沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月11日、12日)

2007年9月11日(火) 朝刊 1・22・23面

戦隊長下の軍命証言/「集団自決」沖縄法廷

軍曹が手榴弾配布/金城さん体験証言

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令を出したという著作への記述で名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の戦隊長とその遺族が作家の大江健三郎氏と岩波書店に、出版の差し止めや慰謝料などを求めて大阪地裁で争われている訴訟の所在尋問(出張法廷)が十日、福岡高裁那覇支部の法廷であった。渡嘉敷島で「集団自決」を経験した金城重明氏(78)が被告岩波側の証人として出廷。兵器軍曹から住民に手榴弾が配られ、「一個は敵に投げ、もう一個で死になさい」と訓示があったと、後になって当時の兵事主任からじかに聞いたと証言。自身の経験とも併せ、戦隊長指揮下の軍命令なしに「集団自決」は起こり得なかったと訴えた。

 一方で原告・戦隊長側は、島にいた金城氏自身が手榴弾が配られた現場に呼ばれていないなどとして、兵事主任の話の信用性に疑問を提起。金城氏が指摘する軍命令について、何を軍命ととらえ、具体的にどう伝えられたか証言するよう求めたという。

 法廷は非公開で、原告と被告双方の代理人が終了後に記者会見した。

 被告代理人によると、金城氏は、当時の兵事主任だった富山真順氏から「米軍が上陸する約一週間前に、兵器軍曹が役場に青年団や職員を集めて手榴弾を一人二個ずつ渡した。『一個は敵に投げ、もう一個で死になさい』と訓示していた」という話を聞いた、と証言した。

 また米軍の上陸時に、軍が住民を危険な陣地のそばに集まるように命じたことは、逃げ場のない島で住民を死に追い込んだことになると指摘。集まった住民の間で軍による「集団自決」命令が出たとささやかれる中、軍の伝令が村長に伝えられたとする元職員の証言などを軍命令の存在の根拠に挙げた。

 渡嘉敷島では、村長の発声で「天皇陛下万歳」が三唱され、手榴弾による「集団自決」が始まった。

 金城氏は「村長が独断で住民に『集団自決』命令を出すことはあり得ず、軍の命令なしに、『集団自決』は起こり得ない」と強調。

 「住民は軍の命令によって死んだのであり、その責任者は戦隊長」と訴えた。

 同訴訟は十一月九日に原告と被告の本人尋問があり、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏や大江健三郎氏らが証言。十二月二十一日の最終弁論で結審し、来年三月までに判決が出る見通し。


     ◇     ◇     ◇     

苦悩62年「真実」重く/愛する者に手を・・・目を閉じ語る


 大阪で続いていた「集団自決」訴訟の審理が、初めて沖縄の地で開かれた。十日午後、福岡高裁那覇支部であった所在尋問(出張法廷)で、被告側証人の金城重明さん(78)が、体験を基に「集団自決(強制集団死)」に軍命があったと証言した。県内外から支援者が駆け付け、被告側の勝利と教科書検定の撤回を勝ち取ることを誓った。原告側は金城さんの証言に、「推測だ」と切り返した。

 非公開となった「集団自決」訴訟の「出張法廷報告集会」(主催・沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会、大江岩波沖縄戦裁判支援連絡会、大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会)が十日、那覇市の八汐荘で開かれ、証人尋問に立った金城さんや弁護団が証人尋問の報告をした。県内や大阪、東京などの支援団体ら約百二十人が参加した。

 証人尋問を終えた金城さんは、こぶしを握り締め静かな口調で法廷の様子を語り始めた。愛する者に手をかけた過去を「手をかけなければ、非人情という思いがあった」と目を閉じながら語った。

 三百二十九人が「集団自決」の犠牲になった渡嘉敷島。座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(90)が自決命令は出してないとの証言に、金城さんは「六十二年前の本人の言葉だから、(命令していないという)うそは誰でも言える。私は六十二年間苦しんできたのに、隊長は苦しんだのか」と疑問視した。

 体調面も心配される中、原告側の反対尋問では、「痛いところに針を刺されるような気持ちだった」と苦悶の表情を見せる場面もあったが、「言いたいことは言えた」と振り返った。

 被告側の近藤卓史弁護士は「『集団自決』は自発的に起こり得ない実相を金城さんに証言してもらった」と体験者の証言の重みを語った。また、教科書検定について「戦争の残酷な部分をぼかしている文部科学省の責任は大きい」と批判した。

 集会の最後に、主催者側が「歴史の歪曲を許さず、沖縄戦の真実が反映された公正な判決が下されることを強く求める」とのアピール文を読み上げた。


教科書問題と「同根」/被告支援者「戦争できる国目的」


 「集団自決」訴訟の出張法廷に駆け付けた被告側の支援者は十日、原告の意図と、軍関与の記述を削除した文部科学省の教科書検定が「同根だ」と口々に指摘した。被告側の勝利と、検定撤回を同時に追求していく決意を示した。

