F15事故「欠陥機の証明」 嘉手納基地周辺3首長
けん引されて移動する前脚が折れて事故を起こしたF15戦闘機=1日午後5時38分、米軍嘉手納飛行場
【中部】1日午前、米空軍嘉手納基地で起きたF15戦闘機の事故。相次ぐトラブルに基地周辺の首長は「F15は撤去してもらうしかない」「危険な状態は変わりない」と基地と隣り合わせの危険性をあらためて強調した。
宮城篤実嘉手納町長は「飛び立つ前に大事に至らずに済んだ」と前置きしながら「F15は欠陥機ではないかという疑いがあり、そういう機種が主力戦闘機として置かれている。危険な状態は変わりない」と嘉手納基地の危険性を強調した。同町は午後、米軍に機体の整備点検と安全管理を徹底するよう申し入れた。
野国昌春北谷町長は「今回の事故は人的な被害がなかったとはいえ、周辺の住民に不安を与えたのは間違いない。F15は撤去してもらうしかない」と強調し「事故は老朽化が進んでいる証拠であり、欠陥機だということを自ら証明しているようなものだ」と厳しく指摘した。
東門美津子沖縄市長は「事故があるたびに再発防止と安全管理の徹底を強く申し入れてきたが、改善がみられない。緊張感が足りないのではないか。今後、市民に不安を抱かせないよう航空機整備の徹底をはかり、絶対に事故を起こさないよう強く要望する」とのコメントを発表した。
(5/2 9:56) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23447-storytopic-1.html
沖縄タイムス 社説(2007年5月2日朝刊)
[「集団自決」調査]
住民証言が軍関与裏付け
文部科学省の教科書検定で、高校歴史教科書の沖縄戦をめぐる記述から、「集団自決」への日本軍の関与が削除された。一般住民による「集団自決」は沖縄戦の特徴だ。沖縄戦の実相を根本から揺るがす問題だけに大きな波紋を広げている。
本紙が県内四十一市町村長を対象にした緊急アンケートで、回答した三十六人のうち三十二人が今回の検定結果に「反対」と答えた。四人は「どちらともいえない」とした。「賛成」と答えた首長はいなかった。
ほとんどが記述削除を疑問視している。当然の結果だろう。数多くの住民証言が残された中で、沖縄戦の記憶をどう継承していくのかが、ますます重要で差し迫った課題になってきた。
各市町村長は政治的な立場を超えて強い懸念を表明した。沖縄戦での「集団自決」は、住民の証言・記録を踏まえ大方の共通認識になっている。
教科書検定では、「集団自決」について日本軍が強制したとの記述七カ所(五社七冊)に修正を求める検定意見が付いた。日本軍による「集団自決」の強制が明記されていたが、日本軍の関与を否定する表記となった。
今回の検定意見に関して、文科省は「最近の学説状況の変化」や大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟での日本軍元戦隊長の証言などを根拠に挙げ、集団自決を日本軍が強要、命令したという記述について修正を求めた。
これに対し、検定意見を疑問視する市町村長らは「記述削除は沖縄戦の実相を隠すもので、国民へ戦争への正しい認識を与えない」「歴史の真実が政治や政府によってゆがめられ、国の将来に大きな危惧を抱く」と懸念する。
また、「住民の証言がある。軍の関与がなかったとはいえない」「軍関与の事実はさまざまな証言からも明らかだ」「軍の自決強要は証言で明らか。歴史を曲げた教科書による教育はおかしい」と、軍関与を否定する見解を住民の証言を根拠に批判している。
沖縄戦の事実を率直に語り継ぐことの重要性を強調する意見も目立つ。
県内には多くの沖縄戦体験者がおり市町村長らの警鐘は県民の声を代弁したものといえる。激しい地上戦に住民が巻き込まれ、死んでいった沖縄戦を象徴する、非戦闘員の「集団自決」の事実を矮小化してはならない。
沖縄戦の記憶をめぐる問題は、教科書検定や「集団自決」裁判の問題につきるわけではない。愛国心がことさら強調され、「集団自決」を殉国の美談に仕立てる動きが広がる中で、県民が沖縄戦をどう位置付け、後世に語り継いでいくかが厳しく問われている。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070502.html#no_1
沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 1・27面
改憲賛否20対19/県議会議員
9条改正27人反対/きょう憲法施行60年
施行六十年の憲法記念日を前に、沖縄タイムス社は県議会議員を対象に、憲法改正に関するアンケートを実施した(四十八人中、四十六人が回答)。「改正するほうがいい」との回答は二十人、「改正しないほうがいい」は十九人で、ほぼ拮抗している。改正賛成は二〇〇五年の調査に比べ六人減、改正反対は同数だった。一方で、基本原則を守るとする加憲などが七人に増え、全体的に慎重な考えを示す県議が目立つ結果になった。
焦点になっている九条については、与党八人を含む「改正反対」が二十七人(前回二十六人)で、「改正賛成」の十二人(同二十一人)を大きく上回り、与党を含め「九条改正」に対する反対意見や慎重論などの抵抗感が県議会内で根強いことが明らかになった。
