2007年11月1日(木) 朝刊 1面
首相、関係修復に意欲/知事と初会談
沖縄の考え聞き交渉/普天間代替・教科書問題
【東京】仲井真弘多知事は三十一日夕、首相官邸で福田康夫首相と初めて会談し、米軍普天間飛行場の移設問題や沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題などで意見交換した。仲井真知事は、普天間移設に向けた政府の丁寧な対応を要望。福田首相は会談後、記者団に「沖縄の方々の考えを取り入れながら、しっかりと交渉していきたい」と述べ、関係修復に意欲を示した。
仲井真知事は会談で、普天間飛行場移設問題について「地元の意見にちゃんと耳を傾けて、丁寧に進められるように円満な解決をお願いしたい」と要望した。
知事によると福田首相は「(知事の考えは)よく理解できる」と応じたという。
関係者によると、首相は「協議会で沖縄の声をよく聞くよう、関係閣僚に指示しているので、具体的な話はよく相談してほしい。決めるときは私と決めましょう」と述べ、自ら主導する形で問題解決に取り組む姿勢を示したとされる。
また、教科書検定問題についても福田首相は「今まであったもの(日本軍の強制)を三月に急に(削除した)というのはね」などと、記述の回復を求める沖縄側に理解を示したという。
仲井真知事は会談後、普天間移設問題解決に向けた福田首相の意欲について「非常に驚くくらい感じた」と述べ、好感触が得られたことを明らかにした。
一方、仲井真知事は首相との会談後、町村信孝官房長官とも約三十分間、意見交換した。しかし官房長官との会談については会談後、周囲に「まだ隔たりがある」などと不満を漏らした。
移設問題をめぐっては、政府案(V字案)を堅持する政府と、滑走路の沖合移動を求める県などの意見が食い違い、移設に関する協議会は今年一月以来中断している。
普天間移設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、方法書提出などを強行する手法を取り続けた政府と沖縄の溝は深まっていたが、福田首相が協調姿勢を示したことで、七日に再開予定の協議会で事態が進展するか注目される。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_01.html
2007年11月1日(木) 朝刊 1面
きょうにも訂正申請/「集団自決」強制削除
文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除した教科書検定問題で、同省が各教科書会社に対して今週内に訂正申請をするよう要望していたことが三十一日、分かった。これを受け、検定で記述を削除された教科書会社五社の一部は一日にも訂正を申請するとみられる。
関係者によると、記述訂正の対象となる教科書は来春には全国の高校に配られることから、各教科書会社は十二月上旬までに印刷を始める。文科省は訂正申請があった場合、教科用図書検定審議会を開き、申請内容の是非を検討した上で訂正を認めるかどうかを判断する。
このため、今月中旬までには審議会を開きたい意向で、教科書会社各社に「今週内には訂正を申請してほしい」との要望を伝えていたという。
文科省は訂正申請を受けるかどうかの決定前に訂正内容を明かさないよう教科書会社に求めており、執筆者が訂正内容の抱負を述べたことに、銭谷真美事務次官が記者会見で慎重な対応を求めるなどしていた。
教科書会社は文科省の要望も考慮した上で訂正申請の日程を決めるとみられている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_02.html
2007年11月1日(木) 朝刊 29面
石西礁湖 死滅深刻/サンゴ白化現象要因
【八重山】九州大学大学院理学府附属臨海実験所は三十一日までに、石垣島と西表島の間に広がる国内最大のさんご礁「石西礁湖」の三十三地点で、今年七月以降のサンゴの白化現象が原因でクシハダミドリイシの約53%、ハナガサミドリイシの約39%が死滅したことを明らかにした。他の種類のサンゴも甚大な影響を受けており、海底の面積に占める生きたサンゴの割合(サンゴ被度)は急激に低下したとしている。同実験所の野島哲准教授は「石西礁湖のサンゴは幼生を広範囲に供給する役割があるだけに、周辺海域の生態系にも影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。(福元大輔)
サンゴは、高海水温などのストレスを受けると共生している褐虫藻が離れ、白くなる。栄養の大半を褐虫藻の光合成で補給しているため、白化した状態が長く続けば死滅する。
野島准教授は、石西礁湖の内側二十六地点、外側七地点の計三十三地点で、十一種類のサンゴを七日間かけて潜水調査。そのうち同礁湖で優先種とされるクシハダミドリイシ、ハナガサミドリイシの二種類の結果を発表した。
クシハダミドリイシは五百七十三群体を調べ、内側で66%、水温が低い傾向にある外側で13%、全体で53%が死滅。ハナガサミドリイシは五百五十三群体を調べ、内側で47%、外側で13%、全体で39%が死滅していた。今年九月の調査では、いずれのサンゴも約60%が白化しており、その大半が回復せずに、死滅したとみられる。三十三地点のサンゴ被度は平均で内側10%、外側70%程度。野島准教授によると、昨年まで内側でも25%程度はあったという。
