沖縄タイムス 関連記事(12月29日、30日、31日)

2007年12月29日(土) 朝刊 1・27面

実行委の存続決定/「軍強制」回復目指す

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が二十八日、県議会で開かれ、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる高校日本史教科書の記述で、教科書会社からの訂正申請に対する文部科学省の決定についての見解や、今後の対応を話し合った。実行委は解散せず、来年一月に文科省に対して「日本軍による住民への強制」を示す記述の回復や、検定意見撤回などを求める要請行動をすることが決まった。

 同実行委の仲里利信委員長は、「ほかの実行委の理解が得られた場合、実行委は解散する」との見通しを示していた。だが、この日の議題に「組織の存続、解散」は上がらず、一月の要請行動を決めたことで当面の解散はなくなった。

 同実行委は、訂正申請に対する文科省の決定について「(教科用図書検定調査審議会が示した)基本的とらえ方の結果、『日本軍による強制』の記述がなくなるという重大な問題が生じている」「文科相談話でも検定意見撤回や、教科書検定で沖縄戦の記述改ざんの再発防止措置などに何ら触れていない」と批判し、「到底許すことは出来ない」とした要請文を採択した。

 一月に実行委のメンバーが上京して、福田康夫首相や渡海紀三朗文科相に要請文を手渡し、検定意見の撤回や、沖縄戦の「集団自決」に触れた教科書記述での「日本軍による強制」の語句の承認をあらためて求める方針だ。

 仲里委員長は「ある程度の記述が回復したことで、検定意見も撤回された」との見方を示しているが、実行委内には文科省の決定への厳しい意見も多いことから、実行委の「公式見解」では批判を強めることになった。


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「軍強制」復活へ決意新た


 県民大会実行委員会の存続が決まった。沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で同実行委は二十八日、県庁で話し合いを持ち、来年一月に文部科学相などに「軍強制」の記述復活などを再要請することを発表した。仲里利信実行委員長(県議会議長)は、教科用図書検定調査審議会の報告内容に対し「不満は残るが記述はほぼ回復された」として実行委の「解散」も検討していた。当面の存続が決まったことで、活動の継続を望んでいたほかのメンバーからは安堵の声が上がった。

 同実行委の玉寄哲永副委員長は「多くの県民から『実行委の存続を』と言われていたので、安心した」と述べた。「超党派の『県民党』で実行委の活動を続けるには、県民の力が必要。実行委は検定意見の撤回と『軍の強制』の記述回復の二つは絶対に譲らない。一歩一歩、県民の思いを前に進めていくので支えてほしい」と呼び掛けた。

 県PTA連合会長の諸見里宏美会長と、元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」の中山きく会長は、いずれも「ほっとした」と話す。諸見里会長は「年明けには中学教科書の見直しも始まる。今回のようなことにならないよう、しっかりと文科省の動きを見据えないといけない」。中山会長は「ここで解散したら、沖縄の願いはこの程度だと見透かされる。政府の思うつぼだ」と強調した。

 この日の実行委員会では、検定意見の撤回や「軍強制」を求める要請文を全会一致で可決。しかし、ある実行委員からは、「実行委は超党派の組織だが、幹部の意見が解散か存続で割れている気がする」と、同委員会の存続を不安視する声も出た。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712291300_01.html

 

2007年12月29日(土) 朝刊 2面

F15、10機の点検完了/飛行再開時期は不明

 米本国での墜落事故を受けて飛行停止措置が取られている米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機約五十機のうち、十機が点検を終えて飛行可能な状態にあることが二十八日、分かった。

 飛行再開の時期については不明。同基地のジョン・ハッチソン広報局長が明らかにした。

 同広報局長は「二十八日時点で十機が再点検を済ませ、飛行可能になっている」と説明した。ただ、飛行再開の見通しについては「上級司令部が決定する」とし、嘉手納基地の判断では決められない状況にあることを明らかにした。

 同基地では所属機二機で縦通材(ロンジロン)の亀裂が判明した。同部位については全機の塗装をはがし、非破壊検査を実施。ロンジロンの「厚さ」に関するデータを米本国のロビンズ基地に送っているという。

 同広報局長は「嘉手納基地所属の全機の点検を終えても、上級司令部の飛行停止解除の命令が出なければ飛行は再開しない」とする一方、「全機の点検が終了する前に飛行を再開するケースもあるが、その場合は基準をクリアした機体のみの運用となる」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712291300_06.html

 

