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米兵暴行事件・県民大会 自民党、不参加を決定 など  沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(3月6日、7日)

2008年3月6日(木) 朝刊 1面

国民新党、地位協定改定案/野党3党、共同提案へ

 【東京】国民新党(綿貫民輔代表)は五日、米兵暴行事件を受けて民主党と共同で作成した「日米地位協定改定案」を了承した。(1)米軍関係者への外国人登録義務付け(2)日本側の身柄引き渡し要請に米軍が「同意」(3)環境保全に関する規定を新設し、厳格な環境基準を採用―などが柱。民主党も早ければ週内に了承する見通し。両党は来週中に社民党とも調整し、三党で政府に共同提案する方針だ。

 国民新党と衆院で連立会派を組む政党「そうぞう」代表の下地幹郎衆院議員を中心に作成し、四日に民主党との事務局レベルで合意していた。

 案は、米軍関係の事件・事故でこれまで指摘された地位協定上の問題点を踏まえ、全面的に見直す内容となっている。

 二〇〇四年の沖縄国際大学へのヘリ墜落事故で県警が捜査できなかった事例を踏まえ、基地外での米軍の捜査は「日本側当局の第一義的な統制の下に行われる」とした。

 基地返還に伴い問題となる環境汚染についても、日本政府がこれまで負っていた原状回復義務を米国に担わせることも明記した。

 下地氏は、同案について「これまでの米軍関係者による事件・事故から得られた『教訓』をすべて網羅した。これまでの矛盾や、県民の不安を解消するためにも、見直しは不可欠だ」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803061300_03.html

 

2008年3月6日(木) 朝刊 25面

超党派結集 方針堅持/県民大会 8日に実行委

 米兵による事件続発を受け、二十三日に抗議の県民大会開催を目指す実行委員会準備会は五日、幹事団体による会議を開き、引き続き超党派で取り組む方針などを確認した。八日午後二時に実行委員会結成総会を開き、開催に向けて本格的な行動を始める。

 大会の開催日時は二十三日午後二時。会場は、一部の幹事団体から、那覇市の県庁前県民広場とする案も出たため、これまで予定していた北谷町の北谷公園野球場前広場を軸に調整を続けることにした。

 八日に立ち上げる県民大会実行委員会は、県内二百五十七団体(うち八十六団体は女性団体)に参加を呼び掛ける。事務局を県婦人連合会に置き、県高校PTA連合会の西銘生弘会長を事務局長に据える。実行委員長には、引き続き仲里利信県議会議長に就任を要請することも決めた。

 幹事団体からは、幹事団体が超党派での県民大会開催を求めた県議会への陳情を、米軍基地関係特別委員会が継続審議としたことに、疑問の声が上がった。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「在沖米軍基地の兵士による事件続発は、県民全体の問題だ。こうした状況を放置し続ける日米両政府が、『沖縄の声』に謙虚に耳を傾けるよう県民が一つにならなければならない」と訴え、大会への参加を決めていない自民党などに働きかけを強める方針を示した。


米軍側、捜査を継続


 在沖米海兵隊報道部は五日、米兵暴行事件で逮捕され、二月二十九日に不起訴処分で釈放されたキャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット二等軍曹について「捜査を継続している」と発表した。沖縄タイムスの質問に答えた。

 同報道部は「日本の当局は起訴を断念したが、隊員は統一軍事裁判法違反の罪で訴追される可能性がある」と捜査の理由を説明したが、「今後軍法会議に持ち込めるかどうか推測するにはまだ早い」と述べた。

 ハドナット二等軍曹の身柄は釈放された二十九日に米海兵隊に引き継がれ、拘禁されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803061300_04.html

 

2008年3月6日(木) 朝刊 2面

陸自訓練17日の週/ハンセン共同使用

 米軍キャンプ・ハンセンで、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が十七日の週に訓練を始めることが五日、複数の関係者の話で分かった。沖縄の米軍施設で陸自部隊が訓練するのは初めてとなる。在日米軍再編の中で、日米両政府がキャンプ・ハンセンや嘉手納基地の共同使用に合意していた。

 陸自が近く、米軍と訓練内容などについて最終調整する見通し。嘉手納基地では米空軍と航空自衛隊の共同訓練が行われる予定だが、開始時期はまだ決まっていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803061300_05.html

 

2008年3月7日(金) 朝刊 2面

地位協定の調査強化へ/見直し重点に取り組む

 上原昭知事公室長は六日、日米地位協定に関する調査スタッフを新年度から強化する方針を明らかにした。県議会予算特別委員会(外間盛善委員長)で、国場幸之助氏(自民)に答えた。

 県はこれまで、基地の整理・縮小や安全保障などに関する情報収集のため、調査を外部に委託してきた。二〇〇八年度は、地位協定の見直し問題に重点的に取り組む。

 調査結果は従来、県の基地行政の政策立案に活用する内部資料としていたが、上原公室長は「成果としてとりまとめ、県民の利用にも役立てられるよう検討したい」と答えた。

 米軍人の基地外居住については「日米地位協定上は禁止規定がなく、米軍が独自に居住できる基準を策定し、住まわせている」と説明した。高嶺善伸氏(護憲ネット)への答弁。

 また、来年度から特例措置で実施する職員の給与削減が県経済に与える影響については、宮城嗣三総務部長が「(投資効果が分かる)産業連関表を用いると、およそ削減額の一・二四倍の影響がある。

 しかし、削減した額がそのままなくなるのではなく、別の事業に回すので詳細は把握できない」と述べた。當間盛夫氏(維新の会)に答えた。


     ◇     ◇     ◇     

メア総領事・地位協定見直し否定/「逮捕権」は運用改善で


 ケビン・メア在沖米国総領事は六日の定例記者会見で、米軍犯罪の再発防止策として挙がっている日米共同パトロールの逮捕権の優先問題について、日米地位協定の運用改善で対応できるとの見解を示した。米政府関係者が地位協定の運用改善に言及するのは異例。

 メア総領事は、日米合同委員会で地位協定の運用改善を協議していると説明。逮捕優先の手続きのあいまいさが問題であれば明確化できるとして、「地位協定を見直す話ではない。具体的に問題がある点はもちろん話す。運用改善はやる用意がある」と繰り返した。

 「反省の期間」として先月二十日から今月三日まで行われた四軍の外出禁止措置は、再発防止ではなく軍と軍属と家族が組織として反省することが重要だった―との認識を示し、「二十四時間、家族を含めた外出禁止は私が知っている限り前例がない。意味があった」と評価した。

 一方で、再発防止に向け、「具体的措置を導入するために米軍と地元で調整する必要がある」とも強調、七日のワーキングチーム会合で具体的に協議する姿勢を示した。

 米軍普天間飛行場の移設計画については、冬季分の環境影響評価(アセスメント)調査が持ち越されているが、「日本政府や日本の法律下の手続きなので、米側は何も言う立場にない。全面的には予定通り順調に進んでいる」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803071300_04.html

 

琉球新報 社説

米兵性犯罪増加 有効な防止策があるのか

 米本国や世界に駐留している米軍人に関係する性犯罪は2006年だけで2947件に上り、05年に比べ約24%(573件)も増加していた。

 これは米国防総省が米連邦上院・下院の軍事委員会に報告した強姦(ごうかん)罪、強姦未遂罪などの件数である。

 事件が起きるたびに綱紀粛正に取り組んでいるはずなのに逆に増えているのは、この間、有効な手だてが講じられてこなかったことを浮き彫りにしている。

 被害者が申し立てをした2277件のうち51%は加害者、被害者がともに軍人で、民間人が被害者になったのは29%だった。

 報告書は、発生した国名、米国内、国外の区別などは明らかにしていないが、53%は米軍施設内で起きている。

 軍人が被害者となる事件が半数を占めていることは、県内の米軍基地内でも、県民が全くあずかり知らないところで相当数の性犯罪が起きている可能性を示している。

 民間人が被害を受け、犯行が表面化するのは氷山の一角とみていいだろう。

 兵士による性犯罪が増加したのは規律が乱れているためなのか、それとも、ほかに原因があるのか。米国政府は、その理由を突き止めると同時に、どうすれば性犯罪をなくすことができるのか真剣に検討すべきだ。

 報告書に記された犯罪件数は、通り一遍の再発防止策では何の解決にもならないことを示している。

 これまで実施していなかった新たな対策を打ち出すことが求められる。

 日米安全保障条約に基づき米軍が駐留するわが国にとって、米軍人の性犯罪の増加は国民の安全に直結する重大な問題だ。日本政府が拱手(きょうしゅ)傍観することは絶対に許されない。

 犯罪の抑止効果を高めるには、すべての犯罪で被疑者の起訴前の身柄引き渡しを米国に認めさせるなど、日米地位協定の抜本的な改定が不可欠だ。米国に対し毅然(きぜん)とした態度で協定見直しを迫ってもらいたい。

(3/7 10:15)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31989-storytopic-11.html

 

2008年3月7日(金) 夕刊 1面

自民、不参加を決定/米兵暴行事件・県民大会

 米兵による暴行事件で、県議会最大会派の自民は七日、議員総会を開き、暴行事件に抗議する県民大会への対応を協議した。会派内は「被害者の感情」などを考慮し県民大会参加に否定的な意見が大勢を占めた。組織的な参加は見送られることが決まり、超党派県民大会の開催は不可能な状況になった。二十三日の県民大会前の米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)の開催も見合わされる見込みで、超党派の県民大会を求めた陳情は事実上不採択になる。「超党派」を前提にしていた仲井真弘多知事の出席も見送られる公算が大きい。

 自民内部では、これまで「事件に対する抗議、綱紀粛正や再発防止策の徹底、基地の整理縮小では一致している」としながらも、「米軍再編の推進で負担軽減を図る与党と、海兵隊の全面撤退を求める野党では基本姿勢が違う」「六月の県議選を前に、野党の反基地運動に政治利用される」などの見方が強い。

 五日の米軍基地特別委員会では、自民内部からは「告訴を取り下げ、『そっとしてほしい』と望む被害者の感情を尊重すべきだ」と開催に否定的な意見が多く、さらに「開催日時や場所を一方的に決め、押し付ける手法はおかしい」という批判が出た。

 事件に対しては、県議会や県内四十一全市町村議会の抗議決議を可決した。県民大会の呼び掛け団体や野党は「抗議は全県的で各界各層を網羅している。事件を許さないという悲痛の叫びだ。仲井真知事が先頭に立ち、再発は許さないという強い怒りを内外に表明するべきだ」と超党派の結集を求めており、自民の不参加に対する反発は必至だ。

 県民大会について仲井真知事は「被害者や家族の心情を第一に、広く県内の各界各層の声を聞く必要がある」と表明している。


     ◇     ◇     ◇     

米兵入居率8割/基地内住宅


 【東京】県内の米軍基地内に今年一月末時点で八千百三十九戸の住宅があり、米軍関係者の入居率が約八割であることが七日、分かった。照屋寛徳衆院議員(社民)の質問主意書に対し、政府が閣議決定した答弁書で明らかにした。

 答弁書によると、八千百三十九戸について米側の調査では、改装中などの理由で使用できない住宅も含まれているというが、それが何件かは明らかにしていない。政府は「有効に使用されている」と説明している。

 照屋氏は、米兵暴行事件で逮捕された米海兵隊員が、基地外に居住していたことを指摘。「空き家があるにもかかわらず、基地外に居住し、さまざまな問題を起こしている」と問題視した。

 答弁書はまた、日本政府が一九七五年度から二〇〇六年度にかけて建設した基地内住宅は六千百八戸に上るとしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803071700_01.html

 

2008年3月7日(金) 夕刊 1面

再発防止で日米協議/米兵事件・事故

 米兵暴行事件など一連の事件を受け、急きょ開催が決まった、米軍人や軍属、家族の事件・事故防止について話し合うワーキングチームの第十六回会合が七日、那覇市の外務省沖縄事務所であり、日米両政府や県がそれぞれまとめた再発防止策について協議した。日米共同パトロールや防犯カメラの設置など日米と地元で見解の異なる防止策などについても意見を交わした。会合は冒頭を除き非公開で行われた。

 議長の倉光秀彰外務省沖縄事務所副所長は「米軍関連の犯罪は二〇〇三年をピークに減少する中、最近の一連の事件は議長として残念。事件・事故を未然に防止するため何ができるか、率直かつ建設的な議論を期待している」とあいさつした。

 共同議長のマーク・フランクリン在日米軍沖縄調整事務所長は「米軍人の事件を真剣にとらえ、防止対策の改善を検討する取り組みに全面的に協力することを誓う」と述べた。

 在日米軍は週明けにも「性暴力の防止と対応に関するタスクフォース(調査特別委員会)」を沖縄に派遣する。フランクリン所長ら同事務所が今回の協議内容をまとめた意見を報告する。

 会合には県の上原昭知事公室長や県警の日高清晴刑事部長はじめ、在沖米四軍、在沖米国総領事館、沖縄防衛局、県内米軍基地所在市町村、商工会など関係団体の責任者ら約三十人が出席した。

 ワーキングチームは原則年一回開催。県は先月二十二日に外出制限措置の徹底や規律違反者やその上司の責任の厳格化などをまとめた七項目計二十の防止策を提案した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803071700_02.html

やまぬ米兵犯罪 県民大会超党派の結集、困難に など  沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(3月3日、4日、5日)

2008年3月3日(月) 朝刊 23面

建造物侵入 米兵逮捕

 沖縄市知花の県建設業協会中部支部のガラス戸を割って室内に忍び込んだとして、沖縄署は二日、建造物侵入の容疑で米空軍嘉手納基地所属の上等兵ウェスリー・タフト容疑者(21)を逮捕した。容疑を認めているという。タフト容疑者は「キャンプ・シールズのフェンスを乗り越えて基地外に出た」と話しており、呼気一リットル当たり〇・三六ミリグラムのアルコール分が検出された。侵入した事務所はフェンスを越えたすぐ近くにあった。

 調べでは、タフト容疑者は二日午前六時四十分ごろ、協会のガラス戸などガラス二枚(五万円相当)を割って鍵を開け、室内に侵入した疑い。

 同署によると、同日午前七時ごろ、事務所の異常警報で駆け付けた警備員がガラスの破損を確認し、警察に通報。付近を捜索していた沖縄署署員が、木の棒を持って歩いていたタフト容疑者を見つけた。同容疑者は草むらの中に逃走、当初は否認していたが、任意同行して詳しく事情を聴いたところ、容疑を認めたため逮捕した。

 ガラスを割るときに使ったとみられる別の鉄の棒も近くの草むらで発見された。室内に侵入した形跡はあるが、物や金が取られた様子はないという。

 タフト容疑者は発見当時、私服で、フェンスを乗り越える際にできたとみられるかすり傷があるという。米軍は現在、県内の米兵や家族を原則外出禁止にしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031300_03.html

 

2008年3月3日(月) 朝刊 23面

米車両出火 立ち往生/名護市汀間

 【北部】二日午前十時四十五分ごろ、北部訓練場へ向かっていた米海兵隊の大型車両一台が名護市汀間の国道331号で出火した。火が出た車両を含めて隊列の大型車両三台が停止し、二時間以上にわたって交通が片側一車線通行に制限された。

 目撃者によると、大型車両のタイヤ付近から煙が上がったという。キャンプ・シュワブの消防車が駆けつけた。引火を避けるため、車両から水タンクやテントなどの装備品を道路脇に運ぶなどし、一時、騒然とした。

 ブレーキ系統の不具合が原因の可能性がある。

 現場にいた米軍幹部によると、キャンプ・ハンセン(金武町)所属の医療部隊で、北部訓練場での野営訓練に向かう途中だった。搭載していたのは「水や食料などで危険物はなかった」という。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031300_04.html

 

2008年3月3日(月) 夕刊 1・5面

知事「綱紀粛正に疑念」/米軍事件続発

 外出禁止措置が続く中、米空軍嘉手納基地所属の上等兵が基地外に出て、沖縄市の県建設業協会中部支部のガラス戸を割り侵入した事件で、仲井真弘多知事は三日午前、「日米両政府や米軍が再発防止策を検討している最中、相次ぐ事件の発生は米軍の取り組みに疑念を抱かせる。綱紀粛正が徹底されていないと言わざるを得ず、極めて遺憾」とのコメントを発表した。米軍に対し、「あらためて隊員一人一人に至るまで、より一層の綱紀粛正を徹底し、事件・事故の再発防止に万全を期すよう強く求める」としている。

 仲井真知事は、登庁の際にも「よほど綱紀がたるんでいるのだろう。ちょっとあきれている」と述べ、外出禁止措置はしばらく続けるべきだ―との認識を示した。

 県の上原昭知事公室長は同日午前、在日米軍沖縄調整事務所長のマーク・フランクリン大佐と第一八航空団司令官のブレット・ウィリアムズ准将に、綱紀粛正の一層の徹底と事件・事故の再発防止を口頭で申し入れた。

 米軍は米兵による事件続発を受け、先月二十日朝から四軍対象に外出禁止措置を実施している。リチャード・ジルマー四軍調整官らが、三日に解除するかどうか検討することになっている。


     ◇     ◇     ◇     

禁足令 早速破たん


 【中部】「再発防止策は機能しているのか」。米空軍嘉手納基地所属の上等兵が、沖縄市知花の事務所のガラス戸を割り侵入した事件に、基地周辺自治体の首長らは、日米両政府による再発防止策の実効性に疑問の声を上げ、怒った。

 沖縄市の東門美津子市長は「今回の外出禁止令について、兵士たちはどう認識しているのか。再発防止の取り組みはどうなっているのか。まったく理解できない」と、あきれた表情。

 米軍関係者が多く生活する北谷町の野国昌春町長は「相次ぐ事件の反省が米軍全体に行き届いていない証拠で、組織の統制が取れていない。容疑者がもし民間人と接触していれば、もっとひどい事件になったかもしれない。外出禁止令期間中にこんなことが続けば、住民の不安は高まる一方だ」と語気を強めた。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田中康榮委員長は、外出禁止令が守られないことを象徴する事例だと指摘。「米軍は綱紀粛正を訴えるが口先だけ。この状況では、住民側も自らの安全を守る方法を考えるべきではないか」と訴える。

 二十三日の県民大会では「何が米軍人犯罪の抑止につながるか、根本的な解決策を話し合う場になるといい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031700_01.html

 

2008年3月3日(月) 夕刊 5面

基地警備員 パワハラ提訴

 九カ月間仕事を与えられず事務所内で待機を命じられるなど、パワーハラスメントで精神的苦痛を受けたとして、在沖米海兵隊日本人警備大隊に所属していた基地従業員の男性(41)が三日午後、元上司の従業員男性に三百万円の損害賠償を求める訴えを那覇地裁に起こした。

 原告の男性は「司令官をはじめ、米軍人は数年で交代する。長年いる少数の日本人幹部が強権を振るっており、職場は異常な状態。パワハラに泣き寝入りする人をこれ上増やさないために提訴した」と語った。

 原告の男性によると、二〇〇六年一月から十月までの九カ月間、キャンプ瑞慶覧内の警備大隊事務所に出勤した上で、何もせずいすに座っているように命じられた。理由は明示されないままで、新聞などを読むことも禁じられたという。

 さらに、男性が犯罪に関与したかのような張り紙を海兵隊基地の各ゲートに掲示し、名誉を傷つけられたとしている。

 海兵隊の基地ゲートの警備に当たる同大隊では、憲兵司令官から基地外で拳銃を携帯するよう命じられたり、パワハラを訴える署名が隊員の過半数に達し、沖縄防衛局が調査を始めるなど、トラブルが頻発している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031700_02.html

