月別アーカイブ: 2007年4月

沖縄タイムス 関連記事(4月4日)

2007年4月4日(水) 朝刊 1面
下地島空港 自衛隊使用望ましい/久間防衛相
地元合意前提「屋良確認書」破棄も
 【東京】久間章生防衛相は三日の衆院安全保障委員会で、「屋良確認書」によって軍事使用が認められていない下地島空港(宮古島市)について「これから先、緊迫してきて(自衛隊が)スクランブルをかけなければならないような状況が出てきた場合には、下地島空港は非常にいい場所にある飛行場だと今でも思っている」との認識を示した。その上で「県、議会、関係市町村の状況が許されるならば(自衛隊が)使うことについてはやぶさかじゃないと思っている」と述べ、地元合意を得て使用可能となることが望ましいとの考えを明言した。
 久間防衛相は、一九七一年に琉球政府と日本政府が交わした「屋良確認書」の存在を認めた上で「県知事が県議会の意見を聞いてオーケーすればできること」とも述べ、「確認書」の破棄も念頭にあることを示唆した。
 照屋寛徳氏(社民)への答弁。
 下地島空港の使用をめぐっては昨年二月、航空自衛隊那覇基地司令が「インフラ整備をして何かあったときに展開、配備をしておくことが有効ではないか」と発言。
 久間防衛相自身も先月末、過去に自衛隊の使用を政府内で検討していたことを明らかにするなど、自衛隊の下地島空港使用の意図が徐々に明確になってきていた。
 久間防衛相の発言に対し、宮古島市の伊志嶺亮市長は「屋良確認書と西銘確認書で軍事利用できないことを分かっていながら、以前から折に触れて自衛隊使用の道筋を探っているように感じる」と指摘。
 その上で「『周辺市町村の状況が許されるならば』という言い方をしているが、宮古郡民の総意は平和利用だ。少なくとも私が市長である限りは郡民の総意に従って平和利用を図っていきたい」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704041300_01.html

2007年4月4日(水) 朝刊 1面
参院補欠選挙・あす告示/両陣営、総力結集へ
 二十二日投開票の参院沖縄選挙区補欠選は五日告示される。与党陣営の立候補予定者の前那覇市議、島尻安伊子氏(42)=自民、公明推薦、野党陣営の立候補予定者の前連合沖縄会長、狩俣吉正氏(56)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=が立候補を表明、無所属新人同士による事実上の一騎打ちを繰り広げている。
 与野党両陣営は、県内各地で支部事務所を立ち上げ、態勢固めに総力を挙げている。告示を受け、一気にラストスパートをかける。
 島尻氏は三日、那覇市内で沖縄電力グループ「百添会」の総決起大会に出席。「生活者の視点を政治の原点とし、台所から政治を変える。子育て世代の代表として、政治の潮流にアリの一穴を開けたい」と呼び掛けた。
 狩俣氏は同日、那覇市銘苅の選対事務所前で総決起大会を開き、「自公政権では格差は拡大するばかり。格差をなくすための重大な選挙。大きな力を結集して、安心な社会をつくる一票を寄せてほしい」と訴えた。
 会社代表の金城宏幸氏(68)も出馬を表明している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704041300_02.html

2007年4月4日(水) 朝刊 2面
普天間代替調査/使用書の公表拒否
 【東京】久間章生防衛相は三日の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う海域での現況調査に着手するために県に提出した「公共用財産使用協議書」の公表を拒否した。調査で使う機材を置く場所などが明記されていることなどから、公表すると、辺野古沖を埋め立てる従来計画と同様に、反対派の住民らによって調査が阻害されると指摘、「今度は用心に用心を重ねてやろうと思っている」と述べた。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 久間防衛相は、従来計画で、ボーリング調査を反対派に阻止されたことについて「海底に立ったやぐらに乗り込んできて、そこにいる人すら引っ張り下ろして妨害されたことがある。そういうことは絶対今度はしてもらったら困るという思いも非常に強い」と述べ、非公表に理解を求めた。
 赤嶺氏は「公文書だから情報公開の対象だ」と公表を要求。公表を拒み続ける防衛省側を「環境影響評価(アセス)法でさえ、その方法については県民の意見を聞くことが求められているのに、皆さんはどんな調査をやるのか知らせないで自然に手を加えようとしている」と非難した。
 これに対し、久間防衛相は「われわれは現況調査をやっているが、それと同時に県と協議しながら環境アセス法に基づく方法書をちゃんと提示して、そのときには法の手順に従って調査をやる」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704041300_05.html

