沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月11日、12日)

2007年8月11日(土) 朝刊 1・31面

ハンセンに新射撃場/来週入札 金武町は反発

特殊部隊施設相次ぐ/射程1200メートル道路まで500メートル

 米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃(ライフル)用射撃場が整備されることが十日分かった。米側予算で来週、入札で業者選定を実施。来年二月ごろに着工、二〇〇九年七月ごろに完成見込み。同日、国から説明を受けた金武町の儀武剛町長は「負担増につながり到底受け入れられない」と反対を表明したが、日米合同委員会の合意事項ではなく、米側の判断で整備可能という。

 外務省などによると、沖縄自動車道からの距離は約五百メートル。最も近い金武町伊芸区の集落からは約一キロ。射撃場から数キロ離れたレンジ16には、グリーンベレーの都市型戦闘訓練施設の整備が進んでおり、同演習場内でグリーンベレー専用施設が相次いで整備されることになる。

 防衛施設庁によると、新射撃場は遠距離射撃に用いるといい、接近戦訓練用の都市型戦闘訓練施設の射撃場とは「用途が違う」と説明している。

 新射撃場は兵士に射撃の資格を付与するための訓練施設。高さ約十四メートルの三階建てで二、三階にそれぞれ十の射撃スポットを設置。ターゲットは百メートルから千二百メートルの距離の範囲内で対応可能となっている。

 射撃方向は北西の山側のみで、他の三方向は壁で覆うため、民間地域に銃口が向く可能性はないとし、屋上や屋外からの実弾射撃訓練は行わないとしている。

 小銃の射撃訓練で米陸軍はこれまでハンセン内の既存射撃場を使用してきたが、演習場の管理は海兵隊で、陸軍が使用するには調整が必要なため効率的ではなかったという。外務省は新射撃場の設置によって「訓練の集約・改善を行い、効果的、効率的な訓練が行えるようになる」とし、在沖米陸軍の増員を否定。米軍再編で合意した陸上自衛隊との共同使用で新射撃場を使用する可能性についても防衛施設庁は「現時点で計画していない」と否定した。

 県の保坂好泰基地防災統括監は「内容を精査して金武町との連携を密に対応を協議したい」との見解を示した。


     ◇     ◇     ◇     

安保の重荷 町に次々/町長・住民怒りの声


 【金武】「基地負担の増加で、到底容認できない」「住民をばかにした計画だ」。金武町の米軍キャンプ・ハンセンのレンジ3近くに、米陸軍が使用する新射撃場の建設計画が明らかとなった十日、町関係者やレンジ3に近接する伊芸区では、地元を無視した危険施設建設に怒りの声が上がった。金武町は、宜野座村や恩納村とともに今月七日、ハンセンの陸上自衛隊共同使用に反対の意思を表明したばかり。

 儀武剛町長は、会見を開き「米軍再編は沖縄の基地負担軽減というが、北部ではかなりの負担増だという疑念が強くなった。負担減と言いながら、訓練する場所を増やすという発想が理解できない」と、日米両政府に対する不信感をあらわにした。

 「到底受け入れられない。強い意思で反対を貫く」として、週明けにも那覇防衛施設局などに抗議する考えだ。

 池原政文伊芸区長は、レンジ4の都市型戦闘訓練施設に続いて新たな射撃場が造られることに、激しく怒った。「日本政府は米軍の言いなりではないか。レンジ4の問題で、県民から大きな反発を受けたことを理解していない」と批判。

 同基地内のレンジ16奥側へ移転するまでの間、暫定使用されているレンジ4では現在も夜間訓練や突破訓練が行われている。

 池原区長は「米軍は、住民への配慮をまったくしない。週明けにも全体協議会を開き、区として反対の意思を示したい」と話した。

 町議会の松田義政議長は「民間地に近いレンジ3に射撃場を造るとなれば、けしからん問題だ」と声を荒らげた。

 十六日にも全員協議会を開いて、儀武町長から詳細な説明を受けた上で、「議会としての対応を検討したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_01.html

