月別アーカイブ: 2007年7月

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月10日朝刊)

2007年7月10日(火) 朝刊 1・27面

 

年金・普天間で論戦/タイムス・RBC 公開討論

 

西銘氏・自立発展と加憲訴え/糸数氏・護憲で平和な暮らし

 

 

 沖縄タイムス社と琉球放送(RBC)は九日、二十九日投開票の参院選沖縄選挙区に立候補を表明している自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と野党統一候補で元参院議員の糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=の公開討論会を那覇市久茂地のパレット市民劇場で開いた。西銘、糸数両氏は最大の争点になっている年金問題や憲法改正、米軍普天間飛行場移設など基地問題などを討論。西銘氏は「『自立への一議席』を掲げ、沖縄の自立発展に尽くす」と訴え、糸数氏は「県民の暮らし、安全について『平和の一議席』で貢献する」と強調した。

 

 

 五千万件の年金記録不備問題で、西銘氏は「社会保険庁および政府に責任がある」とした上で、「政府の責任で、一年以内で年金記録の不備を精査し、不利益がないように完全支払いを実現する」と主張した。糸数氏は「年金問題は政府与党の失政で、その責任で解決するべきだ」と批判。「年金の記録が確認できる年金通帳と基礎年金を税金で賄う方針が必要」と述べた。

 

 

 改憲問題で、糸数氏は「平和憲法を堅持し、世界の平和を導く理念。安倍政権は改憲し、日本を戦争ができる国にしようとしている」と護憲の立場を表明。西銘氏は「国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三原則は堅持。時代に合うように環境権やプライバシーの権利などを加えて改正する」と加憲の考えを示した。

 

 

 米軍普天間飛行場の移設問題について、西銘氏は「普天間飛行場の危険性除去が最優先されるべきだ。県外・国外が困難な場合は県内移設も選択肢の一つ。地元の意向を尊重するべきだ」と県内移設を容認する方針を明らかにした。糸数氏は「新基地建設は反対。普天間飛行場は即時閉鎖するべきだ」と断言し「基地の整理・縮小は政治の責任。基地のない沖縄を目指していく」と主張した。

 

 

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる高校の歴史教科書検定問題で、糸数、西銘氏ともに文科省の対応を批判。検定意見の撤回を求め、沖縄戦の実相を正しく伝えることを訴えた。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

「自立」「平和」で激論/支持者、拍手合戦も

 

 

 「自立への一議席を」「平和の一議席を」。九日、那覇市のパレット市民劇場で開かれた参院選の公開討論会。沖縄選挙区に立候補を予定している西銘順志郎さん(57)、糸数慶子さん(59)が、それぞれの政策を掲げて「激突」した。

 

 

 白のかりゆしウエアを着た西銘さんと、赤いジャケット姿の糸数さん。現職と元職とあって、厳しい質問も貫録たっぷりに退けた。客席は次第にヒートアップし、互いの支持者が「拍手合戦」する場面も。

 

 

 四月の参院補選に続いて二度目の投票になる琉球大学三年の牧志可奈子さん(20)は論戦に耳を傾け、「平和、経済と、強調する部分が違った。低い投票率を伸ばせるか、年金問題など今の情勢をどれだけ反映した政策を出してくるかを見守りたい」と話した。

 

 

 那覇市の新城清一さん(78)は「基地問題の政策は対照的で、やはり最大の争点。聞いていても勉強になった」。宮古島市の吉田朋子さん(38)は「島に専門医がいないためにおじを亡くした。保革ではなく、離島振興を具体的に考えてくれる人を選びたい」と語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_01.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 朝刊 1・27面

 

防衛省、米軍に照会/枯れ葉剤使用

 

 【東京】米軍がベトナム戦争で使用した、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を一九六一―六二年に、米軍北部訓練場などで散布していた問題で、守屋武昌防衛事務次官は九日の定例会見で、那覇防衛施設局を通じて在沖米軍に事実関係を確認していることを明らかにした。

 

 

 現在も土壌にダイオキシンが残留している可能性があり、水源への影響が懸念されていることについては、「在沖米海兵隊から北部訓練場の水質に関して問題があるという報告は受けていない」と説明した。

 

 

 一方、守屋次官は六、七両日の訪米で国防総省のローレス特別顧問ら米政府関係者と面談し、米軍普天間飛行場の移設について、移設先の現況調査(事前調査)を実施していることや、今後、環境影響評価(アセスメント)を県と進めていく考えであることを説明したという。

 

 

 そのほか、仲井真弘多知事の公務復帰については「早く公務に復帰され、大変良かった。沖縄と国との間で大変難しい問題を抱えているが、今後の知事のご尽力で、十年越しの在沖米軍基地の整理統合を進めていただきたいとの強い期待を持っている」と語った。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

「猛毒だ」と反発/労組など調査要求

 

 

 米軍北部訓練場などでの米軍による枯れ葉剤散布が米側文書で裏付けられたことに対し、連合沖縄(仲村信正会長代行)は九日、「(報道が)事実であれば、看過できない。日本政府に対し、汚染が予想される地域の早急な調査を求める」とのコメントを発表した。市民団体「日本平和委員会」も同日、「猛毒のダイオキシンによる土壌汚染の可能性があり、命にかかわる問題。日本政府に対し事実の究明と被害を及ぼさないための措置を求める」との声明を出した。

 

 

 連合沖縄は「北部訓練場地域は、県民の水がめとして多くのダムが設置されている所。県民に健康被害を及ぼすことがないか、県民に大きな不安を与えることになる。日本政府に対し、社会不安を惹起させないための有効な対処策を講ずるよう強く求める」としている。

 

 

 枯れ葉剤散布は八日、米退役軍人省の公式文書(一九九八年一月十三日付)で確認。同文書は、六一―六二年の沖縄駐留中、枯れ葉剤を浴び後遺症を負ったとする元米兵の訴えを認定している。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_03.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 朝刊 26面

 

軍命は明確 撤回可能/「集団自決」修正で2度目意見書

 

 高校歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与が削除された教科書検定をめぐり県議会は十一日、六月定例会最終本会議で二度目の検定意見撤回と記述回復を求める意見書を可決する。同一の問題で二度の意見書の可決は初めて。仲里利信議長(70)に意見書可決の意義や思いなどを聞いた。

 

 

 ―二度の意見書可決の意義は。

 

 

 「文部科学省に県、県議会、市町村議会など六団体の代表が要請した。しかし、文科省の審議官は県民の総意を否定し、『教科図書用検定調査審議会が決定したことに、口を挟むことはできない』と一方的に切り捨てた。『集団自決』に軍の命令があったのは紛れもない事実。記述を回復させるために再度、何らかのアクションを緊急に起こす必要があると考えた」

 

 

 ―審議会の検定意見について。

 

 

 「検定結果は、文科省の調査官が日本軍の関与の記述について削除するよう、ある程度の原案を作ってから審議会で議論した。結論ありきで、ある意味で仕組まれたものだと考える。審議会の委員が実際にどのように調査したかも分からない。(文科省が)審議会の名を借りて作られたものは当然撤回できるはずだ」

