普天間飛行場、危険除去策再検討 タクシー強盗致傷、憲兵が関与自供 米軍訓練中、漁場に爆弾2発投下など  沖縄タイムス関連記事(4月10日から12日)

2008年4月10日(木) 朝刊 1面

危険除去策 再検討/普天間飛行場移設協議会

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第七回会合が九日夕、首相官邸で開かれた。仲井真弘多知事が「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態の実現」に向けた努力を繰り返し求めたことに対し、町村信孝官房長官は昨年八月に日米合意した普天間飛行場の危険性の除去策について、「さらに技術的に検討したい」との認識を示した。石破茂防衛相も「技術的にどんなことが可能か、さらに努力するべき点があるか、県の意見を参考に検討したい」と述べた。

 一方、建設計画について、仲井真知事は「可能な限り沖合に寄せるなど、地元の意向や環境に十分配慮して検討を進め、今後も情報提供に努めてほしい」と代替施設案(V字案)の沖合移動を再度要求。

 さらに現行飛行場の三年めどの閉鎖状態実現などの要望について、協議の進め方の枠組みを検討することを提案。政府側は「引き続き議論していくことも必要」「具体的な内容について伺った上で検討したい」などと述べ、今後、積極的に協議を重ねる意向を示した。次回協議会の開催時期は未定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804101300_03.html

 

2008年4月10日(木) 夕刊 1面

憲兵が関与自供/タクシー強盗致傷

「逃走車を運転」県警、書類送検へ

 沖縄市でタクシー乗務員が殴られ釣り銭箱を奪われた事件で、米軍の監視下にある嘉手納基地所属の憲兵隊員(22)が「(逃走に使った車の)運転をした」と犯行への関与を認める供述をしていることが十日、捜査関係者の話で分かった。

 関係者によると、憲兵隊員は犯行現場にいたことや、県警に逮捕されている米兵家族の少年四人らとともに事前に計画を立てていたことを認めているという。車は憲兵隊員の所有とされる。

 ただ、「自分は首謀者ではない」と、中心的な役割については否認を続けているという。

 県警は米軍の協力を得て、任意で憲兵隊員から事情聴取を続けており、近く強盗致傷容疑で隊員を書類送検する方針。日本側は起訴後に米側から身柄の引き渡しを受ける見通し。

 憲兵隊員は軍の監視下にあり、基地外への外出などは禁止されているとされるが、一定の自由行動は認められているという。

 憲兵隊員はこれまで、事件への関与を全面否認していたとされる。県警は少年らの供述などから、憲兵隊員が首謀者との見方を強めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804101700_02.html

 

2008年4月10日(木) 夕刊 1面

「県提案あれば検討」/普天間の危険性除去策

 【東京】町村信孝官房長官は十日午前の定例会見で、九日に行われた普天間移設協議会で示された普天間飛行場の危険性除去を再検討する政府方針について、「県から具体的提案があれば一緒に検討したい」と述べ、追加的対策を県とともに考える意向をあらためて示した。

 町村官房長官は移設の早期完了が「最大の危険性除去であることは間違いない」とした上で「それには数年かかるので、その間の対策として追加的にあり得るか、お互いに考える」とした。

 同飛行場の危険性除去は日米で合意し、実施中もしくは実施準備段階だと説明。米側との調整については「必要があれば今後行う」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804101700_03.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 2面

支援再延長 確定へ/基地従業員離職対策

 【東京】参院厚生労働委員会は十日、国内の米軍基地で働く日本人従業員が職を失った際の再就職支援策を盛り込んだ「駐留軍関係離職者等臨時措置法」を、二〇一三年まで五年間延長する改正法案を全会一致で可決した。十一日の参院本会議で可決、成立する見通しだ。

 同法は一九五八年の成立以来、五年ごとの延長が繰り返されており、今年五月十六日が失効期限だった。時限立法で始まった法律としては、異例の五十五年間の有効期限を保つことになる。

 政府は、基地従業員の地位が依然として不安定で、在日米軍最終報告でも在沖米海兵隊八千人のグアム移転などで大規模な失業が想定されるため、支援策が引き続き必要と判断した。

