米陸軍兵が比女性暴行など  沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(2月21日、22日)

2008年2月21日(木) 朝刊 1面

米陸軍兵が比女性暴行 県警、近く逮捕状

本島中部 米兵暴行事件後

 沖縄に駐留する米陸軍の隊員が、米兵による暴行事件が起きた後の今月中旬、県内でフィリピン人女性に暴行した疑いで米軍当局に身柄を拘束されたことが二十日、分かった。女性は県警に被害届を出しており、県警は近く強姦容疑で逮捕状を請求する方針。

 県内では今月十日に中学生の少女に乱暴したとして、米海兵隊員が十一日に逮捕されたばかり。米軍当局が綱紀粛正策を打ち出した後に、新たな女性暴行事件が発生していた事実は、再発防止策の検討を進める日米双方に深刻な打撃を与える可能性がある。県民の米軍への感情もさらに悪化しそうだ。

 関係者によると、フィリピン人女性への事件は今月中旬、本島中部地域で発生。具体的な犯行状況は明らかになっていないが、県警が裏付け捜査を進めているもようだ。

 米兵暴行事件以降も、海兵隊員が飲酒運転や住居侵入容疑で相次いで逮捕され、米軍は二十日朝から、沖縄に駐留する陸海空軍、海兵隊のすべての軍人、軍属を対象に、基地外への外出を原則禁止する措置を開始した。岩国基地でも同様の措置が取られている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211300_01.html

 

2008年2月21日(木) 朝刊 23面

「法治国家の責任放棄」/密約訴訟 控訴棄却

 【東京】その視線は、法廷を去る裁判長の後ろ姿をじっと見詰めていた。沖縄返還の「密約」をめぐる訴訟の控訴審。「本件控訴を棄却する」。大坪丘裁判長の判決言い渡しはわずか五秒で終了した。元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)は表情を変えず、無念さを押し殺すように原告席に座っていた。東京高裁は一審と同様、密約の事実の有無に一切触れず、審理に幕を下ろした。争点の核心を否定する政府と論じぬ司法。「法治国家としての責任放棄だ」。西山さんは支援者への報告で、怒りをあらわにした。

 閉廷後の二十日夕、司法クラブの記者会見。西山さんはまゆをつり上げ、身ぶり手ぶりを交えて判決の不当性を訴えた。

 棄却の根拠になった除斥期間について「期間は国が設定している。ところが国家が組織を挙げて違法秘密を偽証などでガードしている」と矛盾点を指摘。「条約にうそを書く以上の政治犯罪はない」と語気を強めた。

 二〇〇〇年五月、当時の河野洋平外相が吉野文六・元外務省アメリカ局長に密約を否定するよう電話で要請したとされる点について、東京高裁は「政府の公式見解に沿って報道に対応してほしいと働き掛けたにすぎない」と言及。歴史の隠ぺいとも受け取れる行為をあっさり“容認”した。

 西山さんは会見後、支援者との会合で「私が提起した密約が裏付けられたから、河野氏が電話をかけたのは明らかだ」と指摘。「裁判官は人間としての判断ができない。高裁の高い窓から世間を見ているだけだ」と怒りをぶちまけた。

 一方で、「密約の否定は政府の答弁書で閣議決定された。これを覆すのは裁判所の能力を超えている」と壁の厚さを痛感。「棄却は予想していたが、やはり裁判で負けるのは嫌なものだ。無力感を感じるよ」と肩を落とす場面もあった。

 「裁判所の判断ではなく、主権者の判断を仰ぎたい」。西山さんは最高裁の逆転判決に望みをつなぐ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211300_02.html

 

2008年2月21日(木) 朝刊 23面

県民大会へ県議会陳情/沖子連など米兵暴行で方針

 米兵による暴行事件を受けた県民大会開催の準備を進めている市民団体のうち、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長らが二十日、県議会の仲里利信議長に県民大会への実行委員長就任を打診した。「県議会の合意が前提条件」とされたため、玉寄会長らは今月中に県議会米軍基地関係特別委員会に、大会開催への協力を求める陳情書を提出する方針を固めた。

 同日午後、玉寄会長と県婦人連合会の小渡ハル子会長が県議会を訪れ、非公式に要請した。玉寄会長によると、仲里議長は「県民大会への協力には県議会の同意が必要になる。その上でのお話ならば」と、実行委員長就任に前向きな姿勢を示したという。このため、まずは事件への県議会の対応を所管する同委員会に陳情書を出し、超党派での採択を働き掛けることにした。

 玉寄会長らは三月中の県民大会開催を目指しており、陳情書は今月中に提出するという。


うるま市議会が米軍に申し入れ


 【北中城】うるま市議会(島袋俊夫議長)ら市議団は二十日午前、北中城村の在沖米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、事件の全容解明や被害者への謝罪などを申し入れた。


伊平屋議会が抗議決議可決


 【伊平屋】伊平屋村議会は十九日、臨時議会を開き、再発防止などを求める抗議決議と意見書案を全会一致で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211300_03.html

 

2008年2月21日(木) 朝刊 2面

再発防止案きょう提出/民主・国民新が政府に

 【東京】米兵による暴行事件を受け、民主党と国民新党は二十日、基地外の米軍兵士の住居・行動の把握、県警・自治体・逮捕権のない米軍兵士による共同パトロール―などを盛り込んだ再発防止策の案をまとめた。民主の鳩山由紀夫幹事長と国民新の亀井久興幹事長が二十一日に町村信孝官房長官、高村正彦外相に提案する予定だ。

 今回の案について両党は、「早急に行える対策」との位置付け。根本的に問題を解決するには、日米地位協定の改定まで踏み込むことが事件・事故の抑止力になるとして、来週中に独自の地位協定改定案をまとめる構えだ。

 両党による再発防止案は(1)日米共同で教育プログラムを作成・実行し、効果をチェック(2)基地外の米軍兵士や家族の住居、行動を把握し、米軍人や、住民の相談窓口設置(3)共同パトロールの実施(4)地位協定十七条五項における凶悪犯罪の項目に放火、危険運転、未成年者への強制わいせつを追加する―の四点。