 

 

 ―県議会の文教厚生委員会が渡嘉敷、座間味両島を調査した。

 

 

 「実際に手りゅう弾を渡されたと話す人、兄が軍命を受けたことを証言する女性など、軍命があったことを証明する具体的な証言が得られた。(教科書検定の)審議会の委員も現地を訪れ、体験者の証言にきちんと耳を傾けるべきだ」

 

 

 ―今後の対応は。

 

 

 「まず意見書は文科省に送付する。これからどのような対応をするかは、県議会や県などと意見交換しながら決めていくだろう」

 

 

 ―沖縄戦の体験者として検定問題をどうみる。

 

 

 「検定結果は、死者を冒とくしている。歴史の事実を否定するとまた戦争への道を歩んでしまう。この問題に保守も革新もない。事実は事実として、きちんと意見の通る国でなければならない。一部の人たちが戦争を美化し、歴史の事実を歪曲するということは祖父、父、弟を失った者として決して許すことはできない」(聞き手=社会部・平良吉弥)

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_06.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 朝刊 2面

 

新石垣 月内に事業認定/県議会特別委

 

 県議会の米軍基地関係、観光振興・新石垣空港建設促進、少子・高齢化対策の三特別委員会が九日開かれた。米軍基地関係特別委では、米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題について上原昭知事公室長が「事実関係を外務省に照会中」と説明、照会結果を受けて対応を検討していく考えを示した。観光振興・新石垣空港建設促進では首里勇治土木建築部長が、新石垣空港の未契約用地の強制収用を可能にする事業認定を今月中旬か下旬に申請したい考えを明らかにした。少子・高齢化対策特別委で県は、認可外保育所への給食費支援について来年度予算化を目指す方針を示した。

 

 

米軍基地関係

米軍艦船民間入港 協定改定働き掛け

 

 

 県議会米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)で上原知事公室長は、米艦船が与那国町祖納港へ入港した問題で「今後も日米地位協定の見直しを求める中で、緊急時以外の使用禁止を盛り込めるよう働き掛けていきたい」と述べ、通告があれば民間港湾に入港できると規定する日米地位協定の改定に取り組む考えを示した。新川秀清委員(護憲ネット)の質問に答えた。

 

 

 米空軍嘉手納基地から大量の航空燃料が流出した問題について上原公室長は「県民生活の安全確保の面から調査結果の公表を要請する」とし、原因の公表を米軍に求める考えを示す一方、土壌などのサンプル採取については困難との見方を示唆した。嘉陽宗儀委員(共産)への答弁。

 

 

 米軍が枯れ葉剤を北部訓練場などで散布していた問題について上原公室長は「事実確認を外務省に照会中。結果を見て対応したい」と述べた。渡嘉敷喜代子委員(護憲ネット)への答弁。

 

 

観光振興・新石垣

土産・飲食費増で施策

 

 

 観光振興・新石垣空港建設促進特別委員会(國場幸之助委員長)では県観光商工部と土木建築部がそれぞれ第二次県観光振興計画(二〇〇五―〇七年)と新石垣空港整備事業の進ちょく状況を報告した。

 

 

 観光関連の〇六年実績は、コンベンションの県外・海外参加者数、スポーツキャンプ合宿数、宿泊施設客室数などは〇七年目標を上回る一方、県内消費額の増加やクルーズ船、国際会議の誘致、外国人観光客誘客が課題となっている。

 

 

 伸び悩む観光客一人当たりの県内消費額について仲田秀光県観光商工部長は「(第三次計画で)目標の下方修正はしない。産業振興の観点から土産費や飲食費増に向けて県が直接かかわり、宿泊費や交通費は旅行会社などと連携しながらどんな施策が必要か検討したい」と述べた。高嶺善伸氏(護憲ネット)への答弁。

 

 

 首里土木建築部長は、新石垣空港の未契約用地の強制収用を可能にする事業認定について「今月中旬か下旬に申請したい。(一二年度末の供用開始予定までの)工事工程を考えると、申請する時期に来ている」と説明。根路銘恵一新石垣空港統括監は「事業認定の申請から認定の告示まで一年かかる。県としては事業認定後も、地権者と誠意をもって交渉を重ねていく」と述べた。辻野ヒロ子氏(自民)への答弁。新石垣空港事業用地(約百九十五ヘクタール)のうち、四月六日現在の用地収得率は81%(百五十八ヘクタール)。

 

 

少子・高齢化

認可外保育所に給食費

 

 

 少子・高齢化対策特別委員会(吉田勝廣委員長)は一議案と陳情十六件を審議。認可外保育所への給食費支援について伊波輝美福祉保健部長は「来年度の予算化を目指したい」と述べた。

 

 

 県青少年・児童家庭課によると、県内の認可外保育所は今年四月現在、四百四十九カ所で入所児童数は一万八千三十六人。児童一人当たり三百円で試算した給食費は年間十三億円(県と市町村で折半)だった。

 

 

 饒平名宏課長は「予算化の方法や額については調整中」と述べた。当銘勝雄氏(護憲ネット)への答弁。

 

 

 公立・認可保育所での障害児保育では、入所で障害の有無を判定する審査会が市町村で年一回程度しか開かれていない実態が明らかになった。

 

 

 赤嶺昇氏(維新の会)が「審査会が年一回しか開かれず障害児の入所時期を限定されることは児童福祉法に抵触するのではないか」とただした。

 

 

 伊波部長は「法に抵触する恐れがある」とし、その上で「保育予算の関係上、行政が直ちに対応できていない現状がある。努力を促していく」と答弁した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_07.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月10日朝刊)

[米軍枯れ葉剤使用]

早急に実態を調査せよ

 知花弾薬庫でVX神経ガスのガス漏れ事故が発生し、作業をしていた米兵など二十四人が病院に収容された―との衝撃的なニュースが伝わってきたのは、復帰前の一九六九年七月のことであった。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルの報道によって、米軍は初めて、マスタード、GB、VXなどの毒ガスが沖縄に貯蔵されている事実を認めた。ベトナム戦争さなかの出来事だ。

 当時の新聞は「空にB52 海に原潜、陸に毒ガス。天が下に隠れ家もなし」と、住民の安全をないがしろにした軍事優先の米軍統治を強く批判した。

 だが、貯蔵されていたのは核兵器や毒ガスだけではなかったようだ。猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤が六一年から六二年にかけて、北部訓練場などで散布されていたというから驚きだ。

 沖縄での枯れ葉剤散布などによって前立腺がんにかかったとの元米兵の申し立てに対し、米退役軍人省はダイオキシンを浴びた可能性を認め、作業に携わった元米兵の後遺症を認定したという。九八年一月十三日付の同省の公式文書で明らかになった。