 沖縄の近代史を研究する琉球大学大学院の赤嶺玲子さん(24)=沖縄市=は「軍隊がなければ、家族に手をかけることも、『集団自決』もなかった」と信じる。「裁判も教科書問題も、背後には戦争ができる国にしようとする政治が絡んでいる。戦争に行くのも、家族に手をかけるのも嫌だ」と力を込め、一連の流れを止めたいと語った。

 「原告の狙いは名誉の回復だけでなく沖縄戦の史実の改ざんにある」と感じた同大三年の西山佳那さん(22)=宜野湾市。「歴史を政治的に利用するのはおかしい」と訴えた。

 前日に初めて渡嘉敷島を訪れた長澤浩二さん(66)、加代子さん(63)夫妻=大阪市。「集団自決」の証言をしてくれた戦争体験者は、多くを語らなかった。加代子さんは「今でも話しづらいことなのだ」と実感したという。訴訟のことは、全国紙の小さな記事で知った。「少しでも力になりたくて」と、沖縄行きを決めた。県民大会に向けて大阪で開かれる集会にも、参加する予定だ。

 大阪市の上地武さん(45)は読谷村出身。沖縄戦裁判支援連絡会のメンバーとして駆け付けた。「教科書問題にも、政治的な意図を感じる。軍関与の削除は軍国主義の復活であり、絶対許せない」と、語気を強めた。

 沖縄平和ネットワーク首都圏の会の柴田健代表は「原告や文科省はもう沖縄は抵抗できないだろう、となめてかかった。ところが、体験者の気持ちに火をつけてしまった」と指摘。「教科書の記述にも決着がつくような、踏み込んだ判決を期待したい」と語った。

所在尋問での証言について報告する金城重明氏=10日午後、那覇市松尾・八汐荘

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111300_01.html

 

2007年9月11日(火) 朝刊 1面

県教委員長も参加へ/9・29県民大会

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の仲里利信実行委員長(県議会議長)は十日、県庁などに仲井真弘多知事と中山勲県教育委員会委員長を訪ね、大会出席とあいさつを求める依頼文を手渡した。既に参加を明言している仲井真知事は「大会に出席し私の考えを述べたい」と承諾、代理で受け取った仲村守和教育長は「積極的に参加したいとの意向を委員長は持っている」と話した。

 仲里委員長は「国の姿勢を正すためにも、県民や教育代表である知事や委員長の発言は必要だ」と要請。仲井真知事は十一日の庁議で、職員にも出席依頼するとした。

 また、実行委は県民大会後の来月十六日にも、検定意見撤回の意見書を可決した四十一市町村議会議長らとともに、東京で要請行動を展開したいと提案。仲井真知事は「喜んでお供したい」と答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111300_02.html

 

2007年9月11日(火) 朝刊 2面

「再編交付金はボーナス」/防衛局長着任会見

 沖縄防衛局の鎌田昭良局長は十日の着任会見で、再編交付金について「交付することが、再編の円滑かつ確実な実施に貢献するかどうかで判断している。ある種のボーナスのようなものなので、一生懸命やった(協力した)ところにはその分、手当てするというシステム」との認識を示した。防衛省が現時点で名護市を交付対象としない理由については、同市が米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを保留していることが要因との見方を示唆した。

 鎌田局長は「名護市はアセス方法書の受け取りを拒否している事態にあり、総合的に勘案してどうするのか決めていく」と指摘。同時に「われわれは交付したいと思っている。条件が早く整うことを希望している」と述べた。

 鎌田局長はまた、高村正彦防衛相が仲井真弘多知事との面談で普天間飛行場代替施設について「アセス後の修正」検討を提案したことに触れ、「私も(面談に)同席したが、大臣の提案に(知事は)絶対的に駄目だという否定的な感触はなかった」との認識を明らかにした。

 鎌田局長は普天間移設事業について「アセスを進める中で客観的なデータが出てくるので、その結果を県、名護市など地元に伝え、丁寧に説明していくというのがわれわれのスタンス」と説明。V字形の政府案に関しては「現時点で政府側として理想的な形であり、なかなかこれを変えるだけの合理的な理由がなければ変更するのは難しい」と言及し、アセス後の修正の可能性に否定的な見方も示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月11日朝刊)

[防衛相・知事会談]

毅然たる姿勢 堅持せよ

 普天間飛行場の移設問題で高村正彦防衛相は就任後初めて沖縄を訪れ、仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長らと会談した。政府も地元側も、それぞれ従来の考えを譲らず、議論は平行線のままだった。

 両者の溝は確かに埋まっていない。埋まる気配も見えない。だが、事態は対立点を抱えたまま、既成事実の積み重ねによって、じわりじわり政府のペースで進んでいるようにみえる。

 久間章生元防衛相と小池百合子前防衛相に対して、県が「地元の要望を聞いてくれるのではないか」と淡い期待を抱いたのは確かだ。

 滑走路の沖合移動と普天間飛行場の三年以内の閉鎖状態実現を求める県に対し、かたくなにこれを拒み続けてきたのは前防衛事務次官の守屋武昌氏である。

 V字形滑走路案を実現するために守屋氏が採用した新たな手法は二つ。地元の意見に振り回されないことと、「食い逃げ」を許さない、というものである。

 基地建設の受け入れを表明した北部市町村に対し、手厚く振興策を講じてきたにもかかわらず、この十年余り、基地建設は少しも前に進まなかった。そのトラウマから生まれた強硬策だといっていい。

