沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(6月22日)

2007年6月22日(金) 朝刊 1面

 

県教育長、国に撤回要求/「集団自決」修正

 

 【東京】県の仲村守和教育長は二十一日、文部科学省に布村幸彦審議官を訪ね、二〇〇八年度から使用する高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与が削除された同省の教科書検定について、「遺憾である」と指摘し、検定意見の撤回と記述の回復を求めた。布村審議官は、教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に撤回を働き掛けることはないとする伊吹文明文科相の方針を示した上で、「県民感情や県の現状を審議会委員に伝える」と述べるにとどめた。

 

 

 県教育長による今回の申し入れは異例。仲村教育長によると、同省が「教科用図書検定調査審議会」に対し、検定意見と同一内容の「調査意見書」を提出していたことについて、仲井真弘多知事から検定への影響の有無を確認するよう指示を受けた申し入れという。

 

 

 布村審議官は「調査意見書」について「(検定の)内容には口出ししていない。審議会の中立性があり、ラインが違う」などと述べ、検定への影響を否定したという。

 

 

 一方、仲村教育長は、教科書検定で住民虐殺が問題となった一九八四年、当時の森喜朗文部相の国会答弁などをきっかけに検定が撤回された例を指摘。

 

 

 これに対し、布村審議官は「伊吹文科相のスタンスは、政治家として審議会の意見に口出ししないというもので、そういうスタンスで通していく。大臣が配慮するという発言はないだろう。政治家は検討内容にかかわらない。教育的、学術的判断だ」と語ったという。

 

 

 「集団自決」に対する認識については「軍の関与の下に集団自決があったが、渡嘉敷島、座間味島については分からない。科学的に検証する必要がある」と述べたという。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221300_02.html

 

 

 

2007年6月22日(金) 朝刊 27面

 

「集団自決」直後 映像に/座間味上陸の米軍撮影

 

場所特定は初 真相解明に期待

 

 

 沖縄戦時下で、日本軍の軍命・誘導・強制で起きた「集団自決(強制集団死)」直後の映像が残っていることが二十一日までに分かった。座間味村で六十七人が犠牲となった「産業組合壕」を、米軍が上陸後に撮影したとみられる。これまで「集団自決」とされる写真はあったが場所が分からなかった。場所が特定された「集団自決」の映像は初めて。研究者は「聞いたことがない。映像を分析することで事実の解明、継承につながるのではないか」と見る。沖縄戦記録フィルム一フィート運動の会保有フィルムの中に収録されていた。(編集委員・謝花直美)

 

 

 フィルムでは、二人が倒れている産業組合壕の入り口と、遺体が二カット数秒で記録されている。映像は、慶良間諸島を攻撃した米軍の歩兵第七十七師団が座間味島を撮影した一連のフィルムの中にあった。複数の同村住民や関係者が確認した。

 

 

 同村座間味地区の段々畑の斜面に作られた壕には、食糧や役場の重要書類が保管されていた。米軍上陸前日の一九四五年三月二十六日に、村三役や役場職員、その家族が「集団自決」に追い詰められ六十七人が亡くなった。

 

 

 米軍上陸後から、遺体収容が二カ月後に許可されるまで、住民は壕に近寄れず、「集団自決」の詳しい状況は分かっていない。

 

 

 この壕で家族五人を含め親類二十人余りを亡くした宮里育江さん(82)=座間味村=は「初めて見る写真だ」と声を詰まらせた。四、五人の住民とともに女性でただ一人、遺体収容をした。落盤した土を取り除き、壕内に入った。「怖さもなく、においも感じなかった。探し続けた家族に早く会いたい一心だった」と当時を振り返った。今は壕周辺には木々が生い茂り、供養のために行くこともままならない。「ただ懐かしい思い」と写真をじっと見詰めた。

 

 

 沖縄戦研究の吉浜忍沖縄国際大学教授は「『集団自決』に関しては場所が特定された初めての映像だ。これまで聞いたことがない」と指摘する。「『集団自決』があったことを実際示す資料だ。

 

 

詳細が分からないこの壕の『集団自決』の謎を解くきっかけになるのではないか」と「集団自決」の教科書記述で、軍関与を削除する動きがある中、真相の解明に期待する。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221300_03.html