 元米兵が沖縄に勤務していた六一年から六二年にかけての時期は、米軍がベトナム戦争に介入し、枯れ葉剤を使用し始めた時期と重なる。

 米軍はその後、ゲリラをジャングルからあぶり出す目的で、おびただしい量の枯れ葉剤をベトナムの密林や水田などに散布した。

 その結果、密林が死に絶え、ベトナムの住民だけでなく、米国のベトナム帰還兵の中にも、がんなどの健康被害を訴える人たちが続出した。

 結合双生児として産まれたベトちゃんドクちゃんに象徴されるように、今なお続く健康被害、環境被害の深刻さは、二十世紀の国家犯罪ともいえる様相を呈している。

 北部訓練場ではかつて、ダムの湖水面を利用した訓練が行われているが、枯れ葉剤の散布が行われたとすれば由々しい問題だ。ダイオキシン残留の可能性がないかどうかを含め、早急に事実関係を調査すべきである。

 米軍の関係部局は、元米兵の申し立てに対し、「沖縄でダイオキシン使用を確認する文書はない」と回答したという。

 今回も同じような回答が予想される。だが、記録文書がないから確認できないというだけでは住民の不安は解消されない。基地を提供している政府と、当事者である米軍の誠実な対応を求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070710.html#no_1

琉球新報 社説(2007年7月10日朝刊)

枯れ葉剤散布 まず事実関係の解明急げ

 米軍が1961―62年に米軍北部訓練場などで猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を散布していたことが判明した。作業に携わった元米兵が後遺症などの補償を求めた審判をめぐる退役軍人省の公文書に記されている。

 ダイオキシンは自然分解がされにくく、汚染は長期間続くと指摘される。ゆゆしき事態だ。

 何よりも県民の「水がめ」に近い場所だ。しかも汚染が広範囲に及んでいる可能性がある。政府や県は詳細に事実を掌握するとともに、現地調査を含め早急に事実解明に乗り出す必要がある。

 枯れ葉剤の散布が明らかになった退役軍人省不服審判委員会の決定文によると、元米兵は61年2月から62年4月まで輸送兵として沖縄に赴任。枯れ葉剤が入ったドラム缶の輸送やドラム缶に枯れ葉剤を注入する作業に従事したほか、雑草除去のために枯れ葉剤を散布したというのだ。

 散布された場所は、北部訓練場内とその周辺の道路脇などで「2カ月以上にわたり枯れ葉剤を浴びた」と証言している。

 相当量の枯れ葉剤がまかれた恐れが強い。今回因果関係が認められた元米兵以外にも数10人の退役軍人が、ベトナム戦争時に沖縄で枯れ葉剤にかかわったことを理由にがんなどを患ったとして補償を求めていることからも、大量散布の疑いは消えない。

 ベトナム戦争中に展開された枯れ葉剤作戦に関する悲劇や悲惨さなどは、テレビ報道、映画などを通してよく知られている。散布地域ではがんや先天性異常児、死産などが多発。前立腺がんになったとの元米兵の主張に対し、同省も証言内容や証拠などから「矛盾がなく正当」と認定した。

 北部の森林地帯には貴重な生物種や植物などが生息・分布している。自然環境への影響はないのか。ダムの水は大丈夫だろうか。看過できない問題だ。

 北部訓練場を抱える東村の伊集盛久村長は「まず事実関係をはっきりさせてもらいたい。その上で、村民を対象とした健康診断の実施を国に求めたい」と語る。懸念は当然である。

 最近嘉手納基地で起きたジェット燃料漏れ事故で米軍は、県による汚染土壌の採取や現場撮影を頑強に拒んだ。今回も恐らく情報開示や調査要請に対し、非協力な姿勢で臨むであろうことは想像に難くない。

 だが事は県民の健康、安全にかかわる極めて重大な問題だ。米国の公的機関が認めている。散布の事実はなかったでは済まされない。枯れ葉剤を使用した場所や使用量などについて、一刻も早く事実関係を包み隠さず明らかにする責任がある。

(7/10 9:42)

http://ryukyushimpo.jp/news/storytopic-11.html

 

 

沖縄タイムス、琉球新報 関連記事(7月9日)

2007年7月9日(月) 沖縄タイムス 夕刊 1・6・7面

 

北部で枯れ葉剤散布/米軍、60年代訓練場一帯

 

 米軍がベトナム戦争で使用した、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を一九六一―六二年、沖縄の米軍北部訓練場などで散布、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定されていたことが八日までに米退役軍人省の公式文書で明らかになった。

 

 

 【国頭・東】緑豊かな県民の水がめの周辺に、猛毒ダイオキシンを含む枯れ葉剤がまかれていた。「ショック」「住民の健康と環境の調査を」。地元の国頭、東両村の村長らは報道に衝撃を隠せない。米軍北部訓練場は一部返還が決まっており、跡利用への影響も懸念した。エコツーリズムの舞台として活用する住民は、不安の払拭を求めた。

 

 

 国頭村の宮城久和副村長は「大変ショック。アメリカの公的な機関から発表されている事実。国はきちんと調査をし、住民に知らせてほしい」と話した。同村では訓練場の返還後、新たな土地活用について話し合いを進めており、「今後、計画に影響を及ぼすのでは」と懸念した。

 

 

 東村の伊集盛久村長は「散布が事実なら由々しき問題。県民の水がめを抱える村として看過できない」と語気を強めた。「国に事実を明らかにしてもらい、その上で村民の健康調査を求めていきたい」と話した。

 

 

 高江区の仲嶺武夫区長は「ヘリパッド着工も進む中、住民の不安がますます大きくなった。まず場所の特定が必要。ダムに流れた可能性も否定できない」と、不安を隠せない様子で語った。

 

 

 国頭ツーリズム協会の山川安雄代表は「まったく初めて聞いた。北部訓練場には生物調査などで多くの人が入っているが、植物の生育が悪いなど、異常さを裏付ける情報は聞いたことがない」と語る。「報道が事実なら、完全に不安を払拭するためにも場所の特定やきちんとした環境調査をしてほしい」と求めた。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

ベトナム向け「実験」か

 

 

 枯れ葉剤の影響について長年ベトナムで取材を続ける報道写真家の石川文洋さんの話 一九六一年当時はまだ枯れ葉剤の人体への影響については把握されてない時期だが、同時に米国はベトナム戦争への本格介入を前に、既に軍事顧問団を送っており当然、米軍は枯れ葉剤の戦略的な重要性に気が付いていたはずだ。

 

 

 北部訓練場での散布は、ベトナム戦争へ向けた「実験」の位置付けと、訓練の障害を取り除くための雑草除去という二つの目的があったのではないか。

 

 

 枯れ葉剤の影響は長期間続く。二〇〇五年にベトナム現地で取材した時も障害がある赤ちゃんが次々と生まれていた。今後十年で終わるのか百年続くのか、誰も断言できないところが一番恐ろしい。

 

 

基地返還にも影響/琉球政府 元担当者

 

 