2007年4月4日(水) 朝刊 23面
返還地にキビ植え/読谷飛行場跡
【読谷】昨年返還された読谷村の米軍読谷補助飛行場跡地(約百九十一ヘクタール)の旧地主らで組織する農業生産法人「農園そべ」は一日、村との管理委託覚書に基づき、サトウキビを植え付けた。跡地利用に向けた取り組みの一環。この日は、村役場南側の畑約千平方メートルで作業した。
 「農園そべ」のメンバー四人が、耕運機で畑を耕し肥料をまいた。比嘉昌勝さん(51)は「私たちの土地に作物を植えることができ、喜んでいる。みんなで助け合ってキビを育てたい」と話した。
 刈り取ったサトウキビは、黒砂糖として加工して販売、農業生産法人の収入とする方針。比嘉明社長によると、旧地主で組織する五つの農業生産法人すべてが、キビやベニイモの植え付けなどを始めた、という。
 村は、跡地利用計画を進め約百五十ヘクタールは今後、地主らで組織する農業生産法人に貸し付ける方針だ。しかし法人の経営体制が整っていないことから、当面は委託管理覚書に基づいて無償で約六十ヘクタールを管理させ、その間に組織体制を強化する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704041300_09.html

2007年4月4日(水) 夕刊 1面
F22 来月撤収を言明
在日米軍司令官 理由触れず
 在日米軍のライト司令官(空軍中将)は四日までに、嘉手納基地に今年二月から配備されていた米軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aが、五月までに同基地を離れることを明らかにした。一部記者団に語った。
 沖縄へのF22配備は、朝鮮半島情勢をにらんだ抑止力強化の一環だった。六カ国協議での核問題の進展などを受けて、予定通り三カ月での撤収を確認した発言といえる。司令官は沖縄への同機配備が「五月ごろ」までと言明。撤収の理由については詳細を明かさなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704041700_03.html

沖縄タイムス 関連記事(4月2日?3日)

2007年4月2日(月) 朝刊 23面
乗員4人無言の帰任 陸自ヘリ墜落
 急患搬送に向かう途中で鹿児島県・徳之島の山中に墜落し、死亡した陸上自衛隊第一〇一飛行隊(那覇)のCH47ヘリコプターの乗員四人の遺体が一日夕、旅客フェリーで那覇市通堂町の那覇港に到着した。港には、遺族と同飛行隊所属の隊員ら約六十人が集まり、無言のまま帰任した四人の殉職を悼んだ。遺体は琉球大学医学部に運ばれ、鹿児島県警が二日にも司法解剖し、身元の特定などをする。
 死亡したのは機長の建村善知三佐(54)、副操縦士の坂口弘一・一尉(53)、整備員の岩永浩一・二曹(42)、同藤永真司二曹(33)。
 フェリーは午後六時四十分すぎ、那覇港に入港。間もなく遺体を乗せたワゴン車二台が下船し、外で待っていた遺族らの目の前を通過して、港を後にした。時間にしてわずか数分。四人の上司の印口岳人第一〇一飛行隊長の合図で隊員が一斉に敬礼する中、遺族はハンカチで涙をぬぐったり、目を閉じて合掌したりしていた。
 ワゴン車が見えなくなると、遺族らは肩を寄せ合いながら沈痛な面持ちで用意された送迎バスに乗り込んだ。
 この日着任したばかりの第一混成団長兼那覇駐屯地司令の武内誠一陸将補も参列した。
 第一混成団の広報担当者は「あらためて悲痛な思いが込み上げてきた。いまだに亡きがらにさえ対面できていない遺族の気持ちは察するにあまりある」と声を落とした。
 鹿児島県徳之島の亀徳港を出港したフェリーには陸自第一混成団の隊員数人も同乗した。徹夜の捜索や対応に追われ、一様に疲れきった表情。「救急搬送の生き字引のようだった。その人が事故で亡くなるなんて…」。同僚の一人は、建村三佐の死を沈痛な表情で語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704021300_01.html

2007年4月3日(火) 朝刊 27面
指示撤回求め抗議/「集団自決」修正
文科省に市民団体「軍関与明記を」
 文部科学省が二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で沖縄戦の「集団自決」記述について、日本軍の関与を否定する意見を付し教科書会社に修正させたことについて、県内の市民団体が二日、記者会見し「検定結果は沖縄戦の実相をゆがめることであり、戦争の本質を覆い隠し、美化するものだ」と強く抗議した。文科相あてに、今回の修正指示の撤回と各会社が軍の関与を明記した申請段階の文章に戻すよう求めた。
 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の共同代表の高嶋伸欣琉大教授、福地曠昭さんらが県庁記者クラブで会見した。
 高嶋教授らは、文科省が大阪地裁で係争中の訴訟で「『集団自決』で軍命はなかった」と述べた一方の当事者(原告)の主張を根拠に、教科書会社に申請内容の書き換えを要求したことについて、「裁判を恣意的に利用した。政治的な意図が見え隠れする」と批判した。その上で「原告らの主張する『集団自決』は、住民が国に殉じた犠牲的精神に基づき、自ら命を絶った美しい死であったとする一方的な歴史観だ」と指摘。その内容の教科書が全国の子どもたちに渡ることを絶対に許す事ができないとして、修正指示の撤回などを文科省に強く求めていく考えを示した。
 高嶋教授は「今回の教科書検定の理由は支離滅裂だ。文科省は教科書の検定基準や裁判を恣意的に利用している。追及しなければならない」と語気を強めた。福地共同代表は「子どもたちに事実と違うことを教えてはいけない。指導要領や教育方法は変わっても、沖縄から徹底的に平和教育を進めるべきだ」と語った。
 「すすめる会」は六日午後六時半から那覇市の教育福祉会館で緊急抗議集会を開く。三日午前には、沖教組と高教組が同クラブで抗議会見を開く。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704031300_01.html

