月別アーカイブ: 2007年4月

沖縄タイムス 関連記事(4月6日?7日)

2007年4月6日(金) 朝刊 1・29面
基地・経済 論戦火ぶた/参院補選
 五日告示された参院沖縄選挙区補欠選は、いずれも新人で無所属の会社代表の金城宏幸氏(68)、諸派の前連合沖縄会長の狩俣吉正氏(57)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦、諸派で那覇市議の島尻安伊子氏(42)=自民、公明推薦=の三人による選挙戦が確定した。三氏は本島各地で遊説活動を繰り広げ、支持を訴えた。事実上、狩俣氏と島尻氏の一騎打ち。狩俣氏は「自公政権で格差が拡大した」と批判。島尻氏は「生活者の視点による政治改革を」とアピールした。
 米軍普天間飛行場の移設問題や経済振興の在り方などを争点に、十七日間の選挙戦がスタート。七月の参院選の前哨戦として、百五万有権者の選択に全国の注目が集まる。
 二十二日に投票、即日開票される。
 狩俣氏は那覇市での出発式の後、市内で街頭演説。県庁前での演説会で「格差のない安心した社会をつくる。沖縄の基地の整理・縮小を求めていくことをしっかり国会でやっていきたい」と、格差是正や米軍基地の整理・縮小に取り組むことを強調した。その後、本島中南部でスポット演説を行い、夜は、宮古郷友同志会の激励総決起大会に参加した。
 島尻氏は那覇市での出陣式の後、浦添市や宜野湾市、沖縄市へと北上。名護市までの十五カ所で街頭演説を繰り広げた。宜野湾市の長田交差点では「台所を基本に考え、暮らしの問題を主に訴えていく」と一貫した姿勢を強調。「台所には知恵と要求が多く詰まっている。それを国政の場で訴え、沖縄県の家計のためにも頑張っていきたい」と決意を述べた。
 金城氏は県庁前広場で演説し「普天間飛行場の移設先は、勝連沖人工島が適地だ」とし、県財政が苦しい現状について、「借金返済のため、東シナ海と尖閣諸島の資源を開発する」と訴えた。
     ◇     ◇     ◇     
遊説奔走
 五日告示した参院沖縄選挙区補欠選。狩俣吉正さん(57)と島尻安伊子さん(42)は選挙カーで街へ繰り出した。沿道の声援に手を振って応えながら、本島を南北に駆け抜けた。
狩俣さん
昼食10分 充実初日
 告示日に五十七歳の誕生日を迎えた狩俣さん。「勝利に結び付けばいいけどね」と笑顔で選挙戦をスタートさせた。
 午前中は那覇市内を回った。正午にはパレットくもじ前で国民新党の亀井静香代表代行らの応援演説を受け、「ハイサイ」と登壇。「格差をなくして安心な社会をつくりましょう」と語り掛けるように訴えた。
 昼食は午後1時すぎ。十分で弁当をかき込み、選挙カーで南部の選対支部を巡った。その後、西原町役場前で支持者と握手を交わし、夕方には沖縄市のプラザハウス前で演説に立った。
 精力的な遊説に、郷友会婦人部が用意した縁起担ぎのフチャギを食べ損ねたが、「昨日、一生懸命食べましたから」と苦笑い。初日の感触については「今は無我夢中です」と話した。
島尻さん
北上 15カ所で熱弁
 大太鼓が鳴り響く中、選挙カーに駆け足で乗り込み、選対本部のある那覇市を午前九時二十五分に出発した島尻さん。
 午前中は、浦添市で小池百合子前沖縄担当相、宜野湾市で中川秀直幹事長らと立会演説。その後、北上しながら約十五カ所で演説した。
 「台所から政治を変える」「もっとよりよい暮らしへ」をキャッチフレーズに「全国でも、一番子育て政策が進んでいる県になるよう取り組んでいきたい」と支持を訴えた。
 午後はうるま市石川で魚汁を食べた後、うるま市石川から演説をスタート。金武町のJAおきなわ金武支店前、宜野座村旧役場前で演説した。各スポットに到着するなり、支持者一人一人に駆け寄り笑顔で握手。勝利に向け力強くガンバロー三唱した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704061300_02.html

