沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月26日、27日)

2007年7月26日(木) 朝刊 27面

超党派大会へ協力要請/「集団自決」修正

 高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍関与の記述が削除された問題で、記述回復を求める超党派の県民大会開催を目指す県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)など七団体の準備実行委員会は二十五日、県議会の仲里利信議長を訪ね、大会の参加に協力を求めた。

 仲里議長は「皆さんの意に沿う方向で大会の開催がまとまることを願う。参院選後に各会派の代表者に報告する」と述べ、県議会内で議論する考えを示した。

 要請したのは沖子連、県PTA連合会(諸見里宏美会長)と新たに参加を表明した県老人クラブ連合会(花城清善会長)、県遺族連合会(仲宗根義尚会長)、沖縄戦を体験した元女子学徒の九団体で構成する「青春を語る会」(中山きく代表)の代表者。

 沖子連の玉寄会長は「県民大会を開催し、沖縄県民が一つとなるきっかけをつくってほしい。議長が先頭に立ってほしい」と協力を求めた。

 仲里議長は「皆さんの意見は胸に迫るものがある。政府は不退転の決意で記述削除をしており、簡単に解決する問題ではないが、県民がまとまれば記述変更もできる。(大会の開催は)県の意向も大きい。参院選後に各派の代表に報告する」と述べた。

 要請で玉寄会長は、県民大会の開催時期、場所について沖縄戦終結日に当たる九月七日に近い週末の八、九日のいずれかの日に糸満市摩文仁の平和祈念公園で開くことを検討する考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707261300_03.html

 

2007年7月26日(木) 朝刊 27面

「黒い壁」墜落地展示へ/沖国大ヘリ事故

 沖縄国際大学(渡久地朝明学長)は二十五日、二〇〇四年八月の米軍ヘリ墜落事故で被災した旧本館の壁面の一部をモニュメントとして墜落場所に展示すると発表した。設置時期などの詳細については、今後の理事会で決定する。

 ローターの衝突などで損傷した壁面の最上部(縦三・八メートル、横六・五メートル)を墜落場所のアカギを囲む小公園地内に展示。文章と事故当時の写真を掲げた碑も併設する。

 同大米軍ヘリコプター墜落事件対策委員会(委員長・渡久地学長)が十九日に決定し、二十五日の理事会に報告した。同委員会はヘリ墜落から三年となる八月十三日で解散する。事故後、学内で壁面の保存運動が起こったが、大学は解体を決定。本館は昨年建て替えられ、焼け焦げた旧本館の壁面は大学構内に一時的に保管されていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707261300_04.html

 

琉球新報 社説

枯れ葉剤調査 政府の拒否姿勢は住民軽視

 うやむやにして幕を引きたい。米軍北部訓練場での枯れ葉剤散布問題に対する政府の対応を見ていると、そのようにしか見えない。那覇防衛施設局は、平和運動センターなど3団体の実態調査要請に対して24日、これを拒否した。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは発がん性のある猛毒だからこそ、県民は不安を持ち、調査を求めているのだ。政府の拒否姿勢は、住民軽視と言われても仕方ない。

 政府に調査を求める理由はいくつかある。

 まず、前立腺がんの後遺症を認定された元米兵が枯れ葉剤散布を証言した米退役軍人省の公式文書と、米政府回答の矛盾である。米側は事実関係を照会した防衛施設庁と外務省に対して「(枯れ葉剤が)使用、貯蔵されていたということを示す資料、証言や記録はない」と回答した。米退役軍人省の公式文書と明らかに矛盾する。

 なぜ政府は米側にその点を追及しないのか。元米兵の関係者に対して、確認を求めることを検討してもよいのではないか。このような矛盾を見せつけられては、県民は不安だけでなく、日米両政府に対して不信感を抱く。

 もう一点は、国指定天然記念物のリュウキュウヤマガメや県指定天然記念物のナミエガエルなど一部のは虫類や両生類に、ただれなど異変が観察されていることである。枯れ葉剤散布との関係は断定できないが、ベトナムでの枯れ葉剤の住民への深刻な影響を考えれば、疑いを持たざるを得ない。

