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普天間飛行場、危険除去策再検討 タクシー強盗致傷、憲兵が関与自供 米軍訓練中、漁場に爆弾2発投下など  沖縄タイムス関連記事(4月10日から12日)

2008年4月10日(木) 朝刊 1面

危険除去策 再検討/普天間飛行場移設協議会

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第七回会合が九日夕、首相官邸で開かれた。仲井真弘多知事が「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態の実現」に向けた努力を繰り返し求めたことに対し、町村信孝官房長官は昨年八月に日米合意した普天間飛行場の危険性の除去策について、「さらに技術的に検討したい」との認識を示した。石破茂防衛相も「技術的にどんなことが可能か、さらに努力するべき点があるか、県の意見を参考に検討したい」と述べた。

 一方、建設計画について、仲井真知事は「可能な限り沖合に寄せるなど、地元の意向や環境に十分配慮して検討を進め、今後も情報提供に努めてほしい」と代替施設案(V字案)の沖合移動を再度要求。

 さらに現行飛行場の三年めどの閉鎖状態実現などの要望について、協議の進め方の枠組みを検討することを提案。政府側は「引き続き議論していくことも必要」「具体的な内容について伺った上で検討したい」などと述べ、今後、積極的に協議を重ねる意向を示した。次回協議会の開催時期は未定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804101300_03.html

 

2008年4月10日(木) 夕刊 1面

憲兵が関与自供/タクシー強盗致傷

「逃走車を運転」県警、書類送検へ

 沖縄市でタクシー乗務員が殴られ釣り銭箱を奪われた事件で、米軍の監視下にある嘉手納基地所属の憲兵隊員(22)が「(逃走に使った車の)運転をした」と犯行への関与を認める供述をしていることが十日、捜査関係者の話で分かった。

 関係者によると、憲兵隊員は犯行現場にいたことや、県警に逮捕されている米兵家族の少年四人らとともに事前に計画を立てていたことを認めているという。車は憲兵隊員の所有とされる。

 ただ、「自分は首謀者ではない」と、中心的な役割については否認を続けているという。

 県警は米軍の協力を得て、任意で憲兵隊員から事情聴取を続けており、近く強盗致傷容疑で隊員を書類送検する方針。日本側は起訴後に米側から身柄の引き渡しを受ける見通し。

 憲兵隊員は軍の監視下にあり、基地外への外出などは禁止されているとされるが、一定の自由行動は認められているという。

 憲兵隊員はこれまで、事件への関与を全面否認していたとされる。県警は少年らの供述などから、憲兵隊員が首謀者との見方を強めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804101700_02.html

 

2008年4月10日(木) 夕刊 1面

「県提案あれば検討」/普天間の危険性除去策

 【東京】町村信孝官房長官は十日午前の定例会見で、九日に行われた普天間移設協議会で示された普天間飛行場の危険性除去を再検討する政府方針について、「県から具体的提案があれば一緒に検討したい」と述べ、追加的対策を県とともに考える意向をあらためて示した。

 町村官房長官は移設の早期完了が「最大の危険性除去であることは間違いない」とした上で「それには数年かかるので、その間の対策として追加的にあり得るか、お互いに考える」とした。

 同飛行場の危険性除去は日米で合意し、実施中もしくは実施準備段階だと説明。米側との調整については「必要があれば今後行う」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804101700_03.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 2面

支援再延長 確定へ/基地従業員離職対策

 【東京】参院厚生労働委員会は十日、国内の米軍基地で働く日本人従業員が職を失った際の再就職支援策を盛り込んだ「駐留軍関係離職者等臨時措置法」を、二〇一三年まで五年間延長する改正法案を全会一致で可決した。十一日の参院本会議で可決、成立する見通しだ。

 同法は一九五八年の成立以来、五年ごとの延長が繰り返されており、今年五月十六日が失効期限だった。時限立法で始まった法律としては、異例の五十五年間の有効期限を保つことになる。

 政府は、基地従業員の地位が依然として不安定で、在日米軍最終報告でも在沖米海兵隊八千人のグアム移転などで大規模な失業が想定されるため、支援策が引き続き必要と判断した。

 しかし、米軍再編に伴う具体的な影響が明らかになっていないことから、今回は現行法の期限だけを単純延長している。

 同法の再就職支援策の柱は(1)離職者への就職指導票交付と公共職業安定所(ハローワーク)などでの就職指導(2)再就職支援のための給付金支給(3)職業訓練援助―などとなっている。

 この日の厚労委員会の審議で、厚労省の太田俊明職業安定局長は「沖縄の厳しい雇用情勢の中で、駐留軍関係離職者が発生すると、再就職が困難な状況になる」と指摘。その上で、「法律に基づく支援をきめ細かく実施し、再就職の促進を図っていきたい」と述べ、県内雇用への影響回避に努力する考えを強調した。

 また、防衛省の伊藤盛夫地方協力局次長は「訓練種目の在り方を検討していく」との意向を示した。島尻安伊子氏(自民)に答弁した。

 同法をめぐっては、県議会や市町村議会などが深刻な県内雇用情勢を踏まえ、延長を求める意見書を相次いで可決していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_01.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 2面

普天間飛行場 危険性除去策 再検討を表明

町村氏「県とともに」

 【東京】町村信孝官房長官は十日の定例会見で、九日にあった普天間移設協議会で示された普天間飛行場の危険性除去を再検討する政府方針について、「県から具体的提案があれば一緒に検討したい」と述べ、追加的な対策を県とともに考えていく意向をあらためて表明した。

 町村長官は、移設の早期完了が「最大の危険性除去であることは間違いない」とした上で、「それには数年かかるので、その間の対策として追加的にあり得るか、お互いに考える」とした。

 同飛行場の危険性除去については日米で合意し、実施中もしくは実施準備段階だとも説明。米側との調整は「具体的提案があれば必要になるが、まだ具体的な対策は示されていない。必要があれば、今後行う」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_03.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 2面

犯給法適用なお1件/米軍犯罪の県内被害者

過去7年も事例なし

 【東京】故意の犯罪によって死亡した遺族や重傷害を受けた被害者に対して適用される「犯罪被害者等給付金支給法」が、一九八一年の施行以来、米軍関係者による犯罪では県内の一件にしか適用されていないことが、十日分かった。参院内閣委員会で、糸数慶子氏(無所属)の質問に米村敏朗官房長が明らかにした。

 二〇〇一年四月五日の同委員会で、警察庁の石川重明官房長(当時)がこの一件の事例を明らかにしていたが、それ以降の七年間でも適用例がなかった。

 当時の答弁によると、一九九一年六月に、沖縄市内の公園で日本人男性(当時三十四歳)が、三人の米軍人らによってナイフで首などを刺され死亡。九三年に県公安委員会が裁定を行い、遺族に給付金が支払われた。

 一方、防衛省の地引良幸地方協力局長は、米軍人による事件・事故に関し、日米間で見解が分かれ、被害者への補償が困難となった場合に政府が救済する「見舞金制度」が適用されたのは、二〇〇五年からの三年間で全国で九件であることも明らかにした。防衛省によると、このうち三件は県内。

 糸数氏は「公務外の事件・事故だけで、〇六年は全国で千三百五十六件、沖縄で八百五十件も発生している。被害者がなんら救済されておらず、泣き寝入りするしかない実態がある」と述べ、救済拡充を訴えた。

 この日の同委員会は、これまで医療費の自己負担分だけを支給していた被害者給付金に休業補償分を加算することなどを盛り込んだ「犯罪被害者等給付金支給法」の改正案を全会一致で可決した。十一日の参院本会議でも可決し、成立する見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_04.html

 

2008年4月11日(金) 朝刊 27面

65人で政府要請/3・23実行委

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会(玉寄哲永委員長)は十日、那覇市の県教育会館で第五回幹事会を開き、十四、十五の両日に上京する要請団に東門美津子沖縄市長ら五市町村長を含む六十五人が参加することを明らかにした。

 福田康夫首相や高村正彦外相らに面会を求め、三月の県民大会で採択された日米地位協定の抜本改正などを訴える。

 県民大会は三月二十三日に北谷町などで開かれ、約六千人が参加。地位協定の改正や、米軍人への厳しい綱紀粛正と実効性ある再発防止策など四項目の大会決議を採択した。

 要請団は東門沖縄市長ほか、野国昌春北谷町、新垣清徳中城村、新垣邦男北中城村、島袋義久大宜味村の各町村長と読谷村副村長が参加。さらに県議六人、市町村議会の議長、副議長五人、実行委の構成団体の代表らが上京する。

 閣僚や主要政党、在日米大使らを訪問して決議文を提出するほか、十四日夕に東京で集会を開き、問題を広く訴えるという。

 玉寄実行委員長は「県民大会の後も米軍関係者による犯罪が続いており、県民の怒りが要請団の規模を大きくした。米国に都合のいい地位協定の存在が犯罪の背景にあるのは明らかであり、現実に目を向けるよう首相らに強く訴えたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111300_05.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 1面

2海兵隊員、米軍が拘束/タクシー強盗か

 二〇〇六年に沖縄市内で起きたタクシー強盗事件で、犯行にかかわった疑いがあるとして、米軍が在沖米海兵隊員二人の身柄を拘束していることが十一日、関係者の話で分かった。県警は来週にも強盗致傷容疑で二人を書類送検するとみられる。二人の身柄は起訴後、日本側に引き渡される見通し。

 県警は現在、米側の捜査協力を得て事情聴取などを進めており、容疑が固まり次第、海兵隊員らを書類送検する方針。逮捕状は取らないとみられる。

 事件は、〇六年七月に同市中央一丁目の市道で発生したものとみられている。外国人の男二人組が車内で男性運転手を羽交い締めにし、売上金など現金数万円を奪ったとされる。米海軍捜査局(NCIS)は懸賞金を出して容疑者特定に結び付く情報を求めていた。

 沖縄市内では今年一月と三月にもタクシー乗務員への強盗致傷事件が発生。三月の事件では、沖縄署が米兵家族の少年四人をすでに逮捕、米軍の監視下にある憲兵隊員一人についても近く書類送検するとみられている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_02.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 1面

米軍機、鳥島訓練水域外に演習弾

 米海兵隊のAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が十日午後二時四十五分ごろ、鳥島射爆撃場をターゲットにした訓練の際、提供水域から約二・七キロ離れた水域に演習弾二発を投下していたことが十一日、分かった。

 在沖米海兵隊外交政策部(G5)が、十日午後四時四十分ごろ沖縄防衛局に連絡していた。同局は詳細を米軍に照会中。詳しい投下地点や所属部隊などは明らかになっていない。

 嘉手納基地で米軍機の活動を監視している住民によると、同基地には約一カ月前から六機程度のAV8ハリアー機が飛来。実弾や訓練弾を装着して飛行訓練を繰り返していたという。十日午後二時ごろにも、同機が同基地を離陸するのが確認されている。

 平良朝幸久米島町長は「住民生活を脅かす行為だ。どういう部隊がどのような訓練をしているか知らされていないことも問題。漁協とともに抗議していきたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_03.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 7面

全脱走兵 日本に通報/日米合同委、来週合意

 【東京】日米両政府は十日、在日米軍に所属する米兵が「脱走兵」と米側に認定された場合、すべてのケースで日本側の関係自治体警察に通報・逮捕要請することで基本合意した。窓口設置や通報体制の在り方を調整、来週中に日米合同委員会で正式合意する。

 高村正彦外相が十一日午前の閣議後会見で明らかにした。

 日米地位協定では、脱走兵を日本側に通報する義務はない。米側が日本側に捜査を要請した場合、日米地位協定の実施に伴う刑事特別法で日本の警察が米兵を(米軍法の)脱走容疑などで逮捕は可能だったが、実態把握が困難だった。

 横須賀市のタクシー運転手強盗殺害事件で逮捕された米兵が脱走兵だったにもかかわらず、事件前の日本側への通知はなかった。

 地元自治体などが迅速な通報体制確立を求めていた。両政府が地位協定の運用改善で対応する。

 外務省によると、米軍の脱走兵の認定基準は、無許可欠勤者の場合、三十日間経過すれば、脱走兵と認定されるという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_04.html

 

2008年4月11日(金) 夕刊 6面

普天間飛行場 危険除去へ研究会/知事、庁内設置を指示

 仲井真弘多知事は十一日午前、普天間飛行場の危険性除去策について検討する研究会を庁内に設置するよう指示した。基地対策課を中心に約十人で近く発足する見通し。定例会見で明らかにした。

 九日に開かれた普天間飛行場の移設協議会で、政府は危険性除去の取り組みを再検討する方針を示したが、町村信孝官房長官は十日の定例会見で「県からの具体的提案があれば一緒に検討したい」と県の参加を促していた。

 仲井真知事は「本来は防衛省がやる話で、県は要求していくだけで十分。(官房長官発言は)後退していると思うが、われわれも勉強会をつくろうと思い、担当課長に指示した」と述べた。

 メンバーは県庁の担当者らで構成。ヘリコプターの運用や訓練などについて、外部の専門家の意見聴取も検討していく。

 揮発油税にかかる復帰特例が失効したことについては二〇一一年度までの特例措置継続を要請していく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804111700_05.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 1面

漁場に爆弾2発投下/米軍ハリアー、訓練中

500ポンド弾/鳥島射爆撃場外に

 米海兵隊のAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が鳥島射爆撃場(久米島町)で訓練中、提供水域外に五百ポンド(約二百二十七キロ)爆弾二発を投下していたことが十一日、分かった。沖縄タイムス社の取材に対し、在沖米海兵隊報道部が明らかにした。

 同報道部によると、AV8ハリアーが提供水域に到達する手前で、爆弾二発を投下。海中に沈み、「爆発する兆候は見られない」と説明している。第十一管区海上保安本部は付近の航行を避けるよう呼び掛けているが、これまで被害は報告されていない。

 米軍は事故発生時間について、当初沖縄防衛局に伝えた十日午後二時四十五分ごろから、九日に訂正した。

 防衛省によると、投下地点は鳥島中央から南西約十一・六キロ地点で、射爆撃場の提供水域境界から約六キロの地点。

 在沖米海兵隊報道部は沖縄タイムスに対し「所属部隊や航路、訓練計画については運用上の安全確保のため、明らかにできない」と説明。原因は調査中としてる。

 平良朝幸久米島町長は「住民生活を脅かす行為だ。どういう部隊がどのような訓練をしているか知らされていないことも問題。漁協とともに抗議していきたい」と米軍を批判した。

 県基地対策課の又吉進課長は十一日までに口頭で、G5と沖縄防衛局、外務省沖縄事務所に対して原因究明と再発防止、安全管理を求めた。


[ことば]

 鳥島射爆撃場 久米島の北約28キロに位置し、島全体が演習場。戦後米軍が使用を開始し、復帰後は提供施設・区域として米空軍が管理する空対地射爆撃場となっている。周辺海域は好漁場で、時期によって区域を最大限利用できるよう現地段階で使用の調整を行うことが認められている。1995年12月から96年1月にかけて、劣化ウラン弾1520発が誤射された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_01.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 29面

「怖くて漁できぬ」/不安募る久米島住民

 【久米島】「事故があってからでは遅い」「生活が脅かされる」。米海兵隊のハリアー機が鳥島射爆撃場の提供水域外に五百ポンド(約二百二十七キロ)の爆弾を投下した問題で、町民からは、憤りと不安の声が上がっている。同射爆撃場をめぐってはこれまでも問題が多発しているだけに、町当局は十一日、緊急に対応を協議。週明けに召集予定の町議会や町漁協とともに抗議活動を行う方針を固めた。

 鳥島の射爆撃場をめぐっては、米海兵隊による劣化ウラン弾の誤射、漁船の操業妨害など問題化した事案が多発している。二〇〇六年には町と漁協が関係省庁に対し、鳥島と久米島射爆撃場の返還を求める要請活動を行っている。

 鳥島周辺は、県内有数の漁場とされているだけに、久米島漁業協同組合の棚原哲也組合長は「事故が起きてからでは手遅れだ」と憤りを隠さない。

 周辺には漁協などが設置したパヤオ(浮き漁礁)などがあり、周辺海域を操業する漁船は多いという。棚原組合長は「提供水域外でも、安心して漁ができないとは…。漁業者は怖くて近づけない」と話した。

 久米島町が沖縄防衛局から爆弾誤投下の一報を受けたのは、十日午後六時前。防衛局からは「実弾かどうかは不明で日時、正確な場所も不明。米軍に照会中」との説明があったという。

 町は「一歩間違えば人命にかかわる。危険な事故で、憤りを感じる」とし、住民の安全を守る立場から、抗議行動を展開することを十一日中に確認した。

 観光客も多く訪れる久米島の名所「比屋定バンタ」の展望台からは同射爆撃場が晴れた日には肉眼で確認できる。

 「夜に鳥島から“ピカッ”と赤い光を見たことがある」と話す松堂美香さん(18)=久米島高三年=は訓練の影響とみられる振動で窓ガラスが揺れ、就寝中に起こされた経験もある。「今までも怖い思いをした。不安は皆感じていると思う」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_02.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 1・2面

普天間飛行場 埋文7割 試掘できず/返還合意からきょう12年

 【宜野湾】日米の返還合意から十二日で十二年を迎える米軍普天間飛行場で、宜野湾市が行う埋蔵文化財調査の試掘ポイントが計五千百カ所に上り、そのうち約七割は未着手であることが十一日までに分かった。今年三月までに試掘を終えた千七百カ所からは八十二の埋蔵文化財が確認されており、専門家は「未着手部分からはさらに重要な文化財が発見される可能性がある」と指摘。市は「文化財の分布状況も分からないままでは青写真の線すら引けない」と跡地利用の遅延を懸念している。

 飛行場内の文化財調査は二〇〇一年から、宜野湾市と県が共同で、文化庁の補助を受けて実施。飛行場全体(約四百八十ヘクタール)に縦、横三十メートルごとにポイントを設け、五千百カ所を試掘の対象とした。米軍は、滑走路や兵舎など使用中の施設以外の緑地帯などでの調査を認めている。

 これまでの調査で、縄文時代(紀元前三五〇〇年ごろ)の大山富盛原遺跡、グスク時代(西暦一〇〇〇年ごろ)の野嵩タマタ原遺跡など、さまざまな年代の文化財が発見された。

 一方、滑走路など米軍が使用中の施設に設定された三千四百カ所は返還後にしか試掘できない。市は今後、これまでの試掘で確認された遺跡の範囲確認調査を続ける方針だ。

 文化財に詳しい琉球大学の池田榮史教授(考古学)は、未着手の部分が飛行場建設前は谷間だったことから、「谷間は水源があり、人が集まりやすい場所。調査しないと分からないが、貴重な文化財が眠っている可能性はある」と指摘する。

 跡地利用について市は〇六年に県と基本方針を定め、返還の四年前までに具体的な跡地利用計画の策定を予定。しかし、返還が実現し、計画策定後に新たな文化財が見つかれば変更を余儀なくされる。

 池田教授は「跡地利用をスムーズに進めるためにも、地権者に対して、早い段階で文化財保護の意義について理解してもらう必要がある」と話している。(銘苅一哲)


     ◇     ◇     ◇     

[解説]/跡地活用 遅れ懸念


 宜野湾市が普天間飛行場の埋蔵文化財の試掘を急ぐ背景には、文化財調査が跡地利用計画に大きな影響を及ぼしてきた過去の「教訓」がある。調査対象の七割に当たる未着手部分は重要文化財が発掘される可能性があり、跡地利用の大幅な遅れを懸念している。SACO(日米特別行動委員会)合意から十二年が経過しても返還スケジュールすら明らかにされない状況の下、市は「打つ手なし」の状態に置かれている。(中部支社・銘苅一哲)

 軍基地の跡地利用が抱える課題は大きく分けて三点が挙げられる。(1)地権者の合意形成(2)文化財の有無(3)土壌汚染などの環境問題―だ。このうち、文化財調査はこれまで返還後にしか実施されず、新たに文化財が発掘された場合、自治体は跡地利用計画を練り直さなければならなかった。

 例えば、牧港住宅地区が返還された那覇市新都心は大規模な古墓群、キャンプ桑江北側が返された北谷町では伊礼原C遺跡が発見され、両自治体とも跡地利用計画を変更した。

 宜野湾市は各地の事例を踏まえ、予想される跡地利用の遅延に先手を打つ形で返還前の調査を計画。文化財保護法では、土地の開発行為が伴わなければ文化財調査は行えないが、文化庁は約四百八十ヘクタールという大規模な返還を控える市の調査を特例で認めた。