2007年4月6日(金) 朝刊 1・29面
沖縄原告、敗訴確定/靖国訴訟
 小泉純一郎前首相の靖国神社参拝は政教分離を定めた憲法に違反し、人格権を侵害されたとして沖縄戦の遺族らが国と前首相に損害賠償を求めた「沖縄靖国訴訟」で、最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)は五日、請求棄却の一、二審判決を支持、原告の上告を退ける決定をした。
 参拝が合憲か違憲かの判断は示されないまま、原告敗訴が確定した。
 沖縄戦の遺族ら原告は、肉親が知らぬ間に靖国神社に祭られ、戦闘に協力した者として賛美されているのは耐えがたい苦痛で、前首相の参拝により苦痛はさらに深まったと主張したが、二審・福岡高裁那覇支部は「参拝が違憲だとしても、原告の権利の侵害は認められず、損害賠償請求を棄却する結論は変わらない」として憲法判断を示さなかった。
     ◇     ◇     ◇     
原告、門前払いに怒り/「司法の独立放棄だ」
 小泉純一郎前首相の靖国神社参拝の違憲性を問うた沖縄靖国訴訟で、最高裁は五日、原告の上告を退けた。「司法の独立を放棄した」「あまりに形式的だ」。原告団の間には、門前払いに怒りと無力感が広がった。
 「司法が憲法判断をせずに、一体この国は本当に民主国家なのか」。原告団長の金城実さん(68)は落胆を隠さない。「集団自決」の軍命を否定する訴訟や教科書検定を挙げ、「沖縄戦の隠蔽が進む中で裁判所はまたも目をつぶった」と憤る。
 沖縄戦で母と兄を亡くした副団長の川端光善さん(71)は、一審で証言に立った。「沖縄戦の実態や、家族が戦争責任者と一緒に祭られた痛みを訴えたが、裁判官は『それは裁判と何の関係もない』という態度だった。政府を守るという立場ありきだ」。悔しさを押し殺しつつ、「敗訴で終わりではない。靖国神社に合祀取り下げを求める訴えを起こすことも考えていく」と前を向いた。
 事務局長の西尾市郎さん(59)は「憲法判断を避けたのは、司法が危険な方向に進み始めた証しだ」と批判。その上で、一審で裁判官が南部戦跡を訪れたことを「これまでの靖国に関する訴訟で一度もなかった」と、成果に挙げた。
 琉大法科大学院の高良鉄美教授(憲法)は「司法が政治と同じベクトルを向けば、少数者の権利は多数決の中で放置されてしまう。戦争の反省に立った政教分離原則の重みからすれば、棄却するにしても憲法判断に踏み込み、一石を投じるべきだった」と指摘した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704061300_03.html

2007年4月7日(土) 朝刊 1面
普天間移設で独自性を強調/伊波氏・外間氏 対談
 【宜野湾】十五日告示、二十二日投開票の宜野湾市長選に出馬を表明している無所属で現職の伊波洋一氏(55)=社民、社大、共産、民主推薦=、無所属新人で前市教育委員会教育部長の外間伸儀氏(59)=自民、公明推薦=は六日、沖縄タイムス中部支社で対談した。両氏は、普天間飛行場の危険性除去や移設先、経済活性化策などでそれぞれの政策構想を主張、互いの独自性を強調した。
 伊波氏は普天間飛行場が米国の安全基準に合致せず、危険性は明白になっていると主張。「グアム移設は可能だ。税金を投入しながら、国民が抱える危険性を除去しないことは道理が通らない」と訴えた。
 外間氏は県と協力し、普天間飛行場の危険性除去を一日も早く実現したいと説明。「移設先のベストは国外、県外。国と県、名護市による協議の推移を見守りたい」と述べ、移設先で見解が異なった。
 経済活性化策について、外間氏は「基地周辺整備事業で高率補助の公共事業を推進し、生活環境も改善する」と強調。伊波氏は「西海岸地区で五十万―七十万人の観光客を集客し、企業誘致による地域活性化」を提起した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704071300_02.html

