月別アーカイブ: 2007年5月

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(5月2日、3日)

F15事故「欠陥機の証明」 嘉手納基地周辺3首長

けん引されて移動する前脚が折れて事故を起こしたF15戦闘機=1日午後5時38分、米軍嘉手納飛行場

 【中部】1日午前、米空軍嘉手納基地で起きたF15戦闘機の事故。相次ぐトラブルに基地周辺の首長は「F15は撤去してもらうしかない」「危険な状態は変わりない」と基地と隣り合わせの危険性をあらためて強調した。
 宮城篤実嘉手納町長は「飛び立つ前に大事に至らずに済んだ」と前置きしながら「F15は欠陥機ではないかという疑いがあり、そういう機種が主力戦闘機として置かれている。危険な状態は変わりない」と嘉手納基地の危険性を強調した。同町は午後、米軍に機体の整備点検と安全管理を徹底するよう申し入れた。
 野国昌春北谷町長は「今回の事故は人的な被害がなかったとはいえ、周辺の住民に不安を与えたのは間違いない。F15は撤去してもらうしかない」と強調し「事故は老朽化が進んでいる証拠であり、欠陥機だということを自ら証明しているようなものだ」と厳しく指摘した。
 東門美津子沖縄市長は「事故があるたびに再発防止と安全管理の徹底を強く申し入れてきたが、改善がみられない。緊張感が足りないのではないか。今後、市民に不安を抱かせないよう航空機整備の徹底をはかり、絶対に事故を起こさないよう強く要望する」とのコメントを発表した。
(5/2 9:56) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23447-storytopic-1.html

沖縄タイムス 社説(2007年5月2日朝刊)

[「集団自決」調査]

住民証言が軍関与裏付け
 文部科学省の教科書検定で、高校歴史教科書の沖縄戦をめぐる記述から、「集団自決」への日本軍の関与が削除された。一般住民による「集団自決」は沖縄戦の特徴だ。沖縄戦の実相を根本から揺るがす問題だけに大きな波紋を広げている。

 本紙が県内四十一市町村長を対象にした緊急アンケートで、回答した三十六人のうち三十二人が今回の検定結果に「反対」と答えた。四人は「どちらともいえない」とした。「賛成」と答えた首長はいなかった。

 ほとんどが記述削除を疑問視している。当然の結果だろう。数多くの住民証言が残された中で、沖縄戦の記憶をどう継承していくのかが、ますます重要で差し迫った課題になってきた。

 各市町村長は政治的な立場を超えて強い懸念を表明した。沖縄戦での「集団自決」は、住民の証言・記録を踏まえ大方の共通認識になっている。

 教科書検定では、「集団自決」について日本軍が強制したとの記述七カ所(五社七冊)に修正を求める検定意見が付いた。日本軍による「集団自決」の強制が明記されていたが、日本軍の関与を否定する表記となった。

 今回の検定意見に関して、文科省は「最近の学説状況の変化」や大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟での日本軍元戦隊長の証言などを根拠に挙げ、集団自決を日本軍が強要、命令したという記述について修正を求めた。

 これに対し、検定意見を疑問視する市町村長らは「記述削除は沖縄戦の実相を隠すもので、国民へ戦争への正しい認識を与えない」「歴史の真実が政治や政府によってゆがめられ、国の将来に大きな危惧を抱く」と懸念する。

 また、「住民の証言がある。軍の関与がなかったとはいえない」「軍関与の事実はさまざまな証言からも明らかだ」「軍の自決強要は証言で明らか。歴史を曲げた教科書による教育はおかしい」と、軍関与を否定する見解を住民の証言を根拠に批判している。

 沖縄戦の事実を率直に語り継ぐことの重要性を強調する意見も目立つ。

 県内には多くの沖縄戦体験者がおり市町村長らの警鐘は県民の声を代弁したものといえる。激しい地上戦に住民が巻き込まれ、死んでいった沖縄戦を象徴する、非戦闘員の「集団自決」の事実を矮小化してはならない。

 沖縄戦の記憶をめぐる問題は、教科書検定や「集団自決」裁判の問題につきるわけではない。愛国心がことさら強調され、「集団自決」を殉国の美談に仕立てる動きが広がる中で、県民が沖縄戦をどう位置付け、後世に語り継いでいくかが厳しく問われている。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070502.html#no_1

沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 1・27面
改憲賛否20対19/県議会議員
9条改正27人反対/きょう憲法施行60年
 施行六十年の憲法記念日を前に、沖縄タイムス社は県議会議員を対象に、憲法改正に関するアンケートを実施した(四十八人中、四十六人が回答)。「改正するほうがいい」との回答は二十人、「改正しないほうがいい」は十九人で、ほぼ拮抗している。改正賛成は二〇〇五年の調査に比べ六人減、改正反対は同数だった。一方で、基本原則を守るとする加憲などが七人に増え、全体的に慎重な考えを示す県議が目立つ結果になった。

 焦点になっている九条については、与党八人を含む「改正反対」が二十七人(前回二十六人)で、「改正賛成」の十二人(同二十一人)を大きく上回り、与党を含め「九条改正」に対する反対意見や慎重論などの抵抗感が県議会内で根強いことが明らかになった。

 「憲法改正に賛成する理由」(複数回答を含む)で最も多かったのは、「新しい権利、義務を加えるべきだ」が十七人。次いで「自衛隊の位置付け、役割を認めるべきだ」が十二人で、自衛隊の現状との乖離の是正や国際貢献の明記を求める声が相次いだ。「集団的自衛権を認めるべきだ」は四人。制定過程を問題視した「押し付け憲法だから」は二人だった。

 「憲法改正に反対する理由」(複数回答を含む)では、十一人が「平和の理念があり、世界に誇る平和憲法」を挙げ、平和主義を基本原則とした現行憲法の理念を強く支持。次に、「集団的自衛権の行使が認められ、軍事国家になる危険性がある」が七人で、現憲法が軍事同盟強化の歯止めになっているという認識を示した。「改悪の恐れがある」「大多数の支持を得て、社会に根付いている」がそれぞれ三人だった。

 憲法九条で禁じられている集団的自衛権について、政府が有識者会議で解釈変更の検討に着手する方針を示したことについて、反対を表明したのは二十六人で、慎重検討を含む賛成は十六人を上回った。与党・中立会派の「反対だが、検討必要」と答えたのは五人、公明の三人は「政府解釈見直しなら反対」を表明した。

