沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(10月4日、5日)

2007年10月4日(木) 朝刊 1・27面

自民、柔軟に対応/教科書の訂正申請

伊吹幹事長初めて明言/政府と足並み

 【東京】自民党の伊吹文明幹事長は三日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題の対応で、「出版社から訂正の申し入れが出てくれば政府もしっかり対応し、検定審議会の再諮問も避けて通れないのではないか」と述べ、教科書会社が訂正申請した場合の柔軟な対応に初めて理解を示した。党本部での自民党県連幹部との会談で述べた。検定への対応をめぐっては町村信孝官房長官、渡海紀三朗文部科学相が一日以降、同様の認識を示しており、政府と自民党が足並みをそろえた格好だ。

 伊吹幹事長は、十一万人が集まった県民大会について「重く受け止めている」と強調した。

 訂正申請に柔軟姿勢を示しながらも「中国や韓国とは歴史認識が必ずしも一致していない部分があり、教科書検定を深く掘り下げていくと(外交問題など)いろんなことに発展しかねない。慎重を期さないといけない」と指摘した。

 一方、渡海文科相は同日夕、社民党の福島瑞穂党首と会談し、「文科省で知恵を絞り、(教科書検定撤回を求める)沖縄県民大会の意思に沿うように努力したい」と述べ、訂正申請に柔軟に対応する考えをあらためて示したという。

 福島党首によると、渡海文科相は県民大会実行委員会の要請を受け、「重く受け止めている。世論は大事だ。知事が上京したことは意味があった。今日で結論は出せなかったが、あらゆる可能性を求めたい」と語ったという。ただ、検定意見の撤回については「私の時代に検定意見を悪くしたくない。公正中立の問題が起きるから、悪くしたくない」と消極的な姿勢を崩さなかったという。


     ◇     ◇     ◇     

首相「文科省で検討」 衆院代表質問


 【東京】福田康夫首相は三日午後の衆院本会議で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校教科書検定意見の問題について、「県民大会には県知事をはじめ多くの方々が参加しており、その思いを重く受け止め、文部科学省でしっかり検討する」と述べ、検定結果の撤回を求める県側の意向に理解を示しつつ、結論は文科省の判断に委ねる考えを示した。鳩山由紀夫、長妻昭両氏(民主)の代表質問に答えた。

 福田首相は「教科書検定は、審議会における専門的な審議を経て実施される。今回の検定は沖縄の『集団自決』に関する記述について、軍の関与を否定するものではないと承知している」との認識も示した。


体験者、撤回求める/実行委、一部評価も


 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」から日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題で、渡海紀三朗文部科学相が三日、撤回に応じられないとの考えを示したことに、「集団自決」の体験者らは「記述回復だけでは許されない」とあくまで検定意見の撤回を求めた。一方で、十一万人が参加した「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員からは「好意的に受け入れられた」との声も。「政治は介入できない」として、検定意見の撤回に否定的な文科省と、県民とのせめぎ合いが始まった。


政治的駆け引き批判


 要請行動を終え、同日夕、那覇空港に戻った仲里利信委員長。「県民の思いはしっかりと伝えてきたつもり。好意的に受け入れられた感触だ」と語った。渡海文科相の発言については「何らかの形で解決できないか。考え続けているようだ」と期待をつなぎ、「沖縄から投げたボールを、国がどう返してくるのか。超党派での理解を広げながら、しっかり見守りたい」と話した。

 県民大会で渡嘉敷島の「集団自決」を証言した吉川嘉勝さんは「どのように検定意見を撤回させるかが問題。審議会に沖縄関係の専門家を入れるなど納得できる形で対応してほしい。大会後、自分も新しい証言を聞いた。もっと証言する人が出てくるのでは」と話す。

 座間味の体験者の宮城恒彦さんは「記述回復だけでは許されない。検定意見が撤回されなければ、意味がない」と厳しい受け止め。「文科相は審議会の決めたことに口出しできないというが、間違ったことをしておいて、なぜ改められないのか。政治的駆け引きは許されない」と不満を表明した。

 諸見里宏美・県PTA連合会長は「体験者が『集団自決』に軍の強制の事実を認めてほしいと叫んできたことを否定した非を認めず、『県民感情に配慮』とは議論のすり替えだ」と批判。「十一万六千人が立ち上がったことを思い出し、第一波、第二波を続けて検定意見撤回を求めたい」と話した。県高校PTA連合会の西銘生弘会長も「検定意見撤回まで何度でも要請していく」と意気込みを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710041300_01.html