 

2008年3月4日(火) 朝刊 1面

在沖米軍 外出禁止 夜間のみ

軍属・家族対象外に

 在沖米軍は三日、相次ぐ米兵の事件を受け、沖縄駐留の全隊員と軍属、家族の外出を原則禁止とした「反省の期間」を終了すると発表した。軍属と家族を対象から除外した上で、軍人については午後十時から午前五時までの夜間外出制限に大幅緩和する。軍人については基地外の飲酒を全面禁止する。午前五時以降に基地内に戻った場合や、基地外居住者に対するチェック体制などは不明。二日には外出禁止措置を破った米空軍嘉手納基地所属の上等兵が、沖縄市の民間施設への建造物侵入容疑で逮捕されたばかりで、外出制限措置の「緩和」に地元の反発が強まっている。

 在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官らが三日、対応を協議。夜間外出制限の対象軍人は年齢や階級に関係なく全隊員に適用することにした。また、基地外に外出した軍人は午後十時までに、所在地から基地や自宅に向けて出発しなければならない、と規定している。在沖米軍は二月十日の暴行事件後、別の暴行事件や住居侵入など米兵による事件が多発したことを受け、「反省の期間」として、軍人・軍属とその家族に対し、二月二十日朝から外出禁止措置を実施。二十五日に継続を表明した後、今月三日に再検討するとしていた。

 ジルマー四軍調整官は「夜間外出禁止令と、日本側と協力して実施する防止策を組み合わせることで犯罪発生の可能性を削減しながら、隊員や軍属らにとって最良の環境を提供できる」としている。


「県民大会参加を」

実行委準備会 超党派訴え


 米兵による事件続発を受け、二十三日に抗議の県民大会開催を目指す実行委員会準備会は三日、県庁で記者会見し、「これ以上の犠牲者を出さないために超党派の県民大会を開催し、県民の総意を早急に明らかにしなければならない」と、参加を呼び掛けるアピールを発表した。

 二日にも沖縄市で空軍兵が建造物侵入容疑で逮捕されるなど、日米両政府による再発防止策に効果がないことは明白だと指摘。大会の要求項目とする基地の整理・縮小などは県議会も決議しているとして、不参加を決めている最大会派の自民にも再考を要請した。

 会見した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「再教育は兵士に浸透していない。まるで戦後の無法状態だ」と憤った。県婦人連合会の小渡ハル子会長も「県民が一丸になるべきで、誰が得をするという問題ではない。自民も県も変わってくれると期待している」と語った。

 六団体による準備会はアピールで、暴行事件の容疑者が釈放されたことについて、「被害者には一点の瑕疵がないにもかかわらず、つらい思いをさせ、支えられなかったことを厳しく受け止めなければならない」と表明。「私たち大人が日米両政府や米軍に要求し、解決を図る」と強調した。

 四十一市町村と各議会、教科書検定問題の県民大会を支えた二百五十以上の団体にも協力を呼び掛ける。また、県内両紙に大会の広告を出すため、個人・団体に協賛を募る。八日に実行委員会の結成総会を開き、大会準備を加速させる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_01.html

 

2008年3月4日(火) 朝刊 29面

「反省やはり形だけ」/首長や団体批判強める

 米兵による事件が引きも切らない中、米軍は三日、「反省の期間」終了を一方的に通告し、外出禁止を大幅に緩和した。「反省はやはり形だけ」「また事件が起きたらどう責任を取るのか」。首長や市民団体からは反発の声が上がった。

 野国昌春北谷町長は「外出禁止令は米軍の一種のパフォーマンスにすぎない」と厳しく批判。「組織のたるみで、度重なる事件について指導が下部の兵士まで行き届いていない。反省の態度がない中で緩和は理解できない」と語気を強めた。

 沖縄市議会は米空軍兵の建造物侵入事件について基地に関する調査特別委員会を五日に開き、対応を協議する。与那嶺克枝委員長は「外出を禁止しても事件が発生する事態を米軍がどうとらえているのか疑問だ。機能していない措置を、さらに緩めるのか」とあきれた様子で話した。

 県婦人連合会の小渡ハル子会長は、「外出禁止令を出すなら、三カ月は続けなければ効果がない。反省はやはり形だけだった」と憤る。「戦後六十年以上この調子。県民大会でまとめて追及していく」と語った。

 「あり得ないタイミングだ。緩和してまた事件が起きたら、どう責任を取るのか」と絶句した沖縄平和運動センターの山城博治事務局長。「私たちに残されているのは、抗議の世論を高めることだけだ」と訴えた。

 県平和委員会の大久保康裕事務局長は「基地がある限り間違いなくまた犯罪は起こる。外出禁止自体が、その場しのぎの反省のポーズでしかなかった」と断じ、「そのポーズすらしないというのは、開き直りそのものだ」と非難した。一方、北谷町で飲食店を営む米国人(33)は「家族や軍属の外出禁止が解除されたのは当然」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_02.html

 

2008年3月4日(火) 朝刊 2面

ワーキング班 7日会合/日米で再発防止策調整

 米兵暴行事件を受け、外務省は日米の関係機関が一堂に会し、米軍人関係者による事件・事故の再発防止策を話し合うワーキングチーム会合を、七日午前、那覇市の同省沖縄事務所で開催することを決めた。外出制限措置の徹底のほか、日米の共同パトロールや防犯カメラの設置など日米と地元で見解の分かれている防止策についても意見交換し、調整を図る。

 同チームは、国や県のほか県内の米軍基地所在市町村や商工会、在沖米軍などが構成メンバー。

 県は先月二十二日、「米軍人等犯罪防止対策に関する検討会議」(会長・仲井真弘多知事)で外出制限措置の徹底や、規律違反者とその上司の責任の厳格化など七項目、計二十の防止対策をまとめた。

 県はワーキングチームなどに提案し、実現を図る考えを示しており、今回の会合で具体的な対応策の方向付けが図られる見込み。

 米軍人関係者の事件・事故防止をめぐっては、在日米軍の作業部会が近く在沖米軍を訪ね、再発防止策の検討のための意見聴取を予定している。

 ワーキングチームの協議内容が、同作業部会のヒアリングにも反映される見通しだ。

 ワーキングチームの全体会合は通常年一回開催し、前回は昨年八月に開かれた。

 今回は米兵暴行事件などを受け、急きょ開催が決まった。


「非常に遺憾」

米軍事件に外務次官


 【東京】藪中三十二外務事務次官は三日の定例会見で、米軍関係者による事件が相次いでいることについて、「米軍、米政府も非常に重く受け止め、相当厳しい措置を取ってきている中で再発するというのは、非常に残念で、遺憾だ」と不快感を示した。

 その上で、「日米で取り組んでいる再発防止策の策定について、これをきちんと実行に移すということが、なお一層大事になっている」との考えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_03.html

 

2008年3月4日(火) 朝刊 1面

国・4業者 あすにも和解/辺野古調査 超過金訴訟

 【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖移設計画の中止に伴い契約解除された、ボーリング地質調査などの受注業者四社が、作業の長期化などで生じた計約二十二億六千万円の契約超過分の支払いを国に求め東京地裁に起こした訴訟で、国と業者側が五日にも和解する予定であることが三日、分かった。国は業者側の要求を大筋で受け入れる方向で最終調整している。予算措置を経ていない公金支出の責任を負う異例の事態を受け、防衛省は今後、関係者の処分などの検討に入る。

 訴訟は、契約解除された十三社のうち四社が、二〇〇六年から相次いで提訴。審理は、併合されないまま、各十回程度行われてきたという。

 契約額の超過分について、防衛省は当初、「財務会計上の再契約などによる超過の負担行為措置を取っていない以上、予算支出はできない」などと難色を示していた。

 しかし、業者側は「作業船の待機や現場への航行、夜間作業などは那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)職員の了解、指示を得たもの」として、再契約などの措置を怠ったのは国の手続きミスと指摘。

 国は今回、こうした業者側の意向を受け入れざるを得ないと判断したもようだ。名護市辺野古沖への移設は、現在の在日米軍再編に伴うキャンプ・シュワブ沿岸部への移設案(V字案)の前に日米特別行動委員会(SACO)で日米合意された計画。〇四年九月に現場でのボーリング調査が着手されたが、辺野古沖では連日、反対する市民団体らが作業を阻み、計画は断念に追い込まれた。

 同計画に関する予算総額は〇一年度から〇五年度までの五年間の歳出ベースで六十五億三千万円に上るが、今回の超過金などでさらに膨れ上がることになる。(島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_04.html

 

2008年3月4日(火) 朝刊 29面

「軍隊は住民守らぬ」/暴行事件通し広島の中学生

 「この事件で確信したのは、軍隊はやはり住民を守らないということだ」「みんなを助けるために基地を置いているという理屈はまったく通りません」。沖縄戦を学んだ広島県の中学生たちが、米兵による暴行事件を本紙を通じて知り、沖縄の問題や軍隊、基地のつながりについて深く考え始めている。広島県福山市にある私立盈進中学校の二年生百五十三人は、一年かけて演劇や映画鑑賞、体験者の講演会などさまざまな形で沖縄学習に取り組んだ。沖縄戦の住民虐殺や「集団自決(強制集団死)」も学び、一月三十一日からは二泊三日の日程で、現地学習も行った。平和の礎など南部戦跡や読谷村のチビチリガマ、宜野湾市の佐喜眞美術館などを回り、さまざまな戦争体験に耳を傾けた。

 広島に戻り沖縄問題を深く考えようとしていたところで米兵暴行事件が起きた。事件後の二月十三日のロングホームルームで二年生四クラスすべてが、沖縄タイムスの号外や詳細を伝える翌日の夕刊の記事をプリントして配り担任が読み上げた。生徒たちは全国紙などの本土紙では、分からない事件の大きさと重さを知り、熱心に聞き入ったという。その後書いた沖縄学習の感想文では、約半数の生徒が事件に触れた。

 女子生徒は「沖縄に米軍基地があるのは日本を守るためと言われています。では、日本を守るための米兵が何故日本人を傷つけるのでしょう?」と疑問を投げ掛けた。

 「日本を守ってくれるはずの米兵が逆に暴行するなどありえない話だ」と記す生徒や、「こんな事件が起きているのに日本は平和だとは言えないと思います。(略)日本はこの問題に真正面から向かっていくべきだと思います」と書く女子生徒も。

 男子生徒は「この事件は沖縄だけの問題ではなく日本全体の問題として考えないといけないと思う。そして沖縄という地をもっと平和な地にしたい」と訴えている。

 学年主任として沖縄学習を進めてきた前田秀忠教諭は「沖縄で多くの人と出会うことで十代の敏感な感性が刺激を受けたのだろう。歴史を学ぶだけでなく自ら歴史と向き合う意志を感じ心強い。これからを生きる土台になる」と話している。生徒たちの感想は文集にまとめられ、関係者などに配ることにしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_05.html

 

琉球新報 社説

やまぬ米兵犯罪 「禁足令」では解決しない

 米兵による不祥事はやむ気配がない。米軍当局の兵士に対する教育や指導はどうなっているのか。

 何も難しいことを求めているのではない。社会の秩序やルールを尊重するのは基本的な当たり前のことだ。それがなぜ守れないのか。憤りを通り越してあきれ返る。

 米空軍嘉手納基地所属の上等兵が2日、建造物侵入容疑で沖縄署に逮捕された。沖縄市知花の民間事務所のガラス戸などを割って事務所内に侵入した疑いだ。米兵は容疑を認めている。

 2月上旬に発生した女子中学生暴行事件やその後も米兵関連の事件が頻発したことを受け、在日米軍は2月20日から米軍人と軍属、家族らに対し、終日の外出禁止措置を取っている。そんな最中に起きた事件である。

 調べによると、同容疑者は酒に酔い、禁を破って基地のフェンスを乗り越え、揚げ句に民間事務所のガラスを鉄製の棒で割って侵入した。言い訳できない蛮行である。軽微な罪種だからといって許されるものではない。

 禁足令は「反省の日」として取られた措置だ。事件を未然に防ぐ狙いもある。しかし今回の事件は、禁足令が再発防止策として効果的に働いていないことを物語る。米軍当局はこの事実から目を背けてはならない。

 相次ぐ米兵事件に対し、米国務長官や駐日米大使、在沖米四軍調整官らがこぞって謝罪し、綱紀粛正を約束したが、あれは何だったのか。空手形となったいま、しらじらしく響く。

 四軍調整官を頂点とする在沖米軍の指揮・命令系統が末端まで行き届いていないのではないか。そんな疑念が消えない。組織として機能不全に陥っているとしか言いようがない。

 仲井真弘多知事は、米軍の取り組みに疑問を呈した上で「綱紀粛正が徹底されていないと言わざるを得ない」と批判。仲里全輝副知事は「犯罪の軽重ではない。これは軍隊としてだけではなく、米国の恥辱の問題だ」と指弾したが、的を射た発言であり、多くの県民もまた同じ思いだろう。

 なぜ事件、事故はいつまでも繰り返されるのか。規律の緩みに起因していることは、まず間違いあるまい。再発防止策として警察と米側による共同パトロールや防犯カメラの設置などが、日米間で検討されている。だが、法の順守などの基本的な要件が徹底して満たされない限り、実効性は望むべくもない。根本的な問題にメスを入れるべきだ。

 県民にこれだけ不安を与え、不信感を買いながら、米軍側から責任の所在を問う声が聞こえてこないのも腑に落ちない。

(3/4 10:01)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31896-storytopic-11.html

 

2008年3月4日(火) 夕刊 1面

米兵犯罪「対策徹底を」/県、米軍に7項目要請

 米兵暴行事件など相次ぐ米軍関係者の事件を受け、県の保坂好泰基地防災統括監は四日、北中城村・キャンプ瑞慶覧の在日米軍沖縄調整事務所や浦添市の在沖米国総領事館、那覇市の沖縄防衛局を訪ね、米軍人らによる犯罪の防止対策の徹底を申し入れた。

 保坂統括監によると、在日米軍沖縄調整事務所で応対したマーク・フランクリン所長は「上司に伝える。実効性のある施策を協議していく」と答えたという。

 外出禁止措置中に米兵がフェンスを乗り越え沖縄市内の民間施設に侵入した事件について、フランクリン所長は遺憾の意を示したが、三日夜から導入された外出禁止措置の緩和策については言及しなかったという。

 在沖米国総領事館ではカーメラ・カンロイ首席領事が、沖縄防衛局では岡久敏明管理部長がそれぞれ応対。岡久管理部長は「私どもも、防衛省も含めて最大限努力したい」と述べた。

 要請書は北谷町で起きた米兵暴行事件に触れ「強い憤りを覚える」と糾弾。米軍人に対する研修(教育)プログラムの見直しや生活規律の強化、基地外に居住する米軍人らの対策、防犯施設の充実・強化など、県が二月二十二日にまとめた七項目の防止対策を説明し、防止策に県の考え方を取り入れるよう強く求めた。

 保坂統括監は「米側も何度も再発防止を言ってきているが、なかなか実効性が担保されていない」と指摘。七日に開催されるワーキングチーム会合に触れ、「県も参加し、みんなで力を合わせて取り組んでいきたい」と訴えた。

 県は午後、外務省沖縄事務所に同様の要請を行う。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041700_03.html

 

2008年3月4日(火) 夕刊 5面

うるま議会抗議決議/民間地銃携帯

 【うるま】うるま市議会(島袋俊夫議長)は四日午前の三月定例会冒頭で、同市内の米軍キャンプ・コートニーなどで、日本人警備隊員が実弾が装てんされた拳銃を携帯したまま民間地域を移動していた件で、再発防止などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 同件での抗議決議は県内市町村議会で初めて。決議では警備隊員の基地外の拳銃携行が同市のキャンプ・コートニーからキャンプ・マクトリアスまでの約二キロに及んでいることや、過去には県内で日本人警備隊員の拳銃を狙った事件が発生していることなども指摘。携行は銃刀法違反の恐れもあるとして、米海兵隊憲兵隊司令官が、日米地位協定上禁止されている行為を基地従業員に強制することは容認できないと強調している。

 再発防止と事実関係の公表、米軍組織の管理体制と責任の明確化を求めている。抗議決議のあて先は首相、外相、防衛省など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041700_04.html

 

2008年3月5日(水) 朝刊 1面

民間地飛行回避を/普天間アセス

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の追加修正資料について、県は四日、騒音やジュゴン調査などに関する二十六項目百一件の「県の意見」を取りまとめ、文化環境部長名で沖縄防衛局に郵送した。意見の中で県は「民間地上空の飛行ルートを回避するという名護市長や宜野座村長との基本合意を誠実に履行する必要がある」と注文を付けた。防衛局は来週にも方法書を確定し、再公表を実施。早ければ今月中にもアセス調査の許認可を県などに申請する。

 意見送付を受け、沖縄防衛局は同日、「速やかに所要の手続きを行い、できるだけ早く環境調査を実施したい」との方針を示した。

 防衛局は方法書を確定するに当たり、追加修正資料を県に提出した際と同様に、県内五カ所で二週間の閲覧期間を設ける見通し。その後、アセス調査に必要な水質や海域生物調査など約十項目の許認可を県や名護市に申請する。

 追加修正資料で「訓練の形態などによっては集落上空を飛行することもあり得る」と記載されたことを受け、県は意見の中で、集落上空を飛行する訓練形態を具体的に明らかにするよう求めた。

 また、サンゴ類や海藻、ジュゴン、動植物、アジサシ類などの調査について一年では不十分と判断。「(アセス調査で)影響を大きく受けると考えられる環境要素にかかわる調査は、四季の調査や複数年調査を実施するなどその手法を重点化して行わなければならない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051300_03.html

 

2008年3月5日(水) 朝刊 2面 

再発防止に「教育改善」/米兵暴行事件

 【東京】在日米軍トップのエドワード・ライス司令官(空軍中将)は四日夕、防衛省に石破茂防衛相を訪ね、米兵暴行事件に遺憾の意を示した。その上で、事件を受けてライト前司令官が取り組んでいた教育プログラムの改善について、「引き続き推し進めていきたい。さらに改善できるよう、努力していきたい」と再発防止に積極的に取り組む姿勢を表明した。

 会談で石破防衛相は「幾つかの不幸な事件があったが、こういったことは、同盟の根幹を揺るがしかねないような重要な問題だ」と事件の深刻さを強調。その上で「米政府、在日米軍が、迅速に誠実に対応しているということが必要だ。それだけではなく、きちんと目に見えるように(国民に)分かってもらうことも必要だ」と指摘した。

 これに対しライス司令官は、「在日米軍はこういう事件が起きないよう、地元と協力し、安心感を与えるために何でもする」と説明。また、「今回は沖縄のことについて本当に心を痛めているが、日本中すべての米軍基地で、これらが徹底できるように努力していきたい」との考えを強調。

 両者は、在日米軍再編の着実な実施に向けて努力する方針も確認。石破氏は抑止力の維持について、「日本では大きな議論になりにくいが重要なことであり、きちんと議論し国民に納得してもらう必要がある」と説明。

 これにライス司令官も「中心的課題として議論していく必要がある」と応じた。


     ◇     ◇     ◇     

県提案 協議の意向/外務省沖縄事務所


 県の保坂好泰基地防災統括監は四日、外務省沖縄事務所を訪ね、米軍の犯罪の防止策について要請した。応対した倉光秀彰副所長は「事件・事故は減る傾向で努力が実を結んだかと思ったところに一連の事件が起こった。非常に残念」と述べた。

