地位協定の抜本改正求め要請団50人が上京 米憲兵、万引少年連れ帰る、沖縄署の捜査要請応じずなど  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報社説(4月13日から16日)

2008年4月13日(日) 朝刊 2面

環境視点に被害検証/米軍基地国際シンポ

 「環境」を中心とした米軍基地問題について、沖縄と日本(神奈川)、韓国の市民団体が意見交換する「米軍基地環境調査研究国際シンポジウム」(主催・同実行委)が十二日、宜野湾市の沖縄国際大学で開かれた。軍事活動から生じる自然破壊、環境汚染、事件・事故を、各地で活動する市民や専門家が報告。不平等な地位協定の改定や基地撤去に向け、国際的連携の重要性を確認した。百二十人が参加した。実行委はシンポの内容を意見集約し、十四日に東京の参院議員会館で記者会見を行う。

ジュゴン訴訟


 米国ジュゴン訴訟弁護団の加藤裕弁護士は、名護市辺野古への普天間代替施設建設問題で、米国防総省が米国の国家歴史保存法に違反していると認定したサンフランシスコ連邦地裁判決について報告した。

 米政府が同法に基づくジュゴン保護への「配慮」が示されるまで訴訟が継続される点を強調。今月中に提出される米政府の報告書(「配慮」のために必要な情報開示)と、対する原告側の反論について、裁判所が監督していくことを説明した。

 その上で、「真に『配慮』が行われるなら、基地建設はできないはずだ」と指摘。「米政府が出す情報をしっかり検証し、反論する必要がある」と述べた。

 判決の意義については、海外駐留の米軍に同法が初めて適用され、基地建設阻止へ展望を開いたこと、世界中の同様な環境問題における先例的役割を果たしたことを挙げ、グローバルな連携が重要だと訴えた。


普天間飛行場


 伊波洋一宜野湾市長は、SACO(日米行動特別委員会)で全面返還が合意されて十二年目を迎えた現在も、普天間飛行場周辺の危険性除去が放置された現状を説明。「米国内では基地周辺の土地利用を制限する『航空施設整合利用ゾーンプログラム(AICUZ)』を米軍が自ら設け、地域の安全を保障している」として、同飛行場の異常性を強調した。

 また、在日米軍施設に対し政府が策定している日本環境管理基準で騒音などの項目が空白にされていることを挙げ、「政府はAICUZが米国連邦法でないため普天間飛行場には適用されないとし、騒音項目を除外した」と指摘。政府に環境管理基準の見直しと、米国防総省などに安全基準問題を放置している実態の是正を求める考えを示した。


神奈川


 神奈川県からは、米海軍と自衛隊の共同使用で騒音問題に悩まされる厚木基地、原潜の冷却水やアスベストなど有害廃棄物による環境汚染問題を抱える横須賀基地、相模補給廠の周辺住民が、それぞれの現状や課題を報告した。

 厚木基地爆音防止期成同盟副委員長の金子豊貴男相模原市議は「二〇〇六年に在日米軍再編が合意されて以降、日米の軍事一体化が進んでいる」と指摘した。


韓国


 韓国側からも、米軍による環境問題について報告が相次いだ。

 「我が土地米軍基地取戻し群山市民の会」のユン・チョルスさんは、米空軍群山基地の燃料タンクの老朽化で油が流出し、川や農地が汚染されていると発表。平澤平和センターのカン・サンウォンさんは、空軍基地がある平澤市で騒音被害訴訟の原告が六百七十七人に拡大したことを報告した。グリーンコリアのソ・ヂェチョルさんは、米韓が二〇〇六年、汚染を除去しないまま二十三カ所の基地を強引に返還合意した経緯を説明した。


県内

鉛・枯れ葉剤が島汚染


 沖縄環境ネットワーク世話人の真喜志好一さんは、米軍が一九六〇年代から名護市辺野古崎付近に海上基地を検討していたことを示す米側資料を披露し、「米軍の本当の目的は新たな基地の建設。普天間基地の移設は、新基地を造る口実にされた」と解説した。

 同ネットワークの内海正三さんは、キャンプ・コートニー(うるま市)海岸のクレー射撃による鉛汚染の問題を報告。日本政府が付近で採れるヒジキなどについて十分な調査を行わなかったことを批判した。

 琉球諸島を世界自然遺産にする連絡会の伊波義安さんは、米軍が六一―六二年、北部訓練場(国頭村、東村)で猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を散布していた事実が二〇〇七年に情報公開で判明するまで公表されなかったことを挙げ、「米軍基地内で何が行われているか、県民は全く知らされない」と憤った。

 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の本永貴子さんは「政府が政治判断で米軍基地を受け入れるなら、米兵による犯罪に責任を持つのは当然だ」と述べた。


代表者コメント


 桜井国俊 実行委共同代表(沖縄大学学長) 地位協定を改定し、米軍活動に環境義務を課す国際法を作るため、国際的連携が必要だ。

 佐藤学 実行委共同代表(沖縄国際大教授) 沖縄と韓国が共闘することで問題が見えてきた。それを確認できたことに意義がある。

 ムン・ジョンヒョン 韓国団長(神父) 米軍が引き起こす問題は沖縄も韓国も全く同じ。今こそ私たちの連帯が始まった。共に闘いを続けよう。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804131300_01.html