 米軍による枯れ葉剤の散布が判明した米軍北部訓練場(東村など)は、部分返還に向け政府が米軍ヘリパッドの移設工事に着手したばかり。枯れ葉剤による汚染の有無などその実態は不明のままで、周辺住民は「汚染の程度や健康被害が分からないことが不安」と話している。

 

 

 「米軍の毒ガス移送が大きな問題になったことは知っているが、枯れ葉剤の使用が問題にされた記憶はない」。一九七二年の沖縄の本土復帰前から琉球政府(現沖縄県庁)に勤務、基地問題にかかわってきた元幹部は話した。

 

 

 ヤンバルクイナに代表される貴重な動植物が残る沖縄本島北部。人口が多い島の中南部へ水を供給する複数のダムもある。元幹部は「枯れ葉剤は後遺症の問題もあり、事実なら基地返還にも影響するはずだ」と指摘する。同訓練場は一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で一部返還で合意。順調なら数年以内に返還されることになるが、米側には汚染除去などの義務はない。

 

 

 隣接の同県名護市で環境保護に取り組む「ジュゴンの里」代表の東恩納琢磨さん(42)は「枯れ葉剤散布は聞いたことがないだけに被害が恐ろしい。これまでも別の基地で有害物質が発見された経緯がある。汚染をきれいに除去し、情報公開すべきだ」と話した。

 

 

水がめ地帯 散布は重大

 

 

 沖縄県環境審議会会長の桜井国俊沖縄大学長(環境学)の話 北部訓練場は沖縄県民の水がめでダムがつくられ続けており、その地帯で枯れ葉剤がまかれたということは重要な問題でたいへん気になる。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは環境の中では消えないからだ。米軍基地内で行われることは分かりにくく、枯れ葉剤の散布は県も知らされていないだろうし、われわれも知らなかった。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707091700_01.html

 

 

 

北部訓練場で枯れ葉剤 国と米軍に事実究明要求

 

 米軍が1961―62年に米軍北部訓練場などで猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を散布していたことが明らかになった。地元住民や環境保護団体からは散布に対する反発とともに「どの場所でどのくらい使用したのか、事実関係をはっきりすべきだ」と、県による立ち入り調査の実施や、情報公開を求める声が上がった。

 伊集盛久東村長は「事実だとしたら大変なこと。村民の健康が心配だ」と驚きを隠さない。出勤途中のラジオ放送で初めて知ったという。伊集村長は「枯れ葉剤の散布が事実だとすればゆゆしき問題だ。県民の水がめであるダムを抱える村として看過できない」と述べ、「まず事実関係をはっきりさせてもらいたい。その上で、村民を対象とした健康診断の実施を国に求めたい」と語った。

 北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、移設予定地の同村高江の仲嶺武夫区長も「とんでもないことだ」と絶句した。仲嶺区長は「このままでは住民は不安な気持ちで日々を過ごすしかない。まず保管、使用した場所の特定をしてほしい」と事実の究明を米軍に求めた。

 沖縄環境ネットワークの真喜志好一世話人は「米軍基地の中でどのような環境汚染があるのか、県は立ち入り調査を求めるべきだ。県民の命を守る立場から、日米地位協定を変えていくべきだ」と話した。

 世界自然保護基金(WWF)ジャパン自然保護室の花輪伸一主任は「ベトナムで大量に使われた枯れ葉剤と同じものだと思われる。ベトナムではいまだに森林が回復していなかったり、高濃度の汚染がある。沖縄でも見た目にはないが、土の中に残留している可能性が高い。米軍の責任であり、日本と協力してどんな悪影響を及ぼしているのか調べないといけない」と強調した。

 沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「周辺は『沖縄の水がめ』であり、どんな形で影響して

いるのか分からない。現地

の自然も含め、影響がどうでたのか検証、点検する必要がある」と語り「東村高江のヘリパッド移設問題なども併せ、抗議していきたい」と話した。

 

 

(琉球新報 7/9 16:01)

 

 

 

 

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070709-00000000-ryu-oki

 

 

 

2007年7月9日(月) 沖縄タイムス 夕刊 7面

 

ヘリパッド移設/車両立ち入り阻止

 

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で九日、移設作業に反対して座り込みを続ける同区住民ら約二十人が、訓練場のメーンゲートやN4地区などの入り口で、作業車などが訓練場内に立ち入るのを阻止している。

 

 

 午後一時現在、作業車は訓練場に入れていない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707091700_03.html

 

 

 

2007年7月9日(月) 沖縄タイムス 夕刊 7面

 

星条旗再び掲揚/沖国大准教授

 

 沖縄国際大学のピーター・シンプソン准教授が米軍普天間飛行場に向けて星条旗を逆さに掲揚し、渡久地朝明学長から中止を命令された件で、同准教授は九日午前、再び星条旗を研究室のベランダから逆さに掲揚した。

 

 

 同准教授は「普天間飛行場の危険を知らせるためと言論の自由を守るためであり、学長を怒らせるためではない」と説明した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707091700_06.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説、共同通信 関連記事(7月8日)

2007年7月8日(日) 沖縄タイムス 朝刊 25面

 

復帰35年 沖縄自立へ/超党派有志の会シンポ

 

 琉球大学アメリカ研究センターと沖縄対外問題研究会は七日、シンポジウム「復帰三十五年を迎えた沖縄の課題」を西原町の琉球大学で開いた。六月二十一日に「復帰三十五年沖縄宣言」を発表した「超党派有志の会」を中心に約七十人が参加、復帰後の沖縄の現状について理解を深めた。

 

 

 比嘉幹郎ブセナリゾート社長が「沖縄の自立的発展を目指して」をテーマに基調講演。「犠牲と差別の強要に対する反発だった」という沖縄の政治文化を挙げ、「自由は自立することで得られる。そのためには現在の依存社会からの脱却と、自分のことは自分たちで決めるという自治をやっていく必要がある」と述べた。

 

 

 基調講演に続き、東江平之元名桜大学長、高良鉄美琉大教授、我部政明同大教授、高嶺朝一沖縄対外問題研究会会員を加えパネルディスカッションが行われた。東江さんは「復帰前後は人権や自治など、県民の間ではさまざまな動揺があった。人権は復帰によって改善されたが、自治の不安は最近の教科書問題などで再燃している」と指摘。「沖縄のアイデンティティーを守るためにも自治を強めていくべきだ」と強調した。

 

 

 高嶺さんは「復帰と同時に沖縄も国政に参加したが、選挙をやればやるほど中央の利権が入り、沖縄の自立的発展の機会が失われているような皮肉を感じる」と危機感を示した。高良教授は「沖縄戦、米軍統治、復帰運動が現在につながっているという流れを今の若者に伝えることが大切。それが若い世代のエネルギーになる」と次世代に期待した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707081300_04.html

 

 

 

 

 

 

琉球新報 社説

 

防衛白書 いたずらに脅威あおるな

 

