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深夜訓練/SACO以外でも騒音規制合意踏襲 普天間協議、「確認書」合意へ調整、政府・県折り合わず 日米地位協定改定決議案、野党、来週にも参院提出 など  沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(5月28日から31日)

2008年5月28日(水) 朝刊 1面

深夜訓練/SACO以外でも騒音規制合意踏襲

 金武町伊芸区上空で米軍ヘリが夜間に訓練を行ったことについて、在沖米国総領事館のカーメラ・カンロイ首席領事は二十七日、同町議会(松田義政議長)の抗議に対し、「SACO(日米特別行動委員会)合意に従って、午後十時から午前六時までの訓練はしないようにしている。運用上必要があればやってもいいが、必要性があるかどうか判断する必要がある」と説明した。

 米側が、嘉手納基地や普天間飛行場の周辺以外の施設についても、騒音に関するSACO合意を踏襲しているとの認識を示した。

 カンロイ首席領事は「詳細な事実関係を確認できていないので、調べてみたい」と話した。

 一九九六年のSACOでは同年三月の日米合同委員会で、嘉手納と普天間における航空機騒音規制措置に関する合意を確認。「午後十時から午前六時の飛行及び地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される」と定めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805281300_02.html

 

2008年5月28日(水) 朝刊 27面

宅地夜間飛行/伊芸区、我慢の限界

 金武町伊芸区で米軍ヘリが住宅上空の夜間飛行を繰り返した問題で、儀武剛町長と池原政文区長は二十七日、沖縄防衛局に対し、日米地位協定や「5・15メモ」など過去の日米合意の記録も含めた調査と、文書による正式回答を求めた。踏み込んだ要求を突き付けた背景には伊芸区での基地負担が加速度的に高まり、住民生活が脅かされ続けていることへの強い反発があるが、外務省は「協定上ただちに問題があるとはいえない」との立場。伊芸区の現状は、現行の地位協定の限界を浮き彫りにしている。(社会部・嘉数浩二)

集落が訓練場?


 「伊芸区全体を訓練場と見ているのではないか。まさに戦場さながらだ」。池原区長は声を震わせた。

 米軍は今月二十日から三日連続で午後十一時ごろまで、民家から五百メートルも離れていないキャンプ・ハンセン「レンジ4」都市型訓練施設内のヘリパッドで離発着を繰り返した。

 二―四機がごう音を響かせ、無灯火のヘリが高速で闇夜を横切った。公民館から四十―五十メートルの低空飛行で集落上空を何度も旋回した。住民への聞き取りで区がまとめた飛行ルートは、集落をすっぽりと囲んでいた。

 二十二日夜には、爆破訓練とみられる爆発音も重なり、町測定で85・5デシベルを記録。男性住民は「施設内の建物を攻撃し、別のヘリが後方支援しているようだった」と話す。


地位協定の限界


 町は、撮影した写真から米空軍のHH60と呼ばれる救難ヘリとほぼ断定。所属先は不明だが、空軍機が飛来し、伊芸上空で訓練していたことになる。

 外務省地位協定室は、本紙の取材に、「米軍の活動は、すべて訓練ともいえるが、一般論として日米地位協定上、射撃を伴わない飛行(訓練)は提供空域内に限定されない」との従来の見解を示し、「協定上の話ではなく、米側に配慮を求めるべき問題」とした。

 日米地位協定に詳しい新垣勉弁護士は「現行の協定では、演習のために集落上空を飛行しても規制する仕組みがない。民家上空、低空飛行などをしっかり制限できるよう協定を変える必要がある」と指摘した。

 池原区長は「これだけ生活を脅かされても、何もできないなら、今の協定は要らない。地域住民はどうなってもいいのか」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805281300_03.html

 

2008年5月28日(水) 朝刊 26面

不発弾に「触らないで」/中学生が隠す?自衛隊回収

 那覇市内の中学生が見つけて草むらに置いていた沖縄戦で使われたとみられる砲弾六発などを、陸上自衛隊の処理班が二十六日に回収していたことが分かった。砲弾が見つかった地域の小中学校では、児童・生徒に対し、砲弾を見つけた場合は「絶対に触らないこと」と注意喚起、保護者にも文書を配布した。

 砲弾は二十五日、自治会の清掃作業で見つかった。自治会長などによると、中学生が川で拾った砲弾を隠しているとの情報があり、付近を調べたところ、長さ約三十センチ、直径約八センチほどの砲弾六発や機銃らしきものが見つかった。自治会長は「非常に危険なので学校や、市、警察に連絡した」と話す。市によると連絡を受けた自衛隊がすぐに回収した。爆発の危険性は少ないとみられる。

 砲弾が見つかった地域の小学校長は「緊急に集会を開いて注意を呼び掛けた。事故がなくてよかった」と話した。中学校長も「好奇心から拾ったかもしれない。非常に危険だということを校内放送で伝えた」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805281300_05.html

 

2008年5月30日(金) 朝刊 1面

「確認書」合意へ調整/普天間協議

政府・県折り合わず

 【東京】米軍普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動をめぐり、政府と県が、今後の協議の進め方を明記した「確認書」を交わす方向で調整していることが二十九日、分かった。しかし、確認書の内容で双方は折り合いがついておらず、先行きは不透明だ。

 政府と県は、普天間飛行場代替施設の建設計画などを話し合う協議会の第八回会合を六月三日夕に開き、確認書を合意することを目指していたが、調整が難航し、会合は延期となった。

 協議会設置を明記した在日米軍再編に関する政府方針の閣議決定から三十日で二年を迎えるが、沖合移動については依然として具体的な協議に入ることができていない。

 確認書をめぐっては、沖合移動に道筋を付けて仲井真弘多知事の公約の進展をアピールしたい県側の狙いと、二〇一四年の代替施設完成を着実に進めたい政府側の思惑が一致。県議選前の協議会で合意することを目指していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805301300_01.html

 

2008年5月30日(金) 朝刊 29面

米海兵隊が謝罪/協同病院ガラス破壊

 【沖縄】米軍キャンプ・フォスター所属の海兵隊一等兵(19)が、今月二十五日、沖縄市の中部協同病院の窓ガラスを割り、器物損壊容疑で逮捕されたことを受け、一等兵が所属する部隊のマイケル・ジョンソン上級曹長、米海兵隊法務局のアルボータ・デービス法務官らは二十九日、同病院を訪ね、一等兵の行為に謝罪の意を示した。

 同病院の与儀洋和院長、山里昌毅事務長らは米軍の綱紀粛正が機能していないと指摘し「患者や周辺住民から不安の声が上がっており、事件にものすごい憤りを感じる」と抗議。リチャード・ジルマー四軍調整官あての抗議文を手渡し謝罪を求めた。

 ジョンソン上級曹長らは「代表者として事件を起こしたことをおわびしたい」と述べるにとどまった。

 同事件で、同病院を運営する沖縄医療生活協同組合の伊集唯行理事長と県民主医療機関連合会の山田義勝事務局次長、同病院医事課の知念和明さんらは同日、県庁で記者会見し沖縄署に告訴状を提出したことを明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805301300_05.html

 

2008年5月30日(金) 夕刊 7面

野党、来週にも参院提出/日米地位協定改定決議案

 【東京】民主党は三十日までに、「日米地位協定の抜本的改定に関する決議案」を早ければ来週にも野党共同で参院に提出することを決めた。地位協定改定を求める決議案が参院に提出されるのは初めて。

 民主党は二十八日の「次の内閣」で、民主、国民新党の政策担当者がまとめた決議文の素案を正式に承認。野党が多数を占める参院での可決を目指して、他党との最終調整を急ぐ構えだ。

 民主、社民、国民新の三党は三月末、(1)起訴前の身柄引き渡し要請に対する米軍の同意(2)施設返還時の環境汚染浄化は米国の責任―などを柱とした地位協定改定案もまとめている。

 「運用改善」を主張し、改定に消極的な政府への圧力とする狙いのほか、六月八日投開票の県議選をにらみ、早期の提出を目指している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805301700_05.html

 

琉球新報 社説自衛隊派遣中止 中国国民への配慮足りない 2008年5月31日 

 中国の四川大地震被災者に救援物資を輸送するための航空自衛隊輸送機派遣が一転、見送られることになった。過去の歴史など非常に複雑な背景が絡むだけに、これほどすんなりと派遣が決まるものなのかと疑問を抱いていたが、やはり容易ではなかった。政府は、中国国民の日本に対する感情を正確に測っていなかったといえよう。

 自衛隊の派遣は国際緊急援助隊法に基づくものである。同法は1987年に施行されたが、当初は自衛隊参加が認められていなかった。参加が可能になったのは92年の改正以降である。同法に基づく派遣はこれまで9例ある。

 今回の自衛隊機派遣は、人道的支援の観点から見れば、完全に否定できるものではないだろう。地震による死者数は7万人に迫り、いまだに2万人近くの人たちが行方不明のままだ。さらに負傷者は約36万5000人。被災者に至っては4500万人超という未曾有の数に上る。援助の手が届かず、路上で厳しい生活を余儀なくされている人たちは多い。最低限の雨露をしのぐテントも不足しているというのだから、1日も早く支援物資を現地に届けたい。

 重要なのは被災者の援助、この一点である。

 だが今回の顛末(てんまつ)を見ると、政府は「自衛隊による輸送ありき」で動いたように見える。政府は地震の発生直後から中国側に、自衛隊機による救援物資の輸送を打診していた。緊急援助隊の活躍が現地の人々の高い評価を受けると、派遣の働き掛けを強めていった。当初、中国側も前向きだったが、国内のウェブサイトに反対論が多数寄せられ、世論の反発がエスカレートしたため最終局面で受け入れを思いとどまったようである。

 慎重さに欠けていたと、外務省の中からこのような発言が出た。さらに政府内からは「もともと自衛隊ありきではなく、中国が求めたのはテントの供給だった」、与党関係者からは「自衛隊機か民間機かは付随的なことだ」という指摘がある。

 いかに拙速であったか分かる。これまでの両国関係の経過に沿えば、慎重な配慮が必要だった。今回の顛末では「弱みに乗じて」と厳しく批判されかねない。胡錦濤主席の来日で関係改善に踏み出した直後だけに、それを後退させかねない政府の対応のまずさは批判されるべきである。

 政府は、援助物資を民間チャーター機で輸送することになった。最初からそうすれば良かったのだ。

 他国に先駆けて被災地に入った緊急援助隊のひた向きな活動がなぜ現地の人々の胸を打ったのか。そこに助け合いの神髄が見える。緊急を要する人命救助に、政治的打算を働かせるべきではない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132663-storytopic-11.html

シュワブ隊舎来月着工 知事、旧軍飛行場補償「来年度は予算要求」 F35A戦闘機 嘉手納配備13年完了 米ヘリ騒音85デシベル金武議会抗議へ 比女性、消えぬ悪夢/来沖直後、米兵に力ずくで暴行され 普天間に模擬飛行装置/在沖海兵隊8月導入か 知事、代替施設沖合移動、駐米大使に注文など  沖縄タイムス関連記事・社説(5月22日から27日)

2008年5月22日(木) 夕刊 5面

「普天間」危険性除去を/中部市町村会が決議

 【中部】中部の十市町村でつくる中部市町村会(会長・知念恒男うるま市長)は二十二日、沖縄市内で定例会を開き、米軍普天間飛行場の危険性除去と嘉手納基地から派生する諸問題の解決促進についての要請決議案を全会一致で可決した。

 普天間飛行場に関しては、二〇〇七年八月に場周経路などを定めた報告書を日米両政府が発表した後も、常時住宅地上を旋回していると指摘。米軍が定めたクリアゾーン(土地利用禁止区域)に小学校などが存在しており危険とし、危険性の除去と同飛行場の早期閉鎖・返還を求めている。

 嘉手納基地については、深夜・早朝飛行が改善されず、多くの住民から苦情が寄せられているとして、騒音防止措置の順守と同基地に特化した使用協定の締結、F15戦闘機の即時撤去を求めている。

 あて先は沖縄防衛局長、外務省沖縄大使、在沖米国総領事、県知事、首相など。県内は直接抗議し、県外へは抗議文を送付する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805221700_04.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 27面

性暴力被害の豪女性、見舞金に納得せず

 【東京】二〇〇二年四月に神奈川県で米兵に暴行された四十代のオーストラリア人女性、ジェーンさん=仮名=が二十二日までに防衛省から見舞金三百万円の支払いを受け、同日、都内で会見した。ジェーンさんは「思いが皆に伝わるのに六年もかかったが、私が欲しいのはお金ではなく正義」と涙ながらに語り、加害米兵や米政府の公式な謝罪と慰謝料負担を訴えた。

 その上で「私は絶対に黙らないし、あきらめない」と思いを新たにし、米兵らによる性暴力根絶をあらためて呼び掛けた。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながら、公の場で自らの体験を語り続けてきたジェーンさん。これまでの自主活動による出費も多く、見舞金はほとんど手元に残らない見通しだという。

 防衛省から、見舞金の性格上、裁判で確定した額すべてを支払うのは困難として、価格交渉を提示された経緯も明かし、「私はバーゲンのセール品じゃない」と非難した。

 三月二十三日に北谷町で開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」で登壇し、犯罪根絶を訴えたジェーンさん。会場で、米兵による性暴行被害を受けたことがあるという高齢の女性に「あなたの話で人生をまた始められる」と声を掛けられたことも明かし、連帯の広がりに期待を込めた。

 会見には、被害者遺族でつくる「米軍人・軍属による事件被害者の会」の海老原大祐代表も出席。国会議員らに、米側に賠償責任を負わせる法案の議員立法を求めた。


[ニュース近景遠景]

“肩代わり”犯罪を助長/実態は98%泣き寝入り


 米兵に暴行されたオーストラリア人女性に対する見舞金の問題は、日本政府が賠償金全額を肩代わりする異例の決着となった。民事訴訟で賠償金を命じられた米兵は除隊となり帰国、米側も支払いを拒む中、六年に及ぶ女性の粘り強い行動でようやく補償された「特異なケース」(防衛省)。しかし、被害者の関係者らは、相次ぐ米軍関係の事件・事故の下で大勢が依然として泣き寝入りを余儀なくされている実態を指摘、制度の改善を訴えている。(東京支社・島袋晋作)


政府内に異論


 「私は正義を求めているだけ。レイプした人に責任を取ってほしい」

 二十二日、都内で会見した女性は、被害を立証するためのこれまでの苦労を切々と語り、あくまでも米側の責任を訴えた。

 日米地位協定によると、米軍関係者が公務外に起こした事件・事故は原則、当事者間の示談で解決するが、それが困難な場合、米政府が補償金を支払う。

 賠償は被害の立証が前提となるが、同事件で米兵は不起訴処分となった。このため、女性は損害賠償を求め東京地裁に提訴したものの、訴えが認められた二〇〇四年十一月には、米国内法の時効を過ぎていた。

 防衛省は被害者への補償が困難になった場合に米側に代わって救済する「見舞金制度」を、時効案件で初めて活用。賠償金の全額を補償したのも初だが、石破茂防衛相自身、会見で「国民の税金を使って何だ、という議論もあろう」と述べるなど、政府内にもわだかまりがくすぶっている。


米政府は2割


 防衛省が確認している公務外の事件・事故数は一九九九―二〇〇六年度の八年間で一万二千七十八件。示談が成立せず、米政府から補償金が払われたのはわずか約2%の二百二十九件だ。

 防衛省は「ほとんどが示談で処理されている」とするが、「米軍人・軍属による事件被害者の会」の海老原大祐代表は「示談なんて無理。言葉が違う問題など、大勢が泣き寝入りしている実態がある」と指摘する。

 米政府からの補償金も、「米政府は直接の加害者ではない」という認識から、見舞金的なものでしかなく、海老原代表は「請求額の二割にも満たない低額なのが実態」と訴える。

 被害者の会はこれまで、日本政府がいったん賠償金を払い、米側に全額請求する制度を求めているが、政府は閣議決定した政府答弁書で「法的措置を新たに講じる必要はない」と門前払いの状況だ。

 これに対し、海老原代表は「ちゃんとペナルティーを与えないから事件・事故が減らない。日本政府が肩代わりすることが、米軍に特権意識を植え付け、ひいては事件・事故につながっている」と、米側の責任を強調する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_02.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

シュワブ隊舎 来月着工/普天間移設で沖縄防衛局

 沖縄防衛局の真部朗局長は二十二日の定例会見で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市キャンプ・シュワブ内の下士官宿舎など、新設五棟の工事を六月上旬から着工することを明らかにした。同移設に関する工事着手はこれが初めてとなる。

 五棟は下士官宿舎ほか、倉庫や管理棟、通信機器整備工場、舟艇整備工場。場所は飛行場建設予定地の西側になる。二〇〇九年九月末までに完成する見通し。

 また真部局長は、現在の兵舎十一棟の解体工事を四月から着手したことを説明。七月中には作業を終えるという。

 先月浦添市内の建築現場で見つかり、嘉手納弾薬庫に搬送された化学弾の可能性がある米国製M57迫撃砲弾二十二発の遺棄弾について、真部局長は処理の仕方は「まだ調整中で、新たな情報はない」と述べた。調整に時間を要していることについて「こういうタイプの弾薬は前例がなく、処理手順が確立していない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_05.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

県、調整案を提示/旧軍飛行場問題

 旧軍飛行場用地の補償問題について、同問題解決促進協議会(金城栄一会長)は二十二日、読谷村内で役員会を開いた。県から沖縄特別振興対策調整費で最終的な解決を図るとする説明を受けたとして、「調整費とは別枠」と協議会の考えと乖離していると主張。来週にも仲井真弘多知事に受け入れられない意向を伝えることを確認した。一方、県の上原昭知事公室長は「(対応は)どうなるかまだ分からないし、決まっていない」と述べ、県の調整案は固まっていないとしている。

 金城会長によると、県は同協議会傘下の複数の地主会に対し、沖縄特別振興対策調整費のうち、約十億円で対応する意向を示しているという。内閣府は県に、各地主会の要望をまとめ一括で最終決着とする考えを提起している、とされる。

 金城会長は「旧軍問題の六十三年の重みを県自身が知らな過ぎる。妥協案でお茶を濁してほしくない」と主張。「政治的な決定が重要なので、知事に直接会って、協議会との議論を深めてもらうよう求めたい」と説明した。

 一方、県は二〇〇九年度予算の概算要求に盛り込む方針を固めているが、詳細については未決定としており、食い違っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_06.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