 米軍は立ち入り調査を許可したが、滑走路など使用部分の調査は返還を待たざるを得ない。市の跡地利用担当部署からは「返還時期が分からないままでは、対応策を立てるのも難しい」との声が上がっており、日米両政府には早急な返還時期の明示が求められる。


国外移設 強く要求/宜野湾市長声明


 【宜野湾】SACO(日米特別行動委員会)で米軍普天間飛行場の返還が合意されてから満十二年を翌日に控えた十一日、宜野湾市の伊波洋一市長は同市役所で会見し、「爆音と墜落の恐怖におびえる市民生活の打開を目指し、普天間飛行場の閉鎖、全面返還に向けて全力で取り組む」と日米両政府に対し、同飛行場の国外移設を強く求める声明を発表した。

 伊波市長は、市街地上空での飛行を避けるために検討されたヘリコプターの場周経路について、日米が合意した二〇〇七年以降も市街地上空での訓練を繰り返していることを指摘。「米軍が定めたマスタープランでは、障害物などがあってはならないクリアゾーン内に、普天間第二小学校など公共施設や住宅が存在しており、放置できるものではない」と訴えた。

 二〇〇八年は市が策定した第二次返還アクションプログラムの最終年度に当たることから、「米軍が自ら定めた基準が守られていない。日本政府への働き掛けと同時に、米政府に閉鎖を求めていきたい」と今後の活動方針を示した。

 また、県が設置を検討している危険性除去の研究会への対応については「市からも情報を提供していく。県内移設問題と危険性除去を切り離して取り組んでほしい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_03.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 28面

「集団自決」訴訟報告会

 三月にあった「集団自決」訴訟の大阪地裁判決の報告集会が十一日、那覇市古島の教育福祉会館で開かれた。

 被告・岩波書店側の証人だった宮城晴美さんは被告側の全面勝訴に、「頑張って証言した島の住民たちの体験談を『具体性、迫真性を有する』とした判決に非常に励まされた」と振り返った。

 同訴訟は、沖縄戦時に座間味、渡嘉敷両島に駐屯した旧日本軍の元戦隊長らが「沖縄ノート」などの本に自決命令を出したと書かれ、名誉を傷つけられたと主張。作家の大江健三郎さんと岩波書店に出版の差し止めなどを求めていた。

 宮城さんは、判決までの時間を「糸が切れそうなくらい張り詰めていた」と述懐。原告側が命令を否定する根拠とした自著「母の遺したもの」での母親の証言部分などについて、「判決は原告側の主張を一切採用していない」と評価した。

 平和ネットワーク会員の仲山忠克弁護士は、「丁寧に沖縄戦の実相に踏み込んだ」と判決内容を解説。「訴訟の真の当事者は旧日本軍と『集団自決(集団強制死)』の犠牲者だという視点に立つことが重要」と指摘し、命令の伝達経路の立証などを控訴審へ向けた課題に挙げた。

 集会は「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の主催で、約五十人が参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_05.html

 

2008年4月12日(土) 朝刊 2面

普天間移設に知事不満/WWFジャパン会長に吐露

 仲井真弘多知事は十一日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設について「納得がいかない部分がまだ残っている」と述べ、県が求めている沖合移動などの要望が実現していない現状に不満を示した。県庁を訪れたWWFジャパンの徳川恒孝会長らに述べた。

 徳川会長は九日に来県し、新石垣空港建設予定地や普天間飛行場移設先の大浦湾、泡瀬干潟など貴重な自然環境が残る開発予定地を相次いで視察。「沖縄の自然と生態系は本当に貴重だ。ぜひ守ってほしい」と述べ、環境に配慮して工事を進めるよう求めた。

 仲井真知事は「県環境影響評価審査会に伝えたい」とした上で、「特に辺野古は難しい部分がある」と普天間移設に自ら言及。徳川会長に「東京で日米両政府に『現地の意見をよく聞きなさい』と言ってください」と“逆要望”した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804121300_06.html

米軍の事件・事故に抗議、防衛省前で人間の鎖 県内米基地で自衛隊研修、恒常化明らかになど  沖縄タイムス関連記事(4月6日から9日)

2008年4月6日(日) 朝刊 22面

教科書問題で執筆者らシンポ/「軍強制」明記に意欲

 「集団自決(強制集団死)」訴訟で元戦隊長らの請求を棄却した大阪地裁判決の後、県内で初となる教科書問題シンポジウムが五日、那覇市古島の教育福祉会館で行われた。教科書執筆者の坂本昇さん(東京都・高校教諭)と石山久男さん(歴史教育者協議会委員長)が講演し、検定意見撤回と、今秋行う訂正申請での「軍強制」の記述復活に向けて決意を述べた。

 平和運動センター、高教組、沖教組が共催し、教育関係者ら百五十人が参加。文部科学省が検定意見の根拠とした「(梅澤裕元戦隊長の)当事者の証言」が判決で退けられたことを指摘し、歴史事実を歪曲した教科書検定意見の撤回を求めるアピールを採択した。

 坂本さんは、教科書検定が、審議会を隠れみのに文科省や国主導で行われたこと、昨年九月の県民大会で勇気づけられ申請前の修正案を公表したことを報告。文科省が昨年末に認めた「軍関与」記述について、「軍の強制という文脈の中で、さまざまな要因があったのであり、複合的要因の一つとして『軍の関与』があるのではない」と批判した。

 また大阪地裁判決を「全面勝訴」としながらも「(「集団自決」の)伝令が伝わっていたこと自体が軍命が機能した証拠」とし、秋の訂正申請で、「軍の強制」明記に意欲を見せた。

 石山さんは教科書検定制度の実態を具体的に説明し、「教育への乱暴な政治介入で沖縄戦歪曲が行われた」と批判。五月ごろから社会教科書執筆者懇談会を再開し、記述回復の実現を目指すと述べた。安仁屋政昭沖縄国際大学名誉教授は、沖縄戦の実態を全国の戦後世代に伝えていくことの重要性を訴えた。

 シンポには県民大会実行委副委員長の玉寄哲永さんも参加。十六日の東京要請行動へ向け決意を語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804061300_02.html

 

2008年4月7日(月) 朝刊 19面記述回復へ決意新た 教科書執筆者と体験者が初対面

 高校歴史教科書執筆者の坂本昇さん=東京都=が6日、座間味島「集団自決(強制集団死)」体験者の宮城恒彦さん(74)=豊見城市=と初めて対面した。昨年9月の文部科学省による教科書検定意見の撤回を求める県民大会に力を得て訂正申請した執筆者と、その執筆者を勇気づける体験者が、「撤回」と記述回復に向け、決意を新たにした。(安里真己)

 二〇〇六年末、文科省の検定意見で記述変更に追い込まれた坂本さん。昨年九月の県民大会にも参加、十月には教科書の記述を「日本軍によって『集団自決』を強いられた」と訂正申請する、と記者発表した。それを知った宮城さんは「勇気ある行動を支援したい」と、他の体験者から聞き書きした本や関連資料、書籍、村史の写しなど、一抱えほどもある小包にぎっしり詰めて、坂本さんに送った。

 坂本さんは、ちょうど発表内容に対し「訂正申請するな」など、ファクスでの嫌がらせを受け落ち込んでいたころで、小包を受け取り力づけられたという。その後も、宮城さんから資料が届き、交流が続いている。

 坂本さんは五日、那覇市内であったシンポジウムに参加するために来県していた。「宮城さんから力をもらった。ぜひお会いしたかった」と、目を潤ませながら礼を述べた。

 宮城さんは「県民大会に参加できなかった人も含め、多くの県民や犠牲者が、坂本さんを応援していると伝えたかった」と話した。

 「宮城さんは自分自身の体験だけでなく、同じ目線でいろいろな方から体験を聞き書きしている。質も高い。感銘を受けた」と坂本さん。

 宮城さんはこの日、三月に判決が出た「集団自決」訴訟で退けられた梅澤裕元戦隊長の証言について、当時島にいた者の視点で矛盾を指摘。「体験者でなければ分からないことがある。それを、次の世代に伝えるためにも、勇気を出して教科書に書いてもらわなければ」と今後に期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804071300_01.html

 

2008年4月7日(月) 朝刊 2面

防衛省前 人間の鎖/米軍の事件・事故に抗議

 【東京】米軍関係者による相次ぐ事件・事故や、在日米軍再編に伴う基地負担増加に抗議しようと、県内外の市民団体関係者が六日、防衛省前で「人間の鎖」で抗議行動を展開し、「米兵犯罪は許さない」「すべての基地はいらない」などと声を上げた。

 米軍普天間飛行場代替施設建設に反対するヘリ基地反対協議会などの呼び掛けで、岩国市(山口県)や横須賀市(神奈川県)など、米軍基地が所在する全国の市民団体の関係者約五百五十人(主催者発表)が集まった。防衛省正門前を中心に、三回にわたって手をつなぎ、抗議の意志を示した。

 沖縄から駆け付けた「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表は、「相次ぐ事件に米政府の高官は謝罪を繰り返すが、県民の怒りを鎮めようとするパフォーマンスにすぎない」と非難し、米軍基地の撤去を訴えた。

 ヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設に抗議し、移設に向けた環境影響評価調査の中止を求めた。高里、安次富氏はそれぞれ、防衛省の職員に要請書も手渡した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804071300_02.html

 

2008年4月7日(月) 朝刊 18面

地位協定の問題鮮明/沖縄市タクシー強盗事件

 沖縄市で起きたタクシー強盗致傷事件で、米軍は五日、容疑者とされる基地内に住む米兵の息子の少年二人を沖縄署に引き渡した。同署が逮捕状を取り、米軍に身柄を要求してから四日目。この間、少年らは基地内で捜査機関の拘束下に置かれていなかったとみられる。日米地位協定上、両国は犯罪捜査で互いに協力するよう定められているが、軍人・軍属の家族の身柄引き渡しなどについては特に規定がなく、米側の裁量に左右される側面がある。米軍の「排他的管理権」を定めた日米地位協定の問題点があらためて浮き彫りになった。(中部支社・上地一姫)

 「(軍人・軍属の)家族の場合は、通常、逮捕状が出れば速やかに身柄を渡してもらえる。県警側に書類や手続きの不備はなく、なぜ今回は遅れているのか分からない」。少年らの逮捕状が出てから三日目の四日午前。捜査関係者は戸惑ったような表情を浮かべた。

 強盗致傷事件にかかわり、先に窃盗容疑で逮捕されていた少年二人のうち一人の身柄は、同署が捜査協力を求めたその日に引き渡されていたからだ。

 地位協定上、容疑者となった軍人・軍属については、身柄が米側にある場合、日本側が起訴するまでは原則として米側が拘束できる。一方、軍人・軍属の家族についてはこうした特権的な規定はなく、「逮捕状が出れば当然引き渡すべき事案といえる」(弁護士)。

 法政大学の本間浩教授は「家族の身柄を引き渡さない合理的な理由はない。ただ、米側が消極的だったとしても直ちに法令違反を問うこともできない。米側の裁量に委ねられているのが問題」と指摘する。

 米軍監視下にある憲兵隊員を含む計五人が関与したとみられる今回の事件。共犯が多い場合には、証拠隠滅などを防ぐため、身柄確保を急ぐのは捜査の鉄則とされる。だが、米軍は少なくとも四日ごろまでは少年らの身柄を拘束していなかったとみられ、県警は事情聴取さえできない状態だった。

 捜査関係者は「口裏合わせや逃亡の可能性も否定できない」と、捜査協力の遅れに懸念を示す。

 結局、米側は四日の夜になって身柄引き渡しを通知した。別の捜査関係者は「この時期に身柄引き渡しが遅れれば問題を大きくするのは明らかだった」と指摘。県内外で米軍関係者による事件・事故が相次ぐ中、米側が「政治問題化」を避けたとの見方を示した。

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2008年4月7日(月) 夕刊 5面

逃走車両 憲兵所有か/沖縄市のタクシー強盗

禁足令違反も

 沖縄市内でタクシー運転手が外国人らしき三人組に殴られ現金を奪われた強盗致傷事件で、逃走に使われた車は米軍が拘束している米軍嘉手納基地所属の憲兵隊兵長(21)の所有である可能性が高いことが七日、関係者の話で分かった。また、強盗致傷の容疑ですでに県警に逮捕されている米兵の息子らが、この憲兵隊員について「犯行時は逃走に使った車の中にいた」と供述していることも判明。当時、米軍は軍人を対象に外出禁止令を出しており、これに違反する可能性がある。

 憲兵隊員の犯行へのかかわり方について一部の少年からは「主導的な立場だった」との供述も出ているが、食い違う点もあり、県警が慎重に捜査を進めている。

 捜査関係者によると、憲兵隊員は事件への関与を否定しているという。

 事件は、三月十六日午前零時二十分ごろ、沖縄市中央二丁目の路上で発生。外国人とみられる三人組の男がタクシーを止め、乗務員を殴った上、現金約八千円が入った釣り銭箱を奪って逃走したとされる。

 犯行当時、米軍は軍人を対象に、午後十時から翌午前五時までの外出禁止措置を取っていた。憲兵隊員が犯行現場にいたとすれば、これに違反する可能性がある。

 被害者のタクシー運転手が見た実行犯は三人だったが、県警は少年の供述などから計五人が何らかの形でかかわったとの見方をしている。県警はすでに、いずれも米兵の息子の少年四人を逮捕。憲兵隊員については米軍が拘束しているため、任意で事情聴取などの捜査を進めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804071700_03.html

 

2008年4月7日(月) 夕刊 5面

1億円の賠償命令/元自衛官強盗致死

 那覇市牧志の路上で二〇〇五年二月、会社経営の川満正則さん=当時(48)=が傘で突き刺されるなどして死亡し、現金を奪われた事件で、正則さんの妻の由美さん(39)ら遺族が、強盗致死罪で服役している元幹部自衛官の原卓也受刑者(28)に損害賠償を求めた民事訴訟の判決で、那覇地裁(加藤靖裁判官)は七日、由美さんらの請求通り計一億円の支払いを命じた。

 服役中の原受刑者は、二月にあった第一回口頭弁論までに「事実関係に争いがあり、弁護士と相談して決めたい」との意思を示していたが、先月の弁論までに由美さんらの訴えを全面的に認めるとした書面を提出していた。

 事件は〇五年二月二十六日午後七時四十五分すぎ、那覇市牧志三丁目の人けのない住宅街の路上で発生。原受刑者は、パチンコ店で換金した正則さんの後をつけ、コンクリート片で頭を殴ったり、持っていた傘で顔を突き刺すなどし、正則さんを死亡させた。

 那覇地裁は〇六年三月、強盗致死罪で原受刑者に懲役二十年の判決を言い渡し、確定した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804071700_04.html

 

2008年4月7日(月) 夕刊 4面

戦争で転々 同窓生ら石碑建立/楚邊尋常小學校・國民學校

 「楚邊尋常小學校・國民學校」の石碑が、同窓生ら約二百九十人の協力で、かつて同校があった那覇市の城岳小学校の敷地内に建立された。五日の除幕式では関係者約四十人が集まって完成を祝い、当時の思い出に浸った。

 一九四〇年に旧真和志村に開校した楚邊尋常小學校・國民學校は、日本軍による接収や米軍キャンプの移転などもあり転々。四九年に那覇市与儀に移り与儀小学校の前身となった。

 「石碑を建立し、思い出を後輩たちにつなぎたい」(山城宗一郎石碑建立委員長)という同窓生の思いから、今年二月から賛同者集めを開始。約八十万円が集まり、「楚邊尋常小學校・國民學校跡」と刻まれた御影石の石碑が完成した。

 除幕式で山城委員長=那覇市=は「石碑を見ると、われわれが過ごした時代がよみがえる思いがする」と感無量。同窓生らは文字を指でなぞったり、記念撮影をしながら、昔話に花を咲かせた。

 四三―四五年に同校の教諭だった仲宗根トヨさん(87)=同=は「教科を教えたことより、子どもたちが大きな声で軍歌を歌っていたことを覚えている」と振り返り、「学校は消えたが、楚邊小の名は残る。私の願いもかなった」と目を細めた。

 城岳小の嵩原安哲校長は「子どもたちの歴史学習にも生かしたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804071700_05.html

 

2008年4月8日(火) 朝刊 2面

発生はレンジ3付近/ハンセン山火事

 金武町のキャンプ・ハンセンで先月二十六日に発生した山火事は、レンジ3周辺で発生していたことが七日、分かった。在沖米国総領事館のカーメラ・カンロイ首席領事が二日、社大党の抗議に対し、明らかにしていた。米軍はこれまで県に対し、発生場所を明らかにしていなかった。

 米陸軍がレンジ3を使用するため、三月から周辺の整備作業を実施。その過程で発見された不発弾を処理中に火災が発生したという。

 火災はレンジ3付近で発生したが、火は同レンジ西側の峰を駆け上がり、レンジ4付近まで燃え広がったとしている。

 米軍は廃弾処理場(EOD)1に移送できる不発弾はEODで処理するが、移送で危険が伴うものはその場で処理すると説明。五月一日までレンジ3付近の不発弾処理を進めるとしており、現場での爆破処理が続く可能性もある。

 社大党の喜納昌春委員長や比嘉京子書記長は七日、県の上原昭知事公室長に対し、米軍の責任で焼失部分に植栽し、復旧することなど六項目を要請。喜納委員長は「自分たちが抗議に行って、火災発生場所の話を聞いた。県が知らないのはおかしい。もっと強く原因究明を求めるべきだ」と訴えた。

 上原公室長は「原野火災は昨年から増えている。車両侵入も同じ場所に二度入っており、規律が緩んでいる。県としても強く申し入れたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804081300_02.html

 

2008年4月8日(火) 朝刊 2面

労務費負担に理解を/全駐労、野党議員に要請

 全駐留軍労働組合沖縄地区本部(全駐労)は七日、駐留軍労働者の労務費を日本政府が継続して負担するとした新特別協定が参議院で否決される見通しであることを受け、県選出の野党国会議員らに対し、新協定への支持を要請した。

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は三月末で期限が切れたが、民主党は新たな特別協定案について「基地内の娯楽施設の人件費まで負担できない」として反対している。

 全駐労の與那覇栄蔵執行委員長は「娯楽施設は米軍施設の中のコミュニティー(共同体)に付随しており、(兵士は)生活をしながら国防任務に就いている」と述べ、基地内の娯楽施設と、それに伴う人件費負担の必要性を強調した。

 照屋寛徳衆院議員(社民)は「駐留軍労働者の法的雇用主は日本政府だ」と政府の責任を指摘。下地幹郎衆院議員(そうぞう)、糸数慶子参院議員(無所属)も、民主党を中心とした他都道府県選出議員にも沖縄の実情を説明し、新特別協定の締結に理解を呼び掛けていく意向を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804081300_07.html

 

2008年4月9日(水) 朝刊 1・2面

県内米基地で自衛隊研修32回/恒常化明らかに

07年度/前年度比14回増

 【東京】県内の米軍基地で行われている自衛隊の研修が、二〇〇七年度は三十二回を数え、対前年度比で十四回増加したことが、防衛省作成の資料で八日分かった。在沖米軍基地で行われている自衛隊の研修の全容が明らかになるのは初めてで、自衛隊が恒常的に米軍の技術を学んでいる実態が浮き彫りとなった。

 研修場所は、米軍キャンプ・ハンセンや嘉手納基地など、在日米軍再編で日米共同使用の対象とされた基地が大半を占めている。防衛省は「米軍再編とは直接関係なく、通常の日米の相互協力の一環だ」と説明している。

 資料によると、〇七年度は航空自衛隊が二十二回、陸上自衛隊が九回、海上自衛隊が一回の研修をそれぞれ実施した。

 空自は、日米の相互理解と特技能力向上を図る目的で昨年七月、嘉手納基地で「日米相互部隊研修」を実施。空軍の組織や勤務要領、職務内容について説明を受けた。同基地では同年八月から〇八年三月にかけても、中堅空曹の任務遂行能力向上を目的とし、統率、管理、意思疎通技術を学ぶ研修が四回行われている。

 陸自は、昨年七月と九月にキャンプ・ハンセンで上陸作戦について研修。ハンセンでは今年一月、相手を殺さずに警棒などで制圧するための「非殺傷兵器」に関する研修もあった。また、キャンプ・シュワブでも昨年十一月、「海兵隊のシミュレーション訓練の現況」について、説明を受けたり見学などをしている。

 〇七年度に研修が増えた要因について、自衛隊関係者は、〇六年度予算が特別に制約され研修が大幅に削減されたことなどを理由に挙げ、「〇七年度が特別に多いわけではない」と説明している。


     ◇     ◇     ◇     

[解説]

