沖縄タイムス 関連記事・社説(6月21日)

2007年6月21日(木) 朝刊 2面

 

土壌入れ替え着手/嘉手納燃料流出

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、同基地は二十日、土壌の入れ替え作業に十九日から着手していることを明らかにした。

 

 

 「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はない」と判断した根拠については、(1)基地の技術官が地下五フィート(約一・五メートル)より深い部分に燃料が浸透しておらず、地下水より上部に限定されていると判断(2)環境専門官が流出エリア近くの排水システムから水のサンプルを集めた結果、微量の汚染物質も検出されなかった―と説明。「周辺地域に危険を及ぼす可能性はほとんどあり得ない。清掃と進行中の土壌入れ替え作業を経て、さらに長期の環境への影響も排除できる自信がある」としている。

 

 

 いずれも沖縄タイムス社の質問に回答した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706211300_07.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月21日朝刊)

 

 

[改正イラク特措法]

 

対米重視策を国民に問え

 

 改正イラク復興支援特別措置法が成立した。四年間の時限立法で今年七月に期限が切れる同法だったが、改正により航空自衛隊のイラク派遣を二年間延長することが可能となった。

 

 

 政府は当面、二〇〇八年七月末まで一年間延長する方針で、それ以降、延長するかどうかはイラクの治安状況などを見て判断する意向だ。

 

 

 医療や給水など、純粋に人道支援だった陸上自衛隊がイラク南部のサマワから昨年七月に撤収して以降、クウェートを拠点に人員、物資をイラクに輸送する空自の任務は、ほとんどが米軍を中心とした多国籍軍関係で、国連関係はごくわずかとなっている。

 

 

 自衛隊の活動の性格が、人道復興支援から安全確保支援に様変わりし、多国籍軍支援に重点を移していることは明らかだ。

 

 

 イラク政策で苦境に立つ米国を支援し、日米同盟の維持、対米重視政策を象徴しているのが、今回の改正だといえよう。

 

 

 ブッシュ米大統領は今年一月、世論や野党民主党の反対を押し切る形で増派を決定。現在、イラク駐留米兵は計約十六万人に上るが、治安情勢がいつ安定化するかは不透明だ。

 

 

 改正特措法が成立したことに、米国防総省の当局者は、「イラク国民と多国籍軍への支援に感謝する」と日本の支援を評価する立場を強調していることは、ブッシュ政権の置かれた立場からすると、援護射撃となることは間違いない。

 

 

 安倍晋三首相の特措法延長の説明は「潘基文国連事務局長から空輸支援への謝意表明や継続要請が来ている」とし、大義名分に「国連」を掲げ、間近に控えた参院選を意識しているとしか思えない。

 

 

 今、空自をイラクから撤退すれば、間違いなく日米同盟に多大な影響を及ぼす。北朝鮮問題も考慮し、日米同盟を堅持するならば、政府は改正特措法が実態的には対米支援法に変質していることを率直に認め、国民にその信を問うべきだ。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070621.html#no_2

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月21日朝刊)

 

 

[教育3法成立]

 

将来に禍根残しかねない

 

 安倍晋三首相が今国会の「最重要法案」と位置付けた教育改革関連三法が参院で与党の賛成多数で可決、成立した。

 

 

 学校教育の目標などを定めた「学校教育法」、国と地方のかかわりを規定した「地方教育行政法」、新たに免許更新制を盛り込んだ「教員免許法」の三法で、昨年末、約六十年ぶりに改正された「教育基本法」に続き、いずれも公教育の骨格部分に相当する。

 

 

 三法に基づき今後、学校教育や地方教育行政に対する国の関与の道を大きく開いた、といえよう。

 

 

 野党は徹底審議を求めて反対した。国会でどれだけ歯止めがかかるのか注目されたが、結局、与党の「数の力」で押し切られた。

 

 

 有識者からは「教育の管理・統制強化につながる」と指摘され、免許更新制に対しても実効性への不安が教育現場からなお払拭されていない。改革の具体的な効果が不透明だけに、将来に禍根を残しかねないといえる。

 

 

 学校教育法の改正では、改正教育基本法を踏まえ義務教育の目標に「規範意識」「公共の精神」「わが国と郷土を愛する態度」などの理念が新たに盛り込まれた。「歴史について正しい理解に導き」という表現もある。

 

 

 だが、国を愛する態度とは一体何なのか。何が歴史の「正しい理解」であるのか。改正教育基本法の審議から積み残されたこうした疑問にはなお答えていない。

 

 

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定のように、国の解釈を押し付けるようなことがあっては、公教育に国家や政治家個人の意思を持ち込むようなものである。

 

 

 「正しい理解」であると、誰が判断するのか。国の考える歴史観を押し付けるつもりだろうか。

 

 

