沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(8月2日、3日)

2007年8月2日(木) 朝刊 2面

知事、きょう防衛相と会談/アセスで意見交換か

 【東京】二〇〇八年度国庫支出金要請で上京している仲井真弘多知事は二日午後、防衛省で小池百合子防衛相と会談する。会談は「表敬」の名目で十五分間の予定。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う環境影響評価(アセスメント)について意見交換するとみられる。

 防衛省は、アセスを早期に受け入れるよう県に求めているが、県はV字形滑走路の沖合移動や、同飛行場の「三年内閉鎖状態」の実現を主張し、現段階でのアセスに難色を示している。

 このため防衛省は「協議が円滑に進んでいない」と判断。北部振興事業執行の条件が崩れているとして、同事業を凍結する考えを示している。

 会談では北部振興事業の取り扱いや、普天間移設に関する協議会の次回会合の開催についても話し合われる可能性がある。

 仲井真知事は小池防衛相に先立ち、高市早苗沖縄北方担当相らを訪ね、普天間飛行場の移設先の名護市など十二市町村の北部振興事業を継続するよう要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708021300_05.html

 

琉球新報 社説

ヘリ墜落不起訴へ 第1次裁判権は日本に

 県警は2004年8月に起きた米軍ヘリ沖国大墜落事故の原因をつくり出した普天間基地に当時所属していた整備兵4人を氏名不詳のまま、航空危険行為処罰法違反(過失犯)の容疑で書類送検した。

 米側が既に第1次裁判権を行使しているため、不起訴となる見通しである。

 米軍はこの間、県警の現場検証、事故機の検証、ヘリ乗員らへの事情聴取などを拒み続けてきた。大事故を起こした当事者にもかかわらずである。

 事故の反省、県民に対する謝罪の気持ちは米軍に果たしてあるのかとの疑念さえわく。

 県警は、県民に被害を及ぼした事故として立件、送致する方針で捜査に当たった。しかし、立件に必要な捜査を米軍がことごとく拒否したことから、今回の幕切れは予想された。

 墜落事故は民間地域で発生し、学生や周辺地域住民らに多大な被害と恐怖を与えるなど、県民は重大な危険にさらされた。書類送検で終わるような事故ではない。

 事故の再発防止には原因の解明と併せて責任の追及が不可欠である。氏名も明かされず、責任の所在はうやむやのままでは、事故再発への不安を払拭(ふっしょく)できるはずがない。

 米側の事故報告書は「整備兵がヘリコプター尾部の接続器具コッター・ピンの装着を忘れて飛行させたのが事故原因」と結論付けている。

 県警の捜査結果と照らし合わせることができない以上、米側の一方的な事故報告書をうのみにすることはできない。

 県内では復帰後、民間地域への米軍機墜落事故は沖国大での事故を含めて4件発生したが、いずれも立件できていない。

 戦後62年、復帰後35年を経ても、沖縄では米軍優先がまかり通っていることをあらためて見せつけられた。

 今回も日米地位協定が捜査の大きな壁になった。米軍航空機事故の現場検証や機体検証は、同協定などで「米側の同意」が前提となっている。

 県警が現場検証したのは、米軍が事故ヘリを持ち去った6日後であり、十分な検証が実施できるはずもなかった。

 ただ、福岡県の九州大学への米戦闘機墜落事故(1968年)など、他県であった米軍航空機事故3件で米軍は警察などの現場検証を認めている。この違いはなぜか、問われ続けねばならない。

 米軍の判断で対応が決まることは今後も予想される。改善が必要だ。

 少なくとも民間地域で起きた米軍の事故は公務中かどうかにかかわらず、日本側が第1次裁判権を持つべきである。

(8/2 10:35)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25971-storytopic-11.html

 

