沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月20日、21日)

2007年7月20日(金) 朝刊 29面

米車両、学校・直売所侵入

校内で方向転換

うるま・沖縄高等養護

 【うるま】十八日午後五時前、うるま市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長、生徒数百二十四人)の校内に米軍車両とみられる装甲車が入り込み、方向転換して引き返していたことが十九日に分かった。人身へ被害や施設の破損はない。同校では知的障害のある生徒が寄宿生活を送っており、同時間帯は部活動で校内をランニングする生徒も数多くいた。塩浜校長は「いつ事故が起こるか分からない。生徒たちも動揺している」と怒りを隠せない。

 県外出張中の仲村守和県教育長は「教育の場である学校内に米軍車両が入ることはあってはならない。強く抗議する。このようなことが二度と起こらないよう関係機関に強く要請していきたい」とコメントを発表、週明け、二十三日にも仲村教育長が那覇防衛施設局などへ抗議する考えを示した。

 車両が学校敷地内に入ったのは十八日午後四時五十三分ごろ。付近を通行していた目撃者によると、車両は県道10号を与勝方面から学校のある県道224号に右折。その後左側にある校門に前方から入って車体を方向転換し、そのまま来た道を引き返したという。

 同校では校門前で生徒が生産した野菜を無人販売しており、車で買い求める客がいることから門扉は開けた状態だった。

 学校正面に設置された監視カメラが当時の様子をとらえており、片側四車輪の装甲車が約四十秒間にわたり校内に入り込み、校内を走る生徒の前で転回している。

 現場を目撃した高等部一年の男子生徒は「走っていると黒い車が目の前に来ていた。あんなに大きな車を見たのは初めて」と話している。


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買い物客ら、不安げ

宜野座


 【宜野座】宜野座村漢那の村加工直売センター「未来ぎのざ」の駐車場に十八日夕方、米軍の装甲車両五台が乗りつけた。同村は、通行量が多い国道329号に面する同センターへの来客への影響などから、米軍車両の乗り入れを行わないよう、那覇防衛施設局を通して米軍に申し入れた。

 同村によると、金武町方面から来た米軍の装甲車両が十八日午後五時四十五分ごろに二台、午後六時ごろに三台、それぞれ同センター内の駐車場内に乗りつけ、五分ほど駐車していたという。乗っていた米兵が、車両を点検する姿も見られたという。村の特産品販売所などがある同センターには当時、買い物客や観光客もおり、不安そうな表情で見ていたという。

 村企画課の担当者は「再び乗り入れられたら困る。今後乗り入れがないよう、米軍にはしっかりと指導してほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707201300_04.html

2007年7月20日(金) 朝刊 28面

沖縄戦終結日分かる 6%/高校生意識調査歴史

 沖縄戦が終結した日を正確に答えられるのはわずか6%、日本復帰の日については11%―。「沖縄歴史教育研究会」(新城俊昭代表)が、県内の高校二年生二千七百六十七人を対象に実施した調査で次のような結果が分かった。沖縄の歴史や文化などの基本的な設問に対し、全体的に正答率は低調だった。一方、八割が沖縄の歴史や文化を学ぶ重要性を感じている。

 新城代表は「学ぶ意識と実際の知識の落差が大きい。原因は学校や地域で学ぶ機会の少なさにある」と分析した。

 調査は、今年五月末から六月初旬にかけ、県内の全高校に依頼。そのうち、四十三校から回答をがあり、有効データ四十一校分をまとめた。

 日本軍が降伏文書に調印し、沖縄戦が終結した一九四五年「九月七日」を正確に選択できたのは、わずかに6%で最も少なかった。

 組織的戦闘が終結した「慰霊の日」の「六月二十三日」とした誤答が47%もあった。

 新城代表は「沖縄は六月二十三日以降も戦場であり続け、多くの犠牲者が出た。沖縄戦の悲惨さだけでなく、正確な知識を伝える努力も必要だ」と指摘する。

 沖縄が本土復帰した年月日(七二年五月十五日)を記述する問題では、正答率は11%。誤答は25%、分からないが64%だった。

 正答率が低調な一方で、沖縄の歴史、文化を学ぶことを「とても重要」(35%)、「重要」(45%)と答えており、合わせると80%に達する。

 新城代表は「復帰三十五年を時事問題として授業で扱った高校は、復帰の年月日を正確に答えられる生徒が80%に上った。教師の意識の持ち方次第で関心や知識は大きく変わる」とし、体系的な学習指導の重要性を強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707201300_05.html

