2008年3月3日(月) 朝刊 23面
建造物侵入 米兵逮捕
沖縄市知花の県建設業協会中部支部のガラス戸を割って室内に忍び込んだとして、沖縄署は二日、建造物侵入の容疑で米空軍嘉手納基地所属の上等兵ウェスリー・タフト容疑者(21)を逮捕した。容疑を認めているという。タフト容疑者は「キャンプ・シールズのフェンスを乗り越えて基地外に出た」と話しており、呼気一リットル当たり〇・三六ミリグラムのアルコール分が検出された。侵入した事務所はフェンスを越えたすぐ近くにあった。
調べでは、タフト容疑者は二日午前六時四十分ごろ、協会のガラス戸などガラス二枚(五万円相当)を割って鍵を開け、室内に侵入した疑い。
同署によると、同日午前七時ごろ、事務所の異常警報で駆け付けた警備員がガラスの破損を確認し、警察に通報。付近を捜索していた沖縄署署員が、木の棒を持って歩いていたタフト容疑者を見つけた。同容疑者は草むらの中に逃走、当初は否認していたが、任意同行して詳しく事情を聴いたところ、容疑を認めたため逮捕した。
ガラスを割るときに使ったとみられる別の鉄の棒も近くの草むらで発見された。室内に侵入した形跡はあるが、物や金が取られた様子はないという。
タフト容疑者は発見当時、私服で、フェンスを乗り越える際にできたとみられるかすり傷があるという。米軍は現在、県内の米兵や家族を原則外出禁止にしている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031300_03.html
2008年3月3日(月) 朝刊 23面
米車両出火 立ち往生/名護市汀間
【北部】二日午前十時四十五分ごろ、北部訓練場へ向かっていた米海兵隊の大型車両一台が名護市汀間の国道331号で出火した。火が出た車両を含めて隊列の大型車両三台が停止し、二時間以上にわたって交通が片側一車線通行に制限された。
目撃者によると、大型車両のタイヤ付近から煙が上がったという。キャンプ・シュワブの消防車が駆けつけた。引火を避けるため、車両から水タンクやテントなどの装備品を道路脇に運ぶなどし、一時、騒然とした。
ブレーキ系統の不具合が原因の可能性がある。
現場にいた米軍幹部によると、キャンプ・ハンセン(金武町)所属の医療部隊で、北部訓練場での野営訓練に向かう途中だった。搭載していたのは「水や食料などで危険物はなかった」という。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031300_04.html
2008年3月3日(月) 夕刊 1・5面
知事「綱紀粛正に疑念」/米軍事件続発
外出禁止措置が続く中、米空軍嘉手納基地所属の上等兵が基地外に出て、沖縄市の県建設業協会中部支部のガラス戸を割り侵入した事件で、仲井真弘多知事は三日午前、「日米両政府や米軍が再発防止策を検討している最中、相次ぐ事件の発生は米軍の取り組みに疑念を抱かせる。綱紀粛正が徹底されていないと言わざるを得ず、極めて遺憾」とのコメントを発表した。米軍に対し、「あらためて隊員一人一人に至るまで、より一層の綱紀粛正を徹底し、事件・事故の再発防止に万全を期すよう強く求める」としている。
仲井真知事は、登庁の際にも「よほど綱紀がたるんでいるのだろう。ちょっとあきれている」と述べ、外出禁止措置はしばらく続けるべきだ―との認識を示した。
県の上原昭知事公室長は同日午前、在日米軍沖縄調整事務所長のマーク・フランクリン大佐と第一八航空団司令官のブレット・ウィリアムズ准将に、綱紀粛正の一層の徹底と事件・事故の再発防止を口頭で申し入れた。
米軍は米兵による事件続発を受け、先月二十日朝から四軍対象に外出禁止措置を実施している。リチャード・ジルマー四軍調整官らが、三日に解除するかどうか検討することになっている。
◇ ◇ ◇
禁足令 早速破たん
【中部】「再発防止策は機能しているのか」。米空軍嘉手納基地所属の上等兵が、沖縄市知花の事務所のガラス戸を割り侵入した事件に、基地周辺自治体の首長らは、日米両政府による再発防止策の実効性に疑問の声を上げ、怒った。
沖縄市の東門美津子市長は「今回の外出禁止令について、兵士たちはどう認識しているのか。再発防止の取り組みはどうなっているのか。まったく理解できない」と、あきれた表情。
米軍関係者が多く生活する北谷町の野国昌春町長は「相次ぐ事件の反省が米軍全体に行き届いていない証拠で、組織の統制が取れていない。容疑者がもし民間人と接触していれば、もっとひどい事件になったかもしれない。外出禁止令期間中にこんなことが続けば、住民の不安は高まる一方だ」と語気を強めた。