軍事一体化 県内で進行


 沖縄で自衛隊が年間三十回以上にわたり、米軍運用のノウハウを学び続けていることが明らかになった。着々と進む米軍と自衛隊の軍事一体化。その一翼を沖縄が担っている実態があらためて浮き彫りとなった。

 防衛省の資料によると、キャンプ・ハンセンでは非殺傷兵器の運用や上陸作戦についての研修も毎年行われている。それぞれ、部隊防護やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島しょ部への侵略といった「新たな脅威」を想定したものといえる。

 米同時テロ後の自衛隊法改正で、自衛隊による米軍基地の警護が可能になり、陸自は全国の都道府県警と連携し、外国から国内に侵入する武装工作員などに対応する治安出動を踏まえた図上演習を実施している。二〇〇五年十月には、北海道警と初めて共同実働訓練も行った。

 今年一月には、那覇の第一混成団が島しょ侵略に対応する訓練を初めて米国で実施している。こうした流れの中で今年三月、陸自のハンセン共同使用が始まっており、研修が「訓練」に発展する可能性も否定できない。

 〇五年十月の米軍再編中間報告でも、米軍基地の共同使用を「より緊密な連携や相互運用性の向上に寄与する」と評価。同最終報告ではハンセンと嘉手納基地が共同使用の対象とされている。

 しかし、県内の米軍基地はいずれも過密な演習により周辺への被害が絶えない状況で、基地に対する県民の不安・不信は高まっている。このような中で、自衛隊の米軍基地への「参画」は、県民により大きな負担を強いるものであり、住民の反発に油を注ぐことにもなりかねない。(東京支社・島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804091300_01.html

 

2008年4月9日(水) 朝刊 29面

沖縄市タクシー強盗/憲兵ら計画的犯行か

 沖縄市で起きたタクシー乗務員への強盗致傷事件で、沖縄署に逮捕された米兵家族の少年ら四人が、犯行の手口について、米軍に拘束されている嘉手納基地所属の憲兵隊員を含む五人で事前に打ち合わせて決めたとの内容の供述をしていることが八日、捜査関係者の話で分かった。計画的な犯行を示すものとみて、県警が裏付け捜査を進めている。

 捜査関係者によると、少年らは「犯行に車を使うことは五人で決めた」などと話しているという。

 また、一部の少年らは「(憲兵隊員に)借りがあった」と話しているといい、県警が動機について詳しく調べている。

 これまでの調べでは、少年らのうち三人が乗務員を殴って釣り銭箱を奪った後、憲兵隊員が運転する車で逃走したとされる。

 県警によると、憲兵隊員は関与を否定しているという。しかし、県警は憲兵隊員が少年らに犯行を指示するなど主導的な役割をした可能性が高いとの見方を強めている。

 同事件では、いずれも米兵の息子の少年四人が強盗致傷容疑で逮捕されたほか、憲兵隊員一人が米軍に拘束されており、県警が米側の捜査協力を得て事情聴取などを進めている。少年四人のうち三人が実行犯で、憲兵隊員を含む二人は犯行の指示や支援などをした疑いが持たれている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804091300_04.html

 

2008年4月9日(水) 朝刊 2面

PCB含有物 米へ/米軍が県内で保有

 【東京】外務省は八日までに、県に対し、米軍が県内で保有していた日本製のポリ塩化ビフェニール(PCB)含有物資八十五トンを横浜港から米本国に向けて搬出した、と伝えた。

 外務省によると搬出は三月十五日で、「変圧器などの総重量であり、PCB自体は少量」と説明している。

 米環境保護庁は、今年一月七日から来年一月九日までの間、外国製のPCB含有物資の搬入を制限する有毒物質管理法の適用除外期間を設定している。日本国内にPCB含有物資処分施設が限られていることから、この期間に合わせて米軍が独自に搬出することになった。

 今後も期間内にPCB含有物資の搬出が行われることも予想される。これまで県内から米軍がPCB含有物資を搬出した例はほかに、二〇〇三年八月十五日、〇四年七月十日で、いずれも海路で搬出されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804091300_06.html

沖縄市タクシー強盗、憲兵隊員関与疑いなど  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(4月3日、4日、5日)

2008年4月3日(木) 朝刊 1面

夜間外出制限 緩和 2時間短縮

 在沖米海兵隊報道部は二日、在沖米軍人に課していた午後十時から午前五時までの夜間外出制限措置を四日から、深夜十二時から午前五時に短縮すると発表した。基地外での軍人の飲酒を全面禁止する措置は継続する。制限時間中でも自家用車やタクシー、米軍施設間を運行するバスによる基地と基地外住居間の移動は可能としている。

 在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官は発表文で「反省の期間とそれに伴って実施した任務時間外の制限措置は、基地外での不法行為を減少することができた」とコメント。「最終的には地元との信頼関係を再構築するのに役立つだろう」としている。

 県基地対策課によると、二月十日の米兵暴行事件以降、米軍人や軍属らによる事件・事故が十九件と相次いで発生しており、ジルマー四軍調整官が評価する制限措置の効果をめぐって県民から反発が出そうだ。

 同報道部によると、ジルマー四軍調整官は四軍の下士官らと意見交換した上で、各軍の司令官らと協議し、一日に今回の緩和措置を決断した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804031300_04.html

 

2008年4月3日(木) 朝刊 27面

「再発防止策は不十分」/首長ら疑問視

 【中部】米兵の外出禁止措置が緩和されることについて、米軍基地を抱える本島中部の首長らは二日、「具体的な再発防止策が示されない中でなぜ」と米軍の対応を疑問視した。同措置が事件減少につながったとの見解には「事件はなくなっていない。兵士一人一人への指導を徹底するべきだ」と訴える意見も出た。

 野国昌春北谷町長は「神奈川県では米軍人による刺殺事件が発生した。米軍は綱紀粛正や教育の徹底を言うが、具体策は報告されていない」と指摘する。

 「基地外居住の実態調査など町の要求にも応えておらず、信頼関係の回復は十分とはいえない」と、緩和措置を疑問視した。

 米軍人による事件が相次ぐ沖縄市。市議会「基地に関する調査特別委員会」の与那嶺克枝委員長は「緩和するのであれば、兵士一人一人まで指導が行き渡るようにするべきだ」とした。

 沖縄市内には米兵相手のバーやライブハウスが軒を連ねる。関係者は「外出禁止措置で、通りは大打撃を受けている。規制緩和は歓迎だ。静かに見守りたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804031300_05.html

 

2008年4月3日(木) 朝刊 2面

原因は不発弾処理/ハンセン火災

 先月二十六日に金武町のキャンプ・ハンセンで起きた原野火災の原因は不発弾処理だったことが二日、分かった。真部朗沖縄防衛局長が同日、抗議に訪れた社大党の喜納昌春委員長らに答えた。先月三十一日に、米海兵隊から連絡があったという。沖縄防衛局によると、米軍は廃弾処理場(EOD)1付近で不発弾を発見したが、EODへの移動は危険が伴うとし、その場で処理したと説明したという。米軍は詳しい処理現場については明らかにしていない。

 不発弾をEODでなく、発見現場で処理することについて、沖縄防衛局は「回数は多くないと承知しているが、その頻度は承知していない」と説明。発見現場での不発弾処理時の民間への通報について沖縄防衛局は「民間地における不発弾処理と米軍演習場内における予定外の不発弾処理については単純に比較することができない」としている。

 金武町や同町議会、伊芸区は火災原因について「(集落に近い)レンジ4付近で廃弾処理を行っている」と指摘している。

 喜納委員長や糸数慶子参院議員らは「焼失による原野破壊は米国の責任で植栽し復旧すること」などを六項目を要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804031300_06.html

 

琉球新報 社説

身柄引き渡し すべての米兵犯罪に適用を2008年4月3日 神奈川県警は2日、横須賀市でタクシー運転手が刺殺された事件で、米海軍に脱走罪で身柄を拘束された男性兵士を米海軍横須賀基地内で取り調べた。

 米兵は米海軍犯罪捜査局の事情聴取に続き、同県警にも殺害を認める供述をした。早期に身柄を日本側に移し、取り調べを本格化させることを求めたい。

 現行の日米地位協定は、運用改善に基づき、米兵の起訴前の身柄引き渡しを要求できるようになった。米側は今回の事件で、日本側の引き渡し要求に応じるとみられる。

 しかし、起訴前の身柄引き渡しは凶悪事件に限っている。しかも、米側の「好意的配慮」で引き渡すなど、多くの問題点がある。

 横須賀市では空母乗組員による強盗殺人事件(2006年)が発生するなど、米兵犯罪は沖縄だけの問題ではない。

 米側は事件発生のたびに、綱紀粛正に努めるとするが、凶悪事件発生後も米兵犯罪は続発している。米軍の統率力は機能していないと言わざるを得ない。

 すべての米兵犯罪で速やかに身柄を引き渡すなど、地位協定の抜本的改定なしには、後を絶たない米兵犯罪の捜査にも大きな支障を来す。

 06年1月に北谷町のキャンプ瑞慶覧で発生したタクシー強盗事件では、米軍が拘束した容疑米兵2人は日本側が起訴するまで、身柄は引き渡されなかった。

 もう一人の容疑者は既に除隊し帰国していた。米側は当時、その容疑者について「軍とともに米本国の特別機関が聴取している。事情聴取の情報提供もしながら宜野湾署と捜査協力を続けている」とした。だが、県警はいまだに帰国した米兵の行方や詳細な情報を把握できていない。

 地位協定が日本側の捜査の壁となり、犯罪者の逃げ得を許すことは、あってはならない。

 民主、社民、国民新の野党三党が地位協定改定統一案をまとめた。

 すべての事件で引き渡し要求に米側が応じることを明文化したほか、基地外での事故の場合、米軍警察は「日本当局の第一義的な統制の下に捜査する」と明記した。

 米軍活動による環境破壊や汚染の浄化は日本の責任となっているが、米側に原状回復義務を負わせる環境条項を盛り込んだ。

 実現すれば、大きな前進である。

 地位協定改定は仲井真弘多知事をはじめ、県民の意志である。14都道府県で構成する渉外知事会も見直しを政府に要求している。

 迅速な捜査、適正な処罰を科すことは、米兵犯罪の抑止にもつながる。だが、政府は米側に見直しを求めないことを明言している。国民の安全を守る気があるのだろうか。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130789-storytopic-11.html

 

2008年4月3日(木) 夕刊 1面

嘉手納基地 戦闘機の3割外来機/町が離着陸調査

 【嘉手納】嘉手納町が米軍嘉手納基地の運用実態調査のため二〇〇七年度に計三日間実施した目視調査で、騒音が激しいとされる戦闘機の離着陸回数は計三百九十九回で、このうち30%が外来機だったことが二日、分かった。町は「想像以上に多い」としており、外来機による基地運用が恒常化している実態が浮き彫りになった。

 目視調査は、〇七年四月二十五日、同六月十三日、〇八年二月十三日の三日間。いずれも、嘉手納町屋良の「道の駅かでな」で午前六時―午後十時まで、離着陸回数や騒音発生回数、騒音の最高値などを調べた。

 三日間合計の航空機の離着陸回数は五百五十七回。このうち、戦闘機が72%を占めた。

 外来機のFA18戦闘攻撃機は調査を実施した三日間すべてで離着陸が確認され、計九十二回。四月の調査では当時、同基地に一時配備されていたステルス戦闘機F22Aラプターの離着陸が二十八回あった。

 三日間の騒音発生回数の一日当たりの平均は百三十八回で、合計は四百十四回。二〇〇六年度の一日当たりの平均騒音発生回数百九回を上回った。

 〇六年度の同様の目視調査では、航空機の離着陸回数四百九十八回。騒音は、三百八十七回発生した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804031700_02.html

 

2008年4月3日(木) 夕刊 5面

沖高専上空で米軍ヘリ訓練

 【名護】米軍のヘリコプターが、名護市辺野古の国立沖縄工業高等専門学校の上空付近で、機体を空中で静止させるホバーリング訓練を行っているのが三日午前、確認された。春休み期間で授業はなかったが、キャンプ・シュワブに隣接する同校は、これまで名護市などを通じ米軍に運用の改善を求めていただけに、あらためて周辺の生活環境への配慮が求められそうだ。

 糸村昌祐校長は「授業中にヘリが周回した事もあり、その度に改善を求めてきた。教育機関なので静かな環境が望ましいし、授業に影響が出るような訓練はやめてほしい」と話した。

 同校グラウンドで野球の練習をしていた宮里貴紀さん(五年)は「あまりに低空で飛んだので、不時着するのかと思った。沖国大の墜落事故が頭に浮かんだ。生徒が巻き込まれる恐れがあり、ヘリは学校の上空を飛んでほしくない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804031700_03.html

 

2008年4月4日(金) 朝刊 29面

米兵の息子2人が自供/タクシー強盗致傷

 今年三月十六日夜に沖縄市内の路上でタクシーから現金箱を盗んだとして窃盗の容疑で沖縄署に逮捕された米兵の息子二人が、同日未明に同市内で起きた外国人らしき三人組によるタクシー運転手への強盗致傷容疑事件についても関与を認める供述をしていることが三日、関係者の話で分かった。県警は二つの事件が同一犯による可能性が高まったとみて、近く二人を強盗致傷容疑で再逮捕する方針。米軍側は強盗致傷容疑事件の共犯とみられる複数の外国人の身柄を確保しており、県警が引き渡しを求めている。

 タクシー運転手の強盗致傷容疑事件は三月十六日午前午前零時二十分ごろ、同市中央二丁目の路上で発生。外国人とみられる三人組の男がタクシーを止めて乗務員の男性を殴り、現金約八千円入りの釣り銭箱を盗んで逃走した。乗務員は殴られた際に転倒し、すりむくけがをした。

 この事件から約二十二時間半後の同日午後十時四十五分ごろには、同市南桃原の路上で、別のタクシー運転手が車内から現金五千四百円入りの現金箱を盗まれた。同署が、海兵隊の息子の無職少年(15)と空軍兵の息子の男子高校生(16)を窃盗容疑で逮捕していた。米軍が身柄を確保している複数の外国人は、強盗致傷事件の実行犯か補佐役だった可能性がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804041300_04.html

 

2008年4月4日(金) 朝刊 29面沖高専上空でヘリ訓練/米軍、生活配慮なく

 【名護】米軍のヘリコプターが、名護市辺野古の国立沖縄工業高等専門学校の上空付近で、機体を空中で静止させるホバーリング訓練を行っているのが三日午前、確認された。春休み期間で授業はなかったが、キャンプ・シュワブに隣接する同校は、これまで名護市などを通じ米軍に運用の改善を求めていただけに、あらためて周辺の生活環境への配慮が求められそうだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804041300_05.html

 

2008年4月4日(金) 朝刊 2面

泡瀬埋め立て下旬開始/総事局計画

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合の埋め立て事業で、事業者の沖縄総合事務局は三日、四月下旬から護岸の埋め立て作業などを開始する二〇〇八年度の事業計画を発表した。例年四―七月はトカゲハゼの産卵期に当たるとして、環境アセスメントの規定に従い工事を中断していた。しかし、外周護岸によって区切られた状態になり、内部での作業には影響がなくなったとして初めて四月から工事を行う。

 国の工事は、四月から囲まれた護岸の内側に砂を投入し、八月以降に護岸への石材や土のう設置、仮設航路浚渫、十二月から新港地区の泊地の浚渫工事などを予定している。事業費は約四十億円。県は八月以降に人工ビーチの突堤建設を始める。第一区域の事業は一二年度完了の予定。

 同事務局は「工事中は水質監視調査を行い、濁りがあれば工事を中断して対策を取る。八月以降の工事は通常通り汚濁防止膜を設置する」と説明している。

 通年工事に反対する泡瀬干潟を守る連絡会の小橋川共男共同代表は「囲ったから影響がないというのは勝手な解釈。強引に進めるやり方に怒りを覚える」と批判。工事中止を求め、何らかの行動を取るとした。

 推進派のプライド泡瀬の當真嗣蒲会長は「第一区域の工事は決まったことであり、沖縄市の経済発展のため一日も早く進めてほしい。環境に配慮された工事であり、外周が囲われたのであれば希少生物にも影響はないと思う」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804041300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年4月4日朝刊)

[横須賀・米兵逮捕]

再発防止策を洗い直せ


 「良き隣人」でありたいという言葉とは裏腹に、米軍は今や、基地を抱える住民にとって「内なる脅威」になりつつあるのではないか。そんな疑問を振り払うことができない。

 神奈川県横須賀市で起きたタクシー運転手刺殺事件で神奈川県警横須賀署捜査本部は、米海軍に脱走罪で身柄拘束されていたナイジェリア国籍の米海軍一等水兵(22)を強盗殺人容疑で逮捕した。

 横須賀市では二〇〇六年一月にも、米兵による女性殺害事件が起きている。飲酒などで浪費した末に、泣き叫ぶ被害者に暴行を加えて殺害し、現金を奪うというおぞましい事件だった。

 米軍は事件後、深夜の飲酒制限をはじめ、さまざまな再発防止策を実施した。だが、米兵による凶悪犯罪はその後も、横須賀をはじめ各地で後を絶たない。

 なぜ、こうも米兵による事件が頻発するのか。腹立たしくあれば、もどかしくもある、というのが正直な気持ちだ。

 今回の事件は、従来のような一時しのぎの再発防止策の限界を明らかにした。米軍駐留の在り方まで含めた大胆な解決策を模索する必要がある。

 そうでなければ、壊れた蓄音機のように、今後も、謝罪と再発防止をむなしく繰り返すしかないだろう。

 国内にありながら米軍基地は、民間地域とは別世界を成している。通用する法体系も生活スタイルも、メディアによる報道も、基地の内と外ではことごとく違う。その違いと落差が、再発防止を難しくしているのである。

 米兵による暴行事件や殺害事件は、日本社会にとっては重大事である。連日のように報道され、国会でも取り上げられる。

 基地内でも米兵向けに、繰り返し同様の報道がなされ、重大な出来事として受け止められているかといえば、決してそうではない。

 事件そのものへの嫌悪の情は共通するとしても、金網の内と外とでは、事件に対する受け止め方に、さまざまな点で大きな落差があると言わなければならない。

 夜間外出禁止や教育プログラムなど、行動規律の厳格化を進めているのは事実だが、それでもまだ、金網の内と外の落差が埋められたとはいえない。

 日本社会が感じている問題の深刻さをいかに基地内に浸透させ、実効性のある再発防止策を打ち出すことができるか。それが問われているのだと思う。その壁になっているのが地位協定である。

 部隊内部の規律厳格化だけでは限界がある。地位協定そのものを見直し、起訴前の身柄引き渡しについては、もっと広範な犯罪を対象にすべきである。

 逆に言えば、犯罪等の処理についてまで地位協定による手厚い「保護」がなされているため、再発防止策が十分な効果を上げていないともいえる。根本的な見直しが必要だ。

 繰り返すようだが、基地内での取り組みと日本社会の重大性認識には落差があり、これをどう埋めるかが大きな鍵である。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080404.html#no_1

 

2008年4月4日(金) 夕刊 1面

タクシー窃盗/別の強盗致傷で再逮捕

 三月十六日夜に沖縄市内で起きたタクシー乗務員に対する窃盗事件で逮捕された米兵の息子二人が、同日未明に同市内で起きた別のタクシー乗務員への強盗致傷事件についても犯行を認める供述をしている問題で、沖縄署は四日、二人を強盗致傷容疑で再逮捕した。基地内に住む別の米兵の息子二人についても四月二日に同容疑で逮捕状を取ったが、米側の捜査協力が得られていない。また、嘉手納基地所属の兵長(21)が、犯行に関与したとみて米軍が監視下に置いており、同署が任意同行して調べを進めている。

 逮捕されたのは、在沖米空軍兵の息子の男子高校生(16)=同市八重島=と、米海兵隊員の息子の無職少年(15)=住所不定。逮捕状を取ったのは、在沖空軍兵の息子(19)と在沖米陸軍の息子(19)。少年四人のうち三人が実行犯とみられている。空軍兵長は実行犯ではないが、補佐的な役割をした疑いが持たれている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804041700_04.html

 

2008年4月5日(土) 朝刊 1面

憲兵隊員 関与疑い/沖縄市タクシー強盗

米軍が拘束 県警捜査

 沖縄市で起きた米軍関係者によるタクシー強盗致傷事件で、米軍の監視下にある嘉手納基地所属の兵長(21)が憲兵隊員であることが四日分かった。米兵犯罪の取り締まりに当たるべき憲兵隊員が犯行に関与した可能性がある。また、県警が強盗致傷容疑で二日に逮捕状を取った米兵の息子二人について、米側は四日現在、身柄の引き渡しに応じていない。