2007年8月11日(土) 朝刊 1面

4米兵を不起訴/沖国大ヘリ墜落

 宜野湾市の沖縄国際大学に二〇〇四年八月十三日、米軍普天間飛行場所属のCH53D大型輸送ヘリコプターが墜落した事故で、那覇地検は十日、航空危険行為処罰法違反(過失犯)の容疑で書類送検されていた米軍の整備士四人について、条約上、裁判権がないとして不起訴処分にした。

 県警捜査一課と宜野湾署の合同捜査本部は一日、事故から三年目となる十三日の公訴時効を前に、氏名などを特定できなまま四米兵を書類送検した。

 那覇地検は県警の捜査結果を踏まえ、日本側に裁判権があるかどうかの確認を進めていた。

 日米地位協定によると、日本の領域内で起きた事件や事故は日本側に裁判権があるが、公務執行中の罪については米軍当局に第一次裁判権があり、放棄しない限り日本側に裁く権利はない。

 米軍は軍法会議などで四米兵を降格などの処分にしており、那覇地検は米軍当局が裁判権を行使したと判断した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_02.html

2007年8月11日(土) 朝刊 1・2面

14日に公告縦覧開始/「普天間」アセス

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局は十四日から方法書の公告縦覧を開始する方針を固めた。縦覧場所は施設局のほか、名護市や金武町、宜野座村内の施設局関連施設やホテルなど五カ所で調整中。方法書の受け取りを「保留」している県や名護市が場所提供に応じない姿勢のため、関連自治体の行政施設で公告縦覧を行わない異例の事態となる。

 公告縦覧の期間は一カ月間。施設局は縦覧後、二週間以内に住民などの意見を受け付ける。それらの意見の概要を作成し、県などに送付。県は意見概要の受理後、名護市など関連市町村長の意見を聴取した上で知事意見を九十日以内(県条例に基づくアセスの場合は六十日以内)に施設局に提出。施設局は知事意見などを踏まえ、方法書を確定する。

 県や名護市は現段階で方法書の受け取りを保留し、知事意見などの審査手続きに応じない意向を示している。


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県、提出再考求める/アセス方法書


 米軍普天間飛行場代替施設建設に向け、国が環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに送付したことについて、県は十日、那覇防衛施設局の佐藤勉局長あてに「方法書に対する県の考え方」を提出し、「誠意ある対応と方法書提出の再考」を求めた。小池百合子防衛相らにも同日付で郵送した。佐藤局長は文書を受理したが、コメントなどは発表していない。

 文書で県は、環境影響評価手続きに入る前提として(1)代替施設の規模や位置などの具体的な建設計画が県、関係市町村と政府の間で協議され、移設に関する協議会で関係者の確認を得る(2)普天間飛行場の三年を目途とする閉鎖状態の実現(危険性の除去、騒音の軽減など)についても政府の誠意ある姿勢が示される―の二点をあらためて指摘した。

 その上で「普天間飛行場代替施設建設事業が具体的に始まることになる方法書の提出が、このような前提条件が整わないまま行われたことは誠に遺憾。政府の姿勢に疑問をもたざるを得ない」と批判した。県として方法書の受け取りを保留したことを表明する一方、「普天間飛行場移設問題を早期に解決したいとの県の考えに変わりはない」とし、政府との協議は今後とも続けていきたいとの意向も示している。

 また、米軍再編で負担が生じる地域への振興策、返還跡地利用対策、県全体の振興対策について「政府の責任として当然に所要の措置が講じられるべき」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_03.html

2007年8月11日(土) 朝刊 2面

防衛施設庁 北東側ルート優先

「普天間」新飛行経路

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が米軍普天間飛行場を離発着するヘリコプターの飛行ルートを再検討していた問題で、防衛施設庁は十日までに、合意内容を報告書にまとめ、同日午前の日米合同委員会の承認を得た、と発表した。それによると、住宅密集地の上空を通過する同飛行場と中城村津覇漁港間の南東側の飛行ルートについて、市街地上空の飛行を最短距離で通過するため、「旋回範囲をより南側方向に延伸して補正」し、北東側の飛行ルートを優先使用することなどで合意した。

