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沖縄タイムス 関連記事・社説(5月10日、11日)

社説(2007年5月10日朝刊)

[首相の靖国供物]

きちんと説明すべきだ
 安倍晋三首相が靖国神社の春季例大祭に「内閣総理大臣」名で供物を奉納していたことが明らかになった。

 「国のため戦って亡くなられた方々に敬意を表し、ご冥福をお祈りする。その思いを持ち続けていきたい」と奉納を認めたが、具体的なことについては「申し上げないことにしている」と口を閉ざしている。

 靖国参拝を望む日本遺族会など保守層と中止を求める中韓両国の双方に配慮した「次善の策」とみられるが、何よりも国民への説明責任を果たさない首相の態度には問題があるといえるのではないか。

 一国の首相として、参拝の是非や対外的な配慮にとどまらず、太平洋戦争に対する自らの歴史認識などを国民の前で堂々と示してもらいたい。

 首相に近い政府高官は、昨年から参拝に代わる方法を模索し、「遺族会だけでなく中韓にも配慮し知恵を絞った」(政府筋)と話している。

 そうであれば、内外に困惑を広げるだけであり、姑息な手法と批判されても仕方がないのではないか。真意をきちんと説明すべきだ。

 首相の靖国参拝をめぐっては、小泉政権時の二〇〇五年九月、大阪高裁が「国が靖国神社を特別に支援しているとの印象を与え、特定の宗教に対する助長効果が認められる」として、憲法二〇条の「信教の自由」「政教分離原則」に照らして違憲と指摘した。

 しかし、大阪高裁の前には東京高裁が「私的行為」として憲法判断に踏み込まなかった。その後の高松高裁判決も憲法判断を回避しており、裁判所の判断は世論が割れる要因にもなっている。

 今回は参拝ではなく、供物を奉納しただけだが、首相の強い意思に基づくものであることに変わりはない。それも「内閣総理大臣」名で奉納されており、私的な奉納とは言えまい。

 靖国神社は、戦後の政教分離で一宗教法人となったが、いまだに太平洋戦争に至る一連の戦争は「正しかった」という歴史観に立っている。

 そうした神社への「内閣総理大臣」名の奉納は、公明党幹部でさえ「擬似参拝」になぞらえ、なし崩し的な参拝への懸念を示している。

 近隣諸国との間であつれきを生じさせ、国益上も得策でないのはこれまでの経緯からはっきりしている。

 首相は「(国のために戦った方々への)尊崇の念を表する思い」とも述べているが、首相である以上、個人の信条というわけにはいかないはずだ。

 A級戦犯の分祀問題を含め、首相としての主体的な考えを示してほしい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070510.html#no_1

2007年5月10日(木) 夕刊 1面
F22未明離陸強行 2機は日中に実施
三連協反発「回避可能」
 【嘉手納】米軍嘉手納基地に一時配備されている米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター十二機のうち、十機が米本国に帰還するため十日未明、離陸した。残る二機は整備上の理由で離陸を見合わせていたが、同日午前十時二十五分に離陸。二機の離陸について同基地報道部は「太平洋上の基地に向かった」としており、米軍の運用次第で未明離陸を回避できることを示す結果となった。沖縄、嘉手納、北谷の地元三市町の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は「日中の離陸でも、やればできることがはっきりした」と米軍への反発を強めている。

 米軍は今回のF22の未明離陸について「日中に目的地へ着陸するための措置。太平洋を横断する長時間飛行になるため、パイロットの安全運航を最大考慮し実施される」と説明。三連協は九日に未明離陸への反対を表明していた。

 嘉手納基地では、同日午前三時十三分ごろを皮切りに、約六分間でF22六機とKC10、135の両空中給油機二機が南側滑走路を使用し、沖縄市方面に向けて離陸。約一時間後にF22四機と空中給油機二機が続いた。ハワイを経由して、米本国に向かうとみられる。

 嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で騒音を測定した町によると、同日午前三時十五分に九八・八デシベル(電車通過時の線路わきに相当)の最高値を計測した。

 離陸した十四機全てが多くの人が不快に感じる七〇デシベル(一メートル先の電話のベルに相当)以上の騒音を記録。F22については、全て九〇デシベル(騒々しい工場内に相当)以上の爆音をとどろかせた。

 米バージニア州ラングレー基地所属のF22は今年二月、米本国以外では初めて嘉手納基地に配備された。配備期間中、約六百回を超える飛行訓練を行ったほか、航空自衛隊那覇基地のF4戦闘機、小松基地(石川県)のF15戦闘機などとの共同訓練を実施した。

 在日米軍トップのブルース・ライト司令官は四月、朝鮮半島の情勢次第で、F22を同基地に再配備する可能性との認識を示している。

     ◇     ◇     ◇     

「未明のごう音 恐怖」
住民たたき起こされ

 【中部】「未明のごう音は恐怖だ。いいかげんにしてほしい」。嘉手納基地に一時配備中のF22Aラプター戦闘機十二機が十日未明、住宅地に爆音を響かせた。残り二機は同日午前十時二十五分、離陸した。基地周辺自治体の首長、住民らは「騒音防止協定に基づき日中に離陸するべきだ」と反発を強めた。

 同基地を抱える沖縄、嘉手納、北谷の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は九日夕、飛行中止を求める声明を発表した。

 未明離陸の強行に、会長の野国昌春北谷町長は「声明を出したにもかかわらず、強行されて残念だ。騒音防止協定に基づき日中の離陸をするべきだ」と訴えた。

 東門美津子沖縄市長は「未明離陸が強行されたことは極めて遺憾だ。飛来時から飛行途中での引き返しやソフトウエアの欠陥などがあった。F22は明らかな欠陥機であり、今後の再配備も容認できない」と強く抗議した。