 政府が調査を拒否する理由の1つとして挙げているのは県が実施した水質検査のデータである。2004年、05年度に北部訓練場周辺の新川川を調べた結果、環境基準値を超えるダイオキシン類は検出されなかった。しかしこれで不安が一掃されたわけではない。防衛施設庁環境対策室によると、基地内土壌や水質については調査されていないからである。

 動物の異変について、環境学の専門家は、影響がある場所とそうでない場所とを比較するため汚染の実態を調べることが重要だと強調している。指摘の通りである。

 環境省は来年度から約10万人の子供を対象に、ダイオキシンなど環境中の有害物質が発育に及ぼす影響について疫学調査に乗り出す。

 これほど有害物質対策を重要視しているのに、なぜ枯れ葉剤散布問題の実態調査を拒否するのか。深刻な影響が疑われる事例が目の前にある。まず、そこに手を付けることが先決であろう。

 北部訓練場の土壌にダイオキシンが残留しているのではないか。米軍は今も、枯れ葉剤を保管しているのではないか、動物の異変は関係ないのか。政府は徹底的に調査し、明らかにするべきだ。

(7/26 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25760-storytopic-11.html

 

2007年7月26日(木) 夕刊 1面

うるま議会、抗議決議/装甲車侵入

 【うるま】うるま市田場の県立沖縄高等養護学校敷地内に米海兵隊の装甲車両が侵入した事件で、うるま市議会(島袋俊夫議長)は二十六日午前、臨時会を開き、同校への米軍装甲車無断侵入に対する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 決議では「安全であるべき学校敷地内に装甲車で無断侵入するという米軍の行動は、常識では考えられない非常識の極みであり人権無視。一歩間違えば養護学校の生徒たちの命にかかわる重大な問題であり、米兵の傍若無人な行為に強い憤りを感じる」と今回の米軍の行為を強く批判した。

 また、米軍側が車両の所属や事件の経緯を「運用上の理由」として明らかにしていないことについては、「学校施設への無断侵入が日米地位協定違反であることは明白。米軍の無謀な行動が生徒の恐怖感をあおり、不安を与えたことは県民に対する人命無視の表れであり、県民感情を無視した行動は断じて容認できない」として、事件に厳重に抗議するとともに、詳細の解明と再発防止の徹底を強く求めている。

 抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事、在沖米海兵隊基地司令官に、意見書は衆参両院議長、首相、外相、防衛相、沖縄および北方担当大臣、防衛施設庁長官、外務省沖縄担当大使、那覇防衛施設局長あて。

 島袋俊夫議長と東浜光雄基地対策特別委員長ら市議団、石川邦吉うるま市副市長らは同日午後、在沖米海兵隊司令部や外務省沖縄事務所、那覇防衛施設局、在沖米国総領事館を訪れ抗議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707261700_01.html

 

2007年7月26日(木) 夕刊 5面

ホワイトビーチ 海軍桟橋で油漏れ

管亀裂 海に一部流出

 二十六日午前八時二十分すぎ、「米軍ホワイトビーチ海軍桟橋付近から油が流出している」との連絡が米軍から中城海上保安署にあった。同署によると、流出したのはディーゼル油で、範囲は桟橋突端から陸上側に長さ約二百メートル、幅五―十メートル。送油管の一部に亀裂があり、ここから漏れた可能性があるという。

 うるま市役所に入った連絡によると、午前十時十五分までに流出は止まり、回収作業も終了した。米軍と自衛隊がオイルフェンスや油吸着マットなどで陸上と海上から防除作業に当たった。

 在沖米海軍から那覇防衛施設局に入った連絡によると、事故は午前七時半に発生し、流出量は約三十八リットル。このうちの一部が海面に流れたとみられる。

 油の濃度は「色彩E」といわれるレベルで低く、海面が銀白色に光る程度という。同保安署は巡視艇やヘリを派遣して事故状況を調査した。

 うるま市には、二十六日午前九時すぎ、那覇防衛施設局から連絡があった。同市基地対策課の職員二人が現場に行ったが、職員は「油漏れがあったのかは確認できなかった」と話した。同市では、詳細がはっきりした段階で今後の対応を検討していく。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707261700_05.html

 

