航跡調査/普天間・米軍機離着陸ルート 米が最終報告/原潜放射能漏れ、バルブから染み出す 防衛省、「普天間」調査2億円/概算要求 米大統領選、米軍「変革」で沖縄再生を など 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(8月28日から31日) 

2008年08月28日【朝刊】

きょうから航跡調査/普天間・米軍機離着陸ルート

沖縄防衛局が設置した航跡調査のアンテナ(中央)とGPS(右)=27日午後、北中城村・大城配水池

 【中部】防衛省は二十八日から、米軍普天間飛行場の場周経路の航跡調査を始める。沖縄防衛局が二十七日、宜野湾市や北中城村など同飛行場周辺の五市町村に観測装置を設置。九月三日まで、衛星利用測位システム(GPS)などを使用し同飛行場を離着陸する米軍機の飛行ルートを二十四時間観測する。これに合わせ、宜野湾市も同期間、市内二カ所で目視調査を行う。

 場周経路の見直しは、同飛行場周辺の市街地への米軍機墜落防止を目的に、二〇〇七年八月に日米で合意した。しかし、宜野湾市は日常的な「はみ出し飛行」を指摘。国は今月五日の県との危険性除去に関するワーキングチームで航跡調査の実施を発表していた。

 観測装置が設置されたのは宜野湾市、北中城村、北谷町、浦添市、西原町の五カ所。報道陣に公開された北中城村の大城配水池では、タンクの上にGPSと航空機からの電波を受信するアンテナの二本が設置された。

 五カ所の観測地の範囲内で米軍機が飛行した場合、航空機が発する電波を受信。衛星を通して位置を割り出し、飛行ルートを測定する。

 調査結果の公表について、沖縄防衛局は「調査データは国と県のワーキングチームへの提供を考えている。その他への公表は今のところ予定していない。調査終了後に検討したい」としている。

 宜野湾市は、同飛行場の南北に位置する同市野嵩と嘉数で目視調査を行う。調査時間は午前九時から午後十時までで、市職員が米軍機の機種や飛行ルートをチェック。防衛局の調査結果を入手次第、目視調査の結果と照らし合わせるという。

 同市基地政策部の山内繁雄部長は「国の調査は、市の要望が少しずつ実現しているということで、歓迎したい。通年の調査の話もあるが、調査だけでは意味がない。結果を基に実現性のある危険性除去策を求める」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-M_1-002-1_001.html

 

2008年08月28日【朝刊】

北京でベストを 沖・米選手誓い/基地内で代表ら交流

米国代表選手と交流する日本代表の上与那原寛和さん(右)や県内の競技者=27日午後、嘉手納基地リュウキュウミドルスクール

 九月六日開幕の北京パラリンピックに向け、米軍嘉手納基地で合宿している陸上競技の米国代表六人と、県内の障害者アスリートが二十七日、基地内のリュウキュウミドルスクールで交流した。

 陸上の上与那原寛和選手(37)や車いすラグビーの仲里進選手(31)ら県内の北京出場組も参加。互いの調整具合を聞いたり、米国側が代表チームのバッチやサイン入りポスターを贈る場面もあった。

 上与那原選手は、共に初出場でフルマラソンなど三種目で競うスティーブン・トヨジ選手(22)に「カーブや障害物があって難しいコースだが、パンクや事故がないよう一緒に頑張ろう」とエール。

 仲里選手は「北京に行くんだという気持ちが高まった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-M_1-028-1_001.html

 

琉球新報 社説    

放射能「密約」 国民を危険にさらす行為だ 2008年8月28日

 「飲酒運転がばれるから、検知器は50メートル以内では使わないで」。そんな申し入れを、警察が内緒で受け入れていたら、どうだろうか。犯罪を野放しにし、国民を危険にさらす背信行為として糾弾されるべきだ。

