2008年4月17日(木) 朝刊 1面
外相「大いに問題」/憲兵少年連行
米側へ抗議示唆
【東京】高村正彦外相は十六日の衆院外務委員会で、今月十三日に北谷町内の衣料品店で万引したとして、店員に捕まった在沖米海兵隊員の息子二人を、県警より先に現場に到着した米憲兵隊が拘束、基地内に連行した問題について「大いに問題があり得ると思っている」との認識を示した。その上で「現時点で断定的なことは言えないが、(米側の)照会を得た上でそれなりの対応をしていきたい」と述べ、法解釈上の問題点が明確になった時点で米側に抗議する考えを示唆した。照屋寛徳氏(社民)の質問に答えた。
日米合同委員会合意では、米軍関係被疑者の逮捕権が日米で競合する場合、米側に優先権があるが、被疑者の身柄は最寄りの警察署に連行されると規定している。基地内に連行した憲兵隊の対応が、同合意に違反する可能性が出てきた。
外務省の西宮伸一北米局長は、「『共同逮捕』の条件に当てはまるかどうか引き続き(米側に)事実関係を確認し、慎重に判断する必要がある」との立場を強調。
一方で、「そもそも(憲兵隊が)現場で県警と調整せずに施設区域(基地内)に戻した」と指摘。基地外における憲兵について「日本国の当局と連絡して使用される」と規定した日米地位協定との関係では「問題があり得る」との見解を示した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804171300_02.html
2008年4月17日(木) 朝刊 2面
投下爆弾撤去と訓練停止を要求/県、在日米海兵隊などへ
米海兵隊のAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が久米島町の鳥島射爆撃場の提供水域外に五百ポンド爆弾を投下した問題で、県の上原昭知事公室長は十六日、在日米海兵隊に対し、投下した爆弾の速やかな撤去と原因究明までの間のハリアー機の訓練停止を口頭で求めた。
沖縄市で発生したタクシー強盗致傷事件についても、嘉手納基地に綱紀粛正や再発防止などを求めた。
米側は渉外官が対応。県は今後、回答を求めていく姿勢だ。
ハリアー機の爆弾投下問題で、県は米軍の通報の遅れや第一報の内容が誤っていたことを指摘。「公共の安全や県民の不安に対する配慮が十分でないと言わざるを得ない」とし、情報が混乱した経緯を明らかにするよう求めた。
また連絡体制の確立、安全管理の徹底、事故の再発防止に万全を期すよう要請した。
嘉手納基地に対しては「日米両政府や米軍が再発防止策を検討している最中に、軍人らの規律や秩序維持を任務とする憲兵隊員が事件にかかわったことは重大な問題」と訴えた。
上原公室長は、在沖米国総領事や外務省沖縄事務所、沖縄防衛局にも同様の要請を口頭で行った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804171300_03.html
2008年4月17日(木) 朝刊 23面
教科書協会に訂正申請要請/実行委、行動日程終了
【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、検定意見撤回を求める県民大会の実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)は十六日、都内江東区の教科書協会(小林一光会長)を訪ね、軍強制記述の回復に向け訂正を申請するよう求めた。小林会長は「要請を重く受け止め、教科書各社に(実行委の)意向を伝えたい」と述べた。
同協会は今月二十四日の加盟社との業務連絡会で要請内容を説明する。小林会長は「沖縄側の要望は伝えるが、具体的な対応は各社の判断。協会が踏み込んで方向性を示すことはできない」と話した。
仲里委員長は「依然として(強制を削除する文部科学省の)意見が付されている以上、軍の主語が消される危惧がある」と指摘。小渡ハル子副委員長は「青少年に間違いを教えてはいけない。教科書会社は私たちの意をくんでほしい」と強調した。
玉寄哲永副委員長も「沖縄戦の実態は歴史であり、があってはならない。協会からしっかり伝えて、実態を教科書で表現してほしい」と再び訂正申請するよう求めた。歪曲 政府、同協会への要請行動を終え、仲里委員長は記者団に「今日の要請で検定意見撤回、記述回復ができる期待があったが、結果的に(政府から)答弁をもらえず残念」と総括。今後については「撤回までかなり時間を要する実感があり、長い目で実行委も考えるべきではないか」と語り、組織の在り方を関係者と協議する意向を示した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804171300_07.html