 県警によると、憲兵隊員は実行犯ではなく、何らかの補佐的な役割を果たした疑いが持たれている。県警は「米軍から十分な捜査協力が得られている」として逮捕状を請求せずに任意で捜査を進めており、日本側が身柄を取らないまま書類送検するとみられる。

 逮捕状を取った基地内に住む米兵の息子二人については、沖縄署が複数回にわたり米側に身柄の引き渡しを求めているが、現在まで実現していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804051300_07.html

 

2008年4月5日(土) 朝刊 2面

米兵事件防止へ新機関を/渉外知事会 自治体参加 要求

 【東京】米軍基地を抱える十四都道県でつくる渉外知事会会長の松沢成文神奈川県知事らは四日、外務省の宇野治政務官と会い、米兵事件の再発防止に向けて、日米合同委員会の中に、自治体が参加する「地域特別委員会」のような協議機関の新設を求めた。宇野政務官は、米側が積極的な姿勢であれば検討する意向を示したという。

 松沢知事によると、シーファー駐日大使が三日に神奈川県庁を訪れた際、機関新設を提案したところ、同大使は「こういう事態では米政府として前向きに検討しなければならない義務がある」と答えたという。

 渉外知事会は、これまでにも日米地位協定の抜本的改定を政府に要請しているが、政府は改定に否定的で、運用改善で対処する見解を繰り返し示している。

 再発防止策などの協議について、渉外知事会は、地位協定で定められている日米合同委に自治体の意見を反映する場がないことを問題視。地元の意向を踏まえて話し合える仕組みの必要性を要望した。

 松沢知事は「改定ができないのであれば、基地所在自治体の声をくみ取る協議の場を設けてほしい。政府の言う運用改善ですぐにできる妥当な提案だ」と指摘。「日米両政府に対応してもらわない限り、地元の信頼は得られない」と述べた。

 渉外知事会は四日、大野松茂官房副長官にも要請した。沖縄県からは吉川浩正県東京事務所長が同席した。来週は高村正彦外相に要請するという。


身柄引き渡し 米軍裁量


 米軍人の家族ら五人が絡んだとみられるタクシー強盗致傷事件。沖縄県警は逮捕状を取った二人の米軍人家族の身柄引き渡しを米軍側に要求しているが、応じるかどうかは米軍の裁量に委ねられているのが現状だ。神奈川県のタクシー強盗殺人事件の容疑者米兵とは違い、米軍人・軍属の家族は、日米地位協定の運用改善でも米側が「好意的考慮」を払う対象には含まれない。

 強盗致傷容疑で四日に再逮捕された二少年は、三月に別の窃盗容疑で逮捕されていたが、その際、一人(16)は緊急逮捕。もう一人(15)は捜査協力を求められた米軍当局が二日後に沖縄署へ連れてきたため、同署は通常逮捕した。

 一方、残りの二人=いずれも(19)=は県警が逮捕状を取り、身柄引き渡しを求めているが、米軍側は「引き渡し手続き開始のための正式な要請が沖縄県警からあり、現在はその手続きの途中だ」として、依然引き渡しには応じておらず、理由も明らかにしていない。

 ある県警捜査幹部は「米軍は通常、家族の取り調べについては協力的だが、結局は米軍の都合次第で決まる。引き渡しが遅れれば捜査も遅れる。じくじたる思いはある」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804051300_08.html

 

2008年4月5日(土) 朝刊 2面

「宮古島に陸自誘致」/商議所会頭、再び言明

 【宮古島】宮古島商工会議所の中尾英筰会頭は、四日の同会議所創立七十五周年記者会見で、「宮古島に陸上自衛隊を誘致したい」と述べた。

 中尾会頭は、昨年十一月の同会議所の臨時議員総会でも同様な発言をしていた。

 中尾会頭は、北朝鮮の動向や中国の国防費増加などを示しながら、先島での国防体制構築の重要性を強調。さらに、誘致理由として、急患輸送ヘリによる人命救助、不発弾処理などの迅速化、宮古出身の陸自隊員二百人のUターンによる人口増加なども挙げた。

 反対の声もあるとしながら、「誘致には多くの方の支援がある。宮古に自衛隊が来たからといって、戦争につながるとは思わない。(誘致によって)国民の不安を解消し、生命と財産を守ることが大事だ」との見解を示した。しかし、下地島空港への誘致については否定した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804051300_09.html

 

2008年4月5日(土) 夕刊 1面

タクシー強盗 米兵息子2人逮捕

 【沖縄】沖縄市で起きた米軍関係者によるタクシー強盗致傷事件で、米軍は五日午前、沖縄署が逮捕状を取っていた米兵の息子の少年二人=いずれも(19)=の身柄を同署に引き渡した。これを受け同署は同日午前、少年二人を強盗致傷容疑で逮捕した。二人は容疑を認めているという。同事件での逮捕者は米軍人の息子ばかり四人となった。

 同署はさらに、嘉手納基地所属の憲兵隊員も事件に関与した可能性があるとみて、任意で事情を聴くなど調べを進めている。

 同署は二日に少年二人の逮捕状を取り、米軍に複数回にわたり、身柄引き渡しを求めていた。

 同署によると、米軍は五日午前、「基地内で少年を引き渡すので来てもらいたい」と連絡。同署の捜査員が嘉手納基地内で身柄引き渡しを受けたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804051700_03.html

 

2008年4月5日(土) 夕刊 5面

「取り締まる憲兵が・・・」/タクシー強盗関与 地元首長、強い憤り

 【中部】またも米軍関係者か―。沖縄市で起きた米軍関係者によるタクシーを狙った強盗致傷事件は、嘉手納基地所属の憲兵隊員も犯行に関与していたことが浮上。犯罪を取り締まる憲兵隊員の関与は、米軍の「綱紀粛正」の中身のなさを露呈した。米軍関係者による事件が繰り返される本島中部の住民やタクシー業界関係者からは「米軍事件が日常になってしまった」と怒りと不安が渦巻いた。

 沖縄市の東門美津子市長は事件に憲兵隊員が関与している可能性があることに「冗談じゃないでしょう」とあきれた様子。「取り締まる側が犯罪にかかわっていたなら、許せないし話にならない。米軍は一連の抗議行動をどう受け止めているのか」と強い憤りを示した。嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「憲兵隊は規律を守り、指導すべき立場にある。関与の疑いがあること自体が米軍の規律の緩みの激しさを表し、大問題だ」と指摘した。

 基地の中まで米軍人を送迎する「ベースタクシー」を運行する沖縄市内のタクシー会社は、防犯のため昨年の夏から、後部座席と運転席の間にプラスチックの板を設けるなど対策をとっている。同社の運行管理者(61)は「沖縄市での事件後、不審者は乗せず、身に危険を感じたらすぐ逃げるよう乗務員に注意を促した。タクシー運転手が何度も被害に遭って遺憾だ」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804051700_04.html

「集団自決」訴訟判決、検定意見の根拠否定 在日米軍再編交付金、名護・宜野座 正式指定 米軍車両侵入、うるま市が抗議決議など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(3月29日から4月2日)

2008年3月29日(土) 朝刊 1・10面

検定意見の根拠否定/執筆者ら再訂正へ

「集団自決」訴訟判決/元隊長陳述「信用性疑問」

 慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」は戦隊長が命じたとする本の記述をめぐる大阪地裁の「集団自決」訴訟で二十八日に言い渡された判決は、原告の元戦隊長の梅澤裕氏(91)の陳述書について「信用性に疑問があるというほかない」と否定した。文部科学省は、この陳述書などを根拠に「集団自決」への軍の強制を削除する検定意見を出していた。陳述書が判決で否定されたことで、被告側の支援者らは「根拠が崩れた。検定意見を撤回させたい」との姿勢で、来月に文科省へ要請行動をする意向を示した。

 梅澤氏の陳述書は、「集団自決」は同氏の命令したものではなく、村幹部が懇願して手榴弾を要求したと主張。しかし、判決は「戦隊長の了解なしに部下が手榴弾を交付したというのは不自然」と指摘。当時、島の補給路が断たれ、装備が不十分な環境だったことを踏まえ「部下の行動を知らなかったというのは、極めて不自然である」とした。

 地裁での判決後、大阪市内で開かれた被告側の支援者による報告集会でも、判決を評価した上で、検定意見撤回に正当性があるとする声が相次いだ。

 教科書執筆者の石山久男氏は「陳述書の信用性は完全に否定されたといっていい。これに基づき検定意見を言い渡した文科省はこれを深く反省し、検定意見を直ちに撤回しなければならないと思う」と述べ、来年四月から使われる教科書の記述について、今年七月ごろをめどに再度訂正申請したい考えを示した。

 同じく執筆者の一人の坂本昇氏は「判決は、軍が駐屯していた所で『集団自決』が起き、駐屯していない所ではなかった、ということまで触れて軍の強い関与があったことを明らかにした。歴史研究の成果が取り入れられた」と評価。他の執筆者や教科書会社と相談しながら再訂正申請に向け取り組むとした。


     ◇     ◇     ◇     

「集団自決」訴訟判決(要旨)


 「沖縄ノート」の各記述は著書である被告大江健三郎(以下、大江)が沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」の問題を本土の日本人の問題としてとらえ返そうとしたものである。

 各記述には、慶良間諸島の「集団自決」の原因について、日本人の軍隊の部隊の行動を妨げずに食糧を部隊に提供するために自決せよとの命令が発せられるとの記載や渡嘉敷島で住民に「集団自決」を強要させたと記憶される男である守備隊長との趣旨の記述などがあり、渡嘉敷島における「集団自決」を命じたのが、当時の守備隊長であることが前提となっている。

 また「この血なまぐさい座間味村、渡嘉敷島のむごたらしい現場」との記載があり、大江自身、本人尋問で「沖縄ノート」が原告梅澤裕(以下、梅澤)をも対象にしたことを自認している。

 渡嘉敷島、座間味島で「集団自決」が行われた際に、故赤松嘉次(以下、赤松)が渡嘉敷島の、梅澤が座間味島の守備隊長もしくは軍隊の長であることを示す書籍は多数存在するなど、「沖縄ノート」の各記述内容が赤松、梅澤に関する記述であると特定し得ることは否定できない。

 以上、特定性ないし同定可能性の有無について被告らの主張は、理由がないというべきである。

 家永三郎(以下、家永)著の「太平洋戦争」の記述には「座間味島の梅澤隊長は、老人・こどもは村の忠魂碑前で自決せよと命令した」などとの記述があり、梅澤が部隊の食糧を確保するために、本来、保護してしかるべきである老幼者に対して無慈悲に自決することを命じた冷酷な人物であるとの印象を与え、梅澤の社会的評価を低下させる記述であることは明らかである。

 「沖縄ノート」の記述では、座間味島、渡嘉敷島を含む慶良間諸島での「集団自決」が日本軍の命令によるものであるとし、「集団自決」の責任者の存在を示唆している。ほかの記述と併せて読めば、座間味島および渡嘉敷島の守備隊長である梅澤、赤松が「集団自決」の責任者であることをうかがわせる。したがって、「沖縄ノート」の記述は「集団自決」という平時ではあり得ない残虐な行為を命じたものとして、梅澤および赤松の社会的評価を低下させるものと認められる。

 名誉棄損が違法性がないと判断されるために、「太平洋戦争」、「沖縄ノート」の執筆、出版を含む表現行為の主な動機が公益を図る目的であるかを見る。

 「太平洋戦争」は、歴史研究書であり、その記述は公共の利害に関するものであること、公益を図る目的を併せ持ってなされたものであることには当事者間の争いがない。

 家永は多数の歴史的資料、文献等を調査した上で執筆したことが認められる。「太平洋戦争」の記述の主な目的は戦争体験者として、また、日本史の研究者として太平洋戦争を評価、研究することにあったと認められ、それが公益を図るものであることは明らかだ。

 「沖縄ノート」は、大江が沖縄が本土のために犠牲にされ続けてきたことを指摘。日本人とは何かを見つめ、戦後民主主義を問い直したものであること、各記述は、沖縄戦における「集団自決」の問題を本土日本人の問題としてとらえ返そうとしたものであることが認められる。

 これらの事実および、梅澤、赤松が公務員に相当する地位にあったことを考えると、「沖縄ノート」の記述の主な目的は、日本人の在り方を考え、読者にも反省を促すことにあったものと認められ、公益を図るものであることは明らかだ。

 以上によれば、「太平洋戦争」、「沖縄ノート」の各記述に関する表現行為の目的がもっぱら公益を図る目的であると認められる。


太平洋戦争時の沖縄の状況


 1944年6月ごろから、三二軍が沖縄に駐屯を開始した。三二軍司令官の牛島満は、沖縄着任の際、沖縄における全軍に対し、「防諜ニ厳ニ注意スヘシ」と訓示を発した。

 このように沖縄において防諜対策は、日本軍の基本的かつ重要な方針だった。三二軍司令部の基本方針を受け、各部隊では民間人に対する防諜対策が講じられた。

 軍人軍属を問わず標準語以外の使用を禁じ、沖縄語を使用する者をスパイとみなし処分する旨の命令や、島しょにおける作戦では原住民がスパイ行為をするから気を許してはならない旨の訓令などが出された。

 また、三二軍は同11月18日、県民を含めた総力戦体制への移行を急速に推進し、「軍官民共生共死の一体化」を具現するとの方針を発表した。

 慶良間諸島には同9月、陸軍海上挺進戦隊が配備され、座間味島に梅澤が隊長を務める第一戦隊、阿嘉島・慶留間島に野田隊長(以下、野田)の第二戦隊、渡嘉敷島に赤松が隊長を務める第三戦隊が駐留した。

 45年3月の米軍侵攻当時、慶良間諸島に駐屯していた守備隊はこれらの戦隊のみであった。「集団自決」発生当時、米軍の空襲や艦砲射撃のため、沖縄本島など周囲の島との連絡が遮断されており、食糧や武器の補給が困難な状況にあった。

 海上挺進戦隊は、もともと特攻部隊としての役割を与えられていたことから、米軍に発見されないよう、特攻船艇の管理は厳重で、そのほかの武器一般の管理も同様であった。

 渡嘉敷島は44年10月10日の空襲以降、それまで徴用され陣地構築作業をしていた男子77人があらためて召集され、兵隊とともに国民学校に宿営することになった。

 座間味島は45年3月23日から25日まで空襲を受けた。住民は壕に避難するなどしていたが、同25日夜、伝令役が住民に忠魂碑前に集合するよう伝えて回った。その後、同26日、多数の住民が手榴弾を使用するなどして集団で死亡した。

 同27日午前、米軍が渡嘉敷島に上陸した。赤松は、米軍の上陸前、巡査に「住民は西山陣地北方の盆地に集合するよう」指示し、巡査は防衛隊員とともに住民に集合を促した。住民は同28日、防衛隊員らから配布された手榴弾を用いるなどして、集団で死亡した。

 慶留間島では、45年2月8日、野田が住民に対し「敵の上陸は必至。敵上陸の暁には全員玉砕あるのみ」と訓示し、同3月26日、米軍上陸の際、「集団自決」が発生した。

 以上の「集団自決」が発生した場所すべてに日本軍が駐屯しており、日本軍が駐屯しなかった渡嘉敷村の前島では、「集団自決」は発生しなかった。


日本軍による住民加害


 元大本営参謀で厚生省引揚援護局の厚生事務官馬淵新治(以下、馬淵)の調査によれば、日本軍の住民に対する加害行為は各地で行われていた。

 例えば、馬淵は「将兵の一部が勝手に住民の壕に立ち入り、必要もないのに『軍の作戦遂行上の至上命令である。立ち退かないものは非国民、通敵者として厳罰に処する』等の言辞を敢えてして、住民を威嚇強制のうえ壕からの立ち退きを命じて己の身の安全を図ったもの」。

 「ただでさえ貧弱極まりない住民個人の非常用食糧を『徴発』と称して略奪するもの、住民の壕に一身の保身から無断進入した兵士の一団が無心に泣き叫ぶ赤児に対して『此のまま放置すれば米軍に発見される』とその母親を強制して殺害させたもの」などがあったとしている。

 また「敵上陸以後、いわゆる『スパイ』嫌疑で処刑された住民は十指に余る事例を聞いている」としている。

 日本軍は、渡嘉敷島において防衛隊員であった国民学校の大城徳安訓導が身寄りのない身重の婦人や子どもの安否を気遣い、数回部隊を離れたため、敵と通謀する恐れがあるとして、これを処刑した。

 また、赤松は「集団自決」でけがをして米軍に保護され治療を受けた2人の少年が米軍の庇護のもとから戻ったところ、米軍に通じたとして殺害した。さらに米軍の捕虜となり、米軍の指示で投降勧告にきた伊江島の住民6人に、自決を勧告し、処刑したこともあった。

 そのほか、沖縄では、スパイ容疑で軍に殺された者など、多数の軍による住民加害があった。


援護法の適用


 梅澤命令説および赤松命令説は、沖縄で援護法の適用が意識される以前から存在していたことが認められる。援護法適用のために捏造されたものであるとの主張には疑問が生ずる。

 また、隊長命令がなくても戦闘参加者に該当すると認定された自決の例もあったことが認められ、梅澤命令説および赤松命令説を捏造する必要があったのか直ちには肯定し難い。

 宮村幸延が作成したとされる「証言」と題する親書の記載内容は、「昭和二十年三月二十六日の集団自決は梅澤部隊長の命令ではなく、当時兵事主任兼助役の宮里盛秀の命令で行われた」との部分も含めて拝信しがたい。これに関連する原告梅澤の陳述書も拝信し難い。

 「母の遺したもの」の記載を子細に検討すれば、「集団自決」に援護法を適用するために原告梅澤の自決命令が不可欠であったことや、「村の長老」から虚偽の供述を強要されたことなど援護法適用のために自決命令の捏造を直ちにうかがわせるものではない。

 沖縄において、住民が「集団自決」について援護法が適用されるよう強く求めていたことは認められるものの、そのために梅澤命令説および赤松命令説が捏造されたとまで認めることはできない。


梅澤命令説


 「集団自決」の体験者の供述から、原告梅澤による自決命令の伝達経路等は判然とせず、梅澤の言辞を直接聞いた体験者を全証拠から認められない。取材源が明示されていない「鉄の暴風」「秘録 沖縄戦史」「沖縄戦史」等から、直ちに「太平洋戦争」にあるような「老人・こどもは村の忠魂碑の前で自決せよ」との梅澤の命令それ自体までは認定することには躊躇を禁じ得ない。

 しかしながら、梅澤が座間味島における「集団自決」に関与したものと推認できることに加え、少なくとも2005年度の教科書検定までは、高校の教科書に日本軍によって「集団自決」に追い込まれた住民がいたと記載されていた。布村審議官は、座間味島および渡嘉敷島の「集団自決」について、日本軍の隊長が住民に自決命令を出したとするのが通説であったと発言していた。

 学説の状況、諸文献の存在、その信用性に関する認定、判断、家永および大江の取材状況等を踏まえると、梅澤が座間味島の住人に対し「太平洋戦争」の内容の自決命令を発したことを直ちに真実と断定できないとしても、合理的資料もしくは根拠があると評価できる。

 各書籍の発行時において、家永や被告らが事実を真実であると信じるについての相当の理由があるものと認めるのが相当である。


渡嘉敷島の「集団自決」


 体験者らの体験談は、いずれも自身の実体験に基づく話として具体性、迫真性、信用性を有することができる。

 渡嘉敷島における「集団自決」は、1945年3月27日に渡嘉敷島に上陸した翌日の28日に赤松大尉に西山陣地北方の盆地への集合命令の後に発生している。赤松大尉率いる第三戦隊の渡嘉敷島の住民らに対する加害行為を考えると、赤松大尉が上陸した米軍に渡嘉敷島の住民が捕虜となり、日本軍の情報が漏えいすることを恐れて自決命令を発したことがあり得ることは、容易に想像できる。

 赤松大尉は防衛隊員であった国民学校の大城徳安訓導が、身重の夫人や子供の安否を気遣い、数回部隊を離れたため、敵と通謀する恐れがあるとして処刑している。

 米軍の上陸後、手榴弾を持った防衛隊員が西山陣地北方の盆地へ集合している住民のもとへ赴いた行動を赤松大尉が容認したとすれば、自決命令を発したことが一因ではないかと考えざるを得ない。

 第三戦隊に属していた皆本義博証人が手榴弾の交付について「恐らく戦隊長の了解なしに勝手にやるようなばかな兵隊はいなかったと思います」と証言していることは、先に判示している通り。手榴弾が「集団自決」に使用されている以上、赤松大尉が「集団自決」に関与していることは、強く推認される。