 

琉球新報 社説

実弾誤投下 原因を速やかに連絡せよ2008年4月13日

 沖縄では陸も空も、そして海上でも軍事演習で終日、きな臭さが漂っているのか。しかも、訓練区域外にも模擬弾ではなく実弾が降ってくるなど、まるで戦場と言っていい。

 9日午後、米海兵隊のハリアー戦闘攻撃機が、久米島北方の鳥島射爆撃場近くの海上に250キロ爆弾2発を誤投下していた。場所は訓練海域から5・5キロも離れている。いったい、どういう訓練をすれば、それほどの誤差がでるのだろうか。その上、久米島の住民地域からは20キロも離れてはいないのだ。文字通り、一歩間違えば大惨事という状況だったといえる。

 島の住民らからは「誤って投下したでは済まない。あんな爆弾が島に落ちたら大変だ。殺傷能力の高いクラスター爆弾だったらどうするんだ」と怒りの声が上がっているが、当然だろう。久米島の北側では訓練による米軍機の爆音が聞こえ、鳥島に命中した閃光(せんこう)や煙が見えるという。住民は日ごろから不安を感じているといい、今回の事故でその感を一層強くしているのではないか。

 鳥島周辺は豊かな漁場で近海を航行する漁船も多い。爆弾の落ちた島の南側には久米島漁業協同組合が設置するパヤオ(魚礁)もあり、パヤオ漁やセーイカ漁が盛んに行われている。海兵隊報道部は「漁船は確認されなかった。爆弾はすぐに沈み水面に浮いてくる危険性はない。実弾だが爆発した兆候はなかった」としているが、理解に苦しむ。これでは漁船が見えなかったので(誤投下しても問題ない)と聞こえる。誤投下したが幸いにも漁船がいなかっただけ、ということではないか。さらに言えば爆発しなければ問題ない、という意味にもとれ、米軍の危機管理能力を疑わざるを得ない。

 一方、あらためて指摘したいのは事件・事故が起きた際の、米軍による日本側への連絡体制の不備だ。今回、米軍側から連絡があったのは事故から丸1日もたった10日夕。しかも一報は、事故は10日午後の発生で、実弾ではなくて模擬弾との内容だった。米側は「報告や確認作業で時間を要した」と弁明しているが、にわかには信じられない。ここには、住民の不安に対する配慮がみじんも感じられない。また、実弾かどうか確認するのに、こうも時間を要するのだろうか。何と悠長な軍隊なのだろう。いざという時、役に立つのかと余計な心配もしたくなる。

 実害がなかったから連絡も遅れた、というような言い訳は通用しない。提供施設外に250キロ爆弾が投下され、不発状態にあるということは事実だ。これだけでも米軍の責任は重い。不発弾ならば予期せぬ事故が起こる可能性も否定できない。再発を防ぐためにも、事故原因を徹底的に調査し、速やかに日本側に知らせるべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-131096-storytopic-11.html

 

2008年4月14日(月) 朝刊 1面

伊江島飛行場から粉塵/米軍機訓練で恒常化

農作物・健康被害を懸念

 【伊江】米軍伊江島補助飛行場で行われている航空機の離着陸訓練で恒常的に粉塵が飛散し、農作物や洗濯物に付着するなど、住民生活に悪影響が出ている。住民からは農作物にとどまらず健康被害を心配する声も上がるが、米軍や国から抜本的な予防対策は示されていない。(新垣晃視)

 同飛行場は、野戦訓練のためアスファルトで舗装されず、コーラルが敷かれている。北風が吹く日に米軍機が離陸すると、コーラルの粉塵は飛行場南側にある黙認耕作地や、民間地の住宅に広く飛散する。村によると、強風の時は二キロ先まで飛ぶという。

 同村の特産物である葉タバコやキクに付着すると、葉や花びらの粉塵を丁寧に水で洗い流さなければならず、農家の負担は大きい。

 西崎区の照屋徳治区長は「需要が減っている葉タバコは、買い取りの品質基準が厳しくなっており、(粉塵により)出荷できなくなる恐れがある。米軍には何度も対策を求めたが、抜本的な解決には至っていない」と話す。洗濯物への付着や、農業用雨水タンクへの混入などによる健康被害の懸念もある。

 十年ほど前に、地元の要請によって民間地に近い滑走路南側が幅五十メートル、長さ三十五メートルにわたりアスファルト舗装されたが、全長二千百メートルの一部分にとどまっている。

 昨年十月十八日には、米軍機の離陸後、雲のような粉塵が黙認耕作地や民家に広がる大規模な粉塵飛散があり、農家は畑仕事の中断を余儀なくされた。米軍は滑走路に水をまいてローラーを掛ける処置を行ったが、抜本的解決には至っていない。地元住民は、葉タバコやキクの栽培時期である春から初夏にかけて、同規模の飛散が起きないか懸念している。

 大城勝正村長は「粉塵飛散は憂慮される問題。今後も起きることがあれば、コールタールを敷くなどの抜本的対策を強く求めたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804141300_01.html

 

