福田首相辞任、県内も不安放置 沖縄密約訴訟、西山元記者の上告棄却/存在の有無判断せず など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(9月2日、3日)

2008年09月02日【朝刊】

県内も不安放置 福田首相辞任

原油高・格差・不景気・基地・・・

 福田康夫首相が突然辞意を表明した。一日夜、医療制度問題やガソリンや食品が高騰し経済問題が逼迫する中で突然の退陣表明。ちょうど一年前にいきなり辞職した前任者と同じように山積する問題を投げ出す指導者に「なぜ」「無責任だ」と県民の憤りは増幅した。格差や医療だけでなく基地問題はどう動くのか、今後への不安の声が各地で上がった。

 名護市内の大型スーパーで買い物をしていた主婦の具志堅洋子さん(50)は「政権運営が困難なのは分かっていたはずなのに、無責任。国の最高責任者が立て続けに職務を放棄したことで年金制度への不信感も増す」と怒った。

 浦添市内で山城興光さん(50)が営むパン屋では、原材料費が高騰する中、八月に一部商品の値上げに踏み切ったが、次は自身を含め従業員の人件費をカットするしかない、と覚悟を決めたところだ。「全然国民のことを考えていない。世の中が厳しい時こそ、国民と一緒に闘うのが政治家のあるべき姿ではないのか」と吐き捨てた。

 加納拓海さん(19)=沖縄市=は「年金や格差社会など、解決してほしい問題はたくさんあるが、何も改善されなかった。次の総理には、雇用や経済の活性化など、若者が期待を持てる社会づくりに取り組んでほしい」と話した。

 名護市で水泳インストラクターを務める新城裕和さん(36)は辞任のニュースを帰宅途中に知った。「びっくりの一言。どこまで進んだか分からなくなっている基地問題が、余計見えなくなる。一国のトップが一年で二人辞めたことを、子どもたちにどうやって説明しよう」と当惑の表情。

 石垣市内の居酒屋のテレビで辞任を知った門田満夫さん(49)は「人気はなかったが人柄は良かったので残念。衆議院を解散せずに辞めることは無責任だ。民主党の小沢さんにも一度、首相になってほしい」と政権交代に期待した。

 多和田美香さん(25)=沖縄市=は「何がやりたかったかみえない。消費者庁をつくると語っていたが、結果が出ていない。次の総理は、言ったことに責任を持って実現してほしい」と述べた。

 「なぜという驚きもあるし、やっぱりという感じもする」。那覇市の座間味和子さん(64)は、落ち着いた様子で退任を受け止めつつ、「原油高で農業や漁業、いろいろなところに影響が出て生活も苦しくなっている。米軍基地がある沖縄は、外交問題も無視できないので、次のリーダーには責任を持てる、冷静な人になってほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-025-1_005.html

 

2008年09月02日【朝刊】

県、対話継続を期待 福田首相辞任

普天間 交渉に暗雲/経済政策停滞を懸念

 福田康夫首相が突然の辞任を表明した一日夜、県幹部には驚きや戸惑いが広がった。米軍普天間飛行場の移設問題は、建設位置や危険性除去をめぐる政府と県の交渉が続いている。県首脳は「ようやく政府の理解が深まってきたところ。閣僚が代わると二重、三重の時間がかかる。これまでの議論を踏まえるのが信義則だ」とくぎを刺し、対話路線の継続を求めた。

 次期首相候補には麻生太郎自民党幹事長が有力視されている。麻生氏はかつて、普天間移設で下地幹郎衆院議員が提唱した「嘉手納統合案」に理解を示しており、県内部には「麻生首相になると議論が再燃しかねない」との警戒感もある。

 一方、県経済は原油高騰の影響で経済三十団体が県と国への支援を決議したばかり。県幹部は「政府は総合経済対策を粛々と進めてほしい」と経済政策の停滞への懸念を示した。

 沖縄振興計画は残り三年。ポスト振計の枠組みづくりには政府との綿密な協議が課題になる。「最近は中央の政治家の沖縄に対する理解が薄くなっていると言われる。これまで以上に沖縄に理解を持つ首相や閣僚が出てくるのを期待する。当然のことだ」と力を込めた。