2007年12月30日(日) 朝刊 1面

「瑞慶覧」過半返還を/政府、最大規模要求

「嘉手納」以南基地/米、移転策定前と難色

 【東京】在日米軍再編で日米合意した「嘉手納以南六基地」の返還交渉で、キャンプ瑞慶覧(約六百四十ヘクタール)の一部返還をめぐって日本側が、過半の約三百二十ヘクタール以上を求めていることが二十九日、関係者の話で分かった。キャンプ桑江の海軍病院の移転予定地と住宅統合エリアを除く、キャンプ瑞慶覧西側の一帯などが対象。しかし米側は在沖米海兵隊のグアム移転計画がまとまっていないことなどから難色を示しており、同計画によっては最終的な返還規模は縮小する可能性もある。

 一九九〇年の日米合同委員会で返還合意した泡瀬ゴルフ場(四十七ヘクタール)や、日米特別行動委員会(SACO)で合意したロウワープラザ地区(二十三ヘクタール)、喜舎場地区(六ヘクタール)、普天間地区(五十五ヘクタール)も含まれている。

 一方、在日米軍沖縄地域調整事務所がある国道330号の東側部分や、住宅統合が進み、米軍高官が居住するアッパープラザ地区などは返還が困難とみられているが、日本側は「可能な限り最大」の返還を求めている。

 二〇〇六年五月の在日米軍再編に関する日米合意文書(ロードマップ)は、嘉手納以南の基地返還について〇七年三月までに「詳細な計画」を作成することを明記。しかし、「瑞慶覧」の返還規模確定が遅れ、めどが立たない状況となっている。

 関係者によると、返還の検討を進めるには、グアムに移転する部隊や兵員数の内訳を確定することが前提。しかし米側はグアム移転のマスタープラン(基本計画)案の作成時期を〇八年三月としている。このため、「瑞慶覧」の返還規模確定を含めた嘉手納以南の返還に関する「詳細な計画」作成も〇八年三月以降にずれ込む見通しだ。

 「瑞慶覧」の返還規模をめぐるこれまでの交渉で、国道58号沿いの約百ヘクタールについては米側も大筋で了承しているという。しかし、「嘉手納以南」の返還を、米軍再編に伴う「負担軽減」の“目玉”としたい日本政府は、より多くの返還を要望。

 石破茂防衛相も十一月、ゲーツ米国防長官に対し「県民に、目に見えるものとしてきちんと示さなければならない。長官のリーダーシップをお願いしたい」と最大規模の返還を求めている。


[ことば]


 嘉手納以南6基地返還 06年5月に日米合意した在日米軍再編最終報告(ロードマップ)に盛り込まれた普天間飛行場、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)、那覇港湾施設(軍港)、キャンプ桑江、陸軍貯油施設第一桑江タンク・ファームの5施設全面返還と、キャンプ瑞慶覧の部分返還のこと。これらは在沖米海兵隊のグアム移転と「パッケージ」とされている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712301300_01.html

 

2007年12月30日(日) 朝刊 21面

情報漏れか偶然か/名護市発注工事 ピタリ入札

 名護市発注の公共工事の入札で、事前に公表されない最低制限価格(最低価格)と一円単位まで一致する金額で多数の事業が落札されたことが明らかになった。市議らは「建設業者側への情報漏れや、業者間の談合があるのではないか」と追及。市議会も調査に乗り出した。一方、市は関与を否定し、業者側も「過去の傾向から割り出した」と説明している。市の情報漏れや談合はあったのか、それとも「偶然の一致」なのか。見解は対立したままだ。(社会部・鈴木実、北部支社・石川亮太)

 名護市は工事発注に当たり、資材の単価や数量、難易度などの要素を数量化し、非公表の「設計価格」を設定。ダンピング防止などのため、65―85%を最低価格とし、それを下回った入札は無効とする。この最低価格は、市長や副市長ら決裁権のある市幹部が最終的に決め、封をして保管される。

 設計価格は、例えば「539487円」などと切りの悪い数字になるため、「入札予定価格」は端数を切り捨てたり、総額を数%圧縮する。事前に公表されるのはこの数字だけだ。

 業者が事前に最低価格を割り出すためには、「(非公表の設計価格)×(非公表の掛け率)」を積算する形となり、「ぴたり」特定の可能性は極めて低い。

 自治体によっては、最低価格を分からなくしようと、「81・34%」など掛け率を小数点以下まで細かく書き入れるケースもあるという。


予定価格と関連も


 名護市は設計価格や掛け率を非公表にしているものの、最低価格が把握されるのを防ぐこうした工夫が徹底されていないとの指摘もある。

 例えば、市教育委員会発注の二〇〇七年度校舎建築事業では、三つの事業の最低価格を予定価格のちょうど85%に設定、ほかにも85%台が五つあった。設計価格や掛け率が分からなくても、「予定価格の85%=最低価格」の単純な予想が成り立つ仕組みだ。