2007年4月7日(土) 朝刊 25面
市民200人、抗議集会/「集団自決」修正
「軍命 確かに聞いた」
 二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍が関与したことを表す記述を文部科学省が削除させたことについて、県内の市民団体が六日、那覇市古島の教育福祉会館で緊急抗議集会を開いた。「集団自決」の生き残りの参加者は「(日本)軍の命令を確かに聞いた」と証言。軍の関与を否定した検定に対し「はらわたが煮えくり返る思いだ」と怒りをあらわにした。約二百人の参加者からは「声を上げなければ、沖縄戦の実相がゆがめられるばかりだ」など、危機感を訴える声が相次いだ。
 渡嘉敷島の「集団自決」で生き残った女性(83)は、日本軍が各家庭の男性に手りゅう弾を配り、日本軍の命令で島民が集合させられて「自決」を強いられたことなど、当時の状況を詳しく証言した。
 「手りゅう弾で死ねなかった人たちはカミソリで切りつけ合っていました。軍の命令だから集合するように、と確かに聞いたんです。誰も死ぬことなんか望んでいなかった」。女性は切
々と当時を振り返り、「教科書の書き換えを許してはいけない。沖縄戦を子孫に語り継がなくてはいけない」と訴えた。
 本島中部の高校教諭の男性(55)は「日本軍の強制は明らかなのに、事実がこれほど簡単にねじ曲げられてしまう現状は怖い。戦場にされた沖縄から声を上げなければ、数の暴力に押し流されてしまうばかりだ」と危機感をあらわにした。
 集会は「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(高嶋伸欣・福地曠昭共同代表)が主催。「沖縄戦の実相をゆがめ、戦争の本質を隠蔽する暴挙は許せない」とし、検定の修正指示撤回を求めるアピールを採択した。
識者「歪曲」加速を懸念
 高嶋伸欣琉球大学教授は「いま声を上げなければ、次は沖縄戦の住民虐殺の否定にもつながりかねない」と懸念。「現場の教員は教科書問題自体を教材に取り上げ、子どもたちに考えさせるなどの工夫も必要だ」と強調した。
 山口剛史琉大准教授は、大阪地裁で元軍人らが岩波書店などを訴えている「集団自決訴訟」について、「原告が検定を利用して(勝訴)判決を勝ち取ろうとするのは問題だ」と影響を危惧。裁判の行方を注視するよう呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704071300_03.html

沖縄タイムス 関連記事(4月5日?6日)

2007年4月5日(木) 朝刊 27面
「やはり政府はうそを」オスプレイ配備隠し
 政府は、やはりうそをついていた―。普天間代替施設へのMV22オスプレイ配備計画を政府が隠していたことが四日明らかになり、移設先の名護市の市民団体などから怒りの声が噴出した。「事実を認めるべきだ」「計画を白紙に戻せ」。ヘリパッドが集落近くに移設される東村の住民にも、不安は広がった。一方、名護市は「事実を確認してから」と慎重な姿勢を見せた。
 移設先の大浦湾に面した名護市東海岸に住む沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長。「国はこれまで市民や県民をだまし続けてきた。闇から闇に葬り去ることは許されず、国は事実を認めるべきだ」と激しく批判した。
 オスプレイに対する住民の不安を訴え、「これまでの説明と違うのだから、住民や自治体への説明からやり直すべきだ。今の状態で事前調査を強行すべきではない」と、国の現況調査の中止を求めた。
 ヘリ基地反対協議会の大西照雄共同代表は「国の秘密主義、やりたい放題は許されない。県民はだまされてはいけない」と強調した。
 政府は一九九七年の名護市民投票以来、「具体的な配備計画は承知していない」と繰り返してきた。SACO合意を究明する県民会議の真喜志好一さんは「オスプレイには力学上の根本的な矛盾がある。政府自身がその危険を認識したからこそ、情報を隠してきた。沖縄を植民地扱いしている」と憤った。
 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「日米両政府は基地さえ造ってしまえば、何でも持ってこられると考えている。オスプレイ配備の事前合意が明らかになり、反対運動はさらに強まる」と警告した。
 「事実なら大変なことだ」。北部訓練場の一部返還に伴いヘリパッドが移設される東村高江の仲嶺武夫区長は、不安を募らせる。「訓練が普天間代替施設と連動されることは明らかだ。政府が情報を隠しているなら、国民をだますやり方で許せない」と批判した。
 一方、名護市の幹部は「初めて聞く話だ。ただ、(SACO合意からオスプレイの文言が)最終的に削除されたということは、配備が合意に至っていないということではないか。詳しいことは事実関係を確認してからでないと答えられない」と述べるにとどめた。
[視点]
県民脅かす卑屈な交渉
 オスプレイ配備計画をめぐる交渉過程で浮かび上がったのは、政府の卑屈な態度だ。復帰をめぐる密約から普天間移設まで、対外的に説明できない米国との約束が積み上がり、県民の安全を脅かし続けている。
 共同通信が入手した文書によると、米側さえ配備計画の公表を求めたにもかかわらず、政府はそれを押しとどめ、国民にも背を向けた。
 現行案のV字形滑走路でも、米側は「双方向からの着陸はあり得ると伝えた」と明らかにしたが、政府は「乗員の生命にかかわる場合だけ」と限定して説明し、問題をうやむやにしている。
 政府が米側の要望を丸のみし、説明責任を回避し続ける限り、普天間移設や日米安保体制に対する県民の信頼は失われるばかりだ。
 代替施設の完成時にオスプレイが配備されるのは、もはや明らかだ。政府が本当に移設を「負担軽減の最善策」と信じるなら、非を認めた上で、情報を開示することは無理な注文ではない。「密約」が次々に米側文書で明らかになるような政府の姿勢を許し続けるのかどうか、国民の側も問われている。(社会部・阿部岳)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051300_03.html

