グアム移転8550人 検定撤回、なお要求 外出禁止令を緩和/在沖米海兵隊 GBS訓練嘉手納からグアム移転、米軍計画 新嘉手納爆音訴訟が結審 F15未明離陸中止を要求/三連協、米軍・国に など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(9月29日から10月3日)

2008年09月29日【朝刊】 政治

グアム移転 8550人/在沖海兵隊 部隊の詳細判明

再編計画 海軍が米議会報告


 在日米軍の再編計画で、グアムに移転する在沖米海兵隊の具体的な部隊や人員などが二十八日までに、米海軍省がまとめた軍事計画報告書で明らかになった。ウィンター米海軍長官が十五日、米議会に報告書を提出。海兵隊の運用は太平洋軍の基本的方針として、司令部機能をグアムへ移転し、沖縄に兵站支援のハブ機能を維持する考えを示している。報告書によると、グアムに移るのはキャンプ・ハンセンの第三海兵遠征軍司令部群やキャンプ・コートニーの第三海兵師団司令部、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の第三海兵兵站群司令部など。人員の内訳は司令部隊三千五十人、地上司令部隊千百人、航空司令部隊千八百五十人、兵站司令部隊二千五百五十人の計八千五百五十人を明記している。(吉田伸)

 第三海兵遠征軍(?MEF)の能力を沖縄とグアム、ハワイの三カ所に配置し、多様な拠点で演習を実施することで、分散した部隊の相互運用性を維持すると説明している。

 移転に伴い、グアム島の七百三十二万平方フィート(六十八万平方メートル)に家族住宅三千五百二十戸、独身下士官用隊舎三千四百室、独身将校用官舎四百室などの建設計画も盛り込んだ。

 また、施設建設費として、二〇〇九会計年度(〇八年十月―〇九年九月)予算で二千八百万ドルを計上。一〇年度は三億六千五百万ドルの歳出意向を盛り込んだが、「暫定的なものに過ぎず、日米の予算執行の推移を見ながら、議論が必要だ」と述べるにとどめた。

 日米両政府は二〇〇六年四月、移転費総額百二億七千万ドルのうち、日本側が59%にあたる六十億九千万ドルを負担することで合意している。

 だが、米政府監査院(GAO)が今月十七日に発表した報告書では、米太平洋軍高官が、高速輸送船配備や移動経費などの予算があらたに必要とし、合意額をはるかに上回る百五十億ドル以上見積もっており、事業費総額は不確定な要素が多い。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-29-M_1-001-1_005.html

 

2008年09月29日【朝刊】 社会

検定撤回 なお要求 県民大会1年

6団体代表きょう会見/委員長就任も要望


 二〇〇六年度高校歴史教科書の検定で、文部科学省が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から、日本軍強制の記述を削除したことに抗議する「教科書検定意見撤回を求める県民大会」から、二十九日で満一年を迎えた。復帰後最大の十一万六千人(主催者発表)が参加し、「軍強制」の記述を削除した検定意見の撤回と記述回復を求めたが、いまだ実現していない。

 大会呼び掛け六団体の代表者らは二十九日、県庁で会見し、県民大会決議の実現や空席となっている委員長に高嶺善伸県議会議長の就任などを求めるアピール文を発表する。教科書執筆者も十月中旬に都内で懇談会を開き、「日本軍強制」記述の再訂正申請に向け、本格的に動きだす。

 県民大会によって、教科書で「集団自決」の背景や要因が従来より詳しく説明されるようになったものの、検定意見は堅持され、「日本軍強制」の文言が削除された教科書が四月から使用されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-29-M_1-001-1_003.html

 

2008年09月29日【朝刊】 社会

真実再び 吉川さん「参加者に勇気もらった」/県民大会から1年

背押され 走り続けた


 「日本軍の命令、誘導、強制がなければ『集団自決』は起こらなかった」。渡嘉敷島で「集団自決(強制集団死)」を体験した吉川嘉勝さん(69)は、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」で証言者として訴えたことで、生活が大きく変わった。「参加者から勇気をもらった」。約十一万人の熱気に包まれた宜野湾市・宜野湾海浜公園を一年ぶりに訪れた。(平良吉弥)

 あの日から走り続けている。大会終了後、求められると県外にも足を運び、北海道から福岡県まで講演に出向いた。渡嘉敷島を訪れる小中高生や観光客らを「集団自決」のあった「玉砕場」近くに案内することも増えた。「本土への発信が必要」との思いを強くしたからだった。

 大会後、「(当時六歳の)子どもに何が分かるのか」とインターネット上で名指しで中傷された。同級生やこれまで口をつぐんできた島の八十代の女性から「逃げる時に、あんたのお父さんが倒れていた」などの証言を聞くことで、使命感と自信を深めていった。

 大会当日、壇上から見えた人の波。あの時のことを思い出すと今でも震えが来る。

 「五万人を超えると思ったが十一万人以上の参加者とは。大いなる勇気がわいた。沖縄戦の史実の歪曲を許さないという参加者の怒りを感じた。沖縄の平和学習は十分に機能していた」

 元中学校長として喜びも感じていた。

 「県民大会を契機に『集団自決』が起きた背景に理解は広がっている。日本軍のいない島で『集団自決』は起きていない。軍強制を否定する中傷などは認識不足だ」と、じっと前を見据えた。

 だが、教科書検定意見の撤回と「軍強制」の記述回復の願いはいまだ実現していない。「(政府が)検定意見を撤回しないのは『集団自決』が『尊厳死』、『家族愛による死』だったとしたいからではないか。日本を戦争のできる国にしようとする動きと一致している」と話す。「歴史の歪曲は絶対に許せない。このままでは沖縄戦の時のように国の捨て石にされてしまう」

 県民大会の会場だった公園では小学生がサッカーの試合をしていた。吉川さんは児童をながめながら言葉に力を込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-29-M_1-021-1_001.html

