月別アーカイブ: 2008年9月

県内での放射性物質検出、「原潜原因」に米が圧力/1972年 元米軍医・スタインバーグさん来県 米原潜ホワイトビーチ寄港/県・市は中止要望 など 沖縄タイムス関連記事・社説(9月4日から6日)

2008年09月04日【朝刊】 政治 

「原潜原因」に米が圧力/1972年 県内での放射性物質検出

米解禁文書で判明/国会答弁「不明」に修正/外務省が仲介

 一九七二年に那覇港とホワイトビーチで高い値の放射性物質が検出された問題に関する七四年国会答弁で、当時の科学技術庁原子力局次長が米原子力潜水艦の影響を指摘したことに対し、米政府が外務省を通して、原潜を原因とする発言を二度としないよう要求していたことが、三日までに解禁された米公文書で分かった。米側は外務省と再答弁の内容調整もしており、その後同次長は「原因不明」と答弁を修正。事実上、米側の?介入?を受け入れていた。(嘉数浩二)

 文書は、東京の駐日米大使館発国務長官あて緊急電報。日米関係史研究者の新原昭治氏が二〇〇七年、米国立公文書館で入手した。

 一九七四年二月二十五日の参院決算委で、本土復帰直後の日本側の調査で、放射性核種「コバルト60」が、那覇港の海底土から1キログラム当たり178ピコキュリー、ホワイトビーチの貝から62ピコキュリーが検出された問題が取り上げられた。原子力局次長は「コバルトの高い値の一部は原潜に由来すると考えられる」と答弁した。

 公文書によると、米大使館は二十六日朝、外務省の安全保障課長に連絡し、答弁についての説明と、二度と同じ言明が繰り返されないよう要求した。外務省関係者は科技庁幹部や次長と面会し、無用な波紋を広げていると指摘。次長は軽率な答弁だったと謝罪した。

 同日、外務省は米側に「公式の言明は、コバルト60は原潜寄港のない港でも検出されており、原潜による汚染とは関係なく、検出量も人体に無害」と修正する案を伝え調整した。

 二十八日の衆院特別委の同局次長答弁は、外務省案を踏襲した内容となった。

 放射性物質に詳しい京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は「当時の科学界の常識でも、通常の数十倍の異常値で、原潜の影響と考えるのが当然だ。(答弁修正は)科学的にはあり得ない話」と指摘している。

 外務省日米安全保障条約課は、本紙の取材に、「米側文書なので承知していない。日本側の記録については即答できない」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-04-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月04日【朝刊】 社会 

高嶺議長を委員長に/教科書検定撤回県民大会実行委

各会派に協力要請/再訂正へ結束呼び掛け

 「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長が三日、県議会を訪れ、高嶺善伸県議会議長を同実行委員長にするよう、各会派に協力を求めた。

 玉寄副委員長は自民、公明県民会議、共産、民主の各会派を訪問。「教科書検定意見は撤回されず、県民大会決議は何一つ実現していない。県議会各派のいっそうの結束をお願いしたい」と要請文を手渡して回った。残る会派も四日以降に回るという。

 同実行委の委員長は昨年、仲里利信・前県議会議長だったが、今年六月に勇退して以降、空席が続いている。実行委は八月、高嶺議長に委員長就任を求めたが、高嶺議長は「最も効果的な形で参加したい」と全会派の同意を前提にする考えを示していた。

 二〇〇六年度の高校日本史の教科書検定では沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の強制性が削除されたが、〇八年末に「日本軍の関与」という形で復活した。

 しかし、教科書執筆者らは「内容が不十分」として、今秋にも再訂正の申請を検討している。

 玉寄副委員長は「昨年は県議会が超党派の『沖縄党』として行動したから、沖縄の声は力強くなり、文科省も訂正せざるを得なかった。今また沖縄が声を上げなければこの問題は終わってしまう。再訂正申請の動きに合わせ、再び結束を呼び掛けたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-04-M_1-022-1_002.html

 

2008年09月04日【朝刊】 政治 

「政府、米の要求優先」/放射性物質検出米国の圧力判明

識者批判 独自調査が必要

 本土復帰直後の沖縄で検出された放射性物質の異常値をめぐり、当時の政府が、米国の要求に応じる形で「原潜が原因かは不明」としたことに、専門家から疑問の声が上がった。

 京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は「現在の平常値は一キロ当たり一ピコキュリー未満。当時、核実験などで世界中に微量のコバルトが放出されたことを考えても、極めて異常な数値」とし、「原潜の影響を否定するには、しっかり調査して証明する必要があったはずだ」と指摘した。コバルトの半減期は五年で、現在は当時の影響は考えにくいとしつつ、「今でも事故はあり、そのたび『ごく微量』として独自調査をしない政府の姿勢は疑問だ」と述べた。

 文書を入手した日米関係史研究者の新原昭治氏は、「住民の安全を守るべき局面で、米国の軍事要求を優先してきた日本政府の姿が浮き彫りになっている」と批判。今年発覚した原潜放射能漏れ事故を挙げ、「米国の圧力に屈し続ける中で、抗議さえできなくなったのではないか」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-04-M_1-002-1_002.html

 

沖縄タイムス 2008年09月04日 社説 

[「密約裁判」棄却]

歴史に虚偽は許されず

 司法が政府の「ウソ」にお墨付きを与えてしまった。その思いを強くする最高裁の判断だ。

 沖縄返還協定をめぐる日米両政府の交渉過程で、軍用地の原状回復補償費四百万ドルを日本側が肩代わりするという日米間の密約公文書を暴いた元毎日新聞記者・西山太吉さんが、国に密約の事実認定などを求めていた訴訟で、最高裁第三小法廷が上告を棄却した。

 同訴訟では一審、二審とも民事上の請求権が不法行為から二十年で失われる「除斥期間」を適用し、原告の訴えを「門前払い」してきた。最高裁の判断も密約の「存否」を何ら検証することもなく、判決は確定した。

 あらためて指摘するまでもなく、この密約は今や「疑いようのない事実」である。

 琉球大学の我部政明教授らが、裏付けとなる米公文書を発見。加えて、当時の対米交渉責任者だった元外務官僚が事実を認め、VOA(米海外向け短波放送)の移転費千六百万ドルも含まれていたことを証言している。

 これだけの状況証拠と証人の声にも耳を傾けず、司法が果たすべき役割に背を向け、実質的な審理を怠ったことは、西山さんの言葉を借りれば「行政と司法が一体化した高度な政治判断で、司法の自滅」である。

 密約を裏付ける文書が見つかったのもここ十年に満たない。原告が求めた除斥期間に当たらないとする主張にこそ説得力がある。

 政府の対応も理解しがたいことだらけだ。

 文書の存在を一貫して否定している。もう一方の当事国から「証拠」が出され、身内の「告発」があっても「知らぬ存ぜぬ」を押し通す姿勢は駄々をこねる幼子と変わらない。

 仮に密約がなかったのであれば、米側で見つかった文書の真意を確かめることは容易なはずだ。元外務官僚についても同じだ。

 米国の圧倒的な政治力に押され、不利な交渉を強いられた時代はもはや過去のことだ。成熟した二国間協力を築き上げるためにも、過去に誠実に向き合い、同じ過ちは防がねばならない。歴史に「虚偽」があってはならない。それが次世代へのわれわれの努めでもある。

 米軍基地をめぐる「密約」は枚挙にいとまがない。政府の外交に対する国民の目線はすでに「疑念」を通り越している。

 密約からツケを負わされるのは国民である。

 政府は情報開示のあり方を考える時期である。外交文書の公開は三十年後が原則だが、政府の恣意的な判断に委ねられているのが現状だ。機密保持の必要性を「錦の御旗」にされれば、民主主義の根幹をなす「国民の知る権利」はないに等しく、権力の乱用を止める術もなくなる。

 ジャーナリストら有志が、密約訴訟に関連する文書の開示を国に求めた。西山さんらの問題提起は終わったわけではない。私たちはその本質をしっかりと問い続けなければならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-04-M_1-005-1_001.html

 

2008年09月04日【夕刊】 社会 

県が立ち入り要請/返還施設/海兵隊外交政策部長に/

 県の上原昭知事公室長は四日午前、着任あいさつのため、県庁を訪問した在日米海兵隊外交政策(G5)部長のダン・メルトン大佐に対し、米軍再編で嘉手納基地以南の返還が決まった施設について、文化財や環境調査を目的に立ち入りたいと要請した。

 メルトン大佐は「要望は承知しているが、どの土地をどう返還するか作業を継続中で、(現段階で)調査はできない」と、現段階での立ち入りは認めない意向を示した。

 同大佐は六月に来沖し、三度目の在沖勤務となる。四軍調整官のジルマー中将の見解として、「司令官は基地の統合や移転だけでなく、すべての事件をなくすことを真摯に考えることが大切と考えている」と強調。

 公務外を含めた在沖米海兵隊員の規律を定めるリバティーキャンペーンの見直し作業を継続していることを明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-04-E_1-004-2_002.html

 

2008年09月05日【朝刊】 政治 

米原潜 安全確認を/放射能漏れ 軍転協が防衛局などに要請

 米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが二年間にわたり、放射能を含む冷却水を漏らしていたことを受け、県と基地所在二十七市町村長でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(会長・仲井真弘多知事)の要請団は四日、外務省沖縄事務所や沖縄防衛局などに「原子力潜水艦は安全が確認されない限り、本県に寄港させない」など、ホワイトビーチへの原潜寄港に関して六項目を要請した。八、九日は上京し、外務省や防衛省、在日米国大使館などに要請する。

 沖縄防衛局の坂野祥一次長は「趣旨は理解できるが、米国の港で取られるすべての安全上の予防措置の手続きをわが国でも厳格に実施している」と説明。「日本の安全保障に重要な役割を果たしている原潜の安全性は再確認されている」と述べるにとどめた。

 外務省沖縄事務所の今井正沖縄担当大使は文部科学省の調査を挙げ、「異常値はなく、人体や環境に影響を及ぼすとは考えられない」と話した。

 要請団はほかに(1)ヒューストンの冷却水漏れの原因究明と再発防止策の速やかな公表(2)本県に寄港するすべての原子力艦の点検や安全性確保(3)寄港増加の理由を明かす(4)寄港に際し(報道機関への)事前公表が中止されている措置の解除(5)ホワイトビーチ桟橋に設置された海域の放射能を検出する機器「海水計」三基のうち、停止している一基の早急再開―を求めた。

 仲井真知事に代わって団長を務めた儀武剛副会長(金武町長)は「安全性の確認や寄港増加の理由について、県民の立場に立ち、本省や他省庁に問い合わせてほしい」と明確な回答を求めた。

 また軍転協とは別に、ホワイトビーチを抱えるうるま市の石川邦吉副市長は、外務省が発表した米側最終報告に対し、「安全性が十分に確認されたとは認めがたい」と述べた。

 要請団はほかに、「基地から派生する諸問題の解決促進に関する要請」と題し、基地の整理・縮小や日米地位協定の見直しなど七項目も併せて要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-05-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月05日【朝刊】 社会 

旧軍のくしゃみ弾か 陸自 那覇で2発回収・移送

 【東京】防衛省は四日、那覇市内で三日に回収した不発弾七発の中に、旧日本軍が使用した「くしゃみ剤」入りの化学弾の可能性がある砲弾二発が含まれていたと発表した。三日、読谷村にある県の不発弾保管庫に移送。同省は「信管が付いておらず、亀裂や損傷もないため、爆発や薬剤漏えいなどの危険性はない」と説明している。県内ではこれまでも多くの不発弾が見つかっているが、化学弾であれば初のケース。

 不発弾は陸上自衛隊の不発弾処理隊が那覇市内の墓地から回収。回収時には、腐食が進み、泥が付着していたことなどから判別できなかったため、ほかの砲弾とともに、不発弾保管庫へ移送した。その後、同日夜、同保管庫で調べたところ、二発の弾頭に化学弾の特徴を示す二本の溝が見つかったという。化学弾の可能性がある二発はともに長さ三〇・五センチ、直径七・五センチ、重さ約六キロで、旧日本軍が使用した化学弾「92式あか弾」の可能性がある。残りは二発が七五ミリりゅう弾、三発が対戦車弾だった。

 防衛省は今後、カタログなどと照合し、特定を急ぐ方針。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-05-M_1-027-1_003.html

 

2008年09月05日【朝刊】 社会 

「ニシムイ」の思い出 今も/元米軍医・スタインバーグさん来県

 

60年ぶりの再会に涙を流し見つめ合う元米軍医のスタインバーグ氏(右)と故玉那覇正吉氏の長女田村みどりさん=4日午後8時38分、那覇空港(下地広也撮影)

