沖縄タイムス 関連記事(7月22日、23日、24日)

2007年7月22日(日) 朝刊 23面

実相一途/北島さん「集団自決」芝居100回超

 「庶民は、体で感じた痛みを絶対に忘れない。うそをついているのは偉い人だよ」。女優の北島角子さんが二十一日、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」を題材にした一人芝居「赤いぶくぶくー」を演じた。体験者から直接聞いた話を基に書き上げ、重ねた上演は百回以上を数える。(阿部岳)

 軍による強制の事実をゆがめる動きが強まる中、戦争を体験した同世代へ「子や孫のために真実を語り残そう」とのメッセージを込めた。

 舞台は座間味島。「赤いぶくぶくー」は、主人公の父が母の首をかみそりでかき切った時の血の泡を指す。米兵の上陸でパニックになった家族が殺すよう懇願し、父が次々に手を掛けた。生き残った主人公が、娘に初めて体験を語り聞かせる。

 「一生誰にも話したくないと思っていたけど、あの時亡くなった人たちの生きた証しがないのは、あんまりかわいそう。話すのは生き残った者の責務かもねえ」

 北島さんは復帰前後、本土の記者が「集団自決」を取材しようとしたが応じてくれないと嘆く記事を読んだ。「語りたくても語れないつらさが分からないのか」。この時の怒りをきっかけに書いた作品を通じて、悲惨な実相を伝え続ける。

 浦添市で開かれた「憲法を考えるつどい」(主催・コープおきなわ有志九条の会)での上演。北島さんがウチナーグチで語り、体全体を使って再現する惨劇に、約二百人の会場から悲鳴が上がった。ハンカチで顔を覆ったまま泣き続ける女性、「聞いちゃおれない」とつぶやき、席を立つお年寄りもいた。

 上演後の楽屋。北島さんは教科書検定による軍関与の記述削除などの動きに、「なかったことを、あったという住民がいるか。名誉を守りたい偉い人が本当のことを隠している」と、率直な怒りを語った。「私は車いすになってもしゃべり続ける。それぞれの家の中から平和を考えてほしい」と願いを込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707221300_03.html

 

2007年7月22日(日) 朝刊 23面

反対派・業者もみ合い/辺野古調査

 【名護】米軍普天間飛行場移設予定地の名護市キャンプ・シュワブ沿岸海域で二十一日、那覇防衛施設局の環境調査を委託されている業者の作業員ダイバーと、移設に反対する平和市民連絡会の平良夏芽共同代表が海中でもみ合いになるトラブルがあった。

 平良代表は「海中でタンクのバルブを閉められた」と主張。「命にかかわる一線を越えた行動で、弁護士と相談し、刑事告訴も検討している」と話している。二十三日にも那覇防衛施設局を訪れ、現場の状況を撮影したビデオを見せ、抗議するという。

 平良代表によると、二十一日正午すぎ、辺野古漁港沖約一キロの海底三、四メートルで、委託業者の作業ダイバー三人が、調査器の土台を海底に固定しようとした。

 平良代表が作業を阻止しようと、土台にしがみつくとダイバーが羽交い締めにしたという。急に息ができなくなり、浮上したところ、バルブは完全に閉まっていたという。

 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「国家の暴力が、市民活動に及んできた。憤りを感じる」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707221300_04.html

 

2007年7月23日(月) 朝刊 2面

防衛相と知事V字修正で溝

 参院選応援などのため、就任後初めて沖縄入りした小池百合子防衛相は二十二日午後、那覇市の知事公舎で仲井真弘多知事と会談し、米軍普天間飛行場の移設問題などをテーマに意見交換した。

 仲井真知事が公約である普天間飛行場の「三年以内の閉鎖状態」実現と、名護市などが求めているV字形滑走路案の沖合移動を要望したのに対し、小池防衛相は現行V字案への理解を求めるなど、双方の考え方を伝えるのみにとどまった。

 また、政府、県、地元などでつくる移設協議会については早期開催で一致したが、双方の考え方に隔たりも大きく、具体的な時期までは確認できなかった。

 会談後、小池防衛相は記者団に対し「知事とはとてもいい意見交換ができた。V字案の修正についてはそれぞれ考え方があり、これからしっかりと調整していきたい。(次回協議会も)できるだけ早い方がいい」と語った。