 民主党「次の内閣」の鉢呂吉雄外相や浅尾慶一郎防衛相、国民新の亀井亜紀子副幹事長、国民新と連立会派を組む政党「そうぞう」代表の下地幹郎衆院議員らが政策を協議して決定した。

 下地氏は「このような事件を受けた提案型の再発防止策は初めての例だろう。責任転嫁ではなく、一緒に考えていく姿勢が大事だ」と案作成の意義を強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月21日朝刊)

[知事訪米]

地位協定見直しに本腰を

 仲井真弘多知事が県議会二月定例会で日米地位協定の見直しのために訪米を検討していることを初めて明らかにした。

 地位協定は米軍にさまざまな特権を与えている。運用も米軍の裁量権に委ねられているのが現状だ。

 知事は今議会の所信表明でも見直しに言及。政府を動かすために、「より多くの国会議員や国民の理解と協力を得ることが大変重要」「渉外知事会などと連携しながらあらゆる機会を通じて積極的に取り組む」などと表明していた。

 しかし、当の政府に、見直しに向けて対米交渉する考えは一切なく、「運用改善」の一点張りだ。

 ここにきて仲井真知事が訪米を持ち出したのは、米政府や連邦議会に沖縄の実情を直接訴えたほうが早道と見たのだろうが、米側は生易しい相手ではない。

 米側は仮に見直しに踏み込んだ場合、日韓など他国との地位協定に波及することを恐れているからだ。これまでの交渉でも、見直しをかたくなに拒み、運用改善でしのいでいるのもそのためだ。

 沖縄の要求が力を持ち、見直しを実現させるためには、県内世論だけでなく、国民の共感を得ることが必要不可欠だ。

 仲井真知事は、共感を呼ぶような説得力のある言葉を発しているだろうか。

 米兵による暴行事件を受け、米軍再編に与える影響をいち早く懸念するなど、「本音」は別のところにあるのではと疑わせるような、分かりにくい言動になっていないだろうか。

 テレビ時代の政治は、政治家の小さなしぐさから内面をうかがうことができる場合が少なくない。

 地位協定の見直しは歴代知事も詳細な見直し案をまとめ、日米に要請してきた。仲井真知事は、これらの条項を総点検した上で、地位協定のどこをどう見直すのか、明確なメッセージを発信してほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080221.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月21日朝刊)

[沖縄密約控訴審]

葬っていい問題ではない

 沖縄返還交渉の取材で国家公務員法違反(秘密漏えいの教唆)罪に問われた元毎日新聞記者・西山太吉氏が国に謝罪と慰謝料を求めた控訴審で、東京高裁は一審同様、日米政府間の「密約」について判断せず、西山氏の請求を棄却した。

 西山氏がこの間一貫して問うてきたのは、沖縄返還交渉をめぐって米国との間に「密約」はなかったとする政府の姿勢と言っていい。

 だが、昨年三月の東京地裁判決は「除斥(時効)期間の経緯により(西山氏の)請求権が消滅した」と判定。

 西山氏が証拠として提出した米公文書や、当時、返還協定にはない「税金(四百万ドル)」の裏金負担を認めた吉野文六元外務省アメリカ局長の証言にも踏み込んでいない。

 高裁も一審同様、密約の存在について判断を示さなかったことになる。

 それにしても、返還交渉の陣頭指揮を執った元局長の「密約はあった」とする発言に全く触れないのはなぜか。西山氏の側に除斥期間があるからといって納得できるものではない。

 確かに西山氏が訴えた部分に時効が付いてまわるのは分かる。

 しかし、国民が知りたいのは、西山氏の裁判を通して政府に「協定の偽造」がなかったかどうかである。つまり、国の調印の在り方に違法性はなかったかどうかということである。

 もしあるとしたら、一審、二審の判決はその違法性に目を閉ざし、結果として政府の罪を黙認したことになる。

 言うまでもないが、二国間の問題であれ法的に問題があれば司法として法的立場から毅然と判定しなければならない。それが民主主義国家の三権分立の在り方であり、責任だろう。

 国民を欺いてきた事実が当事者の証言や公文書で明白なのに、司法がそれを無視するのは責任の回避と言わざるを得ず、司法への信頼を落とす。

 沖縄返還交渉では、米軍の核兵器持ち込みを認めた密約も米公文書で確認されている。これについても政府は、原状回復補償費と同じく密約はないと言い続けている。

 政府に対する私たちの不信感は、あるのにないと言い張る政府の強弁であり、日米間の重要事項が常に米公文書によって明らかにされることだ。

 調印した外交文書をすぐに国民に知らせることはできなくても、一定期間を過ぎれば公開する。その原則を確立する時期にきていると考えたい。

 日米同盟が重要であるなら、なおさら密約を闇に葬ってはなるまい。西山氏の請求を棄却することで東京高裁が自らの責任を回避したのが残念だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080221.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍外出禁止 倫理教育の徹底こそ必要

 在日米軍と在沖米軍は米兵女子中学生暴行事件を受け、事件の再発防止に向けた措置として、基地内に住む米兵とその家族に対する無期限の外出禁止措置を20日午前7時半から実施した。民間地域に住む米兵らも基地や学校、医療施設と住居の移動以外は外出を禁止している。

 夜間に限った外出禁止措置は過去にあった。日中も含めた措置は異例である。事件に対する「反省」の意味合いもあるのだろう。

 しかし、場当たり的な印象はぬぐえない。抜本的な解決策を早急に確立することこそが今、求められているのである。

 ジルマー四軍調整官は事件後、「(兵士に対して)基本的な価値観など倫理に関する訓示や教育をしていく」と明言した。しかし、暴行事件発生後も米兵の不祥事は発生している。米軍の規律はたるんでいるとしか言いようがない。

