県民大会開催を決定 密約訴訟、控訴審判決など  沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(2月20日)  

2008年2月20日(水) 朝刊 1面

県民大会 開催を決定/米兵暴行

子連・婦連、準備委

 米兵による暴行事件を受け、県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)や県婦人連合会(小渡ハル子会長)など九団体の代表らは十九日、県婦連会館での会合で、超党派の県民大会開催を決め、実行委員会準備会(仮称)を発足させた。今後、知事や県議会、昨年九月の「教科書検定意見撤回県民大会」実行委に加わった二十二団体などに幅広く参加を呼び掛け、大規模な大会を目指す。

 開催方法や日時、場所は、次回二十六日以降の準備会に結論を持ち越した。会合には、ほかに県老人クラブ連合会、県高校PTA連合会、高教組、沖教組、未来を語る会、青春を語る会、県生活協同組合連合会の代表が出席。事件への抗議とともに、事件の根源である基地問題に踏み込んだ要求を盛ることで一致した。

 具体的には、被害者への謝罪と補償のほか、「県民への人権侵害を許さない」として、基地の実質的な整理・縮小、地位協定の改定、米軍幹部の責任の明確化を求める、などが挙がっている。

 出席者からは「戦後六十二年間続いている基地問題と、今回の事件を切り離して考えてはいけない」、「被害者や若者の目線に立ち、人権が蹂躙されている現状への怒りを日米政府にぶつけるべきだ」、「結集して抗議の意思を示すことで(基地負担軽減の)成果につなげたい」などの声が相次いだ。呼び掛け人の玉寄会長は会合後、「各団体と歩調を合わせ粘り強く交渉し、県議会も一緒に動ける方向を目指したい」と意欲を示した。

 大会については、一カ所での開催と交通の便を考慮した分散型、早期開催と態勢を整え四月以降にするべき、など意見が分かれた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201300_01.html

 

2008年2月20日(水) 朝刊 1・26・27面

女性320人緊急集会、心のケア訴え/米海兵隊の撤退要求

 【北谷】米兵による暴行事件に抗議する「危険な隣人はいらない!」緊急女性集会が十九日、北谷町のちゃたんニライセンターで行われた。約三百二十人が参加。事件が発生した本島中部の首長や女性団体の代表らが、再発防止できない米軍や日本政府を批判。被害女性への精神的ケア、在沖米海兵隊の撤退などを求めるアピール文を全会一致で採択した。

 参加を呼び掛けた三十団体を代表し、沖縄市婦人連合会の比嘉洋子会長は「なぜ、罪のない子どもが被害に遭わないといけないのか。私たちは子どもたちをどう守ればいいのか」と訴え、海兵隊撤退を求めた。

 集会アピールでは「なぜ、子どもや女性が安心して生きる環境が大事にされないのか」と指摘し、被害者への精神的ケアと補償、加害米兵への処罰、基地外に住む米兵の実態把握、県民大会の開催―を求めるとした。

 あて先は首相や防衛相、県知事、米四軍調整官ら。県内機関には直接抗議する方向で調整する。


月内に大会 北谷町表明


 【北谷】北谷町の野国昌春町長は十九日、米兵暴行事件に抗議する町民大会を月内にも開くことを明らかにした。日時や会場などは町内各種団体を網羅する実行委員会で検討する。女性団体や子ども会など四団体が同日、町と協議して決めた。

 

     ◇     ◇     ◇     

絶えぬ性被害告発


 【北谷】米兵による暴行事件を受け、女性たちが積み重なる性犯罪被害への憤りと無念をぶつけた。十九日、北谷町のちゃたんニライセンターで開かれた「危険な隣人はいらない!」緊急女性集会。「いつになったら安心して暮らせるのか」「基地の存在を許してきた私たち大人も問われている」。女性たちは代わる代わるマイクを握り、せきを切ったように基地撤去を訴えた。

 会場は約三百二十人が詰め掛け、立ち見が出るほど。九割ほどが女性で、壇上の話に身じろぎもせずに聞き入った。

 「安全な所はどこ!」。過去の米兵による性犯罪事件に抗議するため作った横断幕を舞台正面に再び掲げ、繰り返される被害の歴史を告発した。基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代共同代表は、「横断幕が今もそのまま使えるようなこの沖縄社会を、どうしたら変えられるか」と問い掛けた。

