沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月30日、31日)

2007年8月30日(木) 朝刊 1面

陸自一混、09年度旅団化/防衛省概算要求

 【東京】二〇〇四年に閣議決定された中期防衛力整備計画(〇五―〇九年度)に盛り込まれた陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の「旅団格上げ」が、〇九年度にも始まる見通しであることが二十九日分かった。防衛省は旅団化に向け、〇八年度予算の概算要求で司令部庁舎の建築費を計上。航空自衛隊那覇基地の旧型主力戦闘機F4部隊を、〇八年度中に茨城県の百里基地のF15部隊と入れ替える予算も盛り込み、同日、自民党本部で開かれた国防部会・安全保障調査会・基地対策特別委員会合同会議で了承された。

 第一混成団の旅団化や那覇基地のF15配備は、中国の台頭をにらんだ「西方シフト」の象徴的な動きといえる。

 新築する司令部庁舎は旅団の中枢機能を果たす。陸自関係者によると、〇九年度は、人員増強の実質的な予算を要求する方針だ。

 第一混成団は第十五旅団として「離島タイプの即応近代化旅団」に変容。島しょ侵攻への対応が重視される中、「離島タイプ」と位置付けられる国内唯一の旅団となる。

 一方、尖閣諸島など島しょ部への侵略や領空侵犯に備え、那覇の302飛行隊(F4約20機)と百里の204飛行隊(F15約20機)を交代。

 米軍再編最終報告で空自との共同使用が明記された、米軍嘉手納基地のF15部隊との相互運用を強化。国産のJ10やロシア製のSU30など、F15と同じ第四世代の戦闘機を急速な勢いで増加させる中国に対する抑止力を高める狙いもある。

 同省はさらにF15の戦闘能力を高めるため、三十二機分の近代化改修費用として、千百二十三億円を要求。防衛省の〇八年度予算の概算要求総額は四兆八千百七十二億円で本年度当初予算比0・7%増。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_01.html

 

2007年8月30日(木) 朝刊 26面

「集団自決」訴訟/出張法廷は非公開

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の戦隊長らが岩波書店などに出版の差し止めなどを求めて大阪地裁で争われている訴訟で、司法記者会の加盟社など、那覇市に拠点を置く報道全十九社が、九月十日に那覇市で行われる所在尋問(出張法廷)を公開するよう要請していた件で、大阪地裁総務課は二十九日までに、法廷を非公開とする方針を示した。

 大阪地裁は、「所在尋問は憲法が公開を要求している弁論ではない」とした上で、「所在尋問は次の弁論で証拠として上程されるため、公開要請は担保される」などとしている。

 同日の所在尋問は福岡高裁那覇支部の法廷で、渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明さんが証言する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_06.html

 

2007年8月30日(木) 朝刊 27面

歪んだ戦局 刻々と/「戦中の新聞展」始まる

 沖縄戦の様子を伝える戦時中の新聞を集めた「新聞展 戦中の記事でふりかえる沖縄戦」(沖縄歴史教育研究会主催)が二十九日、那覇市寄宮の県立図書館で始まった。文部科学省の教科書検定が問題になる中、「権力により、沖縄戦の事実が歪めて伝えられたことを知ってほしい」と企画した。九月三日まで。

 新聞展では、同研究会メンバーの仲村顕さん(34)が集めた戦時中の新聞や、県立図書館が所蔵しているものの中から沖縄戦の実相が誤って伝えられた様子がよく分かるものなど十二点を選び展示している。

 一九四五年三月二十八日の毎日新聞では、米軍の慶良間諸島上陸について「所存の我部隊は之を邀撃すると共に我航空部隊は果敢なる攻撃を続行中」と報じ、「十艦百五十余機屠る」と事実と異なる大本営発表がそのまま伝えられた。

 同七月三十日の福島民報は「重傷者は集団自決」の見出しとともに、沖縄戦で重傷を負った兵士数人が戦闘の足手まといにならないよう、自ら手榴弾を使って自決したと美談調に報じた。

 終戦した八月十五日のウルマ新報など、貴重な紙面も並べられている。仲村さんは「権力が事実を誇張したり、歪めたりして情報操作した当時と、いまの状況が重なって見える。そのことを多くの人に感じ取ってもらえれば」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_07.html

 