 「まるで安倍さんのリプレイだ」―。福田首相の辞任会見を自宅のテレビで見た県幹部は絶句した。臨時国会中に政権を放り投げた安倍前首相に「無責任だ」との批判が上がったのが昨年の九月十二日。かつて見た光景がわずか一年足らずで繰り返された。

 支持率低迷にあえいだ福田内閣だが、景気浮揚策として八月二十九日、中小企業向け融資の信用保証枠の拡大などを盛り込んだ総合経済対策を決めた。原油や原材料価格の高騰で県内に「経済危機」への懸念が広がる中、県は政府の対策の詳細を見極めた上で対応を決め、県議会九月定例会に補正予算案を提出する道筋を描いていた。ある幹部は「首相が代わっても手続きは粛々と進めてほしい」と期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月02日【朝刊】

嘉手納6割基準超え/基地騒音W値

昨年度県調査 普天間は3地点

 県文化環境部は一日、米軍嘉手納飛行場など県内三空港周辺の二〇〇七年度航空機騒音測定結果を発表した。騒音の度合いを示すうるささ指数(WECPNL=W値)は、嘉手納飛行場周辺で十五測定地点のうち六割の九地点、米軍普天間飛行場周辺で九地点のうち三分の一の三地点で環境基準を超えた。県文化環境部の知念建次部長らは近く米軍や沖縄防衛局など関係当局を訪ね、改善を要請する。

 測定地点は米軍の嘉手納、普天間の両飛行場と那覇空港周辺の二十八カ所。W値の平均が環境基準(七〇―七五デシベル)を超えたのは、嘉手納周辺九地点、普天間周辺三地点、那覇空港周辺一地点で計十三カ所だった。

 騒音発生回数は嘉手納飛行場周辺では、〇七年十一月から〇八年一月までのF15戦闘機の飛行停止があったこともあり、十五測定地点中十四地点で減少した。一方、普天間周辺では九測定地点すべてで増加。W値も七地点で前年度を上回るなど悪化が目立つ結果となった。

 W値が最も大きいのは、嘉手納周辺で北谷町砂辺の九一デシベル(最大値一一九・八デシベル)、普天間周辺で宜野湾市上大謝名の八五デシベル(最大値一二二・二デシベル)。嘉手納周辺では、〇二年度以降減少傾向だった夜間―早朝(午後十時―午前七時)の騒音発生回数が嘉手納町役場の測定地点で増加に転じた。

 嘉手納町基地渉外課は深夜から早朝の騒音が増えたことについて「エンジン調整音などが考えられる」とみている。

 一九九六年の日米合同委員会による「騒音規制措置」合意から十年以上たっても改善されない騒音被害。「知事が現場で爆音を実感し、問題解決に動いてほしい」。地元住民からは、いら立ちの声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-025-1_001.html

 

2008年09月02日【朝刊】

米軍発注情報 和訳して配信/建設新聞出版

 沖縄建設新聞の関連会社の建設新聞出版(那覇市、大久勝社長)は1日付で、米軍関係の建設工事関連発注情報を日本語訳してファクス配信する「米軍調達情報(建設版)」を創刊した。県庁で発表した大久社長は「言葉の壁を乗り越え、不振にあえぐ県内建設業界がチャンスをつかむきっかけになれば」と語った。

 米国防総省や軍ホームページ(HP)などに掲載される沖縄関連の発注情報を翻訳し、業務内容や入札条件、提出期限、問い合わせ先などの情報と落札結果を配信する。近日中に専用HPも開設し、過去3年分程度の入札・落札情報を検索できるようにするほか、入札登録から施工までのマニュアルとなるガイドブックも発行する予定だ。

 建設新聞出版によると、沖縄の米軍基地関連の工事は30社程度が受注実績を持つが、各社が独自に発注情報を得ているのが現状。各軍や基地ごとに発注され、県内で年間どの程度の工事発注があるかも把握されておらず、「データベースとしても貴重なものになるはずだ」(大久社長)という。

 購読料は年間2万8000円、随時発行で目標は3000部程度。軍関係の物品調達情報配信も今後、検討するという。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-013-1_005.html

 

2008年09月02日 沖縄タイムス 社説

[福田首相退陣表明(上)]