県内では、一九九八年の大規模白化の際、沖縄本島近海で九割、石西礁湖で四割近いサンゴが死滅。その後も白化のほか、オニヒトデ、台風、病気などでサンゴ被度は低下している。新たなサンゴが卵を産めるようになるには五―十年が必要とされ、さんご礁の回復は困難な状況にある。
野島准教授は「九八年の白化で生き残った大きなサンゴが、今年の白化で死滅した。幼生を供給するサンゴが死ぬと減り続ける一方で危機的状況にある」と懸念を示した。
石西礁湖では、今年七月下旬から海水温が三〇度を超える日が続き、サンゴの白化現象が起きていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_03.html
2007年11月1日(木) 朝刊 29面
アルジャジーラ検定問題を特集
中東を本拠に全世界に放送網を持つ放送局「アルジャジーラ」の特派員らが三十一日、座間味島を訪れ、「集団自決(強制集団死)」体験者の宮平春子さん(82)を取材した。同局は文部科学省が高校の日本史教科書から沖縄戦の集団自決に対する日本軍の強制を示す記述を削除した教科書検定問題をめぐり、十一万六千人を集めた県民大会が開かれるなど、日本で大きな議論となっている状況を取材している。
座間味島を訪れたのはクアラルンプール支局のデイビッド・ホーキンス特派員ら。宮平さんから、沖縄戦当時の村助役兼兵事主任だった兄・宮里盛秀さんが「集団自決」が起きる直前に、「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するよう言われている」と、父・盛永さんに伝えていたことなどを聞いた。
取材陣は平和祈念資料館や、高校の授業風景なども取材する予定。ホーキンス特派員は「日本で改憲などへの動きが進む中、なぜこの問題が大きな論争になったのかに興味を抱いた」という。「現地で取材して、沖縄の人々は、沖縄戦時に日米両国の軍隊から被害を受けていたのではとの印象を持った」と話した。
取材結果は特集番組として、来週以後に同局の英語チャンネルで放送される予定。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_08.html
2007年11月1日(木) 朝刊 29面
ジュゴン藻場にクイ/名護海岸に防衛局設置
【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、沖縄防衛局が天然記念物ジュゴンの餌場となっている藻場に調査ポイントを示す標識とみられる鉄クイとナイロン製のロープを設置していたことが三十一日、分かった。自然保護団体や専門家は「ジュゴンが餌を食べに来なくなる」と危惧している。
「北限のジュゴンを見守る会」の鈴木雅子代表らによると、水中の砂地に差し込む鉄クイは三十―四十センチ。水面に出ているわっかに、約五十センチのナイロン製の浮きロープを結び付けている。ジュゴンの食み跡近くに設置され二、三メートルから十メートルほどの間隔で、九十ほど設置されているという。
二十七日に確認され、自然環境保護団体から「ジュゴンの体を傷つける恐れがある」との指摘を受け、沖縄防衛局は三十一日までに、鉄クイをプラスチックのクイに変更したもようだ。鈴木代表は「ジュゴンは同じ場所に餌を食べに戻ってくる。今のままでは、ジュゴンが来る障害になる」と批判。沖縄防衛局は「事実関係を調査中」とコメントしている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_09.html
2007年11月1日(木) 朝刊 29面
汚水1・9トン民間地へ/嘉手納基地排水管破損
【北谷】米軍嘉手納基地第一ゲート近くの下水道の排水管が破損し、約五百ガロン(約一・九トン)の汚水が民間地域へつながる排水溝へ流出していたことが三十一日、分かった。
同基地渉外課は「住民への危害の恐れはない」としており、破損の原因などは明らかにしていない。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_10.html
2007年11月1日(木) 夕刊 5面
名護市、装弾場を認識/普天間代替
【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、日米が普天間飛行場にはない航空機弾薬搭載場を代替施設に建設することで合意していたことを名護市が昨年十二月の段階で把握していたことが三十一日、分かった。弾薬搭載場の建設については、日米の自然保護団体などが米国防総省の公文書に記載されていることを公表、沖縄防衛局も認めている。名護市の末松文信副市長は三十一日、「昨年十二月に(政府から)説明を受けた際に、装弾場があるとの説明があった」と述べ、装弾場整備を把握していたことを認めた。ヘリ基地反対協議会の大西照雄代表委員らによると「移設合意の白紙撤回と協議会への出席中止を求める」要請に対し、明らかにした。
末松副市長は沖縄タイムス社の取材に対し、「建設計画については協議会の場で協議することになっている。政府との合意は基本合意で、詳しい説明は受けていない」と述べた。