改憲 参院選の争点に

 日本国憲法は三日、施行六十年を迎えた。この間一度の改正もなかったが、安倍晋三首相は在任中の改憲実現を目指す考えを表明、夏の参院選でその是非を問う構えだ。改憲手続きを定める国民投票法案も今月中の成立が確実。憲法改正が現実の政治課題となり、国民一人一人が真剣に向き合わなければならない時代に入りつつある。

 今後の憲法論議は、国民投票法成立を受け参院選後の臨時国会で両院に設置される憲法審査会に主舞台が移る。三年間は改憲案の提出、審査は凍結され、現行憲法の問題点などの調査が進められることになる。首相は改憲の必要性を訴える一方で、集団的自衛権行使に関する政府の憲法解釈見直しにも意欲を見せており、参院選ではこの点も争点になりそうだ。

     ◇     ◇     ◇     

平和憲法「世界に届け」/9条の会アピール

 三日の憲法記念日を前に県内の「九条の会」十団体が二日、「日本国憲法9条で21世紀に平和な世界を」と訴える初の共同アピールを発表した。

 アピールは、改憲手続きを定めた国民投票法案が衆議院を通過したことを踏まえ、「憲法九条がなければ、日本軍はベトナムやイラクで参戦していただろう」と指摘。国際社会で武力によらない平和構築が求められる中、「憲法九条を持っているわが国こそ、そのもう一つの道を世界に指し示すことができるのではないでしょうか」と九条の世界的可能性に言及した。

 県庁記者クラブで会見したネットワーク九条の会沖縄の世話人で、大学人九条の会代表の高良鉄美琉球大学大学院教授は「九条は国際的にも認められ、時代の先を行くもの。改憲したら『なぜ変えた』と私たちは責任を問われる」と、九条の意義を強調した。

 また、同席した「はえばる九条の会」の金城義夫会長が、南風原の九条の碑が近々完成することを明らかにし、慰霊の日の来月二十三日までに一般公開したい、とした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_01.html

沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 27面
沖縄戦歪曲 抗議の声を/来月9日 県民大会
 教科書検定で、高校歴史教科書から沖縄戦「集団自決」記述に関する日本軍の関与が削除された問題で、労組や市民団体は六月九日、那覇市の県民広場で五千人規模の県民抗議大会を開く。高教組(松田寛委員長)と沖教組(大浜敏夫委員長)、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(共同代表・高嶋伸欣琉大教授ら)が二日夕、那覇市の教育福祉会館で開いた「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会」実行委員会の準備会で確認した。

 大会を契機に六月県議会で文部科学省へ修正意見の撤回を求める意見書を採択してもらい、教科書会社が軍関与を記述した申請時の教科書に戻すことを求めていく。準備会には約三十の労組や市民団体、野党県議らが参加した。

実相否定に批判

 準備会では、三月三十日に公表された検定意見について、「日本軍による」という主語をなくし、住民の「集団自決」を犠牲的精神の表れと位置付けて沖縄戦の実相を否定するものだ、と文科省を批判する声が相次いだ。

 参加者は「戦争の本質を覆い隠す教科書が全国の子どもたちに渡ることは許さない」と強調。教科書製本の日程上、書き換えはまだ現実的に可能だとして、県民に広く訴えていくことを申し合わせた。

与党に呼び掛け

 また、市民団体や労組だけの運動では限界があるとして、県政与党の自民党と公明党にも参加を呼び掛けていくことを決めた。

 県議会が、一九八二年に文部省(当時)が「住民虐殺」記述を削除しようとした動きに対し、同年九月に臨時議会を開き意見書を全会一致で採択。記述復活に道筋を付けた経験を踏まえ、同様の対応を求めていくことにした。

 意見書採択後は県議会としての要請団を組織して、政府に要請してもらう考え。

 一方、申請時の文章に戻すことを求める文科相あての署名活動にも取り組み、県内で二十万票を目標にする。

那覇議会審議へ

 教科書検定で歴史教科書から沖縄戦の「集団自決」で日本軍の関与が削除された問題で、那覇市議会(久高将光議長)は十五日に臨時議会を開き意見書について審議する。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_02.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(5月1日、2日)

沖縄タイムス 2007年5月1日(火) 朝刊 1面
国民保護計画策定3割 県内市町村
全国の3分の1
 戦争やテロなど有事の住民避難に備える国民保護法制で、国が目標とした三月末までに国民保護計画を策定したのは県内で十三市町村と、全体の三割にとどまることが分かった。全国の九割に比べると、慎重さが目立つ。国や県への協力が義務付けられる民間の指定地方公共機関は、全体の六割に当たる十五法人が国民保護業務計画を作成した。当初指定に難色を示した民放も、五社のうち二社が作成した。

 計画を策定した十三市町村のうち、離島があるうるま、本部、渡嘉敷、座間味、粟国、南大東、伊是名、久米島の八市町村はすべて、全島民の島外避難を想定。米軍牧港補給地区を抱える浦添市は、「基地従業員や米軍人・軍属の家族が基地外に避難の場合、迅速な対応が課題」とした。

 米原子力潜水艦が寄港するホワイトビーチや石油コンビナートがあるうるま市は、避難の準備から実行、復興まで段階ごとのマニュアルを独自に添付した。避難所では通常の食料に加えて離乳食やおかゆも用意、遺体安置に備えてひつぎやドライアイスを準備するなど、詳細に定めている。

 このほかに那覇市、糸満市、南城市、嘉手納町が国民保護計画を策定した。策定していない二十八市町村のうち、宜野湾、石垣、沖縄、読谷、北中城の五市村では前提となる条例も成立しておらず、時期のめどが立たない。

 一方、指定地方公共機関では県医師会、沖縄ガス、琉球エアーコミューター、海運八社、県トラック協会、沖縄セルラー電話が国民保護業務計画を作成し、県に報告した。

 警報の放送が義務付けられる民放五社のうち、沖縄テレビ放送とFM沖縄も計画を作成。いずれも民放連のモデルに沿って、「いかなる緊急事態にあっても市民の基本的人権および知る権利を守り、自由で自律的な取材・報道活動を貫く」と明記した。特に沖縄テレビは独自に「多くの住民の犠牲が出た沖縄戦の反省」を盛り込んだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705011300_01.html