メア総領事「米軍は今後も駐留」

 在沖米国総領事館のケビン・メア総領事は二十二日、嘉手納基地の将校クラブで日米同盟などについて講演し、「在沖米海兵隊八千人のグアム移転を、沖縄から米軍が撤退するスタートととらえる考えは明らかに誤解だ。米軍は今後も沖縄に駐留し続ける」と述べた。

 米国務省に招かれた韓国の新聞、放送、雑誌の論説委員ら約二十人が二十二、二十三の両日、沖縄の米軍基地などを視察。総領事の講演はプログラムの一環。

 メア総領事は一九九一年の湾岸戦争を皮切りに、日本の防衛政策が劇的に変化したと指摘。「日米同盟は日本だけでなく、朝鮮半島など地域全体を包括している。ミサイル防衛(MD)や施設の共同使用が進んでいるが、日本の専守防衛は変わらない」と説明。同盟を維持する手段として「地元の負担軽減が大事で人口過密地域の基地を再統合する必要がある」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_07.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

町「方向性変わらず」/ギンバル跡地計画

 【金武】金武町の米軍ギンバル訓練場の跡地に、米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)で整備が計画されている医療施設について二十二日、同町並里区の協議会が開かれ、町側に対し、計画の説明を求めた。伊芸達博副町長は「(計画案には)これまでがん検診、治療が出ていたが、(一般的な)住民健診をする必要もある。(計画の)配置は換わるが、規模や方向性に変わりはない」と説明した。

 町は当初「他地域にはない先端のがん検診・治療が可能な医療センター」を計画の核として打ち出していた。基本構想の策定から約八年が経過し、医療機器の更新や住民ニーズの変化などを受け、がん施設の内容変更も含め、検討するという。

 特定健康診査制度の導入などを受け、がんの施設と併せて、一般的な健診センターを備えた施設を整備する案が出ている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_08.html

 

2008年5月23日(金) 夕刊 7面

対馬丸乗員の証言 本に/埼玉在 中島さんの体験軸に

 【東京】一九四四年八月、米潜水艦に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の元乗組員の証言などを基にした「満天の星 対馬丸真実の証言」(対馬丸事件取材班編、文芸社、定価千五百円)が六月上旬に刊行される。乳児を含む八人がいかだの上で生死の境をさまよい、救助されるまでの克明な様子や、別の生存者のその後などが描かれている。証言した元乗組員の中島高男さん(81)=埼玉県=は「最近は命が粗末にされる事件が多過ぎる。対馬丸事件を通して若い人たちが命の大切さを感じ取ってほしい」と話している。(稲嶺幸弘)

 同書は、中島さんと親交のある都内の会社経営、田中健さんが「対馬丸の悲劇」を後世に伝えようと発刊を思い立った。会社スタッフで取材班を編成。中島さんの体験談を中心に、対馬丸の護衛艦に乗船していた元海軍兵らからも聞き取りをしてまとめた。

 撃沈された対馬丸から投げ出された中島さんらは、いかだをつないで漂流。中島さんのほか、年配の男性、女子学生、男子二人、別の船員、乳児をおぶった女性の計八人は、三日三晩の漂流の末、海軍の巡視艇に運よく救助された。

 「睡魔に勝てず、女子学生がいかだから海に落ち、夢中で救い上げたこともあった。『眠らないで』と励ましながら救助を待った」と中島さん。漂流時に見上げた夜空には数え切れないほどの星が光っていたといい、本のタイトル「満天の星」はそこから付いた。

 中島さんの体験は、二十四年前の八四年、本紙で初めて紹介された。記事がきっかけで、中島さんは、漂流時に一歳だった沖縄県在住の女性と対面。以来、家族ぐるみの交流が続いているという。

 同書の発刊を企画した田中さんは「中島さんの体験を本にすれば、多くの人の心に平和の尊さがしみ込んでいくと確信している。ぜひ多くの人に読んでほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231700_01.html

 

2008年5月23日(金) 夕刊 1面

知事「来年度は予算要求」/旧軍飛行場補償

 仲井真弘多知事は二十三日の定例記者会見で、旧軍飛行場用地の補償問題について「来年度は予算としてちゃんと要求したいと固い決意をしている」と述べ、二〇〇九年度概算要求に盛り込む方針を示した。

 同問題解決促進協議会(金城栄一会長)は、沖縄特別振興対策調整費での解決について「調整費とは別枠」を求め、来週にも県に要請する方針を示している。仲井真知事は「本当は別枠がいいが、特別調整費か一般財源かはどちらでもいい」とし、予算の種別にはこだわらない姿勢を示した。

 有村産業の更生計画変更問題については「経営者や債権者の姿勢が第一。(二十三日の)関係人集会の結果を見て、どこまで応援できるか決めたい」と述べた。具体的支援策については「出資の形で自治体が関係するのはあり得ないことではない。あくまでも額による」と含みを残した。

 嘉手納基地所属F15戦闘機などの未明・早朝離陸については「飛行プラン見直しによる騒音軽減の余地は十分ある。米軍がその努力を最大限払うべきだ」との認識を示し、今後も米軍や日米両政府に騒音軽減を要請していく考えを示した。

 北谷町で万引した海兵隊員の息子を憲兵隊員が基地内に連れ帰った問題では、「身柄は警察官に引き渡すなど、日本の法律により所定の手続きが行われるべきだ」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231700_02.html

 

2008年5月24日(土) 朝刊 2面

F35A戦闘機 嘉手納配備13年完了/太平洋軍司令官が意向

 米空軍が検討している次期攻撃戦闘機F35Aの米軍嘉手納基地への配備について、早ければ二〇一三年までに完了したい意向を示していることが二十三日までに分かった。ハワイの地元紙ホノルルアドバタイザーが二十二日、米太平洋空軍司令官のキャロル・チャンドラー大将の話として報じた。

 同紙によると、チャンドラー大将は、嘉手納基地所属のF15戦闘機二個中隊(四十八機)に代わって、F35の二個飛行中隊を配備したい考えを示したという。

 同大将は西太平洋において、日本は米国との関係で、「要石」と表現。「近い将来のどんな時においても嘉手納から退くことはないとみている」と述べた。中国に対して、潜在的な誤解を生みださないよう、太平洋軍は中国に関与する努力を続けていく、と説明している。

 米空軍は〇六年、F35Aの最初の配備先の中で、海外では唯一、嘉手納基地を検討していると発表。二個中隊五十四機を十年以内に配備する見通しを示していた。配備前に環境調査を実施し、配備先としての適正を判断する計画で、調査は二年を要するとみられている。F35Aは〇九年に試験飛行を開始。二五年にかけて配備が完了する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241300_05.html

 

2008年5月24日(土) 朝刊 2面

米ヘリ騒音85デシベル金武議会抗議へ/住宅地の低空飛行で

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン内のレンジ4都市型訓練施設周辺の民間地域で二十二日、低空飛行していた米軍ヘリの騒音が85・5デシベルに上ったことが、町役場の測定で分かった。二十三日開かれた金武町議会の米軍基地問題対策調査特別委員会(知名達也委員長)で、町が報告した。

 レンジ4に隣接する伊芸区を中心とする住宅地上空の低空飛行は、二十日から三日間続き、同委員会は、飛行中止などを求める「民間地域における米軍ヘリ演習に対する抗議決議」を、二十七日開かれる臨時議会に提出することを決めた。

 町によると、米軍ヘリ数機がレンジ4のヘリパッドで離着陸し、住宅地上空を旋回。これまで、米軍ヘリが住宅地上空を低空飛行することはあったが、レンジ4で離着陸することは初めてという。昼と夜、それぞれ二時間にわたり、旋回が続いた。テレビが正常に映らない電波障害が生じた民家もあるという。

 伊芸区在住の仲間昌信議員は「夜間に無灯火で飛ぶ米軍機は本当に恐ろしい。生活に影響が出ている。固定化につながらないよう、しかるべき抗議をしなければならない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241300_06.html

 

2008年5月24日(土) 朝刊 29面

「普天間」で火事騒動/米軍、訓練日を誤通告

 【宜野湾】米軍普天間飛行場内で行われた消火訓練日程について、米軍が宜野湾市に誤って事前通告し、予定とは異なる日に行われていたことが二十三日、分かった。通告日と異なる二十二日午前四時半ごろ同飛行場内で訓練があり、周辺住民から市消防本部に「飛行場で火災が起きている」との通報があった。

 市によると、米軍は当初訓練日程を二十、二十一日と通告していたが、実際は二十一、二十二の二日間だった。市は米軍に確認を取った上で、誤った情報を通告しないよう口頭で申し入れた。市によると、同飛行場での消火訓練は年に数回行われ、今年四月にもあった。二十一日には滑走路北側で約三十分間訓練が行われ、炎と黒煙が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241300_09.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月24日朝刊)

[防衛利権]

疑惑解明が残っている


 前防衛事務次官守屋武昌被告の汚職事件で、参院外交防衛委員会は、贈賄罪などで公判中の防衛商社「山田洋行」元専務宮崎元伸被告を証人喚問した。

 宮崎被告は福岡県・苅田港の旧日本軍毒ガス兵器処理事業に絡み、防衛関連団体「日米平和・文化交流協会」(東京)側へ約一億円提供したことを認めた。

 同協会の専務理事は秋山直紀氏である。同氏は与野党議員や米政府高官、日米防衛産業に深い人脈を持つとされる人物だ。

 宮崎被告は、秋山氏に「漁協や暴力団対策など現地対策費」を要求され出したと証言した。

 さらに秋山氏が顧問の米国「アドバック・インターナショナル・コーポレーション」などに二〇〇三年から四年間にわたって、年約十万ドル(約一千万円)のコンサルタント料を払っていたと認めた。

 宮崎被告は政治家との関係にも言及した。オーナー側と対立し山田洋行を去った後の〇六年十二月、久間章生元防衛相、秋山氏と会食。久間氏がオーナー側寄りの発言をしたことに「不信感を持った」と述べている。

 久間氏は当時、現職の大臣である。疑惑はいっそう深まったといっていいのではないか。久間氏は国会の場で疑惑を名指しされたわけで、自身の関与の有無を説明する責任がある。

 防衛利権に関連して月刊誌「論座」六月号の座談会で、興味深い発言が見られる。元防衛施設庁長官と元海上幕僚長が業者による水増し要求や装備品の選定に政治家が絡み、業者の支援を受けて国会議員を続けている人がいるというのだ。いずれも内部のトップの発言だけに無視できない。

 防衛省は一連の不祥事を受けて、首相官邸の「防衛省改革に関する有識者会議」に改革案を提出した。だが、組織再編を優先しただけで、会議設置のきっかけとなった汚職事件の再発防止策には踏み込んでいない。

 改革案は、汚職事件などの背景に、内局と幕僚監部の権限の不明確さや業務の重複があると指摘。その上で文民統制(シビリアンコントロール)を担う防衛相の補佐機能を強化し「実効的な部隊運用ができる体制構築」を強調しているが、これに対して委員から批判が相次いだという。

 文民統制を担う政治家に疑惑の目が向けられているのに、その点が解明されないまま、いくら組織をいじっても信頼回復にはつながらないというのが正直なところではないか。

 野党側が宮崎元専務の意向に反して喚問の撮影を決めたため、自民、公明の与党議員は委員会を欠席した。

 疑惑解明のための証人喚問なのに撮影をめぐる見解の違いで欠席するのは、真相究明の意志が本当にあるのかどうか疑わしくなる。

 逆に、防衛利権をめぐる政界の関与を追及すれば、身内に累が及ぶかもしれないと恐れたのではないか。そう思いたくなる。

 防衛省の焦点のずれた改革案と与党の欠席。政官とも本気で改革する意欲があるのか、自ら疑問符を付ける行為というしかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080524.html#no_1

 

2008年5月24日(土) 夕刊 5面

米兵暴行に抗議デモ/フィリピン人60人連帯

 【読谷】今年二月に沖縄市内でフィリピン人女性に暴行した容疑で米兵が書類送検され、不起訴処分となった事件を受け、県内在住のフィリピン人ら約六十人が二十四日午前、読谷村の米軍基地周辺などを行進し、事件の再発防止などを呼び掛けた。

 被害を訴えている女性も参加し、「真実をみんなに伝えるために来た。うそはついてない」と涙ながらに心情を語った。

 行進は、事件に抗議し、同様の不祥事が起こらないことを願って、読谷カトリック教会のロメス・クルス神父が中心となって呼び掛けた。

 米軍のトリイステーション周辺でミサ曲を歌いながら歩き、基地前で全員が祈りをささげた。被害女性が感謝の言葉を伝えると、すすり泣く参加者も。

 クルス神父は「来週にも軍の中で調査が始まると聞いている。公正な事実に基づいて判断を下してほしい」と語った。県内に在住して十七年になるという女性は「彼女の気持ちは痛いほど分かる。再発防止には(米国との)相互理解が必要だ」と涙ながらに語った。

 事件は今年二月に沖縄市内のホテルで発生。在沖米陸軍・地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊所属の兵士がフィリピン人女性を暴行し、全治約三週間のけがをさせた疑いが持たれている。

 沖縄署は米兵を強姦致傷の容疑で書類送検したが、那覇地検が強姦罪成立の要件となる暴行や脅迫の有無について嫌疑が不十分として不起訴処分にしている。


「事実知って」心痛める被害者


 【読谷】「事実を知ってほしい」。読谷村でのデモ行進を前に二十四日午前、米兵から暴行を受けたフィリピン人の被害女性は、沖縄タイムス社の取材に応じ、涙ながらに当時の様子と現在の心境を語った。六人姉妹の長女として家計を助けるため沖縄に働きに来た。「事実を広く伝えたい」と米兵に何らかの処分が下されるまで、沖縄に滞在する予定だ。

 女性は事件後、一週間入院し、現在、本島南部の教会で暮らす。睡眠薬を服用し、精神的につらい日々を過ごしているという。「日本では、この事件を隠そうとしている。私自身についていろいろなうわさが出ているようだが、私は悪くなかったと真実を広く知ってほしい」と訴えた。

 下腹部に残る傷の診断書を二十三日に病院から受け取っており、検察と米軍の双方に提出して自らの主張を訴え、再捜査を求めるつもりだ。

女性への暴行などの事件が起こらないよう訴えるフィリピン人ら=24日午前9時50分、読谷村・トリイステーション前

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241700_01.html

 

2008年5月25日(日) 朝刊 23面

「無言館」講演/河田早大講師・戦争画読み解く

 近代美術史における戦争画の在り方について考える講演「画家と戦争」(主催・沖縄文化の杜)が二十四日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館講堂であり、早稲田大学非常勤講師の河田明久氏が「戦争画は絵の種類ではなく、社会的文脈によって成立するもの」と強調した。

 同館で開催中の「情熱と戦争の狭間で―無言館・沖縄・画家たちの表現」展の関連イベント。

 河田氏は戦争と美術との関係を考える際の時期区分を、日中戦争期と太平洋戦争期の二期に大別し、双方の置かれた性格の違いを指摘。

 日中戦争期には戦争の大義や理念があいまいで、西洋古典絵画風の歴史物語的な作品を描くことが困難だったが、太平洋戦争期にはその大義が「大東亜」対米・英・蘭との構図で際立ち、演出的な「戦争画」が出現したと解説した。

 その上で「一枚の絵がどう機能しているかを見ることが大切。『戦争画』は立派な絵や悲しい絵など(内容的な評価)とは別に社会的文脈で機能しているものではないか」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805251300_02.html

 

2008年5月25日(日) 朝刊 23面

比女性、消えぬ悪夢/来沖直後 米兵に力ずくで暴行され

 何度拒んでも、力ずくで迫って来る大きな米兵。必死でトイレに逃げ込んだ。暴行された体を洗った浴槽は出血で染まり、いまも入浴時には忌まわしい記憶がよみがえる。フィリピンののどかな地方から沖縄に来て数日目の夜。「怖かった」。あの日以来、睡眠薬が手放せない。(鈴木実、比屋根麻里乃)

 二月に沖縄市で起きたとされるフィリピン人女性(21)への強姦致傷容疑事件。那覇地検は嫌疑不十分で米兵容疑者を不起訴としたが、この女性は「うそではない。事実を知ってほしい」と訴える。二十四日に読谷村内であった支援者集会にも参加した。

 女性によると、事件が起きた夜、同僚のフィリピン人や米兵ら計十数人で飲食店に行った。いったんいくつかのグループに分かれてカラオケなどをした後、待ち合わせのホテルに集まった。ほかの女性たちとアパートに帰るものと思っていたが、ホテルに泊まると聞き、嫌な予感がした。

 ほかの人たちは一つの部屋に入ったが、米兵と女性は別の部屋に泊まることになり、フィリピン人仲間に電話した。「そっちに泊まらせて」「もういっぱい」。沖縄に来たばかりで帰る手段も分からず、仕方なく服のままベッドに入った。「あと少しで夜が明けるから大丈夫。米兵がそんなことするはずがない」。だが、予想は裏切られた。

 翌朝、血で汚れた服の代わりに、米兵から男物の服を渡された。だぶだぶの服を着たままタクシーで帰宅しようとしたが、場所が分からずホテルに戻った。力尽き、ロビーのソファに倒れこんだ。そのまま一週間入院。「大量出血で命の危険もあった」。県警の捜査員は打ち明ける。

 女性は興行ビザで入国した。二年前にフィリピンで双子の妹がトラックにはねられ、腰の辺りにはいまも金属が埋まったまま。六人姉妹の長女として、再手術の費用を稼ごうと海を渡ったという。

 「偏見もあるかもしれない。でも事実を明らかにするまで戦いたい」。人前に出ることは恥ずかしかったが、「多くの支援に勇気をもらった」と話す。

 あなたが求めているのは何? 補償?。こう尋ねると、赤く腫らした目を上げて答えた。「正義(JUSTICE)です」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805251300_04.html

 

2008年5月25日(日) 朝刊 22面

相次ぐ米兵暴行事件受け・北谷町PTAが安全マップ作製

 【北谷】暴行事件など相次ぐ米軍人による事件を受け、北谷町PTA連合会(仲地泰夫会長)生活指導委員会は、同町全域の安全マップを作製した。二十四日にちゃたんニライセンターで開かれた同会定期総会で完成を報告。二百三十部作り、町内の学校や自治会、児童館などに配布する。

 仲地会長は「学校区別では安全マップは作られていたが、町全域を示したものは初めて。学校で教師と生徒の対話に活用し、危険回避につなげてほしい」と意義を強調した。

 安全マップには、町内二十七カ所の危険個所が明記。砂辺馬場公園は「夜は明かりが少なく飲酒や騒いでいる人が多い」、北前第三公園は「公園が目立たず人通りが少ない」などと地図上に注意事項が分かりやすく書かれている。