きょう県立博物・美術館で講演

 沖縄の戦後美術の起源となった那覇市首里の美術村「ニシムイ」で画家の玉那覇正吉、安次嶺金正の各氏から絵画を学んだ米国の精神科医、スタンレー・スタインバーグさん(85)が四日夜、来沖した。那覇空港で玉那覇氏の長女、田村みどりさん(60)=横浜市=と60年ぶりに再会、「面影がある」「会えて良かった」と互いに抱き合い、感激に浸った。

 「沖縄に戻って来られて興奮している」とほほ笑むスタインバーグさん。「ニシムイで過ごした日々は、わたしの人生の中でも、とても楽しい時期だった。彼らがどれだけ素晴らしい芸術家だったか、みんなに伝えるのを楽しみにしている」と意欲的に語った。

 田村さんは「会えて本当に幸せ。まだ一歳くらいだったが、彼が絵を描いている時に、せがんでひざの上に乗せてもらったことを今でも覚えている」とハンカチで目元をぬぐった。空港では関係者ら約十人が出迎えた。

 スタインバーグさんは五日午後三時から県立博物館・美術館で開かれる同館の開館一周年企画「思い出のニシムイ」で講演する。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-05-M_1-026-1_003.html

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008年09月05日【夕刊】 政治 

知事、県内移設を堅持/県議会決議に反論声明

「県外・国外は理想論」「新基地建設でない」

 仲井真弘多知事は五日午前の定例会見で、普天間飛行場移設に関する県の考え方をまとめた声明文を発表した。県議会が六月定例会で「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議」を可決したことに対し、「私の姿勢が十分に理解されていない」としてまとめた異例の“反論声明”。しかし、方針の転換はなく、従来の姿勢を示した内容にとどまっている。

 声明は「普天間飛行場の移設に関する県の考え方―県民のみなさまのご理解とご協力を求めて」と題し、A4判五枚。知事は、十七日に開会する九月定例会を前に、「知事になって約一年八カ月間、政府と何をやってきたか。私の考えをまとめた」と説明した。

 県議会決議に対しては、「シュワブに施設をつくるので、飛行場の面積や滑走路の長さは縮小される。『新しい基地の建設』とは性格が異なる」と反論。名護市や宜野座村が受け入れていることを示しながら、県外や国外移設の検討について「理想論としてはあり得るが、先の見えない作業になる」と真っ向から否定した。

 代替施設の建設位置については、「これから先、施設と向き合う住民のことを考えると、できるだけ沖合につくるべきだと考えており、政府に理解を求めている」と説明した。

 パッケージとされる在沖米海兵隊のグアム移転と、嘉手納以南の施設の大規模返還が実施されれば、「基地の負担も減っていく。跡地利用は沖縄全体の発展に大きく貢献し、さまざまな産業を興すことにつなげたい」との考えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-05-E_1-001-2_001.html

 

2008年09月05日【夕刊】 社会 

県内関係者から賛否 知事・反論会見

名護市長「負担軽減になる」/宜野湾市「最新鋭の新基地」

 仲井真弘多知事が五日、普天間飛行場の名護市辺野古への移設を「引き続き推進する」とあらためて表明したことに、県内の関係者から賛否両論の声があがった。

 移設先の名護市の島袋吉和市長は「(代替施設の建設位置を)沖合へ求めていくということは、一貫して話している」と述べ、仲井真知事と連携する姿勢をあらためて強調。普天間移設が「沖縄の米軍基地全体の負担軽減につながる」と知事が訴えたことについて、「その通りだと思う」と語った。

 一方、普天間飛行場の県内移設に反対している宜野湾市の山内繁雄基地政策部長は「辺野古に建設されるのは最新鋭の新たな基地と認識している。海兵隊八千人をグアムへ移すならば、普天間の代替施設もグアムに建設されるべきだ」との考えを示した。同飛行場の危険性については「国の場周経路の航跡調査が実施されたが、普天間の危険性は一つではない。民間地をクリアゾーンにしたまま放置されている問題もある。県は現状に目を向け、市民の声を国に届けてほしい」と話した。

 辺野古で座り込みを続ける平和市民連絡会の当山栄事務局長は「新基地建設反対の意見書は県議会として正当な手続きを経て議決された。行政の長が軽々しく反対していいものではない」と強く批判。危険性除去の論理についても「辺野古なら危険にさらしても構わない、という差別的な発想だ。どこの住民も、平穏な生活を破壊されていいはずがない」と疑問を示し、「いつまでも自身の政策に固執するのは、県民の意思を二重、三重に無視するものだ」と不快感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-05-E_1-007-2_001.html

 

2008年09月05日【夕刊】 政治 

原潜入港を拒否 放射能漏れ

 仲井真弘多知事は五日の会見で、原子力潜水艦の寄港について「安全性が確認されない限り、沖縄県への入港はすべきではないという立場だ」と表明した。

 米海軍は、うるま市ホワイトビーチなどで放射能を含む冷却水を漏らしていた原潜ヒューストンの調査結果として、最終報告を八月二十九日に外務省へ提出し、政府は「安全宣言」を出した。

 しかし、知事は「報告書はまだ読んでいない」として論評を避けた。

 知事が会長を務める県軍用地転用促進・基地問題協議会は四日、県内にある日米両政府機関に同様の要請を行っているが、知事は「軍転協とまったく同じ考えだ」と述べた。

 日米地位協定改正などを求める訪米時期については来年一月を検討しているが、「(大統領選後の米政府の)新しいポストが決まった後か前か、(政権の)引き継ぎ前後か迷っている。場合によっては二回行こうと考えている」と説明した。

 知事が求める普天間飛行場代替施設建設位置の沖合移動については、「国内問題ととらえているので、私が対米交渉するのはおかしい」と説明。求められなければ言及しない方針を示し、「(日本)政府がきっちり受け止めてほしい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-05-E_1-001-2_002.html

 

2008年09月05日【夕刊】 政治 

沖縄関係 アセスなど項目新設/08年防衛白書

 林芳正防衛相は五日の閣議で、二〇〇八年版防衛白書を報告、了承された。

 【東京】二〇〇八年版防衛白書の沖縄関係記述は、前年版の記述に一年間の動きを追記しただけで、目新しさはない。「分かりやすさを追求」(防衛省)した結果、ページ数が白書全体で一割強削減され、沖縄関係部分も従来より分量が減った。

 米軍普天間飛行場関係では、危険性除去や代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)などの項目を新設。日米が昨年八月に合意した危険性除去策、今年三月からキャンプ・シュワブ沿岸で始まった環境影響評価調査を紹介している。

 在日米軍再編関係では、キャンプ・ハンセンの日米共同使用に関し、今年三月から陸上自衛隊の訓練が始まったことを追記。そのほか、米軍再編への協力度合いに応じて自治体に支払う再編交付金の対象自治体に、県内の関係市町村を指定したことも説明した。

 一方、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関して、今年五月に発効した新特別協定や基地従業員の格差給廃止などの経緯についても記述した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-05-E_1-006-2.html

 

2008年09月06日【朝刊】 政治 

米原潜きょうホワイトビーチ寄港/県・市は中止要望

 米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦シティオブコーパスクリスティ(六、〇八二トン)が六日午後、うるま市勝連平敷屋の米軍ホワイトビーチに入港することが五日、分かった。桟橋には接岸せず、沖合に停泊する見通し。出港日時や目的は不明。

 米原潜の寄港をめぐっては、ヒューストンの放射能漏れを受け、地元の知念恒男うるま市長や同市議会がすべての原潜の寄港中止を国に要望。仲井真弘多知事や県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)は「安全が確認されない限り、本県に寄港させない」と求めており、地元を中心に再び波紋を広げそうだ。

 外務省は八月二十八日、米側の最終報告通報を受けたとして、「わが国の平和と安定に重要な役割を果たす米原潜の安全性が再確認されたと考えている」と安全宣言。軍転協の要請の際も、沖縄防衛局は外務省の発表を読み上げ、「当局もそのように取り扱いたい」と問題視しない考えを示している。

 原潜の寄港は八月十八日以来、今年に入って二十八回目で、年間最多寄港数を再び更新する。同型ヒューストンの放射能漏れが八月に発覚以来、県内へ二度目の寄港。

 シティオブコーパスクリスティは今年初めてホワイトビーチに入港する。昨年は三回入港しており、総計九十一時間(三日間十九時間)停泊した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-06-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月06日【朝刊】 社会 

米軍機飛行に苦情増/沖縄市市街地 防衛局に市申し入れ

【沖縄】沖縄市は五日、市街地上空での米軍機の低空飛行や夜間飛行に対する苦情が増えているとして、同市の担当者らが沖縄防衛局を訪ね、米軍に市街地での飛行の自粛を求めるよう口頭で申し入れた。

 同市内では八月ごろから市役所周辺の中心市街地での低空飛行や夜間の飛行が目立ち、これまで苦情がほとんどなかった市東部の住民らや、騒音規制措置で飛行を避けるよう明記されている、学校や病院が密集する地域からも騒音に対する問い合わせが増えているという。

 これを受けて四日午後七時―午後九時半に市役所屋上と市中央のコリンザ屋上で行った米軍機の飛行実態の目視調査では、米軍嘉手納基地でKC135空中給油機がタッチアンドゴーを繰り返す様子や、うるま市方向に飛行する機体などを確認。市役所上空で旋回する軍用機もあった。

 五日にも市民から四件の苦情があり、市基地政策課は「本来飛んではいけない地域を飛んでいる実態がある。今後本調査で詳しく調べたい」とし、来週にも日中の飛行目視調査を行う。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-06-M_1-029-1_002.html

 

2008年09月06日【朝刊】 社会 

元米軍医・スタインバーグさん講演/「画家と交流 貴い体験」/思い出のニシムイ

 

戦後沖縄の美術村「ニシムイ」での思い出を語る元米軍医師スタンレー・スタインバーグさん=那覇市おもろまち、県立博物館・美術館

県立博物館・美術館の開館一周年を記念した講演会「思い出のニシムイ」(主催・同館)が五日、那覇市おもろまちの同館講堂で行われた。講演では、米国から六十年ぶりに来沖した元米軍医師スタンレー・スタインバーグさんが、戦争直後に那覇市首里にあった美術村「ニシムイ」での画家との交流を振り返り、「困難な時代だったが沖縄の画家たちと大切な出会いを経験できた」と感慨深げに話した。

 スタインバーグさんは一九四八―五〇年、軍医として沖縄に滞在。玉那覇正吉氏、安次嶺金正氏ら、戦後沖縄を代表する画家らが住んでいたニシムイの美術村に出入りし、絵を学んだ。

 基調講演でスタインバーグさんは「共に同じ時代を過ごせた。言葉は分からなかったがお互いの肖像画を描いたり、沖縄の画家の作品を購入するなど、美術を通して交流ができた」と自らの経験を紹介した。

 パネルディスカッションでは去年、米国カリフォルニア大学バークレー校で開催された「ニシムイ美術村の絵画展」を企画したジェーン・デュレイさんが「私は沖縄の基地内で育ち米国に渡ったが、スタインバーグさんと出会ってからニシムイを知った。作品は沖縄の近代絵画を理解する基礎になると思う」と説明した。

 また玉那覇氏の長女田村みどりさんは「スタンレーさんが絵を描いている時、ひざに乗せてもらった覚えがある。六十年を経た再会は奇跡的」と強調。

 安次嶺氏の長女の宮里正子さんは「昨年、カリフォルニアで行われたニシムイの展示会を見て豊かな時間が過ごせた。同じ展示会を沖縄でも開催してほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-06-M_1-028-1_002.html

 

2008年09月06日【朝刊】 政治 

[フォローアップ]「普天間移設 県の考え方」で波紋

与党「衆院選に悪影響」/野党「民意への挑戦」

 仲井真弘多知事が五日の定例会見で発表した「普天間飛行場移設に関する県の考え方」が波紋を広げている。名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対決議した県議会野党に反論する内容で、身内からは「野党に攻撃の口実を与えるだけ」「衆院選にも悪影響を与えかねない」と、発表の時期や手法に疑問の声が上がっている。県議会決議が六月定例会で可決された後、「報道が決議に集中し、県の考えが県民に十分に伝わっていない」(知事周辺)との不満が高まっていた。新聞への投稿を含め、県民向けのメッセージ発信を模索していた。

知事の真意

 知事の真意をブレーンの一人は「丁寧に説明すれば、(県内移設の必要性を)県民や議会にも分かってもらえるという強い信念がある。その純粋な思いだけなのだろう」と推測する。

 ただ、発表の時期や手法には「政治路線の違う議員が納得するわけはない。移設論議が再燃すれば、次期衆院選で与党候補にマイナスになりかねない。自ら火だねを投げ込んだようなものだ」と懸念を示す。