沖縄タイムス 2007年5月1日(火) 朝刊 2面
普天間移設 反対決議を撤回へ/辺野古区
 【名護】米軍普天間飛行場移設予定地、名護市辺野古区の大城康昌区長は四月二十九日、区の最高意思決定機関である同区行政委員会(宮城利正委員長)に対し、一九九九年に代替施設のヘリポート陸上案と埋め立て案に反対した決議について撤回するよう提案した。同日の二〇〇七年度区民総会で明らかにした。反対決議の撤回を同区区長が明言したのは初めてで、行政委で決議が撤回されれば、移設作業にも影響を与えるとみられる。

 大城区長は、名護市がV字形滑走路案に合意し、市や県が同案を基本に進めている現状を指摘。「一九九九年の反対決議は現状にそぐわなくなっており撤回する」と話した。その上で「反対決議を撤回するからには、久辺三区や二見以北十区がこれまで求めてきた、(地域活性化事業などの)条件をしっかり実現してもらわなければいけない」として、名護市と協議して、国に振興策などを要望していく考えを示した。総会には、区民約二百四十人が参加したが、特に異論は出なかったという。

 五月から新役員体制になる行政委は、区長の方針を受けて近く決議撤回に向けて審議する予定。宮城安秀副委員長は「区長が出した方針であり、行政委としてはそれを全面的に支援していくことになると思う」と話し、決議撤回という区長の方針を支持する姿勢を見せている。

 県が普天間飛行場の移設候補地に、辺野古区を最有力候補としていた九九年九月、同区はヘリポート建設による危険性の増大や騒音被害の拡大、環境破壊への影響を懸念して、陸上案と埋め立て案の両案に反対する決議をした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705011300_04.html

沖縄タイムス 2007年5月1日(火) 夕刊 1面
F15移動中前脚折る 嘉手納
基地報道部「調査中」
 【嘉手納】米軍嘉手納基地で一日午前十時ごろ、同基地所属のF15戦闘機一機が同基地滑走路に向けて移動中に前輪脚(ノーズギア)が折れ、機体前部を滑走路に付けて停止した。事故原因など詳しい状況は不明。午後一時現在、同基地報道部は「事故による滑走路閉鎖はない。原因は調査中」としている。

 消防車などの緊急車両が行き交ったほか、迷彩服姿の約三十人の米兵が機体を取り囲んで作業するなど、現場は緊迫した雰囲気に包まれた。目撃者によると、午前十一時十分ごろに同機のものとみられる折れたノーズギアやタイヤを運ぶ様子が確認できた。

 同機は午前十時すぎ、南側滑走路東側の待機場所に向かう際、事故を起こした。事故後、操縦士一人が機体を降り、他の米軍要員とともに機体周辺で待機。約五分後、消防車など数台が周囲を取り囲み、迷彩服を着た米軍要員約三十人が周辺で機体を見守っていた。

 事故当時、南側滑走路の待機場所には四機のF15戦闘機が待機していたが、約十分後、離陸を取りやめ、格納庫へ戻った。

 事故直後にKC135空中給油機やF15が離着陸した。同基地に一時配備中の最新鋭のステルス戦闘機F22四機も同十時五十分ごろ離陸した。

 嘉手納町は同基地に事故原因など詳細を問い合わせており、「事実関係を確認後、今後の対応を検討したい」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705011700_03.html

米F15前輪折る 滑走路へ移動中前のめり

前のめりになった状態で止まったF15戦闘機。機体の周辺には米兵が集まった=1日午前11時5分ごろ、嘉手納基地

 1日午前10時すぎ、米軍嘉手納基地で、離陸のため駐機場から滑走路に向かって移動していた同基地所属のF15戦闘機が、滑走路手前の東側で前輪が折れ、機首部分を路面に接触させて前のめりの状態で停止した。緊急車両数台が機体周辺に駆け付け、操縦士を救助した。原因は不明。午後零時15分現在も、機体はそのままの状態で置かれている。
 嘉手納飛行場は現在、北側滑走路が補修中のため、南側滑走路一本だけが使用可能になっている。事故後も他のF15は離陸している。
 目撃者によると、滑走路東側で離陸前の最終点検をしたF15が滑走路方向に進んでいる途中で前のめりの状態で停止した。消防車両を含む緊急車両数台が駆けつけ、一時は騒然となった。
 操縦士は緊急車両で駆け付けた救助員によって救助されたが、けがをした様子は確認されていない。機首の接地で火災などは発生していない。
 事故機は昨年の機種更新で同基地に配備されていた。1984年製とみられる。
(5/1 16:03) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23435-storytopic-1.html

沖縄タイムス 2007年5月2日(水) 朝刊 23面
「F15は欠陥機」怒り/周辺首長撤退要求
 【嘉手納】米軍嘉手納基地で一日午前、前輪脚(ノーズギア)を折り、機体前部を滑走路上に付けたままで停止したF15戦闘機の事故で、事故機は同日午後五時五十分ごろ、けん引され格納庫に入った。相次ぐF15戦闘機のトラブルに同基地に隣接する沖縄市、嘉手納町、北谷町の首長は一斉に反発。「あらためて撤退を訴えていきたい」などと怒りをあらわにした。

 F15戦闘機は昨年一月に伊計島沖に墜落したほか、同三月と八月にはフレア照明弾を誤射。同五月には着陸時に滑走路から外れ、脇の緑地帯に突っ込んだ。米空軍F22Aラプターと空自の共同訓練が実施された四月二十八日にも緊急着陸した。

 多発するF15戦闘機の事故。地元、嘉手納町の宮城篤実嘉手納町長は「さまざまなトラブルを発生させている戦闘機が嘉手納基地に常駐している現状は、地域に不安を与えている」と指摘。今回の事故については「離陸する直前に故障が分かり、地域に被害を与えるという大事には至らずに済んだが、今後もF15の撤退を訴えていきたい」と述べた。

 「F15は欠陥機」と憤る野国昌春北谷町長は「もし離陸後に発生していたら大きな事故につながっていた」と話した。

 東門美津子沖縄市長は「これまでにも事故が発生するたびに再発防止と安全管理を徹底するよう強く申し入れてきたが改善が見られない。緊張感が足りないのではないか」と批判した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705021300_03.html