 野国昌春町長は安全マップの完成に「学校や自治体が活用することで子供たちが危険を認識できる」と感謝した。

 町内の小中学校では、各校のPTAが防犯パトロールを実施している。事件後あらためて危険個所を把握しようと二月に町内全域を巡回。人通りの少ない公園などを調査。予算がなく資料化が遅れたが、琉球銀行の助成で完成した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805251300_06.html

 

2008年5月26日(月) 朝刊 1面

普天間に模擬飛行装置/在沖海兵隊8月導入か

 在沖米海兵隊は、普天間飛行場に配備されている空中給油機KC130J用にシミュレーター(模擬飛行装置)を導入し、早ければ八月から運用する計画があることを、二十五日までに明らかにした。

 同飛行場所属の第一五二海兵空中給油中隊が運用する予定。訓練官は「実機の飛行時間を著しく減らすことができる」としている。しかし、同中隊はこれまでシミュレーター訓練を米本国で行い、「導入でパイロットが米本国に帰還する必要がなくなる」とも説明しており、飛行時間削減につながるかは不明だ。

 海兵隊によると、同装置は米フロリダ州タンパで製造され、普天間飛行場に今月十九日、飛来したロシア製超大型輸送機アントノフが輸送した。世界に九基のみで、海兵隊は米ノースカロライナ州のチェリーポイント基地、カリフォルニア州ミラマー基地に次いで普天間に配備する。乗員は同装置を使い、天候や地形などさまざまな条件を想定して訓練するという。

 普天間飛行場配備の空中給油機KC130について海兵隊は昨年六月、十二機のうち九機を二〇〇八年末までに新型のJ型に更新すると発表している。


訓練減少を期待


 伊波洋一宜野湾市長の話 シミュレーター導入は、市が訴えてきた危険性除去に軍が敏感になっているととらえることもできる。飛行訓練減少を期待し、データを分析したい。ただ、飛行場での訓練はKC130だけでなく、危険性除去の大きな解決にはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805261300_02.html

 

2008年5月26日(月) 朝刊 21面

闘争貫徹誓う 辺野古座り込み1500日

 【名護】名護市辺野古沖への米軍普天間飛行場代替施設建設に反対する住民らが座り込みを続けて27日で1500日目になるのを前に25日、「5・25現地座り込み1500日集会」(主催・ヘリ基地反対協議会)が開かれた。県内外から約300人(主催者発表)が参加。「闘争を貫徹しよう」などと運動継続を誓った。

「移設反対」集会で気炎


 主催したヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「基地移転はこう着状態というのが現状だが、日米政府のさや当てに一喜一憂することなく、基地建設を止めるため、皆さんとともに勝利を勝ち取るまで闘っていく」とあいさつ。また韓国で二〇〇五年に撤去された米軍梅香里射爆場の反対運動を率いたチョン・マンギュさんら平和運動家四人からの応援メッセージ、活動報告などがあった。

 糸満市から来た福永貢介さん(36)は妻の恭子さん(35)、長女の梢子ちゃん(2)と友人ら五人で参加した。「沖縄の自然が好きで二年前に移住してきた。ジュゴンやアオサンゴの豊かな海が壊されると聞き心苦しい。反対運動にはなかなか参加できないが、節目のイベントなので駆け付けた」と話した。読谷村で医療関係の仕事に携わる比嘉義信さん(53)は「政府は後期高齢者医療制度で高齢者に負担を強いながら、巨額の税金を米軍基地建設につぎ込むのはおかしい。こんなきれいな海に新基地建設なんて絶対許せない」と声を上げた。


国への怒り島唄に込め 金城さん


 集会では、同市瀬嵩の金城繁さん(74)が三線を手に移設反対の歌を熱唱した。

 「しかさりんなよー ウチナーンチュ」(だまされるなよ沖縄の人)「ちゅくらちぇならんど ヘリ基地や」(造らせてはいけないヘリ基地を)…。島唄の替え歌に辺野古の海の美しさや、基地建設への抗議を込める。

 金城さんは「モズクを採ったり海水浴したり、この海とともに育った」。父親に十代で三線を習い、沖縄芝居の劇団で地謡を務めたことも。

 南大東島の空港建設作業員をしていた三十二歳の時、事故で右のひじから先を失ったが、三線を手放すことはなかった。ライブでは歯を折り取ったくしを右腕の先に縛り付け、弦をたたいた。

 座り込みにも参加し、移設に反対しつつ死去した知人が作詞した「ならんさヘリ基地の唄」では「金(じん)にふりんな」(金に振れるな)と歌声に力を込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805261300_05.html

 

2008年5月27日(火) 朝刊 22面

「慰霊絶やさぬ」決意/サイパンで県人追悼式

 太平洋戦争時に南洋群島で亡くなった県出身者と戦前の開拓殉難者らを供養する第三十九回追悼式が二十六日、サイパン島マッピー岬の「おきなわの塔」で営まれた。県内からの墓参団や現地関係者など約二百三十人が参列し、献花や焼香をささげた。

 今年は南洋群島帰還者会の高齢化などで、県内の墓参団が初めて百人を割った。一方、先祖の在りし日をたどろうとする若者もいて、同会理事の宜野座朝美さん(68)は「先輩たちの苦労に報いるためにも、慰霊の旅を絶やさないよう頑張りたい」と語った。

 終戦時、サイパン高等女学校の四年生だった宮里千枝子さん(79)=ペルー在住=は二〇〇二年から七年連続で参加。祖父母やいとこ、女学校の同級生ら多数の親類や友人を亡くした戦争を振り返り、「サイパンは少女時代の思い出が詰まった場所。生き残った者として、足腰の立つ間は参加し続けたい」と力を込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271300_06.html

 

2008年5月27日(火) 朝刊 23面

防衛局に解決要請/基地パワハラ

 米軍基地で働く日本人従業員のパワーハラスメント被害が相次いでいるとして、上司を訴えた元従業員の安村司さんや現職従業員ら九人が二十六日、沖縄防衛局に真部朗局長を訪ね、パワハラ防止のため第三者機関の設置と、被害を受けて自主退職した元従業員の復職を要請した。従業員らは県庁を訪れ、協力を求めた。安村さんらによると、真部局長は対応策を検討する意向を示したという。

 安村さんは、自身が受けた被害や米軍の苦情処理機関が機能していない実態を訴えた。同行した、安次富修衆院議員は基地を提供する日本政府の責任で解決するよう求めた。

 真部局長は、米軍に実情を問い合わせ、事実関係を調査した上で「何ができるか考えたい」と回答。またパワハラ問題について「一義的に米軍の問題という認識ではなく、防衛局としても相談に応じていく」と述べたという。

 安村さんは「真摯に受け止めてくれたことを感謝したい。多くの被害者を救済する第一歩になったと思う」と話した。

 県庁では仲田秀光観光商工部長が応対し、実情を把握し協力する姿勢を示したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271300_10.html

 

2008年5月27日(火) 夕刊 1面

知事、駐米大使に注文/代替施設沖合移動

 藤崎一郎駐米大使は二十七日午前、県庁で仲井真弘多知事と懇談し、基地問題などで意見を交換した。仲井真知事は普天間飛行場の移設問題について「基本的に(日米両政府の)合意は受け入れているが、微調整を念頭に進めている」と、滑走路の沖合移動の必要性に言及。藤崎大使は「できるだけ移設が早く実現するよう相談していきたい」と述べるにとどまったという。

 冒頭以外は非公開で行われた。知事は相次ぐ米軍関係者の事件・事故への対応策について、秋ごろ予定している自身の訪米で国務省や国防総省、米議会の関係者に要請する意向を示し、藤崎大使に調整役を依頼した。

 三十一日に着任する藤崎大使は、一九九五年から在米日本大使館で政務担当の公使、九九年から外務省の北米局長を務めた。

 藤崎大使は「基地問題の県民への影響、負担は承知している。引き続き県民の心を念頭に置き、沖縄の問題がどういう意味を持っているかを米側に伝え、必要に応じ協議していきたい」と抱負を語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271700_03.html

 

2008年5月27日(火) 夕刊 5面

米ヘリ宅地飛行に抗議/金武町長伊芸区長

 金武町伊芸区の住宅地上空で今月二十日から二十二日にかけ、米軍ヘリが深夜まで飛行した問題で、儀武剛町長と池原政文区長は二十七日午前、沖縄防衛局に真部朗局長を訪ね、抗議するとともに、住宅地上空での米軍ヘリ訓練の廃止を要求した。

 儀武町長は、町職員が撮影した写真を調べた結果などから、米空軍のヘリが伊芸区全体を周回したことを明らかにし、「日米地位協定で施設間移動は認められているが、空軍の演習はおかしいのではないか」と指摘。5・15メモなど過去の日米合意の記録も含めて調査し、正式文書で回答するよう要求した。米軍側から町への通報に「ヘリ訓練」と触れられてなかったことを挙げ、通報体制も問いただすよう求めた。

 池原区長は、レンジ4の暫定ヘリパッドでの離着陸により、深夜でも八〇デシベル以上の騒音が相次ぎ、夜間の無灯火飛行や暫定ヘリパッドでは消火訓練以外は行わないとの約束が守られていないなどと批判。「戦場さながらの訓練で住民は悲鳴を上げている。日本政府が毅然と対応しなければ、米軍の訓練はますます拡大していく」と危機感を表明した。

 真部局長は「夜間の住宅地上空訓練は、あまり前例がない。日米合意の案件を含め、要請にしっかり回答できるよう誠意を持って対応したい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271700_05.html

未来開け思い合流、5・15平和行進・県民大会 神奈川・米兵暴行、政府、豪女性に見舞金 沖国大ヘリ墜落、国に文書提示命令 など  沖縄タイムス関連記事・社説(5月18日から21日)

2008年5月18日(日) 朝刊 1・23面

基地爆音を糾弾怒りのこぶし/5・15平和行進 きょう合流

 【嘉手納】日本復帰三十六年目の現実を問う「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)の参加者は十七日午後、北谷町の砂辺馬場公園で「嘉手納基地の機能強化、爆音被害に抗議する決起集会」を開いた。東西両コースを歩いた県内外の参加者が、日米地位協定の全面改定や米軍人による事件・事故の再発防止などを訴えた。

 主催者を代表して大浜敏夫沖教組委員長は「殺人訓練をする米兵が街を出歩くことは、子どもを預かる教職員として不安だ。日米の壁は厚いが、平和を築くために頑張ろう」とあいさつ。開催地の野国昌春北谷町長は、五月の連休初日にF15戦闘機が未明離陸したことを挙げ「この状況を全国に伝えてほしい」と軍事優先の現実を訴えた。

 読谷村役場から会場まで歩いた西コースの酒井幸久本土代表団長は「私たちにはゆるぎない団結がある。十八日の行進で、基地は要らないと声を上げよう」と話した。

 5・15平和行進は十八日、東コースが沖縄市の県企業局コザ庁舎、西コースが北谷町役場、南コースが浦添市役所を出発。午後三時から宜野湾海浜公園で行われる「平和とくらしを守る県民大会」に合流する。


     ◇     ◇     ◇     

平和アピール東西で連帯


 【北谷】北谷町の公園で十七日開かれた嘉手納基地の機能強化と爆音被害への抗議集会。「基地の街だと実感した」「平和な沖縄を残したい」。平和行進東西両コースの参加者約千三百人が集まり、平和への思いを共有した。

 友人から話を聞いて参加した森重明子さん(31)=山口県宇部市=は、過去の沖縄旅行では経験しなかった米軍機の騒音に驚いた。「騒音が毎日かと考えると深刻だと思う。同じ米軍基地を抱える県民として、平和を伝えたい」と話した。

 二歳の娘と歩いた消防職員、小渕努さん(30)=読谷村=は二度目の参加。「米軍絡みの事件・事故のニュースを耳にするたび、子どもたちに平和な沖縄を残したいという気持ちで歩いた」と振り返った。

 韓国から初来沖した金昌坤さん(43)は「米軍が起こす強盗や暴行事件など、韓国で基地を抱える地域と沖縄の悩みは同じ。平和を強く望む沖縄の人と連帯していきたい」と話した。

 毎年、参加者を出迎えている北谷町砂辺区老人クラブの与儀正仁会長(74)は「基地外居住の米兵の騒ぎや、米軍機の騒音など地元だけで訴えても解決できない問題が多い。県内外の若者が参加し、基地問題に理解を深めることはありがたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_03.html

 

2008年5月18日(日) 朝刊 22面

戦死の画学生ら濃密な関係描く/「無言館」窪島館主が講演

 戦没画学生の作品や資料を展示している「無言館」(長野県上田市)の窪島誠一郎館主が十七日、那覇市の県立博物館・美術館で講演し、同館をスタートさせるまでの経緯について説明。「学生たちは人と人の濃密なつながりを描いた。人は他者の命に向かって何かを伝えるために生きている」と強調した。

 県立博物館・美術館で同日開幕した沖縄タイムス社創刊六十周年企画「情熱と戦争の狭間で」(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館、共催・沖縄タイムス社)の関連イベント。

 窪島館主は、戦争体験者で洋画家の野見山暁治さんと出会い、野見山さんとともに戦死した画学生の作品の所在を調べ、全国の遺族を訪ね歩いた経験を紹介した。

 その上で「画学生は『反戦平和』のためではなく、自らの愛する人を描いた。人の命は他の人によって支えられている」と強調。今回の展示で、画学生の作品と戦後沖縄の作家の作品が同時に展示されていることに触れ、「画学生の絵の真摯さに対し、戦後を生き延びた作家のつらさや大変さを感じた」と感想を述べた。

 同企画展は、十八日午前十一時―正午に教員対象の美術講座(要申し込み)、同午後一―二時に粟国久直さんのギャラリートーク(チケット入場者のみ)が行われる。企画展は六月二十九日まで。問い合わせは同館、電話098(941)8200。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_08.html

 

2008年5月18日(日) 朝刊 22面

アイヌ儀式で供養/糸満・南北の塔 戦死者に哀悼

 【糸満】沖縄戦に動員され戦死したアイヌ民族の日本兵らを追悼するアイヌの儀式「イチャルパ」が十七日、糸満市真栄平の南北の塔前の広場で行われた。北海道旭川市から参加した川村シンリツ・エオリパック・アイヌさん(川村アイヌ民族記念館長)ら県内外の五十人が、火の神に酒をささげ、アイヌの言葉でみ霊を慰めた。

 供養祭はアイヌ民族と連帯する沖縄の会(まよなかしんや代表)が主催。毎年、5・15平和活動の一環として行っており、今年で九回目。

 まよなかさんは「日本の先住民族であるアイヌと琉球民族が一緒になって、日本に住むすべての人々の権利が保障される社会をつくっていこう」と呼び掛けていた。

 川村さんは「アイヌの戦没者を沖縄の方々が祭っていただき大変ありがたい。これからも毎年、続けていきたい」と話していた。

 南北の塔は一九六六年、真栄平区とアイヌの元兵士らによって建立された。沖縄戦で亡くなった、北海道から沖縄までのすべての人々を祭っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_09.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 1面

平和を切望 雲突く声 5・15平和行進・県民大会

 本土復帰三十六年「5・15平和行進」を締めくくる県民大会(主催・同実行委)が十八日、宜野湾市の宜野湾海浜公園屋外劇場で開かれ、米軍再編に伴う基地の拡大・強化に反対し、日米地位協定の抜本的改正を求めるアピールを採択した。約四千人(主催者発表)が参加した。平和行進は三日間の日程を終了。県外からの二千人を含む約七千人が米軍基地周辺や沖縄戦跡を巡り、県内と全国、海外の市民が連帯し平和を発信することを誓った。

 曇り空の下、大会には行進を終えた労組や平和団体関係者が集結。それぞれの旗や「基地の押し付けは許さない」などの横断幕を掲げ、熱気に包まれた。

 主催者を代表して崎山嗣幸沖縄平和運動センター議長が「軍事基地の島から脱却し平和の島にするために、大きな運動を前進させていきたい」とあいさつ。開催地の伊波洋一宜野湾市長は「沖縄から基地をなくし、全国への拡散を阻止することを誓い合いたい」と呼び掛けた。

 県選出国会議員や政党代表、県外、韓国の平和団体代表らが次々に登壇。県内や全国で相次ぐ米兵による事件・事故や、日米両政府の軍事・基地政策を強く批判し、教科書検定問題や憲法改正の動きなどに懸念を表明した。

 大会アピールでは、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設や北部の基地機能強化、嘉手納基地や普天間飛行場の爆音などで「住民生活は破壊の危機に瀕しており、県民の怒りは頂点に達している」と指摘。基地の拡大強化を阻止し、日米地位協定の改正を強く求めることを確認した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_01.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 19面

未来開け思い合流/5・15県民大会

 米軍基地周辺を歩き、沖縄戦跡を巡った「5・15平和行進」。参加した七千人は、それぞれの立場で感じ、考え、意見を交わした。頻発する米兵の事件・事故、騒音などの基地被害に日常的にさらされている地域住民。県外や韓国から駆け付けた市民グループ。自衛隊のイラク派遣反対活動を続ける元自衛官。十八日の県民大会で、肩を組んで歌い、共にこぶしを突き上げ、平和を願う思いでつながった。

 米兵犯罪が相次ぐ沖縄市から参加した福山初子さん(61)は「タクシー強盗に暴行事件。復帰前と現状は変わっていない」と語気を強めた。一九七〇年、息子を身ごもっていた福山さんはコザ騒動を目の当たりにした。「おなかの子が大人になるころには平和になってほしい」と願ったが、米兵の犯罪はなくならない。「基地ある限り沖縄は平和にならない。行進の中で、県外の参加者とシュプレヒコールもやった。多くの人が理解を深めれば、基地問題はきっと解決できる」と期待した。

 宜野湾市職員、福本司さん(34)は七度目の参加。各地の参加者に普天間飛行場の基地被害を説明し、語り合った。「県外から多くの若者が参加していた。地元の若い人にも活動する意味を伝えていきたい」と話した。

 神奈川県から初参加した公務員の府川保さん(43)は「最初は、沖縄と米軍基地が融和しているように見えた」という。だが歩き続ける中で、錯覚だと気付いた。「基地が巨大過ぎて、感覚がまひしてしまう。でも、ここは日本なんだ、と思った瞬間、ぞっとした」