 沖縄県で「集団自決」が発生したすべての場所に日本軍が駐屯し、駐屯しなかった渡嘉敷村の前島では、「集団自決」は発生しなかったことを考えると、「集団自決」は日本軍が深くかかわったものと認めるのが相当である。

 沖縄では、第三二軍が駐屯し、その司令部を最高機関として各部隊が配置され、渡嘉敷島では赤松大尉を頂点とする上意下達の組織であったと認められる。渡嘉敷島における「集団自決」に赤松大尉が関与したことは十分に推認できる。

 渡嘉敷島の「集団自決」の体験者の体験談等から赤松大尉による自決命令の伝達経路は判然とせず、命令を直接聞いた体験者を全証拠から認められない。取材源などは明示されていない。「鉄の暴風」「秘録 沖縄戦史」「沖縄戦史」等から「沖縄ノート」にある記述のような赤松大尉の命令の内容それ自体まで認定することには躊躇を禁じ得ない。

 しかしながら、合理的資料もしくは根拠があると評価できるから、「沖縄ノート」の発行時に、被告らが事実を真実と信じるについて相当の理由があったと認めるのが相当である。

 被告らによる梅澤および赤松大尉に対する名誉棄損は成立せず、したがって、その余の点について判断するまでもなく、これを前提とする損害賠償、出版の差し止めに理由はない。


文献の評価


 「鉄の暴風」には、初版における梅澤の不審死の記載、渡嘉敷島への米軍の上陸日時に関し、誤記が認められるものの、戦時下の住民の動き、非戦闘員の動きに重点を置いた戦記として、資料価値を有するものと認める。

 「母の遺したもの」には木崎軍曹が住民に「途中で万一のことがあった場合は、日本女性として立派な死に方をしなさいよ」と手榴弾一個が渡されたとのエピソードも記載され、日本軍関係者が米軍の捕虜になるような場合には自決を促していたことを示す記載としての意味を有する。梅澤命令説を肯定する間接事実となり得る。

 「ある神話の背景」に、赤松大尉による自決命令があったという住民の供述は得られなかったとしながら、取材をした住民がどのような供述をしたかについては詳細に記述していない。家永教科書検定第三次訴訟第一審の証言で、「ある神話の背景」の執筆に当たっては、富山兵事主任に取材をしなかったと証言しているが、それが事実であれば、取材対象に偏りがなかったか疑問が生じる。

 「ある神話の背景」は、命令の伝達経路が明らかになっていないなど、赤松命令説を否定する見解の有力な根拠となり得るものの、客観的な根拠を示して覆すものとも、渡嘉敷島の「集団自決」に関して軍の関与を否定するものともいえない。

 米軍の「慶良間列島作戦報告書」で、原告が主張するように訳したとしても、日本軍の兵士たちが慶留間の島民に対して米軍が上陸した際には自決するよう促していたことに変わりはなく、その訳の差異が本訴請求の当否を左右するものとは理解されない。

 赤松大尉は、大城徳安や米軍の庇護から戻った2少年、伊江島の住民男女6人を正規の手続きを踏むこなく、処刑したことに関与した。住民への加害行為を行っているのであって、こうした人物を立派な人だった、悪く言う者はいないなどと評価することが正当であるかには疑問がある。

 知念朝睦証人は、陳述書に「私は、正式には小隊長という立場でしたが、事実上の副官として常に赤松隊長の傍にいた」と記載しているが、西山陣地への集結指示については、聞いていない、知らない旨証言。「住民が西山陣地近くに集まっていたことも知りませんでした」と記載している。

 いずれにしても赤松大尉の自決命令を「聞いていない」「知らない」という知念証人の証言から自決命令の存在を否定することは困難である。


皆本証言


 赤松大尉のそばに常にいたわけではないことが認められ、赤松大尉の言動を把握できる立場になかった。赤松大尉の言動についての証言の評価に当たっては、この点を重視する必要がある。

 皆本義博証人の証言は、手榴弾を交付した目的を明示する陳述書の内容と食い違い、手榴弾に関する陳述書の記載およびその証言には疑問を禁じ得ない。


梅澤証言


 梅澤は本人尋問で、手榴弾を防衛隊員に配ったことも、手榴弾を住民に渡すことも許可していなかったと供述する。

 一方で木崎軍曹が手榴弾を交付したことについて、木崎軍曹が住民の身の上を心配して行ったのではないかと供述する。

 慶良間諸島は沖縄本島などと連絡が遮断されていたから、食糧や武器の補給が困難な状況にあったと認められ、装備品の殺傷能力を検討すると手榴弾は極めて貴重な武器であったと認められる。

 軍の装備が不十分で、補給路が断たれていたことについては、梅澤自身も、村民に渡せる武器、弾薬はなかったと供述している。

 そうした状況で、戦隊長である梅澤の了解なしに木崎軍曹が(住民の)身の上を心配して手榴弾を交付したというのは、不自然である。

 貧しい装備の戦隊長である梅澤が、そうした部下である兵士の行動を知らなかったというのは極めて不自然であるというべきである。

 梅澤作成の陳述書と本人尋問の結果は、信用性に疑問がある。


赤松手記


 赤松手記は、自己への批判を踏まえ、自己弁護の傾向が強く、手記、取材ごとにニュアンスに差異が認められるなど不合理な面を否定できない。全面的に信用することは困難である。


体験者証言


 本件訴訟を契機に、宮平春子、上洲幸子、宮里育江の体験談が新聞報道されたり、本訴に陳述書として提出されたりしている。沖縄戦の体験者らの体験談は、いずれも自身の実体験に基づく話として具体性、迫真性を有するものといえる。

 また多数の体験者らの供述が、1945年3月25日の夜に忠魂碑前に集合して玉砕することになったという点で合致しているから、その信用性を相互に補完し合うものといえる。

 こうした体験談の多くに共通するものとして、日本軍の兵士から米軍に捕まりそうになった場合には自決を促され、そのための手段として手榴弾を渡されたことを認めることができる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803291300_01.html

 

2008年3月29日(土) 朝刊 26・27面

決意「教科書正す」/勝利判決 国に重し

 「検定意見撤回のはずみに」「次は教科書で軍強制記述復活を」。慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」をめぐる訴訟の中で、高校の歴史教科書検定問題で検定意見の根拠とされた元戦隊長の陳述の信用性が否定されたことで、教科書問題の関係者は意気上がる。被告側支援者も集会を開き「全面勝利」と喜びながら、次の闘いへ気持ちを引き締めた。

 「集団自決」訴訟の判決を受け、被告側の支援者らによる「大江・岩波沖縄戦裁判」判決報告集会が二十八日午後、大阪市中央区のエル・おおさか(大阪府立労働センター)で開かれた。沖縄のほか、関西や関東などから約二百五十人が参加し、熱気に包まれた。

 「一審判決は大勝利だった」。被告側の代理人を務めた秋山幹男弁護士が口を開くと、会場から拍手がわいた。秋山弁護士は昨年の教科書検定問題によって、この訴訟が作家の大江健三郎さんと岩波書店の弁護にとどまらず、「多くの期待と不安を担わないといけないという大変な思いをした」と率直に振り返った。

 一方で、検定を契機に体験者から新たな証言を得られた成果を強調。「一審の勝利は心から喜びつつ、二審に向け気を引き締めなくてはならない」と述べた。

 「沖縄ノート」とともに訴えられた家永三郎著「太平洋戦争」について、岩波書店の岡本厚編集局副部長が発言。座間味島の元戦隊長が本の中で軍命を出したと名指しされ、名誉を傷つけられたと訴えたことに、「『太平洋戦争』は現代史を学ぶ人の古典であり、歴史研究の自由、表現の自由それ自体が問われた裁判だった」と指摘、「全面勝利」の意義を強調した。

 参加者からは「『踏み込んだ判決』ではなく『当然の公正な判決』だ」「これだけ多くの支援があることに勇気をもらった」などの声が上がった。名古屋市から駆け付けた南山大学二年の吉田有希さん(20)は「若者は物事の判断材料が少なく、先生や教科書の影響が大きい。この問題に無関心であってはならないと強く感じた」と話した。

 大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会の小牧薫事務局長は、控訴審では事実審理を行わないよう働き掛けるほか、「集団自決」の記述から軍の強制性を削除した教科書検定意見について、撤回を求める取り組みを強化する方針を示した。


文科省 検定論拠失う


 教科書検定意見撤回運動に取り組んできた山口剛史琉球大学准教授の話 教科書検定意見についての文部科学省の説明の核心は、梅澤裕元戦隊長の陳述書を挙げて「当事者の証言が出ている」というものだった。大阪地裁判決は、梅澤陳述が信用に足るものではない、としている。実証性がなく裁判でも認められない、ということは学術研究の成果としてまったく通用しないということ。検定意見を付した前提が崩れ、文科省にとっては、かなり重要な論拠を失ったといえる。今後、検定意見撤回に向けて、裁判の結果をどう結び付けていくか、効果的な時期と場面を検討しながら、追及していく必要がある。


仲里県議会議長「再び行動必要」

実行委の協議示


 昨年九月の教科書検定意見撤回を求める県民大会の実行委員長を務めた仲里利信県議会議長は「文部科学省が検定意見の理由に挙げた『新しい事実』のほとんどが今回の裁判で崩れた」と指摘し、「速やかに検定意見を撤回すべきだ」と訴えた。

 あくまで個人的意見としながらも「この判決を受けて、実行委員会として再度、検定意見撤回を求めていくべきだと思う。今がいい機会だ。何ができるかを含めて話し合いたい」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

「無念晴らした」

渡嘉敷 遺族ら安堵


 【渡嘉敷】渡嘉敷島などで起きた住民の「集団自決」をめぐり二十八日、軍の関与を認める判決が言い渡されたとの速報を聞き、犠牲者をまつる「白玉之塔」を参拝に訪れた多くの遺族が「犠牲になった家族や親類の無念の思いを晴らす判決だ」と安堵の表情を浮かべた。

 「集団自決」の現場で手榴弾が爆発せず、生き残った当時六歳の源啓祐さん(69)。「山を挟んで遠く離れた阿波連集落の住民が、なぜ危険を冒してまで北山に向かったのか」と問い掛け、「軍命で島民が集められたことは明らか。これからも県民の声を強く訴えていきたい」と力を込めた。

 村老人クラブ連合会会長として参拝した村田實保さん(85)は「軍が絶対的な影響力を誇る当時の時代背景を考えれば、軍関与を認める今回の判決は当然の結果だ」と評価した。

 塔の刻銘の前でひざをつき手を合わせた吉川嘉勝さん(69)は「島の思いがやっと届きました」と静かに御霊へ報告した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803291300_02.html

 

2008年3月29日(土) 朝刊 27面

養護学校侵入、米海軍車両と認める/軍報道部「道を間違えた」

 うるま市の県立沖縄高等養護学校内に侵入した車両は米海軍所属だったことが二十八日、分かった。同日午後六時すぎ、在沖米海軍報道部から沖縄防衛局に連絡があった。米海軍の連絡によると、車両に乗っていた隊員は新任だったため、道を間違えたという。所属部隊など詳細は明らかにしていない。

 沖縄防衛局によると、在沖米海軍司令官が二十八日、全隊員に対し、厳重注意したという。連絡を受けた同局管理部の立津長一業務課長は口頭で(1)隊員の教育(2)綱紀粛正(3)再発防止を申し入れた。

 仲村守和県教育長は「新任だったとか、道を間違えたからとかはまったく理由にならない」と非難。「事前に隊員の教育を徹底しない限り基地の外に出すべきではない」とし、週明けにも米軍に再発防止を求め抗議要請をする考えを示した。

 仲村教育長や保坂好泰基地防災統括監らは同日、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所を訪ね、再発防止を求め抗議した。

 一方、県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)は同日、「教育現場への侵入は、いかなる理由があろうと許せない。学校の安全・安心を守る立場から、謝罪と真相の究明を求める」とする抗議声明を発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803291300_04.html

 

2008年3月29日(土) 朝刊 2面

原野火災頻発「安保揺るがす」/金武町長・防衛局に抗議

 米軍キャンプ・ハンセン内で相次ぐ原野火災発生で、金武町の儀武剛町長は二十八日、那覇市の沖縄防衛局を訪ね、真部朗局長に対し、「金武町は日米安保に理解を示してきたが、今のままでは日米安保体制を揺るがす態度を取るかもしれない。これまで協力してきた態勢も取れなくなる」と強く抗議し、火災原因や発生場所の徹底究明、火災につながる訓練中止を求めた。

 儀武町長は相次ぐ事件・事故にも言及。政府に対し、米軍へ強い姿勢で交渉するよう求めた。

 その上で「このままではうっぷんはものすごく大きくなる。これまでの私は協力してきたが、もう協力態勢は取れなくなる。一つずつ信頼関係をなくすと、後で大きな痛手。米軍再編を含めて大きな問題になる」と訴えた。

 また、現在の米軍の演習通報の在り方も疑問視。「変わるのは日付だけで詳細な形が分からない。機密だから教えられないというのは真の日米同盟といえるのか。政府の対応は弱腰に見える」と厳しく非難した。

 真部局長は「徹底究明を米側にもしっかり申し入れて、確実に伝えたい。町長の言葉を重く受け止めたい」と述べた。


町議会も国に要請行動


 金武町議会(松田義政議長は)は二十八日、沖縄防衛局や外務省沖縄事務所などを訪れ、演習被害を受けている同町伊芸区の米軍基地の全面返還や、レンジ3で着工している米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場の建設の即時中止などを求める要請行動を行った。

 松田議長は二十六日のキャンプ・ハンセン内で発生した大火事について、米軍が発生地として説明している廃弾処理場(EOD)1でなく、伊芸集落に近いレンジ4付近で発生していると指摘した。「これまでよりも踏み込んで伊芸の基地返還を求めざるを得ない。米軍は演習のルールを破っている。確認するのが国の仕事」と強く求めた。

 沖縄防衛局の真部朗局長は「日米安全保障条約に基づき、日本の安全を確保する立場としては、残念ながら難しい」と要請に賛同しない意向を示した。その上で「だが火災はまったく日米安保に必要ないことで看過できない。(発生場所について)あらためて米軍に疑問をぶつけて確かめたい」と述べた。

 松田議長は「政府は米軍の言いなりで弱腰だ。信頼できる材料は何もない。地域の安全も安保で守ってほしい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803291300_06.html

 

2008年3月29日(土) 朝刊 2面

米海兵隊、巡回域の拡大検討/美浜・宜野湾・名護など

 在沖米海兵隊が現在、在沖の四軍に課している夜間外出禁止や基地外での終日アルコール摂取の禁止措置を今後緩和する際に、金武町や名護市辺野古などで行っていた巡回指導の対象地域の拡大を検討していることが二十八日、分かった。米軍準機関紙「星条旗」が同日、在日米海兵隊スポークスマンの話として報じた。

 対象地域を北谷町美浜のアメリカンビレッジや宜野湾市、名護市などに広げるかどうか議論しているという。

 巡回指導は日米両政府や地元関係者を含めたワーキングチームで協議している米軍と県警の共同パトロールとは異なり、米海兵隊が一部米空軍と実施している独自のもの。

 在沖米軍は今年に入って相次ぐ事件・事故を受け、夜間(午後十時―午前五時)の外出禁止措置などを課している。同紙によると、夜間外出やアルコール摂取を禁じる以前は、法的権限を持たない下士官らが週末の夜などに名護市辺野古や金武ほか、沖縄市の空港通り、中央パークアベニュー、北谷町北前などで巡回指導を実施していたという。

 海兵隊のスポークスマンは同紙に対し、「現在のアルコール摂取制限措置はいずれ緩和されるが、いつになるか推測できない」と述べている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803291300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月29日朝刊)

[「集団自決」訴訟]

史実に沿う穏当な判断


日本軍の関与を認める

 座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決(強制集団死)」に旧日本軍はどのように関与したのか。戦隊長の自決命令はあったのか、なかったのか。沖縄戦の「集団自決」をめぐる史実論争に初めて、司法の判断が示された。

 判決は、体験者の証言を踏まえた穏当な内容であり、今後この問題を考える上で里程標になるだろう。

 ノーベル賞作家の大江健三郎さんの著作「沖縄ノート」などの中で集団自決を命じたように書かれ、名誉を傷つけられた、として元戦隊長と遺族が大江健三郎さんと出版元の岩波書店に出版差し止めなどを求めた訴訟の判決で、大阪地裁の深見敏正裁判長は、請求を棄却した。

 判決は、戦隊長による自決命令について「伝達経路が判然とせず、(あったと認定するには)ちゅうちょを禁じえない」と指摘した。

 戦隊長命令の存在までは断定しなかったものの、「日本軍が深くかかわった」と認定。戦隊長が「集団自決に関与したことは十分に推認できる」との判断を示した。

 また、大江さんらの著述について「真実であると信じる相当の理由があった」ことを認め、名誉棄損に当たらないと結論付けた。

 今回の判決でもう一つ注目したいのは、体験者の証言の重みを理解し、さまざまな証言や資料から、島空間で起きた悲劇の因果関係を解きほぐそうと試みた点だ。

 一九八二年の教科書検定で文部省(当時)は、日本軍による住民殺害の記述にクレームをつけ修正を求めた。記述の根拠となった「沖縄県史」について「体験談を集めたもので研究書ではない」というのが文部省の言い分だった。あしき文書主義というほかない。

 文書は貴重な歴史資料である。だが、文書だけに頼って沖縄戦の実相に迫ることはできない。軍の命令はしばしば、口頭で上から下に伝達されており、命令文書がないからと言って自決命令がなかったとは言い切れない。

 今回の判決は、沖縄戦研究者が膨大な聞き取りや文書資料の解読を基に築き上げた「集団自決」をめぐる定説を踏まえた内容だといえるだろう。


「住民殺害」も根は一つ


 戦後世代の私たちは、ごく普通に「集団自決」という言葉を使う。だが、この言葉は戦後に流布したもので、沖縄戦の際、住民の間で一般に使われていたのは「玉砕」という言葉である。

 座間味でも渡嘉敷でも、島の人たちは、折に触れて幾度となく「米軍が上陸したら捕虜になる前に玉砕せよ」と軍から聞かされてきた。

 「軍官民共生共死」―軍はそのような死生観を住民にも植え付け、投降を許さなかった。部隊の配置など軍内部の機密がもれることを心配したのである。日本軍がどれほど防諜に神経をとがらせていたかは、陣中日誌などで明らかだ。

 実際、米軍への投降を呼び掛けたためにスパイと見なされて殺害されたり、投降途中に背後から狙撃されて犠牲になった人たちが少なくない。

 「集団自決」と「日本軍による住民殺害」は、実は、同じ一つの根から出たものだ。

 座間味や渡嘉敷では、住民に手りゅう弾が手渡されていたことが複数の体験者の証言で明らかになっている。今回の判決もその事実を重視し、軍の関与を認定した。「沖縄で集団自決が発生したすべての場所に日本軍が駐屯し、日本軍のいなかった渡嘉敷村の前島では集団自決は発生していない」とも判決は指摘している。


犠牲者と向き合えるか


 大江健三郎さんの「沖縄ノート」が発行されたのは復帰前の一九七〇年のことである。なぜ、今ごろになって訴訟が提起されたのだろうか。私たちはここに、昨年の教科書検定と今回の訴訟の政治的つながりを感じないわけにはいかない。

 高校教科書の検定作業真っ盛りの昨年八月、安倍晋三前首相の側近議員が講演で「自虐史観は官邸のチェックで改めさせる」と発言したという。文部科学省の教科書調査官は、係争中の今回の訴訟を引き合いに出して軍の強制を否定し、記述の修正を求めた。昨年の検定が行き過ぎた検定であったことは、判決でも明らかだと思う。

 ところで、名誉回復を求めて提訴した元戦隊長や遺族は、黙して語らない「集団自決」の犠牲者にどのように向き合おうとしているのだろうか。今回の訴訟で気になるのはその点である。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080329.html#no_1

 

琉球新報 社説

大江訴訟判決 体験者の証言は重い/教科書検定意見も撤回を 2008年3月29日

 「集団自決」の構造的な問題に言及できるかが焦点だった岩波・大江訴訟で大阪地裁は28日、体験者の証言や、これまでの沖縄戦研究を重く見て「日本軍が深くかかわったと認められる」と判断。訴えた座間味島の元戦隊長梅澤裕氏らの主張を全面的に棄却した。この日は63年前に渡嘉敷島で「集団自決」が起きた日である。同島では慰霊祭が行われ、島は深い悲しみに包まれた。惨劇を証言した体験者は、証言を重視した判決に報われた思いを抱いているに違いない。座間味・渡嘉敷両村長も判決を納得し、評価しており、「沖縄戦」の本質を理解した妥当な判決だといえよう。