総理って、そんなものか

 福田康夫首相よお前もか―国民はそう思っているのではないか。

 自前の閣僚によって臨時国会を乗り切ろうとしていた福田首相が、突然政権を投げ出した。

 安倍晋三前首相に続く政権放棄である。どのような理由であれ国民を裏切る行為であり、政治家としての見識を疑わざるを得ない。

 首相は一日午後九時半から開いた緊急会見で、インド洋での自衛隊の給油活動の延長をめぐり、公明党と方針の違いがあることを暗に示した。

 この問題では北海道洞爺湖サミットの場で、ブッシュ米大統領に継続することを示し批判を受けた経緯がある。

 これには自民党内からも「国際公約を果たせない首相はこの秋に立ち往生せざるを得ない」という声があがっていた。

 不安が当たったということもできるが、公明党が衆院再議決への慎重姿勢を崩さなかったことが退陣を決断させた一因になった。

 首相は「大きな前進のための基礎を築くことができた」とも述べた。

 緊急経済対策の策定などを指しているのだろうが、その具体的な内容は十二日に召集する臨時国会で論議していくはずではなかったのか。

 それについての説明は十分ではなく、国民には全く分かりにくいと言うしかない。 

 責任を放棄した責任は重いのであり、安倍前首相の辞任劇に似た事態は政治に対する国民の信頼をさらに失墜させたといえよう。

 首相は「この際、新しい体制の下、政策実現を図らなければならない」と説明している。

 臨時国会を前にしたこの時期での表明については「今が政治空白をつくらない一番いい時期と考えた。新しい人に託した方がいい」と述べた。

 だが退陣を決断した背景には、臨時国会召集や定額減税の調整に首相の意向が届かなかったことも大きく影響したとみていいだろう。

 内閣改造でも内閣支持率が上がらず、自らの手で解散に踏み切るのは困難と判断したのも確かである。

 公明党はじめ「福田首相では(選挙を)戦えない」という与党内の空気もまた首相を追い詰めた。

 首相は道路特定財源の一般財源化に加えて、消費者庁の設置などに触れて「国民目線に立った」政策を実現させたと強調した。だが、それとてすべてが道半ばではないか。

 首相は昨年、安倍前首相の退陣を踏まえて「政治に対する信頼を取り戻すことが喫緊の課題だ」と表明していた。

 にもかかわらず、原油高・物価高による国民生活への深刻な影響、後期高齢者医療制度や宙に浮いた年金問題など、まさに解決を急がなければならない問題に指導力を発揮することができなかった。

 内外に課題が山積する中での退陣は、日本の政治に対する外交的信頼をも失墜させたといえる。

 自民党は早急に総裁選を実施することになるが、さらに大きな十字架を背負ったのは間違いない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-005-1_001.html

 

2008年09月02日【夕刊】

知事訪米予算1500万円/与党に説明 補正総額26億円

県は二日、日米地位協定改正や米軍基地の整理・縮小など基地問題を訴えるため、仲井真弘多知事の訪米予算として約千五百万円を県議会九月定例会に提出する補正予算案に計上することを決めた。同日午前開かれた与党代表者への議案説明で伝えた。仲井真知事は十一月に行われる大統領選後、来年一月までに訪米する方針だ。同知事の訪米は就任後初めて。

 県内産業や農業や漁業の原油高騰対策では約三千万円を計上する。今後、政府の対策を見ながら具体化させる考えだ。

 ほかに、沖縄振興対策特別調整費を活用した待機児童対策として、約十二億四千七百万円を計上し、同基金設置条例案も併せて提出する。

 また、離島遠隔教育の事業費に約八千万円を盛り込む。補正予算総額では約二十六億円の規模になる見込みだ。九月定例会は十七日に開会する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-E_1-001-2_003.html

 

2008年09月03日【朝刊】

西山元記者の上告棄却/存在の有無判断せず

沖縄密約訴訟

 沖縄返還交渉の取材で、日米両政府の「密約」がつづられた外務省の極秘公電を手に入れ、国家公務員法違反罪(秘密漏洩教唆)で有罪とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)が、密約を黙認した検察官の一方的な訴追で名誉を傷つけられているとして、国に密約を認めて謝罪するよう求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は二日、西山さん側の上告を棄却する決定をした。「密約」の有無を判断をしないまま、訴えを全面的に退けた一、二審判決が確定した。