 しかし、米軍再編に伴う具体的な影響が明らかになっていないことから、今回は現行法の期限だけを単純延長している。

 同法の再就職支援策の柱は(1)離職者への就職指導票交付と公共職業安定所(ハローワーク)などでの就職指導(2)再就職支援のための給付金支給(3)職業訓練援助―などとなっている。

 この日の厚労委員会の審議で、厚労省の太田俊明職業安定局長は「沖縄の厳しい雇用情勢の中で、駐留軍関係離職者が発生すると、再就職が困難な状況になる」と指摘。その上で、「法律に基づく支援をきめ細かく実施し、再就職の促進を図っていきたい」と述べ、県内雇用への影響回避に努力する考えを強調した。

 また、防衛省の伊藤盛夫地方協力局次長は「訓練種目の在り方を検討していく」との意向を示した。島尻安伊子氏(自民)に答弁した。

 同法をめぐっては、県議会や市町村議会などが深刻な県内雇用情勢を踏まえ、延長を求める意見書を相次いで可決していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_01.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 2面

普天間飛行場 危険性除去策 再検討を表明

町村氏「県とともに」

 【東京】町村信孝官房長官は十日の定例会見で、九日にあった普天間移設協議会で示された普天間飛行場の危険性除去を再検討する政府方針について、「県から具体的提案があれば一緒に検討したい」と述べ、追加的な対策を県とともに考えていく意向をあらためて表明した。

 町村長官は、移設の早期完了が「最大の危険性除去であることは間違いない」とした上で、「それには数年かかるので、その間の対策として追加的にあり得るか、お互いに考える」とした。

 同飛行場の危険性除去については日米で合意し、実施中もしくは実施準備段階だとも説明。米側との調整は「具体的提案があれば必要になるが、まだ具体的な対策は示されていない。必要があれば、今後行う」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_03.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 2面

犯給法適用なお1件/米軍犯罪の県内被害者

過去7年も事例なし

 【東京】故意の犯罪によって死亡した遺族や重傷害を受けた被害者に対して適用される「犯罪被害者等給付金支給法」が、一九八一年の施行以来、米軍関係者による犯罪では県内の一件にしか適用されていないことが、十日分かった。参院内閣委員会で、糸数慶子氏(無所属)の質問に米村敏朗官房長が明らかにした。

 二〇〇一年四月五日の同委員会で、警察庁の石川重明官房長(当時)がこの一件の事例を明らかにしていたが、それ以降の七年間でも適用例がなかった。

 当時の答弁によると、一九九一年六月に、沖縄市内の公園で日本人男性(当時三十四歳)が、三人の米軍人らによってナイフで首などを刺され死亡。九三年に県公安委員会が裁定を行い、遺族に給付金が支払われた。

 一方、防衛省の地引良幸地方協力局長は、米軍人による事件・事故に関し、日米間で見解が分かれ、被害者への補償が困難となった場合に政府が救済する「見舞金制度」が適用されたのは、二〇〇五年からの三年間で全国で九件であることも明らかにした。防衛省によると、このうち三件は県内。

 糸数氏は「公務外の事件・事故だけで、〇六年は全国で千三百五十六件、沖縄で八百五十件も発生している。被害者がなんら救済されておらず、泣き寝入りするしかない実態がある」と述べ、救済拡充を訴えた。

 この日の同委員会は、これまで医療費の自己負担分だけを支給していた被害者給付金に休業補償分を加算することなどを盛り込んだ「犯罪被害者等給付金支給法」の改正案を全会一致で可決した。十一日の参院本会議でも可決し、成立する見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_04.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 27面

65人で政府要請/3・23実行委

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会(玉寄哲永委員長)は十日、那覇市の県教育会館で第五回幹事会を開き、十四、十五の両日に上京する要請団に東門美津子沖縄市長ら五市町村長を含む六十五人が参加することを明らかにした。

 福田康夫首相や高村正彦外相らに面会を求め、三月の県民大会で採択された日米地位協定の抜本改正などを訴える。

 県民大会は三月二十三日に北谷町などで開かれ、約六千人が参加。地位協定の改正や、米軍人への厳しい綱紀粛正と実効性ある再発防止策など四項目の大会決議を採択した。

 要請団は東門沖縄市長ほか、野国昌春北谷町、新垣清徳中城村、新垣邦男北中城村、島袋義久大宜味村の各町村長と読谷村副村長が参加。さらに県議六人、市町村議会の議長、副議長五人、実行委の構成団体の代表らが上京する。