2007年8月2日(木) 夕刊 5面 

ヘリ墜落 後輩へ語り継ぐ/12日 沖国大でコンサート

 沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落してから三年。事故の恐怖を語り継ぎ、あらためて飛行禁止を訴えようと同大の学生たちが十二日午後五時から、沖国大の本館前広場で「NO FLY ZONE」コンサートを開く。事故当時の混乱を知る唯一の学年となった四年生が、記憶の「風化」が進む現状に危機感を募らせて企画。事故を知らない下級生も賛同し、実行委員会に加わった。学生たちは「あの日を忘れないための恒例のイベントにしたい」と張り切っている。(田嶋正雄)

 コンサートにはカクマクシャカ、すばっぷ、知花竜海など、企画の趣旨に賛同する県内若手ミュージシャン六組が出演。会場では、同大美術部や文芸部の作品、普天間第二小学校の児童が描いた絵画などが展示される。焼け焦げた旧本館壁面の写真をあしらった縦四メートル、横三メートルのメッセージ板も登場し、参加者の書き込みを募る。

 発案したのは、事故当時の様子を知る最後の学年となった四年生の有志。墜落現場を知らない学生が多数派となり、事故の記憶が薄れていく学内の雰囲気に危機感を覚え、学生主体の企画を立ち上げた。

 実行委員長で四年の高橋正太郎さん(21)は「みんなが飛行禁止を叫んだのに、ヘリの爆音も上空を飛んでいく恐怖も何も変わっていない。このままでは、みんな忘れ去ってしまうと思った」と説明。「事故を体験した学年として、学生が考える場をつくり、思いを引き継いでいく責任を感じた」と力を込める。

 高一の時、事故をテレビニュースで見たという一年の上原三奈さん(18)は「遠い出来事という気がして、最近まで墜落場所も知らなかった。事故があったことさえ分からなかった本土出身の友達もいる」と話す。入学後、大学近くのアパートで暮らすようになり、「怖さを実感した」という。

 会場では「十年後の沖国生へ」と題し、未来の学生に向けた参加者のメッセージをビデオに収録するコーナーも設置する。翌十三日には、墜落地点に残るアカギの前で、宣言文を読み上げるセレモニーを行う予定だ。高橋さんは「学生からの新たなメッセージを発信する」と意気込む。「いつか基地が撤去され、ただ楽しむだけのイベントになる日まで、受け継いでいってほしい」

米軍ヘリ墜落事故を後輩たちに語り継ごうと、コンサートを開く実行委員の学生ら=宜野湾市・沖縄国際大学

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708021700_01.html

 

2007年8月3日(金) 朝刊 1面

防衛相「沖合」に難色 普天間移設で会談

知事、協議会開催に慎重

 【東京】仲井真弘多知事は二日、小池百合子防衛相と防衛省で会談した。小池氏は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設について、「沖縄の海を守ることに力点を置いている」と述べ、環境への配慮を強調。名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について、海域の埋め立て面積が増加することから、難色を示したものとみられる。

 小池氏は、日米の自然保護団体が米国防総省に名護市辺野古沖のジュゴン保護を求めて米連邦地裁で争われている訴訟を取り上げた上で、「そういう(訴訟の)問題もあるので、自分は環境面を重要視している。防衛大臣が環境問題も語る。それが二十一世紀の新しい姿だ」と説明した。

 これに対し仲井真知事は「普天間の問題は名護市も受け入れている。地元の気持ちをくんでまとめていただきたい」と述べ、沖合移動にあらためて理解を求めた。

 小池氏はそのほか、普天間移設に関する協議会について「できるだけ早く開きたい」と協議を促進したい考えを示したが、仲井真知事は「よく調整する必要がある」と指摘。

 沖合移動や普天間飛行場の「三年内の閉鎖状態」の実現など県の要望に対する政府側の対応が先決との考えから、慎重な姿勢を示した。

 会談では、普天間飛行場移設に伴う環境影響評価(アセスメント)や、北部振興事業については話し合われなかった。

 仲井真知事はこれに先立ち、二〇〇八年度国庫支出金要請で高市早苗沖縄担当相とも会談。新規の「IT津梁パーク(仮称)整備事業」の展開や、政府の「アジア・ゲートウェイ構想」の拠点に沖縄を位置付けることなどを要望。北部振興事業を継続するよう文書で求めた。高市氏は「だいたい要望の内容には沿えると思う」と前向きな返答をした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708031300_01.html

