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沖縄タイムス・琉球新報 関連記事・社説(5月20日)

沖縄タイムス 2007年5月20日(日) 朝刊 1面
辺野古海域調査/サンゴ着床具 大半設置
海自作業は終了か
 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う周辺海域の現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局は十九日午後、調査機器の設置作業を続行、サンゴの産卵状況を調べる着床具は一部を除いて設置を終え、海象調査機器やパッシブソナー(音波探知機)の一部も設置した。着床具の設置がほぼ終了したことから、海上自衛隊の支援作業は同日で終了した可能性もある。二十日も設置作業は行われる予定。
 反対派は、船やカヌー十二艇が作業船に近づいてしがみつくなど阻止行動を行い、海上保安庁の船やゴムボートが周辺で警戒するなど、緊迫した状況が続いた。
 作業には、海上保安庁の潜水士も参加。十八日終了後、作業に当たった潜水士が「反対派のダイバーから、水中でレギュレーターを外された」とトラブルを訴えたため、反対派のダイバーの動きを警戒していたとみられる。反対派市民団体は「事実関係がはっきりしていない」と反発している。
 同日の作業は、午後三時すぎに終了した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705201300_01.html

沖縄タイムス 2007年5月20日(日) 朝刊 23面
辺野古アセス「公正に」/ネット署名 世界から1000件
 【名護】「国際社会も納得できる科学的な環境アセスを」―。米軍普天間飛行場の移設問題で、国の特別天然記念物ジュゴンと豊かな自然を守るため、情報が公開された上で環境アセスメントの実施を求めるインターネット上の署名運動に、世界中から賛同するメッセージが寄せられている。開始の一日から十九日までに千件を超えた。
 署名は「市民アセスなご」の吉川秀樹さん(43)=名護市=が呼び掛けた。「署名サイト」と呼ばれる英語のホームページに一日から掲載。世界からさまざまな課題への署名の請願が寄せられる環境保護分野で、「最も人気がある請願」ベスト10に入る関心の高さだ。
 オーストラリアのケイト・グリーンウッドさんは「私自身がプランナーなのでアセスの透明性がいかに重要か分かる。将来の子どもたちから貴重な生き物を奪わないで」と思いを寄せた。また、ラオス共和国のマーク・ベジェエンさんは「ジュゴンは危機にさらされているアジアの海洋生物のシンボル。日本は米軍基地を造ることよりも、美しい自然を守る事を優先すべきだ」と訴えている。
 吉川さんは「自衛隊が参加する事前調査や、今後の環境アセスが基地建設の道具として使われてしまう危険性がある。英語でのアセス文書作成も、国に求めていきたい」と話している。
 「署名サイト」のアドレスはhttp://www.thepetitionsite.com/takeaction/511549172