 倉光副所長は「事件・事故を一気に皆無にするのはなかなか困難。県の提案も踏まえ継続的に取り組んでいきたい」と述べ、七日開催のワーキングチーム会合で協議する意向を示した。

 保坂統括監は「個人的見解」と前置きした上で、「米軍のそれぞれの任期は長くても三年だが、県民は戦後六十年余り米軍と隣り合わせ。軍は組織として過去の犯罪を認識するよう、特に兵隊を管理監督する上官は後任者にしっかり引き継ぐよう、外務省からも伝えてほしい」と求めた。

 またワーキングチーム会合の開催数を増やすよう要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051300_06.html

 

琉球新報 社説

外出禁止緩和 あきれる外相の傍観姿勢

 「全く米軍の自主的な措置なので、われわれがとやかく言う話ではない」。これは4日の閣議後記者会見で、在沖米軍が軍関係者の外出禁止措置を緩和したことについて問われた高村正彦外相の発言である。

 一体全体、駐留米兵によって国民の安全が脅かされている現状をどう認識しているのか。あまりにも傍観者的で危機感に乏しい。

 米兵女子中学生暴行事件をはじめ度重なる事件を受け、米軍は2月20日から「反省の期間」として軍人、軍属、家族の外出禁止措置を実施してきた。

 だが期間中も、フェンスを乗り越えた嘉手納基地所属の上等兵が建造物侵入容疑で逮捕されるなど、一向に反省の色が見られない。

 県民の多くは、事件が相次いでいるので外出禁止措置がそのまま継続されるものと考えていたのではないか。

 ところが在沖米軍は、軍人は午後10時から翌日午前5時までの夜間だけを外出禁止とし、軍属と家族の外出禁止措置は解除した。

 「『反省の日』の期間は終了した」と言ってのける米軍の神経は、到底理解できない。

 米軍人は基地内と自宅以外での飲酒が禁じられたとはいえ、午後10時までは自由に民間地域に立ち入ることができる。規制を解かれた軍属に対し十分に教育がなされたのか。米軍は県民の不安を取り除き、再び事件を起こさないための対策を何ら示し得ていない。

 「反省の期間」でさえ事件が起きた。「綱紀粛正を図っている」という米軍の説明をうのみにするのはよほどのお人よしだろう。

 そのような中で、外相が「とやかく言う話ではない」と、まるで傍観者のような姿勢を取っていて、果たして事態を改善できるのか。

 沖縄の米軍は日米安全保障条約に基づき駐留している。もとより、米軍基地がなければ兵士による犯罪が起きることもない。米軍人等による事件・事故は、過重な基地負担を沖縄に強いてきた国策の結果、もたらされたものだ。

 日米安保に関する外交政策を担うのが外務省だ。そのトップである外相は、国策によって被害者が生まれていることを、十分に理解する必要がある。

 本来、続発する事件に対し猛然と米国に抗議しなければならないはずの外相が、米国に遠慮し、及び腰の姿勢を続けていたのでは、いつまでたっても事件・事故を減らすことはできないだろう。

 町村信孝官房長官も4日の会見で「さすがに家族について、いつまでも外出禁止というわけにはいかないのだろう」と、米軍の対応に理解を示していた。

 政府は、米軍ではなく、沖縄県民の目線に立って、事件の再発防止に取り組むべきだ。

(3/5 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31922-storytopic-11.html

 

2008年3月5日(水) 夕刊 1面

超党派結集 困難に/県民大会

 米兵による暴行事件で、県議会の米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)は五日、県婦人連合会や県子ども育成連絡協議会などが事件に抗議し、超党派の県民大会開催を求めた陳情について協議した。与党の自民と公明県民会議が「会派で結論が出ていない」と持ち帰って検討する意向を示し、継続審議となった。次回の軍特委は十七日以降に開催される予定だが、与党内部では大会への組織的参加に反対する意見が強く、二十三日に予定されている県民大会への超党派結集は極めて厳しい状況になった。

 「超党派」を前提条件にしていた仲井真弘多知事の参加も見送られる公算が大きい。超党派による県民大会の可能性が閉ざされた場合は、開催を目指す団体・組織からの反発は必至だ。

 陳情は「県民は戦後一貫して基地からの被害を受け、人権そのものが踏みにじられてきた」と指摘。暴行事件後も相次ぐ事件・事故を批判し、日米両政府の謝罪と再発防止の具体策を求め、県議会を含めた超党派の県民大会開催や日米地位協定の抜本的改定などを求めている。

 軍特委で、仲井真知事の参加について、上原昭知事公室長は「被害者や家族の心情を第一に、広く県内の各界各層の声を聞く必要がある」と答弁した。

 県議会や県内全四十一全市町村議会の抗議決議可決や県民大会実行委員会準備会の呼び掛けに対し、野党の委員からは「抗議は全県的で各界各層を網羅している。事件を許さないという悲痛の叫びだ。仲井真知事が先頭に立ち、再発は許さないという強い怒りを内外に表明するべきだ」と暴行事件後も相次ぐ米兵の事件に、「もはや綱紀粛正では体をなさず、県は怒りの意を表明するだけでは駄目」と強調。「告訴を取り下げた被害者の心情を代弁し、県民大会で再発防止を訴える」などの意見が上がった。

 自民の委員からは「告訴を取り下げ、『そっとしてほしい』と望む被害者の感情を尊重すべきだ」と開催に否定的な意見が出た。さらに「開催日時や場所を一方的に決め、押し付ける手法はおかしい」という批判も出た。

 自民、公明県民会議は近く、会派内で対応を協議し、最終的な判断を示すとしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051700_01.html

 

2008年3月5日(水) 夕刊 1面

国、業者に21億8000万円/辺野古調査超過金訴訟

 【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖移設計画の中止に伴い契約解除された、ボーリング地質調査などの受注業者四社が、作業の長期化などで生じた計約二十二億六千万円の契約超過分の支払いを国に求め東京地裁に起こした訴訟の和解案の全容が五日午前、分かった。国は業者に二十一億八千万円を支払うことに応じ、同日午後に正式に確定する。

 予算措置を経ていない公金支出の責任を「組織」として負うという異例の事態を受け、防衛省は今後、関係者の処分などの検討に入る。

 訴訟は、契約解除された十三社のうち四社が、二〇〇六年から相次いで提訴。双方の主張、立証が終結し、東京地裁が二十一億八千万円の和解金を支払う案を提示。

 業者側はこれに応じ、当初は「財務会計上の再契約などによる超過の負担行為措置を取っていない以上、予算支出はできない」などと難色を示していた国側も訴訟の長期化などを懸念し、受け入れることとなった。

 防衛省は和解について「再発防止策を講ずるとともに、引き続き普天間飛行場代替施設建設事業を円滑に実施していきたい」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051700_03.html

 

2008年3月5日(水) 夕刊 5面

大浦サンゴ群落調査/基地影響解明へ

 【名護】日本自然保護協会(NACS―J)や沖縄リーフチェック研究会は四日、昨年九月に名護市の大浦湾で見つかったアオサンゴ群落の現地調査を開始。群落周辺に生息する貝や砂など底質のサンプリングを行った。

 調査は、六日までの予定で行われ、水質やユビエダハマサンゴ群落周辺の調査なども行う予定。

 アオサンゴの大群落については、ジュゴン保護基金委員会と沖縄リーフチェック研究会が今年一月に調査を行ったが、より詳細な調査を行うため、同協会が調査に参加した。

 同協会の大野正人さんは「内湾状の湾で、広くアオサンゴの群落が生息している特異な環境。今後調査を続け、基地建設によってどのような影響を受けるかを解明したい」と話した。

 同協会では、今後調査を予定している世界自然保護基金(WWF)の調査結果と合わせて、今年五月か六月ごろに結果を公表する予定という。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051700_06.html

中学生暴行事件、海兵隊員を釈放など  沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(3月1日、2日)

2008年3月1日(土) 朝刊 1面

海兵隊員を釈放/中学生暴行事件

被害者、告訴取り下げ/米軍が再び身柄拘束

 米兵による女子中学生暴行事件で、那覇地検は二十九日、強姦容疑で県警に逮捕され、取り調べを進めていた在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)を不起訴処分とし、同日午後八時四十二分、釈放した。被害者本人が告訴を取り下げた。「そっとしておいてほしい」との意向だったという。ハドナット二等軍曹の身柄は米軍の憲兵隊に引き継がれ、海兵隊が拘禁。ケビン・メア在沖米国総領事は「日本政府が一次裁判権を放棄すれば、米軍当局が証拠を調べ、捜査した上で処遇を判断することになる」と語った。

 強姦罪は、刑法により告訴がなければ起訴することができない親告罪。刑事訴訟法で、告訴は起訴までに取り消すことができるが、いったん取り消せば同じ事件で再び告訴することはできない。告訴の取り消しにより、裁判を進めるための訴訟条件が消滅した。

 告訴の取り消し理由について、那覇地検の山舖弥一郎検事正は「被害者の気持ちに反するので細かく申し上げることはできない」とし、親告罪ではない別の罪で立件する可能性について「被害者の気持ちを考えれば適当ではない」と述べた。

 ハドナット二等軍曹は二月十日午後十時半ごろ、本島中部の路上に駐車した乗用車内で、被害者を暴行したとして十一日未明に沖縄署に緊急逮捕された。被害者は午後十一時前に解放され、うずくまっているところを警察官に保護された。

 事件をめぐっては、県議会と全四十一市町村が抗議決議、沖縄や岩国基地の軍人や軍属を、無期限で外出禁止にするなどの措置が取られた。三月二十三日には北谷町で事件に抗議する県民大会の開催が予定されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803011300_01.html

 

2008年3月1日(土) 朝刊 26・27面 

痛恨 被害者守れず/地検苦渋 天を仰ぐ

 また被害者を守れなかった―。米兵による暴行事件は二十九日、容疑者の釈放という予想外の形で幕が引かれた。日米両政府は安保体制のほころびに危機感をあらわにし、一部メディアは好奇の目を向けた。あまりにも大きな負担を背負った被害者から、届いたのは「そっとしておいてほしい」という言葉だった。天を仰ぐ那覇地検の検事正。首長や市民団体は、支援が徹底できなかった痛恨を語った。米軍基地が集中し、犯罪が頻発する現実とどう向き合うか。日米両政府は、再発防止の取り組みを誓い、県民大会の模索も続く。

 「容疑者を本日釈放した」。那覇地検五階会議室での記者説明。山舗弥一郎検事正は午後九時四十分、駆け付けた二十人の報道陣を見渡し、一言一言かみしめるように書面を読み上げた。「本日付で不起訴処分」。大きく息をついた後、「申し上げられることは以上」と言葉を切った。

 張り詰めた空気の中、報道陣から矢継ぎ早に質問が飛んだ。「告訴取り下げの理由は何か」「容疑の事実関係はどうなのか」。山舗検事正は「被害者の気持ちに反するので詳細は言えない」と、何度も繰り返した。

 被害者感情に話が及ぶと、天を仰いだ後「そっとしておいてほしい、ということのようだ」と説明。会議室は一瞬、静まり返った。

 告訴を取り下げるような働き掛けがあったかとの問いには「一切ない。失礼だ」と声を荒らげた。捜査の適正性を問う質問には「(親告罪なので)告訴が取り下げられたら絶対、起訴できない。被害者の気持ちを重視し粛々とやるしかない」と顔を紅潮させた。その後も「事情を理解してほしい」と繰り返し、説明は二十分で終了した。


     ◇     ◇     ◇     

買い物の高校生「怖い」

基地の街 不安の声


 【沖縄】「米兵がまた、同じような事件を起こさないか怖い」「外出禁止令は早めに解除してほしい」―。二等軍曹が被害者に声を掛けた沖縄市のコザ・ゲート通りは、二等軍曹が釈放された二十九日夜も、外出禁止令の影響で通りを歩く米兵の姿はなかった。米兵相手の店が多い通りでは、釈放の知らせに不安の声が上がった。

 同通りで買い物をし、迎えの家族を待っているという高校一年の女子生徒(16)は「米兵が、また事件を起こさないか。(綱紀粛正策を行っているが)忘れたころに、また事件が起きないか」と心配した。

 コザ・ミュージックタウンに食事に来たという沖縄市のアルバイトの女性(21)は「事件で日本政府だけでなく、アメリカのライス国務長官も謝罪した。大きな騒ぎになったことで被害者は動揺したのではないか」と話した。

 週末には十台近いタクシーが並ぶコザ・ゲート通りも、外出禁止令が出て二度目の週末は、わずか数台だけだった。

 うるま市のタクシー運転手(61)は「売り上げも落ちており、外出禁止令は早めに解除してほしい。しかし、(事件が発生した)米兵が出歩く街をつくったのは大人の責任でもある」と口ごもった。


県民大会呼び掛け人ら複雑/基地集中 構図同じ


 3月の県民大会開催を呼び掛けてきた市民団体も、言葉を失った。被害者の選択に理解を示しつつ、米軍基地と米兵犯罪が集中する構図は変わらないと指摘。引き続き、大会開催を模索する考えを示した。

 県婦人連合会の小渡ハル子会長は、「また同じことの繰り返しにならないか」と懸念しつつ、「被害者や家族の気持ちも分かる」と複雑な心境をのぞかせた。

 県民大会に向け、この日も東門美津子沖縄市長に協力を要請してきたばかりだった。小渡会長は、「(開催に)どうしても影響してくる」と困惑しながらも、「二度とこういう事件が起こらないように、抗議する意志は変わらない」と、実現に前向きな態度を示した。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長も「容疑者釈放で、沖縄に米軍基地が集中し、米兵による女性や子どもの暴行事件が相次いでいる構造が変わるわけではない」と強調した。

 一日には、関係団体と大会開催に向けた役割分担などを話し合う予定だ。「大会開催の是非そのものを含めた話し合いになるだろう」とした上で、「米兵犯罪が集中していることを、県民が黙っているままでいいのだろうか。そのことは訴え続けたい」と話した。

 県高校PTA連合会の西銘生弘会長は「向こうは大の大人。どんな常識で考えても、被害者の子は悪くない。ライス国務長官も謝罪していたが、米政府が本当に(米兵犯罪に)危機感を持っていたら、起こるはずはなかった事件なんだ」と強く指摘した。

 二月十九日に抗議の緊急女性集会を開いた「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表は「この二週間以上、被害者がどれだけつらい思いをしてきたか。支えきれなかった…」と声を詰まらせた。

 一部メディアの好奇の目にさらされ、公判になればつらい質問も予想された。「成人女性でも後悔することがある。被害者の心身の安全を公的に保障するシステムをつくらない限り、皆が犯罪をただすより、沈黙を選択する社会になってしまう」と訴えた。


[解説]

被害者に大きな重圧

問われる支援態勢確立


 米兵暴行事件で容疑者が不起訴処分とされたのは、強姦が被害者の告訴を必要な親告罪であるためだ。被害者側が告訴を取り下げれば、検察が起訴して加害者の刑事責任を追及することはできない。性犯罪の場合、事件が公になることでかえって被害者に不利益になることがあり、被害者側が告訴せずに事件が表面化しない事例は少なくない。

 とりわけ、今回の事件は国内外で取り上げられ、大きな重圧がかかった。被害者側は当初,告訴の意思を示していたものの、取り下げを選択せざるを得なくなったともいえる。

 県警は事件の通報を受け、被害者の詳細な証言などから強姦の疑いが強いとみて捜査し、容疑者も容疑事実を認める供述をしていたとされる。

 一方、事件以降、県内では県民大会開催の動きが活発化。全四十一市町村と県議会が抗議決議し、米軍は軍人・軍属を外出禁止とした。日米両政府内には、米軍再編への影響を指摘する声も強まっていた。

 結果的に、被害者は日米安全保障にかかわる政治問題を一人で背負い込むことになった。加えて一部報道機関が被害者への周辺取材を進めるなどし、県警は「二次被害」を懸念していた。

 基地が集中する沖縄では、一九九五年に起きた暴行事件など、米兵絡みの性犯罪が後を絶たず、被害者が告訴をしない事例もある。今回の告訴取り下げは、被害者をどう支えていくかという課題を突きつけた。(社会部・鈴木実)


政府冷静 影響を注視/再発防止 引き続き促す


 【東京】外務省、防衛省、内閣府などの沖縄関係省は二十九日夜、一斉に事実確認などの情報収集に追われた。事件を受けた再発防止策への影響について、関係者は「日米の取り組みのきっかけは、この事件だけではない。実効性ある再発防止策を実施する方針には何ら変わりはない」(日米関係筋)など比較的、冷静な受け止めで一致している。一方で「県民大会に向けた機運にどの程度影響するかは注視したい」(防衛筋)と影響を図りかねる声も上がった。

 防衛省幹部は、「告訴取り下げはあくまでも被害者の事情によるものだ。事件が重大であることはこれまでと何も変わらない。政府の立ち位置も変わることはない」と指摘。再発防止に向けた取り組みを引き続き積極的に進める考えを強調した。

 同幹部はまた、「米軍関係者には、告訴取り下げを楽観的に受け止めないでもらいたい」とも述べ、米軍による再発防止策の取り組みを促した。

 内閣府幹部も「再発防止策は暴行事件だけでなく、酒酔い運転、住居侵入など一連の事件を受けて取り組みを始めた経緯がある」と述べ、政府の方針に変更がないことを強調した。

 一方、県幹部は同日夜、「こういうケースでは被害者の気持ちが一番大事なので県として何ともコメントできない」と述べた。一日午前、仲井真弘多知事のコメントを発表するとしている。

 二十九日夜、急きょコメントを発表したケビン・メア在沖米国総領事は「予期しなかった結果で驚いている」とした上で、「非常に遺憾な事件であることは変わらない。このようなことを防ぐため、作業部会などの検討や、教育プログラム見直しを続けたい」と表明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803011300_02.html

 

2008年3月1日(土) 朝刊 1面

自民、県民大会に不参加/野党主導を懸念

 米兵による暴行事件を受け、県議会最大会派の自民は二十九日までに、北谷町の北谷公園で二十三日午後二時から開催予定の県民大会に参加しないことを決定した。日米安保や米軍再編に対する基本姿勢の違い、政治利用化される懸念などを挙げ、「野党主導になりかねない大会に参加すべきではない」と判断した。

 仲井真県政の与党最大会派の不参加決定で、超党派を前提にしていた仲井真弘多知事の出席も見送られる公算が大きくなった。

 自民は二月二十八日夜に開いた議員総会で、県民大会への対応を協議した。総会では「事件に対する抗議、綱紀粛正や再発防止策の徹底、基地の整理・縮小では一致している」としながらも、「米軍再編の推進で負担軽減を図りたい与党と、海兵隊の全面撤退を求める野党では基本姿勢が違う」、「六月の県議選を前に、野党の反基地運動に政治利用される」などの意見が相次ぎ組織的な参加を見送った。

 野党が、謝罪に訪れた米側高官らに対する仲井真知事の応対を批判したり、今定例会で野党議員が仲井真知事の答弁を「セカンドレイプ」と発言したりしたことなどをとらえ、「野党は知事への人格攻撃を繰り返した。知事を先頭に超党派で結集できる状況ではない」という反発も影響したという。

