沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月27日より31日)

2007年10月27日(土) 朝刊 26面

不審機を想定か 小銃で囲み制圧/嘉手納基地で有事訓練

 【嘉手納】二十六日午後零時二十分ごろ、米軍嘉手納基地で、不審な航空機が侵入したことを想定したとみられる訓練が実施された。

 自動小銃を構えた兵士約十人と消防車などの緊急車両数台が同基地所属のF15戦闘機を取り囲み、同機から降りてきたパイロットに銃を向けたまま数十メートル離れた場所まで連行、うつぶせにして手錠をかけ、取り押さえた。

 訓練が行われたのは県道74号から基地と民間地を隔てるフェンスを挟んで数十メートルの場所。兵士が慌ただしく行き交う様子が有事を連想させ、通り掛かったドライバーも不安そうに見守った。

 同基地は沖縄タイムス社の取材に対し、訓練の詳細を明らかにしなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710271300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月27日朝刊)

[レンジ16共同使用]

負担軽減は口先だけか

 陸上自衛隊と米軍との共同使用を受け入れなければ、再編交付金はびた一文出さない―。

 そう受け取れるような説明を、沖縄防衛局が金武町、宜野座村、恩納村で構成する三町村連絡協議会にしていたことが分かった。

 金武町キャンプ・ハンセン内のレンジ16には、住宅地に近く危険だとして町民から猛反発を受けたレンジ4の都市型戦闘訓練施設が移設されることになっている。防衛省は、レンジ16一帯での陸上自衛隊の射撃訓練を地元が認めるよう求めているのである。

 十二月の二〇〇八年度予算編成までに受け入れを表明すれば来年度予算に交付金の10%、〇九年度以降に100%を交付するという。

 まさに「アメとムチ」による共同使用の押し付けであり、町民に対し負担増を強要していると言うしかない。

 防衛省は年内にも地元の合意を取り付け、その上で日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する考えだが、「カネで脅せばなんとかなる」と思っているのだろうか。

 言うまでもないが、都市型戦闘訓練施設が移設されても実弾を使った訓練の危険性がなくなるわけではない。町民は「射撃訓練の被害の可能性はいつでもある」と厳しく見ている。

 地元が反対し翻意を促している訓練を、なぜ陸上自衛隊はあえて行おうとするのか。それが腑に落ちない。

 県内の訓練空域では航空自衛隊が米空軍と合同で訓練、海上自衛隊もリムパックなどに参加し日米間の軍事的一体化が進められている。だが、これらの訓練はいずれも県民の目に届かぬ空域や海上でのことだ。

 伊芸区の住宅地からそれほど離れていない提供施設で、自衛隊員が実弾による射撃訓練を行うこととは明らかに様相が異なる。

 同盟強化における象徴という見方もできるが、だからこそ県民感情からすれば容認するわけにはいかない。

 それだけではない。ハンセン内にはレンジ3付近にも米陸軍特殊部隊の小銃射撃訓練施設が建設されることになっている。海兵隊に移管されるレンジ4ではまた、海兵隊が実弾射撃以外の訓練に使用する可能性もあるという。

 ハンセン内の施設建設や訓練計画などを見ると、日米両政府が約束した「負担軽減」とは裏腹に、負担は急増しつつあるというのが実情だろう。

 「伊芸区民は日米両政府が強調する安全性を誰一人信用していない。新たな軍事施設は住民の生活を脅かす」。政府は住民の声に真摯に耳を傾け、まず負担軽減を実行すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071027.html#no_1

 

2007年10月27日(土) 夕刊 1面

全駐労沖縄 手当削減撤回を要求

来月21日ストも視野

 全駐労沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)の第七十七回定期大会が二十七日午前、北谷町のサンセット美浜で開かれ、在日米軍基地の日本人労働者向け諸手当約百億円の削減を日本側が提案していることについて撤回を求めていくことを確認した。

 全駐労中央本部(山川一夫委員長)は、撤回されなければ十一月二十一日にストライキを決行する予定だ。

 與那覇委員長は「提案は雇用主の責任を放棄した労働者の生活破壊につながるもので到底、受け入れられない」と強く非難。「事態は一刻の猶予もない。今こそわれわれの魂を奮い立たせ、生活水準維持の闘いを進めていこう」と呼び掛けた。

 大会は午後、「駐留軍労働者の生活を破壊する格差給・語学手当の廃止を許さず、賃金水準の維持と労働条件の抜本的改善要求に全力で取り組む」とする宣言を採択する。

 全駐労中央本部は二十三日、防衛省との団体交渉で同省の提案を拒否。十一月二日予定の次回団交で同案が撤回されなければ、同二十一日に全国的な時限ストライキを決行することを確認している。今後、各分会でスト権確立のため投票を実施し、次回交渉に備える。

 同本部による全国規模のストが実施されれば、一九九一年以来、十六年ぶりとなる。

 同問題は、日米両政府が交渉している在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で日本側から提案された。国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」や「語学手当」などの削減を提案しているが、米側は難色を示している。


[ことば]


 思いやり予算 在日米軍駐留経費の日本側負担分。日本の物価高騰を受け、1978年度から「思いやりを持って対処する」として、従業員の一部福利費などの負担を開始。その後、特別協定で従業員の基本給や光熱水料、訓練移転費などの負担に応じるようになった。対象期間は5年間だったが、2006年4月に発効した現在の協定は「米軍再編の進展を見極めることが困難」という事情を踏まえ、2年間とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710271700_01.html

 

2007年10月28日(日) 朝刊 1・22・23面

「軍の強制」明記/執筆者坂本氏 申請へ

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、検定意見の対象になった五社のうち一社の執筆者を務める高校教諭の坂本昇さん(51)が二十七日、東京都内で記者会見し、自分が執筆する教科書に「日本軍によって『集団自決』を強いられた」との記述を明記して文部科学省に訂正申請する方向で準備していることを明らかにした。また、「集団自決」体験者による「軍から命令が出たとの知らせがあった」との証言を史料として掲載し、伝聞形式で「日本軍の命令」を明記することも検討している。

 このほか、二〇〇七年に国内で起こった話題として(1)今年の教科書検定で日本軍の強制記述が消えたことが問題になった(2)検定意見撤回を求める県民大会が、一九九五年の(米兵による暴行事件に抗議した)大会の参加者数を大きく超える規模で開催された―ことを新たに加える方針という。

 訂正申請の具体的な記述内容が明らかになったのは初めて。

 この会社の申請時期は十一月一日か二日のどちらかになる見通しだ。

 坂本さんが執筆した教科書は、申請本(白表紙本)段階では日本軍が「集団自決」を強いたことを記述していた。しかし、検定意見を受け「日本軍」の主語を「集団自決」から切り離して「住民虐殺」だけにかかるよう文脈を変更した。

 今回は「日本軍」と「集団自決」を直接つなげることで、申請本より強い表現にしたという。

 また、申請本では体験者の証言を引用した史料から「軍の命令」部分を省略していたが、「検定から現在までに新しい証言や著作があり、この記述に間違いがないと確信した」(坂本さん)ため、軍命の存在を訂正申請に盛り込む方針だ。