2007年8月30日(木) 朝刊 27面

市議長会も検定撤回決議

 高校歴史教科書の検定で沖縄戦「集団自決」(強制集団死)の日本軍関与の記述が削除・修正された問題をめぐり、県市議会議長会(会長・安慶田光男那覇市議会議長)は二十九日、那覇市内で開いた総会で、検定意見の撤回を求める決議案を全会一致で可決した。また、構成十一市議会がそれぞれの姉妹都市の議会に同様の決議を呼び掛けることを申し合わせた。

 決議は「『集団自決』が日本軍による命令・強制・誘導等なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。十月の九州市議会議長会理事会に、議案として提出することを決めた。

 また、県民大会の実行委員会に同会が加わることも正式決定した。


全議員参加は合計8議会に


 市町村議会で「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への全議員の参加を確認したのは二十九日現在で、那覇市や八重瀬町など八議会となった。さらに六議会が全議員参加の方向で、協議することにしている。


金武町議会も全議員参加へ

県民大会


 【金武】金武町議会(松田義政議長、十九人)は二十九日、全員協議会を開き、九月二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に、全議員が参加することを決定した。

 松田議長は「町議会として検定意見撤回の意見書を全会一致で可決しており、議員全員で参加すべきだと判断した。歴史の検証は正しくなされるべきだ。多くの町民が参加できる態勢を整えたい」と話した。

 同町では、町遺族会の呼び掛けによる各種団体会議を来月五日に開き、より多くの町民が参加できる態勢づくりを進める考え。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月30日朝刊)

[内閣支持率回復]

「安倍ノー」は変わらず

 安倍改造内閣の発足に伴い実施された共同通信社の全国緊急電話調査で、内閣支持率が40%台を回復した。三カ月以上にわたって下落が続き、調査の度に最低記録を更新していた支持率がここにきて上昇に転じたことは、新内閣に対する国民の期待の表れ―とみていいのだろうか。

 清新さには欠けるが、派閥の領袖や大臣経験者を並べた布陣には「重厚」「安定」という評価もあった。国民の関心が高い年金問題を所管する厚生労働大臣に知名度の高い舛添要一氏を抜てきしたが、公然と首相批判を繰り返した人物を入閣させたことも懐の深さをアピールした形となり、支持率押し上げの要因となった可能性がある。

 だが、「支持しない」が依然として45・5%の高水準を維持し、支持率を上回っている状況に変わりはない。

 識者に言わせれば、「底を打っているからこれ以上悪くなりようはない」(東大先端科学技術研究センター御厨貴教授)ところまで落ちていたのであり、「改造前に比べれば“ちょいマシ”内閣」(プロデューサー残間里江子さん)なのだから、発足直後の時点で支持率が上向くのは、ある意味、当然のことといえる。

 むしろ、改造内閣の先行きを暗示するものとして注目すべきは、内閣支持率が回復を見せた一方で、安倍晋三首相について「辞めるべきだ」が前回調査比1・8ポイント増の51・3%と過半数を占めたことだ。国民は、改造内閣の顔ぶれに一定の評価をしながらも安倍首相は辞めるべきだと考えているのである。国民の声は、明確な「安倍首相ノー」にほかならないのだ。

 安倍改造内閣について本紙は、安倍首相の続投そのものが最大のサプライズであり、内閣の不安要素は安倍首相その人だと書いてきた。国民も同様の不信、懸念を抱いていることがうかがえる。

 改造内閣の真価が問われるのは、本格論戦が始まる秋の臨時国会以降になるが、国民に支持されない首相に率いられた内閣の前途は、極めて厳しい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070830.html#no_2

 

琉球新報 社説

米軍再編特措法 地元の負担軽減どこへ

 日米両政府が合意した米軍再編計画の進展度合いに応じ、関係市町村に交付する再編交付金を、減額かゼロにできることなどを定めた米軍再編特別措置法(駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法)が29日施行された。

 再編交付金は沖縄側からすれば、基地負担の迷惑料である。基地負担を押し付けられた関係自治体に対しては、無条件で交付するのが筋である。

 しかし、米軍再編特措法はそうはなっていない。政府に従う自治体には交付金を与え、異を唱える自治体は冷遇する。露骨とも言える「アメとムチ」の法制化である。

 同法は基本理念として「駐留軍等の再編に対する幅広い国民の理解が得られるよう配慮されなければならない」と明記している。「アメとムチ」では、同法が本来目指すべき「幅広い国民の理解」を得られるはずはない。