沖縄タイムス 2007年5月2日(水) 朝刊 23面
投票法に反対声明/9条の会沖縄
 憲法「改悪」に反対する市民団体「第9条の会・沖縄うまんちゅの会」は一日、県庁で記者会見し、憲法改正手続きを定める「国民投票法」の制定に反対する声明を発表した。同法案は今国会で成立する見通し。共同世話人代表の安里要江さんは「日本が再び戦争をしないためにも平和憲法を守らなければならない」と訴えた。

 声明では与党が衆院で審議を十分尽くさないままに強行採決したことを批判。「戦争をやれる国」へと日本を変えようとしていると強く抗議した。

 同法が制定された場合、「与党の計画通りに憲法改悪が強行される。基地の島沖縄が侵略戦争の出撃基地としてますます強化されていくことは火を見るより明らかだ」と指摘。「いまこそ全国民が憲法改悪・国民投票法制定反対の声を上げるべき時だ」と訴えている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705021300_10.html

「普天間」は合意通りに 日米安保協議委

 【東京】日米安全保障協議委員会では1日、2006年5月に合意した在日米軍再編の最終報告(ロードマップ)に沿って、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設など米軍再編を着実に進めていく意向を再確認した。
 普天間飛行場代替施設の滑走路に関し、名護市や県が沖合へ寄せるよう求めている修正について言及はなかった。米軍普天間飛行場の危険性除去に関する抜本的な解決策にも触れられなかった。
 目標の14年までに普天間飛行場代替施設を完成させることが、在沖米海兵隊のグアム移転や嘉手納飛行場より南の施設返還など再編全体の成功の「鍵」になることも強調された。
 共同発表では合意後、1年間の取り組みが進展として評価された。評価事項として挙げられたのは(1)2006年6月、日米合同委員会内に在日米軍再編総括部会を設置(2)普天間代替施設の環境現況調査開始(3)在沖米海兵隊のグアム移転に向けた協力―など。
 グアム移転に関しては(1)米国の環境影響評価手続きの開始(2)国際協力銀行(JBIC)が資金の出資などの業務を行う米軍再編推進法案の国会提出―などが掲げられた。
 さらに、1996年に合意された日米特別行動委員会(SACO)の最終報告に関し、06年9月の瀬名波通信施設、同年12月の楚辺通信施設、読谷補助飛行場の返還が進展したとして評価された。
(5/2 9:47)  琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23441-storytopic-1.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月30日)

沖縄タイムス 2007年4月30日(月) 朝刊 1・21面
軍関与削除、9割反対 本社が市町村長アンケート
賛成ゼロ懸念強く 
 文部科学省の教科書検定で、二〇〇八年度以降に使用する高校歴史教科書の沖縄戦記述から、「集団自決」への日本軍関与が削除されたことについて、沖縄タイムス社が実施した緊急アンケートで回答した三十六市町村長のうち三十二人(約九割)が検定結果に「反対」と考えていることが分かった。四市町村長が「どちらともいえない」としたが、「賛成」はゼロだった。日本軍に「集団自決」が強制された沖縄戦の実相がゆがめられようとする動きに対し、多くの首長が強い懸念を示している。

 アンケートは二十五日から二十九日にかけ、県内四十一市町村長を対象に実施。海外出張中の南城市長と北中城村長、「回答しない」とした嘉手納町長、粟国、多良間両村長以外の三十六人から回答を得た。

 検定結果について、三十二人が検定結果に「反対」と回答。「現場にいた住民たちの証言が残っており、強制は明らか」「戦争の醜い部分を覆い隠そうとしている」「事実は事実として、きちんと記述すべきだ」「歴史を曲げた教科書で、子どもたちに教育するのはおかしい」と日本軍関与の記述削除に強く反発した。

 うるま、西原、国頭、伊江の四市町村長は「どちらともいえない」としたが、「真実を教えるのが教育だ」「事実に基づいた記述であってほしい」などと沖縄戦の実相を正しく伝えるよう求めている。「本土とは認識の落差がある」との指摘もあった。

 教科書検定の結果については、仲井真弘多知事が十三日と二十日の定例記者会見で言及。この中で、「これまで明記されていたことが削除・修正されたことは遺憾である」との認識を示し、「沖縄戦をきちんと検証し、教科書に公正かつ正確に記述していただきたいと考えている」と述べた。

     ◇     ◇     ◇     

沖縄戦風化 悩む首長

 「若い世代に、平和に対する意識が薄れつつある」。沖縄タイムス社が実施した市町村長緊急アンケートで、沖縄戦の体験について「継承されている」と答えたのは回答者の四割にとどまり、「されていない」は、「不十分」を合わせると半数を超えた。平和行政を推進しつつも沖縄戦の風化に悩む姿が浮き彫りになり、学校での平和教育の重要性が指摘された。「『集団自決』や『従軍慰安婦問題』などアジア諸国との歴史研究で、平和の連携を深めるべきだ」と建設的な意見もあった。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704301300_01.html

沖縄タイムス 2007年4月30日(月) 朝刊 20面
不発弾保管庫限界に/海洋投棄禁止条約受け
 海洋汚染を防止する「ロンドン条約九六年議定書」に伴い、不発弾の海洋投棄が今年四月から禁止されている。自衛隊は禁止後、米軍キャンプ・シュワブで陸上処理のみを行っている。二〇〇六年度の海洋投棄と陸上処理の割合は六対四。二、三月にほぼ処理したものの、四月以降、すでに読谷村の保管庫は約三分の一が埋まっている。同隊は「あと二カ月ほどで倉庫がいっぱいになるのでは」と懸念している。

 環境省と防衛省は、自衛隊が撤去した不発弾の最終処分を民間業者へ委託する方針で、防衛省広報は「委託する民間企業の決定は、今年の後半以降。業者も県内か県外かは未定」と話した。

 民間委託に伴い、「県民の手による不発弾の最終処分を考える会」は、最終処分をNPО事業が行い、その資金を難病を抱える子どもたちを救うために使いたいと提案。

 同会の具志堅隆松事務局長は「沖縄の戦後処理をすることによって医療支援を目指したい。費用は日本、米国が技術、沖縄が作業と分担したい」と命を助ける共同作業を提唱している。今後、県議会へ陳情書を提出することにしている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704301300_06.html