 昨年三月の一審・東京地裁は、返還交渉の当事者だった吉野文六氏ら当時の外務省高官が、西山さんの刑事裁判で偽証したとする訴えなどに、除斥期間(損害賠償請求権の存続期間、二十年)を適用し、西山さん側の請求を棄却。

 今年二月の東京高裁も、一審判決を踏襲して西山さん側の控訴を棄却した。

 米側の公文書で密約が裏付けられるたびに、密約を否定する政府高官らの発言に、西山さん側は名誉棄損と訴えたが、判決は「政府の公式見解を一般的に述べただけ」で西山さんには言及していない、として退けた。

 また密約を記した米公文書の存在が報道された二〇〇〇年五月、当時の河野洋平外相が吉野氏に密約を否定するよう要請したとされる点についても「そのような要請をしたとしても、政府の公式見解に沿って報道に対応するよう働きかけたにすぎない」とした。

 西山太吉さんの話 行政と司法が完全に一体化した高度な政治的判断で、司法の自滅だ。この民事訴訟は、国家権力の存立基盤を侵害するほどの重大な問題を提起している。

 代理人の藤森克美弁護士の話 裁判官が「密約」の事実に向き合おうとしておらず、今回の最高裁の決定は裁判史上に残る汚点だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「密約」文書の公開請求/県内外記者ら63人/沖縄返還3通指定

沖縄返還直前に日米両政府高官が交わした3通の公文書について情報公開請求したジャーナリストら=2日、東京都千代田区

知る権利追求 提訴も視野

 【東京】沖縄返還に至る過程で日米の政府高官が交わした「秘密合意議事録」など三通の行政文書について、県内外のジャーナリストや学者らが二日、外務と財務両省に情報公開請求した。原則として三十日以内に回答がある。「文書不存在」という回答が予想されており、請求者らは、行政処分取り消しを求めて東京地裁への提訴も検討している。

 請求した文書は、一九六九年十二月二日付で日米財務官僚が交わした「秘密合意議事録」と七一年六月十一、十二両日付で日米の外交官が交わした「秘密合意書簡」の計三通。具体的文書を指定して公開請求をしたのは初めてという。

 請求者の共同代表は、ジャーナリストの原寿雄さんと筑紫哲也さん、憲法学者の奥平康弘さんの三人。そのほか国家公務員法違反罪で訴追された元毎日新聞記者の西山太吉さんや我部政明琉大教授ら計六十三人が名を連ねた。

 沖縄返還をめぐっては、米側負担と定められた軍用地の原状回復補償費四百万ドルを日本側が肩代わりする密約など、複数の秘密合意があることが米側文書で裏付けられたが、日本政府は一貫して否定している。

 都内で行われた会見で、原さんは「日本のジャーナリズムとして放置できない問題。知る権利の新しい戦い方として情報公開請求をした」と説明。奥平さんは「日本の民主主義の根幹を問うものであり、政府が『不存在』という回答をしても、追及の手を緩めてはならない」と強調した。

 西山さんは「文書には日米の交渉責任者のサインがあり、存在しないと逃げることはできない。国民の主権を根本的に検証するものだ」と意義を語った。

 情報公開を請求した県内メンバーも二日、県庁記者クラブで会見を開いた。

 沖縄対外問題研究会の宮里政玄代表は「沖縄返還交渉も(海兵隊の)グアム移転も原理は同じ。沖縄が利用されている」と指摘。フリージャーナリストの土江真樹子氏は「沖縄で生きる私たちがまず密約を知る権利がある。沖縄の現状の基になる返還密約を明らかにしたい。多くの県民、国民の理解や支援を求めたい」と呼び掛けた。

 沖縄大学の新崎盛暉名誉教授は「米国は強引だが、一定のルールがあって何年後に情報を公開するが、日本政府は一切なく、外交姿勢に緊張感を欠いている」と政府の外交姿勢を非難した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-027-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

競技場整備に米軍難色/高校総体カヌー場

共同使用域常設認めず/宜野座

 【東京】二〇一〇年に県内で開催される高校総体で、カヌー競技が行われる宜野座村が、漢那ダム隣の日米共同使用地域(キャンプ・ハンセン)に常設の競技施設を整備する計画について、米軍が常設では認めない意向を示していることが分かった。

