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新基地断念を要請/県議会代表が外務省などに 踏み込んだ方向性を/教科書検定審議会部会 宜野湾市長がハワイへ出発/普天間返還要請行動へ など  沖縄タイムス関連記事・社説(7月24日から29日)

2008年7月24日(木) 夕刊 1面

新基地断念を要請/県議会代表が外務省などに

 六月定例会で名護市辺野古沿岸部への新基地建設に反対する決議・意見書を可決した県議会(高嶺善伸議長)の代表は二十四日午前、外務省沖縄事務所や在日米軍沖縄調整事務所を訪ね、「新基地は過重な負担や固定化になり、周辺海域の環境破壊につながる」とした決議の趣旨を伝え、新基地建設計画断念を求めた。

 外務省沖縄事務所には、米軍基地関係特別委員会の渡嘉敷喜代子委員長をはじめ、社民・護憲ネット、共産党、民主党、社大・ニライの会、無所属クラブの野党五会派の代表が参加した。改革の会と、決議・意見書に反対した自民、公明県民会議は参加しなかった。

 県議らは「県民世論は辺野古への新基地建設反対が常に半数を超える。県議選の結果を受けた反対決議の可決は民意の反映。新基地建設反対は県民の総意だ」と訴えた。

 対応した外務省沖縄事務所の山田俊司事務官は「重く受け止めている」としながらも、「辺野古への移設は、再編協議で日米両政府が合意した訓練の移転、海兵隊のグアム移設、嘉手納基地以南の返還とパッケージになっている。合意を進めることが沖縄の負担軽減になる」という従来方針を示すにとどまった。

 在日米軍沖縄調整事務所では、バーノン・ボーン所長(大佐)が「私たちのレベルで解決できることではない」と述べ、四軍調整官のリチャード・ジルマー中将や在日米軍司令部に伝える意向を示すにとどめたという。

 県議団は同日午後、仲井真弘多知事や沖縄防衛局、在沖米国総領事館に要請する。週明けに上京し、外務省や防衛省、在日米軍司令部などに要請する予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807241700_04.html

 

2008年7月26日(土) 朝刊 31面

母国が手紙 支援を約束/米兵暴行事件被害の豪女性

 【東京】二〇〇二年に神奈川県で在日米海軍兵から性的暴行を受け、加害者に謝罪と補償を求めているオーストラリア出身の四十歳代女性のジェーンさん=仮名=が二十五日、都内の外国特派員協会で会見し、オーストラリア政府が米政府との交渉で全面的に支援する意向を示していることを明らかにした。支援を求めたジェーンさんの手紙に返事があったという。ジェーンさんは同日、在日米国大使館に手紙の写しと勝訴した民事訴訟の判決文などを提出し、迅速な対応を求めた。

 ジェーンさんは「オーストラリア政府から全面的に協力するとの返事をもらい、とても勇気づけられた。政府同士で早めに交渉し、犯人に謝罪と補償をさせてほしい」と訴えた。

 ジェーンさんは、行方が分からなくなっている加害者が米本国に居住しているとの情報が六月に知人から寄せられたことも明らかにした。ジェーンさんが加害者を相手に慰謝料を求めて起こした民事訴訟では性的暴行の事実が認定されている。ただ、加害者は審理中に出国し所在が分からず、本人からの支払いは実現していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807261300_03.html

 

2008年7月26日(土) 朝刊 2面

踏み込んだ方向性を/教科書検定審議会部会

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題を受け、検定手続きの透明化を検討している教科書検定審議会の作業部会は二十五日、都内で会合を開いた。文部科学省は今後の議論の方針を示したが、委員からは、手続き改善の方向性が不明確だとの指摘が相次いだ。

 方針は(1)教育基本法で示す目標を踏まえた教科書改善(2)知識・技能の習得、活用、探究に対応する教科書の質・量での充実(3)正確かつ公正・中立で多面的・多角的な考察に資する教科書(4)子どもたちが学習しやすいよう配慮・工夫がなされた教科書づくり―の四点。

 委員側から「検定の仕組みをどうするか見えてこない。踏み込んだ方向性を出さないと(部会に求められる)議論の期待に応えられない」などの批判が出た。

 同省は「(方針は)検定に求められる基本理念を整理したもの。具体論は別途議論する」と説明した。

 手続きの透明化について委員から「何が公正・中立かは時代や事象によって変わる。教科書の記述は学校の先生に自信と確信を与えるものであり、そのためには検定プロセスをできる限り公開していくことが大事」との意見もあった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807261300_04.html

 

2008年7月27日(日) 朝刊 1・3面

返還地対策 国に責任/米軍再編シンポ

協定改め環境条項を/第二軍転法求め決議

 中部の市町村長や大学教授らが基地問題について議論する「米軍再編とどう向き合うか?沖縄中部地区の課題PART2」(主催・沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会、後援・沖縄中部市町村会)が二十六日、ちゃたんニライセンターで開催され、日米両政府で合意された嘉手納以南の基地の返還で、環境問題や跡地利用などの課題について議論を交わした。基地を抱える市町村長が直面する深刻な基地被害の現状を報告、日米地位協定の改定を軸に返還に向けた早急な対策の必要性を訴えた。

 沖大客員教授で軍事評論家の前田哲男氏は「返還に向けた出口戦略を構想する」と題して基調講演した。

 前田氏は憲法九五条(特別法の住民投票)を根拠に、佐世保や横須賀、呉、舞鶴の四市が一九五〇年、住民投票で「旧軍港都市転換法」を定め、国有財産だった旧軍施設を地元自治体に無償譲与されたと説明した。

 九五条に基づく法制定を活用し、返還後の在沖米軍基地の跡地対策を政府が担うような取り組みを提案。「県内の自治体には提起する権利がある」と呼び掛けた。

 また韓米地位協定や北大西洋条約機構(NATO)とドイツのボン協定が改定された事例を説明し、地位協定改定で環境条項を盛り込む重要性を説いた。

 シンポジウムでは、沖縄国際大学の照屋寛之教授が、第二次軍転法の制定を盛り込む決議文を読み上げた。

 (1)米軍に対し、有害物質の土壌汚染地域を容易に特定するため基地使用履歴情報の提供(2)返還前に政府が基地内の土壌汚染調査を実施(3)原状回復中、政府が地権者に給付金交付(4)基地従業員の雇用確保―などを盛り込むよう求めた決議文を参加者の拍手で採択した。決議文は県議会に提出する。

 シンポには二百人余が参加した。


     ◇     ◇     ◇     

返還前の調査必要/使用履歴の開示も


 【中部】「米軍再編とどう向き合うか」をテーマにしたシンポジウムは二十六日、沖縄、浦添の両市長や主催者である沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会の教授らが、返還跡地が直面する環境汚染問題の解決策などについてパネルディスカッションを行った。(1面参照)

 米軍再編と沖縄中部地区自治体の課題と題して議論を展開。沖縄大学の桜井国俊学長は「現行の地位協定は米軍に浄化責任もなければ土地の利用履歴の提供義務もない。返還前の事前調査などで時間と経費を削減することは、地権者や地元自治体だけでなく税金を払う国民のためになる」と強調した。

 さらに県議会で「県生活環境保全条例」が基地内にも適用されるべきだと異論が出た事に対し、「県の条例を基地内に適用することは難しい。しかし地元の自治体が住民の命と暮らしを守るためにアクションを取ることは可能だ。返還に至る前にできることはやっていくべきだ」と訴えた。

 沖縄大学の前田哲男客員教授は「地位協定の問題は運用する政府が制度疲労を起こしているからだ。自民党の体制疲労が地位協定の問題をあらわにしてきた点を見逃してはならない」と指摘した。

 キャンプ・キンザーを抱える浦添市の儀間光男市長は「環境影響評価で三年かかり跡地利用は五年あっても足りない。地位協定を完全に見直さないといけない」と主張。嘉手納基地のある沖縄市の東門美津子市長は「県民が一つになり国民全体に問題を広げ、訴え続けることが必要」と来場者に呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807271300_01.html

 

2008年7月27日(日) 朝刊 1面

米原潜寄港 年最多に/ホワイトビーチ

 県基地対策課に入った連絡によると、二十六日午前九時四十七分、うるま市勝連のホワイトビーチに米海軍原子力潜水艦ロサンゼルス級プロヴィデンス(六、〇八二トン)が寄港した。県が統計を取っている過去四十年間で、年間最多の二十五回に達した。

 また第七艦隊報道部は沖縄タイムスの取材に対し、米海軍横須賀基地(神奈川県)で行われている港湾工事が影響し、潜水艦部隊がホワイトビーチを含む他基地を使用していると回答、寄港増の理由の一つが明らかになった。

 プロヴィデンスは病人移送を目的に入港、十一分後に出港した。

 ホワイトビーチには二十二日に入港した同級アッシュヴィル(六、〇八二トン)が依然として接岸している。

 文部科学省の調査によると、二隻とも放射能の値は平常値と同じだった。

 今年に入り同ビーチへの原潜寄港が増えたことに、同報道部は「潜水艦部隊の日程の詳細には言及できない」と前置きした上で、「日本を含むアジア太平洋地域への寄港はルーティンで、運用上の任務になっている」と説明。沖縄近海での訓練増加の質問には明言を避けた。

 一方、横須賀基地では原子力空母「ジョージ・ワシントン」の母港化に備え、昨年八月から港湾の浚渫工事が進んでおり、工期は今年八月までとなっている。

 同報道部は「ジョージ・ワシントンを受け入れる建設プロジェクトが進む間、潜水艦の乗員は沖縄を含む他の日本の基地を訪れていた」と述べ、ホワイトビーチや佐世保基地に寄港していたことを明かした。

 さらに報道部は、ホワイトビーチを「優れた施設があるだけでなく、素晴らしい文化や温暖な気候のため、第七艦隊の乗員にとって、沖縄は寄港地の中で最も訪れたい港の一つだ」ととらえていると説明した。

 一方、寄港増に危機感を募らせる地元のうるま市議会は二十五日、基地対策特別委員会(東浜光雄委員長)を招集し、三十日に臨時議会を開いて、寄港反対の抗議決議と意見書提案を決めた。(吉田伸)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807271300_02.html

 

2008年7月28日(月) 朝刊 3面

宜野湾市長がハワイへ出発/普天間返還要請行動へ

 【宜野湾】米軍普天間飛行場の早期返還と危険性除去を目的に、伊波洋一宜野湾市長は二十七日、米国ハワイ州への直訴行動に出発した。伊波市長は「市民の声を携え、墜落の危険性を一日も早くなくすよう米軍に要請する」と述べた。

 出発前に那覇空港で会見した伊波市長は、民間地への米軍機墜落事故を防ぐために日米で合意された飛行ルートが守られず、騒音は増加傾向にある現状を説明。米軍自らが事故危険地域に設定した滑走路近くのクリアゾーンに約三千六百人が生活する矛盾を指摘し、「危険性は極限状態に達している。米軍司令部や連邦議員に、運用停止による危険性除去を求める」と訪米の意図を述べた。

 米太平洋総司令官、米太平洋海兵隊司令官との面会が困難視されていることについては、「ハワイ滞在中も調整を続ける。面会が実現しなければ、現地の議員や学識経験者に今後の対応を相談する」とした。

 要請団には同市区選出県議の渡嘉敷喜代子氏、新垣清涼氏が同行した。ホノルル市助役や米国連邦議会議員などと面会し、八月一日に帰国する予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807281300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月28日朝刊)

[基地の跡利用]

新規立法へ対応を急げ


 日米両政府が合意した沖縄の米軍基地再編計画には決定的な盲点がある。

 普天間飛行場の辺野古移設を前提に返還が決まった嘉手納飛行場以南の六施設は(1)普天間飛行場(全面返還、約四百八十一ヘクタール)(2)キャンプ桑江(全面返還、約六十八ヘクタール)(3)キャンプ瑞慶覧(一部返還)(4)陸軍貯油施設・第一桑江タンクファーム地区(全面返還、約十六ヘクタール)(5)牧港補給地区(全面返還、約二百七十四ヘクタール)(6)那覇港湾施設(全面返還、約五十六ヘクタール)である。

 ところが、これらの施設をいつの時点でどのように返還するのか、土地の供給過剰がもたらす混乱にどう対応するのか、跡利用に国はどのようにかかわるのか―肝心な部分は具体的には何一つ決まっていないのである。

 どのような事業を実施するにせよ県や市町村の財政負担は避けられない。しかし、正直言って今の市町村に負担できるだけの財政力はない。

 過去の返還跡地は、返還から事業完了までに平均十四年三カ月もかかっている。これをどう短縮するか。地権者との合意形成も時間のかかる難題だ。

 途方もない課題が山のように立ちふさがっているのである。

 はっきりしているのは、現行の法制度ではこれだけの大規模な基地返還には全く対応できない、ということだ。

 二十六日、北谷町で開かれた米軍再編をめぐるシンポジウムで、沖縄本島中部五市町の首長は、口をそろえて窮状を訴え、国の財政支援を求めた。

 米軍は地位協定によって基地返還の際の原状回復義務を免除されている。土壌を汚染しても、浄化する責任がないのだ。その結果、何が起きているか。

 恩納通信所は、返還後に汚水処理槽からPCBなどの有害物質が検出され、地権者への土地引き渡しが遅れた。キャンプ桑江(北側地区)でも返還後に鉛、ヒ素などの有害物質が見つかった。「掘ったら何が出てくるか分からない」(野国昌春北谷町長)のが実情だ。

 跡地利用計画を策定するためには文化財調査が必要だが、事前の立ち入り調査は認められていない。「不透明な再編スケジュールが利用計画策定の障害となっている」(東門美津子沖縄市長)のである。

 返還後三年間の給付金支給を定めた駐留軍用地返還特措法(軍転特措法)や、大規模跡地、特定跡地への給付金支給を盛り込んだ沖縄振興特別措置法だけでは不十分だ。

 跡利用に当たって優先的に確立すべき原則は「国の責任の明確化」である。その作業を後回しにして移設作業だけを先行させると、県や市町村は政府との交渉カードを失い、財政負担を嫌う政府に押し切られることになりかねない。

 六施設の跡利用事業を円滑に進めるためには、新規立法が欠かせない。県と市町村は、これを「戦後処理・復帰処理事業」として位置付けてはどうだろうか。

 早急に問題点を整理し、県内の合意形成と世論喚起を図る必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080728.html#no_1

 

2008年7月29日(火) 朝刊 1面

空自那覇基地 給油機駐機場を整備

訓練想定 配備は否定

 【東京】航空自衛隊小牧基地(愛知県)へ今年三月に初めて配備されたKC767空中給油輸送機の運用性向上を目的に、防衛省が、空自那覇基地と千歳基地(北海道)の既存駐機場を補強整備する予定であることが二十八日、分かった。那覇基地では九月から測量などの調査を開始し、二〇〇九年度末ごろまでに整備する予定。