2007年4月3日(火) 朝刊 27面
2万5000人結集へ気勢/嘉手納包囲
 【北谷】復帰三十五年の節目を迎え、五月十三日に米軍嘉手納基地を「人間の鎖」で包囲する5・13嘉手納基地包囲行動実行委員会は二日、北谷町の北谷町商工ホールで結成総会を開いた。平和運動センターの崎山嗣幸議長ら幹事団体の各代表十人を共同代表に選出し、スローガンなど包囲行動の要綱を採択した。
 嘉手納基地の包囲行動は、沖縄サミット開催に合わせて行われた二〇〇〇年以来、七年ぶり四回目。要綱によると、五月十三日午後三時から、同基地の周囲約十七キロを約二万五千人で包囲する。
 スローガンは(1)PAC3やF22戦闘機の配備など嘉手納基地の基地機能強化の反対(2)辺野古新基地など県内の基地移設反対(3)普天間飛行場の早期閉鎖と返還(4)北部訓練場のヘリパット建設の中止の四項目。
 崎山共同代表は「三十五年前、県民は平和への復帰を望んだはずが、基地を取り巻く現状は機能強化などわれわれの望みに逆行している。米軍再編や平和憲法の改正を見過ごすわけにはいかない」と訴えた。
 社大、社民、共産、民主の各政党や連合沖縄など十団体で構成する実行委員会の幹事団体代表は「米軍のやりたい放題を認めない」「次の世代へ平和を残すために行動を成功させよう」とそれぞれ決意を表明した。
 総会には県内の労組や平和団体などから約五十人が参加。ガンバロー三唱で気勢を上げた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704031300_03.html

2007年4月3日(火) 夕刊 5面
高教組・沖教組「歴史歪曲 許さぬ」/「集団自決」修正
 文部科学省が二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦で日本軍が住民の「集団自決」を強制したとの記述の修正を求める意見を付けたことについて、高教組と沖教組は三日午前、県庁記者クラブで会見し、「子どもに直接かかわるものとして、政治的意図で進められた今回の歴史歪曲を絶対に許すことはできない」と強く抗議した。同日付で伊吹文明文科相あてに検定意見の撤回を求める抗議文を送付することを明らかにした。
 会見した松田寛高教組委員長、大浜敏夫沖教組委員長らは、大阪地裁で係争中の「岩波・集団自決」訴訟が検定理由に挙げられていることを「『未確定なことを断定的に記述しているところはない』という自らが課した検定基準を逸脱している」と指摘。「日本軍の直接、間接的関与を否定し、沖縄戦の悲惨な歴史を美化することが今回の検定意見の狙いだ」と批判した。
 その上で、「今回の検定結果は『戦争のできる国民』を学校からつくり出そうとする動きだ」とし、「歴史の真実を伝えることが教師の責務であると確信している。今回の検定意見を直ちに撤回するよう強く求める」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704031700_02.html

2007年4月3日(火) 夕刊 4面
県内の基地被害調査/英国日本研のグレン氏
 【名護】沖縄の米軍基地について研究している英国立日本研究所所長のグレン・フックシェフィールド大学教授(57)が二日、米軍普天間飛行場代替施設の移設予定地の名護市辺野古や大浦湾を訪れ、住民らから基地被害や代替施設移設への不安を聞き取りした。グレン教授は「県民は、日常の中に基地があることのリスクを感じているようだ」と話した。
 グレン教授は反対派市民団体のメンバーから説明を受けた。その後、辺野古で座り込みを続ける住民らから聞き取った。
 住民からは住宅地上空を飛ぶヘリへの不安などが相次ぎ、「外国への抑止力のために基地が必要だというが、県民は基地があるリスクを負わされていると感じている」と語った。
 グレン教授は十二日まで滞在し、基地所在市町村を回り、基地の視察や周辺住民を調査する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704031700_05.html

沖縄タイムス 関連記事(3月31日 3)

