述べた。

 

 現段階で「基地の外の排水溝に油が漏れているのは確認していない」と説明した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_05.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 2面

 

与那国町長が反対表明/米艦船寄港

 

 【八重山】在日米海軍は十五日までに、米海軍掃海艦二隻の与那国寄港について、「ガーディアン」と「パトリオット」が祖納、久部良の両港を二十四日から二十六日まで使用すると、石垣海上保安部を通し県八重山支庁に通知した。一方、外間守吉与那国町長は「米海軍掃海艇の寄港に反対する」との文書をケビン・メア在沖米国総領事に送付、正式に寄港反対の意思を示した。県八重山支庁も使用の自粛を求める文書をあらためて石垣海上保安部に送った。

 

 外間町長は、米側が求めている公式行事や交流行事に協力することはないとしている。理由として、(1)住民感情への配慮(2)三市町(石垣市竹富町与那国町)との整合性の保持(3)CIQ(出入国管理)が常駐していない中で米海軍掃海艇が寄港することへの懸念など四点を挙げている。

 

 メア総領事は七日付で与那国町に対し、寄港した際の公式行事として「掃海艇内での昼食会」「町主催の歓迎会」、交流行事として「ビーチ清掃」「ホームステイ」「米軍と地元住民とのハーリー競漕」などを提案、協力を求めた。乗組員の活動として、島での観光、ダイビング、サイクリングなども考えているという。

 

 掃海艦の使用は「ガーディアン」が二十四日午後一時から二十六日午前七時半、「パトリオット」が二十四日午後二時から二十六日午前七時としている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_06.html

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月16日朝刊)

 

[文科省意見書]

 

「削除」の根拠が薄弱だ

 

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる記述の中から日本軍の関与を示す記述が教科書検定で削除された問題で、文部科学省が教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に提出した意見書で削除を求めていたことが明らかになった。

 

 出版社五社七冊の日本史教科書に対する指摘の中で、「日本軍に『集団自決』を強いられたり」などの記述に対し「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現」と指摘するなど、検定意見と同様の記述になっており、文科省が主導した形跡もうかがえる。

 

 伊吹文明文部科学相は「意見書はあくまで第三者である審議会委員の判断の資料」と強調し影響力を否定したが、とても額面通りには受け取れない。

 

 自民党県議の代表と面談した布村幸彦審議官によると、審議会では「渡嘉敷、座間味の両島で部隊長の直接の命令があったかどうかは断定できない」との意見で一致した。「『集団自決』のすべてに軍命があったとは言い切れないという判断から、軍命を削除する検定意見に至った」としている。

 

 しかし、生き残った住民の証言から日本軍の命令・強制・誘導などがあったことは明白だ。軍の関与を認めつつ記述を削除するやり方はおかしい。

 

 渡嘉敷島などで直接の軍命があったかどうかを疑い、揺さぶることにより沖縄戦で起きた「集団自決」への軍の関与をすべて否定しようとしている。

 

 住民は自分の判断だけで死を選んだというのか。軍関与の削除は「集団自決」に関する日本軍の責任を免除し、住民の死を殉国美談に変えてしまう。

 

 数々の住民証言や沖縄戦研究によって積み上げられてきた「沖縄戦」像を根本から覆すものであり、その政治的な意味を軽視することはできない。

 

 沖縄戦では住民を巻き込んだ地上戦が展開された。沖縄戦を考える場合、「集団自決(強制集団死)」はまさに核心的な問題なのである。

 

 安倍政権登場後、靖国神社参拝や従軍慰安婦、東京裁判など、歴史認識の在り方が問われるようになった。こうした政治的文脈の中に今回の問題を位置づけてみていく必要がある。

 

 検定意見が大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟を取り上げ、ことさら原告側の日本軍元戦隊長の証言や最近の学説状況の変化を根拠として挙げるのは一方的であり、とても中立・公正とはいえない。文科省や審議会側と原告らとの人的つながりも垣間見える。

 

 沖縄の歴史を振り返ると、安易な沖縄戦の書き換えを許すわけにはいかない。文科省はどのような根拠で削除を求めたのか明らかにすべきだ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070616.html#no_1

 

 

琉球新報 社説

 

米掃海艇寄港 押し付けの友好・親善は迷惑

 

 在日米海軍が掃海艇2隻を与那国島に寄港させると通知していた問題で、外間守吉与那国町長は11日、寄港反対を表明した文書をケビン・メア在沖米国総領事に送った。住民感情への配慮、住民の安心・安全の確保などを反対理由に挙げているが、外間町長の判断は極めて妥当だと考える。6月は慰霊の日もあり、県民にとって厳粛な月。よりによって、この月に寄港というのも無神経にすぎないか。