 沖縄市側の飛行ルート直下、沖縄市営池原団地に住む亀谷弘二さん(49)は「ものすごい音でたたき起こされ、その後は寝付けなかった。普段から騒音はひどいが、未明のごう音は恐怖だ。いいかげんにしてほしい」と不満をあらわにした。

 「怖かった。何ごとかと思って跳び起きた」。市登川に住む赤嶺千恵美さん(50)は「昼間の騒音には慣らされているが、未明に突然、爆音を聞いたら怖いに決まっている」と憤った。

 嘉手納町第二保育所に子ども二人を送っていた町屋良の女性(39)は「米軍は非常識だ。騒音で大人だけでなく子どもも寝不足になり、ぐずってイライラする」と憤る。

 同基地に隣接する嘉手納町屋良の島袋敏雄区長は「未明離陸は地域への影響が大きい。基地負担の軽減が求められる中、再配備には賛成できない」と言い切った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101700_01.html

2007年5月10日(木) 夕刊 5面
平和 祈念の歩み/復帰35年 5・15行進スタート
 【国頭】県内の米軍基地や沖縄の戦跡を巡り基地返還などを訴える「5・15平和行進」(主催・沖縄平和運動センター)が十日午前、国頭村役場で始まった。今年は本土復帰三十五周年を記念し、かつて復帰運動の舞台となった国頭村から名護市までの約十七キロを歩く特別コースが設けられた。在日米軍再編や教科書検定問題が浮上する中、参加者らは復帰の原点を問いながら行進した。

 国頭村からのスタートは二十四年ぶり。村役場前の出発式には県内外から約六十人が参加。同センターの崎山嗣幸議長は「今の政府は三十五年前に県民が願った復帰とは違った方向に走っている。憲法改正の動きなどとともに、北部に基地が集中させられようとしている。平和への願いを、このやんばるから全国にアピールしよう」と呼び掛けた。

 若い世代が多かった。県外参加者の代表であいさつした本田新太郎さん(35)=長崎県=は「沖縄を実際に歩かないと、日本の平和について考えられないと思った」。那覇市議の平良識子さん(28)は「戦後世代というより、復帰世代の私たちが、政府の動向を鋭く見詰めていかなければならない」と訴えた。

 団体での参加が多い中、三重県から嘉手納町に移住して十一年目になる樋口真理子さん(45)は一人で足を運んだ。二人の娘を育てるシングルマザー。夜中の米軍機の騒音に悩まされ、以前から基地問題に関心を持っていた。家に配られた平和行進のチラシを見て、今回歩くことを決意した。

 「沖縄のことを知るために、一度歩きたいと思っていた。辺野古に基地を造るのは、反対。やんばるの自然を壊さないでほしい」。そう願いながら歩いた。

 特別コースは大宜味村を経由し、名護市役所まで。午後五時半からは名護市役所で集会が行われる。十一日からは東、西、南の三コースに分かれ、それぞれ名護市、恩納村、糸満市から歩く。十二日にゴールの北谷町で「5・15平和とくらしを守る県民大会」を開催。十三日には二万人の参加者を見込んで嘉手納基地を包囲する「人間の鎖」が行われる。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101700_03.html

2007年5月11日(金) 朝刊 1面
三連協、米軍に抗議へ/F22未明離陸
 【中部】米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが、米本国に帰還するため十日未明に離陸したことを受け、沖縄市、嘉手納町、北谷町の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は同日、米軍に対し「過重な騒音被害を受ける住民の負担を軽視している」として抗議することを決めた。十一日にも同基地司令官にあて抗議文書を送る。

 一方、十二機のうち、整備上の理由で十日午前十時二十五分に離陸した二機は、グアムの米空軍アンダーセン基地に向かったことが判明。首長らは「未明でなくても問題ないことが実証された」と、未明離陸の必要性を強調した米軍の説明を疑問視した。

 未明離陸について三連協会長の野国昌春北谷町長は「極めて残念だ。住民の安眠を確保するためにも抗議の声を上げる必要がある」と強調。米軍に対し、午後十時から午前六時までのすべての航空機の飛行、エンジン調整の中止などを求める。

 米軍は未明離陸の理由を「日中に目的地へ到着するため」としてきた。東門美津子沖縄市長は「未明でなくても問題ないことが実証された。なぜ未明にこだわるのか理解できない」と批判。嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「運用次第で調整できることが証明された。未明離陸をなくすよう米軍に求めたい」と強調。週明けにも委員会を開き、米軍に抗議する方針だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705111300_01.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(5月9日、10日)

2007年5月9日(水) 夕刊 1・5面
F22離陸、あす未明
 嘉手納基地から十日に米本国へ帰還する米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター十二機が、同日午前三時以降の時間帯に離陸を予定していることが九日分かった。騒音防止協定の趣旨に反する未明離陸に地元の反発が高まっている。那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所は同日、嘉手納基地に未明離陸の実施方針を確認の上、再検討を申し入れた。

 嘉手納基地報道部は九日午後、「航空機の早朝離陸について慎重に検討し、地元住民に与える騒音についても理解している。しかし、運用上の必要性から航空機の早朝離陸を実施する」と正式発表した。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は同日午前、未明離陸について「周辺住民の深刻な問題になっており、できるだけ行わないよう(嘉手納基地へ)再検討を求めた」と明らかにした。

 F22配備の際、米空軍は騒音軽減への努力を明言しており、米側の姿勢に地元の不信感も高まりそうだ。

 F15戦闘機が嘉手納基地から米本国へ向かう場合、米軍は未明離陸を繰り返している。この際、米軍は「パイロットの飛行の安全を確保するため、米本国に日中に到着しなければならず、それには嘉手納基地を未明に離陸する必要がある」と説明。空中給油も日中に行う必要があるという。

