沖縄タイムス 関連記事・社説(9月4日、5日)

2007年9月4日(火) 朝刊 1面

与党側「更新」再協議へ/泡瀬保安水域

 【沖縄】八日に契約期限が切れる米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長は三日、市長の政策や市政の懸案事項を協議する定例の与党連絡会(議員十二人)に対し「一年間の期限で更新したい」との意向を示し、理解を求めた。

 これに対し、与党側は「基本的には新たな基地の提供はできないという考えで一致しており、一年更新については各会派で持ち帰って検討する」とし、契約期限までに再度、与党内で協議することを確認した。

 連絡会で、東門市長は「基地に対するスタンスは変わっておらず、本来なら共同使用協定の契約更新も認められない。今回は契約期限が迫っており、行政手続き上の問題で一年だけに期限を区切って更新したい」との考えを強調した。

 一方、野党側は六日から始まる市議会九月定例会で、同契約の更新問題や事業に対する市長の結論の時期などを追及する構え。

 市議二十四人(与党六人、野党十八人)で組織する市東部海浜開発事業推進議員連盟の事務局長の普久原朝健議員は「更新は当然のこと。野党としては、まずは与党がどのように判断するか推移を見守りたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_03.html

 

2007年9月4日(火) 朝刊 2面

「普天間」移設 地元との妥協点模索/沖縄相帰任

 就任後初めて来県した岸田文雄沖縄担当相は三日午後、那覇市内のホテルで帰任会見し、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、名護市が沖合へ移動する修正案を求めていることについて「名護市の意見はしっかり受け止めなければいけない」と理解を示しつつも「さまざまな意見、立場があり、そういうものを受け止めて最後に結論を出さなくてはいけないが、どういった結論に持っていくかは関係者全員の努力の積み重ねだと思う」と述べ、政府と地元が納得できる着地点を探る考えを示した。

 また、同飛行場の移設協議会の開催時期については「これからさまざまなチャンネルを通じ、信頼関係を構築させていただく中で、しっかり調整し、できるだけ早い時期の開催で調整をしたい」と述べた。

 県や県議会などから要望が出された沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した歴史教科書検定の意見撤回への対応については「県民の思いの深さは強く感じている。所管でないのでコメントは控えるが、要望いただいたことは内閣として、今後の施策の中にしっかりと受け止め、反映させていくのは当然のこと」との認識を示した。

 沖縄振興計画の後期五年に向けた対応では「沖縄の特色や優位性、強みを生かした産業振興と合わせて雇用の安定、人材育成、社会資本についてもめりはりをつけて努力をしなくてはいけない」と沖縄振興の推進に意欲を見せた。岸田担当相は会見に先立ち、県市長会や町村会など市町村四団体の代表らと懇談し、同日夕、帰任した。


北部振興継続に前向き


 【恩納】岸田文雄沖縄担当相は三日午後、米軍普天間飛行場代替施設建設予定地の島袋吉和名護市長ら北部圏域十二市町村長と会談した。会談で島袋市長は「北部地域では雇用、生活環境に遅れがある。県土の均衡ある発展のためにも、北部振興事業の予算が確実に確保できるよう、特段の支援をお願いしたい」と述べ、凍結されている北部振興事業の継続を強く求めた。

 岸田担当相は「県土の均衡ある発展のためにも、北部の振興は重要な課題だと認識している。二〇〇八年度の概算要求にも盛り込まれており、議論の中で関係者の協力と理解の下にしっかりと予算獲得に向けて努力していきたい」と前向きな姿勢を示した。

 会談後、岸田担当相は「北部圏域の発展、振興という点が今回のメーンテーマだったので、(基地問題については)具体的なやりとりはなかった」と語った。

 北部市町村会(会長・儀武剛金武町長)は、北部市町村の懸案事項として、北部振興事業への支援継続や地域高規格道路の整備など九項目の要請書を岸田担当相に手渡した。岸田担当相は同日午前、沖縄科学技術大学院大学の設立を推進する独立行政法人・沖縄科学技術研究基盤整備機構の発足二周年記念式典に出席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_04.html

 

2007年9月4日(火) 朝刊 2面

高村防衛相再び「今の案が最高」/都内で講演

 【東京】高村正彦防衛相は三日、都内で講演し、米軍普天間飛行場の代替施設(V字案)について「地元から(沖合展開を)要望されてアメリカと合意した案。工事のやりやすさや環境への影響など、いろいろな観点から考えた非常にバランスの取れた案だ」と述べ、県や名護市が求めるV字形滑走路の沖合移動をあらためて困難視した。