その上で、米公文書で揚陸艦寄港も可能な全長二百メートルを超える岸壁の整備については「聞いていない」とし、「把握していない計画が次から次と明るみに出ているのはよくない。協議会の場でわれわれに分かるように説明していただきたい」とした。また、代替施設のオスプレイ配備計画について政府に文書で回答を求める考えを示した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011700_04.html
2007年11月1日(木) 夕刊 5面
最終準備書面を提出/普天間爆音訴訟
【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民が、国に夜間飛行の差し止めと損害賠償を求めている普天間爆音訴訟の最終弁論が一日、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で開かれた。原告の住民と被告の国がそれぞれ、これまでの主張をまとめた最終準備書面を提出した。双方の主張が出そろったことで、原告側は今回の弁論を事実上の結審ととらえている。同訴訟は十二月十四日に意見陳述が行われ正式に結審し、来年三月をめどに判決が言い渡される見通し。
原告の住民らは「高い信用性のある県の健康調査で騒音による健康被害は明らか。すべての周辺住民が低周波音による人体への悪影響、生活妨害などを含めた広義的な被害を受けている」と主張。
その上で「国は危険への接近などを理由に、自らの責任を覆い隠している。飛行差し止めを含めた画期的な判決を下してほしい」と訴えた。
一方、国は住民の危険への接近のほか、被害対策として基地周辺の公共施設や住宅に国の費用で防音工事を施し、効果を上げていることなどを理由に、原告の請求を棄却するよう求めた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011700_06.html
2007年11月2日(金) 朝刊 1面
「日本軍の強制」明記 2社が初の訂正申請
中旬までに審議会開催「内容許可」に期待
【東京】二〇〇六年度の高校歴史教科書の検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた五社のうち、東京書籍と実教出版の担当者が一日、文部科学省を訪れ、訂正申請をした。「集団自決」問題で教科書会社が訂正申請したのは初めて。東京書籍は「日本軍によって『集団自決』においこまれた」と日本軍の強制を記述した。関係者によると、実教出版も軍強制を明記して申請しており、文部科学省や教科用図書検定調査審議会の判断が注目される。
訂正申請は最初の一社が文科省を訪れた際、冒頭が報道陣に公開された。この会社は編集部長が同省応接室で、初等中等教育局教科書課の担当官に書類を手渡した。
編集部長は手続き終了後、記者団に「審議会が開かれると聞いているので、申請した内容がそのまま許可されるということを願っている」と期待感を示した。結論の時期については「一日も早く許可されることを願っているが、何も分からない」と述べるにとどめた。
文科省は五社に対して今週内に訂正申請をするよう要望しており、二日も申請が続く可能性がある。関係者によると、記述訂正の対象となる教科書は来春には全国の高校に配られることから、各教科書会社は十二月上旬までに印刷を始める。
文科省は訂正申請があった場合、審議会を開き、申請内容の是非を検討した上で訂正を認めるかどうかを判断する。日本史小委員会で審議し、審議会の第二部会(社会科)で決定する見通しだ。このため、今月中旬までには審議会を開きたい意向で、各社に「今週中には訂正を申請してほしい」との要望を伝えていたという。
一方、文科省は教科書会社側に「静謐な環境の確保」を理由に、訂正申請に関する審議が終了するまで記述内容を公開しないよう求めている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_01.html
2007年11月2日(金) 朝刊 31面
検定撤回へ「正念場」/2社訂正申請
「軍強制を示す記述修正への動きは歓迎するが、正念場はこれからだ」。文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で一日、教科書会社二社が文科省に訂正を申請した。九月二十九日に開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の関係者は、検定意見撤回の必要性をあらためて訴えた。
県議会議長の仲里利信・大会実行委員長は「訂正申請は喜ばしいことだが、執筆者や教科書会社の動きであり文科省の対応がどうなるかだ」と警戒心を崩さない。県議の平良長政・実行委幹事は「検定意見は、沖縄戦の専門家もいない審議会で決められた。訂正内容の可否を決める審議会には沖縄戦の専門家を加えて、きちんと議論をするべきだ」と指摘した。
県PTA連合会の諸見里宏美会長は「一部の社だけではなく全社が記述修正を申請すれば、文科省も認めざるを得なくなるのでは」と教科書会社の動きに期待。「軍の強制を示す記述をきちんと書いてほしい。なぜ県民大会が起きたかについても触れてほしい」と話した。
県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は、「真実を伝えるのが使命」として、記述修正に踏み切った執筆者らの姿勢を評価した上で「検定意見撤回と記述回復は表裏一体で動かせない。文科省がこの要求を受け止めた上で、記述修正に応じるのであれば大きな意義がある」