 沖国大一年の安慶名さつきさん(19)は「同じ女性としてほっておけない」と、母つる子さん(61)と参加。「自宅が容疑者宅と近く、前を通るのも怖い」と表情を曇らせる。つる子さんは「みんなでこれは異常だと声を上げたい」と強調した。

 昨年末、約四十年住んだ東京から帰郷した上地博子さん(57)。十三年前の県民大会は、東京で報道を見ても「身近に感じられなかった」というが、帰郷直後に続発する事件に「今回は居ても立ってもいられなかった」と、深刻な表情を浮かべた。

 北谷町の島袋隆子さん(77)は、地域の友人らと連れ立って来た。「米兵は沖縄の人をばかにしていると感じる。もう基地をなくす以外に方法はない」と言い切った。

 同町の女性(53)は、「沖縄は基地の中にあるようなもの。日米両政府は抜本的な解決策を示してほしい」と、切迫した様子で語った。


在京女性団体も抗議


 【東京】在京にある女性三団体は十九日、都内にある衆議院会館内で米兵暴行事件に抗議する集会を開き、被害者への謝罪と補償、在日米軍再編計画を中止し、基地の縮小・撤去することなどを求めるアピール文を採択した。八十人近くが参加し、県選出国会議員も出席した。

 メンバーは日本婦人団体連合会、新日本婦人の会、女性の憲法年連絡会の三団体。集会の冒頭、新日本婦人の会の高田公子会長は「子どもたちに恐ろしい思いをさせることは、女性として、母親として許すことはできない」と訴え、事件に強く抗議した。

 集会には二〇〇六年に横須賀市で米兵に殺害された女性の関係者が出席し、米軍犯罪の実情を説明した。


退職教員ら事件に抗議


 退職教員でつくる「おきなわ教育支援ネットワーク」は十九日、米兵暴行事件に抗議する声明を発表し、「(事件は)戦地に駆り出され、戦時訓練を受けた米兵によって必然的に引き起こされたもの。掛け替えのない子どもの尊厳が踏みにじられたことを絶対に許さない」と訴えた。

 日米両政府に対し、「米海兵隊による蛮行を糾弾するとともに、一切に軍事演習、辺野古新基地建設に反対する」と基地撤去を求めている。


沖縄防衛局に統一連「激しい怒りで抗議すべきだ」


 県統一連(新垣繁信代表幹事)のメンバー十人は十九日、沖縄防衛局を訪れ、米兵による暴行事件の被害者への全面的な謝罪と適正な補償を求め、在沖米軍の全構成員の即時撤退などを訴えた。

 新垣代表幹事は「一人の人間の尊厳が踏みにじられた。国の平和と独立を守り、安全を保つ自衛隊なら、『遺憾の意』だけでなく、激しい怒りでもって米軍に抗議すべきだ」と強調した。

 メンバーからは「基地のある限り、事件は繰り返される」など、基地の撤去を強く求める声が上がった。

 同団体は、二十一日には外務省沖縄事務所にも同様に抗議・要請する。


労働団体、シュワブ前で集会


 【名護】本島中部で起きた、米兵による暴行事件や名護市辺野古での民家への住居侵入などを受け、沖縄平和運動センターと労働団体が十九日、辺野古のキャンプ・シュワブ第一ゲート前で、事件に抗議する緊急集会を開き、基地の撤去や県民大会の開催を呼び掛けた。同センターと北部地区労、自治労北部総支部が主催、約六十人が参加した。

 北部地区労の仲里正弘議長は「基地ある限り、同じ事件は起こる。基地の撤去以外、犯罪をなくすことはできない」と声を荒らげ、基地撤去を強く訴えた。名護市の仲村善幸市議は「政府は被害者の痛みを一片も感じていない。北部への基地集約を見直す時期に来ている」と強調。米軍普天間飛行場の名護市への移転など米軍再編を見直すべきだとした。

 参加者は「北部への基地集約反対」「辺野古への基地建設反対」などのシュプレヒコールを繰り返した。


沖縄人権協が週刊誌を抗議


 米兵による暴行事件に関し、一部週刊誌の記事で被害者への重大な人権侵害があったとして、沖縄人権協会(福地曠昭理事長)は十八日、同誌の代表者と、編集責任者に抗議文を送付した。同協会は、記事が「被害者や家族に苦痛を与え、プライバシー権も侵害する」と強く批判している。