 神奈川でも基地の機能強化が進み、痛ましい事件も起こった。「沖縄と一緒に声を上げていく必要性を実感した」と力を込めた。

 韓国の社会派バンド「希望の歌コッタジ」。同国の平澤(ピョンテク)市でも、米軍再編による農地の強制接収や新基地建設が進む。メンバーのチョ・ソンイルさんは「政府は平和を維持する基地だというが、むしろ緊張を高め、権力を維持する道具になっている」と指摘。「今後も反基地闘争など闘いのあるところを訪れ、歌で激励したい」と笑顔で話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_02.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

「反復帰論」再構築を/「5・15」シンポ

 五月十五日の沖縄の本土復帰にちなみ、「沖縄・憲法・アジア」をテーマにしたシンポジウム「マーカラワジーガ?! 来たるべき自己決定権のために」(主催・5・18シンポジウム実行委員会)が十八日、県立博物館・美術館で開かれた。約五百五十人が参加、沖縄をとりまく現状や未来像についての各パネリストの話に耳を傾けた。

 第一部は「〈反復帰〉の思想資源と琉球共和社会/共和国憲法草案の意義」と題し、沖縄大学准教授・屋嘉比収さんが講演した。

 一九七〇年前後にジャーナリスト・新川明さんが提言した「反復帰論」や、八一年に詩人・川満信一さんが「新沖縄文学」で発表した「琉球共和社会憲法C私(試)案」を挙げ、「復帰後三十数年が経過し、住民の意識は変化したが、いまだに沖縄には日本の構造的差別がある。このような中で、いま一度、反復帰論を再構築し、次世代に接ぎ木していくことが必要だ」と強調した。

 続いて「沖縄・憲法・アジア―その政治展望」と題した第二部では、起訴休職中外務事務官の佐藤優さんが講演。沖縄独立の可能性や道州制について持論を展開した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_03.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

着陸帯移設地にノグチゲラ営巣/東村高江 中馬重夫さん撮影

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設が計画されている東村高江で、国の特別天然記念物ノグチゲラが営巣しているとみられる様子が確認された。十六日に中馬重夫さん(42)=本部町=が撮影した。

 中馬さんは「つがいのノグチゲラが追いかけっこをしていた。一日中ノグチゲラの声を聞くことができた。トンボやトカゲなどをたくさん見ることができる生き物の宝庫」と話した。

 沖縄防衛局は、ノグチゲラなど希少鳥類の繁殖期に当たるため、三月から六月までは工事を見合わせているが、測量作業などは行っている。

 ヘリパッドいらない住民の会の伊佐真次共同代表は「ヘリパッドが移設されれば、数が減っているヤンバルクイナやノグチゲラの絶滅が現実のものになってしまう。計画を白紙撤回すべきだ」と訴えている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_08.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

サンゴ再生へ思い込め 万座沖で固定作業

 サンゴ礁を再生しようと、県内外十三の企業でつくる「チーム美らサンゴ」が、今年一回目となるサンゴの植え付けを十八日、恩納村・万座ビーチの湾内で行った。

 恩納村漁協で育てたコエダミドリイシ、ヤッコミドリイシを、参加した県内外のダイバー三十五人が、一本ずつ海底の岩場にねじで固定。防護ネットをかぶせた。

 二回目の参加となる山中貴幸さん(33)=埼玉県=は「前回参加した後から、環境について関心を寄せるようになった。機会があれば、植え付けたサンゴを見に来たい」と笑顔を見せた。

 七月二十一日の「海の日」に、「チーム美らサンゴ」によるシンポジウムがある。年内のサンゴ植え付けは、六、九、十月にも行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_10.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月19日朝刊)

[裁判権放棄]

主権国家が取る行為か


 またしても日米で取り交わされた密約が明らかになった。いったい政府は、国民に説明できない秘密事項をどれだけ抱えているのだろうか。

 米公文書で分かったのは、一九五三年に米政府と合意した「重要な案件以外、日本側は裁判権を放棄する」という密約だ。

 言うまでもないが、裁判権は国家の主権に深くかかわってくる。それなのに、政府は米兵が起こす刑事事件に対し第一次裁判権を行使しないという約束を交わしたのだから、あきれてしまう。

 その密約ゆえか、五三年から五七年の約五年間に起こった約一万三千件の米兵関連事件で裁判権を放棄したのは97%、約一万二千六百件に上る。実際に裁判に付したのは約四百件しかない。

 わずか五年でこの数字だ。その後はどうなのか。想像しただけでも暗澹たる気分にさせられる。

 公文書からは復帰後の七四年七月に伊江島で発生した米兵の発砲事件についても明らかになっている。米側の要求で日本側が裁判権を放棄しており、そこには自国民さえ守れぬ政府の姿がある。

 復帰後もそうなのだから、復帰前は推し量るべきだ。

 日米安全保障条約に基づく地位協定の不平等関係をもたらした起点がそこにあるのである。

 政府は「裁判権の放棄はない」というがその説明に納得する国民はいない。真実はどうなのか。放棄した数はどれだけあるのか。政府はきちんと説明すべきだろう。

 腑に落ちない点はまだある。日本側が裁判権を行使しても、米側はその結果に対し「刑罰が軽くなっている」と見ていたことだ。

 絶対にあってはならないが、もし、米軍に配慮して司法が判決に手心を加えたとしたら、それこそ主権国家の名に恥じる行為で、司法当局も責任は免れまい。

 六〇年の安保条約改定前には米政府が密約を公にするよう求めているが、当時の岸信介首相は「外部に漏れたら恥ずべき事態になる」とし応じなかったという。

 恥ずかしいとの認識はあったようだ。それにしてもなぜことが明らかになっても政府は本当のことを言わないのだろうか。

 私たちは現状の地位協定では不平等感が残るだけで、基地所在地住民の不安と怒りは増すだけだと指摘してきた。

 裁判権だけでなく身柄拘束を含めた協定上の問題はあまりにも多過ぎるからだ。解決するには「運用改善」では無理であり、抜本的な見直ししかない。

 地位協定における政府の対応について国際問題研究家の新原昭治氏は「日本に第一次裁判権がある『公務外』の犯罪でも、日本側が放棄し、なるべく米側に譲る密約がある」と指摘。その中で政府は「国民に隠している文書や合意を表に出すべきだ」と述べている。

 沖縄返還交渉時の「沖縄密約」、有事の際の核持ち込みも公文書で分かっているのに、政府はいまだに「ない」としている。かたくなな姿勢を政府は改めるべきだ。

 嘘を積み重ねれば信頼は損なわれるだけである。そのことを政府は肝に銘じる必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080519.html#no_1

 

2008年5月20日(火) 朝刊 25面

政府、豪女性に見舞金/神奈川・米兵暴行

 【東京】二〇〇二年に神奈川県でオーストラリア人女性が米兵に暴行された事件で、防衛省が見舞金三百万円を女性に支払うことが十九日、分かった。米軍人による事件・事故で、日米間で見解が分かれるなどして被害者への補償が困難になった場合、日本政府が代わって救済する「見舞金制度」を活用するもので、数日内に支払われる見通し。

 米兵は不起訴処分となったが、その後、女性が損害賠償請求訴訟を提起。東京地裁は女性の訴えを認め、米兵に三百万円の支払いを命じたが、米兵は裁判中に帰国していた。

 日米地位協定(一八条六項c)は米兵に公務外で賠償義務が生じ、本人に支払い能力がない場合、米政府が支払うとしている。

 防衛省によると米国内の外国人請求法では、事件発生から二年以内に請求がなければ時効になると規定。民事判決が出た時点で、時効になっていたという。

 このため、同省は「地位協定で救済されない場合、国が救済を必要と認めた時に支給できる」との閣議決定(一九六四年)に基づき、女性に「見舞金」を支払うことを決めた。

 同省によると、二〇〇五年からの三年間で「見舞金」が支払われたのは九件(県内の三件含む)で、今回が十件目となる。

 女性は「米兵は私に謝罪しておらず、逃げたままだ。米兵も米軍も責任を持たず、日本で税金を払っている人の負担になるのはおかしい。米兵を日本に戻して責任を取らせるべきだ」と話した。


日本負担は問題


 新垣勉弁護士 日本政府が見舞金制度で全額補償することは評価できる。今回の事件の特殊性に基づくものでなく、一般的基準として運用されるか注目される。米側が全く負担せず、日本側が支払うことは問題。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805201300_06.html

 

2008年5月20日(火) 朝刊 24面

ヘリの影響調査へ/地デジ障害

普天間で通信事務所

 【宜野湾】宜野湾市内の一部地域で、地上デジタル放送の受信に障害が発生している問題で、沖縄総合通信事務所は十九日、宜野湾市を訪れ担当課から事情を聴いた。受信障害が米軍普天間飛行場から離着陸する米軍機の訓練の影響とみられるため、海外に派遣されているヘリ部隊などの帰還が予測される二十一日以降、市内の複数地域に受信調査専用の車両を配置し、調査する。

 宜野湾市基地政策課は、二〇〇七年十一月から四件の苦情が市に寄せられていると説明した。

 同事務所の担当職員は、県外では受信の良好な地域から障害の生じている地域への共同ケーブルが整備されているとした上で、「普天間飛行場が原因なら、対策は防衛省の協力が必要。那覇防衛局と情報を共有していきたい」と話したという。

 沖縄防衛局は「地方自治体から要請があれば、具体的な状況を確認した上で法律に基づいて対応したい」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805201300_07.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 29面

基地内労働の被害・支援者/パワハラ根絶へ会結成

 米軍基地で働く日本人従業員へのパワーハラスメントが相次いでいるとして、当事者や関係者は二十日、「基地労働者パワハラ被害者及び支援者の会」を結成した。同日までに従業員や支援者七十人が賛同している。設立の準備段階で、各職場で実施したアンケートでは、回収した六十三人のうち二十六人が「パワハラ被害を経験した」と回答。うち十一人が「自殺も考えた」とするなど深刻な実態も浮き彫りになった。

 同会では被害根絶のため、当事者と支援者が連携し、関係機関などへの訴えを強化していく方針だ。

 同日、北中城村内で開かれた結成総会では、パワハラ被害を受けたとして上司を提訴している元従業員の安村司さんを代表に選出。安村代表は「基地従業員の雇用主は沖縄防衛局だが、実際は米軍に雇われているのと同じだ。人事権を米軍が握っている以上、防衛局も労組も限界があり、多くの仲間が被害に遭っている」と指摘。「支援者の力を借り、苦しんでいる人を助けたい」とあいさつした。

 同会では、独自にアンケートを進めながら、防衛局のほか、全駐労、沖駐労の両組合などに徹底調査を求めていく。その上で、会員同士の連携強化で、基地従業員の労働環境の実態を明らかにし、相談窓口の設置など具体的な救済策を検討する。

 参加した男性は「上司から理不尽な命令を受け、事実無根の始末書にサインを強要された。人事部門に弁明書を出したが、(どちらの言い分が正しいか)判断するのは、命令を出した上司と説明され、精神疾患になった」と声を震わせた。別の男性も「身に覚えのないことで文書を作成され、数カ月の出勤停止を命じられた。声を上げることで社会問題として提起したい」と訴えた。


     ◇     ◇     ◇     

63人中26人「経験」・11人「自殺考えた」

職場内調査


 「基地労働者パワハラ被害者及び支援者の会」が設立準備の一環で実施したアンケートでは、回収した六十三人中約四割の二十六人が被害経験があると回答。うち十人が現在も時々、または頻繁に受けていると答えた。回答者の約二割に当たる十一人がパワハラ被害で自殺を考えた、または実際に自殺未遂をしたと回答した。

 被害に遭い、過去に体調を崩した、または現在も崩していると答えた人も二十四人に上った。

 また職場で自分以外にパワハラを受けている人を知っているかとの問いには、二十五人が知っているとした。

 同会の安村司代表は「思っていた以上に、非常に深刻な状況だ。サンプル数は少ないが、公正を期すため各職種の各職場でランダムに調査した結果だ。これ以上被害者を増やさないために、職場の環境改善に向けて声を上げていきたい」と話した。

 アンケートは、同会設立の趣旨に賛同する従業員らが、この一週間で百数十人に配布。約百人から回答があったが、数十人分が会に届いておらず、手元にある六十三人分について、まとめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_01.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 1面

国に文書提示命令/沖国大ヘリ墜落

 二〇〇四年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落をめぐり、那覇市の長嶺哲さん(42)が国を相手に、日米両政府の協議内容を記した文書の公開を求めた訴訟の控訴審に絡み、福岡高裁(西理裁判長)は二十日までに、国側に文書の不開示部分を裁判所に提示するよう命じた。

 決定理由で同高裁は「文書を所持する国の任意の協力が得られない以上、(不開示部分を)裁判所が直接見分する術がなければ、一方当事者の国や諮問機関の意見に依拠してその是非を判断せざるを得ず、最終的な判断権を裁判所に委ねた制度の趣旨にもとること甚だしい」とした。

 〇六年十一月の一審福岡地裁判決は「米側の同意なく公表すれば、米国との信頼関係が損なわれると容易に予想される」などとして、国側の主張を踏襲する形で長嶺さんの公開請求を退けていた。

 NPO法人・情報公開クリアリングハウス(東京)の三木由希子理事は「外交・防衛に関する情報の非公開規定は、行政側に広く裁量が認められており、司法に公開を求めて争う場がありながら、裁判所は情報の中身を見ずに判断している。今回の決定は画期的な判断だ」と話している。

 外務省は「(裁判官が非公開で文書を見分するインカメラ審理は)情報公開法では認められていない手続きだと考えており、法務省とも相談して異議を申し立てたい」としている。


[ことば]


 沖国大ヘリ墜落事故 2004年8月、米海兵隊所属の大型輸送ヘリコプターが沖縄国際大(宜野湾市)に墜落、炎上し米兵3人が重軽傷を負った。学生や住民にけがはなかったが、ヘリの部品や壊れた校舎のコンクリート片が周辺民家などにも飛散した。原因調査や捜査をめぐっては米軍側が県警の現場検証を拒否するなど批判を呼んだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_02.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 28面

「集団自決」で創作劇/志真志小で来月上演

 宜野湾市立志真志小学校(喜納裕子校長)で、慰霊の日(六月二十三日)に向けた特設授業で上演する創作劇「ヒルサキツキミソウ」の準備が進められている。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をテーマにした物語で、日本軍の命令で、家族に手をかけざるを得なかった史実を、児童や教諭らが演じる。上演は六月二十日午前十時から同校体育館で。(平良吉弥)

 脚本を書いた同校の宮城淳教諭(55)は「『集団自決』で亡くなった人たちは、どんなに悔しくても、今はもう訴えることができない。犠牲者の気持ちになって演じることで、命や平和の大切さを感じてほしい」と話している。

 二十年以上前から沖縄戦や対馬丸についての物語を書いてきた宮城教諭。十作目となる今回は、高校歴史教科書から日本軍の強制を示す記述を削除した文部科学省の教科書検定問題を受け、創作を思い立った。

 「集団自決」のあった島から、犠牲となった三人の子どもの霊が宿る石を女子児童が持ち帰り、学校の給食室に隠したことからストーリーが展開する。

 米軍の艦砲射撃が始まり、日本軍から手りゅう弾が渡され、軍命で家族が命を絶つ直前の場面などを子どもやその両親の霊を通し、現代の子どもたちが「集団自決」の実相に触れる。

 いじめ、ドメスティックバイオレンス(DV)など現代の問題も取り上げ、命や人権の大切さも訴える。

 四年生から六年生までの児童二十二人や喜納校長をはじめ、教諭ら約十人が出演する。中城小学校音楽教諭の佐渡山安信さんが作曲した歌を約六百六十人の全児童と教職員が合唱し、保護者らに披露する。

 二十日に志真志小で行われた初げいこで宮城教諭は「集団自決」で首にけがを負った幼い少女の写真や沖縄戦の「集団自決」で亡くなったとみられる住民たちの写真を児童に示しながら、当時の状況を説明。「『集団自決』で一家全滅のケースもある。亡くなった人の気持ちになり、一生懸命練習しみんなに伝えましょう」と訴えた。

 六年生の平良佳大君(12)は「曾祖母が八歳の時に竹やりで訓練したり、一生懸命走って逃げた話を聞いた。命令さえなければたくさんの人が亡くならなかったと思う」と話した。

 五年生の高良利乃さん(10)も「戦争の話は怖いけど、せりふをきちんと覚えて上手に演技したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月21日朝刊)

[暴行事件見舞金]

「逃げ得」は許されない


 神奈川県で二〇〇二年、オーストラリア人女性が米兵に暴行された。女性は事件後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にさいなまれながらも、三月に北谷町で開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」に参加し勇を鼓して演壇に上がった。

 「私は性犯罪の被害者。私は恥ずかしいことありません。私は悪くない」―被害女性の痛切な訴えは参加者の心を揺さぶった。

 事件から六年。性暴力の被害を受けたこの女性に対し、日本政府は三百万円の見舞金を支払うことを決めた。

 被害女性にようやく救済の手がさしのべられたことは歓迎すべきことである。ただ、どこか釈然としない。

 被害女性は「米兵は私に謝罪しておらず、逃げたままだ。米兵も米軍も責任を持たず、日本で税金を払っている人の負担になるのはおかしい」と語っているという。今回の決定を評価しつつ、それでもなお釈然としない感情が残るのは、被害女性が指摘した問題があるからだ。

 事件後、加害者の米兵が不起訴処分になったため、女性は損害賠償請求の民事訴訟を起こした。東京地裁は〇四年十一月、女性の訴えを認め、米兵に三百万円の支払いを命じた。

 だが、米兵は裁判中に帰国し、賠償金を支払っていない。

 米兵などによる公務外の事件・事故は、原則として加害者個人が賠償責任を負うことになっている。加害者が本国に逃げ帰り、賠償がうやむやになるケースが以前は目立って多かった。

 被害者救済のためには、賠償能力のない米兵や賠償金支払いに応じない米兵に代わって、日米両政府が責任を持って損害賠償に当たる仕組みが不可欠だ。そのような制度は現行の地位協定にもあることはある。

 公務外の不法行為に対して米軍は、日本側が作成した事件の報告書に基づいて被害者に慰謝料を支払うことになっている。この規定自体、恩恵的で不十分なものだが、今回は、民事裁判の判決が出た時点で米国内法(外国人請求法)の時効が成立していたという。