 実際の事件は飲酒運転の話ではない。もっと重大な米海軍の原子力艦船の放射能モニタリング(監視)での日米両政府の「密約」だ。

 米原潜など日本に寄港する米原子力艦船については、寄港時に大気中の放射能の有無を確認する空中モニタリング(監視)の実施が義務付けられている。

 だが、その空中モニタリングの際に「(原子力艦船から)50メートル以内では行わない」との密約を、日米が1971年11月と12月に交わしていたことが分かった。

 「ドーキンズ・メモ」と呼ばれる「秘密口頭了解」の密約は、当時の米国務省東アジア局日本課のドーキンズ氏が交わしたものだ。

 メモには「沖縄密約」でも知られる外務省の「ミスター密約」の異名も持つ吉野文六アメリカ局長らの名前も出てくる。

 密約締結は一つの「事件」がきっかけだ。ドーキンズ・メモによると、69年11月に米原潜サーゴが横須賀に寄港した際に、モニタリングのため5メートルまで接近したところ、「放射能の増加が記録されたが、離れると数値は下がった」という。

 放射能漏れと思われる事態だ。だが日米政府が取った対応は「50メートル以内でモニタリングを行えば、原子力推進装置の秘密データをらせることになる」という軍事機密保持を理由にした日本の放射能監視業務の「骨抜き化」だった。

 米公文書には「極秘 無期限」の判が押されていたが、米政府が解禁。昨年、国際問題研究者の新原昭治氏が入手し、密約の存在が表面化した。

 信じ難いことには米大使館が日本政府から「絶対に秘密を守るようにとの訓令を受けた」との記述もある。放射能漏れの隠ぺいに手を貸し、国民を危険にさらす密約を結び秘密厳守を米に求める。その上、米国が密約を開示してもなお「密約は存在しない」と政府は否定し続けている。

 今年になって米原潜の沖縄寄港が頻繁化している。寄港した原潜の一部は、放射能漏れを起こしながら2年間も寄港を繰り返していた。放射能漏れは米側が自発的に日本に通報し初めて表面化した。

 政府の放射能チェック体制のずさんさにはあきれ果てる。9月下旬には被爆国日本に、初の原子力空母ジョージ・ワシントンが配備される。

 政府は国民を欺く「密約」の存在を認め、その上で即刻破棄し、原潜や空母艦内への立ち入りチェックも含め、確実で効果的な放射能監視体制の確立を急ぐべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135665-storytopic-11.html

 

2008年08月28日【夕刊】

ヘリ航跡 調査開始/国と宜野湾市

 【宜野湾】国が観測装置を使用して米軍普天間飛行場の航跡調査を始めた二十八日午前、宜野湾市も目視調査を開始した。同市職員が午前九時から宜野湾市野嵩の宜野湾市民会館、嘉数高台公園の二カ所から双眼鏡やビデオカメラを使用し、米軍機の飛行ルートをチェックした。衛星利用測位システム(GPS)などを使用した航跡調査を行う沖縄防衛局も嘉数高台公園に職員を配置し、目視調査を行っている。県も担当職員が同所での国の調査開始を確認した。

 宜野湾市の調査期間は国と同じく九月三日までの七日間。午前九時から午後十時まで待機し、確認した米軍機の機種や飛行ルート、時間を地図付きの調査用紙に記入。防衛局が実施中の航跡調査の結果と照らし合わせる予定。県の確認作業は二十八日だけという。

 この日は午前九時十五分ごろにKC130空中給油機が南向けに離陸。その後、CH53大型輸送ヘリやCH46中型輸送ヘリなどが飛行場内でホバリングを繰り返した。

 同市職員は「米軍が調査を意識しているのか、いつもより高い高度を取って海側へ離陸していた。期間中は飛行ルートのチェックと同時に、市民から苦情の多い夜間の飛行実態も把握したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-E_1-005-2_003.html

 

琉球新報 社説    

邦人殺害 再考したいNGOの安全 2008年8月29日

 国際貢献に汗を流してきた若者が、凶弾に倒れた。あまりにむごすぎる犠牲である。新たな犠牲を生まないためにも、「安全」に対する過信はないか、危険に対する警戒は十分か、あらためて確認したい。

 アフガニスタン東部ジャララバード近郊で、非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(本部・福岡市)の伊藤和也さんが、旧タリバン系武装勢力とみられるグループに拉致、殺害された。

 地元に溶け込み、真っ黒に日焼けし、荒れ地となったアフガニスタンで、20キロの用水路建設など大事業に取り組んできた。同会は第1回沖縄平和賞も受賞している。

 住民と一緒に汗を流す。その中で、地元の厚い信頼も得てきた。

 それが、何の因果で拉致殺害されなければならなかったのか。伊藤さんの無念を思うとたまらない。

 地元警察に拘束された拉致殺害の実行犯らは「アフガンの治安悪化を印象付け、外国人を追い出したかった」と供述しているようだが、それが理由だとするならば、あまりに軽率で浅はかな行為だ。