沖教組の大浜敏夫委員長と県高教組の松田寛委員長もそれぞれ、「限られた時間で、軍の強制を明記した内容での訂正申請にこぎ着けた」「前進として受け止める」と執筆者、教科書会社を評価する。
一方で、「検定意見がそのまま残れば、何年か後に同じことが起こる」と懸念を示し、検定意見撤回や検定規則に沖縄戦への記述について配慮を求める条項を設置する必要性を訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_02.html
2007年11月2日(金) 朝刊 2面
アセスの進め方など議題/普天間協 政府方針
【東京】七日に再開する米軍普天間飛行場の移設に関する協議会に向け、政府は一日までに、(1)代替施設の建設計画(2)普天間飛行場の危険性の除去(3)主宰者の変更―を議題にする方針を固めた。建設計画では代替施設の環境影響評価(アセスメント)の進め方を協議。主宰者は防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に切り替える。従来の協議会で批判が強かった、議事録に残らない非公式の「懇談会」は実施しない方向で調整している。
政府は二日に、協議会の開催を正式発表する。
福田政権初の協議会ということもあり、「関係者の忌憚のない意見交換」(内閣府幹部)に主眼を置き、県と防衛省、内閣府などがそれぞれの立場で意見表明するとみられる。
協議会は冒頭の議題で、主宰者の変更を審議。出席者の承認が得られれば、その時点で官房長官主宰に「格上げ」する。これに伴い、今回から議事の事前調整を内閣官房が担当している。
首相官邸の主導が鮮明になったことで、仲井真弘多知事は十月三十一日、協議会の出席について「無論ですよ。私もメンバーのはずですから」と明言した。
町村信孝官房長官は三十一日、協議会について「必要ならさらにもう一度くらい開いていい」と述べ、沖縄側との対話を加速させる考えを示している。
2市民団体が不参加を要請
米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が七日に開催されることを受け、市民グループが一日、県庁に保坂好泰基地防災統括監を訪ね、県の協議会への出席中止などを要請した。保坂統括監は協議会について「具体的な建設計画や普天間の危険性除去のために設置された重要な協議機関。率直な意見交換がなされ、協議できることが出席の前提」と述べ、参加の意向を示した。
要請したのは「沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会」と「辺野古新基地建設を許さない市民共同行動」のメンバー。代替施設へのオスプレイ配備や戦闘航空機装弾場設置についても、政府に問いただし、毅然とした対応を取るよう求めた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_04.html
2007年11月2日(金) 朝刊 30面
カメさん語る遺品を初公開/6日から「写真・資料展」
六日の瀬長亀次郎生誕百年記念「写真・資料展」を前に、瀬長さんの遺品を管理する二女の内村千尋さん(62)は一日、那覇市内の自宅で瀬長さんが獄中でつづった日記帳や出獄時に着用した背広などを報道各社に公開した。内村さんは「父の遺品から祖国復帰運動など素晴らしい歴史を思い起こし、いまだ実現していない基地撤去などの運動に生かしてほしい」と話している。
資料展では、背広や革靴、妻フミさんにプレゼントした洋服などを初めて一般公開。(1)米軍の思想弾圧時(2)那覇市長時(3)衆院議員時―を中心にした貴重な資料のほか、闘病生活時の様子、写真やオリジナルの介護用品なども展示される。
二〇〇一年十一月五日に瀬長さんが亡くなるまで十四年余り看病した内村さん。死後、父の遺品を整理するうち、数々の貴重な資料に感動し、「多くの人に知ってほしい」と思いたった。資料展に向け、「『カメさん』の愛称で親しまれた父・瀬長亀次郎の人柄に触れてほしい」と来場を呼び掛けた。
六日から十一日まで那覇市ぶんかテンブス館三階で開かれる。入場無料。問い合わせは内村さん、電話098(886)0277。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_11.html
琉球新報 社説
知事首相会談 政府の「聞く耳」は本物か
福田康夫首相は10月31日、就任後初めて仲井真弘多知事と会談し、普天間飛行場の移設について「沖縄の方々の考えも取り入れ(移設措置協議会で)交渉する」と記者団に明言、沖縄側の要望を踏まえる考えを示唆した。
「代替施設の建設位置を可能な限り沖合に寄せてほしい」との県や名護市の要求に対し、安倍内閣は一切聞く耳を持たない姿勢だったが、福田内閣に代わり、柔軟な対応が示される可能性が出てきた。
だが政府にとって、沖縄側のハードルは決して低いものではない。
仲井真知事は10月23日の記者会見で、沖合移動を求める理由について(1)ウミガメの産卵地が全滅する(2)文化財、貝塚も駄目になる(3)騒音も防衛省の数字は極めて疑義が強く全く信用していない―などと指摘している。
昨年の知事選で「現行のV字形案のままでは賛成できない」と公約して当選しているだけに、沖合修正の実行は譲れない一線だ。