2007年7月27日(金) 朝刊 1面

きょう証人尋問/「集団自決」訴訟

 沖縄戦時に慶良間列島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令を出したと著作に記されて名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の座間味島の戦隊長と渡嘉敷島の戦隊長の遺族が、作家の大江健三郎さんと岩波書店に出版の差し止めと慰謝料などを求めている訴訟は、二十七日に大阪地裁で証人尋問が行われる。

 原告の戦隊長側からは、渡嘉敷島に駐屯していた海上挺進第三戦隊の中隊長だった皆本義博氏(85)と、県出身の小隊長だった知念朝睦氏(84)が出廷。被告の大江・岩波側からは、座間味島の「集団自決」について記した「母の遺したもの」の著者の宮城晴美氏(57)が証言に立つ。

 皆本氏は、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏をよく知る人物とされ、知念氏は戦隊長の副官として常に行動を共にしていたとされる。

 原告側は、故赤松氏に対する遺族の敬愛追慕の情の侵害を主張しており、皆本、知念の両氏とも、住民の「集団自決」には赤松氏による命令が現場で無かったことを証言するとみられる。

 宮城氏の「母の遺したもの」は、母の初枝さんから託された座間味島の「集団自決」をめぐる手記を宮城さんがまとめ直した作品。

 戦隊長だった原告の梅澤裕氏(90)が住民に「集団自決」を命じたかどうかをめぐり、原告側は命令が無かったとの主張の大きな根拠にしているが、宮城氏は被告側の証人として全面的に反論する見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707271300_02.html

 

2007年7月27日(金) 朝刊 29面

装甲車侵入「明らかに不適切」/うるま議会に米側

 県立高等養護学校敷地内に米海兵隊の装甲車両が侵入した問題で、二十六日午前に抗議決議などを可決した地元うるま市議会(島袋俊夫議長)の代表と石川邦吉副市長が同日午後、在沖米海兵隊司令部や外務省沖縄事務所、那覇防衛施設局、在沖米国総領事館を訪れ、抗議決議や意見書を手渡した。

 北中城村のキャンプ瑞慶覧では在沖米海兵隊外交政策部長のラリー・ホルコム大佐が対応。島袋議長によると「教育施設への車両の乗り入れは明らかにいけないことであり、今後も指導や教育に努めていく」と回答したという。

 那覇防衛施設局では、島袋議長が「基地そのものの在り方を疑問視しなければいけなくなる。末端の一兵に至るまで安全意識を持ってもらいたい。運用上の理由というだけで、経緯が公表されないのもどうか」と抗議した。議員からは「昼間に戦闘車両が走っていることに驚いた。こんなことでいいのか」「米兵の教育プログラムを強化する必要があるのではないか」などと意見が出た。

 対応した小柳真樹事業部長は「海兵隊の軽装甲車数台が、演習を終えてホワイトビーチからキャンプ・シュワブに戻る途中一台が交差点を一つ間違えて右折。車列に戻るために方向転換したようだ」と米海兵隊報道部からの報告を説明。さらに「地位協定には学校施設に入れるという規定はない。米軍は、再発防止に努めるとしている」などと答えた。

 また、石川副市長は、二十六日午前にホワイトビーチで起こった油漏れ事故に対しても抗議した。

 一行は、那覇市の外務省沖縄事務所、浦添市の在沖米国総領事館でも同様に抗議を行った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707271300_03.html

 

2007年7月27日(金) 朝刊 2面

キャンプ・シュワブ陸域現況調査6月から着手

 那覇防衛施設局の佐藤勉局長は二十六日の定例記者懇談会で、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への米軍普天間飛行場代替施設建設に伴い、動植物や鳥類の生息状況など予定地周辺の陸域での現況調査(事前調査)を六月から開始していることを明らかにした。施設局は海域での調査同様、一年間のデータ収集を経て、環境影響評価法に基づく調査に反映させる方針。

 佐藤局長は現況調査について「陸域と海域両方で実施している」と説明。「調査期間は四季のデータを収集するということで約一年間行う予定。調査結果の取り扱いについては適切に対処したい」と述べ、アセス手続きに移行した際、調査結果を取り込む方針を示唆した。