 防衛省は、同機が訓練などで飛来した際に使用することを想定しており、「格納庫を整備する予定はない。同機を那覇基地に配備するわけではない」と説明している。

 駐機場の整備目的については「南北に長い国土の中央に位置する小牧基地のみで運用することは不経済で非効率的」としている。整備費用は約三億円。

 軍事評論家の前田哲男氏(沖縄大学客員教授)は、「空中給油機により、戦闘機などの滞空時間は長くなり、活動範囲も広くなるが、自衛隊の『自衛』目的のために必要かどうかは疑問だ」と指摘した。

 KC767は、民間旅客機のボーイング767をベースに開発された新型機。現在小牧基地に二機が配備されており、〇九年度までに計四機体制となる予定。

 現在、同基地の空中給油・輸送機実用試験隊が実用試験を実施。今年十月ごろまでに実用試験を終え、運用試験に移行。一〇年一―三月ごろまでに本格的な部隊運用が始まる見通しだ。

 KC767の運用を想定し、今年三月と四月に空自のF15戦闘機が那覇基地や周辺空域で、米空軍嘉手納基地の空中給油機KC135から給油を受ける訓練を実施している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291300_01.html

 

2008年7月29日(火) 朝刊 2面

嘉手納の諸問題訴え

来月三連協が上京

 【中部】沖縄、嘉手納、北谷の三市町でつくる嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十八日、北谷町役場で幹事会を開き、八月三日から五日の日程で、在日米軍のエドワード・ライス司令官の表敬訪問や米軍三沢基地(青森県)を視察することなどを確認した。三市町長が参加する。

 当初、三連協はライス司令官に嘉手納飛行場から派生する諸問題の解決促進について要請する予定だったが、在日米軍から「司令官が市町村長から要請書を受け取ることはできない」という旨の返答がきたため、表敬という形をとることにした。口頭で未明離陸など騒音問題について要請するとみられる。

 また、青森県内では、同基地のほか、三沢市役所や東北防衛局三沢防衛事務所を訪れ、基地から派生する事件事故への対応や運用状況などについて担当者と情報交換する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291300_02.html

 

2008年7月29日(火) 夕刊 1面

要請書受け取り総司令部が拒否/宜野湾市長申請に

 【宜野湾】宜野湾市によると、米軍普天間飛行場の早期返還や危険性除去を要請するため米国ハワイ州を訪問中の伊波洋一宜野湾市長は二十九日(現地時間二十七日)、米太平洋軍総司令部のあるキャンプ・スミスを訪ねたが要請書の受け取りを拒否された。

 伊波市長は訪米前に同司令部司令官のティモシー・J・キーティング海軍大将との面談を断られていたため、同基地のゲートで要請書の提出を申請。対応したハインス同司令部渉外官は「米国防総省などを通じ提出してほしい」として受け取りを拒んだという。

 二〇〇四年の訪米で同司令部の戦務支援部長が対応し、要請書を直接手渡せたという伊波市長の指摘に対し、ハインス渉外官は「現在は正式なルートを通じて受け取ることがルールとなっている」と説明したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291700_05.html

 

2008年7月29日(火) 夕刊 5面

米陸軍、在沖米兵立件へ/比女性暴行

 在日米陸軍は二十九日までに、沖縄市でフィリピン人女性を暴行したとして、在沖縄米陸軍のロナルド・ホプストック伍長(25)を強姦に関する罪などで立件することを決めた。

 在日米陸軍によると、今後は予備審問を開くなどして、百二十日以内に実際に軍法会議にかけるかどうかを決める。

 伍長は二月十八日、沖縄市内のホテルで二十一歳だったフィリピン人女性に暴行、けがをさせたとして県警が四月に強姦致傷容疑で書類送検。だが、那覇地検は五月、「十分な証拠がない」として嫌疑不十分で伍長を不起訴処分としていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291700_06.html

終戦63周年の決意 – 真の独立と平和を、生活向上を、民主主義を、環境を?敗戦

 今日は、敗戦・終戦記念日です。

 私は、当時6歳でした。今日と同じように晴れ上がった暑い夏の日でした。栃木県の矢板という小さな町の小さな教会に付属する牧師館にいました。

 牧師館の畳の部屋でした。縦型の真空管式ラジオ、茶色のラジオを大人たちが囲んでいました。そのラジオを今でもはっきり覚えています。敗戦の玉音放送(天皇の放送を「玉音」というのです!)が流されたのは、このラジオからでした。36歳の若い父はいませんでした。もちろん徴兵でとられ、中国戦線にいたからです。それから63年。

 私は、今年の敗戦記念日を、ひと月後に70歳を迎える年齢で迎えました。

 戦争と重なった、学齢前の時期を除けば、私の人生はほとんど、「戦後」と重なっています。その人生をふまえて、敗戦63年を記念する今日、私は、何を決意したでしょうか。私の決意は、平凡ではありますが、日本の真の独立を回復することと再び戦争をする国にはしない、平和憲法を守る、ということでした。

 [マスメディアと9条]しかし、マスメディアの状況を見ると、この決意は決して平凡ではないことに気づかされます。「戦争は二度としない」ということは、63年前は当たり前のことでした。その2年後に制定された日本国憲法、特に9条は、その当たり前の国民の感情を国の基本法に反映したものでした。しかし、今や、マスメディアや日本社会では、そのことが「当たり前のこと」ではなくなっています。社説で「憲法9条を守ろう」と旗色鮮明にしている新聞は地方紙にはかなりありますが、全国紙はそうではありません。東京新聞の今日の社説は、「人間中心主義に帰れー終戦記念日に考える」と題した、なかなかいい社説でした。オリンピックで言えば入賞ということになるでしょう。しかし、メダルの色は、残念ながら「金」とは行きませんでした。「銅」というところでしょうか。なぜなら、人間中心主義を政治的に反映しているものは、日本国憲法特に第9条であることへの言及がなかったからです。

 [憲法9条を守ること]戦後63年、沖縄県をふくむ日本は米「帝国」の従属下におかれています。「戦争をする国」米「帝国」に対して、日本は、「戦争をしない国」であることを国の基本法である憲法で定めています。しかるに、宗主国の政策に、従属国は国の基本的あり方をあわせようとしています。それが9条を中心とする憲法の改悪です。

 日本の対米従属の象徴であり実体であるものは、在沖日米軍基地です。この基地は現実に戦争状態です。1959年東京地裁は、伊達判決において、日本における米軍の存在は憲法ととうてい両立し得ない、と判示しました。

(なお、ここで、「在沖日米軍基地」と表記するのは、沖縄県における米軍基地(専用施設)が、施設数で全日本の41%、面積で75%を占める状況を考慮するとき、単に在日米軍基地と表記するだけでは、沖縄県をふくむ全日本国における米軍基地の異常な実態をうまく反映できないからです)

 戦後63年間、日本は戦争をしなかった、ということは、ある意味では当たっています。しかし、現実には当たっていません。日本は在沖日米軍基地の存在によって、国の基本法に反して「戦争をしてきた国」「戦争をしている国」なのです。それに加えるに、「自衛隊」の参戦と軍隊化が執拗に米日支配層によって追求され、恒久法まで立法しようとしています。

 日本310万人、アジア2000万人というとてつもない数の人命によってあがなわれ、今も被爆者などの苦しみによって生き続けている憲法を守ることは、米軍基地をなくす運動と相まって、日本を「戦争をしない国」であり続けさせるだけでなく世界を「戦争をしない国ぐに」にかえ、在沖日米軍基地と自衛隊派兵によって「戦争をしている国」であることをやめさせ、日本を真に独立した国にすることにつながると確信します。このことは、また、生活向上と、民主主義と、環境保全につながります。それを実現する統一・共同戦線結成のために生涯をかけて努力する決意です。

 これが私の敗戦・終戦63年の決意です。

(2008年8月15日)

県議会、辺野古移設反対を決議 「危険除去」で作業チーム/「普天間」協議 新基地反対決議/野党県議団が辺野古を訪問 日に離着陸223回/嘉手納目視調査 ホワイトビーチ、08年、原潜入港すでに24回目 嘉手納のF15が共同訓練へ離陸 など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月19日から23日)

2008年7月19日(土) 朝刊 1面

県議会 辺野古移設反対を決議

野党の賛成多数で/基地固定化・環境破壊

 県議会(高嶺善伸議長)の六月定例会は十八日の最終本会議で、野党六会派が提出した普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書を野党の賛成多数で可決した。日米両政府の合意した現行案(V字形)に県議会が反対決議をしたのは初めて。決議・意見書は日米両政府や仲井真弘多知事に対し、新基地建設の断念を求める内容で、同飛行場の移設協議に影響を与えそうだ。

 後期高齢者医療制度の「廃止」を求める意見書も野党の賛成多数で可決された。

 新基地建設に反対する決議・意見書は、採決に先立つ質疑で与野党が対立。野党代表の玉城義和氏(無所属クラブ)は辺野古移設が基地の過重負担や固定化、自然環境破壊につながるなどの提案理由を説明した。

 与党の中川京貴氏(自民)、佐喜真淳氏(同)は「『普天間』を閉鎖・返還させるため、辺野古移設以外に方策はあるのか。具体的な対案がないままでは審議ができない」と詰め寄った。玉城氏は「危険な基地の一日も早い返還が県民的要求であり、県民世論を受けて対応するのが外交権を持つ政府の役割だ」と応じた。

 賛否の討論では与党の桑江朝千夫氏(自民)が「具体的対案もない『反対のための反対決議』であり、普天間基地の早期移設を否定し、その危険性を放置するものだ」と批判。

 野党側は照屋大河氏(社民・護憲ネット)が「たらい回し的に県内移設したところで抜本的解決にならない」、前田政明氏(共産)が「海外侵略の恒久的な米軍新基地を建設させてはならない」と支持を訴えた。

 採決は議長を除く四十七人で行われ、社民・護憲ネット、共産、社大・ニライ、民主、改革の会、無所属クラブの計二十五人が賛成し、自民、公明県民会議の計二十一人が反対。無所属の吉田勝廣氏は退席した。

 野党提出の後期高齢者医療制度の廃止等を求める意見書も、野党の賛成多数で可決された。


知事「誠に残念だ」


 仲井真弘多知事は十八日、県議会で米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書と、後期高齢者医療制度の廃止に関する意見書が可決されたことを受け、「誠に残念だ」とのコメントを発表した。

 普天間移設では「県としては現在の普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するためには、キャンプ・シュワブに移設することが現実的」として、シュワブ移設を原則的に容認する考えをあらためて強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_01.html

 

2008年7月19日(土) 朝刊 31面

V字案 初の「ノー」/傍聴席総立ち 大歓声

 日米両政府の合意したV字形滑走路案に、県議会が初めて「ノー」の意思を表明した。与野党逆転の県議会で十八日、賛成多数で採択された「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書案」。傍聴席で審議を見守っていた平和団体のメンバーたちは、採決の瞬間には総立ちとなって歓声を上げ、喜びを爆発させた。

 「賛成多数で採択されました」。午後三時すぎ、過半数を占める野党議員が起立し、高嶺善伸議長の声が議場に響いた瞬間、傍聴人たちは「うわー」と歓声を上げながら一斉に立ち上がった。拍手は一分間ほど鳴りやまず、あちこちで握手を交わしたり、隣の人と抱き合ったりする姿が見られ、ハンカチで顔を覆う女性もいた。

 この日は午前十時の開会時から、辺野古で座り込みを続ける住民や環境保護団体、反戦団体などのメンバーら約百五十人が詰め掛け、傍聴席は異例の満席になっていた。与野党議員の激しいやりとりに騒然とする場面が何度かあったが、昼の休会を挟んで二時間半にも及んだ審議をじっと見届けた。

 議場を出てきたヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は「名護市民投票ときょうの県議会決議こそが、沖縄県民の民意だ」と上気した表情で語った。「十数年間頑張ってきたおじい、おばあ、全員にとって大きな自信になる。何としてでも基地を造らせない。それが可能だと確信した」。そして、移設協議会のため上京している仲井真弘多知事には「大多数の県民は辺野古への新基地建設を望んでおらず、県議会も意思表示した。それでもなお辺野古の埋め立てを推し進めるならば、県民への裏切りでしかない」と力を込めた。

 「歴史的決議だ」。ジュゴンネットワーク沖縄の土田武信事務局長は大きく息を吐いた。議場が一時騒然としたこともあり「きょう中に可決できるか心配だった」という。「与野党が議論した上での決議なので、政治的インパクトは大きい。意見書にしっかりとジュゴン保護も明記された。すぐ建設中止にならなくても、今後ボディーブローのように、じわじわと流れを変えるだろう」と期待した。

 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代共同代表も「県民の思いがつながり、議場で形となった。議員たちが起立した瞬間、体が震えました」と笑顔。「新基地建設は、沖縄を基地の島として存続させることでしかない。米兵犯罪で日常を脅かす現状を脱却するためには、基地を造らせないのは当たり前のこと。意見書採択は大きな一歩になったと思う」とかみしめるように語った。


地元冷静 思い複雑/名護


 【名護】県議会の「新基地建設反対決議」は、米軍普天間飛行場の移設問題で十年以上、揺れてきた地元に、複雑な波紋を広げた。

 一貫して反対してきた辺野古区の西川征夫さん(64)は「よかったとは思うが、これで国があきらめるわけではなく、手放しでは喜べない」と冷静に受け止めた。「この問題は地域の人間関係を壊してきた。ずるずる続くのではなく、早く解決してほしい。騒音や墜落の怖さを毎日感じて生活することはできないと思っていても、表だって反対とは言えない人も多い。辺野古が一致団結して、反対できればいいのだが」と話した。

 辺野古区の有志らでつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「県議会は反対しても地元は容認している」と強調。「海外でも国内でも普天間を受け入れるところがあればいいが、ないからこそ地域振興など条件つきで受け入れた。決議するのはいいが、本当に普天間を撤去できるのか根拠を示してほしい」と憤りを抑えるように言葉を継いだ。

 移設を容認する島袋吉和名護市長の後援会長、荻堂盛秀名護市商工会長は「県議会の立場での判断であり、コメントをする立場にはない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_02.html

 

2008年7月19日(土) 朝刊 1面

「危険除去」で作業チーム/「普天間」協議

国・県・名護市が合意

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第八回会合が十八日夕、首相官邸で開かれた。石破茂防衛相は危険性除去と建設計画・環境影響評価(アセスメント)について、それぞれ実務者で構成するワーキングチームを設置する方針を示し、県や名護市など地元と合意した。石破防衛相は「密接に意見交換しながら、検討を進めることが必要だ」と述べた。町村信孝官房長官は両ワーキングチームを今月中に発足させる意向を示した。

 協議会は冒頭の町村官房長官のあいさつを除き、非公開で行われた。

 会合終了後の記者会見で、仲井真弘多知事は「一歩前進。私が一年半言い続けてきたことが、一インチは動いた」とワーキングチーム設置の合意を高く評価した。

 石破防衛相は、県や名護市が求めた代替施設の沖合移動について、ワーキングチームで協議するかどうかは不透明との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_03.html