 

2007年10月4日(木) 朝刊 2面

収用法活用も視野/新石垣空港

 県議会(仲里利信議長)九月定例会は三日、一般質問の三日目が行われた。新石垣空港建設事業に伴う用地取得の見通しについて、首里勇治土木建築部長は「事業認定庁において公聴会における意見等を踏まえ、厳正な審査の後、認定告示となる。事業認定後も地権者の方々と誠意を持って任意交渉を重ねていく」とした上で、「用地交渉が難航することも予想される。土地収用法の活用も視野に入れ、二〇〇九年度までに残りの用地を取得していく」との考えを示した。

 同事業の進ちょく状況について、仲里全輝副知事は「用地取得の契約状況は取得面積で約百四十七ヘクタール、取得確実な公有地約十二ヘクタールを加えると、事業全体面積約百九十五ヘクタールに対して取得面積は約百六十ヘクタール、取得率約82%となり、着実に進ちょくしている」と述べた。いずれも辻野ヒロ子氏(自民)への答弁。

 米軍再編に伴う嘉手納基地以南の返還跡地利用について、仲里副知事は「国の政策責任として、制度面や財政面からの支援は当然。広大な基地が返ってくるが、今の制度でやるのは無理と思う」と述べた上で、「既存の制度だけでは駄目で、跡地利用の実施主体も含め、新たな機構の創設が必要ではないか。国とも協議し、新たな制度や財政措置の努力をしたい」との考えを示した。吉田勝廣氏(無所属)の質問に答えた。

 老人医療費の動向については、伊波輝美福祉保健部長が「県の〇五年度老人医療費は千七十八億円で、前年度に比較して約三十四億円、3・7%の増。一人当たり老人医療費は全国平均八十二万一千円に対し、県は九十一万九千円で、全国七位。前年度伸び率は7・7%で全国一位」と答えた。仲田弘毅氏(自民)の質問への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710041300_05.html

 

2007年10月4日(木) 朝刊 2面

アセスへの意見487通/「普天間」代替

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は三日、方法書に対する住民らからの意見書が、郵送分を合わせて計四百八十七通だったことを明らかにした。二〇〇四年の辺野古沖合への移設案(従来案)の方法書に対する意見書は計千百七十五通だったが、今回は約四割となった。

 同局は、九月二十七日に郵送分(同日消印有効)を除く意見書の受け付けを終了。同日までに計三百七十七通を受理していた。同日消印の郵送分については、今月二日以降は到着しておらず、同局は意見概要の取りまとめ作業に入ることを決めた。

 同局は近く意見概要を県などに送付する。これを受けて、県は早ければ十二月上旬にも知事意見の提出期限を迫られる。方法書の受け取りを「保留」している県の対応が注目される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710041300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月4日朝刊)

[代表質問]

論戦で信頼回復に努めよ

 福田康夫首相の所信表明演説に対する各党代表の代表質問が始まり、参院選の結果がもたらした「ねじれ国会」での論戦がスタートした。

 最初に質問に立った民主党の鳩山由紀夫幹事長は、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続に異を唱え、テロ対策特別措置法に代わる新法案にも反対を表明した。給油された燃料のイラク戦争への転用疑惑も挙げ、情報開示を求めている。

 首相は「テロとの戦いで国際的責務を果たすため引き続き活動していく必要がある」と強調。また、疑惑を解くために「可能な限り情報を開示する」と答弁したが、疑惑がある以上、給油国として看過するわけにはいくまい。

 燃料の用途次第では、集団的自衛権の行使を認めていない憲法にも深くかかわってくるからだ。

 首相は情報をすべて開示し、国民との約束を果たしてもらいたい。

 テロ対策特別措置法に代わる新法案の事前協議は民主党が拒否し、自公との対決姿勢を鮮明にしている。

 言うまでもないが、オープンな場での議論は国民にとっても政治を分かりやすくする。政府は「なぜ新法が必要なのか」をきちんと説明しなければならず、民主党もまた「なぜ反対なのか」を論戦を通して国民に提示する責任があろう。

 高校歴史教科書の「集団自決(強制集団死)」の文章から旧日本軍の関与が削除された教科書検定については、鳩山幹事長、長妻昭氏が「歴史を歪曲するもの」として質問。検定に対する見解を沖縄戦における首相の歴史認識とともにただした。