 また、同移設に伴う海域での現況調査に反対している市民団体が「海中で作業員に空気ボンベのバルブを閉められた」と訴えていることについて、佐藤局長は「作業員からの聞き取りによれば、ボンベを閉めたというようなことはないとの報告を受けている」と否定。その上で「正当な業務行為に対する危険かつ不適切な行為についてどういう処置を取れるかは今後、中央とも相談したい」と阻止行動への対応を検討する考えを示した。

 一方、米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に関しては、「N4地区」での希少植物の移植工事が二十日に完了したことを明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707271300_04.html

 

2007年7月27日(金) 朝刊 1面

本紙「集団自決」報道にJCJ賞

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は二十六日、優れたジャーナリズム活動に贈る今年の「JCJ大賞」に、熊本日日新聞「水俣病」取材班の長期連載企画と写真集「水俣病50年」を選んだ、と発表した。JCJ賞には沖縄タイムス「集団自決」問題取材班の長期企画「挑まれる沖縄戦/『集団自決』問題キャンペーン」などが選ばれた。JCJ特別賞は、ドキュメンタリー映画「ひめゆり」の柴田昌平監督と共同製作の財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり同窓会が選ばれた。

 JCJは沖縄タイムスの受賞理由として「沖縄戦での住民『集団自決』は『軍命によるものではなかった』とする策動に対し、取材班を組んで、反撃。策動派は『大江健三郎・岩波書店』を告訴し、文部科学省は教科書検定で介入している。長期キャンペーンは沖縄県の『島ぐるみ』の戦いをリードしている」としている。

 同キャンペーンを中心になって進めてきた謝花直美編集委員は「歴史歪曲を許さないという県民一人一人の声が、報道の原動力となった。これからも、粘り強い報道を続けていく」とコメントした。本紙は、二〇〇五年にも「戦後六十年キャンペーン」で、JCJ賞を受賞している。

 映画「ひめゆり」は、地獄を経験したひめゆり学徒の生存者たちの、語れない、語りたくない記憶を元NHKディレクターの監督が十三年かかって聞き出した証言の映像。JCJは「『集団自決』問題などで、歴史改ざんが行われようとしている現在、意義深い作品」としている。そのほかの受賞作は次の通り。(敬称略)

 【JCJ賞】共同通信社憲法取材班=著書「『改憲』の系譜/9条と日米同盟の現場」▽雨宮処凛=著書「生きさせろ!/難民化する若者たち」

 【黒田清JCJ新人賞】チョン・インキョン(鄭仁敬)=著書「コバウおじさんを知っていますか/新聞マンガにみる韓国現代史」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707271300_10.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月27日朝刊)

[21世紀ビジョン]

策定に向け広く公論を

 県は沖縄振興計画の期限切れに備え、沖縄の将来像や目標などを盛り込んだ「沖縄二十一世紀ビジョン」(仮称)づくりに取り組んでいる。作業はまだ緒についたばかり。

 沖縄振興特別措置法に基づいて政府が策定した沖縄振興計画は、計画期限の二〇一一年度まで、残すところあと五年。計画終了後、どのような制度の下で沖縄振興を進めるか、従来の仕組みを大枠で踏襲するのか、それともまったく新しい制度を導入するのか、今のところ、まったく白紙の状態だ。

 今から取り組まなければならない大きな課題であり、県だけに任せていいものではない。衆知を集め公論を起こし、ビジョンをまとめていく過程自体にこれまでにない工夫が求められる。

 沖縄の振興策は、多府県と異なる独自の手法が取られている。国が法律をつくり、その法律に基づいて国が振興計画を策定するというものだ。

 復帰の際に策定された沖縄振興開発計画以来、十年単位で三次にわたる計画がつくられ、〇二年度から現行計画がスタートした。四次にわたる計画の基本性格は変わっていない。

 計画の原案は県がつくることになっているが、米軍基地の扱いなど県の意向が計画に反映されなかったことも、過去には一度ならずあった。

 高率補助を盛り込んだこの仕組みは、道路、空港、港湾、上下水道、農林水産などの基盤整備を進める上で大きな威力を発揮した。

 だが、この仕組みは歴史的な役割を終えたと思う。

 生活基盤や生産基盤は確かに整備されたが、「民間主導の自立型経済」の構築には結び付かず、むしろ財政依存、国依存の体質を強めている。

 かつて沖縄振興は「県民の苦労と犠牲に報いる国の責務」と位置付けられていたが、今や沖縄振興策は政権与党内部から「基地の見返り」だと公然と言われるようになった。

 自立自助の精神はむしろ後退しつつある、との認識が県内各界に広がっている。マイナスの部分が目立つのだ。

 振計後のビジョンづくりは道州制の導入や大規模な米軍基地の跡地利用とも深くかかわってくる。審議会やシンクタンクを活用する程度の従来のやり方ではとても手に負えないだろう。