 「われわれの活動を知っていれば、あり得ないこと。活動を知らない人物がやったんだろうとしか言えない。悔しい」とのペシャワール会事務局長の福元満治さんの言葉に、無念さも募る。

 今回の拉致殺害事件で気になるのは安全に対する認識や対応など海外貢献での危機管理の甘さだ。

 同会現地代表の中村哲医師は「アフガンは今、ほとんどの地域が無政府状態にあり、いずれ日本人が狙われる」との危険性を指摘していた。「夏までには日本人全員を撤退させたい」としていたが、伊藤さんらの撤退は先延ばしになった。そして心配が現実になった。

 治安悪化の裏には、民間人を巻き込む米軍の空爆に対する反米感情の高まりに加え、インド洋での海上自衛隊による給油活動、自衛隊の本土派遣検討などへの対日感情の悪化、その結果としての「日本への報復」も指摘されている。

 日本の軍事的貢献の在り方に問題はなかったか。民間支援団体に安全に対する過信はなかったか。いま一度、検証と検討を急ぎたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135697-storytopic-11.html

 

2008年08月30日【朝刊】

米が最終報告/原潜放射能漏れ、バルブから染み出す

 【東京】在日米国大使館は二十九日、外務省に、米原子力潜水艦ヒューストンの冷却水漏れ事故に関する調査結果を報告した。事故原因について「閉じられたバルブの一つから、放射能を含む水が染み出した」と説明。再発防止に向けては「ヒューストンが再出港する前に、バルブの厳格な性能基準が満たされることを確実にすべく措置を講じている」と述べるにとどめた。原因などの詳細について「原子力潜水艦の設計や構造、米軍の運用にかかわることは安全保障上の理由から明らかにできない」と説明。「さらなる情報提供を行う予定はない」としている。

 放射能を含む水の染み出しについて「海軍の厳格な設計基準を上回るもので、こうした例は過去五十年以上存在しない」としながらも、「日本への寄港の際に放出された可能性のある放射能の総量は、一回のX線胸部撮影から受ける放射能の量を下回る」などと安全性を強調している。

 同大使館のズムワルト首席公使は同日、外務省の西宮伸一北米局長に「すべての原子力艦について具体的な措置、厳格な基準を維持することをあらためて確約する」と述べた。外務省は「政府としては今回の報告で、米原子力艦の安全性が再確認されたと考えており、引き続き安全性確保のため万全を期する」としている。

 米側の最終報告を受け、仲里全輝副知事は同日、西宮局長に口頭で「微量であっても、放射能を含む冷却水の漏洩は県民に大きな大きな不安を抱かせる」と指摘。これまで以上に再発防止に万全を期すよう求めた。

 知念恒男うるま市長は「従来の発表と何ら違いはなく、原潜の入港を拒否する地元の意見が聞き入れられていない。安全性などについて、もっとはっきりさせてほしかった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-30-M_1-001-1_002.html

 

2008年08月30日【朝刊】

防衛省、「普天間」調査2億円/概算要求

 【東京】防衛省は二十九日、二〇〇九年度予算の概算要求を正式に決定した。沖縄関係では米軍普天間飛行場の航空機の飛行状況を年間を通して調査する経費約二億八百万円や、嘉手納基地の運用実態を調査する経費約千四百万円を要求。泡瀬ゴルフ場の移転工事完了を目指し、四十二億円余を計上した。

 そのほか、那覇市の陸上自衛隊第一混成団の旅団化に約二十五億円。糸満市与座岳に新型地上警戒管制レーダー(FPS―5)を整備、運用開始するため、二百二億円をそれぞれ求めた。普天間飛行場のヘリコプターの飛行状況をめぐっては、宜野湾市が日米合意した場周経路を守っていないと指摘。これを受け、今月二十八日から観測作業が始まっている。本年度は九月三日までの七日間、外部委託して実施しているが、来年度は航跡測定器を購入し、年間を通じて実施できるようにする。