 

2008年7月19日(土) 朝刊 31面

県内14自治体 未作成/国民保護計画

弁護士会調べ 全国の3分の2

 戦争やテロなど有事の住民避難に備える国民保護法制で、自治体に義務付けられている国民保護計画を作成していない市町村が県内に十四市町村あり、全国で未策定二十一自治体の三分の二を占めていることが、沖縄弁護士会の調べで十八日までに分かった。米軍基地が身近に存在する県内で、国民保護計画に慎重な自治体の多さが際立った。

 同会がこのほど県内全市町村にアンケートしたところ、全体の65%に当たる二十七自治体が保護計画を策定していた。総務省消防庁の四月一日現在の調査では、県外では、長崎市など七自治体が作成していない。

 未作成の理由に、業務多忙を挙げるところが多いが、本紙の取材に対し石垣市は「離島のため武力攻撃に対応できる避難場所がなく、軍事基地・軍関連施設がなく武力攻撃の理由がない」などと説明し、今後も計画を作る予定はない。同市に隣接する竹富町は「離島という性格上、石垣市の協力が得られなければ避難計画を立てられない」として未策定だ。

 宜野湾市は「市の真ん中に米軍基地があり、住民の避難場所を設定するのも難しい。基地の危険除去が先」としている。沖縄市は「現在は、地域防災計画を充実させるために取り組んでいる。住民避難などは、防災計画を活用できる所もある」としている。

 計画を作成した市町村でも、避難住民救援のための備蓄を具体的に回答したところは六自治体だった。

 アンケートの詳細は、十九日午後三時から那覇市旭町のおきでんふれあいホールで行われるシンポジウム「軍隊と市民」(同会・九州弁護士会連合会共催)で報告される。問い合わせは沖縄弁護士会、電話098(833)5545。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月19日朝刊)

[移設反対決議]

民意に寄り添う判断だ


 県議会は六月定例会最終本会議で、米軍普天間飛行場の移設先として日米合意している「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議と意見書」を野党六会派の賛成多数で可決した。

 辺野古沿岸域へのV字形滑走路建設に日米両政府が合意してから県議会が反対決議するのは初めてだ。

 六月の県議選で多数野党を選択した有権者の意思があらためて決議になった形だが、意味は重い。直近の民意の表れと見ていいからだ。

 決議は、県の「自然環境の保全に関する指針」で移設海域が「評価ランク1」に分類されていると指摘。国の天然記念物で国際保護獣のジュゴンをはぐくみ、新たなサンゴ群落が見つかっているなどとして、世界に誇れる自然環境を後世に残し、引き継ぐことが県民の責務であると宣言している。

 決議によって仲井真弘多知事の姿勢は変わるだろうか。その可能性はほとんどない。

 知事は決議に先手を打つ形で、先の定例会見で「県外移設がベストだが、県内もやむなしと思っている」と従来姿勢に変化がないことを強調している。「北部が受け入れている間に移設することが最も近道だ」とも述べている。

 知事の立場は県民に理解されているだろうか。県民の大方は「明瞭でない」と見ているのではないだろうか。知事は、名護市辺野古沿岸域への移設そのものには反対ではない。ただ、日米合意しているV字形滑走路案を「沖合にずらしてほしい」と要望している。

 具体的に、どこに、どれだけ、ずらすのか。ずらすことによって、近くの住民や環境に与える負荷はどう変わるのか。説明はとても十分とはいえまい。これが知事の立場を分かりにくいものにしているのではないか。

 これに対し、仲井真知事は先の定例会見で「大浦湾に突き出ているものを引っ込めて出すという感じだ」という表現で、南西方向にずらした上で、あらためて沖合に移動する考えを初めて示した。

 仲井真知事が理由に挙げたのは大浦湾の環境保全だった。「(代替施設を)引っ込めないと海流が止まり、死ぬ状態になりかねない」と現行の移設案に懸念を示したのだ。

 ただ、大規模な埋め立てを伴う移設と環境保全が両立するのかという根本的な疑問は解消されないままだ。

 県議会の反対決議も、移設による環境破壊を最大の理由に挙げている。

 この日、首相官邸では政府と県、地元による移設協議会の第八回会合が開かれ、普天間飛行場の危険性除去と沖合移動について、政府と県がワーキングチームを設置することで合意した。

 いずれも仲井真知事や島袋吉和名護市長が求めていたものだが、危険性除去については沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落して約四年、知事に就任し三年以内をめどとした閉鎖状態を求めてから約一年八カ月たつ。遅すぎの感は否めない。知事は「半歩前進」と評価したが、メンバーも具体的な議論もこれから。先行きはまったく不透明だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080719.html#no_1

 

2008年7月20日(日) 朝刊 2面

「観光庁出先 沖縄に」/二階総務会長が言及

 自民党の二階俊博総務会長は十九日、那覇市内で開かれた同党県連大会に出席し、十月に発足する観光庁について、「仲井真弘多知事は観光客一千万人を公約に掲げている。実現すれば各事業、市町村が活性化する。観光庁の出先を沖縄に設置するように対応していきたい」との認識を示した。

 米軍普天間飛行場問題については「町村信孝官房長官は『必要な予算は来年度も確保する』と述べ、政府の責任者として対応する」と説明した上で、「同問題は県民の意向に沿う対応が必要だ。県民だけではなく、全国民の問題としてとらえることが大事だ」という考え方を示した。

 相次ぐ米軍人・軍属の事件・事故には「安心・安全な県は観光客一千万人の公約実現にも欠かせない」とし、泉伸也国家公安委員長に沖縄県警の警察官増員を求めたことを明らかにした。泉委員長は「警察庁に指示した」とし、前向きな姿勢を示したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_01.html

 

2008年7月20日(日) 朝刊 2面

具志―翁長体制が始動/自民県連大会

 自民党県連(具志孝助会長)は十九日、那覇市内のパシフィックホテル沖縄で第三十九回県連大会を開き、党再生と那覇市長選、浦添市長選、衆院選の勝利をアピールした。米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への早期移設と同飛行場の全面返還、後期高齢者医療制度の見直しをそれぞれ決議した。具志会長、翁長政俊幹事長らの新役員体制が正式にスタート。衆院沖縄1区は公明党と調整し、公認候補を擁立すると表明した。

 二十二代会長に就任した具志氏は「昨年七月の参院選、六月の県議選で敗北し、県連発足以来最大の危機に直面している」とし、「各支部、経済団体、地域団体とのコミュニケーションを再構築し、地域の実情に沿った政策策定で県連組織の早急な立て直しを図る」と訴えた。

 政策は(1)自立経済に向けた産業振興と雇用創出の促進(2)米軍基地の整理縮小と跡地利活用促進(3)観光振興と那覇空港滑走路の拡張整備―など十項目を挙げた。経済分野では中小企業経営安定対策や原油価格高騰対策の推進、基地問題は普天間飛行場の移設作業促進と跡地利用計画の早期策定を盛り込んだ。

 活動方針は那覇市と浦添市の市長選の勝利、衆院選に備えた即応体制の構築、組織活動の地域への浸透などを決めた。

 大会アピールでは「県連は大きな危機に直面し、存亡の危機的状況にある」と訴え、「県民の声を真摯に受け止め、県民のための政策を着実に実行し、信頼される県連を再構築し、夢と希望を持てる県づくりにまい進する」と宣言した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_02.html

 

2008年7月20日(日) 朝刊 23面

軍論理 優先に警鐘/改憲想定 那覇でシンポ

 憲法改定で自衛隊が「軍隊」として法体系に組み込まれた場合の、市民社会との関係を考えるシンポジウムが十九日、那覇市のおきでんふれあいホールであった。県内の弁護士らが二〇〇四年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故などを例に、市民の安全が脅かされる場面でも「軍の論理」が優先される可能性を指摘。危険性を見据えた上で、議論する必要性を訴えた。九州弁護士会連合会と沖縄弁護士会の共催。

 複数の弁護士が、千葉沖の海自イージス艦と漁船の衝突事故では海上保安庁が捜査できたが、沖国大の米軍ヘリ事故では警察権が及ばなかったことを例示した。

 新垣勉弁護士は、〇一年米同時多発テロ以降のパトリオット(愛国者)法により、米国では情報収集の名目で電話盗聴などが行われ、個人情報が政府に管理されているとし、「恐怖と不安を利用して有事システムがつくられる。沖縄社会が軍の歴史から学んできたことを見つめ直さねばならない」と訴えた。

 9・11テロ後の米社会を取材したジャーナリストの堤未果さんが講演。戦争自体が民営化し、貧困層を「モノ」として扱って戦場に追いやる社会構造があると指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_08.html

 

2008年7月20日(日) 朝刊 22面

「激動の時代」関心高く/米軍占領「初めて知った」

 【東京】戦後の沖縄の世相や軌跡をつづる「タイムスアーカイブ あんやたん写真展」が十九日、東京都多摩市のパルテノン多摩で始まった。米軍基地と対峙してきた沖縄県民の歩みを写した八十八枚の写真が展示され、大勢の市民が熱心に見入っていた。二十七日まで。

 「ドキュメント基地と沖縄」と題し、多摩市平和展(主催・同市、同展市民会議)の企画の一環として行われた。同市民会議が沖縄タイムス創刊六十周年記念の写真展を知り、多摩市での開催を申し込んだ。あんやたん写真展の県外開催は初めて。

 会場には祖国復帰運動の混乱やコザ騒動、一九九五年に起きた米兵暴行事件に抗議する県民大会などの写真が並び、当時の臨場感を伝えた。

 時代ごとに区分され、県内のあんやたん展に先行して、九〇年代や二〇〇〇年代の写真も展示。

 〇四年の沖国大への米軍ヘリ墜落事故の翌日の本紙朝刊が資料として置かれた。

 戦争被害や米軍犯罪の理不尽さに怒りで燃え上がる県民をとらえた写真を、来場者が説明文を読みながらじっと見つめていた。ハンカチで目をぬぐいながら見入る女性も。

 同市民会議の阿部裕行さんは「米軍の事件・事故など米軍統治下と今もほとんど変わっていない。沖縄の人がなぜ怒っているのか、本土の新聞が伝えないことを来場者に知ってほしい」と企画の意図を話した。

 同市内から訪れた会社員の山崎恭子さん(30)は「外国に長く占領されていたことを初めて知った。日本人でありながら日本ではないことは、本土にいると想像できない」と驚いた様子で語った。

 家族と来場した女性(67)は「テレビで見聞きしていたが、実際に写真で見ると言葉にならない。沖縄の人は激動の時代を生き抜いて来たんだなと感じる」と目を潤ませた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_09.html

 

琉球新報 社説

普天間移設協 打開策は県外移設しかない 2008年7月20日

 一体、いつまで小手先の策を見せるのだろう。在沖米海兵隊普天間飛行場を5年ないし7年で返還する、と合意した1996年の日米特別行動委員会(SACO)から、早くも12年近い歳月が流れている。にもかかわらず、作業は遅々として進まない。計画そのものに欠陥があった、と疑問を持つのが普通だ。

 しかし、日本政府や米側はそうは考えないらしい。一度決めたら何が何でも実行する。こんな、かたくなな姿勢ばかりが目立つ。

 18日の政府と沖縄側が話し合う普天間移設措置協議会(主宰・町村信孝官房長官)で、2つのワーキングチームの設置が決まった。現飛行場の「危険性除去」と、代替施設の「建設計画」を検討する両作業部会だ。仲井真弘多知事が主張する3年をめどとする閉鎖状態の実現と、代替施設の沖合移動を念頭に置いたものだという。

 この2つについて、政府はこの間、ほとんどゼロ回答に終始してきた。なぜ、今になって「一歩前進」(仲井真知事)という行動に出たのか。県議会の与野党逆転という現実が背景の一つにあるのは間違いない。もしそうであるならば、民意に配慮する、という政府の思惑があることになる。

 民意への配慮ということであれば、さらに踏み込むべきだ。折しもこの日、沖縄県議会は名護市辺野古への新基地建設に反対する意見書・決議を賛成多数で可決している。議会の意思が民意、ということに誰も異論はあるまい。

 ここは原点に返る必要がある。なぜ普天間飛行場の返還が取りざたされているのか。言うまでもなくその「危険性」ゆえだろう。住民地域のど真ん中に位置するこの飛行場の危険性については、これまで何度も問題視されてきた。

 2003年11月、来県したラムズフェルド米国防長官が普天間飛行場を視察。その危険性を指摘したのは記憶に新しい。それを裏付けるかのように、1年足らずして米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落している。危険性は今でも何も変わらないし否定する人もいない。

 ここまで分かっていながら、打開策を見いだせないのは、明らかに政治や行政の怠慢ではないか。

 返還問題が、ここまでこじれた原因ははっきりしている。返還の条件が県内移設だからだ。危険性のある施設は、どこに持っていっても危険なのに変わりはない。

 問題を解決するには、何度も言うように県外移設しかない。県議会での論議で与党は野党に対し対案を示せと迫った。しかし、それは筋違いの話だ。日米安保は国民の安全を守るためにある。安保のためにある基地が県民を危険に曝(さら)す。その矛盾の解決を県民は求めている。解決の義務は、県民にではなく日米両政府にある。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134382-storytopic-11.html

 

2008年7月21日(月) 朝刊 21面

新基地反対決議/野党県議団が辺野古を訪問

 【名護】県議会の野党議員団が二十日、普天間飛行場の移設先である名護市辺野古を訪れ、県議会六月定例会で可決した新基地建設に反対する決議・意見書について、座り込みを続けている「命を守る会」と「ヘリ基地反対協議会」のメンバーなどに報告。「地元と議会が連携し、新基地建設の阻止に向けて取り組もう」と激励した。

 十八日の可決から間髪を入れず現場を訪れようと、社民・護憲ネット、共産、社大・ニライ、民主、無所属クラブの各会派から約十五人の県議が駆け付けた。

 辺野古で反対運動を続けている嘉陽宗義さん(85)と、妻の芳子さん(80)夫妻も参加。宗義さんは今回の決議について「感謝してもしきれない。子や孫の世代のためにも、皆さんには頑張ってほしい」と呼び掛けた。議員団の一部は、船に乗り基地建設予定地の大浦湾を視察した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807211300_04.html

 

2008年7月21日(月) 朝刊 20面

合法入国で違法就労/比国会議員ら 暴行事件の調査報告

 【読谷】二月に沖縄市内で、米兵がフィリピン人女性に暴行した罪で書類送検され、不起訴処分となった事件の調査などのため来沖している同国のリザ・ラルゴーザ・マサ国会議員らが二十日、読谷村内の教会で報告会を開いた。事件後、被害女性がフィリピン政府による十分な支援を得られていなかったとし「海外で働く国民を守るよう政府に働き掛けたい」と話し、県民への支援も呼び掛けた。