 県民の合意形成を図っていくために、従来にない手法を検討してもいいのではないか。ビジョンづくりにできるだけ多くの県民が関心を持ち、参画していけるような取り組みが大切だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070727.html#no_1

 

2007年7月27日(金) 夕刊 1面

軍命有無めぐり主張/「集団自決」訴訟証人尋問

 沖縄戦時に慶良間列島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の戦隊長らが命令は出していないと主張している訴訟の証人尋問が二十七日午前、大阪地裁(深見敏正裁判長)で始まった。原告・戦隊長側の証人として、渡嘉敷島駐屯の海上挺進第三戦隊の中隊長だった皆本義博氏(85)が証言。皆本氏は「赤松(嘉次)隊長とは密接に連絡を取り合っていたが、住民に自決命令を出したという話はまったく聞いていない」などと語った。

 一方で皆本氏は被告側の反対尋問で「(『集団自決』があった)三月二十八日までの三日間の赤松隊長の動向は知らない」とも述べた。

 皆本氏は、手榴弾は赤松隊長の責任のもとに軍が管理しており、防衛隊員には配ったがそれ以外の民間人に配布したことはないと主張。反対尋問で「二十日前後は戦闘訓練に従事していて、誰に配られたのか具体的に知らないのではないか」と問われ、「そうだ。確認していないことには答えられない」「交付の際にどういう命令が出ていたかは知らない」と述べた。

 皆本氏も赤松氏も、住民が「集団自決」したことはまったく知らず、赤松氏は村落の偵察から帰って来た部下からの報告で初めて知ったはずだなどと述べた。

 また住民の「集団自決」について、サイパン島で断がいから身を投げた人の多くが沖縄県出身者だったことが広く知れ渡っており、島民はそれを思い浮かべたのだと思うと述べた。反対尋問で「『集団自決』の軍の責任をどう思うか」と問われると、「気の毒なことだったが、現地の指揮官ではなく、帝国陸軍、海軍が背負ってきた伝統的責任だと考えている」とした。

 また所属する海上挺進戦隊が一九四四年九月に渡嘉敷島に駐屯を始めてから、軍と住民との関係は良好で、今でも島民との交流が続いていることを強調した。

 同日午後からは、赤松戦隊長の副官だった県出身の知念朝睦氏(84)が原告側の証人として、座間味島の「集団自決」をめぐる著作「母の遺したもの」の著者の宮城晴美氏(57)が被告側から証言に立つ。同日は六十九席の傍聴抽選に原告と被告の双方の支援者ら二百十九人が並んだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707271700_01.html

 

2007年7月27日(金) 夕刊 1面

知事、県民大会へ態度保留/検定意見撤回 申し入れ成果楽観視

 仲井真弘多知事は二十七日午前の定例記者会見で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書の検定意見撤回を求める超党派の県民大会が九月開催で計画されていることについて、「(削除撤回をさせる上で)県民挙げての大会というのが最もふさわしいのかどうか、ちょっと勉強させてほしい。少し早めに結論を出したい」と述べ、現時点では自身の参加も含めて態度を保留した。

 仲井真知事は、教科書検定意見書の撤回をめぐる現状について、「各地の市町村議会が決議をし、県議会も二回にわたって決議をした。文部科学省にも抗議し、申し入れをしたことで、かなりの目的(削除撤回)は達成しつつあるのではないかという感じを持っている」と述べ、楽観的な見方を示した。

 県民大会について仲井真知事は、二十日の記者会見でも県民大会に賛意を示しつつ、各団体の動向を見極めた上で判断する考えを示していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707271700_02.html

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