 しかし、基本的な場周経路や飛行高度は変更されておらず、「これまで確定されていなかった安全評価を日米間で科学的に検証した」(防衛施設庁)にすぎないのが実態。市街地の中心にある同飛行場の抜本的な安全対策にはつながらず、地元の不安は続きそうだ。

 防衛施設庁の辰己昌良施設企画課長は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(知事が求める三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との認識を示した。

 報告書は約二十ページ。合意した安全対策はほかに、これまで目視で行っていた管制を自動化する自動管制機能の導入や、夜間の滑走路を見やすくするため、滑走路末端識別灯の新設。飛行場内にある六カ所の工作物や樹木などの障害物を撤去する。

 また、場周経路飛行時の設定高度である三百三十メートルを維持すれば、飛行場周辺での訓練中、空中でエンジンが停止しても、回転翼が回転を続け、水平方向に移動できるヘリの特性によって、飛行場内に帰還することが可能なことを確認したという。


改善取り組み「一定評価」

仲井真知事


 米軍普天間飛行場のヘリの飛行ルートの日米協議が合意したことを受け、仲井真弘多知事は十日、「日米両政府で離着陸経路の改善などの取り組みが決定されたことについては一定評価する。政府が今後、取り組みを一層強化し、ヘリの運用が極力低減されるなど、県の求める三年を目途とする閉鎖状態が早期に実現することを求める」とのコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_04.html

2007年8月11日(土) 朝刊 31面

知事に会長就任要請へ/超党派大会

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会について、準備実行委員会は十日、県婦人連合会など準備実行委をつくる六団体に加え、県議会や県経営者協会、連合沖縄など二十団体で構成する実行委員会の結成を決めた。十六日に最初の実行委員会が開かれる。また、開催時期は実行委員会に一任し、開催場所を宜野湾市の宜野湾海浜公園にするなどの開催案を決めた。

 開催案では大会名を「教科書検定意見撤回を求める沖縄県民大会」とし、大会長に仲井真弘多県知事を、実行委員長に仲里利信県議会議長を選出することや、五万人以上の参加を目標に、数百の各種団体に幅広く協力を呼び掛けていくことなども盛り込まれた。

 また、会場には糸満市の平和祈念公園が候補に挙がっていたが、五万人以上の収容を考え、一九九五年の米兵による暴行事件に抗議して行われた、県民総決起大会でも会場になった宜野湾海浜公園が第一候補となった。

 準備委員会に参加した仲里議長は「一切の政党色をなくして、ぜひ成功させたい」と意気込みを語った。県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の意見が一つになれば、教科書の改ざんを撤回させることはできる」と参加を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_06.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月11日朝刊)

[4米兵不起訴]

日米地位協定のひずみだ

 検察までもが日米地位協定の壁に押しつぶされたということか。二〇〇四年八月に宜野湾市の沖縄国際大学に墜落した在沖米海兵隊の大型輸送ヘリ事故について、那覇地検は米兵四人を不起訴処分にした。

 この事故で米側は、軍法会議で二等軍曹や伍長など整備士四人の降格と減給、けん責処分したという。

 県警は四人を航空危険行為処罰法違反の疑いで送検する方針だったが、米側から氏名通知を拒否されたため被疑者不詳のまま書類送検している。

 被疑者も事故原因も分かっている。だが氏名が特定されないため起訴できず、同法違反の罪に問えない。これが日米地位協定の真の姿であり、不平等性の元凶といっていい。なぜ政府は抜本的に改正しないのか、県民には疑問というしかない。