沖縄タイムス 2007年4月30日(月) 朝刊 20面
「警報も鳴らず突然」/首里壕生存者遺族と対面
 沖縄戦当時、首里の地下にあった日本軍壕の落盤から生き残った沖縄の民間人女性と日本兵の遺族が二十九日、初めて対面。遺族は、落盤の様子や最期の姿に聞き入った。戦没者の遺品や遺骨を収集し遺族に届ける活動をしているNPO法人「戦没者を慰霊し平和を守る会」(佐賀)などが仲介した。

 戦況が厳しくなった一九四五(昭和二十)年五月二十、二十一日、首里当蔵の地下に造られた第三十二軍電波警戒隊の壕が米軍の艦砲射撃で落盤。隊長の赤尾茂大尉はじめ多くの人が命を落とした、という。

 落盤から生き延びたのは電話交換手をしていた伊豆味栄子さん(84)と石川清子さん(84)、赤尾大尉の宿舎になっていた家の娘だった宮里遥子さん(78)=いずれも那覇市。

 石川さんは二十日、座って休憩していたときに落盤、顔は埋まらなかったため、助け出されたという。隣で横になっていた同僚は即死状態だった。石川さんは「警報なども鳴らず、突然サーっと土が崩れ落ちた」と、生々しく話した。

 伊豆味さんは二十一日、勤務中に落盤。兵隊二十二人とともに土を掘り、二日後に脱出した。「奥には、たくさんの兵隊さんがいたはずだが…」と振り返った。宮里さんは、母親から聞いた落盤で赤尾大尉が倒れる様子を話した。

 赤尾大尉の娘の入部澄代さん(70)=鹿児島県=は、じっと黙って三人の話に聞き入っていたが「皆さんに会えて、父の話を聞けてよかった」とほっとした様子。

 同NPOは、赤尾隊の壕を特定し遺骨収集につなげるため、二十九日、首里城周辺で電気探査などを行った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704301300_08.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月30日朝刊)

[憲法世論調査]

「九条」見直しに警戒感

なぜ「集団的自衛権」か

 憲法改正については「必要ない」(46%)とする人が「必要ある」(43%)を上回り、平和憲法の理念である九条は「改正すべきでない」(56%)が「改正すべき」(24%)の二倍以上に上ることが分かった。

 本社世論調査からは、改正論議に理解を示しつつ日本国憲法の「平和主義」の柱である九条「見直し」には警戒感が広がっていることが読み取れる。

 井端正幸沖国大教授が指摘するようにNHK、読売新聞などの調査でも「非改正派」が増えており、県民意識は同一線上にあると考えられる。

 これは安倍政権になって加速する改憲論議に、国民が慎重さを求めているとみていいのではないか。

 復帰して三十五年。県民意識の上で「本土化」が進んだのは確かだ。

 だが、県民には日米両政府が約束した「負担軽減」より、「機能強化」が目立つ在沖米軍基地の存在が改憲論議と重なるのも間違いあるまい。

 注目すべきなのは、「戦争放棄、交戦権の否認、戦力不保持」を唱える九条について「改正すべきでない」とする声が「改正すべき」を二倍以上も上回っていることだ。

 自衛隊の認知度については、災害復旧活動や救急医療搬送などで高まってきているのはいうまでもない。

 任務についても、憲法の範囲内で認められた「専守防衛」の枠内での行動形態が容認されたといっていい。

 だが、防衛庁が「省」に格上げされ、今また国民的な論議もないまま有識者だけで「集団的自衛権」の解釈改憲に取り組もうとする安倍晋三首相の姿勢は「まず九条の改正ありき」で突き進んでいるようにしか見えない。

 日米軍事同盟の強化が背景にあり、米軍に対する支援、協力をしやすくするための解釈改憲であるのは確かだ。

 九条で禁じられている集団的自衛権の行使について51%が「使えない立場を堅持する」と答えたのは、拡大解釈の動きに対する懸念だと言えよう。

 一方で「憲法解釈で使えるようにする」が24%、「九条を改正して使えるようにする」も15%あった。これは県民意識の変化と言うこともでき、その意味で注視する必要があろう。

「投票法案」は拙速避けよ

 衆議院で与党単独採決され参院に送付された国民投票法案与党修正案は、憲法を改正するための手続きを定める法律だ。

 しかし、法案の趣旨がきちんと国民、県民に浸透しているかどうか、疑問と言わざるを得ない。

 罰則規定はないが、特殊法人職員や公務員、私立学校教員などの「便益を利用した(憲法改正をめぐる)運動の禁止」規定は、国民として憲法をどう考えるのかに網をかぶせるものにはならないのかどうか。

 同法案を「早く定めるべきだ」としたのは七十代の29%が最も多かった。低いのは五十代の23%にすぎない。

 全年代で20%台だったのは「憲法改正論議が不十分」(全体で54%)というのが最大の理由であり、国民の理解を得ていない証しと言えよう。

 つまり七割もの人が法案に疑問を呈しているのであり、その意味を政府はきちんと分析する責務があろう。

 この問題では安倍内閣の支持層でも「(論議が)十分でない中で決める必要はない」が49%。自民支持層でも「早く決める」と「決める必要はない」が45%と同率だった。

 ここは性急に事を運ばず、国民の声に耳を傾けながら国会でもしっかりと論議することが求められているのだということを自覚してもらいたい。

「平和主義」の理念守れ

 沖縄は一九七二年の復帰から現在まで、約束された米軍基地の整理・縮小がほとんど進んでいない。

 普天間飛行場と同じように県内移設条件付きの返還が多いためで、九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で返還合意された十一施設のほとんどがなお滞ったままだ。

 安保条約を肯定し自衛隊容認派が増えたことで、県民意識が変化してきたのは事実である。

 だが、だからといって「戦争放棄」をうたう九条を守る意識に変化が生じたわけではない。

 むしろ沖縄戦に続く二十七年間の米軍支配、復帰後も存続する巨大基地が逆に憲法の必要性を意識させていることを忘れてはなるまい。

 県民の思いは憲法の平和主義の理念に込められているのであり、その意義をこれからも大切にしていきたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070430.html#no_1

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月28日、29日)

沖縄タイムス 社説(2007年4月28日朝刊)

[戦後補償判決]