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705201300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年5月20日朝刊)
[沖振法の延長]
まず将来像を描くことだ
 本紙が実施した「復帰三十五年首長アンケート」によると、四十一自治体の首長全員が残り五年で終了する沖縄振興特別措置法(沖振法)の延長を求めていることが分かった。
 「本土との格差が是正されていない」「社会基盤整備が不十分」が主な理由だ。が、その裏には財政状況が「とても厳しい」(48・8%)、「厳しい」(36・6%)という現実がある。
 五年後の財政についても二十一市町村が「悪化する」とし、四市町村は「極めて悪化する」と答えている。
 十三自治体の首長が財政再建団体への転落という「財政破綻」に懸念を示しているのを見れば、ほとんどが沖振法に期待していることが分かる。
 だが、ここは一歩立ち止まって考えてみるべきだろう。
 確かに沖振法は有用である。高率補助も使い勝手がある。だが、高率補助で事業を展開したとしても、結果としては借金を残すだけではないのか。
 言うまでもないが、ちりも積もれば山となる。高率とはいえ、あくまでも補助金であり、残りの資金は自らの財源で補わなければならない。
 それが財源の乏しい自治体を圧迫してきたのは間違いなく、裏を返せば、手厚い財政支援が目標の「自立」にではなく「財政依存度を高める」方向に作用したということである。
 つまり、大切なのは「何が必要か」という事業の優先順位、取捨選択であり、予算確保のための事業ではないということだ。
 復帰から三十五年。本土との格差が残されているのは確かだ。それでも公共施設などを見れば、同規模自治体を凌駕しているのも多い。
 そのことに目を閉ざしてはならず、むしろ“箱物”だけでは駄目だということに気付かなければなるまい。
 いま自治体に求められるのは、住民と一体となって身の丈に合った持続可能な行政システムを構築することだ。
 財政状況に応じた制度設計である。そのためには、きちんとしたビジョンに基づいた将来像を描くことが重要になるのは言うまでもない。
 それには知恵と工夫が何よりも必要であり、自治体員として住民がどう“自治”にかかわっていくかも問われてこよう。
 各自治体が自らの将来をどう考え、設計していくか。しっかりとした数値に基づく中長期的な青写真をどう打ち出していくかも欠かせないはずだ。
 “自立”への糸口はそこから見いだすべきであり、行政はもちろんのこと地域住民一人一人の力が求められていることを自覚したい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070520.html#no_1

辺野古沖事前調査 機器設置作業続く
 【名護】米軍普天間飛行場移設先の環境現況調査(事前調査)で那覇防衛施設局は19日午後も、名護市辺野古沖の調査海域で調査機器の設置作業を進めた。大潮で午後に大きく潮が引くため、午前中のリーフ内の作業が中心となった。この日の作業では現場海域に海上自衛隊の艦船は確認されず、現場での作業に自衛隊員が参加したかどうかは分かっていない。作業は20日も引き続き行われる予定。
 2日目の作業もサンゴ調査での着床板など各種機器を設置したもよう。施設局は5月末から6月初めのサンゴの産卵に間に合わせるようサンゴの着床板設置を急いでいる。普天間代替基地建設に反対する市民団体や住民らは同日午後も、辺野古漁港や海上で抗議行動を展開したが、大きな混乱は見られなかった。
 海上では、作業を阻止しようと反対派のカヌー隊が作業船にしがみついたり、ボートで接近して作業をやめるように大声で呼び掛けるなど抗議を続けた。漁港内に設置されたテントには、阻止行動を支援しようと労組団体や市民らが多く訪れ、遠く沖合での阻止行動を見守った。

■海自の調査投入防衛相に抗議文 反基地ネット
 あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク(反基地ネット)は19日、海上自衛隊を投入して18日に始まった名護市辺野古沖の環境現況調査(事前調査)に対し、久間章生防衛大臣宛に抗議文を送った。
 抗議文の中で反基地ネットは、1950年代に米軍が銃剣とブルドーザーで暴力的に土地を奪い去ったことを挙げ「今度は日本政府が米軍基地建設のために日本国軍を出動させ、辺野古の豊かで美しい海を私たちから奪い去ろうとしている」と訴えた。また「私たちは今、沖縄戦で体験した“戦争と暗黒支配”の忌まわしい時代の再来を強く感じる。今回の辺野古新基地建設への海上自衛隊=日本国軍の投入はその歴史を画する暴挙」とし、抗議した。

■防衛省前でも抗議集会開く 市民団体、70人参加
 米軍普天間飛行場移設に向けた事前調査や、イラク復興支援特別措置法改正案の衆院通過を受け、市民団体の連合体「ワールド・ピース・ナウ」が19日、防衛省正門前で抗議集会を開き、移設調査のため派遣された海上自衛隊の掃海母艦について「治安出動以外の何物でもない」などと訴えた。横断幕やプラカードを掲げた約70人が参加した。
(琉球新報 5/20 10:09)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23901-storytopic-1.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事(5月19日夕刊)