 「考え方」は、県議会決議後に決まった現飛行場の危険性除去策を検討する政府と地元によるワーキングチームの設置を盛り込んだほかは、知事の従来姿勢を繰り返し強調しているだけ。各種世論調査で過半数を占める「県内移設反対」の県民世論や野党議員を翻意させるだけの新たな論拠に乏しいのが実情だ。

 県幹部は「(危険性除去や沖合移動などの)交渉の相手は政府だ。県民に理解を求めるのは重要だが、県議会決議に対しての反論は得策とはいえないのではないか」と疑念を呈した。

議会で追及

 野党最大会派「社民・護憲ネット」の新里米吉団長は「県議選や県民世論、名護市の市民投票などの民意を示した反対決議に挑戦するものだ」と強調。「(辺野古移設は)大規模な埋め立てが必要で、新基地建設ではないという主張は詭弁でしかない」と厳しく批判した。

 十七日開会の九月定例会の対応には「県内移設ありきの考えが露呈した。徹底追及し、野党で対応する」と、答弁次第では知事の訪米予算を含む補正予算の修正を求めることを示唆した。

 一方、与党の具志孝助自民党県連会長は「反対決議や新政権誕生という時期をとらえ、知事としての姿勢を明確にする考えがあったのだろう」と擁護する。

 公明党県本の糸洲朝則代表も「県の考えを県民に分かりやすく伝え、三年以内の危険性除去を促進させる意欲の表れだ」と評価した。(政経部・浜元克年、与那原良彦)

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-06-M_1-002-1_001.html

福田首相辞任、県内も不安放置 沖縄密約訴訟、西山元記者の上告棄却/存在の有無判断せず など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(9月2日、3日)

2008年09月02日【朝刊】

県内も不安放置 福田首相辞任

原油高・格差・不景気・基地・・・

 福田康夫首相が突然辞意を表明した。一日夜、医療制度問題やガソリンや食品が高騰し経済問題が逼迫する中で突然の退陣表明。ちょうど一年前にいきなり辞職した前任者と同じように山積する問題を投げ出す指導者に「なぜ」「無責任だ」と県民の憤りは増幅した。格差や医療だけでなく基地問題はどう動くのか、今後への不安の声が各地で上がった。

 名護市内の大型スーパーで買い物をしていた主婦の具志堅洋子さん(50)は「政権運営が困難なのは分かっていたはずなのに、無責任。国の最高責任者が立て続けに職務を放棄したことで年金制度への不信感も増す」と怒った。

 浦添市内で山城興光さん(50)が営むパン屋では、原材料費が高騰する中、八月に一部商品の値上げに踏み切ったが、次は自身を含め従業員の人件費をカットするしかない、と覚悟を決めたところだ。「全然国民のことを考えていない。世の中が厳しい時こそ、国民と一緒に闘うのが政治家のあるべき姿ではないのか」と吐き捨てた。

 加納拓海さん(19)=沖縄市=は「年金や格差社会など、解決してほしい問題はたくさんあるが、何も改善されなかった。次の総理には、雇用や経済の活性化など、若者が期待を持てる社会づくりに取り組んでほしい」と話した。

 名護市で水泳インストラクターを務める新城裕和さん(36)は辞任のニュースを帰宅途中に知った。「びっくりの一言。どこまで進んだか分からなくなっている基地問題が、余計見えなくなる。一国のトップが一年で二人辞めたことを、子どもたちにどうやって説明しよう」と当惑の表情。

 石垣市内の居酒屋のテレビで辞任を知った門田満夫さん(49)は「人気はなかったが人柄は良かったので残念。衆議院を解散せずに辞めることは無責任だ。民主党の小沢さんにも一度、首相になってほしい」と政権交代に期待した。

 多和田美香さん(25)=沖縄市=は「何がやりたかったかみえない。消費者庁をつくると語っていたが、結果が出ていない。次の総理は、言ったことに責任を持って実現してほしい」と述べた。

 「なぜという驚きもあるし、やっぱりという感じもする」。那覇市の座間味和子さん(64)は、落ち着いた様子で退任を受け止めつつ、「原油高で農業や漁業、いろいろなところに影響が出て生活も苦しくなっている。米軍基地がある沖縄は、外交問題も無視できないので、次のリーダーには責任を持てる、冷静な人になってほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-025-1_005.html

 

2008年09月02日【朝刊】

県、対話継続を期待 福田首相辞任

普天間 交渉に暗雲/経済政策停滞を懸念

 福田康夫首相が突然の辞任を表明した一日夜、県幹部には驚きや戸惑いが広がった。米軍普天間飛行場の移設問題は、建設位置や危険性除去をめぐる政府と県の交渉が続いている。県首脳は「ようやく政府の理解が深まってきたところ。閣僚が代わると二重、三重の時間がかかる。これまでの議論を踏まえるのが信義則だ」とくぎを刺し、対話路線の継続を求めた。

 次期首相候補には麻生太郎自民党幹事長が有力視されている。麻生氏はかつて、普天間移設で下地幹郎衆院議員が提唱した「嘉手納統合案」に理解を示しており、県内部には「麻生首相になると議論が再燃しかねない」との警戒感もある。

 一方、県経済は原油高騰の影響で経済三十団体が県と国への支援を決議したばかり。県幹部は「政府は総合経済対策を粛々と進めてほしい」と経済政策の停滞への懸念を示した。

 沖縄振興計画は残り三年。ポスト振計の枠組みづくりには政府との綿密な協議が課題になる。「最近は中央の政治家の沖縄に対する理解が薄くなっていると言われる。これまで以上に沖縄に理解を持つ首相や閣僚が出てくるのを期待する。当然のことだ」と力を込めた。

 「まるで安倍さんのリプレイだ」―。福田首相の辞任会見を自宅のテレビで見た県幹部は絶句した。臨時国会中に政権を放り投げた安倍前首相に「無責任だ」との批判が上がったのが昨年の九月十二日。かつて見た光景がわずか一年足らずで繰り返された。

 支持率低迷にあえいだ福田内閣だが、景気浮揚策として八月二十九日、中小企業向け融資の信用保証枠の拡大などを盛り込んだ総合経済対策を決めた。原油や原材料価格の高騰で県内に「経済危機」への懸念が広がる中、県は政府の対策の詳細を見極めた上で対応を決め、県議会九月定例会に補正予算案を提出する道筋を描いていた。ある幹部は「首相が代わっても手続きは粛々と進めてほしい」と期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月02日【朝刊】

嘉手納6割基準超え/基地騒音W値

昨年度県調査 普天間は3地点

 県文化環境部は一日、米軍嘉手納飛行場など県内三空港周辺の二〇〇七年度航空機騒音測定結果を発表した。騒音の度合いを示すうるささ指数(WECPNL=W値)は、嘉手納飛行場周辺で十五測定地点のうち六割の九地点、米軍普天間飛行場周辺で九地点のうち三分の一の三地点で環境基準を超えた。県文化環境部の知念建次部長らは近く米軍や沖縄防衛局など関係当局を訪ね、改善を要請する。

 測定地点は米軍の嘉手納、普天間の両飛行場と那覇空港周辺の二十八カ所。W値の平均が環境基準(七〇―七五デシベル)を超えたのは、嘉手納周辺九地点、普天間周辺三地点、那覇空港周辺一地点で計十三カ所だった。

 騒音発生回数は嘉手納飛行場周辺では、〇七年十一月から〇八年一月までのF15戦闘機の飛行停止があったこともあり、十五測定地点中十四地点で減少した。一方、普天間周辺では九測定地点すべてで増加。W値も七地点で前年度を上回るなど悪化が目立つ結果となった。

 W値が最も大きいのは、嘉手納周辺で北谷町砂辺の九一デシベル(最大値一一九・八デシベル)、普天間周辺で宜野湾市上大謝名の八五デシベル(最大値一二二・二デシベル)。嘉手納周辺では、〇二年度以降減少傾向だった夜間―早朝(午後十時―午前七時)の騒音発生回数が嘉手納町役場の測定地点で増加に転じた。

 嘉手納町基地渉外課は深夜から早朝の騒音が増えたことについて「エンジン調整音などが考えられる」とみている。

 一九九六年の日米合同委員会による「騒音規制措置」合意から十年以上たっても改善されない騒音被害。「知事が現場で爆音を実感し、問題解決に動いてほしい」。地元住民からは、いら立ちの声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-025-1_001.html

 

2008年09月02日【朝刊】

米軍発注情報 和訳して配信/建設新聞出版

 沖縄建設新聞の関連会社の建設新聞出版(那覇市、大久勝社長)は1日付で、米軍関係の建設工事関連発注情報を日本語訳してファクス配信する「米軍調達情報(建設版)」を創刊した。県庁で発表した大久社長は「言葉の壁を乗り越え、不振にあえぐ県内建設業界がチャンスをつかむきっかけになれば」と語った。

 米国防総省や軍ホームページ(HP)などに掲載される沖縄関連の発注情報を翻訳し、業務内容や入札条件、提出期限、問い合わせ先などの情報と落札結果を配信する。近日中に専用HPも開設し、過去3年分程度の入札・落札情報を検索できるようにするほか、入札登録から施工までのマニュアルとなるガイドブックも発行する予定だ。

 建設新聞出版によると、沖縄の米軍基地関連の工事は30社程度が受注実績を持つが、各社が独自に発注情報を得ているのが現状。各軍や基地ごとに発注され、県内で年間どの程度の工事発注があるかも把握されておらず、「データベースとしても貴重なものになるはずだ」(大久社長)という。

 購読料は年間2万8000円、随時発行で目標は3000部程度。軍関係の物品調達情報配信も今後、検討するという。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-013-1_005.html

 

2008年09月02日 沖縄タイムス 社説

[福田首相退陣表明(上)]

総理って、そんなものか

 福田康夫首相よお前もか―国民はそう思っているのではないか。

 自前の閣僚によって臨時国会を乗り切ろうとしていた福田首相が、突然政権を投げ出した。

 安倍晋三前首相に続く政権放棄である。どのような理由であれ国民を裏切る行為であり、政治家としての見識を疑わざるを得ない。

 首相は一日午後九時半から開いた緊急会見で、インド洋での自衛隊の給油活動の延長をめぐり、公明党と方針の違いがあることを暗に示した。

 この問題では北海道洞爺湖サミットの場で、ブッシュ米大統領に継続することを示し批判を受けた経緯がある。

 これには自民党内からも「国際公約を果たせない首相はこの秋に立ち往生せざるを得ない」という声があがっていた。

 不安が当たったということもできるが、公明党が衆院再議決への慎重姿勢を崩さなかったことが退陣を決断させた一因になった。

 首相は「大きな前進のための基礎を築くことができた」とも述べた。

 緊急経済対策の策定などを指しているのだろうが、その具体的な内容は十二日に召集する臨時国会で論議していくはずではなかったのか。

 それについての説明は十分ではなく、国民には全く分かりにくいと言うしかない。 

 責任を放棄した責任は重いのであり、安倍前首相の辞任劇に似た事態は政治に対する国民の信頼をさらに失墜させたといえよう。

 首相は「この際、新しい体制の下、政策実現を図らなければならない」と説明している。

 臨時国会を前にしたこの時期での表明については「今が政治空白をつくらない一番いい時期と考えた。新しい人に託した方がいい」と述べた。

 だが退陣を決断した背景には、臨時国会召集や定額減税の調整に首相の意向が届かなかったことも大きく影響したとみていいだろう。

 内閣改造でも内閣支持率が上がらず、自らの手で解散に踏み切るのは困難と判断したのも確かである。

 公明党はじめ「福田首相では(選挙を)戦えない」という与党内の空気もまた首相を追い詰めた。

 首相は道路特定財源の一般財源化に加えて、消費者庁の設置などに触れて「国民目線に立った」政策を実現させたと強調した。だが、それとてすべてが道半ばではないか。

 首相は昨年、安倍前首相の退陣を踏まえて「政治に対する信頼を取り戻すことが喫緊の課題だ」と表明していた。

 にもかかわらず、原油高・物価高による国民生活への深刻な影響、後期高齢者医療制度や宙に浮いた年金問題など、まさに解決を急がなければならない問題に指導力を発揮することができなかった。

 内外に課題が山積する中での退陣は、日本の政治に対する外交的信頼をも失墜させたといえる。

 自民党は早急に総裁選を実施することになるが、さらに大きな十字架を背負ったのは間違いない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-005-1_001.html

 