 閣僚や主要政党、在日米大使らを訪問して決議文を提出するほか、十四日夕に東京で集会を開き、問題を広く訴えるという。

 玉寄実行委員長は「県民大会の後も米軍関係者による犯罪が続いており、県民の怒りが要請団の規模を大きくした。米国に都合のいい地位協定の存在が犯罪の背景にあるのは明らかであり、現実に目を向けるよう首相らに強く訴えたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_05.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 1面

2海兵隊員、米軍が拘束/タクシー強盗か

 二〇〇六年に沖縄市内で起きたタクシー強盗事件で、犯行にかかわった疑いがあるとして、米軍が在沖米海兵隊員二人の身柄を拘束していることが十一日、関係者の話で分かった。県警は来週にも強盗致傷容疑で二人を書類送検するとみられる。二人の身柄は起訴後、日本側に引き渡される見通し。

 県警は現在、米側の捜査協力を得て事情聴取などを進めており、容疑が固まり次第、海兵隊員らを書類送検する方針。逮捕状は取らないとみられる。

 事件は、〇六年七月に同市中央一丁目の市道で発生したものとみられている。外国人の男二人組が車内で男性運転手を羽交い締めにし、売上金など現金数万円を奪ったとされる。米海軍捜査局(NCIS)は懸賞金を出して容疑者特定に結び付く情報を求めていた。

 沖縄市内では今年一月と三月にもタクシー乗務員への強盗致傷事件が発生。三月の事件では、沖縄署が米兵家族の少年四人をすでに逮捕、米軍の監視下にある憲兵隊員一人についても近く書類送検するとみられている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_02.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 1面

米軍機、鳥島訓練水域外に演習弾

 米海兵隊のAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が十日午後二時四十五分ごろ、鳥島射爆撃場をターゲットにした訓練の際、提供水域から約二・七キロ離れた水域に演習弾二発を投下していたことが十一日、分かった。

 在沖米海兵隊外交政策部(G5)が、十日午後四時四十分ごろ沖縄防衛局に連絡していた。同局は詳細を米軍に照会中。詳しい投下地点や所属部隊などは明らかになっていない。

 嘉手納基地で米軍機の活動を監視している住民によると、同基地には約一カ月前から六機程度のAV8ハリアー機が飛来。実弾や訓練弾を装着して飛行訓練を繰り返していたという。十日午後二時ごろにも、同機が同基地を離陸するのが確認されている。

 平良朝幸久米島町長は「住民生活を脅かす行為だ。どういう部隊がどのような訓練をしているか知らされていないことも問題。漁協とともに抗議していきたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_03.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 7面

全脱走兵 日本に通報/日米合同委、来週合意

 【東京】日米両政府は十日、在日米軍に所属する米兵が「脱走兵」と米側に認定された場合、すべてのケースで日本側の関係自治体警察に通報・逮捕要請することで基本合意した。窓口設置や通報体制の在り方を調整、来週中に日米合同委員会で正式合意する。

 高村正彦外相が十一日午前の閣議後会見で明らかにした。

 日米地位協定では、脱走兵を日本側に通報する義務はない。米側が日本側に捜査を要請した場合、日米地位協定の実施に伴う刑事特別法で日本の警察が米兵を(米軍法の)脱走容疑などで逮捕は可能だったが、実態把握が困難だった。

 横須賀市のタクシー運転手強盗殺害事件で逮捕された米兵が脱走兵だったにもかかわらず、事件前の日本側への通知はなかった。

 地元自治体などが迅速な通報体制確立を求めていた。両政府が地位協定の運用改善で対応する。

 外務省によると、米軍の脱走兵の認定基準は、無許可欠勤者の場合、三十日間経過すれば、脱走兵と認定されるという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_04.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 6面