 高村防衛相もどうやら、守屋路線を踏襲していくつもりらしい。

 だが、この手法は地方自治・地方分権の観点から言っても、県土の均衡ある発展を目指す沖縄振興特別措置法の趣旨からしても、極めて問題の多いやり方だ。

 安倍晋三首相は臨時国会冒頭の所信表明演説で在日米軍の再編問題にふれ、「沖縄など地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力をあげて取り組むことにより、着実に進めてまいります」と語った。

 にもかかわらず現実には、地元の頭越しに日米合意案が決まり、修正を求める県や名護市に対しては、北部振興事業費を凍結し、米軍再編法に基づく再編交付金をちらつかせて協力を迫るといった案配だ。度が過ぎると言わざるを得ない。

 高村防衛相は「合意案はバランスの非常に取れた合理的な案」だと述べ、修正の理由が見いだせないとの考えを示した。沖合移動案と合意案のどっちがすぐれた案かをいくぶん挑発的に県民に示したような印象を受ける。

 県はそれにどう答えていくのか、これからの舵取りは容易でない。安易に妥協すれば、これまで主張してきたことがすべて瓦解し、県民の反発と失望を買うだけである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070911.html#no_1

 

2007年9月11日(火) 夕刊 1・5面 

F15未明離陸 109デシベル/嘉手納基地

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が十一日未明、米本国へ向け同基地を離陸した。同日午前四時三十一分に、北谷町砂辺地区で一〇九・九デシベル(未補正値、電車通過時の線路脇に相当)、嘉手納町屋良では最高値九五・三デシベル(騒々しい工場内に相当)をそれぞれ計測した。米軍は八月二十八日にも基地周辺自治体の反対を押し切って未明離陸を強行したばかりで、周辺自治体の首長らは繰り返される爆音被害に反発を強めている。

 F15戦闘機四機は午前四時三十分ごろから、四機が相次いで同基地南側滑走路から北谷町の方向に離陸。同三十四分には、KC10空中給油機が沖縄市方向に飛び立った。

 嘉手納町の職員が「安保の見える丘」で測定した騒音は、F15の離陸順に、九三・九デシベル、九四・一デシベル、九二デシベル、九〇・一デシベル。KC10空中給油機は八二・五デシベルだった。同地区に常設されている騒音測定器は、最大で九五・三デシベルを計測した。

 F15などの未明離陸に先立ち、同日午前三時ごろにはP3C対潜哨戒機が同基地に着陸した。同機の着陸については周辺自治体への事前通知がなく、騒音防止協定で定められた午後十時から翌日午前六時までの飛行制限が形骸化している実態があらためて浮き彫りになった。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「騒音防止協定に『運用上』という項目がある限り、米軍はその上に居座って住民に負担を強いる。米軍を含め、国家間の問題として対処するよう、政府に負担軽減を訴えなければならない」と指摘した。

 三連協は今回の未明離陸について、同基地司令官に直接抗議する方針で調整している。北谷町議会(宮里友常議長)は十一日午後、基地対策特別委員会を開き、対応を協議する。沖縄市議会(喜友名朝清議長)の基地に関する調査特別委員会は、十四日に委員会を開く方針だ。

 今回の未明離陸は、「アイロン・フロー計画」と呼ばれる、同基地の旧型F15を製造年の新しい機体に更新する措置に伴うもの。当初は十日未明に離陸を予定していたが、F15一機が「離陸前点検で軽度の修理が必要」として延期されていた。


     ◇     ◇     ◇     

抗議無視 安眠妨げ/協定形骸化に怒り


 【中部】住民の安眠は「運用上の理由」でまた妨げられた―。十一日未明の米軍嘉手納基地。F15戦闘機四機とKC10空中給油機一機が相次いで離陸し、轟音が寝静まった住宅街を切り裂いた。先月の旧盆明け離陸からわずか二週間で再び離陸を強行したことに、基地周辺の首長や議会関係者、住民からは「軍事優先だ」「抗議が無視された」「時間帯を考えろ」と怒りと抜本策を求める声が次々と上がった。

 沖縄市の東門美津子市長は「住民への配慮を全く考慮することなく、米軍の必要性だけを優先した対応だ」と米軍の未明離陸を批判。「騒音防止協定も形骸化されており、国の強い姿勢も問われている」と指摘した。

 沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「私たちの抗議は無視されている。怒りをどこにぶつけていいのか」とあきれた様子。「未明離陸によって市民の生活がどれだけ脅かされているか、米軍はきちんと認識すべきだ」と強調した。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は基地から約二百メートルしか離れていない自宅で離陸を確認。「すさまじい爆音。中止させる抜本的な解決策が必要。北谷町、沖縄市の議会と連携していきたい」と話した。