 抑止重視の「存在する自衛隊」から、対処重視の「より機能する自衛隊」へ―。6日の閣議で報告、了承された防衛省になって初の2007年版防衛白書の特徴を一言で表現すると、こうなろうか。つまり、本来の自衛隊の役割であった専守防衛から一歩進めて、さらに海外派遣についても能動的に推進していく、ということだろう。白書は「国際的な安全保障環境のための国際社会の取り組みに主体的、積極的に参加することが重要な課題」と強調する。

 しかし、そこにはなし崩し的なイラク派兵を中心とした、過去の海外派遣への総括・反省は見られない。いたずらに周辺国の脅威をあおって、軍事力の強化を強調するだけでは、国民の共感は得られまい。それだけでなく周辺のアジアの国々を刺激するだけだろう。

 一方、沖縄に関しては、普天間飛行場代替施設の建設など、ほぼ06年版を踏襲する形となった。名護市や県が求めているV字形滑走路の沖合修正にも触れておらず、到底、県民の納得できる内容ではない。「負担軽減」の道筋は見えず、むしろ、一連の米軍再編については説明の段階ではなく実施の段階に入っている、との印象だ。辺野古での環境現況調査(事前調査)に自衛艦を出動させた事実を見ても分かるが、基地建設をしゃにむに進めていく政府の姿勢を裏付けているといえよう。

 冷戦時代の自衛隊は日米安保体制の下で、仮想敵国ソ連の脅威に対する抑止力として存在意義があった。冷戦が終結し、ソ連が崩壊した今、世界は国際的なテロ組織の台頭、北朝鮮による核実験と弾道ミサイル開発に象徴される大量破壊兵器の拡散という時代に突入している。このような時代背景に基づき、白書は国際平和維持活動(PKO)やイラク復興支援特別措置法などによる自衛隊の海外派遣が「付随的活動」から「本来任務」に格上げされた意義を強調している。紛争地における“主役”の地位を狙っているのだろうか。

 省昇格をめぐっては当初、市民団体や識者などから「防衛庁のままで何がいけないのか」「シビリアンコントロール(文民統制)の堅持を」などとする批判や注文が噴出していた。これに、白書は「(統制が)弱まることはない」「諸外国は好意的」など、具体性がなく、批判にまともに応えたとは言い難い。

 周辺諸国の脅威をあおり、逆に中国は「防衛省誕生」に警戒感を持つ。これでは、互いに不信感を増幅させるだけで、双方にとって決して好ましい結果はもたらさない。軍事力の強化だけでなく、お互いが防衛政策の透明性を高めていく中で、例えば防衛交流などさまざまな取り組みが求められる。

 

 

(7/8 9:53)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25276-storytopic-11.html

 

 

 

(7月8日 共同通信の配信記事)

 

 

沖縄で枯れ葉剤散布 60年代、米軍訓練場 退役軍人省文書で判明 ダイオキシン残留の可能性

 【マニラ8日共同=舟越美夏】米軍がベトナム戦争で使用した、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を一九六一―六二年、沖縄の米軍北部訓練場(国頭村東村)などで散布、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定されていたことが八日までに米退役軍人省の公式文書で明らかになった。米領グアム島での枯れ葉剤使用の実態調査を進めているグアム議会議員らが入手した。

 米軍が沖縄に枯れ葉剤を貯蔵していたとの指摘はこれまでもあったが、貯蔵・使用が文書で認定されたのは初めて。文書は米軍が沖縄に枯れ葉剤を集積、ベトナムへの運搬基地としていたことをうかがわせており、現在も北部訓練場などの土壌にダイオキシンが残留している可能性もある。  同訓練場は九六年の日米両政府合意で面積七千八百ヘクタールのうち約四千ヘクタールの返還が決まっており、今月三日には一部返還に向けた工事が始まったばかり。

 周辺一帯は「沖縄の水がめ」ともいわれる地域で、汚染除去問題などを契機に県民の反米感情が高まれば、米軍基地返還や移設をめぐる協議の行方にも影響を与えそうだ。

 文書は後遺症の補償などを求めた元米兵に対する退役軍人省不服審判委員会の九八年一月十三日付の決定文。

 決定文によると、元米兵は六一年二月から六二年四月まで輸送兵として沖縄に赴任。枯れ葉剤が入ったドラム缶の輸送やドラム缶に枯れ葉剤を注入する作業のほか、北部訓練場内とその周辺の道路脇の雑草除去のために枯れ葉剤の散布を行った。上官は枯れ葉剤の害については説明せず、防護服なども与えられなかったため散布の際、枯れ葉剤が身体や衣服に付着した。

 元米兵は、このため前立腺がんになったと主張。決定は沖縄での枯れ葉剤使用を示す軍の公式書類はないとしたが、元米兵の証言内容や証拠は「矛盾がなく正当」とし、前立腺がんがダイオキシンを浴びたことに起因するのは確実として、補償などの権利を認めた。

周辺住民ら「初耳」 実態は不明のまま

 米軍による枯れ葉剤の散布が判明した沖縄の米軍北部訓練場(沖縄県東村など)は、部分返還に向け政府が米軍ヘリパッドの移設工事に着手したばかり。枯れ葉剤による汚染の有無などその実態は不明のままで、周辺住民は「汚染の程度や健康被害が分からないことが不安」と話している。

 「米軍の毒ガス移送が大きな問題になったことは知っているが、枯れ葉剤の使用が問題にされた記憶はない」。一九七二年の沖縄の本土復帰前から琉球政府(現沖縄県庁)に勤務、基地問題にかかわってきた元幹部は話した。

 ヤンバルクイナに代表される貴重な動植物が残る沖縄本島北部。人口が多い島の中南部へ水を供給する複数のダムもある。元幹部は「枯れ葉剤は後遺症の問題もあり、事実なら基地返還にも影響するはずだ」と指摘する。

 同訓練場は一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で一部返還で合意。順調なら数年以内に返還されることになるが、米側には汚染除去などの義務はない。

 隣接の同県名護市で環境保護に取り組む「ジュゴンの里」代表の東恩納琢磨さん(42)は「枯れ葉剤散布は聞いたことがないだけに被害が恐ろしい。これまでも別の基地で有害物質が発見された経緯がある。汚染をきれいに除去し、情報公開すべきだ」と話した。

 (共同=小宮伸太郎)

 一帯は沖縄の水がめ

 沖縄県環境審議会会長の桜井国俊沖縄大学長(環境学)の話 北部訓練場は沖縄県民の水がめでダムがつくられ続けており、その地帯で枯れ葉剤がまかれたということは重要な問題でたいへん気になる。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは環境の中では消えないからだ。米軍基地内で行われることは分かりにくく、枯れ葉剤の散布は県も知らされていないだろうし、われわれも知らなかった。