2008年4月14日(月) 朝刊 19面

高濃度有害物質を検出/本島のテラピア・ボラ

 沖縄本島に生息するテラピアやボラに、殺虫剤DDTや、生物に有害な化学物質PCB(ポリ塩化ビフェニール)などが高濃度で蓄積されていることが十三日までに分かった。愛媛大学沿岸環境科学研究センターの田辺信介教授らの研究チームと琉球大学熱帯生物圏研究センターの中村將教授が二〇〇五―〇七年に南西諸島で実施した、有害化学物質調査を通して明らかになった。

 研究対象が食用魚ではないことや、DDTやPCBについては、人間が食べて影響が出る「耐容平均残留濃度」を下回っていることから、人体に深刻な影響が出る可能性は低いという。

 調査は、石垣市のアンパル干潟、漫湖(那覇市)、嘉手納町の比謝川、恩納村の志嘉座川など六カ所で採取した魚介類の体内に蓄積された化学物質の濃度を測定した。

 その結果、最も高いところで、DDTは漫湖のテラピア一グラム当たり〇・一〇五マイクログラム、PCBは漫湖のボラ同〇・〇九三マイクログラム、シロアリ駆除剤のクロルデンは比謝川のテラピア同〇・〇九五マイクログラムをそれぞれ検出。いずれも石垣島のサンプルの数十倍から数百倍の値になった。

 国内最高レベルの残留濃度を示したクロルデンについては、本島内で一九七〇年代に大量使用されていたことを指摘。また、比謝川は流域の大半を米軍基地が占めることや、かつて基地内でDDTなどが使われていたことから、基地活動の影響も考えられるとした。

 中村教授は「物質として安定しているので、自然界で分解されない。魚を食べる鳥など、高次の生物にも有害物質が蓄積されている可能性がある」と懸念。また、南西諸島の生態系について、「今後は中国など、東シナ海沿岸諸国の人間活動の影響も考えられる。国や県が主体となり、今のうちに総合的に調査しておくことが必要だ」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804141300_04.html

 

2008年4月14日(月) 朝刊 3面

高木連合会長、米労組と討議意向/地位協定改定

 【横浜】連合の高木剛会長は十三日、横浜市内で主催した「日米地位協定の抜本改定を求める連合中央集会」に出席し、米国の労働組合の全国組織である米労働総同盟産別会議(AFL・CIO)との次回定期協議で、日米地位協定改定をテーマに討議する考えを明らかにした。日米地位協定の改定には米国の承認も必要であることから、米国内での世論の盛り上がりを促したい意向だ。

 パネルディスカッションで発言した高木氏は個人的見解と断りつつ、「米国対策をやらないと、この問題はなかなか解けない。次の定期協議で討議をする素材として乗せられないか」と提案に意欲を示した。

 高木氏のほか、国民新党・社民党と地位協定改定案(三党案)をまとめた民主党の武正公一衆院議員,連合沖縄の仲村信正会長が討論。武正氏は「昨年の参院選挙で与野党が逆転した国会状況をプラスに働かせられるよう、三党案がまとまったことを契機に超党派の動きを進めたい」と述べた。仲村氏は「国民全体の問題であって沖縄だけの問題ではない」と述べ、全国への広がりに期待を込めた。

 松沢成文神奈川県知事は、地位協定改定に消極的な政府の姿勢を問題視しつつ、「ベターを求めて一つ一つ解決していかなければいけない。改定せずにできるものも同時提案することが必要」と指摘。その上で(1)環境問題の特別協定締結(2)日米合同委の中に自治体も参加できる「地域特別委員会」設置―を提案した。

 連合は同集会で、日米地位協定の抜本改定、徹底した綱紀粛正と人権教育を含む再発防止策などを求める決議を採択した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804141300_09.html

 

2008年4月14日(月) 朝刊 19面

嘉手納基地周辺の騒音減/滑走路工事・飛行停止で

 【嘉手納】嘉手納町が米軍嘉手納基地周辺三地点で実施している騒音測定の二〇〇七年度調査について、多くの人が不快に感じる七〇デシベル以上の騒音発生回数は三地点ともに前年度に比べ減少した。同町が十一日、公表した。住宅地に近い同基地北側滑走路の改修工事で離発着がなかったことと主力戦闘機F15の飛行停止が原因とみられる。

 嘉手納町屋良の騒音発生回数は三万二千五百四十九回(前年度三万八千七百三十一回)で16%、同町嘉手納は一万八千七百八十六回(同二万千三百十五回)で11・9%、同町兼久は一万六千七百七十九回(同一万八千二百四回)で7・8%それぞれ減少した。

 深夜、早朝(午後十時から翌午前六時)の騒音発生回数は、同町嘉手納地区で二千百九十四回で前年度に比べ三百八十一回増加。そのほかの二地区は減少した。

 滑走路の改修工事は昨年一月から十一月まで実施、同期間は同滑走路での航空機の離着陸は行われなかった。F15は昨年十一月から〇八年一月まで、限定的に再開した数日を除き、約二カ月間飛行を停止していた。

 同町は「滑走路の改修工事、F15の飛行停止が減少の主原因で、F15の本土訓練移転が騒音発生回数の減少につながったとはいえない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804141300_10.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年4月14日朝刊)

[米軍の事件事故]