 今年二月にF22が嘉手納基地へ配備された際には、ハワイの米空軍基地にいったん集結後、日中に嘉手納基地へ到着している。

 米空軍は米バージニア州ラングレー基地所属のF22十二機を、パイロットや整備要員など約二百五十人とともに嘉手納基地へ配備した。

F15訓練移転 次回は小松

 【東京】在日米軍再編に伴う嘉手納基地のF15戦闘機訓練の本土への移転で、防衛施設庁は九日午前、十六―二十三日の日程で、航空自衛隊小松基地(石川県)で実施すると発表した。米軍と空自の共同訓練で、三月上旬に実施した築城基地(福岡県)での訓練移転に続き、二回目。

 嘉手納基地からF15五機程度と要員約八十人が参加。空自側からは小松の第六航空団や百里(茨城県)の第七航空団などからF15十二機程度がそれぞれ参加する。そのほか訓練支援のため米軍のC17大型輸送機一機が事前に飛来、先遣隊などを輸送する予定だ。

 築城基地で実施されたものと同じ、「タイプ1」と呼ばれる小規模訓練で、今回は小松沖空域で空対空の戦闘機戦闘訓練、防空戦闘訓練を実施する。土、日曜日は訓練を行わないとしている。

     ◇     ◇     ◇     

「最後まで安眠妨げ」/三連協、反対声明へ

 【中部】米軍嘉手納基地に一時配備中の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが米本国への撤収で十日未明に離陸することについて、周辺首長は九日、「最後まで住民の安眠を妨げている。断じて許せない」などと一斉に反発の声を上げた。

 嘉手納町役場で九日午前開かれた沖縄、嘉手納、北谷の一市二町の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」総会では、急きょF22未明離陸について話し合った。米軍側からの正式な発表があり次第、同日午後にも同協議会として未明離陸に反対する声明を発表する予定だ。

 嘉手納町の宮城篤実町長は正式に連絡を受けていないと前置きした上で「配備された時から懸念していた。未明離陸の爆音は町民に与える不安が大きい。今後の対応は実際の爆音のデータを見て考えたい」と述べた。

 北谷町の野国昌春町長は「F22の一時配備による騒音被害は確実に増えた。米軍は運用上の必要性を理由にするだろうが、住民の安眠を妨害する理由にはならない。せめて撤退する際には騒音防止協定を守るべきだ」と強い口調で批判した。

 沖縄市の東門美津子市長は「もし事実であるならば、住民の安眠を妨害する未明離陸について三連協できちんと抗議したい」と強調。「F22とF15の爆音のうるささは変わらなかった。再配備の可能性もあることについては、基地の機能強化であり認められない」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091700_02.html

2007年5月10日(木) 朝刊 1面
三連協「住民軽視」/F22未明離陸中止求め声明
県「遺憾の意」
 【中部】最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが米本土への撤収のため、十日未明に嘉手納基地を離陸することを受け、沖縄、嘉手納、北谷の三市町の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)」は九日、「基地周辺住民の負担を軽視した基地運用」として未明離陸の中止を求める共同声明を発表した。一方、県基地対策課は同日、那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所に口頭で「遺憾の意」を伝え、飛行プランの見直しなどを米側に働き掛けるよう要請した。

 嘉手納基地がパイロットの安全運航を考慮し、日中に目的地へ着陸するための運用上の必要性を未明離陸の理由に挙げていることに、三連協は「過重な騒音被害を受ける基地周辺住民の負担を軽視した基地の運用であると言わざるを得ない」と糾弾。深夜・早朝の飛行に強く反対している。

 「三連協は航空機騒音規制措置に基づき未明離陸の見直しを求めてきたが、米軍、国は飛行制限の措置を講じず、基地周辺地域では依然として騒音が発生している」と指摘。

 同協議会会長の野国昌春北谷町長は「早朝の爆音被害は大きい。住民は未明の離陸で幾度となく被害を受けてきた」と強い口調で話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101300_03.html

2007年5月10日(木) 朝刊 3面
PAC3撤去 一致/三連協
 【中部】沖縄、嘉手納、北谷の一市二町の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)」は九日、嘉手納町役場で二〇〇七年度総会を開き、同基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備反対やF15戦闘機の即時撤去などを盛り込んだ本年度の活動方針を決定した。新会長に北谷町の野国昌春町長を選任した。

 野国会長は「嘉手納基地を取り巻く三市町にとって、騒音や事件事故など基地被害の悩みは尽きない。三連協で連携を取り、可能な限り住民の負担を軽減したい」と意欲を示した。

 〇二年から五年間会長を務めた嘉手納町の宮城篤実町長は「基地による被害が起きる中、三連協の存在意義が高まっている。それぞれの自治体で責任を持ち、野国町長を中心に活動したい」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101300_04.html

2007年5月10日(木) 朝刊 2面
きょう平和行進 特別コース 国頭―名護17キロ
 県内各地を歩き平和や基地問題について考える「5・15平和行進」の復帰三十五年特別コースが十日、国頭村役場前を出発、大宜味村役場前、羽地中学校前などを通り、名護市役所までの約十七・二キロメートルで行われる。

 同日午前八時半にスタート、住民や組合員など約百人が本島北部を歩く。

 午後六時から名護市役所前広場で「辺野古移設NO!許すな憲法改悪!全国集会」を開催、県内外から約千人が参加し、基地の県内移設反対や憲法改正反対を訴える。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101300_05.html

社説(2007年5月10日朝刊)

[米機の未明離陸]

日中離陸を真剣に考えよ
 嘉手納基地に暫定配備されている米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが十日午前三時ごろから、米本国に向け離陸するという。