 計画は、ダムをカヌーレーンとして使い、ゴール地点となる共同使用地域には、記録を計測する高さ十二メートルの「決勝タワー」や観覧席、進入道路を建設。大会後、タワーは野鳥観察施設として活用する方針。しかし、大会後も活用できる常設ではなく仮設なら認めると米軍が難色を示しているため、整備に支障が出ている。

 同村の仲宗根勲副村長と県カヌー協会の下地幹郎会長(衆院議員)らは二日、関係省庁を訪ね、計画への理解と支援を要請した。

 下地会長らによると、外務省は「常設が造られるよう米側と交渉し努力する」と協力を表明。防衛省は「全面的に協力する。タワー建設費も基地交付金などを活用して予算を付けたい」と述べたという。

 仲宗根副村長は「今まで調整がはかどらなかったが一歩前進。大会に向け取り組む思いを強くした」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-027-1_003.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「円滑な推進」再確認/那覇軍港移設協で国・地元

 【東京】米軍那覇港湾施設(軍港)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖合への移設に関し、第十五回同港湾施設移設、第十五回同港湾施設移設受け入れ、第十四回県都那覇市の振興に関する三協議会が二日、防衛省で開かれた。国、県、那覇市、浦添市などの関係者が出席し、事業を円滑に進める方針を再確認した。

 移設協で防衛省は、那覇港湾施設の移設・返還に向けた基本検討を現在実施中で、本年度は代替施設の建設予定水域で埋め立てに必要な測量を予定していると説明。代替施設と民港、港湾計画との整合性を図りながら円滑な移設を進め、具体的事項については引き続き事務レベルで適切に対応する方針を確認した。

 受け入れ協では、防衛省と内閣府から、二〇〇九年度の浦添市の事業計画に関する予算を概算要求で計上したことなどが報告された。県都那覇市協では、内閣府から、奥武山公園の野球場整備など那覇市の振興に関する経費を〇九年度予算概算要求に計上したことなどが報告された。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-003-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

本部町「P3C」勝利集会/建設阻止祝う

 【本部】防衛省が本部町豊原に計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設断念を発表したことを受け、地元で反対運動を続けてきた住民らでつくるP3C阻止対策委員会(川上親友会長)は十三日、運動の拠点となった闘争小屋前広場で集会を開く。

 川上会長は「一九八八年の上本部中学校での反対集会から二十年。長かった戦いの締めくくりが勝利に終わったことに、喜びを感じ、安堵している。多くの方々の支援があればこそ。みんなで勝ち取った勝利を祝いたい」と参加を呼びかけている。

 集会は午後六時から。交流会も予定している。問い合わせ先は豊川区(元豊原区)事務所、電話0980(48)2351。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-026-1_005.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「司法の独立 放棄」/識者ら批判

問題意識共有に意義

 沖縄返還をめぐる「密約」の有無の判断に、司法は最後まで踏み込むことはなかった。外務省の極秘公電を入手し有罪とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)が、国に密約を認め謝罪を求めた裁判は、訴えを退ける判決が確定した。識者やジャーナリストらは「司法の独立を自ら放棄した」と批判。一方で、「現在の沖縄の基地負担とつながる密約が、本質的問題として認知された」と、意義を強調した。

 米側公文書により密約を裏付けるなど、日米交渉に詳しい我部政明琉球大学教授は、「地裁も高裁も最高裁も結局、門前払いで、実際の中身について議論はしなかったということだ」と批判。原告代理人の藤森克美弁護士は、「第三小法廷の堀籠幸男裁判官は、西山さんの刑事裁判の最高裁判決で判例解説を書いた当時の最高裁調査官。自分が書いた当時の解説と、その後に明らかになった米政府の公文書の内容を照らせば、当時の判決が誤判であったことは明らか」と指摘した。

 「西山さんの行動で、多くのジャーナリストが本質部分で問題意識を共有できたことは、有意義だ」。日本ジャーナリスト会議の亀井淳代表委員は力を込めた。裁判所に対しては失望感を示しつつ、「政府が密約を隠ぺいし、その負担を今も沖縄が背負っていることが、広く認知された。今後も真実を求める運動が展開されるだろう」と期待した。