 坂本さんは「記述が認められるか厳しい面はあると思うが、復帰後最大の県民大会の声を伝えることが執筆者の責任だと感じている」と述べた。

 他の四社も、十一月に入ってから訂正申請する方向で調整している。関係者によると、五日に予定の執筆者懇談会後、第二週の週末までに申請が相次ぐ見通しという。


     ◇     ◇     ◇     

怒り 本土に伝わる/大会関係者、評価


 文部科学省が、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍による強制を削除した教科書検定問題で、執筆者が二十七日、記述の復活に強い意欲を示した。県民ぐるみの抗議の意思を示した県民大会についても、教科書に登場させたい考え。体験者や大会関係者は「怒りが本土に伝わった」と手応えを語った。検定意見の撤回を求めつつ、文科省や教科書会社の対応を見守る。

 県民大会で渡嘉敷島の「集団自決」体験を証言した吉川嘉勝さん(69)は、大会について記述する方針に「すごい。勇気を出して証言した意義があった」と喜んだ。一方で、「教科書会社は立場があるし、文科省もOKを出すかどうか。県民と執筆者の思いに応えてほしい」と望んだ。

 座間味島の体験者、宮城恒彦さん(73)は「なぜ県民がこれだけ怒るのか。全国の子どもが県民大会について知り、戦争で負わされた沖縄の苦しみを考えるきっかけにしてほしい」と期待した。

 大会実行委員長を務めた仲里利信県議会議長は「『軍の強制』の記述復活は当然だが、今回の記述削除問題や県民大会にまで触れる内容は一歩前進だ」と評価。同時に、「検定意見の撤回を求めていくことに変わりはない」と語気を強めた。

 「県民の怒りが本土に伝わった証拠」と歓迎した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長。「執筆者が、消された事実を真実としてくみ取ってくれたことに感謝したい」と、共感の広がりを実感した様子で語った。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「県民大会という歴史を盛り込むことで、検定で二度と同じ過ちを繰り返さないための証しになる」。将来に向け、歯止めになることを願った。

 別の教科書会社の執筆者は「県民大会を開いた県民の思いに応えたいという考えは同じだ」と歓迎。「日本軍強制の記述をぜひ盛り込むよう努力したい」と話した。


執筆者の坂本さん 自責「辞任も覚悟」


 「沖縄の人たちの思いを受け止めることができなかった」。沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題で二十七日、「日本軍の強制」を盛り込む形で文部科学省へ訂正申請する内容を公表した教科書執筆者の高校教諭、坂本昇さん(51)。記者会見では「自責の念がある」と、歴史教科書執筆者としての苦悩をにじませた。

 教科書検定では制度上、教科書検定審議会が出した検定意見に異議を申し立てる機会が設けられている。だが日本軍の強制に触れた記述の削除を求めた検定意見に、教科書会社も坂本さんも声を上げることはなかった。

 「異議を申し立てても、判定するのは文科省の同じ調査官。検事と裁判官が一緒になったようなもの」。坂本さんは検定制度の在り方を批判する一方で、「どうせ駄目だろうというあきらめの気持ちがあった」と当時を振り返った。

 転機になったのは、沖縄の人たちから次々にわき上がった怒りの声。「その粘り強さに背中を押され、励まされるような思いがした」

 「教科書の執筆者を辞める」。教科書会社が申請内容の見直しを求めてきた場合の対応を聞かれ、坂本さんは強い覚悟を見せた。


[解説]

「透明性」確保に先手


 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、検定意見が付された五社のうち一社の執筆者が「日本軍の強制」「日本軍の命令」を、本文と証言史料で明記する方針を明らかにした。申請前に記述内容を発表した坂本昇さん(51)の異例の行動は、他の教科書会社や執筆者に弾みをつけるのは確実だ。文部科学省が申請内容に異を唱えることも予想されるが、坂本さんの事前発表で記述の修正過程の「透明性」が確保される利点も見逃せない。

 今回の教科書検定に県民が強く反発したのは、検定意見が付されるまでの審議過程に「密室性」が極めて強かったことが一因だ。

 文科省職員の教科書調査官の原案が、議論のないまま沖縄戦の専門家がいない教科用図書検定調査審議会で追認されたことは、本紙などのマスコミ報道がなければ県民に伝わらなかった。

 文科省は「静謐な検定環境の確保」を理由に審議を公開しておらず、これが検定制度の不信感増幅にもつながっている。今回の訂正申請でも文科省は検定規則の細則を根拠に、申請後の記述内容の公表を教科書会社に禁じた。

 執筆者は「軍命や軍の強制があまりにも明確だと、教科書調査官が修正を要求するだろう」と警戒している。

 記述内容が事前に公表されなければ、文科省が修正を要求した際のやりとりが、再び県民不在の「密室」で処理される懸念は強い。

 申請前に記述内容を発表した坂本さんの対応は、文科省への「抑止力」にもなり得る画期的な取り組みだ。

 他の四社は記述を公表するかどうかを明確にしていないが、内容を事前に公にして県民に伝える意義を、前向きに検討してほしい。(東京支社・吉田央)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710281300_01.html

 

2007年10月28日(日) 朝刊 3・4面

協議いまだ視界不良/米軍再編「中間報告」から2年

 日米両政府が在日米軍再編「中間報告」に合意して二十九日で二年を迎える。普天間飛行場移設をめぐって代替施設案がL字(沿岸案)からV字形滑走路案となり、現在は環境影響評価(アセスメント)手続きが着々と進む。「政府とのパイプ」への期待を集めて昨年十二月に発足した仲井真県政だが、V字案の沖合移動と普天間飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態」の要求をめぐって政府とこう着状態に陥っている。福田内閣が発足し、中断していた普天間移設に関する協議会は首相官邸主導で十一月七日に再開される。しかし、政府と地元の協議の行方は依然「視界不良」だ。(政経部・渡辺豪、東京支社・島袋晋作、北部支社・石川亮太)

沖合移動/国、合理性を疑問視


 沖合移動を求める理由について、仲井真弘多知事は二十三日の記者会見で、(1)集落への騒音軽減(2)キャンプ・シュワブ北側砂浜のウミガメの産卵地保護(3)海流の変化によるサンゴや藻場への影響(4)シュワブ内の貝塚の保護―の四点を挙げた。

 知事は「沖合移動」を求める姿勢の堅持を強調しているが、アセス手続きが進む中、方法書の受け取り保留を解除せざるを得なくなり、「アセス前の修正」にこだわってきた従来スタンスは断念を余儀なくされたのが現実だ。


新たに環境


 県はこれまで、集落への騒音や危険性など生活環境面の負荷を沖合移動の理由に挙げてきた。しかし、アセス手続きの中で沖合移動を求めるスタンスに移行したことから、新たにウミガメや海流など自然環境面の根拠を表面化させたととらえられる。

 これに対し、沖縄防衛局の鎌田昭良局長は二十五日の会見で「アセス手続きの中で客観的なデータを収集し、その結果を県など地元に丁寧に説明していく」と表明。別の防衛省幹部は「環境面を考慮するアセスの観点からは、沖合移動は環境負荷が大きくなるというのが一般的な見方」ととらえ、アセス手続きの中で検討すれば、大幅な沖合移動の可能性は低いと見ている。