 

2008年09月29日 沖縄タイムス社説

[県民大会から1年]

継承への確かな道筋を


 沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」は、当事者にとって、言葉では尽くせない「語り得ぬ体験」だった。

 苦痛に満ちた体験の重さに比べると、言葉はあまりにも軽く、語ろうとする瞬間に、記憶の淵から、死んだ子どもや親の姿が立ち現れ、心をかき乱す。

 当事者が過酷な体験を語り始めたのは「集団自決」に関する教科書記述が文部科学省の検定によって書き換えられたからだ。

 宜野湾海浜公園で開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」から、きょうでちょうど一年になる。

 お年寄りから子どもまで、世代を超えて集まった、あの圧倒的な人の波は何だったのか、とあらためて思う。この一年の間に、何が、どう変わったのだろうか。

 「沖縄戦体験の風化」という言葉がこれまで、幾度となく使われてきたが、県民大会が示したものは、沖縄戦に関する個人の記憶が家族の記憶として受け継がれ、地域の記憶・集団の記憶として共有されているという事実だったのではないか。

 県民大会を契機に、県内の高校教師を中心に、平和教育の新たなあり方を模索する動きが広がっている。全国的にも、教科書検定や「集団自決」問題を一から学び直そうという取り組みが増えた。

 体験者の証言を幅広く聞き取ることができるのは、あと十年かそこらだろう。この限られた時間に、史実を踏まえた体験継承の確かな道筋をつけること。それが今、私たちに求められている。

 文部科学省は、検定によって日本軍による「強制」の表現を削除した。超党派の県民要求を背景に、教科書会社はあらためて該当部分の訂正を申請し、その結果、「強制」が「関与」に変わった。

 軍の関与という形で記述が復活したのである。しかし、検定意見そのものは依然として撤回されていない。

 二〇〇五年度まで軍の強制記述が認められてきたにもかかわらず、〇六年度用教科書にクレームがついたのは、安倍晋三政権の誕生と無関係ではない。

 安倍政権を取り巻く政治的空気に応える形で、教科書調査官が検定意見の原案をまとめ、それが沖縄戦専門家のいない審議会で通ってしまったのだ。

 検定制度の透明性をどう確保していくか。これもまた、今回の問題が提起した重要な課題であるが、具体的な改善策はまだまとまっていない。

 作家の大江健三郎さんらを被告とする「集団自決」訴訟で大阪地裁は三月、元戦隊長が「集団自決に関与したことは十分に推認できる」との判断を示した。

 

 名誉棄損で訴えたにもかかわらず、元戦隊長は大江さんの著作『沖縄ノート』を「提訴後に初めて読んだ」のだという。

 原告側の主張は、係争中でありながら、教科書検定の検定意見に反映された。

 原告の主張を退け、住民の証言に重きを置いた地裁判決は、この問題を考える上で里程標になるものだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-29-M_1-005-1_001.html

 

琉球新報 社説

歴史教科書検定 県民大会要求実現は道半ば 2008年9月29日

 教科書検定意見撤回を求める県民大会からきょう29日で1年を迎えた。

 「集団自決」(強制集団死)の日本軍強制の記述復活を求め、11万6000人(主催者発表)が参集した大会は、政府を突き動かす原動力にもなった。

 その後、教科書会社6社の訂正申請を教科用図書検定調査審議会(検定審)が承認し、それを受けて渡海紀三朗文部科学相(当時)もすべて承認した。

 訂正申請で「集団自決」の背景・要因が詳しく記述されたことは県民大会の成果の一つである。その一方で、「日本軍の強制」の明確化は認められなかった。

 県民大会で決議した教科書検定意見の撤回と記述の回復には至っておらず、まだ道半ばである。

 検定審は「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現である」との検定意見を付して「集団自決」での日本軍の「命令」「強制」などの表現を削除、修正させた。その検定意見が撤回されない以上、歴史教科書問題は解決したとは言えない。

 県民大会後、検定審は日本軍の「直接的な命令」「強制」についての断定的記述は「生徒が誤解する」との指針をまとめ、訂正申請した教科書会社に通知していた。

 歴史教科書問題に対する検定審の姿勢は何ら変わっていないのである。

 にもかかわらず、この間の県民運動は停滞している感が強い。

 文科相の訂正申請承認後、自民党県連は「100パーセント満足できる結果ではないが、実行委員会の役割は終わった」として、県民大会実行委の解散を提起する方針を決めるなど、超党派組織は事実上崩壊している。

 県民大会実行委員長の不在も約3カ月続いている。

 歴史的事実は一つであり「100パーセント満足できる結果」が得られない限り、県民運動は継続する必要がある。

 次代に正しい歴史を伝えることは、県民の責務である。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136634-storytopic-11.html

 

2008年09月29日【夕刊】 政治

沖縄言及「振興」のみ 基地は触れず/麻生首相が所信表明

 【東京】麻生太郎首相が二十九日の所信表明演説で沖縄関係に触れるのは、「地域の再生」のテーマで、「沖縄の声に耳を傾け、沖縄の振興に引き続き取り組みます」と述べる部分のみ。

 県内基地問題への言及はなく、福田康夫前首相の昨年十月の所信表明演説と比べて減少する。

 福田前首相は、在日米軍再編に関連して「抑止力の維持と負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄など地元の切実な声に耳を傾けて、地域の振興に全力を挙げて取り組みながら、着実に進める」と述べていた。

 麻生首相は、福田前首相のように基地問題への取り組みの中で沖縄の問題に触れる形ではなく、地方分権や災害対策などに触れる「地域の再生」に盛り込む。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-29-E_1-001-2_001.html

 