 未明離陸の際には睡眠薬を飲まなければ眠れないという北谷町砂辺に住んで五十年になる伊礼信子さん(74)。「毎日家の真上を飛んで、地響きのような爆音に苦しめられる。もう我慢ならない」と怒りで声を震わせた。早朝から弁当を作っていた砂辺の主婦大城ミヨさん(69)も「ビューンという、窓を閉めていてもうるさいくらいの騒音。寝ていた家族も全員起きてしまった。何でこんなに早くから飛行機が飛ぶのか」と憤った。

 嘉手納町屋良に住む主婦の池原菊江さん(66)は「ゴーン」という音で目を覚ました。「嘉手納飛行場の中で何が起こっているのか住民には知らされない。いつか戦争が起きるんじゃないかと不安になる」と話した。

 滑走路の延長線上にある沖縄市池原の沖縄職業能力開発大学校。校内には約百三十人が生活する学生寮があり、寮長の大月隆博さん(21)は「朝、うるさくて跳び起きた人もいた。時間帯を考えて飛んでほしい」と訴えた。嘉手納基地からの騒音で、テレビの音や授業中に教師の声が聞こえないこともたびたびあるという。「長崎から来て三年になるが、毎日うるさい。基地を早くなくしてほしい」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111700_01.html

 

2007年9月11日(火) 夕刊 1・5面 

知事、職員に参加促す/検定撤回県民大会

 仲井真弘多知事は十一日午前の臨時庁議で、二十九日に開催される教科書検定意見撤回を求める県民大会に県職員が参加するよう呼び掛けた。この種の大会で、知事が職員に参加呼び掛けをするのは極めて異例。臨時職員を含めると知事部局だけで約六千人の職員がおり、知事の参加呼び掛けで、大会全体の動員にも弾みがつきそうだ。

 仲井真知事は庁議の冒頭、県民大会への職員参加を呼び掛けた上で、「高校歴史教科書の沖縄戦の集団自決(強制集団死)の記述から軍の関与が削除されていることは大いに遺憾である。(軍関与については)係争中だが、現在、教科書の記述が削除される理由はまったく分からない」と、軍関与の文言を削除した検定意見にあらためて疑問を投げ掛けた。

 その上で、「沖縄戦の実相について正しく後世に伝えることは、子どもたちが平和な国家や社会の形成者として育っていくためにも必要だ」と述べ、検定意見撤回の必要性を強調した。

 知事の参加呼び掛けを受け、県は各部単位で最大動員できるよう、周知していくことにしている。


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那覇市長も呼び掛けへ


 翁長雄志那覇市長は十一日午前の市議会定例会で、二十九日に開かれ教科書検定意見撤回を求める県民大会に、市民や職員に参加を呼び掛ける意向を示した。仲村家治氏(自民・無所属連合)への答弁。

 翁長市長は「沖縄戦の実相を正しく検証していかなければならないという多くの県民の思いが原動力となっており、県民大会への参加は大変意義あるものと確信している」と述べた。

 高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述が削除されたことについては、「適切な教科書を確保するという狙いが達成できていない」と指摘した。


宜野湾市が実行委/市長先頭に参加呼び掛け


 【宜野湾】二十九日に宜野湾市内で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、宜野湾市の伊波洋一市長は十一日午前、臨時庁議を開き、同市実行委員会を結成することを決めた。実行委員長に伊波市長、副委員長に伊波廣助市議会議長らを選出。市内五十二団体や地域住民に参加を呼び掛け、十八日に正式な結成総会を開く。

 庁議では、ホームページや防災無線で市民に参加を呼び掛け、市としても「集団自決(強制集団死)」に関する記述の回復を求めることを決定。大会の円滑な実施に向け、県民大会実行委と連携を図ることを確認した。

 伊波委員長は「宜野湾市は開催地でもあり、県民大会があるという周知徹底が重要だ。横断幕で市民参加を呼び掛けてはどうか。大会の機運を盛り上げよう」と、決意を新たにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111700_02.html

 

2007年9月12日(水) 朝刊 1面

検定 審議実態なし/小委、文科省意見を追認

「集団自決」軍命削除/沖縄戦研究者は不在

 文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を二○○六年度の検定で削除させた問題で、検定を担当した教科用図書検定調査審議会(教科書審議会)の日本史小委員会では「集団自決」の記述について審議委員の話し合いはなく、意見も出なかったことが十一日、分かった。文科省の教科書調査官が検定意見の原案を示して説明し、そのまま意見が素通りしていたことが明らかになった。沖縄タイムス社の取材に、教科書検定審議会日本史小委員会の複数の委員が初めて証言した。=教科書検定問題取材班

 日本史小委員会は十人以下の大学教授らで構成され、うち四人がアジア太平洋戦争など日本近現代史の専門家。だが、沖縄戦について詳しく研究した委員は皆無だ。文科省は全審議委員の氏名、所属は公表しているが、担当教科・科目や部会、小委員会の審議内容はこれまで明らかにしていない。

 委員の一人は「日本史担当の審議委員の中に沖縄戦を専門としている先生はおらず、議論のしようがない」と振り返った。その上で「日本史小委員会では『集団自決』に関する検定意見について教科書調査官の説明を聞いただけ。話し合いもせずに通してしまった。歯痒い思いだ」と語った。