 外出禁止という厳しい措置は、米軍が米兵一人一人の行動に対して現状では自信を持てないことの裏返しであろう。

 長期的な視点に立った再発防止策は、在日米軍司令部内のタスクフォース(特別任務遂行部門)が基地外在住者の実態なども含めて調査し、講じるとしている。

 外務省によると、在日米軍は兵士に対して配属後、各部隊司令官が行動規範や規則を説明している。それでも、問題を起こす兵士がいるということは、その説明自体に問題があるか、不適格な兵士がいるかのいずれかである。

 その2点を解決するために、米軍が取り組むべきことは兵士らに対する倫理教育の強化である。

 事件を起こす米兵はごく一部ではあるが、個人の問題として片付けてはならない。軍全体の問題としてとらえるべきである。

 米兵やその家族全員が県民の人権を尊重することは当然のことであるとの認識を共有し、規範意識を身に付けることなしには、問題が解決したとは言えない。

 外出禁止措置の期間中、兵士らに対してどのような教育を施すのかの説明がほしい。在日米軍全体で22日を「反省の日」に設定することだけなのだろうか。

 各部隊別に反省のための集会を開くこと自体は評価するが、軍全体を対象としながら「運用上、どうしても仕方がない一部の訓練」は除外することは理解しがたい。「運用上、仕方ない」という抜け道を設けること自体、米軍の真剣度が問われる。

 訓練を優先するあまり、県民に対して実施を約束してきた兵士への教育が徹底されてこなかったことが、今回の不幸な事件を生んだのである。

 訓練以前に、継続して教育の徹底を図ることが求められていることを米軍は認識するべきだ。

(2/21 10:03)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31535-storytopic-11.html

 

2008年2月21日(木) 夕刊 1面

沖縄市のホテルで暴行 拘束米兵トリイ所属20代伍長

犯行女性入院中

 在沖米陸軍所属の兵士が今月中旬、フィリピン人女性に暴行した疑いで米軍当局に身柄を拘束された事件で、暴行現場は沖縄市内のビジネスホテルだったことが二十一日、分かった。被害女性は二十代で、ホテルのロビーでぐったりしているところを従業員に見つけられ、病院に救急搬送。現在も入院している。米軍捜査当局はこの事件にかかわったとして、トリイステーション(読谷村)所属の二十代男性伍長の身柄を拘束。県警は米軍当局と連携し、伍長から任意で事情を聴いており、今後、強姦致傷容疑などの可能性も含め、慎重に調べている。容疑が固まれば逮捕状を請求する。

 同ホテルの関係者によると、伍長と女性は今月十七日夜にチェックインした。翌十八日朝のチェックアウト後、女性がロビーのソファで目をつぶったまま一時間ほど横になっており、ホテル側が救急車を要請したという。

 その後、被害女性の関係者が沖縄署に通報。関係者によると、女性は下腹部からの出血などで病院に搬送され、「気分が悪い」などと話していたという。

 県警では、被害女性や複数の関係者から事情を聴くとともに、ホテルの部屋などを現場検証している。

 県内では、今月十日に米海兵隊員による暴行事件が発生した後も、十七日には飲酒運転で、十八日には住居侵入容疑で海兵隊員の逮捕が相次いでいる。

 米軍は「綱紀粛正」を名目に、二十日午前から米軍関係者の外出禁止令を出しているが、続発する事件に県内から再び批判が上がりそうだ。

 在沖米陸軍は「事件を大変深刻に受け止めている。捜査を進めており、県警にも全面的に協力する」と話した。


身柄引き渡しを

県議会で知事答弁


 仲井真弘多知事は県議会(仲里利信議長)二月定例会代表質問二日目の二十一日午前、今月中旬に県内で発生した米陸軍兵士によるフィリピン人女性への暴行事件について、「基本的に日本の司法手続きによって厳正に処断すべきである。罪を償った上で米国へ送還させるべきものである。(そうすることが)県民感情にも沿うものだと思う」と述べ、米兵の身柄を速やかに日本側に引き渡すことが望ましいとの認識を示した。

 県警の得津八郎本部長は同事件について「容疑者の任意の事情聴取や発生場所の検証など所要の捜査を行っている。被害者から事情聴取を行っているが、入院中で治療行為を優先しなければならないことや日本語、英語がともに不自由であることなどから慎重に進めている。容疑者は米軍当局の監視の下にあるが、捜査に当たっては全面的な協力を得ながら進めている」と説明した。

 当銘勝雄氏(護憲ネット)への答弁。

 また、米兵による暴行事件を受け、超党派の県民大会が開催されることについて、仲井真知事は「県民大会については、被害者およびご家族の心情や意向にも十分配慮することがまず第一であり、その上で、広く県内の各界各層の声を聞く必要がある」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211700_01.html

 

2008年2月21日(木) 夕刊 5面

米兵蛮行 底なし/暴行事件再発

 【中部】「何度事件を起こしたら気が済むのか」。中部で再び起きた米兵による女性暴行事件。十日発生した暴行事件で駐日大使と在日米軍司令官が県民に綱紀粛正と再発防止の徹底を約束したばかり。首長からは「基地撤去を求める声が出ても仕方がない」の声も。「口先だけ」の米軍に、住民の怒りと恐怖は頂点に達している。

 東門美津子沖縄市長は「またとんでもない事件が起きた。再発防止といいながら、頻繁に事件が起きる事態にあきれてしまう。米軍、日米両政府の対応はいったいどうなっているのか」と怒りをあらわにした。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「これだけ立て続けに事件が起こるのは米軍の綱紀が相当緩んでいる」と指摘。「基地が存在するから事件・事故は起こる。ここまで来ると基地撤去を求める声が高まっても仕方がない。いいかげんにしろという思いだ」と憤った。

 中部市町村会会長の知念恒男うるま市長は「(米兵は)何度もこんな事件を起こして、人間を尊重する気持ちがないのか。怒りを通り越して何も言えない」と度重なる事件にあきれた様子。