2007年3月31日(土) 朝刊 3面
防衛施設局、返還計画の遅れ報告
 那覇防衛施設局は三十日、在日米軍再編最終報告(ロードマップ)に明記された、嘉手納基地より南の六つの米軍基地・施設の返還に関する詳細計画の作成が、期限の三月内に間に合わなかったことを、関係市町村に正式に伝達した。
 岡田康弘施設部長が同日、六基地の所在市町村のほか、牧港補給地区の倉庫機能の移設先とみられる読谷村などを訪ね、経緯と現状を説明した。
 部分返還されるキャンプ瑞慶覧を抱える北谷町の野国昌春町長は「三月中に決まらなかったのは残念だが、(キャンプ瑞慶覧の返還部分の決定が)遅れるならば町の要望に沿って、細切れではなく、まとまった形の返還にしてもらいたい」と要望したことを明らかにした。同町長によると、施設局側は詳細計画の決定時期について「日米両政府間で調整の折り合いがついていないので、はっきりした時期は分からないが、そんなに長くは待たせないだろう」との見通しを示したという。
 施設局は従来、日米で正式決定する前に地元に説明する意向を示しており、作成時期の遅れを受けても、日米が詳細計画を正式発表する前に、地元に説明する方針は変えていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_09.html

2007年3月31日(土) 朝刊 3面
普天間移設/米総領事が発言補足
 ケビン・メア在沖米国総領事は三十日、米軍普天間飛行場の代替施設建設問題で「米側はすでに滑走路を可能な限り海側に位置することに同意している。米側はその位置に関する変更は可能ではないと思っている」との見解を発表した。
 代替施設建設問題でメア総領事は二十八日、記者団に対し、県や名護市が南西沖合側への移動を求めていることを踏まえ、「地元の意見に十分配慮し、できるだけ沖合に寄せる必要があると認識した上で移設計画を確定する」と表明。
 一方で「修正するという意味ではない」とも強調していた。総領事の同見解に対し、県や名護市は歓迎の意向を示している。
 県首脳は三十日、「二十八日の総領事の発言は、現地の米国政府機関の代表として、県内の空気を踏まえ、総領事の気持ちを表したものと理解し、こちらも『精神論的にはありがとう』という気持ちでとらえている。内容的には(二十八日の発言と)変わらない」との認識を示した。
 その上で「詳細な位置確定の過程で地元の意向を踏まえることについては、麻生太郎外相からも弾力発言が出ている。(日米で)総合的に努力されることを期待している」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_10.html

2007年3月31日(土) 夕刊 1面
乗員4人全員死亡/陸自急患ヘリ墜落
 救急患者を乗せるために向かった鹿児島県・徳之島付近で三十日夜、消息を絶った陸上自衛隊第一○一飛行隊(那覇)の大型輸送用ヘリコプターCH47は三十一日朝、徳之島北部の天城岳(五三三メートル)山頂付近に墜落し、大破、炎上した状態で見つかった。
 【東京】陸自第一混成団(那覇市)のCH47JAヘリが徳之島天城岳で墜落炎上した事故で、防衛省は三十一日未明から情報収集を続けているが、悪天候や事故の激しさなどから、現地からの情報収集に苦慮した。乗組員の確認などで情報が錯綜しており、現地の捜索、救難活動が困難を極めていることをうかがわせた。
 防衛省では「四人目」の乗組員発見をめぐって、情報が錯綜。同日午前八時三十八分、報道機関へ「四人目の乗員発見」と発表されたが、十時半の発表では一転、削除された。
 しかし、十一時十五分の報道機関へのブリーフィングでは「四人目は十時十五分に確認された」と再修正した。
 防衛省によると、遺体の損傷が激しく、ばらばらとなっていたために判別がつかず、「四人目」とされた遺体が「三人目」の遺体の一部だった可能性が指摘されていたといい、事故の激しさをうかがわせた。
 同八時十二分に「三人目」として発見、「重度のやけど、脈なし」とされた情報も「誤情報だった」として削除するなど、現地の捜索、救難活動の難しさを物語っていた。
154人車14台現地へ派遣
陸自那覇混成団
 急患出動中の陸上自衛隊のCH47大型輸送ヘリが徳之島の山中で消息を絶ってから一夜明けた三十一日、事態は「墜落」「四人死亡」という最悪の結果を迎えた。
 ヘリが消息を絶って以降、那覇市の陸自第一混成団には多数のマスコミが詰め掛け、渉外広報室は対応に追われた。
 ヘリ墜落の一報が入った三十日深夜から三十一日未明にかけ、同室には隊員が続々と出勤し、電話などで慌ただしく情報収集に追われた。
 報道陣も十人以上が詰め掛け、断続的に記者会見が開かれた。未確認情報が多く、「墜落の時間は」「現在のところ『墜落した模様』で墜落と確定したわけではありません」などと、緊迫したやりとりが交わされた。
 事態が動いたのは三十一日午前七時すぎ。全国ニュースで事故の詳細が報じられると、広報官が現状について話し始めた。記者から遺体発見について問われると、広報官は「遺体ではなく心肺停止だ」と否定。「遺族の感情を考えてほしい」と厳しい表情を浮かべた。
 その後、防衛省が出した文書を公表。最終的に「四人死亡」が確認され、関係者は肩を落とした。
 捜索活動のため、第一混成団は五回に分けて計百五十四人と車両十四台を現場へ派遣。ヘリ墜落後、午前二時五十九分にヘリで隊員十二人を現地に。次いで六時三十四分に二十一人を、八時二十二分と三十四分にも同様にヘリで隊員を派遣した。
 また、午前七時には隊員三十二人と車両十四台を載せた民間フェリーが出港し、午後四時に到着予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311700_01.html