 別の文科省関係者も、「日本史小委員会で『集団自決』についての具体的な議論はなかった。『調査官の意見、説明を聞いただけ』といわれればその通り。審議会では学問的な論争はしていない」と認めた。文科省はこれまで、「『集団自決』は日本軍の強制によるものだった」とする記述に対し「沖縄戦の実態について、誤解する恐れのある表現である」と検定意見をつけ、日本軍の強制に関する記述を削除させたことについて、「学術的な検討を得た審議会の決定」と説明してきた。

 伊吹文明文科相は、衆院文部科学委員会で「文部科学省の役人も安倍(晋三)首相もこのことについては一言も容喙(口出し)できない仕組みで教科書の検定は行われている」と答弁、政府の関与を一貫して否定し続けている。

 しかし審議会には検討の実態がなく、文科省から発案された調査意見が追認されただけであることが明らかになった。


政府の責任重い


 山口剛史・琉球大准教授 教科書審議会で審議されずに教科書調査官の発案を追認していたというのは予想通り。さも公平な審議がされたように説明してきた政府の責任は重い。国会で真相を明らかにし、これを機会に公平で開かれた審議会に改め、沖縄戦の正しい記述を取り戻すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121300_01.html

 

2007年9月12日(水) 朝刊 24・25面

官僚主導 黙る「素人」/軍強制 あっさり消滅

 「委員に沖縄戦の専門家はいない」「役所が検定を決めている」―。ベールに包まれた教科書検定の内幕が十一日、教科用図書検定調査審議会(審議会)日本史小委員会委員や文科省関係者の証言で初めて明かされた。委員会が実質的に沖縄戦の“素人”で構成され、文科省の教科書調査官が作成した原案に沿って「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除する検定意見が付されていた実態。審議委員の一人は「ここまで軍の関与が削られるとは思わなかった。委員を引き受けるんじゃなかった」と本音をぶちまけた。=教科書検定問題取材班

 国際政治に詳しい審議委員は、都内の外務省施設で取材に応じた。

 「沖縄戦については委員から議論が提起された記憶がない」と委員会のやりとりを再現。「調査官の原案(調査意見書)に沿って粛々と進んだ」とあっさり認めた。

 関係者によると、調査官は同じ文科省職員から「先生」と呼ばれ、検定に絶大な権限を持っていることがうかがえる。

 この審議委員によると、近代日本史に関し、委員会で主な議論になったのは(1)イラク戦争への国連決議の有無(2)第二次世界大戦の呼称(3)南京大虐殺の犠牲者数―など。

 文科省は大阪で提起された「大江・岩波裁判」と検定との関連性を否定しているが、委員は「沖縄戦『集団自決』の説明で、調査官は大阪での裁判を理由の一つに挙げていた」と証言。文科省が係争中の事案を根拠に、調査意見を付していたことを明かした。

 委員は修正後の教科書を見て「あたかも関与がないがごとくの表現になってしまった」との印象を受け、「出版社が修正要望にあまりにも過剰反応しすぎた」と教科書会社側の責任に言及した。

 別の文科省関係者は委員の専門分野について「(沖縄戦を)きちんと研究した人はいない」と専門外の委員で審議したことを明かした。関係者によると、「集団自決」をめぐる日本軍の強制の削除について委員会では「特に異論はなく、議論も沸騰しなかった」という。

 一方で「私は検定には過剰な価値を見いだしていない。最終的な責任を負うのは審議会ではないのではないか」と指摘。審議会の決定を“錦の御旗”に掲げる文科省の「公式見解」に異を唱えた。


小委開催2回だけ


 文部科学省の検定意見は、二回の審議会日本史小委員会で決められていたことが十一日、分かった。沖縄タイムス社の情報公開請求に、文科省が二〇〇六年度の教科書審議会第二部会(社会科担当)と日本史小委員会の開催日時や場所を示した資料を明らかにした。

 開示資料によると、高校の日本史教科書について検定意見を決めた日本史小委員会は二〇〇六年十月三十日と十一月十三日の二回、いずれも都内ビルの会議室で開かれ、一回当たり五時間でそれぞれ六点と四点の教科書を対象に審議する予定になっていた。

 日本史担当審議委員によると一回目は全体の説明で「集団自決」への検定意見の説明は二回目にされただけだったという。


     ◇     ◇     ◇     

「歪曲なぜ」問う都民


 文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を二○○六年度の検定で削除させた問題について学ぶ集会「今、なぜ沖縄戦の事実を歪曲するのか(歴史教科書の『集団自決』検定修正をめぐって)」が十一日、東京都練馬区の勤労福祉会館で開かれ、百六十五人が参加した。

 同区では住民が、検定意見撤回を求める意見書を採択するよう、区議会に陳情している。

 集会では、山口剛史・琉球大准教授が、沖縄の検定意見撤回を求める運動が保革を超え、県民大会開催に結び付き、同区など全国にも同調する動きが広がり韓国にも広がろうとしていることなどを紹介。「あの戦争はどのような戦争だったのかを全国、アジア全体で考え直す機会になっている」と話した。