2008年09月29日【夕刊】 社会

平和学び1年 10代が映像化/9・29県民大会取材 さらに掘り下げ

那覇西高放送部 「私も歴史受け継ぐ側」


 沖縄戦を伝えることの大切さと難しさをテーマに、那覇西高校放送部がちょうど一年前のきょう、宜野湾市内で開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」や慰霊の日などの記録をまとめたビデオを制作している。県民大会での取材をきっかけに、ガマめぐりや体験者の証言聞き取りなど一年間かけて学び、約八分の作品にまとめる。十一月の九州高校放送コンテスト県予選に出品する予定だ。(宮城貴奈)

 県民大会の模様を昨年十一月の九州高校放送コンテスト県予選に盛りこむ予定だった部員たち。「自分たちが勉強不足のままで、いい作品はできない」と資料の読み込みや体験者へのインタビュー、ガマ体験など平和学習と制作期間に一年以上かけた。

 会場の中央で、額の汗をぬぐいながらじっと舞台を見つめるお年寄りや若者のまなざしを撮影した平田愛莉さん(二年)。県民大会に参加した際、「自分も(すでに)沖縄戦を受け継ぐ側になっている」と実感した。

 ただ、部員たちは自ら積極的に史実を学ばなければ教科書の記述に誤りや間違いがあっても、そのまま次の世代に伝えてしまうのではないかとの思いを強くしたという。「これで本当に受け継ぐことができるのか」との疑問が沖縄戦をあらためて学び直すきっかけになった。

 今後は、県民大会を取材した県外の高校と、沖縄戦をテーマに学ぶ交流も計画されている。部員らは「使っている教科書や県民大会、沖縄戦についてどう考えるか意見交換、制作したビデオも見てほしい」と県外の高校生との交流に期待を寄せている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-29-E_1-005-2_002.html

 

2008年09月30日【朝刊】 政治

外出禁止令を緩和/在沖米海兵隊/カード別 午前2時も

 【北中城】在沖米海兵隊報道部は二十九日、在沖を含む国内の海兵隊と海軍兵士の外出禁止令(午前零時―午前五時)を緩和し、上官に素行が優良と判断された兵士については適用外とすると発表した。新たなリバティーカード制度として、米兵をゴールドカード、レッドカード、カード非保持者の三種類に分け、ゴールド保持者は午前二時まで基地外で飲酒できるとした。

 一方、レッドカード保持者は四月から適用されている外出禁止令を継続。その上で、公務外では基地外での単独行動を認めずに二人一組で行動するリバティ・バディ制を義務づけた。

 同報道部によると、レッド、ゴールドの資格は兵士の所属する部隊長が「成熟度」で判断し決定するとして、割合や人数は把握していないという。カード非保持者は、新たに沖縄駐留した兵士で、沖縄の文化などを学んだ後にレッドカードが与えられる。

 在日米海兵隊トップのリチャード・ジルマー在日米海兵隊基地司令官(中将)は同日、新しい外出禁止措置を定めた指令に署名。「効力を発揮し、事件・事故は減少傾向にある。今後も、県民のよき地域メンバーになる努力を続けたい」とのコメントを発表した。

 同措置はキャンプ富士(静岡県)と岩国基地(山口県)にも適用される。在沖米軍は二月の米兵暴行事件後、家族を含めた全面外出禁止措置をとっていたが、その後緩和している。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-30-M_1-002-1_002.html

 

2008年09月30日【朝刊】 社会

米軍消火ヘリ民間地で取水/金武町屋嘉

 

キャンプ・ハンセンの山火事で、民間地の貯水池から水をくむ米軍の消火用ヘリ=26日、金武町屋嘉

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ5」付近で二十六日に発生した山火事で、米軍の消火用ヘリが、同町屋嘉区の農業用貯水池から無断で取水していたことが二十九日、分かった。同町によると、キャンプ・ハンセンの火事では、通常、施設内のダムや消火用プールから取水して消火活動に当たるが、民間地からの取水はこれまで例がないという。

 町や区には、事前事後の連絡は一切なかった。地元では、今後取水が恒常化し、特に夏場や干ばつ時などの使用に懸念が広がっている。地元住民によると、ヘリは二十六日午後五時すぎから日没までの間、十回程度取水したという。貯水池は区が管理しており、来年度から本格的に供用開始される。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-30-M_1-025-1_003.html

 

2008年09月30日【朝刊】 社会

「軍強制」記述回復を/県民大会1年/6団体、検定撤回求め声明

 二〇〇六年度高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から、「日本軍強制」の記述を削除したことに抗議する「教科書検定意見撤回を求める県民大会」から一年たった二十九日、県子ども会育成連絡協議会など六団体が、文部科学省に、検定意見撤回など大会決議の実現を求める声明を発表した。

 声明は、沖子連、県婦人連合会、県PTA連合会、県老人クラブ連合会、県青年団協議会、元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」の六団体の連名で発表。

 文科省が県民大会以降も検定意見を撤回せず、日本軍強制の記述を認めていないことなどを批判し、十一万六千人が参加した県民大会で「県民がなぜ怒ったのか、何に対して怒ったのかまったく理解していない」と指摘。「私たち県民は無理難題を求めているわけではない。沖縄戦の事実は事実として教科書に残すべきであり、ゆがめてはならない」と訴えた。

 その上で今後、中学校教科書の検定でも、沖縄戦の史実のわい曲が懸念されるなどとし、「現状はまだ道半ば。六団体は結束を強めながら奮闘する」とアピールした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-30-M_1-024-1_002.html

 

琉球新報 社説

所信表明演説 抽象論では響かない/「逃げない論戦」を期待 2008年9月30日

 2代続けて、宰相が政権を投げ出し、その間の政治空白が国民生活に影を落としている。この国の経済立て直しを具体的にどうするのか。最も問われている。

沖縄への言及後退

 麻生太郎首相は、自らの政治姿勢を明らかにする所信表明演説を29日の衆参両院本会議で行った。首相の演説に国民が期待したものは、財源や経済成長率の回復に向けた道筋だった。