 同基地報道部は、未明の離陸が安眠の妨げになることについて理解しているとしつつも、「運用上の必要性」と理由を説明している。

 日ごろ、「良き隣人」を声にする米軍だが、県民の日常生活に深刻な影響を与える深夜・未明の米軍機離着陸については、一向に聞く耳を持たない。未明の離陸はやめてもらいたい。

 日中離陸は十分可能ではないだろうか。工夫すれば方法があるはずだが、その疑問に米軍は十分答えていない。

 F22の嘉手納基地への到着は、ハワイを出発した後、昼ごろだった。風向きや風速、天候などを勘案した上、他の基地経由で本国に戻る可能性について、十分検討したのであろうか。

 季節によってはアラスカ経由もあっていいのではないか。沖縄から南方で米本国からは遠くなるが、グアム経由もあってもいい。

 グアムは準州とはいえ両方とも米国であり、航空機の離陸がどの時間帯であろうとも、地域住民の理解は得られるであろう。

 ハワイ経由で本国に向かうパイロットの安全性確保のため、未明の離陸というのが米軍側の説明だが、県民の騒音禍という犠牲を強いたことをいつまでも続けることは、許されることではない。日米間で締結された嘉手納基地騒音防止協定は、有名無実化としているのではないか。

 嘉手納基地に隣接する嘉手納町が今年二月に公表した基地被害の聞き取り調査では、滑走路に最も近い東区の43%の住民が騒音などで「耳鳴りがする」と訴えるなど、健康面で被害が出ている。また、未明離陸などで「一度起きたら寝付きにくい」が50%もおり、このまま放置していいものではない。

 米軍の「運用上の理由」ということで、未明の航空機離陸をいつまでも容認するわけにはいかない。日米双方があらゆる方策を真剣に考えるべきだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070510.html#no_2

沖縄タイムス 関連記事(5月9日)

2007年5月9日(水) 朝刊 1面
F22、あす米国へ撤収
 嘉手納基地に暫定配備中の米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが、今月十日に米本国へ撤収する方針であることが八日、分かった。在日米軍トップのブルース・ライト司令官ら米側関係者は、今後の朝鮮半島情勢次第でF22の嘉手納基地への再配備の可能性を示している。

 同基地からF15戦闘機が米本国へ向かう場合、米空軍は未明離陸を繰り返しているが、今回のF22の離陸時間が未明または早朝にかかるかは不明だ。

 米空軍は今年二月、米バージニア州ラングレー基地所属のF22十二機を、パイロットや整備要員など約二百五十人とともに嘉手納基地へ配備。

 十二機は同基地配備後、五百八十回以上の飛行訓練を実施。先月二十七日には、沖縄周辺空域で南西航空混成団のF4戦闘機など航空自衛隊機と初の日米共同訓練を行った。

 F22はレーダーに捕捉されにくいステルス性が特徴。超音速の機動力や地上への攻撃能力に優れている。

嘉手納へ再配備も
メア総領事、可能性示す

 米国のケビン・メア駐沖縄総領事は八日、共同通信とのインタビューで、嘉手納基地に一時配備されている最新鋭のステルス戦闘機F22Aについて「具体的な配備計画はないが(今後)ローテーションで来てもびっくりすることではない」と述べ、今後も同基地へ暫定的に配備する可能性を示した。

 米軍はF22Aを二月から五月までの予定で米本土から嘉手納基地に一時配備しており、基地周辺の住民から「基地の機能強化だ」と反対する声も上がっている。

 メア総領事は「F22Aは次世代戦闘機なので目立ったが、嘉手納基地にはこれまでもいろいろ(戦闘機が)ローテーションで来ている」と強調。さらに東アジア情勢の変化などを例に挙げ「脅威があれば、米側は一番防衛力のあるもので日本を防衛する。日米安全保障条約へのコミットメントを果たすためには一番いいものを使う」と述べた。

     ◇     ◇     ◇     

普天間「実行の時期」/メア総領事

 米軍普天間飛行場の代替施設建設について米国のケビン・メア駐沖縄総領事は八日、共同通信とのインタビューで「日米両政府で滑走路の位置も詳しく交渉した。(もう)交渉する時期ではなく計画を実行する時期だ」と述べ、県などが求める建設位置の変更に否定的な考えを示した。

 普天間飛行場の代替施設は昨年五月、日米両政府がキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路をつくり移設する案で合意。一方、県や名護市は騒音などを理由に滑走路の位置を沖合にずらすよう要求し、久間章生防衛相も環境影響評価(アセスメント)実施後に問題が判明した場合には微修正が可能との認識を示していた。

 メア総領事は滑走路の位置について、環境への影響に十分配慮したと強調し「(環境アセス後も)そんなに変える必要はないと思う」と指摘。県などがアセス前に滑走路位置の変更を求めていることについては「なぜ変更しなければいけないのか、理屈がないと意味がない」と述べた。

 日本政府が四月から環境アセスの前段となる事前調査に向け作業に着手したことについては「かなり順調に進んでいると思う」と評価した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_03.html

2007年5月9日(水) 朝刊 29面
「集団自決」修正/退職教職員3団体が抗議声明
 二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍が関与したことを表す記述を文部科学省が削除させたことについて、退職教職員らでつくる三つの団体は八日、県庁で記者会見をし、記述修正指示の撤回を求める抗議声明を発表した。近く首相、文部科学相らに送付する。

 声明を出したのは県退職教職員会(山城成剛会長)、県高等学校障害児学校退職教職員会(崎浜秀俊会長)、中頭退職教職員会(嶺井巌会長)の三団体。合わせて約千百人の会員は、ほとんどが沖縄戦体験者という。