仕組みを見直すときだ


 米軍による事件・事故が後を絶たない。何度、抗議を重ねても、何回、再発防止を申し入れても、防止効果が感じられないほど次から次に、事件・事故が起こる。

 米海兵隊の垂直離着陸攻撃機AV8ハリアーが久米島町の鳥島射爆撃場で、訓練中、五百ポンド(約二百二十七キロ)二発を提供水域外に投下していたことが十一日、分かった。沖縄市で三月に起きたタクシー強盗致傷事件は、その後の県警の調べで、現職の米憲兵隊員が犯行への関与を認める供述をしているという。事実だとすれば、由々しいことだ。

 日米両政府が事件・事故の発生に対して、何も対応してこなかった、というわけではない。旧那覇防衛施設局などは復帰後、職員が悲鳴を上げるほど連日、事件・事故の処理に追われた。再発防止策もその都度、打ち出している。

それなのに、一向に改善の実感がもてないのをどう解釈すべきなのか。そこが問題だ。

 各省庁の無駄遣いや、既得権にしがみついた省益主義が今、厳しい批判にさらされている。だが、こと在日米軍問題に関しては、安保既得権まで踏み込んだ議論が乏しい。日米同盟への影響を気にするあまり、聖域化してしまっているのである。

 「基地問題は沖縄など一部基地所在地域の問題」だという認識が政府の中に抜き難く存在するのではないだろうか。現状の仕組みを前提として再発防止策を講じるのではなく、仕組みそのものを見直す時だと思う。

 安保の運用をめぐる仕組みの、どの部分を改善すればいいのか。

 第一に指摘したいのは日米合同委員会の在り方である。渉外知事会(会長・松沢成文神奈川県知事)は、外務省に対し、日米合同委員会の中に自治体が参加する「地域特別委員会」のような協議機関を新設するよう求めた。

 現行の制度には、住民代表が住民の立場に立って直接、意見を述べる場がない。合同委員会で決定した事項の情報開示についても、依然として十分とはいえない。

 日米行政協定は旧日米安保条約に合わせて一九五二年に締結された。しかし、同協定を引き継いだ現在の日米地位協定体制は、さまざまな面で、現実にそぐわなくなっている。

 在日米軍がらみの話を外務省や防衛省の独占物にしてはならない。もはやそのような時代ではないのであって、住民生活に深くかかわる事案については、住民の声が直接届くような仕組みが必要である。

 事件・事故に関する情報は、米軍が義務として流しているというよりも、どちらかといえば恩恵的に流している側面が強い。AV8ハリアー機による誤投下に対し、在沖米海兵隊報道部は「所属部隊や航路、訓練計画については運用上の安全確保のため明らかにできない」と本紙の取材に答えている。

 そのような米軍側の対応をこれまで誰も不思議に思わなかった。だが、事件・事故に対する対応の仕方から改めていかないことには、実効性のある再発防止策を打ち立てるのは難しい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080414.html#no_1

 

2008年4月14日(月) 夕刊 1面

要請団50人が上京/地位協定の抜本改正求め

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会の構成団体代表らでつくる政府要請団約五十人が十四日午前、三月の県民大会で採択された日米地位協定の抜本改正などを求めるため上京した。現地合流組を含め総勢六十五人が十五日までの二日間、複数のグループに分かれ、閣僚や関係省庁、在日米大使館、主要政党本部などを訪れる。

 要請団には実行委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会会長のほか、県民大会の主催団体関係者や県議、基地を抱える沖縄市の東門美津子市長や北谷町の野国昌春町長ら市町村長、市町村議会議長らが加わる。

 十四日早朝、那覇空港であった出発式で、玉寄実行委員長は「3・23で決議した四項目を引っさげて東京行動がこれから始まる。しっかり訴えていこう」とあいさつ。副実行委員長の小渡ハル子県婦人連合会会長の音頭で参加者がガンバロー三唱し、気勢を上げた。

 一行は国会議員、全都道府県の在京事務所への要請活動も予定しているが、面会を求めている福田康夫首相ら政府閣僚との日程は確定していない。十四日夕には国会近くの星陵会館(千代田区永田町)で集会を開き、問題を広く訴える。

 出発前、玉寄実行委員長は「地位協定の運用改善では何も防げないと分かりきっている。県民がどれだけ不満に感じているかをぶつけたい」。小渡副実行委員長は「会う人たちに『米兵犯罪の被害に遭うのがあなたの子どもだったらどうしますか』と問い掛け、沖縄の母親の気持ちを伝えたい」と意気込みを語った。

 県民大会は三月二十三日に北谷町などで開かれ、約六千人が参加。地位協定の改正や、米軍人への厳しい綱紀粛正と実効性ある再発防止策など四項目の大会決議を採択した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804141700_02.html

 

2008年4月14日(月) 夕刊 1面

久米島議会、抗議決議へ/米軍機爆弾投下

 【久米島】米海兵隊のAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が鳥島射爆撃場で訓練中、提供水域外に五百ポンド(約二百二十七キロ)爆弾二発を投下した問題で、久米島町議会(山里昌輝議長)は十四日午前、議会運営委員会(宮田勇委員長)を開いた。

 議運委では、事故の再発防止と原因の徹底究明、米軍基地の整理・縮小、海兵隊を含む兵力の削減などを求める抗議決議案と、意見書案を同日午後四時から開く臨時議会に上程することを決めた。