 

 

 

2007年6月22日(金) 朝刊 1面

 

超党派で強権に対抗/研究者ら50人が「沖縄宣言」

 

 研究者、芸術家ら幅広い層の五十人で構成する「超党派有志の会」は二十一日、連名で「復帰35年・沖縄宣言」を発表した。県庁で記者会見した元社大党委員長の仲本安一氏(72)らは、政府の沖縄に対する強権姿勢が露骨になっているとして、「超党派で立ち上がる時だ」と訴えた。

 

 

 宣言は自衛艦を動員した米軍再編の強行や「集団自決」をめぐる教科書検定を挙げ、「沖縄住民をないがしろにする動きが顕著」と指摘。政府に「これ以上犠牲と差別を強いないよう」求めるとともに、「すべての沖縄住民が平和と自治と自立に向けて大同団結」することを呼び掛けた。

 

 

 仲本氏は「戦前のきな臭さを体感として感じる。県民には半分あきらめがあるが、政府の行き過ぎに行動を起こさなければ、いつまでも植民地だ」と強調した。

 

 

 ほかに琉大教授の高良鉄美氏(53)、元連合沖縄会長の玉城清氏(66)、元沖縄タイムス編集局長の由井晶子氏(73)、前琉球新報社長の宮里昭也氏(70)の四人が同席。「自治を取り戻す運動の輪を広げたい」などと語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221300_04.html

 

 

 

2007年6月22日(金) 朝刊 2面

 

検定意見書 県議会きょう可決

 

 県議会(仲里利信議長)は二十二日午前、本会議を開き、高校教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与を削除した文部科学省の教科書検定の撤回、記述の回復を求める意見書案を採決する。全会一致で可決される見込み。

 

 

 本会議終了後、県議会代表らが上京し、安倍晋三首相や伊吹文明文部科学相らに要請行動を展開する。

 

 

 意見書案は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしには起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。

 

 

 「今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものだ」とし、「一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた県民にとって、到底容認できない」として、検定意見の撤回、記述の回復を要請している。

 

 

 同問題に対する意見書案は、文教厚生委員会(前島明男委員長)が十九日、全会一致で可決し、「慰霊の日」前日の二十二日の本会議採決を議会運営委員会に要請していた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221300_05.html

 

 

 

2007年6月22日(金) 朝刊 26面

 

土壌入れ替え本格化/嘉手納の燃料流出現場

 

 【嘉手納】米軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、二十一日午前から土壌の入れ替え作業が本格的に始まった。数人の作業員とともに、パワーショベルがタンクを覆っている土や芝生を掘り起こし、赤土がむき出しになっている状況が確認された。

 

 

 同基地によると、取り除いた土壌は基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング法」で浄化する。

 

 

 同基地は「地下約一・五メートルより深い部分に燃料は浸透しておらず地下水より上部に限定されている」などと説明。「周辺地域に危険を及ぼす可能性はあり得ない」としている。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221300_07.html

 

 

 

琉球新報 社説

 

教育3法成立 見切り発車は現場混乱に

 

 昨年12月の教育基本法の60年ぶりの改正を受け20日、教育改革関連3法が参院本会議で可決、成立した。教員免許更新制の導入や教育委員会への国の関与の強化など、全国約110万人の教員、学校現場に大きな影響を与える。

 3法は、学校教育の目標などを定めた学校教育法、国と地方のかかわりを規定した地方教育行政法、新たに免許更新を盛り込んだ教員免許法だ。

 安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」の一環として「教育再生」を最重要課題に掲げている。教育は「100年の大計」だ。だが国会審議では、与野党双方が求めた教育関連予算や教職員定数の拡充、免許更新制の実効性への疑念など、論議が不十分なまま採決となった。「現場無視だ」「参院選の目玉づくり」「国会の会期日程をにらんでの政治思惑優先の採決」との批判も当然だ。