沖縄タイムス 関連記事(3月31日 2)

2007年3月31日(土) 朝刊 26面
政府「軍命」隠滅か
 文部科学省は歴史教科書検定で、「集団自決」の記述を「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」として、各教科書会社に書き直しを命じた。「誤解」の主要部分は日本軍の関与の有無。だが、その変更理由の根拠は弱く、政府による「日本軍の関与」隠しと受け取られかねない検定結果となった。
 文科省が記述変更の理由に挙げたのは、係争中の民事訴訟の証言と学説状況の変化の二点。
 特に重視したと思われるのは、大阪地裁で係争中の訴訟での元戦隊長の証言。同省は「本人(元戦隊長)から軍命を否定する意見陳述がなされている」として、これまでの検定で認めてきた「日本軍によって強いられた」などの記述の排除に動いた。
 国自身が当事者ではなく、判決も出ていない訴訟での証言という不確定要素に加え、原告、被告双方からの意見ではなく、原告だけの主張を取り入れ、教科書に反映させる姿勢には疑問を抱かざるを得ない。
 これまで同省は、教科書検定では係争中の問題を断定的に扱うことを控えてきた。今回は自らこの姿勢を崩したことになる。
 文科省は早くも、四年後の次回検定について、状況の変化がなければ今回の基準を踏襲すると「宣言」した。
 一方で、教科書会社側も同省の意向を推測し、自主規制する傾向が強まっている。今回、日本軍「慰安婦」に関して、過去に検定意見が付いた「日本軍の関与」に触れた記述は申請図書段階からなかった。
 昨年の高校歴史教科書でも、採択率最大手の山川出版が申請段階での「日本軍の集団自決の強要」部分の記述を、最終的に自主削除する動きがあった。
 このため「軍命」を薄めることに成功した同省が、次回検定で沖縄戦のさまざまな実相についても否定的見解を示してくることが予想される。(社会部・金城雅貴)
文科省の見解
「バランス欠く」と判断
 「集団自決」への検定意見で文部科学省は、「軍命の有無」をめぐる論争につながる記述を廃していく方向性を明示した。「軍命があった」という通説に反論が出ている現状を踏まえ、「従来の説のみによる記述に検定意見を付さないとバランスを欠く」と判断した。
 「集団自決」の記述に検定意見を付した背景としては、沖縄戦をめぐる出版物で軍命を出したと批判された日本軍の元戦隊長が出版社を相手に提訴するなど、「軍命の有無」をめぐる論争が起きていることが挙げられる。文科省側は「カチッとした公的文書が残っておらず、現にそれが争いになっており、従来の片方の主張のみに検定意見を付さないとバランスが取れない」と説明する。
 「集団自決」をめぐる説の主な変遷を文科省は次のように認識している。
 「自決せよ」との軍命を初めて記述したのは沖縄タイムス社の「鉄の暴風」(一九五〇年)で、聞き取りを基に軍命があったというニュアンスで書かれた。これがさまざまな形で引用されるようになった。
 七〇年の「沖縄ノート」(大江健三郎氏)が、「鉄の暴風」を“孫引き”し、軍命を下したといわれる元戦隊長を批判した。
 これらに対し、七三年の「ある神話の背景」(曽野綾子氏)が軍命の真実性に疑問を投げ掛けた。また、座間味の「集団自決」に関する女性の証言を基にした「母の遺したもの」(宮城晴美氏)は、「いろんな理由があってそう証言せざるを得なかったが、それは誤りである」という内容になっているとする。
 こうした出版物を並べて、文科省は「軍命について説は判然としない」との結論を引き出した。
 他方、文科省の担当者は「軍命の有無よりも、日本軍の存在が『集団自決』にいや応なしに追い込んだ」とする著作物があることにも着目しているという。「狭い島で米軍が突然上陸し、守ってくれるはずの日本軍は兵力、装備がなく、住民は逃げ場を失った。住民が極限的な精神状態に置かれ、『集団自決』へと追い込まれたという点で、軍命の有無を超えた立場で記述されている著作物もある」としている。
[視点]
真実のわい曲許せず
600人死亡の惨劇消えぬ
 二〇〇五年六月、日本軍「慰安婦」問題を教科書から削除させる運動を続けてきた自由主義史観研究会が、次なる標的として、沖縄の「集団自決」に関する記述をあらゆる教科書や出版物から削除させる運動に着手した。その後、元軍人らによる「集団自決」訴訟、また家永教科書訴訟で国側証人だった作家曽野綾子氏が書いた「ある神話の背景」が再出版された。そして今年、高校歴史教科書検定は、「集団自決」における日本軍の関与を消し去ってしまうという新基準を示した。
 米軍上陸前から、日本軍は、住民に対して「女性は強姦され、男は戦車でひき殺される」というデマを流し、捕虜になる恐怖をたたき込み、厳重に保管していた手りゅう弾を「いざとなったら死ぬように」と配った。慶良間諸島の各地で住民が、口にする事実はまぎれもなく日本軍の関与を示している。
 沖縄戦の実相を象徴する「集団自決」。軍関与を否定する動きは、今後、沖縄戦全体を否定する動きにつながっている。
 有事の際の国民協力を定めた国民保護法の成立、防衛庁の省への格上げ。有事への備えは着々と整いつつある。その時に、銃後も前線もなくなり、当時の県民人口四分の一に当たる十二万人を失った沖縄戦の記憶、「軍隊は住民を守らない」という教訓は、今の日本には邪魔なだけだということを一連の動きは示している。
 「集団自決」を語る住民の言葉は重い。ある男性は、目撃した光景を、あたかも六十二年前に戻ったように語る。カミソリを持つしぐさ、首筋からの血しぶきがサーッと降りかかり、全身真っ赤になったこと。「目の前にその場面があるんです」。鼓動が乱れる、息をのみ、目には涙があふれている。身を削るように語り続けるのは、証言後は同じようにぐったりしていた母親が「生き残った者の使命だよ」という言葉があったからだ。
 慶良間諸島の「集団自決」では約六百人が亡くなった。死者の沈黙、家族を手にかけたゆえの沈黙、犠牲となった人数の数倍も数十倍も沈黙がある。その沈黙を利用して「集団自決」の真実をねじ曲げようとする動きを許すことはできない。(編集委員・謝花直美)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_03.html