2008年09月02日【夕刊】

知事訪米予算1500万円/与党に説明 補正総額26億円

県は二日、日米地位協定改正や米軍基地の整理・縮小など基地問題を訴えるため、仲井真弘多知事の訪米予算として約千五百万円を県議会九月定例会に提出する補正予算案に計上することを決めた。同日午前開かれた与党代表者への議案説明で伝えた。仲井真知事は十一月に行われる大統領選後、来年一月までに訪米する方針だ。同知事の訪米は就任後初めて。

 県内産業や農業や漁業の原油高騰対策では約三千万円を計上する。今後、政府の対策を見ながら具体化させる考えだ。

 ほかに、沖縄振興対策特別調整費を活用した待機児童対策として、約十二億四千七百万円を計上し、同基金設置条例案も併せて提出する。

 また、離島遠隔教育の事業費に約八千万円を盛り込む。補正予算総額では約二十六億円の規模になる見込みだ。九月定例会は十七日に開会する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-E_1-001-2_003.html

 

2008年09月03日【朝刊】

西山元記者の上告棄却/存在の有無判断せず

沖縄密約訴訟

 沖縄返還交渉の取材で、日米両政府の「密約」がつづられた外務省の極秘公電を手に入れ、国家公務員法違反罪(秘密漏洩教唆)で有罪とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)が、密約を黙認した検察官の一方的な訴追で名誉を傷つけられているとして、国に密約を認めて謝罪するよう求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は二日、西山さん側の上告を棄却する決定をした。「密約」の有無を判断をしないまま、訴えを全面的に退けた一、二審判決が確定した。

 昨年三月の一審・東京地裁は、返還交渉の当事者だった吉野文六氏ら当時の外務省高官が、西山さんの刑事裁判で偽証したとする訴えなどに、除斥期間(損害賠償請求権の存続期間、二十年)を適用し、西山さん側の請求を棄却。

 今年二月の東京高裁も、一審判決を踏襲して西山さん側の控訴を棄却した。

 米側の公文書で密約が裏付けられるたびに、密約を否定する政府高官らの発言に、西山さん側は名誉棄損と訴えたが、判決は「政府の公式見解を一般的に述べただけ」で西山さんには言及していない、として退けた。

 また密約を記した米公文書の存在が報道された二〇〇〇年五月、当時の河野洋平外相が吉野氏に密約を否定するよう要請したとされる点についても「そのような要請をしたとしても、政府の公式見解に沿って報道に対応するよう働きかけたにすぎない」とした。

 西山太吉さんの話 行政と司法が完全に一体化した高度な政治的判断で、司法の自滅だ。この民事訴訟は、国家権力の存立基盤を侵害するほどの重大な問題を提起している。

 代理人の藤森克美弁護士の話 裁判官が「密約」の事実に向き合おうとしておらず、今回の最高裁の決定は裁判史上に残る汚点だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「密約」文書の公開請求/県内外記者ら63人/沖縄返還3通指定

沖縄返還直前に日米両政府高官が交わした3通の公文書について情報公開請求したジャーナリストら=2日、東京都千代田区

知る権利追求 提訴も視野

 【東京】沖縄返還に至る過程で日米の政府高官が交わした「秘密合意議事録」など三通の行政文書について、県内外のジャーナリストや学者らが二日、外務と財務両省に情報公開請求した。原則として三十日以内に回答がある。「文書不存在」という回答が予想されており、請求者らは、行政処分取り消しを求めて東京地裁への提訴も検討している。

 請求した文書は、一九六九年十二月二日付で日米財務官僚が交わした「秘密合意議事録」と七一年六月十一、十二両日付で日米の外交官が交わした「秘密合意書簡」の計三通。具体的文書を指定して公開請求をしたのは初めてという。

 請求者の共同代表は、ジャーナリストの原寿雄さんと筑紫哲也さん、憲法学者の奥平康弘さんの三人。そのほか国家公務員法違反罪で訴追された元毎日新聞記者の西山太吉さんや我部政明琉大教授ら計六十三人が名を連ねた。

 沖縄返還をめぐっては、米側負担と定められた軍用地の原状回復補償費四百万ドルを日本側が肩代わりする密約など、複数の秘密合意があることが米側文書で裏付けられたが、日本政府は一貫して否定している。

 都内で行われた会見で、原さんは「日本のジャーナリズムとして放置できない問題。知る権利の新しい戦い方として情報公開請求をした」と説明。奥平さんは「日本の民主主義の根幹を問うものであり、政府が『不存在』という回答をしても、追及の手を緩めてはならない」と強調した。

 西山さんは「文書には日米の交渉責任者のサインがあり、存在しないと逃げることはできない。国民の主権を根本的に検証するものだ」と意義を語った。

 情報公開を請求した県内メンバーも二日、県庁記者クラブで会見を開いた。

 沖縄対外問題研究会の宮里政玄代表は「沖縄返還交渉も(海兵隊の)グアム移転も原理は同じ。沖縄が利用されている」と指摘。フリージャーナリストの土江真樹子氏は「沖縄で生きる私たちがまず密約を知る権利がある。沖縄の現状の基になる返還密約を明らかにしたい。多くの県民、国民の理解や支援を求めたい」と呼び掛けた。

 沖縄大学の新崎盛暉名誉教授は「米国は強引だが、一定のルールがあって何年後に情報を公開するが、日本政府は一切なく、外交姿勢に緊張感を欠いている」と政府の外交姿勢を非難した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-027-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

競技場整備に米軍難色/高校総体カヌー場

共同使用域常設認めず/宜野座

 【東京】二〇一〇年に県内で開催される高校総体で、カヌー競技が行われる宜野座村が、漢那ダム隣の日米共同使用地域(キャンプ・ハンセン)に常設の競技施設を整備する計画について、米軍が常設では認めない意向を示していることが分かった。

 計画は、ダムをカヌーレーンとして使い、ゴール地点となる共同使用地域には、記録を計測する高さ十二メートルの「決勝タワー」や観覧席、進入道路を建設。大会後、タワーは野鳥観察施設として活用する方針。しかし、大会後も活用できる常設ではなく仮設なら認めると米軍が難色を示しているため、整備に支障が出ている。

 同村の仲宗根勲副村長と県カヌー協会の下地幹郎会長(衆院議員)らは二日、関係省庁を訪ね、計画への理解と支援を要請した。

 下地会長らによると、外務省は「常設が造られるよう米側と交渉し努力する」と協力を表明。防衛省は「全面的に協力する。タワー建設費も基地交付金などを活用して予算を付けたい」と述べたという。

 仲宗根副村長は「今まで調整がはかどらなかったが一歩前進。大会に向け取り組む思いを強くした」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-027-1_003.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「円滑な推進」再確認/那覇軍港移設協で国・地元

 【東京】米軍那覇港湾施設(軍港)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖合への移設に関し、第十五回同港湾施設移設、第十五回同港湾施設移設受け入れ、第十四回県都那覇市の振興に関する三協議会が二日、防衛省で開かれた。国、県、那覇市、浦添市などの関係者が出席し、事業を円滑に進める方針を再確認した。

 移設協で防衛省は、那覇港湾施設の移設・返還に向けた基本検討を現在実施中で、本年度は代替施設の建設予定水域で埋め立てに必要な測量を予定していると説明。代替施設と民港、港湾計画との整合性を図りながら円滑な移設を進め、具体的事項については引き続き事務レベルで適切に対応する方針を確認した。

 受け入れ協では、防衛省と内閣府から、二〇〇九年度の浦添市の事業計画に関する予算を概算要求で計上したことなどが報告された。県都那覇市協では、内閣府から、奥武山公園の野球場整備など那覇市の振興に関する経費を〇九年度予算概算要求に計上したことなどが報告された。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-003-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

本部町「P3C」勝利集会/建設阻止祝う

 【本部】防衛省が本部町豊原に計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設断念を発表したことを受け、地元で反対運動を続けてきた住民らでつくるP3C阻止対策委員会(川上親友会長)は十三日、運動の拠点となった闘争小屋前広場で集会を開く。

 川上会長は「一九八八年の上本部中学校での反対集会から二十年。長かった戦いの締めくくりが勝利に終わったことに、喜びを感じ、安堵している。多くの方々の支援があればこそ。みんなで勝ち取った勝利を祝いたい」と参加を呼びかけている。

 集会は午後六時から。交流会も予定している。問い合わせ先は豊川区(元豊原区)事務所、電話0980(48)2351。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-026-1_005.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「司法の独立 放棄」/識者ら批判

問題意識共有に意義

 沖縄返還をめぐる「密約」の有無の判断に、司法は最後まで踏み込むことはなかった。外務省の極秘公電を入手し有罪とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)が、国に密約を認め謝罪を求めた裁判は、訴えを退ける判決が確定した。識者やジャーナリストらは「司法の独立を自ら放棄した」と批判。一方で、「現在の沖縄の基地負担とつながる密約が、本質的問題として認知された」と、意義を強調した。

 米側公文書により密約を裏付けるなど、日米交渉に詳しい我部政明琉球大学教授は、「地裁も高裁も最高裁も結局、門前払いで、実際の中身について議論はしなかったということだ」と批判。原告代理人の藤森克美弁護士は、「第三小法廷の堀籠幸男裁判官は、西山さんの刑事裁判の最高裁判決で判例解説を書いた当時の最高裁調査官。自分が書いた当時の解説と、その後に明らかになった米政府の公文書の内容を照らせば、当時の判決が誤判であったことは明らか」と指摘した。

 「西山さんの行動で、多くのジャーナリストが本質部分で問題意識を共有できたことは、有意義だ」。日本ジャーナリスト会議の亀井淳代表委員は力を込めた。裁判所に対しては失望感を示しつつ、「政府が密約を隠ぺいし、その負担を今も沖縄が背負っていることが、広く認知された。今後も真実を求める運動が展開されるだろう」と期待した。

 ジャーナリストの岡留安則さんは「裁判所と政府・与党のなれ合い関係、米側しか見ず国民を欺く外務省の体質を変えるには、世論、政治主導で大なたを振るう必要がある」と強調。しっかりした情報公開システムをつくる必要性を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-026-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

問題の本質 向き合わず/[識者評]田島泰彦上智大教授

 沖縄返還の「密約」とは何だったのかが一番に問われた裁判で、最高裁は真正面から事実に向き合わなかった。

 この国の本質にかかわる問題に、またも司法が目を背けた。

 この裁判には、西山太吉さんの名誉回復という個人的な問題にとどまらず、国会に提示された沖縄返還協定が、本当に政府の説明通りだったのかという重大なテーマが含まれていた。密約があったということになれば、国権の最高機関で唯一の立法機関たる国会に、うそが提示されたことになる。すなわち憲法違反だ。

 それを裁判所でなくしてだれが裁くか。その役割を自ら放棄してしまった司法の現実が、あらためて確認された結果と言える。

 沖縄返還をめぐる「密約」は、単なる疑いではなく、米国の公文書で何度も裏付けられ、何よりも当時の事務方の最高責任者だった吉野文六・元外務相アメリカ局長が密約を認める証言をしている。

 にもかかわらず、その事実を明らかにしなかった司法とは一体、何なのか。

 ジャーナリストら有志で行った密約に対する情報公開請求は、既に明らかになっている事実について政府に説明責任を求めるという新しい試みになる。

 この取り組みでさらに密約の実態が明らかになれば、今回の最高裁決定がいかに問題の本質に向き合わないでたらめなものであったかが、あらためて明らかになるだろう。(談、「沖縄密約訴訟を考える会」世話人)

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-002-1_005.html

 

2008年09月03日 沖縄タイムス 社説

[福田首相退陣表明(下)]

政治空白は許されない

 安倍晋三前首相に続いて今度は福田康夫首相が唐突に辞任を表明した。議院内閣制の下で最も厳粛な立場にある国政の最高責任者が、わずか一年の間に、続けて二人も、果たすべき責任を果たさずに政権を投げ出したのである。自公連立政権が完全に行き詰まった、と言うべきだろう。

 だが、自民党の中には、この事態を政治の深刻な危機だと受け止める感度が著しく欠けているように見える。

 自民党は辞任表明から一夜明けた二日、総裁選挙を十日に告示し、二十二日に投開票することを決めた。

 総裁選に複数の候補者を立て、華々しく選挙戦を戦うことによって有権者の耳目を自民党に集め、その余勢をかって、「選挙の顔になる総裁」の下で解散・総選挙に打って出る。そのような考えらしいが、有権者を甘く見るなよ、と言いたい。

 二代にわたって「職場放棄首相」を出した自民党の責任は極めて重い。

 総裁選によって自民党の新しい総裁が選ばれ、その総裁が首班指名で福田首相の後継に選ばれる。はっきり言ってこれは与党内の政権たらい回しである。

 衆議院では確かに与党が三分の二を超える圧倒的な議席を保持している。しかし、この議席は二〇〇五年九月の「郵政選挙」で得た議席だ。その後一度も総選挙の洗礼を受けないままに首相だけがコロコロ替わるのは、政権の正当性という点で問題が多い。