 嘉手納基地の調査は、沖縄防衛局の嘉手納町移転に伴い、独自で運用状況を確認する必要があるとの判断から、防衛局が入居するビルの屋上にカメラを設置する。

 米軍再編関係では、在沖米海兵隊のグアム移転に関連し、日本が直接的に財政支援する司令部庁舎などの整備や民活事業による米軍家族住宅、インフラなどの整備事業を開始。事業推進を強化するため、同省にグアム移転事業室(仮称)を新設する。

 防衛省の防衛関係費は四兆八千四百四十九億円(前年度予算額比2・2%増)、SACO関係経費は百八十億円(前年度予算と同額)、米軍再編関係経費の地元負担軽減分は百九十一億円(同)。防衛関係費の増額分の半分は、原油高による油購入費の増大によるもの。

沖縄関係の総額1・7%増1608億円

 【東京】防衛省の二〇〇九年度予算概算要求で、基地対策などの推進に係る経費の沖縄関係分の総額(歳出ベース)は前年度比1・7%増の千六百八億五千八百万円だった。

 生活環境施設などに補助する民生安定や騒音防止対策など基地周辺対策経費は同12・5%減の百三十七億六千百万円。那覇市の奥武山球場の整備工事が〇九年度で完了するため。

 補償経費関係は、軍用地の借料に同1%増の約九百七億八千百万円を要求。軍用地の返還に伴う借り上げ面積は減少したが、借料の単価アップを盛り込み、ほぼ前年度並みとなった。

 米軍が公務で高速道路を使用する場合の通行料を肩代わりする経費は一億八千五百万円を要求。

 基地従業員関係は同0・8%減の四百六十七億六千四百万円を要求。在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定改定に合わせ、〇九年度から格差給などが廃止されるため減少した。

 提供施設の整備は、同五・八倍の二十六億六千三百万円、提供施設の移設は86・2%増の四十二億二千二百万円を計上。それぞれの大幅な伸びは、過年度の契約による歳出によるもの。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-30-M_1-002-1_001.html

 

琉球新報 社説    

米大統領選 米軍「変革」で沖縄再生を 2008年8月31日

 米大統領選挙は28日に民主党がオバマ上院議員を大統領候補として正式に指名。共和党も29日に大統領候補のマケイン上院議員が副大統領候補にペイリン・アラスカ州知事を選出。9月1日には共和党大会も予定され、米大統領選は11月の本選に向けて一気に加速する。

 地理的には遠い米国だが、国内最大の米軍基地を抱える沖縄にとって最も身近で最も影響力のある国である。次期米大統領がどのような政策を持っているか。県民の未来にも大きな影響を与える。

 民主党の正式な大統領候補となったオバマ氏は28日夜行われた指名受諾演説で、8年間のブッシュ共和党政権の失策を厳しく批判、さまざまな変革による「米国の再生」を打ち上げた。

 オバマ氏の演説は、25日に発表された米民主党の党綱領に沿っている。党綱領にはイラクからの16カ月以内の米軍戦闘部隊の完全撤退、アフガンには戦闘部隊二個旅団を増派、国防に関しては陸軍6万5000人、海兵隊2万7000人の増強計画が盛り込まれている。

 アジア政策では「日本など同盟国との強固な関係維持が基礎」と強調しているが、軍事増強路線が色濃い民主党のオバマ氏が大統領に選出されても、在沖米軍基地の整理縮小は望めそうにもない。

 だからと言って、あきらめるわけにはいかない。米国はブッシュ政権下で、巨額の赤字財政と景気後退の二重苦にあえいでいる。

 アフガン、イラクと続く戦争で軍事費は膨れに膨れ、年間50兆円を超える巨額になっている。民主、共和を問わず次期大統領にとって財政赤字の削減は重要課題だ。

 ノーベル賞経済学者でコロンビア大学のジョセフ・E・スティグリッツ教授は「戦争は経済を上向かせない」として、イラク戦費に3兆ドル(約327兆円)を投じたブッシュ政権を断罪している。

 沖縄が基地依存経済からの脱却を目指すように米国も軍事経済からの脱却が課題だ。

 次期大統領には、脱軍事、脱戦争経済も「変革」の主要課題と位置付け、米軍基地を抱える沖縄の再生にも思いをはせてほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135761-storytopic-11.html

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