2007年4月5日(木) 朝刊 27面
岩波書店・大江さん抗議/高校教科書検定
「集団自決」訴訟は継続中 原告側の訴えだけで修正
 【東京】二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で文部科学省が沖縄戦の「集団自決」記述に関し、日本軍の関与を否定する意見を付し教科書会社に修正させたことについて、岩波書店と作家の大江健三郎さんらは四日、連名で抗議声明を発表した。岩波書店と大江さんは沖縄戦時に慶良間諸島で起きた「集団自決」をめぐって、当時の日本軍戦隊長らと民事訴訟で係争中だが、今回の検定が元戦隊長側の主張のみを取り上げて修正の根拠の一つにしていると非難。近く声明文を伊吹文明文科相に郵送する予定だ。
 声明は(1)訴訟は継続中(2)集団自決に軍命があったことは多くの文献などで明らか(3)住民が軍命があったと認識していたことは戦隊長側も認めている―と指摘している。
 同日、岩波書店の宮部信明編集部長、岡本厚編集副部長、代理人の秋山幹男弁護士が文科省で会見。大江さんは出席しなかったが「心から賛同する、私の名前で出してほしい」と話しているという。
 文科省が今回の検定で参考にしたとして報道機関に提出した沖縄戦関連の「著作物等一覧」には、同訴訟を「沖縄集団自決冤罪訴訟」と元戦隊長ら原告やその支援者が使用する呼称をそのまま明記していた。
 訴訟を担当する岡本副部長は会見で、文科省が今回の検定から修正意見を付したことや、近年、軍命を否定する著作物が発刊されていないことを指摘した上で「原告の訴え自体に文科省の修正が対応していると考えざるを得ない」との見方を示した。
 文科省が訴訟での元戦隊長の主張を修正の根拠にしていることについて「中立公正に訴訟を取り上げるべきだ。非常に乱暴なやり方だ」と強く非難した。
 秋山護士も「隊長命令がいつどこであったかどうかについては争いの対象になっているが、軍の関与、強制というレベルの事実は(裁判の)証拠上はっきりしている。それらを検討した上で検定したとは到底思えない」と疑問を呈した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051300_04.html