 再編交付金を受けるには、防衛相から「再編関連特定周辺市町村」の指定を受ける必要がある。指定条件は「再編へ理解が示されている」ことである。国の言う「理解」とは、再編計画の「丸のみ」にほかならない。

 負担軽減を求める地元市町村の要求を再編交付金で封じ込める意図がありありである。

 普天間飛行場をキャンプ・シュワブ沿岸部を中心とした区域に移設する再編計画を、名護市は基本的に受け入れている。その上で、沖合に移動させることを求めていることに国は理解を示さず、名護市を再編交付金の対象とするとの国の方針は示されていない。

 久間章生元防衛相が交付対象になるとの考えを示していたのに対し、小池百合子前防衛相は判断を保留した。

 名護市が再編交付金対象自治体に該当するのは明らかだが、実際の対象にするかどうかは恣意(しい)的に運用される恐れがあることを、両氏の食い違いがはからずも証明したといえよう。

 米軍再編特措法施行に合わせて点数制の再編交付金の算定方法などを定めた省令も公布、施行された。航空機の「配備なし」はゼロ、「10機以上の増加」は2点、10機ごとの増加で1点ずつ加算される。10機に対して1点の設定が妥当かどうかも不透明である。

 海上保安庁は2008年度の概算要求で、米軍再編に伴うキャンプ・シュワブ沖での海上警備体制を強化するために、中城海上保安署を「中城海上保安部」に格上げする。

 国の姿勢からは、地元の意向よりも日米合意を最優先させることしか見えてこない。

 米軍再編の目的の1つは「地元の負担軽減」である。国の施策はそれと大きく懸け離れている。

(8/30 9:46)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26710-storytopic-11.html

 

2007年8月30日(木) 夕刊 5面

沖縄・嘉手納議会も抗議へ/未明離陸

 【沖縄】米軍F15戦闘機など計五機が未明に嘉手納基地を離陸した問題で、沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会(与那嶺克枝委員長)は三十日午前、抗議決議と意見書の両案を九月六日に開会する九月定例会本会議に提案することを決めた。全会一致で可決する見通し。

 抗議決議では「早朝の時間帯の離陸を回避した本国帰還は可能だ」として騒音防止協定の順守などを求めている。

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など航空機計五機が二十八日未明に同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十九日、基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、未明離陸の回避などを求める抗議決議、意見書案を九月五日開会予定の定例会に提出することを決めた。

 委員会では「深夜の爆音は住民の我慢の限度を超えている」など、再三にわたる地元自治体の反対を無視し、未明離陸を強行した米軍を批判する意見が多く上がった。

 抗議決議、意見書は首相、外相、同基地司令官らに郵送する。また、同基地司令官、外務省沖縄事務所などについては、抗議決議、意見書に対する見解の回答を求める。

 一方で、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は同日、いかなる理由でも、未明離陸を全面的に回避するよう求めた抗議文書を同基地司令官に送付した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301700_03.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 2面

「普天間」停滞 悔やむ/守屋次官離任会見

 【東京】退任が決まっている防衛省の守屋武昌事務次官は三十日、防衛省で最後の会見に臨んだ。米軍普天間飛行場の移設問題について「これは沖縄側の切なる叫びだった。それにもかかわらず(日米合意から)十数年たっても今のところに居続けている」と述べ、在任中に実現できなかった無念さをにじませた。

 守屋氏はSACO(日米特別行動委員会)や在日米軍再編など在沖米軍基地問題に深くかかわってきた。特に普天間飛行場の移設では、SACO合意した辺野古沖案が頓挫した経緯から、米軍再編で合意したV字案の実現に固執し、強行的な姿勢を貫いた。

 こうした経緯を踏まえ、「基地被害のない沖縄を目指したいとの思いで(当時の)橋本首相、梶山官房長官が取り組んだ。国防上、基地が必要ということとの調和をいかに図るかが基本だが、やはり、県民に大きな負担が残る形での基地のありようは変えてほしいというのが原点だ」と強調した。