 北谷町女性連合会の桃原雅子会長は「女性に対する性暴力は許されない。綱紀粛正も口だけではないか。末端の兵士まで行き渡っていないから、事件が起こる」と語り、米軍の対応策を疑問視した。

 沖縄市中央でフィリピン料理店を経営するフィリピン人女性(39)は「基地外でフィリピン人が被害に遭うことはめったにない。詳しい内容は分からない。沖縄は安全だと思っていたのに」と表情を曇らせた。

 百五十世帯が加盟する日本国籍フィリピン人協会の谷添真会長は「中学生の事件があったばかりなのに、同じ国の女性が被害を受けたのは許せない。連鎖的に事件が起きており、米軍が反省しているようには思えない」と怒りをぶつけた。


読谷村長 抗議検討


 伍長が所属するトリイ通信施設のある読谷村の安田慶造村長は事実関係を調査中とした上で、「事実であれば抗議も視野に検討したい」と述べた。米軍関係者による事件が立て続けに発生していることについては「軍人としての意識が徹底されないまま、沖縄に派遣されているのではないか。一過性の問題で終わらせないためにも、県民の抗議の意思を示す機会が必要だ」と県民大会開催が必要との考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211700_02.html

 

2008年2月21日(木) 夕刊 1面 

いろいろありすぎる。多すぎる 知事が不快感

 在沖米海兵隊員による暴行事件に続き、在沖米陸軍の兵士が今月中旬、県内でフィリピン人女性に暴行した疑いで米軍当局に身柄を拘束されている事件について、仲井真弘多知事は二十一日午前、「いろいろありすぎる。多すぎるという感じだ」と不快感を示した。登庁の際に記者団の質問に答えた。

 一方、仲里全輝副知事は「単なる軍隊の中の規律の問題、教育の問題では済まないかもしれないという気がしている。そういう事実があったということが、今日まで伏せられていたのがなぜなのかも含めて、速やかに公表してしかるべきだと思う」とコメントした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211700_03.html

 

2008年2月21日(木) 夕刊 1面 

基地外居住 厳格化へ/政府、近く防止策公表

 【東京】町村信孝官房長官は二十一日の定例会見で、米兵による暴行事件を受け、検討していた再発防止策について一両日中にも外務省が公表することを明らかにした。基地外に住む米兵が起こした点に着目し(1)基地外居住の許可基準を厳格化し、実態を把握(2)米軍と県警による共同パトロールの実施―などが盛り込まれる見通し。

 パトロールの際の容疑者の身柄の取り扱いについて、政府関係者は「身柄拘束の権限は県警が優先されるようにする」として、任意同行の権限を持つ米憲兵は参加しないとの考えを明らかにした。

 町村氏は今回公表される防止策について「時間が限られた中での中間的な答えだ。それだけでは十分ではない」と位置付け、具体的な防止策を近日中にあらためて示す考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211700_04.html

 

2008年2月21日(木) 夕刊 4面

日本人運転手を監視/米軍人向けバスにカメラ

 【中部】県内各地の米軍基地を結んで運行する米軍人向けのバス「グリーンライン」の日本人運転手たちが、車内に設置された監視カメラによって「重圧を感じて仕事をするのが苦しい」「なぜ米兵ではなく運転手を監視するのか」などの不満の声を上げ、改善を強く訴えている。運転手側は近日中に関係機関に実態調査を求める方針だ。(吉川毅)

 グリーンラインは毎日運行。乗客は主に乗用車を持たない二十代の若い海兵隊員で、週末になると名護市のキャンプ・シュワブなどから北中城村のキャンプ瑞慶覧まで利用し、そこから沖縄市や北谷町の繁華街に繰り出すという。

 米軍側は「テロ対策の一環」として昨年十二月、約七十台の全バスにカメラを設置した。バス一台につき四つあり、一つはバックミラーから運転席を見下ろすように設置。残り三つは天上の中央部分から一列に設置されレンズは前方に向いている。

 午前零時の最終便では、酒に酔った米兵同士が車内でけんかをしたり、用を足したり、暴れることもあり、運転手が対処することもあるという。

 ある運転手は「カメラが設置されたときはわれわれの安全のためと思った。しかしレンズは運転席に向き、常に見られてストレスを感じる」と説明。「上司に当たる業務担当に改善を求めたが、『コンビニでもカメラは付いている。運転手の身を守るためだ』とかわされた。ガソリンが高騰し従業員削減のうわさもあり、批判したことで不安もある」と胸の内を明かす。

 運転手たちが所属する北中城村のキャンプ瑞慶覧内にあるガリソン輸送装備(GME)師団輸送部では、約六十人の運転手に対してカメラ設置や職場環境などについてアンケートを実施。基地内の人事課にも改善要求したが、まだ回答がないという。

 全駐留軍労働組合マリン支部の仲里修執行委員長は「われわれも回答待ちだ。運転手側からもう一度詳しく事情を聴いた上で、状況が変わらなければ防衛局などに改善を求める行動をしたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802211700_05.html

 

2008年2月22日(金) 朝刊 1・2面

海兵隊員 容疑認める/暴行事件

DNA鑑定進める/陸軍伍長は否定

 本島中部で起きた米兵による女子中学生暴行事件で、県警に強姦の疑いで逮捕された在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)が逮捕容疑を全面的に認める供述をしていることが二十一日分かった。同容疑者はこれまで「体には触ったが、暴行はしていない」と否認していた。ただ、被害少女の説明と一部食い違う部分があり、県警が慎重に捜査を進めている。

 調べでは、ハドナット容疑者は十日午後十時半ごろ、本島中部の公園前路上に止めた車の中で、少女に暴行した疑い。少女は午後十一時前に解放され、公園近くでうずくまっているところを警察に保護された。少女は携帯電話で友人らに助けを求めていたという。