沖縄タイムス 2007年5月19日(土) 夕刊 1面
糸数慶子氏が出馬表明/参院選
 七月二十二日投開票の参院選沖縄選挙区に向けて、野党統一候補で元参院議員の糸数慶子氏(59)は十九日、那覇市内のホテルで立候補を正式に表明した。
 糸数氏は「憲法九条を守る立場を貫き、平和問題に真正面から取り組む。米軍基地の負担軽減に努めて、危険な普天間飛行場の即時閉鎖、撤去を求める」と訴えた。さらに「軍事基地を押し付け、生活を破壊する自公政権を参議院で過半数割れに追い込む」とし、安倍政権との対立軸を表明した。
 米軍普天間飛行場移設に絡み、海上自衛隊員が参加したことに、「多くの市民団体が阻止行動する中での海上自衛隊の参加は、住民運動に対する軍隊の介入だ。日本が軍国化し、戦争ができる国に向かっている象徴だ」と批判した。
 選挙母体として、「ウマンチュと共に沖縄の未来をつくる会」を立ち上げ、共同代表として、照屋寛徳社民党県連委員長、喜納昌春社大党委員長、喜納昌吉民主党県連代表が就き、事務局長に社大党副委員長の大城一馬氏が就任した。
 糸数氏は一九四七年、読谷村生まれ。平和バスガイドなどを経て、九二年、県議会議員に初当選。三期を務め、二〇〇四年七月、参院選で初当選。〇六年十一月、知事選に出馬している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705191700_01.html

沖縄タイムス 2007年5月19日(土) 夕刊 5面
機材設置作業を継続/辺野古調査
 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局は十九日午前、機器の設置作業を実施した。作業は十八日に引き続き二日目。一方、基地建設に反対する市民団体メンバーらは小型船やカヌーで調査地点に向かい、阻止行動を展開。辺野古海域には、海上保安庁の巡視船や巡視艇、十数隻のゴムボートが作業の警戒に当たり、上空ではヘリが旋回を繰り返した。
 午前七時ごろ、施設局がチャーターした作業船が辺野古海域に姿を現すと、辺野古漁港で集会を開いていた反対派のメンバーらは、阻止行動のため、小型船六隻とカヌー十二艇を出港させた。
 漁港近くの海上では、反対派の船やカヌーが作業船に近づこうとするのを海上保安庁のゴムボートや小型船四隻が包囲。反対派の船団は進路をふさがれ身動きが取れない状態が一時間ほど続いたが、すきをついて作業船に近づき、船の両側をふさぐ形でしがみついて作業中止を訴えた。反対派のいない調査地点では、ダイバーらが作業船から海象調査用とみられる機器を抱えて潜水する様子が見られ、着々と機器の設置作業が進められた。
 漁港近くの反対派の座り込みテントには、反対派住民や県外の労組ら約七十人が集まり、双眼鏡で現場を確認するなど、阻止行動の支援を続けた。座り込みに参加した大学生の川野勇輔さん(23)=名護市中山=は「軍隊を使って弾圧しようとする政府の姿勢を感じる。調査をやめてほしい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705191700_03.html