 高村氏は、「環境影響評価(アセスメント)の結果などを見て、こういうふうに動かした方が環境上いいというのが出てくると、またいろいろあるかもしれない」と述べ、県に提出したV字案を前提としたアセスの範囲内で、滑走路の位置が変更される可能性はあるとの認識を示した。

 その上で「(普天間移設は)ただでさえ遅れている。(沖合移動の案で)環境評価をまたやり直さないといけないようなことは絶対にない」と述べ、V字案を前提としたアセスの受理を「保留」し、沖合移動に固執する県を強くけん制した。

 高村氏は仲井真弘多知事が八月三十一日の会談で「今のままでは駄目だ。少し動かして受け入れるというのが自分の選挙公約。私の公約を知った上で今の与党は応援してくれた」と沖合移動や同飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態」の実現を強く求めたことも明らかにした。

 これに対して高村氏は「私たちからすれば今の案が最高で、地元の名護市長とか隣の町や村の方とかの要望を聞いて(V字案を)つくった。県知事からすれば県知事の言い分があるが、私たちは今の案が合理的だと思っている」と理解を求めたという。


増田次官「理解得る」/就任会見


 【東京】防衛省の増田好平事務次官は三日、就任後初めての記者会見に臨んだ。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブへの移設について「日米間の合意に従って、地元にもよく説明して理解を得る」と従来の政府見解を踏襲し、県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動を暗に否定した。

 在任期間が四年を超えた守屋武昌前事務次官の後任を務めることに「一言で言えば若干戸惑いを覚えている。『やっぱり若返ったら、駄目だったね』と言われないように、皆でよく相談しながら一生懸命やっていきたい」と新体制での抱負を語った。

 普天間移設問題についても質問に答える前に、「沖縄のこの問題についてこれまでの立場で逐一フォローしたわけではない」と断りを入れるなど、慎重な姿勢を崩さなかった。

 一方、会見に先立って守屋前事務次官の離任式が行われ、「在任中、最も印象に残っていること」に在日米軍再編を挙げた守屋氏。これに対し増田氏は送辞で普天間移設問題を挙げ、「揺るぎない信念と忍耐力を持って守屋事務次官は事務方の長としてさまざまな方針を打ち立て、米側と粘り強く交渉を行い、V字移設案で米側と合意を見ることができた」と守屋氏の手腕を評価。

 その上で「守屋事務次官が心血を注がれた米軍再編・基地問題について、日本の防衛、そして何よりも日本国民のために、職員一同精いっぱい努力していきたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_05.html

 

2007年9月4日(火) 夕刊 4面

町村議長会も決議/検定撤回

 県町村議会議長会(会長・神谷信吉八重瀬町議会議長)は三日の定例理事会で、文部科学省の高校歴史教科書検定で沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与の記述が削除・修正された問題に対し、検定意見の撤回を求める要望決議案を全会一致で可決した。

 九月二十九日に宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれる県民大会に三十町村の全議員三百七十四人と議会事務局職員の参加や住民に参加を呼び掛けることも確認した。

 決議は、県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議長会の検定意見撤回を求める要求に対し、文部科学省が「教科用図書検定調査審議会が決定することで理解していただきたい」との回答に終始していると批判。検定撤回と「集団自決」に関する記述回復を求めている。

 今回の検定を(1)あらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で審議会に諮問している(2)審議会への諮問案のとりまとめで係争中の裁判を理由に一方の当事者のみの主張を取り上げている―などとし「文科省の回答は到底容認できない」と糾弾している。決議は、衆参両院議長、首相、文科相、沖縄担当相に郵送する。


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名護市議会 全員参加/9月定例会で決議案提案


 【名護】名護市議会(島袋権勇議長)は四日午前の議会運営委員会(吉元義彦委員長)で、二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への全議員の参加を確認した。六日の九月定例議会冒頭で決議案が提案され、全会一致で可決される見通し。

 また、同市と友好都市などを結ぶ北海道滝川市、岩手県八幡平市、大阪府枚方市の議会に対して、検定意見の撤回の決議を要請することも確認した。

 島袋議長は「大戦を経験した沖縄の特殊事情をくみ取ってもらわないと困る。教科書から『集団自決(強制集団死)』の事実が削除されるようなことがあってはならない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041700_03.html