 シュワブ沿岸に上陸するウミガメを保護しようと思えば相当の沖合移動が必要とみられるが、県や名護市の要求は「日米合意の範囲内」でいいから「できる限り沖合に」というものだ。しかし、具体的にどれだけ移動すれば納得がいくのかは県民に明示していない。「合格点」は知事と島袋吉和名護市長の判断に委ねられている。

 政府関係者は「県から政府に非公式に伝えられている移動距離は、当初五十メートルだったのが、途中で百メートルになり、福田内閣発足後は百五十メートルと次第に長くなった」と指摘、「際限のない要求だ。根拠があるとは思えない」と合理性を疑問視する声も上がる。


集落上飛行


 日米が合意した「キャンプ・シュワブ沿岸案(L字案)反対」を掲げ、名護市長選に当選した島袋市長が、〇六年四月に防衛省と基本合意を交わした際の主眼は「集落上空の飛行を避ける」ことだった。もともと一本の滑走路だった日米合意(L字案)を、離陸、着陸専用の二本のV字形滑走路に変更したのはこのためだ。L字案のまま沖合移動することに防衛省が難色を示し、V字案に変更した、というのが名護市と防衛省の基本合意の流れだ。

 「地元の意向を尊重する」ことを公約に掲げた仲井真知事が当選するや、V字案の沖合移動を求めた島袋市長の態度は、「L」から「V」に変更した経緯を度外視したもの、と防衛省には映る。

 一方で防衛省は当初、V字案について「集落上空は飛ばない」としていたが、「緊急時は当然除外されるし、そのほかの場合、訓練の形態によっては当然(集落上空を)飛ぶことはあり得る」(金澤博範防衛政策局長)と変化させた。

 V字案合意の前提が問われる問題だが、現段階で政府と県や名護市の間で踏み込んだ議論は行われていない。沖合移動について石破茂防衛相は、科学的なデータなど「合理的な理由がない限り変更は困難」としている。集落上空飛行の問題こそ、地元の懸念の原点であり、政府と協議する「合理的な理由」に値するのではないか。

 辺野古沖を埋め立てる従来計画がとん挫した主要因は「反対派の阻止行動」との教訓がある防衛省には、阻止行動を排除しやすいシュワブ沿岸域の第一制限区域内での作業をなるべく広範囲に確保したい意向が根強い。同省が「沖合移動」に難色を示す背景には、「実行可能性」の確保を最優先するスタンスも挙げられる。


名護市 地元意向受け修正要求


 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で、地元と政府との協議が進展するかどうかのキーポイントとなっている名護市の「沖合移動」要求の経緯をまとめた。

 二〇〇六年一月、日米合意したキャンプ・シュワブ沿岸案に反対を表明した島袋市長が当選。代替施設受け入れには柔軟姿勢を示していたため、同年四月七日、島袋市長は政府と、飛行ルートが住宅地上空を避けたV字形滑走路案で基本合意した。

 しかし、翌十一日には辺野古区行政委員会が「着陸用滑走路が辺野古集落に近過ぎる。できるだけ滑走路を集落から離れた沖合側へ移動させることを求める」方針を確認し、その後、市や国に要請した。十二日には、北部市町村会が政府と基本合意した島袋市長支援の声明を発表。

 同年十一月に「現行のままの政府案(V字案)では賛成できない」との公約を掲げた仲井真知事が誕生。知事に配慮した久間章生防衛相(当時)が「修正」を示唆すると、地元で沖合移動の期待が一気に高まった。

 市は〇七年一月の政府との第三回協議会で滑走路を南西側沖合に寄せる試案を非公式に提示。市は「基本合意はあくまで概念図で詳細な場所を合意したものではない」との立場を主張。

 同二十四日には同市議会が「可能な限り沖合に移動するよう」求める意見書を可決し、島袋市長を後押しした。

 しかし、南西移動には地元辺野古区から「滑走路が近づく」「リーフが活用できなくなる」との声が出たため、島袋市長は「試案はあくまでも最大限の範囲を示したもの。地元が南には寄せるなと言うなら沖側への平行移動だけでいい」と説明。その後は「可能な限り沖合に」に路線変更。

 市は市議会三月定例会で試案提案の根拠を明示。(1)住民生活への影響(騒音等)軽減(2)埋め立てのほとんどが浅瀬で大型ケーソン(コンクリート箱)も不要となり工事費軽減、工期が短縮できる(3)長島自体がケーソンの代わりとなり平島も利活用できる(4)政府案と同様に陸側からの施工が可能(5)地元同意を得られる―の五項目を示した。

 十一月七日に開かれる協議会開催を前に二十六日、北部市町村会が「島袋市長支援」の声明を再度発表した。


「普天間」閉鎖「3年」要求でこう着


 政府との普天間移設協議の「入り口」としてきた公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」について、仲井真弘多知事は二十三日の記者会見で「ある意味で普天間そのもののことは考え方が別。即閉鎖といっても困るだろうから、三年をめどに、と言っている」と解説した。

 普天間の危険性除去の問題は、既定の工程に沿って進められている移設作業とは切り離し、現段階で政府が「取り組む」姿勢さえ示せばいい、とも聞き取れる。

 三年を「めど」に「閉鎖状態」を求めたもの、と幅のある要求をしている点を強調し、知事は決してハードルは高くない、との口ぶりだ。

 しかし一方で、知事は同じ会見の中で「ヘリの数、訓練の中身を減らせばいい」とも言及している。こうなると、米軍の運用改善に直結する要求であり、政府にとっては、官僚レベルでクリアできる問題ではなく、日米の政治レベルの決断を要する課題となる。

 普天間飛行場の運用改善については沖国大への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米が協議していた飛行ルートの再検討で、北東側の飛行ルートの優先使用などで合意。

 この際、防衛施設庁(当時)は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との見解を既に示している。

 政府は三年の閉鎖状態を「非現実的」として取り合わず、一貫してシュワブ沿岸部への代替施設建設によって普天間の危険性除去に対応するとのスタンスだ。

 現段階では政府が「引き続き危険性除去に取り組む意思表示」さえ示せば、県は代替施設の移設作業に協力して取り組む考えとみられるが、県の要求がヘリや部隊の運用にかかわる「抜本的な運用改善」である以上、政府にとってハードルは決して低くはない。

 仮に県との間で形式的な「口約束」が成立しても、実質的に米側との協議を進めなければ政府が批判の的となる。

 一方で、県側にとっても、知事就任から一年近くが経過し、公約実現の期限は二年後に迫っている。「三年がたったときに『閉鎖状態のめどを付けた』と言えばいい」(与党国会議員)と楽観できる状況ではない。

 閉鎖状態の要求は、時間との勝負であり、政府から迅速な対応を引き出せなければ意味を成さない。二年後に少しでも危険性除去の議論が進んでいればいい、との判断が現時点で知事の心中にあるのだとすれば、公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」という言葉との乖離はあまりに大きい。

 知事が政府に課そうとしているハードルを、県民にも分かりやすく提示し直す必要があるのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710281300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月28日朝刊)

[普天間移設協]

政府の強行姿勢が問題だ

 米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が十一月上旬に開かれる見通しとなった。実現すれば今年一月の第三回協議会から約十カ月ぶりに、政府と県が同じテーブルにつくことになる。