 県警が四兵士の氏名を問い、県民がその名前を知りたいと思うのは県民感情として明白ではないか。

 にもかかわらず、ケビン・メア米総領事は地位協定を盾に「日本側が(二次)裁判権を行使できないのに、なぜ県警は名前を知りたいのか逆に疑問を感じる」と述べている。

 確かに地位協定によれば、米軍兵士や軍属の公務中の罪についての第一次裁判権は米軍当局にある。だが、「だからといってなぜ事故を起こした兵士の名前を伏せるのか」という疑問に答えたことにはならない。

 もう一つは、事故原因が整備士の人為的ミスであったにせよ、米軍には組織としての責任があるはずだ。

 であれば、地位協定を盾に高飛車に対応するのではなく、公共の危険を発生させたことを深刻に受け止め、県民に誠意を示すことが米側の最低限の礼儀ではないのか。

 総領事の発言からは逆の姿勢しか見えず、地位協定で定められた既得権益を守るようにしか受け取れない。不平等性の維持であり、県民に負担と危険性を押し付ける姿勢である。

 私たちは、復帰前の米兵絡みの事件、事故の多くが、証拠などが明白なのに沖縄側に裁判権がないため裁けなかったり、形だけの強制送還で終わったことを覚えている。

 今回の不起訴処分はそのことを思いださせる。

 想定できる米軍関連事故を考えれば、日米が平等の立場で事故原因を究明したり、事故現場の管理や捜査ができるようにするのは当然だろう。

 そのためには地位協定の運用改善ではなく、対等独立の立場に立った刑事裁判および捜査権を確立することだ。重要なのはその一点と考えたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070811.html#no_1

琉球新報 社説

飛行ルート これで見直しの結論か

 木を見て森を見ない議論から導かれる結論については、あらためて報告を聞くまでもない。初めから予測はされたが、それにしてもである。

 防衛施設庁は10日、2004年8月に起きた沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が見直しを進めていた米軍普天間飛行場のヘリコプター発着の場周経路などに関する報告書を発表した。

 報告書によると、離着陸のルートは、沖国大を中心に住宅などが広がる「住宅高密集度区域」を避けて飛行し、住宅密度の低い北東側経路を優先的に使用するとしている。

 沖国大側からの飛行を回避すれば安全は保障される。そう言わんばかりの結論である。地元市民は到底、納得するまい。

 宜野湾市の地図を広げて見れば、一目瞭然(りょうぜん)なのは広大な面積を含め米軍普天間飛行場の位置やその形状の特異さなどである。市の中央部にでんと構え、占有する形となっている。このため、進入経路を変更したところでほとんど意味を成さない。

 住宅街の密集度の相対的な比較では本質的な問題は何1つ解消されないのだ。

 施設庁は「現状で普天間でとり得る最善の措置」と強調。仲井真弘多知事が求めている「3年以内の閉鎖状態」への対応として検討したと説明する。

 「3年以内の閉鎖状態」は知事の公約である。ハードルの設定は、この程度というのだろうか。随分と低く見られたものだ。

 場周経路や飛行高度が変更されていないのも疑問だ。現状の高度を維持すれば、緊急時にも飛行場内に帰還できることが可能だとしているが、説得力を欠く。3年前の墜落事故との関連について全く言及していない。

 普天間飛行場の問題は、安全性ばかりではない。騒音による地域住民の身体的、精神的な苦痛は計り知れない。

 普天間の危険性を除去するには飛行場の即時閉鎖・撤去以外にない。報告書は自明の理を図らずも証明した。

(8/11 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26212-storytopic-11.html

2007年8月12日(日) 朝刊 1・2面

「普天間」危険除去に限界/ヘリ墜落3年

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故は、十三日で三年を迎える。事故を受け、日米が協議していた米軍普天間飛行場を離着陸するヘリコプターの飛行ルートの再検討は、現状の場周経路や飛行高度を「追認」する内容で合意。仲井真弘多知事は「三年をめどにした普天間の閉鎖状態」を繰り返し政府に求めているが、同飛行場が市街地の中心部に存在し続ける以上、危険性除去策には限界があることを浮き彫りにした。