緊迫の海上作業続行 辺野古沖事前調査

作業を阻止しようと作業船に近づく反対派のカヌー隊=19日午前9時10分ごろ、名護市辺野古海域
 【名護】那覇防衛施設局は19日午前、米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古周辺海域で、現況調査(事前調査)に使用する機器設置作業を18日に引き続き実施した。第11管区海上保安本部のヘリや警戒船が警戒に当たる中、施設局側の作業船とゴムボートから潜水士らが次々と海中に入り、機器設置作業を行った。
 基地建設に反対する住民や市民団体も早朝から辺野古漁港内で反対集会を開き、12隻のカヌー隊やボート6隻で沖に出て抗議行動を展開した。
 海上では、「作業船に近づくな」「作業は違法行為だ」と施設局側と反対派市民らの怒号が飛び交い、緊迫する場面も見られた。
 漁港内に設置されたテントには、「違法な事前調査に海自艦投入は琉球処分」の横断幕を取り付け、作業の経過を海上のボートとやりとりしながら、集まった約30人が監視を続けた。
 この日、反対派の支援に県議や市議も訪れた。海上から視察した玉城義和県議は「海上保安庁などから相当な数を動員し、力で押し切っていくという印象を受けた。海上保安庁の船が反対派に体当たりしたと聞き、反対運動への弾圧を感じた」と述べ、21日にも作業中止を求めて那覇防衛施設局などを訪れる予定だ。
 政府は18日、潜水作業への自衛隊員の投入を公式に認めたが、19日午前10時現在、現場海域に海上自衛隊の艦船は確認されておらず、現場での作業に自衛隊員が参加しているかどうかは分かっていない。
(琉球新報 5/19 16:01)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23893-storytopic-1.html

「見てほしい辺野古の海」 下地さん、写真で反基地訴え

辺野古周辺で広がる干潮の潮だまり=4月19日(下地良男さん撮影)
 那覇市首里の下地良男さん(69)=元琉球大学教員=が、名護市辺野古の海の美しさを写真に収め、多くの人に同地域の海の大切さを伝える取り組みを進めている。
 下地さんは普天間飛行場の県内移設に反対しており、辺野古への基地建設について「写真を見て一人一人がここを埋め立てるべきなのか考えてほしい」と呼び掛けている。
 下地さんは写真が趣味で、約30年前から各地で撮影をしている。普天間代替施設予定地の海は今年2月26日と4月19日に撮影した。名護市久志や辺野古から望む海の風景を写真に収めた。好天に恵まれ、息をのむような真っ青な空と海の写真が撮れ「本当にここを埋め立てるのかと怒りを覚えずにはいられなかった」という。
 下地さんは、この写真を新聞投稿するほか、国会議員や政党、米国連邦議員などに電子メールやファクスで送り、普天間飛行場の県内移設反対を訴えている。
 辺野古周辺の撮影について「一市民としての草の根運動だ」と説明し、今後は写真展の開催を希望している。
(琉球新報 5/19 16:05)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23894-storytopic-1.html

沖縄タイムス・琉球新報 社説(5月19日)

沖縄タイムス 社説(2007年5月19日朝刊)
[海自艦投入]
「牙」むき海奪う行為だ
 那覇防衛施設局は、米軍普天間飛行場の移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部の現況調査に着手した。海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」も、調査支援の名目で投入されている。
 海自艦の投入は、普天間飛行場の県内移設を是としない県民世論への国家の威圧である。自衛隊が県民世論に「牙」をむき、ジュゴンやアオウミガメの生息する海を奪う行為と言ってもいいのではないか。
 新たな基地建設に反対する市民グループは、カヌーなどで調査海域に繰り出し、作業船にしがみつくなど阻止行動を続けている。
 さんご礁の美しい同市大浦湾では、「自衛隊が国民に銃口を向けるような行為」「国家による新たな弾圧」「県民に対する軍事的恫喝だ」などの声が交錯した。
 自衛隊の本来の任務は、外国からの侵略などに対する「専守防衛」であり、国内で警備を必要とする事態には警察または海上保安庁が担っている。
 新たな基地建設という国策を遂行するために、掃海母艦や自衛隊員を投入することは全国でも初めてのケースといえる。
 その法的根拠として久間章生防衛相は、国家行政組織法上の「官庁間協力」を挙げ、防衛省設置法の「所掌事務の遂行に必要な調査・研究」(第四条一八号)が該当することを示唆している。
 だが、防衛施設庁と自衛隊は同じ防衛省内の機関であり、「官庁間」にはならない。これに久間氏は「官庁間ですら(協力)できるのに、庁内のことで協力しないというのはおかしい。もっと寛大に解釈できるのではないか」と述べている。
 あいまいさの残る説明であり、しっかりとした根拠を示すべきだろう。「調査・研究」の対象も明確には規定されていないとされ、拡大解釈が可能だ。これでは今後、自衛隊の出動に歯止めがかからなくなることも予想され、危険と言わざるを得ない。
 現況調査は、民間業者に委託されている。海自艦の投入は、反対派の阻止行動で民間のダイバーらが調査できない場合を想定し、官庁間協力の名目で実施されたのは明らかだ。
 大浦湾一帯は二〇〇四年十一月、タイで開かれた国際自然保護連合(IUCN)の第三回世界自然保護会議で、ジュゴンの保全が二〇〇〇年に続いて再勧告された。IUCNは、日本政府に勧告の履行を求めている。
 官庁間協力が可能なら、自衛隊だけでなく、環境省とも協力し、ジュゴンやさんご礁の保全を考えるべきだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070519.html#no_1