 このため、政府は一九六二年の総理府令に基づく見舞金制度を活用して被害女性を救済したというわけである。

 同制度は、補償金や慰謝料の額について日米双方の主張に隔たりがあったり、米兵の故意、過失などが立証できない場合に適用されるという。

 九五年の米兵による暴行事件を契機に地位協定問題が浮上し、日米両政府は、米兵による公務外の不法行為についていくつかの運用改善策を打ち出した。それによって被害者の不利益が大幅に改善されたのは間違いないが、まだ十分だとはいえない。

 被害者救済のために政府が、支払いのないまま「宙に浮いた慰謝料」の穴埋めをしたのはいいとしても、本来支払うべき加害者や米軍の賠償責任を結果として不問にしたのは腑に落ちない。

 制度の不備な点を洗い直し、再度改善に努めてもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080521.html#no_1

基地負担今もなお、きょう復帰36年 「5・15平和行進」、1日め1200人余、2日め2000人参加 暴行米兵に懲役4年など  沖縄タイムス関連記事・社説(5月15日から17日)

2008年5月15日(木) 朝刊 1・27面

基地負担今もなお/きょう復帰36年

 沖縄県は十五日、本土に復帰して三十六年を迎える。国からの九兆円を超える振興開発事業費による振興策が図られる一方、米軍専用施設の約75%が集中する基地負担や米軍による事件・事故が多発する構図は変わらないままだ。県民所得は全国最下位、失業率は全国の約二倍で推移しており、県が目指す「経済の自立」への模索が続く。

 普天間飛行場の移設をめぐっては、移設先での環境影響評価(アセスメント)が進む一方、滑走路位置の沖合移動を求める県、名護市と政府との溝は埋まっていない。

 今年も米軍による事件・事故が相次いだ。女性暴行やタクシー強盗などの事件のほか、嘉手納基地での未明離陸など県民生活を無視するかのような被害は後を絶たない。仲井真弘多知事をはじめ、県内の各政党や関係団体などが強く求めている日米地位協定改定の実現に向けた取り組みが求められる。


     ◇     ◇     ◇     

「本土並み」遠く/きょう復帰36年


 「基地も所得も本土並みになっていない」。本土復帰して十五日で三十六年目を迎える沖縄。基地も、雇用も、所得水準も本土との格差が埋まらない現状に、復帰前を知る人々から不満の声が聞かれた。一方、「五月十五日」そのものを知らない若者も。県内各地で復帰への思いを拾った。

 今年の「5・15平和行進」は十六日から始まる。同実行委は「議論はいろいろあったが、多くの人が参加しやすい日程を優先した」と説明する。

 沖縄県祖国復帰協議会に長くかかわった石川元平さん(70)は、現在の運動を一定評価しながらも「五月十五日の本質、根本的意味を考えてほしい」と話す。復帰は「勝ち取った」ものである一方、基地の存続を許したことで「欺瞞に満ちたもの」とみる。

 県民が求めた「核も基地もない平和な沖縄」でなく、政府が約束した「核抜き本土並み」すら現在まで果たされていない、と語る。「沖縄が二度と捨て石にならないこと、被害者にも加害者にもならないことを誓う」と五月十五日を位置付けている。

 前県婦人連合会会長で顧問の小渡ハル子さん(79)は「やっと復帰した、暮らしはよくなると思った」と振り返る。基地も所得も本土並みになっていない、と憤る。

 小渡さんは婦連会長として、昨年から今年にかけ教科書検定問題や米兵による暴行事件に抗議する県民大会の実行委員として、奔走。教科書検定問題も地位協定改正も、何度要請しても国は動かない。「裏切られた。期待が大きかっただけに残念」と悔しさを語る。

 北谷町の松田正二砂辺区長(62)は、復帰時「日本人並みの権利が与えられ、やっと人間になれる」と涙を流したというが、米軍嘉手納基地から離着陸する戦闘機の騒音に悩まされる日が続いている。「尊厳は回復されず、むしろ逆行している」と語気を強めた。

 一方、那覇市の医療技術職員、牧泉さん(23)は「復帰の日だとは知らなかった」。旅行が好きといい、「『内地』に行くという感じはしない。県外との差はそんなに感じない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151300_02.html

 

2008年5月15日(木) 朝刊 27面

平和願い 体験絵本に/南風原さんら元教諭3人

 県退職教職員会女性部(大嶺初子部長)と県教職員組合(沖教組)教育研究所は十五日、沖縄戦の体験や平和の尊さを訴える平和絵本三冊を発刊する。「火種を消すな」「サトウキビがたべたい」「古鉄ひろい」の三冊で、復帰三十六年に合わせた。自身や恩師などの体験を基に作製した三人の元中学教諭らは「子どもに戦争の悲惨さを伝えていきたい」と話し、平和学習での積極的な活用も呼び掛けている。

 三人は二年前に始まった沖教組教育研究所が主催する「平和絵本作り講座」を受講し、昨年十二月から本格的に制作を始めた。

 南風原春子さん(71)=糸満市=は、糸満市摩文仁で日本兵から壕を追い出された自らの体験を「火種―」につづった。

 「サトウキビ―」を執筆した松原慶子さん(68)=糸満市。小学校時代の恩師で、元ひめゆり学徒の上原当美子さん(80)の体験を何度も聞き取り、完成させた。「戦争体験を伝えるのは私たちの務めだと思った」と力を込めた。

 「古鉄―」の作者のたかはしのぶこさん(65)=豊見城市=は戦後、不発弾や砲弾の破片を拾い集めた、いとこの体験をまとめた。

 一冊千円(セットで二千四百円)。問い合わせは学校用品、電話098(867)3683。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151300_03.html

 

2008年5月15日(木) 朝刊 2面

再編交付 13億円内示/5市町村に1次分

 【東京】政府は十四日までに、在日米軍再編への協力に応じて関係自治体に支払う二〇〇八年度再編交付金の一次内定額を固め、関係自治体に通知することを決めた。全国三十八市町村に六十一億六千八百万円を内定。県内分は米軍普天間飛行場の移設や陸上自衛隊の米軍キャンプ・ハンセン共同使用、那覇港湾施設の移設で、五市町村に計十二億九千五百万円を配分する。

 このうち、普天間飛行場移設先の名護市に九億七千万円、宜野座村に一億六千百万円をそれぞれ内定。環境影響評価(アセスメント)調査の開始に伴い、移設完了時に支払われる上限額の25%分を支給し、二次内定分で追加される見込み。

 名護、宜野座への再編交付金をめぐっては、政府が三月に「理解と協力が得られた」として凍結を解除。まだ執行していない〇七年度分約四億六千万円(名護市約三億九千七百万円、宜野座村約六千七百万円)も配分される予定。

 一方、陸自のキャンプ・ハンセン共同使用では、金武町に八千五百万円、恩納村に三千三百万円、宜野座村に二千万円をそれぞれ内定。三月に共同使用訓練が始まったことで「再編の完了」と見なされ、上限額が支給される予定。本年度分は最終的に三町村で二億円となる見通し。

 そのほか、那覇港湾施設(那覇軍港)の移設受け入れを表明している浦添市に二千六百万円を内定。最終的には前年度と同額の三千七百万円となる見込みだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151300_06.html

 

2008年5月15日(木) 夕刊 1面

グアム移転 5000人増検討/米軍再編

 在日米軍再編に伴いグアムに移転する在沖米海兵隊の規模について、二〇〇六年に日米両政府が合意した八千人から一万二千八百四十九人への増加が検討されていることが十五日、分かった。北マリアナ諸島のサイパンで発行するマリアナ・バラエティーが同日、「〇八年四月グアム・北マリアナ諸島軍移転に関する環境影響評価(アセスメント)準備書」を引用して報じた。

 移転する軍人の家族も、当初予定の九千人から一万三百五十人に増加するとしている。同計画は一〇年QDR(四年ごとの国防計画の見直し)に提案される予定。防衛省は「まったく聞いていない」としている。

 同紙によると、北マリアナ諸島地方議会に提出された報告書では、民間人五千人のグアム移転も盛り込まれているという。アセスは一〇年に完了する見通し。

 同準備書では「軍事施設や隊員の移転、最大限の運用や効率的な土地利用など、複数の配置計画が検討されている」と報告。沖縄の第三海兵遠征軍(MEF)の隊員一万二千八百四十九人と家族一万三百五十人の移転を一四年までに完了するため、グアムで施設の建設や改築も検討している―と記述されているという。

 日米両政府は〇六年五月一日、外務・防衛両閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で在日米軍再編の最終報告に合意。グアム移転の海兵隊は八千人と決めていた。

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2008年5月15日(木) 夕刊 1面

ガマに誓う平和の歩み/復帰36年 行進参加者

 5・15平和行進(主催・同実行委員会、沖縄平和運動センター)に参加するために沖縄に来た大阪市職労ユース部の組合員約六十人が十五日、南城市玉城の糸数壕(アブチラガマ)を見学した。沖縄県が本土復帰して、この日で満三十六年。参加者は四日間にわたり、戦争の記憶と米軍基地の存在に苦悩する沖縄の現状を学ぶ。

 参加者らは、狭い入り口につまずきながら洞穴に入ると、足元を懐中電灯で照らし、ガイドの説明に聞き入った。米軍の攻撃で焼け焦げた天井や壁について説明を受けると「うわあ」と驚きの声を上げ、全員が電灯を消して暗闇に沈むと、水の滴る音が響く中で一行はしんと静まり返った。

 初めて沖縄を訪れた小河原あずささん(22)は、祖母の兄が沖縄戦で亡くなった。大阪を出発する前、長崎県・五島列島に住む祖母に「沖縄を見てくるね」と電話で伝えると、祖母は、兄が母親とほおずりをして故郷を出発した当時の様子を語った。祖母は「よろしく頼む」と涙声で話したという。

 小河原さんは十四日に訪れた「平和の礎」に名前を見つけ、「戦争が過去のものでないと実感した」という。一方で、糸数壕では軍人が洞穴の奥に居座り、住民は危険な入り口付近に追いやられていたことも知った。

 小河原さんは「恐怖で鳥肌が立った。平和と簡単に言うが、平和の本当の重みは今まで分かっていなかったのかもしれない。平和行進で基地を見る前に、沖縄の過去を学べてよかった」と話した。


5・15平和行進 今夕結団式


 5・15平和行進は、十五日午後六時から、名護市役所前広場で結団式を行い、十六日午前九時、三コースに分かれて出発する。十八日午後三時、三コースが宜野湾海浜公園で合流し「復帰三十六年 平和とくらしを守る県民大会」を開く。

 東コースは、名護市辺野古から宜野座村、金武町、沖縄市、北中城を通る。西コースは名護市役所前を出発し恩納村、読谷村、嘉手納町の沖縄防衛局、北谷町などを回る。両コースは十七日午後、北谷町で合流し「嘉手納基地の機能強化、爆音被害に抗議する決起集会」を開く。南コースは、那覇市役所前をスタート、糸満市、南城市、南風原町、浦添市などを行進する。

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2008年5月15日(木) 夕刊 5面

復帰36年 沖縄駆ける/写真家 名護から発信

 【名護】「沖縄の犠牲で成り立つ不条理が解決されていない」―。一九六○年代から沖縄の米軍基地などを撮影してきた写真家の栗原達男さん。世界各国を駆け回ってきたが、七十歳を迎え、米軍普天間飛行場の移設問題で揺れる名護に先月移り住んだ。復帰後三十六年を経ても依然、基地が集中する沖縄。「生活者として沖縄を撮りたい」と決意を新たにしている。

 栗原さんは大学時代の六一年、八重山の島々を訪ねたのが沖縄との出会い。朝日新聞を経てフリーとなり、七○年に「写真報告オキナワ1961―1970」を出版した。

 ベトナム戦争が激しさを増していたころ、キャンプ・シュワブなど北部の米軍演習場では“ベトコン”の標的を撮影。嘉手納では、B52爆撃機のごう音に耳をふさぐ母子の姿―。

 県民が基地撤去や大幅な整理・縮小を願った復帰を経ても基地被害は変わっていない。

 普天間飛行場の辺野古移設には「結果的に米軍の思い通りになってしまう。基地集中が既成事実のようになっている」と指摘。

 世界百カ国で撮影してきたが「常に沖縄の事が頭にあった。基地問題を避けることはできない」と四年ぶりに住む名護を拠点に取材を続けたい、と誓っている。(知念清張)

 

     ◇     ◇     ◇     

韓国バンド 行進参加/社会派のコッタジ「平和を守る」


 韓国の民主化運動で活躍し、現在も市民運動を歌で支える人気バンド「希望の歌コッタジ」と、伝統芸能集団「トヌム」のメンバー十一人が、5・15平和行進に参加するため十五日午後、来沖する。五―六日間滞在し、各コースを歩くほか、県内の市民団体と交流する予定。メンバーらは「米軍基地を抱える韓国と沖縄が連携し、共に平和のメッセージを発信したい」と意気込んでいる。

 「コッタジ」(平和コンサート実行委提供)は一九九二年結成。社会派バンドの中では韓国一の人気という。今回は平和フォーラム(本部・東京)が呼び掛け、来沖が実現した。

 バンド元代表で文化活動家のイ・ウンジンさんは、「世界全域で平和と環境を守る闘いは続いている。沖縄に集まり平和行進する多くの人々を見ると、小さな流れが川となり大きな海になるのだと確信する」と話した。

 十九日には桜坂劇場で県内ミュージシャンと共演するコンサートも開かれる。


  

本土復帰前に撮影した米軍基地や開発現場の写真を前に新たな取材活動に意欲を見せる栗原達男さん=14日、沖縄タイムス北部支社

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2008年5月15日(木) 夕刊 5面

地デジ 米軍ヘリで障害/普天間飛行場周辺地域

 【宜野湾】宜野湾市の米軍普天間飛行場周辺でヘリや飛行機が飛行する際、地上デジタル放送のテレビ画面が乱れるなどの障害が発生していることが十四日、分かった。地デジ放送では、アンテナ近くで物体が動くと、映像が途切れる現象が起きることから、テレビ画面の乱れは米軍のヘリなどの訓練によるものとみられている。市はアナログから地デジに切り替わる二〇一一年以降、テレビ画像の障害が増えることを懸念、実態を調べる方針。(銘苅一哲)

 沖縄総合通信事務所によると、地デジ放送はアンテナ付近の空中で物体が動くと、信号がさえぎられる「フラッター現象」が発生。受信映像が途切れて画像が消えたり、止まるなどの障害を引き起こすことがあるという。

 同市基地政策課には〇七年末ごろから、市内の嘉数、野嵩、大山の住民から「ヘリが飛ぶときに地デジ放送が途切れる」などの苦情が寄せられている。普天間飛行場から離れた地域からの苦情はないという。

 飛行場の滑走路延長線上に位置する同市の野嵩地域。宮城恵子さん(40)は二年前に地デジ放送用のテレビに買い替えたが、ヘリや飛行機が家の上空を通過すると映像と音声がストップするという。

 「高い買い物だったけど、きれいな映像を見られると思い楽しみにしていた」と話す宮城さん。子どもたちの好きなバラエティー番組を見ながらの家族だんらんは、米軍機が通るたびに邪魔される。「騒音だけでも迷惑なのに、家族の楽しみまで奪ってほしくない」と憤った。

 沖縄総合通信事務所によると、県外の米軍三沢基地(青森県)、航空自衛隊千歳基地(北海道)周辺で、国の補助によって受信が良好な地域のアンテナから、障害の発生している地域へケーブルをつなぐ対策が取られているという。同事務所は県内で同飛行場や嘉手納基地周辺で障害が出る可能性はあるとしているが「実態把握や具体的対策のめどは立っていない」としている。

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2008年5月15日(木) 夕刊 5面

米兵、基地内に転居/砂辺の騒ぎ

 【北谷】北谷町砂辺の民間地域に住む米兵が未明まで騒いでいた問題で、住宅を管理する不動産会社は十四日、事態を知った男性米兵の上司の決定で今週中に米兵が基地内に引っ越すことを確認した。不動産会社の社員が同日、周辺住民に報告した。米軍人男性の上司は周辺住民に謝罪することを希望しているという。

 説明を受けた住民によると、家主から米兵の退去を求められた不動産会社は、米兵の上司に連絡し苦情内容と退去要望などを伝えた。状況を把握した上司は、住居からの退去と基地内への転居を決めたという。

 住民らは四月二十七日と五月十一日に沖縄署に通報し、米兵らに注意していた。同署は十三日に在沖海兵隊や空軍、陸軍へ地域住民に迷惑をかけないよう指導することを申し入れた。

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2008年5月15日(木) 夕刊 5面

ドル偽造 米兵有罪/那覇地裁判決

 米二十ドル札を偽造・使用したとして、外国通貨偽造・同行使罪に問われた在沖米海兵隊キャンプ・キンザー所属の一等兵フィリップ・シー・スコット被告(20)に那覇地裁の〓井広幸裁判長は十五日、「判別のつきにくいタクシーで使うなど犯行は計画的で巧妙」とする一方で、「被害は全額弁済され、反省している」などとして、懲役三年執行猶予四年(求刑懲役三年)の判決を言い渡した。

 判決などによると、スコット被告は昨年十一月、基地内の自宅で、パソコンのプリンターを使って本物の二十ドル札を四十二枚複写。同月十日と十二日、浦添市内の飲食店やタクシー運賃の支払いに計四回、八枚使用し、それぞれ釣り銭を受け取った。

 動機について、スコット被告は四月の初公判で「米国にいる婚約者への生活費の送金や、パーティー用の礼服を買うため」と説明していた。

※(注=〓は「吉」の旧字体)

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2008年5月16日(金) 朝刊 1面

平和実現訴え31回目の行進/きょう出発18日合流

 【名護】県内の米軍基地や沖縄戦の戦跡などを歩き、平和や基地問題について考える「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)結団式が十五日、名護市役所前広場で開かれた。県外からの約七百人を含む約八百人(主催者発表)が参加。十六日から始まる行進に向け気勢を上げた。行進は今回で三十一回目。

 実行委員長の崎山嗣幸沖縄平和運動センター議長は結団のあいさつで「米軍再編で軍事要塞化する北部の基地、基地の爆音被害に苦しむ住民、そして基地機能強化による米兵の事件・事故。これが本土復帰してから三十六年目の沖縄の現実だ。教科書検定問題など、沖縄戦の歴史を歪曲することも許してはならない。平和な島を取り戻すために全国の皆さんの力をお借りしたい」と話した。

 行進は三コースに分かれて名護市辺野古(東)、名護市役所(西)、那覇市役所(南)をそれぞれスタートする。最終日の十八日に宜野湾市海浜公園屋外劇場で合流し、午後三時から「復帰三十六年 平和とくらしを守る県民大会」を開く。