嘉手納町議会基地対策特別委員会の田中康榮委員長は、外出禁止令が守られないことを象徴する事例だと指摘。「米軍は綱紀粛正を訴えるが口先だけ。この状況では、住民側も自らの安全を守る方法を考えるべきではないか」と訴える。
二十三日の県民大会では「何が米軍人犯罪の抑止につながるか、根本的な解決策を話し合う場になるといい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031700_01.html
2008年3月3日(月) 夕刊 5面
基地警備員 パワハラ提訴
九カ月間仕事を与えられず事務所内で待機を命じられるなど、パワーハラスメントで精神的苦痛を受けたとして、在沖米海兵隊日本人警備大隊に所属していた基地従業員の男性(41)が三日午後、元上司の従業員男性に三百万円の損害賠償を求める訴えを那覇地裁に起こした。
原告の男性は「司令官をはじめ、米軍人は数年で交代する。長年いる少数の日本人幹部が強権を振るっており、職場は異常な状態。パワハラに泣き寝入りする人をこれ上増やさないために提訴した」と語った。
原告の男性によると、二〇〇六年一月から十月までの九カ月間、キャンプ瑞慶覧内の警備大隊事務所に出勤した上で、何もせずいすに座っているように命じられた。理由は明示されないままで、新聞などを読むことも禁じられたという。
さらに、男性が犯罪に関与したかのような張り紙を海兵隊基地の各ゲートに掲示し、名誉を傷つけられたとしている。
海兵隊の基地ゲートの警備に当たる同大隊では、憲兵司令官から基地外で拳銃を携帯するよう命じられたり、パワハラを訴える署名が隊員の過半数に達し、沖縄防衛局が調査を始めるなど、トラブルが頻発している。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803031700_02.html
2008年3月4日(火) 朝刊 1面
在沖米軍 外出禁止 夜間のみ
軍属・家族対象外に
在沖米軍は三日、相次ぐ米兵の事件を受け、沖縄駐留の全隊員と軍属、家族の外出を原則禁止とした「反省の期間」を終了すると発表した。軍属と家族を対象から除外した上で、軍人については午後十時から午前五時までの夜間外出制限に大幅緩和する。軍人については基地外の飲酒を全面禁止する。午前五時以降に基地内に戻った場合や、基地外居住者に対するチェック体制などは不明。二日には外出禁止措置を破った米空軍嘉手納基地所属の上等兵が、沖縄市の民間施設への建造物侵入容疑で逮捕されたばかりで、外出制限措置の「緩和」に地元の反発が強まっている。
在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官らが三日、対応を協議。夜間外出制限の対象軍人は年齢や階級に関係なく全隊員に適用することにした。また、基地外に外出した軍人は午後十時までに、所在地から基地や自宅に向けて出発しなければならない、と規定している。在沖米軍は二月十日の暴行事件後、別の暴行事件や住居侵入など米兵による事件が多発したことを受け、「反省の期間」として、軍人・軍属とその家族に対し、二月二十日朝から外出禁止措置を実施。二十五日に継続を表明した後、今月三日に再検討するとしていた。
ジルマー四軍調整官は「夜間外出禁止令と、日本側と協力して実施する防止策を組み合わせることで犯罪発生の可能性を削減しながら、隊員や軍属らにとって最良の環境を提供できる」としている。
「県民大会参加を」
実行委準備会 超党派訴え
米兵による事件続発を受け、二十三日に抗議の県民大会開催を目指す実行委員会準備会は三日、県庁で記者会見し、「これ以上の犠牲者を出さないために超党派の県民大会を開催し、県民の総意を早急に明らかにしなければならない」と、参加を呼び掛けるアピールを発表した。
二日にも沖縄市で空軍兵が建造物侵入容疑で逮捕されるなど、日米両政府による再発防止策に効果がないことは明白だと指摘。大会の要求項目とする基地の整理・縮小などは県議会も決議しているとして、不参加を決めている最大会派の自民にも再考を要請した。
会見した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「再教育は兵士に浸透していない。まるで戦後の無法状態だ」と憤った。県婦人連合会の小渡ハル子会長も「県民が一丸になるべきで、誰が得をするという問題ではない。自民も県も変わってくれると期待している」と語った。