 声明は、文科省の指示について「『集団自決』を『殉国美談』として歪曲し、『戦争のできる国民づくり』に教育を利用する動きにほかならない」と批判。「戦前、皇民化教育を担わされ、『お国のために喜んで死ぬ』教育をしてきた痛苦な体験から看過することはできない」としている。

 嶺井会長は、沖縄戦で少年兵として召集され、日本軍に壕を追い出された自身の体験を話し、「日本軍は住民を守るより、むしろ殺していった。『集団自決』の軍関与も明らかだ」と強調。崎浜会長は「沖縄の教職員は『教え子を再び戦場に送らない』を合言葉にしてきた。教育が危険な方向に向かうのを黙って見ていられない」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_05.html

2007年5月9日(水) 朝刊 2面
在沖海兵隊 削減は朝鮮情勢次第/モチヅキ氏講演
 米国ジョージワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授が八日、宜野湾市内のホテルで「日米同盟と東アジアの安全保障」をテーマに講演。在日米軍再編で日米が合意した在沖海兵隊の八千人削減を評価した上で、朝鮮半島情勢の好転や、フィリピンやオーストラリアなど周辺諸国で米海兵隊の受け入れが可能になれば、さらなる在沖海兵隊の削減は可能との認識を示した。

 モチヅキ氏は「遠征部隊とされる海兵隊が訓練や展開可能な基地をより多く持つことは、米軍の戦略的な面からも好ましい」と分析。

 また、台湾海峡問題について「最近の台湾の国内政治を見ると、軍事力を含む有事の危機の可能性は以前よりかなり低下している」と見る一方、朝鮮半島情勢については「今、非常にデリケートな局面を迎えている」と警戒。朝鮮半島情勢の好転が在沖海兵隊削減のポイントとの見方を示した。

 さらに、東アジアの安全保障情勢について、日米が中国の台頭にどう対応するかが重要と強調。「日米と中国が互いに相手の動きを見ながら軍の近代化を図る傾向がある」と軍備競争の動きに懸念を表明。

 その上で、「日米、中国の三国が協議し、相互の安全保障上の利益を探り、軍事力増強に歯止めをかけるべき」と訴えた。

 日米同盟については「同床異夢」の逆の「異床同夢」の状態にあると警鐘。日米は東アジアの安全保障に日米安保が重要との認識で一致する一方、武力行使に対する考え方など個別の問題の価値観や優先順位で違いがあると指摘した。

 モチヅキ氏は日米安保強化によって在沖海兵隊の削減は可能との論文を過去に発表。沖縄の基地問題の解決の方向性などを議論する「沖縄クエスチョン」の米側座長を務めている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_07.html

2007年5月9日(水) 朝刊 2面
嘉手納包囲 参加呼び掛け/13日
 十三日に米軍嘉手納基地を「人間の鎖」で包囲する5・13嘉手納基地包囲行動実行委員会は八日、県庁で会見し、県民へのアピールを行った。基地包囲行動では、同基地の機能強化に抗議し、名護市辺野古への新基地建設反対などを訴える。

 嘉手納基地の包囲行動は沖縄サミット開催に合わせた二〇〇〇年以来七年ぶり四回目。普天間飛行場包囲行動と合わせると八回目となる。当日は午後三時から同基地の周囲約十八キロを、約二万人で三回包囲する。

 今回から浦添市など八市町村に地域実行委員会を立ち上げ、それぞれに包囲エリアを割り当てた。実行委は社民、社大、共産、民主の各政党や連合沖縄、沖縄平和運動センターなど十団体で幹事団体を構成。

 崎山嗣幸共同代表は「嘉手納基地は県民が反対する中で、基地機能が強化されている。県民が手をつないで基地のない平和を希求する県民意思を宣言しよう」と多くの参加を呼び掛けた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_10.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(5月5日、7日、8日)

2007年5月5日(土) 朝刊 21面
嘉手納基地でF15緊急着陸
 【嘉手納】米軍嘉手納基地で四日午前十一時二十五分ごろ、同基地所属のF15戦闘機一機が緊急着陸した。基地内の消防車などが出動したが、放水などはなく、同機は数分後に自力で駐機場へ移動した。

 同機は北谷町砂辺方向から南側滑走路に進入。緊急車両や整備要員に囲まれ、一時騒然とした。同基地では「予防のための着陸で機体にトラブルはなかった」と説明。飛行については「通常訓練」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705051300_07.html

社説(2007年5月5日朝刊)

[「最前線基地」計画]

県民無視も甚だしい
 朝鮮半島有事の際、普天間飛行場が米軍のアジアにおける「出撃の最前線基地」になることを裏付ける米公文書が見つかった。

 常駐するKC130空中給油機やCH53E輸送ヘリコプターなど七十一機に加えて、紛争が勃発したときはハワイや米本土の基地から百四十二機を段階的に配備。戦闘が激化した場合にさらに八十七機を追加し、計三百機で作戦を遂行する青写真である。

 ピーク時には九十機を常時配備することも明らかにしている。

 周囲が民間住宅地で囲まれた危険極まりない「普天間」に、現状の四倍を超えるCH46EヘリやAH1W攻撃ヘリなどを順次送り込むというのだから、身の毛がよだつ。

 文書が作られたのは一九九六年に日米両政府で普天間飛行場返還に向けた協議が本格化した時期だ。

 それなのに、ここには既に「普天間飛行場が返還された後も、朝鮮有事のための発進地を海兵隊と国連軍に提供できる基地を新たに指定」すると記されている。

 これは名護市辺野古沖で合意された当初案は言うに及ばず、何としても代替施設は造らせるとする米軍の意思とみていい。であれば、キャンプ・シュワブ沿岸部に変更されたV字形滑走路を持つ「新基地」も同じだろう。