 

2007年9月5日(水) 朝刊 2面

地元理解に意欲示す/沖縄防衛局長、知事を表敬

 沖縄防衛局の鎌田昭良局長が四日、着任あいさつで県庁に仲井真弘多知事を訪ね、地元の理解に努める考えを示した。米軍普天間飛行場移設問題など、具体的な取り組みについては言及しなかった。鎌田局長は初の沖縄勤務。「これまで(沖縄に)かかわったことはなかったが、これから勉強したい」と強調した。

 仲井真知事は「沖縄防衛局とは、日ごろから仕事の上でしょっちゅう接触するので、よろしくお願いしたい」と述べた。

 面談後、仲井真知事は「安倍晋三首相も、地元の意見をよくくみ取って行政をやっていくべきだと言っているから、その精神に立ってやってもらえるのではないか」と期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709051300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月5日朝刊)

[米朝作業部会]

政府も非核化の後押しを

 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の米朝関係作業部会がジュネーブで開かれ、核放棄へ向けた「次の段階」措置を年内に完了することで合意した。

 六カ国協議では、北朝鮮の核計画の完全な申告と核施設の無力化を「次の段階」措置として設定している。

 中国・瀋陽で行われた朝鮮半島非核化作業部会で、北朝鮮は無能力化する核施設について、寧辺の実験用黒鉛減速炉と放射化学研究所(再処理施設)、核燃料加工施設の三カ所を挙げ、年内完了は困難との認識を示した。

 それだけに核施設の無能力化の完了時期を初めて区切った意義は小さくはない。高濃縮ウランによる核開発計画など難しい問題が残る中で、米朝の駆け引きが本格化したとみることもできる。楽観は禁物だが、非核化の次のステップへ向けた動きと受け止めたい。

 六カ国協議は二月に合意事項をまとめた。「初期段階措置」として、寧辺の核施設の活動停止・封印と国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れた見返りとして、北朝鮮に重油五万トン相当のエネルギー支援が行われた。

 このため「次の段階」をどのようにして具体化していくかが焦点だった。次回六カ国協議では年内完了という土台を基に本格協議が行われる。

 北朝鮮は米朝国交正常化へ向けてテロ国家指定解除を強く求めてきた。今回の協議後、朝鮮中央通信は米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除し、制裁についても解除するなどの措置を取ることになったと報じている。

 これに対し、ヒル国務次官補は「米国は指定解除していない。解除するかどうかは今後の北朝鮮の非核化進展にかかっている」と否定している。

 北朝鮮の核の完全放棄という目標達成は厳しく、交渉が長い道のりになるのは確実。「次の段階」の具体化へ向けて目の前には難題が山積している。

 一方、政府は日朝国交正常化以前に拉致問題解決が先決との基本姿勢を繰り返し強調してきたが、今後、関係正常化を視野に米朝二国間協議が日本の頭越しに進展する可能性も出てきた。

 日朝国交正常化作業部会が五日から再開されるが、政府は拉致問題に加え非核化へ向けた取り組みも後押しし、関係各国と協調していくべきだ。

 拉致問題が重要な課題であることに変わりはない。だがそれを前提条件にするだけでは北朝鮮に足元を見られ、日朝交渉は進展せずに、逆に米朝交渉を加速させる事態を招きかねない。

 政府は、拉致問題の解決と、朝鮮半島の非核化、日朝国交正常化を同時に達成していくような包括的枠組みを構築する必要があるのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070905.html#no_1

 

2007年9月5日(水) 夕刊 5面

未明離陸 嘉手納議会が抗議

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が八月二十八日未明に同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は五日午前に開会した九月定例会の冒頭、未明離陸の全面中止と騒音防止協定の順守などを求めた抗議決議、意見書をそれぞれ全会一致で可決した。首相、防衛相、同基地司令官、沖縄防衛局長、外務省沖縄大使などに送付する。

 未明離陸が旧盆明けに強行されたことについて「米軍の無神経さ、傍若無人な態度に激しい怒りを禁じ得ない」とし、「我慢の限界だ」と訴えている。

 うるま市の県立沖縄高等養護学校と前原高校の敷地内に米軍車両が侵入した問題についても真相究明と再発防止、兵員の綱紀粛正、教育の徹底を求める抗議決議、意見書も全会一致で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709051700_04.html

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