 改正3法の中身をみると、学校教育法では義務教育の目標として「我が国と郷土を愛する態度」や公共の精神、規範意識の養成を明記している。「歴史について正しい理解に導き」との表現もある。正しい歴史は国が判断するのだろうか。沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定での日本軍の関与が修正・削除されたことに対し、県民から「沖縄戦の実相をゆがめるもの」として、撤回要求が出されている。国の見方や価値判断の押し付けには危うさが伴う。

 その上、地方教育行政法では、教育委員会への文部科学相の是正指示、要求権を盛り込み、改正教育基本法では自治体の教育基本計画作りで政府の基本計画を参考にするよう求めている。教育への政府の影響力をかなり強化している。

 国の関与が強まれば、教育は良くなるものでもないだろう。むしろ地域の特性や学校の創意工夫が失われないか懸念する。

 教育改革は国民に「愛国心」を強制することではない。愛される国造り、そのための教育者と人材育成が基本である。十分な論議も尽くさず、見切り発車での教育3法改正は将来に禍根を残しかねない。

 

 

(6/22 9:53)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24817-storytopic-11.html

 

 

 

2007年6月22日(金) 夕刊 1・7面

 

県議会「集団自決」意見書可決

 

本会議、全会一致

 

 

 県議会(仲里利信議長)は二十二日午前、本会議を開き、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与を削除した文部科学省の教科書検定の撤回、記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決した。本会議終了後、県議会代表らが上京し、文部科学省などに要請行動を展開する。

 

 

 午前十時に開会した本会議は冒頭で、同意見書案を全会一致で可決した文教厚生委員会の前島明男委員長が文案を読み上げ、提案理由を説明した。その後、全会一致で可決した。

 

 

 意見書は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしには起こりえなかったことは紛れもない事実」と指摘。

 

 

 「今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものだ」とし、「一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとって、到底容認できない」として、検定意見の撤回、記述の回復を求めている。

 

 

 同問題に対する意見書案をめぐり、野党側は定例会冒頭での採決を与党側に要請した。

 

 

 だが、県議会最大会派の自民党内に反対意見が表面化。同党内の意見調整が続いていたが、賛成で意見がまとまった。

 

 

 与野党で意見書案の文案を調整し、文教厚生委員会が十九日、全会一致で可決。「慰霊の日」前日の二十二日の本会議採決を要請していた。

 

 

 県内では二十一日までに、四十一市町村のうち、三十七の議会が教科書検定意見に反対する意見書を可決している。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

県民の総意 国へ

 

 

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定問題で、県議会は二十二日午前、全会一致で意見書を可決し、県民の強い意志を示した。県議会の要請団は早速、意見書を携え上京した。検定意見の撤回と記述の回復を求めてきた県民の運動に大きな弾みがつくことになる。

 

 

 傍聴席に駆けつけ、意見書が可決される様子をじっと見守っていた高教組の松田寛委員長は「慰霊の日の前に可決されたことをまず評価したい」と語り「文科省へ要請に向かう皆さんには、県民の声を背に県議会として記述の復活をしっかりと申し入れてほしい」と話した。

 

 

 元高校教諭の宮里尚安さん(65)は「六十年余りたった沖縄戦から『軍命』を削るのは許せない。議員団は強く要請し、ぜひ撤回させてほしい」と期待を込めた。

 

 

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史琉大准教授は可決の知らせに「明日来県する安倍首相にも、県民の意志をきちんと示せる効果がある」と評価。加えて「せっかく一致点を見たのだから、歴史認識を正しく伝える役割を発揮してほしい」と要望した。

 

 

 県議会文教厚生委員会メンバーら七人は二十二日午前、要請行動のため那覇空港から上京した。文科省では、布村幸彦審議官が対応することが固まっている。

 

 

 伊吹文明文科相への面談を求めていた前島明男委員長(公明)は出発前、「県民代表として大臣に会いたかったが、国会開会中でもある。記述の削除に憤りを持ち、強く検定撤回を訴えたい」と話した。

 

 

 共に上京する比嘉京子県議(社大)は「歴史の事実は一つで、変えられない。県民の意志をしっかりと示したい」と力強く語った。

 

 

 自民の伊波常洋政調会長は「教科書問題は、与野党を超えて可決された画期的なこと。意見書の通りに抗議を含め県民の意志を伝えていきたい」とした。

 

 

