2007年9月8日(土) 朝刊 1面
10日も未明離陸 嘉手納F15
周辺首長 反発強く
【中部】米軍嘉手納基地報道部は七日、F15戦闘機四機と空中給油機一機が米本国に向け十日未明に同基地を離陸すると発表した。「アイロン・フロー計画」と呼ばれる、同基地の旧型F15を製造年の新しい機体に更新する措置に伴う。米軍は八月二十八日にも地元の反対を押し切って同計画による未明離陸を強行しており、基地周辺自治体の首長らは反発を強めている。
嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は七日午後、同基地司令官に対し「運用工夫で日中の離陸も可能であり、米軍は努力を怠っている」とする抗議文を送付した。
野国町長は「機体の入れ替えが目的なら、今後も未明離陸が続くことが懸念される。騒音防止協定で運用上とあるものを、時間を明記して飛行やエンジン調整を禁止させるべきだ。この問題は自治体と基地のものではなく、日米両政府で取り組まなければならない」と怒りをあらわにした。
同基地報道部は、未明の離陸について「搭乗員が日中、安全に目的地に着陸するため作戦上必要」だと説明。離陸予定時間については「作戦の安全上、明らかにできない」と公表しなかった。
八月二十八日の未明離陸では、北谷町砂辺地区で電車通過時の線路脇に相当する一〇九デシベル、嘉手納町屋良地区では一〇四デシベルをそれぞれ計測した。沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会は抗議決議、意見書を全会一致で可決し、いかなる理由でも未明離陸を行わないよう求めていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_01.html
2007年9月8日(土) 朝刊 27面
「夜だけは寝かせて」/F15・10日未明離陸
また爆音 怒る住民
【中部】寝静まった住宅街を、また激しい爆音が襲う。米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機の機体更新のため、十日未明にF15など計五機が同基地を離陸する。未明離陸は八月二十八日にも行われたばかり。繰り返される爆音被害に、基地周辺の首長や住民らは一斉に怒りの声を上げたが、米軍は地元の反対を押し切り「運用上の必要」を理由に強行する構えだ。
嘉手納町の宮城篤実町長は「未明離陸は町の基地問題の中でも解決を急ぐべき課題。国が積極的に解決に向けて取り組んでほしい」と述べた。「軍事優先の米軍のおごりが垣間見える」。沖縄市の東門美津子市長は「不安のない生活を願う周辺住民の気持ちを一切くみ取っていない。再度の早朝離陸に怒りを持って抗議したい」と強調した。
同基地に隣接する同町屋良地区。滑走路から約二百メートルの場所に住む知念小夜子さん(64)は「日常的に騒音と隣り合わせの生活を強いられている。せめて夜だけはゆっくり寝かせてほしい」と切実な訴えをぶちまけた。
八月に行われたF15戦闘機の未明離陸の際、北谷町砂辺地区は、長時間さらされていると難聴になるという一〇九デシベルの騒音を計測した。同地区に約四十年住んでいる国場信子さん(80)は「毎日朝から晩まで家の真上を飛ばれて頭が変になるかと思うこともある。毎日の爆音だけでもワジワジーしているのに、夜中の爆音は許せない」と怒りをあらわにした。
同基地から沖縄市向けに離陸した場合、飛行ルート直下に当たる沖縄市登川自治会の仲宗根清朝会長は「どうして未明なのか。夜が明けてからでいいじゃないか。抗議の声が届かないことにむなしさを感じる」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_02.html
2007年9月8日(土) 朝刊 1面
市町村に組織結成要請/検定撤回大会実行委
「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会は七日、県内四十一市町村の首長や議会議長に説明会を開き、市町村別に実行委を立ち上げるよう要請した。また、運営経費のカンパや、参加者の交通手段確保なども併せて呼び掛けた。