 新垣哲司幹事長は「県民大会とは別に、仲井真知事と連携し、米軍の綱紀粛正や再発防止策の徹底を求めていきたい」と述べた。

 自民は、県民大会の実行委員会準備会(仮称)が県議会米軍基地特別委員会に提出した県民大会の開催を求める陳情に賛成しない方針だ。

 同じく与党会派の公明県民会議の糸洲朝則代表は「定例会の代表一般質問で、仲井真知事と野党の論戦は平行線をたどり、一致していない。仲井真知事が出席できる状況なのか今後の動向を含め慎重に判断する」としている。

 同事件には、県議会や全四十一市町村議会が抗議決議を可決している。(与那原良彦)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803011300_03.html

 

2008年3月1日(土) 朝刊 2面

銃携行「極めて遺憾」/高村外相、初めて言及

 【東京】高村正彦外相は二十九日、衆院予算委員会で、県内で日本人基地従業員が、米軍司令官の命令で、拳銃を携行したまま基地外に出ていた問題について「極めて遺憾だ」と述べ、米側に綱紀粛正の徹底を申し入れたことを明らかにした。同問題に外相が言及するのは初めて。下地幹郎氏(無所属)への答弁。

 外務省日米地位協定室によると、同室は二十六日、在日米国大使館に対し事実関係を照会するとともに、「事実なら遺憾だ。基地外で銃の携行は禁じられているので徹底してほしい」などと申し入れた。

 これを受け、同大使館は二十八日、「本来の在り方と違う指示が出ていたようなので撤回した。指示が出て二十七時間後に撤回した」と釈明。同室は「きちんとやってほしい」と重ねて綱紀粛正を求めたという。

 一方、福田康夫首相は、沖縄の基地や経済の諸問題を踏まえ、「日米安保条約に基づいて沖縄に多大な負担かけているが、負担軽減を図りながら経済自立を達成するためにいろいろ工夫し、努力していかなければならない」と述べ、政府が今後も支援していく考えを示した。

 米兵暴行事件に関し、首相は「まさに、日米安保体制を壊してしまう危険性をはらんだ問題だ。日本の安全保障体制の根幹になってくるわけで、無視し得ない問題だ」と事態の深刻さを強調。

 その上で「こういうこと(米兵犯罪)をなくして、(米国との)信頼関係を強める。県民に迷惑をかけない体制をつくらないといけないと、深刻に思っている」と述べ、再発防止に向けて日米で全力を挙げて取り組む姿勢を示した。

 前原誠司氏(民主)への答弁。

 また、町村信孝官房長官は、次回の「普天間移設協議会」の開催時期について、「予算が成立することを受けて、三月末というより四月の早い時期に一回開ければ、と思っている」と述べ、四月上旬との見通しを示した。

 西銘恒三郎氏(自民)への答弁。


     ◇     ◇     ◇     

真部沖縄防衛局長「あってはならない」


 在沖米海兵隊の憲兵隊司令官が日本人警備員に拳銃を持たせて基地外を移動させた問題について、沖縄防衛局の真部朗局長は二十九日の定例会見で「あってはならないこと」と述べ、日米地位協定上、問題があるとの見解を示した。

 同問題について真部局長は「日米地位協定との関係でもすでに問題があり得る行為と思っている」と指摘。「基地外で警備員に銃器を携帯させたということについては、あってはならないことだと認識している」とし、司令官の指示が確認された場合には、撤回を求める考えを示した。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)で、二月中に実施できなかった冬季調査を十二月に持ち越すのかについては「一般的に考えれば冬季の調査は必要になると思うが、技術的あるいは県の意見を踏まえて他の手段があり得るかということについても検討はしたい」と説明。

 ただ、アセスに基づく冬季調査の代替手段については「特定のものを想定しているものではない」と述べ、現況調査(事前調査)の結果を活用するのかどうかについても言及を避けた。

 また、準備書の提出については「法令上、方法書に基づく調査を行った上で準備書は作成すべきものと思う」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803011300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月1日朝刊)

[「迷走」防衛省]

組織体質にメス入れよ

 イージス艦衝突事故をめぐって防衛省が迷走している。例えは悪いが、迷路の中をちょろちょろ動き回るドブネズミのように見える。

 緊急時の対応手順や連絡体制が組織文化として身についていないために、情報の伝達が伝言ゲームのような様相を呈し、省幹部の説明が二転三転。食い違いを指摘されるたびに、発言を修正、訂正するという体たらくだ。

 いや、ひょっとしたら、そういうことではないのかもしれない。緊急時の連絡体制が機能していないのではなく、実は、自分たちが不利にならないように、情報を操作したり隠ぺいしたりしているのではないか。そんな疑念が消えない。

 事故発生後の国会質疑や記者会見などを通して浮かび上がってきたのは、防衛省と海上自衛隊の組織体質の問題である。

 講和条約発効後の一九五四年、防衛庁が設置され、陸・海・空自衛隊が発足した。内閣府の外局と位置づけられていた防衛庁が防衛省に昇格したのは二〇〇七年一月のことである。

 省昇格は、関係者にとって防衛庁発足以来の悲願だった。だが、皮肉なことに省昇格後、次から次に問題が噴出している。組織の信頼性を著しく損ねる結果を自ら招いているのである。

 インド洋での海上自衛隊の給油活動をめぐっては、米補給艦への給油量の誤りを〇三年に把握していたにもかかわらず、外部からの指摘で〇七年に訂正するまで、その事実を隠し続けていた。

 海上自衛隊の補給艦の航海日誌が破棄されていたことも分かった。イラク作戦への転用疑惑を隠ぺいするために意図的に破棄したのではないか、との疑いは今も消えていない。

 イージス艦の衝突事故をめぐっては、漁船発見の時間が衝突の「二分前」から「十二分前」に変わったのをはじめ、あやふやな説明と前言訂正が相次いでいる。

 防衛省は、事故を起こしたイージス護衛艦「あたご」の航海長をヘリで呼び寄せ、海上保安庁に無断で事情を聴いた。そのこと自体問題だが、事情聴取の事実関係について防衛省の説明は二転三転、そのことが口裏合わせの疑惑をもたれている。

 容易ならざる事態というほかない。

 石破茂防衛相が責任を取るのは当然だが、トップの首をすげ替えただけで組織体質が改まるとはとても思えない。

 防衛省や海上自衛隊の組織体質のどこが問題なのか。福田康夫首相は、そのことを明確にし、防衛省の解体的出直しに取り組むべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080301.html#no_1

 

2008年3月1日(土) 夕刊 1・5面

県民大会開催を確認/米兵暴行事件

 本島中部での暴行事件で逮捕された米海兵隊二等軍曹が告訴取り下げにより釈放されたことを受け、暴行事件に抗議する県民大会の開催を目指す実行委員会準備会が一日午前、大会開催の是非などについて話し合った。「米軍基地が集中する沖縄で、米兵による事件が起こり続ける構造は変わりはない」と二十三日に予定している大会の開催方針を確認した。三日に正式な準備会を開き、呼び掛け団体の意向を確認、その後に記者会見を開いて開催を正式発表する。

 話し合いをしたのは、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長と県婦人連合会の小渡ハル子会長。小渡会長は「米兵釈放のニュースを聞き、昨夜、眠らずに考えた」と話し、「米軍統治下にあったときから、沖縄県民は米兵による犯罪の被害に遭い続けてきた。女性、子どもが被害者となる事件も続いており、大会開催の意義は変わらない」と、あらためて大会開催の意志を示した。

 玉寄会長も「沖縄で米兵による事件が続発している以上、これは県民全体の人権の問題だ」と大会開催の方針続行に同意を示した。

 大会の名称を「米兵による少女・婦女子への暴行事件に抗議する県民大会」から「米兵によるあらゆる事件、事故に抗議する県民大会」などに変更することも今後、検討する。

 自民党県連が県民大会に参加しない意向を決めたことについて、小渡会長は「これは県民全体がかかわる問題で、私たち超党派の県民組織が参加を呼び掛けている。県議会での対立構造を持ち込み、『あなたたちとは一緒にやれない』というのは理解に苦しむ」と批判し、引き続き、県議会に協力を求めていく考えを示した。

 準備会呼び掛け六団体に労働団体の代表として連合沖縄を新たに加え、七団体を中心に大会への準備を進める方針も話し合った。

 三日午前に七団体で緊急の話し合いを持ち、大会開催を決定する。八日には県民大会実行委員会の結成式を開き、準備を急ぐという。


     ◇     ◇     ◇     

引き続き再発防止要求/仲井真知事がコメント


 米兵による暴行事件の容疑者釈放を受け、仲井真弘多知事は一日午前、「いずれにしてもこのような事件は決して許されず、他の事件が続発していることも事実。米軍、日米両政府は引き続き県民が納得できる形で具体的な再発防止策を講じ、万全を期してほしい」とコメントを文書で発表した。


不起訴 揺れる関係団体/うやむや解決懸念


 【中部】米兵による暴行事件で、在沖米海兵隊の二等軍曹(38)が告訴取り下げで不起訴となり、釈放されたことを受け、事件に対する抗議集会などを予定している本島中部の各団体関係者からは、事件がうやむやになることへの懸念の声が上がる。一方で「そっとしておいた方がいいのかもしれない」「大会は必要だ」と、今後の対応をめぐり、思いが揺れている。

 不起訴から一夜明けた一日、沖縄市子ども会育成連絡協議会の久高将輝会長は「事件がうやむやにならないか心配だが、被害者の心のケアを考えるとそっとしておいた方がいいのかもしれない」と複雑な心境を明かす。

 沖縄市長に市民集会開催を陳情した同市地域安全推進協議会の大城信男会長は「集会を開くなら被害を受けた子に負担をかけない形でやろうと提案していた」と話し、今後、市民団体間の意見交換を経た上で、独自集会とするのか県民大会に参加することになるのかを決める意向だ。

 事件後、北谷町に住民大会の開催を要請した同町PTA連合会の仲地泰夫会長は「米兵による暴行事件は過去に何度も起こり、今回の事件後にも発生した。子を守る親の立場として、再発防止を求めて声を上げるべきだ」と町民の意思表示の必要性を強調した。

 住民大会開催へ向け協議している同町女性連合会の桃原雅子会長は、告訴取り下げに「事件の波紋が大きくなり、被害者の意図しない方向に向かったのかもしれない」と話した。その上で「事件自体は許せない。町内には多くの米兵が暮らしており、また同様の事件が起こらないとも限らない。問題の根源である基地の整理・縮小を求める大会が必要だ」とし、町内の各団体と開催の調整を継続する方向を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803011700_01.html

 

2008年3月2日(日) 朝刊 23面

重大さ変わらない/暴行事件・米兵不起訴

 「心が痛い。彼女が声を上げられる状況をつくれなくて申し訳ない」―。米兵による暴行事件の被害者が告訴を取り下げ、容疑者の二等軍曹が不起訴処分となったことに、高校生のころ県内で米兵から性暴力の被害を受けた女性(四十代)が一日、重い口を開いた。基地あるが故に構造的な暴力が繰り返される現実。「告訴を取り下げても事件の重大さは変わらない。基地をなくすことと、被害者の人権が守れる社会の仕組みがなぜ作れないのか…」。同じ痛みと苦悩を抱え、複雑な心情を吐露した。(くらし報道班・岡部ルナ)

 女性は二〇〇五年、性暴力被害を稲嶺恵一知事(当時)あての公開書簡で訴え、性犯罪と基地被害の実態を告発した。

 高校から下校途中、後ろからナイフを突きつけられ、米兵三人に自宅近くの公園に連れ込まれ、暴行された。

 二十年以上が過ぎた今でも、米軍の事件・事故が起きるたびに悪夢がよみがえるという。

 二月十日に起こった米兵暴行事件を知り、自分と被害者が重なった。「現場が危険な場所というなら、危険にしたのは誰なのか。基地を置いている人が責任を取らなければいけない問題だ」

 被害者には、耐え難い性暴力の痛み、苦しみに加え、日米安全保障にかかわる政治問題がのしかかる。

 女性は自らが性犯罪の被害者であることを誰にも話せなかった。いつどこで犯人に遭うか分からない不安。道を一人で歩くのにも恐怖が襲った。「自分が守られていないとずっと思っていた」。孤独だった。

 「本当は声を上げたかった。でも、親に言えば心配させる、警察の事情聴取で何を聞かれるのかなど一人で悩んで、相談する相手がいなかった。ずっと自分が悪いと責めていた」

 一部報道による中傷、周辺取材にも「報道が向くべきは加害者の側だ」と憤る。

 「この後、自分の人生はどうなるのかという恐怖、一歩外に出れば皆が自分の敵のように思えているのではないか。被害者も、家族も、安心できる安全な場所にいてほしい」

 市民団体が計画している県民大会には必ず足を運ぶつもりだ。「彼女は悪くない。人が集まることで、彼女を守りたい人がこれだけいるんだと伝えたい」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803021300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月2日朝刊)

[告訴取り下げ]

被害者の声に応える道は

 「そっとしておいてほしい」―被害者とその家族の訴えを私たちはどう受け止めればいいのだろうか。

 女子中学生への暴行事件で逮捕されていた米海兵隊員は、被害者側が告訴を取り下げたため不起訴になり、釈放された。

 県内には戸惑いも広がっている。だが、被害者が発した声を正面から受け止め、問題の所在を整理し再発防止につなげていくことが、今、私たちに求められているのだと思う。

 強姦罪は被害者の告訴がなければ起訴できない「親告罪」で、今回の事件に限らず告訴が取り下げられたり、被害者が訴えることをためらったりしてうやむやになるケースは多い。

 容疑者の身柄は海兵隊が拘束しているが、日本の法律で起訴されなかったからといって二等軍曹の容疑が晴れたわけではない。

 むしろ日本側が権利を行使しないことで、米軍の責任はより重くなったととらえるべきである。

 ケビン・メア在沖米総領事は「日本側が一次裁判権を放棄するなら、米軍当局が証拠を調べ、捜査した上で処遇を判断する」と述べている。

 米軍当局は二等軍曹の行為を徹底的に洗い直し、人権への配慮を強調する民主主義国家の名に恥じない判断を下してもらいたい。

 事件が国会でも取り上げられ、大きな政治問題に発展したため、被害者はいや応なく、さまざまな問題に直面することになった。

 米兵による性犯罪が起こるたびに出る被害者の「落ち度論」もその一つである。被害者やその家族にとっては耐え難い非難であり、それが二次被害をもたらした側面も否定できない。

 告訴し法廷の場で容疑者の罪を暴こうにも、それによって逆に自らのプライバシーがさらされる恐れがある。

 被害者と家族が告訴を取り下げたのは、そのことを何よりも心配したからではなかったか。

 告訴取り下げの判断を下すに当たっては、さまざまな葛藤があったと推察される。そのことを私たちは重く受け止めたい。

 日米両政府は、今回のような性犯罪などの発生を防ぐための再発防止策を講ずるとしている。だが、本当に実効性のある防止策を構築できなければ事態は何ら変わらず、再び同様の事件が繰り返される可能性はある。

 米軍の兵士教育の在り方に問題はないのかどうか。事件や事故に至った経緯についてきちんと検証し、二度とこのような事件が起きないようにすることが両政府の責務だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080302.html#no_1

 

琉球新報 社説

告訴取り下げ 犯罪の容疑は消えない

 何ともやり切れぬ気持ちだ。告訴を取り下げた少女に、どんな心境の変化があったのか。事件後に浴びせられた心ない非難の声。あるいは、一部週刊誌による無節操な取材や報道。「なぜ、自分が責められねばならないのだろうか。やはり、自分が悪かったのか」。こんな思いでいるのなら、それは違うと、あらためて強く問い掛けたい。

 那覇地検は29日夜、女子中学生暴行容疑で逮捕した在沖海兵隊の二等軍曹を不起訴処分にした。被害者が告訴を取り下げたからだという。その理由について、「(少女が)そっとしてほしい、と思っている」と説明する。恐らく、精神的に追い詰められた本人と家族が、やむにやまれぬ思いで決断したのだろう。

 事件後、大きく問題化していく重圧に加え、公判ともなれば証言などで、さらに傷口を広げられるような仕打ちにも耐えなければならない。被害者や家族がそう心配するのも無理はなかろう。あえて言えば、自宅にまで押し掛ける週刊誌や、いわれなき中傷に行き場を失ったともいえる。まさに「被害少女に対する重大な人権侵害(セカンドレイプ)があった」(沖縄人権協会)ことになろう。

 本人や家族の判断は、そういう意味からも理解できるし尊重しなければならない。少女の心のケアに十分配慮し、1日も早く立ち直ることのできるよう、関係者の手当てに期待したい。

 いま、私たち大人がすべきことは、二度とこうした事件の起きない社会をつくることだろう。行政と民間が一体となっての再発防止策、子供たちへの教育、など。そのことが優先だ。決して、被害者の落ち度を言い募ることが、先ではない。それは、天につばするようなものだ。非難は自らに返ってくる。こうした社会を放置してきた大人としての自分に。

 23日の県民大会は、予定通り開かれることが決まった。3日にも呼び掛け団体で話し合う。また、8日には大会に向けた実行委員会の結成総会を開いて、アピール文を発表する予定だ。賛否もあるが、開催は当然だろう。自民党も含めて、実行委は超党派での開催に向けて全力を挙げるべきだ。

 告訴が取り下げられた、といって、犯罪の容疑が消えるわけでもない。事実、釈放された米兵は米軍に身柄を拘束されている。米側の厳しい処罰を願うばかりだ。

 ボールは日米両政府に投げられた。事件の再発防止に向けて、実効性のある施策がどれだけ実行できるか。「綱紀粛正」や「兵士教育の徹底」など、その場しのぎの対策では何の解決にもならないことは、すでに証明ずみだろう。もちろん、米軍基地の県外移転が根本的な解決策には違いない。

(3/2 10:06)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31833-storytopic-11.html

「普天間」移設現況調査、3項目を中止要請 米兵暴行事件、ライス氏「極めて遺憾」など  沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(2月26日から29日)

2008年2月26日(火) 朝刊 2面

3項目を中止要請/「普天間」移設現況調査

 県議会(仲里利信議長)二月定例会の一般質問初日は二十五日午後も続行された。米軍普天間飛行場の移設に向け、沖縄防衛局が名護市辺野古沖で行っている現況調査(事前調査)について、知念建次文化環境部長は(1)ジュゴンの食み跡調査でくいを使用(2)サンゴなどにかかるライン調査を実施(3)(県が同意していない)「マンタ法」によるサンゴの分布調査を実施―したのは、県が公共用財産使用協議で同意した調査以外であると指摘。「県から沖縄防衛局に対して中止を申し入れた」と述べた。玉城義和氏(無所属)への答弁。

 基地外に居住する米軍人への感染症対策について、伊波輝美福祉保健部長は「日米地位協定で、感染症法の適用に関する特段の取り決めがなされていないため、県としては協定見直しの中で、保健衛生に関連する国内法を適用する旨の明記を求めている」と述べた。渡嘉敷喜代子氏(護憲ネット)への答弁。

 新石垣空港への免税店設置の可能性について、仲田秀光観光商工部長は「新空港は将来の八重山圏域の振興発展に欠かせない地域拠点空港としてのみならず、台湾などアジア諸国とのゲートウェイとしての役割を担うものと期待されている」とした上で、「新空港の路線展開などの見通しを踏まえながら、国、関係部局、関係者と免税店設置の可能性について検討していきたい」と述べた。高嶺善伸氏(護憲ネット)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802261300_04.html

 