琉球新報 社説
教育改革3法案・国の関与強化でいいのか
 教員免許更新制などを盛り込んだ教育改革3法案が衆院を通過した。参院に送付され、今国会で成立する見通しだ。昨年の教育基本法改正を受けて提出された3法案は、学校現場や地方教育行政に対する国の関与を大きく認めるものとなっている。さらに、教育目標に「愛国心」や「公共の精神」も明記されるなど、極めて保守色の強いのが特徴だ。
 安倍晋三首相が憲法改正と並んで、最重要法案と位置付ける教育3法案。多くの疑問や不安、反発がありながら、与党の賛成多数での可決には拙速の感がぬぐえない。
 3法案のうち、学校教育法改正案は教育目標に「国を愛する心」「規範意識」などを盛り込む。しかし、国を愛するとは、どういう態度なのか。それは、誰が決めて、どのように評価するのか。肝心の点があいまいなまま。国を愛する気持ちは人さまざまだ。決して他人から押し付けられるものではない。まして国からとなると、それこそ論外だろう。
 さらに、教育目標には、わが国の歴史について「正しい理解に導き」ともある。だが、ここでも正しい歴史であると、誰が判断するのか。国の考える正しい歴史を押し付けるつもりなのだろうか。
 「愛国心」にあおられて戦場に駆り出された、あの悲惨な過去を、県民は忘れていない。その「愛国心」は戦前の皇民化教育でたたき込まれたことも、また事実だ。「愛国心」と「非国民」は表裏一体、ということも、多くの県民は身をもって知っている。
 そして、その「愛国心」が、集団自決という悲劇の背景の一つにあったということも、県民の認識だ。来年度から使用される高校教科書の検定で、集団自決について旧日本軍の命令や強制があったとの記述が変更された。「歴史の改ざん」と指摘されても、これが「正しい歴史」となって教科書に盛り込まれる。今回の3法案を見ると、国に都合のいいシナリオ作りが進むことが懸念される。
 そのほか、同法案は至るところで国の公教育への関与がうたわれている。教員免許更新制を打ち出した教員免許法改正案もそうだ。法案では、10年の有効期間を定め、30時間の講習終了を更新の条件としている。だが、講習内容など、すべて文科省の検討に委ねられる。講習が国主導で行われ、自主性・自律性のない、国にとって都合のいい教師づくりにならないか。
 国の未来を背負う子どもたちと、教師の関係をどう改善するのか。先進国では最悪の40人学級は据え置かれるのか。法案は多くの面で、国民が納得できる具体的なビジョンに欠ける。「教育は100年の計」という。法案は教育の根幹を揺るがしかねないだけに、参院ではしっかりとした審議が望まれる。
(5/19 10:13)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23873-storytopic-11.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事(5月19日朝刊)