 同国女性党党首を務めるラルゴーザ・マサ議員らは被害女性や、事件現場のホテル、女性が働いた店など関係者から事情を聴取した。女性は興行ビザでダンサーとして入国したが、接客業もさせられていたことなどを報告した。

 マサ議員は合法な入国でも違法な就労実態につながっていることを指摘し、「政府に支援を働き掛け、同じような境遇の女性を助ける運動を続けたい」と話した。

 海外で働くフィリピン人支援のNGOで日本担当のルイシット・ポンゴスさんは第一に罰せられるべきなのは事件を起こした加害者だと強調した上で、違法な就労は店の雇用主や仲介業者、日本政府にもそれぞれに責任があると述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807211300_06.html

 

2008年7月22日(火) 夕刊 5面

嘉手納の実態目視調査/基地対策協 F15、99デシベル超

 【嘉手納】米軍嘉手納基地の運用実態を把握するため、嘉手納町基地対策協議会調査部会(大城和子部会長)の目視調査が二十二日午前、始まった。

 同基地滑走路が見渡せる同町屋良の「道の駅かでな」で午前六時から午後十時まで、離着陸回数や機種、騒音、飛行ルートなどを調べる。

 同協議会は基地から派生する被害を排除し、静かで平和な町をつくることを活動目的としており、目視調査は同協議会として初の取り組み。同会では「騒音被害の改善のため、今後も継続して実施したい」としている。

 同日は午前十一時までに、同基地所属のF15戦闘機やKC135空中給油機が飛行。外来機を含む航空機の離着陸は計六十回あった。騒音の最高値はF15が離陸した十時十三分に九九・七デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を計測した。

 大城部会長は「基地の運用がどのようになっているのか不明な部分が多い。目視調査の結果をデータとして残し、町民全体で基地を考えるきっかけにしたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807221700_02.html

 

2008年7月23日(水) 朝刊 28面

日に離着陸223回/嘉手納目視調査

 【嘉手納】米軍嘉手納基地の運用実態を把握するため、嘉手納町民で組織する同町基地対策協議会(金城睦昇会長)が同町屋良の「道の駅かでな」で、二十二日午前六時から午後十時にかけて行った目視調査で計二百二十三回の離着陸が確認された。調査に立ち会った町の担当職員は「過密な基地運用の実態があらためて浮き彫りになった」としている。

 同日は同基地所属のF15戦闘機、KC135空中給油機のほか、同基地以外からの外来機も飛行。

 着陸後にすぐに離陸する「タッチアンドゴー」や旋回訓練なども確認された。

 騒音の最高値は同午前十時十三分に、南側滑走路から北谷町方向へ離陸したF15が九九・七デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を計測した。

 調査には同協議会調査部会(大城和子部会長)のメンバーが参加。離着陸回数や機種、騒音、飛行ルートなどを調べた。

 嘉手納町が二〇〇七年度に独自で計三日間実施した目視調査では、離着陸を計で五百五十七回確認、一日平均は百八十五回だった。〇七年度調査の平均値を上回った今回の調査結果について、町は「離着陸回数も多く、予想された結果。今回のデータを精査し、基地被害の改善などに反映させたい」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231300_03.html

 

2008年7月23日(水) 朝刊 2面

来年度予算に16億円/那覇・宮古島 旧軍飛行場対策

 旧軍飛行場用地問題の対策事業について、県基地対策課は二〇〇九年度概算要求に、那覇市鏡水と宮古島市富名腰、七原、腰原のコミュニティーセンター整備事業を先行して盛り込む方針を固めたことが、二十二日までに分かった。財源は、沖縄特別振興対策調整費を活用する。関係者によると、事業期間はいずれも二年になる見通しで、総額十六億円余が計上される予定だ。

 今回、対象となるのは、那覇市の「旧小禄飛行場字鏡水権利獲得期成会」と、宮古島市の「旧宮古海軍飛行場用地等問題解決促進地主会」。

 鏡水の期成会は、保健センターや市民会館建設も要望していたが、県は厳しいとの見解を示している。ただ、コミュニティーセンターは那覇市民全体の保健事業や講座などが開催できるような多目的利用施設を目指す。

 宮古島市は、用地接収によって地元共同体が分散化を余儀なくされたことから、コミュニティー再構築や活性化を目的に、三集落のコミュニティーセンターや御嶽、集落内の道路整備を要望する方針だ。

 一方、ほかの七地主会について県は、関係市町村と協議して条件が整い次第、一〇年度以降の概算要求に盛り込む意向だ。

 だが、那覇市大嶺の旧那覇飛行場用地問題解決地主会は「財源が沖縄特別振興対策調整費では戦後処理事業に見合わない」として特別枠設置を求めており、市と協議のめどがついていない。そのほか、個人補償を求めている地主会もあり、先行きは不透明だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231300_04.html

 

2008年7月23日(水) 朝刊 2面

原潜入港すでに24回目/ホワイトビーチ 08年

 県に入った連絡によると、米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦アッシュヴィル(六、〇八二トン)が二十二日午前十時九分、うるま市勝連平敷屋のホワイトビーチに入港、接岸した。原潜の年間寄港回数は、過去最多だった昨年に並ぶ二十四回に達した。

 寄港増の要因について、県基地対策課は外務省に問い合わせているが、「米軍の運用上の理由」として把握できていない。

 文部科学省の調査によると、放射能の値は平常値と同じだった。アッシュヴィル寄港は六月二十六日以来。目的は明らかにされていない。

 原潜の寄港回数は、県が一九六八年から統計を取っている。二〇〇四年は十七回、〇五年と〇六年はそれぞれ十六回とほぼ横ばいだったが、昨年は二十四回に増えていた。今回の寄港により、復帰後の総計は三百二回目となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231300_08.html

 

2008年7月23日(水) 夕刊 1面 

嘉手納のF15が共同訓練へ離陸

 米軍嘉手納基地は二十三日、第一八航空団第六七飛行中隊のF15戦闘機六機が、航空自衛隊第三航空団と共同訓練を行うため、三沢基地(青森県)へ離陸したと発表した。

 在日米軍再編に盛り込まれた訓練移転の一環。防衛省によると、自衛隊はF2戦闘機とF4戦闘機それぞれ約四機参加し、三沢東方空域や秋田西方空域での戦闘訓練を三十日まで行う。

 嘉手納基地報道部は、訓練移転の目的を「嘉手納運用による地域への影響を軽減しつつ、運用即応力と二国間の相互運用力を高める」ためと説明している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231700_02.html

航空ショー、県民を危険にさらすな 米領事館に火炎瓶 中学社会科にも「沖縄戦」 民主沖縄ビジョン、絵に描いたもちでは困る 残留2県系人、比国から来日 新基地反対決議を提出/県議会野党会派 10年にアセス着手 辺野古移設反対可決へ など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月13日から18日)  

琉球新報 社説

航空ショー 県民を危険にさらすな 2008年7月13日

 米空軍嘉手納基地のブレット・ウィリアムズ司令官が、嘉手納基地を一般開放する来年のアメリカフェストで航空ショーの実施を検討していることを明らかにした。

 編隊を組んで宙返りなどを繰り返す曲技飛行の危険性は、墜落事故が後を絶たないことからも明らかだ。嘉手納基地上空で実施されれば一般県民を生命の危険にさらすことになる。周辺への騒音被害も計り知れない。断じて容認できる話ではない。米軍は速やかに航空ショーの実施案を撤回すべきだ。

 嘉手納基地では住民の反対もあって20年以上、曲技飛行は行われていない。

 2004年に米空軍のサンダーバード飛行隊による航空ショーが計画されたが、地元の沖縄市、嘉手納町、北谷町などが強く反対したため中止に追い込まれた。こうした経緯があるにもかかわらず、再び航空ショーの可能性に言及した基地司令官の神経を疑う。

 今回も地元首長は安全面と騒音被害の両面から反対の意思を示した。ところが嘉手納基地は「話し合う機会を持たずして否定的な見解を示したことを残念に思う。飛行デモンストレーションは米本国や欧州の基地で安全に行われている」などと強弁。開き直りとも取れる姿勢を見せている。

 米サウスカロライナ州では昨年4月、航空ショーで飛行中の米海軍機が墜落し操縦士一人が死亡した。ほかにも多くの死傷事故が起きている。何をもって安全と言うのか。沖縄で同様の惨事が起きないという保証はどこにもない。

 航空ショーが蒸し返される背景として、96年に日米が合意した「嘉手納飛行場における航空機騒音規制措置」(騒音防止協定)の不備を指摘しなければならない。

 「空戦訓練に関連した曲技飛行は行わない」と明記する一方で「あらかじめ計画された曲技飛行の展示は除外される」とし、航空ショーを容認しているからだ。

 この合意がある以上、嘉手納基地で航空ショーが実施される懸念は消え去ることがない。すべての曲技飛行ができなくなるよう騒音規制措置を早急に改めるべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134135-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

メア発言 こんな米総領事、要らない 2008年7月13日

 米軍占領下の沖縄には高等弁務官という軍人のポストがあり、琉球列島米国民政府のトップとして絶大な権力を振るっていた。「沖縄の自治は神話にすぎない」。こう発言して県民の反発を買っていたのが、政治・経済面でさまざまな強権を行使したキャラウェイ高等弁務官だ。

 半世紀近くも前の話を持ち出したのは、ほかでもない。最近、かの「悪代官」もかくや、と思わせるような人物が現れている。時代錯誤的な言動が目につくケビン・メア在沖米総領事のことだ。

 米軍普天間飛行場の危険性に関して、総領事は11日「滑走路近くの基地外になぜ、宜野湾市が(住宅)建設を許しているのか疑問がある」と、従来の持論を繰り返した。つまり「基地の近くに後から勝手に住宅を造る住民と、それを許可している宜野湾市が悪い(だから騒音があろうが危険があろうが、米軍に責任はない)」などと、こう言いたいのだろう。

 爆音訴訟で日本政府が主張している「危険への接近」理論と同じ理屈だ。普天間飛行場が米軍内部の安全基準に違反しているとする伊波洋一宜野湾市長の指摘にも反論したつもりかもしれない。何と独善的な考え方なのか。普天間基地がどういう経緯でできたのか知らないわけでもあるまい。単なる無知なのか。知っていながら知らないふりをしているのか。

 宜野湾市伊佐浜では戦後、米軍がブルドーザーと武装米兵による銃剣で住民を脅し追放した。抵抗する住民を暴力で退けて家屋や農地を破壊、その後にキャンプ瑞慶覧を強引に建設した。先祖伝来の土地を追われた住民は、うち10家族がブラジルへの移住を余儀なくされた。何もない原野に基地が造られたわけではない。普天間飛行場も似たようなものだ。戦後、住民が避難先から戻ると、すでに基地が建設されていた。

 総領事が責任逃れの根拠とする「危険への接近」論。6月の普天間爆音訴訟の判決でも「沖縄本島において居住地を選択する幅が限られており、普天間飛行場周辺の歴史的事情が地元回帰意識を強いものとしている」と明確に退けられている。土地を収奪された歴史的な背景を理由に、基地周辺に住宅を建設した住民に責任はないとしているのだ。

 あらためて考えてみたい。総領事(館)の役割とは何なのか。赴任地の住民との友好親善が第1の目的と理解する。いたずらに挑発を繰り返し、地元との摩擦を大きくすることではないはずだ。

 「外交官の基本はうそをつかないこと」。メア氏はあるインタビューで述べている。だが無知を基礎にした正直さほど始末に負えないものもない。平成のキャラウェイ気取りはやめてもらいたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134136-storytopic-11.html

 

2008年7月14日(月) 夕刊 5面

米領事館に火炎瓶/芝生焦がしバイク逃走

 十四日午前一時十五分ごろ、浦添市当山の米国総領事館敷地内に「火炎瓶のようなものが投げ込まれた」と目撃者の男性から一一〇番通報があった。警察や消防が駆け付けたところ、同館敷地内の芝生が焦げていた。けが人はなかった。県警によると、米領事館への火炎瓶投げ入れ事件は初めてという。

 浦添署の調べでは、領事館に面する市道から敷地内に火炎瓶らしきものが一本投げ込まれ、コンクリート製の台に当たって発火。建物から約三十メートル離れた芝生縦三十センチ、横三十センチの範囲が燃え、数分で自然鎮火したという。

 目撃者によると「ガチャン」というガラスの割れる音がして炎があがった後、グレーの服で白色ヘルメットを着用した人物が黒のスクーターで逃げたという。同署が火炎瓶処罰法違反事件として、現場から逃げた人物の行方を追っている。

 在日米国大使館は十四日、大使館や沖縄を含む日本国内五つのすべての領事館の業務を臨時休館と決めていたため、ビザやパスポートなど窓口業務は行われていない。

 ケビン・メア総領事は「ケガ人が出なかったのは幸いだが、こういう行動は許せない。県警が捜査中で、県警の協力に感謝したい」とコメントした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807141700_03.html

 

2008年7月14日(月) 夕刊 1面

県警警らの強化を要請/米軍人等犯罪

 【東京】仲井真弘多知事は十四日午前、増田寛也総務相や泉信也国家公安委員長らを訪ね、米軍関係者の犯罪防止策として沖縄県警の警ら業務を行う人員を増やし、装備や機材などを手厚くするよう要望した。増田総務相は「要請を踏まえ、事務的に詰める」と述べた。泉公安委員長も「安全・安心な社会をつくれるよう、よく研究したい」との考えを示した。仲井真知事は「米軍人などが多数出入りする地域での警戒力を向上することが、急務かつ重要だ」と指摘した。

 県は今年二月の米兵暴行事件を受け、「米軍人等犯罪防止に向けての考え方」として七項目、計二十一の防止対策を提起していた。要請では、「警察の取り組み強化」として、渉外機動警ら隊の人員増強や装備・機材の充実、米軍施設周辺の緊急配備支援システムの整備などを求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807141700_04.html

 

2008年7月14日(月) 夕刊 4面

自衛隊誘致に警鐘/宮古島市で9条シンポ「市民対立あおる」

 【宮古島】大学人九条の会沖縄とみやこ九条の会は十三日、宮古島市中央公民館でシンポジウム「憲法を守り、どう生かしていくか?憲法九条と自衛隊を考える?」を開催した。市民ら約八十人が参加。

 自衛隊基地を誘致した場合の自治体の変容や市民生活に与える影響が指摘された。誘致によって市民が二分される危険性や、米軍との共同使用などへ警鐘を鳴らした。

 大学人九条の会沖縄事務局長の徳田博人琉球大学法科大学院教授は、自衛隊基地を誘致している県外自治体の事例を挙げ、自治への自衛隊の影響力の大きさや騒音被害など住民生活へのリスクを指摘。「市民の対立をあおる構造が生まれる」と懸念を示した。