 枯れ葉剤とは 猛毒ダイオキシンを含んだ除草剤。米軍はベトナム戦争中の1961年から約10年間、密林を拠点に抵抗を続ける南ベトナム解放民族戦線への対策として、密林を枯らす目的で空中から散布した。米コロンビア大などによると、同戦争でまかれた枯れ葉剤に含まれるダイオキシン総量は最大366キロ。ダイオキシンは自然界では分解しにくく、発がん性や、生殖器官などに悪影響を与える内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)としての有害性が指摘される。散布地域ではがんや先天性異常児、流産、死産などが多発。帰還兵にも被害が出ている。

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(7月7日)

2007年7月7日(土) 朝刊 1面

 

県議ら「軍関与を確信」/「集団自決」証言次々

 

 沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」について、高校の日本史教科書から軍の関与を示す記述が文部科学省の教科書検定で削除された問題をめぐり、県議会文教厚生委員会(前島明男委員長)は六日、ほぼ一日かけて渡嘉敷、座間味島を視察した。計八人の体験者から「玉砕命令を聞いた」などの生々しい証言を聞いた委員らは視察後、「軍の関与は間違いなくあった」などと語り、軍関与の記述復活に向け、文科省への要請を続ける意向を示した。

 

 

 委員十一人と委員外一人の県議十二人は同日午前に渡嘉敷島での視察を終え、午後座間味島に渡った。

 

 

 六十七人が犠牲になった「産業組合壕」や、「集団自決」で亡くなった四百二人を含めた千二百二十人を祭った「平和之塔」などを訪れた。同島で平和学習ガイドブック作成のため、体験者から聞き取り調査をしている宮里芳和さん(59)から「体験者の七割は玉砕命令を聞いている」などの説明を受けた。

 

 

 座間味コミュニティセンターでは、沖縄戦時下、座間味村助役だった宮里盛秀さんの妹の宮平春子さん(80)ら体験者六人の証言を聞いた。「玉砕命令を聞いた」「梅沢隊長は『舌をかみ切って死になさい』と言った」などの証言が次々に飛び出した。体験者が声を詰まらせ、手を固く握り締めながら語る姿に、涙を流す委員もいた。

 

 

 委員の一人、仲里利信県議会議長は「これまで語らなかった体験者が、思い切って口を開いてくれた。それだけ教科書検定問題は重く受け止められているということだ。われわれも体験者の思いに真摯に向き合い、歴史を子どもたちに正しく伝えるため、検定意見が撤回されるまで動き続ける」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_02.html

 

 

 

2007年7月7日(土) 朝刊 2面

 

汚染土の除去完了/嘉手納燃料流出

 

施設庁長官「浄化し再利用」

 

 

 【東京】米空軍嘉手納基地内でのジェット燃料流出問題で、米空軍が実施している土壌入れ替え作業について北原巖男防衛施設庁長官は六日、米側から「五日に(汚染された)土壌の除去作業がすべて完了した」との報告を受けたことを明らかにした。定例会見で述べた。

 

 

 施設庁によると、同基地内に立ち入りした三日に米側から説明を受けた段階での除去土壌は五百三十五立方メートル。今後、新たな土での埋め直しを予定している。

 

 

 除去された土壌は基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング法」で約半年間かけて浄化し、基地内の建設工事事業で再利用されるという。

 

 

 北原長官は「地域住民が大変心配している事案なので、これからもしっかりフォローしていきたい。情報などがあれば、速やかに地域住民に説明したい」と述べた。

 

 

 小池百合子防衛相の就任については「沖縄担当大臣を経験され、沖縄の基地問題についても大変詳しい。県知事をはじめ多くの方々をご存じだ。施設庁職員一丸となって小池大臣の下、最優先である米軍再編の一日も早い実施に向けて努力したい」と語った。

 

 

 一方、米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の再開については「議題を含めて、具体的にいつということはまだ決まっていない」と述べるにとどめた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_03.html

 

 

 

2007年7月7日(土) 朝刊 31面

 

学長に撤回求める/星条旗逆さ掲揚中止命令

 

 【宜野湾】沖縄国際大学の准教授が普天間飛行場に向け星条旗を逆さに掲揚したことに渡久地朝明学長が中止を命令した件で、准教授が所属する総合文化学部と法学部の教授会は六日、「表現の自由に抵触する恐れがある」として中止の撤回と謝罪を求めた。一方、学長はホームページなどで「米国市民が不快感や屈辱感を抱く」との声明を出しており、学内の言論活動をめぐり議論を呼びそうだ。

 

 

 総合文化学部の小熊誠学部長は「本来、ヘリ墜落事故が起きた大学として訴えるべきで、学長は県民の気持ちを考えるべきだ」と糾弾。学部として星条旗を掲げたピーター・シンプソン准教授の行動に支持を表明した。

 

 

 法学部の佐藤学教授によると、今回のキャンペーンは象徴的言論で法律には反しないという。佐藤教授は「学長の主張は教員のあらゆる表現活動に拡大解釈される危険性がある」と指摘。中止要求は言論活動の委縮につながるとして「大学の自殺行為だ」と批判した。

 

 

 これに対し、大学当局は事前に施設の使用許可がなかったと説明。学部の決議については「現時点では何も聞いておらず、コメントできない」としている。

 

 

 シンプソン准教授は週明けに正式に許可を申し入れ、拒否された場合は署名運動を行う考えだ。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_05.html

 

 

 

2007年7月7日(土) 朝刊 30面

 

平和資料館に300万人/改築7年で大台達成

 

 【糸満】糸満市摩文仁の県平和祈念資料館(宮城智子館長)の延べ入館者数が六日、二〇〇〇年四月に改築・移転してから七年で三百万人を突破し、修学旅行で訪れた仲野宏美さん=東京都豊島学院高二年=に記念品が贈られた。

 

 

 突然の朗報に驚いた表情の仲野さん。「素晴らしい記念に加えられたことがうれしい。これからも資料館にたくさんの方が訪れるといいな」と喜びを語った。

 

 

 宮城館長は「親子で訪れることができるような、県民に密着した資料館として取り組みを進めていきたい」と述べた。

 

 

 同館は改築・移転以来、年平均約四十万人が来館しており、〇六年六月に二百五十万人を突破していた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_06.html

 

 

 

琉球新報 社説

 

「集団自決」再可決 それでも国は拒否なのか

 

 県議会文教厚生委員会が間髪を入れず新たに動いた。

 文部科学省による教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する日本軍の強制をめぐる記述が修正・削除された問題で、同委員会は5日、検定意見の撤回と記述回復を求める意見書案を再度、本会議に提出することを全会一致で可決した。6日には委員会のメンバー全員が渡嘉敷、座間味両島に渡り、集団自決の生存者らから当時の様子などを聞き取り調査した。

 県議会の迅速な対応は多くの県民から共感され、支持を集めるだろう。

 議会が同一定例会中に同じ趣旨の意見書をあらためて可決するのは初めてである。2日前、県や県議会を含む県内6団体の代表らが文科省を訪れ、検定撤回を要請した際の対応は「門前払い」同様だった。煮え切らない文科省の態度に、不満や憤りが一気に沸騰した形だ。