沖縄タイムス 2007年5月19日(土) 朝刊 1・26・27面
海自の支援継続へ/辺野古海域調査
首相は問題視せず/きょう機材設置完了も
 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局は十八日夕までに、サンゴの産卵状況を調べる着床具の大半と、海象調査機器の一部の設置を進めていたことが分かった。十九日も海上自衛隊の潜水要員の支援を受ける予定だが、同日中に着床具の全三十九地点での設置が完了する可能性もある。安倍晋三首相は十八日夜、調査に海上自衛隊の掃海母艦が参加したことに関し「行うべき調査を行ったということだ。知識、技術を持っている自衛隊が協力した」と述べ、問題ないとの認識を示した。
 防衛省の山崎信之郎運用企画局長は十八日の衆院安全保障委員会で、掃海母艦「ぶんご」の派遣について「沖合に停泊し、潜水夫を派遣することで三年前の(従来案の)ような妨害活動が減るのではないかと考えた」と説明。多数の潜水士を沖合から動員する狙いがあったことを明らかにした。辻元清美氏(社民)への答弁。
 仲井真弘多知事は同日、海自の調査参加に、「海上自衛隊が参加するような状況とは考えられない」とコメント。その上で「特殊な任務を持つ海上自衛隊が関与すべき事態かどうか疑問。反自衛隊感情を助長するようなことは避けるべきだ」とした。県内の政党、市民グループからは反発や疑問の声が上がっている。
 安倍首相は地元で反発の声が上がっていることについて「今後とも地元の皆さまに対しては誠意を持って説明をしていかなければならない」と述べた。
 一方、久間章生防衛相は衆院安保委で初日の作業について、「大きく構えて小さい部分だけで対応した」と述べた。「ぶんご」の派遣命令を十一日に下したことを明らかにし、「掃海母艦は機雷を除去するための船で、攻撃型の船とは違う。ソフトな感じだ」との考えを示した。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 施設局は六月初めにも始まるサンゴの産卵期に間に合わせるため着床具の設置作業を優先した。
     ◇     ◇     ◇     
対立の海 混乱続く/反対派、捨て身の抵抗
 【名護】身を乗り出して作業船にしがみつく反対派と、引き離そうと試みる海上保安庁職員。普天間飛行場の代替施設建設のための海域調査は十八日、自衛隊員の投入で反発を強めた反対派と厳戒態勢で警備に当たった海上保安庁との間の緊張が高まった。現職の自衛隊員からも「あまり強硬にやってほしくない」と県民感情への影響を懸念する声も聞かれた。
 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う海域現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局によるサンゴの産卵状況を調べる着床具の設置作業が行われた十八日午後、現場の辺野古沖周辺では、警備に当たった海上保安庁が調査に反対する市民団体に「作業中の業者とトラブルがあった」と任意聴取を申し入れるなどし、対立が続いた。
 調査終了後、市民団体が集会を終えた午後六時ごろ、辺野古漁港に中城海上保安署の職員十数人が訪れた。「午後四時三十五分ごろ、辺野古沖で作業中の潜水士が『市民団体側の漁船に乗船のダイバーから、水中でレギュレーターを外された』と訴えている。関係者に事情を聴きたい」と、任意聴取を申し入れた。
 集会で「私たちに協力した漁船を海保が拿捕した」と報告があった直後だけに、市民らが同保安署職員を取り囲み、説明を求めるなど騒然とした。
 第十一管区海上保安本部によると、「同施設局の委託を受けた業者がトラブルを訴えたので調べている。何の容疑に当たるのかは定かではない」状況だといい、市民団体は「事実関係がはっきりしていないのに答えられない」と反発した。
 海保は関係漁船を現場に足止めして、被害を訴えた潜水士らに任意聴取して現場確認をしたが、ダイバーからの任意聴取はこの日はあきらめた。
 現場海域で、作業監視のために潜水した市民団体の平良夏芽さん(44)は「海保こそ、エンジン付きのゴムボートをダイバーの真上に通過させるなど、危険な行為を繰り返していた」と指摘した。
海自威圧 一斉反発/「強行せず県民守れ」
 「県民を守るのが自衛隊の仕事ではないのか」「威圧して、あきらめさせるつもりか」。事前調査への海自の導入に、中南部の住民からも反発の声が相次いだ。
 糸満市摩文仁の平和の礎。沖縄戦戦没者の刻銘に囲まれ、平和ガイドの横田眞利子さん(55)は「きょうは案内で行けないが、気持ちは辺野古に向いている」と語った。「国を守るための自衛隊が、何で県民にこんなことをするの」
 同市の農産物直売店にいた赤嶺仁一さん(83)は、二十歳のころ沖縄戦を経験した。「総理は戦争経験がないでしょ」とはき捨て、「基地は全部本土に持って行ったらいい」。手にしたつえで物を払うしぐさをした。
 豊見城市商工会の会合に出た建設設備会社代表、上原直彦さん(35)。「海自を投入してまで強行し、本当に環境に配慮した調査になるのか疑問だ」と首をかしげる。「経済活動も、美しい環境が大前提。住民の気持ちをしっかりと聞き入れた上で調査すべきだ」と、真剣なまなざしで語った。
 「自衛隊本来の業務から考えると、やっていることが違うのではないか」。八重瀬町のスーパーで買い物をしていた金城由政さん(50)は「地元住民が納得するわけがない」と語気を強めた。
 うるま市の女性(35)には三人の男の子がいる。「海自の参加は威圧的な感じがする。子どもたちが大人になるころ、世の中はどうなってしまうのか」と、不安そうな表情を浮かべた。
 那覇市のパレットくもじ前にいた大学生の外間ゆかりさん(21)は「自衛隊まで出てくれば、基地は確実に造られてしまう」と危機感を募らせ、「本当は県民を守ってほしいのに」と嘆いた。
 一方、普天間飛行場に土地を持つ宜野湾市の男性(80)は「本来ならスムーズに調査を進めてほしいが、自衛隊の投入はやむを得ない」。早期移設を望み、「一日も早く自分の土地を使いたい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705191300_01.html