六団体による準備会はアピールで、暴行事件の容疑者が釈放されたことについて、「被害者には一点の瑕疵がないにもかかわらず、つらい思いをさせ、支えられなかったことを厳しく受け止めなければならない」と表明。「私たち大人が日米両政府や米軍に要求し、解決を図る」と強調した。
四十一市町村と各議会、教科書検定問題の県民大会を支えた二百五十以上の団体にも協力を呼び掛ける。また、県内両紙に大会の広告を出すため、個人・団体に協賛を募る。八日に実行委員会の結成総会を開き、大会準備を加速させる。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_01.html
2008年3月4日(火) 朝刊 29面
「反省やはり形だけ」/首長や団体批判強める
米兵による事件が引きも切らない中、米軍は三日、「反省の期間」終了を一方的に通告し、外出禁止を大幅に緩和した。「反省はやはり形だけ」「また事件が起きたらどう責任を取るのか」。首長や市民団体からは反発の声が上がった。
野国昌春北谷町長は「外出禁止令は米軍の一種のパフォーマンスにすぎない」と厳しく批判。「組織のたるみで、度重なる事件について指導が下部の兵士まで行き届いていない。反省の態度がない中で緩和は理解できない」と語気を強めた。
沖縄市議会は米空軍兵の建造物侵入事件について基地に関する調査特別委員会を五日に開き、対応を協議する。与那嶺克枝委員長は「外出を禁止しても事件が発生する事態を米軍がどうとらえているのか疑問だ。機能していない措置を、さらに緩めるのか」とあきれた様子で話した。
県婦人連合会の小渡ハル子会長は、「外出禁止令を出すなら、三カ月は続けなければ効果がない。反省はやはり形だけだった」と憤る。「戦後六十年以上この調子。県民大会でまとめて追及していく」と語った。
「あり得ないタイミングだ。緩和してまた事件が起きたら、どう責任を取るのか」と絶句した沖縄平和運動センターの山城博治事務局長。「私たちに残されているのは、抗議の世論を高めることだけだ」と訴えた。
県平和委員会の大久保康裕事務局長は「基地がある限り間違いなくまた犯罪は起こる。外出禁止自体が、その場しのぎの反省のポーズでしかなかった」と断じ、「そのポーズすらしないというのは、開き直りそのものだ」と非難した。一方、北谷町で飲食店を営む米国人(33)は「家族や軍属の外出禁止が解除されたのは当然」と歓迎した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_02.html
2008年3月4日(火) 朝刊 2面
ワーキング班 7日会合/日米で再発防止策調整
米兵暴行事件を受け、外務省は日米の関係機関が一堂に会し、米軍人関係者による事件・事故の再発防止策を話し合うワーキングチーム会合を、七日午前、那覇市の同省沖縄事務所で開催することを決めた。外出制限措置の徹底のほか、日米の共同パトロールや防犯カメラの設置など日米と地元で見解の分かれている防止策についても意見交換し、調整を図る。
同チームは、国や県のほか県内の米軍基地所在市町村や商工会、在沖米軍などが構成メンバー。
県は先月二十二日、「米軍人等犯罪防止対策に関する検討会議」(会長・仲井真弘多知事)で外出制限措置の徹底や、規律違反者とその上司の責任の厳格化など七項目、計二十の防止対策をまとめた。
県はワーキングチームなどに提案し、実現を図る考えを示しており、今回の会合で具体的な対応策の方向付けが図られる見込み。
米軍人関係者の事件・事故防止をめぐっては、在日米軍の作業部会が近く在沖米軍を訪ね、再発防止策の検討のための意見聴取を予定している。
ワーキングチームの協議内容が、同作業部会のヒアリングにも反映される見通しだ。
ワーキングチームの全体会合は通常年一回開催し、前回は昨年八月に開かれた。
今回は米兵暴行事件などを受け、急きょ開催が決まった。
「非常に遺憾」
米軍事件に外務次官
【東京】藪中三十二外務事務次官は三日の定例会見で、米軍関係者による事件が相次いでいることについて、「米軍、米政府も非常に重く受け止め、相当厳しい措置を取ってきている中で再発するというのは、非常に残念で、遺憾だ」と不快感を示した。