 仲井真弘多知事は「これまでのような(政府側の)我田引水の会合では意味はないが、内閣も変わってこちらの主張にも耳を傾ける姿勢があればいい」と出席に前向きだが、果たしてそうだろうか。

 確かに内閣は変わった。だが、参加する関係閣僚は前内閣とほぼ同じ顔ぶれである。

 額賀福志郎財務相は防衛庁長官在任中の二〇〇六年四月、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設することで島袋吉和名護市長と基本合意を交わした本人だ。

 高村正彦外相も防衛相時には「現在の案は最も理想的。合理的理由がない限り変えられない」と県や名護市が求めていた沖合移動に否定的な見解を表明。名護市が「再編交付金」の交付対象に含まれることにも否定的な見方を示していた。

 「V字案」を積極的に推進してきた二人の閣僚が加わった移設協議会で、「沖縄の声」に耳を傾ける環境が整ったとは思えない。むしろ、県や名護市が求める代替施設の沖合移動に否定的な閣僚がそろい、政府の強行姿勢がより鮮明になった感すらある。

 移設協議会は開けばいいというものではない。普天間飛行場の移設に伴うさまざまな問題について政府と県、名護市などが率直に意見を述べ合う場でなければなるまい。

 政府は地元の懸念や不安の解消に誠意を持って対応すべきであり、「沖縄に譲歩するべきではない」(石破茂防衛相)という姿勢では問題が複雑化するだけで、とんでもない住民無視と言わざるを得ない。

 県は環境や騒音などの問題に加え、環境影響評価(アセスメント)の方法書や住民意見概要の送付などを頭越しで進める政府の対応を問いただし、県民に明らかにすべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071028.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月29日朝刊)

[「再編合意」から2年]

機能強化だけが目立つ

 日米両政府が在日米軍再編に合意してからきょうで二年。だが、その実態は基地施設の削減ではなく、機能強化だけが目立つと言っていいのではないか。

 もともとが自衛隊と在沖米軍の役割分担と連携に主眼が置かれていたのであれば、いまさらの感がなくもない。

 しかし、当時の小泉純一郎首相はじめ外務相、防衛庁長官は国会などで「沖縄県民の過重な基地負担を軽減するためのもの」と述べていたはずである。しかも「そのために最善の努力をする」とも強調していたはずだ。

 実態はどうだろうか。金武町キャンプ・ハンセン内にあるレンジ16での陸上自衛隊の共同使用を求めたり、米陸軍特殊部隊が使う都市型戦闘訓練施設の新設を決めるなど、負担はこれまで以上に増しているとしか思えない。

 名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設で合意した普天間飛行場代替施設も不明な点が多い。

 政府は当初、V字形滑走路を持つ代替施設では住宅地上空は飛ばないという説明を繰り返していた。

 それが「緊急時は当然除外されるし、そのほかの場合、訓練の形態によって(集落上空を)飛ぶことはあり得る」(金澤博範防衛政策局長)と言うようになっている。県民だけでなく米側にも詭弁に聞こえるのではないか。

 「米側から聞いていない」と言い張る垂直離着陸機「MV22オスプレイ」の配備計画は進み、二〇一四年度から始めて一六年度までに二個中隊が配備されることが明らかになっている。

 政府は二言目には「基地の運用に口は挟めない」と言うが、米軍が提示できる事実をなぜ隠すのか。県民の信頼を損ねている理由がそこにあることを、政府は認識する必要があろう。

 代替施設では新たな問題も出てきている。米軍が普天間飛行場にはない装弾場を設ける計画を打ち出していることだ。もう一つは、大浦湾側にある二百十四メートルの岸壁である。

 ホワイト・ビーチや天願桟橋からも明らかなように、二百メートルを超えれば輸送艦だけでなく潜水艦も着岸できる。岸壁をどう使うつもりなのか、両政府にはきちんと説明してもらいたい。

 基地が完成すれば、その後は「運用の問題」として片付けられるのは目に見えている。だからこそ、その実態を明確に示してほしいのである。

 県民は、在沖米軍の再編計画について政府が米軍の計画を知っていて隠しているという疑いを持っている。説明責任を果たすのは政府の務めであり、政府は県民の疑問に対し誠意を持って対応すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071029.html#no_1

 

2007年10月29日(月) 夕刊 1面

F15あす未明離陸/嘉手納基地

 米空軍嘉手納基地は、三十日未明にF15戦闘機六機と空中給油機一機が米本国に向けて離陸すると発表した。周辺自治体は強く反発、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は二十九日午後にも幹事会を開いて、今後の対応を協議する。

 同基地によると、製造年の新しい機体への更新の一環。F15の機体更新は今回実施すれば、あと一回で完了するという。同基地の未明離陸は九月十一日に続くもので、今年に入って六回目になる。

 同基地は「周辺住民へ騒音の影響が及ぶことを認識しながらも、運用上の必要性と安全面を注意深く考察し、行うことにした」としている。

 三連協の野国昌春会長(北谷町長)は「嘉手納基地は米軍にとって使い勝手のいい基地なのだろうが、周辺住民にとって騒音被害は我慢の限界だ」と批判した。「リリースではアイロンフロー計画はあと一回で終わるというが、未明離陸そのものがなくなるということではないだろう」と懸念を示した。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「即応訓練が終わったばかりなのに」とあきれた表情。「深夜、未明の騒音被害は、住民の健康にも影響を与える。絶対に容認できない」と述べた。

 同町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「(未明離陸の)間隔が短くなってきている。米軍の軍事的都合ばかりが優先されており、無神経さに怒りを覚える」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710291700_01.html

 

2007年10月29日(月) 夕刊 4面

射撃場建設「許さず」/金武町伊芸区

 【金武】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の射撃場建設が計画されている問題で、同レンジに近接する金武町伊芸区の住民が二十八日、断固反対を訴える看板を設置した。

 池原政文区長は「レンジ4への都市型訓練施設建設にあれだけ反対したのに、また近くのレンジ3に建設するというのは金武町全体が愚弄されているとしか思えない」と怒りをにじませた。「米軍再編で日米が合意した時から計画されていたはずだ」と話し、機能強化、負担増大にいら立ちを見せた。今後、英語の看板も設置し、米軍関係者にも訴えていく。

 草刈り作業などで中学生も協力。瑞慶村和喜君(金武中三年)は「今でさえ大砲の大きな音や山火事で大変なのに、弾が飛んでこないか怖い」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710291700_06.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 2面

未明離陸 基地司令官に抗議

三連協「住民無視の運用」

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計七機が三十日未明、同基地から米本国に向け離陸を予定している問題で、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十九日午後、同基地司令官や外務省沖縄事務所、沖縄防衛局に対し未明離陸を中止するよう文書で抗議・要請した。

 基地司令官あての抗議文では「運用を工夫すれば日中の離陸も可能であり、米軍はその努力を怠っている。住民を無視した基地の運用であると言わざるを得ない」と厳しく指摘している。

 その上で、一九九六年に日米合同委員会で合意した深夜、早朝(午後十時―翌日午前六時)の飛行を制限している騒音防止協定の順守などを強く求めている。

 沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に対しては、「国レベルで深夜、早朝飛行の中止に向けた協議を行い、内容を明らかにすること」を要求した。