琉球新報 社説

高校生歴史調査 意識と知識の格差を埋めよう

 沖縄戦の犠牲者の数、沖縄戦の公式終結日、「本土復帰の日」すらも、答えられない沖縄の高校生が増えている。学び、教え、伝え、記憶させ、未来に「歴史」を伝承することの大切さを、あらためて確認したい。

 沖縄歴史教育研究会が、県内の高校2年生2767人を対象にこのほど実施した「沖縄歴史に関する高校生の知識・意識調査」によると、琉球王国や沖縄戦、米軍統治、伝統文化などに関する基本的な史実、事実、数字の正答率は「かなり低い」という結果になった。

 琉球王国の最初の国王「舜天」の正答率は17%、中国皇帝が琉球国王を任命する「冊封」は20%、薩摩の琉球侵略の「1609年」は9%、「人頭税」が27%、「蔡温」が22%、沖縄学の父「伊波普猷」は13%と、軒並み3割を切る。

 近・現代史も低い。沖縄戦の公式な終結日「9月7日」は6%。多くが「慰霊の日」を終結日と誤認している。慰霊の日以後も沖縄戦の犠牲は続いている。「軍部中心の歴史」の重視と伝承に、危機感を抱く高校教師も少なくない。

 平和の礎の刻銘者数「24万人」は29%。戦争犠牲者の数を正確に記録し記憶させることは、戦争を憎み、平和を愛する「沖縄の心」の醸成に欠かせない。

 戦後27年間の米軍統治を経て、民衆の力で異民族支配から脱した「本土復帰の日」が書けたのは11%。米軍の暴政を糾弾し、日米両政府を揺さぶり、「自治と人権」「平和と民主主義」を勝ち取った誇るべき日である。

 調査では、こんな結果もある。沖縄の歴史や文化を学ぶことについて「とても重要」35%、「重要」45%。そして、沖縄の歴史や文化に誇りを「とても感じる」32%、「感じる」44%。

 沖縄の歴史や文化に誇りを持ち、学びたいと切望する高校生たちが、いかに多いことか。残念なのは、熱い思いと裏腹に、知識の習得が追いついていないことである。

 沖縄は、独自の王朝文化、大交易時代、琉球処分、沖縄戦による多大な犠牲、米軍統治、本土復帰など、他県にはない独自の歴史を持つ。沖縄戦は悲惨さだけでなく、時期など「正確な知識を伝える努力も大事」との声もある。

 調査した教師らは「意識は高いのに正答率が低いのは、学校や地域で学ぶ機会が少ないから」と指摘している。教育現場で琉球・沖縄史学習が「お国自慢レベルの郷土史と認識され、軽く扱われている」のも原因とみている。

 平和も民主主義も、自治も人権も闘い取った希有(けう)の歴史を経験した親たちである。苦難の歴史を、戦争の悲惨さを、歴史に学ぶことの大切さを、子どもたちにもっと語り継いでほしい。

(7/20 9:48)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25595-storytopic-11.html

2007年7月20日(金) 夕刊 1・7面

知事、装甲車侵入に抗議/米軍に再発防止求める

 仲井真弘多知事は二十日午前の定例記者会見で、うるま市の県立沖縄高等養護学校内に米軍車両とみられる装甲車が侵入した件について、「(日米)地位協定上読めるか読めないか以前の問題。養護学校に断りなく入ってUターンするのは常識以前の問題だ。地位協定を持ち出す以前にやるべきではない。理解不能だ」と述べ、強い抗議の意を示した。

 この件を受け、県は十九日午後、基地対策課長が外務省沖縄事務所と那覇防衛施設局に対し、再発防止と兵員の教育を米軍に申し入れるよう電話で要請。週明けに関係機関への要請行動を予定する県教育庁に同行する方向で調整している。