説明会には、本島を中心に約五十人が出席。実行委員長の仲里利信県議会議長は「住民に直接、参加を呼び掛けることができるのは市町村だ。町議全員の出席を決めた与那原町に習い、大会盛り上げに協力してほしい」とあいさつした。
実行委は、地域の各種団体を網羅した市町村実行委を立ち上げて、地域住民や各種団体に大会参加を呼び掛けるよう要請。目標の五万人を集めるため、各自治体での送迎バス確保を求めた。また、県バス協会に対して会場までの運賃無料化を提案するとした。
市町村からは取り組み状況などが報告された。十三日に町実行委を立ち上げる与那原町の古堅國雄町長は「高齢者の参加が多数予想される。会場で迷ったり、けがをしたりすることがないよう、安全面の確保を実行委で検討したい」と話した。
また、開催地(宜野湾海浜公園)である宜野湾市の伊波廣助議会議長は「地元開催のため、ボランティアの態勢づくりも検討しなければならない。まずは早急に実行委を結成したい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_03.html
2007年9月8日(土) 朝刊 2面
1年更新 与党が容認/泡瀬・共同使用
【沖縄】八日に契約期限が切れる米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長が「一年間の期限で更新したい」と米軍側に更新依頼書を送付していた件で、市議会与党十二人は七日までに、市長の方針を容認する見解をまとめた。
与党代表の普久原朝勇議員は「事業の是非について市長の結論が出ていない中、一年の更新であれば、同事業や基地問題の公約と切り離して考えるべきだと意見が一致した」と述べた。
沖縄防衛局は「契約期限の八日を過ぎて米軍から回答がなかった場合でも、更新手続き中ということで引き続き共同使用できる」と説明している。
一方、同事業の推進団体である沖縄市東部海浜リゾート開発推進協議会(仲村富吉会長)は同日、沖縄市役所を訪ね、東門市長に事業推進の要請書を手渡した。
要請書では、埋め立て後に市が大型ホテルなどを誘致して土地利用を図る東部海浜開発事業を推進するよう強調。仲村会長は「同事業は沖縄市の最後の望み。埋め立て後の人工島を観光やレクリエーションを主体として開発し、市の活性化と雇用の創出につなげ、市の一大プロジェクトを推進してほしい」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_04.html
2007年9月8日(土) 朝刊 2面
基本設計手続き着手/普天間代替
米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で沖縄防衛局は七日、飛行場本体や格納庫などの支援施設を含む施設配置の基本設計検討業務などを公募型プロポーザル(提案)方式で募集することを公示した。普天間代替施設事業で、同局が基本設計に関する手続きに着手したのは初めてだ。
業務内容は、基本設計(1)が「飛行場、飛行場支援施設(格納庫、整備施設など)及び護岸などにかかる施設配置などの基本設計及び施工計画の検討業務」。
基本設計(2)が「工場、倉庫のほか、隊舎、厚生施設など生活関連施設にかかる施設配置などの基本設計及び施工計画の検討業務」としている。
履行期限はいずれも二〇〇九年三月末。
また、環境影響評価準備書と環境影響評価書の作成業務も同日、公示した。履行期限は〇九年七月末。
防衛省が作成した普天間代替施設事業の概略工程表によると、「埋め立て工事・飛行場施設の工事」は、環境影響評価手続き、埋め立て申請手続きに続き、一〇年から着手する予定。
県や名護市は「現行案のままでは認められない」とのスタンスだが、防衛省はスケジュール通りに事業手続きを進めている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_05.html
琉球新報 社説
教科書県民大会 断固譲れない検定意見撤回
怒りもある。しかし、それよりもむしろ「過ちを繰り返してはならない」という危機感の方が強い。今、この動きを止めなければ、歴史が繰り返される恐れがあるからだ。これは、すなわち、わたしたちの祖父母や父母が巻き込まれた戦争地獄を再現するということである。
「教科書検定意見撤回を求める県民大会」(同実行委員会主催)参加へのうねりが日に日に大きくなっている。