普天間飛行場 危険除去へ研究会/知事、庁内設置を指示

 仲井真弘多知事は十一日午前、普天間飛行場の危険性除去策について検討する研究会を庁内に設置するよう指示した。基地対策課を中心に約十人で近く発足する見通し。定例会見で明らかにした。

 九日に開かれた普天間飛行場の移設協議会で、政府は危険性除去の取り組みを再検討する方針を示したが、町村信孝官房長官は十日の定例会見で「県からの具体的提案があれば一緒に検討したい」と県の参加を促していた。

 仲井真知事は「本来は防衛省がやる話で、県は要求していくだけで十分。(官房長官発言は)後退していると思うが、われわれも勉強会をつくろうと思い、担当課長に指示した」と述べた。

 メンバーは県庁の担当者らで構成。ヘリコプターの運用や訓練などについて、外部の専門家の意見聴取も検討していく。

 揮発油税にかかる復帰特例が失効したことについては二〇一一年度までの特例措置継続を要請していく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_05.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 1面

漁場に爆弾2発投下/米軍ハリアー、訓練中

500ポンド弾/鳥島射爆撃場外に

 米海兵隊のAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が鳥島射爆撃場(久米島町)で訓練中、提供水域外に五百ポンド(約二百二十七キロ)爆弾二発を投下していたことが十一日、分かった。沖縄タイムス社の取材に対し、在沖米海兵隊報道部が明らかにした。

 同報道部によると、AV8ハリアーが提供水域に到達する手前で、爆弾二発を投下。海中に沈み、「爆発する兆候は見られない」と説明している。第十一管区海上保安本部は付近の航行を避けるよう呼び掛けているが、これまで被害は報告されていない。

 米軍は事故発生時間について、当初沖縄防衛局に伝えた十日午後二時四十五分ごろから、九日に訂正した。

 防衛省によると、投下地点は鳥島中央から南西約十一・六キロ地点で、射爆撃場の提供水域境界から約六キロの地点。

 在沖米海兵隊報道部は沖縄タイムスに対し「所属部隊や航路、訓練計画については運用上の安全確保のため、明らかにできない」と説明。原因は調査中としてる。

 平良朝幸久米島町長は「住民生活を脅かす行為だ。どういう部隊がどのような訓練をしているか知らされていないことも問題。漁協とともに抗議していきたい」と米軍を批判した。

 県基地対策課の又吉進課長は十一日までに口頭で、G5と沖縄防衛局、外務省沖縄事務所に対して原因究明と再発防止、安全管理を求めた。


[ことば]

 鳥島射爆撃場 久米島の北約28キロに位置し、島全体が演習場。戦後米軍が使用を開始し、復帰後は提供施設・区域として米空軍が管理する空対地射爆撃場となっている。周辺海域は好漁場で、時期によって区域を最大限利用できるよう現地段階で使用の調整を行うことが認められている。1995年12月から96年1月にかけて、劣化ウラン弾1520発が誤射された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_01.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 29面

「怖くて漁できぬ」/不安募る久米島住民

 【久米島】「事故があってからでは遅い」「生活が脅かされる」。米海兵隊のハリアー機が鳥島射爆撃場の提供水域外に五百ポンド(約二百二十七キロ)の爆弾を投下した問題で、町民からは、憤りと不安の声が上がっている。同射爆撃場をめぐってはこれまでも問題が多発しているだけに、町当局は十一日、緊急に対応を協議。週明けに召集予定の町議会や町漁協とともに抗議活動を行う方針を固めた。

 鳥島の射爆撃場をめぐっては、米海兵隊による劣化ウラン弾の誤射、漁船の操業妨害など問題化した事案が多発している。二〇〇六年には町と漁協が関係省庁に対し、鳥島と久米島射爆撃場の返還を求める要請活動を行っている。

 鳥島周辺は、県内有数の漁場とされているだけに、久米島漁業協同組合の棚原哲也組合長は「事故が起きてからでは手遅れだ」と憤りを隠さない。

 周辺には漁協などが設置したパヤオ(浮き漁礁)などがあり、周辺海域を操業する漁船は多いという。棚原組合長は「提供水域外でも、安心して漁ができないとは…。漁業者は怖くて近づけない」と話した。

