沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月19日、21日、22日)

沖縄タイムス 社説(2007年8月19日朝刊)

[防衛次官人事]

負担軽減目指せる配置か

 大臣と事務方のトップである事務次官の確執で混迷を深めていた防衛省の次期事務次官人事がやっと決着した。

 在任四年を超えた守屋武昌次官の後任には、小池百合子防衛相が推した警察庁出身の西川徹矢官房長ではなく、防衛省生え抜きの増田好平人事教育局長を昇格させた。

 二十七日に予定していた次官人事を早めたのは、急落する内閣支持率のマイナスイメージをこれ以上拡大させないための判断があったという。だが、防衛相と事務方トップのあからさまな反目は既に国民が知るところである。

 “けんか両成敗”とはいえ、約十日間にわたるドタバタ劇が、安倍晋三首相の閣僚、省庁幹部掌握力の弱さを浮き彫りにしたのは間違いない。

 選挙で選ばれた大臣に事務方が公然と盾突くという事実はまた、安倍内閣が末期症状にある証しと見ていい。

 とはいえ、防衛省事務次官の人事は沖縄にとっても人ごとではない。

 在日米軍再編の大枠の中で、沖縄の基地が占める割合は相当なものがある。その米軍基地施設をめぐる個々の問題を掌握するのが防衛省だからだ。

 普天間飛行場の代替施設建設地となる名護市辺野古キャンプ・シュワブ沿岸部の現況調査の際、調査支援の名目で海上自衛隊の掃海母艦派遣を当時の久間章生防衛相に進言し協議したのは守屋次官だと伝えられている。

 県や名護市が普天間飛行場移設に伴う環境影響評価(アセスメント)を受け入れないため、「北部振興事業を凍結」させたのも同次官の意向によるとの見方が根強い。

 アセス方法書を県、地元と調整せずに送り付けるなど、強引に事を進めようとしたこともしかりだ。

 増田局長は一九七五年の入省だが、日米地位協定や普天間飛行場代替施設問題に関係しただけで、「沖縄問題」に深くかかわった経歴はない。

 複雑なテーマに新次官としてどう取り組んでいくのか。守屋次官と同じように地元を無視し強硬姿勢を貫くのであれば反発を招くのは必至だ。

 辺野古沿岸部のアセスについては、仲井真弘多知事が「きちんとした手続きを踏んでなく、ルールに反する」と述べていることも忘れてはなるまい。

 普天間飛行場の危険性除去を含む負担軽減は喫緊の課題だが、実際には地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の嘉手納基地配備や金武町キャンプ・ハンセン内への新たな射撃演習場建設計画など軽減より先に負担の方が増している。新次官にはこのような沖縄の現実を直視してもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070819.html#no_1

 

琉球新報 社説

防衛次官に増田氏 頭越し基地政策の転換を

 すったもんだの末、防衛省の次官人事がやっと決着した。守屋武昌次官を退任させ、後任に防衛省生え抜きの増田好平人事教育局長の昇格が内定した。小池百合子防衛相は当初、警察庁出身の西川徹矢官房長を次官にとの意向だったが、かなわなかった。政権のマイナスイメージ拡大を恐れた官邸主導による“けんか両成敗”となった格好だ。

 それにしても、一連の事態を見ると、安倍晋三首相の反応の鈍さが、またしても目立つ。参院選の惨敗による首相の求心力の低下をここでも見せ付けられた思いがする。秋の臨時国会に向けて、普天間飛行場移設はじめテロ対策特措法延長、集団的自衛権行使に関する憲法解釈見直し問題など、同省がかかわる課題は山積する。省挙げての対応が要求されるだけに、指揮系統の統一性、組織としての一体性が何より肝要だ。

 とりわけ、県民にとっては今回の人事が普天間移設問題にどう影響するのか。最大の関心事だろう。県や名護市にとって“強硬派”とされる守屋氏の退任で「政府の基本姿勢が後退する可能性がある」とする見方があるのは事実だ。つまり、政府が主張する辺野古沖の普天間代替V字案が後退し、県や名護市が主張する修正案が浮上する、というシナリオだ。

 確かに、小池防衛相はかつて沖縄担当相も務め、沖縄通との自負があろう。県内でも期待する声がある。だが、そのことが必ずしも沖縄側に有利に働く、と考えるのは早計だろう。早い話、環境影響評価(アセスメント)方法書を県や名護市、宜野座村に強行提出したのも小池防衛相の主導だ。