7日開かれた県立学校長研修会で仲村守和県教育長は、学校長の全員参加を呼び掛けた。
大会実行委員会には老若男女、農林漁業、企業など幅広い22団体が加わった。県内41全市町村に地域実行委員会の立ち上げを求めることも確認されている。議会は、全市町村で撤回を求める意見書を可決した。県議会では同一定例会中で初めて2度も可決された。
さらに琉球新報社の調査では全41市町村のうち39市町村の首長が参加意向を表明した。国頭村、渡嘉敷村だけが「検討中」とした。両村は9月定例議会の日程調整や各市町村の動向を見ながら判断すると回答しており、ぜひとも「参加」を決断してほしい。
県民の間にもさまざまな考え方はあるし、時代の変化で、違いはより複雑になっている。このような状況下でありながらも、県民の意志は一点に集中しているのだ。
問題の発端を確認したい。文部科学省が2008年度から使用される高校教科書の検定結果を発表したことだ。日本史教科書にある沖縄戦の「集団自決」について、日本軍の命令や強要があったとの記述には、近年の状況を踏まえると必ずしも明らかと言いきれず「実態を誤解する恐れがある」との意見を付けた。意見を付けられた5社は「自決した住民もいた」「なかには集団自決に追い込まれた人々もいた」など、日本軍の関与に直接言及しない記述に修正した。
昨年まで「軍の関与」について検定意見は付いていなかった。今回初めてである。その根拠として、軍命令の存在に疑問を呈している書籍や現在係争中の裁判での陳述を挙げた。
ならば、県史をはじめ各市町村史に記された体験者の証言・記録をどう受け止めるのか。現在でも、体験者は、思い起こすのもつらい記憶を証言し続けている。文科省の検定意見は、これら重い証言を軽々しく扱っているに等しい。
「過ちを繰り返すな」と訴えるうねりは、さらに広がるに違いない。県民にとっては、それほど重大なことなのだ。
文科省は、県民の決意の重さを見誤ってはいないか。検定意見を撤回するべきだ。これだけは絶対に譲れない。
(9/8 10:35)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26983-storytopic-11.html
2007年9月9日(日) 朝刊 1・2・26面
普天間代替/防衛相「アセス後修正」
知事、事前合意求める
高村正彦防衛相は八日、那覇市の知事公舎で仲井真弘多知事らと面談後、記者会見した。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で、県などが滑走路の沖合移動を求めていることについては、環境影響評価(アセスメント)後の修正で対応する考えを表明。アセス手続きを進める中で、県の理解を得ることは可能との見解を示した。嘉手納基地より南の基地返還に伴う跡地利用支援や、北部振興策の継続については、普天間移設問題の解決が前提との見方を示した。
高村防衛相は、知事との面談で「アセスを進める中で客観的なデータを入手し、合理的に変えなければならないというものが出てくるのかどうか、(県や名護市と)誠実に話し合っていきたい」と提案。アセス後の修正に柔軟に応じる姿勢を見せることで、県にアセス手続きへの理解を求めた。面談後の会見で、防衛相は「知事からは否定的な感触はなかった」と強調した。
一方、仲井真知事は面談後、記者団に「アセスに入る前に、互いの考えを一致させてスタートした方がいいと言っている。アセスをやって、途中でいろいろ変更するというのは難しいと思っている」と難色を示した。
高村防衛相は会見で「私たちは日米合意案が自然環境、生活環境、実行可能性などから見て、極めてバランスの取れた合理的な案と思っている」とあらためて強調。「よほど合理的な変える理由がないと変えられない、というのが私たちの考えだ」と述べ、アセス後に修正を迫られる見通しは低い、との認識も示した。
県は高村防衛相に「嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還」の確実な実施と跡地利用支援、基地従業員の雇用確保などを求める要望書を提出。これについて高村防衛相は「普天間(移設問題)の話が進めば、基本的に対応できると思っている」と述べた。