 首相は「教科書検定は専門家による専門的な審議によって行われると思っている」と答えたものの、自らの歴史認識には触れなかった。

 検定制度が文部科学省の所管であることは分かる。だが、歴史認識の問題はそれとは別ではないのか。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に対し「沖縄県民の気持ちは私も分かる」と述べていただけに、首相自身の率直な考えが聞けなかったのは残念というしかない。

 今国会では年金記録不備問題、「政治とカネ」、消費税率の引き上げ時期や幅など論議すべきテーマが多い。

 政治や行政に対する信頼回復は、首相が言うように「喫緊の課題」だ。

 国会での論議を疎かにすれば政治に対する信頼回復はおぼつかない。緊張感に欠けた質問や答弁は国民の期待を裏切るだけだ。衆参国会議員はそのことを肝に銘じ、言論の府として質疑に全力を尽くしてもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071004.html#no_1

 

琉球新報 社説

衆院代表質問 首相の言葉で具体的説明を

 福田康夫首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が3日、衆院で始まった。民主2氏、自民1氏が質問に立ったが、首相の答弁はほぼ所信表明の域を出ず、一つ一つの課題に対する具体策を丁寧に示したとは言い難い。

 年金問題など今国会の焦点の多くは、前政権が積み残した課題である。首相がそれにどう取り組むのかを国民は知りたがっている。

 しかし、首相は答弁書を読み上げるばかり。課題解決に向けた意気込みは感じられなかった。慎重姿勢が災いしたのか、言質を取られまいとの意識が透けて見えた。

 所信表明の範囲内で答弁するだけでは、論戦にはならない。課題をどう解決するのか、具体策を示し得ないのでは、国民の首相への期待感はしぼむのではないか。

 福田政権の目指す道を具体的に提示しなければ、国民にとっては分かりづらいことこの上ない。野党と堂々と渡り合う気概を示してもらいたい。

 沖縄戦の「集団自決」で軍の強制を削除・修正した教科書検定意見の撤回については「県民の思いを強く、重く受け止め、文部科学省でしっかり検討していく」と述べた。

 県民は検定制度の問題点にも踏み込んだ答弁を期待したが、文科省と同様に「検定は審議会の専門的な審議を経て実施されることになっている。検定意見は日本軍の関与を否定するものではないと承知している」と述べるにとどめた。

 検定に「政治は介入するべきではない」との考えなのだろう。だが、実際には「戦後レジーム(体制)からの脱却」を目指した安倍晋三・前首相の誕生が文科省の検定に大きく影響したと県民の多くはみている。

 11万人余が集まった県民大会で上がった声は「政治は介入すべきではない」として、誤った歴史を掲載した教科書を追認する政治に対する不信の声である。

 沖縄側の要求は検定意見の撤回による記述復活であり、首相にはきめ細かな対応を求めたい。

 首相自らが代表を務める自民党支部での領収書書き換え問題については「実態を踏まえて補正したもので政治資金規正法上、特に問題はない」との認識を示した。

 所信表明演説では「特に、自らについては厳しく戒めていく」との姿勢を示した。それに沿った対応が答弁からは見えてこない。「政治とカネ」問題で国民の対応強化要求にしっかり応えたといえるだろうか。

 安倍・前首相が退陣表明して3週間。休会状態の国会はようやく論戦がスタートした。国民は首相の指導力発揮を期待している。自らの言葉で政策を詳しく説明することは首相の責任である。

(10/4 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27783-storytopic-11.html

 

2007年10月4日(木) 夕刊 1面

野党、国会決議提出へ/「集団自決」検定撤回

 【東京】民主、共産、社民、国民新の野党四党は四日夕の国対委員長会談で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」についての教科書検定に関する国会決議案を取りまとめる方向で最終調整に入った。五日の参院議院運営委員会に諮り、同日中にも参院に共同提出する。教科書の記述を審議する教科用図書検定調査審議会での再検討や教科書検定規則の見直しなどを盛り込んだ内容になるとみられる。参院は野党が過半数を占めており、本会議に提出されれば、成立する可能性が高い。

 与党も賛成できるような案文をまとめ、全会一致での採択を目指すとしている。

 民主党は四日午前、国会内で「次の内閣」(NC)の文部科学部門会議を開き、小宮山洋子NC文科相が国会決議について、民主党案を報告した。

 同案は「『集団自決』の事実を正しく伝え、沖縄戦の実相を教訓とすることの重要性や平和を希求することの必要性を子どもたちに教えていくことはわれわれに課せられた重要な責務である」と指摘。審議会での再検討や教科書検定の手続きの見直しを含めた改善などを求めている。