 仲井真知事は普天間飛行場の県内への代替施設建設を容認する一方、「現行の政府案のままでは受け入れられない」として沖合移動を要請。しかし、政府からは「ゼロ回答」が続き、県は国が送付した環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを保留している。

 政府と県は「早期の代替施設建設が最大の普天間の危険性除去策」との認識で一致。だが、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設が進まない限り、普天間飛行場が「居座り」続けることになり、仲井真県政は難しい判断を迫られている。


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増え続ける騒音被害/激しさ増す外来機訓練


 日米両政府は宜野湾市の米軍普天間飛行場に離着陸するヘリコプターの新しい飛行ルートに合意した。しかし、実際には同飛行場の所属機が住宅地上空で旋回飛行を繰り返し、外来機の訓練が激しさを増している。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落、炎上してから十三日で三年。同飛行場の現状をまとめ、伊波洋一市長に今後の取り組みなどを聞いた。

 普天間飛行場のヘリ部隊は今年一月下旬から、イラク派遣や海外演習などで「不在」が続いた。しかし、ヘリに代わって嘉手納基地に常駐するP3C対潜哨戒機や山口県岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機などの外来機が飛来。住宅地上空での旋回飛行訓練が常態化し、騒音の激化に歯止めがかかっていないのが現状だ。

 同飛行場の主力ヘリを含む第三一海兵遠征部隊(31MEU)は二月上旬から約二カ月間、沖縄近海や韓国で戦時増援演習「RSOI」に参加した。六月にはオーストラリアに遠征し、七月十八日に再び帰還。その後、住宅地上空で飛行訓練を繰り返している。

 一方、FA18は五月下旬から、延べ二十機以上が飛来した。タッチ・アンド・ゴーなどの飛行訓練を繰り返し、電車通過時の線路脇に相当する百デシベル超の騒音が連日発生した。

 騒音の激しい上大謝名区では四月に二千四百六回だった騒音発生回数が、五月には約一・二倍の二千九百二十九回に増加した。相次ぐ戦闘機の爆音に加え、ヘリ部隊が帰還した七月は昨年から一年間で最も多い三千四百三十九回を記録。一日平均で約百十回もの騒音が発生したことになる。

 市に寄せられた苦情も増加している。四月は一件だったのが、五月以降は毎月二十件以上にはね上がった。「爆音で頭がくらくらする。高齢者にはたまらない」「仕事で疲れて帰ってきても、爆音で気持ちよく夕食が食べられない」など、悲鳴にも似た声が絶えない。

 外来機の相次ぐ飛行訓練はヘリ墜落以前は確認されておらず、事故から三年がたち市民の負担が増しているのが現状だ。


伊波宜野湾市長に聞く/グアム移転が最善策


 ―事故後の三年間の普天間飛行場の運用をどう見る。

 「事故直後から約半年間はヘリが飛ばなくなったが、その後、イラクから部隊が帰還し事故以前の状態に戻った。最近は(騒音防止協定で禁止された)午後十時以降にヘリが飛ぶ場合が多い。三年たっても政府は何の解決策も示せていない」

 ―FA18など外来機の訓練が常態化している。

 「運用は米軍に委ねられており、日本政府はどのように使われようと止めることができない。住宅地が密集する普天間ですらこの状態で、名護市辺野古に新基地が造られれば、(同様に)日本側は手出しができないことを示している。海兵隊の出撃拠点として基地機能が強化される。絶対に容認できない」

 ―日米両政府が合意した新飛行ルートについて。

 「住宅密集地では、いくら検討しても問題は解決できない。現在、ヘリは八カ所ほどから出入りをしているが、同じ場所から離着陸を繰り返すとその地域で騒音が激化する。無灯火の夜間飛行やはみ出し飛行も絶えない。政府は普天間の実態を分かっておらず、机上の理論でしかない」