沖縄タイムス 社説(2008年4月17日朝刊)
[憲兵隊の不祥事]
逮捕権の明文化を急げ
米軍人や軍属の規律を維持、守るべきはずの在沖米軍憲兵隊の事件や地元との摩擦が健在化している。
沖縄市内で起きたタクシー強盗事件では、嘉手納基地所属の憲兵隊兵長が強盗致傷容疑で書類送検され、今月十三日には北谷町の衣料品で万引した海兵隊員の息子二人を憲兵隊が拘束し、基地内に連れ帰った。
タクシー強盗事件では、共犯の少年たちが供述している「事件の中心的役割」を憲兵隊員が担ったことが事実であれば由々しき事態だ。折も折、在日米軍施設の多くを抱える県内や神奈川県で米兵に絡む事件や事故が相次ぎ、組織の綱紀粛正が叫ばれているさなかである。
日米両政府が声高に唱える「再発防止策」を最も敏感に感じ取り、実践すべき憲兵が、犯罪に手を染めてしまったのでは開いた口がふさがらない。
心配なのはそれが一般兵に与える影響だろう。規律違反を監視、監督する側がそれを犯すとなれば、最低限あってしかるべき基地の外との緊張感が緩むことも想定される。
県民の立場から見ればあらためて不安や不信が増幅される結果しか導かないことになる。
さらに、容疑者の憲兵がいまだに米軍当局の手中にあることも看過できない。
「特権」とも呼ぶべき日米地位協定では、日本の司法当局が公訴するまで、被疑者米兵の身柄を移すことができない。それに応じるか否かは米側のさじ加減一つで決まる不条理さである。
今回の事件では被疑者が一定の期間、基地内を自由に行動していたとも指摘されている。その間に口裏合わせなどの証拠隠滅や逃亡を図ることさえ可能になる。県警は被疑者が米軍の管理下にあり、事情聴取も遂行できることから逮捕状の請求を見送っている。
ただ、それはあくまで「政治的」な判断ではなかろうか。逮捕状を取り、引き渡しを求めれば拒否される可能性が高い。地位協定の運用で米側が応じるのは殺人や強姦など、凶悪な犯罪に限られているのが実情だからだ。
拒否された場合の日米間の政治的な混乱を避ける狙いが透ける。昨今の米兵事件でその風潮が生まれつつあるのは憂慮すべきことだが、捜査員の間からは「十分な捜査をするために身柄を取ることが最善なのは当たり前」だという声が漏れてくる。
それよりもむしろ、日米間の安全保障上のひずみから生まれる問題を警察の判断に任せることに問題がある。
北谷町の万引事件で憲兵が少年二人を連れ帰った問題も地位協定に軍人家族の位置付けがあいまいにされていることに原因がある。
昨年三月末の防衛省統計で、家族を含む在日米軍関係者が約九万二千人いる。その半数の約四万五千人が居住する沖縄は、同様の問題が繰り返される可能性が高い。
自国の兵士の人権を盾に、駐留国の人権を脅かす矛盾を両政府はいま一度考え、逮捕権の枠組みを明文化する必要がある。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080417.html#no_1
琉球新報 社説
教科書検定意見 文科省の役割忘れたのか
2008年4月17日
文部科学省はこの期に及んで、沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)が「日本軍の強制」によって生じたという歴史的事実から目をそらし続けている。
「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の仲里利信実行委員長(県議会議長)らが、高校歴史教科書から「日本軍の強制」を修正・削除した検定意見の撤回と記述復活を文科省に要請したが、池坊保子副大臣は難色を示した。
岩波・大江「集団自決」(強制集団死)訴訟判決で、大阪地裁は「日本軍の戦隊長が住民に自決を命じたとの本の記述は誤り」との原告側主張を退けた。
原告の意見陳述は検定意見の参考資料となっており、判決はそれを否定したとも言える。文科省としては判決に基づいた実行委の要請に沿って検定意見の撤回と記述を復活するのが筋である。
ところが、副大臣は実行委に対して「最終的な(司法の)判断が出ていない。現段階で何も言えない」と述べ、事実上、拒否する姿勢を示した。
原告が控訴したことで今も係争中であり、文科省としては現時点で対応することは適切ではないとの判断なのだろう。