その上で、「日米で取り組んでいる再発防止策の策定について、これをきちんと実行に移すということが、なお一層大事になっている」との考えを強調した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_03.html
2008年3月4日(火) 朝刊 1面
国・4業者 あすにも和解/辺野古調査 超過金訴訟
【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖移設計画の中止に伴い契約解除された、ボーリング地質調査などの受注業者四社が、作業の長期化などで生じた計約二十二億六千万円の契約超過分の支払いを国に求め東京地裁に起こした訴訟で、国と業者側が五日にも和解する予定であることが三日、分かった。国は業者側の要求を大筋で受け入れる方向で最終調整している。予算措置を経ていない公金支出の責任を負う異例の事態を受け、防衛省は今後、関係者の処分などの検討に入る。
訴訟は、契約解除された十三社のうち四社が、二〇〇六年から相次いで提訴。審理は、併合されないまま、各十回程度行われてきたという。
契約額の超過分について、防衛省は当初、「財務会計上の再契約などによる超過の負担行為措置を取っていない以上、予算支出はできない」などと難色を示していた。
しかし、業者側は「作業船の待機や現場への航行、夜間作業などは那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)職員の了解、指示を得たもの」として、再契約などの措置を怠ったのは国の手続きミスと指摘。
国は今回、こうした業者側の意向を受け入れざるを得ないと判断したもようだ。名護市辺野古沖への移設は、現在の在日米軍再編に伴うキャンプ・シュワブ沿岸部への移設案(V字案)の前に日米特別行動委員会(SACO)で日米合意された計画。〇四年九月に現場でのボーリング調査が着手されたが、辺野古沖では連日、反対する市民団体らが作業を阻み、計画は断念に追い込まれた。
同計画に関する予算総額は〇一年度から〇五年度までの五年間の歳出ベースで六十五億三千万円に上るが、今回の超過金などでさらに膨れ上がることになる。(島袋晋作)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_04.html
2008年3月4日(火) 朝刊 29面
「軍隊は住民守らぬ」/暴行事件通し広島の中学生
「この事件で確信したのは、軍隊はやはり住民を守らないということだ」「みんなを助けるために基地を置いているという理屈はまったく通りません」。沖縄戦を学んだ広島県の中学生たちが、米兵による暴行事件を本紙を通じて知り、沖縄の問題や軍隊、基地のつながりについて深く考え始めている。広島県福山市にある私立盈進中学校の二年生百五十三人は、一年かけて演劇や映画鑑賞、体験者の講演会などさまざまな形で沖縄学習に取り組んだ。沖縄戦の住民虐殺や「集団自決(強制集団死)」も学び、一月三十一日からは二泊三日の日程で、現地学習も行った。平和の礎など南部戦跡や読谷村のチビチリガマ、宜野湾市の佐喜眞美術館などを回り、さまざまな戦争体験に耳を傾けた。
広島に戻り沖縄問題を深く考えようとしていたところで米兵暴行事件が起きた。事件後の二月十三日のロングホームルームで二年生四クラスすべてが、沖縄タイムスの号外や詳細を伝える翌日の夕刊の記事をプリントして配り担任が読み上げた。生徒たちは全国紙などの本土紙では、分からない事件の大きさと重さを知り、熱心に聞き入ったという。その後書いた沖縄学習の感想文では、約半数の生徒が事件に触れた。
女子生徒は「沖縄に米軍基地があるのは日本を守るためと言われています。では、日本を守るための米兵が何故日本人を傷つけるのでしょう?」と疑問を投げ掛けた。
「日本を守ってくれるはずの米兵が逆に暴行するなどありえない話だ」と記す生徒や、「こんな事件が起きているのに日本は平和だとは言えないと思います。(略)日本はこの問題に真正面から向かっていくべきだと思います」と書く女子生徒も。
男子生徒は「この事件は沖縄だけの問題ではなく日本全体の問題として考えないといけないと思う。そして沖縄という地をもっと平和な地にしたい」と訴えている。
