2007年7月7日(土) 朝刊 1面
県議ら「軍関与を確信」/「集団自決」証言次々
沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」について、高校の日本史教科書から軍の関与を示す記述が文部科学省の教科書検定で削除された問題をめぐり、県議会文教厚生委員会(前島明男委員長)は六日、ほぼ一日かけて渡嘉敷、座間味島を視察した。計八人の体験者から「玉砕命令を聞いた」などの生々しい証言を聞いた委員らは視察後、「軍の関与は間違いなくあった」などと語り、軍関与の記述復活に向け、文科省への要請を続ける意向を示した。
委員十一人と委員外一人の県議十二人は同日午前に渡嘉敷島での視察を終え、午後座間味島に渡った。
六十七人が犠牲になった「産業組合壕」や、「集団自決」で亡くなった四百二人を含めた千二百二十人を祭った「平和之塔」などを訪れた。同島で平和学習ガイドブック作成のため、体験者から聞き取り調査をしている宮里芳和さん(59)から「体験者の七割は玉砕命令を聞いている」などの説明を受けた。
座間味コミュニティセンターでは、沖縄戦時下、
委員の一人、仲里利信県議会議長は「これまで語らなかった体験者が、思い切って口を開いてくれた。それだけ教科書検定問題は重く受け止められているということだ。われわれも体験者の思いに真摯に向き合い、歴史を子どもたちに正しく伝えるため、検定意見が撤回されるまで動き続ける」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_02.html
2007年7月7日(土) 朝刊 2面
汚染土の除去完了/嘉手納燃料流出
施設庁長官「浄化し再利用」
【東京】米空軍嘉手納基地内でのジェット燃料流出問題で、米空軍が実施している土壌入れ替え作業について北原巖男防衛施設庁長官は六日、米側から「五日に(汚染された)土壌の除去作業がすべて完了した」との報告を受けたことを明らかにした。定例会見で述べた。
施設庁によると、同基地内に立ち入りした三日に米側から説明を受けた段階での除去土壌は五百三十五立方メートル。今後、新たな土での埋め直しを予定している。
除去された土壌は基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング法」で約半年間かけて浄化し、基地内の建設工事事業で再利用されるという。
北原長官は「地域住民が大変心配している事案なので、これからもしっかりフォローしていきたい。情報などがあれば、速やかに地域住民に説明したい」と述べた。
小池百合子防衛相の就任については「沖縄担当大臣を経験され、沖縄の基地問題についても大変詳しい。県知事をはじめ多くの方々をご存じだ。施設庁職員一丸となって小池大臣の下、最優先である米軍再編の一日も早い実施に向けて努力したい」と語った。
一方、米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の再開については「議題を含めて、具体的にいつということはまだ決まっていない」と述べるにとどめた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_03.html
2007年7月7日(土) 朝刊 31面
学長に撤回求める/星条旗逆さ掲揚中止命令
【宜野湾】沖縄国際大学の准教授が普天間飛行場に向け星条旗を逆さに掲揚したことに渡久地朝明学長が中止を命令した件で、准教授が所属する総合文化学部と法学部の教授会は六日、「表現の自由に抵触する恐れがある」として中止の撤回と謝罪を求めた。一方、学長はホームページなどで「米国市民が不快感や屈辱感を抱く」との声明を出しており、学内の言論活動をめぐり議論を呼びそうだ。
総合文化学部の小熊誠学部長は「本来、ヘリ墜落事故が起きた大学として訴えるべきで、学長は県民の気持ちを考えるべきだ」と糾弾。学部として星条旗を掲げたピーター・シンプソン准教授の行動に支持を表明した。
法学部の佐藤学教授によると、今回のキャンペーンは象徴的言論で法律には反しないという。佐藤教授は「学長の主張は教員のあらゆる表現活動に拡大解釈される危険性がある」と指摘。中止要求は言論活動の委縮につながるとして「大学の自殺行為だ」と批判した。
これに対し、大学当局は事前に施設の使用許可がなかったと説明。学部の決議については「現時点では何も聞いておらず、コメントできない」としている。
シンプソン准教授は週明けに正式に許可を申し入れ、拒否された場合は署名運動を行う考えだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_05.html
2007年7月7日(土) 朝刊 30面
平和資料館に300万人/改築7年で大台達成
【糸満
突然の朗報に驚いた表情の仲野さん。「素晴らしい記念に加えられたことがうれしい。これからも資料館にたくさんの方が訪れるといいな」と喜びを語った。
宮城館長は「親子で訪れることができるような、県民に密着した資料館として取り組みを進めていきたい」と述べた。
同館は改築・移転以来、年平均約四十万人が来館しており、〇六年六月に二百五十万人を突破していた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_06.html
琉球新報 社説
「集団自決」再可決 それでも国は拒否なのか
県議会文教厚生委員会が間髪を入れず新たに動いた。
文部科学省による教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する日本軍の強制をめぐる記述が修正・削除された問題で、同委員会は5日、検定意見の撤回と記述回復を求める意見書案を再度、本会議に提出することを全会一致で可決した。6日には委員会のメンバー全員が渡嘉敷、座間味両島に渡り、集団自決の生存者らから当時の様子などを聞き取り調査した。
県議会の迅速な対応は多くの県民から共感され、支持を集めるだろう。
議会が同一定例会中に同じ趣旨の意見書をあらためて可決するのは初めてである。2日前、県や県議会を含む県内6団体の代表らが文科省を訪れ、検定撤回を要請した際の対応は「門前払い」同様だった。煮え切らない文科省の態度に、不満や憤りが一気に沸騰した形だ。
新たな意見書案は、文科省の姿勢について「あらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で(教科用図書検定調査)審議会に諮問している」と検定手続きの在り方を厳しく批判、記述復活を再度求める内容だ。
係争中の裁判を検定意見の参考資料としたことには「一方の当事者の主張のみを取り上げている」と指摘。「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」とした。当然の結論である。
それにしても、要請団への文科省の回答は私たちの認識とは懸け離れすぎている。撤回要求の拒否理由は「審議会の決定事項」とのほぼ一点張りだ。県民を納得させられるはずがない。
「審議会を隠れみのにしているにすぎない」(平良宗潤・県歴史教育者協議会委員長)といった批判に対し、文科省はどう答えるのだろうか。
解せないのは審議会の態度も同様だ。検定意見を承認した論拠や審議の過程などは不透明なままで、弁明も一切ない。
そもそも審議会のメンバーすら分かっていない。文科省を含め説明責任を放棄していると批判されても仕方がない。
安倍晋三首相の見解もぜひ聞いてみたい。
軍命否定論は、従軍慰安婦問題をめぐる安倍首相の「官憲が人さらいのように連れて行く強制性はなかった」との論法と根底で重なり合っている。そんな批判にどう反論するのだろう。
県議会の意見書案は11日の本会議で全会一致で可決される。政府は今度こそ、県民の撤回要求に誠実に向き合い、納得いく回答を示さねばならない。
(7/7 9:56)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25250-storytopic-11.html