 この異常な事態を解消するためにもできるだけ早く総選挙を実施し民意を問うべきだ。

 福田首相が「党に迷惑をかけたくない」との一心から、タイミングを見極めて計算づくで辞任を表明したのは明らかである。

 福田首相は「新しい体制の下、政策実現を図らなければならない」と言っている。だが、新しい体制になったからといって「逆転国会」の現実が変わるわけではない。

 基本的な構図が変わらない以上、臨時国会も緊迫した波乱含みの展開になるのは避けがたい。インド洋での海上自衛隊の給油活動を継続するための衆院再可決に公明党が慎重姿勢を示しているだけになおさらだ。

 つまるところ、次期政権を選挙管理内閣と位置づけ、できるだけ早く解散・総選挙を実施する以外に混迷を打開する道はないのである。

 景気が後退局面に入り、経済運営が厳しさを増す中で、日本の政治はいよいよ「解散政局」に突入する。

 民主党が勝てば政権交代が実現する。自公政権が現有議席を減らし、過半数をかろうじて維持する結果になった場合、衆参両院のねじれ状態が解消されないまま、衆院での再可決も不可能になる。

 今後、政界再編の動きが顕在化するのは間違いないだろう。すでにその兆しが出始めている。

 警戒しなければならないのは、政治空白が長引き、肝心の国民生活が置き去りにされることだ。国政が停滞し、国民がそのしわ寄せを受けるようなことがあってはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-005-1_001.html

 

琉球新報 社説    

福田首相辞任 解散・総選挙で信を問え/無責任すぎる政権与党 2008年9月3日

 有為転変、急転直下の出来事に、国民の多くがあぜんとしたことだろう。「またか」との声も多かった。

 1年前、臨時国会で所信表明をした直後に辞任した安倍晋三前首相に次ぐ失態である。

連立内の対立鮮明に

 一国の首相が思い付きのように簡単に辞任する。安倍前首相は「健康」が理由だったが、福田康夫首相は理由も釈然としない。

 「唐突辞任」が2人も続くと日本の政治家の打たれ弱さが心配だ。ひ弱な国のひ弱な政治家、その代表がひ弱な首相である。

 原油高と物価高騰で国内景気が後退する中で、中小零細企業は政府の景気対策を最後のよりどころに踏ん張っている。

 従業員や家族を抱え、辞めるに辞められない企業経営者たちの目に「はい、辞めます」と簡単に政権を投げ出す首相は、どう映っただろうか。「無責任」のそしりは免れない。

 合従連衡の自公政権だが、中身は同床異夢の感だ。インド洋での給油活動継続、景気対策での定額減税など自公間の政策相違、対立、足並みの乱れが鮮明になってきた。

 連立を担う公明党が、首相方針に公然と異を唱え始めたことも首相退陣の決断を後押ししたとの見方もある。「呉越同舟」政権の限界も透けて見える。

 この時期の辞任に福田首相は「今が政治的空白をつくらない一番いい時期と考えた」と説明したが、堅白同異の言い訳にすぎない。一国の首相が突然辞任して空白が生まれないわけがない。

 福田内閣は発足直後から政治資金、年金記録、C型肝炎、防衛省不祥事、揮発油税の暫定税率問題、日銀正副総裁人事の難航など、次々に噴出する政治課題の大波に大揺れに揺れ続けてきた。

 後期高齢者医療制度への批判も福田内閣の支持率低迷の原因だ。原油高で急速に冷え込む景気に効果的な対策を打ち出せない内閣に、国民の不信感も増した。

 人心一新を目指し1カ月前に断行した内閣改造も直後の農相事務所費問題が浮上しイメージダウン。安倍前内閣の末期と同じ様相となった。目前の臨時国会でも「ねじれ国会」の厳しい運営と、野党からのスキャンダルと政策批判の集中砲火で「火だるま内閣」となるのは必至だった。

 いずれにせよ任期途中で政権を突然投げ出す無責任首相を生み続ける自公政権は、すでに政権担当能力を喪失している。

 総選挙で国民の信任を受けることなく党内選挙で就任した首相だ。辞めるときも国民への責任はかけらも感じないであろう。

 そもそも選挙なしで政権を党内でたらい回しにする。密室政治と同じだ。議会制民主主義が制度として正しく機能していない。今度こそ早期解散・総選挙で、しっかりと民意を問うべきだ。

内閣に必要な使命感

 福田首相の辞任表明を受け、自民党は次の首相選びとなる総裁人事に着手している。現段階では麻生太郎幹事長が有力視されている。

 加速する「年内総選挙」の流れを踏まえ、小池百合子元防衛相への待望論もあると聞く。

 福田首相の突然の辞任に仲井真弘多知事は「基地問題はじめ経済振興等に配慮してもらった」と評価した。だが、仲里全輝副知事は「経済対策や原油高騰など政府の緊急かつ重要な課題が山積する中、なぜ今の時期に辞任するのか理解できない」と率直に語っている。無責任首相に格別の配慮は無用だ。

 次期首相に求めるのは責任感だ。どんなに困難でも途中で政権を投げ出さず、国民と最後まで苦難を共に乗り切る。強い使命感を持った首相の誕生を望みたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135873-storytopic-11.html

航跡調査/普天間・米軍機離着陸ルート 米が最終報告/原潜放射能漏れ、バルブから染み出す 防衛省、「普天間」調査2億円/概算要求 米大統領選、米軍「変革」で沖縄再生を など 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(8月28日から31日) 

2008年08月28日【朝刊】

きょうから航跡調査/普天間・米軍機離着陸ルート

沖縄防衛局が設置した航跡調査のアンテナ(中央)とGPS(右)=27日午後、北中城村・大城配水池

 【中部】防衛省は二十八日から、米軍普天間飛行場の場周経路の航跡調査を始める。沖縄防衛局が二十七日、宜野湾市や北中城村など同飛行場周辺の五市町村に観測装置を設置。九月三日まで、衛星利用測位システム(GPS)などを使用し同飛行場を離着陸する米軍機の飛行ルートを二十四時間観測する。これに合わせ、宜野湾市も同期間、市内二カ所で目視調査を行う。

 場周経路の見直しは、同飛行場周辺の市街地への米軍機墜落防止を目的に、二〇〇七年八月に日米で合意した。しかし、宜野湾市は日常的な「はみ出し飛行」を指摘。国は今月五日の県との危険性除去に関するワーキングチームで航跡調査の実施を発表していた。

 観測装置が設置されたのは宜野湾市、北中城村、北谷町、浦添市、西原町の五カ所。報道陣に公開された北中城村の大城配水池では、タンクの上にGPSと航空機からの電波を受信するアンテナの二本が設置された。

 五カ所の観測地の範囲内で米軍機が飛行した場合、航空機が発する電波を受信。衛星を通して位置を割り出し、飛行ルートを測定する。

 調査結果の公表について、沖縄防衛局は「調査データは国と県のワーキングチームへの提供を考えている。その他への公表は今のところ予定していない。調査終了後に検討したい」としている。

 宜野湾市は、同飛行場の南北に位置する同市野嵩と嘉数で目視調査を行う。調査時間は午前九時から午後十時までで、市職員が米軍機の機種や飛行ルートをチェック。防衛局の調査結果を入手次第、目視調査の結果と照らし合わせるという。

 同市基地政策部の山内繁雄部長は「国の調査は、市の要望が少しずつ実現しているということで、歓迎したい。通年の調査の話もあるが、調査だけでは意味がない。結果を基に実現性のある危険性除去策を求める」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-M_1-002-1_001.html

 

2008年08月28日【朝刊】

北京でベストを 沖・米選手誓い/基地内で代表ら交流

米国代表選手と交流する日本代表の上与那原寛和さん(右)や県内の競技者=27日午後、嘉手納基地リュウキュウミドルスクール

 九月六日開幕の北京パラリンピックに向け、米軍嘉手納基地で合宿している陸上競技の米国代表六人と、県内の障害者アスリートが二十七日、基地内のリュウキュウミドルスクールで交流した。

 陸上の上与那原寛和選手(37)や車いすラグビーの仲里進選手(31)ら県内の北京出場組も参加。互いの調整具合を聞いたり、米国側が代表チームのバッチやサイン入りポスターを贈る場面もあった。

 上与那原選手は、共に初出場でフルマラソンなど三種目で競うスティーブン・トヨジ選手(22)に「カーブや障害物があって難しいコースだが、パンクや事故がないよう一緒に頑張ろう」とエール。

 仲里選手は「北京に行くんだという気持ちが高まった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-M_1-028-1_001.html

 

琉球新報 社説    

放射能「密約」 国民を危険にさらす行為だ 2008年8月28日

 「飲酒運転がばれるから、検知器は50メートル以内では使わないで」。そんな申し入れを、警察が内緒で受け入れていたら、どうだろうか。犯罪を野放しにし、国民を危険にさらす背信行為として糾弾されるべきだ。

 実際の事件は飲酒運転の話ではない。もっと重大な米海軍の原子力艦船の放射能モニタリング(監視)での日米両政府の「密約」だ。

 米原潜など日本に寄港する米原子力艦船については、寄港時に大気中の放射能の有無を確認する空中モニタリング(監視)の実施が義務付けられている。

 だが、その空中モニタリングの際に「(原子力艦船から)50メートル以内では行わない」との密約を、日米が1971年11月と12月に交わしていたことが分かった。

 「ドーキンズ・メモ」と呼ばれる「秘密口頭了解」の密約は、当時の米国務省東アジア局日本課のドーキンズ氏が交わしたものだ。

 メモには「沖縄密約」でも知られる外務省の「ミスター密約」の異名も持つ吉野文六アメリカ局長らの名前も出てくる。

 密約締結は一つの「事件」がきっかけだ。ドーキンズ・メモによると、69年11月に米原潜サーゴが横須賀に寄港した際に、モニタリングのため5メートルまで接近したところ、「放射能の増加が記録されたが、離れると数値は下がった」という。

 放射能漏れと思われる事態だ。だが日米政府が取った対応は「50メートル以内でモニタリングを行えば、原子力推進装置の秘密データをらせることになる」という軍事機密保持を理由にした日本の放射能監視業務の「骨抜き化」だった。

 米公文書には「極秘 無期限」の判が押されていたが、米政府が解禁。昨年、国際問題研究者の新原昭治氏が入手し、密約の存在が表面化した。

 信じ難いことには米大使館が日本政府から「絶対に秘密を守るようにとの訓令を受けた」との記述もある。放射能漏れの隠ぺいに手を貸し、国民を危険にさらす密約を結び秘密厳守を米に求める。その上、米国が密約を開示してもなお「密約は存在しない」と政府は否定し続けている。

 今年になって米原潜の沖縄寄港が頻繁化している。寄港した原潜の一部は、放射能漏れを起こしながら2年間も寄港を繰り返していた。放射能漏れは米側が自発的に日本に通報し初めて表面化した。

 政府の放射能チェック体制のずさんさにはあきれ果てる。9月下旬には被爆国日本に、初の原子力空母ジョージ・ワシントンが配備される。

 政府は国民を欺く「密約」の存在を認め、その上で即刻破棄し、原潜や空母艦内への立ち入りチェックも含め、確実で効果的な放射能監視体制の確立を急ぐべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135665-storytopic-11.html

 

2008年08月28日【夕刊】

ヘリ航跡 調査開始/国と宜野湾市

 【宜野湾】国が観測装置を使用して米軍普天間飛行場の航跡調査を始めた二十八日午前、宜野湾市も目視調査を開始した。同市職員が午前九時から宜野湾市野嵩の宜野湾市民会館、嘉数高台公園の二カ所から双眼鏡やビデオカメラを使用し、米軍機の飛行ルートをチェックした。衛星利用測位システム(GPS)などを使用した航跡調査を行う沖縄防衛局も嘉数高台公園に職員を配置し、目視調査を行っている。県も担当職員が同所での国の調査開始を確認した。

 宜野湾市の調査期間は国と同じく九月三日までの七日間。午前九時から午後十時まで待機し、確認した米軍機の機種や飛行ルート、時間を地図付きの調査用紙に記入。防衛局が実施中の航跡調査の結果と照らし合わせる予定。県の確認作業は二十八日だけという。

 この日は午前九時十五分ごろにKC130空中給油機が南向けに離陸。その後、CH53大型輸送ヘリやCH46中型輸送ヘリなどが飛行場内でホバリングを繰り返した。

 同市職員は「米軍が調査を意識しているのか、いつもより高い高度を取って海側へ離陸していた。期間中は飛行ルートのチェックと同時に、市民から苦情の多い夜間の飛行実態も把握したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-E_1-005-2_003.html