2008年2月26日(火) 朝刊 31面

米兵外出禁止を延長/来月3日に解除検討

 在沖米海兵隊報道部は二十五日、米兵による事件続発を受けた四軍対象の外出禁止措置を継続すると発表した。少なくとも一週間後の三月三日まで続け、同日に解除するかを検討する。

 在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官が二十四日に各軍司令官らと協議し、延長を決めた。兵士らは引き続き、任務や病院の受診など必要な用件がある時以外は基地内か、基地外の住宅にとどまることを義務付けられる。

 外出禁止は二十日朝から実施されており、三月三日までなら十三日間となる。


     ◇     ◇     ◇     

「地位協定改定を」/沖縄市基地対策協、提言へ


 【沖縄】米兵による暴行事件を受け、米軍基地問題にかかわる沖縄市の自治会や婦人団体などの代表で組織する市基地対策協議会(会長・仲地清名桜大教授)は二十五日、市役所で緊急の会議を開き、日米両政府や米軍に対しより具体的な再発防止策を求めるよう東門美津子市長に提言することを決めた。市長の諮問機関である同協議会は、今週中に委員の意見を報告書にまとめて提言する。

 会議には各団体の代表が参加、事件の再発防止に向け「日米地位協定の改定が大前提だ」との統一見解を確認。さらに、事件の再発防止策について意見を交わした。

 反戦地主会の照屋秀伝会長は「われわれには被害者やその家族と一緒に悩み苦しむ責任がある。それがないと米軍犯罪の解決はあり得ない」と強調。米兵の外出禁止令について「商店街は職場を失うのと同じ。日米両政府や米軍が商業補償をすべきだ」と指摘した。

 こども未来ゾーン運営財団の東條渥子理事は「今後、米兵が事件を起こした場合、米軍への思いやり予算を削るなど強いペナルティーを科すべきだ」と語気を強めた。

 仲地会長は「これまで、米軍の事件のたびに陳情行政だけしかやっていない。新しい方法で抗議のアクションを起こさなければいけない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802261300_05.html

 

2008年2月26日(火) 朝刊 30面

大田昌秀さん、広島の学生に沖縄戦講話

 沖縄戦研究者で前参議院議員の大田昌秀さんが二十五日、戦跡巡礼のため来県した広島経済大学の学生ら六十人に、自らの戦争体験や基地問題を語った。今月発生した米兵暴行事件から教科書検定問題、基地問題、米軍統治から沖縄戦へと時代をさかのぼり、「本土による沖縄への差別構造」をキーワードに説明。戦時の状況を生々しく証言し、研究者として戦史や資料に基づき理論的に分析した。

 首里城公園内の第三二軍司令部壕跡近くで二時間以上、話し続けた大田さん。「口頭による軍命」で戦場に学徒動員された実体験や、米軍上陸前に司令官が「軍官民は共生共死」と訓示したり、軍命による「集団自決」、住民虐殺の実態を話した。

 その上で「原爆が投下された広島の若い皆さんが、沖縄戦を真剣に学ぶ姿に感謝したい。教育こそが戦争の道を防ぐことを、どうか忘れないでほしい」と訴えた。

 同大三年の杉原郁望さんは「僕たちの世代は、戦争の悲惨さを継承していく義務がある、と強く感じた」と表情を引き締めた。父親が沖縄戦で犠牲になった渡辺子さん(66)は「話を聞くうち、父の姿や思いが重なり、胸が痛くなった」と声を詰まらせ「平和の尊さを若者と伝えたい」と話した。講演は、同大学の岡本貞雄教授が企画した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802261300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月26日朝刊)

[イージス艦衝突]

多重ミスの疑いが濃厚

 海上自衛隊の最新鋭イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突は、あたご乗組員らの慢心や思い込みなどの多重ミスが原因だったのではないか。第三管区海上保安本部の調べが進むにつれてそんな疑いが深まっている。

 衝突時の当直士官は、交代前の当直士官から清徳丸を含む漁船団の存在について引き継ぎを受け、把握していたという。

 清徳丸が左舷からほぼ直角に衝突された状況から、海上衝突予防法上の回避義務があたご側にあったことはほぼ間違いない。交代後の当直士官が、見張り員や戦闘指揮所のレーダー員らに漁船団の接近を継続的に監視するよう適切に指示していれば、衝突は避けられた可能性が高い。

 これまでの調べで、あたごは衝突一分前まで自動操舵による直進を続けたことが明らかになっている。大型船の運航乗員にありがちな「小型船がよけてくれる」という思い込みの存在も指摘されている。

 あたごは最新鋭の対空レーダーのほかに航海用レーダーを搭載している。小型船が艦に接近し過ぎて船影がモニターに映らなかった可能性もあるが、レーダー員が追跡を命じられていれば対応の仕方もあっただろう。見張り員もしかりである。

 自動操舵による直進に至っては、漁船などの航行が多い現場海域の現状を考えると、とても妥当な操船だとは思えない。この点については石破茂防衛相も「適切ではないのではないか」と発言している。二十年前に起きた海自潜水艦「なだしお」が釣り船と衝突して三十人の犠牲者を出した教訓は何も生かされていないのではないか。

 官邸などへの事故連絡も大幅に遅れた。あたごが清徳丸に気付いたのは二分前ではなく十二分前だった、など事故の状況説明も二転三転した。

 国民を守るべき自衛隊が、またしても国民の命を奪ってしまった。防衛省は事実を深刻に受け止めなければならない。国民の信頼を失墜させた責任は重い。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080226.html#no_2

 

2008年2月26日(火) 夕刊 1・5面 

来月23日に県民大会/米兵暴行事件

 米兵による暴行事件を受け、県民大会の開催を目指す実行委員会準備会(仮称)は二十六日、三月二十三日午後二時から北谷町美浜周辺で県民大会を開く方針を決めた。

 同実行委は、県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)や県婦人連合会(小渡ハル子会長)などで組織。那覇市の県婦人連合会会館で開かれた第二回会合には各団体の代表らが出席した。玉寄会長は「基地が存在する沖縄は、安心して生活できる環境にない。県民大会では、日米地位協定の改定を訴えたい」と決意を述べた。


日米地位協定の運用拡充検討も

米兵暴行で外相


 【東京】高村正彦外相は二十六日午前の閣議後会見で、米兵暴行事件を受けて民主党、国民新党が日米地位協定の運用改善拡充を求めていることについて「どの部分かということがあるが、そういうことは、常に日米合同委員会で話し合うべきで、幅広く検討していくつもりだ」と述べ、前向きに検討していく考えを示した。

 二十七日に来日するライス米国務長官との会談については「先般起こった、忌まわしい事件についても触れることになるだろう」と明言。高村氏がライス長官に対し遺憾の意を伝えるとともに、再発防止に向けて日米が連携して取り組む方針で一致するとみられる。


     ◇     ◇     ◇     

千葉県議会が意見書


 米兵による暴行事件で千葉県議会は二十六日、被害者への謝罪や補償、米軍基地の整理縮小などを政府に求める意見書を全会一致で可決した。事件について意見書は「断じて許すことができない卑劣な行為」と非難。「米軍の綱紀粛正への取り組みに疑問を抱かざるを得ない」とし、再発防止や兵力の削減を求めている。


住居侵入容疑の米兵釈放/県警本部長


 県警の得津八郎本部長は二十六日の県議会で、米軍キャンプ・シュワブに近い名護市の民家に無断で上がり込んだ住居侵入容疑で十八日に現行犯逮捕した同基地所属の海兵隊員、ショーン・ジェイク伍長(21)が釈放されたことを明らかにした。名護署によると、那覇地検が二十五日夜、釈放した。

 ジェイク伍長は十八日午前四時二十五分ごろ、侵入先の名護市辺野古の民家で名護署員が現行犯逮捕。酒に酔っており「どうやって入ったのか覚えていない」と供述していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802261700_01.html

 

2008年2月26日(火) 夕刊 1面

地元への配慮強調/V字形沖合移動

 【東京】石破茂防衛相は二十六日午前の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場移設に関し、町村信孝官房長官がV字形滑走路の沖合移動に柔軟姿勢を示したことについて、「『リップサービスに終わらないように』という指摘を心していかなければいけない」と述べ、同長官の発言に理解を示した。安次富修氏(自民)への答弁。

 安次富氏は町村官房長官が今月七日に開かれた政府と地元の協議会で、「地元から話のあった沖合修正もしっかり念頭に置き、できるだけ早い時期に決着が図られるよう最大限の努力をしたい」と述べたことを指摘。石破氏に「米側を説得できなければ、単なる沖縄へのリップサービスと受け取られかねない」と詰め寄った。

 石破氏は「合理的な理由がない限り変更は困難だが、沖縄の気持ちに思いを致しながら作業を進めなければいけない」と地元への配慮の重要性を強調。「リップサービスに終わらせると考えたことは一度もない」として、沖合移動も選択肢に協議を続ける考えを示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802261700_03.html

 

2008年2月27日(水) 朝刊 1・2面

県議会に協力要請/来月23日県民大会開催

全市町村議会が抗議決議可決へ

 米兵による暴行事件を受け、県民大会の開催を目指す実行委員会準備会(仮称)は二十六日、県民大会を三月二十三日午後二時から北谷町の北谷公園で開く方針を決めた。今月二十八日までには県内の全市町村議会で暴行事件への抗議決議が可決される見通しで、同準備会はこうした県民世論を背景に「超党派の結集」を呼び掛け、「県議会が中心となって県民大会の開催を」と求める陳情書を県議会に提出した。

 準備会では県子ども会育成連絡協議会(沖子連)の玉寄哲永会長が「県民の意識が高いうちに大会開催を」と、三月二十三日の開催を提案し了承された。晴天時には公園内の北谷球場を、雨天時には北谷ドームを会場にする予定で調整を進めている。

 大会は、名称を「米兵による少女・婦女子への暴行事件に抗議する県民大会」とし、在沖米軍基地の整理・縮小や、日米地位協定の抜本的な見直しを日米両政府に求める方針。沖子連や県婦人連合会(沖婦連)など六団体を中心に、市民団体や経済団体に幅広い参加を呼び掛ける。大会開催資金は県民にカンパを呼び掛けるという。

 準備会の後、玉寄会長と沖婦連の小渡ハル子会長が県議会を訪れ、議会事務局に仲里利信県議会議長あての陳情書を託した。玉寄会長は「事件のたびに日米両政府は『二度と起こさない』と言うが、事態はほとんど変わらない。『安心して安全な暮らしをしたい』という県民の思い、沖縄の心を伝えるために県民が意思表示することが大切」と大会の意義を訴えた。

 大会実行委員長への就任を要請されている仲里議長は「県民大会というからには、委員長就任には県議会の同意が必要となる。米軍基地関係特別委員会で陳情書について議論してもらい、対応を決めたい」と話した。

 二十六日には、久米島町議会と座間味村議会が米兵暴行事件への抗議決議をしており、県内で抗議決議案を可決した市町村は四十になった。残る南大東村議会も二十八日、抗議決議案を可決する見通しだ。小渡会長は「本来は知事や県議会が先頭に立ち、県民の結束を呼び掛けるべきだ。全市町村議会が抗議決議すれば、県民の代表である県議会も動かないわけにはいかなくなる」と期待する。


     ◇     ◇     ◇     

比嘉氏発言4時間空転/「知事は言葉でセカンドレイプ」


 県議会(仲里利信議長)二月定例会の一般質問で二十六日、米海兵隊員による暴行事件に対する仲井真弘多知事の答弁に対し、比嘉京子氏(社大・結連合)が「知事は言葉で少女をセカンドレイプしている」と発言。撤回を求め与党から猛クレームが付き、約四時間にわたり、空転した。

 一時は比嘉氏に対する懲罰動議の動きも出て事態は緊迫したが、議長斡旋案で収拾。県民大会の開催方針が決まった直後の与野党の「衝突」で、超党派での大会開催を危ぶむ声も出ている。

 暴行事件の関連で「アジア・太平洋地域の安全と少女の安全を守ることのどちらが大切か」との質問に、仲井真知事が「アジア・太平洋地域の安全と少女の安全は守ることのどちらが大切かは選択、比較できるものではない。少女の安全を大切に考えるのは当然」と答えた。

 これに対し、比嘉氏は「県民の人権を預かる最高責任者としての認識が欠落している。言葉で少女をセカンドレイプしている」と批判した。

 比嘉氏の発言に、与党は「知事の人格を傷つけ、議会の品位をおとしめた」と反発。比嘉氏に謝罪と発言の撤回を求め、「応じなければ、懲罰動議にかける」と示した。比嘉氏ら野党側は当初、「発言は不適切であり、撤回する」と応じたが、与党側は「仲井真知事や議会に対する謝罪がない」と収拾案を拒否。自民は一時、懲罰動議を決め、対立は頂点に達した。

 与党の強硬姿勢に対し、野党内部で「発言を撤回する必要はない」という意見もあったが、「暴行事件を抗議し、再発防止を求める県民大会に向け、超党派の結束が図れない」「県議会内の決定的な分裂は避けるべきだ」という意見が大勢を占め、早期収拾に動いた。

 仲里議長の斡旋案を与野党が受け入れ、比嘉氏が本会議で「知事の人格を傷つけ、議会の品位を冒涜する不適切な発言である。知事、議員、県民に謝罪し、発言を撤回する」と発言し、空転劇は幕を閉じた。

 野党側は「県民大会に向けて、与野党との協議を進めたい」とする一方で、与党内部には「基本的な政治姿勢の相違だけではなく、感情的な摩擦が生じた。超党派大会は無理だ」と否定的な発言が相次いだ。


地位協定改定へ連合が全国集会検討


 連合九州ブロック代表者会議のため来県した高木剛・連合会長は二十六日、那覇市内で記者会見を開き、米兵による暴行事件の再発防止に向け、米軍基地縮小や日米地位協定の見直しなどを訴える集会を連合として検討する考えを示した。

 高木会長は、参加した九州各県の連合代表からそうした集会を求める声が上がったことを紹介、「連合内部でも米軍基地を抱えている県の連絡組織があり、相談して何か考えてみたい」と述べた。

 同席した古賀伸明事務局長は「沖縄だけにとどまらず、例えば神奈川で日米地位協定の改定問題も含めてやるといったことも検討したい」として、来月開催が決まった県民大会とは別に、全国規模でアピールする集会にしたいとの意向を示した。開催地や規模などは今後検討するという。

 関連して、高木会長は二十八日に高村正彦外相に対し、事件の再発防止策強化や日米地位協定見直しなどを申し入れることも明らかにした。

 高木会長は衆院沖縄3区など、次期衆院選に向け野党系候補が競合する選挙区について「調整がつかないままで自民党に漁夫の利を与えることにならないよう、第一義的には政党間で調整してもらいたい」と述べ、連合本部としては側面から一本化を促す考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802271300_01.html

 

2008年2月27日(水) 夕刊 5面

米兵を起訴猶予/辺野古の民家侵入

 酒に酔い、名護市辺野古の民家に入り込んだとして、住居侵入容疑の現行犯で逮捕、送検されていた米海兵隊キャンプ・シュワブ所属のショーン・ジェイク伍長(21)について、那覇地検は二十五日付で不起訴処分(起訴猶予)とした。

 那覇地検によると、ジェイク伍長が被害者側に一定の金員を支払って謝罪。被害者側がジェイク伍長の処罰を望まない意思を示したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802271700_03.html

 

2008年2月28日(木) 朝刊 1・2面

ライス氏「極めて遺憾」/米兵暴行事件

再発防止へ日米協力

 【東京】ライス米国務長官は二十七日、来日し、福田康夫首相、町村信孝官房長官、高村正彦外相、石破茂防衛相と相次いで会談した。ライス氏はそれぞれの会談の冒頭、米兵による暴行事件について「極めて遺憾であり申し訳なく、深刻に受け止めている」などと謝罪。日米で再発防止に全力を挙げて取り組む方針を確認した。高村氏との会談でライス氏は在日米軍再編について、「(日米で)合意された計画をしっかり実施することが重要」と述べ、日米合意通りに進めていくとの従来の方針を強調した。

 日米地位協定の見直しについては、日米いずれも言及しなかった。

 高村氏との会談を終え、共同記者会見に臨んだライス氏は「ブッシュ大統領の名において、米国民を代表して、また、自分の気持ちを含めて遺憾の意を述べた。被害者と家族のことを大変心配している」と述べ、事件を深刻に受け止めていることを強調した。

 その上で「このようなことを決してわれわれは望んでいない。将来こうしたことを防止するために、日本政府とも協力しながら(再発防止を)やっていきたい」と述べ、再発防止に全力で取り組む決意を表明した。

 これに先立ち、ライス氏は防衛省で石破氏と会談。石破氏は米軍再編に関し、「特に沖縄(の基地問題)は、日本だけでなく、米国にとっても重要。そういう観点から今回の事件は、同盟関係にとって不幸だ」と述べ、事態の深刻さを強調。

 その上で両政府の誠実な対応と状況改善に向けた方向性が、県民の目に見える形で示されることが重要だと指摘し、「素早い具体的な措置が必要だ」と述べた。

 一方、福田首相は、日米同盟に関し、「日米関係は着実に進展しており、同盟強化に取り組んでいきたい」と表明。これに対しライス氏も「日米同盟は極めて重要だ」と応じた。両氏は、北朝鮮の核・拉致問題解決に向け日米、日米韓で連携を図っていくことも確認した。

 また、首相は七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で主要議題となる地球温暖化対策への協力を要請。ライス氏は「気候変動問題への対処は経済成長とのバランスが重要」と指摘し、日米の緊密な連携が重要との認識で一致した。


     ◇     ◇     ◇     

「ライス氏と会えず残念」/名誉ばん回狙った知事


 仲井真弘多知事は二十七日の県議会二月定例会の一般質問で、来日したライス米国務長官への面談を打診したものの、日程上の都合で実現しなかったことを明らかにした。嶺井光氏(自民)の質問に答えた。

 県幹部によると、ライス長官との面談は仲井真知事の指示を受けて先週、外務省に打診。しかし、同長官の日程がハードだったこともあり、外務省から二十六日、「面談は困難」との連絡があったという。

 知事サイドは、長官との面談に備え、知事が開会中の議会を欠席する手続きなども含めて議会側とも水面下で調整。米兵暴行事件に対する仲井真知事の対応に「生ぬるい」と野党からの追及も強まっていただけに、県側は、同長官との面談は、知事の強い姿勢を内外に示す絶好の機会としてギリギリまで調整を続けていた。

 本会議で、仲井真知事は「面談が実現しなかったことは誠に残念だ」とした上で、「長官からは『(事件は)遺憾で起きてはならない事件だった』とのコメントがあったと聞いている。再発防止の徹底や沖縄の基地問題の解決促進につながるものと考えている」と一定の評価を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802281300_01.html

 

2008年2月28日(木) 朝刊 2面

北谷・沖縄市に半数/基地外居住

 【東京】防衛省は二十七日、米兵暴行事件を受けた再発防止策に関し、基地外に居住する米軍関係者の人数を全国の市町村別で公表した。県内では二〇〇七年三月末時点で、一万三百十九人が基地外に居住。その半分以上が沖縄市、北谷町に集中している実態が明らかになった。

 県内の基地外居住者数をめぐっては、政府が二十二日、今年一月末時点で、一万七百四十八人と発表しており、十カ月で四百二十九人も増加している。

 人数は在日米軍司令部から提供を受けたもので、〇七年三月末時点での基地外居住米軍関係者は全国で二万千八百八十五人。その約半分を沖縄が占めている。

 市町村別で最も基地外居住者が多かったのは、米軍横須賀基地を抱える神奈川県横須賀市で、三千四百二十人だった。次いで、嘉手納基地などを抱える北谷町が二千八百九十三人で、県内最多。