 十五日は八重山でも平和行進と地区集会が行われた。宮古は十八日に行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161300_02.html

 

2008年5月16日(金) 朝刊 2面

脱走米兵情報 政府にも提供/出国防止へ日米合意

 【東京】日米両政府は十五日の合同委員会で、米側から日本側への脱走米兵に関する通報体制について協議した。米政府が都道府県警に逮捕要請すると同時に、日米合同委員会を通して逮捕要請の写しを日本政府に提供し、脱走兵の無許可出国を防止する対策を取ることで合意した。

 米側は脱走兵を認定後、直ちに関係都道府県警に逮捕要請し、可能な限り脱走兵の氏名、生年月日、国籍、階級、写真などの関係情報を含めることでも合意した。

 脱走米兵をめぐっては、横須賀市のタクシー運転手強盗殺害事件で逮捕された脱走米兵について、事件前に日本側へ通知がなかったことから、日米が未然防止策を検討していた。

 両政府は、四月十一日、在日米軍に所属する米兵が「脱走兵」と米側に認定された場合、すべてのケースで日本側の関係都道府県警に通報・逮捕要請することで基本合意していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161300_04.html

 

2008年5月16日(金) 朝刊 2面

「先端医療施設」変更へ/金武・ギンバル訓練場跡地計画

町と国、地域型を検討

 【東京】金武町の米軍ギンバル訓練場の跡地に、米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)で整備が計画されていたがんの早期発見・治療が可能な「先端医療施設」が、病院経営の見通しが厳しいことから、地域を対象とした一般の医療施設へと機能を変更する方向で、町と内閣府などが検討していることが十五日までに分かった。

 同町の跡地利用計画は、がんの早期発見・治療が可能な先端医療施設の整備を琉球大学と連携して進め、PET―CT(陽電子放射断層撮影装置)や、県内で設置例がない外科手術を伴わないFUS(集束超音波装置)など先端医療機器を導入する構想。

 だが、先端医療機器が扱える専門性の高い医師にかかる人件費や、数年後、新たな医療機器が出た場合に再び導入する費用など、高額な維持管理費が必要になる。

 先端医療の利用者の推移など病院経営の見通しを懸念する見方もあり、機能変更の案が打ち出された。

 本年度から始まった「特定健康診査」制度を踏まえた一般的な検診センターやメタボリック対策機能を備え、気軽に住民が足を運べる「地域還元型」の病院への代替案が浮上している。

 内閣府は本年度予算で、「ふるさとづくり整備事業」の関連経費として十五億六千九百万円を計上。町はがんの先端医療施設を核とした跡地利用計画を進めていた。

 沖縄タイムス社の取材に対し、金武町は「医療施設の内容については、現在検討中である」とコメントした。

 内閣府は「町関係者が目指すべき将来像を議論する中で構想が変更することもあり得る。事業主体である町の判断であり、内閣府として支援する立場に変わりはない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161300_05.html

 

2008年5月16日(金) 夕刊 1・7面

内実問い平和行進 3コースに1200人余参加

 本土復帰三十六年を迎え、沖縄から平和を発信する「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)が十六日午前、スタートした。県内外から計千二百二十五人(主催者発表)が参加し、名護市辺野古、名護市役所、那覇市役所の三カ所を出発。本土復帰の内実を問い、米軍基地の県内移設や憲法改正への反対を訴える三日間の歩みを踏み出した。

 一九七八年に始まった平和行進は今年で三十一回目。参加者は三コースに分かれ、米軍基地や南部戦跡などを回る。最終日の十八日、宜野湾市海浜公園野外劇場で開かれる「5・15平和とくらしを守る県民大会」で合流する。東コースは、変わらぬ米軍基地の重圧に警鐘を鳴らしながら、名護市辺野古をスタート。上江洲由直団長は「三日間の行進で辺野古の海を守り、基地を撤去させる声を上げ続けよう」と決意を示した。

 名護市役所を起点にした西コースでは、沖縄平和運動センターの当山勝利副議長が「西コースでは美しい海が見られる。しかし基地のある東海岸も感じながら歩いてほしい」と呼び掛けた。沖縄戦の激戦地となった本島南部を巡る南コースは那覇市役所から歩きだした。國吉司団長は「南コースは歴史的教訓を学ぶ道。軍は住民を決して守らないということを再確認しよう」と訴えた。


     ◇     ◇     ◇     

沖縄歩く 平和願い

韓国一行 連携訴え歌舞


 「新たな基地負担は許さない」。31回目の「5・15平和行進」が16日、3コースに分かれて始まった。国内だけでなく韓国からも集まった1200人余りの参加者は、新たな基地建設予定地や日々、基地被害を受けている土地、63年前の戦場を間近に見て、感じる。戦争や平和を考え訴えるための3日間にわたる歩みを踏み出した。


東コース

5・15行進スタート


 【名護】東コースは米軍普天間飛行場の代替施設建設予定地の名護市辺野古からスタートした。約四百四十人の参加者は、新たな基地の建設に反対し、「新たな基地負担は許さない」と、決意を込めて歩を進めた。東コースはこの日、金武町までの十八キロを歩く。

 午前八時すぎ、新基地建設が進む辺野古の海岸に、県内外の参加者が続々と集まりだした。今回は、沖縄と同じく米軍基地のある韓国からも約二十人が参加。出発式では、「トヌム」や「希望の歌コッタジ」のメンバーが民族舞踊や歌を披露し、国境を超えた平和を訴えた。

 トヌムのイ・チャニョンさんは「県民と一緒に真実の平和を築きたくて参加した。アジアに生きるすべての人たちが連携して、新基地建設に反対したい」と、意気込みを語った。


西コース

「憲法守る」気勢上げ


 【名護】名護市役所前広場には、西コースの参加者約三百七十人が集まり、出発式では「平和憲法を守ろう」などとシュプレヒコールで気勢を上げた。フォーラム平和の藤本泰成副事務局長は連帯あいさつで「軍隊の本質は暴力的なもの。基地撤去を求めて皆さんとともに戦いたい」と訴えた。

 兵庫から参加した井上奈美さん(26)は「日焼け、雨天対策はばっちり。平和活動に力を入れているので、行進で何かを感じたい」と話した。

 午前九時半ごろに出発した一行はこの日、恩納村の万座ビーチまで約二一・六キロを歩く。


南コース

「命どぅ宝」原点振り返り


 那覇市役所前で開かれた出発式には、南コースを歩く四百十五人が参加。鉢巻きを締め、「命どぅ宝」や「軍事基地撤去」などのゼッケンを着けて出発した。

 5・15平和行進実行委員長の崎山嗣幸・沖縄平和運動センター議長は「復帰前も後も、沖縄の現実は何ら変わらない。平和を取り戻すため運動を高めていこう」とあいさつ。

 参加者は「頑張るぞ」と気勢を上げ、糸満市のひめゆりの塔までの二〇・五キロの行進へ歩きだした。

 山梨県中央市の浅川幸一さん(45)は二十年ぶりに参加した。「若いころは燃えるものがあったが、年を取ると少しずつ保守的になってしまう。平和の原点をもう一度振り返りたかった」という。「街の風景は一変したが、沖縄の人々の平和を願う気持ちはまったく変わっていない。六十三年前に南部へ逃れていった住民を思いながら、気持ちを新たにしたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161700_01.html

 

2008年5月16日(金) 夕刊 1面

暴行米兵に懲役4年/キャンプ瑞慶覧軍法会議

司法取引で3年に

 二月に本島中部で起きた米兵暴行事件をめぐり、県警に強姦容疑で逮捕された後、被害者の告訴取り下げで不起訴処分となった在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット二等軍曹(38)の高等軍法会議が十六日、キャンプ瑞慶覧で始まり、同軍曹は少女への暴力的性行為を認めた。八年の求刑に対し、判事は懲役四年を言い渡した。しかし、司法取引で一年猶予となり、三年の懲役が確定した。

 ハドナット二等軍曹は十六歳未満の少女への強姦や、誘拐、偽証など五つの統一軍法典違反に問われていた。このうち、十六歳未満への暴力的性行為を認めた。司法取引が成立し、残りの四つの罪については検察が取り下げた。

 検察側が八年の懲役を求めたのに対し、弁護側は九カ月以内を主張していた。

 法廷でハドナット二等軍曹は「被害者や家族、日本の人たちに申し訳ない。自殺も考えた」と謝罪した。

 軍法会議は「高等」「特別」「簡易」の三種類があり、高等軍法会議は最も重い罪に適用される。公判では、米軍の中佐が判事を務めた。

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2008年5月16日(金) 夕刊 7面

沖縄戦資料ネットで/19日から 内閣府が1480点全文

 【東京】内閣府の沖縄戦関係資料閲覧室は十九日から、利用者の利便性向上のため、各省庁が所管する公文書の全文をインターネットで公開する。公文書の約半分から始め、七月末をめどに約千四百八十点の全文閲覧化を進める。

 これまではネット検索で表紙しか閲覧できなかった。同室の場所も東京都港区から千代田区へ移転し、床面積も約一・五倍に広がる。内閣府は「東京に来られない人にも幅広く利用してほしい」と話した。

 同室は、沖縄守備部隊陣中日誌や戦闘詳報など国などが保有する沖縄戦関連の公文書や一般図書、映像資料などを収蔵している。

 移転先は東京都千代田区永田町一ノ一一ノ三九永田町合同庁舎二階。ネットのアドレスはhttp://www.okinawa-sen.go.jp/

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161700_04.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 1・29面

暴行米兵に禁固4年/「瑞慶覧」軍法会議

 二月に本島中部で起きた米兵暴行事件をめぐり、強姦容疑で県警に逮捕された後、被害者の告訴取り下げで不起訴処分となった在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット二等軍曹(38)の高等軍法会議が十六日、キャンプ瑞慶覧であった。ハドナット二等軍曹は少女への暴力的性行為を認め、禁固四年と不名誉除隊などの処分が言い渡された。司法取引で刑期の最後の一年は保留され、実質的には実刑三年になる可能性がある。

 検察側が禁固八年を求め、弁護側は九カ月以内を主張していた。判事は米軍のデイビッド・オリバー中佐。

 法廷で同軍曹は「被害者や家族、日本の人たちに申し訳ない。許してもらえるなら、できることは何でもする。自殺も考えた」と謝罪した。

 同軍曹は十六歳未満の少女への強姦や、誘拐、偽証など五つの罪に問われていた。このうち、十六歳未満への暴力的性行為を認めたが、ほかの四つは否認。同軍曹が一つの罪を認めて有罪を確定させる代わりに、検察側が残りの罪の訴追を取り下げる司法取引がなされた。同軍曹は軍法会議に先立ち、予備審問を開いて証拠などを開示する権利を放棄。陪審員制ではなく、判事一人による審理を選択した。


一層の粛正必要


 高等軍法会議の結論を受け、仲井真弘多知事は同日午後、「どんな判決が下されたにせよ、このような事件は決して許されることでなく、二度と起きないよう一層の綱紀粛正が必要である」とのコメントを発表した。


     ◇     ◇     ◇     

割り切れぬ 憤りと不信


 「米兵が罰せられるのは当然」。今年二月に本島中部で起きた暴行事件で米軍法会議は十六日、米海兵隊二等軍曹に禁固四年などの判決を言い渡した。本島中部の首長らは冷静に受け止めたが、その後も相次ぐ米軍事件に憤りと不信感は高まるばかり。複雑な経緯をたどった末の「決着」に割り切れない思いが色濃く残った。

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」の実行委員長を務めた玉寄哲永・県子ども会育成連絡協議会会長は「被害者の心に大きな傷を負わせた兵士が罰せられ、軍法会議の公開も当然だ。かつての米軍ならこっそり開いていただろう。三月の県民大会に集まった六千人の声が、影響したと思う」と話した。

 その上で「日米地位協定が不平等なままなら米兵の特権意識は改められず、同じような事件はまた起こり得る。基地の外では日本の法律が適用されるとはっきりさせるよう、日米両政府に協定改正を求めていく」と語った。

 日米地位協定に詳しい新垣勉弁護士は「軍法会議の公開はそれなりに評価できるが、公開するかどうかは米軍の裁量次第。日本人が被害者となった事件の軍法会議は、すべて公開されるように規定すべきだ」と指摘。

 二等軍曹が住んでいた北中城村の新垣邦男村長は判決について「身勝手な事件で、当然」と言い切った。「これまでも再発防止策が行われてきた。米兵の中に、沖縄は治外法権との意識はないか」と効果を疑問視した。北谷町の野国昌春町長は「事件後も米兵による事件・事故が多発している。県民が再発防止策に納得できるよう、実行していくべきだ」とした。

 東門美津子沖縄市長は「軍法会議を開いたから、良いということにはならない。事件以降も(米兵による事件・事故が起こる)状況は変わっておらず、再発防止を訴え続ける」と強調。知念恒男うるま市長は「刑の軽重は判断できないが、人権が踏みにじられた事件だけに割り切れない思いだ。有罪という結果が、再発防止につながれば」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_01.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 1面

海兵隊全階級の夜間外出制限へ/在日米軍が再発防止策

 【東京】在日米軍トップのライス司令官は十六日午後、都内で沖縄タイムス社などと会見し、米兵暴行事件を受けた教育プログラムなど、米兵犯罪再発防止策の見直し作業が終了したことを明らかにした。在日米海兵隊の生活安全指導を見直し、夜間の外出を制限するリバティーカード制度を全階級に適用する方針を示した。実施時期は明言しなかった。

 一方、在日米陸軍は新兵のオリエンテーションを一週間延長。指揮官による定期的な指導、検査などを強化すると説明した。そのほか、在日米海軍は暴力防止・危機対応チームを設置。新たに所属する米兵の身辺調査を徹底するという。

 在日米軍の再発防止策に関しては「国防総省の定める性犯罪防止策などの規定を完全に満たしていた」と指摘した。

 ライス氏は、米高等軍法会議が暴行事件を起こした海兵隊員に有罪判決を言い渡したことについて「米軍が罪を犯した米兵にきちんと責任を負わせる見本だ」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_02.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 1面

戦没画学生の生きた証し/きょうから「無言館」展

 戦没画学生の作品や、沖縄戦で生き抜いた画家たちの作品を紹介する「情熱と戦争の狭間で―無言館・沖縄・画家たちの表現―」(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館)が十七日、同館で始まる。一般参観は午前十時三十分から。六月二十九日まで。開幕に先立ち、十六日に関係者らに向けて内覧会が開かれた。

 同展は戦没画学生の作品を収集する長野県の「無言館」の協力で実現、約百二十点が出品された。過去最多となる五十五人の画学生の作品を展示。会場には画学生らの写真やスケッチブック、絵の具箱なども展示、「描くこと」へのひたむきな姿が紹介されている。また、激しい地上戦となった沖縄戦への思いを表現した画家たちの作品約四十点も並ぶ。

 十七日午後一時からは、「無言館」館主の窪島誠一郎氏の講演が開かれる。問い合わせは県立博物館・美術館、電話098(941)8200。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_03.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 28面

激戦地反戦誓う/平和行進

 「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)の第一日は十六日、県内外から約千二百人が参加し、三コースで行われた。名護市辺野古から金武町までの東コース、名護市役所前から恩納村万座ビーチまでの西コース、那覇市役所から糸満市ひめゆりの塔までの南コースで、平和や基地撤去を訴えた。行進は十七日も続き、午後三時から北谷町砂辺馬場公園で東コースと西コースが合流し「嘉手納基地の機能強化、爆音被害に抗議する決起集会」を開く。

 沖縄戦の激戦地となった南部路を歩く南コースには、県外からの三百人を含む約五百人が参加した。那覇市役所を出発、糸満市の白梅之塔を経てひめゆりの塔までの二〇・七キロを七時間かけて歩いた。

 コース途中の小中学校の壁面には、子どもたちの寄せ書きが掲げられ、参加者を激励した。

 國吉司団長(47)は「戦跡の多い本島南部を歩くことで、悲惨な沖縄戦の実相を学んでほしい」と強調。鈴木勝幸さん(29)=東京=は「子どもの未来のためにも大人が頑張らなきゃと思った」と汗をぬぐった。

 ひめゆりの塔で一行を出迎えた元ひめゆり学徒隊の島袋淑子さんは「戦争を知らない若い方々が旗やプラカードを掲げながら平和を訴える姿に、私たちも励まされた」とあいさつ。

 県外からの参加者は資料館を見学したり慰霊塔に手を合わせて反戦平和を誓った。


     ◇     ◇     ◇     

真剣な思い

平和に向き合う意味問う


 午前十一時ごろまでは曇り。このままの天気を願いつつも、その後は太陽が照りつける真夏日。直射日光が肌を刺し、ヒリヒリした。見渡すと真っ赤に日焼けしたたくさんの顔。名護市辺野古から金武町営グラウンドまでの十八キロを歩き、平和を真剣に考えている人々がいることを実感した。(西里大輝)

 横浜市に住む大橋紀子さん(68)。「五歳の時に終戦を迎え、道路に焼け焦げた人の死体が並ぶ光景を見た。厚木基地から飛んでくるヘリコプターの音に戦争を思い出す。静かで平和な日本にしたい」と願った。

 初めて来県し、交通整理に飛び回った木崎宏哉さん(25)は「沿道の人が手を振ったり声援を送ったりしている。この行進が支持されていると感じた」。北海道から参加、地元の思いに触れたという。

 辺野古で座り込みを続けている嘉陽宗義さん(86)は「毎年ありがとう。涙が出る思い」と早くから出発地を訪れ、思いを託すように参加者を見送った。

 行進初日、県民の姿は少なかった。平日で仕事がある、仕方がないのか。関心が薄れているのか。歴史を知らない結果なのか。

 深く考えず参加したが、多くの人と話し、沿道の人々を見ながら、平和に向き合う意味を突きつけられた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月17日朝刊)

[暴行米兵に判決]

取引には納得いかない


 米軍は、罪を許さぬ姿勢を演出したかったに違いない。軍法会議を異例の公開とし、裁判の公正さや綱紀粛正に向けた取り組みをアピールしたかったはずだ。

 沖縄本島中部で今年二月に起きた米兵暴行事件をめぐり、キャンプ瑞慶覧で開かれた高等軍法会議は在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット二等軍曹に禁固四年(求刑同八年)の判決を言い渡した。