 民主党内には、記述を削除させた検定意見そのものの撤回を求めるべきだとの意見もあったが、「検定に政治が踏み込むことになる」との慎重論が強く、審議会で再度検討するよう求めるにとどめた。

 共産党は二日の野党国対委員長会談で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の決議に沿った内容が好ましいとの考えを伝えていた。

 社民党も県選出・出身の山内徳信参院議員、照屋寛徳衆院議員が三日までに案文の調整を進めていた。


     ◇     ◇     ◇     

思い受け文科省で対応/首相、従来方針繰り返す


 【東京】福田康夫首相は四日午前の参院本会議で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の要請について、「県民大会には多くの方々が参加した。仲井真知事の要請もいただいた。その思いを重く受け止めて文部科学省においてしっかりと検討していく」と従来の方針を繰り返した。

 福田首相は沖縄戦について「住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、多くの人々が犠牲になったということは、これからも学校教育においてしっかりと教えていかないといけないと思う」と県民感情に理解を示した。

 ただ、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題については「教科書検定は審議会における専門的な審議を経て実施されるものだ」と述べるにとどめ、今後の対応についての具体的な言及はなかった。

 輿石東氏(民主)の代表質問への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710041700_01.html

 

2007年10月5日(金) 朝刊 1面

教科書検定 沖縄条項新設に消極的

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は四日の衆院本会議で、教科書検定基準で沖縄戦に関する記述に配慮する「沖縄条項」を新設することについて、「東京の大空襲や広島、長崎の原爆もあった」として、国内特定地域の「条項」を作ることに消極的な姿勢を示した。同日から参院でも本会議で代表質問が始まり、国会論戦が本格化。自民を除く、与野党五党が沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題を取り上げた。

 「沖縄条項」は一九八二年、教科書検定基準に設けられた、アジア諸国の近現代史の記述に配慮する「近隣諸国条項」の沖縄版。沖縄戦「集団自決」への日本軍強制の削除を教科書検定で繰り返さないための「担保」として設けるべきだとの意見が県内などにある。

 渡海文科相は「沖縄条項」について、「先の戦争では多くの国民が犠牲になった。特定の地域のみに作るということはいろいろと課題もある。慎重に今後検討することが必要だ」と述べた。

 同検定については「軍の関与を否定しているというものではない」と強調。その上で「検定合格後の教科書の中には『日本軍の配った手りゅう弾で集団自決と殺し合いが起こった』との記述がある教科書もある」と例示し、「強制」よりも弱い「関与」程度の記述であれば、検定で問題にならないとの見解も示した。

 検定意見の撤回については、「時の政権の意向で検定が左右されることはあってはならない。政治介入にならないよう、どのような対応が可能か検討している」と、自らが介入できる問題ではないとの見解をあらためて示した。照屋寛徳氏(社民)への答弁。

 一方で、出版社の訂正申請について、渡海文科相は「真摯に受け止め、適切に対処したい。専門的見地から再度、教科書検定審議会の意見を聞くことになる」との見通しを重ねて示した。太田昭宏公明党代表への答弁。

 この日は照屋氏、太田氏のほか、参院本会議で民主党の輿石東氏、衆院本会議で共産党の志位和夫委員長、会派「国民新党・そうぞう・無所属の会」の下地幹郎代表も、教科書検定問題について質問した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710051300_01.html

 

2007年10月5日(金) 朝刊 1面

民主、きょう決議案提出/「集団自決」記述再検討盛り込む

 【東京】民主、共産、社民の三党は四日夕、国会内で野党国対委員長会談を開き、民主党が沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の教科書検定に関する決議案を提示した。共産、社民の両党は、県民大会で決議された「教科書検定意見の撤回」「記述の回復」が決議項目に盛り込まれていないことに難色を示し、持ち帰って対応を協議した。

 三党による共同提案の実現は不透明で、民主党は単独提出も視野に入れている。この場合、共産、社民は本会議で民主案に賛成する意向だ。

 民主党は、五日午前の参院議院運営委員会に決議案を提示する。自民、公明の与党を含めて賛同を求め、本会議終了後、参院に提出。全会一致での成立を目指す。

 衆院では与野党の議運筆頭理事間協議を開き、民主党の川端達夫筆頭理事が自民党の小此木八郎筆頭理事に決議案の内容を提示し、理解を求める予定だ。

 民主案は「『集団自決』の事実を正しく伝え、沖縄戦の実相を教訓とすることの重要性や、平和を希求することの必要性を子どもたちに教えていくことは、われわれに課せられた重要な責務である」と指摘。教科書の記述を審議する教科用図書検定調査審議会での再検討と、教科書検定規則の見直しを盛り込んだ。