 県警はハドナット容疑者の自宅から犯行に使われたとみられる車やバイクを押収。付着物のDNA鑑定など容疑の裏付け捜査を進めている。

 一方、十八日に発生した在沖米陸軍兵によるフィリピン人女性暴行事件で、米軍当局に身柄を拘束されている二十代の男性伍長が強姦の疑いを持たれていることについて「合意の上だった」とし暴行を否定していることが二十一日、分かった。県警は伍長や被害関係者から任意で事情を聴くなどして調べを進めており、容疑が固まれば、伍長の逮捕状を請求する方針。


     ◇     ◇     ◇     

外出禁止 陸軍外す/米伍長暴行「事件極めて少ない」


 米陸軍の伍長によるフィリピン人女性暴行事件に絡み、在沖米四軍のうち陸軍だけが日ごろの夜間外出禁止措置を取っていないことが二十一日、分かった。陸軍でも外出が禁じられていれば、暴行があったとされる民間地域のホテルにも宿泊できなかった可能性が高い。陸軍は「事件・事故の件数が極めて少ない」ことを導入しない理由に挙げている。

 また関係者によると、米軍に拘束されている容疑者の伍長は、嘉手納基地の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊の要員として勤務しているとみられる。

 外務省日米地位協定室によると、米四軍のうち海兵隊、空軍、海軍の三軍は、夜間外出禁止措置を継続的に実施している。詳細は異なるものの、主に下士官と兵士を対象に、午前零時から同五時まで公務外の外出を禁じる内容。

 唯一、導入しない陸軍は同室の問い合わせに対し、「兵員構成上、年齢層が高く、事件・事故の件数が極めて少ない」と説明したという。外出禁止で事件が防止できた可能性や今後の対応について、同室は「警察が事実関係を調べており、コメントできない」とした。

 一方、海兵隊がすでに導入している夜間外出禁止措置をめぐっても、禁止時間帯が過ぎた朝になってから基地内に戻れば問題視されないという制度上の抜け道が明らかになっている。


基地外居住 基準厳しく/米軍司令官、防衛相に表明


 【東京】近く離任する在日米軍のライト司令官(空軍中将)は二十一日夜、石破茂防衛相と防衛省で会談し、米兵による暴行事件を受け、兵士の基地外居住の基準を厳しくする意向を明らかにした。石破氏が、基地外に住む米兵が事件を起こした点を指摘し、基準の厳格化を要望したのに対し、同司令官は「これまでのやり方を今後見直していきたい」と言明した。

 ライト司令官は事件について、「とんでもないことが少女に起き、本人や家族が大変つらい思い、痛みを味わったと思う。こうしたことが二度と起きないようにするため、すべての可能な措置を取るべく検討している」と述べ、再発防止に全力を挙げる意向を強調。

 その上で「今までも基地外居住を認める場合は、特に若い兵士を中心に、認めるかどうかについて精査してきたが、これまでのやり方を今後見直していきたい」と述べ、基準を厳しくする意向を示した。

 石破氏は、後任のライス司令官についても「日米同盟を強固にするために必要なことは率直に申し入れていきたい。ライト司令官と同様に誠実に対応するようお願いしたい」と述べた。

 事件を受け、日本政府も米軍士官と県警による共同パトロールなどの再発防止案を検討。町村信孝官房長官は同日の会見で、一両日にも再発防止策を公表する意向を示した。

 町村氏は、今回公表する防止策について「時間が限られた中での中間的な答えだ。それだけでは十分ではない」と位置付け、具体的な防止策を近日中にあらためて示す考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802221300_01.html

 

2008年2月22日(金) 朝刊 27面

米兵教育 事件説明なし/被害者団体ら批判

 【東京】県内で米兵による事件が相次いでいる問題で、在沖米軍がこれまでに実施してきた兵士への教育プログラムに、過去に発生した事件や事故の概要や、それに対する県民の感情などを具体的に盛り込んでいない可能性が強いことが二十一日、分かった。事件を重視した超党派の女性国会議員の要請行動に対し、在日米国大使館の職員が明らかにした。被害者の立場からは、「事件を伝えずには再発の防止もできない」と批判の声が上がった。

 国会議員は民主党の神本美恵子さん、岡崎トミ子さん、共産党の紙智子さん、糸数慶子さん(無所属)のいずれも参院議員。四人は同日午後、被害者への補償や軍人の綱紀粛正などを求めるため、同大使館を訪れた。

 メンバーによると、対応したレイモンド・グリーン安全保障政策課長は、現在米軍内で教育プログラムを再点検するワーキングチームを発足させ、見直しに向けた作業を本格化させていると説明した。

 議員らが、県内や他の米軍所在自治体で過去に発生した事件の報道や、被疑者米兵の処分結果などを教育にどう反映しているか尋ねたところ、同課長は「説明はしてはいない」と答えたという。議員らは「教訓を生かすための基本であり、それで緊張感を持たすことはできない」と反発した。議員らはワーキングチームに地元の住民を加えることも要望。同課長は過去の事例説明も含め、要望をチームに伝える考えを示すにとどめたという。

 また在沖米軍の度重なる事件に抗議する議員に対し、同課長は「軍人の多くは善良であり、(県民と)共存共栄できる」とも発言したという。

 教育プログラムの内容について、米軍人軍属の事件・事故被害者の会会員の村上有慶さんは「やはり、という感じだ。米軍が被害者の声を聞き、痛みを真剣に受け止めない限り、事件・事故は絶対になくならない」と話し怒りをあらわにした。

 県、国、米軍による基地問題協議の場への同会参加が拒否されてきたことを挙げ、「米軍や行政にとっては、(犯罪の)犠牲者が出ても、国家が安全なら構わないというのが本音なのだろう。県民がもっと怒り、被害者の立場で行動しないと、状況は何も変わらない」と語気を強めた。

 県女性団体連絡協議会の安里千恵子会長は「兵士らは過去に起きた事件を知らないし、沖縄の新聞も読まないから県民の抗議も分からない。しっかりしないとこうなる、と示す必要がある」と指摘。「特に若い兵士の教育を徹底してほしい」と改善を求めた。