007年4月5日(木) 朝刊 2面
「普天間」解決と経済振興で激論/宜野湾市長選 公開討論会
 【宜野湾】二十二日投開票の宜野湾市長選に向け市民の関心を高めようと、「公開討論会」が四日、市民会館で開かれた。立候補予定者で、革新系無所属の現職伊波洋一氏(55)=社民、社大、共産、民主推薦=、無所属新人の外間伸儀氏(59)=自民、公明推薦=が、米軍普天間飛行場問題や経済振興策を中心に主張を展開した。主催は宜野湾青年会議所、日本青年会議所沖縄ブロック協議会。
 島袋純琉球大教授が司会を務め、市の課題、迅速な対応が求められる施策など五点を議論した。
 基本演説で、両者とも普天間飛行場の危険性除去や移設を念頭に持論を展開。伊波氏は「基地問題解決のためには米国を訪れ、直接訴えていく必要がある。引き続き市政を担い課題解決に取り組みたい」とアピール。
 外間氏は「国や県に主張すべきは主張し、要求すべきことは要求したい。跡地利用に向けてしっかりと国、県と対話していきたい」と訴えた。
 早急に取り組む重要施策は「普天間飛行場の早期の危険性除去と返還、跡地利用計画の策定」(外間氏)、「大山田イモ地区保全計画と連動した大山小過大規模校の解決」(伊波氏)を優先課題に挙げた。
 クロス討論で、危険性除去への対応を問われた外間氏は「騒音データや過去の事故を調べ、有効な手法を研究したい」と回答。大山小問題の解決で、校区再編から分離新設校設置への方針転換を問われた伊波氏は「校区再編では新たな問題が生じるためであり、矛盾はない」などと答えた。
 最後のアピールでは、伊波氏が「小学生までの入院費無料化を実施」と明言。外間氏は「公共事業導入で、生活環境の改善」を訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051300_05.html

2007年4月5日(木) 夕刊 4面
普天間移設問題「環境にも配慮」/小池首相補佐官が講演
 小池百合子首相補佐官は四日、那覇市内のホテルで開かれた講演会(主催・沖縄経済同友会)で、米軍普天間飛行場の移設問題について「仲井真弘多知事は三年以内の早期閉鎖を求めている。そのためにもキャンプ・シュワブ沖への日米合意案を進めていかなくてはいけない」と述べた。その上で「環境の観点からも日米合意は藻場を守るということでよく考えられた案。地域の声も受け止めながら、その後の跡地利用をどう進めるかを考える重要な時期だ」との考えを示した。
 沖縄振興計画が後期五年の折り返しの節目を迎えることについて「沖縄にはビジョンが必要。沖縄の文化やシーサー、かりゆしウエアなどを世界にアピールし、観光地というだけでなく、プラスアルファの文化を発信することが重要」と述べ、戦略的な観光振興を促した。那覇空港の拡張に関しては「アジアのハブ空港に十分なり得る。観光客の受け入れ態勢の点検も必要で、(早期建設に向けて)もっと声を上げるべき」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051700_03.html

2007年4月6日(金) 朝刊 1面
F22・空自、共同訓練へ
沖縄空域数週間内/南西混も参加
 嘉手納基地に暫定配備されている米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが今月中旬にも、沖縄周辺空域で沖縄の南西航空混成団を含む航空自衛隊との空対空の日米共同訓練を計画していることが五日、分かった。実施時期について嘉手納基地は「数週間以内」としている。空自は来週にも正式発表する方向で調整を進めている。F22の配備は騒音面でも周辺住民の不満が高まっており、嘉手納基地の機能強化につながる日米共同訓練実施には反発も予想される。
 空自南西航空混成団と嘉手納基地所属の第一八航空団の日米共同訓練は一九七九年以降、三十四回行われている。今回の訓練でF22が第一八航空団の一部として参加するのかは不明。
 空自からは那覇基地所属のF4のほか、石川県の第六航空団など沖縄以外の部隊が参加する方向で調整が進んでいる。
 F22と空自の共同訓練について、外務省の西宮伸一北米局長は「特定の施設・区域に一時的に展開している米軍の航空機が、各種訓練に参加すること自体は日米地位協定上、排除されない」との見解を示している。
 F22を運用するウェイド・トリバー司令官は嘉手納配備が始まった二月、嘉手納基地所属のF15戦闘機やE3空中警戒管制機と沖縄周辺海域で訓練することや、三沢基地(青森県)所属の米軍F16戦闘機との訓練計画を発表。一方で、空自との訓練については「(現時点は)計画にない」としていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704061300_01.html