 一方、同市の地下ダム建設や島おこしの取り組みを高く評価。憲法上での国と自治体の対等関係を強調しながら、基地誘致による国の補助金に頼らない同市の在り方を提案した。同会代表の高良鉄美同大学院教授は、法律の中にある「自衛隊等」の中に米軍も含まれているとして、自衛隊基地で米軍との共同訓練の可能性を示唆。「米国も日本も国益で動く。そこに地域住民の存在はない」と断じた。また、住民自治の障害になっている米軍普天間飛行場を例に挙げ、宮古島市民主体のまちづくりを訴えた。

 みやこ九条の会の仲宗根将二代表世話人は、下地島空港建設の経緯などを説明して、屋良確認書の重要性を語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807141700_06.html

 

2008年7月15日(火) 朝刊 1面

中学社会科にも「沖縄戦」

 【東京】文部科学省が十四日に公表した中学社会科の新学習指導要領の解説書に、小学社会科と同様に、「沖縄戦」が新たに明記されたことが分かった。加えられた文言は小学校の解説書と全く同じ。同省は年内にも新指導要領が策定される高校についても「基本的に同じような考え方で対応する」としている。

 中学社会科の解説書では、歴史的分野の「近代の日本と世界」の項目で、第二次世界大戦などに関して、日本がアジア諸国に損害を与え、日本国民も大きな戦禍を受けたことを記述。

 戦禍の具体例として「各地への空襲、沖縄戦、広島・長崎への原子爆弾の投下など」との一文を加えた。

 同省は「昨年の教科書検定を受けて、文科相が『(沖縄戦を)しっかり教えていくことが大事であり、それに努める』と談話を出したことを具体化するために盛り込んだ」と説明。「解説書に明記したことで、教科書の記述が充実され、教諭がしっかり授業で取り上げるようになるのではないか」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807151300_02.html

 

琉球新報 社説

民主沖縄ビジョン 絵に描いたもちでは困る 2008年7月15日

 民主党は、このほど決定した「沖縄ビジョン2008」で、日米地位協定の改定や米軍普天間飛行場の県外、国外移設を目指す姿勢を打ち出した。

 自立型経済を構築するため一国二制度的な制度を積極的に検討するほか、国庫補助負担金制度を廃止し一括交付金にすることも、沖縄県をモデルケースとして取り組むという。

 ビジョンを具体化できれば沖縄振興に弾みがつくのは間違いない。重要なのは、本当に実現できるかどうかという点だ。

 とりわけ、普天間飛行場の県外、国外移転は民主党内にも見解の相違があり、次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に盛り込むかどうかは現時点で不透明だという。

 普天間飛行場をめぐっては仲井真弘多知事も、知事選の公約の中で「県外移設がベスト」と言い切っている。それが困難だと判断したから、県内移設を容認する立場を取っているわけだ。

 沖縄ビジョンは「普天間基地の移転についても、県外移転の道を引き続き模索すべきである。戦略環境の変化を踏まえて、国外移転を目指す」と明記した。

 狭い県土に米軍基地をたらい回しで建設するのは、移設先に新たな危険と騒音被害をもたらす。国外や県外へ移せるというのなら、これ以上のことはない。

 日米両政府は2006年、V字形に2本の滑走路を備えた普天間飛行場の代替施設を2014年までを目標に、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設することを盛り込んだ在日米軍再編計画を合意している。

 普天間を県外や国外に移転させるには、まず、この合意を根本から見直すことが不可欠だ。

 政権交代のあかつきには必ず実現するという強い決意の下に、米国と交渉し県外移設、国外移設の道筋をつけるべきだ。

 だが、民主党の沖縄ビジョンに対し、政府内には「実際に政権を取ればその通りにはいかない」との冷ややかな見方もある。

 既成の枠にとらわれた官僚の思考パターンからすれば「できるわけがない」という結論しか導き出せないのだろう。

 この際、ビジョンの内容を政権公約の柱に据えて、沖縄の基地問題解決に不退転の姿勢を示してもらいたい。そうでなければ、せっかくのビジョンも絵に描いたもちに終わりかねない。

 政権交代を目指す野党第1党の民主党がこのような沖縄ビジョンを策定することは、沖縄が抱える多くの問題を全国に知らしめ、理解を広げる上で大きな意義がある。

 これを契機として、県内移設を伴わずに普天間飛行場を返還させるべきだという国民的世論が高まることを期待したい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134210-storytopic-11.html

 

2008年7月16日(水) 朝刊 29面

残留2県系人 比国から来日/タカラ・ウエハラさん

 【東京】太平洋戦争前や戦中、フィリピンに渡った日本人の子で、戦後現地に取り残された県系人とみられる二人が十五日、来日した。ほかの日系人十四人とともに新たに日本国籍をつくる「就籍」手続きを取る。県系人らは「日本に来ることが夢だった」と笑顔を見せた。

 県系人とみられるのは、ギルベルト・マルセリーノ・タカラさん(73)とフスティノ・ファルカサントス・ウエハラさん(66)。家族らが付き添い、都内の記者会見場で喜びを語った。

 タカラさんは「涙が出るくらいうれしい。父の親せきと会いたい」と静かに話す。父親の母印が押された婚姻証明書や外国人登録証を持参している。

 長女のリア・デラクルスさん(37)は「日本を訪問することは家族の夢だった。うれしくて興奮しています」と声を弾ませた。

 会見場で支援者から拍手の歓待を受けたウエハラさんは「とてもうれしい」。

 一行を出迎えたフィリピン残留日本人問題等議員連盟の議員らは就籍に向けて支援する考えを表明した。

 タカラさんとウエハラさんは滞在中、東京家庭裁判所の調査官と面接し、父親が日本人であることを証明する書類などを示し、国籍取得を訴える。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807161300_04.html

 

琉球新報 社説

防衛省改革 軍人台頭に警戒が必要だ 2008年7月16日

 キーワードは「背広組と制服組の混成化」である。文民統制の弱体化につながる。そんな強い警戒心を抱かせる中身が、15日に首相に提出された政府の「防衛省改革に関する有識者会議」の最終報告書である。

 背広組とは内局官僚、文官。制服組とは自衛官、武官を指す。

 文官と武官の混成化、すなわち「融合」は本来統制すべき文官が、武官と同列化される。

 しかも、文民統制のトップである首相、防衛大臣の補佐官や国の安全保障の根幹となる防衛政策の企画・立案、管理部門にも武官たる自衛官の登用を求めている。

 日本は戦力を放棄し、武力を行使しないと憲法で誓っている。だが自衛隊という「軍隊」を保有している。紛れもない軍隊を保有する危険性を、「文民統制」という安全装置で抑えてきた。

 それは太平洋戦争で1千万人を超えるともいわれるアジア太平洋の同胞を犠牲にした軍国主義、軍部の暴走の反省に立ったものだ。

 報告書でも「軍事実力組織からの安全」のさらなる強化、「軍事実力組織による安全」というキーワードが明記されている。

 「軍事実力組織」とは、「軍隊」のことだ。だが、報告書作成に当たり国民の抵抗感、反感に配慮して耳慣れない言葉に呼び替えている。国民を欺くような「有識者会議」の本質が垣間見える。

 そもそも、防衛省改革会議は、相次ぐ防衛省・自衛隊の不祥事の頻発を受け設置されたはずだった。

 米海軍艦船への給油量取り違え、自衛隊員による防衛情報外部流出、特別情報秘密のイージス情報の拡散、海上自衛艦「あたご」による漁船衝突事故、前事務次官による贈収賄事件など枚挙にいとまのない事件の再発防止が狙いだった。

 それが、ふたを開けてみると不祥事防止はどこへやら。「規則順守の徹底」程度でお茶を濁し、主眼を組織変革論議にすり替え、自衛官・武官台頭による文民統制の弱体化を打ち出す報告となった。

 「報告」が実現すれば1954年の旧防衛庁設置以来の大規模な組織改革というが、「軍人」の台頭を許すほど国民は甘くない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134244-storytopic-11.html

 

2008年7月16日(水) 夕刊 1面

新基地反対決議を提出/県議会野党会派

 開会中の県議会六月定例会で、野党六会派は十六日午前、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書、後期高齢者医療制度の廃止等に関する意見書を高嶺善伸議長に提出した。与党は同調しない方針を示しており、各決議・意見書は十八日の最終本会議で、過半数を占める野党の賛成多数で可決される見通し。与党も十六日、後期高齢者医療制度のさらなる見直しに関する意見書を高嶺議長に提出した。

 野党提出の決議、意見書が可決された場合、県議会が日米両政府の合意した普天間飛行場移設のV字形滑走路案に反対の決議をするのは初めて。都道府県議会による後期高齢者医療制度廃止を求める意見書は、岩手県議会に続き二例目とみられる。

 新基地建設に反対する決議・意見書は、沖縄の過重な基地負担や辺野古沿岸域がジュゴンなど希少生物が生息する貴重な海域である点を強調しつつ「新たな基地の固定化と建設工事に伴う環境汚染や大規模な埋め立てによる環境破壊につながる新基地建設には断固反対し、世界に誇れる自然環境を後世に引き継ぐことが県民の責務」とし、日米両政府や仲井真弘多知事に建設を断念するよう訴えている。

 後期高齢者医療制度に関しては、厚生労働省の調査で国民健康保険から移行した保険料の増加割合で、沖縄が全国最高となったことを挙げ「県民所得が全国平均の七割余しかない県民に大きな負担増になっている」と指摘。後期高齢者等のみを被保険者とする同制度を廃止し、必要な財政措置を講じて地方自治体や被保険者の負担軽減に配慮するよう、首相や厚労相らに求めている。

 一方、自民、公明県民会議の与党会派も後期高齢者医療制度のさらなる見直しに関する意見書を提出。同制度の趣旨や仕組みへの周知を図ることや低所得者層の負担軽減などを政府に求めている。


普天間危険除去 早急対処が必要/防衛局長


 【嘉手納】米軍普天間飛行場の早期閉鎖、返還に取り組む宜野湾市の伊波洋一市長は十六日午前、沖縄防衛局に真部朗局長を訪ね、同飛行場に関する問題の解決に向けた協力を要請した。真部局長は「安全性や騒音の面からも早急に対処すべきで、米軍再編の中で飛行場の機能移設を進めたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807161700_01.html

 

2008年7月17日(木) 朝刊 22面

「日本人の誇りある」/ウエハラ・タカラさん国籍取得へ来日

 【東京】日本国籍取得のため来日しているフィリピン残留日本人のうち、県系人とみられるフスティノ・ファルカサントス・ウエハラさん(66)とギルベルト・マルセリーノ・タカラさん(73)は十六日、都内で会見し、国籍取得への思いや戦後の現地での暮らしなどを語った。

 ウエハラさんは小学校の低学年の時、同級生から「お前は日本人だ。なぜフィリピンにいるのか」と差別を受けた。「私は日本人の誇りがある。若いころから国籍を取りたい気持ちが強かった。今回は挑戦です」ときっぱり。

 「大切にしなさい」と祖母から受け継いだ父の外国人登録証を大事そうに持参。「国籍を取ったら、子どもたちと一緒に日本で働きたい」とほほ笑んだ。

 三歳で父と生き別れたというタカラさん。父の記憶がほとんどなく、「母からは優しく、働き者だったと聞いています」と話す。

 貧しい農村で育ち、小学校卒業後、稲作で生計を立てた。一九六三年に父の写真を雑誌に載せ、消息に関する情報提供を募ったが、手掛かりはなかった。

 「子どもと日本に住みたいが、自分は高齢なので暮らせるか分からない。いつも自分では日本人だと思っている」とつぶやいた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807171300_05.html

 

2008年7月17日(木) 朝刊 2面

10年にアセス着手/県議会特別委

 県議会は十六日、米軍基地関係、沖縄振興・那覇空港整備促進、観光振興・新石垣空港建設促進の特別委員会を開いた。那覇空港の沖合展開で県は、再来年にも環境影響評価(アセスメント)に着手する方針を示した。

沖縄振興・那覇空港


 沖縄振興・那覇空港整備促進特別委員会(当銘勝雄委員長)で上原良幸企画部長は、那覇空港滑走路の沖合展開について「順調にいけば再来年から環境アセスに入れる」と述べ、二〇一〇年にもアセスに着手する見通しを初めて示した。滑走路の完成にはアセス二―三年、工期七―十年がかかるとされて、一八―二二年ごろの完成が想定される。

 同空港は一五年ごろに需要に対応できなくなるとされる。津覇隆交通政策課長は「今のスケジュールでは一五年の完成は厳しい状況だ」と指摘。対応策として、機材の大型化や昼前後に集中する運航ダイヤの変更などを航空会社に求める考えを示した。當間盛夫氏(改革の会)への答弁。

 上里直司氏(民主)は全日本空輸(ANA)が那覇空港で検討している貨物基地構想で、深夜の離着陸便が増加することに伴う騒音調査の必要性を提起。上原部長は「国とANAに申し入れる必要はあるかもしれない」との考えを示した。


米軍基地関係

普天間飛行場の閉鎖陳情を採択


 米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)は、米軍普天間飛行場の危険性除去と早期閉鎖などを求めた陳情を採択した。

 三月に県立沖縄高等養護学校への米軍車両無断侵入事件で、基地間の移動ルートの公表を求めた陳情も採択。

 上原昭知事公室長は、三月から始まった普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価調査について、「二月か三月に終え、準備書が提案されると聞いている」と説明。「準備書が出されるまでに一定の前進があると期待している」と述べた。

 中川京貴氏(自民)への答弁。

 米軍再編に伴う部隊の再配置のため、先月からシュワブ内で行われている兵舎新設工事について友利弘一環境企画統括監は、普天間飛行場の代替施設とは区域が異なるとし、「アセス法の対象にならない」との見解を示した。玉城義和氏(無所属)への答弁。


観光振興・新石垣

3セク 年明けに準備委


 観光振興・新石垣特別委員会(比嘉京子委員長)では、新石垣空港で第三セクターを予定している会社設立について、根路銘恵一新石垣空港統括官は「年明けにも主な出資予定者を集めて準備委員会を開く」とした。

 高嶺善伸氏(社民・護憲)に答えた。

 また、県が提示した同空港へのアクセス道路案について土木建築部の漢那政弘部長は「事業化にはルートの選定と地元の合意形成が大前提」とし、県案について一定の理解が得られたとの認識を示した。

 辻野ヒロ子氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807171300_07.html

 

琉球新報 社説

辺野古反対決議案 民意に沿った対応は当然 2008年7月17日

 名護市辺野古に新たな基地を建設して、宜野湾市の米軍普天間飛行場を移設することに反対する意見書案と決議案を県議会の野党会派が高嶺善伸議長に提出した。

 県議会の決議は全会一致が原則となっているが、与野党の勢力が逆転し、多数を占める野党の賛成多数で可決されることが確実視されている。

 その状況を県政と議会の「ねじれ」の結果と片付けてはならない。民意も県内移設には反対する声の方が多い。それに沿った当然の対応であることを認識するべきだ。

 仲井真弘多知事は先の定例記者会見で「北部が引き受けている間に早く移設するのが最も近道だ。知事選で言ってきたことであり、実行したい」と述べ、県議会で野党提案の決議や意見書が可決されても、県内移設容認の方針を堅持する考えを示した。