 仲井真知事はまた、二十二日来県予定の小池百合子防衛相と会談したい意向を示し、「普天間移設などについて私の考えを申し上げ、いい形で再編の流れがセットできるようお願いしたい」と述べた。

 ただ、政府や県、地元・名護市などでつくる移設協議会の早期開催については「選挙公約である(普天間飛行場の)三年をめどとした閉鎖状態の実現、沖合へ寄せたらどうかという名護市の人の意見をくみ入れてほしい。一ミリも動かさないというのは理解不能で、ここがセットできれば協議会を開く意味があると思う」と述べ、地元意向を棚上げしての協議会開催は困難との認識を示した。

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書検定意見を撤回させるため、超党派による県民大会開催の動きが出ていることについては「テーマとしては県民大会にふさわしい。もっとも効果的なら当然やるべきだと思う」と賛意を示しつつ、「まだ、開くべきがどうか答えが出せていない。(県議会や市長会などの)団体の意向を踏まえて考えたい」と述べ、自身の参加も含めて現時点では態度を保留した。


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「傍若無人」怒りの声/首長、米軍を批判


 【うるま】うるま市の県立沖縄高等養護学校と宜野座村の直売所に米軍の装甲車が相次いで侵入した問題で二十日、周辺首長や議会関係者から「傍若無人」「あってはならないこと」などと米軍の行動に怒りの声が上がった。この日、終業式を迎えた同養護学校では父母らから不安の声が聞かれた。うるま市議会では同日午前、基地対策委員会のメンバーが集まり、委員会開催の準備を進めるなど、動きが広がった。

 うるま市議会の東浜光雄基地対策委員長は「施設間移動は公道を利用するもの。地位協定上、民間地に入り込むことは明らかにできないし、あってはならない。強く抗議したい」と述べ、近日中に特別委員会を開く考えだ。

 同市の知念恒男市長は「詳細について現在調べているところ。責任の所在が確認でき次第、対応策を考えたい」と話した。同市は那覇防衛施設局の調査結果が判明した段階で対応を決めるとしている。

 北谷町の野国昌春町長は「装甲車が学校に入ってUターンしないといけない理由はない」と強く批判。「傍若無人の行動で、自分勝手にやることは好ましくない。県なども厳重に申し入れるべきだ」と憤った。

 また、嘉手納町の宮城篤実町長は一般論と断った上で、「米軍車両だろうが、民間車両だろうが自分の敷地でない所に許可なく立ち入ることは権利の侵害。どのような経緯でこうなったのか調べる必要がある」と指摘した。


 【宜野座】宜野座村漢那の村加工直売センター「未来ぎのざ」の駐車場に、米軍車両が乗り入れたことに、仲宗根勲副村長は二十日、「民間地域への車両乗り入れは危険なのでやめてほしい」と話し不快感を示した。

 仲宗根副村長は、米軍の運用で基地間の移動は認められているとした上で、「多くの住民が使う場所で、危険にさらされる可能性が高いので、車両の乗り入れはやめてほしい」と語った。今後の対応については、出張中の東肇村長が帰り次第検討するという。


「あり得ぬ」父母ら動揺


 【うるま】「あり得ない問題が起きて動揺している―」。米軍の装甲車が無断で侵入した県立沖縄高等養護学校では二十日午前、終業式が行われ、参観した父母や関係者からは不安の声が聞かれた。

 塩浜康男校長は全校生徒百二十四人と父母らを前に、「学校に戦争に使う車が入ってきた。戦車のような物を実際に見た生徒五、六人はとても怖かったと思う。あってはならないことが起きてしまった」と、侵入の経緯を説明。生徒に対し「被害はないので、安心してください」と呼び掛けた。

 関係者によると、装甲車が校内に侵入したのは十八日の午後四時五十三分ごろから約四十秒間。正門から突然侵入し、方向転換して引き返した。同時間帯は生徒たちが部活動で校内をランニングしていた最中だった。装甲車を目撃した生徒は「陸軍が入ってきた」と教師らに話していたという。