償いが信頼回復への道
 中国人の元従軍慰安婦とその遺族が国に損害賠償を求めた訴訟と、中国人の元労働者が西松建設(東京)に強制連行・労働の賠償を求めた訴訟の上告審判決が相次いで言い渡された。

 二つの訴訟で、最高裁は「一九七二年の日中共同声明で中国人個人の賠償請求権は放棄され、裁判では行使できない」との初判断を示し、いずれも原告敗訴の判決を言い渡した。

 日中共同声明では、日本は過去の戦争で中国に与えた損害について「責任を痛感し、深く反省する」と表明。第五項で「中国政府は、両国国民の友好のために日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としている。

 第二次大戦中の従軍慰安婦、南京大虐殺、強制連行などをめぐる戦後補償訴訟は、中国人や韓国人らが一九九〇年代から各地で提訴し、市民団体「戦後補償ネットワーク」のまとめでは計約六十件に上っている。

 これまでに原告勝訴は一審六件、二審は西松建設強制連行・労働訴訟など二件にとどまるが、旧日本軍の不法行為はほぼ認定され、企業側と和解した例もある。

 こうした中で、今回の最高裁判決は、中国側にとって政府のみならず個人にも請求権がないとする初判断であり、今後、中国人らの個人的な請求は退けられる可能性が高くなった。

 この判断は、中国と日本の間に新たなあつれきを生みかねない。中国側の弁護士協会などは「最高裁判決はでたらめだ」と強く抗議。「日本政府や関連企業の責任をあいまいにし、政府や関連企業の責任回避を手助けした」などと反発しているからだ。

 ただ、最高裁は強制連行・労働訴訟の判決の末尾で、被害者らの精神的・肉体的苦痛などを指摘し、関係者の「救済に向けた努力」が期待されると述べている。

 戦争被害を救済できない司法の限界を示し、国や被告企業に自発的解決を促したといえるが、元慰安婦訴訟にはこうした付言はなかった。

 司法による個人救済の道を閉ざした最高裁判決で、戦後補償の問題は司法の手を離れ政治的解決に委ねられる。政府は今後、中国側への新たな対応を迫られるのは必至だ。

 「一日も早く日本政府による謝罪と賠償を実現させたかった」というのが、敗訴が確定した被害者と遺族たちの偽らざる気持ちであろう。

 原告たちへ「償う」意味は、結局、日本の信頼回復につながるといえるのではないか。政府、西松建設などの「誠意」ある対応を期待したい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070428.html#no_1

沖縄タイムス 2007年4月29日(日) 朝刊 1面
憲法改正反対46%/本社世論調査
賛成43%を上回る/9条改正反対は5割超
 施行六十年の憲法記念日を前に、沖縄タイムス社が二十一、二十二の両日に実施した電話による県内世論調査で、憲法改正について「必要ない」と答えた人は全体の46%で、「必要ある」の43%をやや上回った。二〇〇四年四月の前回調査で「必要ない」は29%で、「必要ある」は50%だった。憲法改正の焦点になっている九条については「改正するべきではない」が56%(前回40%)、「改正するべきだ」24%(同29%)。国会で足早に進む改憲論議に、慎重な考えを示す人の割合が増えている現状が浮かび上がった。

 改憲に反対した人に理由を聞くと「平和理念があるから」が最も多く67%、「国民の義務が重くなりそうだから」15%、「生活に根付いているから」13%だった。前回調査は「平和理念」66%、「生活」7%でそれぞれ微増。年代別に見ると、反対は五十代が最も多い。

 改憲に賛成の理由は「新しい権利や制度を加えた方がよいから」は57%(前回26%)、「アメリカの押し付け憲法だから」21%(同38%)、「自衛隊の位置付けを明確にした方がよいから」16%(同28%)。年代別で賛成に最も多かったのは三十代だった。

 改憲容認派の51%が改正は「緊急な課題」と考えている。

 九条について「改正するべきだ」と答えた人のうち、戦争放棄をうたう一項の改正が「必要」の回答は43%、「必要ない」は49%。戦力の不保持を定めた二項は「必要」が69%、「必要ない」は21%だった。

 憲法改正の手続きを定める国民投票法について、「議論が十分でない中で決める必要はない」54%と「憲法改正につながるため、決める必要はない」13%を合わせて、全体の約七割が今国会での同法成立に否定的な意見を持っている。「手続きを定めることは必要」の答えは26%だった。

 内閣支持率は40%で、不支持44%をやや下回った。内閣支持者のうち57%が憲法改正に賛成、逆に不支持の64%が反対だった。

 安倍晋三首相が憲法解釈の見直しを検討している「集団的自衛権」の行使について、「使えない立場を堅持する」が51%でほぼ半数を占めた。一方で「憲法解釈で使えるようにする」(24%)と「九条を改正して使えるようにする」(15%)で行使容認派は約四割に上った。

 調査の方法 県内の有権者を対象に、二十一と二十二の両日、コンピューターで無作為に抽出した番号に電話するRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)により実施し、八百人から回答を得た。回答者の内訳は男性49%、女性51%。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704291300_01.html

沖縄タイムス 2007年4月29日(日) 朝刊 27面
座り込み3年人の鎖/辺野古移設
 【名護】米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する地元住民や市民団体が辺野古漁港近くで始めた座り込み行動が三周年を迎えたことを受け、ヘリ基地反対協議会は二十八日午後、移設予定地の同市キャンプ・シュワブで包囲行動を行った。二十四日から那覇防衛施設局が着手したV字形滑走路案の現況調査(事前調査)に反対し、移設撤回を強く求めた。

 包囲行動には地元住民のほか、平和、環境、労働団体員ら千人(主催者発表)が参加。降りしきる雨の中、シュワブのフェンス沿いに並んで手を取り合い、「違法な事前調査はやめろ」「辺野古の海を守るぞ」などと気勢を上げた。

 反対協の安次富浩代表委員は「闘いを続けていけば必ず勝利できる」と訴えた。

 夫と子ども三人と参加した二見以北十区の会の渡具知智佳子共同代表は「子どもたちの未来に基地は必要ない。子どもたちが誇りを持てる故郷を残そう」と呼び掛けた。

     ◇     ◇     ◇     

講和55年 決意の炎

 【国頭】平和憲法を発展させることを誓う「四・二八辺戸岬集会」が二十八日、本土復帰運動の象徴、辺戸岬で行われた。沖縄が本土から切り離されたサンフランシスコ講和条約発効から五十五年、復帰三十五年の節目に沖縄平和運動センターなどが開いたもので、世代を超えて平和の発信に決意を新たにした。