その論理に当てはめれば、結論が出ていない裁判での意見陳述を検定意見の参考資料にしたこと自体、適切ではなかったことを自ら認めたに等しい。
実行委の要請後、副大臣は「司法判断に左右されていいか疑問がある」と述べた。
政治的圧力や事実をねじ曲げるような主張に教育行政が左右されることがあってはならない。教育行政の独立性は当然、確保されなければならない。
しかし、検定意見の根拠の一つを司法が否定したことは重視するべきである。判決は歴史的事実について正当な判断を下しており、それを軽視することは史実に背を向けることにつながるということを文科省は認識するべきだ。
副大臣は「教育は中立でないとならない」とも述べている。当然である。だが、岩波・大江訴訟の一方の当事者の主張だけを重視したことが、果たして「中立」と言えるだろうか。「中立」ならば「集団自決」で生き残った人たちの証言も参考にするべきである。
参考にした意見陳述が、体験者の証言や沖縄戦研究者のこれまでの蓄積を覆すものだったことが証明されない限り、文科省は歴史を改ざんしようとする側に立脚したと疑われても仕方ないだろう。
歴史的事実を教育現場で子どもたちに正しく伝えさせるようにすることが教育行政の在り方である。文科省はその大切な役割を忘れてはいまいか。
2008年4月17日(木) 夕刊 5面
米軍、合意違反認める/万引米少年憲兵連れ帰り
県警に米謝罪
北谷町の衣料品店でTシャツなどを万引したとして、店員に取り押さえられた米海兵隊の息子二人を、沖縄署の捜査要請を拒否して憲兵隊員が基地内に連れ帰った問題で、米軍側が日米地位協定に関する合意事項に違反していたと認めていたことが十七日、県警関係者の話で分かった。
県警関係者によると、事件から二日後の十五日に、米軍に対して経緯説明を求める文書を手渡した際、憲兵隊の上司が「申し訳ない」と述べたという。米軍側は近日中に正式な回答を出す方針を示している。
少年容疑認める
【沖縄】北谷町の衣料品店でTシャツなどを万引し、店員に捕まった在沖米海兵隊員の未成年の息子二人を、通報で駆け付けた沖縄署員より先に米憲兵隊が拘束、基地内に連れ帰った問題で、十七歳の少年が同署の任意の取り調べに対し容疑を認める供述をしていることが、十七日関係者の話で分かった。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804171700_03.html
2008年4月18日(金) 朝刊 27面
「集団自決」指導事例集を配布
教育庁 現場の不安に対応
文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題を受け、県教育庁はこのほど、軍の強制を明記した「高等学校における沖縄戦の指導案事例集」をまとめた。同庁は「社会科や総合学習の授業で活用し、生徒に沖縄戦の実相を正しく伝えてほしい」と呼び掛けている。
事例集には三十―五十代の教員十八人が、沖縄戦を取り上げた授業実践二十例を盛り込んだ。日本史Bでは、「集団自決」体験者の証言や沖縄タイムス社の社説を教材に、教科書検定問題を県民としてどうとらえたかなどを生徒に問う指導例がある。
総合学習で戦跡巡りをした例や、県内の米軍基地と憲法について考えた政治・経済の授業も紹介した事例集。
仲村守和教育長は「現場教員は(軍命が削除された)新しい教科書で、不安ではないかという懸念があり作成した。今後、教員は自信を持って平和教育を進めてほしい」と語った。
事例集は十五日に、全県立高校に配布された。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804181300_02.html
2008年4月18日(金) 朝刊 27面
県内、評価と冷静反応/イラク派遣 違憲判断
海外に活動範囲を広げてきた自衛隊の活動を違憲とする司法判断が示された。名古屋高裁の判決に県内では評価する声が相次いだ。一方で「自衛隊のイラク派遣自体が違憲とされたわけではない」と冷静な受け止めもあった。
ネットワーク九条の会沖縄事務局長の加藤裕弁護士は「裁判所はこれまで、自衛隊と安全保障は政治の問題として判断を避けてきた。その結果、自衛隊は活動範囲を広げ、武力行使が行われているイラクにまで派遣された。こうした流れに、くさびを打った」と指摘。「現在の自衛隊派遣が、本当にイラクの平和のためになっているのか、自衛隊の在り方を含め国民の間で議論の材料になる」とした。