学年主任として沖縄学習を進めてきた前田秀忠教諭は「沖縄で多くの人と出会うことで十代の敏感な感性が刺激を受けたのだろう。歴史を学ぶだけでなく自ら歴史と向き合う意志を感じ心強い。これからを生きる土台になる」と話している。生徒たちの感想は文集にまとめられ、関係者などに配ることにしている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041300_05.html
琉球新報 社説
やまぬ米兵犯罪 「禁足令」では解決しない
米兵による不祥事はやむ気配がない。米軍当局の兵士に対する教育や指導はどうなっているのか。
何も難しいことを求めているのではない。社会の秩序やルールを尊重するのは基本的な当たり前のことだ。それがなぜ守れないのか。憤りを通り越してあきれ返る。
米空軍嘉手納基地所属の上等兵が2日、建造物侵入容疑で沖縄署に逮捕された。沖縄市知花の民間事務所のガラス戸などを割って事務所内に侵入した疑いだ。米兵は容疑を認めている。
2月上旬に発生した女子中学生暴行事件やその後も米兵関連の事件が頻発したことを受け、在日米軍は2月20日から米軍人と軍属、家族らに対し、終日の外出禁止措置を取っている。そんな最中に起きた事件である。
調べによると、同容疑者は酒に酔い、禁を破って基地のフェンスを乗り越え、揚げ句に民間事務所のガラスを鉄製の棒で割って侵入した。言い訳できない蛮行である。軽微な罪種だからといって許されるものではない。
禁足令は「反省の日」として取られた措置だ。事件を未然に防ぐ狙いもある。しかし今回の事件は、禁足令が再発防止策として効果的に働いていないことを物語る。米軍当局はこの事実から目を背けてはならない。
相次ぐ米兵事件に対し、米国務長官や駐日米大使、在沖米四軍調整官らがこぞって謝罪し、綱紀粛正を約束したが、あれは何だったのか。空手形となったいま、しらじらしく響く。
四軍調整官を頂点とする在沖米軍の指揮・命令系統が末端まで行き届いていないのではないか。そんな疑念が消えない。組織として機能不全に陥っているとしか言いようがない。
仲井真弘多知事は、米軍の取り組みに疑問を呈した上で「綱紀粛正が徹底されていないと言わざるを得ない」と批判。仲里全輝副知事は「犯罪の軽重ではない。これは軍隊としてだけではなく、米国の恥辱の問題だ」と指弾したが、的を射た発言であり、多くの県民もまた同じ思いだろう。
なぜ事件、事故はいつまでも繰り返されるのか。規律の緩みに起因していることは、まず間違いあるまい。再発防止策として警察と米側による共同パトロールや防犯カメラの設置などが、日米間で検討されている。だが、法の順守などの基本的な要件が徹底して満たされない限り、実効性は望むべくもない。根本的な問題にメスを入れるべきだ。
県民にこれだけ不安を与え、不信感を買いながら、米軍側から責任の所在を問う声が聞こえてこないのも腑に落ちない。
(3/4 10:01)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31896-storytopic-11.html
2008年3月4日(火) 夕刊 1面
米兵犯罪「対策徹底を」/県、米軍に7項目要請
米兵暴行事件など相次ぐ米軍関係者の事件を受け、県の保坂好泰基地防災統括監は四日、北中城村・キャンプ瑞慶覧の在日米軍沖縄調整事務所や浦添市の在沖米国総領事館、那覇市の沖縄防衛局を訪ね、米軍人らによる犯罪の防止対策の徹底を申し入れた。
保坂統括監によると、在日米軍沖縄調整事務所で応対したマーク・フランクリン所長は「上司に伝える。実効性のある施策を協議していく」と答えたという。
外出禁止措置中に米兵がフェンスを乗り越え沖縄市内の民間施設に侵入した事件について、フランクリン所長は遺憾の意を示したが、三日夜から導入された外出禁止措置の緩和策については言及しなかったという。
在沖米国総領事館ではカーメラ・カンロイ首席領事が、沖縄防衛局では岡久敏明管理部長がそれぞれ応対。岡久管理部長は「私どもも、防衛省も含めて最大限努力したい」と述べた。
要請書は北谷町で起きた米兵暴行事件に触れ「強い憤りを覚える」と糾弾。米軍人に対する研修(教育)プログラムの見直しや生活規律の強化、基地外に居住する米軍人らの対策、防犯施設の充実・強化など、県が二月二十二日にまとめた七項目の防止対策を説明し、防止策に県の考え方を取り入れるよう強く求めた。
保坂統括監は「米側も何度も再発防止を言ってきているが、なかなか実効性が担保されていない」と指摘。七日に開催されるワーキングチーム会合に触れ、「県も参加し、みんなで力を合わせて取り組んでいきたい」と訴えた。