 48・6%の支持率という低空飛行で始まった国民の麻生首相への期待は、芳しくない。

 首相は、経済立て直しについて、3段階で取り組むことを強調した。景気対策に続き、財政再建を第2段階とした。経済成長をより重要とし、第3段階では規制改革などによる成長を提示した。

 しかし、改革による成長については「日本経済の王道をゆくことだ。新たな産業や技術を生み出すことにほかならない」と具体性を欠き、加えて「改革すべきは規制や税制。廃すべきを廃し改めるべきは改める」などとスローガン的な抽象論が続き、胸に響かない。

 「強い日本と明るい日本」の麻生流日本観で始まった所信だったが、経済成長に対し「勤勉な国民」「優れた科学と技術の力」というわが国の強みを挙げたものの、抽象的な言葉の羅列となり、新味に乏しく、根拠の薄い楽観論が目立った。

 沖縄への言及は後退した。橋本龍太郎氏以降、所信表明、施政方針の各演説で沖縄の基地問題に対する考え方について取り上げる傾向にあった。

 政権後半では、米軍再編問題に触れないこともあった小泉純一郎氏も、政権前半は日米安保体制が有効的に機能することを強調し、基地問題への姿勢を示した。

 麻生首相は、「地域の再生」の項目の中で、観光庁の新設に触れた上で「沖縄の声に耳を傾け、沖縄の振興に引き続き取り組む」と続けた。沖縄振興について示したが基地問題には一切触れなかった。

 観光庁新設がなぜ、沖縄の振興につながるのか。脈絡も不自然で理解し難い。「取って付けた内容」と言われてもやむを得まい。

 麻生首相は、外相として普天間移設にかかわってきたが、強い関心を寄せて取り組んできたという印象は薄い。首相として基地問題への姿勢をより具体的に示してもらいたかった。

 麻生首相の所信表明は、就任直後としては安倍晋三氏、小泉氏より分量が少ない。分量の多寡が必ずしも政策に対する姿勢に反映されるわけではないが、首相の決意に確信を持つだけの説得力があった内容とは言い難い。

 インド洋での海上自衛隊による給油活動では、重要性を強調した。「対米追従」の批判がある日本の国際貢献について「わが国の国益をかけ、わが国自身のためにしてきた」と理由付けた。

不都合に「ふた」

 その上で「国際社会の一員たる日本が活動から手を引く選択はあり得ない」とした。日本の国際貢献は、給油活動しかないという前提で、その是非を民主党に求めている。十分な論議なしに再び成立を急ぐことは避けるべきだ。

 いずれの政策理念についても、民主党に問う形にし、対立を鮮明にする所信表明演説は、解散総選挙を強く意識したものだ。

 小泉氏以降、歴代首相が必要性を指摘してきた消費税増税には触れていない。選挙で不都合なものにはふたをする演説となり残念だ。

 首相は「日本と日本人の底力に一点の疑問も抱いたことがない」と強調した。さらに「わたしは決して逃げない」と言い切った。

 投げ出した宰相らに続く自民党政権の信頼回復は容易ではない。逃げない論戦を期待する。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136662-storytopic-11.html

 

2008年10月01日【朝刊】 政治

GBS訓練嘉手納からグアム移転 米軍計画

 米空軍嘉手納弾薬庫地区内シルバーフラッグサイトで行われている訓練機能をグアムに移転する計画があることが三十日、分かった。米空軍によると、嘉手納基地に駐留している第五五四レッドホース部隊第一分遣隊の拠点もグアムに移る。同地区では模擬爆発装置を使用した基地修復訓練などが行われており、地元嘉手納町民が訴えていた騒音の一部緩和につながるか注目される。

 米軍のグアム軍事統合計画の一環で、米海軍省がまとめた報告書に盛り込み、ウィンター米海軍長官が九月十五日、米議会に計画を提出した。シルバーフラッグサイトの機能移転について、防衛省は「聞いたことがない」としている。

 報告書は、グアムのアンダーセン空軍基地のノースウエストフィールド地区に、在韓米空軍の工兵部隊などと、嘉手納で行われてきた米太平洋空軍の各工兵隊部隊の即応訓練機能を一カ所にまとめる計画を盛り込んでいる。ノースウエストフィールド地区は、嘉手納の分遣隊に加え、韓国・烏山基地の第五五四レッドホース部隊、キャンプ・ハンフリーズの第六〇七戦闘通信中隊などの新拠点になる。

 基地修復訓練は、基地が攻撃されたことを想定した即応訓練。滑走路の修繕などを行うが、模擬爆発装置や地上爆発模擬装置(GBS)による爆発音や煙幕について、嘉手納町には住民の苦情が相次いでいた。

 二〇〇四年十二月には近隣の嘉手納高校に煙幕が流れ込み、生徒らが目やのどの痛みを訴え、教室外に避難する騒ぎもあり、宮城篤実嘉手納町長や町議会が、訓練中止とシルバーフラッグサイトの移転を求めた経緯がある。(吉田伸)

[ことば]

 シルバーフラッグサイト 米空軍が世界中で3カ所保有しており、有事に備えて滑走路の早急な修復作業など基地修復訓練などを行う。嘉手納弾薬庫地区はその一つで、アラスカやグアム、韓国など太平洋地区の米空軍の工兵部隊が訓練を行っている。そのほか、フロリダ州ティンダル空軍基地と、ドイツのラムシュタイン空軍基地にある。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-01-M_1-001-2_002.html

 

2008年10月01日【朝刊】 社会

負担減に光 住民歓迎/嘉手納訓練移転

計画説明なく不満も


 【嘉手納】米軍嘉手納弾薬庫地区内のシルバーフラッグサイトで行われている訓練機能のグアム移転計画に、地元の嘉手納町からは「ようやく負担軽減が見えてきた」など歓迎する一方で、政府や米軍から詳細な説明がないことに不満の声が上がった。