 同問題で、嘉手納町議会と北谷町議会が三十日午前にそれぞれ基地対策特別委員会を、沖縄市議会は三十一日午前に基地に関する調査特別委員会を開き、今後の対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_02.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 2面

フェアな運営なら必要/知事、普天間協に前向き

 【宜野湾】仲井真弘多知事は二十九日夜、来月七日の開催が固まった米軍普天間飛行場の移設に関する協議会について「これまでと違うフェアな運営の仕方であれば、むしろ必要なことだ」と述べ、出席に前向きな姿勢をあらためて示した。宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開かれた九州・沖縄地区防衛協会連絡協議会に出席後、記者団に答えた。

 石破茂防衛相が同飛行場の移設先が変更された過程を公表すると明言したことついて、仲井真知事は「どうしてあそこ(政府案)が理想なのか。変えられた経緯や中身、その理由が分からない。はっきり公表したほうがいいと思う」と述べた。

 守屋武昌前事務次官の証人喚問については「証人喚問の最中なのでコメントできない」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_03.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 24面

実行委存続を確認/教科書問題

 「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十九日、那覇市の教育福祉会館で会議を開き、日本史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた文部科学省の検定意見を撤回させるまで同実行委の存続を確認した。

 会議では、今月十五、十六日に東京で行われた検定意見撤回と教科書への記述復活を求める要請行動の結果報告や、同実行委の運動方針が話し合われた。

 参加者からは「国会での審議が新テロ対策特措法や防衛省不祥事が中心となり、『集団自決』教科書検定問題への注目が下火となっている」「教科書会社からの訂正申請受け入れで終わらせようとする動きが強まっている」など危機感を訴える意見が相次いだ。

 実行委の存続が全会一致で認められ、署名集めや福田康夫首相らへはがき、寄せ書きを送る運動への協力、県民大会やその後の要請行動の結果を報告し、各政党が県民大会決議の達成のために新たに決意を述べる集会の開催などが提案された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月30日朝刊)

[守屋氏証人喚問]

疑惑はいっそう深まった

 ゴルフ接待が始まった十二年前から数えると、回数は二百回を超えるという。正規料金を支払ったことはなく、夫人同伴でプレーすることもしばしばだった。夫婦丸抱えの、すさまじい接待攻勢である。

 接待を受けているという認識を持ちながら、業者に「これからはこの名前でやってほしい」と言われて、ゴルフ場でもゴルフバッグのタグにも偽名を使っていたというのだから、開いた口がふさがらない。

 守屋武昌前防衛事務次官に対する衆院テロ防止特別委員会での証人喚問。防衛事務次官といえば防衛省の事務方のトップである。就任の際には栄誉礼を受けるほどの身分で、一般の隊員からみれば雲の上の人だ。

 自衛隊員倫理規程は、利害関係者と「遊技またはゴルフをすること」を禁じている。明らかな倫理規程違反だ。国家公務員倫理法にも反する。

 守屋氏は一時期、倫理管理官を務めていた。倫理規程の周知徹底を呼び掛け、部下を指導する立場にある人が業者と癒着し、夫婦同伴のずぶずぶの接待にはまっていたのだ。

 職業倫理の欠如は驚くばかりである。調達実施本部の汚職事件や防衛施設庁の談合事件など、過去の教訓がどれだけ生かされているのか、疑わしい。

 業者との癒着を生みやすい組織体質がないかどうか、天下りの問題を含めてこの際、徹底的に洗い直すべきだ。

 航空自衛隊の次期輸送機(CX)のエンジン調達をめぐって守屋氏は、業者に「便宜を図ったことは一切ない」と全面否定した。だが、疑惑が晴れたとはいえない。

 業者は何らかの見返りを期待して、長期にわたる接待攻勢を続けたのではないのか。この業者がヘリコプターの装備品納入の際、防衛庁(当時)に対して過大請求をしながら処分を受けていないのは腑に落ちない。

 海上自衛隊による米艦船への給油量の訂正問題が起きたとき、守屋氏は防衛局長だった。守屋氏は証人喚問で「後で報道で知った」と関与を否定したが、にわかには信じがたい。

 普天間飛行場の辺野古移設をめぐって、沖合浅瀬案を拒否し、沿岸V字形滑走路案を強く主張したのは守屋氏である。

 照屋寛徳議員(社民)は「基地建設が利権の対象にされている」と事実関係をただした。質問時間が短く、しり切れトンボに終わったこの問題の解明も欠かせない。

 守屋氏に対する再喚問だけでなく、関係者の国会招致も必要だ。疑惑解明に手を抜いてはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071030.html#no_1

 

琉球新報 社説

守屋前次官喚問 疑惑は晴れていない/真相究明は国会の責務だ

 防衛省への装備納入業者との癒着疑惑が取りざたされる同省の守屋武昌前事務次官に対する証人喚問が、衆院テロ防止特別委員会で行われた。

 前次官と親密な関係にあった元専務が経営を取り仕切っていた防衛商社「山田洋行」から受けていた利益供与は、どの程度の頻度で行われていたのか。その見返りに業者に何をしたのか。守屋氏は、利害関係者とのゴルフについて「大変不適切な行為だった」と述べ、業者とのゆがんだ関係が明らかになった。

 だが接待を受けた防衛商社に対しては、装備品調達などで便宜を図ったことは「一切ない」と疑惑の核心部分を全面否定した。

記憶たどる努力を

 喚問の様子は、約2時間半にわたってテレビで中継された。守屋氏の説明を聞いて、どれだけの国民が納得しただろうか、大いに疑わしい。

 守屋氏は「責任を痛切に感じている」のであれば、もっと積極的に実態に踏み込んで説明すべきだった。肝心な部分については、なるべくぼかし、あいまいに済ませたい。そんな姿勢に映った。

 「承知していない」「記憶にない」と逃げるのではなく、むしろ記憶をたどる努力をし、誠実に語ってほしい。

 能吏、実力者とうたわれ、防衛省の事務方トップに上り詰めた守屋氏である。自分に向けられた疑惑の数々を、たとえ否定するにしても、その根拠を示すなど論理的に言葉を尽くして説明しない限り説得力を持ち得ない。

 証人喚問で問われたポイントは3点だ。業者とのゴルフ疑惑、海自補給艦が2003年に米補給艦に給油した量の訂正問題への関与、業者への便宜供与はあったのかどうかの3つである。

 守屋氏は、喚問前に既に元専務とのゴルフ交際については認めている。自費であっても防衛省の利害関係者とのゴルフを禁じている「自衛隊員倫理規程」に違反するとの認識を持っていたことも明らかにしている。

 そのせいか、守屋氏のゴルフ接待についての説明は、比較的よどみがなかった。

 元専務とゴルフを始めたのは防衛政策課長だった12年前にさかのぼることや、回数は「200回を超える」ことを明かした。この5年間では「多い時は月に4回、100回を超えた」と語った。

 ゴルフは守屋氏の妻も一緒にプレーすることが多く、その際に偽名を使い、ゴルフセットを夫人分も含めて二度もらっていた。元専務と賭けゴルフや賭けマージャンをし、旅行の接待も受けていた。