 知事には知事の考えがあることは当然である。

 しかし、県議会が全会一致ではないにしても、新基地建設に明確に反対の意志を示す重みも受け止める必要があろう。

 意見書案は「県民は辺野古への新基地建設は、基地の過重な負担と固定化につながるため一貫して反対してきた」と指摘している。

 さらに、建設予定地周辺のジュゴンやサンゴ群落の存在などを挙げて「工事に伴う環境汚染や大規模な埋め立てによる環境破壊につながる」とし、政府に対して新基地建設を早急に断念するよう求めている。

 いずれも大方の県民がこれまで思ってきたことであり、政府に対する「断念要請」は妥当な要求である。

 先の県議選の結果からしても、民意に沿って野党会派が歩調を合わせて新基地建設に反対する意見書などの可決を目指すことは当然である。

 2005年に全会一致で可決した「沖縄県の米軍基地に関する意見書」は、辺野古沖移設について「そのままの形で受け入れることは現実問題として難しい」との表現にとどまった。

 新たな基地建設を容認し、計画変更を求めているとも受け取られかねない内容だった。今回の野党案は辺野古移設反対を明確にしており、大きな意義がある。

 最終本会議で意見書案などが採決される18日には、県と国が辺野古移設の方向性を話し合う普天間移設措置協議会が開かれる。県、国が意見書を考慮して対応することは残念ながら期待できない。

 しかしながら、そもそも普天間飛行場の県内移設では、これまで県民が求めてきた目に見える形での負担軽減にはつながらない。意見書などに込められたその原点を忘れてはならない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134287-storytopic-11.html

 

2008年7月18日(金) 朝刊 2・31面

辺野古移設反対可決へ/きょう県議会最終本会議

 県議会六月定例会は十八日、最終本会議を開き、野党六会派が提出した名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書が、野党の賛成多数で可決される見通しだ。日米両政府が合意した辺野古沿岸域へのV字形滑走路案に、県議会が反対を決議するのは初めて。普天間飛行場移設をめぐる県と政府の協議に影響を与えそうだ。

 県議会は同飛行場の移設をめぐり、SACO(日米特別行動委員会)の中間報告後の一九九六年七月、普天間基地の全面返還促進や県内移設に反対する意見書を全会一致で可決。しかし、九九年十月には、同飛行場の早期県内移設に関する要請決議を保守系の賛成多数で可決した経緯がある。

 また、県議選で争点になった後期高齢者医療制度についても、野党が「廃止」、与党が「見直し」を求める意見書を提出しているが、野党案が可決される見込みだ。都道府県議会での「廃止」を求める意見書が可決されれば、岩手県議会に次いで二例目になる。

 同日は、それぞれの決議、意見書について提案理由の説明、質疑、賛否を討論し、採決が行われる。

 そのほか、原油価格高騰対策に関する決議・意見書、県内建設業者の受注機会の拡大に関する意見書も提出されており、これらは全会一致で可決される見通しだ。


     ◇     ◇     ◇     

新基地建設 反対訴え/平和団体など集会


 米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書が、与野党逆転の県議会で十八日に採択される見通しとなったことを受けて、県内の平和団体らが十七日、那覇市の県庁前で意見書の採択を支持する緊急集会を開いた。

 野党各会派の県議もそろって参加。沖縄平和運動センター議長の崎山嗣幸県議は「議会と市民運動を結合しながら頑張っていこう」とあいさつし、ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は「明日は待ちに待った日。仲井真知事と日本政府に県民の本当の声を届けよう」と呼び掛けた。

 参加者はその後、国際通りへ繰り出し、「新基地建設反対」と声を上げながらデモ行進した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807181300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月18日朝刊)

[防衛省改革]

文民統制の実質固めよ


 防衛省改革を検討してきた有識者会議が防衛参事官制度の廃止などを盛り込んだ最終報告書を福田康夫首相に提出した。

 報告書の副題に「不祥事の分析と改革の方向性」とあるように、有識者会議は、防衛省の相次ぐ不祥事に対処するため昨年十二月、官邸主導で設置された。

 インド洋での燃料補給活動に絡む給油量の取り違え、守屋武昌前事務次官による汚職事件、イージス艦機密情報漏えい事件、イージス艦「あたご」の漁船との衝突事故…。次から次に起きる不祥事は、防衛省・自衛隊に対する信頼を著しく損ねた。

 なぜ、不祥事が繰り返されるのか。文民統制(シビリアン・コントロール)は果たして十分に機能しているのか。

 防衛省・自衛隊はもともと、国民の目が届きにくい組織である。防衛機密を理由に情報開示を怠り、不必要なものまで機密扱いするような閉鎖的な体質を組織の性格として持っている。

 外部から遮断された組織であるために、よほどしっかりしたチェック体制を築かなければ組織内部によどみが生じ、その場を糊塗する「隠ぺい体質」がはびこることになる。

 有識者会議の報告書は、個々の不祥事の問題点を指摘した上で(1)規則遵守の徹底(2)プロフェッショナリズム(職業意識)の確立、などを求めている。その通りには違いないが、再発防止策としてはあまりに抽象的で、具体性に乏しい。防衛省・自衛隊の中で今後、これをどう形にしていくか、それが問題だ。

 失われた信頼をどのように回復するのか。それが議論の出発点だった。

 流れが変わったのは、石破茂防衛相が年来の持論である組織再編の実現に意欲を見せ、組織改革案を有識者会議に提示したあたりからだ。再発防止策が後景に押しやられ、組織改革論が議論の前面に躍り出る展開になった。

 内局(背広組)と自衛隊(制服組)の統合という石破防衛相の主張は、内局と自衛隊の一部混合化という形で報告書に盛り込まれた。

 (1)防衛参事官制度は廃止し、政治任用の大臣補佐官を設置する(2)内局の防衛政策局の次長クラスに制服組の自衛官を起用する、などである。

 参事官は大臣を補佐するために設けられた制度で、内局の官房長、局長が兼務している。「文官(背広組)優位」の象徴とも言える制度で、制服組は早くからこの制度の廃止を主張していた。

 文官優位は、文民統制を担保するものだといわれてきた。参事官制度の廃止と制服組の台頭によって、文民統制を変質させるのではないか―それが気になるところだ。

 背広組と制服組の関係は、どのような形が望ましいのか。両者を混合化することによって何が生まれるのか。

 そのことを考える場合、忘れてならない前提は、憲法九条のしばりがあるということと、文民統制の機能を最大限に発揮できる仕組みをつくる、ということである。

 原則を踏み外したなし崩しの変質は危ない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080718.html#no_1

 

琉球新報 社説

防衛省裏金問題 国守る前に法規を守ろう 2008年7月18日

 違法な裏金問題を抱える防衛省だが、防衛大臣が「調査」を約束しながら、報告がいつまでも出てこない。不正経理の組織的隠ぺいの疑いが、日々濃厚になっている。

 国を守るはずの防衛省が、法規も守れない。悲しい現実がある。

 防衛省の裏金問題が報道されたのは、昨年12月。情報収集などを主目的に計上されている「報償費」の多くを、架空の領収書を使い裏金化していた。報償費は1997年以降でも年間1億2300万円から最大1億5000万円(2006年度)。防衛省OBらの証言によると、裏金は年間数千万円にも上る。

 報償費のような性格の予算は、内閣官房や外務省、警察庁などにもある。いずれも政界・外交工作や機密、捜査、防衛情報の収集などが主な使途とされてきた。

 だがその機密・秘密性、対外工作の性格上から使途が隠され、防衛省に限らず他省庁でも運用の不透明さが常に指摘されてきた。

 国を守る高度な情報収集活動や犯罪捜査という大義名分があればこその裁量権を与えられた「血税」の自由使用である。自由使用は、国民や財政当局からの「信頼」があればこそだ。防衛省の裏金問題は、その信頼を裏切るばかりか、課長級の幹部を含め「裏帳簿」を作り、担当職員が交代のたびに破棄するなど、長年にわたり組織ぐるみで行われていた可能性が高まっている。

 給油量取り違え、防衛機密情報流出、前次官の汚職、イージス艦衝突事故と不祥事続きの防衛省である。

 組織改革など改善に向けた防衛省改革会議「報告書」が15日に出され「規則無視、初歩的ルールの無知」などが組織的課題と指摘され、改革策が示されたばかりだ。

 不可解なのは、昨年末に発足した防衛省改革会議が、なぜか裏金問題には触れずじまいな点だ。

 石破茂防衛相も1月の国会で裏金問題の調査を約束しながら、半年もたなざらしにしている。

 もはや自浄作用すらも発揮できない組織に成り下がってしまったのか。防衛省には国を守る前に、法規を守る基本を学んでほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134314-storytopic-11.html

 

2008年7月18日(金) 夕刊 1・7面

辺野古移設反対を提案/県議会本会議

 県議会(高嶺善伸議長)は十八日午前、六月定例会の最終本会議を開き、野党六会派が提出した普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書の採決に向けて審議に入った。野党は「県民は過重な基地負担と固定化につながることから、新基地建設に一貫して反対してきた」などと提案理由を説明。一方、与党は辺野古移設以外の普天間飛行場返還の対案を示すよう求めるなど、激しい論戦を展開している。決議・意見書は同日午後にも採決され、過半数を占める野党の賛成多数で可決される見通しだ。

 日米両政府が合意した辺野古へのV字形滑走路案に、県議会が反対を決議すれば初めて。

 決議・意見書は、基地の過重負担と固定化、自然環境への懸念を表明。日米両政府や仲井真弘多知事あてに「新基地建設を早急に断念するよう強く要請する」としており、決議されれば、同飛行場の移設をめぐる県側と政府の協議に影響を及ぼすことになる。

 採決に先立ち、野党を代表して玉城義和氏(無所属クラブ)が提案理由を説明した。質疑に立った与党側は、中川京貴氏(自民)が「辺野古への移設以外に、普天間返還が実現する具体的かつ現実的な方策はあるか」「対案があるとすれば、日米両政府が合意する可能性、根拠を示せ」などと追及した。佐喜真淳氏(自民)も質疑を予定している。

 質疑後の討論では、与党の桑江朝千夫氏(自民)が反対意見を述べ、野党側は照屋大河氏(社民・護憲ネット)、前田政明氏(共産)が辺野古移設断念支持を表明し、採決で賛否を問う。

 過去に県議会は、普天間飛行場の移設をめぐり、SACO(日米特別行動委員会)の中間報告を受けた一九九六年七月、「普天間基地の全面返還促進や基地の機能強化につながる県内移設に反対する意見書」を全会一致で可決。九九年十月には、「同飛行場の早期県内移設に関する要請決議」を十八時間に及ぶ徹夜質疑の末、保守系の賛成多数で可決した経緯がある。

 最終本会議ではそのほか、六月県議選の争点として与野党逆転の一因にもなった後期高齢者医療制度に関する意見書も採決される。野党提出の「廃止」を求める意見書が、賛成多数で可決される見通しだ。


     ◇     ◇     ◇     

拍手とヤジ 議場騒然/座り込み住民続々


 与野党逆転の県議会で、野党が提出した「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書案」。審議と採決を見届けようと、辺野古で座り込みを続ける住民、環境保護団体メンバーや教育関係者などが詰め掛けた。百五十席の傍聴席はほぼ埋まり、緊張感に包まれた。審議が始まると傍聴席から拍手や歓声も。与党議員が議長に何度も注意を促すなど、議場は騒然とした。

 県議会ロビーには、午前九時すぎから傍聴者が続々と集結した。

 午前十一時四十分、提案者を代表して玉城義和議員(無所属)が意見書案の提案理由を述べると、「そうだ」「いいぞ」の声と拍手がわき起こった。

 一方、質疑に立った中川京貴議員(自民)は、十数項目に及ぶ質問をぶつけた。「県外移設を望めば大田県政の二の舞いになるのでは」「辺野古案を否定して、普天間の早期返還は可能か」などと述べると、傍聴席から「何言ってんだ」「勉強不足だ」などのやじが飛んだ。

 与党議員は高嶺善伸議長に「傍聴規則を守らせろ」と応酬。二度の退場警告が出た後、正午を過ぎたところで休会した。

 辺野古で座り込みを続ける平和市民連絡会の当山栄事務局長は「県民の選んだ代表が、基地建設反対の意思を示すことの意義は大きい。日米政府の頭越し合意を覆す力を持つものと信じている」と力強く語った。

 宜野湾市から辺野古に通って反対運動を続ける山口洋子さんは「県議会決議だけで、基地建設を止められるわけではないと思うが、『民意無視は許さない』という声を上げることの積み重ねが大事」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807181700_01.html

県議会、V字案反対へ/多数野党が決議確認 北部救急ヘリ支援困難/県議会一般質問 普天間訴訟団が控訴 防衛省、対潜水艦施設を断念/本部町内 国・県、研究班設置へ/普天間危険除去 知事「南西方向」要望へ/普天間代替、沖合移動で具体案 など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月9日から12日)

2008年7月9日(水) 朝刊 1面

県議会、V字案反対へ/多数野党が決議確認

県・政府協議に影響か/与党は難色示す

 県議会(高嶺善伸議長)の野党会派は八日、県議会内で代表者会議を開き、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設反対の決議案を開会中の六月定例会に提出することを確認した。県議会で、日米両政府が合意したV字形滑走路案に反対する決議は初めて。政府は今月中に代替施設の建設計画などを話し合う協議会の第九回会合を開く方針を固めているが、県議会の反対決議は、移設をめぐる県と政府の協議にも影響を与えそうだ。

 野党は、県議選の争点の一つになった後期高齢者医療制度の廃止を求める決議・意見書提出についても合意した。

 移設問題は、十六日に予定される米軍基地関係の特別委員会、後期高齢者医療制度は十一日からの文教厚生委員会(赤嶺昇委員長)でそれぞれ協議される。

 県議会は、六月八日の県議選で、社民、共産、民主、社大、そうぞうの野党が二十六議席を獲得し、二十二議席の与党を逆転した。普天間飛行場のキャンプ・シュワブ移設反対、医療制度廃止を求める会派が多数を占めており、いずれの決議・意見書も可決される見通しだ。

 社民・護憲ネットの新里米吉代表は「野党は一致して、採決も辞さない方針を固めた。最終的な調整は各委員会で行われる」と述べた。一方、自民、公明県民会議の与党は「与党としては賛成できない。慎重で冷静な協議が必要だ」と難色を示している。

 普天間移設問題について仲井真弘多知事は、六月定例会で、「政府が地元の意向に十分配慮することで、移設が円滑に進むと考えている」と答弁し、沖合への移動を前提に移設を容認する姿勢を示している。