 市内の建設会社社長は「事業によっては予定価格と最低価格に関連性があり、見破るのは簡単。落札額と一致しても不思議ではない」と話し、当局からの情報漏れは否定する。最低価格との「ぴたり入札」の中には、当局の傾向を業者側に見透かされた事例も含まれるとみられ、市内部からも「なぜ、こんな分かりやすい価格なのか」との批判もある。


特定事業で何度も


 ただ、こうした構図では説明しきれない入札結果も多い。

 特定の事業で何度も「ぴたり入札」が重なったり、予定価格との関連性が見られない分野でも金額が一致するケースがあるからだ。加えて、報道機関などに事前に流れた談合情報通りに落札する事例もあり、「市当局からの情報漏えいや談合があるのではないか」とのうわさはなくならない。

 末松文信副市長は「最低価格は封印されており、封をした人でない限り分からない」と強調、情報漏れを否定している。

 一方、市外の設計士は「これだけ多くの事業で一致率が高いことは偶然ではあり得ない」と話す。野党市議らは「最低価格付近で落札すれば見掛け上は落札率も下がり、談合との批判が避けられる。公共工事はもともと予定価格が高めに設定されており、最低価格でも利益は出せる。市と業者の間で何らかの不正があるのではないか」と疑問を投げ掛ける。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712301300_02.html

 

2007年12月30日(日) 朝刊 21面

検定撤回訴えサイクリング/教諭ら40キロ走破

 【北谷】沖縄戦で起きた「集団自決(強制集団死)」での日本軍の強制を否定する教科書検定意見の撤回を求める「ピースサイクリングおきなわ」(主催・同実行委員会)が二十九日、糸満市の「平和の礎」から北谷町砂辺馬場公園の約四十キロで行われた。高校教諭ら九人が自転車をこぎ、沖縄戦の事実を後世に伝えようとアピールした。

 九月の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」で示された思いをPRしながら、同大会の「平和の火リレー」コースを一列になって走行。県民大会が行われた宜野湾海浜公園を経て、米軍上陸地モニュメントがある北谷町へ向かった。

 おそろいの黄色のTシャツを着けた一行は、約四時間半をかけゴール。伴走した車の拡声器を使い「沖縄戦の実相をゆがめる文部科学省の検定意見を撤回させよう」と呼び掛けた。

 宜野湾市立真志喜中の西島一郎教諭(37)は「サイクリングは基地撤去まで続く。いつになるかは分からないが、参加者の姿を見て児童・生徒も平和について考えるはずだ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712301300_10.html

 

2007年12月31日(月) 朝刊 1面

サヨナラ2007年・・・怒・偽・明

 二〇〇七年がもうすぐ暮れる。政治の世界では七月の参院選挙で自民党が歴史的な惨敗。安倍晋三首相の突然の退陣に国民はあっけにとられ、福田康夫首相が後を継いだ。社会保険庁のずさんな事務で、「宙に浮いた」五千万件もの年金記録が発覚。防衛商社から約三百回もゴルフ接待を受けた「大物防衛次官」が逮捕されたほか、老舗や有名店で食の偽装が相次ぐなど、不祥事が目立った一年だった。

 県内では、文部科学省が高校歴史教科書から、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍強制の記述を削除する検定審議会意見に、「歴史歪曲は許さない」と県民の怒りが高まった。

 九月には計十一万六千人(主催者発表)が参加した県民大会も開催された。

 超党派の実行委員会などが再三にわたって政府への要請を続けた結果、軍の「関与」を示す記述は復活した。しかし、「軍が強制」の表現は認められなかった。

 米軍普天間飛行場の移設問題では、国と県の交渉が膠着状態に陥った。地元との溝はいまだに埋まっていない。米軍の演習・訓練も激化の一途をたどった。

 また、全国学力テストの結果で沖縄が最下位となり、教員採用試験では採点ミスも発覚するなど、教育関係の「暗いニュース」も多かった。

 一方で、スポーツ界では明るい話題も。特にゴルフでは、米ツアー本格参戦二年目の宮里藍が女子世界マッチプレーで準優勝。諸見里しのぶも日本女子オープン選手権で初優勝し、県民を沸かせた。

 「来年はもっと明るい年になってほしい」。多くの県民がそう願う中、二〇〇八年がまもなく明ける。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712311300_01.html

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