 

2007年8月3日(金) 夕刊 1面

北部振興事業盛り込む/08年度概算要求

沖縄担当相、強い意欲

 【東京】内閣府沖縄担当部局は三日までに、二〇〇八年度予算概算要求に北部振興事業費を盛り込む方針を固めた。高市早苗沖縄担当相は同日午前の閣議後会見で、同事業費を継続する条件の「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況」が崩れていないとの認識を示し、予算要求に強い意欲を示した。

 高市沖縄相は「代替施設の受け入れ、現況調査に同意いただき、調査が進められている。私と地元、小池百合子防衛相と地元の関係者間の調整も継続している」として、予算要求ができる状況にあるとの考えを示した。

 一方で、「これに加えて一歩進めていくため、協議会を開くことが重要なポイントになると考えている」とも述べ、普天間飛行場移設に関する政府と地元の協議会の早期開催の必要性を強調した。

 防衛省が〇七年度北部振興事業費の一次配分に難色を示していることには、「来年度の要求とは違い、本年度のものは要件が満たされた上で決定されている。適切な時期に配分できるよう、防衛省などと調整する考えに変わりない」と述べた。


普天間「対応に苦慮」小池防衛相


 【東京】小池百合子防衛相は三日午前の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の移設問題について、「県のおっしゃっていること、名護市がおっしゃっていることの具体的なところがなかなか分からないので、対応に苦慮している」と述べ、V字形滑走路の沖合移動をめぐり、県、名護市との調整が難航していることを明らかにした。

 その上で、「今後も地元自治体と連携しながら、早期に的確に、わが国の抑止力、沖縄の環境を守るといういくつかのファクターを何とか考え合わせたものにしたい」とも述べ、県、名護市との調整に積極的に取り組む姿勢を強調した。

 沖合移動については、「環境を沖縄がより守る方向に行かないでどうされるのか。環境についての取り組みを盛り込んだ案について、ご理解をたまわればと思っている」と難色を示し、日米で合意したV字案にあらためて理解を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708031700_02.html

 

2007年8月3日(金) 夕刊 1面

北谷 米軍施設で油流出/隣接の民間地汚染

 【北谷】北谷町の米陸軍貯油施設・桑江第一タンクファームの小型タンクからディーゼル燃料が流出し、隣接する民間地を汚染したことが三日、分かった。陸軍トリイ通信施設が二日午後、那覇防衛施設局へ通報し、同局から連絡を受けた県と北谷町が同日夕、油流出を確認。北谷町は三日、同様な燃料流出がないか確認するよう、施設局に電話で要請した。

 同施設局によると、油漏れがあったのは二日午後で、千ガロン(約三千八百リットル)の貯蔵能力がある小型タンク。土の上に縦一・五メートル、横一・九メートルにわたり油が広がったという。タンクには約九百ガロン残っており、漏れた量は最大で約百ガロン(約三百八十リットル)とみられる。

 現場は二〇〇三年三月に返還されたキャンプ桑江北側部分で、同町伊平の国道58号から東方三百―四百メートルの地点。米軍は残っていた油を抜き取った上で小型タンクを撤去し、三日午前十一時すぎから汚染土壌の回収作業を行っている。

 野国昌春北谷町長は「使い古しの貯油タンクから流出したという情報もあり、同様なタンクからの流出が今後も考えられる。米軍は経緯も含めて発表し、きちんと対応してほしい」と話した。

 県基地対策課は二日、施設局を通じて、米軍に原因究明や再発防止などを申し入れた。施設内への立ち入り要求については「状況確認の段階」として、現段階では検討していないという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708031700_03.html

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