◆軍の関与は明白

 梅澤氏らは、沖縄戦で軍指揮官が「集団自決」を命じたとする岩波新書「沖縄ノート」などの記述をめぐり、岩波書店と作家の大江健三郎さんに、出版差し止めなどを求めていた。

 最大の争点は座間味島、渡嘉敷島での「集団自決」であるが、判決は、日本軍の深いかかわりを認めた。「元守備隊長らが命令を出したとは断定できない」としながらも、「関与したと十分推認できる」と指摘。「その事実について合理的資料、根拠がある」として(1)多くの体験者が、兵士から自決用に手榴弾(しゅりゅうだん)を配られた(2)沖縄で「集団自決」が発生したすべての場所に日本軍が駐屯しており、駐屯しなかった渡嘉敷村前島では「集団自決」が発生しなかった―ことなどを挙げた。

 岩波側の証拠として提出された女性の証言には「『自決しなさい』と手榴弾を渡された」とある。「軍官民共生共死」の意識を徹底させられた住民にとっては、軍民は一体であり「命令」と受け取るしかないだろう。判決にもある通り、この女性だけでなく多くの住民が同じような証言をしており、軍関与を認めた判決は妥当といえよう。

 さらに判決が「集団自決」の要因として、前島の事例を挙げたのは分かりやすい。住民を守るはずの軍隊が駐屯した島で惨劇が起き、その一方で無防備の島では多くの住民が救われた。「集団自決」の本質にかかわる重要な指摘だ。

 原告側の「激しい戦闘で追い込まれ、死を覚悟した住民の自然の発意によるもので、家族の無理心中」という主張は、県民の思いとあまりにも懸け離れている。

 被告側の大江さんは「非常につらい悲劇についての証言が裁判に反映された。心から敬意を表したい」と語った。

 戦時の極度の混乱状況では、書類など物的証拠が残されることはほとんどない。それ故に、戦争体験者の証言は貴重である。地裁がその証言を重視したことは、沖縄戦の史実の真偽について争う今後の議論にも影響を与えるに違いない。

◆史実継承の重要性増す

 今回の判決はここだけにとどまらない。高校歴史教科書検定問題である。昨年3月、文部科学省の教科書検定で、高校の歴史教科書から「集団自決」の「軍の強制」記述が修正・削除された。検定意見の根拠の一つとなったのが、梅澤氏が訴訟に提出していた陳述書である。判決ではその陳述書が否定された。修正・削除は教科書検定審議会の慎重さを欠く突出した対応であり、いっそう批判を浴びることは免れない。司法判断を受けた今、検定審議会は検定意見を速やかに撤回するべきである。

 原告側は週明けにも控訴することを表明した。「軍の関与をもって、隊長命令に相当性があるとすることは、明らかに論理の飛躍がある」という主張である。

 ここで問題にすべきは、大江さんの言うように「個人の犯罪」ではなく、「太平洋戦争下の日本国、日本軍、現地の第32軍、島の守備隊をつらぬくタテの構造の力」による強制であろう。

 戦争の体験者は「人が人でなくなる」と繰り返し語る。国家の思想が浸透され、個人の意思を圧倒する。タテの構造により命令が徹底され、住民は「軍官民共生共死」を強要される。

 この裁判によって、沖縄戦史実継承の重要性がいっそう増した。生き残った体験者の証言は何物にも替え難い。生の声として録音し、さらに文字として記録することがいかに重要であるか。つらい体験であろう。しかし、語ってもらわねばならない。「人が人でなくなる」むごたらしい戦争を二度と起こさないために。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130610-storytopic-11.html

 

2008年3月29日(土) 夕刊 5面

要請団、来月14・15日上京/県民大会

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会(玉寄哲永委員長)は二十八日、那覇市の県教育会館で第四回幹事会を開いた。

 四月十四と十五の両日、構成団体の代表らで五十人以上の要請団を組織して上京し、首相や外相、防衛相や在日米軍司令部などに抗議要請する方針を決定した。

 また、大会当日のカンパや大会後の募金などを含め、二十八日現在、約六百四十万円の寄付が集まったと発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803291700_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月30日朝刊)

[地位協定見直し]

支援の輪の広がりを期待

 民主、社民、国民新の野党三党が合同で、日米地位協定の改定案をとりまとめた。続発する米軍人らの事件・事故に対し、県民が最大公約数として求めている地位協定の改定に向けた動きを、後押しする試みだと評価したい。

 改定案には、基地外に住む米軍関係者への外国人登録義務や被疑者の拘禁は原則日本の施設で行うこと、米軍施設を返還する際の環境汚染の浄化は米国の責任―などが盛り込まれている。

 日米安保条約に基づいて駐留しているとはいえ、米軍はゲストだ。国際慣習上、優遇せざるを得ない面があるにしても、基地から一歩外に出た米軍人らの生活や犯罪、環境問題などに関してまで、ホスト国が国内法の適用を制限してゲストを優遇する必要があるのだろうか。

 そういった県民の声は、大多数の国民の耳には届かないというもどかしさがある。

 米軍基地が集中し、そこから派生する米軍人・軍属らの事件・事故。さらに、沖縄は島しょ県であり、米軍基地の整理・縮小、地位協定の抜本的改定を求める県民の思いは、県外にはなかなか伝わらない。

 米軍基地がある神奈川や青森、山口県などを除いては、三党の地位協定改定案に盛り込まれた内容がどういうことなのか、実感として分からないのではないか。

 県議会や市町村議会は、米軍絡みのトラブルが発生するたびに抗議決議をし、地位協定の改定を求める意見書を可決してきた。仲井真弘多知事は、訪米して米国政府に訴える意向を示している。四代の沖縄県知事が続けて米国を訪れ、沖縄の窮状を訴えることになる。

 日本政府に訴えても「運用改善」という一点張りだ。簡単にはいかない。そのため、ゲスト国にも訴えざるを得ない状況に置かれた沖縄の現状がある。

 地位協定改定は、政党や連合などの労組も動きだしている。沖縄支援の輪が広がることを期待したい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080330.html#no_2

 

2008年3月31日(月) 朝刊 25面

「普天間」直訴 視界不良/宜野湾・平和基金否決で紛糾

 宜野湾市議会が、米軍普天間飛行場の返還に向けた伊波洋一市長の訪米費用を市民から募る、市提案の「平和まちづくり基金条例」を賛成九、反対十八の賛成少数で否決した。議会は同条例に関する与党議員の一般質問をめぐり、過半数を占める野党が質問と答弁を「不適切」として本会議への入場を拒否するなど混乱した。(中部支社・銘苅一哲)

 「委員会への挑戦的な態度だ」「議会を軽視している」―。二十七日の同議会一般質問。最後の質問者となった森田進議員(みらい)への当局側の答弁に、野党議員からやじが飛んだ。

 条例案を支持する森田議員は、総務常任委員会が議案を否決したことに対する当局の所見について質問。

 山内繁雄基地政策部長は「非常に残念だ」とした上で、二〇〇六年に市長の訪米費用を盛り込んだ予算案が、財政状況などを理由に議会に否決されたことなど、条例案を提案した経緯を説明。寄付金による税額控除を導入した「ふるさと納税」と連動する可能性など、条例のメリットを強調した。

 訪米の有効性を疑問視し、総務常任委員会で条例案を否決していた野党側は、「一般質問は議案の説明を再度求める場ではない。委員会の存在を無視した質問と答弁だ」などと強く反発した。

 最終本会議の二十八日、開会予定時間の午前十時になっても議場に野党議員の姿はなかった。待機中、ある野党議員は「当局の説明を引き出すやらせ的な質問。答弁も委員会への恨み節に聞こえた」と両者の発言を批判した。

 最終的に議員と部長の二人が「不適切な発言だった」として議事録からの削除を申し出て収拾。条例案は最終本会議で否決された。

 昨年四月に大差で保守系候補を退け、再選を果たした伊波市長だが、議会では与党十人に対し、野党は十五人、中立が三人で立ち往生もしばしば。与党の一人は「野党は数の力で議会を進めている」と唇をかんだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803311300_03.html

 

2008年3月31日(月) 夕刊 1面

名護・宜野座 正式指定/在日米軍再編交付金

 【東京】政府は三十一日、在日米軍再編への協力に応じて支払う再編交付金の交付対象となる「再編関連特定市町村」に、米軍普天間飛行場の移設先である名護市、宜野座村を正式に指定し、同日付の官報で告示した。本年度分交付額は、同交付金制度の初年度であるため、移設完了時に支払われる「上限額」の10%分に相当する約四億六千万円が支払われるが、年度内執行が困難なため来年度に繰り越される。

 約四億六千万円のうち、名護は約三億九千七百万円、宜野座が約六千七百万円。政府は、普天間代替施設案(V字案)の沖合移動を要求している名護市に対し、「米軍再編への理解と協力が不十分」などと交付を凍結していた。だが、島袋吉和名護市長の市議会答弁や沖縄防衛局のアセス調査許可で、交付要件である米軍再編への「理解と協力」が満たされたと判断した。

 二〇〇八年度分は、普天間移設に向けた環境影響評価(アセスメント)調査の開始を受け、25%分に相当する約十一億六千万円(名護・約九億九千万円、宜野座・約一億八千万円)が交付される見通し。〇八年度は本年度の繰り越し分も合わせた計約十六億二千万円が一括交付される予定だ。


両首長「当然」との認識


 【名護・宜野座】米軍普天間飛行場の移設先である名護市、宜野座村が再編交付金の対象に指定されたことについて、島袋吉和名護市長と東肇宜野座村長は三十一日午前、「指定は当然」との認識を示した。

 島袋市長は「継続して国との協議会にも出席し、環境アセスの手続きにも同意した。SACO交付金が廃止され、これに代わるものを求めてきた。われわれとしては遅かったという思いだ」と述べた。併せて、「滑走路の沖合移動を求める市の考えが反映されるよう、国と協議していきたい」との姿勢を示した。

 東村長は「基本合意に基づき、米軍機が地域上空を飛行しないという事で国は計画を進めていると理解している。(再編交付金は)法律で決まっており、地域活性化のためには必要だ」との考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803311700_01.html

 

2008年3月31日(月) 夕刊 5面

うるま市が抗議決議/米軍車両侵入

 【うるま】米海軍車両の県立沖縄高等養護学校内への侵入事件で、うるま市議会(島袋俊夫議長)は三十一日午前に臨時会を開き、無断侵入に対する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。無断侵入の詳細と基地間の移動ルートの県民への公表を強く求めており、同議会とうるま市の石川邦吉副市長らは四月一日、嘉手納基地内の在沖米海軍艦隊活動司令部や沖縄防衛局を訪れ、抗議する。

 抗議決議文では三月二十七日に発生した米軍車両の侵入について、昨年七月に同養護学校、八月には前原高校でも同様のトラブルが起きたことを指摘し「安全であるべき学校敷地内に無断で侵入する暴挙は、常識では到底考えられない」と事態を重く見ている。

 従来の「米軍側の綱紀粛正、再発防止の実効性がない」として、(1)移動ルートの公表(2)米軍人の教育と綱紀粛正の徹底(3)実効性のある再発防止策の公表(4)米軍組織の管理体制と責任の明確化│などを求めている。

 同様な事件での度重なる抗議決議に、同市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「議会からは、車両侵入に対して罰則規定を求める意見もある。要望に応えてもらうよう抗議したい」と話している。

 抗議決議は駐日米国大使や在日米軍沖縄地域調整官、在沖米国総領事など、意見書は衆参両院議長、首相、外務省沖縄担当大使、沖縄防衛局長、県知事などにあてた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803311700_04.html

 

2008年4月1日(火) 夕刊 4面

防衛局移転 町の声反映を

 【嘉手納】沖縄防衛局が那覇市前島から嘉手納町に移転し、一日午前から業務を開始した。町内では、基地被害の実態を肌で感じ、住民の声を反映した防衛行政が行われることや、約四百四十人の職員による経済波及効果に期待の声が高まっている。

 部課長ら約三十人と、同局を誘致した宮城篤実町長が出席した看板除幕式で、真部朗局長は「中部地区は広大な基地が存在する。住民の思いを肌で感じる機会が与えられた。血の通った防衛行政にまい進せねばならない」と訓示した。

 同局移転により、嘉手納防衛事務所は三月三十一日付で廃止。那覇市泊に那覇防衛事務所を新設する。沖縄防衛局の新庁舎は、嘉手納ロータリー地区の市街地再開発事業で建設された嘉手納タウンセンター内にある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804011700_04.html

 

2008年4月2日(水) 朝刊 29面

実行委、記述回復要請へ4日に再始動/大阪地裁判決受け

 「集団自決」訴訟で、元戦隊長らの請求を棄却した大阪地裁判決を受け、超党派の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長と幹事の与野党県議は一日、四日に県議会で実行委を開くことを決めた。実行委は「判決で検定意見の根拠が崩れた」との認識で一致。検定意見撤回と「軍強制」の記述回復を求め、国に再び要請する方向で協議する。要請行動は十六日をめどに調整する。

 幹事の伊波常洋県議(自民)や平良長政県議(護憲ネット)は、軍の強制を削除した教科書検定意見について、文部科学省が「集団自決」訴訟を理由に挙げていたことを指摘。判決を受け、検定意見撤回を求めるべきだとの認識を示した。

 実行委開催を呼び掛けてきた副委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会会長や小渡ハル子県婦人連合会長は「文科省を動かすには今が絶好の機会。急いで行動する必要がある」、「検定意見を撤回させ『軍強制』の記述を復活させないと、沖縄戦の犠牲者に申し訳が立たない」と訴えた。

 県高等学校PTA連合会の西銘生弘会長も「対応が遅くなれば効果も薄れる。今夏の教科書再訂正申請も見据え、実行委でしっかり方針を決めたい」と話した。

 教科書検定問題をめぐっては昨年末、文科省が「軍関与」の記述を認め、自民党県連は今年一月「実行委の役割は終えた」として、解散を求める方針だった。一方、検定意見撤回と「軍強制」の記述回復を求める幹事団体などは反発。実行委は「活動停止状態」が続いていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804021300_03.html

 

2008年4月2日(水) 朝刊 2面

車両侵入 進入禁止の看板設置/うるま市議団に米軍約束

 【うるま】米海軍車両がうるま市の県立沖縄高等養護学校内に侵入した問題で、うるま市議団や石川邦吉副市長は一日、米軍嘉手納基地内に在沖米艦隊活動司令部を訪ね、抗議した。対応した参謀長代理のジョセフ・ヤント大尉は、車両は同市のホワイトビーチから沖縄市のキャンプ・シールズに向かう途中だったと説明。防止策として学校正門への車両進入禁止を示す看板の早期設置を約束したという。

 また、車両のルート内にある学校の写真を隊員らに示すことで、トラブルの再発防止に努める姿勢を示したという。

 一方、沖縄防衛局で対応した岡久敏明管理部長は「市民に不安な思いをさせて大変迷惑をかけた」と謝罪し、車両の通行ルートを米軍側に照会すると述べた。

 島袋俊夫議長は「米軍側から、抗議に対して即座に対応するという回答を得た。看板の設置については、市内をはじめ四軍が管理するすべての地域に広げるよう要望した」と話した。

 同市議団はそのほか在沖米国総領事館、外務省沖縄事務所でも抗議を行った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804021300_07.html

 

2008年4月2日(水) 朝刊 2面

オスプレイ、新型の機関銃装備へ

 早ければ二〇一四年度にも県内への配備が指摘されている米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイに、三百六十度全方位へ発射が可能な機関銃が装備されることが一日までに分かった。米軍の準機関紙「星条旗」が報じている。

 米軍担当者が同紙に明らかにしたところによると、オスプレイはすでに機体後方に機関銃を設置しているが、口径七・六二ミリの新しい機関銃を装備することで、海兵隊の輸送ヘリとしては初めて前方にも発射が可能になるという。

 装備時期は明らかにしていない。

 海兵隊はじめ米四軍の特殊部隊を束ねる米特殊作戦軍(SOCOM)と契約している英軍需産業BAEシステムズの担当者は、機関銃は発射速度毎分三千発で射程約千メートルと説明している。

 オスプレイは普天間飛行場に配備されているCH46中型輸送ヘリの後継機。主翼の両端にプロペラ部分の角度が変わる傾斜式回転翼(ティルトローター)があり、ヘリコプターのような垂直離着陸と、固定翼機のような巡航が可能。開発や試験飛行段階で四回墜落し、うち三回で計三十人が死亡、危険性が指摘されてきたが、昨年イラクに実戦配備された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804021300_09.html

 

琉球新報 社説

防衛局移転 “痛み”共有し解決促進を 2008年4月2日

 沖縄防衛局が1日から、局舎を嘉手納町に移転した。米軍機の爆音がとどろく町に、国の安保行政の中枢機関が居を構えた。米軍基地を抱える町民の痛みと苦悩を「国」が共有し共感する。爆音禍の軽減と基地問題の抜本解決に向けた転機としてほしい。

 移転の日。嘉手納町の宮城篤実町長は、「地域住民が基地にどう向き合っているかも肌身で感じてもらい、基地から発生する障害について一緒に対応策を考えてほしい」と注文を付けた。

 防衛省沖縄防衛局の真部朗局長は「防衛局にとっても非常な好機。より血の通った防衛行政にまい進していかなければならない」と決意を語っている。

 「足を踏んでいる人は、踏まれている人の痛みを知らない。踏んでいることにも気付かなければ、罪の意識すらもない」

 9年ほど前、そんな話を宮城町長から聞いた。稲嶺恵一知事が誕生し、副知事候補に宮城町長の名前が上がったころだ。

 「施設局(当時)が嘉手納に来れば、防衛庁も町民の痛みを共有してもらえる。基地問題の解決は、そこからしか始まらない。町民と一緒に闘いたい」。宮城町長は、そう語り、副知事就任を否定した。

 嘉手納町は、町面積の83%を米軍基地が占め、町民1万3700人は残る17%、262ヘクタールに押し込められている。

 2005年の国勢調査では、嘉手納町の完全失業率は17・5%にも達し、基地の過重負担で「企業を誘致する土地すらない」との閉(へい)塞(そく)感も漂っている。

 移転前、完成間近の庁舎には「歓迎、嘉手納防衛施設局」の横断幕が掲げられていた。

 町にとって局舎移転は、那覇市から嘉手納町に職場を移した440人の防衛局職員の消費など経済波及効果や、新たな雇用創出への期待もある。

 安保の「負の遺産」の軽減にとどまらず、「恩恵」も、という町民の期待に、防衛局はどう応えるのか。局舎移転が嘉手納町にとどまらず、米軍基地を抱える地域住民の負担軽減の具体的な政策転換につながることを期待したい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130754-storytopic-11.html

 

2008年4月2日(水) 夕刊 5面 

県出身画家「戦争画」公開

来月、県立美術館企画展

 県出身の画家・故大嶺政敏氏(一九一二―九四年)が、戦時中に銃後で勤労奉仕する人々を描いたいわゆる「戦争画」二作品が、五月に那覇市の県立博物館・美術館で行われる企画展「情熱と戦争のはざまで?無言館と沖縄の画家たち?」で公開されることがこのほど決まった。(与儀武秀)

 戦争に協力・賛美するために描かれたとされる戦争画で、県出身作家の作品が沖縄で一般公開されるのは戦後初めて。専門家は「大嶺氏はほかにも戦争画を描いており時代性を感じさせる」と話している。

 大嶺氏は戦後沖縄美術の大家として知られる故大嶺政寛氏の実弟。那覇市生まれで県師範学校卒業後上京し、東京を拠点に約六十年間、絵画活動を続けた。

 公開される戦争画は「増産戦士」「僕も征くぞ米本土」の二作品。

 共に一九四三年に制作された百号の大作で、丸太を炭に加工する様子や基地建設と思われる労働に励む人々がキャンバス一枚の表裏に描かれている。

 大嶺氏は五六年に沖縄を訪れた際、戦後の窮状に強い衝撃を受け、その後は沖縄の庶民生活や風景を描きながら、平和を希求する作風に変化したといわれる。

 同展では、二作品のほか、戦没者への鎮魂を描いた晩年の作品「集団自決供養(ケラマ島)」も展示される。

 県立美術館の翁長直樹学芸員は「戦争当時の作家はほかにも戦争画を描いている。美術が戦争に協力した贖罪意識があったのかもしれない」と話している。

 同企画展は五月十七日から同館で行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200804021700_01.html

ハンセン大規模山火事 うるま市、米車両が学校に侵入 「集団自決」訴訟、元隊長の請求棄却など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(3月26日から28日)