 県マスコミ労働組合協議会(宮城歓議長)も十九日、同じ記事に対して緊急声明を発表。「被害者の尊厳を踏みにじる内容で、報道による二次被害が生じている」と指摘し、すべてのメディアに節度ある報道を求めた。

 記事を掲載した同誌は人権協会の抗議に対し、「特に対応する予定はない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201300_02.html

 

2008年2月20日(水) 朝刊 1・2面

米軍、無期限外出禁止令

 米兵による事件続発を受け、在沖米海兵隊報道部は十九日深夜、空軍と海軍、陸軍を含む四軍全体の構成員に対し、二十日朝から無期限の外出禁止を命じると発表した。兵士らは任務以外は基地内か、基地外の自宅にとどまることが義務付けられる。

 在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官(中将)が命令した。すべての構成員は、任務や病院の受診など必要な用件がある時だけ、軍用車や私有車、タクシーによる民間地域の移動が認められるという。

 米軍は外出禁止措置を「反省の期間」と位置付け、「全軍の規律を維持するために必要な方法を見直す機会となる」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

基地内居住を促進/米軍高官が言及


 【東京】米兵暴行事件を受け、県議会米軍基地関係等特別委員会の要請団(団長・親川盛一委員長)は十九日、在日米軍司令部にフロック副司令官、駐日米国大使館にグリーン安全保障政策課長をそれぞれ訪ね、事件に強く抗議した上で、実効性のある具体的な再発防止策を講じるよう要請した。要請団は同日夕に県東京事務所で開いた記者会見で、午前に面談したフロック副司令官が「基地外に居住する米兵をできるだけ基地内に住ませたい」との考えを示したことを明らかにした。

 フロック副司令官は同日午前十一時から沖縄で、ジルマー在沖米四軍調整官が四軍の各司令官を招集し、再発防止策を議論する会議を開いたことを報告したという。

 フロック、グリーンの両氏は、在日米四軍で基地外居住の基準がそれぞれ違うことを説明した上で、対策を講じる必要性を示したという。また、在沖米海兵隊八千人のグアム移転について「米軍再編と事件は別の問題。ぜひ進めたい」という趣旨の発言をしたという。

 親川団長らは、基地外に住む米兵が今回の暴行事件を起こしたことを問題視。基地外居住者の実態把握を強く求めた。フロック副司令官は「階級を含め、実態を把握する必要がある」と理解を示したという。

 また、グリーン課長は要請団に「再発防止策で地元からの提案はありませんか」と意見を求めた。親川団長は「基本的には米軍が考える問題だ」と述べた。

 要請後の記者会見で、渡嘉敷喜代子、新川秀清、上原章の各氏は、日米地位協定の見直しの必要性に言及。渡嘉敷氏は「今回は容疑者の身柄が県警にあるため、日米ともなるべく地位協定を言わせないようすり替えていると感じた」と述べた。

 小渡亨氏は「この事件で米軍再編の作業が遅れては困る。海兵隊八千人のグアム移転や米軍普天間飛行場移設は着実に進めてほしい」と述べた。


外出禁止要請「困難」/防衛相


 【東京】米兵による暴行事件で、石破茂防衛相は十九日の衆院予算委員会で、米兵の基地外外出を原則禁止するかと問われ、「日本政府として(米国側に)要請するのは難しいところがある」と述べた。照屋寛徳議員(社民)が、相次ぐ事件の防止策に実効性が伴っていないことを指摘し、政府の姿勢をただした。

 石破防衛相は、在沖米軍が現在実施している(夜間外出を制限する)「リバティーカード」制度の実効性を追及され、「その実効性がどうなのか。詳細に確認しなければならない」とし、夜間に限らず外出を規制する対策には慎重な姿勢を示した。

 米軍側から新兵らを対象とした教育プログラムの見直し、強化策の措置方針が示されていることを紹介し、「どの部分をどう直し、強化するのか。それでどう実効性が図られるのか。日本側が納得するものでなければならない」と、米軍側の対策に日本側が関与する姿勢をあらためて示した。