高村防衛相は同日午前、名護市内で島袋吉和名護市長や北部首長と相次いで面談。北部振興策事業の継続について「普天間の解決策を見いだした上で、振興策も早期に進めたい」と述べ、普天間移設が北部振興策継続の鍵との見方を示した。
◇ ◇ ◇
「知事は否定せず」/防衛相、進展を楽観視
就任後初めて来県した高村正彦防衛相は、八日の仲井真弘多知事との面談で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で県などが滑走路の沖合移動を求めていることについて、環境影響評価(アセスメント)後の修正で対応する考えを表明。「知事からは否定的な感触はなかった」と強調した。県内部でも「互いに半歩寄れば手をつなげる状態」と楽観的な見方があり、アセス手続きが始まっていることを踏まえ、「現実的な解決策」を模索する兆候もみられる。
接点探る
「知事の方から、私の提案について『駄目だ』という否定的な感触はなかった」「『アセスを進めてはいけないとは言っていない』という言葉も(知事から)あった」
約二十分間の会見中、高村防衛相はアセス手続きを進めることや、アセス後の修正で対応することに、県が否定的ではないとの見解を五回も繰り返した。
「アセスの中で合理的なデータが出てくれば、今の政府案にしがみつくわけではない」と柔軟ともとれる言い回しもあったが、「よほど合理的な変える理由がないと変えられない」というのがむしろ本音だ。
防衛省は、県が法的にアセス手続きを拒否することはできない現実を踏まえた上で、政府案の「事後承認」を迫る可能性もある。
県側にも「現実的な収め方をどうするかが今後の課題」(県幹部)との認識はある。
防衛相がアセス後の修正で対応する考えを示したことに、県幹部は「歴代大臣が示してきた従来の考えと同じ」と冷静に受け止めつつ、「一つの考え方としてはあり得る。こちらも、アセスを絶対に進められないとは言っていない」と含みをもたせている。
ただ、アセス後に修正できる範囲は、法的に「軽微な修正」に限定されている。県幹部は「事前調整はできる」と主張するが、方法書の知事意見までに県民を納得させる形で国との接点を探るのは困難な情勢だ。
あつれき
「普天間移設問題がすべてのキーポイントになっている」。知事との面談の冒頭、高村防衛相はこう宣言した。
「県の要望書で普天間の件は二番目だった。最初に挙げられていたのは嘉手納以南の返還に関する内容だった」と指摘。県が要望した「嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還」の確実な実施と跡地利用への支援などについては、「普天間の話が進めば、基本的に対応できる」との考えだ。
北部振興策の継続に関しても「普天間の話が進めば基本的に対応できる」と強調した。
北部振興策に対する北部市町村の立場について、同市町村会長の儀武剛金武町長は「普天間問題がなかなか解決されないでいると一致していくのは難しい」と言及する。
別の首長は「名護市も国もメンツにこだわっている面があるのではないか。名護の方には自分から、こだわるべきでないと市長に言っている」といら立ちを見せる。
県とともに滑走路の沖合移動を求めている名護市も、周辺自治体とのあつれきが表面化しつつあり、微妙な立場に追い込まれている。(政経部・渡辺豪、北部支社・石川亮太)
名護市長「沖合案が合理的」/議論は平行線
【名護】高村正彦防衛相は八日、米軍普天間飛行場移設先の名護市キャンプ・シュワブを視察後、島袋吉和名護市長、北部首長、移設先に隣接する辺野古区長らと名護市内で相次いで会談した。
高村防衛相は「生活環境や自然環境、実行可能性からみて日米合意案が一番合理的だ」と述べ、理解を求めた。一方、島袋市長は「生活環境や騒音などから沖合に出した方が合理的」と主張。議論は平行線をたどった。高村防衛相が名護市への支給を困難視している「再編交付金」については言及がなかった。
島袋市長や北部首長らとの会談後、高村大臣は「これから誠意を持って話し合い、できるだけ早く合意点を見つけ出そうということで一致した」と述べ、協議を継続する考えを示した。島袋市長は沖縄タイムスの取材に、「誠意を持って協議していくことを確認した。名護市としての考え方を主張できた。(防衛省の)事務方からの説明との違いを感じてもらえたのではないか」として、地元の意向に耳を傾けてくれることに期待感をにじませた。