 同校では二十日午後二時からPTA評議委員会を開き、保護者に対して説明を行うほか、ビデオの確認を行うため午後一時に同校を訪れる那覇防衛施設局の職員にも説明する。

 おいの終業式に参加した女性=那覇市=は「新聞報道を見てびっくりした。まさか学校に米軍が入ってくるなんて」と不安な表情で話した。

 塩浜校長は「ビデオを見ただけでも大きな威圧感がある。養護学校には、大きな音や見慣れないものを見るとパニックを起こす生徒もおり、許せる問題ではない」と怒りをあらわにし、市の基地対策課を通して問題の事実確認を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707201700_01.html

2007年7月20日(金) 夕刊 6面

「軍命」証言掘り起こす/証人尋問前に勉強会

 「集団自決(強制集団死)」をめぐり、岩波書店と作家の大江健三郎さんが名誉毀損で訴えられ、戦隊長命令の有無が争われている「集団自決」訴訟の証人尋問を前に、那覇市古島の教育福祉会館で十九日、勉強会が開かれた。「軍命」の証言を掘り起こすことや裁判に向けて決意を表明した。「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の主催で、約五十人が参加した。

 渡嘉敷島や座間味島で「集団自決」の取材に当たっている沖縄タイムス社の謝花直美編集委員が講演。「体験者は、ご飯を食べていても『集団自決』で亡くなった家族のことを考え涙を流すなど、生活に深く刻まれていることを実感した。軍命を示す証言を今後も掘り起こしていきたい」と語った。

 沖縄平和ネットワークの村上有慶共同代表は「証人調べが最大のヤマ場。沖縄の真実を突きつけたい」と決意表明した。

 二十七日の証人尋問には「母の遺したもの」著者、宮城晴美さんら三人が出廷する。

 沖縄平和ネットワークや高教組など四団体が、大阪地裁での証人尋問の傍聴に参加する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707201700_05.html

2007年7月21日(土) 朝刊 1・29面

うるま議会 抗議検討/装甲車侵入

米軍「方向誤った」

 【うるま】米軍の装甲車が市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長、生徒数百二十四人)に無断で侵入した問題で、那覇防衛施設局職員、うるま市の知念恒男市長と市議会の基地対策特別委員会のメンバーらが二十日午後、次々と同校を訪れ、塩浜校長の説明を受けながら、侵入現場の確認や監視カメラのビデオ映像を確認した。

 基地対策特別委員会は二十三日にも委員会を開き、抗議決議案の文面を検討することにしている。施設局側は「ご心配をおかけしても申し訳ありません。今後こういうことのないよう申し入れたい」と謝罪した。

 一方で米軍は施設局を通じ「海兵隊所属の軽装甲車がキャンプ・シュワブへ向かう途中、一台が方向を誤り、養護学校に侵入した。校内で方向転換して車列に戻った」と回答したものの、どの部隊が、どこからどこに向かっていたのかという問い合わせについては「運用上の理由」という説明で回答を拒否したという。


     ◇     ◇     ◇     

部活中 立ちすくむ生徒/校長説明 再発防止訴え


 【うるま】米軍の装甲車が侵入した県立沖縄高等養護学校は二十日、マスコミや関係者への対応に追われた。同日、終業式が行われた校内では、夏休みを前にした生徒たちの笑顔とは裏腹に、塩浜康男校長や教諭らが深刻な表情で次々と訪問する那覇防衛施設局職員や知念恒男うるま市長、保護者に対する説明の対応に当たった。

 「部活中に装甲車を目の当たりにして、立ちすくんだ生徒もいた」

 施設局側への説明で塩浜校長はこう話し、再発防止を訴えた。同局職員は神妙な顔つきで「申し訳ありません」と謝罪した。

 市議会基地対策特別委員会(東浜光雄委員長)のメンバー四人をはじめ知念市長と島袋俊夫議長も同問題の経緯について塩浜校長から説明を受けた。

 東浜委員長は「ビデオを見る限り、一歩間違えば養護学校の子どもたちの命にかかわる問題だ。勝手に校内に侵入し恐怖を与えた米軍の行為は、人権を無視したものと言わざるを得ない」と厳しく批判した。