 ジャーナリストの岡留安則さんは「裁判所と政府・与党のなれ合い関係、米側しか見ず国民を欺く外務省の体質を変えるには、世論、政治主導で大なたを振るう必要がある」と強調。しっかりした情報公開システムをつくる必要性を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-026-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

問題の本質 向き合わず/[識者評]田島泰彦上智大教授

 沖縄返還の「密約」とは何だったのかが一番に問われた裁判で、最高裁は真正面から事実に向き合わなかった。

 この国の本質にかかわる問題に、またも司法が目を背けた。

 この裁判には、西山太吉さんの名誉回復という個人的な問題にとどまらず、国会に提示された沖縄返還協定が、本当に政府の説明通りだったのかという重大なテーマが含まれていた。密約があったということになれば、国権の最高機関で唯一の立法機関たる国会に、うそが提示されたことになる。すなわち憲法違反だ。

 それを裁判所でなくしてだれが裁くか。その役割を自ら放棄してしまった司法の現実が、あらためて確認された結果と言える。

 沖縄返還をめぐる「密約」は、単なる疑いではなく、米国の公文書で何度も裏付けられ、何よりも当時の事務方の最高責任者だった吉野文六・元外務相アメリカ局長が密約を認める証言をしている。

 にもかかわらず、その事実を明らかにしなかった司法とは一体、何なのか。

 ジャーナリストら有志で行った密約に対する情報公開請求は、既に明らかになっている事実について政府に説明責任を求めるという新しい試みになる。

 この取り組みでさらに密約の実態が明らかになれば、今回の最高裁決定がいかに問題の本質に向き合わないでたらめなものであったかが、あらためて明らかになるだろう。(談、「沖縄密約訴訟を考える会」世話人)

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-002-1_005.html

 

2008年09月03日 沖縄タイムス 社説

[福田首相退陣表明(下)]

政治空白は許されない

 安倍晋三前首相に続いて今度は福田康夫首相が唐突に辞任を表明した。議院内閣制の下で最も厳粛な立場にある国政の最高責任者が、わずか一年の間に、続けて二人も、果たすべき責任を果たさずに政権を投げ出したのである。自公連立政権が完全に行き詰まった、と言うべきだろう。

 だが、自民党の中には、この事態を政治の深刻な危機だと受け止める感度が著しく欠けているように見える。

 自民党は辞任表明から一夜明けた二日、総裁選挙を十日に告示し、二十二日に投開票することを決めた。

 総裁選に複数の候補者を立て、華々しく選挙戦を戦うことによって有権者の耳目を自民党に集め、その余勢をかって、「選挙の顔になる総裁」の下で解散・総選挙に打って出る。そのような考えらしいが、有権者を甘く見るなよ、と言いたい。

 二代にわたって「職場放棄首相」を出した自民党の責任は極めて重い。

 総裁選によって自民党の新しい総裁が選ばれ、その総裁が首班指名で福田首相の後継に選ばれる。はっきり言ってこれは与党内の政権たらい回しである。

 衆議院では確かに与党が三分の二を超える圧倒的な議席を保持している。しかし、この議席は二〇〇五年九月の「郵政選挙」で得た議席だ。その後一度も総選挙の洗礼を受けないままに首相だけがコロコロ替わるのは、政権の正当性という点で問題が多い。

 この異常な事態を解消するためにもできるだけ早く総選挙を実施し民意を問うべきだ。

 福田首相が「党に迷惑をかけたくない」との一心から、タイミングを見極めて計算づくで辞任を表明したのは明らかである。

 福田首相は「新しい体制の下、政策実現を図らなければならない」と言っている。だが、新しい体制になったからといって「逆転国会」の現実が変わるわけではない。

 基本的な構図が変わらない以上、臨時国会も緊迫した波乱含みの展開になるのは避けがたい。インド洋での海上自衛隊の給油活動を継続するための衆院再可決に公明党が慎重姿勢を示しているだけになおさらだ。

 つまるところ、次期政権を選挙管理内閣と位置づけ、できるだけ早く解散・総選挙を実施する以外に混迷を打開する道はないのである。

 景気が後退局面に入り、経済運営が厳しさを増す中で、日本の政治はいよいよ「解散政局」に突入する。

 民主党が勝てば政権交代が実現する。自公政権が現有議席を減らし、過半数をかろうじて維持する結果になった場合、衆参両院のねじれ状態が解消されないまま、衆院での再可決も不可能になる。