 一方、野党共闘を「凍結」している国民新党は、国対委員長会談に参加しなかった。


知事、撤回「目指す」


 仲井真弘多知事は四日、沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述が削除された高校歴史教科書の検定問題で、「昨日まで議長を先頭に実行委員会と県民大会の決議を(政府に)持って行ってきたところ。(大会決議で確認した検定意見撤回と記述回復の)両方を目指していきたい」と述べ、記述回復だけでなく、政府が難色を示している検定意見の撤回を求める考えを示した。

 県議会九月定例会の一般質問で、赤嶺昇氏(維新の会)の再質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710051300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月5日朝刊)

[6カ国協議合意]

非核化へ着実な前進を

 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議がまとまり、議長国の中国によって合意文書が発表された。主な内容は以下の通りである。

 (1)北朝鮮は既存のすべての核施設を無能力化する(2)寧辺の三施設については年内に無能力化を完了する(3)年内にすべての核計画を完全かつ正確に申告する。

 この三点の合意内容のほか「核物質、技術、ノウハウを移転しない」ことも再確認された。

 非核化の見返りとして合意文書に盛り込まれたのは、北朝鮮のテロ支援国家指定解除の作業を開始することや重油等のエネルギー支援などである。

 北朝鮮の非核化に向け一歩前進したことは間違いない。「後戻り」や「途中離脱」がないよう、関係国は粘りと忍耐で着実に前へ進める努力を重ねてほしい。

 年内に無能力化するのは、寧辺の実験炉、使用済み核燃料の再処理工場、核燃料棒の製造施設の三施設だ。

 だが、合意文書は、すべての核施設の無能力化をどのような方法で具体化していくのか、申告すべき核計画の範囲はどこまでなのか、という合意履行にかかわる具体策には触れていない。

 濃縮ウランによる核開発疑惑についても文書には盛り込まれなかった。

 今回の合意文書が危うい要素を抱えた米朝主導の合意内容であることは否定できないだろう。

 テロ支援国家指定の解除について米国は、日米関係を重視する姿勢を堅持しつつも「究極的には米国が決める問題」だとして独自判断による解除もあり得ることを強調している。

 拉致問題に関して日本側の軟化を期待する北朝鮮は、日米間にくさびを打ち込むため、さまざまな手を打ってくるに違いない。

 テロ支援国家の指定が解除され、日朝交渉が停滞したまま米朝関係が進展すれば、日本外交は手痛い打撃を受けることになる。

 拉致問題だけを取り出して日朝二国間で解決するのは現実的に極めて困難だ。六カ国協議という枠組みを活用しながら、非核化と拉致問題と国交正常化を絡めた包括的な解決を模索する以外に道はないのではないか。

 南北首脳会談の成果をまとめた四日の共同宣言は、朝鮮戦争終結宣言のため当事国会議を開催することを盛り込んだ。休戦協定を平和協定に転換しようというものだ。

 「非核化達成」と「平和協定締結」の大きな目標に向かって朝鮮半島情勢が動きつつあることは歓迎すべきことである。日本政府にとってはこれからの交渉が正念場だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071005.html#no_1

 

琉球新報 社説

6ヵ国合意 実効性を伴ってこそ

 懸案の6カ国協議が3日、北朝鮮の核3施設の無能力化などを柱とする合意文書を発表した。テロ支援国家とされる北朝鮮の核放棄に向け、「核封印」の初期段階から「無能力化」の第2段階へとようやく進展を見せた。

 だが、合意はまだ絵に描いたもちにすぎない。実効性を伴ってこその合意だ。油断は禁物。緊張感を維持し、最終段階となる「核放棄」の実現に向け、引き続き知恵と努力を傾注してほしい。

 今回の協議で、北朝鮮はすべての既存の核施設の無能力化に合意。年内に寧辺の3施設の無能力化の完了を確約した。今後、2週間以内に米国主導の専門家グループが訪朝し、合意内容の実施を確認することになっている。

 北朝鮮は、年内にもすべての核計画を完全かつ正確に申告するほか、核物質や技術、知識を第3国に移転しないことにも合意した。

 無能力化の合意が実現すれば、核兵器に転用可能なプルトニウムの生産が、少なくとも1年以上は不可能になる。アジアの平和と安定を目指す6カ国協議の最終目標達成に大きな礎を築くことになる。ここまで北朝鮮が譲歩した背景には、米国をはじめとする関係国の金融・経済制裁の一定の効果も指摘されている。