2008年3月26日(水) 朝刊 2面

「地位協定改定案」/実現へ政府の「壁」厚く

 民主、国民新、社民の野党三党による日米地位協定改定案が二十五日、まとまった。三党は週明けにも政府への要請行動を展開する予定だが、政府は「運用改善で対応する」との立場を崩さず、福田康夫首相も「改定は考えていない」とかたくなだ。二十三日に開かれた地位協定改定を決議した米軍の事件・事故に抗議する県民大会が超党派にならず、仲井真弘多知事が参加を見送るなど、足並みの乱れもあり、改定実現に向けた壁は厚い。

国会決議模索


 「県民大会でも地位協定の改正を図るべきだという参加者の思いが強かった」

 三党の実務レベル協議で社民党から参加した照屋寛徳衆院議員は、改定は県民の総意であるとの見解を強調し、合意を歓迎した。

 野党内には政府への要請行動に合わせ、地位協定改定を後押しする国会決議を模索する動きも浮上するなど、機運が高まっている。

 しかし、三党合意に町村信孝官房長官は二十五日の会見で「政府としては地位協定を見直す考えは全くない。運用の改善ですべてのことが対応できると思っている」と突き放す。

 ある政府関係者も「改定まで踏み込むと、米側の要望まで入ってきて収拾がつかなくなる。実際に日米合同委員会合意で対応できる部分は大きい。県民大会が仮に六千人を大きく上回り、超党派になってたとしても、政府の対応は変わらなかっただろう」とみる。


パンドラの箱


 与党内の一部でも、地位協定改定に向けた動きが出始めている。

 自民党は来月にも沖縄振興委員会と外交調査会の合同部会を開き、地位協定改定の論議を始めたい考えだ。党関係者は「党幹部と仲井真弘多知事との事前の調整は済んでいる」と説明。今秋に予定している仲井真知事の訪米までに意見を集約させたい思惑がある。

 一方、地位協定改定を政府に要請し、県民大会に参加した公明党。しかし、党本部関係者は「運用改善ならホワイトハウスで完結するが、改定なら米議会まで巻き込むことになる。改定案を持ち込めば、超党派で反対される。まさに“パンドラの箱”だ」と慎重だ。

 同関係者は「将来的に改定を考えていかなければいけないという思いはあるが、今の段階で県本部との温度差があるのは事実」と党内事情を説明する。

 地位協定改定をめぐり、野党内には「三党の合意により、与党も無視できない状況になる。そうなれば政府も無視できないはず」との見方があるが、ある与党関係者は「議院内閣制を敷いている以上、難しい」と厳しい見通しを示した。(東京支社・島袋晋作、西江昭吾)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_03.html

 

2008年3月26日(水) 朝刊 27面

模擬裁判で争点整理/「集団自決」訴訟

 「集団自決(強制集団死)」訴訟の判決を前に、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」が二十五日、那覇市の教育福祉会館で集会を開いた。

 集会では、訴訟の経過や双方の主張、争点を分かりやすく伝えようと、模擬裁判が開かれた。同会会員が裁判官や原告、被告双方の弁護士に扮し、当時の戦隊長による直接の軍命の有無とその根拠、「集団自決」に使われた手榴弾の配布の事実や戦隊長の関与などをめぐり、法廷さながらの緊迫したやりとりを演じた。

 裁判官役が「なぜ『集団自決』が起きたと考えるのか」と問い掛けると、原告側役は「『戦隊長命令、軍命があったから死んだ』というのはあまりにも軽率だ。米軍に対する恐怖心や家族愛、狭い島での同調圧力が働いた」と主張した。

 被告側役は「当時は、戦陣訓や三二軍による『軍官民共生共死』の方針が徹底されていた。大変に貴重な武器だった手榴弾が戦隊長の許可なしに住民に渡されることは考えられない」と反論した。

 最後に、裁判官役が「沖縄戦では軍と住民の関係が如実に現れた。この教訓をどう学び、どう生かすかが問われている」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_04.html

 

2008年3月26日(水) 朝刊 2面

陸上自衛隊 沖縄訓練場/工期遅れ8月完成

 米軍の旧東恩納弾薬庫地区に新設する陸上自衛隊の沖縄訓練場と、泡瀬ゴルフ場の代替施設建設の完成がともに遅れることが二十五日までに分かった。沖縄訓練場は今月末に完成予定だったが、ことし八月ごろになる見通し。沖縄防衛局は「不発弾処理や天候不良で工期が長引いている」と明らかにしたが、工期日程について「三月末を予定していた工事の完了が遅れる見込みとなった。関係機関や請け負い業者と調整中」と述べている。

 沖縄訓練場は陸自が小火器射撃訓練施設として建設。陸自第一混成団は現在九州に移動して行っている訓練を沖縄訓練場で効率的に行える、と歓迎。完成の遅れに伴っては「〇八年度の運用計画に支障は出ない」と説明している。

 泡瀬ゴルフ場の移設は二〇〇八年度中の完了を予定していたが、沖縄防衛局は埋蔵文化財を発見したため、〇九年秋ごろまで遅れると説明した。造成工事中にうるま市側で民家跡や古墳群などの埋蔵文化財が発見された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_08.html

 

2008年3月26日(水) 朝刊 2面

米軍基地内 空き家1割

 【東京】外務省の西宮伸一北米局長は二十五日の参院内閣委員会で、県内の米軍基地内の空き家は約一割であるとの米側からの説明を明らかにした。

 西宮局長によると、今年一月末時点で八千百三十九戸の住宅があり、米軍関係者の入居率は約八割。しかし、改装などで、使用することができない住宅が約九百戸あり、米側は「これら使用不可能な住宅を考慮すると入居率は九割になる」と説明しているという。

 糸数慶子氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_09.html

 

2008年3月26日(水) 夕刊 5面

悲劇の日、「集団自決」犠牲者に史実継承誓う/座間味

 【座間味】沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」が起こった座間味島で二十六日午前、仲村三雄座間味村長や村民らが、高月山中腹にある平和の塔前で、犠牲者を悼み史実の継承を誓った。

 座間味島では、六十三年前のこの日に米軍が上陸、「集団自決」が起きた。

 仲村村長は「昨年は教科書検定問題もあり、平和ガイドブック編さんの過程でも村民の新たな証言も得た。歴史を風化させたくないという村民の思いが強くなっている」とあいさつ。三十三回忌を区切りとして慰霊祭は中止していたが、今後は戦後六十五年、七十年など五年おきに行う意向を示した。

 参拝に訪れた男性は「中学生のころまでは毎年訪れていたが、久しぶりに来た。若者もお参りしやすい機会をつくるのはいいことだと思う」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261700_04.html

 

2008年3月26日(水) 夕刊 1面

米兵脱走 県内5人/05年以降警察庁把握分

 【東京】警察庁の小野正博審議官は二十六日午前の衆院外務委員会で、神奈川県横須賀市のタクシー運転手刺殺事件で浮上した脱走米兵への対応に関連し、二〇〇五年以降に米軍から日本側に脱走兵の逮捕要請が九件あり、その中に在沖米兵五人が含まれていることを明らかにした。笠井亮氏(共産)、照屋寛徳氏(社民)への答弁。

 笠井氏は、警察庁が一九六八年、米側からの逮捕要請があった場合の報告を義務付ける通達を出しているにもかかわらず、二〇〇四年以前の統計を把握していないことを問題視。これに対し、高村正彦外相は「関係省庁で情報共有し、米からも情報を得る仕組みをつくりたい」と考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261700_06.html

 

2008年3月27日(木) 朝刊 1・31面

ハンセン大規模山火事/一時民間地に600メートル

05年に次ぐ被害

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセンレンジ4付近で二十六日午後一時半ごろ、大規模な山火事が発生した。ピーク時には民間地まで推定約六百メートル前後まで火の手が迫った。現場に近い伊芸区の住民らによると、ガラス窓を揺らすほどの爆発音の直後に火災が発生。同区では煙のにおいが立ち込め、灰が降るなどの被害が出ている。日没のため、ヘリによる消火活動は中断されており、二十七日午前零時現在、鎮火は確認されていない。

 町関係者によると、二〇〇五年に約八十ヘクタールを焼失した山火事に次ぐ規模で、これほど民間地に近い火災は近年では珍しいという。火災原因や焼失面積は調査中。

 火災現場は、レンジ4の都市型戦闘訓練施設に近い山間部。米軍から沖縄防衛局に入った連絡では、発生現場は「レンジ3」の爆発物処理場(EOD1)付近だとしている。

 伊芸区によると、今年に入り、レンジ4付近で大きな爆発音を伴う火災が三回発生した。同区は、通常レンジ3のEOD1だけで行われている爆破訓練を、レンジ4付近で実施している疑いがあるとして、沖縄防衛局に確認する方針。

 伊藝達博副町長は「詳しい状況を調べている。二十七日の議会で状況を報告し、二十八日にも抗議する。EOD訓練が原因だとしたら許せない」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

爆発音・煙 集落襲う/頻発「処理訓練か」


 【金武】突然の爆発音とともに強風が吹き、火が燃え広がった。二十六日に発生した金武町キャンプ・ハンセンでの大規模火災。約一キロの範囲に点在する火の手は、民間地まで約六百メートルに迫った。数時間に及ぶ米軍ヘリの消火活動も追いつかず、日没になっても炎を上げ燃え続けた。伊芸区には焦げたような煙のにおいが立ち込め、黒い灰が飛び散った。

 今年に入り、頻繁に起きている爆発音を伴う山火事に、地元では「住民に知らされないまま、爆発物処理訓練をしているのでは」と、不安が広がっている。

 前回二回の山火事の原因について、沖縄防衛局は「実弾射撃訓練」と発表。だが、伊芸区の池原政文区長は「実弾射撃訓練ならあんな爆音はしない。米軍はいつも真実を言わない。爆発物処理訓練が、どんどん民間地に近づいている」と危機感を募らせる。

 北風に乗った灰は、集落内の道路や民家、子どもたちが遊ぶグラウンドにも降ってきた。

 自宅にいた照屋藤さん(85)は「ドドンと何かが爆発したようなすごい音がして家から飛び出した」。町内のグラウンドで野球の練習をしていた新垣祐介くん(金武中二年)は「ここまで黒い灰が飛んできたのは初めて。ヘリの音もうるさくて煙のにおいも臭い」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271300_01.html

 

2008年3月27日(木) 朝刊 31面

父の願い 私が語る/座間味「集団自決」の日

 沖縄戦下の座間味島で「集団自決(強制集団死)」が起き、百七十七人が犠牲になってから二十六日で六十三年。島では遺族らが戦没者をまつる平和の塔などを訪れ、鎮魂の祈りをささげた。「集団自決」の記述から日本軍の強制性を削除する教科書検定問題で激しくせめぎ合ったこの一年。「歴史を曲げないで」という揺るがない思いが、住民の心に深く根を張った。(上原綾子)

 「歴史から真実を消さない。それが生き残った者の役目です」。宮平春子さん(81)は昨年、戦時中に座間味村助役兼兵事主任だった兄の故宮里盛秀さんが、日本軍から軍命を受けたと初めて公に重い口を開いた。助役が軍命を出したと元戦隊長らが主張している「集団自決」訴訟が、教科書から軍の強制を削る根拠にされ、黙っていられなかったからだ。

 「三月二十六日は一生忘れられない。軍命がなければ、兄が愛するわが子たちに手をかけることはなかった」。そう言うと、自然と涙があふれた。

 この日に合わせ、夫や孫とともに島に渡った盛秀さんの次女、山城美枝子さん(66)=宜野湾市。両親ときょうだい三人を「集団自決」で亡くし、一人生き残った。

 戦時中は三歳。家族のぬくもりはほとんど記憶にないという。あのころの自分の年齢に近い孫の鳳翔ちゃん(2)を抱きながら、「さまざまな人の証言で、当時の背景を知ることができた。父は戦争のない世の中をつくってほしいとメッセージを発していると思う。代弁者になりたい」と目頭を熱くした。

 宮平さんと山城さんは平和の塔を参拝した後、盛秀さんらの位牌がある宮村文子さん(82)宅を訪れ、仏壇に手を合わせた。二十八日に大阪地裁で判決が出る「集団自決」訴訟について「しっかり見守りたい」と山城さん。宮平さんは「兄さんたちの死を無駄にはしない」と、この日何度も口にした言葉を再び自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271300_04.html

 

2008年3月27日(木) 朝刊 2面

名護市、アセス認可

 沖縄防衛局の真部朗局長は二十六日の定例会見で、防衛省が十五日から始めた普天間飛行場の代替移設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)調査について、名護市が二十一日までに、必要な認可を出したことを明らかにした。

 真部局長は「移設そのものに対して理解を持って協力していただいた」と評価した。

 真部局長は二十五日、名護市の島袋吉和市長と宜野座村の東肇村長を訪ね、在日米軍再編の協力に応じて支払う再編交付金の支給決定を説明。島袋市長は真部局長に対し、「(移設に関する)協議会での議論の結果に基づき適切に対応していきたい」とあらためて表明したという。

 名護市が沖合移動を求めていることについて真部局長は「滑走路の長さや代替施設の位置について、お考えがあることは承知している」との認識を示しながらも、「(名護市の姿勢は)基本的に前向き。新たな判断材料を頂いた」と再編交付金の指定に踏み切った理由を説明した。

 防衛省は三十一日付の官報で告示する見通し。本年度分は名護が約三億九千四百万円、宜野座が約六千六百万円。来年度はアセス調査開始を受け、名護が約九億八千六百万円、宜野座が約一億六千六百万円になる見通し。

 年度末で本年度分の支払いが不可能なため、来年度に一括で支払う。

 アセス調査について反対派が阻止行動を展開していることについては「大きな支障は生じていない。対応できない場合は従来通り、警察や海上保安庁と連携して対応していきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271300_07.html

 

2008年3月27日(木) 夕刊 1・5面

10時間半燃え鎮火/ハンセン

 金武町の米軍キャンプ・ハンセンで発生した大規模な山火事は二十六日午後十一時五十四分ごろ、鎮火した。米軍から沖縄防衛局を通し連絡を受けた県基地対策課が二十七日午前、発表した。約十時間半かけて燃え、ピーク時には火の手が民間地に推定六百メートルまで迫った。県や沖縄防衛局によると、火災原因や焼失面積は米軍が調査を行っており、明らかになっていない。

 石川署によると、二十六日午後二時四十五分ごろには、約二万二千五百平方メートルが焼失。同日午後七時二十分ごろには、沖縄自動車道に約五百メートルの地点まで燃え広がったという。

 火災現場はレンジ4の都市型戦闘訓練施設に近い山間部。米軍から沖縄防衛局に入った連絡では爆発物処理場(EOD1)付近という。


     ◇     ◇     ◇     

金武町が抗議へ


 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセンのレンジ4付近で発生した大規模火災について、町は二十七日、沖縄防衛局に抗議することを決めた。儀武剛町長は「伊芸区民の心情を考えると大変遺憾」と話した。

 町は同日午前に開かれた町議会三月定例会の予算特別委員会冒頭で、火災について説明。沖縄防衛局が通常爆破訓練の行われているレンジ3の「爆発物処理場(EOD1)付近」としている火災発生場所ついて、「レンジ4の都市型訓練施設の裏手」と説明。議員から「EOD1と発生場所が離れている。詳細な調査が必要」と指摘があった。

 同町議会米軍基地問題対策調査特別委員会の知名達也委員長は「レンジ3の射撃場建設に対する抗議決議をしたばかりで、すぐこのような問題が起こり、米軍への強い怒りを感じる」と話した。

 同町議会はレンジ3に関する抗議決議を二十八日、同局に持っていく際、山火事についても抗議する。


シュワブも火災


 【名護】米軍から沖縄防衛局に入った連絡によると、二十七日午後零時半ごろ、名護市のキャンプ・シュワブ内のレンジ10付近で原野火災が発生した。火災原因は調査中。同午後一時現在、米軍が消火活動を行っている。


一夜明け山肌無残/地元、赤土流出懸念


 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセンの大規模な山火事から一夜明けた二十七日、火災現場に近い同町伊芸区の住民からは、火災で露出した赤土の流出などの被害を懸念する声が上がっている。

 現場となった同訓練場レンジ4付近の山間部では、真っ黒に焼けただれた斜面から赤土がむき出しになっていた。同区の男性(63)は「火事で木々が焼けて、赤土が流出しやすくなる。河川や海への悪影響が心配だ」と、不安げな表情を見せた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271700_02.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 1・29面

米車両?学校に侵入/うるま市 ビデオに映像

 【うるま】二十七日午後一時五十九分ごろ、うるま市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長・百二十四人)内に米軍関係とみられる車両が侵入し、校内で方向転換して引き返した。けが人や器物の破損はなかった。

 同校では昨年七月十八日に米軍の装甲車が侵入、同八月には近隣の前原高校でも同様のトラブルが起こっており、教育関係者や住民から怒りの声が上がっている。

 学校関係者によると、二人乗りで車幅の広い深緑色の車両が侵入、車内には迷彩色の服を着た外国人とみられる男二人が乗っていた。

 監視カメラには県道224号から車両が入り、駐車場で方向転換して引き返す様子が撮影されていた。所要時間は約一分半だった。

 塩浜校長は「(米軍車両であれば)二度目なので怒り心頭だ」。知念恒男うるま市長は「教育現場でこのようなことが起こるのは許されない」と述べた。

 

     ◇     ◇     ◇     

知事、強い不快感


 仲井真弘多知事は二十七日夜、二十六日から二十七日にかけて米軍基地内で山火事が二件起こり、米軍とみられる車両がうるま市の県立沖縄高等養護学校に侵入したことに、「多過ぎる。米軍は緩んでいるのではないか」と強い不快感を示した。

 その上で「民間企業であれば、しばらく営業停止だ」と憤りを示した。県庁で沖縄タイムス社の質問に答えた。

 米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会直後に相次ぐ不祥事に「(綱紀粛正が)徹底していないのか。ちょっと理解に苦しむ」とした。


「3度目」怒り心頭/学校職員らに衝撃


 【うるま】「開いた口がふさがらない。怒り心頭だ」。二十七日、うるま市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長)で起こった米軍関係とみられる車両侵入のトラブルに、教育関係者はあきれ、憤った。春休みの静かな校内に突然、入り込んできた車両を目撃した学校職員らは「どう対応したらいいのか」と衝撃を受けている。

 仲村守和県教育長は声を震わせながらコメントを発表。「許し難い。米軍車両が学校の敷地内に入るのは前代未聞のこと。県民大会も開かれる中で三度起きた。米軍の綱紀粛正という言葉は疑わしい」と怒った。さらに「直ちに再発防止に向けた具体的な方策を示すようあらためて関係機関に強く求めたい」と話し、米軍当局に直接抗議する考えを示した。

 うるま市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「(再発は)沖縄の心を踏みにじる行動で、許せない。防止するには日米地位協定の改定しかない」と語気を強めた。同議会は二十八日に委員会を開いて今後の対応を協議する。

 高教組の松田寛委員長は「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会が開かれたばかりだ。あきれて物も言えない」と語気を強めた。県高校PTA連合会の西銘生弘会長も「春休みであっても学校の敷地内に入ったことは許せない。どんな抗議をしても何の変化もない、聞く耳を持たないなんて、強い占領意識の表れだ。詳細を把握して、すぐに抗議したい」と憤った。

 一方、沖縄防衛局は二十七日、在沖米海兵隊外交政策部(G5)と四軍調整官事務所に事実関係を照会していると説明。同日、同校を訪れ、監視カメラのビデオを入手。二十八日にもG5を訪問し、米軍関係者とともに映像を検証し、車両を特定する考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_01.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 1面

「集団自決」訴訟きょう地裁判決

 慶良間諸島で起きた住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、「沖縄ノート」などの著作で命令を出したと記され名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の元戦隊長らが作家の大江健三郎氏と岩波書店に出版の差し止めなどを求めた訴訟の判決が二十八日午前、大阪地裁(深見敏正裁判長)で言い渡される。

 二〇〇五年八月の提訴から約二年七カ月。住民に「集団自決」を命じた事実はないと主張する元軍人らに、軍や戦隊長による強制と命令があったことは真実と、岩波側が反論してきた。沖縄戦の史実をめぐる争いに、大阪地裁がどのような判断を示すか注目される。

 訴えているのは、座間味島に駐屯していた海上挺進第一戦隊の隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の海上挺進第三戦隊の隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(75)。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_03.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 28面