 新たな意見書案は、文科省の姿勢について「あらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で(教科用図書検定調査)審議会に諮問している」と検定手続きの在り方を厳しく批判、記述復活を再度求める内容だ。

 係争中の裁判を検定意見の参考資料としたことには「一方の当事者の主張のみを取り上げている」と指摘。「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」とした。当然の結論である。

 それにしても、要請団への文科省の回答は私たちの認識とは懸け離れすぎている。撤回要求の拒否理由は「審議会の決定事項」とのほぼ一点張りだ。県民を納得させられるはずがない。

 「審議会を隠れみのにしているにすぎない」(平良宗潤・県歴史教育者協議会委員長)といった批判に対し、文科省はどう答えるのだろうか。

 解せないのは審議会の態度も同様だ。検定意見を承認した論拠や審議の過程などは不透明なままで、弁明も一切ない。

 そもそも審議会のメンバーすら分かっていない。文科省を含め説明責任を放棄していると批判されても仕方がない。

 安倍晋三首相の見解もぜひ聞いてみたい。

 軍命否定論は、従軍慰安婦問題をめぐる安倍首相の「官憲が人さらいのように連れて行く強制性はなかった」との論法と根底で重なり合っている。そんな批判にどう反論するのだろう。

 県議会の意見書案は11日の本会議で全会一致で可決される。政府は今度こそ、県民の撤回要求に誠実に向き合い、納得いく回答を示さねばならない。

 

 

(7/7 9:56)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25250-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月6日)

2007年7月6日(金) 朝刊 1面

 

「軍命受けた」助役明言/妹2人が初めて証言

 

座間味「集団自決」45年3月25日夜

 

 

 沖縄戦時下、座間味村で起きた「集団自決(強制集団死)」で、当時の助役が「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するように言われている」と話していたことが、助役の妹二人の証言で六日までに分かった。当事者が初めて証言した。「集団自決」の軍関与が教科書検定で削除され、軍命の有無をめぐる裁判が進む中、日本軍の軍命を示す新証言として注目される。(編集委員・謝花直美)

 

 

 証言したのは「集団自決」で亡くなった当時の座間味村助役の宮里盛秀さんの妹・宮平春子さん(80)=座間味村=と宮村トキ子さん(75)=沖縄市

 

 

 座間味島への米軍上陸が目前となった一九四五年三月二十五日夜。春子さんら家族と親族計三十人が避難する座間味集落内の家族壕に、盛秀さんが来た。父・盛永さんに対し「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するよう言われている。間違いなく上陸になる。国の命令だから、潔く一緒に自決しましょう」というのを春子さんが聞いた。午後十一時半に忠魂碑前に集合することになったことも伝えた。

 

 

 集合時間が近づき、壕から出る際、トキ子さんの目前で、盛永さんは盛秀さんを引き留めようとした。盛秀さんは「お父さん、軍から命令が来ているんです。もう、いよいよですよ」と答えた。

 

 

 その後、盛秀さんは産業組合壕へ移動。同壕の「集団自決」で盛秀さんら家族を含め六十七人が亡くなった。

 

 

 当時、盛秀さんは防衛隊長も兼ね、軍の命令が村や住民に出されるときには、盛秀さんを通した。

 

 

 春子さんもトキ子さんも、沖縄県史や座間味村史の編集作業が行われた七〇―八〇年代に同島におらず、証言の機会がなかった。

 

 

 座間味島の「集団自決」の軍命を巡り、岩波書店と大江健三郎さんが名誉棄損で訴えられた「集団自決」訴訟では、元戦隊長が、助役が軍命を出したと主張。さらに訴訟資料を参考に文科省の教科書検定で、「集団自決」記述に修正意見がつき、日本軍関与が削除されている。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061300_01.html

 

 

 

2007年7月6日(金) 朝刊 1面

 

「集団自決」再び意見書 県議会委可決

 

 高校歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与が削除された教科書検定問題で、県議会の文教厚生委員会(前島明男委員長)は五日、検定意見撤回と「集団自決」の記述回復を拒否する文部科学省の対応を批判、あらためて検定意見撤回と記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決した。文科省への強い不満を表し、記述回復に向けた要請行動をさらに強化するのが目的。文案の最終的な調整を行い、十一日の最終本会議で可決される見込み。県議会は六月二十二日に検定意見の撤回などを求める意見書を全会一致で可決した。県議会事務局によると、同一の問題で、一定例会中に二度の意見書を可決するのは初めて。

 

 

 文厚委では、安里カツ子副知事らとともに県内の行政・議会六団体代表の一人として四日に文科省などに要請した仲里利信議長が同省の対応などを説明した。仲里議長は「県民代表が検定意見を撤回させる強い決意で要請したが、文科省は審議官が対応し、『教科図書検定調査審議会が決めたことに口出しできない』と撤回を拒否した。撤回に向けて、再度、意見書を可決し、要請する必要がある」とした。六日に予定されている渡嘉敷、座間味両島への視察中、文案の最終的な調整を行うことを確認した。

 

 

 意見書案は、県議会や県内四十一市町村の全議会で意見書を可決したことを受けて県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会の代表ら六人の要請に対し、文科省が意見書撤回と記述の回復を拒否した経緯を明記し、「同省の回答は容認できない」と批判した。

 

 

 県議会や県内四十一市町村のすべての議会で意見書が可決されたことを挙げ、「県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことは遺憾」と訴えた。さらに「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実。沖縄戦の実相を正しく伝え、悲惨な戦争を再び起こさないようにするため」と検定意見撤回と記述の回復を再度要請している。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061300_02.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月6日朝刊)

 

 

[検定撤回要請]

 

まっとうな見解が聞きたい

 

 県議会と県内四十一のすべての市町村議会が足並みをそろえて意見書を採択し、県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会の六団体が連名で政府に要請した。めったにないことである。

 

 

 教科書検定で、沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」の記述部分に検定意見が付され、日本軍関与の表現が削除・修正させられたことについて、要請書はこう指摘している。

 

 

 「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである」

 

 

 「筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた沖縄県民にとって、今回の削除・修正は到底容認できるものではない」

 

 

 簡にして要を得た文章だ。沖縄戦を体験したウチナーンチュの、掛け値のない思いが盛り込まれている。

 

 

 だが、政府が今回の要請の重みを正面から受け止め、真摯に対応したとは言い難い。

 

 

 伊吹文明文科相への面談申し入れにもかかわらず、応対したのは、大臣でもなく副大臣でもなく、事務方のトップでもなく、審議官であった。

 

 

 文科省の布村幸彦審議官は「教科書用図書検定調査審議会が決めたこと」だと説明したという。

 

 

 その一方で、鈴木宗男衆院議員の質問主意書に対して、政府は三日、「沖縄戦の実態について誤解を生じる恐れのある表現に適切に検定意見を付した」との答弁書を閣議で決めている。

 

 