     ◇     ◇     ◇     

四軍調整官、面会拒否/「事件の詳細分からない」


 【沖縄】本島中部で発生した米陸軍兵による暴行事件を受け、沖縄市の東門美津子市長は二十一日、在沖米軍四軍調整官事務所を訪れ直接抗議するため、市基地政策課が北中城村の同事務所に面会のための日程調整を申し入れたが、断られたことが分かった。

 同事務所は「事件の詳しい内容が分からないので、今会う段階ではない」と説明したという。

 同課は「県議会では県警本部長が事件について説明している。事件の内容が分からないという理由で抗議を受け付けない米軍の姿勢が理解できない」としている。

 東門市長は二十二日午後、沖縄防衛局、外務省沖縄事務所、在沖米国総領事館に抗議と要請行動をする。

 また読谷村の安田慶造村長は同日午前、同村の米軍トリイ通信施設を訪ね、直接抗議する。


基地縮小要請書を採択/女性国会議員


 【東京】米兵による暴行事件を許さない、と米軍人軍属事件被害者の会や県関係野党国会議員などが呼び掛けた集会が二十一日、参院議員会館内で開かれ、在日米海軍に性的暴行を受けたオーストラリア出身で四十歳代女性のジェーンさん=仮名=が軍隊による性暴力の実態を報告した。助けを求めた警察にも人権への配慮を欠く対応をされたとして、「レイプは悪夢。さらに警察にセカンドレイプを受けた」と声を震わせて訴えた。

 ジェーンさんは二〇〇二年四月、米海軍横須賀基地所属の米兵に神奈川県内の駐車場で暴行された。「PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ、六年間、悪夢が私につきまとっている」と後遺症の重さを説明した。

 また、被害後の警察の対応について「下着もない状態で助けを求めたが、十三時間以上家に帰してもらえず、病院にも行けなかった。『けがをしているなら見せてみろ』とも言われた」と不適切な対応を強く批判した。

 沖縄での中学生暴行には「十四歳の少女が皆の前で話すのは不可能だ。過去に米軍に殺された県民にはもう声がない。つらいが、私は訴えていきたい」と述べた。

 参院会館では引き続き、糸数慶子参院議員(無所属)ら女性国会議員が呼び掛けた集会があり、海兵隊の撤退や基地の整理・縮小を求める要請書を採択した。

 糸数さんは「復帰後三十五年以上がたっても、米軍犯罪の実態はまったく変わっていない」と性犯罪が相次ぐ現状に怒りを示した。紙智子さん(共産)は「米軍は日常的に人殺しの準備をしており、人権と結び付くはずがない。基地の縮小・撤去に向けて一致団結しよう」と呼び掛けた。

 ほかに社民党党首の福島瑞穂さん、岡崎トミ子さん(民主)、神本美恵子さん(同)らが発言した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802221300_02.html

 

2008年2月22日(金) 朝刊 2面

「実効性ある防止策を」/知事、米兵事件で強調

 県議会(仲里利信議長)二月定例会は二十一日、代表質問二日目が行われた。仲井真弘多知事は、米軍人による相次ぐ事件・事故について「米軍人に関係する事件が連続していることは極めて遺憾。米軍は実効性ある防止策を早急に講じ、一層の綱紀粛正を徹底すべきだ」と述べ、米軍による再発防止策の必要性をあらためて強調した。狩俣信子氏(護憲ネット)への答弁。

 米兵暴行事件に伴う米軍普天間飛行場の代替施設移設への影響については、「在日米軍再編は基地負担軽減と抑止力の維持を図ることを主眼に合意され、普天間飛行場の移設、海兵隊のグアム移転、嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還などの事項が合意されている。実施可能なものから先に進展していくべきと考える」との認識を示した。

 当銘勝雄氏(同)の質問に答えた。

 米兵暴行事件を受け、犯罪被害者への支援体制について、得津八郎県警本部長は「米軍構成員等による事件であるか否かにかかわらず、殺人、傷害、強姦等のように専門的な支援が必要な場合は、病院の手配や情報提供など支援を実施している。今回の事件では被害者が女性かつ中学生であることから、支援要員に女性警察官を指定し、支援活動を行っている」と述べた。狩俣氏(同)への答弁。

 復帰直前の一九七一年、当時の琉球政府が復帰後のあるべき沖縄の在り方をまとめた「復帰措置に関する建議書」の意義について、仲井真知事は「同建議書は県民福祉を最優先に考え、地方自治権の確立、反戦平和、基本的人権の確立、県民本意の経済開発等を理念に掲げた。現在においても基本的には、行政運営の理念であると考える」と所見を述べた。兼城賢次氏(同)の質問に答えた。


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暴行事件対応で火花


 米兵暴行事件に対する仲井真弘多知事の対応をめぐって、知事と野党議員が二十一日、開会中の県議会二月定例会の代表質問で激しいバトルを繰り広げた。

 二番目に登壇した兼城賢次氏(護憲ネット)は、事件直後、県庁に謝罪に訪れたジルマー四軍調整官と握手し、最後はエレベーターまで見送った知事の行為を批判。「抗議は形式だけで手ぬるく、米国との友好関係を重視している」と激しくかみついた。

 これに対し、仲井真知事も負けじと反論。「知事として、組織の代表が私の所まで来て謝っていった。当然とるべき最低限の社会常識で、県民の感情意識にぴったり当たっている」と語気を強めた。

 また、中部で発生した米兵によるフィリピン女性への暴行事件も取り上げ、当銘勝雄氏(護憲ネット)が「沖縄から米軍撤退を求めるべきではないか」と追及。仲井真知事は「一部の不心得者が事件を起こしたからといって、国防とかアジア太平洋の安全も考えずに、(米国へ)帰還させるという論理は飛躍がありすぎ、考えられない」と一蹴、議場が一時騒然となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802221300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月22日朝刊)

[今度は比女性暴行]