 ―七月にはグアムを視察した。

 「アンダーセン空軍基地に海兵隊の移転場所が造られつつあり、アセスメント(環境影響評価)も進んでいる。来年八月にはグアムのマスタープランが決定される。具体的な部隊名や移設の手順が明らかになるだろう。市として優先的に普天間のヘリ部隊をグアムに移す仕組みを強く求めていく。それが危険性除去の現実的な解決策で一番の近道だ」

 ―今回の参院選で野党が過半数を占めた。

 「政権交代もあり得る状態だ。国の方針も変わると思う。民主党は『常時駐留なき安保』論を示した経緯がある。米軍駐留が国民の犠牲の下に行われることに、強い抵抗感が生まれるだろう。沖縄の基地は返還されるべきだ。野党の意見が国政で実現されれば、米側も強硬的な姿勢を続けることは難しくなる」

 ―今後の取り組みは。

 「参院選で普天間の返還を求める沖縄の二人の議員が当選した。政府与党は沖縄の基地機能の強化を容認してきたが、これに歯止めをかける必要がある。これまで連絡を取ってきた米国議員などにも沖縄の状況を伝え、より早い解決に向けて取り組む」(聞き手=中部支社・下里潤)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_02.html

2007年8月12日(日) 朝刊 1面

本紙「集団自決」報道にJCJ賞/東京で贈賞式

 【東京】優れたジャーナリズム活動と作品を表彰する日本ジャーナリスト会議(JCJ)の二〇〇七年度JCJ賞贈賞式が十一日、東京都内の日本プレスセンターホールであり、沖縄タイムス社の長期企画「挑まれる沖縄戦/『集団自決』問題キャンペーン」が表彰された。取材班を代表して出席した謝花直美編集委員に、清田義昭選考委員(出版ニュース社代表)から表彰状が贈られた。

 清田選考委員は「二年前から続く長期企画で、(大阪での)裁判や(文部科学省による)教科書への介入もあり、現在も進行中。地元の身近な問題をジャーナリストの原点に立ってまとめており、キャンペーンとはこういうものだとつくづく感じた」と報道内容を評価した。

 謝花編集委員は「歴史の歪曲を許さないという県民の代表の一人として受賞したと受け止めている。沖縄の一人一人の声を原動力にして県民大会などに向け、粘り強い報道を続けていきたい」とキャンペーン継続への意欲を示した。

 謝花編集委員は〇五年にも「戦後六十年キャンペーン」の取材班を代表してJCJ賞を受賞している。

 ドキュメンタリー映画「ひめゆり」でJCJ特別賞を受賞した柴田昌平監督は「過去に向き合って戦争体験を証言してくれた『ひめゆり』の皆さんが映画を作り、受賞したと理解している。私は仲立ちしただけだ」と述べ、証言者への謝意を強調した。

 「ひめゆり」は、財団法人県女師・一高女ひめゆり同窓会が共同製作している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_03.html

2007年8月12日(日) 朝刊 18面

サンゴ白化 白保ピンチ/WWF、死滅拡大を懸念

 【石垣】世界自然保護基金(WWF)サンゴ礁保護研究センターは九日、世界的に貴重なアオサンゴ群落があり、今月一日に国立公園に指定された石垣島・白保海域で、高海水温が原因とみられるサンゴの白化が進んでいると発表した。沖縄近海で大規模な白化が起きた一九九八年にさえ、白化を確認できなかったアオサンゴも一部で白化(淡色化)しているという。

 白化したうち、死滅したサンゴは5%程度にとどまる。同センターは「今後も高海水温が続くと大量死につながる。台風6、7号でも水温が下がらなければ被害は広がる」と懸念している。

 同センターは四日から六日まで、リーフ内(水深5メートル未満)の二十八地点で調査。すべての地点、同海域に生息するほぼすべての分類群で白化を確認した。

 目視による調査では、ハナヤサイサンゴ科とミドリイシ属は90%以上、コモンサンゴ属は50―70%、白化しにくいとされるハマサンゴ属も30―50%が白化していた。アオサンゴ属は5%未満。