 

琉球新報 社説    

邦人殺害 再考したいNGOの安全 2008年8月29日

 国際貢献に汗を流してきた若者が、凶弾に倒れた。あまりにむごすぎる犠牲である。新たな犠牲を生まないためにも、「安全」に対する過信はないか、危険に対する警戒は十分か、あらためて確認したい。

 アフガニスタン東部ジャララバード近郊で、非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(本部・福岡市)の伊藤和也さんが、旧タリバン系武装勢力とみられるグループに拉致、殺害された。

 地元に溶け込み、真っ黒に日焼けし、荒れ地となったアフガニスタンで、20キロの用水路建設など大事業に取り組んできた。同会は第1回沖縄平和賞も受賞している。

 住民と一緒に汗を流す。その中で、地元の厚い信頼も得てきた。

 それが、何の因果で拉致殺害されなければならなかったのか。伊藤さんの無念を思うとたまらない。

 地元警察に拘束された拉致殺害の実行犯らは「アフガンの治安悪化を印象付け、外国人を追い出したかった」と供述しているようだが、それが理由だとするならば、あまりに軽率で浅はかな行為だ。

 「われわれの活動を知っていれば、あり得ないこと。活動を知らない人物がやったんだろうとしか言えない。悔しい」とのペシャワール会事務局長の福元満治さんの言葉に、無念さも募る。

 今回の拉致殺害事件で気になるのは安全に対する認識や対応など海外貢献での危機管理の甘さだ。

 同会現地代表の中村哲医師は「アフガンは今、ほとんどの地域が無政府状態にあり、いずれ日本人が狙われる」との危険性を指摘していた。「夏までには日本人全員を撤退させたい」としていたが、伊藤さんらの撤退は先延ばしになった。そして心配が現実になった。

 治安悪化の裏には、民間人を巻き込む米軍の空爆に対する反米感情の高まりに加え、インド洋での海上自衛隊による給油活動、自衛隊の本土派遣検討などへの対日感情の悪化、その結果としての「日本への報復」も指摘されている。

 日本の軍事的貢献の在り方に問題はなかったか。民間支援団体に安全に対する過信はなかったか。いま一度、検証と検討を急ぎたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135697-storytopic-11.html

 

2008年08月30日【朝刊】

米が最終報告/原潜放射能漏れ、バルブから染み出す

 【東京】在日米国大使館は二十九日、外務省に、米原子力潜水艦ヒューストンの冷却水漏れ事故に関する調査結果を報告した。事故原因について「閉じられたバルブの一つから、放射能を含む水が染み出した」と説明。再発防止に向けては「ヒューストンが再出港する前に、バルブの厳格な性能基準が満たされることを確実にすべく措置を講じている」と述べるにとどめた。原因などの詳細について「原子力潜水艦の設計や構造、米軍の運用にかかわることは安全保障上の理由から明らかにできない」と説明。「さらなる情報提供を行う予定はない」としている。

 放射能を含む水の染み出しについて「海軍の厳格な設計基準を上回るもので、こうした例は過去五十年以上存在しない」としながらも、「日本への寄港の際に放出された可能性のある放射能の総量は、一回のX線胸部撮影から受ける放射能の量を下回る」などと安全性を強調している。

 同大使館のズムワルト首席公使は同日、外務省の西宮伸一北米局長に「すべての原子力艦について具体的な措置、厳格な基準を維持することをあらためて確約する」と述べた。外務省は「政府としては今回の報告で、米原子力艦の安全性が再確認されたと考えており、引き続き安全性確保のため万全を期する」としている。

 米側の最終報告を受け、仲里全輝副知事は同日、西宮局長に口頭で「微量であっても、放射能を含む冷却水の漏洩は県民に大きな大きな不安を抱かせる」と指摘。これまで以上に再発防止に万全を期すよう求めた。

 知念恒男うるま市長は「従来の発表と何ら違いはなく、原潜の入港を拒否する地元の意見が聞き入れられていない。安全性などについて、もっとはっきりさせてほしかった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-30-M_1-001-1_002.html

 

2008年08月30日【朝刊】

防衛省、「普天間」調査2億円/概算要求

 【東京】防衛省は二十九日、二〇〇九年度予算の概算要求を正式に決定した。沖縄関係では米軍普天間飛行場の航空機の飛行状況を年間を通して調査する経費約二億八百万円や、嘉手納基地の運用実態を調査する経費約千四百万円を要求。泡瀬ゴルフ場の移転工事完了を目指し、四十二億円余を計上した。

 そのほか、那覇市の陸上自衛隊第一混成団の旅団化に約二十五億円。糸満市与座岳に新型地上警戒管制レーダー(FPS―5)を整備、運用開始するため、二百二億円をそれぞれ求めた。普天間飛行場のヘリコプターの飛行状況をめぐっては、宜野湾市が日米合意した場周経路を守っていないと指摘。これを受け、今月二十八日から観測作業が始まっている。本年度は九月三日までの七日間、外部委託して実施しているが、来年度は航跡測定器を購入し、年間を通じて実施できるようにする。

 嘉手納基地の調査は、沖縄防衛局の嘉手納町移転に伴い、独自で運用状況を確認する必要があるとの判断から、防衛局が入居するビルの屋上にカメラを設置する。

 米軍再編関係では、在沖米海兵隊のグアム移転に関連し、日本が直接的に財政支援する司令部庁舎などの整備や民活事業による米軍家族住宅、インフラなどの整備事業を開始。事業推進を強化するため、同省にグアム移転事業室(仮称)を新設する。

 防衛省の防衛関係費は四兆八千四百四十九億円(前年度予算額比2・2%増)、SACO関係経費は百八十億円(前年度予算と同額)、米軍再編関係経費の地元負担軽減分は百九十一億円(同)。防衛関係費の増額分の半分は、原油高による油購入費の増大によるもの。

沖縄関係の総額1・7%増1608億円

 【東京】防衛省の二〇〇九年度予算概算要求で、基地対策などの推進に係る経費の沖縄関係分の総額(歳出ベース)は前年度比1・7%増の千六百八億五千八百万円だった。

 生活環境施設などに補助する民生安定や騒音防止対策など基地周辺対策経費は同12・5%減の百三十七億六千百万円。那覇市の奥武山球場の整備工事が〇九年度で完了するため。

 補償経費関係は、軍用地の借料に同1%増の約九百七億八千百万円を要求。軍用地の返還に伴う借り上げ面積は減少したが、借料の単価アップを盛り込み、ほぼ前年度並みとなった。

 米軍が公務で高速道路を使用する場合の通行料を肩代わりする経費は一億八千五百万円を要求。

 基地従業員関係は同0・8%減の四百六十七億六千四百万円を要求。在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定改定に合わせ、〇九年度から格差給などが廃止されるため減少した。

 提供施設の整備は、同五・八倍の二十六億六千三百万円、提供施設の移設は86・2%増の四十二億二千二百万円を計上。それぞれの大幅な伸びは、過年度の契約による歳出によるもの。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-30-M_1-002-1_001.html

 

琉球新報 社説    

米大統領選 米軍「変革」で沖縄再生を 2008年8月31日

 米大統領選挙は28日に民主党がオバマ上院議員を大統領候補として正式に指名。共和党も29日に大統領候補のマケイン上院議員が副大統領候補にペイリン・アラスカ州知事を選出。9月1日には共和党大会も予定され、米大統領選は11月の本選に向けて一気に加速する。

 地理的には遠い米国だが、国内最大の米軍基地を抱える沖縄にとって最も身近で最も影響力のある国である。次期米大統領がどのような政策を持っているか。県民の未来にも大きな影響を与える。

 民主党の正式な大統領候補となったオバマ氏は28日夜行われた指名受諾演説で、8年間のブッシュ共和党政権の失策を厳しく批判、さまざまな変革による「米国の再生」を打ち上げた。

 オバマ氏の演説は、25日に発表された米民主党の党綱領に沿っている。党綱領にはイラクからの16カ月以内の米軍戦闘部隊の完全撤退、アフガンには戦闘部隊二個旅団を増派、国防に関しては陸軍6万5000人、海兵隊2万7000人の増強計画が盛り込まれている。

 アジア政策では「日本など同盟国との強固な関係維持が基礎」と強調しているが、軍事増強路線が色濃い民主党のオバマ氏が大統領に選出されても、在沖米軍基地の整理縮小は望めそうにもない。

 だからと言って、あきらめるわけにはいかない。米国はブッシュ政権下で、巨額の赤字財政と景気後退の二重苦にあえいでいる。

 アフガン、イラクと続く戦争で軍事費は膨れに膨れ、年間50兆円を超える巨額になっている。民主、共和を問わず次期大統領にとって財政赤字の削減は重要課題だ。

 ノーベル賞経済学者でコロンビア大学のジョセフ・E・スティグリッツ教授は「戦争は経済を上向かせない」として、イラク戦費に3兆ドル(約327兆円)を投じたブッシュ政権を断罪している。

 沖縄が基地依存経済からの脱却を目指すように米国も軍事経済からの脱却が課題だ。

 次期大統領には、脱軍事、脱戦争経済も「変革」の主要課題と位置付け、米軍基地を抱える沖縄の再生にも思いをはせてほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135761-storytopic-11.html

普天間代替・沖合移動、林防衛相、困難さ強調 海軍と初、図上訓練/日米合同 シュワブ立ち入り要請/市民団体 対馬丸犠牲者慰霊祭/16人に卒業証書 陸自第1混成団を増強/防衛省 海上保安庁11管44人を増員/尖閣警備など強化 など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(8月21日から27日)

2008年08月21日【朝刊】

「合理的理由なし」/普天間代替・沖合移動

林防衛相、困難さ強調

 就任後、初めて沖縄を訪れ、仲井真弘多知事や島袋吉和名護市長らと会談した林芳正防衛相は二十日午後、那覇市内のホテルで会見し、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設位置の沖合移動について、「合理的な理由なしに変更は困難」と繰り返し述べた。

 林防衛相は、沖縄の印象について「在日米軍の四軍が集中しているとあらためて感じた」と語った。その上で、「米軍再編はチャンス。この機会をきちっとつかまえて、実現する努力をしていかなければならない」と強調した。

 仲井真知事や島袋名護市長との会談については、「一緒に仕事をするための関係を築くコンセンサスを得られた。同じ姿勢でのスタートが切れた」と自信を見せた。

 島袋名護市長との会談は同日午前、冒頭以外は非公開で行われた。島袋市長は沖合移動のほか、地元企業の優先発注、細切れ返還が決まっているキャンプ・ハンセンの一部土地の継続使用など四項目を要望。防衛省によると、市長は「使用協定を精力的に協議したい」とも述べたという。

 島袋市長は会談後、「ワーキングチームができた。より具体的に互いの言い分を認め合いながら進めて、移設協議会で確認し合うことになると思う」と期待をにじませた。

 北部首長との昼食懇談会では、儀武剛北部市町村会会長(金武町長)が基地従業員について、北部地域からの優先雇用などを求めた。

 林防衛相はそのほか、普天間第二小学校周辺や嘉数高台公園から同飛行場や飛来したFA18戦闘攻撃機の離陸を視察。同飛行場の危険性除去に伴う飛行航測調査や四年前にCH53が墜落した沖縄国際大学の位置などについて、真部朗沖縄防衛局長の説明を受けた。

 伊波洋一宜野湾市長との会談を設定しなかったことについて、林防衛相は会見で「時間の制約もあり、至らなかった。あらゆる機会をとらえて、いろいろな方と意見交換することは大事。今後考えていきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-21-M_1-002-1_002.html

 

2008年08月21日【朝刊】

組織の立て直し確認/社大党大会

 社大党(喜納昌春委員長)は二十日、那覇市内の教育福祉会館で、第七十二回定期大会を開き、平和憲法の堅持、沖縄特別自治州に向けた道州制確立、米軍基地の整理縮小・撤去、普天間飛行場の即時撤去と名護市辺野古への新基地建設反対など十六項目の重点政策を決めた。

 六月県議選は公認当選二人という過去最低の結果になった結党以来の危機を迎え、党再生に向けた政治活動の強化、組織の立て直しを確認した。

 役員体制は、喜納委員長が再任、書記長には前浦添市議の当山勝利氏を選んだ。副委員長は参院議員の糸数慶子氏と、県議の大城一馬、比嘉京子両氏を選出した。

 喜納委員長は「自公の『改革』の名の下で国民に痛みを強要し、格差が拡大した。結党以来、最大の危機を迎え、土着政党を担うために、県民とともに党勢を拡大強化する」と述べた。