辺野古区の大城康昌区長は生活環境への配慮や地域振興の実現を求め、「久辺小中学校の防音設備の整備をお願いする」と要望した。高村防衛相は「最大限配慮する」と前向きな姿勢を示した。
高村防衛相はその後、宜野湾市で、沖国大の米軍ヘリ墜落現場を視察したほか、同大屋上から普天間飛行場を見た。
市民団体、高村防衛相に抗議
【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対している市民団体のメンバーらは八日、就任後初めて来県して同基地の視察や島袋吉和名護市長らとの会談を行った高村正彦防衛相に対して、「県内への新基地建設反対」など抗議の声を上げた。
同日午前七時、移設に反対するヘリ基地反対協議会の呼び掛けで、同基地第一ゲート前に約七十人が集まった。同七時四十分ごろ、高村防衛相が到着すると、基地建設に反対するプラカードを掲げたメンバーらが「新基地計画を撤回せよ」「普天間飛行場を即時撤去せよ」とシュプレヒコールを繰り返した。
ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「事前調査の実施や不備だらけのアセス方法書など、法律を無視した政府の手法に憤りを感じる。新しい基地を造らせないという沖縄の声を、しっかりと伝えなければいけない」と語気を強めた。
アセス学会に中止要請
【東京】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)に反対する「辺野古への基地建設を許さない実行委員会」は八日、都内で開かれた環境アセスメント学会の出席者に署名運動を行うなどしてアセスの中止を呼び掛けた。
同実行委は同日の学会終了後、出席者有志とともにアセスの即時中止を求める緊急声明を発表した。この日集まった三十八人分の署名を近く沖縄防衛局に送付する。
アセスに反対する有志として同学会の石川公敏副会長は「法の手続きにのっとっていない矛盾だらけのアセス。これでは独裁専制国家と言わざるを得ない」と非難した。
NPO地域づくり工房(長野県)の傘木宏夫代表も「計画が定まっていない今の段階でアセスの方法書を出すのはおかしい。今後、仲井真弘多知事は方法書を受理した上で、きちんと拒否の姿勢を示したほうがいい」との見方を示した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709091300_01.html
2007年9月9日(日) 朝刊 1・27面
那覇であす「集団自決」訴訟出張法廷/金城重明氏証言
沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令を出したと著作に記されて名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の戦隊長だった梅澤裕氏(90)らが作家の大江健三郎氏と岩波書店に、出版の差し止めなどを求めて大阪地裁で争われている訴訟の所在尋問(出張法廷)が十日、福岡高裁那覇支部の法廷である。渡嘉敷島で「集団自決」を経験した金城重明氏(78)が被告・岩波側の証人として出廷。原告と被告双方の質問に答える。法廷は非公開。
渡嘉敷島では米軍が上陸した翌日の一九四五年三月二十八日、「集団自決」が起きた。犠牲者は三百二十九人に上るとみられる。金城氏は当時十六歳。母や弟、妹に手をかけた体験を通して、軍の命令や強制、誘導なしに「集団自決」は起こり得なかったことを訴えている。
大阪地裁で七月に行われた証人尋問では、渡嘉敷島に駐屯していた部隊の戦隊長だった故赤松嘉次氏が住民に「集団自決」を命じたかをめぐり、原告側の証人として当時の副官や中隊長ら二人が「命令はしていない」と証言。金城氏は、これに相対する被告側の証人と位置付けられる。
◇ ◇ ◇
宮古島大会 市長が委員長に
【宮古】宜野湾市で二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に合わせた宮古郡民大会の実行委員会は八日、宮古島市内で初の会合を開いた。委員長に伊志嶺亮市長を選んだほか、教育団体や経済界、労組団体、市議会などを網羅した組織体制を確認した。同市平良の前福多目的運動場で午後三時の開始も決定、雨天の場合は隣接する屋内練習場で行う。