 久米島町が沖縄防衛局から爆弾誤投下の一報を受けたのは、十日午後六時前。防衛局からは「実弾かどうかは不明で日時、正確な場所も不明。米軍に照会中」との説明があったという。

 町は「一歩間違えば人命にかかわる。危険な事故で、憤りを感じる」とし、住民の安全を守る立場から、抗議行動を展開することを十一日中に確認した。

 観光客も多く訪れる久米島の名所「比屋定バンタ」の展望台からは同射爆撃場が晴れた日には肉眼で確認できる。

 「夜に鳥島から“ピカッ”と赤い光を見たことがある」と話す松堂美香さん(18)=久米島高三年=は訓練の影響とみられる振動で窓ガラスが揺れ、就寝中に起こされた経験もある。「今までも怖い思いをした。不安は皆感じていると思う」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_02.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 1・2面

普天間飛行場 埋文7割 試掘できず/返還合意からきょう12年

 【宜野湾】日米の返還合意から十二日で十二年を迎える米軍普天間飛行場で、宜野湾市が行う埋蔵文化財調査の試掘ポイントが計五千百カ所に上り、そのうち約七割は未着手であることが十一日までに分かった。今年三月までに試掘を終えた千七百カ所からは八十二の埋蔵文化財が確認されており、専門家は「未着手部分からはさらに重要な文化財が発見される可能性がある」と指摘。市は「文化財の分布状況も分からないままでは青写真の線すら引けない」と跡地利用の遅延を懸念している。

 飛行場内の文化財調査は二〇〇一年から、宜野湾市と県が共同で、文化庁の補助を受けて実施。飛行場全体(約四百八十ヘクタール)に縦、横三十メートルごとにポイントを設け、五千百カ所を試掘の対象とした。米軍は、滑走路や兵舎など使用中の施設以外の緑地帯などでの調査を認めている。

 これまでの調査で、縄文時代(紀元前三五〇〇年ごろ)の大山富盛原遺跡、グスク時代(西暦一〇〇〇年ごろ)の野嵩タマタ原遺跡など、さまざまな年代の文化財が発見された。

 一方、滑走路など米軍が使用中の施設に設定された三千四百カ所は返還後にしか試掘できない。市は今後、これまでの試掘で確認された遺跡の範囲確認調査を続ける方針だ。

 文化財に詳しい琉球大学の池田榮史教授(考古学)は、未着手の部分が飛行場建設前は谷間だったことから、「谷間は水源があり、人が集まりやすい場所。調査しないと分からないが、貴重な文化財が眠っている可能性はある」と指摘する。

 跡地利用について市は〇六年に県と基本方針を定め、返還の四年前までに具体的な跡地利用計画の策定を予定。しかし、返還が実現し、計画策定後に新たな文化財が見つかれば変更を余儀なくされる。

 池田教授は「跡地利用をスムーズに進めるためにも、地権者に対して、早い段階で文化財保護の意義について理解してもらう必要がある」と話している。(銘苅一哲)


     ◇     ◇     ◇     

[解説]/跡地活用 遅れ懸念


 宜野湾市が普天間飛行場の埋蔵文化財の試掘を急ぐ背景には、文化財調査が跡地利用計画に大きな影響を及ぼしてきた過去の「教訓」がある。調査対象の七割に当たる未着手部分は重要文化財が発掘される可能性があり、跡地利用の大幅な遅れを懸念している。SACO(日米特別行動委員会)合意から十二年が経過しても返還スケジュールすら明らかにされない状況の下、市は「打つ手なし」の状態に置かれている。(中部支社・銘苅一哲)

 軍基地の跡地利用が抱える課題は大きく分けて三点が挙げられる。(1)地権者の合意形成(2)文化財の有無(3)土壌汚染などの環境問題―だ。このうち、文化財調査はこれまで返還後にしか実施されず、新たに文化財が発掘された場合、自治体は跡地利用計画を練り直さなければならなかった。

 例えば、牧港住宅地区が返還された那覇市新都心は大規模な古墓群、キャンプ桑江北側が返された北谷町では伊礼原C遺跡が発見され、両自治体とも跡地利用計画を変更した。

 宜野湾市は各地の事例を踏まえ、予想される跡地利用の遅延に先手を打つ形で返還前の調査を計画。文化財保護法では、土地の開発行為が伴わなければ文化財調査は行えないが、文化庁は約四百八十ヘクタールという大規模な返還を控える市の調査を特例で認めた。