 米海軍はどうしても八重山諸島に「拠点」を確保したいのか、石垣市に拒否された後、与那国に寄港を申し入れていた。それによると、慰霊の日の翌24日から3日間、長崎県佐世保基地所属の掃海艇2隻を寄港させるという。目的は「親善・友好訪問および乗組員の休養」だという。

 米軍は総領事を通じて町に対し「町長宅での歓迎パーティー」「米軍兵士とのバーベキュー大会への小中学生の参加」「艦長の記者会見」|などを要請している。押し掛ける方が、歓迎パーティーを求める神経にはあきれてしまう。「友好・親善」の押し付け、と言われても仕方がない。

 米艦船の民間港への寄港は県内だけでなく全国的に増えている。外務省によると2006年には28回にもなる。ソ連崩壊(1991年)以降、最も多い。背景には05年の在日米軍再編に関する合意で、日米軍事協力を向上させようと「港湾・空港の使用」を明記していることがある。その後、寄港回数が増加している。また、寄港の際、米軍は港の形状、水深などを詳しく調査、データを蓄積している。まさに「有事」に備えての事前調査を全国的に進めていることになる。

 これで、八重山諸島に米海軍がこだわる理由も見えてくる。やはり、台湾海峡への備えであり、軍港化を目指すものとみるのが自然だろう。とはいえ、与那国町長が反対し、県が自粛要請しても、日米地位協定第5条で寄港が認められている。政府は米側の要請を機械的に伝えるだけでなく、与那国町や県の意をくみ、寄港の自粛要請はできないのだろうか。

 

(6/16 10:02)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24665-storytopic-11.html

 

 

2007年6月17日(日) 朝刊 27面

 

教育3法案・教科書検定/370人集いシンポ

 

 「6・16教育の危機を考えるシンポジウム」が十六日、うるま市民芸術劇場で開かれた。琉球大学の佐久間正夫教授が「全国一斉学力テストと格差社会」、小説家の目取真俊さんが「高校教科書・沖縄戦歪曲の狙い」と題して発表。教員免許更新制などを盛り込んだ教育三法案改正への反対と、教科書検定で高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとの記述が削除されたことについて、検定意見の撤回を求める決議も採択された。

 

 シンポは、退職教員らでつくる実行委員会(呼び掛け人代表・佐久川政一沖大名誉教授ら)が主催。教員ら約三百七十人が集まった。

 

 目取真さんは、教科書検定で日本軍の関与が削除された背景には、「有事の際の国民の動員体制を確立するため、軍への否定感や疑問を抱かせる沖縄戦の記憶を暗殺したい政府の狙いがある」と指摘。「『軍命』がないことになってしまう前に危機感を持って、全国にこの問題を発しなければならない」と訴えた。

 

 佐久間教授は、全国学力テストや就学援助の需給率、教育三法案などの課題を新聞記事を基に解説。「教育三法が成立してしまうと、教師たちは三法と全国学力テストの体制の下で、成果主義に駆り立てられるだけでなく、人事管理の厳格化などで身分を不安定にさせられる危険性が出てくる」と警鐘を鳴らした。

 

 教職員代表として、中学校教諭の米須朝栄さんも登壇。「学校の方針に抵抗すれば『不適格教員』と言われるなど、多忙と管理強化で精神的に追い詰められている教員が多い」実情を吐露した。

 

軍関与削除 撤回を訴え/県子ども会育成連

 

 教科書検定問題で、県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)は十六日、那覇市内のパレットくもじ前で撤回を求めるチラシを配布した。「史実から目をそらしてはいけない」と急きょ活動を決定した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706171300_03.html

 

 

2007年6月17日(日) 朝刊 26面

 

壕公開プレイベント/沖縄戦・「松代」テーマに劇

 

 【南風原】沖縄戦と長野県松代市の松代大本営をテーマに、語りと三線で演出する朗読劇「ふたつの壕」(原題「肝苦りさぁ沖縄」)が十六日、南風原町兼城の南風原文化センターで開かれた。

 

 同劇は「沖縄陸軍病院南風原壕群」が十八日に一般公開を迎えることを記念し沖縄で初めて開催された。京都、大阪などで公演活動を展開する演劇集団「まぶいの会・京都」(佐々木しゅう代表)が制作、出演した。

 

 六人の語り手は、沖縄戦体験や松代大本営に関する本から一節ずつ朗読で紹介。渡嘉敷島で起こった「集団自決(強制集団死)」で、手榴弾や小刀などで家族同士が殺し合う場面を朗読すると観客らは目頭を押さえながら聞き入っていた。

 

 出演者の中田達幸さん(37)は「観客の熱気が舞台まで伝わってきた。京都の私たちが演じる舞台が沖縄の人々に受け入れられるか心配だったが、しっかりと気持ちが伝わったようだ」と喜んだ。

 