上官の責任を問いたい

 またもや米兵による暴行事件である。海兵隊員に続き、今度は在沖米陸軍所属の二十代の伍長がフィリピン人女性に暴行した疑いがもたれている。

 被害女性は救急車で病院に搬送され、関係者が沖縄署に通報。容疑者は米軍当局に身柄を拘束された。県警は任意で事情を聴いており、近く逮捕状を請求する構えだ。

 県内で米兵の不祥事が相次ぎ、米軍に対する県民の不信は頂点に達している。その渦中に、あってはならない暴行事件がまた起きた。いいかげんにしろと言いたい。

 女子中学生への暴行事件を受け、在日米軍や在日米大使館の高官らが、綱紀粛正や再発防止に取り組む姿勢を強調したばかりではないか。

 海兵隊二等軍曹が逮捕された後も事件がとどまる気配はない。二十二歳の海兵隊員が酒酔い運転、二十一歳の海兵隊員が住居侵入の容疑でそれぞれ現行犯逮捕された。

 米側の「反省の弁」の舌の根の乾かぬうちに、また今回の事件が起きた。米軍の規律の緩みは県民の安全、安心に対する重大な脅威になっており、異常事態としか言いようがない。在日米軍司令官、在沖米四軍調整官、指揮官ら、上官の責任を問いただしたい。

 最初の事件後、シーファー駐日米国大使、ライト在日米軍司令官らが来県し、再発防止へ向けて、米軍内の教育プログラムを見直す考えを県側に伝えるなど、米側は素早い反応を見せた。

 二十日からは外出禁止令を実施し、二十二日を「反省の日」として設定した。ライト司令官の下に「性暴力の防止と対応に関するタスクフォース」を設置。再発防止に取り組む姿勢を強調した矢先の事件であることを県民は重く受け止めている。

 今後綱紀粛正や再発防止策に実効性が伴わなければ、県民の反発はさらに高まり、信用は失墜する一方だということを米軍関係者は自覚してほしい。

 沖縄の米軍基地は対テロ戦争と深くかかわってきた。イラク戦争も開戦から約五年になり、米国ではブッシュ大統領の支持率も低迷。出口戦略を描くことができず、米国内で早期撤退論が噴出し、厭戦気分も広がりつつある。

 米軍の規律の緩みや、米兵による一連の事件も、こうした気分と無縁ではないだろう。

 県民からすればたまったものではない。米軍は弛緩した組織の規律をどのように立て直すのか。目に見える抜本的対策が必要であり、小手先の対応ではもはや通用しない。在沖米軍は関係者の処分など、責任の所在を明確にしていくべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080222.html#no_1

 

琉球新報 社説

密約控訴審 真実に背を向ける判決だ

 司法は、行政の前にひざまずいている。そんな姿が、沖縄返還密約訴訟控訴審判決で浮き彫りになった。日本はもはや法治国家たり得ないのか。名ばかりの「三権分立」の前に、国民の権利と人権が危機にさらされている。

 20日、東京高裁が出した密約訴訟控訴審判決は、事実に目を伏せ、救済を求める訴えに耳を閉ざし、逆に国家犯罪を擁護する。そんな中身となった。

 密約訴訟の源流は、1972年4月の外務省機密漏えい事件にさかのぼる。

 沖縄返還の際、政府は沖縄返還以前に米政府が約束していた復元補償費400万ドルを日本側が肩代わりする密約を結んでいた。

 沖縄の「無償返還」を大看板に掲げていた当時の佐藤栄作首相だが、裏では金銭授受の「有償返還」であった。膨大な金は国会審議を経ずに交わされた密約で支払われた。議会制民主主義を否定する「国家犯罪」として、当時、毎日新聞記者だったジャーナリストの西山太吉さんは、スクープ報道した。

 国民の「知る権利」に応える報道に対し、政府は「密約は存在しない」と否定しながら、西山氏や情報を提供した外務省職員を機密漏えいの罪で訴え、有罪とした。

 それから28年後、密約は米公文書で「存在」が明らかになった。日米交渉の当事者であった外務省元高官も存在を証言した。

 密約は周知の事実となったが、控訴審判決は、事実に目を伏せ、密約の認定も、判断も避けた。

 密約の存在が明確になった後も、存在を否定し続ける政府に、西山さんは「名誉を傷つけられている」と訴えるが、「公式見解を述べたにすぎず、原告の名誉を棄損するとはいえない」と、判決は政府の主張を支持している。

 そして密約訴訟自体にも、事件から20年を経たとして時効に当たる民法の「除斥期間」を適用し、「賠償請求権は認められない」との政府側の主張を支持し、訴えを棄却している。

 密約の存在を裏付ける米公文書が報道されたのは2002年6月。西山さんは「私は当時、田舎にいる一個人で、完全に社会的に抹殺されていた。すぐに訴えればよかったといわれても、どう活動できたのか」と、反論している。

 国家犯罪とされる沖縄返還密約の存在について、国民は明確な判断を期待した。しかし、1審に次いで控訴審も判断を回避し、肩すかしの判決となった。

 事実や真実に背を向ける残念な結果である。西山さんは「ここでやめるわけにいかない」という。

 30年の時を超え、国民の知る権利と名誉回復、国家賠償を求める訴訟は、最高裁で争われる。引き続き司法判断を注視したい。

(2/22 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31564-storytopic-11.html

 

2008年2月22日(金) 夕刊 1面

基地外居住人数を提供/米兵暴行

 【東京】在沖米海兵隊員による暴行事件を受け、日米両政府は再発防止策の取りまとめに向け、最終調整に入った。二十二日午後発表する。基地の外に住む米兵の実態把握と居住許可基準の厳格化が柱。高村正彦外相は同日午前の閣議後会見で、今年一月三十一日時点で沖縄に四万四千九百六十三人の米軍関係者がいて、そのうち一万七百四十八人が基地外に居住しているとした上で、米軍側が基地外居住者の人数を年に一度、日本側に提供する制度を創設し、情報を市町村と共有する方向で検討していることを明らかにした。