 県内ではそのほか、沖縄市が二千七百五人、うるま市が千三百三十四人、読谷村が千二百二十三人で、いずれも本島中部地区で基地に隣接する自治体に集中しているのが特徴だ。

 米兵暴行事件を受け、政府は二十二日、基地外に住む米兵の実態把握と居住許可基準の厳格化を柱とした再発防止策を発表。米側が基地外居住者の人数を年に一度、日本側に提供し、日本政府が所在市町村と共有することが盛り込まれ、今回はその一環として公表された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802281300_03.html

 

2008年2月28日(木) 朝刊 23面

「多忙」で面会拒否したのに・・・メア総領事は店でコーヒー

 米兵暴行事件に抗議するため、米総領事館を訪れた市民団体が二十七日、「多忙」を理由に面会を断ったはずのケビン・メア総領事が領事館近くでゆったりとコーヒーブレークを楽しむ姿を発見、店の前で抗議横断幕を掲げ抗議行動する“騒動”となった。沖縄平和市民連絡会の平良夏芽共同代表は「県民をばかにしている。時間を割いてでも対応すべきだ」と批判した。

 同連絡会は事前に総領事との面会を求めたが領事館側は「抗議文なら郵送してほしい。総領事は多忙で時間が取れない」と返答したという。平良共同代表は「誰でもいいから手渡したいという話になり、面会時間を設定した」と主張。

 対する総領事館側は「(総領事の)アポは取られていなかった」としている。また、領事館側は沖縄タイムスの取材に対し、「総領事は不当抗議行動で逮捕された人とは会わないとしている」と回答。基地建設の阻止行動で逮捕された後、不起訴となった平良共同代表は「いかに人権意識がないか分かった」と猛反発している。

 沖縄人権協会の永吉盛元事務局長は「逮捕歴があるから面会拒否なんて考えられない。基地権力の本質がよく表れている出来事」と話した。


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「知事訪米同行も視野」/東門市長


 【沖縄】米兵による暴行事件に関連し、東門美津子沖縄市長は二十七日の市議会(喜友名朝清議長)二月定例会の代表質問で、日米地位協定の抜本的な見直しの必要性を強調し「政府中央に対する再度の抗議要請を含め、仲井真弘多県知事の訪米に同行することも視野に入れ行動したい」と述べた。

 事件に対しては「基地あるが故に起こるこのような事件は決して許されるものではない」と厳しく批判した。宮城一文氏(市民クラブ)、仲村未央氏(護憲フォーラム)の質問に答えた。


全国婦連、抗議決議へ


 京都府内で開幕した全国地域婦人団体連絡協議会の全国大会で、県代表の小渡ハル子会長が、米兵暴行事件に抗議する決議案を二十八日の理事会に提出することが、分かった。小渡会長によると決議文案は各地域代表に配布済みで、大方の了承を得ており、決議される見通し。

 小渡会長は「全国の婦連が集まる会議で決議される意味は重い。この決議を持ち帰り、県民大会に弾みをつけたい」と話した。

 大会は二十七日開幕。全国四十七都道府県と三政令都市の婦人連合会代表者らが集い、意見交換を行う。昨年十月には、教科書検定意見撤回を求める決議をし、文部科学相へ要請も行っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802281300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月28日朝刊)

[基地外拳銃携帯]

違法命令に厳正な対応を

 在沖米海兵隊基地の日本人警備員が実弾の入った拳銃を携帯したまま、基地外を移動していたことが明らかになった。外務省は「警備員が外で銃を携行することは禁じられている」と明言し、県や県警も問題視している。

 基地外での携帯は銃刀法違反に当たり、地位協定からの逸脱としか言いようがない。米兵の不祥事が相次いでいる中、どういう神経なのか。今回は米軍人の憲兵隊司令官が拳銃携行を文書で命じていたというから驚かされる。

 日本人警備員が基地外を移動したのは今月十一日と十二日で、延べ五十九人が腰に拳銃を携帯し、軍用車や徒歩でうるま市のキャンプ・コートニーとマクトリアス間を移動したという。

 従来、日本人警備員が基地外に出る際は、米軍人の憲兵が拳銃を預かり、基地内に移動後に再び渡していた。海兵隊を除く三軍では現在も同様の管理をしている。当然のことである。

 日本人従業員らの証言によると、命令で基地外での携帯を強いられた。さらに拳銃を携行しなかったり、外部に知らせたりした場合は処罰の対象になるとの通知もあったようだ。

 複数の警備員の証言を踏まえると、憲兵隊司令官ら幹部は基地外での日本人警備員の拳銃携帯が違法であることを認識していた可能性がある。

 基地警備員の拳銃携行は一九八三年から義務付けられ、二〇〇一年九月の米中枢同時テロ以降は警備も厳しくなった。それだけに違法な命令を見過ごすことはできない。

 沖縄防衛局は、米軍側の回答を受けて再発防止を申し入れているが、それだけで済ませるわけにはいかない。

 民間地域での拳銃携帯の違法性を知らなかったのか、違法性を認識した上で命令を出していたのか、事実関係を明らかにすべきだ。いずれのケースにせよ問題がある。

 憲兵隊司令官らが違法性を十分認識した上で基地外での拳銃携行を命じていたとすれば由々しき問題であり、在沖米軍は憲兵隊司令官ら幹部に問いただし、厳正に対処してもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080228.html#no_2

 

琉球新報 社説

日本人警備銃携行 基地内外問わず廃止を

 在沖米軍基地の海兵隊憲兵の日本人警備隊員延べ59人が11、12の両日、憲兵隊司令官の指示で、弾丸が装てんされた拳銃を携行して民間地に出ていたことが分かった。

 外務省は「日本人警備員が銃砲等を施設区域外で携行することは禁止されている」と、米軍の規定に違反すると明確に指摘。本間浩法政大教授は「日本の銃刀法違反に当たる」としている。

 違法行為を文書で指示した司令官は「日米の合意事項の変更で隣接する施設には拳銃を持ったまま移動できるようになった」と、事実と反する説明を日本人警備員にしていた。

 何を根拠にそのような説明をしたのか。勇み足で済まされる問題ではない。米軍は法律を尊重し、関係者を厳正に処分するべきだ。

 隊員からは「禁止されていることを強要したのだから、上司には責任を取ってもらいたい」との訴えもある。規律を重んじる軍隊ならば、責任を取ることは当然のことである。

 日本人警備隊員が見せられた指示書には「この指示は司令官の公式な指示で、もし拒むなら行政処分、懲戒処分の対象になる」と脅しともとれる文言があったという。

 強い立場を利用して、事もあろうに違法行為を強要する。憲兵隊の役割は、軍隊の秩序維持のはずである。自ら決まり事を犯す行為を強要しては、その存在意義が問われる。

 米兵女子中学生暴行事件やその後の一連の米兵犯罪といい、海兵隊の組織自体に構造的な問題があるとしか言いようがない。

 基地内での日本人警備隊員の拳銃所持について、政府は「日米地位協定上認められている」としている。だが、その見解は曲解の上に出来上がったことが、外務省の秘密文書「日米地位協定の考え方」増補版で明らかになっている。

 増補版では、外務省が「地位協定はあくまでも条約」で「米軍基地の日本人警備隊員の銃砲保持を認める明文の国内法令はない」とし、曲折を経て「『法令に基づき職務のために所持する場合』に該当すると答えるほかない」との結論に達したと自ら解説している。

 基地内での拳銃携行も、何ら法的根拠はなかったのを強引に、正当化したのである。

 今回の司令官の指示は大きな問題をはらんでいる。日本人警備隊員の拳銃携行を基地外まで拡大するための話し合いが、日米で進められているとの疑念さえ浮かんでくる。

 過去には日本人警備隊員が襲われて重傷を負い、拳銃を奪われた事件もあった。日本人警備隊員に危険を及ぼす可能性のある拳銃携行は基地の内外を問わず、改めるべきだ。

(2/28 9:48)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31747-storytopic-11.html

 

2008年2月28日(木) 夕刊 1面

日本不起訴 米で有罪3件/米軍関係者裁判

 【東京】法務省の大野恒太郎刑事局長は二十八日午前の衆院予算委員会分科会で、米軍関係者の刑事裁判に関し、日本側で不起訴となったものの、米側では起訴されて有罪となった事件が少なくとも過去に三件あったことを明らかにした。赤嶺政賢氏(共産)に答弁した。

 大野局長によると、二〇〇四年から〇七年にかけて発生した業務上過失傷害罪一件と窃盗罪三件が日本側で不起訴となった。しかし、いずれもその後に米側で起訴され、窃盗罪の三件は有罪となった。業務上過失傷害の事件は無罪になった。

 赤嶺氏は「日本で裁ききれず、米国では起訴されて有罪にまでなっているのはおかしい。どうしてこうなるのか」と捜査の在り方を問題視した。しかし、大野局長は「一般論として、検察当局は法と証拠に基づいて適切に起訴、不起訴の判断をしたと承知している」と述べるにとどめた。

 赤嶺氏は「根っこには(容疑者の身柄取り扱いに関する米軍の優位性を定めた)日米地位協定の問題がある」と地位協定の見直しを強く求めた。

 これに対して高村正彦外相は、日本では身柄引き渡しに関する運用改善がなされていることを念頭に、「日本よりこの問題についていい国はない」と、地位協定見直しにはあらためて消極姿勢を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802281700_01.html

 

2008年2月28日(木) 夕刊 5面

少年捕虜 今どこに/沖縄戦後 米収容所で交流

 米国に住む県系二世の元米兵ピーター・オオタさん(81)が、戦時中にサンフランシスコの収容所で出会った沖縄出身の少年兵らと「再会したい」と消息を求めている。日本語での交流を深める中で少年らから沖縄戦の悲惨さを聞き、敗戦の日本に送還される彼らをふびんに思ったという。彼らの戦後が気になっている。(安里真己)

 現在ロサンゼルスに住むオオタさんは、父親が与那城村(当時)生まれの県系二世。一九四五年から四六年まで米陸軍に従軍した。戦前、日本語学校に通ったことがあり、日本兵尋問の通訳のためにサンフランシスコ湾にあるエンジェル島の収容所に駐留した。

 収容所にはグアムやサイパン、ガダルカナルで捕虜になった二十―三十代と思われる日本兵たちも多数いた。沖縄戦後はその中に数人の十代の沖縄出身者が入ってきた。

 オオタさんは、日本語で少年たちと話し、姓ではなく名前で呼んでいたが、現在ではもう忘れてしまっている。

 少年らは、成人とは別に収容され、米軍から米や魚、野菜などの提供を受け自炊していた。オオタさんは職業軍人の尋問の通訳以外は、少年たちの監視をしていた。

 日本語で話すうちに仲良くなった。少年らは家や田畑、街が破壊され、家族を失った沖縄戦の悲惨の状況を語ったという。

 「ホームシックにならないか」と問い掛けると「家族が死んでしまったので寂しく感じない」と答えた。

 同収容所で三カ月ほど過ごした後、少年らは日本に向け船で出発した。泣きながら駆け寄る少年もいて、オオタさんは悲しくなったという。捕虜の送還で横浜を訪れ、終戦直後の日本を自分の目で見ていることもあり、少年らの行く末がますます気掛かりになっている。

 問い合わせは、米国で日系人への聞き取り調査などをしているJAリビングレガシーの日本事務所代表・郷崇倫さん、電話0476(97)1829。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802281700_02.html

 

2008年2月28日(木) 夕刊 5面

米軍犯罪 大半が深夜以降/沖縄市 過去5年

 【沖縄】沖縄市基地政策課は二十八日までに、沖縄市内で過去五年間に発生した米軍構成員および外国人による犯罪発生状況をまとめた。発生件数は合計九十七件(二十八日現在)で、そのうち約67%が午後十一時から午前七時までの時間帯に発生していた。

 また米兵の所属別では海兵隊が最も多く二十九件。次に空軍二十一件、陸軍七件、海軍五件。事件防止のため米軍が採用しているリバティーカード制度(午前零時から同五時までの私用の外出禁止)の実効性がないことが浮き彫りになった。

 発生件数九十七件の内訳は二〇〇三年度が三十一件、〇四年度十一件、〇五年度十七件、〇六年度二十件、〇七年度十八件。そのうち凶悪犯は十三件(強盗十二件、強姦一件)。暴行や傷害などの粗暴犯は五十五件だった。海兵隊員による暴行事件は発生が市外だったことから統計には含まれていない。またフィリピン人女性暴行事件についても詳細が分からないため除外されている。島袋芳敬副市長は「今回の事件を含めて事件の検証が必要だ。米軍事件・事故防止のワーキングチームに提起していきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802281700_03.html

 

2008年2月28日(木) 夕刊 4面

性暴力根絶へ ライス長官に手紙で訴え

 【東京】二〇〇二年に在日米海軍兵から性的暴行を受けた、オーストラリア出身で四十歳代女性のジェーンさん=仮名=が二十七日、訪日中のライス米国務長官に性暴力の根絶や被害者の救済を求める手紙を、駐日オーストラリア大使館を通じて提出した。同日に国会内で記者会見したジェーンさんは、在沖米海兵隊員による暴行事件に強い怒りを表し、「あと何人の女性がレイプされるのか。米政府は犯罪の責任を取る必要がある」と涙ながらに訴えた。ジェーンさんは二十一日に県関係野党国会議員が呼び掛けた暴行事件を許さない院内集会でも体験を語っている。

 ジェーンさんは〇二年四月、米海軍横須賀基地所属の米兵に神奈川県内の駐車場で暴行された。助けを求めた横須賀署では、十分な治療を受けられぬまま現場検証に立ち会わされたり事情聴取を受けたりするなど、「被害者なのにまるで犯人のような扱いを受けた」という。

 犯人の米兵に慰謝料を求めて提起した民事訴訟で、犯行事実が認定された。しかし米兵は審理中に出国し所在が分からず、支払いは実現していない。「加害者は今も自由の身で、どこかを歩き回っている」とやり場のない怒りをぶつけた。

 ジェーンさんは一九五五年に沖縄で六歳の女の子が米兵に暴行・殺害された「由美子ちゃん事件」にも言及し、「時がたつとみんな忘れてしまう。記録をひもとけばどれだけ多くの女性がレイプされ、殺害されているか」と米兵による性暴力が絶えない現状を指摘。

 今回の暴行事件で、一部報道やネットなどで被害者に非があるような論調が見られることに「日本では『なぜ夜にそんな場所にいた』『なぜ十四歳が三十八歳と話すのか』と言う人がいる。日本はレイプカルチャー(暴行文化)を自分でつくっている」と被害者への配慮を欠く風潮を批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802281700_04.html

 

2008年2月29日(金) 朝刊 1面

来月にもアセス認可 普天間移設で県

追加資料で審査会協議終了

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の追加修正資料について、県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は二十八日、騒音や低周波音を実際の航空機で調査し、近海に生息するジュゴンを複数年調査するよう求める意見をまとめた。県はこれを受け三月初旬に、追加修正資料に対する「県の意見」を沖縄防衛局に送付。防衛局は送付後、方法書を確定して再公表する。県は早ければ三月中にもアセス調査の認可に応じる見通しだ。

 沖縄防衛局が当初予定していた二月中のアセス冬季調査は不可能となり、今年十二月に持ち越される可能性が濃厚になった。

 審査会では、追加修正資料に関する名護市、宜野座村の意見をまとめた県の意見案二十四項目八十六件について協議。そのうち審査会が出した意見は五十三件に上った。

 海上を大規模に埋め立てる作業ヤードの廃止を含め、代替施設の埋め立て地そのものの一部を利用して製作する案など環境影響の回避・低減を要求した。

 航空機騒音や低周波音については、訓練の形態によっては集落上空を飛行することもあり得るとの考えから、「集落上空で飛行訓練する形態を具体的に明らかにするよう」指摘。ジュゴンへの影響を考慮し、調査・予測地点は辺野古海域や嘉陽海域の海上や海中に複数設定するよう求めた。

 騒音の現地調査は、代替施設周辺地域の名護市や宜野座村、県と調整した上で、代替施設で運用が計画されている航空機を実際に飛行させて調査するよう要求した。名護市試案の位置も含め、可能な限り沖合へ移動した位置で予測・評価するとした。県環境政策課は「追加修正資料への意見は出尽くした」として審査会の協議を終了。今後、県の意見を確定し来週中にも防衛局へ送付する意向を明らかにした。

 防衛局は県の意見を考慮した上で方法書を確定し再公表。同課は「公表後にアセス調査の認可申請が行われる」として、早ければ三月中にもアセス調査着手可能との見方を示した。

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2008年2月29日(金) 朝刊 2面

「やり直し」解釈で紛糾/普天間アセス

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う、県環境影響評価審査会は二十八日、怒号が飛び交う中協議を終えた。追加修正資料で新たに判明した事業内容が、アセス法で規定する方法書のやり直しに相当するかどうかの解釈をめぐって傍聴した市民と、県の主張がかみ合わず紛糾した。昨年十月に方法書の審査が諮問されてから五カ月。県は来月にもアセス調査を認可する見通しで、手続きは新たな段階に入る。

 那覇市の県総合福祉センターには六十人以上の傍聴者が詰め掛け、協議の行方を注視した。

 資料には同日までに、県内外の市民団体や個人から「事業内容の大幅な変更であり、方法書をやり直すべき」として公告縦覧などの手続きを求める指摘が相次いだ。

 県環境政策課は、アセス法で定める方法書のやり直しは「事業面積の変更に伴い内容に変更があった時に限定される」との見解を示し、「事業面積に変更がない今回のケースは、やり直しできない」との説明に終始した。

 「沖縄防衛局と審査会事務局だけの協議で事を収めようとしている」。ジュゴンネットワーク沖縄の土田武信事務局長は、方法書手続きをやり直さず公告縦覧を行わなかったことに不信感をあらわにし、「市民参加という、アセス制度の民主性をかなぐり捨てた」と批判した。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団運営委員の真喜志好一さんは同資料で新たに盛り込まれた、米軍機が集落上空を飛ぶ可能性などを指摘。「住民の意見はこれから出てくるはずなのに、何も言えなくなった」と憤り、審査会が方法書のやり直しについて、アセス法の解釈に触れなかったことに不満を漏らした。

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2008年2月29日(金) 朝刊 1面

県内全議会が抗議決議/米兵暴行事件

実効性ある防止策求め

 今月十日に起こった米兵による暴行事件を受け、南大東村議会(新垣湧司議長)が二十八日、抗議決議案を全会一致で可決、県議会と県内全四十一市町村議会の抗議決議が出そろった。すべて全会一致だった。意見書は今帰仁村を除く四十市町村で可決され、南風原町以外の三十九議会で全会一致だった。

 十二日の那覇市議会を皮切りに各市町村議会が臨時会で対応。米軍絡みの事件の多発する本島中部の議会は強い憤りを示した。決議は「実効性のある再発防止策」や「責任の所在の明確化」などを強調、踏み込んだ表現で、米軍や政府の抜本的な対策を要求した。