 二等軍曹は十六歳未満への暴力的性行為を認めた。判決は禁固四年だが、司法取引が成立し一年猶予され実質は禁固三年になるという。判決は確定し不名誉除隊も盛り込まれた。

 とはいえ、判決は釈然とせず、とても納得できるものでない。軍法会議は判事、検察官が軍人であり、いわば身内による裁判だ。日本にはない司法取引もまた事件を化することにつながるので矮小

はないか。

 二等軍曹は強姦、暴力的性行為、偽証、姦通、巧妙な手口による誘拐の五つの罪に問われていた。

 だが、暴力的性行為の罪を認めたため、検察側が残り四つの罪を取り下げたという。

 県警に強姦容疑で逮捕された二等軍曹は、被害者が告訴を取り下げたことで不起訴処分となり、釈放された。強姦罪が親告罪であるためだ。その後、米軍が身柄を拘束していたのである。

 事件を受け、米軍が出した夜間外出禁止などの綱紀粛正策が実効性が伴わないことは、その後も事件・事故が一向に後を絶たないことからも分かる。

 嘉手納基地からF15戦闘機が未明離陸し、北谷町砂辺の民家では深夜・未明にかまわず大騒ぎするなど組織としても個人としても効果がないことを証明している。

 広島市で日本人女性を集団暴行したとして四人が訴追された事件でも、米軍岩国基地の軍法会議は米海兵隊兵長の裁判を公開した。

 ここでも兵長は有罪を部分的に認めるなどの司法取引に応じ、判決は、禁固二年(求刑十年)と不名誉除隊を言い渡している。

 沖縄も岩国市も米軍基地再編問題を抱えている。事件・事故の取り扱いを誤ると、再編作業に影響が出かねない。米軍はそう考えて軍法会議を公開したのだろう。

 沖縄は本土復帰三十六年を迎え、「5・15平和行進」が県内三カ所からスタートしたが、当時と何が変わったのだろうか。基地負担は軽減されず、事件・事件は多発している。

 沖縄に基地が集中し、日本政府がその構図をあらためるつもりがないからだろう。

 沖縄の米兵はアフガニスタン、イラクに派遣されている。

 元米陸軍大佐で元外交官のアン・ライトさんは「帰還米兵の80%が精神的ダメージを受け、正常に判断できる状態ではない」と統計データなどを基にショッキングな報告をしている。

 米軍がどんなに綱紀粛正を叫んでも、基地がある限り、事件・事故はなくならないというわけだ。

 私たちは基地と決別するため、覚悟を決めてかかる時期に来ているのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080517.html#no_1

 

2008年5月17日(土) 夕刊 5面

「基地いらぬ」2000人訴え/5・15平和行進2日目

 本土復帰三十六年「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)二日目の十七日午前、県内外から参加している千九百十五人が、糸満市の摩文仁平和祈念公園平和の火前など三地点から出発した。戦跡を巡り、米軍基地の周辺を歩いて、沖縄戦の実相や基地被害の現状を考え、沖縄と全国との連携強化を目指す。

南コース


 糸満市摩文仁の平和祈念公園を起点とする南コースには約八百人が参加。「平和憲法を守れ」「新たな基地建設を許すな」などと繰り返しながら、同公園の「平和の火」を出発した。

 南城市のアブチラガマ(糸数壕)や南風原町の沖縄陸軍病院南風原壕群などの戦跡を訪ね、十六・六キロを歩く。

 出発式で沖縄平和運動センターの大浜敏夫副議長は「復帰三十六年がたっても基地の重圧は変わらず、米軍の事件事故は絶えない」と強調。「今の沖縄を歩くことで、将来の日本の在り方を考えてほしい」と述べた。


東コース


 米軍嘉手納基地を目指す東コース二日目は、沖縄市役所前で出発式。初日を上回る六百六十五人(主催者発表)が「静かな沖縄を返せ」などと訴えながら、同基地を臨む通称「安保の見える丘」に向かった。

 出発式では、沖縄市の東門美津子市長、同市職労の宮島岩寿執行委員長らがあいさつ。「基地から派生する被害は減らない。市民の安心・安全を確保するため、共に声を上げていこう」と呼び掛けた。

 妻と、五歳と七歳の息子と参加した小学校教員の照屋耕さん(38)=沖縄市=は「今年は特に米軍の事件・事故や未明離陸など、やりたい放題に憤りを感じる。基地はいらないと訴えたい」。初めて来県した札幌市の公務員、上月閑加さん(38)は「戦争体験者や辺野古で座り込みを続ける高齢者の話を聞き、沖縄のリゾート地以外の側面を見た」と語った。


西コース


 読谷村役場前から始まった西コースは、約五百人(主催者発表)が米軍トリイ通信施設近くや国道58号沿いの嘉手納弾薬庫地区のフェンス沿いを歩き、基地の整理・縮小や日米地位協定改定のシュプレヒコール。

 同村職員の新垣学さん(38)は「基地に土地を奪われ、元の集落に帰られない人も多い。やはり基地は縮小してほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171700_02.html

 

2008年5月17日(土) 夕刊 1面

戦没画学生の声 耳澄まし/「無言館」展 大勢が参観

 長野県上田市の私設美術館「無言館」が収集した戦没画学生の作品などを展示する沖縄タイムス社創刊六十周年企画「情熱と戦争の狭間で―無言館・沖縄・画家たちの表現―」展(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館、共催・沖縄タイムス社)が十七日午前、同館企画展示室で始まった。太平洋戦争で戦死した若者たちが出征前に描いた風景画や人物像のほか、沖縄戦を生き延びた沖縄の画家たちの作品計百六十点が並び、大勢の人が見入っていた。

 開会式で、無言館の窪島誠一郎館長は「彼らの絵は短兵急に反戦平和でくくれるものではなく、親や兄弟など、ただ愛する人を描き、日本人が戦後六十数年で失ってきた掛け替えのない風景を刻んでいる。無言館の絵が沖縄で何を発言しているか、耳を澄ましてほしい」と訴えた。

 沖縄タイムス社の岸本正男社長は「作品は私たちに今の時代を考えさせてくれる。多くの県民に見てほしい」と述べた。同展は無言館の全国巡回企画展の一環。六月二十九日まで。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171700_03.html

 

2008年5月17日(土) 夕刊 4面

野沢記者(琉球放送)に奨励賞/放送人グランプリ

 【東京】放送業界で優れた業績を残した人に贈られる第七回「放送人グランプリ」(主催・放送人の会)の贈賞式が十六日、都内であり、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題をテーマにした番組を担当した琉球放送の野沢周平記者と、琉球朝日放送制作の報道特別番組に奨励賞がそれぞれ贈られた。

 野沢さんはドキュメンタリー「揺さぶられる歴史?教科書検定をめぐって」を担当。琉球朝日放送制作は「消したい過去 消せない真実?文科省 疑惑の教科書検定」。二つの番組は、体験者の証言などで「集団自決」の実相に迫り、日本軍の関与を削除しようとした教科書検定の背後にある思惑などを追及した。

 野沢記者は「住民がなぜ、集団死に追い込まれていったかを描きたかった。(今回の)教科書検定の背景に、沖縄戦の記憶を消そうという危険な動きがあることを伝えたかった。受賞はこれからの励みになる」と喜びを語った。

 琉球朝日放送の島袋夏子記者は「生き延びた人の話で『軍の強制がなかったというなら、(私は)殺人者として死ぬしかない』という言葉が突き刺さった。今後も沖縄戦をどう伝えていけるのか考えていきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171700_06.html

浦添の遺棄弾移送完了 普天間協議、再開半年、足踏み Yナンバー車、日米協議4年なし ギンバル移設、民意揺れ など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(5月11日から14日)

2008年5月11日(日) 朝刊 23面

浦添の遺棄弾移送完了/毒ガス成分確認されず

 浦添市内の建築現場で見つかった、化学弾の可能性がある米国製M57迫撃砲弾二十二発の遺棄弾が十日、陸上自衛隊と民間の専門業者によって米軍嘉手納弾薬庫内の県の不発弾保管庫に移送された。防衛省によると、七日から行われた砲弾の密封容器への収納、移送作業で毒ガス成分の漏れは確認されなかったという。

 移送作業は十日午前七時に始まった。密封容器に収納された砲弾はトラック四台に分けて乗せられ、同日午前八時に現場を出発。自衛隊車両二台、県警のパトカー二台、浦添市消防本部の消防車一台を伴い、国道58号を時速四十―五十キロで読谷村まで北上した。午前九時すぎに弾薬庫内に運び込まれ、二時間後に作業が終了した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805111300_03.html

 

2008年5月11日(日) 朝刊 23面

沖縄口で平和を「9条Tシャツ」/沖教組教育研が製作

 Tシャツを着て九条を守ろう―。県教職員組合(沖教組)教育研究所は、背中に憲法九条の一部を沖縄口(ウチナーグチ)で記したTシャツを作り十日、発表した。憲法改正手続きを定めた国民投票法が昨年五月に成立するなど九条をめぐる動きが慌ただしくなる中、誰でも気軽に参加できる平和運動を広めようと企画。舞台俳優の北島角子さんが沖縄口に訳した。

 Tシャツの胸の部分は黒地に白や水色で地球などのイラストと文字がデザインされ、「9」の隠し文字が浮かび上がる。背中の部分には今後、関西弁や東北弁など各地のお国言葉に置き換え、全国にTシャツを普及させたいという。

 那覇市首里崎山町のアルテ崎山でTシャツを披露した沖教組の山本隆司副委員長は「Tシャツなら着るだけで意思表示ができる。子供から大人まで多くの人に広めたい」と意欲。公演の際に沖縄口で九条を朗読するという北島さんは「憲法と聞くと固い感じがするが、沖縄口だと柔らかく聞こえる。すてきな沖縄口で平和憲法を人々の心に届けられれば」と語った。

 Tシャツは一枚二千円で子供サイズからXLサイズまで。問い合わせは学校用品、098(867)3683。アルテ崎山でも購入できる。

 5・15平和行進二日目の十七日は、糸満市摩文仁の平和祈念公園出発の南コースを歩く日教組と沖教組の組合員らがTシャツを着る予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805111300_04.html

 

2008年5月11日(日) 朝刊 2面

普天間協議 足踏み/再開半年

 政府が昨年十一月、難航する米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設問題を「官邸主導」で解決しようと十カ月ぶりに再開させた県側との協議会が、半年を経ても足踏み状態を続けている。代替施設として名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設する政府案に対し、県側が沖合への移動を求めているからだ。

 地元の軟化を狙って矢継ぎ早に打ち出した北部振興策の凍結解除など「太陽政策」も空振りの格好。米政府は沖合移動をかたくなに拒否し、政府内では官邸サイドの見通しの甘さに批判が出始めている。

 「私が官房長官でいる限り、米軍再編に不熱心ということはない」。町村信孝官房長官は九日、官邸を訪れたネグロポンテ米国務副長官に、移設協議の停滞を釈明した。

 防衛省は安倍内閣当時、北部振興策の予算執行や米軍再編交付金を凍結する「アメとムチ」で県側に妥協を迫った。しかし町村氏や二橋正弘官房副長官は、防衛省任せでは解決は困難と判断。譲歩を促すため、今年になって凍結を解除した。

 政府関係者は、七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でブッシュ米大統領が来日する際の大筋決着を「最短シナリオ」として描いていたという。

 しかし協議会は四回の会合を重ねても打開の糸口を見いだせず、官邸筋は「もう打つ手はない」とお手上げ状態。

 シーファー駐日米大使が町村氏に「沖合移動はパンドラの箱を開けるようなもの。米軍が不満を言いだす」と伝え、安易に妥協しないようくぎを刺す場面もあった。

 防衛省幹部の一人は「沖縄に予算措置はしたが、何も進まない。町村氏も解決の難しさにようやく気付いたのではないか」と冷ややかに話している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805111300_05.html

 

2008年5月12日(月) 朝刊 2面 

「普天間」移設3年内閉鎖状態に力点/仲井真知事就任1年半

 米軍普天間飛行場を名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部へ移設する日米政府合意をめぐり、仲井真弘多知事が主張の力点を変化させた。滑走路位置の沖合修正と、「三年」をめどに同飛行場を閉鎖状態にするとの二つの受け入れ条件のうち、閉鎖状態をより声高に訴え始めている。

 背景には二〇〇六年十一月の知事選で公約した三年まで残り一年半となったことがある。

 加えて六月の県議選で県政与党の苦戦が予想され、進展が見えにくい沖合修正より閉鎖状態の実現を訴える方が県民にアピールできると判断、かじを切ったようだ。

 「危険性除去のため絶えず研究を続けています、という姿勢をみせていただきたい」。四月九日、官邸で開かれた移設協議会で、仲井真知事は何度も発言を求めた。

 住宅地に囲まれた普天間飛行場の危険性は早くから指摘され、〇四年には隣接する大学に同飛行場所属のヘリが墜落。こうした経緯から仲井真知事は知事選で「三年以内の閉鎖状態実現」を掲げて当選した。

 関係者は「就任から一年半が過ぎ、普天間移設で前進がないことに焦りもあるようだ」とおもんぱかり、県議選で与党側が過半数を割り込めば移設自体が頓挫しかねないと懸念する。

 昨年八月、閉鎖状態に対する「回答」として住宅密集地を避けた飛行ルートを示していた防衛省は、ここにきて「何が技術的に可能か研究検討したい」との姿勢を示し始めたが、具体策の道筋は見えない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805121300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月12日朝刊)

[移設協議足踏み]

「解」はどこにあるのか


 防衛省主導の強硬路線に対する反発を考慮し、話し合い路線へ転換した官邸。日米合意案(V字案)を修正させ、官邸主導による沖合移動をもくろむ県。昨年十一月、普天間移設協議会がおよそ十カ月ぶりに再開されたのは、官邸と県の局面打開に向けた思惑が一致したからだ。

 だが、協議会再開から半年が過ぎても依然として修正協議は進んでいない。官邸からは協議会の会合のたびに「柔軟発言」が飛び出すものの、沖合移動については足踏みの状態だ。県にとって大きな誤算は、米側の姿勢が極めて強硬なことである。

 ネグロポンテ米国務副長官は九日、町村信孝官房長官、石破茂防衛相に会い、「合意された通り、タイムリーに実施していく必要がある」と述べ、安易に妥協しないようくぎを刺した。

 シーファー駐日米大使も町村官房長官に「沖合移動はパンドラの箱を開けるようなもの」だと伝え、官邸の動きをけん制した。

 米政府高官の否定的発言は、ケビン・メア在沖米総領事の一連の発言とも重なる。

 総領事は本紙のインタビューに対し「もう調整は終わっており、二年前から実行する段階に入った」「選択肢はこの計画を実行するか、しないかの二つ。修正という選択肢はない」と答えている(四月三十日付朝刊)。現場の外交官がなぜ、これほど居丈高な発言をするのか、反発を覚えた読者も多いに違いない。

 明らかなことは、発言が個人的な資質によるものではなく、米政府の一致した見解だという点だ。

 私たちはこれまで、在日米軍再編計画の中に盛り込まれた日米合意案の問題点を幾度となく指摘してきた。

 第一に、「地元の頭越しに進めることはない」(橋本龍太郎元首相)という当然の前提が今回の日米交渉では踏襲されず、県など地元のきちんとした同意を得ないまま交渉を進めたこと。

 第二に、天然記念物のジュゴンが生息し、「自然環境の厳正な保護を図る区域」だと県自ら評価した区域を移設先に選んだこと。防衛省の環境影響評価方法書は、情報開示が不十分なために不備が目立った。

 第三に、「地元の負担軽減と抑止力の維持」という政府の主張が、本来、相いれない部分を含んでいるにもかかわらず都合のいいように語られ、その結果、政府側の言うことと米軍側の言うことがしばしば食い違いをみせたことだ。

 第四に指摘したいのは、米軍再編推進法に基づく再編交付金の問題だ。これほどあからさまな「アメとムチの政策」は、地方自治をいびつにするだけである。

 普天間飛行場の危険性の除去についても、有効な対策が打ち出せないでいる。

 仲井真弘多知事はこれから先、どのような姿勢で臨むつもりなのだろうか。沖合移動そのものにも問題が多いだけに、世論を背景に日米に迫るという構図は描けない。ここは、原点に立ち返って問題点を一から洗い直すしかないのではないか。急がば回れ、だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080512.html#no_1

 

琉球新報 社説

地位協定の改定 超党派で実現を目指せ 2008年5月12日

 日本は本当に独立国家なのだろうか。防衛のために米軍の駐留を認めたのはいいが、基地内はまさに治外法権。日本の法律は及ばず、どんな化学物質を使い、どんな兵器を保持しているのか。まるで分からない。

 基地内だけに限らず、日本の主権下であるはずの民間地域でも米軍や軍人の、ほとんどやりたい放題ではないか。事故があれば勝手に現場を確保、日本の警察さえ入れない。米軍人や軍属の被疑者についても、憲兵が力ずくで基地内に連れ去る。早朝だろうが未明だろうが、爆音を響かせて離着陸を繰り返す。住民のことなどお構いなしだ。日本政府も、見て見ぬふりと批判されても仕方ない。

 なぜ、このような不平等がまかり通るのか。しかも、在日米軍専用施設の75%を押し付けられた沖縄でこそ、この矛盾が噴き出すのだ。不条理な現実の裏には明らかに日米地位協定がある。

 改定を求める沖縄側に、日米両政府がまるで口裏を合わせるかのように、こう答える。「(協定は)外国と比較しても、最も進んでいる」「運用改善で十分、目的は達成できる」と。しかしそれは違う。明らかに事実に反する。環境問題に関して、ドイツでは基地返還の際の原状回復義務と浄化を米軍に義務付けている。米軍基地内では防衛活動に必要な措置が取れるが、その使用にあたってはドイツ法令が適用できる。米軍人・軍属および家族である被疑者の身柄についても、ドイツ側からの要請があれば、その拘禁はいつでも可能だ。韓国、イタリアでも似たような事例は多い。

 翻って沖縄。米兵らが「何をしても(日米地位協定と軍が)守ってくれる」と信じ込んでも何ら不思議ではない。「(われわれは日本の防衛に)命を犠牲にしている。協定見直しを政争の具にしている」(ケビン・メア米総領事)などの発言も根は一緒ではないか。

 野党が共同で地位協定の改定に乗り出した。参院本会議に国会決議案を提出するという。明治の元勲たちは欧米との不平等条約の改正に命を懸けて対峙(たいじ)した。せめて、その気概の一端を見せてほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-131991-storytopic-11.html

 