 観客で琉球大学大学院二年の赤嶺玲子さん(24)は「本を読むのと、感情を込めて語る朗読ではまったく違う感動があった」と話した。

 

 会場には立ち見客も含め百五十人が来場。感情を込めた語り手の言葉の世界に引き込まれた。「ふたつの壕」は十七日午後三時から沖縄市安慶田の「くすぬち平和文化館」でも開催される。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706171300_04.html

 

 

2007年6月17日(日) 朝刊 26面

 

ヘリパッド阻止へ決意/きょう反対集会

 

【東】「子どもたちに基地の負担を負わせたくない」。米軍北部訓練場の一部返還に伴い、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)が東村高江区周辺に移設される計画が進む中、十七日午後二時半から「やんばるへのヘリパッド建設やめよう!集会」(主催・東村民有志)が同村平良の村営グラウンドで開かれる。主催者として集会の準備を進める区民の安次嶺現達さん(48)は「北部にはダムがたくさんあり、県民の水がめを守るためにも一緒に考えてほしい」と話し、村内外から多くの参加を呼び掛けている。

 

 安次嶺さんは、妻の雪音さん(36)と同区で喫茶店を営みながら、五人の子どもを育てている。

 

 一九九九年に村が受け入れを表明したヘリパッド移設計画は、昨年二月ごろ着工に向けた動きが再び表面化。

 

 新聞で具体的な計画案を知った安次嶺さんのそれまでの穏やかな生活は一変した。移設に反対し豊かな自然環境を守ろうと、仕事の合間にビラを配ったり、区民で勉強会を開いたりしている。

 

 移設後は騒音問題だけでなく、着陸帯に伴うサバイバル訓練の増加も懸念される。「今もこの森で、食糧なしに一週間過ごすサバイバル訓練が行われている。森で食べる物が取れなかった米兵が、民間地に下りてきて、区民に食糧を要求したこともある。過酷な環境で、精神的に極限に達している兵士もいるかもしれない」

 

 区内には、「国のやることを本当に止められるのか」という意見もある。安次嶺さんは「僕自身もそうだし、みんな目の前の生活で精いっぱい。でも住民が地道に訴えていけば、国の方針はきっと変わる」と信じている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706171300_05.html

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月17日朝刊)

 

[安倍首相の発言]

 

追悼式で真意を聞きたい

 

 「沖縄戦は大変な悲惨な戦いだった。地域の住民を巻き込んだ激戦があった中、そういう気持ちになることについてよく理解できる」

 

 教科書検定で高校日本史の教科書から「集団自決(強制集団死)」に旧日本軍が関与したとされる文言が削除されたことについて安倍晋三首相はこう答えている。

 

 それにしても「そういう気持ちになる」とは、一体何を指すのだろうか。

 

 「自分たちで自決したとは考えたくなくて、軍命があったと思い込もうとしている」とでも言いたいのだろうか。この表現からは、どうしてもそういう空気が伝わってくる。

 

 もし、言葉の背後に「戦争中のことであり、戦後生まれの自分には関係ない」という気持ちが隠されているとしたら、一国の首相としてその歴史認識を疑わざるを得ない。

 

 検定問題が発覚した三月には「教科書検定の個々のケースについては知らないが、検定制度にのっとって適切に行われていると思う」と述べていた。

 

 だが、ここにきて文科省が教科用図書検定調査審議会に、沖縄戦の「集団自決」から旧日本軍の関与を示す記述の削除を求める意見書を提出していたことが明らかになっている。

 

 これは検定制度が適切に行われていなかったことの証しであり、そのことをどう受け止めるか国民の前にきちんと示す責任があるのではないか。

 

 さらに言えば、先の大戦で最後の激戦地になった沖縄の実態をどの程度認識しているのかも県民が知りたいことの一つといっていい。

 

 沖縄全域が軍部の下に組み込まれ、軍隊と「共死共生」の異常な状況に置かれたことしかり。そのことが持つ意味を理解しているのかどうか。これは「戦後生まれだから分からない」で済まされる問題ではあるまい。

 

 歴史認識について首相はよく「歴史家に任せればいい」と言う。だが、一国を担う総理大臣にはその任に伴う歴史認識と哲学が必要だろう。

 

 国民には「一人一人が頂く宰相」の思想的スタンスを知る権利があり、首相にはそれを明らかにする義務があると思うがどうか。

 

 首相が進める「美しい国」づくりのための教育再生の根幹にあるのは何なのか。首相が言う「愛国心」とは何を指すのか。沖縄戦の惨劇から県民がつかみ取った「命どぅ宝」という理念との整合性はあるのかどうか。

 

 二十三日には沖縄全戦没者追悼式が糸満市である。首相にはぜひ出席していただき、沖縄戦の知識、「集団自決」への認識を県民に示してもらいたい。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070617.html#no_1

 

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