 一方、照屋議員は、基地外に居住する米軍人・軍属が感染症を発症した場合の日本側の対応についてただした。

 舛添要一厚生労働相は一九六六年の日米合同委員会で、当該保健所長と米軍病院長の間で情報を共有することで合意していることを説明。その上で「基地外で米軍人・軍属個人が感染している場合は、日本の感染症法に基づく措置は可能だ」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201300_03.html

 

2008年2月20日(水) 朝刊 2面

普天間安全対策/日本、費用負担で合意

 【東京】日米両政府は十九日の合同委員会で、二〇〇四年八月に起きた米軍ヘリ墜落事故を受け、昨年八月に合意した米軍普天間飛行場の安全対策に関し、クリアゾーン(無障害地帯)拡充や滑走路末端識別灯新設などについては日本側が費用を負担して実施することで合意した。防衛省は本年度内に現地調査実施と業者との契約を終え、〇八年度から工事に着手する方向で手続きを急いでいる。

 普天間飛行場の安全対策で日米は、空中でエンジンが停止しても安全に着陸できるヘリコプターの特性(オートローテーション)に着目。オートローテーションによる帰還時に障害となっている工作物や樹木を除去し、クリアゾーンを拡充することで合意していた。

 一方、夜間飛行時などの安全確保を目的に、滑走路の識別を容易にするための「滑走路末端識別灯」の新設や、パイロットが進入角度をより適切に把握するための「進入角指示灯」の更新についても確認していた。

 今回、これらを日本側が実施することについて防衛省は、「米側も独自に航空管制システムを改善しており、日本だけが費用負担しているわけではない。基地を提供している責任もあり、合意を早く進める観点から日本側が実施することとなった」としている。

 普天間飛行場の安全対策では、オートローテーションによるヘリの帰還を可能とするため、場周経路飛行時の設定高度を三百三十メートルとすることで合意していたが、宜野湾市の伊波洋一市長は、「場周経路の合意は全く守られておらず、クリアゾーン拡充も全く無意味だ」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201300_04.html

 

2008年2月20日(水) 朝刊 27面

「普天間」アセス/防衛局が県未同意の調査実施

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団は十九日、米軍普天間飛行場の移設に向け、名護市辺野古沖で行われている沖縄防衛局の現況調査(事前調査)で今月初旬、県が同意していない海域調査が実施されていたと発表した。県は監視団の報告を受け、同意していない調査であることを確認、防衛局に口頭で調査の中止を求めた。監視団は環境影響評価法(アセス法)違反と指摘している。防衛局は「現況調査は、昨年四月の県の同意を受け実施している」としている。

 県は、防衛局の現況調査について昨年四月、海域使用を認める公共用財産使用協議に同意。その際、調査内容を海生生物や海象調査に限定し、使用する調査機器も(1)海象調査機器(2)サンゴ類の着床具(3)音波探知機(パッシブソナー)(4)水中ビデオカメラの四機器とした。

 海域での現況調査について、県は「事業者(防衛局)が協議内容にのっとって行う限り、自らの判断で実施できる」とし、アセス法下のアセス調査とは別との見解を示している。

 しかし、監視団が今月三日と九日に辺野古沖で撮影した防衛局の調査では、県が同意した調査以外の通称「マンタ法」と呼ばれる手法や、四機器以外の調査機器を複数使用する様子が映し出されている。監視団の土田武信副団長は「防衛局が現況調査の名を借りて、違法にアセス調査を実施しているのは明白」とし、県に対し現況調査の同意取り消しを求めた。

 県環境政策課は「同意内容以外の調査は結果としてアセス調査と見なされる。アセス調査は本来、アセス方法書の確定後に実施すべき」とし、防衛局に調査中止を求めた。ただ、同意取り消しについては「県として許可したことについて取り消しはできない」とし、現況調査すべてを否定する考えはないことを明らかにした。

 一方、防衛局は「キャンプ・シュワブ周辺の調査データを集めるため、大気質や陸域、海域を調査しているが、所掌事務の範囲内」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201300_05.html

 