沖縄タイムス 2007年5月19日(土) 朝刊 3面
F22少数ならグアム経由可能/嘉手納広報議会に説明
 【中部】今月十日、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター二機が嘉手納基地からの未明離陸を中止し、日中グアムに向け離陸した件で、同基地のダニー・ジョンソン広報局長は十八日、嘉手納町議会の一行に「少数機であればグアムでも支援できる」と述べた。未明離陸について米側は「施設や対応できる兵員のいないグアム島などの米軍基地の中継は難しい」と説明、難色を示していた。
 未明離陸の中止要求で面談した田仲康榮町議会基地対策特別委員長によると、ジョンソン広報局長は「グアム経由の本国帰還は経費が掛かり、また支援施設も整っていない。少数機であれば支援できるが、大量の機体では対応は難しい」と説明した、という。
 田仲委員長は「米側の未明離陸の根拠の一角が崩れた」と指摘。その上で「経費などは、あくまで米軍内部の問題。早朝の爆音など、住民被害をいかになくすかを基本に考えるべきだ」とした。
 「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は、「住民の声を軽視した深夜・早朝の飛行はやめ、今後は少数ずつグアム経由で離陸させればいいことだ」と述べた。
 嘉手納町議会の一行は同日、那覇防衛施設局や米国総領事館などで未明離陸、F22再配備の中止を求めた。外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「操縦士の負担や経費面などの問題もある。改善の可能性を検討する」と答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705191300_05.html