 その上で、日米特別行動委員会(SACO)合意から十年以上経過してもなお実現していない現状に、「十年前の県民の皆さまの思い、そういうものを踏まえて、あらためて原点に返って考える必要があると考えている」と述べ、普天間移設への理解を求めた。守屋次官は三十一日付で退任する。


     ◇     ◇     ◇     

守屋氏、院政狙い?/常勤「顧問」就任へ


 【東京】守屋武昌事務次官が、退任後も顧問として防衛省に残ることが三十日、固まった。アドバイザー的な役割を担う官庁の顧問職は通常、非常勤だが、防衛省首脳によると守屋氏は常勤での採用を望み、高村正彦防衛相に申請したという。

 顧問に実質的な権限はない。しかし、在任期間が異例の四年を超え、「防衛省の天皇」と呼ばれるほど強い影響力を持つ守屋氏だけに、顧問に就けば防衛省内に影響力が残ることは必至だ。

 守屋氏に関しては「考えの近い人間ばかりを重用し、自分に背く官僚はことごとく排斥してきた」との批判も根強く、省内では「会社の社長が会長として居座るようなもの」(幹部)という冷ややかな声もある。

 一方で、別の幹部は「普天間代替施設の修正に固執する沖縄側をけん制できる」とも指摘する。

 米軍普天間飛行場移設問題で、V字形滑走路の沖合移動を求める県や名護市は、日米合意を一貫して譲らない守屋氏を快く思っていなかった。

 事務次官人事をめぐり、小池百合子前防衛相が移設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書を県に送付する代わりに、県や名護市の(守屋氏を退任させる)要望をのんだとの密約説が浮上した経緯もあるほどだ。

 県や名護市には守屋氏の事務次官退任で、沖縄側の主張が通りやすくなるとの期待感もあったが、顧問就任となれば沖合移動の要望が通らない状況は今後も続くことになる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_05.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 2面

「県民の声丁寧に聞く」/新沖縄相と知事初会談

 【東京】仲井真弘多知事は三十日、内閣府を訪ね、安倍改造内閣で沖縄担当相に就任した岸田文雄氏と初めて会談した。仲井真知事は沖縄振興への支援と、米軍再編で地元の意見を聞くよう要望。岸田沖縄相は、米軍再編について「日米合意が基本」との認識を示す一方、「県民の声を受け止め、丁寧に話を聞かせてほしい」と述べた。

 仲井真知事は「内閣で一番若く、行動力ある大臣と聞いている。百三十七万県民も期待している」と祝意を表明。沖縄振興では「復帰三十五年間、旧沖縄開発庁時代からの支援で観光が伸びるなど、いいところまで来た。今しばらく支援をいただきたい」と要望した。

 米軍再編については「兵士も減り、基地がかなり大きく返ってくる可能性があり、基本的には大賛成だが、進める過程で地元の意見や気持ちをくんでほしい」と求めた。

 仲井真知事は、首相官邸で与謝野馨官房長官と、岩城光秀、大野松茂両官房副長官とも面談した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_06.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 27面

与那原町で独自に実行委/検定撤回 県民大会

 【与那原】与那原町議会(又吉忍夫議長、十四人)は三十日、全員協議会で「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、町当局(古堅國雄町長)と協力して町独自の実行委員会を組織、町民に参加を呼び掛けることを決めた。

 町内各種団体に働き掛け、週明けにも実行委員会の立ち上げに向けた準備会を開く方針。町議員の全員参加も了承した。

 県民大会が開かれる九月二十九日には町内で出発式を行い、検定意見撤回を求めるアピール文を読み上げる。会場のある宜野湾市まで町民の送迎車両の確保など、町が予算措置を検討する。

 全員協議会に同席した古堅町長は「議会が県民大会への全議員参加をいち早く表明しており、町としてもきちんと取り組みたい。県民大会を成功させるため、すべての立場を超えて町民に参加を呼び掛けたい」と話した。

 又吉議長は「平和発信は与那原から、との強い決意を示したい」と語った。

 町議会は、十七日の議会運営委員会で県民大会への全議員参加を確認していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_07.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 27面