 党活動では、那覇市長選や西原町長選、浦添市長選などの首長選挙の取り組み強化、支部との連携強化などを挙げた。

 基本政策として「自立する沖縄社会の形成」を打ち出し、(1)医療保障制度の改悪反対、財源確保(2)年金記録不備問題の解決(3)後期高齢者医療制度の廃止(4)子育て環境の拡充―などを掲げた。基地問題は、最終的な米軍基地ゼロを目指し、返還に向けて「沖縄米軍基地返還基本法案(仮称)」の制定を提起した。

 大会宣言では、「後期高齢者医療制度の強行や燃料高騰などで、あらゆる産業、国民生活は混乱を来し、離島県の本県の苦悩は極めて厳しい。福田自公政権への不安、反撃は高まり、解散総選挙は秒読み段階」と自公政権を批判。「沖縄の自治、自立、平和を目指し、共生、平等などヒューマニズムを基調とした政策を実行し、土着政党の可能性と展望を切り開く」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-21-M_1-002-1_001.html

 

2008年08月22日【朝刊】

海軍と初 図上訓練/日米合同

 米軍機の墜落事故を想定した日米合同の図上訓練が二十一日、米海軍キャンプ・シールズ内の海軍会議室で行われ、日米の関係機関約六十人が参加した。これまで空軍や海兵隊との訓練は三度実施したが、海軍と行うのは初めて。

 図上訓練を基に来年一月か二月をめどに実動訓練を行う予定。

 訓練の冒頭が報道陣に公開され、在沖米海軍艦隊活動司令部のマイケル・ビズカラ司令官(大佐)は「今後の協力体制を強化するため、(訓練は)歴史的に意味がある」とあいさつ。「初期対応に携わる地元との連携を日米双方が理解するのはとても重要だ」と述べた。

 訓練はうるま市のホワイトビーチ内で米海軍のボート同士が接触事故を起こし負傷者が発生。救助するため同ビーチから離陸した海軍所属のヘリコプターが南原漁港周辺に墜落し、搭乗員ほか飛散物で地上の地元住民が負傷、駐車中の車両が損傷したと想定した。

 日本側の代表者として、出席した萱嶋満津保内閣官房沖縄危機管理官は終了後、県庁で記者会見を開き、通報連絡や消火、救出活動、立ち入り規制など一連の初動対応を日米双方で確認したと説明。「相互理解と信頼を深めることができた」と述べた。

 日本側は「搭乗人員や燃料などを搭載している危険物を迅速に伝えてほしい」と要望。米軍側は事故発生現場などの情報を「早く伝えてほしい」と求めたという。萱嶋氏は「海軍は消防隊を持っていないので、海兵隊や空軍の連携が必要。軍が二つ、三つになるので、実際に(地元の)警察や消防とどれだけ迅速に連携できるか、実動訓練で検証していく」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-22-M_1-002-1_002.html

 

2008年08月22日【朝刊】

シュワブ立ち入り要請/市民団体

 ジュゴンネットワーク沖縄事務局長の土田武信さんらは二十一日、沖縄防衛局を訪れ、名護市のキャンプ・シュワブで進む造成工事や埋蔵文化財調査の検証を目的に、市民三人と十二の市民団体の代表者の立ち入り許可を要請した。

 同局は受理する窓口が決まっておらず調整中として、申請書の受け取りを拒んだ。土田さんらは「粘り強く交渉したい」と話した。

 土田さんらは日米合同委員会の合意事項に基づき、二十人以内で申請日から十四日後の九月十七日に立ち入りたいと要望。市民団体の米軍施設への立ち入り申請は珍しいという。

 同局報道室の島尻明朝室長は土田さんらの要望について、防衛省や外務省沖縄事務所、在日米軍、現地米軍間で調整していると説明。調整中なので受け取れないと繰り返した。

 さらに、造成工事の現場視察について、同局管理部移設整備室の豊里利行室長補佐は「事業者として、作業員など関係者以外の立ち入りは認められない」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-22-M_1-028-1_005.html

 

2008年08月22日【夕刊】

沖縄戦直後の日常写す/米兵の孫87枚寄贈

 沖縄戦中から終戦直後の約一年間、米海軍の工兵隊員として沖縄に滞在したハロルド・フォーセットさん(享年65)が所有していた写真八十七枚を、ハロルドさん(40)の孫のスコットさんが二十二日午前、糸満市の県平和祈念資料館(宮城智子館長)に寄贈した。

 炊き出しを待つ人々、ござを編む老人、破壊された軽便鉄道や建物、整地される飛行場―。ハロルドさんがプライベートで撮影したとみられる写真には、戦後の収容所での生活や読谷飛行場の建設風景などが収められ、資料的価値が高い。

 ニューヨーク出身のハロルドさんは一九四五年三月初旬に沖縄に到着。四六年一月まで飛行場建設の任務に就きながら、趣味のカメラで本島内を撮影した。

 ニュージャージー州で沖縄空手、古武道道場を経営するスコットさんは、沖縄をテーマにした写真集も制作した。「沖縄の人や歴史、文化を知れば知るほど尊敬の念がわく。沖縄を含めた日本と米国は大いに協力し合うべきだ」と、写真の活用に期待した。

 宮城館長は「戦後混乱期の貴重な画像資料」と感謝した。

 同館は戦後の復興をテーマにした特別企画展(十月十日―十二月二十一日)で写真の一部を公開する。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-22-E_1-001-2_001.html

 

2008年08月23日【朝刊】

対馬丸犠牲者慰霊祭/16人に卒業証書

 一九四四年八月二十二日に米潜水艦に撃沈された疎開船「対馬丸」の犠牲者の慰霊祭が二十二日、那覇市若狭の「小桜の塔」であった。

 慰霊祭に続き、命を落とした甲辰国民学校六年生への卒業証書授与式が行われ、十六人の遺族に証書が手渡された。

 卒業証書は、四五年春に卒業予定だった同窓生たちが九一年に作成。対馬丸で犠牲になった三十三人の証書は同級生の大城正樹さん(76)が長年保管していたが、昨年末、対馬丸記念会に寄贈された。

 慰霊祭の後に行われた授与式では、義父が同校教師だったという同会の高良政勝会長(68)から、名乗り出た十六人の遺族に証書が手渡された。

 高江洲清一さんの証書を受け取った妹の清子さん(70)は「兄の名前が呼ばれたとき、たまらない気持ちになった」と涙を流した。二十二年前に亡くなった母カメさんはことあるごとに「自慢の息子だった」と振り返り、暇さえあれば慰霊塔に足を運んでいたという。「母が生きていたら、この証書をどんな思いで受け取っただろう。これから平和の礎へ行き、兄に『卒業』を報告します」と話した。

 甲辰国民学校は現在のパレットくもじ(那覇市久茂地)付近にあったが、沖縄戦の前に日本軍の兵舎として接収され、そのまま廃校となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-23-M_1-026-1_004.html

 

2008年08月24日 沖縄タイムス 社説

[インド洋給油継続]

首相の「約束」は軽率だ

 国の根幹にかかわる外交が国会や与党内の手続きもなしに進められようとしているのだろうか。福田康夫首相は七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)に合わせて行われた日米首脳会談で、インド洋での海上自衛隊による給油活動の来年一月以降の継続を「約束する」とブッシュ米大統領に明言したという。

 福田首相は、給油活動の根拠となる新テロ対策特別措置法を来年一月の期限切れ以降も継続させる方針を米大統領に「約束」していたことになる。しかも、九月中旬とされる臨時国会召集の二カ月前にである。

 新テロ特措法は、今年一月に参院で民主党などの反対多数で否決され、その後衆院で出席議員の三分の二以上の賛成多数で再議決、成立した。

 国論を二分した法案の取り扱いは慎重の上にも慎重を期さねばならないはずなのに、福田首相は国会審議はおろか、与党内の調整すら終わっていない法案の継続を米大統領に約束していたことになる。

 事実だとすれば、福田首相の「約束」は国会軽視、さらに言えば国民無視と言わざるを得ない。新テロ特措法の継続が重要と考えるなら、国会での徹底した真摯な議論が先だ。他国の大統領との約束を優先し、国会審議や国民への説明を後回しにしようとするのは本末転倒で、とても理解できない。

 福田首相は、早急に日米首脳会談の内容をつまびらかにし、真相を明らかにすべきだ。

 米政府がインド洋での給油活動継続に強い関心を寄せていることは、シーファー米駐日大使が二十日、麻生太郎幹事長を自民党本部に訪ね、活動継続を要請したことからもうかがえる。

 シーファー大使は会談後、記者団に「日本の給油活動は日米同盟だけでなく、日本と国際社会の関係でも重要だ」と述べ、新テロ特措法改正法案の臨時国会での成立に強い期待感を示したという。

 他国の法案成立にここまで期待する背景には、日本のインド洋での給油活動が米軍の行動に欠かせなくなっていることを意味する。

 新テロ特措法改正案の論議は、インド洋で進む海上自衛隊と米軍との一体化など、憲法や国の安全保障にかかわる重要で複雑な問題を含んでいる。

 国会は、首相の「約束」の真相究明と平行し、十分に法案審議を尽くすべきだ。

 国民は、高騰する物価高に苦しみ、景気低迷で日々の生活に不安を抱いている。共同通信社の世論調査では福田改造内閣が優先して取り組むべき課題として国民の七割が、年金など社会保障、景気・雇用、格差問題を挙げている。

 福田首相は今月一日の内閣改造にあたって「物価高、景気低迷を解決する決意だ」と強調し、「安心実現内閣」と位置付けた。

 それなら、臨時国会では国民の暮らしを最優先に、具体的な対策を示すべきである。不用意な言動での混乱や審議への影響はあってはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-24-M_1-005-1_001.html

 

琉球新報 社説    

不発弾事業 処理費の全額国負担は当然 2008年8月26日

 63年前の沖縄戦で日・米両軍が使用した爆弾、砲弾類は20万トンといわれ、うち地下に埋没した不発弾は約1万トンとみられている。未処理不発弾はまだ2300トン存在すると推定されている。

 沖縄戦の「負の遺産」は今も県民生活に大きな影響を及ぼしている。その意味で沖縄の「戦後」はまだ終わっていない。

 不発弾対策に関しては2つの制度がある。探査・発掘事業のため内閣府が9割補助する「不発弾等処理交付金」と、総務省が特別交付税として5割を補助する「不発弾処理事業」だ。残り半額は当該市町村の負担で、自治体財政を圧迫している。

 不発弾が見つかった場合、市町村は陸上自衛隊に撤去要請を行う一方、住民の安全のため、不発弾の周辺に土のうを積み、住民への広報、処理時の住民の避難、交通規制などの対策を講じる。

 それらに要した費用は、2003年度以降は2000万円前後で推移している。それを県市町村課を通して、総務省へ申請。半額が特別交付税として支出される。

 これまでも県や県市長会、県町村会は処理事業を全額国庫負担で行うよう国に要請してきたが、先送りされてきた。

 やっと国が重い腰を上げた。沖縄県だけの特例として、政府がほぼ全額負担する制度の創設を検討しているという。

 09年度の概算要求で、内閣府が9割補助している「不発弾等処理交付金」を「処理事業」にも充てるよう2000万円増額(計4億6000万円)して盛り込む。一部、自治体負担も残す方向だが、それでも自治体負担はだいぶ軽減されることになるという。

 10年度以降は、制度化を目指して関係省庁間で検討を進めるという。遅きに失した感はぬぐえないが、検討だけで終わることなく実現してもらいたい。

 不発弾事故では1974年、那覇市小禄の下水道での排水工事中に爆発し、園児ら4人が死亡、34人負傷し、家屋の全半壊は46棟に上り県民を震撼(しんかん)させた。

 それ以降も伊良部町(75年、現宮古島市)や那覇市長田(87年)、伊江村東江上(89年)などで3人が死亡、10人余が負傷する事故が発生している。

 今回の国の方針に、南部市町村会会長の城間俊安南風原町長は「国が理解を示してくれたこと」を歓迎する。伊波洋一宜野湾市長は「当然の処置だ」とした上で、「(市町村の)負担がなくなる仕組みをつくり上げてほしい」と求めた。

 不発弾処理事業に係る新制度を創設し、全額国庫負担とするのは当然である。だが、それにより他の沖縄関連予算の規模を縮減することがないよう政府には求めたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135602-storytopic-11.html

 

2008年08月26日【夕刊】 政治

陸自第1混成団を増強/防衛省

300人増 2100人体制に/唯一の離島対応型

 【東京】防衛省は二十六日、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)を二〇〇九年度中に「第一五旅団」に格上げし、定員を約三百人増強、約二千百人体制とする方針を固めた。関係予算を〇九年度予算概算要求に盛り込む。事態対処能力を向上させるため、混成団の混成群を廃止して普通科連隊を新編する。そのほか、敵情を視察する偵察隊や化学防護隊もそれぞれ新編するなど、大幅に組織を改編する。