 岩波書店の岡本厚さんは「岩波・大江訴訟」について、「今回の教科書検定の大きな材料とされたが、多くの体験者が証言を始めるなど逆に、教科書検定が裁判に影響を及ぼしている」と説明。「この訴訟に勝ち、真実を伝えていく大きな力にしたい」と訴えた。

 同区で区議会への陳情署名を呼び掛けている柏木美恵子さんが、十一日までに千八百四人の署名が集まったことを報告。「私たちの運動はささやかだが、この発信が全国に広がり『命どぅ宝』の言葉が伝わるよう、検定撤回にむけて粘り強く続けていく」と決意を示すと大きな拍手がわいた。


東京県人会も撤回要求へ


 東京沖縄県人会(川平朝清会長)は二十七日の理事会で、教科書検定意見の撤回を求めるアピールを宣言する。

 二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に合わせて行うもので、同県人会では「県出身者として放ってはおけない問題。県人会の立場を明らかにし、検定撤回を求めたい」と話している。

 アピール文は今後検討し、宣言には理事会の全会一致が条件。県人会の金城驍副会長(73)は「本島や宮古、八重山でも県民大会が開かれる。県議会も二度決議しており、その立場を支持したい」としている。


姉妹市議会にも意見書採択依頼/浦添市議会が蒲郡市に


 【浦添】浦添市議会(大城永一郎議長)は十日、姉妹都市である愛知県蒲郡市の市議会(小林康宏議長)に「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与を削除した文部科学省の教科書検定について、検定撤回を求める意見書を提案、可決するよう求める依頼文を送った。

 浦添市議会は五月に検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決しており、依頼書には同意見書を添付している。


県民大会実行委 参加を呼び掛け/報道各社訪問


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の仲里利信委員長らは十一日、沖縄タイムス社など報道各社を訪ね、大会への参加呼び掛けと協力を求めた。十二日にも、参加予定の千七百―千八百団体に出席依頼文を送付、県民の幅広い参加を目指す。

 仲里委員長は「未来を担う若者たちに悲惨な戦争を体験させないためにも、大会を成功させ検定意見を撤回させたい」と意気込みを語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121300_02.html

 

2007年9月12日(水) 朝刊 2面

泡瀬水域期限更新/東門市長が陳謝

 【沖縄】米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長は十一日、市役所で記者会見し、米軍側に一年間の期限を付けて更新依頼書を送付した経緯を説明するとともに、市民への説明がないまま更新手続きを済ませていたことに「申し訳なく思う」と陳謝した。

 東門市長は同協定の更新期限が今月八日に迫る中、既に八月三十一日に米軍への更新依頼書を沖縄防衛局に送付していた。

 協定が必要とされる中城湾港泡瀬沖合の埋め立て事業について、東門市長は「事業のすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ年内に結論を出す方針を示している。

 市民への説明がなかったことには「更新期限の日付を六月ごろ知り、内部で検討するうちに更新期限を迎えてしまった。しっかりと市民に説明して、分かってもらえるように努力したい」と述べた。

 東門市長は、米軍からの回答がまだないことを挙げた上で「一年以上の更新を求められた場合はその時に判断する」と説明。埋め立て後の土地の一部が保安水域にかかり「新たな基地の提供になる」と懸念の声があることには、「保安水域にかかる部分は現在工事が進められている第一区域ではなく、おおむね二〇一三年以降に埋め立て予定の第二区域だ。一年間の更新であれば、新たな基地を提供する実態はない」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121300_08.html

 

琉球新報 社説

「ボーナス」発言 裏にある政府の高圧姿勢

 在日米軍再編への協力の度合いに応じて関係自治体に支給される再編交付金について、鎌田昭良沖縄防衛局長が10日の着任記者会見で「ボーナスのようなもの」との認識を明らかにした。

 ボーナス(賞与)とは、褒めて与える金品という意味だ。再編交付金は負担の増加に見合う形で支給されるはずだが、事実上、基地、部隊、訓練などを受け入れた地域に対する特別な「褒美」という位置付けになるわけだ。

 言葉の裏に、基地を受け入れるなら金を出すのでありがたく思いなさい―といった、高みから見下ろして無理にでも要求をのませる政府の姿勢が透けて見える。

 沖縄は去る大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦を体験した。戦後は米軍施政下に置かれ、広大な土地が米軍基地として強制的に接収された。基地は日本に復帰した後も居座り続け、現在も在日米軍専用施設面積の4分の3が沖縄に集中している。

 鎌田局長の発言からは、意思に反して基地を押し付けられ、特異な歴史をたどってきた沖縄に対する配慮が感じられない。

 米軍普天間飛行場の移設先となる名護市の島袋吉和市長は11日の名護市議会一般質問で、「そのような発言をしたのであれば、不適切で慎むべきだと考えている」と述べ、不快感を示した。

 高村正彦防衛相は11日の閣議後会見で「なるべく不快感を与えないような言葉を使うように注意をしたい」と述べ、不適切な発言だったことを認めている。

 「ボーナス」との表現が不用意だったことは疑いないが、鎌田局長は沖縄で米軍再編を推進する現地責任者である。政府の方針を自分なりに率直に表現したものと受け止めていいだろう。