 臨時議会では、両案とも全会一致で可決される見通し。

 一方、久米島町(平良朝幸町長)は町議会などと歩調を合わせ、関係機関に抗議するための準備を進めている。

 事故は九日に発生。防衛省や同町によると、ハリアー機が爆弾を投下した地点は鳥島中央から南西約一一・六キロ地点。

 射爆撃場の提供水域境界から約六キロの地点で、周辺海域は好漁場とされている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804141700_03.html

 

2008年4月15日(火) 朝刊 1面

政府、具体策言及せず/大会実行委が決議文

 【東京】「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会の構成団体代表らでつくる要請団は十四日、首相官邸などを訪ね、日米地位協定改定や実効ある再発防止策の提示などを求め、大会決議を手渡した。応対した大野松茂官房副長官は「総理に伝える」と答えるにとどめ、具体的に言及しなかった。

 大野官房副長官に対し、玉寄哲永実行委員長は「地位協定の運用改善では限界がある。改正を提案できる条項がありながら、なぜ踏み込もうとしないのか」と政府の対応をただした。東門美津子沖縄市長も「一九九五年の事件から十三年間、政府は県民の声を受け止めていない」と批判した。

 一方、自民党の山崎拓前副総裁(党沖縄振興委員長)には、県老人クラブ連合会の知花徳盛常務理事らが会い、県民大会後も米兵が絡む事件が続いている現状を指摘した。山崎氏は「申し訳ない。県民の訴えは分かるが、地位協定の改定は難しい」と答えたという。

 小渡ハル子副実行委員長らは米国大使館を訪ね、レイモンド・グリーン安全保障政策課長に地位協定改定などを訴えた。グリーン課長は「(容疑者の身柄を)日本警察に引き渡すなどきちんとやっている」と改定の必要性を否定。綱紀粛正策についても、「隊員教育を一生懸命している」と述べたという。要請団は、沖縄等米軍基地問題議員懇談会(会長・鳩山由紀夫民主党幹事長)とも意見交換し、県内外の国会議員らに米軍被害の根絶を願う思いを訴えた。社民党の福島瑞穂党首にも決議文を手渡した。

 各国会議員事務所、全国市町村会、都内にある各都道府県事務所などにも各班に分かれて回った。十五日も外務省や防衛省、各政党などに要請を行う予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151300_01.html

 

2008年4月15日(火) 朝刊 25面

米憲兵、万引少年連れ帰る/沖縄署の捜査要請応じず

地位協定に抵触も

 【沖縄】北谷町内の衣料品店で十三日、在沖米海兵隊員の未成年の息子二人の万引を見つけ、現場で捕まえた店員が沖縄署に通報したが、同署員より先に来た米憲兵隊が少年らの身柄を拘束、捜査要請にも応じず基地内に連れ帰っていたことが十四日、分かった。同署は提供施設外での米軍捜査機関の捜査権などを定めた日米地位協定一七条十項などに抵触する可能性があるとして、十五日に米軍に文書で経緯説明を求める。

 調べでは、十三日午後三時半ごろ、北谷町美浜の衣料品店内でジーパンやTシャツ二枚の計約一万七千円相当を盗んだ十七歳の米少年一人を店員が見つけた。

さらに、バッグの中に同店系列店のTシャツ三枚を隠し持っていた別の十六歳の米少年を店外で見つけたため二人から事情を聴き、一一〇番通報した。

 その後、同署員より先に同店に着いた米憲兵隊が少年らを拘束したという。

 同署によると、現場に駆け付けた署員が事情聴取のため、少年二人の身柄引き渡しを求めたが、憲兵隊は応じず、基地内に連れ帰った。少年二人はその後、基地内で保護者に引き渡されたという。

 同署は十四日、米軍捜査機関に協力を求め、窃盗容疑で十六歳の少年から任意で事情を聴いたが、十七歳の少年については米軍の協力が得られず任意の取り調べもできていない。

 同署は店員の証言などから、ほかに共犯者がいる可能性もあるとみて、米軍に捜査協力を求めている。

 日米地位協定に詳しい新垣勉弁護士は「基地外での(逮捕権を持たない)私人による現行犯逮捕がはっきりしている場合、日本の警察にしか身柄の引き渡しはできない。憲兵隊は警察が来るまで事情聴取などはできるが、あくまで引き渡しに立ち会い、見守るのが役目だ」と説明。「憲兵隊が基地内に連れて帰ったことは問題で、日米地位協定に違反している」と指摘した。

 一方、駿河台大学の本間浩名誉教授は「日米地位協定の合意事項に現行犯逮捕の場合は米側に逮捕の優先権があると記されている。米軍が連れ帰ったことは直接法に反しないが、基地外の事件なので望ましいことではない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151300_02.html

 

2008年4月15日(火) 朝刊 25面

きょうにも書類送検/タクシー強盗の容疑憲兵

 沖縄市内で今年三月に起きたタクシー強盗事件で、沖縄署は十五日にも、米軍の監視下にある嘉手納基地所属の憲兵隊兵長(22)を強盗致傷の容疑で書類送検する方針を固めた。那覇地検が起訴した後、身柄は日本側に引き渡される見通し。

 同署は米軍の協力で事情聴取や家宅捜索などの捜査ができていることから、憲兵隊員の逮捕状は取らず、日本側への起訴前身柄引き渡しは求めない方針。

 事件は三月十六日午前零時二十分ごろ、同市中央二丁目の路上で発生。タクシー乗務員の男性が三人組に殴られ、現金約八千円が入った釣り銭箱などを奪われたとされる。乗務員は頭などに軽いけがをした。