 六月二十三日の慰霊の日に、安倍晋三首相は記者団からこの問題を問われ、自身の見解を述べるのを避けた。私たちが聞きたくて知りたいのは、安倍首相の見解である。

 

 

 果たしてどの部分が「適切」なのか。沖縄の要請に対してどう思うのか。教科書の元の記述と日本軍関与の表現を削除・修正することと、果たしてどちらが「沖縄戦の実態について誤解を生じ」させることになるのか。

 

 

 実は、「集団自決」については、軍の関与を国として認定し、援護法を適用したケースがある。援護法がらみの軍関与の肯定と、教科書検定がらみの軍関与の記述削除という二重基準を、国はどう説明するのか。

 

 

 今回の教科書検定問題を通してあらためて思うのは、沖縄戦に関する正確な事実をできるだけ数多く、幅広く記録・保存し、戦争の実相を後世に語り継ぐことの大切さである。「集団自決」に関する再調査や県民大会、体験者の話を聞く県民向けのシンポジウムなどを検討してもいいのではないか。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070706.html#no_1

 

 

 

琉球新報 社説

 

小池新防衛相 信頼される省への転換を

 

 初の女性防衛大臣に4日、小池百合子前首相補佐官が就任した。沖縄担当相も務めた新大臣だが、普天間移設問題では、早くも「日米合意案」を強行する構えだ。「沖縄にとっては厳しい大臣」との批判も出ている。新大臣にはまず「聞く耳を持つ大臣」への転換を促したい。

 近ごろの防衛省には、違和感と危機感を感じる国民も多いだろう。

 外敵を監視するかと思いきや、国民を監視していた情報保全隊の問題。防衛施設庁では談合事件、自衛隊幹部の機密情報持ち出し問題もあった。

 普天間移設問題では、辺野古沖の環境調査に掃海母艦を派遣し、「国民に大砲を向ける暴挙」との批判も受けた。

 教科書検定では、沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制に関する記述の削除問題で、久間章生前防衛相が軍命の有無を問われ「そんな昔のことは私は知りません」。揚げ句は「防衛省は日本軍のことを引き継いだわけでない」とやる。

 過去や歴史に学ばない。そんな姿勢や認識だから、今なお原爆症で苦しむ多くの国民の存在が頭から消えている。だから、ついには原爆投下も「しょうがない」との発言が飛び出す。

 平時においてさえ、この程度の認識。有事においては、果たしてどうなることか。これでは、「一体、自衛隊は何から何を守っているのか」「有事に国民を守れるのか」との疑問や不信の声が上がるのも、しょうがない。

 「軍は民を守らない」のが沖縄戦で県民が学んだ教訓である。そして、普天間移設問題では「自衛隊は国民に大砲を向けてまでも、米軍基地建設を強行する」という悲しい現実を目の当たりにした。

 歴史に学ばず、国民の声に耳を貸さない。だから久間前防衛相は舌禍を起こした。辞任会見でも「しょうがない」を繰り返すあたりは、舌禍ではなく“確信犯”とみられても、しょうがない。

 そんな大臣の後だ。小池新大臣には、まず「民の声」を聴く耳を、そして真摯(しんし)に歴史と向き合い、沖縄戦の史実を知ってほしい。

 防衛省・自衛隊は国民を監視せず、国民監視の下で、国民に銃を向けず、国民の側に立ち、国民の安全と豊かさを、国を守る本務を全うしてほしい。その改革の指揮を小池新大臣が担う。期待は重い。

 在沖米総領事館は「前大臣より話しやすい。移設問題に追い風」と小池新大臣を歓迎する。一方で、内閣府幹部すら「沖縄には厳しい大臣の就任」と受け止める。

 沖縄担当相として、かりゆしウエアの普及や離島・へき地への医師確保、北部振興策の継続に強い政治力を発揮した。次は基地問題。県民が望む真の解決策の実現に、持ち前の政治力の発揮を期待したい。

 

 

(7/6 9:59)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25227-storytopic-11.html

 

 

 

2007年7月6日(金) 夕刊 1面

 

「集団自決」の現場視察 県議会文厚委

 

 「史実のねじ曲げは絶対に許さない」。県議会文教厚生委員会(前島明男委員長)の全委員が六日、沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」があった慶良間諸島を訪れた。「集団自決」の現場を視察し、体験者の証言を聞くなどして、県議会でも「集団自決」への日本軍の関与を独自に検証し、文科省に検定意見撤回を再度、要請する。県議団は「軍の関与という事実を教科書から消させない」と思いを強くしていた。

 

 

 視察には、同委員会所属の県議や県職員計十六人が参加した。午前には渡嘉敷島を訪れ、心ならずも自ら命を絶つことを強制された三百二十九人の慰霊碑「白玉之塔」や、「集団自決」現場を視察した。

 

 

 「集団自決」の現場では、体験者の金城武徳さん(76)と吉川嘉勝さん(68)が当時の状況を語った。金城さんは「軍の命令があり、村民は集落から移動した。米軍の迫撃砲が着弾する中で村民が集合し、村長が『天皇陛下万歳』と叫び、手榴弾が破裂した」と証言した。

 

 

 吉川さんは「防衛隊員だった義兄が手榴弾を爆発させようとしたが、爆発しなかった。父は火をおこし、その中に手榴弾を放り込んで爆発させようと試みた」「母が『死ぬのはいつでもできるじゃないか。手榴弾を捨てなさい』と叫び、そうして逃げられた」と証言した。

 

 

 引き続き、渡嘉敷村中央公民館で金城さんらへの質疑応答があった。吉川さんは当時、村長の助手をしていた兄の「米軍上陸の直前、日本軍は村役場を通じて十七歳以下の少年に厳重に保管していた手榴弾を二発手渡した。一発は米軍に、もう一発は自決用にということだった」との証言を紹介し、「日本軍による指示、誘導、命令、場の設定がなければ『集団自決』は絶対になかった」と断言した。

 

 

 証言を聞き終えた前島委員長は「検定意見削除は県民の総意だ。文科省にさらに強く訴えていく」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061700_01.html

 

 

 

2007年7月6日(金) 夕刊 1面

 

普天間 淡々と記述/07年版防衛白書

 

 【東京】二〇〇七年版防衛白書の沖縄関係の記述は、前年版に一年間の基地問題の動きを追記しただけで、目新しさはない。こう着状態にある米軍普天間飛行場の移設問題についても進ちょく状況を淡々と記述するだけにとどめている。

 

 

 前年版には、「普天間飛行場を県外に移設できないのか」などQ&A形式のコラム3本が掲載されたが、今回はなくなった。

 

 

 普天間移設関係で追記されたのは、昨年八月から開かれている普天間飛行場の移設に関する協議会の開催状況や名護市キャンプ・シュワブ沖での現況調査(事前調査)を開始したことなど。県、名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動などに関する記述はない。

 

 

 このほか、昨年九月から米軍嘉手納基地に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されたことや読谷飛行場など基地返還の進ちょく状況が記されている。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061700_03.html