2008年2月20日(水) 朝刊 27面

密約訴訟/きょう控訴審判決

 沖縄返還の「密約」をめぐる取材過程で外務省の秘密公電を手に入れ、国家公務員法違反罪で訴追された元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)が、密約を黙認した一方的な検察官の訴追や、密約を認めない政府に名誉を傷つけられているとして、国に謝罪や慰謝料を求めている訴訟の控訴審判決が二十日午後、東京高裁で言い渡される。判決が密約の事実を認めるかが焦点。

 西山さん側は、秘密指定が解かれた米政府の公開公文書や、外務省アメリカ局長として返還交渉を担った吉野文六氏(89)の証言などから密約の事実は明らかと主張。虚偽の沖縄返還協定で国会を欺いた政府と、密約を否定し続けている政府高官らの発言を「国家の組織犯罪」と批判している。

 一方で国側は、仮に密約の存在が事実であっても、西山さんが有罪であることに影響はないとして、訴えは失当と反論。密約を否定する政府高官の発言は、西山さんを特定した指摘ではないとして、名誉棄損の成立を否定している。

 昨年三月の一審・東京地裁判決は、密約の事実には触れず、損害賠償の請求権が消滅する除斥期間(二十年)を適用。全請求を退けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201300_08.html

 

2008年2月20日(水) 朝刊 26面

証言「集団自決」を発刊/岩波新書

 沖縄戦中に慶良間諸島で起こった「集団自決(強制集団死)」の生存者三十七人の証言を、本紙の謝花直美編集委員がまとめた「証言 沖縄『集団自決』―慶良間諸島で何が起きたか」が二十日、岩波新書から発刊される。二百二十二ページ、定価七百四十円(税抜き)。

 二〇〇七年五―十二月に本紙で連載した「命語い」を大幅に再構成。沖縄戦の概況や、高校の日本史教科書から「集団自決」への軍の強制を削除させた文部科学省の教科書検定を受け、昨年九月二十九日に開かれた県民大会に向けての県内外の動きも加筆している。

 岩波書店新書部は「どの証言も迫力があり、突き付けられるものがある。これまで全然語らなかった体験者の証言もあり、意義深い内容」としている。

 初刷りは一万八千部。県内書店での発売は二十五日ごろという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201300_09.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月20日朝刊)

[イージス艦衝突]

護衛艦の責任は免れない

 海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦「あたご」(七、七〇〇トン)が千葉県の新勝浦市漁協所属の漁船「清徳丸」(七・三トン)と衝突し、漁船に乗っていた二人が行方不明になった。

 イージス艦は、高性能レーダーを搭載し、探知したミサイルなどの情報を大型コンピューターで瞬時に処理し、十以上の目標に同時に対処できる能力がある。

 最新鋭の性能を備えた護衛艦が、なぜ衝突を回避できなかったのか、事故直後の救助活動の初動に不備がなかったのかどうか、疑問がわく。

 今回の漁船との衝突はイージス艦による初めての重大事故であり、事態を重く受け止めるべきだ。

 政府の危機管理の面でも、見過ごせない重大な問題を残した。福田康夫首相に一報が届いたのは事故から約二時間、石破茂防衛相の場合は約一時間半かかった。情報連絡がこのありさまでは万全の態勢が取れるわけがない。

 海上保安庁は、業務上過失往来危険容疑で、艦長の船渡健一等海佐ら乗組員から事情聴取する。政府、防衛省も全力を挙げ、衝突を回避できなかった原因を徹底的に究明してほしい。

 今回の事故で清徳丸は船首と船尾部分の二つに割れ、イージス艦の船首付近に衝突したような跡が見られた。

 イージス艦は対空レーダーのほか航海用レーダーを備えており、通常、ブリッジや後甲板などで約五人がレーダーや目視による監視をしている。

 清徳丸の存在に気付くのが遅れたのだろうか。この点について、吉川栄治海上幕僚長は「衝突前に漁船に気付き、回避動作を取ったと聞いている」と説明している。

 海上衝突予防法によると、二隻の船の進路が交差する場合、相手を右側に見る船は右に進路を取り、衝突を避ける義務がある。あたごが清徳丸を右側に見ていた場合は、あたご側に回避義務があったということになる。