 沖縄を理解し、精通している分、逆に強硬に出てくる、という可能性も考えられよう。現に、「(小池防衛相は)守屋次官との間に大きな政策的相違はない。沖縄に対して厳しい姿勢で臨むだろう」とみる向きが防衛省内にある。

 新次官と防衛相にはあらためて要求したい。V字案にしろ修正案にしろ、地元をないがしろにして事は運ばない。さらに、日米合意に固執することなく、県外移設の可能性も模索するべきだ。

(8/19 10:43)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26446-storytopic-11.html

 

2007年8月21日(火) 朝刊 2面

施行令に指定条件/再編交付金

 在日米軍再編への協力度合いに応じて関係市町村に「再編交付金」を支給する米軍再編推進法の施行令が閣議決定されたことを受け、那覇防衛施設局は二十一日、局内で県内の関連自治体を対象に説明会を開く。

 説明を受けるのは県のほか、名護市、国頭村、東村、金武町、宜野座村、恩納村、沖縄市、嘉手納町、北谷町、うるま市、読谷村、北中城村、浦添市、那覇市の十四市町村。施行令は補助金かさ上げの対象になる「再編関連振興特別地域」の指定条件として(1)航空機が四十機を超えて増加(2)部隊の人員が一千人を超えて増加―を追記。

 一方で、再編実施の進ちょくに支障が出た場合、防衛相が再編交付金を減額またはゼロとすることができると規定。再編交付金の支給対象となる自治体は明記していない。

 防衛省は米軍普天間飛行場代替施設の建設予定地となる名護市については「再編関連振興特別地域」に該当するとの認識を示す一方、現段階では「再編案の受け入れ表明があいまい」として交付金の支給対象とするかは明らかにしていない。

 同法は十五日に施行令を閣議決定、二十九日に施行される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708211300_05.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 1面

「集団自決」修正/日教組 大会で撤回決議へ

 日本教職員組合(森越康雄委員長)は、高校歴史教科書の沖縄戦の記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除・修正した文部科学省の検定意見の撤回と、記述の回復を求める決議を今月末に開かれる第九十五回定期大会で、採択する。決議案は現在調整中としているが、同教組は「沖縄戦の歴史歪曲を許さないとの決意を盛り込む」としている。日教組は組合員約三十二万人で組織する国内最大の教職員組合。教科書検定問題をめぐっては地理教育研究会、歴史教育者協議会などが撤回を求めており、全国的な広がりを見せている。

 同教組は来月には、同問題に関する全国集会も開催する予定で、検定意見の撤回を求める署名活動も行っている。県高教組の松田寛委員長は「県内だけでなく、全国でも動きが広がってきている。九月二十三日には県民大会も控えており、今後も波状的に検定意見の撤回を訴える必要がある」と決意を述べた。沖教組の大浜敏夫委員長は「同じ教員として、沖縄戦の真実を歪めないという思いを共有するとともに、何としても撤回を求めるという思いを一つにしたい」と語った。

 沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会の山口剛史事務局長は「両教組を中心にこれまでも全国に運動を呼び掛けていく努力は続けられてきたが、大会であらためて一つの方針として位置付けられるだろう。日本の歴史認識の問題として、実践でも共にやり抜きたい」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_02.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 2面

旧那覇飛行場/地主会、高度がん施設を提案

 旧那覇飛行場用地問題解決地主会の金城栄一会長は二十一日、那覇市役所に平良克己平和交流・男女参画室長を訪ね、市が実施した同問題事業可能性調査に基づき、同地主会が作成した独自の事業案を提出した。

 提案書では、県全体規模の事業展開として、がん治療に特化した高度先進医療の導入を目指す沖縄「がん」センター構想のほか、新型路面電車(LRT)導入、南部地区での温泉施設計画、都市基盤整備―の四案を提示している。

 金城会長は「ぜひ本年度の概算要求に調査費を計上するよう、那覇市も積極的に県に働き掛けて取り組んでほしい」などと要望し、早期解決を促した。

 平良室長は「地主会からの新規の事業提案として、市で検討していく」と述べ、同問題の解決には地主会の意見が最も重要だと強調した。

 市は二十二日にも県基地対策課に同提案書を示し、事業案を検討していく考え。また、早ければ十月にも各部署の課長らでつくる同問題解決のためのワーキングチームを立ち上げ、地主会からの案が法的に可能かどうかなどについて議論したいとしている。