県は午後、外務省沖縄事務所に同様の要請を行う。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041700_03.html
2008年3月4日(火) 夕刊 5面
うるま議会抗議決議/民間地銃携帯
【うるま】うるま市議会(島袋俊夫議長)は四日午前の三月定例会冒頭で、同市内の米軍キャンプ・コートニーなどで、日本人警備隊員が実弾が装てんされた拳銃を携帯したまま民間地域を移動していた件で、再発防止などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。
同件での抗議決議は県内市町村議会で初めて。決議では警備隊員の基地外の拳銃携行が同市のキャンプ・コートニーからキャンプ・マクトリアスまでの約二キロに及んでいることや、過去には県内で日本人警備隊員の拳銃を狙った事件が発生していることなども指摘。携行は銃刀法違反の恐れもあるとして、米海兵隊憲兵隊司令官が、日米地位協定上禁止されている行為を基地従業員に強制することは容認できないと強調している。
再発防止と事実関係の公表、米軍組織の管理体制と責任の明確化を求めている。抗議決議のあて先は首相、外相、防衛省など。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803041700_04.html
2008年3月5日(水) 朝刊 1面
民間地飛行回避を/普天間アセス
米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の追加修正資料について、県は四日、騒音やジュゴン調査などに関する二十六項目百一件の「県の意見」を取りまとめ、文化環境部長名で沖縄防衛局に郵送した。意見の中で県は「民間地上空の飛行ルートを回避するという名護市長や宜野座村長との基本合意を誠実に履行する必要がある」と注文を付けた。防衛局は来週にも方法書を確定し、再公表を実施。早ければ今月中にもアセス調査の許認可を県などに申請する。
意見送付を受け、沖縄防衛局は同日、「速やかに所要の手続きを行い、できるだけ早く環境調査を実施したい」との方針を示した。
防衛局は方法書を確定するに当たり、追加修正資料を県に提出した際と同様に、県内五カ所で二週間の閲覧期間を設ける見通し。その後、アセス調査に必要な水質や海域生物調査など約十項目の許認可を県や名護市に申請する。
追加修正資料で「訓練の形態などによっては集落上空を飛行することもあり得る」と記載されたことを受け、県は意見の中で、集落上空を飛行する訓練形態を具体的に明らかにするよう求めた。
また、サンゴ類や海藻、ジュゴン、動植物、アジサシ類などの調査について一年では不十分と判断。「(アセス調査で)影響を大きく受けると考えられる環境要素にかかわる調査は、四季の調査や複数年調査を実施するなどその手法を重点化して行わなければならない」と指摘した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051300_03.html
2008年3月5日(水) 朝刊 2面
再発防止に「教育改善」/米兵暴行事件
【東京】在日米軍トップのエドワード・ライス司令官(空軍中将)は四日夕、防衛省に石破茂防衛相を訪ね、米兵暴行事件に遺憾の意を示した。その上で、事件を受けてライト前司令官が取り組んでいた教育プログラムの改善について、「引き続き推し進めていきたい。さらに改善できるよう、努力していきたい」と再発防止に積極的に取り組む姿勢を表明した。
会談で石破防衛相は「幾つかの不幸な事件があったが、こういったことは、同盟の根幹を揺るがしかねないような重要な問題だ」と事件の深刻さを強調。その上で「米政府、在日米軍が、迅速に誠実に対応しているということが必要だ。それだけではなく、きちんと目に見えるように(国民に)分かってもらうことも必要だ」と指摘した。
これに対しライス司令官は、「在日米軍はこういう事件が起きないよう、地元と協力し、安心感を与えるために何でもする」と説明。また、「今回は沖縄のことについて本当に心を痛めているが、日本中すべての米軍基地で、これらが徹底できるように努力していきたい」との考えを強調。
両者は、在日米軍再編の着実な実施に向けて努力する方針も確認。石破氏は抑止力の維持について、「日本では大きな議論になりにくいが重要なことであり、きちんと議論し国民に納得してもらう必要がある」と説明。