 あたごはハワイでの対空ミサイル発射試験などを終え、横須賀港に向かう途中だった。清徳丸は仲間の船数隻と勝浦市の川津港を出港し、三宅島方面に向かっていた。

 事故が起きた現場付近は東京湾に出入りする貨物船などが航行し、船舶の交通量が比較的多い海域とされる。この点を踏まえれば、あたご側は細心の注意を払ってしかるべきだった。

 事故の詳しい原因はまだ明らかにはなっていない。イージス艦は防空システムに重点が置かれているが、「最新鋭の自衛艦がなぜ衝突を回避できなかったのか」という漁民らの悲痛な叫びを重く受けとめ、通常の航海の安全確保についても総点検してもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151300_05.html

 

琉球新報 社説

イージス艦事故 過去の教訓忘れたのか

 国民を守るはずの自衛隊の艦船が民間の漁船を事故に巻き込むという、決してあってはならないことが起きた。海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」(7、700トン)が、千葉県沖の太平洋上でマグロ漁に向かっていた漁船「清徳丸」(7・3トン)と衝突したのである。

 漁船は船体が2つに割れ、乗っていた父子2人が行方不明になっている。政府はあらゆる手を尽くし、乗員の救出作業に当たってもらいたい。

 海上自衛隊と民間船舶の重大事故は、1988年7月、神奈川県横須賀市沖の東京湾で潜水艦「なだしお」と釣り船第1富士丸が衝突し、乗客・乗員48人中30人が死亡して以来のことだ。

 「なだしお」の事故を受け海自は、通信施設や救助装備の充実、見張り要員の増員に加え、海上交通センターへの航行情報通報を全艦船に義務付けるなど約40項目の再発防止策を決定していた。

 20年を経て、安全確保の意識がおろそかになっていたのではないか。海上保安庁は事故原因を徹底的に究明し、責任の所在を明らかにすべきだ。

 そもそも敵の航空機やミサイルを探知できる高性能レーダーを備えているイージス護衛艦が、漁船の接近さえ把握できないとは考えにくい。

 まして、あたごは昨年3月に就役したばかりの最新鋭の艦船である。何らかの人的ミスが衝突につながった可能性が大きい。

 イージス艦と漁船のどちらに回避義務があったかなど詳細は明らかでないにせよ、「なだしお」の教訓が生かされていなかったのだとすれば、事態は極めて深刻だ。

 事故の通報・連絡体制にも問題が多い。衝突事故が起きたのは19日午前4時7分ごろだが、イージス艦が海上保安庁に通報したのは午前4時23分ごろ。海保への連絡まで16分もかかっている。不可解としか言いようがない。

 しかも事故発生後、石破茂防衛相に一報が届くまで約1時間半、福田康夫首相に至っては約2時間もかかっている。

 重大事故が発生したときは、直ちに首相に一報が入るようにすべきだが、今回の対応を見ると、あまりにも悠長だ。危機管理体制のまずさは否めない。

 今回の事故で「あたご」の見張り要員は十分だったのか。レーダーの見落としはなかったのか。衝突後の救助活動は適切だったのか。今後、細かく検証する必要がある。

 政府は事故原因などを速やかに公表し、防止対策に生かすべきだ。

 たとえ不注意や人的ミスが重なった場合でも危険を回避する、フェイルセーフ(失敗しても安全)のシステムを、一刻も早く構築しなければならない。

(2/20 9:52)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31501-storytopic-11.html

 

2008年2月20日(水) 夕刊 1面

地位協定見直しへ決意/知事、訪米も検討

 県議会(仲里利信議長)二月定例会の代表質問が二十日午前、始まった。仲井真弘多知事は、米兵による暴行事件について「極めて悪質で、強い憤りを覚える」と厳しく批判し、県独自の再発防止案を取りまとめ、日米両政府に求めていく考えを表明した。米軍に裁量が委ねられている現行の日米地位協定の抜本的な見直しの必要性を強調し「米政府や連邦議会関係者らに、県の実情を伝え理解してもらうため、訪米も含め検討していきたい」と述べ、協定見直しに不退転の決意で取り組む姿勢を示した。最初に登壇した新垣哲司氏(自民)の質問に答えた。

 仲井真知事は、(1)米軍人らに対する研修・教育プログラムの見直し(2)米軍人らの生活規律の強化(3)基地外に居住する米軍人らの対策(4)防犯施設の強化―など七項目、二十数件を取りまとめていることを説明した。