 第一混成団の旅団化は、〇四年に閣議で決定された中期防衛力整備計画(〇五―〇九年度)に基づく措置。

 第一混成団は「離島タイプの即応近代化旅団」に変容。島しょ侵攻への対応が重視される中、「離島タイプ」と位置付けられる国内唯一の旅団となる。

 機動性の向上を図るため、軽装甲機動車、高機動車を新たに導入。そのほか、航空運用能力を向上させるため、現有の航空機の数は維持しながら、待機体制を強化する方針だ。

 旅団化をめぐって〇八年度は、陸上自衛隊那覇基地内に旅団の中枢機能を果たす司令部庁舎のほか、隊舎を建設中。

 県内では一方で、航空自衛隊が那覇基地の旧型主力戦闘機F4部隊を茨城県百里基地のF15部隊と入れ替える計画もある。〇八年度は施設整備と整備機材の取得が進められており、年度末にも那覇基地へのF15移駐が始まる見通しだ。

 第一混成団の旅団化や那覇基地のF15配備は、軍備力を急速に増強させている中国などをにらんだ「西方シフト」の象徴的な動きといえる。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-26-E_1-001-2_001.html

 

2008年08月26日【夕刊】

国・県に遺骨鑑定要請/遺族の会

 那覇市真嘉比で発見された日本兵とみられる遺骨や複数の遺品について、県外の遺族でつくる真嘉比壕戦死者遺族の会(秋山格之助代表)は二十五日までに、厚生労働省と県に対し、遺骨のDNA鑑定と、遺品に記された名字などから遺族を特定し、返却するよう求める要請書を提出した。

 厚労省援護企画課外事室は「発掘状況など県と情報交換しながら今後の方針を決めたい」とし、DNA鑑定や遺品調査を行うかどうかを含めて「検討中」とした。県福祉・援護課は「国の方針が決まってから対応したい」と話した。

 秋山代表は「民間では調査に限界がある。高齢化している遺族の気持ちを考えて、早急に対応してほしい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-26-E_1-005-2_006.html

 

2008年08月27日【朝刊】

ドクターヘリに21億円/厚労省概算要求

 【東京】厚生労働省は二十六日、二〇〇九年度の概算要求をまとめ、ドクターヘリ導入促進事業として二十一億円を盛り込んだ。〇八年度の当初予算に比べて七億円の増額。来年度は全国八カ所に導入する。沖縄を含め、どこに配備するかは特定していない。

 県内への二機目導入について、厚労省は「可能性はなくはないが、沖縄配備分として概算要求したものではない」と指摘。二機目を求める県の要望があるかどうかや、受け皿となる病院施設の整備状況などを基に、導入地域を決めるという。

 沖縄では今年十二月から浦添総合病院で一機目が導入される見通し。舛添要一厚労相は今月十三日、名護市を訪れた際に「来年度、沖縄に二機目を入れようと思っている」と述べていた。

 厚労省は、全国からの要望を踏まえ、現在は昼間だけに限られているヘリの運航を夜間も利用できるよう経費の補助も行う。

「ふるさと納税」県人会に要請へ/五ノ日の会 ヘリ財源で

 【東京】県選出・関係の自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)は二十六日、都内で会合を開いた。北部地区の救急ヘリの財源などについて協議し、在京の県人会にふるさと納税への協力を求めることを決めた。

 救急ヘリの財源については、舛添要一厚労相が、ふるさと納税や在日米軍再編交付金の活用を提案していた。仲村会長らは二十七日に舛添厚労相と会い、財源の在り方について意見交換する予定だ。

 また同会は、国発注工事について県内企業への優先発注などの配慮を求め、二十八日にも内閣府、国土交通、防衛などの関係府省に要請する方針も決めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-M_1-002-1_003.html

 

2008年08月27日【朝刊】

「政策正直に伝えた」/米総領事、「沖縄退島」要求に

 【宜野湾】「普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団」(通称・普天間爆音訴訟団)の島田善次団長らは二十六日午前、在沖米国総領事館を訪ね、ケビン・メア総領事に対し「反県民的な言動に抗議し、即刻、沖縄から退島するよう要求する」決議書を手渡した。これに対し、メア総領事は「私の役割は、米国の政策を正直に住民に伝えること。個人的に発言しているわけではない」と述べたという。

 決議文では宜野湾市の米軍普天間飛行場周辺に住宅地が隣接する状況について、メア総領事が七月十一日の会見で「なぜ宜野湾市が建設を許しているのか疑問」と発言したことに抗議。メア総領事は、福岡空港などと周辺の人口密度や飛行回数を比較した場合、普天間飛行場周辺の危険性は低いと主張し、住民から反発の声が上がっていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-M_1-026-1_002.html

 

琉球新報 社説

返還跡利用構想 「攻め」の行政に転換を 2008年8月27日

 嘉手納基地から南にある米軍基地の返還をにらんだ跡利用構想に、県が着手している。待ちから攻めの県政に転換を図り、県民の夢と希望をかなえる新都市づくりを実現してほしい。

 構想は、「駐留軍用地跡地に係る有効利用ビジョンの検討基礎調査」報告書で明らかにされた。

 2年前の5月に最終合意された嘉手納基地より南の5つの米軍施設・区域の返還を前提に、返還跡地を沖縄の自立的発展に寄与する空間として、新しい経済・産業活動の拠点化を図るというものだ。

 沖縄は復帰後36年間にわたり実施されてきた「沖縄振興(開発)計画」が2011年度で期限切れを迎える。過去の沖縄振興策は、国が「後見人」となり人、モノ、カネ、情報の大半を提供し、策定し、実施してきたと評される。

 しかし、3年後からはそうはいかない。今、沖縄は自前で計画を作り、財政力を強化し、民間活力を高め、基地経済や財政投資に依存しない自立できる地域経済・社会を構築しなければならない。

 残念ながら沖縄の現状は、全国一の高失業、高財政依存度に加え、県予算の1年分を超える6000億円超の借金(県債残高)を抱え、自主財源は3割を切る低水準にあえいでいる。

 一方で、36年間の政府の沖縄振興策で9兆円を超す振興予算が投入されたが、目標とする沖縄の自立経済は手にできていない。

 国のカネ、国の汗、国の努力という「国任せ」の振興策の限界がそこにある。

 県民主体の振興策にどう転換するか。今回の構想はその端緒の一つだ。構想の先には2050年をめどとする県の将来展望「沖縄21世紀ビジョン(仮称)」がある。

 かつて、沖縄県は米軍基地全廃後の県づくりのグランドデザインとなる「国際都市形成構想」を策定した。13年前の話だ。同構想は、15年までに基地を3段階で全廃する「基地返還アクションプログラム」と、脱基地経済を目指す「産業創造アクションプログラム」と3点セットで展開された。

 「返還されるのを待つのでなく、豊かな県づくりに必要なら米軍基地でも奪い取る」との姿勢が、当時の県庁の中にはあふれていた。

 今回の構想は、普天間飛行場の代替施設への移転を大前提に返還が合意されたキャンプ瑞慶覧、キャンプ桑江、牧港補給基地、那覇港湾施設の跡利用計画である。

 そこには「返還待ち」の姿勢が顕著だ。必要なら「奪い取る」という攻めの姿勢は、まだまだ弱い。

 跡利用には膨大な資金、地主の理解と合意、自治体の協力、民間企業の知恵とカネが必要になる。

 人、モノ、カネ、情報を集め、動かす力は「情熱」にある。まずは県職員の情熱を見せてほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135637-storytopic-11.html

 

2008年08月27日【夕刊】

海上保安庁11管 44人を増員/尖閣警備など強化

 【東京】海上保安庁は二十七日午前、総額千九百六十五億七千九百万円の二〇〇九年度予算概算要求をまとめ、自民、公明両党の国土交通関係会議に報告した。日本周辺海域での治安対策の強化や船舶交通の安全確保などを図るため、同庁全体で三百四十七人の増員を要求した。このうち沖縄関係では、尖閣諸島や東シナ海のガス田周辺の警備強化などを目的に、巡視船艇の乗組員を五十六人増員。そのほか、第十一管区海上保安部の定員を四十四人増員することを求めている。

 尖閣諸島や東シナ海周辺の警備強化などを目的とした巡視船艇乗組員の増員は、巡視船艇の高機能化に伴う定員増による措置で、船や人員の具体的な配置は決まっていない。

 第十一管区海上保安部関係では、事件・事故に対する初動の遅れを解消し、外国船舶の監視を継続して実施するため、巡視艇の乗組員を二十五人増員。人命救助体制を強化するため、那覇航空基地の機動救難士など十人を増員。司法制度改革に対応するため、犯罪情報技術解析官を二人、首相官邸における情報機能強化のため、分析官を一人、それぞれ増やす。

 そのほか、領海・排他的経済水域(EEZ)調査の実施や、海洋情報の一元管理に関する体制を強化するため、海洋調査官を一人増員。船名、速力などの情報を自動的に送受信する装置(AIS)を活用し、船舶の衝突事故などを防ぐため、AIS運用官を五人置く。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-E_1-001-2_002.html

 

2008年08月27日【夕刊】

糸満に管制レーダー整備

 【東京】防衛省は二十七日午前、二〇〇九年度予算概算要求をまとめ、自民党国防部会・安全保障調査会・基地対策特別委員会合同会議に報告した。要求案には、弾道ミサイルの探知追尾能力の向上を目的として、糸満市与座岳に地上警戒管制レーダー(FPS―5)を整備し、〇九年度中の運用開始を目指す要望も盛り込んだ。

 自動警戒管制システム(JADGE)も〇九年度に就役する予定で、すでに配備が始まっている地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などの迎撃システム、センサー、指揮統制、通信システムを連接した弾道ミサイル防衛(BMD)システム全体としての運用を開始する予定。

 そのほか、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)を〇九年度中に「第一五旅団」に格上げし、定員を約三百人増強、約二千百人体制とするための関係予算も盛り込んだ。旅団化に伴い、混成群を廃止して普通科連隊を新編する。また、敵情を視察する偵察隊や、化学防護隊も新たに編成するなど、大幅に組織を改編する。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-E_1-001-2_004.html

 

2008年08月27日【夕刊】

沖縄戦伝える本土紙、眞嘉比さん入手/目立つ戦況美化

 【名護】沖縄戦の様子を伝える当時の本土の新聞四十二部を名護市で民俗資料博物館を運営する眞嘉比朝政さん(71)が、二十六日までに入手した。米軍機に空爆される伊江島の様子を伝える記事も含まれている。一方、戦局は大本営発表に基づく旧日本軍に有利な報道も目立ち、眞嘉比さんは、資料を整理し、来年の慰霊の日に合わせて公開することにしている。(知念清張)

 名護市消防長を務めた眞嘉比さんは、一九八三年と九二年に消防大学校(東京都)で学んだ際の全国の同期生に「当時の新聞を探してほしい」と呼び掛けた。先週までに百部余りが届き、沖縄戦の記事が見つかったのは四十二部だった。

 四五年五月一日付の中部日本新聞(当時)は、旧日本軍偵察機から撮影した米軍機の伊江島空爆を「激戦展開中の伊江島」と題する写真記事で掲載した。

 また、四月十三日付の毎日新聞は「敵兵五千、戦車百両が名護村(当時)に新たに上陸したが、わが部隊は目下果敢なる反撃を実施中」とし「戦車三両を炎上せしめ、人員多数を殺傷している」と伝えている。

 戦局悪化に伴い「一億、沖縄の軍民に続け」(四月二十八日付中部日本新聞)、「沖縄に我新兵器出現 翼持つロケット爆弾」(五月一日付朝日新聞)、「還らぬ報道班員 カメラを抱いて散華」(六月一日付同紙)など読者を鼓舞し、戦争を美化する論調が目立つ。戦争当時、八歳だった眞嘉比さんは名護で米軍の空襲などを体験した。眞嘉比さんは「当時は米兵はヒージャーミー(ヤギの目)で夜はよく見えないと教えられ、竹やりを備えたが、いざ戦争が始まると圧倒的な兵力差で名護の市街地は焼け野原になった。敵の被害を大きく伝えるなど、旧軍に有利な報道の流れが読み取れる」と話している。

 沖縄戦を伝える新聞は激しい地上戦のため、県内ではほとんど残らなかった。本土でも厳しい物資統制が敷かれたこともあり戦後六十三年経て見つかることは珍しく貴重な資料となりそうだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-E_1-005-2_001.html