琉球大学法科大学院の高良鉄美教授(憲法)は「立法と行政のチェックアンドバランスを意識した使命感ある判決。憲法の理念と国が進むべき道筋について立ち止まって考えるきっかけにするべきだ」と語った。
沖縄・女性九条の会共同代表で弁護士の真境名光さん(70)は「改憲論議など戦前を思わせる空気がまん延したことに、多くの市民が危機感を持ち、行動した成果」と歓迎。その上で、自衛隊派遣差し止めが認められなかったことに「市民の側がこの判決を生かしていくために行動し、世論をつくっていかねばならない」と訴えた。
県隊友会会長・石嶺邦夫さん(74)は「活動の一部でも違憲とされたのは残念だが、サマワでの陸自の活動など、自衛隊のイラク派遣自体が違憲とされたわけではない。日本が可能な範囲で国際貢献をしていくことは大切で、状況に応じ活動の内容を見直していけばいいのではないか」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804181300_03.html
2008年4月18日(金) 朝刊 2面
普天間移設へ工事合意/日米合同委
ハンセン射場施設提供も
【東京】日米両政府は十七日の合同委員会で、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市キャンプ・シュワブ内の下士官宿舎などの工事実施や、キャンプ・ハンセン内で移設される射場などの提供、伊江村地下ダム整備に伴う伊江島補助飛行場の共同使用を合意した。
隊舎移転
普天間飛行場代替施設建設に伴い、キャンプ・シュワブ内の飛行場建設予定地の西側に、下士官宿舎、倉庫、管理棟、通信機器整備工場、舟艇整備工場の整備実施について合意した。総額約三十八億円。普天間移設に関する工事着工はこれが初めて。着工時期について、防衛省は「準備が整い次第、速やかに実施する」と明らかにしていない。
射場整備
金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」の米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設移設に伴い、「玉突き」で移転される二カ所の訓練施設のうち、西側A地区の施設が完成し、米側に提供することで合意した。今回提供するのは小火器用の射程五十メートルの射場や安全壁、ウェザーシェルター。
ダム建設で共用
国営かんがい排水事業で伊江村に整備される地下ダムの建設に伴い、水をせき止める堤体などの用地として、伊江島補助飛行場の一部土地約六千六十平方メートルの共同使用に合意。そのほか、ダムの建設作業用地として、工事期間中に限定して約五十万四千九百平方メートルの共同使用も合意した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804181300_04.html
琉球新報 社説
イラク派遣違憲 撤退を迫る画期的な判断
2008年4月18日
航空自衛隊のイラク派遣は「違憲」との判断が17日、名古屋高裁で示された。イラクでの空自の活動が、憲法九条が禁じる武力の行使に当たるとの判断である。判決が出た以上、政府は空自をイラクから撤退すべきである。
違憲判断は、自衛隊のイラク派遣が憲法違反として、約1100人の市民が派遣の差し止めや慰謝料を国に求めていた訴訟である。
訴訟は派遣後の2004年から全国11の地裁で12の集団訴訟が提訴された。だが、判決で原告側の訴えはいずれも退けられてきた。
しかし、名古屋高裁の青山邦夫裁判長は「航空自衛隊の空輸活動は憲法九条に違反する。多国籍軍の武装兵員を戦闘地域に空輸するものについては武力行使と一体化した行動」と認め、違憲と判断した。
原告団の一人で、レバノン大使も務めた天木直人さんは、自らのブログで「憲法を少しでも学んだ者ならば自衛隊のイラク派遣が違憲であることは分かるはずだ」と訴えてきた。
しかし、12の訴訟は「訴えの利益がない」との紋切り型の判断で、門前払いされてきた。
「裁判官は正面から違憲審査をしようとはしない」「この国の司法はどうなっているのか。これほどまでに政治に屈していいのだろうか」「裁判官は出世に目がくらんだ官僚に成り下がっている」。そんな批判と司法への不信感が募っていた。
「違憲訴訟は続けよう。裁判官が権力を裁く事ができなくても、我々が彼らを裁くのだ」。そんな原告団の気概が、画期的な判断を引き出している。