 知念市長は「ビデオを見て怒りを感じ、施設局から聞いた米軍の説明も納得がいかない。由々しき問題だ」と強調。「市民や県民に大きな不安を与えた米軍の責任は大きい。運用上の問題という言い回しですべて米軍の都合のいいように片付けられては困る。施設局からもっと詳細な情報を得た上で、具体的な抗議の方法を考えたい」と述べた。

 また終業式後に開かれたPTA評議委員会では、塩浜校長が約二十人の父母に同問題の経緯を説明。保護者からは「子どもたちに何かあったらと考えると怖い」「許せない行為だ」などの不安の声が挙がった。

 永山盛正PTA会長は「びっくりしたとしか言いようがない。子どもたちのことを考えると許せない行為だ」と話した。

 一方、同問題について、防衛施設庁の渡部厚施設部長は同日の定例会見で、日米地位協定第五条二項で定める「基地間の移動」に該当しないとの認識を示した上で、事実関係に照らして地位協定上の問題を整理する考えを示している。

 同問題で沖縄平和運動センターと中部地区労は二十四日午後零時十五分から北中城村石平の在沖米軍司令部ゲート前で緊急抗議集会を開く。また社民党県連(照屋寛徳委員長)、護憲ネットワーク県議団(新川秀清団長)は二十日、県教育庁を訪ね、米軍と日本政府に対し、強く抗議するよう要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707211300_01.html

沖縄タイムス 社説(2007年7月21日朝刊)

[米軍装甲車侵入]

実に傍若無人な行為だ

 米軍は一体どういう感覚をしているのだろうか。

 装甲車というのは、物資や兵士を運ぶトラックなどの車両とは異なり戦闘車両といっていい。そのような米海兵隊の異様な車が、うるま市にある県立沖縄高等養護学校の敷地内に侵入し、方向を転換して出て行った。

 海兵隊は誤って進入したことを認めている。だが、生徒らの恐怖感をあおり、不安を与えたのは確かだ。米兵の傍若無人な行為には怒りを覚える。

 防犯カメラには迷彩色を施した装甲車が正門から入り、しばらくして出て行くのが写っている。言うまでもないが、周辺の風景からそこが学校だということは容易に察しがつく。

 しかも、装甲車がUターンした所は生徒らが日常の活動を行っている場所だ。実際、装甲車が入ってきたとき、生徒五、六人が近くを走っていた。

 そのような場所に乗り入れ、四十秒ほど後進や前進を繰り返したというのだから呆れ果てるしかない。兵士への教育はどうなっているのか、在沖海兵隊指導部の感覚を疑わざるを得ない。

 同校の塩浜康男校長は、「養護学校には、大きな音や見慣れないものを見るとパニックを起こす生徒もおり、許せる問題ではない」と話している。

 仲井真弘多県知事も「常識外というか、普通なら考えられない。あいさつも断りもなく(学校内に)入るなんて、日米地位協定以前の問題。非常識の極み」と述べている。

 当然であり、今回の行為は絶対に許されるものではない。

 海兵隊報道部は「日米地位協定に基づき、通常訓練から戻る途中だった。地域に不安を与えたとすれば残念だ」とコメントしている。

 宜野座村漢那の村加工直売センター「未来ぎのざ」駐車場への乗り入れしかり。米軍は、事あるたびに地位協定を盾に弁明するが、もうそういうことをやめさせようではないか。

 確かに地位協定は、基地や訓練施設間の移動の際の公道使用を認めている。だが、それは今回のように学校施設内にも及ぶのだろうか。

 もし、そうであればそれこそおかしいのであり、地位協定を抜本的に改正していく必要がある。

 外務省は「学校に無断で進入することは不安を与える行為であり、今後同じことが起きないよう米大使館に申し入れたい」と言うが、悠長に過ぎる。

 私たちが求めるのは外務省による怒りの抗議であり、県民の憤りを県民の側に立って訴えることだ。申し入れるだけではなく、このようなことは二度としないと約束させることが大事だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070721.html#no_1

琉球新報 社説

米軍装甲車侵入 許されない傍若無人さ/占領意識の払しょくが必要だ

 またも米軍の事件である。18日、事もあろうにうるま市の沖縄高等養護学校内に米軍装甲車が無断で侵入し、公然とUターン。かと思えば、宜野座村の特産品加工直売施設の駐車場に相次いで計7台の装甲車が乗り入れ、買い物客を騒然とさせる。まさに傍若無人の振る舞いである。