 今回の合意では、核無力化の実現の見返りに、5カ国は重油100万トン相当を限度とするエネルギー支援を北朝鮮に行うほか、米国は経済制裁の根拠とする「テロ支援国家」指定の解除に向けた作業の開始を盛り込んでいる。だが、協議筋は文書化されない「合意の見返り」の存在を示唆している。

 核開発や核武装をちらつかせ、周辺国を揺さぶる北朝鮮のしたたかな外交は、時代遅れのようにも映る。現代版の砲艦外交ともいえる「核威嚇外交」の様相である。

 「早期の国交正常化に向けた努力」は盛り込まれたが、拉致問題の解決に向けた光は、今回の合意にも見えない。日本には厳しい中身だ。

 日本は、今後も引き続き核威嚇外交に対抗し、課題を克服できるタフな手腕が問われている。

(10/5 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27819-storytopic-11.html

 

2007年10月5日(金) 夕刊 1面

知事「記述回復」優先/撤回要求も成果重視

現実的対応を示唆

 仲井真弘多知事は五日午前の定例記者会見で、沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述が削除された高校歴史教科書の検定問題について、政府が難色を示している検定意見の撤回を求める考えをあらためて強調した。一方で「教科書も十二月には印刷しないと間に合わない。そこに(日本軍強制の)記述があるかないかは大きい。物理的な点やいろんなことを考えて、まず現実的に前に進むという成果が得られることが大事ではないか」とも述べ、「日本軍強制」の記述回復を優先させるべきだとの認識を示した。

 知事発言は、記述回復が実現すれば、県民大会で決議した検定意見の撤回に固執しない考えを示唆したものといえ、波紋を広げる可能性もある。

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書の知事意見への対応については「まだ結論は出していない」と断った上で、「言わないで(提出しないで)ほっておくと賛成と理解される。そうはいかない」と指摘。名護市の意見を踏まえ、滑走路の沖合移動を求める内容の知事意見を出す可能性も示唆した。

 知事が公約に掲げた「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」については、就任から一年を迎えるのに伴い、閉鎖状態の要求期限が「二年になる」との考えを示した。


民主決議案 共同提出へ

社民


 【東京】社民党は五日までに、民主党が国会に提出する沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の教科書検定に関する決議案を共同提出する方針を決めた。

 四日の野党国対委員長会談で提示された民主党案に「検定意見の撤回」「記述の回復」が明記されていなかったため、共同提出するか対応を協議していたが、決議前文の趣旨部分に同様の認識が示されているため、賛同した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710051700_01.html

 

2007年10月5日(金) 夕刊 1面

公明が体験者ら聴取/北側幹事長知事面談も

 文部科学省が教科書検定で、高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制をめぐる記述を削除した問題で、公明党の北側一雄幹事長が沖縄を訪れ五日、体験者や「教科書検定意見撤回を要請する県民大会」実行委員会から意見を聞き、仲井真弘多知事と面談した。

 公明党は文科省に、記述回復と沖縄戦に関する調査機関の設置を要請している。

 渡嘉敷村で「集団自決」を体験した源啓祐さん(68)=那覇市=と、山本幸子さん(76)=同=が自らの記憶などを基に「兵事主任が『軍命があった』と話していた」、「手榴弾が配られたのは軍命」などと話した。

 大会実行委は県議会議長の仲里利信・大会実行委員長ら三人が対応。「十年後、証言者がいなくなった後に同じことが起きないようにしなければならない」と伝えた。仲井真知事も「検定意見撤回と記述の早期回復をよろしくお願いします」と話し、大会決議文を手渡した。

 北側幹事長はこれらの要請に対し、「来年配られる教科書なので、記述回復は急がなければいけない」と述べた。

 また、二〇〇六年度の教科書審議会日本史小委員会は委員八人だったことを明かし、「専門分野については、審議会が委員以外の専門家の意見も聞くようなことも考えられる」と検定制度の見直しにも言及した。

 一方、検定意見撤回については「文科相の指示でやるとすれば、政治介入にあたる」とし、民主党が提案する国会決議についても「歴史認識にかかわる事柄で、多数決原理での決議は問題がないか」と消極的な姿勢を示した。

 同日午後に帰京し、夕方にも福田康夫首相と面談、聞き取りの結果を伝えるという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710051700_02.html

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