実行委員会の副委員長には多良間村の下地昌明村長や友利議長、久貝勝盛宮古島市教育長ら八人が選ばれた。事務局は市議会事務局に設置。三千人の動員を目指すことも確認した。伊志嶺市長は会合の冒頭で「大会成功にしっかりとつなげていきたい」と語った。
「教科書会社を味方につけて」
集会で山口准教授
沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題を考える講演会が八日、琉球大学であった。研究者約二十人が出席。教科書会社に対して、印刷前に記述内容を手直しするよう求める運動の必要性を指摘する声があった。
琉大の山口剛史准教授が解説。検定の撤回については当然譲れないとしたが、印刷・製本される前に記述内容を手直しする正誤訂正による復活を求めることができると説明した。「記述復活には教科書会社の協力も必要で、味方に取り込みながら運動をつくらないといけない」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709091300_02.html
沖縄タイムス 社説(2007年9月9日朝刊)
[嘉手納F15未明離陸]
米軍の強行姿勢は異常だ
米軍嘉手納基地は、F15戦闘機四機と空中給油機一機が米国に向け十日未明に離陸すると発表した。八月二十八日の未明離陸強行から二週間足らず。米軍は周辺自治体、議会の強い抗議や反対の声を無視するつもりのようだ。
嘉手納基地から派生する爆音の違法性は司法の場で何度も明らかにされ、政府が講じてきた騒音対策が十分でなかったことも指摘されてきた。
未明離陸の強行は、ただでさえ違法な爆音にあえぐ住民をさらに苦しめ、生活を破壊することを意味する。
「せめて夜だけはゆっくり寝かせてほしい」という住民の訴えは人としてごく当たり前のことではないか。
こんな時、最も頼りになるはずの政府の対応はどうだろう。八月二十八日の未明離陸後、基地所在市町村長らの要請に、那覇防衛施設局(当時)は「今後もできるだけ行わないよう米側に検討を求めていく」と回答。外務省沖縄事務所は「東京の高いレベルで運用改善できないか米側と協議している」と強調したものの、具体的な解決策は今もって示されていない。
未明の離陸を変更する方法はあるはずだ。実際、五月に未明離陸する予定だったF22Aラプターのうち、二機は午前十時すぎに離陸、グアム経由で本国へ帰還したではないか。
外務省沖縄事務所は「(グアムの)空軍基地はF15が常駐していないので、十分な機体整備ができない」との米側の説明を受け、グアム経由は困難との見方を示したが、それでは住民は納得できない。
政府は、最も眠りが深くなる未明に、爆音でたたき起こされる住民の身になってほしい。日本の憲法と法律で守られているはずの国民が、「作戦上必要」との理由だけで未明に離陸する米軍戦闘機で夜も眠れない。こんな理不尽なことが許されていいはずはない。
基地の提供責任は政府にある。ならば、基地の運用改善を住民の立場から米国に毅然と要求すべきだ。それが、沖縄に過度な基地負担を強いてきた政府の責務である
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070909.html#no_2
2007年9月10日(月) 夕刊 1・8・9面
沖縄法廷 軍命存在強調/「集団自決」訴訟
沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の戦隊長やその遺族が、戦隊長による命令はなかったとして、作家の大江健三郎氏と岩波書店を相手に、名誉棄損に基づく出版の差し止めなどを求めて大阪地裁で争われている訴訟で、裁判官が裁判所外で証人から話を聞く所在尋問(出張法廷)が十日午後、福岡高裁那覇支部の法廷で始まった。「住民は崇高な犠牲精神で自ら命を絶った」などと主張する原告側に対し、被告側証人として渡嘉敷島で「集団自決」を経験した金城重明氏(78)が出廷。皇民化教育などを背景に、軍の命令や強制、誘導なしに「集団自決」は起こり得なかったことを証言する。
金城氏は同日午後一時前、支援者らの拍手に送られて同高裁支部に入った。被告岩波側を支援する大阪、東京、沖縄の三団体は同支部前の広場で集会を開き、大阪地裁に沖縄戦の真実を反映した公正な判決を求めるアピールを採択した。