これにライス司令官も「中心的課題として議論していく必要がある」と応じた。
◇ ◇ ◇
県提案 協議の意向/外務省沖縄事務所
県の保坂好泰基地防災統括監は四日、外務省沖縄事務所を訪ね、米軍の犯罪の防止策について要請した。応対した倉光秀彰副所長は「事件・事故は減る傾向で努力が実を結んだかと思ったところに一連の事件が起こった。非常に残念」と述べた。
倉光副所長は「事件・事故を一気に皆無にするのはなかなか困難。県の提案も踏まえ継続的に取り組んでいきたい」と述べ、七日開催のワーキングチーム会合で協議する意向を示した。
保坂統括監は「個人的見解」と前置きした上で、「米軍のそれぞれの任期は長くても三年だが、県民は戦後六十年余り米軍と隣り合わせ。軍は組織として過去の犯罪を認識するよう、特に兵隊を管理監督する上官は後任者にしっかり引き継ぐよう、外務省からも伝えてほしい」と求めた。
またワーキングチーム会合の開催数を増やすよう要望した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051300_06.html
琉球新報 社説
外出禁止緩和 あきれる外相の傍観姿勢
「全く米軍の自主的な措置なので、われわれがとやかく言う話ではない」。これは4日の閣議後記者会見で、在沖米軍が軍関係者の外出禁止措置を緩和したことについて問われた高村正彦外相の発言である。
一体全体、駐留米兵によって国民の安全が脅かされている現状をどう認識しているのか。あまりにも傍観者的で危機感に乏しい。
米兵女子中学生暴行事件をはじめ度重なる事件を受け、米軍は2月20日から「反省の期間」として軍人、軍属、家族の外出禁止措置を実施してきた。
だが期間中も、フェンスを乗り越えた嘉手納基地所属の上等兵が建造物侵入容疑で逮捕されるなど、一向に反省の色が見られない。
県民の多くは、事件が相次いでいるので外出禁止措置がそのまま継続されるものと考えていたのではないか。
ところが在沖米軍は、軍人は午後10時から翌日午前5時までの夜間だけを外出禁止とし、軍属と家族の外出禁止措置は解除した。
「『反省の日』の期間は終了した」と言ってのける米軍の神経は、到底理解できない。
米軍人は基地内と自宅以外での飲酒が禁じられたとはいえ、午後10時までは自由に民間地域に立ち入ることができる。規制を解かれた軍属に対し十分に教育がなされたのか。米軍は県民の不安を取り除き、再び事件を起こさないための対策を何ら示し得ていない。
「反省の期間」でさえ事件が起きた。「綱紀粛正を図っている」という米軍の説明をうのみにするのはよほどのお人よしだろう。
そのような中で、外相が「とやかく言う話ではない」と、まるで傍観者のような姿勢を取っていて、果たして事態を改善できるのか。
沖縄の米軍は日米安全保障条約に基づき駐留している。もとより、米軍基地がなければ兵士による犯罪が起きることもない。米軍人等による事件・事故は、過重な基地負担を沖縄に強いてきた国策の結果、もたらされたものだ。
日米安保に関する外交政策を担うのが外務省だ。そのトップである外相は、国策によって被害者が生まれていることを、十分に理解する必要がある。
本来、続発する事件に対し猛然と米国に抗議しなければならないはずの外相が、米国に遠慮し、及び腰の姿勢を続けていたのでは、いつまでたっても事件・事故を減らすことはできないだろう。
町村信孝官房長官も4日の会見で「さすがに家族について、いつまでも外出禁止というわけにはいかないのだろう」と、米軍の対応に理解を示していた。
政府は、米軍ではなく、沖縄県民の目線に立って、事件の再発防止に取り組むべきだ。
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http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31922-storytopic-11.html
2008年3月5日(水) 夕刊 1面
超党派結集 困難に/県民大会
米兵による暴行事件で、県議会の米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)は五日、県婦人連合会や県子ども育成連絡協議会などが事件に抗議し、超党派の県民大会開催を求めた陳情について協議した。与党の自民と公明県民会議が「会派で結論が出ていない」と持ち帰って検討する意向を示し、継続審議となった。次回の軍特委は十七日以降に開催される予定だが、与党内部では大会への組織的参加に反対する意見が強く、二十三日に予定されている県民大会への超党派結集は極めて厳しい状況になった。