 地方教育行政法の改正では、教育委員会に対する是正要求を盛り込んだ。「生徒の教育を受ける権利が侵害されていることが明らかな場合」などの要件を示しているが、侵害に当たるかどうかは国の判断一つだ。

 

 

 教員免許更新制を打ち出した教員免許法改正は、終身制の現在の教員免許を二〇〇九年四月一日から有効期間十年の更新制にする。更新前に三十時間以上の講習を条件とした。

 

 

 だが、審議の過程で与党側の参考人が「講習が国主導で画一的となれば、自主性や自律性がおかしくなる」と指摘したように、講習の設計次第で画一的な教師づくりにつながる恐れをはらんでいる。

 

 

 危うい改革との印象は免れない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070621.html#no_1

 

 

 

2007年6月21日(木) 夕刊 1面

 

軍関与削除 批判相次ぐ/自民教育再生委

 

 【東京】自民党の教育再生に関する特命委員会(委員長・中山成彬元文部科学相)が二十一日午前党本部で開かれ、二〇〇八年度から使用する高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与が削除された文部科学省の教科書検定について最終協議した。県関係議員から検定を批判する声が挙がり、中山委員長も「ことさら検定意見をつけるものでもないのではないか」との認識を示したが、委員会の見解はまとめなかった。

 

 

 中山委員長は「沖縄の国会議員から『戦場の実態を分かってほしい』という切々たる訴えがあったが、まさにその通りだと思う」と述べた。

 

 

 その上で、見解を出さない理由について「われわれの思いは文部科学省にもよく伝わったと思うし、(委員会が)検定に文句をつけられる筋合いのものでもない」と説明した。

 

 

 同委員会で、仲村正治氏は「軍にケチをつけたくないとの考えで歴史をつくり、間違いを伝えようとしている。事実は事実としてきちんと教えることが二度と日本が同じ過ちを繰り返さないことになる」と軍命による「集団自決」の記述復活を求めた。

 

 

 嘉数知賢氏は「いま教科書の表現を変えず、現実に戦争を体験した人たちが亡くなったら、強制されてやむなく自決したと言える人が誰もいなくなる」と危機感を表明。「間違った歴史教育がわが国で行われるのは理解できない」と検定結果を疑問視した。

 

 

 西銘恒三郎氏は「沖縄戦から学ぶことは非戦闘員と戦闘員を区別することだ」などと述べた。

 

 

 銭谷眞美初等中等教育局長、布村幸彦審議官ら文科省側は「軍の関与がなかったということではない」と説明したが、嘉数氏は「それならば、なぜ記述を書き換えさせる必要があるのか」と反論した。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

意見書あす可決/県議会

 

 

 県議会議会運営委員会(浦崎唯昭委員長)は二十一日午前、二十二日午前に本会議を開き、高校教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与を削除した文部科学省の教科書検定の撤回、記述の回復を求める意見書案を採決する議事日程を決めた。全会一致で可決される見込み。

 

 

 本会議終了後、県議会代表らが上京し、安倍晋三首相や伊吹文明文部科学相らに要請行動を展開する。

 

 

 意見書案は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしには起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。「今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものだ」とし、「一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた県民にとって、到底容認できない」として、検定意見の撤回、記述の回復を要請している。

 

 

 同問題に対する意見書案は、文教厚生委員会(前島明男委員長)が十九日、全会一致で可決し、「慰霊の日」前日の二十二日の本会議採決を議会運営委員会に要請していた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706211700_01.html

 

 

 

2007年6月21日(木) 夕刊 1面

 

立ち入り拒否 県が遺憾/嘉手納燃料漏れ

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出し、同基地が県の再度の立ち入り調査を拒否した問題で、県文化環境部は遺憾の意を表明するとともに、あらためて立ち入り調査と結果を公表するよう文書で申し入れたことが二十一日、分かった。同部は「県民の理解を得るためにも、客観的で科学的な調査が必要」として、十九日に申し入れ文書を送付した。二十一日まで同基地から回答はなく、県は「正式な回答や情報開示を待つ」との姿勢を強調した。

 

 

 ジェット燃料の流出を受け、県は六日に基地内を立ち入り調査した。しかし調査は目視などに限られたため、「十分な調査ができなかった」とし、県は十一日に再度の立ち入り調査を申請していた。

 

 

 同基地は「これ以上の調査は必要ない」と回答、立ち入り調査を拒否している。知念健次部長は「安全性を確認するには、土壌サンプルの分析など県の側でも具体的な調査が必要」と申し入れの趣旨を説明した。

 

 

 米軍は二十日、沖縄タイムスなどの問い合わせに、十九日から燃料で汚染された土壌の入れ替え作業に着手していることを明らかにし、「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はない」と説明している。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706211700_04.html

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