 嘉手納町によると、同地区内では模擬爆発装置を使用し、爆発音や発煙などを伴う基地修復訓練などが年間約十回程度行われている。本年度は四、五月に計四回実施されている。

 宮城篤実町長は「まったくの初耳。事実であれば歓迎だが何の説明もない。正式な連絡を待って対応を検討したい」と話した。

 同町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「被害に苦しむ住民の声が反映された。移転時期などの詳細を早期に公開してほしい」と求めた。

 嘉手納弾薬庫地区に近い同町東区の島袋敏雄区長は訓練について「事前に連絡されても、戦時中を思い出すお年寄りもいて、爆発音に精神的な苦痛を感じている。嘉手納の訓練は激しすぎる。今後も負担軽減に向けた取り組みを続けてほしい」と要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-01-M_1-031-1_003.html

 

2008年10月01日【朝刊】 社会

「平穏戻せ」勝利誓う 新嘉手納爆音控訴審きょう結審

原告「一審覆す」


 【沖縄】米軍嘉手納基地の周辺住民五千五百四十一人が、日米両政府に夜間と早朝の飛行差し止めと、損害賠償などを求めている新嘉手納爆音訴訟控訴審は一日、福岡高裁那覇支部で結審する。原告らは三十日夜、「沖縄市民小劇場あしびなー」で前夜集会を開き、飛行差し止め請求を棄却し、損害賠償の救済枠を一気に狭めた二〇〇五年の一審判決について「不当判決を覆すため最後まで戦おう」と気勢を上げた。

 集会には原告や弁護団、支援者ら約百人が参加。仲村清勇原告団長は「嘉手納基地は機能強化が進み、多数の外来機も使用し地域に爆音をふりまいている。県民の願いとは逆行している。なんとしても一審判決をひっくり返すため、最後まで頑張ろう」と呼び掛けた。

 池宮城紀夫弁護団長は「賠償金さえ払えば、米軍のやりたい放題を黙認するというのが国の姿勢。われわれの目的は賠償ではなく、静かな夜を返せというのが(旧訴訟から)二十六年の思いだ」と訴えた。

 集会の通知など裏方として、裁判闘争を支えてきた玉那覇ヤス子さん(57)=沖縄市=は「わたしは原告ではないが、思いは一緒。被害に苦しんでいる住民の声に耳を傾け、良識ある判断をしてほしい」と話した。

 全員でガンバロー三唱したほか、「嘉手納基地の爆音は深夜、早朝を問わず、まさにわが物顔で住民の頭上を飛び交っている。一審不当判決をひっくり返し、W値(うるささ指数)七五、八〇地域の救済と健康被害の実態を明らかにし、勝利を勝ち取ろう」とする大会アピールを採択した。

 一日の最終弁論では、原告団から六支部(北谷、嘉手納、具志川、石川、沖縄、読谷)の代表と弁護団がそれぞれ意見陳述する予定。二〇〇八年度内に判決が出る見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-01-M_1-031-1_001.html

 

2008年10月01日【朝刊】 政治

代替施設建設 要請せず/県議会一般質問

知事訪米で公室長強調「日米合意済み」


 県議会(高嶺善伸議長)九月定例会は三十日、一般質問二日目の質疑を行った。知事が、年明けに予定している訪米の際に要請すると表明している在日米軍再編の確実な実施について、上原昭知事公室長は「海兵隊のグアム移転」「嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還」に限ると説明。「代替施設の建設は日米両政府で合意されており、米国政府に要請する必要はない」と述べ、普天間飛行場代替施設の建設促進は求めない方針をあらためて示した。

那覇空港 民間専用化求めず

 那覇空港の民間専用化について、上原良幸企画部長は「滑走路増設に当たり、国は自衛隊が将来も現状通り利用することを前提に検討している。共同使用について引き続き安全管理の徹底を求めていく」と述べ、民間専用化を要請する考えのないことを明らかにした。いずれも新里米吉氏(社民・護憲)に答えた。

 上原部長は、県が返還要請の方針を示した久米島射爆撃場の訓練空域について「那覇、久米島間を運航する民間航空機は、制限空域を迂回して運航せざるを得ない状況」と説明。「解除された場合は、飛行距離が短縮され、運航コストの削減や運航時間の短縮が図られると考えている」と述べた。新垣安弘氏(民主)に答弁。

 仲村守和教育長は、県内公立学校普通教室のクーラー設置状況(四月現在)が小学校46・3%、中学校48・1%、高校81・7%、特別支援学校100%だと説明。二〇一一年度までに小中学校60%、高校100%の整備を目標にしていることを明らかにした。渡久地修氏(共産)に答えた。

 国が本年度、学童クラブの運営補助金の一部を増額したにもかかわらず、県内では前年度並みに抑えられた問題について、伊波輝美福祉保健部長は「補正予算計上やそのほかの方法がないか検討したが、厳しい財政状況で財源確保の見通しが立たず、対応できなかった」と明らかにした。赤嶺昇氏(民主)に答弁した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-01-M_1-002-1_001.html

 

2008年10月01日【朝刊】 社会

嘉手納基地40億円学校/県内中学校と1人340万円差

 米軍嘉手納基地内に日本政府が約四十億円かけて新設した中学校「リュウキュウミドルスクール」(生徒数約六百人)について、仲村守和教育長は三十日、同スクールと県内中学校の工費を生徒一人当たりで比較すると、約三百四十三万三千円の差があることを明らかにした。

 同スクールと県内中学校との比較は「アメリカの学校設置基準などが確認できず、一概に比較することは難しい」としつつ、「県民感情からみて、同じ県内で大きな差があることは、好ましいことではないと考えている」と語った。