 北部地区労の元議長、大城堅靖さん(72)は「国民投票法の制定などアメリカと一緒に戦争ができる国を目指す憲法の改悪が行われようとしている」と指摘。また、高校教諭の良原栄里奈さん(27)は「教科書から集団自決を削除し、何のための、誰のための愛国心なのか。悲惨な沖縄戦を未来に伝えたい」と声をからした。集会では、米軍再編による沖縄の基地機能の強化、固定化を阻止し、戦争放棄と非武装の平和憲法を発展させることを誓う宣言を採択した。

 五年ぶりとなる辺戸岬集会には約二百人が参加した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704291300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月29日朝刊)

[再編合意1年]

政府の欺瞞性浮き彫り
 米軍基地の抑止力向上と住民の負担軽減を盛り込んだ在日米軍再編最終報告の日米合意から間もなく一年を迎える。満一年となる五月一日には、ワシントンで日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれ「再編の着実な実施」を協議する見通しだ。

 これに先立ち、安倍晋三首相とブッシュ大統領は二十七日、日米首脳会談で「かけがえのない日米同盟」の強化を確認した。その上で首相は、米軍再編は両政府間合意の着実な実施が重要とし、普天間飛行場の移設を「合意通り実施する」と述べた。

 合意通りとは、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設する政府案のことである。

 だが、県、名護市が、V字形滑走路の位置を南西沖合へずらすよう求めるなど政府との調整は難航している。現普天間飛行場の危険性除去に伴う「三年内閉鎖」問題も絡んで、協議は宙に浮いた状態だ。

 首相の言う「合意通り実施」できるかどうかはなお不透明であり、政府と県、名護市の双方にとって正念場はこれからといえよう。

 この一年間を顧みると、政府の「二枚舌」とも言えるような不誠実な対応が随所に見られ、住民の負担軽減の欺瞞性を浮き彫りにしている。

 V字形滑走路について、政府は当初「集落上空は飛ばない」と説明していた。V字形はそのための案だったが、「有事に備えた訓練などで双方向飛行や住宅上空の飛行は避けられない」と変化させた。

 普天間代替施設の主力機となるMV22オスプレイの配備計画については「聞いていない」と繰り返してきた。

 しかし、一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告草案にオスプレイの配備が明記されたことが米公文書などで明らかになった。

 嘉手納基地に暫定配備のはずの最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターも、「今後の朝鮮半島情勢次第では再配備の可能性が十分ある」(在日米軍司令官・ライト中将)ことが分かり、地元では常駐化を懸念している。

 一方、負担軽減策の目玉といえる在沖米海兵隊のグアム移転に伴う嘉手納基地以南の六施設返還計画は、再編合意で示された「二〇〇七年三月末」を過ぎてもまだまとまっていない。

 以上の点から見ても、今回の再編が負担軽減より抑止力向上を優先しているのは明白である。

 再編を強引に進めるため、情報開示を遅らせたり、都合の悪いことを隠したりするのは地元軽視であり、県民の不信感を増幅させるだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070429.html#no_1

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月28日)

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 31面
嘉手納100デシベル超記録/25日に町が調査
 【嘉手納】嘉手納基地の運用状況を点検する嘉手納町の「航空機目視調査」の結果が二十七日、まとまった。調査は二十五日午前六時―午後十時に行われ、同町屋良の「道の駅かでな」から離着陸や上空通過など百八十七回の航空機の活動を確認した。爆音最高値は、午後六時四十九分、F15戦闘機の離陸時に記録した一〇〇・六デシベル(電車通過時の線路脇に相当)だった。

 離着陸回数は、F15七十二回、一時配備されているF22ステルス戦闘機二十八回だった。同町は「F22はF15と比べ、機数は少ないが、飛行回数が多い印象を受ける。外来機の飛来で騒音増も懸念される」としている。

 午前六時二十五分―七時三十四分にかけ、F15やFA18戦闘攻撃機など計二十一機が離陸。人が不快に感じる七〇デシベル以上の騒音が十三回発生した。

 航空機活動は、午後九時半のF15の着陸まで続いた。ほかにも同基地のKC135空中給油機やHH60救難ヘリなどが離着陸していた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_03.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 31面
教科書検定「説明責任果たさず」/文科省の姿勢を批判
 【東京】沖縄戦の「集団自決」記述で日本軍関与が削除された歴史教科書検定問題で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の高嶋伸欣共同代表(琉大教授)らは二十七日、衆議院内で文部科学省の布村幸彦審議官と面会した。高嶋代表は検定に関与できないとの立場を繰り返す政府側の姿勢を「説明責任を果たしていない」と批判し、検定の修正意見を撤回するよう求めた。

 面会は非公開で行われた。これまで政府は国会などで閣僚や官僚が検定に関与できない仕組みを強調していたが、高嶋代表は、教科書検定で住民虐殺が問題となった一九八四年に、当時の森喜朗文相が国会で「十分に県民の感情を配慮しつつ客観的な記述となるように検定において必要な配慮を求めているというふうに指導している」と答弁したことを指摘。

 その上で「政府の答弁は責任逃れだ。今回の措置は(森氏の発言と)明らかに食い違っている。整合性を持たせる意味で今回の検定は撤回されるべきだ」とただした。

 布村審議官は「答える立場ではない」と述べるにとどめたという。

 高嶋代表らは要請後に文科省で会見し「教科書検定は行政処分であり、あいまいな理由付けのまま教科書の記述をゆがめさせたということでは公平性に欠ける。悲惨な体験をした県民の立場から、こういう記述の教科書を全国の学校で使うことになるのは容認できない」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_05.html