 同署はすでに、犯行に関与したとして、いずれも米兵家族の少年四人を同容疑で逮捕。少年らは「憲兵隊員の運転する車で逃走した」などと供述しているとされ、同署は憲兵隊員が主導的な役割だった可能性が強いとみて調べている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151300_03.html

 

2008年4月15日(火) 朝刊 24面

コザに米兵まばら 飲酒禁止措置緩和

 【沖縄】在沖米軍による基地外での飲酒禁止措置が緩和された十四日、米兵相手の飲食店やライブハウスが集中する沖縄市のコザ・ゲート通りは米兵の姿も少なかった。

 飲食店の関係者は「客の大半は米兵。規制は早く解除してほしい」と歓迎する一方で「基地内に閉じ込められていた分、羽目を外さないか心配」との声も。通りを歩く複数の米兵は「ノーコメント」と言い残し、足早に去った。

 米兵による相次ぐ事件事故を受け、在沖米軍は二月二十日から、軍人の外出を制限している。

 米兵の飲酒禁止措置は緩和されたが、午前零時―同五時の外出禁止措置は継続される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151300_04.html

 

2008年4月15日(火) 朝刊 2面

思いやり予算「良い投資」/ライス在日米軍司令官

娯楽費負担は「少額」

 思いやり予算は、日本の平和維持にとって「大変良い投資だ」と指摘し、娯楽費についても「リーズナブル」との認識を強調。一方で、環境影響評価(アセスメント)が遅れている米軍普天間飛行場移設問題については、「在任中に大きな進ちょくを見られると楽観視している」と述べ、二〇一四年の移設完了期限は守れるとの見通しを示した。

 米兵暴行事件など相次ぐ米軍の不祥事については、在日米軍の「タスクフォース」で国内すべての基地を調査・分析しつつ、既存の教育プログラムを総点検して模範施設の実践例を共有していくとの考えを示し、再発防止に意欲を示した。

 しかし、日米地位協定見直しの必要性については、「どの国と比べても、ホスト国側にとって最も有利な協定。改定するべきだとは思っていない。必要な場合は運用上の柔軟性をさらに増す努力をすればいい。今後も改善を重ねていきたい」との考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151300_05.html

 

2008年4月15日(火) 夕刊 1面

憲兵を書類送検/タクシー強盗

 沖縄市内で三月、タクシー乗務員が殴られ釣り銭箱を奪われた事件で、県警は米軍の監視下にある嘉手納基地所属の憲兵隊の兵長(22)を十五日、強盗致傷容疑で書類送検した。日本側は起訴後に米側から身柄の引き渡しを受ける見通し。

 これまでの調べで、憲兵隊員は犯行時に現場付近にいたことや、米兵の息子の少年四人らとともに事前に計画を立てていたことを認めているとされる。また、逃走に使った車は憲兵隊員の所有とみられる。ただ、逮捕された少年らが「憲兵隊員が中心だった」と供述していることについては、否認を続けているという。

 県警は憲兵隊員の自宅を家宅捜索し、乗務員の所持品とみられる証拠物などを押収している。

 事件は、三月十六日午前零時二十分ごろ、沖縄市中央二丁目の路上で、タクシー運転手の男性を殴り現金八千円が入った釣り銭箱を盗んだ疑い。いずれも米軍人の息子の少年四人が強盗致傷容疑で逮捕された。一方、米軍は憲兵隊員を監視下に置き、県警が米側の捜査協力を得て事情聴取などを進めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151700_02.html

 

2008年4月15日(火) 夕刊 1面

防衛政務官が柔軟姿勢/地位協定改定要請

「運用改善で不十分なら」

 【東京】防衛省の寺田稔政務官は十五日、「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会からの要請の席上、日米地位協定について「運用改善で足りない部分があれば、改定を外務省に働き掛けたい」と述べ、改定に柔軟な姿勢を示した。

 同席者によると、寺田政務官は、地位協定について、運用改善ですべての問題に対応するのは困難との見解を示したが、人権侵害に対する国内法整備を優先すべきだとの考えを強調。

 同協定はあくまで外務省の所管であるとの立場に立ちつつも、同協定の二七条で定める日米双方が地位協定改定を要請できる仕組みを指摘し、外務省に提案する考えを示したという。

 要請団は二日目の同日、外務省や民主党、共産党、江田五月参院議長らを訪ね、大会決議に盛り込まれた地位協定の抜本改定などへの支援を求めた。

 北谷町で万引した米兵の息子を米憲兵隊が連れ帰ったとされる事案について、外務省の木村仁副大臣は「報道の通りであれば日本の主権にかかわることなので、調査して慎重に対応したい」と述べたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151700_03.html

 