 県議会九月定例会一般質問で、渡久地修氏(共産)の質問に答えた。

 同スクールの用地面積は、太平洋最大の約十六万千八百平方メートルで、建物面積は一万四千平方メートル。四百メートルトラックや水泳プール、ソフトボール場などが整備されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-01-M_1-031-1_004.html

 

2008年10月01日【夕刊】 社会

新嘉手納爆音訴訟が結審 来年2月に判決

 米軍嘉手納基地の周辺住民五千五百四十一人が、日米両政府に夜間・早朝の飛行差し止めと、国に損害賠償を求めている新嘉手納爆音訴訟の控訴審の第十六回口頭弁論が一日、福岡高裁那覇支部(河邉義典裁判長)であった。住民側は、主張を総括した九百二十七ページの最終準備書面を提出。各地域の原告六人と弁護団が意見陳述で、騒音被害の実情や控訴審判決への願いを法廷で語り、飛行の差し止めや損害賠償請求を大幅に退けた一審判決を取り消すよう訴えた。弁論は終結し、判決は来年二月二十七日午後一時半に言い渡される。

 原告の住民側は最終書面で、一審・那覇地裁沖縄支部判決が退けたW値(うるささ指数)七五―八〇地域の騒音実態について、控訴審で提出した原告約五百人分の陳述書などをもとに、騒音の程度が減少していないことを強調。国の騒音測定や評価方法は、実態を過小評価していると批判した。また一審判決が否定した騒音と聴力損失などの因果関係や、睡眠・生活妨害の事実を重ねて指摘。新たに騒音による心疾患で死亡する危険性と、インフルエンザで死亡するリスクが、数値的にほぼ変わらないとする専門家の研究結果などを主張に盛り込んだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-01-E_1-001-2_002.html

 

2008年10月01日【夕刊】 社会

勝利信じ 原告気勢/新嘉手納爆音訴訟結審

「静かな生活」訴え/仲村団長「現状絶対許さぬ」


 本島中部に住む五千五百人余もの原告が爆音被害からの解放を求めているマンモス訴訟の控訴審が一日、結審した。旧訴訟の提起から二十六年。米軍嘉手納基地の周辺住民や原告弁護団は意見陳述で、「人間らしい静かな生活を送りたい」というささやかな願いさえかなわない日常にあらためて怒りの声を上げ、戦後六十三年を経た沖縄の現状を「形を変えた戦場だ」と切々と訴えた。

 二〇〇五年の一審判決では、受忍限度対象地域をうるささ指数(W値)八五以上に引き上げ、旧訴で認められた七五以上から狭めた。意見陳述で、W値八〇区域に住む國場長信さん=旧具志川市=は「大型輸送機がゴォーンと地響きがするような音をまき散らしている。睡眠を妨害され、家族団らんを壊され、健康に不安を抱えながら生活している」。W値九〇区域の比嘉貞子さん=北谷町=は「砂辺で育ち、結婚し、子どもを育てたが、五十年以上爆音にさらされている。せめて夜の間だけでも静かになることを願う」と語った。

 池宮城紀夫弁護団長は「戦後六十三年、米軍統治二十七年、日本復帰から三十六年経つが、中部地域を中心に沖縄全体が形を変えた戦争状態だ」と変わらない基地被害を指摘した。

 原告の住民ら約三百五十人はバス七台に分乗し、午前十時の開廷前に福岡高裁那覇支部に到着。事前集会では、支援者も含め約五百人が「頑張ろう三唱」で気勢を上げた。

 結審後、仲村清勇原告団長(71)は「言うべきことはすべて言った。一審判決を覆すような納得できる結果を期待している」と話した。また、米国が応訴しないことを正式に表明していたことについて原告側の田村ゆかり弁護士は「米国は日本に自らの権益を主張してくださいと言い残し、訴訟の場から逃げてしまった。原告らの思いがこもった、訴状は送達すらされていない」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-01-E_1-005-2_001.html

 

2008年10月02日【朝刊】 政治

知事訪米予算 削除へ/野党決定 移設推進伝達危ぐ

 県議会の野党六会派は一日夜、代表者会議を開き、九月定例会に提案されている仲井真弘多知事の訪米予算約千四百万円を認めず、補正予算案から削除することを決めた。知事が訪米目的として挙げる「在日米軍再編の確実な実施」の中に、野党が反対する米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設が含まれ、知事が米側に移設推進の考えを伝える可能性があると判断した。知事訪米は一九八五年から行われているが、予算が削られるのは初めて。

 代表者会議後、会見した最大会派社民・護憲ネットの新里米吉団長は、知事訪米の意義に理解を示しつつ、「野党も納得できる要請内容にすべきだ。知事の一方的主張は認められない」と強調。六月定例会で野党多数で可決した「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議」の考え方とは相いれないとした。

 今後、補正予算関連の質疑が行われる総務企画委員会で予算案の修正に着手するという。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-02-M_1-001-1_004.html

 

琉球新報 社説

「新嘉手納」結審 爆音苦の解消促す判決を 2008年10月2日

 米軍機の夜間飛行差し止めと損害賠償を求めた新嘉手納爆音訴訟の控訴審が1日、福岡高裁那覇支部で結審した。

 昼夜を問わず、爆音にさらされている住民が、夜間だけでも平穏に生活したいと要求するのは当然である。戦後63年の長きにわたり、その権利を制限できるものではない。

 住民の爆音苦の解消を国に促すことを控訴審判決には求めたい。

 一審判決は「静かな夜を」との住民のささやかな願いを踏みにじっただけでなく、これまでの各訴訟で賠償対象とされてきたうるささ指数(W値)75―80の地域を「騒音は軽減傾向」として賠償対象から外した。