F22飛行580回超 司令官「特筆の記録」

 米軍の最新鋭戦闘機F22Aラプターが参加した初めての日米共同訓練で、F22部隊の第27遠征戦闘中隊司令官のウェード・トリバー中佐は27日午後、米空軍嘉手納基地で報道各社の代表取材に応じた。トリバー中佐は今年2月からの沖縄への展開期間中、580回以上の飛行をこなしたことを明らかにし「たった12機で達成した記録としては特筆すべきものだ」と飛行実績を自負した。 F22が嘉手納基地に配備されたのに伴い、飛行場周辺では騒音回数が増加。地元の騒音被害の訴えと逆行する外来機の運用の在り方に、周辺自治体、住民の反発が一層強まりそうだ。
 トリバー中佐は共同訓練の成果について「日米同盟を構築するに当たって、とても良い機会になった。航空自衛隊にとって得たものが大きければと思う」と指摘。今後の訓練計画については「沖縄に滞在する残りの期間中には新たな共同訓練の予定はないが、将来できればいい」と述べた。
 F22部隊の初の海外展開となった嘉手納配備について「たった12機で580回以上の飛行をこなしている。米軍のF15やF18戦闘機、ハリアー攻撃機と一緒に訓練して相互理解を深めることができた」と強調した。配備期間は「5月中だとは聞いているが、詳しいことは知らされていない」と述べるにとどまった。
 27日の共同訓練には空自からF15・4機とF4・4機、米軍からF15・2機、F22・2機が参加した。
(4/28 9:37) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23340-storytopic-3.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 1面
闇に浮かぶ悲劇/南風原病院壕公開
 【南風原】南風原町の城間俊安町長は二十七日会見し、沖縄陸軍病院南風原壕群二十号を六月十八日から一般公開すると発表。報道陣に二十七日、壕内を公開した。

 陸軍第二外科壕群の第二十号壕は、沖縄戦末期に人力で掘られた全長七十メートルの壕で、「ひめゆり学徒隊」が負傷した日本兵らを看護した。

 幅、高さはともに一・八メートルで、九十センチごとに支柱で支える構造。入り口から壕中心までの三十メートルの区間は、できるだけ当時の状態を残し米軍の火炎放射器で焼けた支柱跡や、負傷兵が天井に刻んだとみられる「姜」など三文字が残っている。

 一九九〇年に町は同壕群を「戦争遺跡」として全国で初めて文化財に指定。昨年から一般公開に向け整備工事を進めてきた。城間町長は「平和の大切さを学ぶ県民の財産として活用していきたい」と話した。

 見学は完全予約制で、五月一日から南風原文化センターで受け付ける。問い合わせは同センター、電話098(889)7399。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_10.html

壕に謎の人骨数十柱 糸満市阿波根

 【糸満】糸満市阿波根の壕で1月に、数十柱の人骨が透明のビニール袋やプラスチック製の容器に入れられ、放置されていることが27日までに分かった。住民から通報を受けた糸満署は事件性の低さから静観、市は実態が把握できないため対応に苦慮している。付近の墓の関係者も「他人の人骨を簡単に扱えない」としており、数十柱の人骨は放置状態が続きそうだ。
 人骨は同市阿波根の県道82号沿いの岩山の壕にある。付近は門中の墓が点在。人骨は1カ所の墓の隣の壕に半透明のプラスチック製の衣装ケース4点、プラスチックのバケツ5点、ビニール袋12点、発泡スチロール1点に分けて収納されている。1月に門中の墓を訪れた住民が発見し、糸満署と市役所に通報した。
 調べを進めた同署は柱の保存状態などから「事件性はない」と見ている。阿波根周辺や糸満市内、本島内でも墓荒らしなどの被害届や報告もないという。同署は人骨が放置された現場を確認したが、容器には手掛かりにつながるような記載もないという。ただ丁寧に保存された状況から「悪意を感じるものではない」として鑑定は行わず、現場で保存している。現状保存のため、具体的な柱数は把握できていないが、「古い年代のものであるのは間違いない」と同署。沖縄戦遺骨や土葬された人骨の可能性もあるとしている。
 知らせを受けた糸満市生活環境課は、事件性の有無や事情を把握しないと対応できないとしている。市内で発見された無縁仏などは、市が引き取る場合もあるが、市内2カ所の納骨堂はすでに満杯状態で、引き取るのは難しいという。
 通報した隣の門中の墓の関係者数人によると、9月に墓参りに来た時はなかったという。また「1月に見た時よりも人骨が入った衣装ケースが2、3段分なくなっている」とも話しており、誰が放置し、その後、なぜ一部だけを持ち去ったかいぶかしがる。
 確実な情報がない現時点では糸満署、市ともに対応できないため、墓の中で静かに眠るはずだった人骨は放置状態が続きそうだ。
(4/28 16:02) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23361-storytopic-1.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月28日朝刊)

[55回目の4・28]

変わらぬ「基地オキナワ」
 きょう四月二十八日(4・28)は一九五二年に対日講和条約(サンフランシスコ平和条約)が発効し、その第三条によって沖縄・奄美を含む北緯二九度以南の施政権が米国に委ねられた日である。

 あれから五十五年。沖縄の米軍基地は動かず、過重な基地負担から派生する不平等・不条理は変わらぬままだ。改憲の動きと米軍再編の大きな流れの中で沖縄は揺れ動き、憲法の定めた「平和的生存権」とはほど遠い状況に追い込まれている。一体いつになったら「基地オキナワ」から基地のない「平和な島・沖縄」に脱却できるのか。

 復帰前の沖縄で4・28は「屈辱の日」と呼ばれていた。施政権が日本に返還されるまでの二十七年間、沖縄の住民は米国人でもなく日本人でもない立場に置かれた。その始まりの日が4・28だったからである。

 米軍基地は増強・拡大の一途をたどり、米軍基地あるがゆえの事件・事故は後を絶たず、基本的人権は蹂躙され、安寧に暮らす生活権さえ保障されなかった。

 今年は復帰して三十五年。復帰運動のよりどころとされた憲法の改正の手続きを定める国民投票法案がやじと怒号の中、今国会の衆院特別委で可決された。

 基地の整理・縮小の焦点である米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、仲井真知事は環境影響評価(アセスメント)の前段となる現況調査のための海域使用に同意した。

 普天間飛行場の「三年内閉鎖状態」などの見通しも立たない中で同意に踏み切った。このことはV字形案について現行のままでは賛成できないとしていた公約に矛盾する。知事選、参院補選で辺野古移設を推進する候補が連続当選したが、宜野湾市長選では国外移設を唱える候補が大差で勝った。知事は県益に立った慎重な判断をすべきだ。

 4・28を知る世代が減少する中、4・28の持つ「沖縄からの問い」を忘れてはならない。子々孫々のためにも…。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070428.html#no_2