2008年4月15日(火) 夕刊 5面

沖縄署、文書で申し入れ/米少年万引憲兵連れ帰り

 【沖縄】北谷町美浜の衣料品店で今月十三日、Tシャツなどを万引し、店員に捕まった在沖米海兵隊員の未成年の息子二人を、通報で駆け付けた沖縄署員より先に米憲兵隊が拘束、基地内に連れ帰った問題で、同署は十五日午前、捜査に支障が出たとして嘉手納基地内にある憲兵隊事務所を訪れ、少年二人を連れ帰った詳しい経緯を説明するよう文書で申し入れた。同事務所は「正式な返答は後日文書で回答する」と答えたという。少年は十六歳と十七歳。同署は窃盗の疑いで十四日に十六歳の少年から任意で事情を聴いたが容疑を否認。十七歳の少年については十五日に任意で事情を聴いている。

 同署は事件発覚後から口頭で米軍に連れ帰った経緯などを求めているが、明確な返答がないため玉那覇章署長名で文書を手渡した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151700_04.html

 

2008年4月15日(火) 夕刊 5面

再発防止策徹底を/米軍爆弾投下

久米島町長ら 防衛局に要請

 米海兵隊のAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が久米島町の鳥島射爆撃場で訓練中に、提供水域外に五百ポンド爆弾二発を投下した問題で、久米島町の平良朝幸町長や同町議会(山里昌輝議長)、県漁協組合長会(棚原哲也会長)、県漁業協同組合連合会(下地敏彦会長)は十五日午前、沖縄防衛局に、原因の早期徹底究明や再発防止策の徹底を強く申し入れた。

 対応した真部朗局長は「事故は遺憾だ。原因究明と徹底した安全管理をすでに求めているが、引き続き努力したい」と述べた。

 同日午前、米側から沖縄防衛局に対し、爆弾投下が九日午後二時四十五分だったことが伝えられたという。真部局長は第一報と事実が食い違ったことについて「連絡態勢も原因究明と再発防止を(米側に)求めたい。遅れたことや不正確だったことは反省している」と述べた。

 さらに投下地点の海域は深度約千四百メートルと説明した上で「米側がどう処理するのか、まだ詳細な説明を受けていない。引き続き説明を求めたい」と述べた。地元久米島漁協の組合長も務める棚原会長は「制限水域や射爆撃場の整理・縮小も実現してほしい」と要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804151700_05.html

 

2008年4月16日(水) 朝刊 2面

防衛政務官が柔軟姿勢示す/地位協定改定

 【東京】寺田稔防衛政務官は十五日、日米地位協定について「運用改善で足りない部分があれば、改定を外務省に働き掛けたい」と述べ、改定に柔軟な姿勢を示した。「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会の要請に答えた。

 寺田政務官の発言について、防衛省の豊田硬報道官は十五日の定例会見で「仮定の問題として、運用改善で対応できない問題がある場合について、一般的な見解を申し上げたのではないか」と述べ、運用改善で対応するという政府の従来の考えを強調した。

 要請団は二日目の同日、外務省や民主党、共産党、江田五月参院議長らを訪ね、大会決議に盛り込まれた地位協定の抜本改定などへの支援を求めた。

 北谷町で十二日、万引で店員に捕まった米兵の息子二人を米憲兵隊が連れ帰った問題について、外務省の木村仁副大臣は「報道の通りであれば日本の主権にかかわることなので、調査して慎重に対応したい」と述べたという。要請後、衆院第二議員会館で会見した玉寄哲永実行委員長は「大野松茂官房副長官は『総理に伝える』と自身の判断を保留した。地位協定改定を求める県民のうねりが全国に広がることを期待する」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804161300_04.html

 

2008年4月16日(水) 朝刊 26面

教科書各社は慎重/検定撤回 実行委きょう要請行動

 「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)が十六日、二〇〇六年度の検定意見の撤回と、高校の日本史教科書への「軍強制」記述の復活を政府や教科書会社側に再び訴える。

 実行委は大阪地裁での「集団自決」訴訟判決を受けて、再訂正申請への動きを加速させたい考えだ。だが政府の反応は鈍く、教科書各社は慎重な姿勢をみせたまま。今後、再訂正申請が行われるかは、世論を再び盛り上げられるかが鍵となりそうだ。

 実行委が東京で要請行動を行うのは四回目。今回も実行委員長の仲里利信県議会議長らが首相官邸や文部科学省、教科書協会などを訪問し、検定意見の撤回と「軍強制」の記述復活を求める。

 ポイントとなるのが、三月に大阪地裁であった「集団自決」訴訟の判決だ。検定意見の根拠の一つとされた元戦隊長の証言について、大阪地裁は「信用できない」と退けた。実行委は「文科省を動かす絶好の機会」ととらえる。

 教科書執筆者たちも再申請に意欲的だ。今月五日に那覇市であったシンポジウムでは、教科書執筆者の坂本昇さん(東京都・高校教諭)が「『軍の強制』を復活させたい」と発言。歴史教育者協議会の石山久男委員長も「再申請に向けて社会科教科書執筆者懇談会を再開したい」と述べた。

 だが、政府は今回も冷淡だ。要請団に対し、今回も福田康夫首相ら閣僚は面会に応じない。

 各教科書出版社も再申請には慎重だ。ある出版社は「新教科書は四月から使い始めたばかり。現場の反応も聞かないでいきなり『再訂正』は筋が通らない」と歯切れが悪い。執筆者の一人は「各社とも世論を様子見している。教育現場や沖縄からの声が続かなければ、教科書会社を再び動かすのは難しい」と話す。