外国軍事基地廃絶国際ネットワーク結成会議が南米エクワドルの首都キトで3月5日から開催

外国軍事基地廃絶国際ネットワーク結成会議が南米エクワドルの首都キトで3月5日から開催
草の根運動から、平山基生運営委員長、小湊忍副運営委員長が参加
「帝国」の終末は歴史的必然です。しかし、それを実行するのはあなたや私たちと全世界の草の根民衆のグローバルな連帯です。今回の会議への参加も、自費参加ですので個人としての財政は限界に来ています。しかし、地球的草の根連帯をつくるため参加は不可欠です。どうか、組織を強めて下さい。

有事システム・秒読み「県国民保護計画」(4)

<2006年2月12日 朝刊26面>
有事システム・秒読み「県国民保護計画」(4)
ぼやける境界
「防災」足場に浸透
社会全体支配の懸念も
 恩納村のビーチ。白い砂をけり、自衛官と消防隊員が力を合わせて担架を運ぶ。上空には戦闘機や哨戒機が飛び交い、沖合を巨大輸送艦「おおすみ」がもうもうと黒煙を吐き出しながら横切った。
 見物していた読谷村の主婦(26)は「自衛隊があんなに大きな船を持っているとは思わなかった」と、目を丸くした。地元の主婦(67)は「本物の戦争みたい。怖い」と、表情をこわばらせる。
 二〇〇五年九月の県総合防災訓練は、軍事色に覆われた。九州最大の陸上自衛隊の拠点を抱える熊本県の消防隊員でさえ、「県の訓練にこれほど大規模な自衛隊の参加は見たことがない」と、口をそろえたほどだ。
 閉会式で、自衛官を真ん中に挟んで整列した参加者に向かい、牧野浩隆副知事は総括した。「従来にも増して、充実した訓練だった。こうした蓄積が国民保護に役立つものと確信する」
 防災と有事の境界は、次第にぼやけている。県の国民保護担当は防災危機管理課。国側の窓口は消防庁だ。
 県が〇五年七月に開いた県国民保護フォーラムの客席にも、市町村消防の制服が目立った。だが、壇上では「テポドン」「潜水艦侵入」など、きな臭い事例が次々に紹介される。
 中部のある消防団長は、あっけに取られた様子で話した。「国民保護と聞いて、てっきり防災の話だと思っていた。テロとか有事とか言われて、ちょっとパニックだ。われわれも有事に巻き込まれるのか」
 防災を足場に、有事の体制が組まれる。県は「防災は基本。国民保護は応用だ」と説明するが、双方には大きな違いがある。防災が市町村本来の仕事なのに対し、国民保護では国から県、市町村へと指示が下されるトップダウンの思想が貫かれている。
 自衛隊は攻勢をかけている。先月末には、陸上自衛隊西部方面隊(熊本市)が日米共同指揮所演習に沖縄など八県の国民保護担当者を初めて招いた。「作戦時の日米の動きを把握してもらうのが目的」だ。
 さらに〇六年度から、自衛官募集が主な仕事だった地方連絡部は「地方協力本部(仮称)」に格上げ。新設ポストの「国民保護・災害対策連絡調整官(仮称)」が一人ずつ常駐、市町村の計画作成の手伝いや有事の際の調整に当たる。防衛庁は「国民保護で、自衛隊への期待は高まっている。協力体制を強化する」と力を込める。
 「あってはならない武力攻撃、なくてはならない国民保護」。〇五年のフォーラムで、消防庁の担当者は意義を強調した。だが、「万が一」の備えを固めるうちに、気が付いた時には社会全体が有事システムに支配されている可能性も、否定はできない。(社会部・阿部岳)=おわり=
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/yuji20060212.htm

沖縄タイムス連載 有事システム・秒読み「県国民保護計画」(1)(2)(3)