2007年3月31日(土) 朝刊 27面
「集団自決」訴訟/「軍が手りゅう弾配布」
 【大阪】沖縄戦時に慶良間諸島で起きた住民の「集団自決」をめぐり、命令を出したとの記述で名誉を傷つけられているとして、当時の戦隊長らが作家の大江健三郎さんや著作出版元の岩波書店に損害賠償などを求めている訴訟の第八回口頭弁論が三十日、大阪地裁(深見敏正裁判長)であった。
 岩波側は、戦隊長側が軍命がなかった根拠の一つにする「『集団自決』は(親兄弟の)愛によって行われた」との曽野綾子氏の碑文が記された渡嘉敷島の戦跡碑に言及。
 「後ろに『海上挺進第三戦隊』とあるように部隊関係者が建て、碑文は隊員から頼まれて曽野氏が書いた」と指摘した。
 碑文の内容が記された渡嘉敷村教育委員会編さんの「わたしたちの渡嘉敷島」に「かねて指示されていたとおりに集団を組んで自決した」との記載があると説明し、軍命があったと主張した。
 また、座間味島の「集団自決」の際、村民に防衛隊員らから手りゅう弾が渡されたと指摘。「手りゅう弾は貴重な武器で、軍(隊長)の承認なしに村民に渡されることはないと考えられる」と強調した。
 部隊長側は、沖縄戦時下の慶良間諸島で日本兵が住民に「集団自決」を命令したことを示す米公文書が見つかったとの沖縄タイムス報道に反論。「文書は座間味でも渡嘉敷でもない慶留間島のものだ」と述べ、今回の訴訟とは無関係だと主張した。
 また、「一般的に『命令』を指す英語の動詞は『command』『order』などだが、文書にはより軽い意味の『tell』が使われている」と翻訳への疑問を提示し、証拠としての根拠が薄弱だと批判した。
 座間味島民の手りゅう弾保持と軍命の関係については「村民の証言から、多くの手りゅう弾が不発になっていたことが明らか。操作方法も教わっていなかった」と述べ、軍が村民に「自決」命令していない大きな証拠だとした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_04.html