 装甲車が無断侵入し、Uターンした養護学校内では、陸上部の生徒たちがランニング中だった。同校の防犯カメラに映った映像を見ると、その危険性は明らかだ。

 突然の装甲車の学校侵入に「陸軍が入ってきた」と職員に訴えてきた生徒もいたという。

 養護学校の中には、人一倍繊細で敏感な生徒たちも少なくない。恐怖はいかばかりか。

行為は「非常識の極み」

 ヘルメットをかぶった兵士が装甲車のハッチから頭を出し、通りをうかがう様子も確認されている。

 米中枢同時テロ(9・11)以後、米国はアフガン進攻、イラク攻撃といまなお「戦時」にある。だからというのであろうか。

 有事でもなかろうに、学校内や民間地に装甲車が大挙押し寄せる。沖縄戦が終わってすでに62年。日米講和条約が発効し55年。米軍統治下から沖縄が本土に復帰して35年にもなる。まさか米軍は、沖縄をいまだ米軍統治下の占領地とみてはいないか。

 事態に、仲井真弘多知事は20日午前の定例会見で「いくら軍隊とはいえ、学校に断りもなく(乗り入れ)、Uターンするとは常識以前の問題だ」「非常識の極み」とまで怒りをぶつけている。

 米軍側の釈明はこうだ。特産品駐車場への乗り入れは「安全整備のために一時停車」。学校侵入は「一台が方向を誤り、国道224号沿いの学校の駐車場へ侵入したが、即刻方向転換し、車列に戻った」。とても納得などできない。

 安全整備の場所が足りず、民間駐車場を使う。沖縄本島の20%を占める米軍基地である。整備の場所はいくらでもあるはずだ。

 緊急な整備が必要な事態が起きたとすれば、なお問題だ。何しろ、3年前には整備不良で米軍ヘリを大学構内に墜落炎上させた“前科”もある。タガが緩んでいないか。

 米軍はそこが学校であることを認識しながら侵入している。本紙への回答文で米軍は「海兵隊は地域の方々そして隊員の安全を最優先事項としている」と強調しているが、学校への無断侵入は生徒の安全を無視した行為だ。

 しかも今回の一連の事件に、米軍は装甲車が「道路の通行を許可されている」としているあたりは、問題としての認識が欠如しているとも受け取れる。

 納得がいかないのは外務省の対応だ。学校内への無断侵入も含め「法的に立ち入ってはいけないとはならない」と、米軍の行為を容認している。

犠牲強いる“欠陥協定”

 日米地位協定に詳しい本間浩法政大教授は「米軍が無断で民間施設を使うことは全く許されていない」と、米軍の協定違反を指摘している。

 専門家の指摘を、外務省が否定する。「本土で起これば国会で厳しく指摘される問題」(本間教授)が、沖縄なら許されると米軍も外務省も甘くみてはいないか。

 3年前、本紙は日米地位協定改定キャンペーンを展開した。国民・県民に犠牲を強いる不平等協定の重大な問題点を、外務省の機密文書で明らかにした。

 航空法で禁じる米軍の低空飛行を「基地間移動」と拡大解釈で容認し、裁判権放棄で米軍優位の裁判を支援し、国内法違反の米軍戦車移送を法改定で合法化するなど対米追従の政府・外務省の姿勢と米軍優先の実態が、機密文書で次々に明らかになった。

 格安の自動車税、高速道路のタダ乗り、使い放題の光熱水費と、日米地位協定を超える「思いやり予算」の問題もある。

 「法律順守の意識を持っていない人たちが指揮官」(本間教授)という米軍にいかに再発防止を求めるか難題だが、学校への無断侵入すら「合法」とする外務省の対応は、あまりに悲しすぎる。

 地位協定違反の有無を問う前に、暴挙を抑止できない米軍優先の地位協定自体が問題の本質である。再発防止のためにも“欠陥協定”を国民本位に改定し、傍若無人の米軍のふらちな行動に、きちんと歯止めをかけたい。

(7/21 10:03)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25629-storytopic-11.html

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