住民側、県調査否定に反論/新嘉手納爆音

 米軍嘉手納基地周辺の住民五千五百四十一人が、国に夜間・早朝の飛行の差し止めと損害賠償を求めている新嘉手納爆音訴訟控訴審の第七回口頭弁論が三十日、福岡高裁那覇支部(河辺義典裁判長)であった。住民側は、県が実施した騒音調査の証拠能力を否定した国側に反論。「(国側の主張は)健康被害に対する知識や統計の解析を誤認している」とし、客観的かつ科学的に適切な事実認定をするよう求めた。

 住民側は、原告居住地域の公民館で本人尋問と現場検証をするよう求めており、原告代表の意見陳述で又吉清喜さん(64)=うるま市川崎=は「地域の生の声を聞いてほしい」と語った。十月十八日に予定されている次回の弁論で、住民側が申請している専門家証人の採否が決まる見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月31日朝刊)

[米軍再編法施行]

恣意的な運用をするな

 米軍再編推進法が二十九日施行されたのに伴い、防衛省は交付金の受給候補地四十市町村や、交付金の算定基準を盛り込んだ運用概要をまとめた。

 米軍再編では、普天間飛行場の代替施設(V字形案)について県と名護市が修正を求めているのに対し、政府は現段階では応じない構えで、双方の溝が深まっている。

 膠着状態が続く中で、政府の強硬姿勢が際立つ。再編計画に協力する自治体には交付金を支給し、拒む自治体は冷遇する。「アメとムチ」政策で再編の受け入れを迫っている。

 しかし、日米合意を一方的に押し付ける強圧的な姿勢だけで、再編問題を解決できるのかどうか。その実効性については疑念を抱かざるを得ない。

 防衛省によると、負担が増える所在市町村などを対象に、防衛相が財務相と協議した上で、交付対象となる「特定周辺市町村」に指定する段取りだ。

 再編事業の進ちょくを「受け入れ」「環境影響評価の調査着手」「工事着工」「再編の実施」の四段階に分けた。

 再編に伴う負担の増減については、(1)防衛施設面積の変化(2)施設整備状況(3)航空機・艦船の数や種類の変化(4)人員数の変化(5)施設の使用態様の変化―を基礎として点数化した。

 一点当たりの交付の基準となる額を算定し、市町村の負担の点数を掛け合わせて交付金が決まる仕組みだ。

 進ちょく次第では減額し、ゼロとすることもできる。「米軍再編への賛成が遅れるほど総額が減る仕組み」(防衛省幹部)という。住民対立に油を注ぐ露骨な政策としかいいようがない。

 受給候補地には移設先の名護市、陸上自衛隊のキャンプ・ハンセン共同使用に反発している金武町、宜野座村、恩納村のほか、浦添市が含まれる。

 その一方で、嘉手納基地周辺の自治体については再編交付金の対象になっていない。那覇防衛施設局は、本土への訓練の一部移転と自衛隊の共同使用が予定されているため、相殺されるとの考え方を説明している。

 これで説得できるのか。周辺自治体の反発は必至だろう。政府は周辺住民の声に真摯に耳を傾けるべきだ。

 同法施行令には再編交付金の対象となる「特定周辺市町村」のほか、補助金かさ上げ対象となる「振興特別地域」の指定要件が規定された。施設局は振興特別地域について、岩国基地と代替施設移設先のキャンプ・シュワブが該当するとの見通しを示している。

 再編交付金の交付基準の運用については、政府のさじ加減に委ねられる側面もある。恣意的な運用につながらないかどうか、注視する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070831.html#no_1

 

2007年8月31日(金) 夕刊 1面

再編交付金 名護は支給対象ならず/防衛相見解

 【東京】高村正彦防衛相は三十一日の閣議後会見で、在日米軍再編への協力度合いに応じて防衛相の裁量で支払う「再編交付金」の交付対象に、名護市が含まれるかどうかについて「(現状では)必ずしも十分ではないと思っている」と否定的な見解を示した。

 同市が米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの移設問題で、日米合意したV字形滑走路の沖合移動を求めていることから、交付条件の「再編の円滑かつ確実な実施に資すると認められた場合」に該当しないと判断したものとみられる。

 防衛省は交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」の指定について、所在市町村ごとに判断するとしている。名護市とともに候補地とされた宜野座村が同様に沖合移動を求めるのであれば、交付対象にならないことになる。