 県議会の反対決議が可決されれば、地元の意向を重視するとしている仲井真知事が苦境に追い込まれることは必至だ。


コメントできない


 野党会派が移設反対決議案を今議会に提出すると確認したことに対し、仲井真弘多知事は八日の六月定例会一般質問終了後、「まだ知らないし、県議会がどういうふうにやるかも分からない。残念ながら今はまったくコメントできない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091300_01.html

 

2008年7月9日(水) 朝刊 2面

北部救急ヘリ支援困難/県議会一般質問

 資金難で北部地区医師会病院から特定非営利活動法人(NPO法人)に運営が引き継がれた救急ヘリ事業への公的支援について、県福祉保健部の伊波輝美部長は八日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の一般質問で、県独自の財政支援は困難との認識を初めて明言した。前田政明氏(共産)への答弁。国の補助要件を満たしていないことを理由に挙げている。

 伊波部長は「救急医療用ヘリコプターの導入に対する国の補助は各都道府県とも一機分で、救命救急センターで運航することが要件になっている」と説明。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)の騒音測定について知念健次文化環境部長は、県と沖縄防衛局の測定方法が異なることに言及し、「県の測定結果も考慮する必要があると考えている」との認識を示した。

 うるま市のホワイトビーチへの米海軍原子力潜水艦の寄港回数が今年二十三回に達し、過去最多となった前年の二十四回に迫っていることについて仲井真弘多知事は「政府の方針に基づき寄港を容認するが、例年と比べ頻度が増加している」と懸念し、安全確保を求める姿勢を示した。いずれも照屋大河氏(社民・護憲ネット)への答弁。

 県警が復帰後から二〇〇七年十二月までに検挙した米兵による事件は五千五百十四件で、殺人や強盗などの凶悪犯は五百五十二件となった。上原昭知事公室長が、渡久地修氏(共産)に答弁した。

 県立図書館の八重山、宮古両分館を本年度末で廃止する方針について仲村守和教育長は「(施設の老朽化などで)維持・運営が大変厳しい。総合的に判断した」と説明し、理解を求めた。今月下旬に担当職員を派遣し、関係者と意見交換する考えを示した。前田政明(共産)、比嘉京子(社大・ニライ)両氏への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091300_06.html

 

2008年7月9日(水) 朝刊 29面

普天間訴訟団が控訴/飛行差し止め目標

 【沖縄】米軍普天間飛行場を離着陸するヘリコプターなどの騒音によって健康被害を受けたとして、周辺住民三百九十二人が国に夜間・早朝の飛行差し止めと損害賠償を求めた普天間爆音訴訟で、原告は八日、飛行差し止めなどを棄却した一審判決を不服として福岡高裁那覇支部に控訴した。

 控訴状を提出した新垣勉弁護団長は「静かな夜を取り戻したいというのが訴えの中心なので、飛行差し止めが実現するまで努力する」と強い口調で語った。

 高裁ではあらためて同飛行場の実情を訴えることで、差し止めのほか、国に騒音の軽減措置や測定義務、同様の訴訟と変わらない損害賠償の引き上げなどを求める。六月二十六日の一審判決は結審日までの慰謝料として、原告全員に総額一億四千六百万円を支払うよう国に命じたが、夜間・早朝の差し止めや国による騒音測定義務は棄却した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091300_07.html

 

2008年7月9日(水) 夕刊 5面

普天間 爆音訴訟/国側も控訴

 米軍普天間飛行場の周辺住民が、夜間・早朝の飛行の差し止めと損害賠償などを国に求めている訴訟で、被告の国側は九日、総額一億四千六百万円の支払いを命じた一審・那覇地裁沖縄支部判決を不服として、福岡高裁那覇支部に控訴した。原告の住民側も八日に控訴している。

 六月二十六日の一審判決は、うるささ指数(W値)七五以上の地域に居住する全原告に、生活・睡眠妨害に伴う精神的な被害を認めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091700_05.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 1面

防衛省、対潜水艦施設を断念/本部町内

建設地取得できず

 【東京】防衛省は九日までに、本部町豊原区に建設を計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所計画の中止を決めた。沖縄防衛局が同日、県に本部町での建設中止を伝えた。

 同施設は、建設用地の一部地権者が賃貸借契約に応じず、建設のめどが立っていなかった。現在は那覇基地内の同センターで応急的に代用しているが、同省は必要不可欠な施設として「代替地をできるだけ早く選定したい」との意向だ。

 送信所用地については本部町も、アセロラ生産拠点施設や観光農園で利用したい―と要請していた。同省は「省内で検討した結果、町の振興計画にも配慮して建設を中止することにした」と説明している。

 同事業は米軍の旧本部飛行場跡地に、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機に解析データを送信する施設を建てる計画。同省は一九八八年度に用地取得を開始。約三十万平方メートルのうち地権者百十七人と賃貸借契約を結び、国有地約十万平方メートルと合わせて約二十九万平方メートルの用地を確保した。しかし十三人とは未契約で、すべての用地取得ができず建設に踏み切れていなかった。

 賃貸借契約は二十年で、二〇〇八年度末に契約満了となる。〇九年度以降は契約を更新しない方針。今後、計画中止を地権者らに説明する。これまでに支払った賃貸借料は約九億円。


本部町長は歓迎


 高良文雄本部町長は「待ち望んでいたことで、とてもうれしい。町にとって、今後の農業やウエルネス事業を進める上では大変重要で、必要不可欠な地域だ。地主の皆さんときめ細かく相談し、ご理解をいただき、振興計画のために活用させてもらいたい」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_01.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 2面

北部救急ヘリ 支援検討/県議会一般質問

 資金難で病院からNPO法人が運営を引き継いだ北部地区の救命救急ヘリコプター事業に対する公的支援について、仲井真弘多県知事は九日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の一般質問で、「前向きに検討したい」と意欲を示した。一方で、「まず国の補助制度に基づくドクターヘリ事業の運航実績を見たい」と慎重な姿勢も強調した。

 県は、浦添総合病院を救命救急センターとしたドクターヘリ事業の導入を進めている。仲井真知事は「浦添総合病院は読谷村に駐機場があり、北部地域も一通りカバーできるとみている」としつつ、「北部や離島地域を(ヘリ一機で)カバーするのは常識的には難しいだろう」との見方も示した。平良昭一氏(改革の会)の質問に答えた。

 護得久友子農林水産部長は、地産地消推進のため、県産食材を取り扱う飲食店を「地産地消協力店・沖縄食材の店」として登録し、消費者にPRする事業を本年度から実施する考えを明らかにした。當間盛夫氏(改革の会)への答弁。

 仲田秀光観光商工部長は、国内外の宇宙工学、科学などの研究者や技術者による国際会議「宇宙技術および科学の国際シンポジウム」について、「二〇一一年開催を念頭に誘致に努める」と述べ、県内開催を推進する考えを示した。照屋守之氏(自民)への答弁。

 本部港の耐震強化岸壁整備について仲井真知事は「〇八年度に詳細設計、埋め立て申請を行い、〇九年度から岸壁工事に着手する。一三年度完成の予定」と述べた。平良氏に答えた。

 上原良幸企画部長は、〇九年度で期限が切れる北部振興事業の継続について「現時点で判断するのは困難だ」と述べた。吉田勝廣氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_04.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 23面

「星条旗」復刻版を発刊/琉米研確認 榕樹書林が企画

 沖縄戦時にハワイ・ホノルルで発刊された米軍の準機関紙「星条旗(スターズ・アンド・ストライプス)」(太平洋版)の第一―二百二十二号(一九四五年五月―四六年一月)がこのほど復刻発刊されることになった。復刻を企画した出版社・榕樹書林の武石和実さんは「東条英機が自殺未遂をした場所の写真など、貴重な写真もある。復刻を機に多くの発見がなされればうれしい」と話している。

 復刻版はA3判、計約千八百ページで全六冊。米軍側から見た沖縄戦をはじめとする当時の太平洋の戦況などが把握できる。

 同紙は米国の南北戦争の際、北軍兵士のために創刊された新聞。以降、断続的にヨーロッパ各地で発刊された後、四五年五月十四日にハワイ・ホノルルで「太平洋版」が創刊され、四六年一月三十日まで続いた。

 ホノルルでの廃刊後は、東京で発刊され現在に至る。東京の同紙本社にもホノルル発刊の紙面が残っていなかったが、琉米歴史研究会(喜舎場静夫理事長)が九年前に同紙面を米国内で見つけ、復刻発刊されることになった。

 解説を担当した吉田健正桜美林大学元教授(沖縄現代史研究)は「米軍側から見た太平洋戦争の戦略や各地の戦闘状況がよく分かる」と話している。

 同書籍は全六冊セット(十八万九千円)。問い合わせは榕樹書林、電話098(893)4076。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_05.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 23面

宜野湾で地デジ障害を調査/基地との因果分析

 【宜野湾】米軍普天間飛行場の米軍機の飛行の影響で、地上デジタル放送に受信障害が発生していると宜野湾市に苦情が相次いでいる問題で、沖縄総合通信事務所が市内の障害状況調査を始めていたことが九日、分かった。

 米軍機と受信障害の因果関係の有無を明らかにするため、継続的に調査を行う。

 苦情は同市内十地域と浦添市、西原町、中城村から合わせて計二十六件。「ヘリが飛ぶと地デジ放送が途切れる」など、アンテナ付近の空中で物体が動くと信号が遮られる「フラッター現象」が起きているといった苦情が寄せられたため、同市が国へ対策を求めていた。

 同事務所は今月三日に一回目の調査を実施。車に地デジの受信が可能なアンテナ、テレビを設置し、市内数カ所を移動して受信状況を調べた。

 調査当日は米軍機の飛行が少なかったため、受信障害のデータは得られなかった。障害状況の把握と米軍機飛行の因果関係を調べるため、市と米軍の飛行訓練の状況を共有し、継続的な調査を続ける。

 同事務所の担当課は「障害が見つかれば、放置することなくできる範囲の限りで対応する」とし、障害の原因が米軍機の飛行と特定された場合には沖縄防衛局など国の関係省庁に事実報告を行うという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_06.html

 

2008年7月10日(木) 夕刊 5面

「糸洲の壕」活用模索/積徳高女・看護学徒隊同窓会

 【糸満】「決して死んではいけない。悲惨な戦争のことを後世に語り継いでくれ」。沖縄戦当時、私立積徳高等女学校の看護学徒隊に「必ず生きろ」との言葉を残し自決した軍医の遺志を継ぐため、同校の「ふじ同窓会」は軍医が最期を遂げた「糸洲の壕」(糸満市伊敷)の保存と活用を模索している。軍医の故郷・長野県佐久市と交流を重ねてきた同窓会は、安全性の不備が指摘されている壕を整備し、「沖縄と長野を結ぶ平和の懸け橋になれば」と話している。(新垣亮)

 積徳高女の看護学徒隊二十五人は小池勇助軍医率いる第二野戦病院に配属された。当初、野戦病院は現在の豊見城市にあったが、度重なる空襲で、八キロ先の糸洲の壕へ移動した。

 日本軍による組織戦が終了したとされる後の一九四五年六月二十六日、小池軍医は学徒隊を解散した。女学生一人一人の手を握り、「必ず生きて親元に帰りなさい。悲惨な戦争のことを後世に語り伝えてくれ」と述べた。軍医は壕内で自決した。

 壕の外では散発的な戦闘が続いており、看護隊二人が亡くなったものの、二十三人は戦火をくぐり生き延びた。

 同窓会は長野県佐久市にある小池軍医の墓参りや地元高校での講演、遺族会との手紙をやりとりするなど交流を続けている。

 「糸洲の壕」には長野県の修学旅行生が訪れたり、県内の平和学習の場として活用されているが、壕内は滑りやすく、アクセス路が未整備となっている。修学旅行生が転倒、けがをしたため、一時閉鎖されたこともあったという。

 今月九日には、長野県議会の議員四人が修学旅行の在り方などを視察するため同壕を訪れた。小池軍医の言葉を聞いた仲里ハルさん(81)が体験談を語り、「武力で殺し合う戦争は起こしてはいけない。平和がいつまでも続くことを祈る」と涙ながらに訴え、「軍医の言葉が私たちを救った」と切々と話した。

 新垣道子会長は「手すりを付けるなど壕の整備を何とかして、今後も長野県との交流を続けていきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101700_02.html

 

2008年7月10日(木) 夕刊 1面

「跡地」の利活用 県が本部町支援/県議会

 防衛省が本部町で計画していた海上自衛隊の対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設計画を中止したことについて、上原昭知事公室長は十日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会一般質問で、「中止は本部町の意向に沿うもので、同町の振興、発展に寄与すると考えている。(跡地の)利活用について、地元と連携を密に支援していきたい」との方針を示した。

 米軍普天間飛行場の移設問題で代替施設の建設計画などを話し合う協議会の次回会合について仲井真弘多知事は、閣僚が度々替わったことを指摘し、「これまで協議してきた内容を確認する必要がある」と述べた。

 政府に求めている代替施設の沖合移動や危険性除去などについて「私は無理難題を言っているわけでなく、政府がささやかな要求を聞いていないので、進んでいない」と述べた。

 いずれも吉元義彦氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101700_03.html

 

2008年7月11日(金) 朝刊 1面

国・県、研究班設置へ/普天間危険除去

解決向け取り組み本格化

 仲井真弘多県知事が公約に掲げ、政府に求めている米軍普天間飛行場の危険性除去について、防衛省と県が共同で技術的な対応策を検討する研究チームを設置する方向で調整を進めていることが十日、分かった。県、政府双方の事務方による協議が始まれば、問題解決に向けた取り組みが本格化することになる。

 普天間飛行場の危険性除去については、仲井真知事が移設協議会などで繰り返し求めてきた。町村信孝官房長官も六月末の会見で、「米側と交渉するなど努力したい」と踏み込んだ発言をしている。しかし、十八日に開催する方向で調整が進んでいる次回協議会の議題として取り扱われるかは、現時点で不透明だ。

 危険性除去をめぐっては、二〇〇四年の沖縄国際大学ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が昨年八月、民間地域への墜落を防ごうと航空機の場周経路設定など、危険性除去策をまとめた。

 しかし、伊波洋一宜野湾市長が「場周経路が守られていない」と訴え、沖縄防衛局は現状把握のため、五月から六月にかけて目視調査を行っていた。県は、同局と宜野湾市からヒアリングを行ったが、独自で具体的な対応策には踏み込めていない。県、国の双方ともに「互いに連携してやっていきたい」と述べていた。(吉田伸)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111300_04.html

 

2008年7月11日(金) 朝刊 26面

日米地位協定「見直し必要ない」/メア氏、大学院で講義

 在沖米国総領事のケビン・メア氏が十日、琉球大学法科大学院で講義した。「米軍基地法」の講義で、米国の立場から、実例を交えて日米地位協定や安全保障の考え方を解説し、学生らと意見を交わした。

 メア氏は地位協定を「安全保障条約の下、在日米軍が日本でどういう地位にあるかを決める協定」と説明。「自衛隊が米軍を守る必要がないようにもともと非対称な条約。地位協定は日米合同委員会で運用改善を話し合っている。見直す必要はない」と述べた。