国はイラク特措法で、自衛隊の活動場所を「非戦闘地域」に限定している。だが、イラクの首都バグダッドでは多くの市民が、いまも戦闘の犠牲になっている。
高裁判決は、バグダッドなどへの多国籍軍の兵士や国連の人員、物資輸送などを行っている航空自衛隊の活動が「イラク特措法にも違反する」と判断した。
自衛隊派遣では「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域」と、木で鼻をくくる国会答弁を繰り返した当時の小泉純一郎首相にも反省を促す判断である。
一方で、憲法違反の自衛隊のイラク派遣で「平和的生存権を侵害された」とする原告団の訴えについては「具体的な権利や義務に関する紛争ではなく、訴えは不適格」と却下。慰謝料についても棄却している。
法治国家の徹底と護憲の訴えを認める高裁判決が下された。今回の司法判断を重く受け止め、国はイラクから自衛隊を撤退させるべきである。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-131240-storytopic-11.html
2008年4月18日(金) 夕刊 1面
北米局長「合意反せず」/米少年連れ帰り
【東京】外務省の西宮伸一北米局長は十八日の衆院外務委員会で、北谷町内の衣料品店で万引したとして店員に取り押さえられた在沖米海兵隊員の息子二人を、県警より先に現場に到着した米憲兵隊が拘束し、基地内に連れ帰った問題について、日米合同委員会合意に反しないとの見解を示した。照屋寛徳氏(社民)への答弁。
西宮局長は「米側は(身柄は連行したが)逮捕していないし、逮捕したという認識もないので、これは共同逮捕の問題ではない」と説明。米軍関係被疑者の逮捕権が日米で競合する場合、米側の逮捕を原則とし、被疑者の身柄は最寄りの警察署に連行されると規定した同合意との関係で問題にならないとの考えを示したものだ。ただ外務省は、米軍が基地外で憲兵を使用する際には「日本国の当局と連絡して使用される」と規定する日米地位協定との関係で、今回の行動には「問題があり得る」との立場で、十八日までに在日米国大使館に遺憾の意を伝え、関連取り決めの順守を求めた。
「合意に反する」
知事は米軍を批判
仲井真弘多知事は十八日午前の定例会見で、万引で店員に捕まった米兵の息子二人を、米憲兵隊が基地内に連れ帰った問題について「日米合同委員会の合意事項に反していると思う。家族の犯罪についてきちっと日本側の警察で身柄を拘束し、取り調べする合意になっている」と述べ、米軍の対応を批判した。
今後の対応には「外務省でも検討しており、その結果を待ちたい」と述べた。
沖縄市で憲兵がタクシー強盗に関与したとして書類送検されたことについては「どうしてこういうことが起こっているのか。腰を据えて再発防止策を考える必要がある。県の対応もさらにきつく、米側も家族に対して徹底した教育訓練が必要ではないか」と綱紀粛正の徹底を求めた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804181700_02.html
2008年4月18日(金) 夕刊 7面
提供外飛行は誤り/安部オール島 米ヘリ離着陸
政府に米回答 再発防止求める
【東京】政府は十八日、米軍への提供施設外である名護市の安部オール島で、在沖米海兵隊のヘリコプターが離着陸した問題について「訓練ではなく、誤って行われた。今後ないようにしたい、と(米軍から)回答があった」と説明した。糸数慶子参院議員(無所属)の質問主意書への答弁書で明らかにした。
問題の離着陸があったのは三月二十日。政府は、沖縄防衛局などを通して米軍や米大使館に再発防止の徹底を申し入れたという。
また、四月三日に同市の国立沖縄工業高等専門学校の上空で、米軍ヘリがホバーリングをしたとされる問題については「ヘリはキャンプ・シュワブ内を訓練で飛行していたが、同校上空では行っていない、と回答があった」と事実関係を否定。政府は米軍に対し、地元住民に不安を与えないよう求めたとしている。
三月二十八日に大阪地裁であった「集団自決」訴訟の判決について政府は、「今後、教科書検定調査審議会で判決自体が審議事項で取り上げられることはない」と答えた。検定意見撤回については言及しなかった。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804181700_04.html
2008年4月19日(土) 朝刊 1面
「先に基地に連れ戻せ」憲兵隊、訓練で指導