2008年5月12日(月) 夕刊 1面

「協定改定米に促す」/基地被害聞き取り

 八月の「沖縄ビジョン」再改訂に向け、県内の基地問題や経済情勢を把握するため来県した民主党プロジェクトチーム(PT)視察団(団長・武正公一衆院議員)が十二日、県庁記者クラブで会見を開き、「日米地位協定改定は『平成の条約改正』として米政府や米議会に働き掛け、具体的に取り組みたい」と報告した。経済政策については「県内の地域ごとの課題を取り上げ、現実的可能性を絞り込みたい」と述べた。

 視察団は会見に先立ち、仲井真弘多知事と意見交換したほか、宜野湾市の伊波洋一宜野湾市長から米軍基地被害の実態などについて聞き取り調査した。

 仲井真知事は地位協定改定について「与党を含め、各政党が取り組んでも途中で(議論が)止まってしまう。しっかり取り組んでほしい」と理解を求めた。

 伊波市長は普天間飛行場の事故の危険性について、米軍が自ら定めた同飛行場のクリアゾーン(利用禁止区域)を守らず、危険性が放置されている現状を説明。二〇〇七年に日米で合意した場周経路も守られていないことを指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805121700_04.html

 

2008年5月12日(月) 夕刊 5面

帰還兵の80%心にダメージ/元米大佐・外交官アン・ライトさん

 「イラクやアフガニスタンからの帰還米兵の80%が精神的ダメージを受け、正常に判断できる状態ではない」。元米陸軍大佐・元外交官のアン・ライトさん(61)が十一日、沖縄市のくすぬち平和文化館で講演し、米国帰還兵局の統計データなどを報告。「軍がカウンセリングしなければ、何をするか分からない兵士を放置することになる」と警告した。

 ライトさんは陸軍に二十九年間、外交官として十六年間勤務。二〇〇三年に、ブッシュ政権のイラク戦争に反対して外交官を辞任し、平和を目指す活動を続けている。今回は九条世界会議の招きで来日、大阪や北海道、新潟などを回り沖縄入りした。

 講演では米国防総省の発表などから、「米軍内では女性兵士の三人に一人がレイプされている。イラクやバーレーンなどで三十九人の女性兵士が戦闘によらない死に方をし、十五人は死因に疑惑があるが、五人は自殺と発表された。うち二人の両親は虐待されて死んだとして、三週間前に国会に申し立てた」とした。

 米兵の海外駐留中の性犯罪は、米国内の性犯罪者リストに乗らないと指摘。一九九五年、二〇〇〇年に県内で暴行事件を起こした加害者がそれぞれ、米国内でも犯罪を起こしたとし、「日本の皆さんが米国領事館に、性犯罪者リストに載せるよう要求しほしい」と訴えた。

 参加者からの質問に答え「レイプは増えてきている。メディアや勇気ある発言で数は明らかになってきたが、米政府は積極的に公表したり警告はしていない。軍隊に女性を勧誘するならはっきり危ないと示すべきだ」などと訴えた。

 ライトさんは、十三日午後六時から名護市労働福祉会館でも講演する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805121700_05.html

 

2008年5月13日(火) 朝刊 2面

県、危険除去で市聴取/普天間飛行場

 【宜野湾】仲井真弘多知事が米軍普天間飛行場の危険性除去策を検討する研究会設置を県の担当課に指示したことを受け、県返還問題対策課は十二日、宜野湾市役所を訪れ、伊波洋一市長らからヒアリングを行った。危険性除去策について県がヒアリングを行うのは初めて。同課の名嘉真稔副参事は「現場の情報を持ち帰り、環境や航空などの担当課と情報を共有したい」と述べた。

 伊波市長は飛行場周辺地域の安全のため、ヘリコプターの進入経路と場周経路を定めた報告書が日米で合意された二〇〇七年八月以降も、設定されたルートをはみ出して訓練を繰り返している現状を訴えた。

 また、米本国では航空施設整合利用ゾーンプログラム(AICUZ)によって基地周辺の利用禁止区域が定められ、地域の安全が保たれていることを説明。

 AICUZは米国以外で適用されないが、日本国内の米軍基地については日本政府が環境基準を定められると指摘し、「環境を守る基準があれば、普天間飛行場だけでなく県内のほかの基地にも適用できる。県も積極的に取り組んでほしい」と要望した。

 名嘉真副参事らは、場周経路が守られていない客観的なデータの必要性を指摘。研究会設置の具体的なめどは立っていないとした上で、「今後も市から情報を得て、県の各担当課と話し合いたい」と述べた。

 仲井真知事は四月に開かれた普天間移設協議会で、政府が危険性除去の取り組みを再検討する方針を示したことを受け、研究会の設置を指示。伊波市長は二日、上原昭知事公室長に対し、同飛行場の運用停止などを求める要請を行っていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805131300_03.html

 

2008年5月13日(火) 朝刊 23面

米兵退去求め署名へ/砂辺住民

 【北谷】基地外に住む米兵が未明まで騒ぎ、たばこの吸い殻を捨てるなど地域に迷惑を掛けているとして、北谷町砂辺に住む住民約二十人は十二日、会合を開き家主や不動産会社などに退去させるよう署名、要請することを決めた。行政への要請も検討する。周辺住民からは「生活権の侵害だ」と抗議の声が上がっている。

 住民によると、昨年十二月に米兵が引っ越してきた。二人の米兵が生活しているとみられるが、週末になると複数人集まり未明まで騒ぐようになった。たばこの吸い殻などが投げ捨てられ、酔っ払った米兵が嘔吐することもあった。

 住民らは何度か警察に通報したが、改善されなかった。四月二十七日に住民約二十人が米兵に対し十時以降は騒がないよう申し入れた。その時は米兵は謝罪し、騒がないことを約束したが、五月九日から十一日にかけては、再び昼夜構わず騒いだ。十一日未明には上半身裸の男女がベランダで騒ぐ光景もあった、という。

 近くに住む女性(62)は「米兵がみんな悪いというわけではない。基地外に住むなら家主も近隣住民に迷惑を掛けないよう指導を徹底してほしい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805131300_04.html

 

2008年5月13日(火) 夕刊 1面 

日米協議4年なし/Yナンバー車

 【東京】外務省の西宮伸一北米局長は十三日午前の参院外交防衛委員会で、米軍人・軍属らの私有車両(Yナンバー車)の車庫証明提出問題を協議する、日米合同委員会の特別分科委員会が二〇〇四年八月三十一日以来、一度も開かれていないことを認めた。井上哲士氏(共産)への答弁。

 同年七月の合同委員会では、「Yナンバー車」の車庫が「基地外」にある場合、車庫証明書の提出を義務付けることで合意した。そのほか、「基地内」の車庫証明書の提出についても特別分科委員会を少なくとも二週間に一回開いて議論することを確認していた。

 西宮局長は「そのほかの形で随時、米側との協議は行ってきている」と述べつつ、「(協議が)若干停滞している」と、協議が進んでいない実態を認めた。

 高村正彦外相は「日米合意が守られるよう、詰めきっていないところは早く詰めるように努力していきたい」との考えを示した。

 一方、国土交通省の松本和良技術安全部長はYナンバー車の登録について、「米軍人などは住民登録されていないため、居住場所が基地内か基地外か、公的証明書で確認できない」と述べ、登録申請者が「基地外」と申告した車しか、車庫証明書を確認できない現状を説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805131700_03.html

 

2008年5月13日(火) 夕刊 5面

未明離陸に抗議決議/嘉手納議会「強い憤り」

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で相次いでいるF15戦闘機などの未明、早朝離陸について、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十三日の臨時会で、同基地からのすべての航空機の未明、早朝離陸の全面中止を求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。伊礼議長や基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)の委員ら計八人は閉会後、同基地を訪ね、直接抗議した。

 伊礼議長や田仲委員長によると、同基地のジョン・ハッチソン広報局長は「(未明、早朝離陸は)まれにある運用で、正当な理由がある。最大の課題の運用上の安全を守るためには、この方法しかとれない」と答えたという。

 抗議決議、意見書は「嘉手納町域で九三・七デシベルの騒音を記録し、基地周辺住民の安眠を妨げた」と被害の実態を指摘。未明離陸を強行する米軍に対し「地域住民の切実な声を無視する姿勢は極めて容認しがたく強い憤りを覚える」と訴えている。

 あて先は駐日米国大使、在日米軍司令官、嘉手納基地第一八航空団司令官、外務省沖縄大使、沖縄防衛局長ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805131700_05.html

 

2008年5月13日(火) 夕刊 5面 

空から見る跡地の変容/第5回あんやたん展始まる

 沖縄の時代の移り変わりを写真で振り返る、第五回「タイムスアーカイブ あんやたん写真展」が十三日、那覇市おもろまちの沖縄タイムス本社一階ギャラリーで始まった。入場無料。二十五日まで。

 今回のテーマは一九七二年の空撮を中心に返還された米軍基地の過去と現在の様子を展示。返還後、急速に発展する那覇新都心の変ぼうぶりなどを紹介する。

 ハーバービューホテルの写真に目を通していた那覇市の高山末子さん(63)は「親や姉から土地を接収され、強制的に移動させられた話などを聞いていた。体験はしていないが、写真を見ることで当時の苦労がしのばれ、平和の大事さを実感する。子や孫にも見せたい」と感慨深そうに見つめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805131700_07.html

 

2008年5月14日(水) 朝刊 29面

米軍解雇 無効と提訴へ/元従業員、国相手に

 米軍キャンプ瑞慶覧(北中城村)にある在沖米海兵隊福利厚生施設MCCSの元従業員安里治さん(46)が、米国人上司からパワーハラスメントを繰り返され、不当に解雇されたとして、二十二日にも国を相手に解雇処分取り消しを求める訴訟を提起する。十三日、沖縄防衛局を訪れ、趣旨に賛同する同僚や支援者ら五千七百三十二人分の署名を提出した。

 安里さんによると、二〇〇三年ごろからパワハラを受け、心身に不調を来した。同様に嫌がらせを受けたという別の上司に対し、慰める目的で方言で「何かあればウチクルスサー」と発言したところ、上司に報告され、米軍側から「殺すと脅迫した」と見なされた。

 〇七年、暫定出勤停止処分、その後も「職場の秩序を乱した」との訓戒を受け、弁明書や苦情申し立ても却下されたという。同年十二月、懲戒解雇処分となった。

 十三日、防衛局側と面会した安里さんは「防衛局は独自に調べず、『米軍の調査を基に解雇を決定した』と明言した。雇用主としての誠意が見られず、責任も果たしていない」と批判。「米国人上司の都合で嫌がらせを受けて苦しむ仲間がたくさんいる。司法に訴えることで人権を取り戻し、これ以上被害者を出さないようにしたい」と訴えた。

 同行した全駐労マリン支部の仲里修委員長は「裁判に向け、支部として可能な限りの支援態勢をつくっていきたい」と話した。安里さんの解雇をめぐっては、全駐労組合員を中心に地域住民などが撤回を求めて署名した。

 米軍基地従業員の解雇の最終責任の所在について、沖縄防衛局は「日米間で合意した労務提供契約に基づき手続きが行われ、日米が合意した場合に、従業員への解雇を含む制裁措置が取られる」としている。

 米軍側は安里さんへの解雇予告通知書で、上司や同僚への聞き取りなどから「殺す、もしくは危害を加える、という脅迫は深刻で信じるべきである」と結論付けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805141300_01.html

 

2008年5月14日(水) 朝刊 29面

米兵暴行事件/高等軍法会議16日開廷

 二月に起きた米兵暴行事件をめぐり、県警に強姦容疑で逮捕されたが不起訴処分となった在沖米海兵隊のタイロン・ハドナット二等軍曹(38)の高等軍法会議が十六日、開かれる。海兵隊報道部が十三日に発表した。

 ハドナット二等軍曹は十六歳未満の子どもへの強姦や誘拐など五つの軍法違反に問われている。

 高等軍法会議は三種類ある軍法会議のうち、最も重い罪に適用される。タイロン二等軍曹は予備審問の権利を放棄しており、減刑などの司法取引が行われる可能性がある。

 ハドナット二等軍曹は県警に逮捕、送検されたが、被害者が告訴を取り下げたため、那覇地検は不起訴処分にして釈放、身柄は米側に引き渡されていた。

 軍法会議はキャンプ・フォスターで開かれ、日本側の報道機関の代表五社が傍聴できる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805141300_02.html

 

2008年5月14日(水) 朝刊 2面

レンタカーも高速料金無料/横田基地が利用PR

 【東京】米軍横田基地(東京都福生市など)がホームページに掲載している基地内のレンタカーサービスに関する紹介の中で、「レンタル料を支払えば、日本国内におけるほとんどの高速料金を支払わずに済む」と記述し、利用を呼び掛けていたことが、十三日の参院外交防衛委員会で明らかになった。井上哲士氏(共産)の質問に、外務、防衛両省が認めた。

 防衛省によると、車両の運行が公務として行われる場合、米軍当局から「軍用車両有料道路通行証明書」が交付され、同証明書を提示すれば料金が免除される仕組み。料金は事後に日本政府が肩代わりしており、二〇〇七年度は全国で八億八千三百八十三万千円で、そのうち県内は一億九千六百四十九万三千円。

 掲載されたレンタル時の同意書には、「貸主は軍用車両有料道路通行証明書を支給する」との記述もある。そのほか、「休日や夏休みは込み合うので、申し込みはお早めに」と、公務外での使用をうかがわせる呼び掛け文も。

 この問題を井上氏が同委員会で質問した先月十七日直後、ホームページから記述が削除されたという。

 防衛省は井上氏の質問を受け、在日米軍司令部に対し、証明書発行の有無や発行責任者などについて照会。在沖を含めたその他の基地でも同様の実態がないか調べている。

 高村正彦外相は「何らかのことを感じて(ホームページから)消したとすれば、事実関係を聞いた上で、適切なものとなるよう努力したい」と述べた。

 一方、外務省の西宮伸一北米局長は「Yナンバー車」の車庫証明提出問題を日米で協議する、特別分科委員会が〇四年八月三十一日以来、一度も開かれていないことを認めた。

 これに対し高村外相は「日米合意が守られるよう、詰め切れていないところは早く詰めるよう努力していきたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805141300_03.html

 

2008年5月14日(水) 夕刊 5面

ギンバル移設 民意揺れ/区民66%反対・地主9割賛成

 【金武】金武町の米軍ギンバル訓練場に先端医療施設を建設する前提とされるブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設について、同ビーチに隣接する並里区の世帯主の66%が「条件付き返還」に反対していることが3月に同区区議会が実施したアンケートで分かった。賛成は20%だった。一方でギンバル訓練場の個人地主の9割は町の跡地利用計画に同意しており、町内の複雑な住民感情がうかがえる。(新垣晃視)

 アンケートは調査用紙を同区の千七十九世帯に配布。回収率は63%。

 「ギンバル訓練場の跡地利用計画」については、42%が賛成、37%が反対と賛否が割れたが、「ブルービーチへのヘリパッド建設」のみの問いでは、75%が反対、13%が賛成と反対が大多数を占めた。

 自由回答では「町と議会はこれまで条件付き返還に反対だった。これを覆す正当かつ十分な説明がない」「なぜ今ごろアンケートか。町の説明会直後がよかったのでは」との意見もあった。

 跡地利用計画は、米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)を利用した、がんの早期発見、治療が可能な先端医療施設を構想。ギンバル訓練場(約五十六ヘクタール)のうち、約三十四ヘクタールが区有地で、残り約二十二ヘクタールを九十七人(町内七十八人、町外十九人)の個人地主が所有しており、町によると、そのうち九割が同計画に同意の意思を示している。

 区有地は、区の条例で、区議会の議決がなければ処分できないと定められており、今のところ具体的な話し合いは進んでいない。

 騒音や赤土流出などを懸念し、同区議会は一九九六年と二〇〇六年、ヘリパッド移設に関し反対を決議した経緯がある。一方、町青年団協議会は昨年九月、跡地利用での若者の雇用促進を町に要請している。

 同区の與那城直也区長は「ブルービーチへのヘリパッド建設に反対というのが区民の総意。ただ、若者から雇用を確保してほしいという声もある。ギンバル訓練場の返還は国や町で決められており、区で止められるものではない。区民の意見をよく聞き、今後の対応を話し合っていきたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805141700_01.html

 

2008年5月14日(水) 夕刊 5面

未明離陸 3市町抗議

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機などの未明・早朝離陸が相次いでいる問題で、「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は十四日午前、中止要請を無視し飛行したとして同基地や沖縄防衛局を訪れ抗議した。引き続き外務省沖縄事務所へも抗議した。

 会長の野国昌春北谷町長らによると、同基地第一八航空団任務支援群のマックス・カシュバム司令官は「明るいうちに(本国に)着かなければならない。機数が少ないため五月三日は午前六時すぎの離陸でも運用可能だった」と答えたが、パイロットの安全や運用上の問題で未明離陸は今後もあり得るとの見解を示した。防衛局への抗議では、宮城篤実嘉手納町長が「訓練計画自体を変更するよう米に提起してほしい」と訴えた。

 また、北谷町砂辺の外国人住宅での騒音問題について、野国会長は「米兵が深夜まで騒ぎ、住民に迷惑をかけている。基地外に住むのであればモラルは守ってほしい」と要請。真部朗局長は「米軍に注意喚起を促したい」と答えた。

 外務省沖縄事務所では、野国会長が「長年抗議を繰り返しているが、成果が形として見えない。これでは住民から『政府は弱腰だ』との声も出てくる。抜本的な解決に向けて動いてほしい」と迫った。今井正・沖縄担当大使は「深刻な問題だと認識している。住民への影響に配慮するよう引き続き米側に要請したい」と述べるにとどまった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805141700_02.html

 

2008年5月14日(水) 夕刊 5面

海保、抗議ボート阻む/辺野古調査

 【名護】米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴い、環境影響評価(アセスメント)が行われている名護市辺野古で十四日、基地建設に反対し作業船に抗議する市民団体のボートに、キャンプ・シュワブのビーチから出港した海上保安庁のボートが船に近づかないよう取り囲み警告をするなど、緊迫した状況が続いている。同日午前十時ごろ、作業船に抗議する市民団体のボートに対し、シュワブ内から出港した同庁のゴムボート四隻が近づき、作業船に近づかないよう警告を発し、ボートを取り囲んだ。

 座り込みを続けている平和市民連絡会の当山栄事務局長は「米軍基地から海保の船が出るということは、軍隊との一体化ではないか。基地建設に抵抗する行為さえ制限しようとする国の状況は許されない」と、憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805141700_03.html