 それにしても、公務員の倫理に触れる行為がこれほど頻繁に安易に繰り返されていたとはいまさらながら驚かされる。公務員の基本中の基本に目もくれなかったことになる。

地に落ちた信頼

 巨額の防衛装備をめぐる契約が不正にゆがめられることへの危惧はどうなっていたのか。あきれるほかない。

 守屋氏は自身の問題が新テロ対策特別措置法の障害になっていることへの責任に言及したが、それ以上に深刻な問題が別にある。

 実力部隊を抱える防衛行政への信頼が地に落ちたのである。責任は極めて重大だ。当然ながら守屋氏を重用してきた歴代の防衛庁長官・防衛相の責任も問われてしかるべきだ。

 次期輸送機(CX)エンジン納入などをめぐる便宜供与は「一切なかった」とした。業者の防衛庁への過大請求疑惑についても「記憶にない」とかわした。

 業者側は守屋氏をなぜ特別に厚遇してきたのか。何らかの見返りを期待する意図があった。そう疑うのが自然だ。守屋氏の説明はこの疑念に答えていない。

 宴席に防衛庁長官経験者が同席していたことも見過ごせない。だが名前の公表は拒んだ。これも腑に落ちない。

 守屋氏は、米軍普天間飛行場の移設問題に実質上の責任者として深くかかわってきた。喚問では県内の特定の業者に対し、V字形滑走路案の機密図面の提供に関する疑いも指摘された。否定はしたが、もっと詳細に語る必要がある。

 喚問では結局、疑惑は晴れなかった。元専務を含め関係者の国会招致などを通じ疑惑の解明を進めるべきだ。あいまいなままに終わらせては、防衛行政への信頼回復は遠のくばかりだ。

(10/30 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28510-storytopic-11.html

 

2007年10月30日(火) 夕刊 1面

9機強行 最大92デシベル/嘉手納・未明離陸

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計八機が三十日未明、米本国へ向け同基地を離陸した。同日午前三時五十一分に、嘉手納町屋良で九二デシベル(騒々しい工場内に相当)を記録した。周辺自治体は中止を要求していたが、米軍は「運用上の都合」を理由に強行。未明離陸は二〇〇七年に入って六回目で、繰り返される爆音被害に、首長や議会、住民の反発は一層強まっている。同日午前二時五十分ごろには、別任務とみられるKC135空中給油機も事前通告なしに離陸した。

 米軍は事前の説明で、F15に同行する空中給油機は一機としていたが、実際にはKC10空中給油機二機が離陸した。

 F15戦闘機六機は同基地南側滑走路を使用し、午前三時五十一分ごろから相次いでから北谷町方向に離陸。同五十六分には、KC10空中給油機二機が沖縄市方向に飛び立った。

 嘉手納町の職員が同町屋良の「安保の見える丘」で測定した騒音は、F15の離陸順に、八七・二デシベル、九二デシベル、八三・六デシベル、八九・四デシベル、八六・七デシベル、八五デシベル。KC10空中給油機は七九・三デシベル、七九デシベルだった。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は、同基地が未明離陸の実施を発表した二十九日、基地司令官に対し文書で抗議、中止を要求した。野国昌春会長(北谷町長)は「再三の抗議にもかかわらず、再び米軍は一方的な理由で、住民に大きな負担を強いた。未明離陸の禁止を明記した騒音防止協定の締結を国家間で交渉すべきだ」と国レベルで改善策を講じるよう訴えた。

 今回の未明離陸は、同基地の旧型F15を製造年の新しい機体に更新する「アイロン・フロー」と呼ばれる計画に伴うもの。同基地は、同計画に伴う未明離陸をあと一回実施するとしているが、日程は確定していない。


嘉手納・北谷議会 抗議へ

基地特委「容認できない」


 【嘉手納・北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計八機が三十日未明、同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)と北谷町議会(宮里友常議長)は同日、基地対策特別委員会を開いた。米軍の強硬姿勢を批判する意見が相次ぎ、未明離陸の中止などを求める抗議決議と意見書の両案を提案することを決めた。

 臨時会は北谷町議会が三十一日、嘉手納町議会が十一月六日にそれぞれ開く予定。

 両町議会の委員会では、「寝静まった時間帯の飛行は容認できない」「県選出の国会議員とも連携し、国レベルで改善策を講じるよう訴える必要がある」などの意見が上がった。同問題をめぐっては、沖縄市議会(喜友名朝清議長)も三十一日午前に基地に関する調査特別委員会を開き、今後の対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301700_01.html

 

2007年10月30日(火) 夕刊 5面

闇裂く爆音 怒り沸点/6度目強行 住民憤り

 【中部】三十日未明、米軍嘉手納基地で今年六回目の未明離陸が行われ、寝静まった住宅地域に激しい爆音が響いた。周辺自治体が強く中止を申し入れているにもかかわらず、「運用上の理由」で繰り返される未明離陸。住民からは「表現できないくらいの爆音で目が覚めた」「どうにかしてほしい」と怒りの声が上がった。

 戦闘機の飛行ルート下の北谷町砂辺。寝静まった住宅街を激しい爆音が襲った。

 同区に住む砂辺スミ子さん(78)は「気分が朝からイライラしている。政府の方には一カ月くらい泊まり込みで来てもらって、どんな音なのか聞いてほしい」といら立ちをぶつけた。別の女性(65)は「表現できないくらいの音だった。頭がボーとしている。安眠妨害を通り越している。ワラビンチャー(子や孫)のためにもこんな大変な状況は早くやめてほしい」と語気を強めた。

 嘉手納基地の滑走路に近い嘉手納町屋良区を含む東区の島袋敏雄自治会長(62)は「即応訓練があったと思ったら、今度はまた未明離陸。区民からたくさんの苦情が寄せられている」と憤った。「三連協の抗議も届かない状況。区民が危険にさらされる訓練を即時にやめてほしい」と訴えた。

 屋良区の主婦宮平美代子さん(63)は爆音で目を覚ましたという。「一度起きるともう寝られない。毎日こんな状態。何とかして騒音のない生活をしたい」

 沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会は三十一日にメンバーを招集し、抗議決議や意見書の両案などを協議する。与那嶺克枝委員長は「今年に入り何度も抗議決議している。議会の決議を何だと思っているのか。最近の米軍の姿勢は異常としか思えない。いいかげんにしてほしい」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301700_02.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 2面

県、アセス方法書諮問/普天間代替

 米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書について県は三十日、県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)に諮問した。同審査会は、県のアセス条例に基づく審査を行う飛行場については十二月二十一日、国のアセス法に基づく海上埋め立て部分に関しては来年一月二十一日となっているそれぞれの知事意見提出期限までに、答申をまとめる。

 県文化環境部の友利弘一環境企画統括監は、仲井真弘多知事が方法書受け取り保留を撤回した理由について、「意見を述べないことは異議なしととらえられ、事業に関する住民等の意見や名護市長、宜野座村長の意見を踏まえないことになる。地域の環境保全に責任を持つ知事の立場が損なわれると考えた」と述べ、慎重な審議を求めた。

 この日の審査会では、代替飛行場建設をめぐり自然環境保護のため米連邦裁判所で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している原告団の一人、真喜志好一さんが、傍聴席から審査の在り方への要望を述べ、県職員らから制止される場面もあった。