 同センターが水深四―五メートルの場所に設置した水温計の記録では、梅雨明け後の六月二十一日から最高水温が三〇度を超え、七月二十三日以降は一日中三○度を下回らない日もあった。七月末までに三○度を超えた時間を積算すると平年に比べ四倍以上に達するという。

 サンゴは高水温などのストレスを受けると共生藻を失い、白く見えるようになる。今年は梅雨時の降雨や台風発生が少ないため、高海水温が続いている。さんご礁が減れば、生態系や環境に大きく影響する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_05.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月12日朝刊)

[秘密保全協定]

論議は尽くされていない

 日米の軍事一体化が新たな段階に入った。というより、日本が米国の軍事戦略に組み込まれたと言ったほうが正確だろう。

 麻生太郎外相とシーファー駐日米大使は十日、軍事秘密の保全に関する規則を網羅的に定めた「日米軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)に署名、発効した。

 政府は協定に連動して新たな罰則法令は定めないとしているが、政府関係者や関連企業などに対し広範囲の守秘義務が課される。関係省庁が情報公開に消極的になるのは明らかで、さまざまな情報が「軍事秘」を盾に国民の目から遠ざけられ、国民の知る権利が制約される危険性は高い。

 もう一つ忘れてならないのは、秘密軍事情報の共有は憲法で禁じた「集団的自衛権」の行使に限りなく近づくということだ。

 協定で規定された秘密軍事情報にはMD(ミサイル防衛)やイージス艦の戦術データ、暗号情報、有事の際の共同作戦に必要な情報などが網羅的に含まれるという。

 例えば、海上自衛隊のイージス艦が収集した高度な軍事情報がデータリンク(情報共有)によって米軍に提供され実際の武力行使に至った場合、集団的自衛権の行使につながる恐れがあるとの指摘は国会などでも度々、論議されてきた。協定の締結で日米の秘密軍事情報の共有化が進めば、そうした事態がさらに現実化する可能性は高い。

 政府はデータを提供しても、武力行使には米軍独自の判断が必要で一体化には当たらないとしてきたが、もっと踏み込んだ説明が必要だ。

 協定は国会の承認なしに発効した。政府は協定などの国会承認について、法律の改廃や財政的な負担、政治的な重要性のある場合としている。同協定の締結によって法律の制定はなく、財政負担も伴わないから、国会の承認がないというのはおかしい。

 国民の知る権利や憲法解釈にもかかわる重要な協定について再度、国会で議論を尽くすべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070812.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年8月12日朝刊)

[米陸軍射撃場]

これが負担軽減の実態か

 米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃用射撃場が整備されることが明らかになった。米側予算で来年二月ごろ着工、二〇〇九年七月ごろに完成する計画だ。

 射撃場から沖縄自動車道まで約五百メートル、金武町伊芸区集落まで約一キロ。同町は「負担増につながり、到底受け入れられない」と強く反発している。

 米軍は〇五年七月、「レンジ4」都市型戦闘訓練施設で実弾射撃訓練に踏み切った。だが住宅地から約三百メートル、沖縄自動車道から約二百メートルと近接しているため、地元住民が猛反発した。

 その後、日米合同委員会で「レンジ16」北側に移設することで合意。代替施設完成後、「レンジ4」の管理権は海兵隊に移行されることになった。

 近辺住民が安堵したのもつかの間、今度は小銃用射撃場である。地域の懸念を無視した整備計画であり、住民らが怒るのは当然のことだ。

 防衛施設庁によると、遠距離射撃用で射程は最大で約千二百メートル。接近戦訓練用の都市型戦闘訓練施設の射撃場とは「用途が異なる」という。

 従来はキャンプ・ハンセンの既存射撃場で小銃射撃訓練を実施したが、海兵隊が演習場を管理しているため、効率的ではなかったと説明している。

 しかし、なぜ今になってグリーンベレー専用の新射撃場が必要なのか。キャンプ・ハンセンではせきを切ったように訓練施設整備が続き、機能の強化・集約も急ピッチで進んでいる。