 多くの議会が地位協定の改定と基地の整理縮小を求め、読谷村議会は「基地撤去」を訴えた。

 市民団体も各地で集会を開催。

 県子ども会育成連絡協議会や県婦人連合会などは三月二十三日に北谷町内で超党派の県民大会を開く予定。

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2008年2月29日(金) 朝刊 2面

知事、県民大会に消極的/被害者配慮理由に

「各界の声聞く必要ある」

 県議会(仲里利信議長)二月定例会は二十八日、一般質問最終日の質疑が行われた。米兵による暴行事件を受けて開催方針が決まった県民大会について、仲井真弘多知事は「被害者およびご家族の心情や意向にも十分配慮することがまず第一で、その上で広く県内の各界各層の声を聞く必要がある」と述べ、県民大会開催に消極的な考えを示した。国場幸之助氏(自民)への答弁。

 今年六月に県内で開催されるG8科学技術担当相会合の共同声明に、沖縄側から環境問題への提言を盛り込むことへの見解を問われた上原良幸企画部長は「実現できるよう内閣府などと調整していきたい」と述べた。照屋守之氏(自民)の質問に答えた。

 ガソリン税などの暫定税率廃止による県民負担の軽減額について、上原企画部長は「二〇〇五年度で約二百二十一億円と推計され、民間消費全体の約1・2%程度と見込まれる」と述べた。一方で「暫定税率廃止の場合、本土ではガソリン価格が下がると予想されるが、県では復帰特別措置法などで揮発油税と地方道路税が軽減されており、現時点で断定できない」と答えた。仲田弘毅氏(自民)への答弁。

 香港エクスプレスが開設する沖縄―香港路線について仲井真知事は「四月三日から、週二便の運航を計画している。四月末には週四便の増便を予定し、現在運航計画等の調整が行われている」と述べた。前島明男氏(公明県民会議)に答えた。

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008年2月29日(金) 朝刊 1面

教科書問題 検定手続き改善要請

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は二十八日、東京都内で開かれた教科用図書検定調査審議会(検定審、会長・杉山武彦一橋大学長)の総会で、教科書検定手続きの改善方策を審議するよう要請した。渡海氏が重視しているのは、検定手続きの透明性の向上。ほかに(1)専門的見地からのきめ細やかな審議の確保(2)教科書記述の正確性の確保―などを求めている。

 検定審は引き続き開かれた総括部会で、委員によるワーキンググループ(WG)を立ち上げて今年夏をめどに検討結果を取りまとめることを確認した。月一回程度のペースで審議し、年度内にも第一回会合を開催する。

 総会で文科省初等中等教育局の金森越哉局長は、検定審の検討結果を踏まえた上で、教科用図書検定規則を改正する考えを明らかにした。

 検定規則改正の方向性について文科省幹部は、教科書会社が検定審に申請する記述内容に誤記や誤植が多く、これらの処理に時間を割かれる現状を念頭に「記述の正確性を高めるための規則改定などが考えられる」と述べた。

 検定審は同日の総会で、総括部会を原則公開とすることを決め、この日の審議を報道陣に公開した。

 総括部会は教科ごとに分かれている十の部会を総括するが、個別の教科書記述の審議はしない。沖縄戦の記述がある歴史教科書は、第二部会の日本史小委員会で扱われる。部会の透明性向上は今後、WGで議論される見通しだ。

 渡海氏は総会で「二〇〇六年度の高校日本史教科書の沖縄戦記述の検定過程で、審議の透明性の向上や専門的見地からのきめ細やかな審議の必要性など、さまざなま事項が指摘された」と経緯を説明。

 「手続きの透明性を可能な限り向上させることが、教科書検定の信頼性を高めるためには大切だ」と述べ、透明性向上を強く求めた。

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2008年2月29日(金) 夕刊 1面

知事、出席は超党派前提/米兵暴行・県民大会

 仲井真弘多知事は二十九日午前の定例記者会見で、米兵暴行事件を受けて三月二十三日に開催予定の県民大会について「超党派というのは当然一つの条件。しっかりと心と声を一つにできる態勢をつくれるかどうかだと思う」と述べ、自身の出席には「超党派」での開催が前提になるとの認識を示した。

 その上で仲井真知事は「まだ政党によって濃淡あるのではないか。いろんな思惑があったりすると、なかなか(県民の意思が日米両政府に)到達しない面がある」と指摘。開催に消極的な姿勢を重ねて示した上で、各党の動向を慎重に見守る考えを示した。

 事件に関連して県内全市町村議会が抗議決議を行ったことについては「基地のある市町村、ない市町村含めて率直な怒りの気持ちの表明と思う」と述べた。

 また、日米地位協定の抜本的見直しを求めるために検討している訪米の時期について、仲井真知事は「九月は米大統領選でそれぞれ候補者が決まり、次の体制も割合見えてくるという話もあり、一つの時期かもしれない」と述べ、当面は九月前後の訪米を念頭に置いていることを明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802291700_01.html

 

2008年2月29日(金) 夕刊 7面

沖縄市長に協力要請/県民大会へ婦連・子連

 【沖縄】米兵による暴行事件を受けた県民大会実行委員会準備会(仮称)の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会会長と、県婦人連合会の小渡ハル子会長は二十九日、沖縄市役所に東門美津子市長を訪ね、大会開催に向けて協力を要請した。

 東門市長は「個人として全面的に協力する。市としては準備委員会と話し合いながら進めていきたい」と前向きな姿勢を見せた。

 玉寄会長は「大会までの期間が短いだけに、たくさんの市町村や団体に協力を求めたい」と話している。県内市町村に対し、実行委員として大会に参加するよう呼び掛ける意向。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802291700_02.html

 

2008年2月29日(金) 夕刊 7面

偽20ドル札 米兵引き渡し要求へ

 本島中部を中心に昨年十一月ごろ、偽二十ドル札が複数枚見つかった事件で、沖縄署と浦添署は二十九日午前、外国通貨偽造・同行使の疑いで、浦添市の米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)所属の米海兵隊一等兵の男(20)を書類送検した。男は米軍当局が身柄を拘束しており、書類送検を受け、那覇地検は男を起訴し、米側に身柄の引き渡しを求める見通し。

 調べでは、男は昨年十一月中旬、浦添市の基地内兵舎の自室で複合型カラープリンターやパソコンで二十ドル札四十数枚を偽造。同市や沖縄市のタクシーや飲食店などで数枚使った疑い。「手持ちの金がなかったから作った」と容疑を認めているという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802291700_04.html

納得できない再発防止策など  沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(2月23日、24日、25日)

2008年2月23日(土) 朝刊 1面

身柄確保 県警優先も/日米両政府再発防止策

基地外居住を厳格化

 【東京】在沖米海兵隊員による暴行事件を受け、外務省は二十二日午後、基地外に住む米兵の実態把握と居住許可基準の厳格化を柱とした再発防止策を正式に発表した。米側が基地外居住者の人数を年に一度、日本側に提供し、日本政府が所在市町村と共有する。両政府は基地外居住条件の厳格化を視野に、今後、日米合同委員会で協議する。

 再発防止策はほかに(1)防犯カメラ設置(2)日米共同パトロールの際、日本側が優先的に身柄を確保する仕組みを念頭に警察権限の行使を調整(3)米軍教育プログラムを改善し、沖縄側の視点を反映(4)夜間外出制限措置(リバティーカード制度)の再検討―など。

 防犯カメラは、県内の一部自治体が「プライバシーの侵害」などを懸念しているため、地元の要望があれば積極的に検討するとしている。

 共同パトロールは、任意同行の権限を持つ米軍憲兵は立ち会わず、指導的立場にある士官が参加する方向。教育プログラム改善では、過去の事件の経緯を教育することなども検討している。

 夜間外出制限措置は、リバティーカード制度を導入していない陸軍も含め、四軍すべての対応を再検討する。

 そのほか、既存の「米軍事件・事故防止ワーキングチーム」の枠組みを通じ、政府、沖縄、在沖米軍の連携を強化する。

 日米は今回の事件について、基地外に住む指導的立場にあった二等軍曹が起こしたことを問題視、県や関係自治体と調整しながら対応を検討してきた。

 外務省は今回発表した再発防止策を「当面の措置」としており、今後も日米合同委員会などで再発防止策を継続的に議論し、その成果を随時発表するとしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802231300_01.html

 

2008年2月23日(土) 朝刊 27面

「実効性は」首長複雑

 米兵暴行事件を受け日米両政府が発表した再発防止策に、基地所在の中部首長から「これまでの対策の範囲内」「具体的でない」など不満が相次ぐ一方、「基地外居住の把握は一歩踏み込んだ」と一定の評価も。防犯カメラの設置についても、期待とプライバシー侵害への不安が交錯する。県内で高まる地位協定の抜本的改定のメドはなく、根本解決には程遠い。

 「これまで話し合われてきた範囲をほとんど超えておらず、具体的、根本的解決策の公表を求めてきた立場としては十分とはいえない」と東門美津子沖縄市長は厳しく指摘。米軍人の施設・区域外居住基準の公表には「一歩踏み込んだ感はあるが、市町村ごとの居住実態も開示されるか不透明」と述べた。

 野国昌春北谷町長は「人数把握は、各区ごと戸数が分かるようにしてほしい」と要望。「カメラの設置は、地域の了解を得てから。米兵宅にだけカメラを向けるのかどうか、具体案が分からず、評価は難しい」

 知念恒男うるま市長は、施設外居住者の実態把握を一定の前進ととらえた上で「声を上げることで、日本の要望が実現できるなら、地位協定の抜本的改正も実現してほしい」と話した。カメラ設置には疑問を呈し、無関係な人のプライバシーが侵害される可能性も指摘した。新垣邦男北中城村長は「実効性があるのか、疑問。市町村長や県知事の意見を具体的に反映させる場を設けた方が効果的」とした。

 宮城篤実嘉手納町長は、防犯カメラについて「運用面で非常に難しい問題はあるが、地域の理解が得られるのであれば、場所によっては必要だ」と一定の理解を示した。


防衛局に協定改正要求


 中部市町村会(会長・知念恒男うるま市長)が二十二日、沖縄防衛局に真部朗局長を訪ね、米兵暴行事件に強く抗議するとともに、綱紀粛正の徹底と、具体的な再発防止策の確立、基地の早期返還や整理・縮小、日米地位協定の抜本的改定を申し入れた。

 知念市長は「米軍に対し、事件・事故の再発防止と綱紀粛正を強く訴えてきたにもかかわらず、またしても事件が発生したことは遺憾。日米地位協定の抜本的改編を行うよう対応してほしい」と指摘。

 野国昌春北谷町長は「町内の賃貸住宅は増え、事件も頻発している。綱紀粛正といっても緩んでいるのではないか。占領意識があるのではないか」と憤った。

 儀間光男浦添市長は「基地は苦渋の策として受け入れているのに、人権や命まで渡してはいない」と述べた。

 真部防衛局長は「(市町村会の抗議文)と同じと認識。現在、在日米軍挙げて、綱紀粛正、事件再発防止策を検討している」と説明した。


「目新しさない」新垣弁護士


 米軍事件の再発防止策について、米軍犯罪に詳しい新垣勉弁護士は「目新しい内容はない。沖縄に米軍基地を集中させ、自由な外出を許している現状を容認し続ける限り、『実効力のある対策』など存在しないことが浮き彫りになった」と批判した。

 防止策の中身については「具体策で新しいといえるのは防犯カメラの設置ぐらい。在沖米軍の現状維持を前提とする限り、日米両政府には新たな再発防止策が考えられないことが明らかになった」と話した。

 基地外に居住する米兵の実態把握に関しては、「米軍そのものは危険ではなく、軍人個々人の問題だという従来の前提に立った考えだ。これだけ犯罪が続くのは、米軍の存在そのものが危険だということ」とした。

 その上で「基地を存続させたいというなら、基地外への居住や外出を原則禁止し、軍隊を地域住民から隔離する。基地外への自由な出入りを原則としている現状を逆転させなければ効果はない」と指摘。「一番の解決策は、やはり基地撤去だ」と話した。


沖縄市長は米側へ抗議


 米陸軍兵士によるフィリピン人女性暴行事件を受け、東門美津子沖縄市長は二十二日、沖縄防衛局、外務省沖縄事務所、在沖米国総領事館を訪ね、市民への謝罪と実効性のある犯罪防止策、被疑者の身柄確保、被害者への謝罪と補償などを要請した。東門市長は「一週間前にも暴行事件が発生したのに、女性などの人権が侵害される非人道的行為が断じて容認できない」と抗議した。


容疑の米兵拘置を延長


 米兵暴行事件で那覇地検は二十二日、強姦の疑いで逮捕された在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)の拘置の延長を請求。那覇地裁は来月三日までの十日間、拘置の延長を認める決定をした。


平和センター基地前で集会


 【北中城】相次ぐ米兵暴行事件に抗議する緊急集会(主催・沖縄平和運動センター)が二十二日、北中城村石平のキャンプ瑞慶覧ゲート前であり、中部地区労の組合員ら約百十人(主催者発表)が「米軍の性暴力を許すな」「米軍基地は撤退せよ」などとシュプレヒコールを繰り返した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802231300_02.html

 

2008年2月23日(土) 朝刊 1面

上司責任追及も 県会議7項目

 米兵暴行事件を受け、日米両政府に実効性ある再発防止策を求める県の「米軍人等犯罪防止対策に関する検討会議」(会長・仲井真弘多知事)の第二回会合が二十二日、県庁で開かれた。外出制限措置の徹底、規律違反者とその上司の責任の厳格化など、七項目・計二十の防止対策をまとめた。県警が否定的見解を示している米軍との共同パトロールや、自治体から積極的な要望が上がっていない防犯カメラの設置は盛り込まなかった。

 今後、日米の関係機関でつくるワーキングチームなどに提案し、実現を図る。

 県の防止策の柱は(1)米軍人に対する研修(教育)プログラムの見直し(2)米軍人等の生活規律の強化(3)基地外に居住する米軍人等の対策(4)防犯施設の充実・強化(5)県警の取り組み強化(6)学校の取り組み強化(7)日米地位協定の見直し等―。米軍人の生活規律の強化では、外出制限措置の時間や対象者の拡大を要求。防犯施設の充実では、防犯灯増設などを盛り込んだ。

 県警の取り組みとしては、米軍施設周辺へのNシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)の設置、携帯電話で犯罪情報が受信できる「こども安全情報メール配信サービス」システムの構築など。

 日米地位協定の見直しに関しては、容疑者の起訴前の拘禁移転要請に応じること、被害者の損害賠償を日米両政府の責任で行うこと―などを求めている。

 上原昭知事公室長は「正式な形で米側に再発防止策を求めるのは初めて。従来よりも踏み込んだ表現になっている。米軍も深刻な状況を認識し、できる限り取り入れてもらいたい」と話した。

 会議の冒頭、仲井真知事は「政府も米軍人等の犯罪防止対策について発表しているが、これも踏まえ、こちらもまとめていきたい。政府も素早く対応していただいたことは高く評価できる」と述べた。

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2008年2月23日(土) 朝刊 2面

日米共同パトロール難色/県議会代表質問

 県議会(仲里利信議長)二月定例会は二十二日、代表質問最終日の質疑が行われた。

 米軍人による事件・事故の再発防止策の一つに挙げられた県警と米軍との共同パトロールについて、得津八郎県警本部長は「憲兵隊(MP)との共同パトロールでは、罪を犯した米軍人を県警とMPが共同逮捕した場合、日米地位協定の規定により身柄は米軍に引き渡されることから容認していない」と指摘した。上原章氏(公明県民会議)への答弁。

 MP以外の軍人との共同パトロール(CP=生活巡回指導)においても「身柄の措置に関して(MPとの共同と)同様の問題が生じる可能性がある。米軍犯罪のみに対処するため、既存の警察力の一部を割くことになり、警察力低下の恐れがある。現状では県民にとって必ずしも望ましくない」と述べ、地位協定の問題点の解決を強調した。

 その上で、共同パトロールの実効性を高めるために、「法執行力を持つ警察官や意思疎通のための通訳員の増員、パトカーの装備機材の充実など必要な措置が必要」との認識を示した。

 仲井真弘多知事は、「集団自決(強制集団死)」教科書検定問題で、県民が強く求めながらも実現しなかった検定意見の撤回について、「検定意見の撤回については、長期的な取り組みになるものと考えており、今後の国の動向を注視していきたいと考えている」との認識を示した。当山全弘氏(社大・結連合)の質問に答えた。


県議会代表質問(最終日抄録)


 県議会二月定例会の代表質問最終日は糸洲朝則(公明県民会議)、上原章(同)、当山全弘(社大・結連合)の三氏が登壇し、基地問題や観光・経済振興、教育・福祉問題などについて県の考えをただした。


平和行政


 ―沖縄平和賞の充実について。(糸洲氏)

 仲井真弘多知事 沖縄平和賞は、平和を求める県民の心を世界に発信するために創設された。今後とも世界の賞となるようしっかり取り組み、沖縄の歴史と風土の中で培われた平和を何よりも大切にする沖縄の心を世界に発信し、人類普遍の平和の創設の確立に努める。


戦後処理


 ―旧軍飛行場用地問題の解決への取り組み状況と見通しは。(上原氏)

 上原昭知事公室長 国では担当窓口が決まっていない状況だが、財務省は国有財産管理者の立場から、内閣府は財務省と協力しながら支援したいとのことだ。関係市町村と連携し、条件が整った市町村から先行し、二〇〇九年度予算に向けて取り組んできたい。


モノレール延長


 ―モノレール延長ルート案選定の進め方は。(当山氏)

 首里勇治土木建築部長 三月予定の第七回延長検討委員会で、県民意見も参考に総合的に審議され、推奨案が選定される見込みである。それを受けて、事業主体である県と那覇市において、国や関係機関と協議した上で、正式に延長ルート案を決定する考えである。


暫定税率問題


 ―(ガソリンなどにかかる揮発油税の)暫定税率が廃止された場合の影響は。(当山氏)

 首里土木建築部長 本県の本年度の道路整備費は、直轄、県、市町村合計で一千四十七億円。財源内訳は、国庫金が約九割を占め、残りを地方税収等で賄っている。本年度の事業費を基に暫定税率が廃止された場合の影響額を試算すると、一千四十七億円のうち五百十三億円が失われる。


基地問題


 ―米軍嘉手納基地での即応訓練に対する県の対応は。(当山氏)

 上原知事公室長 県は、訓練通知を受けた二月八日、米軍および沖縄防衛局に、周辺住民に著しい影響を及ぼさないよう十分配慮することを申し入れた。県としては、米軍の訓練などにより、県民に被害や不安を与えることがあってはならず、県民の生命、生活および財産へ十分に配慮すべきであると考える。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802231300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月23日朝刊)

[再発防止策]

これでは納得できない

 米兵による暴行事件を受け、日米両政府は、性犯罪などの発生を防ぐための当面の措置を発表した。

 どんな再発防止策も、それが組織の隅々に浸透し、目に見える効果を発揮するのでなければ、机上のプランにすぎない。求められているのは実効性である。

 駐日米大使や在日米軍司令官、在沖米四軍調整官らがこぞって謝罪し、綱紀粛正を約束したにもかかわらず、その後も米兵による不祥事が後を絶たないだけに、なおさらだ。

 だが、公表された再発防止策は、日米で調整中の事項を具体的な内容も決まらないうちに大急ぎで表に出したもの。これといった決め手もなく、どうしても隔靴掻痒の印象がぬぐえない。

 当面の再発防止策として政府は、基地外に住む米軍関係者の人数などの情報を年に一回、各市町村に提供するほか、基地外居住の基準についても、日米で再検討することを明らかにした。