 真喜志さんは(1)事業者が現在、同建設予定地で実施している環境現況調査は違法であり中止させること(2)方法書の事業内容とジュゴン訴訟で米国側が提示した内容に差があり、相違点について専門家など住民が説明する場を設けてほしい―と要望した。

 同審査会の規則では、審査のために必要があると認められる場合は、専門的知識を有する者などに意見を聴くことができると定めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_04.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 2面

沖国大ヘリ墜落/首相「かすかに記憶」

 【東京】福田康夫首相は三十日の衆院テロ防止特別委員会で、二〇〇四年八月に沖縄国際大学に米軍CH53D大型輸送ヘリが墜落した事故の記憶について尋ねられたが、「かすかに覚えています」とだけ答えた。笠井亮氏(共産)への答弁。

 事故当時は官房長官を辞任して三カ月が過ぎていたものの、沖縄開発庁長官も経験し、「沖縄の課題を熟知している」(県選出国会議員)と評されていた福田首相。だが、質問された瞬間は首を横に振るなど戸惑いを隠せないしぐさも見せ、「あっ、あのっ、えー」と間を置いた上での答弁だった。

 笠井氏は「沖縄県民は本当にしんどかった。大変な屈辱的事件だった。かすかにということでなく、しっかりと沖縄県民の気持ちを受け止めて覚えておいてもらいたいと思う」と首相の認識をただした。

 沖縄に対する福田首相の“思い”の程度が浮き彫りにされた答弁に、宜野湾市の伊波洋一市長は「市民は『また落ちるのではないか』と恐怖の中で暮らしている。政府の責任者として、その程度の認識しかないのは情けない」と憤慨。「小泉、安倍内閣でも沖縄への認識が薄いと言われた。今後も沖縄側から粘り強く基地問題を訴え、現状を認識させるべきだ」と話した。

 沖国大の石原昌家教授も「日本国家にとって、沖縄は基地を置く都合のいい場所にすぎず、生命財産を守るべき住民がいるという意識のらち外にある。何げない言葉に本音が表れた」と痛烈に批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_05.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 25面

未明離陸 砂辺で109デシベル/米軍F15

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が三十日未明に同基地を離陸した際、県が北谷町砂辺に設置している騒音測定器が最大で一〇九・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を記録していたことが分かった。

 同町によると、測定された騒音記録は、同日午前三時五十二分に一〇三・五デシベル、同五十三分に一〇九・二デシベル、同五十四分に一〇六・九デシベルといずれも一〇〇デシベルを上回った。

 同基地では同じ時間帯に、F15六機が砂辺地域へ向けて離陸したことが確認されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月31日朝刊)

[給油活動停止]

非軍事支援、検討の時だ

 テロ対策特別措置法の期限切れを前に、福田康夫首相が突然、民主党の小沢一郎代表と会談した。

 インド洋での海上自衛隊による給油活動は、十一月一日の期限切れで法的根拠を失い停止することになるが、給油継続を盛り込んだ新テロ対策特別措置法案の成立めどはまったく立っていない。

 そんな状況の中で開かれた初めての党首会談である。

 福田首相が法案成立への協力を要請したのに対し、小沢代表はこれを拒否、議論は平行線に終わった。

 三十日の党首会談は、対テロ新法案をめぐる日本の政治状況を考える上で、極めて象徴的だ。

 国会の首相指名選挙の際、衆院は福田氏を参院は小沢氏を首相に指名した。衆院議決を優先する憲法の規定に従って福田氏が首相に選ばれたものの、ねじれ国会の構図は変わらない。

 対テロ新法案について、国会が割れているだけでなく、国民世論も賛否がせめぎ合っている。

 つまり党首会談は、対テロ新法案をめぐって国論が真っ二つに割れ、にっちもさっちもいかない状況を象徴しているのである。異例の事態といっていい。国民の中にも、どう判断していいか、迷いがあるのではないだろうか。与野党とも、総選挙を横目でにらみながら、世論調達に懸命だ。

 実は、インド洋での海上自衛隊による給油量は二〇〇三年度以降、激減している。今年八月末までに実施した給油全量の60%が、〇一年十二月のスタートから〇三年三月までの十六カ月間に集中しており、現状はピーク時の十分の一程度だ。

 給油継続に執拗にこだわる理由がはっきりしないのである。強いて言えば、「アメリカの機嫌を損ねたくない」ということなのだろう。

 このような状況の中で取るべき賢明な策は、もう一度、原点に立ち返り、十分な時間をかけて徹底した議論を重ねることだと思う。

 テロ特措法に基づく給油活動については、「不朽の自由作戦」(OEF)の正当性・合法性や、イラク作戦への燃料流用疑惑、給油量の誤りの隠ぺい疑惑など、問題が噴出している。

 だとすれば与党はこの際、テロ特措法の期限切れを奇貨として、衆院での再可決による法案成立を断念し、議論の時間を確保すべきである。

 米国が本格的な軍事作戦を開始して以降、テロが拡散している現状を踏まえ、非軍事面、民生面の支援拡大という、もう一つの選択肢を真剣に検討してはどうか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071031.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15未明離陸 実効ある騒音規制必要だ

 米空軍は30日、県や地元自治体の中止要請を無視し、嘉手納基地でF15戦闘機による未明離陸を強行した。住民の安眠を妨げ、平穏な生活を脅かす暴挙であり、到底容認できない。米軍は、地元の切実な声に耳を傾け、深夜・未明の飛行を見合わせるべきだ。

 住民そっちのけの行為がまかり通る背景として、1996年に日米合同委員会で合意された「嘉手納飛行場における航空機騒音規制措置」の不完全さを指摘しなければならない。

 「午後10時―(翌日)午前6時の間の飛行および地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される」という内容だが、実際上、米国が必要と判断すればいつでも飛行できるようになっている。

 「規制措置を守ってほしい」とどんなに要望しても、米軍は「規制措置の範囲内で(離陸は)行われている」との認識を示すばかりで、らちが明かない。今年の未明離陸は今回で6回目だ。

 深夜・未明の飛行自粛を米軍に促すはずの日米合意が、逆に未明離陸を正当化する根拠として利用されているのが実情だ。合意から11年が経過し、本来の趣旨が吹き飛んでしまっている。

 米軍の勝手放題の基地運用を許しているのは、日本政府の怠慢としか言いようがない。

 あらためて米国と協議し、深夜・未明の飛行を原則として禁止するといった、実効性のある規制に改めることが不可欠だ。

 未明離陸は、嘉手納基地にある旧型のF15を、より高性能な機体に更新することが目的とされる。

 これまで米軍は「米国に日中に到着させるため嘉手納基地を早朝に離陸する必要がある」と説明してきたが、経由する基地を増やすなど米本国に戻る飛行ルートを工夫すれば、人々が寝静まっている時間帯に飛ばなくても済むはずだ。

 この間の米軍の言動を見ていると、未明離陸を避けようと努力した形跡がうかがえない。

 それどころか、嘉手納基地の司令官は、9月に嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会から抗議を受けた際「三沢、岩国では早朝や未明離陸を繰り返しても抗議はない。沖縄はなぜ抗議してくるのか」と言ってのけた。