 公文書から読み取れるのは「造るが勝ち。すべては状況に応じた運用の問題」とする米軍の傲慢な姿である。

 島袋吉和名護市長はこの計画をどう受け止めるのだろうか。もちろん仲井真弘多知事も同様だ。

 代替施設がこれからの問題であれば、「知らなかった」では済まされないからだ。市長と知事は市民、県民に対し公文書の内容を分析した上でどう考えるのか、説明する責任があろう。

 計画について、米軍部が太平洋戦争で激戦の末に獲得した“権益”を普天間飛行場の返還で失うことを恐れ、同飛行場の有用性をことさらに強調したのではないかという見方もある。

 県民の暮らしを破壊する嘉手納基地での未明の離陸をはじめヘリからの降下訓練など、既得権益を前面に押し出した強硬姿勢が目立つのは確かだ。

 問題は、このような米軍の姿勢を黙認する政府の姿勢なのであり、もし米政府との間で県民の知らない取り決めがあるのであれば、すぐに情報を公開するべきだろう。

 平和に暮らしたいと願う県民の願いを無視し、沖縄を最前線基地にしようとする米軍の思惑を私たちは絶対に認めるわけにはいかない。「普天間」の危険性の除去とは即時閉鎖である。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070505.html#no_1

2007年5月7日(月) 夕刊 6面
「南京大虐殺」を朗読劇で伝える
 南京大虐殺での加害と、犠牲者への鎮魂をテーマにした朗読劇「地獄のDECEMBER―哀しみの南京」(主催・沖縄公演実行委員会)が六日、那覇市のパレット市民劇場で上演された。全国公演の一つで、七日午後七時からは沖縄市民劇場あしびなーで上演される。

 劇団「IMAGINE21」=東京都=の渡辺義治さん、横井量子さん夫妻が出演。二人は約四百人の聴衆を前に、戦争にかかわった渡辺さん自身の父親と犠牲になった中国人のエピソードを朗読。来場者は気迫のこもった劇に引き込まれた。

 渡辺さんは幼少期から、軍人だった父親が中国で犯した罪の大きさに恐怖心を抱いていた。日本が戦争で行った加害について伝えたいと、去年から同公演の制作を開始した。沖縄初公演について渡辺さんは「ひめゆりの映像を見たとき、南京の様子と同じだと感じたことがある。沖縄の人に少しでも何か伝えられたらいい」と語った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705071700_05.html

2007年5月8日(火) 朝刊 26面
応募 昨年下回る/米基地従業員定期募集開始
 駐留軍等労働者労務管理機構は七日、県内の米軍基地で働く従業員の定期募集を始めた。初日の受付件数は二百十二件(インターネット受け付け分を除く)で、昨年の三百二十一件(同)を大幅に下回った。米軍再編の基地雇用への影響が懸念される中、申し込みに訪れた人たちは、将来の不安よりも目の前の安定を求めているようだった。

 募集要項の配布や受け付けをする同機構の那覇支部(浦添市城間)と同支部沖縄分室(沖縄市中央二丁目)、コザ支部(同市久保田三丁目)には、受け付け開始の午前九時から断続的に応募者が訪れた。

 那覇支部に足を運んだ八重瀬町の無職男性(40)は「ハローワークから紹介を受けた。仕事が見つからず、機会があるなら挑戦しようと思った」と切実な様子だった。宜野湾市から塗装業の二男(27)のためにやってきたという女性(60)は「今の仕事に比べて給与が良く、安定している。米軍が再編されても多くの基地は残る。従業員もそれほど減らさないのでは」と語った。

 名護市の男性(36)は「社会保険も整い、待遇が魅力的だ。英語はあまり話せないが、普天間基地移設を見越して、北部からの採用が増えるのでは」と期待をかけていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705081300_05.html

社説(2007年5月8日朝刊)

[「見直し」有識者会議]

「解釈改憲ありき」の人選
 「高い見識」を持っていても、一方に偏っていては国民の信頼を得ることはできないのではないか。

 集団的自衛権行使に関する憲法解釈見直しを検討する政府の有識者会議のメンバーのことだ。十三人の顔ぶれは“解釈変更派”ばかりで、国民の不安を煽る人選と言わざるを得ない。

 最初から「解釈見直し」が目的であれば、推して知るべしである。それにしても十三人中、集団的自衛権を認める委員が十二人、異を唱えるのが一人もいないのは、政府の会議として公平さを欠こう。

 これでは、まとめられる方向性は決まっているではないか。安倍晋三首相がなぜ、そこまで恣意的な人選を行ったのか、疑問と言うしかない。

 日米間の有事を想定した防衛指針(新ガイドライン)を決定したのは一九九七年。九九年には周辺事態法などガイドライン関連三法ができ、テロ対策特別措置法の成立は二〇〇一年だ。

 武力攻撃事態対処法、改正自衛隊法、改正安全保障会議設置法が〇三年。〇六年に教育基本法が改正され、防衛庁も「省」に格上げされた。

 国民の多くが改憲論議に異を唱えなくなったいま、首相自身が日本の針路を大きく“右側”に切る条件が整ったと見定めたのは確かだろう。

 そのためには、米国との軍事同盟を強化するため集団的自衛権の行使が必要と考えたに違いない。

 だが、見落としてならないのは、改憲に理解を示す国民も九条改正には疑問を呈し、ましてや集団的自衛権の行使に道を開くことには多くが反対しているという事実である。

 与党を担う公明党の太田昭宏代表は会議について「右よりの、乱暴な議論をする人たちが多く入っているということを、多くの人たちが心配している」と述べた。

 自民党内にも懸念する声は多い。当然であり、国民が疑念のまなざしで見ているのを忘れてはなるまい。

 集団的自衛権に道を開く解釈改憲の行く手には、憲法前文と九条一項が持つ「不戦の誓い」を破り、二項の「戦力不保持」に大なたを振るう可能性も否めない。国民の不安はそこにある。