<2006年2月9日 朝刊 1面>
有事システム・秒読み「県国民保護計画」(1)
よみがえる苦渋
50年目の報道統制
米軍がテープ強要
免許の壁、揺れる民放

県が民放5社に指定機関化を求めた文書を手にする真栄城さん=佐敷町の自宅
 「君たちの気持ちはよく分かる。だが、このテープを放送しなければ、会社がつぶされる。今度だけは、僕の言うことを聞いてくれ」
 一九五七年一月、首里の琉球大学構内にあった琉球放送。目にうっすらと涙を浮かべ、現場のアナウンサーを説得したのは、創業者の故座安盛徳社長だった。
 米軍の土地収用に怒る島ぐるみ闘争の火が、全県に燃え広がっていた。そこへ、米民政府民間情報教育部が持ち込んだ一本の録音テープ。聞いてみると、辺野古の地主たちが口々に「軍用地料の一括払いはやむを得ない」と話している。
 基地の永続化につながるとして一括払いに反対した県民要求と、真っ向から対立する内容だった。アナウンサーたちは一致して「民政府の狙いは見え透いている。こんなテープは放送できるわけがない」と決めた。
 しかし、民政府は放送免許を盾に、強硬に放送を要求した。座安社長の説得にアナウンサーも折れ、テープはそのまま電波に乗せられた。
 ラジオが県民に背を向け、米軍に有利な報道をした。案の定、同社には抗議の電話が殺到した。
 当時のアナウンサー、真栄城勇さん(83)。「あの悔しさは絶対に忘れられない」と、今も苦渋に満ちた表情を浮かべる。座安社長も、大政翼賛体制下の報道の罪を知る戦中からの新聞人だった。「民政府の権限は絶対。社長も本当につらそうだった」
 前身に当たる「琉球放送局」時代には、局内に検閲官が常駐し、ニュースの書き換えを指示した。本土の放送局が「報道の自由」の下で出発したのに対し、沖縄は戦後も報道統制下にあった。
 一括払い容認テープの放送から約五十年。県内の民放五社は今、国民保護法に基づく「指定地方公共機関」化を突き付けられている。有事の際に、放送を義務付けられる国発令の警報、県の避難指示は、民政府のテープと重なって見える。
 「沖縄の放送局は、長いこと苦い経験をしてきた。権力の押し付けには、堂々と歯向かってほしい」。真栄城さんが、後輩たちに送るメッセージだ。
 民放五社の役員は一月末、県に意見書を提出した。当初、文案のタイトルには「指定受諾にあたって」という文字があった。報道現場や労組の反発で削除したが、経営側は指定の受け入れに傾斜を強める。
「現場の気持ちはよく分かる」。ある民放の首脳は、五十年前の座安社長と同じ言葉を口にし、「経営としても受けたくないのが本音」と続けた。
 だが、米民政府がなくなった今も放送は免許制で、総務省が権限を持つ。国策をはねつけたら、どうなるか。首脳は「免許の更新時に何か言ってくる可能性はある」と不安を漏らす。「受諾の直接の理由ではないが、頭の片隅にはある」
 外国からの武力攻撃など、有事の際の住民避難を定める県国民保護計画の決定が、秒読み段階に入っている。県は九日、計画案を関係機関でつくる県国民保護協議会に諮問。順調にいけば、来月中に答申を受けて正式決定する運びだ。沖縄で、有事に備える社会システムが起動する意味を考える。(社会部・阿部岳)
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/yuji20060209.html

<2006年2月10日 朝刊30面>
有事システム・秒読み「県国民保護計画」(2)
孤立する5社
放送は誰のものか
指定「市民不信招く」
 西暦X年。政府は、沖縄本島南部に向かって、外国軍が侵攻していると警報を発令した。県もこれを受け、北部への住民避難の指示を出した。だが、報道部の記者は、北部の海上で外国の軍艦を見たという漁民の証言を得た。矛盾する情報をどう扱うか―。
 仮に今、こうした事態が起きれば、放送局は情報の正確さを吟味し、取捨選択した上で県民に伝える。しかし、国民保護法に基づく「指定地方公共機関」になった後は、国や県の情報だけは「正確に」「速やかに」放送しなければならない。
 「報道の自由」「放送の自律」は守れるだろうか。そう聞くと、ある民放幹部は「想定が極端すぎる」と声を荒らげた。一方、別の幹部は「沖縄戦を見ても、国が住民を足手まといと判断することはあるかもしれない」と声を潜める。
 「警報や避難指示はなるべく各社一斉に伝達するが、難しければ指定機関に優先的に届ける」。県の担当者は六日、マスコミ労協の代表に明言した。
 労協は「情報を盾にした選別だ」と反発したが、県は「確実に放送するという担保が欲しい」と繰り返す。消防庁国民保護室も「そもそも放送局の指定拒否を想定していない」と、県の姿勢を全面的に支持する。
 これに対して、「報道機関を単なる広報の下請けと考えている表れだ」と指摘するのは、上智大学の田島泰彦教授(メディア法)。「国が考えることをそのまま放送させることは統制の度合いが強く、戦前でさえ直接的な仕組みはなかった」と強調する。
 しかし、全国的にはNHKやキー局、地方局が続々と指定を受けた。沖縄以外で唯一、態度を保留する独立UHF局の千葉テレビ放送も「近く受諾する」。琉球放送、沖縄テレビ放送、琉球朝日放送、ラジオ沖縄、FM沖縄の五社は、孤立を深めている。
 「有事の報道統制は遠い先の話ではない。国民の知る権利は、今まさに音を立てて崩れ落ちようとしている」と田島教授。イラク駐留の自衛隊をめぐる取材規制やメディア規制法を列挙する。
 県は二〇〇五年十月、沖縄タイムスと琉球新報の県内二紙にも、県国民保護協議会の委員になるよう打診した。実現しなかったとは言え、有事システムの「網」はさらに広がろうとしている。
 田島教授は、放送が誰のものかを問う。「勝手に指定機関になるのは、市民のパートナーでなく政府のしもべだと言うに等しい。市民の不信は決定的になり、それに乗じた政府の報道統制という悪循環が進むだろう。市民に情報開示し、意見を聞くことこそが、信頼回復の道ではないか」(社会部・阿部岳)
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/yuji20060210.html