 在日米軍再編の最終報告でキャンプ・ハンセンの共同使用が盛り込まれ、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が近く射撃訓練などの演習を始める。米海兵隊第三師団との共同訓練も検討されており、陸自が一連の射撃場で訓練を実施する可能性もある。

 共同使用についても、金武町、恩納村、宜野座村は「明らかな負担増」と受け止めている。新射撃場への住民の反発は必至である。米軍は住民の意向を踏まえ、整備計画を見直すべきだ。

 嘉手納以南の基地返還に伴う北部地域の負担増、基地機能強化の実態が明らかになってきた。日米で嘉手納基地の共同使用について合意しており、第一混成団の旅団への格上げ、旧東恩納弾薬庫跡地への射撃場建設など、自衛隊の強化も着々と進められる。

 テロなど新たな脅威だけでなく、中国封じ込めへ向けた南西諸島防衛などが強調される中、沖縄を舞台にした自衛隊と米軍の一体化・融合化が明確になってきた側面を見落としてはならない。今回の射撃場計画も米軍再編の中に位置付けて見ていく必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070812.html#no_1

琉球新報 社説

新射撃場計画 おかしな「負担増」の先行

 在日米軍再編であれだけ「地元の負担軽減」を強調しておきながら、沖縄でこうも「負担増」が先行しているのはどういうことだろう。

 日米政府による昨年5月の米軍再編合意後、ミサイル防衛を担う主要装備の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)や、最新鋭のステルス戦闘機F22Aが相次いで嘉手納基地に配備された。

 今度は金武町のキャンプ・ハンセンに、陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用のライフル射撃場を新設するという。射程1200メートルで実弾を使う計画だ。沖縄自動車道から約500メートル、伊芸区の集落から1000メートル弱の地点だが、遠距離射撃であることを考えると民間地への流弾の可能性は否定できない。

 地元の金武町が「到底受け入れられない」(儀武剛町長)、「政府は米軍の言いなりか。悪夢がまた始まる」(池原政文伊芸区長)などと不安や怒りをあらわにしたのは当然だ。

 政府の説明だと、新設されるのはグリーンベレーに射撃資格を与えるための訓練施設で、高さ約14メートルの3階建て。三方向を壁で覆い、射撃方向は北西の恩納岳側だけ。「民間地へ銃口が向く可能性は全くない」(外務省)と強調する。だが、想定外の事態を引き起こすのが軍隊だ。過去に何度も流弾事故が起きていることがその証しで、いくら「安全」と言われても信用し難い。

 グリーンベレー関連施設は先に都市型戦闘訓練施設が集落に近い場所で整備された。この時も反対運動が起きたが、比較的奥の演習場側に移設することを条件に、暫定使用が日米で合意された経緯がある。

 ハンセンでは自衛隊との共同使用も始まる。自衛隊は爆破訓練などを実施する計画で、金武町や宜野座村、恩納村が負担増を訴えていた。そんな矢先の新射撃場計画だ。地元が納得するはずがない。米軍再編でうたった負担軽減はどこへ消えてしまったのか、という思いであろう。

 名護市辺野古沖での普天間飛行場代替施設計画もしかり。新たな基地建設に反対する人々や、計画修正を求める名護市や県の意向に政府は頑として取り合わない。欠陥機の指摘がある兵員輸送機MV22オスプレイの配備も現実味を帯びており、負担増は明らかだ。

 一方で、日米合意にあった在沖海兵隊司令部と隊員・家族計1万7千人のグアム移転や、それに伴う本島中南部の基地返還は進んでいない。「抑止力の維持」だけが鮮明になり、負担増を先行させる構図だ。これはおかしい。

 政府は、これ以上の負担は受け入れられないという地元の意向を踏まえ、新射撃場の計画撤回を米側に強く迫ってもらいたい。

(8/12 10:26)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26255-storytopic-11.html

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