 それにしても、自らの政治信条とはいえ、なぜこんなにも性急に「日本を戦争ができる国」に造り替えようとするのだろうか。

 憲法の平和主義は私たちが過去の歴史を踏まえて築き上げた世界に冠たる理念だ。国際的信用もそれが根幹にある。有識者会議の論議には細心の注意を払い、「日本丸」を誤った方向に向けさせぬよう監視していきたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070508.html#no_1

沖縄タイムス 関連記事・社説(5月4日、5日)

2007年5月4日(金) 朝刊 22・23面
生かせ憲法 守ろう平和/那覇で講演会
 施行六十年目となる憲法記念日の三日、詩人で絵本作家のアーサー・ビナードさんを招いた憲法講演会(主催・県憲法普及協議会、沖縄人権協会、日本科学者会議沖縄支部)が那覇市民会館大ホールで開かれた。ビナードさんは「聞こえのいい表現で戦争の本質を隠す、為政者たちの言葉を読み解こう」と語り、「憲法の危機を好機にしよう」と会場に呼び掛けた。主催者発表で約千五百人が聴いた。

 ユーモアと風刺を織り交ぜ、言葉を選びながらエッセーを聞かせるように語る。笑いと拍手を誘いながら約一時間半話した。

 ビナードさんは、日米の「ミサイル防衛システム」や「米国防総省」といった軍事関連の呼称について、自国の防衛という表現を使って戦争の実態をごまかしていると指摘。「テロとの闘い」も先制攻撃とその後の混乱の隠れみのになっていて、「言葉を作った人の意図を見抜く必要がある」と述べた。

 憲法については「(九条の)正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、本気で外交に取り組んだ内閣がこれまであったでしょうか」。九条は可能性が試されたこともなく、「私たちは『新憲法制定』といった新しいという言葉にだまされやすい思考回路を持っている」と警鐘を鳴らした。

 ビナードさんは一九九〇年に来日し、湾岸戦争への自衛隊派遣の是非をめぐる論議で日本に平和憲法があることを知り、九条が戦争にかかわることへの歯止めになっていることに強い衝撃を受けたという。

 一方で「『九条を守ろう』と口にすると生意気な感じで違和感がある」とも。「憲法は守らなくても動じない。守られているのは私たちで、僕らが生かして使っていかなければいけないものです」と語った。

 結びに「平和とはどこかで進行している戦争を知らずにいられるつかの間の優雅な無知」と、米国の詩人エドナ・セントビンセント・ミレーの言葉を紹介。「平和とは戦争をしたがる人の準備のための時間」と話したベトナム人もいたといい「私たちには戦争を準備するための時間も食い止める時間も等しく与えられている。平和憲法を生かし、実現するための時間を大切にしよう」と語った。

     ◇     ◇     ◇     

悲惨な体験忘れず・戦争への加担阻止

 「活かそう ホントの憲法の力」をテーマに那覇市民会館で三日開かれた憲法講演会。詩人で絵本作家のアーサー・ビナードさんの講演のほか、県憲法普及協議会の高良鉄美会長が改憲手続きを定める国民投票法案について批判。名護市辺野古で基地反対の座り込みを続ける嘉陽宗義さん(84)との意見交換会、県内歌手の宮良沢子さんらのコンサートなどさまざまなプログラムが繰り広げられた。会場を、改憲の動きに危機感を募らせる約千五百人が埋め尽くし、熱気に包まれた。

 国民投票法案について高良会長は「憲法ができて二十五年の空白がある沖縄では憲法の理念などがまだまだ生かされていない。国民投票と聞こえはいいが、改憲のための法案。有権者投票数の半分で決まってしまうこと自体が憲法違反だ」と指摘した。

 米軍基地周辺に植えられた夾竹桃をテーマに「夾竹桃?フェンスの向こうで」など三曲を披露した宮良さんは「夾竹桃の花言葉は、近寄るな、危険。この歌を通して平和の大切さを伝えたかった。県内には戦争体験者も多く残っており、戦争は昔のことではなく、悲惨な体験を簡単に忘れることはできない」と改憲に異議を唱えた。

 名護市辺野古の基地建設に反対する座り込みを続ける嘉陽さんは、司会から安倍晋三首相の美しい国づくりについて質問され、「首相の美しい国は、精神的にか、道路整備などなのか分からない。九条は千年万年も守りたい」と語った。

 最後に、琉大の学生二人が二〇〇七年沖縄・憲法宣言「マジュン、チバラヤー! 憲法(憲法よ、一緒に頑張ろう!)」を読み上げた。学生たちがまとめた文章は、改憲や教育基本法改正の動きに危機感を訴え、平和憲法の理念を世界に発信する内容。

 会場にいた沖縄キリスト教学院大学の大城△武教授は「改憲のターゲットは九条で、戦争できる国にすることが見え見え」と強調した。

 那覇市の盛口佳子さん(39)は「今でさえ、自衛隊の海外派遣など米国の戦争に加担しているのに改憲すると直接、戦争にかかわるのでは」と不安げな表情だった。

 宜野座村の知名桐子さん(24)は憲法改正問題に興味を持つようになったのは一年前。「周りの友人は興味がない人が多い。九条は改正してほしくないが、それ以外の内容が分からないので勉強していきたい」と語った。

※(注=△は「冖」(わかんむり)の下に「且」)

九条「世界へ」宮古から声明

 【宮古島】みやこ九条の会は憲法記念日の三日、宮古島市内で会見し、「憲法九条を激動する世界に輝かせたい」として、九条改憲に向けた動きに反対する声明を発表した。同市伊良部の下地島空港にも触れ「軍事的利用を画策し、自衛隊を誘致しようとする策動が行われていることは看過できない」とした。