 政府によると、基地外に住む米軍関係者は一月末現在、一万七百四十八人で、県内に居住する米軍関係者の約24%を占めるという。この数字は、米軍からの情報提供を受けて、政府が、国会議員の質問主意書に対する答弁書の中で明らかにしたものだ。

 基地外居住者の人数把握は、自治体が当然、掌握しなければならない事項であって、再発防止策以前の問題である。

 基地外居住者もさまざまな行政サービスを受けており、仮に火事にでもなれば、民間の消防のお世話になるはずだ。地位協定の壁に阻まれ基地外居住者の実態把握ができなかったこれまでの状態が、異常だといわなければならない。

 このほか、再発防止策として(1)米軍と警察による共同パトロール(2)防犯カメラの設置―などが挙がっている。

 共同パトロールについては、米軍憲兵が同行した場合、容疑者の身柄が米軍側に拘束される可能性があるため日本側が強く難色を示している。これだけ広大な米軍基地を抱える沖縄で何人をパトロールに投入できるのか。いつ、どこを恒常的にパトロールするのか、という実効性の問題もある。

 政府は引き続き、日米合同委員会を通じ、再発防止策を協議していく考えだという。

 過去の再発防止策のどこが不十分だったのか、なぜ、事件・事故が繰り返されるのか、を根本的に洗い直さない限り、実効性は期待できない。

 この際、既存の日米合同委員会ではなく、沖縄の民意がきちんと反映されるような別組織を設けて、検討すべきではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080223.html#no_1

 

琉球新報 社説

米兵事件再発防止 もっと効果策があるはずだ

 「まずできることから出した」(高村正彦外相)として示されたのが22日に発表された政府の米軍関係者事件再発防止策である。確かにその通りだ。これまで事件のたびに示されてきた対策の繰り返し。県民の多くは効果的な対策として受け入れないだろう。県民の求めているのは、こんな場当たり的な対策ではない。現段階で最も効果的な対策は日米地位協定の抜本見直しであることを、政府は分かっているはずだ。なぜ目をそむけるのか。

 今回の米兵による女子中学生暴行事件で浮き彫りになったのは、基地外に居住する米兵の管理の問題であった。当該自治体が懸念していたことが現実となり、事後の対応の焦点ともなった。

 これまで基地外居住の米軍関係者の数は公表されていなかった。高村外相が米軍から得た新たな情報として明らかにしたが、それによると1万748人である。政府は同日、基地外居住の許可基準も初めて明らかにした。四軍それぞれ細かく規定されているが、基本としては単身の下級兵士、特定重要配置の兵士以外は認められるという緩い基準であることが分かった。

 対策として挙げられたのは許可基準を日米で再検討するというものだ。管理徹底のためには、基準をより厳格化することが求められるだろう。基地外居住人数など情報を各市町村に年1回提供するという対応は、これまでなされなかった方がおかしい。

 事件発生のたびに苦々しく思うのは、米軍はもとより日本政府の基地問題対応の怠慢である。基地外居住問題に関して、県が収集・開示できた米軍情報に対して沖縄防衛局が消極的対応に終始した問題は、その象徴であろう。

 政府が発表した再発防止策について高村外相は「それなりの効果はある」としながら「これで(米軍の犯罪が)なくなるとは誰も言えない。継続的な努力が必要だ」と強調した。

 この発言は大きな意味がある。基地がある限り米軍関係者の犯罪は続くと、外相自ら認めたようなものだ。

 最も望まれる対策は、米軍基地を撤去することだ。または本県に集中する基地を県外に移転し、負担を軽減していくことも目に見える効果があるはずだ。緊急的になしうる現実的な対応は、日米地位協定の抜本見直しである。

 同様に米軍基地を抱える神奈川県の松沢成文知事も「運用を改善して対応するのは限界に来ていると思う」と、見直しを求めている。本県だけの問題ではないのだ。対応を誤れば、批判の矛先は日本政府にも向かう。今回の再発防止策だけでは納得できない。

(2/23 9:48)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31589-storytopic-11.html

 

2008年2月23日(土) 夕刊 5面

戸惑う基地の街 米兵外出禁止令

犯罪イヤだけど客が来ないと・・・雰囲気は守りたい

 【沖縄】米兵暴行事件による外出禁止令が始まり、初めての週末となった二十二日夜。普段は米兵でにぎわう沖縄市のコザ・ゲート通りは、人影も少なく、閑散とした。この日、外務省は再発防止策として防犯カメラの設置を盛り込んだが沖縄市は市民のプライバシー保護の観点などから、慎重姿勢を崩さない。一方、以前からカメラの設置を求めてきた市内の経済団体は事件の抑止効果を期待する。戸惑う基地の街を歩いた。(中部支社・吉川毅、又吉健次)

 胡屋十字路と嘉手納基地第二ゲートを結ぶコザ・ゲート通り。事件の影響からか、米兵だけでなく日本人の姿もまばら。ライブハウスの演奏メンバーが、外出禁止措置で基地外の自宅から出られず、急きょ演奏を中止した店もあった。

 通りでライブハウスを経営する男性(57)は「米兵が来ないと分かっているが、日本人客は来るから」と店を開けた。

 ステージにも出演するが「客が来ないと思うと気持ちが乗らない」とぼやく。

 防犯カメラの設置で犯罪抑止に期待する。店にカメラを設置してから、暴れる兵士が少なくなったといい、「通りを歩けば、誰かに見られている。プライバシーの問題はないはずだ」。

 客の九割が米兵というタトゥー(入れ墨)ショップの客はこの日二人だけ。男性従業員(22)は「犯罪は問題だけど通りは栄えてほしい」と語る。防犯カメラについては「難しい問題なので何とも言えない」と口ごもった。

 コザ商店街連合会の親川剛会長は「防犯カメラが切り札になるとは限らないが、抑止力にはなる」と強調。「コザ独特の雰囲気を守るために、私たちとしては市に対して防犯カメラ設置を強く要望していく」と意気込んだ。

 夕方、コザ・ゲート通りに買い物に来た高校一年の女子生徒(15)は「カメラがあっても、別の場所で事件を起こすだけ」と、効果を疑問視する。

 コザ・ミュージックタウンに食事に来た高校三年の女子生徒(18)は「いろんな国籍の人がいるからこそ、コザの雰囲気も出る。だけど、(米兵は)怖いと思うこともある」と話した。

 二十一日に開かれた市議会総務委員会では、防犯カメラ設置問題が取り上げられ、委員が市の取り組み状況について質問。市は、設置要請した十四団体などから意見聴取したと報告した。

 東門美津子市長は「市民のプライバシー、防犯面で設置に賛否両論がある。市民の意見を聞き、慎重に判断したい」と話している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802231700_01.html

 

2008年2月24日(日) 朝刊 23面 

米兵暴行事件/PTAが巡回調査

 【北谷】相次ぐ米兵による暴行事件を受け、北谷町PTA連合会(仲地泰夫会長)は二十三日、同町内全域を巡回し、危険個所を調査した。町内小中学校の保護者や教諭が美浜、北前など三グループに分かれ、人通りの少ない公園やトイレの場所などをチェックした。

 町内六小中学校では、各校のPTAが登下校時や夜間に防犯パトロールを実施している。暴行事件発生後、あらためて危険個所を把握し、今後のパトロール活動に生かそうと調査に乗り出した。

 午後八時に町役場を出発。外国人の多い砂辺の公園では高校生から「外国人も多く利用し、けんかなどトラブルもある」など地域の状況を聞き取った。同会は三月二日に緊急報告会を開催し、保護者へ調査結果を伝える。仲地会長は「保護者は危険個所の情報を子どもに伝え、防犯についてしっかり対話してほしい。調査を基にした町全体の安全マップも作成したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802241300_04.html

 

琉球新報 社説

検定制度の改善 審議の完全公開を望む

 教科書検定制度の正常化に向けて、新たな一歩となることを切に希望したい。私たち県民にとっては、より切実な問題だ。沖縄戦中の「集団自決」(強制集団死)をめぐる高校歴史教科書に検定意見が付いた件で制度の不透明さ、不合理さに声を上げてきた経験があるからだ。

 渡海紀三朗文部科学相が22日、検定制度の改善策について言及した。閣議後の記者会見で述べたもので、大臣は「教科書検定制度の透明性の向上や、専門的見地からの検定の在り方を議論してもらいたい」と、教科書検定審議会に対し、改善策の検討を要請することを明らかにした、という。

 例えば、非公開となっている検定審の審議について、議事要旨の公開などを検討する。これについては、私たちは審議の完全公開を要求したい。そもそも、児童生徒に教える教科書が、なぜ密室で決められるのか。公開で不都合なことでもあるのだろうか。その弊害が、先の「集団自決」問題で明らかになったのではないか。

 また、専門的な内容を検定する際の委員構成などについても検討するという。「集団自決」検定の際、日本史小委の中に沖縄戦の研究者が一人もいなかった、という事実を思い起こしてほしい。これでは文科省の職員の思いのままということも指摘してきた。実質的に現在のシステムは国定制度となっている、とも主張してきた。

 冒頭、県民にとって切実、と書いた。しかし、事は沖縄だけの問題ではない。今のままの検定制度では、いつどこの地域でも起こり得る可能性がある。地域の問題ではなく、全国的な関心が必要とされるゆえんだ。

 検定審は28日にも総会を開き、「総括部会」の中に具体的な改善策を話し合うワーキンググループを設置する予定だ。その審議過程もぜひ、公開にしてほしい。

 李下に冠を正さず。これまで指摘したように、文科省の教科書調査官の不可解な介入が検定の不透明性を助長したのは、見てきた通りだ。この際、調査官の役割も含めて、徹底的に見直しを進めてほしい。

(2/24 9:57)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31621-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

文民統制 正常に機能しているのか

 組織が正常に機能しているか、どうか。どうすれば分かるのだろうか。不測の事態が起こった場合の対応を見れば、大体は想像がつく。普段から組織の規律が緩んでいたとしたら、不祥事の際、次々とぼろが出てくる。イージス艦による漁船衝突事故を起こした後の海自を含めた防衛省のあたふたぶりを見ていると、その感をますます強くする。

 前防衛事務次官の汚職事件に始まってイージス艦機密情報漏洩(ろうえい)事件、元海幕防衛課長の給油量隠ぺい問題、航海日誌の誤廃棄。いずれも、最近、相次いで発生した不祥事だがパターンは同じだ。発表、訂正、釈明、謝罪…。その場しのぎに終始し、結局、問題の本質は明らかにされない。ひと言でいえば、組織の隠ぺい体質がより印象に残っただけだ。

 事故が起きた19日、石破茂防衛相は夕方の自民党部会で、あたごの見張り員が漁船を見たのは2分前だった、と公表した。ところが、同日午後の海上幕僚長の会見で、そのことは明かされていない。防衛部長が防衛相の発言内容に慌てて追認したのは、午後11時になってから。見張り員が清徳丸を視認したのが、実は12分前だったことも、自民党部会で初めて公表されている。夜になって防衛部長が釈明する光景が繰り返されたが、これなども「情報隠し」と疑われても仕方がない。一事が万事だ。

 事故前後の模様が、僚船などの証言から次第に明らかになってきている。普段から漁船のほうが自衛艦を避けてきたというのだ。衝突防止法で自衛艦側に回避義務がある場合でも。あたごの見張り員も「向こうがよけると思った」とも述べており、事故はいつ起きても不思議ではない状態だったということになる。さらに、あれだけ船舶が過密な場所で自動操舵(そうだ)のまま突っ走る、というのが普通だったというから驚きだ。広い公海ならいざ知らず。たがが緩んでいるというか、おごりさえ感じる。

 一方、組織として文民統制(シビリアンコントロール)が、正常に働いているのかどうか。残念ながら、これもまた、疑わしい。事故の一報が防衛相や首相に伝えられたのが1時間半から2時間後というのだから、あきれるばかりだ。自衛活動ではなく、単なる事故という判断だとしたら、大きな間違いだ。勝手な思い込みが、取り返しのつかない事態を招くことだってあり得るだろう。

 背景に背広組(内局)と制服組(自衛隊)との確執があるなら事態はより深刻。文民統制の危機が杞憂(きゆう)であることを祈るしかない。

 防衛省の組織再編案を策定する「改革推進チーム」が、議論を始めた。多くの課題があるが、国民の納得できる結論が必要だ。

(2/24 9:58)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31622-storytopic-11.html

 

2008年2月25日(月) 朝刊 2面

政府防止策は暫定/米兵暴行事件テレビで見解

高村外相、検討継続を強調

 【東京】高村正彦外相は24日朝のNHK番組で、米兵暴行事件を受けて政府がまとめた再発防止策について、「当面の対応であり、十分なものとは思っていない。本当に実効的な綱紀粛正、再発防止策を打ち出していかなければならない」と述べ、今後も継続して検討していく考えを強調した。

 一方、事件を受け、米軍関係者の基地外居住に厳しい見方が強まっていることについては「基地の外に住まない方がいいということではない。外に住む人たちに適格性があるか、方針をきっちりしてほしいということだ」と述べ、あくまで居住条件の見直しで対応する考えを示した。番組には国際問題アドバイザーの岡本行夫氏、琉球大学の我部政明教授(国際政治)も出演。

 岡本氏は「米軍内に『成人男子が沖縄だけで二万人以上おり、人口数万の都市に匹敵する規模だ。米軍はとにかく犯罪は防止するが、犯罪ゼロは無理』という人がいるが、間違いだ」と指摘。

 その上で「司令官が代わるたびに規律が緩んだりするが、東アジアの安全保障を維持するということと同じぐらい、事件・事故を撲滅することが大事だということを、常に引き継ぎで教育しなければいけない」と強調した。

 我部教授は、「(政府は)米軍全体や基地の中の犯罪をどれだけ把握しているのか。そういう状況を分からないまま(基地の)外だけで防止しようとしても、たぶん(米軍犯罪の撲滅は)無理だ」と説明した。

 一方、在日米軍再編への影響について我部教授は「米軍再編は、軍事的な観点からつくられた。しかし、今回の事件で(沖縄の基地の)政治的、社会的なコストをどう払っていくかが提起されている」と指摘し、米軍再編を見直すべきだとの考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802251300_02.html

 

2008年2月25日(月) 夕刊 5面

基地内 空き家アリ/「満杯状態」米軍説明と矛盾

 米兵暴行事件に関連し、在沖米海兵隊が、県議会基地特別委員会に対し「基地内の住宅が満杯のため基地外の居住を許している」と説明していることに疑問の声が出ている。基地従業員など関係者は「基地内に空き家はたくさんある」と指摘する。基地外に住む米軍関係者の数を外務省は一万七百四十八人と発表。市民団体は「一万人の米兵が県民の生活の場を侵食している」と批判を強めている。

 浦添市の牧港補給地区南西部。キンザー小近くに九階建てマンションが十棟以上並ぶ。部屋数は一棟八十ほど。実際に建物内を見た複数の関係者の話では、人の住む気配のない棟が少なくないという。


事実言わない


 仕事で基地に出入りする女性は「ここは前からガラガラ。『満杯』との説明を新聞で知り、うそだと思った。一万人が外に住まないといけない状況ではないはずだ」。日米政府が基地外居住の厳格化を検討することに「今も本当のことを言わないのに、信用できるわけがない」と切り捨てた。

 北中城村のキャンプ瑞慶覧。石平のゲート右側に広大な住宅地がある。二階建てで一棟四世帯の庭付き住宅が約八十棟。数カ月前に完成したが、入居者はほとんどいないという。建物前には日本語と英語で「この建物は日本政府の予算で建てられています」の看板も。

 請負業者は「入居していない理由は分からない。国の発注で造り、引き渡しただけ」と説明する。

 基地で働く四十代男性は「(キャンプ瑞慶覧の)住宅街に人が住んでないのは有名な話。ほかの基地でも空き家は多い」と話し、「せめて、現在、基地の外に住んでいる一万人をすぐに基地内の空家に戻してほしい」。


「基地外基地」


 一方、本島中部では、米軍関係者の民間地への「転入」が目立つ。北谷町の宮城海岸沿いでは、広範囲で外国人向けの新築一戸建てやマンションがびっしり立ち並び、Yナンバー車が行き交う。付近では本土ゼネコンが施工する八階建て二棟の建物も完成間近。敷地入り口には、地元自治会の「もう基地外基地は要らない」の看板がある。

 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は、「思いやり予算で住宅手当もあるのだろう。だから基地の外に住める。日本政府が基地拡大を支えている」と話す。

 事件後、情報を小出しにする米軍や政府を批判し「県民に実態が知らされず、民間地域の『基地化』が進み、痛ましい事件も起きた。外国人登録もしない米兵を、誰が管理できるのか」と語気を強め、「基地外居住の厳格化は当然だが、県民が納得できる基準を明示すべきだ」と訴えた。

 沖縄防衛局が十五日、県議会に行った説明では、二〇〇六年八月現在、在沖米軍施設内の住宅総戸数は約八千三百戸。一方、単身寮の扱いやマンション各世帯の算入法など内訳についての本紙取材には「複雑な問題で即答できない」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802251700_01.html

 

2008年2月25日(月) 夕刊 5面

那覇市長、国の対応批判/「腰が引けている」

 翁長雄志那覇市長は二十五日午前、市議会二月定例会で米兵による暴行事件について「断じて許すことのできない蛮行であり、激しい憤りを覚える」と批判し、政府の米国に対する対応については「腰が引けているのではないかと強く感じている」と疑問を呈した。

 翁長市長は、米兵による事件が相次いでいることについて「日米安全保障体制のひずみを一身に受けざるを得ないことに満身の怒りと理不尽さを感じる」とし「米軍基地があるが故に起きたことであり、いつまで耐え続けなければならないのか、県民への人権蹂躙まで認めたわけではない」と強調した。

 また、「運用改善だけでは対処できない事態」として日米地位協定の見直しと、県民の意見をまとめていくための県民大会の開催も必要だとした。


県議会に大会開催要請 6団体決定


 米兵暴行事件を受け、県婦人連合会(小渡ハル子会長)や県子ども育成連絡協議会(玉寄哲永会長)など六団体は二十五日までに、県議会が先頭に立ち県民大会を開催するよう求める陳情書を仲里利信県議会議長あてに提出することを決めた。

 二十六日の第二回県民大会実行委員会準備会で六団体以外の参加団体からも合意を取り付け、同日午後にも提出する。

 小渡会長と玉寄会長は「被害者のことを考えれば、何としても三月中に開催したい」と話し、実行委員長には「ぜひ仲里議長にやっていただきたい」と要望した。

 陳情書案では、「基地あるがゆえに沖縄県民の人権が踏みにじられてきた」とし、米軍の綱紀粛正の在り方や謝罪後も事件が続発していることを批判。

 二十五日現在で陳情に賛同しているのは、ほかに県老人連合会、県高校PTA連合会、青春を語る会、県青年団協議会。


米兵住民登録「是非含め検討」

県議会で公室長


 県議会(仲里利信議長)二月定例会は二十五日、一般質問が始まった。県は、昨年九月時点で米軍住宅検査事務所に登録されている住宅が六千九十八戸あり、そのうち五千百七戸が契約されていることを明らかにした。

 米軍施設外に住む米軍人等の住民登録を日米両政府に求めることへの見解を問われた上原昭知事公室長は、「基地の外に住む米軍人の外国人登録または住民登録の問題は、是非も含めてよく検討する必要がある」との考えを示した。


国頭村議会が事件に抗議決議


 米兵暴行事件を受け、国頭村議会は二十五日、再発防止を求める抗議決議と意見書案を全会一致で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802251700_02.html