 再訂正手続きは、七月ごろまでに各社が検討を行い、八月後半に文科省に申請するのが一般的。仲里委員長は「体験者たちの言葉と(裁判で退けられた)元戦隊長の証言とどちらが重いのかをしっかり問いかけ、正しい記述復活への地道な戦いを続ける」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804161300_07.html

 

琉球新報 社説

米少年憲兵連行 政府は毅然とした態度示せ2008年4月16日

 懸念していたことが起きた。13日、北谷町美浜の衣料品店で窃盗の容疑で捕まった在沖米海兵隊員の息子2人を、米憲兵隊員が拘束し基地内に連行した。2人の身柄は、憲兵隊員が到着する前に店員が押さえていた。日米合意事項では「最寄りの日本の警察署などに連行する」と定められており、それに違反することにもなる。米兵犯罪防止のため日本側と米軍が共同巡回することも検討されているが、まさに今回起きたような事例が懸念されていた。

 日本国内で起きた犯罪の容疑者は、日本の警察に逮捕され、日本の司法によって裁かれる。それが当然だ。しかし、現在の日本では、それが当然ではないのである。不平等ともいえる日米地位協定があるからだ。

 米軍基地が集中する本県では、そのひずみが如実に表れる。

 米兵女子中学生暴行事件を受け、政府は警察と米軍との日米共同パトロールを対策として打ち出した。しかし逮捕現場に警察と憲兵が一緒にいた場合、地位協定上、身柄は憲兵に引き渡さざるを得ないという問題がある。

 外務省は逮捕をめぐるトラブル防止のため(1)米軍憲兵は参加しない(2)身柄の確保や逮捕する権限は県警側―とする方向で米軍と調整している。しかし県警側はこれで問題が解決するとはみていない。憲兵が現場にいなくても警察が逮捕状請求手続きをしている間に私服軍人が連絡し、憲兵が身柄を拘束してしまうと危惧(きぐ)するからである。

 美浜で発生した事件はまさにその危惧が現実となったといえよう。

 米少年2人は衣類を盗んだ疑いで店員に身柄を確保されていた。しかし先に到着した憲兵が、遅れて到着した沖縄署員の少年らへの事情聴取を拒否し、基地内に連行。逮捕当日の13日には解放した。

 地位協定に問題があることは明白なのに、日本政府は口を開けば「運用改善で」と強調し、「改定」には及び腰だ。

 米兵犯罪の再発防止を声高に叫ぶのなら、地位協定を改定し「不平等」を解消するべきだ。米軍人であろうが、軍属であろうが、日本国内で罪を犯せば、日本警察に逮捕され、刑罰を科される。このシステムを確立しなければ犯罪は抑止されないだろう。

 「地位協定に守られているという意識が米兵たちにあるのではないか」という指摘がある。現状の不平等さからすれば、そういう考えを持たざるを得ない。

 日本政府の弱腰の姿勢には、ほとほとあきれ果てる。毅然(きぜん)とした態度で地位協定問題を解決するのが政府の責任ではないのか。今回の事件を契機に政府は、根本から姿勢を改めるべきである。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-131176-storytopic-11.html

 

2008年4月16日(水) 夕刊 1・5面

「係争中」と撤回拒否/教科書検定要請

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、昨年九月に開かれた検定意見撤回を求める県民大会の実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)は十六日、自決への軍関与を認めた大阪地裁判決を受け、検定意見を撤回し軍強制記述を復活するよう求める要請書を渡海紀三朗文部科学相あてに提出した。要請後、池坊保子副大臣は「司法、行政には独立性がある。係争中に教科書を変える意思はないと(実行委側に)申し上げた」と記者団に話した。

 要請後、仲里委員長らは「文科省は判断から逃げている」などとして同省の姿勢を批判した。

 実行委は同日、首相官邸で大野松茂官房副長官にも要請書を提出。大野副長官は「要請を重く受け止め、総理や官房長官に伝える」と述べるにとどめ、検定意見や記述回復への言及はなかったという。東良信内閣府審議官にも要請した。

 要請書は、元守備隊長らの訴えを退け「集団自決」への軍関与を認めた三月の大阪地裁判決を受けて「この裁判を根拠の一つとした検定意見は是正されるべきだ」と指摘。

 「次世代を担う子どもたちに正しく真実を伝え、二度と戦争を起こさないことは大人に課せられた重大な責務だ」として、検定意見の撤回と教科書に「日本軍による強制」の語句を入れるよう求めている。

 実行委は十六日午後、教科書協会にも、記述の訂正申請を要望する予定。


     ◇     ◇     ◇     

文科省の「壁」に落胆/大阪判決 追い風ならず


 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に「軍が深く関与した」と認めた大阪地裁判決を追い風に、教科書への「軍強制」の記述復活や検定意見の撤回に期待を込め、「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会のメンバーらは十六日、文部科学省に再要請した。

 教科書会社からの訂正申請を受けた記述修正後の要請から約三カ月ぶりとなる同省では、前回と同じ池坊保子副大臣が対応し、地裁判決に原告側が控訴していることを理由に「係争中で何も言えない」と一蹴、再要請を事実上拒否した。

 「壁は厚い。なかなか思うようにいかない」

 要請に同行した小渡ハル子県婦人連合会会長は、文部科学省から収穫が得られなかったことに落胆の色を隠せない様子だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804161700_01.html

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