 米軍普天間飛行場の移設問題で、町村信孝官房長官が先の代替施設協議会で「沖合移動も念頭」と言及したことに「協議会は、率直な意見交換ができる雰囲気になってきており、官房長官の発言なども踏まえると、何らかの進展があるのではないか」と早期決着に期待感を示した。

 また、協議会で知事が「沖合移動などの地元の意向が建設計画に反映されない場合には、やむを得ない対応も考えざるを得ない」と発言した真意について、「(知事権限である)公有水面埋め立て承認のことも念頭においていることを、念のため申し添えた」と述べ、地元意向が無視された場合には、公有水面埋め立て許可を出さない方針を示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201700_01.html

 

2008年2月20日(水) 夕刊 5面

外出禁止に賛同・困惑/中部の住民ら

 【中部】米兵による暴行事件が起きた基地の街・中部。二十日から実施された米軍の外出禁止令に「地域の安全を考えればいいこと」と賛同の声が上がる一方で、「再発防止につながらない」と疑問も出た。米兵客の多い商店街や飲食店関係者は売り上げへの影響を懸念。沖縄市の繁華街では同日、外出禁止措置を知らない米兵が私服で出歩く姿もあり、「外出禁止」の実効性も問われそうだ。

 北谷町の野国昌春町長は「外出禁止令は事の重大性を理解させる点で効果的。しかし、いつまでも続けられるものではない。抜本的な再発防止策が必要だ」と指摘した。

 沖縄市自治会長協議会の大城信男会長は「地域の安全を考えればいいことだが、商店街のダメージを考えると何とコメントしていいか分からない」。同市子ども会育成連絡協議会の久高将輝会長は「外出禁止で犯罪がなくなるのか疑問だ。綱紀粛正、モラル向上が先決だ」と疑問を投げた。

 一方、胡屋十字路周辺八つの商店街などで組織するコザ商店街連合会の親川剛会長は「これまで事件のたびにオフリミッツが敷かれ、夜間営業の店などは影響を受けてきたが、今回は昼間の飲食店にも影響が出るかもしれない」と懸念した。

 コザ・ゲート通り付近の飲食店で食事をしていた嘉手納基地所属で基地外に住むという男性米兵は「(外出禁止令は)知らない。プライベートな時間だ。急いでいる」と足早に立ち去った。また、同通りで外国人相手の雑貨店を経営する女性(75)は「しばらく店を閉めるしかない。基地はなくなった方がいいが、現実にはこの商売しかない。どうすればよいか」と肩を落とす。同通り会の我喜屋盛永会長は「事件は許せるものではないが、外出禁止は大きな痛手」とした。

 北谷町にある飲食店店長の當真達夫さん(48)は「店で米兵のトラブルが起きたことはなく、客が半分減ることになり、生活が不安」と店への打撃を心配した。

 二十四日実施されるおきなわマラソンは出場登録された外国人二百六十二人のうち、八割から九割は米軍関係者。担当者は「まだ影響が出るのか分からない。米軍に問い合わせたい」と戸惑いの様子だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201700_02.html

 

2008年2月20日(水) 夕刊 5面

「反省の日」に模擬訓練/米軍、嘉手納町に通知

 【嘉手納】在沖米空軍は二十二日午前七時半から昼ごろまで、嘉手納弾薬庫地区内の通称シルバーフラッグサイトで、「エックスプローセブ・シミュレーター」(模擬爆発装置)二十個を使用した訓練を実施する。一方で、同日は在日米軍が米兵暴行事件を受け、「反省の日」とすることを発表したばかりで、議論を呼びそうだ。

 二十日午前、沖縄防衛局から訓練の通知を受けた嘉手納町は、同局を通して地域住民に配慮するよう米軍に申し入れた。

 「反省の日」について在日米軍司令部は外務省に対し、「このような事件が二度と起こらないよう、軍人としての在り方や、地域との関係の在り方を考える日にする。普段のオペレーションは行うが、訓練は可能な限り変更し、控える」と説明しているという。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「反省の日に爆発音を伴い、地域に不安を与える訓練を実施する米軍の姿勢は無神経にもほどがある。一体、何を反省するのか」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802201700_05.html

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