 日常的に被害を受け続ける状況は何ら変わっていない。にもかかわらず、不備が指摘される国の測定結果を基に「軽減傾向」というあいまいな判断基準で、W値75―80地域の住民を切り捨てるのは乱暴にすぎた。

 まがりなりにも、これまでの各判決で確立された基準を変更するには、合理的でなければならないはずである。

 控訴審判決は、一審判決を揺り戻すだけでは十分とは言えない。

 原告側の要求はあくまでも夜間の飛行差し止めである。一審判決は「国の支配の及ばない第三者の行為の差し止めを求める請求で、主張は失当」とした。

 国の提供する施設が日本国民に爆音被害をもたらしているのである。被害を受けた国民が放置させないよう求めることが、適当でないと言えるのだろうか。

 国は控訴審でも、一審判決でさえ認めなかった「危険への接近」を持ち出して賠償額の減額を主張するなど、爆音被害に加担しながら何ら反省がない。

 国は日米安保を盾に基地周辺住民に我慢を強いているばかりか、日常的に航空機事故の危険にさらしているのである。

 戦後63年余にわたって住民を苦しめる異常な状況を司法が追認することがあってはならない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136748-storytopic-11.html

 

2008年10月03日【朝刊】 社会

アオサンゴ群落 赤信号/国際自然保護連合 絶滅危惧種に/「普天間」予定地周辺にも

 

約9メートルの高さまで成長したアオサンゴの群落=3月24日、名護市の大浦湾(伊藤桃子撮影)

 日本などの各国政府や環境保護団体でつくる国際自然保護連合(IUCN)がまとめる最新版の絶滅の恐れのある生物リスト(レッドリスト)に、沖縄県の名護市や石垣島で大群落が確認されているアオサンゴが絶滅危惧種として掲載される見通しになったことが二日明らかになった。リストは六日、スペインでの総会で発表される。

 名護市の大群落は米軍普天間飛行場の移設が予定されている同市辺野古崎から東に約三キロの地点で、建設で悪影響を受ける可能性が高い。同海域には国の天然記念物のジュゴンが生息していることも分かっており、保護を求める声がさらに強まるのは必至だ。

 アオサンゴはインド洋から太平洋にかけて分布し、骨格の内側が青いのが特徴。石垣島の世界最大の大群落が知られていたが、昨年辺野古崎沖の大浦湾でも大群落が見つかり話題を集めた。

 最近は、地球温暖化に伴う海水温上昇で起きる白化現象や病気で死ぬものが増え、観賞用に採取されるケースも目立つ。 IUCN総会に参加する世界自然保護基金(WWF)ジャパンの花輪伸一さんは「辺野古・大浦湾や白保海域の保全の重要性がますますはっきりしてきた。環境アセスメントにも影響するだろう。今回の総会は沖縄にとって大きな意味を持つ会議になる」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-03-M_1-001-1_003.html

 

2008年10月03日【朝刊】 社会

知事が署名 協定更新/泡瀬共同使用/米軍と13年まで 沖縄市長は拒否

 中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業のための米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定について、仲井真弘多知事は二日、新たな更新署名を拒否していた東門美津子沖縄市長に代わり、協定書に署名した。更新期限は二〇一三年九月八日まで。

 県港湾課は「期限が切れ、再度締結すると外交上の手続きが難しくなる。従来通り継続することが妥当と判断した」とした。

 東門市長は四月、国と県に対し、同事業の一部が保安水域にかかるため「新たな基地の提供につながる」として署名しないことを通知。県は五月、沖縄防衛局に知事を署名者とする更新手続きを依頼していた。知事の署名で正式に協定が更新されたことになる。東門市長は「(署名は)県の判断。新たな基地の提供につながることはしないと市民に表明してきた基本姿勢を堅持していきたい」と話した。

基地計画再考を

 辺野古崎沖の大浦湾を調査した日本自然保護協会の大野正人さんの話 アオサンゴが世界的に減少傾向にあり、大浦湾にある大規模な群落は重要な価値を持つ。同湾は琉球列島でもほかで見られない地形的特徴があり、サンゴやジュゴンをはじめ多様な生物を支えてきた。生物多様性上重要な「ホットスポット」といえる。湾を埋め立てて飛行場が移設されれば、湾内の海流が変化するなどアオサンゴにも悪影響を与える恐れがある。基地建設計画は見直すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-03-M_1-001-1_004.html

 

2008年10月03日【朝刊】 社会

F15あす未明離陸/嘉手納基地報道部発表/町、中止申し入れ

 【嘉手納】米軍嘉手納基地報道部は二日、F15戦闘機十二機余りが米本国での訓練参加のため、四日午前零時から同四時にかけて、同基地を離陸すると発表した。複数のKC10空中給油機も同行する。嘉手納町によると、今年の同基地からの未明・早朝離陸は四、五月に続いて三回目。同町は二日、「土曜日である上、(町主催の)まつりがあり、町民感情を逆なでする」として、同基地などに対し、中止するよう口頭で申し入れた。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会は幹事会、嘉手納町議会(三連協)は基地対策特別委員会を三日午前にそれぞれ開き、対応を協議する。三連協の野国昌春会長(北谷町長)は「地域住民に迷惑がかかると分かりながら、実行するのは軍隊の都合を優先しているからだ」と非難した。

 F15はハワイのヒッカム空軍基地まで九時間半かけて飛行。同基地を経由し、十一月中旬までネバダ州とフロリダ州で行う訓練に参加するという。嘉手納基地は「パイロットの安全のため日照時間内に空中給油を行い、目的地に到着する必要がある」と説明した。

 また、未明離陸の回避について検討したものの「グアム経由は追加支援が必要なため、派遣がふくれあがる」などとして、安全性やコストなどを検討した上での判断としている。

 嘉手納町では四、五の両日「野國總管まつり」が予定されている。同町東区の島袋敏雄区長は「町民が楽しみにしているイベントで、東区からも大勢が参加するのに残念。深夜の爆音による健康被害も心配だ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-03-M_1-027-1_001.html