しかも10メートルや20メートルずらす程度では現行計画と大差がなく、知事が指摘した環境問題、騒音問題などをクリアできるとも思えない。
政府は、一定程度以上の修正方針を示さない限り県や名護市の同意が得られないことを肝に銘じるべきだ。
県にとっても、お茶を濁す程度の微修正を容認するわけにはいかない。そうなれば県民の目から見ると選挙公約の帳尻合わせとしか映らず、批判は免れないだろう。
そもそも、ウミガメの産卵地を保全しながら、新たな基地を造ることが本当にできるのか。
政府案は名護市のキャンプ・シュワブにある辺野古崎を覆う形で約160ヘクタールを埋め立ててV字形に2本の滑走路を建設する計画になっている。施設の全長は約1800メートル、滑走路の長さは約1600メートルだ。
環境への負荷を最小限に抑えたとしても、広大な藻場が埋め立てによって失われる。これほど大規模な施設を環境破壊を伴わずに建設することは不可能だ。
県は、どの位置に建設すれば自然環境を最大限に保全でき、近隣住民の騒音被害も軽減できるのか、具体案とその根拠を示す必要があるだろう。
在日米軍再編合意は県の同意を得ることもなく、県民の頭越しに決まった経緯がある。いくら修正を加えても、すべての県民を納得させることはできない。
普天間飛行場を、国土の0・6%にすぎない狭い県土の中でたらい回しにするという計画自体に無理があるからだ。
福田首相は、沖縄だけに不当に米軍基地を押し付けてきたこれまでの政府の姿勢を改め、基地負担の軽減に本腰を入れて取り組むべきだ。
(11/2 9:55)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28601-storytopic-11.html
2007年11月2日(金) 夕刊 1面
沖合移動に根拠必要/普天間移設
騒音データ収集意向
仲井真弘多知事は二日午前の定例記者会見で、米軍普天間飛行場代替施設協議で県などが求めている滑走路の沖合移動の範囲について「耳で聞き、実感として大丈夫と判断することは必要と思う」と述べ、名護市辺野古沖を埋め立てる従来案で沖合二・二キロの位置に滑走路を設定した際と同様に、実際に航空機を飛ばした上で騒音データを収集するなど、科学的根拠に基づいて移動距離を決めるべきだとの考えを示した。
また、沖合移動の距離に関し、政府に具体的な数値を示した要求はしていないとした上で「政府がもう一回抜本的に協議をやり直すところまでは求めない。大幅に、というわけにはいかないという思いがないわけではない。地元の意見を尊重する姿勢を持ってもらえばどんな形で収めていくかはこれからのことだ」とし、七日に開催される普天間飛行場の移設に関する協議会の場でも、日米合意の範囲内で修正を求めていく考えをあらためて示した。
文部科学省が四月に実施した全国学力テストで沖縄県が最下位の結果となったことに、仲井真知事は「誠に残念。沖縄の子どもたちは、文化芸能、スポーツは全国並みだろうと思う。学力も全国レベルに到達していると思っていたので、ちょっと意外な感じを受けた」と述べた。
その上で「いろんな原因、理由があると思うが、専門の先生方も含めて意見をまとめてみたい」と早急な対策が必要との認識を示した。
再編案を容認で北部の追加示唆
交付金で官房長官
【東京】町村信孝官房長官は二日午前の閣議後会見で、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象から名護市などが外れたことについて、「地元との話がうまく整えば、それは弾力的に追加されるということだ」と述べ、普天間飛行場代替施設の日米合意案をはじめとする現行の再編案を受け入れれば柔軟に対応するとの考えを示した。
対象漏れによる米軍普天間飛行場移設問題への影響については「影響はないと思う」との認識を示した。
協議会 7日開催を決定
【東京】政府は二日午前、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会の第四回会合を七日午前八時から首相官邸で開くと発表した。(1)代替施設の建設計画(2)普天間飛行場の危険性の除去(3)設置要綱の改正(主宰者の変更)―を議題にする。冒頭で主宰者を防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に格上げすることを審議。建設計画は環境影響評価(アセスメント)の進め方を中心に、沖縄側が最初に意見表明し、その後に関係省庁が見解を述べる。
同日午前の閣議後会見で町村信孝官房長官は、協議会が今年一月以降、開催されていないことに「その間にアセスメントの手続きは始まったが、(政府と沖縄側が)何となくギクシャクしている状況がある。それでは普天間の早期移設、ロードマップ通りに物事が運ばなくなる」と現状への危機感を強調。「政府と地元がいい関係を保ちながら進めていくため、久方ぶりの会合をやろうではないかということだ」と開催の意義を説明した。
岸田文雄沖縄担当相は「官房長官が主宰することによって防衛省をはじめ、それぞれの立場で忌憚のない意見交換ができる」と歓迎した。
石破茂防衛相も「首相官邸の強いリーダーシップで、日本政府としての強い意志で動かしていこうとするなら、官房長官の主宰が望ましい」と評価した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_01.html