戦死した父と“再会”/形見の万年筆 壕で発見

 【糸満】沖縄戦で亡くなった父の名が刻印された万年筆が見つかったとの知らせを頼りに、北海道から二女の千葉郁子さん(68)らが沖縄入りし二十七日、糸満市宇江城にある発見場所の壕などを訪れた。終戦から六十三年を経て届いた形見の品を握り締め、「バイオリンが好きだった父」に思いをはせた。(与那嶺功)

 万年筆の刻銘を確かめた千葉さんは「父がそばに居るような気がして胸がいっぱい。家で待っている母に早く見せたい」と涙ぐんだ。

 万年筆は戦没者の遺骨収集を続けている修養団(本部・東京)メンバーが今年二月、日本兵を祭る「山雨の塔」地下の自然壕で見つけた。刻銘の「槙武男」から、所有者が北海道新得町出身と判明、千葉さんらの訪問につながった。

 壕内に入り「迎えに来ましたよ」と心で呼び掛けたという千葉さん。故郷の酒と水、お菓子を供えた。「暗く狭苦しくて息も詰まりそう。どうやって生きていたのかを思うと切なくなる」と表情を曇らせた。

 修養団沖縄支部の宮城英次会長から万年筆を受け取った、千葉さんは「本当にありがとうございました」と深々と頭を下げて感謝していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_04.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 2面

野党3党 改定案に調印/日米地位協定

 【東京】民主党の鳩山由紀夫幹事長、社民党の重野安正幹事長、国民新党の亀井久興幹事長は二十七日、国会内で会合を開き、三党で取りまとめた日米地位協定の改定案に調印し、正式に了承した。三党は三十一日以降に外務省などに改定を求めて要請する予定だ。また、政府に前向きな対応を促すため、野党が多数を占める参院を中心に、地位協定改定を求める国会決議を目指す動きも出ている。

 改定案は(1)基地外居住米軍関係者への外国人登録義務(2)被疑者の拘禁は原則日本の施設で行う(3)起訴前の身柄引き渡し要請に対する米軍の同意(4)施設返還時の環境汚染浄化は米国の責任(5)基地使用計画を八年ごとをめどに提出―などが柱となっている。

 県内で起きた米兵による暴行事件を受け、三党は実務レベルで協議を重ね、二十五日までに大筋で合意していた。

 調印後の記者会見で、鳩山幹事長は「住民の思いを受け止めた案。一刻も早く改定されるよう努力していきたい」と意欲を示した。

 重野幹事長も「対等の目線で沖縄が見られるよう、互いに協力する」と強調。亀井幹事長は「政府に受け入れてもらえるよう、努力していく」と述べた。


改定「必要ない」/外務省北米局長が答弁


 【東京】外務省の西宮伸一北米局長は二十七日の参院内閣委員会で、民主、社民、国民新の野党三党がまとめた日米地位協定の改定案について、「改正する必要があるとは考えていない。その時々の問題に、より機敏に対応していくためには、運用改善で対応していくことが合理的」と述べ、今後も運用改善で対応していくとの従来見解を繰り返した。糸数慶子氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_05.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 2面

シュワブ 射撃で火事/米軍演習場

 名護市の米軍キャンプ・シュワブのレンジ10付近で二十七日午後零時半ごろ、山火事が発生し、同日午後二時五十二分に鎮火した。沖縄防衛局から電話連絡を受けた県基地対策課が発表した。

 米軍所属のヘリコプター一機が消火を行った。沖縄防衛局によると、火災原因は実弾射撃訓練によるもので、焼失面積は明らかになっていない。

 また、金武町の米軍キャンプ・ハンセンで二十六日に発生した大規模な山火事の原因について、米軍から連絡を受けた沖縄防衛局は、廃弾処理によるものと発表した。

 在沖米海兵隊報道部は同日、沖縄タイムスに対し、出火原因を「訓練でなく、定期的に行うレンジのメンテナンス作業に伴うもの」と説明。米海兵隊消防が消火活動を行い、鎮火したのは二十七日午前十時二十五分だとした。正式な焼失範囲については、現段階で出せないとしている。

 同報道部は「この火災は海兵隊の演習場に制限されており、地元住民に危険は絶対にない。重大な損害はない」と述べた。

 山火事の原因が廃弾処理という説明について、伊芸区の池原政文区長は「廃弾処理がどんどん民間地に近づいている。(今年に入って)レンジ4で起きた前の二回の火災も、同じ爆発音が聞こえた。それらも廃弾処理ではないか。沖縄防衛局は米軍の発表をうのみにせず、独自で調査して住民に真実を伝えてほしい」と求めた。


     ◇     ◇     ◇     

伊芸区が抗議/演習場の撤去を要請


 金武町伊芸区の池原政文区長や同区行政委員会の登川松榮議長らは二十七日、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所を訪れ、キャンプ・ハンセンのレンジ3付近で今月着工した米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場建設の即時中止と、二十六日に同区周辺で発生した山火事などの演習被害に抗議し、同区に隣接する全演習場の即時撤去を要請した。

 沖縄防衛局の真部朗局長は「日米安保条約の下、新たな訓練施設や演習場は必要と認識しており、中止や撤去を要求することは難しい」と返答。米軍の存在や活動で影響を受けていることは承知している―と述べた上で、「生活環境に対する影響を最小限にするのが私どもの責務。努力が不十分であれば反省して取り組みたい」と理解を求めた。

 池原区長は、廃弾処理が廃弾処理場でなく、集落に近いレンジ4付近で行われているのではないかと指摘し、「窓ガラスが割れるような振動で、騒音も九〇デシベル以上。しっかり調べてほしい」と求めた。

 外務省沖縄事務所は田中賢治課長補佐が対応し、「レンジ3は構造上も安全性が確認できている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月28日朝刊)

[ハンセン山火事]

被害への丁寧な対応を

 米軍キャンプ・ハンセンで、演習に伴う山火事が多発している。二十六日午後に発生した山火事は、十時間あまりも燃え続け、一時は民間地の数百メートルまで火の手が迫ったという。

 鎮火後の火災現場は、見るからに痛々しい。青々とした若葉が失われ、黒く焼けただれた山肌は赤土がむき出しになっている。

 米軍、那覇防衛施設局(当時)、県の三者が本格的にハンセンの火災防止対策に乗り出したのは、三十年以上も前のことである。演習中、初期消火のためヘリを待機させたり、演習場内の火災多発地域に防火帯を設けたり、伊芸地区の水源かん養林への延焼を防ぐため境界に標識を設置したりした。

 だが、照明弾、えい光弾を使った訓練や爆破訓練、迫撃砲などの実弾射撃訓練を実施しているため、山火事そのものを防ぐのは難しい。

 山火事だけではない。ハンセンのレンジ3と呼ばれる演習区域では、米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設も始まった。金武町議会は二十四日、施設建設に反対する決議を可決したばかりである。

 レンジ4にある都市型戦闘訓練施設(コンバットタウン)は、伊芸区の民家からおよそ三百メートルしか離れていないため、民間地域から離れた別の場所に移すことが決まっている。当初計画では三月末に移転工事が完了する予定であったが、大幅に遅れ、来年秋にずれ込む見通しだ。

 多発する山火事、新しい訓練施設の建設、都市型戦闘訓練施設の移設作業の遅れ、陸上自衛隊による共同使用の開始。およそ負担軽減とは正反対の事態が次から次に生起している現実を見過ごすことはできない。

 米軍は、ゲリラとの市街戦を想定した訓練も、非戦闘員救出訓練も、各種の火器を用いた実弾射撃訓練も、すべては、ハンセンで認められた通常の訓練であり、錬度維持のために欠かせない訓練、だと強調する。

 だが、地元住民はこうした訓練によって山火事、騒音、被弾、跳弾、赤土汚染などの被害を日常的に被っているのである。

 確かに、金武町、宜野座村、恩納村の三町村は、自衛隊の共同使用を受け入れる見返りに米軍再編交付金を受けることになったが、演習に伴う被害の発生まで認めたわけではない。

 防衛省や外務省は、こうした被害に慣れっこになって、ありきたりの対応で済ましている面がないかどうか、自己点検が必要だ。周辺住民の負担を軽減するため、政府には被害への丁寧な対応を求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080328.html#no_2

 

琉球新報 社説

米軍基地火災 県民の命を危険にさらすな 2008年3月28日

 米軍被害が拡大し、歯止めがかからない。米兵犯罪に続き、26日には米軍キャンプ・ハンセンで、27日にはキャンプ・シュワブと基地内での火災が相次いでいる。県民の命を危険にさらす米軍に強く抗議したい。

 演習被害とみられる基地内火災だが、火災原因は「まだ報告がない」(県)ため不明だ。

 26日のハンセンの火災では、煙とすすが金武町伊芸区の集落にまで流れ込んでいる。一帯には焦げたにおいが漂っていたという。

 火災は午後1時すぎに発生し、米軍はヘリコプター2機を使い消火に当たったが、鎮火は午後11時54分。日没でヘリでの消火を断念した米軍は、地上からの消火を続け、ようやく消し止めている。夕闇の中で、燃えさかる火の手に、周辺住民は不安を募らせた。

 その鎮火から半日もたたないうちに、27日正午すぎ、今度はキャンプ・シュワブのレンジ10付近での火災である。米軍はヘリ1機を派遣し、消火に当たり、午後3時前に鎮火している。

 米軍基地内の火災は、昨年は20件と、前年の8件から倍増している。火災原因は「実弾演習によるものが多い」(県)というが、詳細は米軍の報告を待つしかない。

 県は火災発生のたびに原因究明と再発防止、住民に不安を与えないよう抗議と申し入れを繰り返してきた。だが、事態は改善どころか今年に入ってむしろ悪化している。

 基地内火災の怖さは、消火活動に県や基地所在自治体がかかわれないことだ。

 靴の上からかゆい足をかく、まさに隔靴掻痒(かっかそうよう)のじれったさがあり、命を危険にさらす火災を、黙って眺めているしかない悔しさがある。

 これも日米地位協定が定める米軍の強大な「管理権」(三条)によるものである。

 住民の命が危険にさらされる中で、繰り返される基地内火災の消火活動に県や当該自治体が関与できない。国民を守るはずの「日米安保」や「米軍駐留」が、むしろ国民を危険にさらしている。日米両政府には再発防止はもちろんだが、納得のいく説明を求めたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130575-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

秘密漏えい 知る権利脅かす揺さぶり 2008年3月28日

 国民の「知る権利」と「報道の自由」が危機にさらされている。「防衛秘密漏えい」の自衛隊法違反での一等空佐の書類送検だが、防衛省の狙いは、新聞記者への情報提供の阻止。防衛秘密を盾に「知る権利」を脅かす行為である。警戒が必要だ。

 陸上自衛隊警務隊は、防衛省情報本部の課長だった一等空佐を自衛隊法違反容疑で26日までに東京地検に書類送検している。

 南シナ海で起きた中国潜水艦の事故情報を2005年5月、読売新聞記者に漏らしたことが「防衛秘密漏えい」に当たるとしている。

 防衛秘密漏えい罪は、01年の自衛隊法改正で新設された。守秘義務違反は1年以下の懲役、または3万円以下の罰金だが、防衛秘密漏えい罪は「5年以下の懲役」と罰則が重くなっている。

 しかも自衛隊員にとどまらず、他の国家公務員、民間業者にまで対象が拡大されている。

 今回の立件は、取材を受けた公務員の刑事責任を追及する従来にはない極めて異例の措置だ。

 識者は「今後、メディアや外部に漏らすとこうなるぞ」との「組織内部に対する脅しのようなもので、情報公開の壁となる」と警鐘を鳴らしている。

 知る権利に直結する報道機関への情報提供を、「スパイ事件並みに摘発し、“見せしめ”にする意図も見え隠れしている」との指摘もある。

 今回は「記者」の立件は見送られたが、取材記者もいつ「教唆」で立件されるとも限らない。言論封殺と思想弾圧を行った戦前の「治安維持法」を想起させる脅威である。

 一等空佐が漏らしたとされる日本近海での中国潜水艦の事故の情報は、果たして防衛秘密に当たるのであろうか。むしろ国民が知っておくべき内容である。秘密指定の基準もあいまいで、「何でも秘密」の防衛省の隠ぺい体質も見え隠れする。

 「防衛秘密」は07年6月末現在で約9千件あり、ほかに守秘義務を課されるいわゆる「省秘」は9万9千件にも上る。

 米国から供与された装備品などの性能に関する事項は「特別防衛秘密」とされ、一般国民も含め探知・収集、未遂犯も対象で、最高「10年以下の懲役」である。

 刑罰の重さ、知る権利の確保の観点からは、防衛秘密の指定基準の明確化と第三者機関による指定基準や中身の監査も必要であろう。

 日米両政府は、昨年「日米軍事情報包括保護協定」を締結。秘密保全の新法制定の動きもある。

 「知る権利の侵害に対する国民の鈍感さ」に、強い危機感を抱く識者もいる。「新たな戦前」を招かないためにも、国民による防衛省の監視体制を強化したい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130576-storytopic-11.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 1面 

元隊長の請求棄却/「集団自決」訴訟

軍命に真実相当性/大阪地裁「深く関わった」

 沖縄戦時に座間味、渡嘉敷島で起きた「集団自決(強制集団死)」は戦隊長が命じたとする本の記述をめぐる「集団自決」訴訟の判決が二十八日午前、大阪地裁で言い渡された。深見敏正裁判長は、大江健三郎氏(73)の「沖縄ノート」について、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏への名誉棄損の成立を認めず、原告の請求を棄却した。梅澤氏が住民に「集団自決(強制集団死)」を命じたとする「太平洋戦争」(故家永三郎著)の記述にも真実相当性を認め、原告梅澤氏の訴えを退けた。原告側敗訴の判決で、梅澤氏らは控訴する。

 判決は、梅澤氏の自決命令について、「自決命令があった」などとする体験者の証言を「実体験に基づく話として具体性、迫真性を有するもの」と認め、自決に軍所有の貴重な武器だった手榴弾が使われたことなどを指摘。「各書籍の記述どおりの自決命令」をそのまま認めることには「伝達経路等が判然としないため、躊躇を禁じえない」としたものの、「梅澤氏が集団自決に関与したものと推認できる」とした。

 また、赤松氏の自決命令について、赤松氏がスパイ容疑で住民を処刑したことを指摘。米軍上陸後、北山陣地近くに集合した住民の元へ手榴弾を持った防衛隊員が現れた行動を「赤松氏が容認したとすれば、赤松氏が自決命令を発したことが一因ではないかと考えざるを得ない」とした。

 さらに、「集団自決」に関する学説状況や「集団自決」への日本軍による強制を示す記述を認めてきた二〇〇五年度までの教科書検定の対応、大江氏、家永氏の取材状況などから「真実であると信じるについて相当な理由がある」と両著の記述の正当性を認め、慶良間諸島での日本軍の駐留状況などからも「『集団自決』については日本軍が深く関わったものと認める」とした。

 一方、「『集団自決には軍命があった』という住民の話は、遺族年金をもらうための捏造」などとした、原告側証人の証言や文書は「証人の経歴や文書作成の経緯に照らして採用できない」とした。

 沖縄戦での「集団自決」に対する日本軍の強制を示す記述を、高校の日本史教科書から削除させた二〇〇六年度の教科書検定で、文部科学省が根拠の一つに挙げており、今後の同省の対応が注目される。


     ◇     ◇     ◇     

知事、妥当と認識/「体験伝えていくべき」


 仲井真弘多知事は二十八日午前、「集団自決」訴訟判決で原告側の請求が棄却されたことについて、「正確には判決の中身を読ませていただきたい」とした上で、「やっぱりそういうものだったのか」と述べ、判決が妥当との認識を示した。

 「集団自決(強制集団死)」に関しては、「証言されている一人一人は大変な勇気を持って表現されている。痛恨の体験をされた人々の気持ち、その社会的背景を含めて、きちっと伝えていくべきだと思う」との見解を述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_01.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 7面

「新証言 聞いてくれた」/大江さん冷静に評価

 六十三年前の沖縄戦。慶良間諸島で起きた住民の「集団自決(強制集団死)」への軍関与の史実について二十八日、司法が踏み込んだ判断を示した。被告の大江健三郎さんは、著書を「しっかり読んで下さった」と評価。被告側支援者らは、涙を浮かべて喜び、元戦隊長ら原告は、顔をこわばらせた。被告側を支援してきた県内の関係者らは「判決は当然。ほっとした」「次は教科書の記述復活だ」と、一様に歓迎した。悲劇の舞台の一つ渡嘉敷島は、くしくも六十三回目の「あの日」。遺族らが犠牲者の名を刻んだ白玉之塔に手を合わせた。

 「裁判所が私の『沖縄ノート』を正確に読んで下さった」「新しい証人の声をよく聞いてくれた」。判決の言い渡し後、大阪司法記者クラブで開かれた会見。作家の大江健三郎さん(73)は原告側の訴えを一蹴した司法判断について、落ち着いた表情でよどみなく言葉を連ねた。

 「個人の名を挙げて、彼を罪人としたり、悪人としたりしていない」と著書の記述が元戦隊長個人を誹謗・中傷したものではないとあらためて強調した。

 また、「裁判の背景に大きな政治的な動きがあった」と指摘。二〇〇三年の有事法制の成立、〇五年の「集団自決」訴訟の提起、〇七年の教科書検定で「集団自決」の記述から軍の強制性が削除された問題が、一連の流れの中で起きたと述べた。

 一方、昨年九月に宜野湾市で開かれた教科書検定意見の撤回を求める県民大会について、「あの十一万人の集会が本土の人間に、この問題がどのようなものであるか知らしめた」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_02.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 7面

検定撤回 決意新た/体験者ら「歴史正す一歩」

 渡嘉敷島での体験者吉川嘉勝さんは(69)は「県民としてほっとしている。渡嘉敷、座間味だけでなく、県民大会など県民全体が団結して行動し、発言してきた結果だ。しかし原告側は控訴するだろう。予断を許さない。引き続き沖縄戦の真実を全国に訴えていきたい」と語った。吉川さんは多くの島民の犠牲者の名前を刻んだ渡嘉敷島の白玉之塔に手を合わせ、裁判結果を静かに報告した。

 座間味島で「集団自決」を体験した宮城恒彦さん(74)は「請求棄却は当然。被告の訴えが認められなければ大変なことになる。座間味の人たちが体験した、地獄絵の事実は簡単に曲げられない。この判決は、歴史を正すための一歩になる」と評価した。

 琉球大学の高嶋伸欣教授は「積極的に踏み込んだ判決で、評価できる。裁判所も県民大会などに表れた沖縄の声を聞かざるを得なくなった」と指摘。「文科省の検定意見の不当性もますます明白になり、あらためて撤回と謝罪を求めていく」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

犠牲の島民思い ひと時も忘れず/渡嘉敷


 【渡嘉敷】沖縄戦で住民の「集団自決(強制集団死)」が起きた渡嘉敷島で二十八日、慰霊祭が行われた。六十三年前のこの日、集団自決で住民三百二十九人、島全体では約五百人の命が失われた。犠牲者を祭る白玉之塔には早朝から遺族や住民らが参拝に訪れ、御霊の冥福を祈った。

 「請求棄却」の判決について小嶺安雄村長は「村内でもいろんな意見を持つ住民がおり、村としての公式なコメントは控えさえていただきたい」と答えた。

 娘二人を亡くした北村登美さん(96)は「六十三年間、ひとときも忘れたことはない。犠牲になった家族や島民のことを思うと涙をこらえることができない」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_03.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 1面

米軍車両侵入 防止策要請へ/知事が批判

 仲井真弘多知事は、米軍関係とみられる車両が県立沖縄高等養護学校(うるま市)敷地に無断侵入したことについて、二十八日の定例会見で「どうしてこういうことが起こるのか。きちっと詰めれば解決できる話だ」と述べ、近く在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官に防止策を申し入れる考えを示した。

 仲井真知事は二月十日の米兵暴行事件以降、米軍や米軍関係者による事件・事故が十八件起こっていることを指摘。「綱紀、仕事の仕方、組織の問題などいろいろあるだろうと想像させられる。軍隊ではいいんだという話はあり得ない」と米軍の対応を批判した。


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うるま議会 現場視察/臨時議会で抗議決議へ


 【うるま】うるま市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長・生徒百二十四人)内に米軍関係とみられる車両が侵入した問題で、うるま市議会の島袋俊夫議長らは二十八日、同校を訪れ、現場を検証、塩浜校長からも状況を聞いた。同議会は基地対策特別委員会を招集し、抗議行動などを協議。うるま市側も抗議行動を検討している。

 島袋議長は「米軍は昨年の車両侵入で抗議した際に徹底した指導を約束した。短期間に連続して発生しており由々しき事態だ」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_04.html