琉球新報 社説

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米軍調査拒否 立ちふさがる地位協定の壁

 

 米軍の対応は県民軽視も甚だしい。嘉手納基地内で起きたジェット燃料漏れ事故で、県が求めていた基地内の土壌採取調査を拒否したからだ。

 嘉手納基地内で約2万リットルの燃料が漏出、約8700リットルが回収できないという事故が5月25日に発生した後、県文化環境部環境保全課、県企業局は6月7日に基地内で現場を確認したが、土壌採取や写真撮影は許可されなかった。

 その後も土壌採取を求めていた県環境保全課に対し、米空軍第18航空団は18日「基地幹部が技術官や環境保全官、上級司令部と協議し、周辺地域への被害、長期にわたる環境への悪影響はないと判断した。地元関係者による、さらなる検査や調査は必要ない」などと、ファクスで回答した。

 米軍が「悪影響はない」といくら繰り返しても額面通り受け取る人が果たして何人いるだろうか。

 「周辺地域への被害はないと判断した」というのは米軍の一方的な見解にすぎず、客観性が欠如している。

 県や地元自治体が詳細な調査を実施した上で「問題ない」という結論が出ない限り安心できない。

 米側は回答文の中で「県内の政府機関、地元自治体関係者に現場への立ち入りを許可し浄化作業や環境保全の手順の情報を提供した」と述べているが、土壌採取による調査を認めない理由などは一切示されていない。

 しかも県に対し一方的にファクスで回答文を送りつけただけで、電話連絡なども一切なかったという。「問答無用」の姿勢が顕著だ。

 これでは県民の不信感は増すばかりである。

 ジェット燃料が時間をかけて地中に浸透し地下水を汚染する恐れはないのか。この間の豪雨で汚染が拡大してはいないか。地元には懸念の声が強い。

 パイプ破損で地下水を汚染した嘉手納基地のジェット燃料が、周辺の井戸に浸出し、くんだ水が燃えるという事態が1967年に起きている。今回の事故で、当時の「燃える井戸」を思い起こした地元住民も少なくない。

 燃料漏れ事故に対しては北谷町議会、嘉手納町議会、沖縄市議会が抗議決議を全会一致で可決し、自治体による立ち入り調査を認めるよう要求している。

 米軍が、県や地元自治体の基地内調査を拒否できるのは日米地位協定第三条(施設・区域内の合衆国の管理権)によるものだ。理不尽で不平等な地位協定を改正する以外にない。立ち入り調査は、危険な基地と隣り合わせに暮らす住民にとって当然の要求だ。

 米軍は、基地内での土壌採取などの調査を直ちに認めるべきである。「よき隣人」を目指すのなら、まず態度で示してもらいたい。

(6/20 10:00)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24769-storytopic-11.html

 

2007年6月20日(水) 夕刊 5面

沖縄市長が検定批判/「集団自決」修正

 【沖縄】東門美津子沖縄市長は二十日の市議会六月定例会本会議で、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定問題について「歴史の真実が政治や政府によってゆがめられることはあってはならない」と厳しく批判した。

 

 「集団自決」の日本軍の関与には「国内で唯一住民を巻き込んだ悲惨な地上戦を生き抜いた県民によって、語られてきた紛れもない歴史の事実だ」と述べ、「歴史の事実を直視し、二度と悲劇を起こしてはならないという反省と誓いから平和な未来は創造される」との見解を示した。

 

 また、自衛隊の情報保全隊による情報収集活動について、「現在の民主国家において、あってはならないことだ」と強調。「監視の目が市民活動、高校生の活動にまで及んでいることに驚きを禁じ得ない。戦前の治安維持法下の憲兵による国民監視をほうふつさせる」と述べた。前宮美津子氏(共産)の一般質問への答弁。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706201700_04.html

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