 基地の運用のためなら住民生活の平穏など全く顧みない態度だ。

 米軍は今後あと1回、未明離陸の計画があると発表している。

 日本政府は、米軍によって国民生活が脅かされている状況を放置してはならない。

 地元から中止要請があることを「取りあえず米国に伝える」というような及び腰の姿勢ではなく、強い態度で未明離陸の回避を米国に迫るべきだ。

(10/31 9:57)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28548-storytopic-11.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 1面

再編交付金、名護外れる/官報告示

 【東京】石破茂防衛相は三十一日までに、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」に全国三十三自治体を指定、同日付の官報で告示した。普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動を主張している名護市や宜野座村、陸上自衛隊とのキャンプ・ハンセン共同使用を容認していない金武町、宜野座村、恩納村は従来、候補とされていたものの指定から漏れた。一方、那覇港湾施設(那覇軍港)の代替施設の受け入れを容認している浦添市は指定された。

 四市町村の指定漏れについて防衛省の担当者は、政府案に反対していることなどを理由に、米軍再編推進法で規定する「再編の円滑かつ確実な実施に資する」との要件を満たしていないと指摘。さらに、「今後協力が得られるということが現時点で判断できないため」とも説明している。

 一方で、「今後、自治体の理解と協力が得られれば交付対象に随時追加していく」と説明。V字案やハンセン共同使用についての理解と協力が得られれば、財務省と協議した上で交付対象に指定する考えを示した。

 この時期の指定については、指定を受けた自治体が交付金の助成対象となる事業計画を作成し、各議会の十二月定例会などで承認を経る必要があることを指摘。担当者は、「受け入れを表明している自治体の都合上、指定をこれ以上先延ばしできない」としている。

 「再編交付金」は、再編に伴う負担の増減を(1)防衛施設面積の変化(2)施設整備状況(3)航空機、艦船の数や種類の変化(4)人員数の変化(5)防衛施設の使用態様の変化―を基礎として点数化。

 一方で、再編事業の進ちょく率を(1)受け入れ(10%)(2)環境影響評価(アセスメント)の調査着手(25%)(3)工事(埋め立てなど主要部分)の着工(66・7%)(4)再編の実施(100%)と分類。

 旧来交付されていた日米特別行動委員会(SACO)交付金の交付額を参考に、一点当たりの交付の基準となる額を算定し、これに市町村の負担の点数を掛け合わせて交付額を決定する。

 防衛省は十一月上旬にも交付金の内示額について、財務省の承認を経た上で関係自治体に通知。自治体は、事業計画の議会承認を経て防衛省に交付を申請し、正式に決定される見通しだ。


県が防衛省批判

「やり方おかしい」


 県の上原昭知事公室長は、名護市が再編交付金の交付対象に含まれなかったことについて「名護市は政府と基本合意し、新たな基地建設を受け入れると言っている。基地負担が生じるにもかかわらず、交付の対象外とする防衛省のやり方はおかしい」と批判した。


「内容確認する」

名護市長


 【名護】米軍普天間飛行場移設先の名護市の島袋吉和市長は三十一日午前、市内の公務先で「内容を確認してからコメントしたい」と述べた。島袋市長はこれまで「政府と名護市で基本合意している。協力していないわけではない」として、対象外とされていることに反論していた。


「反対変わらず」

恩納村長


 米軍キャンプ・ハンセンで陸上自衛隊との共同使用を打診されている「三町村連絡協議会」の志喜屋文康恩納村長は「三連協で共同使用を受け入れていないのだから当然だろう。村内のハンセン内で爆破訓練するという説明は受けたが、それ以上の明確な説明は受けていない。負担増であり、反対に変わりはない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_01.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 1面

未明離陸/北谷議会が抗議決議

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が三十日未明に同基地を離陸した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は三十一日午前、臨時会を開き、騒音防止協定の順守やF15戦闘機の即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。あて先は同基地司令官、首相、防衛相ら。同基地から未明離陸は今年に入り、今回で六回目。嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十一月六日に臨時会を開き、抗議決議、意見書の両案を可決する。沖縄市議会(喜友名朝清議長)も三十一日午前、基地に関する調査特別委員会で、対応を協議。近日中に再度委員会を開き、文案などを調整する。

 嘉手納基地からは、三十日午前三時五十一分ごろからF15戦闘機六機とKC10空中給油機二機が本国へ向けて飛び立った。午前二時五十分ごろには、別任務とみられるKC135空中給油機も離陸した。

 同基地に隣接する同町砂辺地域では、F15戦闘機が離陸した三十日午前三時五十二分から同五十四分にかけて、最大で一〇九・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を記録した。

 抗議決議は、騒音防止協定が午後十時から午前六時まで航空機の飛行を制限しているものの、「運用上の必要性」を理由に未明離陸を繰り返す米軍に対し、「運用を工夫すれば未明離陸の回避は十分可能であり、米軍はその努力を怠っている。配慮に欠けた基地運用に怒りを禁じ得ない」と強く抗議。

 今年に入り二回強行された同基地でのパラシュート訓練や、サイレン音や拡声器放送が鳴り響き、住民から苦情の声が上がった即応訓練などを指摘した上で、「周辺住民は我慢の限界であり、いかなる理由でも到底容認できない」としている。

 意見書では国や関係機関に対し、問題の解決に向けた国レベルでの協議を行い、その内容を公開することを求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_02.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 5面

戦中つづった日記寄贈/平和資料館に

 那覇市出身の故與儀達清さんが、沖縄戦時中の避難生活や心境をつづった日記や二女の幸子・ウィルセン(旧姓・與儀)さん(63)が戦中着ていた着物が三十一日、幸子さんらから糸満市の平和祈念資料館に寄贈された。二十五日にきょうだい四人で米国カリフォルニアやハワイから来沖した。幸子さんは「戦争の悲惨さ、平和の大切さを多くの人に知ってほしい」と願っている。(宮城貴奈)

 「今日も激しい爆撃だ」「毎日が不幸だ」。手帳には小さな文字で、一九四四年の十・十空襲から四五年六月までの戦中の状況や達清さんの心境が克明につづられている。極端に厳しい食糧事情の中、北部や南部を逃げ惑う日々だったが、ガマの中でも日記を書き続けた。二十七年前、達清さんは「苦しい体験を忘れないでほしい」と二男の隆さん(65)に手帳を託していた。

 與儀さん一家は、家族七人で北部や南部を逃げ回り、祖父と長男を亡くした。疎開船に家族全員で乗船しようとしたこともあったが、直前に隆さんが負ったやけどの病院探しのため、出発時間に間に合わず乗れなかった。長女のエミ・トーイさん(71)は「後でその疎開船は米軍に撃沈されたと聞いた。危ないところだった」と振り返った。

 戦中ずっと同じ着物を着続けた幸子さんは、当時幼かったため戦中の記憶はないが、戦後も母親から毎日のように沖縄戦の話を聞いたという。母親は、幼子を連れながら家族五人が生き残った証しとして、幸子さんの着物を長年大切に保管していた。

 戦後、幼少時にハワイに移住、日本語が話せなかった隆さんは、達清さんから渡された手帳を訳すために大学で日本語を学んだ。寄贈について、隆さんは「(天国の)父も喜んでくれると思う」と語った。着物は幸子さんにとっても大切な品だが「自分の手元にあるより、沖縄戦の歴史の一つとして残してほしい」と涙ながらに語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_04.html

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