海自の警備行動選択肢 防衛相、認識示す
 【東京】久間章生防衛相は18日午後の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場代替施設の環境現況調査(事前調査)に動員されている海上自衛隊が警備行動をする可能性について「海上の治安状況がよほど悪化した場合には法律上、絶対ないとは言えない」と述べ、法的には可能との認識を示した。その上で「そこまでは想定されていないのでする必要はないと思う。そういう手順も取っていない」と述べた。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 「海上自衛隊はどういう場合に警護活動ができるのか」という赤嶺氏の質問に対し、防衛省の山崎信之郎運用企画局長は「通常の海上での警備活動ということだ。人命や公共の秩序の維持のため特別の必要がある場合、総理大臣の承認を得て自衛隊が一種の警察活動はできることになっている」と説明した。
 自衛隊法第82条の「海上警備行動」を指したものとみられる。だがこれまで発動されたのは、1999年の能登半島沖不審船射撃事件と、2004年の石垣島沖での中国「漢級」原潜による領海侵犯事件の2件だけだ。
 久間防衛相は掃海母艦「ぶんご」を派遣した理由について「結果として(作業に加わったのは)潜水士だけになったが、万一の事態を考えて対応した」と説明。「遭難者が出たり、混乱が生じた時には救難用のボートを出すことも考えられた。これから先もあるかもしれないが、ああいう形で収まりほっとしている」と述べた。辻元清美氏(社民)への答弁。
(琉球新報 5/19 9:48)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23869-storytopic-3.html

琉球新報 社説(5月18日)

琉球新報 社説
辺野古に海自艦・「何から何を守る」のか

 政府が辺野古周辺海域に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を派遣する。掃海母艦は大砲や機関銃を備え、機雷の敷設や除去を主任務とする「軍艦」である。
 沖縄は大砲や機関銃を必要とする紛争地ではない。辺野古海域には機雷もない。いるのはジュゴンと米軍の新基地建設に反対する市民たちだ。掃海母艦派遣は、まさに政府が国民に大砲と銃を向けるようなもので、許されない。
 米軍普天間飛行場移設先の名護市辺野古周辺海域で、政府は新基地建設に向けた環境現況調査(事前調査)の準備を進めている。
 しかし、辺野古住民をはじめ新基地建設に反対する市民らが連日、座り込みや監視活動を展開し、調査の中止を政府に強く求めている。
 そこに降ってきたのが、政府の掃海母艦派遣の話である。防衛省首脳は16日夜「来たとしても後ろでどかっと構えるだけだろう」と、事実上、掃海母艦の沖縄近海入りを認めている。
 言葉通りなら「市民を威圧するための派遣」ということになる。
 防衛省首脳は「把握していない」と言うが、名護市辺野古海域上空では、16日に海自の掃海ヘリが確認されている。掃海母艦がすでに近海に到達している可能性もある。
 那覇防衛施設局は、6月上旬の産卵時期に間に合わせるため、サンゴ類の調査機器を優先して設置する際に、掃海母艦の潜水士らが設置を援助する、としている。
 17日の参院外交防衛委員会で、久間章生防衛相は、辺野古海域での環境現況調査に妨害などがあれば自衛隊員が実施する可能性も認めている。
 そもそも、自衛艦(掃海母艦)の派遣の有無を政府があいまいにしている点が姑息(こそく)だ。ある政府関係者は「『伝家の宝刀』は抜かない方が効き目があるかもしれない」と、自衛隊投入をあいまいにすることで国民の批判を避け、新基地建設に反対する市民の消耗を誘う意図すら示唆している。
 自衛艦派遣が自衛隊法第82条に基づく海上での人命や財産保護、治安維持のために防衛大臣が自衛隊に命令する「海上警備行動」につながるとすれば、自衛艦は「何から何を守る」のか。事前にきちんと国民に説明すべきである。
 かつて旧日本軍の戦艦大和は沖縄を守るために特攻に出たと聞く。あれから62年、国民を守るはずの自衛隊は、米軍の新基地建設に反対する国民を威圧するために「軍艦」を沖縄に派遣するのか。
 悲惨な沖縄戦が残した歴史の教訓は「軍隊は住民を守らない」ということだった。いまや時代は変わり「軍隊は住民から米軍を守る」という悲しい現実に、沖縄は直面することになるのだろうか。
(5/18 9:50)
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