七月に大阪地裁で行われた証人尋問では、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の元副官や部隊の中隊長が、原告側証人として「住民への命令はなかった」などと証言した。金城氏はこれに相対する被告側証人となる。
金城氏は当時十六歳。米軍の上陸を受け、渡嘉敷島の住民は軍の陣地近くに集められ、「天皇陛下万歳」と叫んだ村長の一声を皮切りに手榴弾による「集団自決」が始まった。手榴弾を持たない家族は互いに家族を殺し合った。金城氏も兄とともに母や弟、妹に手をかけた。
同訴訟は今年三月にあった高校の歴史教科書検定で、「集団自決」への軍関与の表現が削除される際の根拠の一つになった。検定撤回に向けて開かれる県民大会を二十九日に控え、自身の体験を語る金城氏の証言にあらためて注目が集まる。
法廷は非公開。尋問終了後は、那覇市内で開かれる被告岩波側の支援集会で、金城氏が証言内容を報告する。
◇ ◇ ◇
真実の証言 法廷に届け/支援者集会
「沖縄戦の実相をゆがめさせない」。十日午後、「集団自決」訴訟の出張法廷が始まった福岡高裁那覇支部近くには、被告側の支援者約八十人が集まり、集会を開いた。「集団自決(強制集団死)」を経験した証人の金城重明さんは声援を受けながら、法廷に入った。
午後一時前、集会の会場に到着した金城さんは、出迎えた大きな拍手に、硬い表情のまま頭を下げた。「沖縄戦の真実を判決に」と書いた横断幕とともに裁判所前へ。後ろには支援者が続き、階段を上る金城さんの背中に「頑張ってください」と激励の声が飛んだ。
これに先立つ集会で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の山口剛史事務局長は「大阪地裁で沖縄戦の真実をねじ曲げようとする動きを、出張法廷で沖縄に持って来られたことは支援運動の大きな成果だ」と指摘。「証言が裁判官の心に届くことを願う」と語った。
沖縄の真実を広める首都圏の会呼び掛け人の石山久男さんは「教科書検定とこの裁判は地下茎のようにつながっている。原告側の主張は破綻しており、検定も根拠をなくす」と強調した。
続いてマイクを握った沖縄戦裁判支援連絡会事務局長の小牧薫さんは、大阪地裁で傍聴した内容を報告。「勝利を確信しているが、それだけではなく沖縄戦の真実に踏み込んだ判決を期待している」と話した。
集会では、大阪地裁に対するアピール文も採択した。「『集団自決』の証言に裁判官が真摯に耳を傾け、沖縄戦の実相を十分に把握することを期待する。歴史の歪曲を許さず、真実が反映された公正な判決を強く求める」と主張した。
死の重さ声震わせ訴え/聞き取りした宮里芳和さん
十日午後に福岡高裁那覇支部で行われる「集団自決」訴訟の出張法廷を前に九日夜、那覇市古島の教育福祉会館で前日集会(主催・沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会、大江岩波沖縄戦裁判支援連絡会、大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会)が開かれた。県内や大阪、首都圏の支援者ら約百二十人が参加。座間味村の「集団自決(強制集団死)」体験者の聞き取りをしている宮里芳和さんや被告側から岩波書店の岡本厚編集副部長らが参加し、思いを語った。
「(梅澤)隊長は、自決した百七十八人の死を何と心得るのか」。座間味村平和学習ガイドブック編集委員の宮里さんは、手にタオルを握り締め、声を震わせた。家族同志が手をかけ合った事実の悲惨さから、聞き取りを始めた当初、体験者のほとんどが語ろうとしなかった。「自分の家族を殺したのだから長年話せなかった」。宮里さんは、声を詰まらせた。教科書から軍関与が削除され、「つらい過去を六十年余たって語る人も出てきた」と語った。
岩波書店の岡本編集副部長は、「原告側は『集団自決』を清らかな死、住民自ら軍の足手まといにならぬよう死んでいったといい、住民を巻き込んだことを反省でなく、正当化している」と語った。
また「無残な死について考えず、同情もない。そのことは(軍命の削除など)教科書検定にも表れている」と語った。