組織的に協定違反か
北谷町内で万引したとして店員に捕まった米海兵隊員の息子二人を同隊の憲兵隊が基地内に連れ帰った問題で、同憲兵隊の新隊員訓練では日常的に「県警より先に身柄を取り、基地内に連れ戻せ」と指導されていたことが分かった。複数の海兵隊関係者が十八日、沖縄タイムス社の取材に答えた。(新崎哲史)
日米地位協定では、米軍施設以外での米軍当局の逮捕は「規律、秩序維持の必要範囲内」と制限しており、日本側当局との連携が必要と規定。憲兵隊が隊員への指導段階から協定を無視するような指導をしていた可能性がある。
複数の関係者によると、新しく海兵隊憲兵隊に着任した際、「新隊員訓練」が行われ、日本の法律などを米軍側の担当講師が約二週間にわたって講習する。
日米地位協定に関する講習は海兵隊司令部の法務部所属で、弁護士資格を持つ隊員が講師を務め、「県警と逮捕が同時でも、必ず基地に連れてくるように」などと指導しているという。
新隊員訓練は、年に二度ほど行われており、同様の指導は、少なくとも二年ほど前まで行われていたとみられている。海兵隊憲兵隊は、訓練終了後にキャンプ・フォスター内の憲兵隊本部や中北部の基地内にある出張所に派遣される。
関係者の一人は「米軍は軍人を軍のプロパティー(資産)と考える。日本側が逮捕して、『資産』が奪われる前に取り戻したいという考えがある」と説明。日本人警備員が民間地で銃を携帯した問題を挙げ、「多くの憲兵隊員は地位協定の詳しい内容を知らない。軍人の家族を連れ帰った今回の問題は、一部の上官の都合のよい解釈で、起きたのではないか」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804191300_01.html
2008年4月19日(土) 朝刊 27面
憲兵、少年と口裏合わせ/タクシー強盗
三月に沖縄市内で起きたタクシー強盗事件で、強盗致傷容疑で書類送検された嘉手納基地所属の憲兵隊の兵長ダリアス・ブランソン容疑者(21)が米軍の監視下にある間に、共犯とされる米兵家族の容疑者の少年二人=いずれも同容疑で逮捕=と事件への関与を否認するなど口裏合わせをしていたことが十八日、関係者の話で分かった。
米軍は県警が拘禁施設に収容するよう要請した後も一週間以上にわたって応じなかった上、その間監視状態も適正でなかった可能性がある。
県警は証拠隠滅などを防ぐため、四月二日に同容疑者を拘禁するよう米軍に要請していたが、米軍が応じたのは十日後の十一日。その間、ブランソン容疑者は軍の監視下にあったが、一定程度自由に行動できる状態だったという。
少年らについても、県警が二日から求めていた身柄引き渡しに米軍が応じたのは五日だった。その間、少年らは軍の監視下になかったとされ口裏合わせができる状態だったとみられる。
飲酒禁止緩和で米兵が繰り出す
初の週末ゲート通り
【沖縄】米兵による相次ぐ事件・事故を受けて実施された飲酒禁止措置が緩和され、初の週末を迎えた十八日、沖縄市のコザ・ゲート通りは、繁華街に繰り出す米兵らでにぎわった。
コザ・ゲート通り近くでバーを営む男性(58)には、常連客の米兵から「店に行くよ」と連絡があった。男性は「飲酒禁止措置の緩和は歓迎」と明るい表情。
同僚と連れ立って通りを訪れた米海兵隊所属の男性兵士(28)は「とてもハッピーだ。外出禁止のころは部屋でテレビゲームばかり。部屋で酒も飲まなかった。今日は飲むつもりだよ」と声を弾ませた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804191300_02.html
2008年4月19日(土) 朝刊 2面
基地周辺対策費23%増
08年度 防衛省1次分86億円
【東京】防衛省は十八日、全国の基地周辺自治体などへ配分される二〇〇八年度周辺対策事業(補助金)の第一次都道府県配分を公表した。県内は六十件、対前年度比約23%増の八十六億二千三百万円が配分された。都道府県別に分類されない住宅防音、放送受信障害などは除かれている。
沖縄関連で最も金額が多かったのは、生活環境施設などに補助する民生安定事業(一般助成)で、前年度比十億円増の三十八億二千万円。内訳は普天間飛行場などに関係した緑地整備など新規七件、継続十二件だった。
学校や病院などへの防音工事費を助成する騒音防止対策事業(一般防音)は、十四億五千四百万で金武幼稚園など新規五件と継続二十一件。
そのほか、公民館などへの防音工事費を助成する民生安定事業(防音助成)は五千八百万で、池原地区学習等共用施設など新規四件。