 一方、仲井真知事は「(小池大臣からは)いろんな形で調整を進めながらやっていこうということだった」とした上で、次回協議会開催については「(普天間飛行場の三年以内閉鎖など)私の要求を全面的に分かったという方向でまとまれば、今日でも明日でもいいと思う」と述べ、地元要望の実現が開催の前提との認識をあらためて示した。会談は約一時間、非公開で行われた。県側からは仲里全輝、安里カツ子の両副知事、上原昭知事公室長が同席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707231300_07.html

 

2007年7月23日(月) 朝刊 25面

沖縄返還密約訴訟 控訴審きょう開廷

 沖縄返還の「密約」をめぐる取材で外務省の秘密公電を入手し、国家公務員法違反(秘密漏洩教唆)で訴追された元毎日新聞記者の西山太吉さん(75)が、違法な起訴によって確定した有罪判決で精神的な苦痛を受けているとして、国に密約を認めて謝罪するよう求めている訴訟の控訴審・第一回口頭弁論が二十三日、東京高裁で開かれる。

 西山さん側は、損害賠償の請求権が消滅する除斥期間(二十年)を適用し、密約の事実には触れなかった一審・東京地裁判決には判断の手法に手抜かりがあるとして、密約の事実を踏まえて判決を導くようあらためて求める。

 また昨年二月に密約を認めた元外務省アメリカ局長の吉野文六氏(88)や、密約をめぐる二〇〇〇年の報道で吉野氏に密約を否定するよう要請したしたとされる元外相の河野洋平衆院議長(70)に、裁判所を通して書面で質問に答える「書面尋問」の採用を申し出る。

 一方で国側は、控訴の棄却を求め、全面的に争う方針を示す見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707231300_08.html

 

2007年7月23日(月) 夕刊 5面

西山さん「密約判断逃避するな」/沖縄返還訴訟

 【東京で粟国雄一郎】沖縄返還密約訴訟の控訴審の第一回口頭弁論が二十三日、東京高裁(大坪丘裁判長)であった。原告の西山太吉さん(75)側は、密約の事実に触れなかった今年三月の一審・東京地裁判決について「実質門前払いの判決を導くために、意図的に密約の有無を争点に盛り込まなかった」と批判。密約の事実を出発点にしていない判断には明らかに手抜かりがあり、控訴審が密約の事実と証拠から逃避しないよう訴えた。国側は控訴の棄却を求めた。

 また西山さん側は、密約を認めている元外務省高官の吉野文六氏(88)と、吉野氏に密約の否定を要請したとされる河野洋平元外相(70)に、裁判所を通して書面で尋問に答える「書面尋問」の採用を申請。国側は次回の弁論で反対意見を出す方針を示した。

 控訴理由書で西山さん側は、当時手に入れた外務省の秘密公電は佐藤栄作政権の「権力犯罪」を裏付ける証拠で、国家公務員法の保護には値しないと主張。検察官は密約という政府の違法行為や政府高官の刑事裁判での偽証を知りながら、西山さんの取材行為を一方的に訴追して裁判所の判断を誤らせたと訴えた。また米国の公開公文書などで密約が証明されるたびに、記者会見などで公然と密約を否定し続けている政府高官の発言は、密約事件と表裏一体にある西山さんの名誉を傷つけていると主張している。

 国側は西山さんの有罪判決について、処罰されたのは外務省の女性事務官に秘密の漏えいをそそのかした行為だったとして、密約の立証に反論しないまま「仮に密約の存在が事実だとしても、判決を何ら左右せず主張は失当」と主張。政府高官が密約を否定しているのは行政活動に関する一般的な行為で、西山さん個人に向けられたものではないとしている。

 一審判決の除斥期間(二十年)の適用について、西山さん側は「正義と公平の理念に反し、適用は制限されるべきだ」と訴え、国側は「(適用を制限する)特段の事情がないことは明らか」としている。


[ことば]


 沖縄返還密約訴訟 沖縄返還交渉の取材で政府の「密約」を記した外務省の秘密公電を手に入れ、国家公務員法違反(秘密漏洩教唆)で有罪となった元毎日新聞記者の西山太吉さん(75)が起こした国家賠償訴訟。密約を不問に付した検察官の一方的な訴追や、密約を否定し続ける政府高官の発言などに対する慰謝料として、国に謝罪と3300万円の支払いを請求。一審・東京地裁判決は、損害賠償の請求権が消滅する除斥期間(20年)を適用し、密約の実態には言及しないまま請求を棄却した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707231700_02.html

 