 基地外への居住許可基準の厳格化は日本側の要請に基づき、米軍が綱紀粛正の一環として再点検した上で結論を出す。

 日米は今回の事件を基地外に住み、指導的立場にある二等軍曹が起こしたことを重視。日本側が平時に基地外居住者の実態を把握できていないことも明らかになったため、対策を講じていた。

 再発防止策では、ほかに(1)地元自治体の要望があれば防犯カメラ設置に積極的に対応(2)日米共同パトロールの際、日本側が優先的に身柄を確保する仕組みを念頭に警察権限の行使を調整(3)米軍教育プログラムに沖縄側の視点を反映―などを検討している。

 沖縄など地域を限定している項目のほかは、各地の米軍基地も対象とする方向。

 今後も再発防止策の検討を続けるため、事件を受けて在日米軍が設置した四軍の各司令官による作業部会による調査結果や、地元の意見を踏まえ、日米合同委員会で継続的に協議する。

 高村外相は「再発防止策はそれなりの効果があると思うが、継続的な努力が必要だ。今回は当面の対策としてできることから出した」と述べた。

 在日米軍は暴行事件を踏まえ、二十日から沖縄や岩国(山口県)などの海兵隊員を含む軍人軍属に対し、無期限の外出禁止措置を実施。また、二十二日は在日米軍の全部隊、基地に「反省の日」とするよう指示している。


     ◇     ◇     ◇     

許可条件 犯罪歴考慮せず


 【東京】政府は二十二日午前閣議決定した答弁書で、在日米四軍が定める基地外居住の条件について明らかにした。事件事故が多い海兵隊が特別に厳しい条件を付されているわけではなく、四軍とも基本的には階級や給与水準などが条件で、過去の犯罪歴などは考慮されていない。照屋寛徳衆院議員(社民)、糸数慶子参院議員(無所属)の質問主意書に答えた。基地外居住条件の詳細が明らかになるのは初めて。

 海兵隊は特定重要部署に配属される兵士や三等軍曹以下の単身者を除くすべてが対象で、二等兵から三等軍曹までの兵士は(1)所帯を設けたとき(2)妊娠二十週に達したとき―などが条件。陸軍は、特定重要部署に配属される兵士と二等軍曹以下を除くすべてが対象。空軍は兵長から三等兵までの単身者で、配属三年未満の兵士や特定重要部署に配属される兵士を除くすべて。海軍は給与水準が上等水兵以下の単身者で、海上部隊配属を除くすべてが対象。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802221700_01.html

 

2008年2月22日(金) 夕刊 7面 

反省の日 騒音と煙/「口先だけ」地元怒り

 【嘉手納】米兵による暴行事件を受け在日米軍が設けた「反省の日」の二十二日、在沖米空軍は午前七時半ごろから嘉手納弾薬庫地区内の通称シルバーフラッグサイトで、即応性の維持を目的とした訓練を実施した。現場では白煙が上がり緊急用と見られる車両が行き交った。英語での拡声器放送もあった。午前十時までに爆発音を伴う模擬爆発装置の使用はない。

 沖縄防衛局から二十日に訓練の通知を受けた嘉手納町は、事件の直後であることから地域住民に配慮するよう米軍に申し入れていた。

 米軍は当初、同訓練で模擬爆発装置二十個を使用する予定だったが、二十一日に同装置の使用を控えると発表。作戦上の都合からF15戦闘機など軍用機の飛行は実施すると発表している。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「相次ぐ米兵事件への県民の怒りが沸騰しているこの時期に、爆発音がないとはいえ、訓練を実施すること自体が問題だ。『反省』は口先だけだ」と批判した。

 一方、嘉手納基地では午前八時ごろから、F15戦闘機やKC135空中給油機などの離着陸が確認された。同町によると、滑走路に隣接する屋良地域に設置された航空機騒音測定器で、午前八時五十三分に98・5デシベル(電車通過時の線路脇に相当)の騒音が記録された。

 同地域では午前十一時までに、70デシベル以上の騒音を四十九回計測した、という。


     ◇     ◇     ◇     

ゲート前110人こぶし/北中城


 【北中城】米兵による相次ぐ暴行事件に抗議する緊急集会が二十二日午後、北中城村石平のキャンプ瑞慶覧ゲート前で行われた。

 主催する沖縄平和運動センターや中部地区労の組合員ら約百十人(主催者発表)が参加、「米軍の性暴力を許すな」「沖縄の米軍基地は撤退せよ」と怒りのこぶしを突き上げた。

 沖縄平和運動センターの大浜敏夫副議長は「いつまでも県民が犠牲者になってはいけない。事件を繰り返さないためにも県民大会を開催し、日米両政府に怒りをぶつけよう」と訴えた。

 抗議集会には、英語で「私たちは米軍を歓迎しない」と記した看板を持つ女性もいた。ゲートは閉鎖され、双眼鏡で参加者の様子をうかがう米軍関係者の姿も見られた。


県市長会が抗議決議


 県市長会(会長・翁長雄志那覇市長)は二十二日午前、那覇市のサザンプラザ海邦で定期総会を開き、米海兵隊による暴行事件への抗議決議案を全会一致で可決。地位協定の抜本的見直しなどを求めた。

 決議案では、事件に対する激しい怒りと、事件後も住居侵入や女性暴行が相次いだことに不安と怒りを表明。抜本的解決策が必要と指摘している。その上で(1)被害者と家族への謝罪と完全な補償(2)綱紀粛正と教育の徹底など実行性のある再発防止策(3)日米地位協定の抜本的見直し(4)米軍基地の一層の整理縮小と兵力の削減を要求している。

 駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事、内閣総理大臣、外務大臣などに送付する。


県労連も決議


 県労連(宮城常和議長)は二十二日までに開いた評議員会で、米兵による暴行事件に抗議し、被害者への謝罪と補償のほか、米軍人・軍属の沖縄からの退去、地位協定の抜本的改定などを求める決議を採択した。二十五日に沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に手渡す。

 また、宮城議長は二十二日、超党派の県民大会開催に賛同するとした談話を発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802221700_02.html

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