2007年11月2日(金) 夕刊 1面
宮古へ陸自誘致表明/商工会議所中尾会頭
先島の国防強化で
【宮古島】宮古島商工会議所(会員・約千四百事業所)の中尾英筰会頭(70)は一日、宮古島市内で開かれた臨時議員総会の再任あいさつの中で、「宮古島は防衛上も重要な場所。島民の生命・財産を守る立場からも国に防衛体制を強化してほしい」と述べ、陸上自衛隊の誘致に積極的に取り組む考えを表明した。
中尾会頭は宮古地区自衛隊協力会長を務めており、陸自誘致にはこれまでも賛成の意向を示していたが、会頭として公の場で明らかにするのは初めて。
中尾会頭は陸自誘致に伴う経済効果に期待しつつも主な理由として(1)先島地区の国防の強化(2)急患輸送ヘリや不発弾処理隊が常駐することによる対応の迅速化―などを挙げた。
下地島空港については「仲井真知事も(軍事利用に)ノーと言っている。現時点では考えていない」と語り、同空港は誘致場所として念頭にないとした。
この時期に誘致表明した理由について、中期防衛力整備計画(二〇〇五―〇九年度)に盛り込まれた陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の旅団化へ向けた動きがあると指摘。「今がチャンスであり、タブー視することはできない」と語った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_04.html
2007年11月2日(金) 夕刊 1面
審議会開催を要請/教科書訂正申請
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、教科書会社二社から日本軍の強制を示す記述を復活させる内容の訂正申請を受けた文部科学省は二日午前、申請内容を検討する教科用図書検定調査審議会の開催を求める文書を同審議会会長あてに送付した。閣議後会見で渡海紀三朗文部科学相が明らかにした。審議会は今後、教科書会社残り三社の訂正申請を待った上で、今月中旬にも会長名で日本史小委員会を招集。沖縄戦に係る新たな資料提出など審議方法を検討し、申請への対応を判断する見込み。
一日に訂正申請した教科書会社のうち、東京書籍は「日本軍によって『集団自決』に追い込まれた」と日本軍の強制を記述。渡海文科相は「真摯に受け止め、対応したい」と、文科省として今月中に最終判断するとしている。
従来、申請後の審議会審議について「疑義を生じさせてはいけない」と繰り返しており、訂正申請が出そろった後、審議会の透明性確保も課題になる。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_06.html
2007年11月3日(土) 朝刊 1面
新たに2社 訂正申請/教科書検定
【東京】二〇〇六年度の高校歴史教科書の検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた五社のうち、清水書院と山川出版が二日、文部科学省を訪れ、新たに訂正申請した。申請は一日の東京書籍、実教出版を合わせ合計四社になった。残る一社も「来週半ばにも申請したい」との意向で、来週中には五社の訂正申請が出そろう。清水書院は日本軍の強制性を記述したとみられるが、山川出版は「一切答えられない」としている。
関係者によると、文部科学省は教科書会社に「十一月中に結論を出したいので、(教科用図書検定調査)審議会の日程を考慮して五日までに訂正申請してほしい」と要望しているという。
文科省によると、訂正申請の手続きを事前に照会してきたのは、検定意見が付いた五社のみ。ほかにも一社が申請を検討していたが、教科書課は「申請はこの五社と理解している」としている。
一方、すでに訂正申請を終えた四社のうち一社の執筆者が二日に記者会見し、同社が十月五日に開いた執筆者会議で決まった記述内容(訂正案)を明らかにした。
執筆者によると、この会社は日本史Aで「日本軍は、住民に手榴弾をくばって集団自害と殺しあいを強制した。犠牲者はあわせて八百人以上にのぼった」と日本軍の強制を明記した。日本史Bでも「日本軍により、戦闘の妨げになるなどの理由で県民が集団自決に追いやられたり」との表現で強制性を示した。
執筆者は「訂正申請された記述は確認していないが、記述を変更する場合は会社から説明があるのが普通だ」と述べ、会議で決まった文案がそのまま採用されたとの認識を示した。
日本史Aで「集団自決」の表現を使っていないことには「『集団自決』には自らの意思による死という意味がある。沖縄戦の研究者は近年、強制集団死という言葉を使っており、教科書では『殺しあい』で家族同士の悲惨な現実があったことを示した」と説明した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_02.html
2007年11月3日(土) 朝刊 27面
戦見詰める学徒の勇気/82歳、白梅之塔訪問
【南部】兵庫県尼崎市在住で元白梅学徒看護隊の比嘉光子さん(82)=那覇市久茂地出身=が二日、糸満市真栄里にある白梅学徒隊員や同窓生らを鎮魂する「白梅之塔」を初めて訪れた。自身が勤務していた野戦病院跡の壕を巡った比嘉さんの脳裏に悲惨な記憶が鮮明によみがえり、胸を強く締め付けられた様子だった。比嘉さんは壕の奥に続く“闇”をただ静かに、じっと見詰めていた。