 代表世話人の一人、仲宗根将二さんは下地島空港と憲法九条の関連について「自衛隊が使用すれば、米軍と一体となった戦争の危険性が強まる」と指摘。「下地島空港を拠点とした自衛隊の在り方を警戒している」と述べた。

 同会は仲宗根さんと牧師の星野勉さんを代表世話人に二〇〇六年七月に発足。「不戦と平和の誓いの象徴」として「憲法九条の碑」を市内に建てようと募金活動を進めている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705041300_01.html

社説(2007年5月4日朝刊)

[日米2プラス2]

軍事的一体化を危惧する
 日米両政府は、外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を一年ぶりに開き、日米同盟の強化と自衛隊の役割拡大を打ち出した。

 今回は在日米軍再編の着実な実施やミサイル防衛(MD)システムの構築など従来の合意事項の確認が中心となり、MD強化に向けた両国間の情報共有や、日本と北大西洋条約機構(NATO)との協力拡大をうたった。

 米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設などの在日米軍再編については、昨年五月の日米合意の着実な実施を再確認し、日米が連携して進展を図る方針を示した。

 V字形案の沖合への移動などは取り上げられなかった。仲井真弘多知事は不満をにじませ、政府の柔軟対応を促した。県民世論を代弁する知事としては当然である。弱腰では政府案修正はますます不透明になるばかりだ。

 今回の協議では、軍事秘密の保全に関する規則を包括的に定める「軍事情報に関する一般的保全協定」(GSOMIA)の締結に合意している。

 イージス艦情報が漏えいし、政府の情報管理の甘さを懸念した米側が協定締結と国内法整備を求めた。同盟関係の二国間で秘密軍事情報を提供し合う際、第三国への漏えいを防ぐのが目的だ。しかし、国民の知る権利を侵害することにならないか、検証が必要だ。

 共通戦略目標では、日米同盟とNATOを補完的関係と位置付け、広範な協力を達成するとした。MDについては地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の全面配備を前倒しし、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)のイージス艦搭載も早期の完了を目指すという。

 安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、日米同盟強化や、MD配備、NATOとの連携、集団的自衛権行使についての政府解釈の見直しに強い意欲を示している。

 在日米軍再編などに伴い、米軍と自衛隊の軍事的一体化が加速し、北朝鮮情勢を背景に、安倍政権の“タカ派ぶり”が際立っている。

 政府の憲法解釈では、日本国憲法の下では集団的自衛権は行使できない。有識者会議の設置は、政府が集団的自衛権行使の一部容認から全面容認への道を開くことが危惧される。

 憲法改正の動きと連動し、なし崩し的な解釈改憲を進めるのはあまりにも一方的だ。「平和主義」を理念とする専守防衛の原則を踏み外してはならない。

 日米の軍事的一体化で沖縄はどのような負担を強いられるのか。県民一人一人が真剣に考えなければならない。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070504.html#no_1

2007年5月5日(土) 朝刊 20面
ハワイ先住民ら抗議/普天間代替の事前調査で
 【ホノルル=山城莉乃通信員】普天間飛行場の代替施設建設に反対し、ハワイから沖縄の住民運動にエールを送る人々がいる。ハワイ先住民族の主権回復を訴える団体や県系人らの「HOA」(ハワイ・沖縄アライアンス)は沖縄で行われる抗議集会に連動してホノルル市内でアピール行動を展開した。

 建設予定地の名護市辺野古キャンプ・シュワブ沖で那覇防衛施設局が事前調査を実施したことに対し四月二十八日(現地時間二十七日午後)、HOAのメンバー二十五人はホノルル日本領事館に集まった。

 沖縄でこの日、反対住民がシュワブ前で実施した「人間の鎖」行動に連動。「基地拡張に反対」「ジュゴンを守れ」などと書かれたプラカードを掲げ、普天間移設に抗議した。

 ハワイ先住民のケリイ・コリアーさんは「異民族の基地を押し付けられているハワイ、沖縄、グアムを含むアジア太平洋、そして南米の国々が協力し外国軍基地を拒否し続ければ、必ず平和を得ることができると思う」と今回の抗議行動に参加した思いを語った。

 領事館職員はプラカードの内容をメモに取り、解散を呼び掛けた。HOAメンバーが総領事との面談を求めたが受け付けなかった。

 参加者の説明では、三週間前から代替施設で「共同使用」となる内容の情報開示と総領事との面談を求めたが拒否されたため、抗議集会を開いたという。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705051300_05.html

2007年5月5日(土) 朝刊 2面
11日から平和行進/復帰35年特別コースも設置
 県内の米軍基地や沖縄戦の戦跡などを巡り、平和や基地問題について考える「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)が十一―十二日の二日間、県内各地で行われる。同行進は今回で三十回目。今年は十日に国頭村役場を出発、大宜味村などを経由して名護市役所前を終点とする復帰三十五年特別コースも設けた。

 同実行委員会の山城博治事務局長は「沖縄の基地を整理・縮小していくことが極東アジアの平和につながるということを行進を通して訴えていきたい」と多くの県民の参加を呼び掛けている。同実行委によると、県内外を合わせて延べ約六千人の参加を見込んでいるという。

 行進は沖縄本島が東・西・南の三コース。宮古・八重山でも行われる。平和憲法を守り、米軍普天間飛行場の即時閉鎖、県内移設反対、嘉手納基地の返還などを訴えながら行進する。

 十二日午後六時から北谷町の北谷球場前広場で「5・15平和とくらしを守る県民大会」を開催する。また、多くの参加者は十三日に行われる「5・13嘉手納基地包囲行動」(主催・同実行委員会)に参加する予定となっている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705051300_06.html