<2006年2月11日 朝刊30面>
有事システム・秒読み「県国民保護計画」(3)
逆説的な基地避難
危険承知の選択肢
拒む軍に理解示す国
 嘉手納ロータリーの中にあった自宅を出ると、周りには百人以上の住民が集まっていた。着の身着のまま、はだしの人もいる。
 一九六八年十一月十九日の未明、米軍のB52戦略爆撃機が嘉手納基地内に墜落した。
 南北を基地と弾薬庫に挟まれ、東からは爆発音が迫る。人々は、追い立てられるようにロータリーにたどり着いた。だが、西に行ってもその先は海だ。逃げ場を失い、パニック寸前だった。
 当時団体職員だった宮城篤実嘉手納町長は、誰にともなく怒鳴っていた。「基地内が安全じゃないか」。フェンス越しの駐機場は、平静を保っているように見えた。
 後に町議になると、議会で当時の町長に提案した。「各世帯に一個ずつペンチを配って、いざという時にはフェンスをちょん切って入れるようにしてはどうか」
 二〇〇五年十二月の県国民保護協議会で、県は有事の基地内避難や通行を提案。宮城町長は自らの体験を語り、「大事なこと」と評価した。
 有事に攻撃対象となり得る基地への避難は、すでに批判を呼んでいた。「その危険な基地が、比較的安全になり得るほど、嘉手納の状況は切羽詰まっている。こんな話を、会議で大まじめにしなければならないのは悲劇ですよ」
 基地負担にあえぐ現状に逆説的な問題提起を込めた。実際には、「9・11以降、米軍は神経質になっている。甘い期待は一切ない」という。
 宮城町長の見方を裏付けるように、米軍との協議は難航している。県は在沖海兵隊に打診を始めたが、返答は「有事にはゲートは閉ざす」。さらに、基地の運用継続に必要な従業員は手放さない意向を示した。
 「交渉は続けるが、合意の見通しが立たない」。県は九日の協議会で、米軍関連の文章を計画案からばっさり削除せざるを得なかった。
 県民の意見募集結果も報告。「放射性物質や有毒化学物質の実態を記述し、影響を検討すべきだ」との意見は、計画に反映させるとした。だが、担当者は「軍事機密。聞いても教えないだろう」と力なく話す。
 沖縄などの要望を受け、国レベルでも在日米軍との交渉が始まっている。内閣官房の担当者は「不特定多数を、まして有事に基地内に入れることへの懸念は分かる」と、米軍側に理解を示す。
 基地立ち入りの協議では一時的通行を優先し、県のように避難先に指定することには懐疑的だ。「安全かどうかもよく分からない」
 その不気味な存在に包囲された沖縄で、「国民保護」は成り立つか。推進の旗を振る国から、確たる答えはない。(社会部・阿部岳)
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/yuji20060211.html