「憲法改正に賛成する理由」(複数回答を含む)で最も多かったのは、「新しい権利、義務を加えるべきだ」が十七人。次いで「自衛隊の位置付け、役割を認めるべきだ」が十二人で、自衛隊の現状との乖離の是正や国際貢献の明記を求める声が相次いだ。「集団的自衛権を認めるべきだ」は四人。制定過程を問題視した「押し付け憲法だから」は二人だった。
「憲法改正に反対する理由」(複数回答を含む)では、十一人が「平和の理念があり、世界に誇る平和憲法」を挙げ、平和主義を基本原則とした現行憲法の理念を強く支持。次に、「集団的自衛権の行使が認められ、軍事国家になる危険性がある」が七人で、現憲法が軍事同盟強化の歯止めになっているという認識を示した。「改悪の恐れがある」「大多数の支持を得て、社会に根付いている」がそれぞれ三人だった。
憲法九条で禁じられている集団的自衛権について、政府が有識者会議で解釈変更の検討に着手する方針を示したことについて、反対を表明したのは二十六人で、慎重検討を含む賛成は十六人を上回った。与党・中立会派の「反対だが、検討必要」と答えたのは五人、公明の三人は「政府解釈見直しなら反対」を表明した。
改憲 参院選の争点に
日本国憲法は三日、施行六十年を迎えた。この間一度の改正もなかったが、安倍晋三首相は在任中の改憲実現を目指す考えを表明、夏の参院選でその是非を問う構えだ。改憲手続きを定める国民投票法案も今月中の成立が確実。憲法改正が現実の政治課題となり、国民一人一人が真剣に向き合わなければならない時代に入りつつある。
今後の憲法論議は、国民投票法成立を受け参院選後の臨時国会で両院に設置される憲法審査会に主舞台が移る。三年間は改憲案の提出、審査は凍結され、現行憲法の問題点などの調査が進められることになる。首相は改憲の必要性を訴える一方で、集団的自衛権行使に関する政府の憲法解釈見直しにも意欲を見せており、参院選ではこの点も争点になりそうだ。
◇ ◇ ◇
平和憲法「世界に届け」/9条の会アピール
三日の憲法記念日を前に県内の「九条の会」十団体が二日、「日本国憲法9条で21世紀に平和な世界を」と訴える初の共同アピールを発表した。
アピールは、改憲手続きを定めた国民投票法案が衆議院を通過したことを踏まえ、「憲法九条がなければ、日本軍はベトナムやイラクで参戦していただろう」と指摘。国際社会で武力によらない平和構築が求められる中、「憲法九条を持っているわが国こそ、そのもう一つの道を世界に指し示すことができるのではないでしょうか」と九条の世界的可能性に言及した。
県庁記者クラブで会見したネットワーク九条の会沖縄の世話人で、大学人九条の会代表の高良鉄美琉球大学大学院教授は「九条は国際的にも認められ、時代の先を行くもの。改憲したら『なぜ変えた』と私たちは責任を問われる」と、九条の意義を強調した。
また、同席した「はえばる九条の会」の金城義夫会長が、南風原の九条の碑が近々完成することを明らかにし、慰霊の日の来月二十三日までに一般公開したい、とした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_01.html
沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 27面
沖縄戦歪曲 抗議の声を/来月9日 県民大会
教科書検定で、高校歴史教科書から沖縄戦「集団自決」記述に関する日本軍の関与が削除された問題で、労組や市民団体は六月九日、那覇市の県民広場で五千人規模の県民抗議大会を開く。高教組(松田寛委員長)と沖教組(大浜敏夫委員長)、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(共同代表・高嶋伸欣琉大教授ら)が二日夕、那覇市の教育福祉会館で開いた「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会」実行委員会の準備会で確認した。
大会を契機に六月県議会で文部科学省へ修正意見の撤回を求める意見書を採択してもらい、教科書会社が軍関与を記述した申請時の教科書に戻すことを求めていく。準備会には約三十の労組や市民団体、野党県議らが参加した。
実相否定に批判
準備会では、三月三十日に公表された検定意見について、「日本軍による」という主語をなくし、住民の「集団自決」を犠牲的精神の表れと位置付けて沖縄戦の実相を否定するものだ、と文科省を批判する声が相次いだ。
参加者は「戦争の本質を覆い隠す教科書が全国の子どもたちに渡ることは許さない」と強調。教科書製本の日程上、書き換えはまだ現実的に可能だとして、県民に広く訴えていくことを申し合わせた。
与党に呼び掛け
また、市民団体や労組だけの運動では限界があるとして、県政与党の自民党と公明党にも参加を呼び掛けていくことを決めた。
県議会が、一九八二年に文部省(当時)が「住民虐殺」記述を削除しようとした動きに対し、同年九月に臨時議会を開き意見書を全会一致で採択。記述復活に道筋を付けた経験を踏まえ、同様の対応を求めていくことにした。
意見書採択後は県議会としての要請団を組織して、政府に要請してもらう考え。
一方、申請時の文章に戻すことを求める文科相あての署名活動にも取り組み、県内で二十万票を目標にする。
那覇議会審議へ
教科書検定で歴史教科書から沖縄戦の「集団自決」で日本軍の関与が削除された問題で、那覇市議会(久高将光議長)は十五日に臨時議会を開き意見書について審議する。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_02.html