県立第二高等女学校の四年生だった一九四五年三月二十三日から白梅学徒看護隊として野戦病院に駆り出された。戦後は東京などで着物を取り扱う卸問屋などに勤めていたという。
比嘉さんは現在、尼崎市内の特別養護老人ホームに入所。同施設の中村大蔵施設長が比嘉さんと会話する中で、元白梅学徒隊だということが分かった。それがきっかけとなり、同市内の大学で開かれたフォーラムで体験を語った。自身の体験を公の場で語るのは初めてだった。
二日に帰郷した比嘉さんを白梅同窓会の中山きく会長らが出迎えた。学友らの名前が刻まれた白梅之塔で、比嘉さんは線香が手向けられた刻銘版を真っすぐに見据え、そっと手を合わせた。
勤務地だった八重瀬町の新城分院(ヌヌマチガマ)では悲惨な記憶がよみがえった。「日本軍の将校が切腹した」「(患者兵士の)枕元には『敵が来たら飲むように』と毒薬が置かれた」。壕の大きさやその特徴、生活の様子など堰を切ったように語りだした。
「ここに来るのは勇気が必要だった。あまりに悲惨で思い出すのが嫌でつらかった」とこれまでを振り返った比嘉さんは、四日に開かれる白梅同窓会の総会に出席する予定。「ほかの友人と会えるのを楽しみにしている」と話した。
[ことば]
白梅学徒看護隊 県立第二高等女学校(那覇市)の4年生56人で編成。第24師団(山部隊)の衛生看護教育隊に入隊。八重瀬町富盛の第一野戦病院に配置され傷病兵の看護に専念した。白梅之塔には教職員や白梅隊員、同窓生149柱が合祀されている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_03.html
2007年11月3日(土) 朝刊 2面
北谷議会、米軍に抗議/F15未明離陸
【沖縄】米軍嘉手納基地のF15戦闘機の機体更新を目的とした「アイロンフロー計画」を理由に、同基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が十月三十日未明に同基地を離陸した問題で、北谷町議会の宮里友常議長ら議員十一人は二日、同基地広報局長のジョン・S・ハッチソン少佐を訪ね直接抗議した。
宮里議長らは「他の基地を経由するなど運用を改善し、軍用機の深夜、未明の離陸を即時に中止すべきだ」などと抗議した。
同少佐は「住民への影響は理解している。抗議は上司に伝えるが、未明離陸の中止は考えていない」と述べた。
その上で、「騒音の継続時間を短くするため、まとまった機数で連続して離陸している。離陸後はすぐに高度を上げ、住宅地の真上を飛行しないよう努めている」と同基地の騒音対策を説明したという。
次回が最後だと説明する「アイロンフロー計画」の日時や、対象機体数は明らかにしなかった。
同議会基地対策委員会の照屋正治委員長は「米軍は軽減の努力をしていると説明するが、未明に離陸すること自体が問題だ。認識のずれを痛感した。住民の我慢は限界にきており、今後も強く中止を訴える」と話した。
同議会は、同基地で強行されたパラシュート降下訓練、沖縄市で起きた米軍人の息子による強姦致傷事件についても、司令官あての抗議文を手渡した。
隣接3市町議会 初の意見交換会/問題解決で一致
【中部】米軍嘉手納基地の未明離陸問題で、基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会の基地担当委員会の意見交換会が二日、嘉手納町役場で開かれた。同問題について、三市町議会が意見交換会を開くのは初めて。
非公開で行われたが、複数の出席者によると、未明離陸問題の解決を目指す方針で一致した。
今後、組織や活動について具体的に協議を進める方針を確認したという。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_04.html
2007年11月3日(土) 朝刊 2面
「騒音被害を重視」/高村外相 米軍に働き掛け継続
【東京】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機などが未明に離陸を強行した問題で、高村正彦外相は二日の衆院外務委員会で「われわれは(機体の更新より)住民の騒音被害を重く考える」と明言。地元への影響を最小限にとどめるよう引き続き働き掛ける考えを強調した。照屋寛徳氏(社民)への答弁。
高村氏は「(十月)二十六日の夕刻、未確定ながらその可能性があり得るとの情報を得た」と明らかにし、在日米国大使館や同基地司令官に「運用の調整等により、できるだけ早朝離陸を行わないよう」求めた経緯を説明した。
また、米空軍が先月、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を強行した問題について、防衛省の地引良幸地方協力局長は、米側が伊江島補助飛行場の訓練過密化や利便性の悪さなどを理由に挙げていることを明らかにした。
地引局長によると、米側は「伊江島は各軍がさまざまな訓練を実施し、過密状態であり、緊急を要する救難隊員の訓練を消化できない」と説明した。
さらに「救難艇や航空機、または地上での要員の待機など事前に周到な準備が必要で、当日の天気が良いからといってただちに計画を変更することは困難」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_05.html