2007年3月31日(土) 朝刊 26面
パラオ県人虐殺/国に調査徹底を要請
 【東京】アジア・太平洋戦争中の旧南洋群島パラオで、ハンセン病患者だった県出身男性が日本軍に殺害された問題で、裏付けとなる地元住民からの証言を入手した富山国際大学の藤野豊助教授は三十日、厚生労働省に対し、国による調査の徹底と被害者への謝罪などを求めた。厚労省側から具体的な回答はなかった。
 ハンセン病市民学会事務局長を務める藤野助教授は、今月十九日から二十一日までパラオ共和国で生存者からの聞き取り調査などを進め、施設に入所していた地元男性(86)から、県出身男性が殺害された事実を突き止めていた。
 厚労省健康局疾病対策課に対し、藤野助教授は「(南洋群島では)日本人も隔離され、殺害された犠牲者もいる。沖縄県とも調整し、早期に真相を究明してほしい」と要望。県出身男性の遺骨収集や慰霊、証言した地元男性への早期補償も求めた。
 厚労省は二十八日、ハンセン病補償法(今年二月改正)に基づき、南洋群島四島の施設も今年四月から補償対象に指定することを決めている。患者が死亡している場合は、補償金(一人八百万円)は支給されない。本人のみの請求期限は二〇一一年まで。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_07.html2007年3月31日(土) 朝刊 3面
参院本選/糸数氏、野党統一候補へ
 七月の参院選に向け、前参院議員の糸数慶子氏(59)の擁立を決めた社大党(喜納昌春委員長)は三十日までに、社民党県連(照屋寛徳委員長)へ選挙協力を要請、共闘に合意した。喜納委員長ら幹部は民主党県連(喜納昌吉代表)や共産党県委(赤嶺政賢委員長)、連合沖縄(仲村信正会長代行)らと相次いで会談して共闘を求める予定。糸数氏は週明けにも、野党統一候補として固まる見込みだ。
 社大党の喜納委員長らは二十七日、社民党県連の幹部に糸数氏を擁立した経緯を説明、選挙協力を要請。参院候補を社大党に委ねていた社民党は協力を決めた。
 社大党は四月二日までに、民主党県連、共産党県委、連合沖縄の代表者と相次いで会談する。各党・労組は糸数氏擁立を支持し、社大党の決定に委ねていただけに、糸数氏の野党統一候補が決定する公算が大きい。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_08.html

沖縄タイムス 関連記事(3月31日 1)

2007年3月31日(土) 朝刊 1面
「集団自決」軍関与を否定/08年度教科書検定
文科省「断定できず」/専門家「加害責任薄める」
【東京】文部科学省は三十日、二〇〇八年度から使用される高校教科書(主に二、三年生用)の検定結果を公表した。日本史A、Bでは沖縄戦の「集団自決」について、日本軍が強制したとの記述七カ所(五社七冊)に、修正を求める検定意見が初めて付いた。文科省は「集団自決」に関して今回から、「日本軍による強制または命令は断定できない」との立場で検定意見を付することを決定。これに伴い、各出版社が関連記述を修正した結果、いずれの教科書でもこれまで日本軍による「集団自決」の強制が明記されていたが、日本軍の関与について否定する表記となった。
 文科省は「最近の学説状況の変化」や大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟での日本軍元戦隊長の証言などを根拠に挙げているが、教科書問題に詳しい高嶋伸欣琉球大学教授は「合理的な根拠がなく、日本軍の加害責任を薄める特定の政治的意図が透けて見える」と批判。
 さらに修正後の記述についても「住民がどのように『集団自決』に追い込まれていったのか、実態がぼやけてしまっている」と指摘した。
 「集団自決」関連で検定意見が付いたのは実教出版(日本史B二冊)、三省堂(日本史A、B)、清水書院(日本史B)、東京書籍(日本史A)、山川出版社(日本史A)の五社七冊。
 いずれも検定前の申請図書では「集団自決」について「日本軍に…強いられ」「日本軍により…追い込まれ」などと記述、日本軍による強制、命令を明記していた。
 しかし検定意見書ではそれぞれ「沖縄戦の実態について、誤解するおそれのある表現である」との意見が付き、修正後に検定決定した記述では「集団自決」がどのように引き起こされたかがあいまいとなっている。
 今回の検定意見に至った経緯について文科省は「軍の強制は現代史の通説になっているが、当時の指揮官が民事訴訟で命令を否定する動きがある上、指揮官の直接命令は確認されていないとの学説も多く、断定的表現を避けるようにした」と説明。
 その上で「今回の検定から、集団自決を日本軍が強要した、命令したという記述については検定意見を付し、記述の修正を求めることとした」とし、来年度以降も同様の検定となる見通しを示した。
 昨年度まで検定合格した教科書についても各出版社に訂正を通知する予定だが、強制力はなく、各出版社の判断に委ねられるという。
 今回の検定意見について、検定に直接携わる「教科書調査検定審議会」からは否定的な意見は出なかったという。
[ことば]
教科書検定民間の出版社が編集した原稿段階の教科書(申請本)を、文部科学省が学校で使う教科書として適切かどうか審査する制度。学校教育法、教科書検定規則で規定されており、合格しないと教科書として認められない。学習指導要領に則しているか、範囲や表現は適切か、などを教科用図書検定調査審議会に諮って審査する。出版社は指摘された「検定意見に沿って内容を修正、合格した教科書は市町村教育委員会などの採択を経て、翌年春から使われる。検定対象の学校や学年は毎年異なり、各教科書の検定はおおむね4年ごとに行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_01.html