 再編交付金は、米軍再編による施設面積や人員の変化、計画の進ちょく率に応じて点数を付け、点数に基本額を掛けて算出される。再編計画の進展度合いによって防衛相の判断で減額したりゼロにできるのが特徴的だ。

 防衛省は、新たな米軍施設に関する使用協定が締結され米軍の運用が制限された場合には交付金を減額する方針を打ち出した。

 まさに札束で顔をひっぱたくような手法である。

 普天間飛行場の移設で、県、名護市は日米合意のV字形滑走路を沖合に移動するよう求めているが、政府はこれを拒否し、現状のままでは名護市は再編交付金の支給対象にならないと警告している。

 沖縄側の要求には一切耳を貸さず、一方的に政府案の受け入れを迫るやり方は県民無視も甚だしい。

 沖縄防衛局長の発言は、高圧的な姿勢を取る政府の動きの延長線上にあり、決して看過できない。

(9/12 9:51)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27072-storytopic-11.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 1・5面

「集団自決」検定審議/“虚偽”説明に批判噴出

 文部科学省が二〇〇六年度の高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述について、教科用図書検定調査審議会(教科書審議会)で議論されずに軍の強制が削除されたことが明らかになり、県内では批判が広がった。「学術的な検討を得た審議会の決定。首相でも一言も容喙(口出し)できない」としてきた伊吹文明文科相らの説明と大きく食い違う教科書検定の実態。二十九日に開かれる県民大会の実行委員や研究者らは「国のシナリオに乗せられた」「教科書検定で公開性を高めるべきだ」と厳しく指摘、文科省の対応に不満をあらわにした。

 県民大会の仲里利信実行委員長(県議会議長)は「小委員会内で議論がされていないことや文科省意見を追認していることは、独自の調査で調べはついていたが、公にできなかった」と述べつつ、沖縄タイムスの調べで実情が公になったことで「県民大会を受けて再度要請に行くときには、文科省が『口出しできない』と返答してきたことに強く回答を求めたい」と語った。

 七月に県内の行政・議会六団体代表として文科省に撤回を求めた大浜長照石垣市長(八重山郡民大会実行委員長)は「検定結果には首相でも口出しできないというのが文科省の見解だった。子どもの人間形成に影響を与える教科書の検定が実質的に官僚の言いなりだったとは」とあぜん。

 宮古郡民大会実行委員長の伊志嶺亮宮古島市長も「伊吹文科相は役人や首相は口を出せない仕組みだと言っていたが、実態は調査官が読み上げるのを審議委員が追認するだけだったとは、われわれが想像していた通りだ」と厳しい口調。審議委員に沖縄戦の専門家もいなかったことを挙げ、「こうした事実がありながら、口を出せない仕組みだと言い続けてきた文科相に憤りを感じる」と語った。

 実行委の立ち上げに奔走した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長も「検定する力のない審議会が国のシナリオに乗せられた。国による歴史の捏造だ。審議会に責任を負わせ文科省は裏で操ってはいないか」と批判。

 小渡ハル子県婦人連合会長は「戦争体験者がどれほど苦しい思いで戦後を生きてきたか。専門家を交えず、真実をゆがめたことは許せない。うその史実を教えるなんて、とんでもない」と訴えた。

 検定制度に詳しい琉球大学の高嶋伸欣教授は「軍による強制の記述を復活させて済む問題ではない。文科省は審議会の決定に口出しできないという、偽りの主張に対する説明責任も果たさなければならない」と指摘。その上で「教科書検定制度は限界に来ており、今後は公開性を高め、国民から意見を募る方法を模索するべきだ」とした。


運賃無料化を要請/県バス協、前向き姿勢


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の仲里利信実行委員長らは十二日午前、那覇市の県バス協会を訪ね、来場者の交通の便を図るため、会場近くのバス停で降りる利用者の運賃を無料にするよう要請した。

 県バス協会の中山良邦会長(沖縄バス社長)は、即答はできないとしつつ、「バス業界も厳しいが、県民が盛り上がるのであれば、協会ができることは協力する」と前向きな姿勢を示した。沖縄バス、東陽バス、那覇バス、琉球バス交通の四社で協議、近日中に結論を出すという。

 仲里委員長は「交通の確保が重要課題だ。バス会社の支援なしには成功はない」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

体験者も怒り


 「(文部科学省の)役人に、私たちの苦労が分かるのかと言いたい」。沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述が文科省の教科書調査官主導で削除されていたことに、沖縄戦の体験者や関係者は一斉に怒りの声を上げた。

 渡嘉敷で「集団自決(強制集団死)」を体験した池原利江子さん(84)=那覇市=は「心の底からワジワジーしている。文科省の役人に私たちの苦労が分かるか、と言ってやりたい」と糾弾。

 その上で「(文科省は)何も調査しないで勝手によくも、こんなことを。事実を歪曲するのは絶対に許せない。私たち体験者がつらい思いをどうにか、証言しようとしているのに」と語気を強め、「戦争の事実を消して、子どもたちに何も教えず戦争できる国にしようとしたいんでしょう。県民大会に必ず参加して反対の声を出していきたい」と話した。