沖縄タイムス 社説(2007年11月3日朝刊)
[「検定」の訂正申請]
審議会の審査見守りたい
高校歴史教科書の沖縄戦の項目から「集団自決(強制集団死)」への旧日本軍の関与が削除された問題で、検定意見が付いた五社のうち四社が文部科学省に訂正を申請した。
「集団自決」には旧日本軍の強制があった、という記述を復活させる内容になっている。
文科省は、申請内容を検討する教科用図書検定調査審議会に開催を要請した。残る一社の申請を待って、今月中旬にも日本史小委員会を招集する方針だ。
文科省は「集団自決」への旧日本軍の「関与」を認めているが、「検定意見の撤回」を拒否する姿勢は崩していない。
教科書検定の目的が「客観的で公正、適切な教育的配慮の確保」にあるのなら、政治が口を挟むべきでないのは論をまたない。
だが、例えば「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という記述が「日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた」と書き換えられると、主語があいまいになり沖縄戦の全体像がぼやけてしまう。
これでは、軍の関与を消すための政治的意図を疑われても仕方がない。
記述の修正は「旧日本軍」という主語を打ち出す動きであり、文科省はきちんと受け止めてもらいたい。
言うまでもないが、「集団自決」における「軍の強制」は沖縄戦の本質にかかわってくる。
「軍の強制」が教科書に明記されなければ記述を回復したことにはならず、文科省も責任を果たしたことにはならない。
もし、文科省が検定意見を撤回せず教科書会社による修正で解決を図るのなら、教科書への記述と文科省の考えが整合性を欠くことになる。
そうなれば、同じような混乱が今後も繰り返される可能性もあるはずだ。
それを避けるためにも検定意見の撤回は不可欠であり、決着を政治的判断に委ねてはなるまい。
検定の在り方に対する国民の不信についてはまた、教科用図書検定調査審議会にも責任がある。審議会が閉鎖的なため、国民にはその実態がつかめないからだ。
今回のような問題が起きたとき、正常に議論できる仕組みをどう築いていくか。審議会は知恵を出すべきであり、それには審査議事録を公開して透明性を高め、検定過程を誰もが知ることができるようにすべきだろう。
訂正の申請には県民の願いも込められている。審議会がどのような判断を下すのか、審査の行方を見守りたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071103.html#no_1
琉球新報 社説
給油活動停止 国際貢献の徹底論議が必要
テロ対策特別措置法が1日で期限切れとなり、海上自衛隊はインド洋での5年11カ月の給油活動を停止し、補給艦、護衛艦を撤収させた。政府は、活動再開へ向けて新テロ対策特別措置法案の早期成立を目指すため、福田康夫首相が2日、小沢一郎民主党代表との党首会談で協力を求めるなど、成立へ躍起になっている。
福田首相は、活動停止について「国際社会で役割を果たしていないと肩身の狭い思いをする。長期的に見て日本にとって良くないこと」と懸念を示した。しかし、この事態を招いたのはほかでもなく、与党や政府ではないか。
テロ特措法は、米同時中枢テロを受けて、アフガニスタンでの米英軍などの軍事行動を後方支援するため2001年10月に成立した。その過程では、憲法違反と指摘する声も強かったが、論議はうやむやになり、多数与党が押し切った形だ。集団的自衛権に絡む憲法論議に深く踏み込むことをせず、グレーゾーンでやりくりしてきたツケが今回の措置法期限切れという結果に表れたといえよう。
その上、国民の不信を買う問題も相次いだ。米補給艦に行われた給油量の誤りの隠ぺい、燃料のイラク戦争転用疑惑、内規に反する航海日誌の廃棄などである。この状態のままで、特措法の延長、もしくは新法の成立などについて国民の理解は到底得られない。
とりわけ転用疑惑は重大な問題である。事実ならアフガニスタンでのテロ阻止行動を目的とした特措法の趣旨を逸脱する恐れがあるからだ。政府は事実を否定するが、疑惑は晴れない。国民が納得できる資料を提示するべきだ。
米側は、ケーシー国務省副報道官が1日、給油活動停止について「失望した」と不満を明確に表明した。早期再開を求める圧力とみていい。しかし、米国に追従する必要はない。
共同通信社が10月末に行った全国世論調査によると、新テロ特措法案について賛成は45・0%、反対39・3%で、世論は二分に近い。一方、無党派層では41・9%が反対の意思を示し、賛成としたのは34・1%。自民、公明党支持層では反対が20%を超えた。
活動停止は、あらためて日本の国際貢献の在り方について深く論議するチャンスであろう。従来のようにその場しのぎ的な対応ではなく、国民の理解を得、確たる理念に裏打ちされた貢献策を打ち出す必要がある。
日米同盟など外交で重視する問題もあろうが、それにも増して大切なのは、一般の人々に支援の手を差し伸べることだろう。地道な非軍事の民生支援こそ、憲法の理念にかなう。国際的な評価にもつながるに違いない。
(11/3 12:26)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28636-storytopic-11.html