2007年3月31日(土) 朝刊 27面
沖縄戦 ゆがむ実相
 高校教科書に掲載された沖縄戦の「集団自決」の実態が国によって隠された。文部科学省は、今回の教科書検定で「軍命の有無は断定的ではない」との見解を示し、過去の検定で認めてきた「集団自決」に対する日本軍の関与を否定。関与を記述した部分の修正を教科書会社に求めた。同省が変更理由に挙げたのは「集団自決」をめぐる訴訟での日本軍の元戦隊長の軍命否定証言と近年の「学説状況の変化」。文科省の姿勢に、県内の関係者からは「沖縄戦の実相の歪曲」「殉国美談に仕立て上げている」と批判が出ている。
 沖縄戦研究者の吉浜忍沖国大助教授は「検定意見で日本軍の『集団自決』への関与がぼかされたが、軍隊が誘導したのが実態だ」と沖縄戦の実相を指摘する。その上で「国によって沖縄戦が書き換えられた。これまでの研究や調査を逆転させようという政治的意図を感じる」。
 「『新しい歴史教科書をつくる会』や『集団自決』訴訟の原告側支援者が文科省に内容の訂正を申し入れた結果だ」。大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判(「集団自決」訴訟)支援連絡会の小牧薫事務局長は、日本軍の関与を薄める内容に変更された理由を推測する。「今後、沖縄戦そのものが削除される恐れがある」と危惧する。
 沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会事務局長の山口剛史琉球大学助教授も「『集団自決』訴訟の事実認定と証人尋問がこれからという段階で、極めて一方的だ」と文科省の姿勢に首をかしげる。「被告側は逆に『軍命があった』という証拠を出して反証している。それを一切無視した形で、かなり意図的なものと言わざるを得ないと思う」と語る。
 法律家の三宅俊司弁護士は「学者が客観的調査で調べた事実があるのに、裁判で争いがあるからといって、教科書に出さないのはおかしい」と、軍命を否定した検定の在り方を批判する。「教育は事実を教え、それを評価できる能力を育てることのはず。これでは思想統制だ。国民の教育権を侵害することになる」
 沖縄歴史教育研究会の代表を務める宜野湾高校教諭の新城俊昭さんは「『強制』という軍の関与を示す言葉が抜けると、住民が自ら死んだという殉国美談になる」と懸念する。「学校現場では沖縄の実相を教えることが難しくなると思う。それだけに今後はますます教師の技量が問われることになる」と指摘した。
 林博史・関東学院大教授(現代史)は「当日に部隊長が自決の命令を出したかどうかにかかわらず、全体的に見れば軍の強制そのもので、これを覆す研究は皆無といえる」と指摘。八○年代の教科書検定以降、「各教科書は、研究成果を踏まえて軍に強いられた自決であることを書いてきた。それを今回は、日本軍による加害性を教科書から消し去ろうとした。事実をあいまいにする政治的なひどい検定だ」と批判した。
「あれは軍命だった」
座間味・戦争体験者ら怒り
 沖縄戦時下、日本軍の軍命と誘導による「集団自決」で百七十七人が亡くなった座間味村では、軍の関与を削除した検定に怒りの声が上がった。
 日本軍と米軍の攻撃の中に取り残された中村一男さん(73)の家族は、日本軍に配られた手りゅう弾で「集団自決」を決行しかけた。「日本軍は各家庭に、軍が厳重に保管していた手りゅう弾をあらかじめ渡し、米軍の捕虜になるぐらいなら死になさいと話していた」とし、軍命否定は「歴史を歪曲することだ。私たちが戦争体験を語るのは事実を伝え、むごい戦争を二度と起こさないため。(国は)事実は事実として後世に伝えてもらいたい」と話した。
 集合場所とされた忠魂碑前へ向かうが断念、その後も「集団自決」しようとする家族を止めた宮里薫さん(74)は「書き換えで、軍命でなくなったのはおかしい。あれは軍の命令だった」と憤った。
 「僕の家族にも一発の手りゅう弾があった。軍のものだから、民間が勝手に取ることはできず、渡されたのは住民は死ねということだ。軍命がないというのは、住民の実感に合わない」と批判した。
軍関与削除「喜ばしい」/戦隊長側、法廷で発表
 【大阪】沖縄戦時に慶良間諸島で起きた住民の「集団自決」をめぐる訴訟の第八回口頭弁論で、戦隊長側の代理人が、三十日夕に文部科学省が公表した教科書検定の内容を法廷で事前に“発表”する一幕があった。識者からは「見過ごせないルール違反だ」との声が上がっている。
 代理人は口頭弁論終了間際の午後二時前、「本日、文科省が検定意見を付し、多くの教科書がこれに応じて記述を修正したと聞いた」と述べた。
 今回の教科書検定で、文科省が「日本軍による」など「集団自決」の主語を削除するよう教科書会社に求めたことを指摘。「真実が明らかになり、正しい記述がされるのは喜ばしい」とし「本件訴訟でもそのことを法廷で判決すべきだ」と述べた。
 裁判を傍聴した琉球大の高嶋伸欣教授は「一般の傍聴者がいる法廷で、社会的ルールを二の次にした行為だ。裁判と検定がなれ合った状態を看過できない」と批判した。

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