 今後、政界再編の動きが顕在化するのは間違いないだろう。すでにその兆しが出始めている。

 警戒しなければならないのは、政治空白が長引き、肝心の国民生活が置き去りにされることだ。国政が停滞し、国民がそのしわ寄せを受けるようなことがあってはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-005-1_001.html

 

琉球新報 社説    

福田首相辞任 解散・総選挙で信を問え/無責任すぎる政権与党 2008年9月3日

 有為転変、急転直下の出来事に、国民の多くがあぜんとしたことだろう。「またか」との声も多かった。

 1年前、臨時国会で所信表明をした直後に辞任した安倍晋三前首相に次ぐ失態である。

連立内の対立鮮明に

 一国の首相が思い付きのように簡単に辞任する。安倍前首相は「健康」が理由だったが、福田康夫首相は理由も釈然としない。

 「唐突辞任」が2人も続くと日本の政治家の打たれ弱さが心配だ。ひ弱な国のひ弱な政治家、その代表がひ弱な首相である。

 原油高と物価高騰で国内景気が後退する中で、中小零細企業は政府の景気対策を最後のよりどころに踏ん張っている。

 従業員や家族を抱え、辞めるに辞められない企業経営者たちの目に「はい、辞めます」と簡単に政権を投げ出す首相は、どう映っただろうか。「無責任」のそしりは免れない。

 合従連衡の自公政権だが、中身は同床異夢の感だ。インド洋での給油活動継続、景気対策での定額減税など自公間の政策相違、対立、足並みの乱れが鮮明になってきた。

 連立を担う公明党が、首相方針に公然と異を唱え始めたことも首相退陣の決断を後押ししたとの見方もある。「呉越同舟」政権の限界も透けて見える。

 この時期の辞任に福田首相は「今が政治的空白をつくらない一番いい時期と考えた」と説明したが、堅白同異の言い訳にすぎない。一国の首相が突然辞任して空白が生まれないわけがない。

 福田内閣は発足直後から政治資金、年金記録、C型肝炎、防衛省不祥事、揮発油税の暫定税率問題、日銀正副総裁人事の難航など、次々に噴出する政治課題の大波に大揺れに揺れ続けてきた。

 後期高齢者医療制度への批判も福田内閣の支持率低迷の原因だ。原油高で急速に冷え込む景気に効果的な対策を打ち出せない内閣に、国民の不信感も増した。

 人心一新を目指し1カ月前に断行した内閣改造も直後の農相事務所費問題が浮上しイメージダウン。安倍前内閣の末期と同じ様相となった。目前の臨時国会でも「ねじれ国会」の厳しい運営と、野党からのスキャンダルと政策批判の集中砲火で「火だるま内閣」となるのは必至だった。

 いずれにせよ任期途中で政権を突然投げ出す無責任首相を生み続ける自公政権は、すでに政権担当能力を喪失している。

 総選挙で国民の信任を受けることなく党内選挙で就任した首相だ。辞めるときも国民への責任はかけらも感じないであろう。

 そもそも選挙なしで政権を党内でたらい回しにする。密室政治と同じだ。議会制民主主義が制度として正しく機能していない。今度こそ早期解散・総選挙で、しっかりと民意を問うべきだ。

内閣に必要な使命感

 福田首相の辞任表明を受け、自民党は次の首相選びとなる総裁人事に着手している。現段階では麻生太郎幹事長が有力視されている。

 加速する「年内総選挙」の流れを踏まえ、小池百合子元防衛相への待望論もあると聞く。

 福田首相の突然の辞任に仲井真弘多知事は「基地問題はじめ経済振興等に配慮してもらった」と評価した。だが、仲里全輝副知事は「経済対策や原油高騰など政府の緊急かつ重要な課題が山積する中、なぜ今の時期に辞任するのか理解できない」と率直に語っている。無責任首相に格別の配慮は無用だ。

 次期首相に求めるのは責任感だ。どんなに困難でも途中で政権を投げ出さず、国民と最後まで苦難を共に乗り切る。強い使命感を持った首相の誕生を望みたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135873-storytopic-11.html

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