 同地主会は市議会にも事業案を提示し、同問題の早期解決などを求めていく予定。


旧軍飛行場地の補償急務/問われる県の指導力


 戦時中に接収された旧軍飛行場用地の補償問題で、県は本年度中に各地主会からの事業案をとりまとめ、来年度の予算化に向けた作業を本格化させる。ただ、同問題の解決は、二〇〇二年に初めて沖縄振興計画で「戦後処理の課題」に位置付けられてからすでに五年が経過。地主からも「遅々として進まない」との指摘もあり、一一年度終了まで残り五年のタイムリミットが迫る中で、作業の加速化が急務となる。

 県は同問題の解決の手法として「団体補償」を方針としている。

 ただ、個人補償を求める地主会もあることから、県は〇六年度に、那覇市が実施した同問題事業可能性調査報告について今年五月から今月にかけ、九地主会へ説明会を開催。具体的な事業案の提示と団体補償方式による解決についての理解などを求めてきた。

 県の保坂好泰基地防災統括監は「県は団体補償の方式でいく方針。ただ、事業案については、地主会によっても作業の進み具合に違いがある状況。先行しているところや市町村を優先して国との調整や要望を実施していきたい」としている。

 県は市町村や地主会から上がってきた具体的な事業案について一緒に検討作業を進める方針。

 だが最終的に国に要望する際の方針は「県と関係六市町村で構成する連絡協議会の場で決定する」(県基地対策課)としており、市町村からの事業案提出の締め切りや連絡協議会の開催スケジュールなどは今のところ示されておらず、県の取り組み姿勢のあいまいさは残る。

 長年、問題解決に向け取り組んできた旧那覇飛行場用地問題解決地主会の金城栄一会長は「振興計画に位置付けられて五年が経過しており、対応が遅過ぎる」と厳しく指摘。

 別の地主も「地主も高齢化している。戦時中の土地接収から現在まで翻弄されてきた住民、地域の問題として早く解決してほしい」と訴える。

 振興計画に位置付けられながらも手付かず状態の課題ともいえる同問題。早期解決のためにも、県が強いリーダーシップを取りながら市町村と連携し、早急な国との折衝が必要となる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_04.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 2面

再編交付金/PAC3支給対象

 那覇防衛施設局は二十一日、県内の関連自治体を対象に、在日米軍再編への協力度合いに応じて「再編交付金」を支給する米軍再編推進法の説明会を開いた。嘉手納基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)配備や、キャンプ・ハンセンなどでの自衛隊との共同使用化に伴う負担も交付対象になることを明らかにした。補助金かさ上げの対象になる「振興特別地域」については、米軍普天間飛行場代替施設の建設予定地にかかる名護市などが該当するとの見通しを示した。

 一方で同法は、支給の是非や額が政府の「さじ加減」に委ねられる側面も目立ち、出席した自治体関係者には戸惑いも見られた。

 同法施行令は、再編交付金の支給対象となる「特定周辺市町村」と、補助金かさ上げの対象になる「振興特別地域」の指定要件を規定。

 再編交付金について施設局は、負担の増加と軽減を数値化する「点数制度」が導入されると説明。これにより、本土への一部訓練移転とともに、自衛隊との共同使用が予定されている嘉手納基地の周辺自治体の場合、支給額が相殺される見通しとなった。

 施行令は、再編の実施に向けた措置の進ちょくに支障が生じた場合、防衛大臣が再編交付金の年度交付限度額を減額またはゼロとすることができると規定。施設局は普天間飛行場代替施設の受け入れに対する名護市の現状のスタンスをどう判断するかは触れなかった。

 また、施行令は「交付しない事業」として、特定周辺市町村の区域内にあっても「再編により影響を受ける住民の生活の安定に資するよう適切に配慮された地域で行う事業とは認められないもの」を例示。普天間代替施設建設に伴う振興策を、名護市の東海岸地域に重点的にシフトさせる狙いがあるとみられる。