 米軍は立ち入り調査を許可したが、滑走路など使用部分の調査は返還を待たざるを得ない。市の跡地利用担当部署からは「返還時期が分からないままでは、対応策を立てるのも難しい」との声が上がっており、日米両政府には早急な返還時期の明示が求められる。


国外移設 強く要求/宜野湾市長声明


 【宜野湾】SACO(日米特別行動委員会)で米軍普天間飛行場の返還が合意されてから満十二年を翌日に控えた十一日、宜野湾市の伊波洋一市長は同市役所で会見し、「爆音と墜落の恐怖におびえる市民生活の打開を目指し、普天間飛行場の閉鎖、全面返還に向けて全力で取り組む」と日米両政府に対し、同飛行場の国外移設を強く求める声明を発表した。

 伊波市長は、市街地上空での飛行を避けるために検討されたヘリコプターの場周経路について、日米が合意した二〇〇七年以降も市街地上空での訓練を繰り返していることを指摘。「米軍が定めたマスタープランでは、障害物などがあってはならないクリアゾーン内に、普天間第二小学校など公共施設や住宅が存在しており、放置できるものではない」と訴えた。

 二〇〇八年は市が策定した第二次返還アクションプログラムの最終年度に当たることから、「米軍が自ら定めた基準が守られていない。日本政府への働き掛けと同時に、米政府に閉鎖を求めていきたい」と今後の活動方針を示した。

 また、県が設置を検討している危険性除去の研究会への対応については「市からも情報を提供していく。県内移設問題と危険性除去を切り離して取り組んでほしい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_03.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 28面

「集団自決」訴訟報告会

 三月にあった「集団自決」訴訟の大阪地裁判決の報告集会が十一日、那覇市古島の教育福祉会館で開かれた。

 被告・岩波書店側の証人だった宮城晴美さんは被告側の全面勝訴に、「頑張って証言した島の住民たちの体験談を『具体性、迫真性を有する』とした判決に非常に励まされた」と振り返った。

 同訴訟は、沖縄戦時に座間味、渡嘉敷両島に駐屯した旧日本軍の元戦隊長らが「沖縄ノート」などの本に自決命令を出したと書かれ、名誉を傷つけられたと主張。作家の大江健三郎さんと岩波書店に出版の差し止めなどを求めていた。

 宮城さんは、判決までの時間を「糸が切れそうなくらい張り詰めていた」と述懐。原告側が命令を否定する根拠とした自著「母の遺したもの」での母親の証言部分などについて、「判決は原告側の主張を一切採用していない」と評価した。

 平和ネットワーク会員の仲山忠克弁護士は、「丁寧に沖縄戦の実相に踏み込んだ」と判決内容を解説。「訴訟の真の当事者は旧日本軍と『集団自決(集団強制死)』の犠牲者だという視点に立つことが重要」と指摘し、命令の伝達経路の立証などを控訴審へ向けた課題に挙げた。

 集会は「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の主催で、約五十人が参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_05.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 2面

普天間移設に知事不満/WWFジャパン会長に吐露

 仲井真弘多知事は十一日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設について「納得がいかない部分がまだ残っている」と述べ、県が求めている沖合移動などの要望が実現していない現状に不満を示した。県庁を訪れたWWFジャパンの徳川恒孝会長らに述べた。

 徳川会長は九日に来県し、新石垣空港建設予定地や普天間飛行場移設先の大浦湾、泡瀬干潟など貴重な自然環境が残る開発予定地を相次いで視察。「沖縄の自然と生態系は本当に貴重だ。ぜひ守ってほしい」と述べ、環境に配慮して工事を進めるよう求めた。

 仲井真知事は「県環境影響評価審査会に伝えたい」とした上で、「特に辺野古は難しい部分がある」と普天間移設に自ら言及。徳川会長に「東京で日米両政府に『現地の意見をよく聞きなさい』と言ってください」と“逆要望”した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_06.html

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