2007年7月23日(月) 夕刊 5面

県教育長「言語道断」/装甲車侵入

 米海兵隊の装甲車がうるま市の県立沖縄高等養護学校に無断で侵入した問題で、県教育庁の仲村守和教育長、県の保坂好泰基地防災統括監らは二十三日午前、那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所を訪れ、再発防止を求めて抗議した。

 二十二日に同校を訪れ現場を視察した仲村教育長は、抗議先二カ所で「生徒の安全が脅かされたことは言語道断であり、米軍の非常識極まりない暴挙に心の底から憤りをもって抗議する」と米軍を批判。「なぜ学校に入ってUターンする必要があるのか。軽い気持ちで学校に入ってくるその行為自体が許せない」と強い口調で話した。その上で「県民の立場に立って二度とこのようなことが起こらないよう申し入れてほしい」と要請した。

 保坂統括監も「この週末だけでも器物損壊など米軍関連の事件や事故が多く発生した。隊員の教育徹底を米軍に強く申し入れてほしい」と要望した。同施設局では小柳真樹事業部長が対応。「米軍に再発防止を申し入れたところだ。今後も機会あるごとに米軍に働き掛けていきたい」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

うるま議会26日抗議決議


 【うるま】米軍の装甲車両が同市の県立沖縄高等養護学校内に侵入した事件で、うるま市議会基地対策特別委員会(東浜光雄委員長)は二十三日午前に委員会を開き、二十六日に臨時議会を開催、事件に強く抗議し、詳細について説明を求める抗議決議と意見書を提案することを決めた。可決する見込み。

 抗議決議は駐日米大使、在日米軍司令官、在沖米総領事、意見書は衆参両院議長、首相、外相、防衛相あて送付する。

 東浜委員長は「安全であるべき学校現場に米軍車両が侵入することは常識では考えられない。施設間の移動でも事前の許可が必要であり、日米地位協定に違反することは明確だ」と提案理由を話した。

 また、うるま市も同事件について抗議行動を予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707231700_04.html

 

2007年7月24日(火) 朝刊 2面

V字形沖合移動あらためて否定/守屋防衛次官が見解

 【東京】防衛省の守屋武昌事務次官は二十三日の定例会見で、米軍普天間飛行場の移設をめぐって県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について、「現在の政府案を変えることはまったくない」と述べ、あらためて否定的な見解を示した。

 V字形滑走路をめぐって、政府案を主張する小池百合子防衛相と、沖合移動を求める仲井真弘多知事が意見を交換した二十二日の会談については「この問題の抱える、いろいろな側面について率直に意見交換ができたのではないか。(小池防衛相からも)大変よい意見交換ができたと伺っている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707241300_04.html

 

2007年7月24日(火) 朝刊 30面

植え付け学び守ろうサンゴ 渡嘉敷村沖で講習

 サンゴを植え付ける知識や技術を学ぶ講習会(主催・NPO法人コーラル沖縄)が二十三日、県内のダイビングショップで働くインストラクターを対象に行われた。十月に美ら海振興会が主催する四百群体のサンゴを植え付けるイベントを前に、インストラクターの技能を高めようという目的。十二人が参加した。

 那覇市内で映像や写真を使いサンゴの生態系や植え付けの工程について勉強した後、チービシの神山島沖、水深約十メートルの岩にサンゴの主成分と同じ成分の特殊ボンドでミドリイシ類の苗、五十群体を植え付けた。

 同法人の成田隆一事務局長は「インストラクターの理解が進めば、各ショップで植え付けの動きが広がっていく。サンゴの広がる海を復活させることにつながる」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707241300_07.html

 

2007年7月24日(火) 夕刊 1面

装甲車侵入「米軍横暴許すな」/平和センターなど 60人抗議集会

 【北中城】うるま市の県立沖縄高等養護学校に米軍の装甲車が侵入した問題で、沖縄平和運動センターと中部地区労は二十四日午後、北中城村石平のキャンプ瑞慶覧ゲート前で緊急抗議集会を開いた。約六十人が参加、「相次ぐ米軍の横暴は許さない」などと基地に向かってシュプレヒコールを繰り返した。

 同センターの崎山嗣幸議長は「米軍が住民生活の中に簡単に入ってくる。植民地とでも思っているのか。横暴な振る舞いに県民は怒っており、強い怒りをもって抗議する」と訴えた。

 北中城村の新垣邦男村長も「装甲車の侵入は常識では考えられない。傍若無人な行為で、許してはならない」と語気を強めた。同問題で、県の仲村守和教育長は同日午後、在沖米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、抗議と再発防止を申し入れる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707241700_03.html

 

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