住宅防音は、嘉手納基地周辺の三千二百四十三世帯に四十一億六千万円、普天間飛行場周辺の八百十五世帯に六億百万円を助成する。
特に生活環境などに影響を受けている市町村に支払われる特定防衛施設周辺整備調整交付金は、県内十六市町村に十五億七百万を交付することが決まった。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804191300_05.html
沖縄タイムス 社説(2008年4月19日朝刊)
[空自輸送違憲]
イラクを撤退する時だ
名古屋高裁(青山邦夫裁判長)は、イラク・バグダッドで航空自衛隊が多国籍軍の武装兵を空輸していることについて「他国の武力行使と一体化した行動であり、イラク特措法、憲法九条に違反する」と初の違憲判断を示した。
自衛隊の憲法適合性について違憲としたのは、一九七三年の「長沼ナイキ訴訟」一審以来、実に三十五年ぶりである。
同訴訟では自衛隊の存在そのものを違憲としたが、今回は自衛隊の海外活動についてである。
「高度な政治性を有する国家の行為は憲法判断を控えるべき」とする「統治行為論」で、裁判所が憲法判断を示さない流れが定着。誰もが裁判所に無力感を感じていたのではないか。
そういう意味で、判決は司法の本来の姿を示し、時流に流されがちな私たちの意識を覚醒させる一撃になったのではないか。
空自が空輸を開始したのは二〇〇四年三月。当時の小泉純一郎首相は〇三年七月、戦闘地域の定義を聞かれ「どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域か、今私に分かるわけない」と開き直り、〇四年十一月には「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域」と強弁。無理を重ねたあいまいな概念だった。
米国が主張していた大量破壊兵器がイラクで見つからず、フセイン元大統領とアルカイダとの関係も証明されなかった。米国でもイラク戦争を否定する意見は高まるばかりだ。それでも政府はイラクから撤退する考えはないという。違憲判決を受け、政府はあらためて国民に説明する必要があろう。
イラク特措法では自衛隊が活動する区域は非戦闘地域に限り、しかも「武力行使とは一体化しない」ことが前提とされていた。
この点、判決は明確だ。
〇三年五月のブッシュ米大統領の「戦闘終結宣言」後も、米軍中心の多国籍軍はバグダッドなどで、多数の死傷者を出している。多国籍軍の活動は治安活動の域を越え、武力抗争と認定。イラク特措法の「戦闘地域」に該当すると断定した。多国籍軍の武装兵を、戦闘地域のバグダッドへ空輸することは、他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力を行ったとの評価を受けざるを得ないと結論付けた。
軍事作戦上、後方支援も戦闘行為であることは言うを待たない。判決はこの点でも明快だ。
現代戦は輸送なども戦闘行為の重要な要素であり、多国籍軍の戦闘行為に必要不可欠な軍事上の後方支援を行っていると認定した。
米国自身に「出口戦略」がない。そんな米国に日本はいつまで追従するつもりなのか。
判決は原告の市民ら約千百人が求めていた派遣の差し止めや慰謝料請求を棄却した。
原告は判決内容は実質的勝訴として上告せず、国も形式的には勝訴のため上告できない。違憲判断が確定する。
米国との同盟関係に配慮し、無理な解釈を重ねて自衛隊を派遣した政府は、撤退のシナリオを真剣に考える時だ。判決は米国に自衛隊撤退を告げるきっかけになり得る。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080419.html#no_1
2008年4月19日(土) 夕刊 1面
米戦闘機、滑走路外れる/嘉手納基地
県道から数十メートル
【嘉手納】米軍嘉手納基地で十九日午前十時五分ごろ、米民間会社が所有する英国製のMK58戦闘機一機が着陸後、滑走路に隣接する緑地帯に機首部分から突っ込んで停止した。
事故原因や機体、人員への被害状況などは分かっていない。嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)に事故の連絡は一切入っていないという。
事故現場は県道74号から数十メートルの場所。同機は消防車など数台の緊急車両や消防隊員らに囲まれているが、放水などは確認されていない。同機は午後一時ごろけん引されて駐機場に移動した。