大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会の小牧薫事務局長は、沖縄での出張法廷の実現に「(軍命なしでは)家族に手をかけるなど決してあり得ないこと。証言する金城重明さんにはつらい思いをさせるが、裁判官に体験者が語る沖縄で起きた事実を分かってほしい」と語った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_01.html
2007年9月10日(月) 夕刊 1面
沖縄関係 一字一句同じ/首相が所信表明
【東京】安倍首相が十日の所信表明演説で沖縄関係に触れたのは、在日米軍再編に関する部分のみだった。「在日米軍の再編については、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力をあげて取り組むことにより、着実に進めてまいります」と、地域振興策をてこに推進する考えをあらためて示した。
この部分は、首相就任直後の昨年九月の所信表明演説と一字一句変わらず、今年の通常国会の施政方針演説も同じ文言だった。
二〇〇六年一月の小泉純一郎首相(当時)の演説では、米軍再編のほか沖縄科学技術大学院大学設立に意欲を示す発言もあったが、安倍政権の沖縄政策に対する関心の低さが浮き彫りとなった。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_03.html
2007年9月10日(月) 夕刊 1面
未明離陸あすに延期/嘉手納F15
【中部】米軍嘉手納基地は、十日未明に予定していたF15戦闘機四機と空中給油機一機の離陸を十一日未明に延期した。同基地は周辺自治体に対し、「F15のうち一機が、離陸前点検で軽度の修理が必要と判断された」と延期理由を説明した。
同基地では十日午前三時五十分ごろから、航空機のエンジン調整音が断続的に響いたが、騒音防止協定で飛行制限が定められた午前六時までの離陸はなかった。延期について周辺自治体への事前通知はなかった。
今回の未明離陸は、「アイロン・フロー計画」と呼ばれる、同基地の旧型F15を新しい機体に更新する措置に伴うもの。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_04.html
2007年9月10日(月) 夕刊 9面
パラオ虐殺 沖縄戦と共通/藤野准教授、あす報告会
アジア・太平洋戦争中、旧南洋群島で起きた日本軍のハンセン病患者虐殺を調査している藤野豊・富山国際大学准教授が、パラオの被害者の中で確認した沖縄県出身者の調査結果を十一日開く講演会で報告する。「日本軍によるハンセン病患者虐殺は、軍民一体の戦場で起こった。沖縄戦の住民虐殺と『集団自決(強制集団死)』と構造が同じだ」と指摘する。
今年三月、藤野准教授はパラオ共和国で療養所生存者に聞き取り調査を実施。県出身の被害者男性の氏名や職業、さらに一九四四年の空襲後、軍に食糧を奪われ、療養所を逃げた結果殺害されたこと―が分かった。
藤野准教授は「パラオでも日本軍は住民が捕虜になり、米軍に情報が伝わるのを恐れ虐殺した。ハンセン病患者虐殺もその中で起きた」と沖縄戦との共通性を指摘した。
しかし、旧南洋群島の被害実態の掘り起こしは、韓国や台湾が裁判の結果、究明が進んだのと違って、十分ではない。藤野准教授は、療養所の存在、強制収容を裏付ける公文書の発掘など事実を積み重ね、国に対して調査の徹底と謝罪を求めてきたが、具体的な動きは見えない。
その一方、日本国内では、親日感情が強い南洋群島の戦争を美化する動きも出てきた。「地元から責任を追及する声が出にくいことを利用し、戦時に人々が積極的に日本軍に協力したと美化する風潮がある。沖縄の『集団自決』歪曲の動きと似ている」と指摘する。
今回、県内資料から、サイパンに邦人専用仮療養所、ポナペの療養所の存在も新たに分かった。サイパン陥落時、療養所にいたとみられる県出身患者四人も確認した。沖縄からの実態掘り起こしが進むことを期待する。
講演会「戦争犯罪としてのハンセン病隔離政策」は十一日午後七時、那覇市の「てぃるる」、資料代三百円。問い合わせはハンセン病問題ネット沖縄、電話098(890)2491。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_05.html