 国会で議論された思いやり予算で支払う娯楽施設の基地従業員人件費について、「日本の唯一の安保上の責任は、米軍への施設提供。在日米軍の即応体制を維持するためには、娯楽施設が必要」との考えを示した。

 昨年六月に米軍掃海艦が復帰後初めて与那国町に寄港したことについて「地位協定第五条で、米軍の艦船と飛行機が日本にあるすべての港と空港を使う権利がある」と述べた。

 学生からは「地位協定を改定しないのは安保条約の性格を変えるからか」「米国はなぜ世界中に基地を展開するのか」など質問が相次いだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111300_05.html

 

2008年7月11日(金) 朝刊 26面

訓令の原文発見/沖縄戦・組織的戦闘終了後の遊撃命令

 沖縄戦で旧日本軍第三二軍を指揮した司令官・牛島満中将が終戦直前、鉄血勤皇隊で情報宣伝を担った千早隊の隊長に対し、軍の組織的戦闘が終了した後も沖縄本島で遊撃戦を続けるよう命じた訓令の原文がこのほど、米国立公文書館で見つかった。訓令の内容を英訳した米軍情報機関の資料は県立公文書館でも確認できるが、元千早隊員で大田平和総合研究所主宰の大田昌秀さんが原文の存在を突き止めた。

 訓令は一九四五年六月十八日付。牛島司令官から千早隊隊長の益永董陸軍大尉あてに「貴官ハ千早隊ヲ指揮シ軍ノ組織的戦闘終了後ニ於ケル沖縄本島ノ遊撃戦に任スヘシ」と記している。

 軍から解散命令が伝わったのは、その日付の前後。一方で、大田さんによると、千早隊員には同月十九日夜、糸満市の壕で益永大尉から「死なずに米軍の背後に回って地下工作をするように」と命じられた。当時は牛島司令官の命令とは知らされなかった。

 実際に北部戦線を目指す参謀数人と、その案内役として四、五人の隊員が壕を出発。大田さんは軍服から、軍人には似つかわしくない住民の着物に着替えた参謀らを見送りながら、敗戦を実感したという。自らも敵陣を突破するため他の隊員と壕を出て、九月末ごろまで潜伏行動を続けた。

 大田さんは今年四月下旬から五月中旬まで訪米し、米国立公文書館にある米第一〇軍の資料の中から原文を発見。「最高クラスの司令官が、わずか二十二人の千早隊員の行動について直接命令を下していたとは夢にも思わなかった。解散命令を出す一方で、最後まで戦えと命じる沖縄戦の矛盾を露骨に示した文書だ」と言う。

 沖縄戦に詳しい関東学院大の林博史教授は「沖縄戦の終盤は口頭での命令が多く、この時期の原資料が残っているのは大変貴重だ。千早隊だけでなく、各部隊の責任者あてに訓令が出されていたこともあり得るのではないか」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111300_06.html

 

琉球新報 社説

脱走米兵の通知 必要なのは犯罪防止策 2008年7月11日

 脱走米兵の情報が9日から、米軍基地を抱える14都道県にも提供されることになった。だが、県は提供情報を県民に公表するかどうか未定という。情報提供の狙いは犯罪抑止にある。県には積極的な情報開示と情報活用を求めたい。

 脱走米兵の情報開示は、3月に神奈川県横須賀市で起きたタクシー運転手刺殺事件が契機となっている。強盗殺人の容疑で逮捕された米海軍横須賀基地所属の一等兵が、脱走兵だった。

 だが、米側は脱走の事実を日本側には伝えていなかった。

 事件を受け、日米両政府は5月の日米合同委員会で、脱走兵情報を日本側に通報する日米地位協定の運用改善で合意している。

 今回の措置で、脱走の年月日、脱走兵の逮捕要請を行った米軍施設・区域、脱走者数、身柄確保の状況の4項目が、米側から外務省に提供される。

 外務省は、基地所在都道県でつくる渉外関係主要都道県知事連絡協議会(渉外知事会)を通じ情報を提供するという。

 発端は脱走兵による犯罪だ。犯罪の抑止が情報提供の契機、主目的だとすれば、脱走兵の人権にも配慮しながら原則的には県民にも情報提供されてしかるべきだ。

 脱走兵がどのような理由で脱走し、武器の保有や前科も含め犯罪可能性の有無が提供情報の要だ。

 イラク戦争開始後、米軍では毎年3000人を超える脱走兵が出ているという。脱走兵の増加は「大義なき戦争」への批判も背景にある。

 大量破壊兵器による米国攻撃の未然防止や独裁政権からのイラク市民の解放などを「大義」に、米ブッシュ政権はイラクに侵攻した。

 イラク戦争で約9万人のイラク市民と4000人を超す米兵が犠牲になったとされる。しかし、結果は大量破壊兵器は見つからず、イラク攻撃の大義は失われている。

 大義なき戦争は、脱走兵を増やし、犯罪すらも誘発している。

 なぜ米兵たちは脱走したのか。その理由も米軍は開示すべきだ。

 その上で、脱走兵らが犯罪に走らないよう日米で効果的な対策を講じてもらいたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134064-storytopic-11.html

 

2008年7月11日(金) 夕刊 1面

知事「南西方向」要望へ/普天間代替 沖合移動で具体案

大浦湾の保全理由に

 仲井真弘多知事は十一日の定例会見で、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設で政府に求めている代替施設の沖合移動について、「大浦湾に突き出しているものを引っ込めてはどうか。名護市の意見もそれに近い。引っ込めて前に出すという感じだ」と述べ、南西方向にずらした上であらためて沖合に移動するよう要望する考えを示した。名護市の島袋吉和市長は沖合・南西方向への移動を求める考えを示していたが、知事が具体的に言及するのは初めてだ。

 仲井真知事は「(現行案を決定した)当時、大浦湾は環境的に死んでいるという評価があった。環境審査会の話を聞くと、(代替施設を)引っ込めないと海流が止まり、死ぬ状態になりかねない」とし、大浦湾の環境保全を理由に挙げた。

 そのほか、普天間飛行場の危険性除去策で防衛省と県が技術的対応策を検討する共同研究チーム設置を調整していることについては、「まだきちっとした返事はいただいていない。進み始めているのであればありがたい。三年めどの閉鎖を政策的に確認し、実務の検討に入ることは大変いいステップだと思う」と述べ、十八日開催で調整している次回の移設協議会で確認を求める考えを示唆した。

 県議会の野党会派がキャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対する決議案提出を確認していることについては「県外移設がベストだが、県内もやむなしと思っている。北部が受け入れている間に移設することが最も近道だ」として、決議が可決されても県内移設を推進する姿勢は変わらない―との認識を示した。


県の意向踏まえ政府として努力

危険性除去で防衛相


 【東京】石破茂防衛大臣は十一日午前の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の危険性除去をめぐり政府と県が研究チーム設置に向け調整していることについて、「(普天間飛行場の)危険性除去や閉鎖状態に近づくために、チームをつくるのも一つのアイデアだ」と述べ、双方が一体となって取り組む必要性を強調した。

 次回の普天間協議会の日程や議題については、「まだ調整中」とした上で、危険性の除去に向けた対応策については「県の意向を踏まえ、政府としてできる限りの努力をするのは当然だ」との考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111700_01.html

 

2008年7月12日(土) 朝刊 2面

県環境条例 基地適用を/与野党超えて要望噴出

 県公害防止条例を約三十年ぶりに全面改正する「県生活環境保全条例」を審議した県議会文教厚生委員会(赤嶺昇委員長)で十一日、米軍基地を公害防止規制の適用外としたことに対し与野党の委員から異論が噴き出した。

 同条例は、既存法令で規制の及ばなかった小規模事業者にも排水対策を推進し、県民にも生活排水の処理や自動車の運行に伴う環境負荷の低減を求めるなど、全県下での公害対策を強化している。県文化環境部は「米軍には国内法が適用されない」として、本島の二割を占有する米軍基地は適用外とした。

 これに対し、西銘純恵委員(共産)は「一番の環境被害は米軍基地から受けており、県条例ならば適用すべきだ」と指摘。自民党の翁長政俊委員も「県は日米地位協定の抜本的な見直しを求めている。実質的な規制は難しくとも、政治姿勢を示す意味で盛り込んではどうか」と提案した。

 「米軍には国内法が及ばず、(規制の)実効性が担保できない」と適用を困難視する同部の主張に対しては、「基地の設置責任者は国であり、米軍には及ばずとも、国に対して規制をかけることはできるのでは」とする意見も出た。

 これに対し知念建次部長は「自治立法の限界だ」と答弁し、同委員会の議論はこの日平行線のまま審議を終了した。

 米軍基地の公害問題では今年六月に国の賠償責任を認めた普天間爆音訴訟の判決が出たばかり。昨年は基地内のディーゼル燃料や油の流出で付近の土壌汚染が発生しただけに、新条例が?公害発生源?に効力が及ばないことに委員らは納得できない様子だ。

 同委員会は十四日に条例の可否を採決する。

 同条例は、一九七六年に定められた県公害防止条例を全面改正するもの。既存条例の適用内だった工場や事業場などの事業活動に伴うばい煙・粉じんや排水汚染の規制に加え、新たに土壌汚染の規制や日常生活で発生する環境負荷の低減も盛り込み、罰則を強化する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807121300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月12日朝刊)

[対潜施設建設中止]

跡利用へ支援が必要だ


 防衛省は本部町豊原区の旧上本部飛行場跡に計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設中止を決めた。

 地元の反対闘争と建設用地の一部地権者が賃貸契約に応じなかったため中止に追い込まれた格好だ。

 防衛省は建設をとうに断念したと思っていた人が多かったのではないか。

 なぜ今ごろ、との思いを禁じ得ない。

 建設計画が浮上してから二十年以上も、跡地利用に向けた具体的な動きが取れずに、たなざらしが続いたことになる。

 高良文雄町長は「今後の農業やウェルネス事業を進める上で必要不可欠な地域だ。地主の皆さんときめ細かく相談したい」と中止を歓迎している。

 防衛省はもっと早く断念を発表するべきだったのではないか。

 国の安全保障に関しては地元の理解と協力なしに成り立たないのは当然だからだ。

 旧飛行場跡地には米軍が敷き詰めたコーラルがそのまま残されている。

 防衛省が断念したからといって、跡地利用にスムーズに移行できるわけではない。

 跡地利用は地主だけではできない。もちろん土地を持たぬ町だけでもできない。

 旧上本部飛行場は、一九六九年と七一年の二回に分けて全面返還された。

 幅五十メートル、長さ千五百メートルの滑走路を含む約二百五十三ヘクタールの広大な土地だ。

 復帰前に返還されたため、跡地利用のための補償制度がない。

 原状回復も、日米政府が責任を押しつけ合った結果、できなかった。

 当初計画では米軍の旧上本部飛行場跡地に、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機に解析データを送信する施設を建設する予定だった。

 防衛省は八八年度に用地取得を開始した。

 約三十万平方メートルの土地の地権者百十七人と賃貸借契約を結び、国有地と合わせて約二十九万平方メートルを確保した。

 だが、十三人とは契約できず、建設に踏み切ることができなかった。

 賃貸借契約は二十年で、二〇〇八年度末に契約満了となる。防衛省は〇九度以降は契約を更新しない方針。これまで支払った賃貸借料は約九億円という。

 防衛省は、計画の見通しの甘さに対する批判は免れないだろう。

 本部町は二〇〇一年度に「もとぶウェルネスのまちづくり基本構想」を策定した。

 ウコンやアセローラなどの農作物を供給する農園施設に、それら食材を利用したレストランやショッピング施設などの計画がある。近くの海岸のプールなどと合わせ一大ウェルネス地域とする構想だ。

 ただ、地権者は不在地主がほとんどで、住民合意を得るのは並大抵ではないだろう。

 これほどの大規模な跡地利用では、町がイニシアチブを取りながら、国、県の後押しがどうしても不可欠だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080712.html#no_1

 

琉球新報 社説

P3C送信所 脱基地で町振興の拠点に 2008年7月12日

 返還から37年。軍事基地が町振興の拠点へ転換される。本部町の上本部飛行場跡地のことだ。新たな自衛隊基地建設の動きを、本部町民が長年の反対運動で食い止めた。

 「自衛隊基地といえども、戦争に加担する施設は絶対に造らせない」。そんな強い意志を、本部町民は20年余も持続してきた。

 町長や区長が代わっても、反対の姿勢は、まるでDNAのように連綿と引き継がれてきている。

 米軍が沖縄占領後に上本部飛行場を建設し、復帰前の1971年にようやく地権者に返還された。

 しかし、滑走路をそのままに原状回復もないまま返還された跡地は、跡利用が難航した。

 そこに87年、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機との交信施設ASWOC(対潜水艦作戦センター)送信所建設計画が浮上した。

 ASWOC送信所は、対潜哨戒機が洋上で発見した潜水艦のデータを解析し、攻撃や作戦を指示するための施設である。

 跡利用が難航する中、多くの地権者が送信施設用地として賃貸契約に応じた。

 だが、町長をはじめ周辺住民は「戦争につながる施設の建設は絶対に許さない」と、現地に闘争・団結小屋を造り、文字通り体を張った反対運動を続けてきた。

 地元・豊原区の住民らは、戦争中は日本軍に、戦後は米軍に土地を強制接収されている。

 住む家も焼かれ、戻る場所を奪われた屈辱の体験がある。米軍も自衛隊も同じ「軍隊」との認識も町民には共通している。

 屈辱の体験を「子や孫の世代に体験させない」との思いが、防衛省の新基地建設を断念させた。

 そもそも20年も頓挫し、建設されずとも支障のないASWOC送信施設自体が、もともと不要の施設ではないか。そんな疑問も出る。それでも、建設中止を決めた防衛省は「代替地を早急に選定したい」との意向のようだ。

 ただでさえ米軍基地の過重負担に苦しむ沖縄である。自衛隊といえども新たな基地建設を進める国の姿勢には大いに疑問を感じる。

 全国一の高失業率、低所得、低貯蓄、高財政依存経済に呻吟(しんぎん)する沖縄県民が欲しいのは、新たな軍事基地ではなく経済基地である。

 農地を収奪し、厚いコンクリートで固め飛行場を造りながら、不要となれば原状回復もなく返還し、跡利用を難しくしたまま放置する。

 土地の収奪と長期占領・占拠のつけを住民に求める。これが政府のすることであろうか。

 計画中止を決めた政府には、基地施策で翻弄(ほんろう)し跡利用を阻害した反省も踏まえ、本部町民の長年の労に報いる跡利用支援策を、きっちりと要求したい。


<訂正>初出の記事で「旧日本軍が飛行場建設を進めていた上本部飛行場跡は、戦後、米軍が接収し」は「米軍が沖縄占領後に上本部飛行場を建設し」の誤りでした。おわびして訂正します。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134116-storytopic-11.html