 本島南部の激戦地を逃げ惑った瑞慶覧長方さん(75)=南城市。「やはり最初から『軍関与削除ありき』だったのか。われわれ体験者を切って捨てようという恐ろしい歴史修正主義はもともと右翼の思想だったようだが、行政がそんな思想に染まってしまっている」と文科省の対応にあきれた様子。「われわれが受けた皇民化教育以上に恐ろしくなりそうだ。日本国民全体で行政の暴走を止めないといけない」と語った。


県老連が撤回決議


 【中部】「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、県老人クラブ連合会(花城清善会長)は十二日午前、沖縄市民会館で開かれた第三十八回中部地区老人クラブ大会で教科書検定意見の撤回を求めるアピール文を決議、県民大会への参加を呼び掛けた。

 アピール文は、日本軍の関与を示す記述が削除されたことに「まるで住民が勝手に死んだとも読める教科書が全国の子どもたちの手に渡ろうとしている」と危惧。文部科学省が県議会や県教育長らの要請を受けても撤回に応じなかったことに「県民の怒りは頂点に達している」と糾弾した。


宜野座議会も全12人参加へ


 【宜野座】宜野座村議会(小渡久和議長)は十二日、全員協議会を開き、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に議員十二人全員で参加することを決めた。


日南・川崎市に協力を呼び掛け

那覇市議会


 那覇市議会(安慶田光男議長)は十二日、姉妹都市である宮崎県日南市の谷口善幸市長と影山一雄議長、神奈川県川崎市の阿部孝夫市長と鏑木茂哉議長あてに、宜野湾市で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の開催を市民に呼び掛けるなどの協力を求める文書を送付した。

 文書では、県内全市町村議会で意見書が可決されたことなどを説明し、県民大会の開催日時などを案内している。安慶田議長は「教科書検定は全国的な問題。まずは姉妹都市に呼び掛け、全国的に広げたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_02.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 5面

F15未明離陸/北谷議会が抗議決議

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が十一日未明に離陸した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は十二日午前、開会中の九月定例会冒頭で、未明離陸の即時中止と騒音防止協定の順守などを求める抗議決議、意見書の両案をそれぞれ全会一致で可決した。今回の未明離陸に対する決議は同議会が初めて。

 同議会は米軍が八月二十八日に未明離陸を強行した際、九月三日の臨時会で抗議決議、意見書を可決したばかり。わずか八日後に、未明離陸を繰り返し、同町砂辺で一〇九・九デシベルという騒音被害を与えた米軍を「地域住民の安眠を妨害し精神的苦痛を与えている」と批判した。

 抗議決議は未明離陸の回数が二〇〇五年度に四回、日米が米軍再編に合意した〇六年度で十二回に増加していると指摘。「米軍は『周辺住民への騒音の影響が及ぶことを認識しながら、運用上の必要性を注意深く考察し、早朝離陸を行うこととなった』と言及しているが、いかなる理由であっても容認できるものではない」と強く抗議している。

 その上で、F15の即時撤去、住宅居住地域での旋回、訓練、低空飛行を中止することなどを求めている。あて先は首相、防衛相、同基地司令官、駐日米国大使ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_03.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 5面

戦時下の新聞展示/本社1階18日まで

 戦時下の新聞を展示する「新聞記事にみる沖縄戦」(主催・沖縄タイムス社、沖縄文化の杜、沖縄歴史研究会)が十二日、那覇市の沖縄タイムス社一階ギャラリーで始まった。入場無料、十八日まで。

 同研究会が三日まで県立図書館で開催した展示会に比べ、大幅に多い三十二点を複写と現物で展示。悲惨な沖縄戦を美談として伝える紙面を、直接読むことができる。

 一九四五年六月二十七日付の東京新聞は、「壮烈・沖縄に応へん」と題した歴史家、東恩納寛惇の寄稿を掲載。「本土防衛に鉄壁布陣の時間を稼いだ沖縄舞台の功績は、永久に没する事は出来ない」などとたたえた。

 展示資料のほとんどを収集した沖縄歴史研究会の仲村顕さん(34)は「教科書検定が問題化する中、真実の偽装、誇張、美化の実例を見てほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_04.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 4面

ハンセン病療養所/ポナペ島に補償外施設

 日本の統治領だった旧南洋群島のハンセン病療養所で、戦後補償の対象とは別の療養所があったことが分かった。富山国際大学の藤野豊准教授が県立図書館で当時の資料を発見し十一日夜、那覇市内で開かれたハンセン病問題学習会で報告した。

 同群島におけるハンセン病患者への補償をめぐっては、パラオやサイパン島などにある四療養所が対象。

 国はこれ以外の療養所があることを把握しておらず、藤野准教授は「世論を盛り上げ、補償対象とするよう国に要請したい」としている。

 新たに見つかった療養所はカロリン諸島の中央にあるポナペ島。一九四三年版の南洋庁「南洋群島衛生概況」の中で、患者四人の入所が記録されている。

 また、戦況悪化を受け日本人患者を本土へ送り返すことが困難になったとして、「サイパン島に邦人仮説ハンセン病療養所新設工事中」との文言もあり、藤野准教授は日本人患者がいた可能性を指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_05.html

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