目撃者らによると、同機は米軍機が訓練で使用する標的をけん引して離陸するなど、米軍機の訓練に協力する機体。この日も何らかの訓練後に着陸し、事故を起こしたとみられる。
三連協の野国会長は、情報がないと前置きした上で「一歩間違えば住民に被害が出る。早めに原因究明し対応を明らかにしてほしい」と語った。
事故現場を確認した嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「民間地から非常に近い場所。県民に大きな不安を与える。嘉手納基地の危険性があらためて浮き彫りになった」と憤った。
県道沿いで、冷菓子を販売する女子中学生は、午前十時四十分ごろ、「消防車のサイレン音で事故に気付いた」と驚いた様子だった。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804191700_01.html
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008年4月19日(土) 夕刊 5面
協定無視に怒り/米軍憲兵隊の連れ戻し指導
在沖米海兵隊の憲兵隊が日常的に「県警より先に身柄を取り、基地内に連れ戻せ」と指導していた問題で、県内の平和団体は「断じて許せない」と激しい怒りの声を上げ、識者は「明らかな地位協定違反」と、米軍側の対応を問題視した。
日米地位協定に詳しい駿河台大学の本間浩名誉教授は「米軍基地の外については、本来は全面的に日本の警察権が優先する。例外的に、米軍内の規律や秩序維持の最小限の範囲内で拘束する権利が認められているだけだ」とし、明確な日米地位協定違反と指摘した。
その上で「日本政府や警察は、米軍の誤った認識を厳しく追及しなければならない」と強調した。
沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「地位協定以前の問題で、日本の法律を一切無視している。決して許されるものではない。これでは日本の主権がないに等しく米軍のやりたい放題だ。強く抗議する」と強く憤った。
「米兵によるあらゆる事件・事故を許さない県民大会」実行委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会会長は「憲兵隊の指導的立場の上官が地位協定さえ理解していない。教育プログラムの強化や綱紀粛正をやっても、まったく意味がないことがはっきりした」とあきれた口調。
「米側に配慮ばかりしている政府、特に外務省の責任は重い。米軍の裁量を許さず、米兵犯罪も、国内法を優先させると明記するべきだ」と述べ、日米地位協定の抜本改定をあらためて訴えていく姿勢を示した。
城間勝平和市民連絡会代表世話人も「基地の外に、どんどん米軍の権力が拡大している。これが事件・事故が減らない要因になっていることを、政府はしっかり認識するべきだ」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804191700_03.html
2008年4月19日(土) 夕刊 5面
義足の元軍人を支援/カンボジアに自立施設
【沖縄】特定非営利活動(NPO)法人アジアチャイルドサポート(沖縄市)はこのほど、カンボジアに傷痍軍人らのための施設を建設、今月十日に完成式典が行われた。トラクター寄贈などに約八百万円を充てた同NPOの池間哲郎代表(54)は「村には自立にかける思いの強い人々が集まっている。施設を活用し、ぜひ発展してほしい」と期待している。
このほど完成した障害者自立支援センターは、首都プノンペンから西方、車で約二時間半のビールトム村にある。建物面積約三百三十平方メートル。同村はカンボジア内戦や土中に埋まる地雷で傷ついた元軍人らが山中を開拓、現在は約三百世帯約千六百人が生活する。
二〇〇六年に村人から支援要請があり、池間代表が二度現地を調査。村人が学んだり会議する場がなく、農作業も義足で十分力の入らない人の多い課題の解決を決意した、という。
式典で、傷痍軍人でもあるドイサリー村長(51)は「踏ん張る力のない義足の人に農作業はつらかった。トラクターなどを活用し、自立のため努力したい」と感謝。今後は現金収入を得るため、換金作物のコショウなどを作る予定だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804191700_05.html