 一方、(1)航空機が四十機を超えて増加(2)部隊の人員が一千人を超えて増加―を指定要件としている振興特別地域について施設局は、岩国基地と普天間代替施設の建設予定地のキャンプ・シュワブが「該当するのではないか」と言及した。同地域は、特定周辺市町村と隣接市町村を一体として振興を図る。関係市町村の意向を踏まえ、知事が国に申請する。

 説明会には県のほか、中北部を中心に十四市町村から約五十人の担当者が出席。同法は十五日に施行令を閣議決定、二十九日に施行される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_05.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 2面

新射撃場建設/米大使館に中止要請

 【東京】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設問題で、金武町議会の松田義政議長らは二十一日も引き続き在日米国大使館、首相官邸を訪ね、建設計画の即時中止を申し入れた。

 松田議長によると、米国大使館のレイモンド・グリーン安全保障政策課長は「訓練をほかの場所でできないか検討はしたが、キャンプ・ハンセンしかないという結論となった。訓練は従来よりも安全で効率的に行える」と理解を求めたという。

 首相官邸で応対した鈴木政二官房副長官は、建設計画の中止には言及せず、「米側には安全性を徹底するようしっかりと伝えたい」と述べるにとどめたという。

 二十日からの要請を終えた松田議長は「米側の意向に追従するだけで、負担増を訴える地元の政府との温度差は大きい。まだ射撃場は建設されておらず、今後も阻止を働き掛けていきたい」と語った。


射撃場反対で伊芸区が決議

近く中止求める


 【金武】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設問題で、「レンジ3」に近接する伊芸区の臨時行政委員会が二十一日午前、同区公民館で開かれ、射撃場建設に反対する抗議決議、要請決議案を全会一致で可決した。

 あて先は、抗議決議は外務省沖縄担当大使、那覇防衛施設局長、在沖米国総領事。要請決議は県知事、県議会議長。

 抗議決議では、レンジ4都市型訓練施設のレンジ16への移転が決まった経緯を踏まえ、「地元の意思をまったく無視し、レンジ3に実弾射撃場の建設を容認したことは、日本政府の政治姿勢の弱さと米軍の占領意識と人命軽視によるものだ」と批判。その上で、「伊芸区民は日米両政府が強調する安全性を誰一人信用していない。新たな軍事施設は住民の生活を脅かす基地の機能強化につながり断じて許されない」として、建設計画の即時中止を強く訴えている。

 要請決議では、県に対して建設中止に向けた協力を求めている。

 近く池原政文区長と委員全員で要請行動を展開する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_06.html

 

琉球新報 社説

さんご礁急減 地球温暖化に歯止めを

 太平洋やインド洋の一部で、さんご礁の生息状況が過去四半世紀の間に急激に悪化、地球規模でサンゴの破壊が進んでいることが、米ノースカロライナ大のグループによる調査で明らかになった。

 地球温暖化によって水温が上昇したことが要因とみられている。各国は、温暖化のもとになっている温室効果ガスの排出抑制に向け、一致して取り組むべきだ。

 ノースカロライナ大のグループは、日本の南西諸島、伊豆諸島、小笠原諸島やハワイ、オーストラリアのグレートバリアリーフなどの海底でサンゴが覆っている面積の経年変化を調査。2667カ所で調べた6000件を超えるデータを解析した。

 サンゴの被覆率は1980年以前で50%以上だったとみられるが、90年代半ば以降に急減し、2003年は平均22%にまで落ち込んでいた。

 さんご礁の破壊をこのまま手をこまねいて見ているわけにはいかない。地球規模で対策を講じることが急務だ。

 京都議定書は、温室効果ガスの排出量を2008―12年に先進国全体で1990年に比べ約5%削減することを義務付けている。

 日本は平均で6%削減することになっているが、05年度の排出量は逆に悪化し7・8%も増えていた。このままでは議定書自体が絵に描いたもちになりかねない。

 日本が先頭に立って目標達成に取り組み、官民挙げて省エネルギー対策などを推進しなければならない。

 国民一人一人が、職場や家庭で節電に努めるなど省エネを実践することも大切だ。

 サンゴの減少率は森林を大きく上回っており、年間3000平方キロを超えるペースで減っていると推定されている。

 沖縄には、ダイビングが目的で訪れる観光客も少なくない。貴重な観光資源であるさんご礁が失われては、観光の魅力が半減してしまうだろう。

 これ以上の環境悪化には、何としても歯止めをかけなければならない。

(8/22 9:46)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26502-storytopic-11.html

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