 

2008年10月03日【朝刊】 政治

15年までにグアム移転/嘉手納GBS訓練/施設跡利用は未定

報道部「米軍再編とは別」/本紙に回答


 米空軍嘉手納弾薬庫地区内の訓練施設(シルバーフラッグサイト)のグアム移転計画で、同施設の移転が二〇一五年までに完了することが二日、分かった。嘉手納基地報道部が沖縄タイムスの取材に答えた。同施設の移転後の使用計画は現段階では未定という。(吉田伸)

 同施設は有事に損傷を受けた滑走路などの施設の修復作業を目的に、地上爆発模擬装置(GBS)などを使い、爆発音や煙幕が発生する訓練を行っている。

 訓練の主力となっている嘉手納基地に駐留する第五五四レッドホース部隊第一分遣隊は、施設の移転に伴いグアムへ拠点を移すが、詳細な時期は今後確定するという。

 施設のグアムへの移転について、同基地報道部は「在日米軍再編とは異なり、米空軍の計画の一部」と述べた。グアムには空軍のアンダーセン基地があり、同分遣隊に加え、今年二月に韓国の韓国・烏山基地から移っている本隊などを集約して拠点化。施設も一本化させる。

 また訓練施設と憲兵隊「コマンド・ウォリアー」訓練施設も統合すると説明している。

 施設はアンダーセン基地ノースウエストフィールド地区に置く。部隊や訓練施設の集約化に向けて、約二百万ドルの予算をかけてインフラ整備などのプロジェクトに着手している。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-03-M_1-002-1_003.html

 

2008年10月03日【夕刊】 社会

F15未明離陸中止を要求/三連協、米軍・国に

 【中部】米空軍のF15戦闘機十二機余りとKC10空中給油機複数機が米軍嘉手納基地から四日未明に離陸を予定している問題で、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は三日午前、未明離陸中止を求めて米軍などに文書で要請した。嘉手納町議会も同日の基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)で、強行されれば近日中に開く臨時会に抗議決議と意見書の両案を提出することを決めた。

 三連協は「運用上の所要は米軍の都合のみを優先したもの」「さらなる騒音被害はいかなる理由があろうと断じて容認できない」と米軍を非難。三連協が国に締結を求めている嘉手納基地使用協定で定めた午後七時―翌日午前七時までの飛行やエンジン調整を行わないこと、経由地や時間の調整により深夜早朝に飛行しないことを求めた。

 あて先は、嘉手納基地第一八航空団司令官のブレット・ウィリアムズ准将、外務省沖縄事務所、沖縄防衛局。中止要請にもかかわらず強行されれば

六日に再度幹事会を開き、抗議も検討する、としている。

 一方、嘉手納町議会基地対策特別委員会では、委員から「国側が積極的に解決するという姿勢が見えない」などの意見が上がった。抗議決議と意見書の両案には、これまで日米両政府が未明離陸回避に向けて、どのように協議を進めてきたかなどを明らかにするよう盛り込む。

 北谷町議会は、六日に基地対策特別委員会(照屋正治委員長)を開いて対応を協議する。飛行した場合、抗議決議と意見書を提案する方針だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-03-E_1-001-2_001.html

 

2008年10月03日【夕刊】 政治

不発弾全額負担は「困難」/政府閣議決定 処理費で見解

 【東京】政府は三日午前の閣議で、不発弾処理対策など沖縄に関係する政府答弁書七件を閣議決定した。県関係国会議員三氏の質問主意書に答えた。県が、不発弾処理費を全額国負担とする補助制度の創設を求めていることについては「国と地方公共団体の基本的な役割分担の変更は困難」と否定的見解を示した。

 県が維持・管理している不発弾の一時保管庫を国に移管するよう要望している点にも「現時点で政府が行うことは考えていない」と回答。糸数慶子参院議員(無所属)の質問に答えた。

 不発弾処理は現在、全国一律で市町村が費用の半分を負担し、残りを特別交付金で補助している。「探査や発掘」は、不発弾等処理交付金で全国一律に九割補助している。

 仲井真弘多知事は八月、政府に対し、不発弾処理費について、現行の特別交付税に代わる独自の制度を創設し、全額国庫負担とするよう要請していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-03-E_1-001-2_002.html

 

2008年10月03日【夕刊】 政治

訪米予算 審議注視/知事

 仲井真弘多知事は三日午前の定例記者会見で、野党が訪米予算を補正予算案から削除する方針を決めたことについて、「十二月議会もあるが、ダメとは一切考えていない。折り合いをつける用意があるのか、総務企画委員会で担当部長に頑張ってもらいたい」と述べ、委員会審議を見守る姿勢を示した。

 野党は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を含む「在日米軍再編の確実な実施」を、知事が訪米の要請内容に盛り込むことに反対している。知事は「本会議での議論を通じて、そういうあたりが論点になるのかというのが、ようやく分かった」と話した。

 「再編実施」にこだわることについては、「何も沖縄だけを対象にした再編ではない」と述べた。しかし、辺野古移設とパッケージの「海兵隊のグアム移転」「嘉手納基地より南の施設・区域の返還」については、議会答弁同様に「しっかり進めたい」と述べた。

 嘉手納基地のF15戦闘機が四日未明・早朝の離陸を計画していることに関しては「(四日は)行けたら行こうと思っている。すさまじい爆音をきちっと見て感じてきたい」と述べた。

 中城港湾の泡瀬沖合埋め立て事業で、米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる共同使用協定の更新について、拒否した東門美津子沖縄市長に代わって知事が署名したことについて、「沖縄市も承知しており事業の必要性は理解いただけると思っている」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-03-E_1-001-2_003.html

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