 再編交付金の名護市への交付をめぐっては、これまで久間章生元防衛相が「受け入れは一応表明している」と説明。再編事業の進ちょく率として分類する(1)再編の受け入れ(上限額の10%)(2)環境影響評価(アセスメント)への着手(同25%)(3)工事(埋め立てなど主要部分)の着工(同66・7%)(4)再編の実施(同100%)―の第一段階の条件は満たしており、交付対象との見解を示していた。

 高村防衛相は「対象にするような条件を整えて対象にしたいと強い気持ちを持っている」と強調。名護市に対し政府案(V字案)への理解を引き続き求めていく考えを示した。

 九月一日付で退任する守屋武昌事務次官の防衛省顧問就任については「まだ聞いていない。賛成も反対もない」と言及を避けた。


島袋市長「おかしい」


 【名護】名護市の島袋吉和市長は三十一日、高村正彦防衛相が、名護市を米軍再編交付金の対象とすることに現状では否定的な見解を示したことに対し、「国の考えをあらめて確認したい」とした上で、「普天間飛行場の名護市への移設に、市は基本合意し海域の事前調査も認めている。協議をしようと言っているのであって拒否しているわけでもないのに、交付金の対象から漏れるということになれば、おかしい」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311700_01.html

 

2007年8月31日(金) 夕刊 1面

大臣判断で減額 批判/説明会で名護市

 米軍再編特別措置法が二十九日に施行されたことを受け、那覇防衛施設局は三十一日午前、在日米軍再編への協力度合いに応じ、関係自治体に配分する再編交付金の説明会を同局内で開いた。キャンプ・シュワブへの普天間飛行場代替施設建設に関し施設局は、事業進ちょくに応じ、四段階に分けて交付割合を設定していると説明。「受け入れ」がなければ「(交付対象に)指定されない」と強調した。

 これに対し、名護市の玉城政光政策推進部長は「市は地元の意見を聞いてもらいたいと主張しており、日米が合意したものを修正しろとは言っていない」と述べ、「容認」の認識を強調。「代替施設の事業が進んでも、防衛大臣の判断で減額やゼロとされるのはおかしい」と批判した。

 地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備された嘉手納基地に関しては、本土へのF15戦闘機の訓練移転で負担が相殺され、周辺の嘉手納町、沖縄市、北谷町は指定候補の対象外となった。

 施設局は交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」の「指定候補」として▽普天間飛行場代替施設の建設予定地のキャンプ・シュワブにかかる名護市と宜野座村▽陸上自衛隊が共同使用するキャンプ・ハンセンにかかる金武町、宜野座村、恩納村▽那覇軍港の返還に伴い一部施設が移転される浦添市―を挙げた。

 また、嘉手納基地より南の基地返還が具体化した段階で、施設の統合集約などにより、指定対象自治体が「追加される」との見通しを示した。

 同法は指定候補の市町村であっても、防衛大臣が「再編の円滑かつ確実な実施に資すると認める場合」に限り指定する、と規定。さらに「再編事業の進ちょくに支障が生ずる場合には交付額を減額し、またはゼロとすることができる」としており、国の裁量に大きく委ねられている。

 防衛大臣が再編関連特定周辺市町村を指定後、各市町村に交付予算額を内示。その後、市町村からの事業申請の受け付けを開始する。説明会には県のほか、本島中北部を中心に十四市町村から約五十人が出席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311700_02.html

 

2007年8月31日(金) 夕刊 7面

施設局 道路整備を再開/ヘリパッド移設

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設問題で三十一日午前、那覇防衛施設局職員が工事用道路の整備作業を進めた。反対派住民ら約二十人が抗議し現場は一時騒然となった。

 反対派住民によると、午前八時すぎから、那覇防衛施設局の職員や作業員約四十人が、土のうを積んだトラック二台とともに現場に現れた。職員らはフェンスとトラックの間で隊列を組んで住民らの抗議行動を阻み、土のうを積み降ろして、道路の舗装作業を続けた。

 住民らが作業を中止するよう職員らに訴え、午前八時四十分すぎに、作業が中止された。施設局の職員は「日米合意に基づいて行っており、粛々と作業を進めていく」と話し、現場を立ち去っていったという。

 住民の伊佐真次さんは「人数の少ない時間帯を狙ってきている。阻止するには、圧倒的に人数が足りない。さらに、多くの人の協力が必要だ」と訴えた。道路の整備作業は二十三日にも行われている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311700_04.html

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