「超党派」を前提条件にしていた仲井真弘多知事の参加も見送られる公算が大きい。超党派による県民大会の可能性が閉ざされた場合は、開催を目指す団体・組織からの反発は必至だ。
陳情は「県民は戦後一貫して基地からの被害を受け、人権そのものが踏みにじられてきた」と指摘。暴行事件後も相次ぐ事件・事故を批判し、日米両政府の謝罪と再発防止の具体策を求め、県議会を含めた超党派の県民大会開催や日米地位協定の抜本的改定などを求めている。
軍特委で、仲井真知事の参加について、上原昭知事公室長は「被害者や家族の心情を第一に、広く県内の各界各層の声を聞く必要がある」と答弁した。
県議会や県内全四十一全市町村議会の抗議決議可決や県民大会実行委員会準備会の呼び掛けに対し、野党の委員からは「抗議は全県的で各界各層を網羅している。事件を許さないという悲痛の叫びだ。仲井真知事が先頭に立ち、再発は許さないという強い怒りを内外に表明するべきだ」と暴行事件後も相次ぐ米兵の事件に、「もはや綱紀粛正では体をなさず、県は怒りの意を表明するだけでは駄目」と強調。「告訴を取り下げた被害者の心情を代弁し、県民大会で再発防止を訴える」などの意見が上がった。
自民の委員からは「告訴を取り下げ、『そっとしてほしい』と望む被害者の感情を尊重すべきだ」と開催に否定的な意見が出た。さらに「開催日時や場所を一方的に決め、押し付ける手法はおかしい」という批判も出た。
自民、公明県民会議は近く、会派内で対応を協議し、最終的な判断を示すとしている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051700_01.html
2008年3月5日(水) 夕刊 1面
国、業者に21億8000万円/辺野古調査超過金訴訟
【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖移設計画の中止に伴い契約解除された、ボーリング地質調査などの受注業者四社が、作業の長期化などで生じた計約二十二億六千万円の契約超過分の支払いを国に求め東京地裁に起こした訴訟の和解案の全容が五日午前、分かった。国は業者に二十一億八千万円を支払うことに応じ、同日午後に正式に確定する。
予算措置を経ていない公金支出の責任を「組織」として負うという異例の事態を受け、防衛省は今後、関係者の処分などの検討に入る。
訴訟は、契約解除された十三社のうち四社が、二〇〇六年から相次いで提訴。双方の主張、立証が終結し、東京地裁が二十一億八千万円の和解金を支払う案を提示。
業者側はこれに応じ、当初は「財務会計上の再契約などによる超過の負担行為措置を取っていない以上、予算支出はできない」などと難色を示していた国側も訴訟の長期化などを懸念し、受け入れることとなった。
防衛省は和解について「再発防止策を講ずるとともに、引き続き普天間飛行場代替施設建設事業を円滑に実施していきたい」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051700_03.html
2008年3月5日(水) 夕刊 5面
大浦サンゴ群落調査/基地影響解明へ
【名護】日本自然保護協会(NACS―J)や沖縄リーフチェック研究会は四日、昨年九月に名護市の大浦湾で見つかったアオサンゴ群落の現地調査を開始。群落周辺に生息する貝や砂など底質のサンプリングを行った。
調査は、六日までの予定で行われ、水質やユビエダハマサンゴ群落周辺の調査なども行う予定。
アオサンゴの大群落については、ジュゴン保護基金委員会と沖縄リーフチェック研究会が今年一月に調査を行ったが、より詳細な調査を行うため、同協会が調査に参加した。
同協会の大野正人さんは「内湾状の湾で、広くアオサンゴの群落が生息している特異な環境。今後調査を続け、基地建設によってどのような影響を受けるかを解明したい」と話した。
同協会では、今後調査を予定している世界自然保護基金(WWF)の調査結果と合わせて、今年五月か六月ごろに結果を公表する予定という。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803051700_06.html