 要請行動ではこのほか内閣府沖縄担当部局や県関係国会議員に面会し、同日中に帰任する。

 

 

意見書全文

 

 

 去る3月30日、文部科学省は、平成20年度から使用される高等学校教科書の検定結果を公表したが、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」との検定意見を付し、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させている。

 

 

 その理由として同省は、「日本軍の命令があったか明らかではない」ことや、「最近の研究成果で軍命はなかったという説がある」ことなどを挙げているが、沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである。

 

 

 また、去る大戦で国内唯一の地上戦を体験し、一般県民を含む多くのとうとい生命を失い、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとって、今回の削除・修正は到底容認できるものではない。

 

 

 よって、本県議会は、沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに、悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにも、今回の検定意見が撤回され、同記述の回復が速やかに行われるよう強く要請する。

 

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

 

 平成19年6月22日

 

 

 沖縄県議会

 

 

 衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 文部科学大臣 沖縄及び北方対策担当大臣あて

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221700_01.html

 

 

 

 

 

2007年6月22日(金) 夕刊 7面

 

170人の戦争体験談 子らへ

 

 「妹が頭に破片を受けて即死でした。どうすることもできず、日が暮れるのを待ち、母と二人でなきがらに土をかぶせてやるだけでした」。県内から百七十人が戦争体験を記した「子どもにおくる本 沖縄は戦場だった」(鈴木喜代春他編、らくだ出版)が出版され話題になっている。一人一ページで約三百字とコンパクトだが、証言者本人の一番訴えたいことが分かりやすい言葉でつづられている。子どもの目を通して語られた一つ一つの体験の積み重ねが沖縄戦を描き出している。

 

 

 糸満市史編集委員会委員長平良宗潤さん(66)と元同編集委員の喜納勝代さん(68)が中心となって県内で呼び掛け、戦争体験者から原稿を集めた。三百字という制限に「沖縄戦は語りきれない」と断る人もいたが、約百七十人から原稿が集まった。

 

 

 本島南部だけでなく中北部や離島、サイパンやフィリピンなどの体験もある。内容も、空襲や疎開、避難、地上戦、捕虜、住民虐殺、「集団自決」などあらゆる体験が含まれている。

 

 

 喜納さんは「聞き書きもあるが、初めて文章を書くような人が一生懸命書いた。完成してうれしい」と喜ぶ。平良さんは「初めて聞くような証言があった。この本をきっかけに学校や家庭で戦争の話を伝えてほしい」と話した。すでに読み聞かせなどに取り入れている小学校もあるという。

 

 

 同書は千二百円(税別)で販売されている。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221700_02.html

 

 

2007年6月22日(金) 夕刊 6面

 

「沖縄戦忘れない」琉球魂ライブ あす那覇で開催

 

 「慰霊の日」の二十三日、音楽を通して平和のメッセージを発信しようと、沖縄、東京、千葉、大阪の四カ所でライブイベント「琉球魂6・23」が開かれる。県内外で活躍する十数組のミュージシャンが出演の予定。ライブを企画した上江洲修さん(28)=東京在=は「沖縄戦が終わった日を忘れず、『争い』を繰り返さないためにメッセージを届けたい」と思いを込める。

 

 

 昨年に続いて二度目の開催。趣旨への賛同者が増え、関連イベントも企画されるなど広がりを見せている。

 

 

 沖縄ライブに出演する「シャオロン・トゥ・ザ・スカイ」のトウヤマ魂タカフミさん(33)は「なぜ『慰霊の日』があるのかとか、若い世代が考えるきっかけになれば」と話す。ジョニー宜野湾さん(49)も「音楽を一緒に楽しみながら、その中から何かを感じ取ってもらえれば」と呼び掛ける。

 

 

 「琉球魂」の沖縄ライブは二十三日午後八時半から、那覇市松尾の「ライブ@クラブ ムンド」(那覇OPA七階)で。ゲストトークとして、平和市民連絡会の平良夏芽さんらを迎える。入場は前売り二千円、当日二千五百円。問い合わせはムンド、電話098(861)9907。「琉球魂」のホームページはhttp://ryukyudamasii.com/

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221700_03.html

 

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