作成者別アーカイブ: inoue

沖縄関連予算で要求/旧軍用地補償 軍用地料2億3000万円流用/浦添・小湾地主会 コンテナ70個今月搬入/都市型訓練 基地内タクシー、年1億5000万円/06年、米軍と208台契約 など 沖縄タイムス関連記事(7月4日から8日)

2008年7月4日(金) 朝刊 1面

沖縄関連予算で要求/旧軍用地補償

 旧軍飛行場用地問題に伴う補償事業の財源について、県は三日、沖縄振興事業費や沖縄特別振興対策調整費のいずれかの枠組みで政府に予算要求する方針を初めて示した。同日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会代表質問で、上原昭知事公室長が新垣良俊氏(自民)の質問に答えた。

 同問題では一部地主会が、沖縄関連予算とは別枠での財源確保を求めているが、上原知事公室長は「国との調整で、極めて困難であると言われている」と明言した。また、関係市町村が各地主会と協議し作成した事業案が、すでに県に提出されていることも明かした。

 代表質問では翁長政俊(自民)や渡嘉敷喜代子(社民・護憲ネット)、当銘勝雄(同)の三氏も登壇した。

 中城湾港泡瀬沖合埋立事業のため、米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定の更新を県知事が沖縄市長に代わって署名者となることについて、漢那政弘土木建築部長は「国、県、市の三者で、今年に入り七回ほど協議を重ねた。県が署名を決めたのは協議の結果であり、当然沖縄市も承知している」と述べ、沖縄市の意向を尊重したとの認識を示した。渡嘉敷氏への答弁。

 また道州制について仲井真弘多知事は「沖縄単独での導入を前提にさまざまな検討を進めている」と説明。上原良幸企画部長は「離島や基地問題等、沖縄固有の諸課題について解決を図っていくことが極めて重要。その中で『特例型』の権限についても検討を進めていく」と述べた。翁長氏への答弁。代表質問は四日も行われ、四氏が登壇する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041300_04.html

 

2008年7月4日(金) 朝刊 2面

議事公開要求相次ぐ/「集団自決」検定

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題を受け、検定手続きの透明化を検討している文部科学省の教科書検定審議会の作業部会は三日、同省で会合を開いた。委員らは「結論が出たプロセスを明らかにする必要がある」との意見でほぼ一致。平穏な環境での審議を確保するために、検定後の議事公開を求める声が相次いだ。

 公開の在り方については、昨年の高校日本史の小委員会のような詳細な公開は実務上困難とする一方、教科ごとに公開を求める要望の強さに違いがあるとの指摘が出た。

 委員からは「意見申立書に対する審議がどう行われたかなど、問題化した部分の議論を公開することが重要」として、審議過程の透明化に一定の原則を設けることを促す意見もあった。

 公正・中立な審議をするための静かな環境の確保については「公開と矛盾するところもあり悩ましいが、検定委が十分審議できることが大切」などの意見が出された。

 作業部会は今後、意見を集約させ、なるべく早い時期に改善策をまとめる方針。四日も都内で、新しい教育課程の実施に対応した教科書の記述などに関する会合を開く。


県教委は中立性要請


 教科書検定手続きの透明化を検討している文部科学省の教科用図書検定審議会(検定審)総括部会に対し、県教育委員会が、全国都道府県教育長協議会を通し、中立性を確保し、幅広く専門的な見地から審議するよう求める意見書を提出していたことが三日、分かった。

 県議会六月定例会の代表質問で、仲村守和県教育長が、渡嘉敷喜代子氏(護憲ネット)に答えた。

 意見書は、同協議会が六月十三日に提出。専門的な見地での公正な審議を求めているほか、(1)児童・生徒が理解困難な表現や誤解の恐れのある表現がないようにする(2)正確な記述の確保―などを求めている。

 仲村教育長は「全国の教育長が沖縄の思いをくみ取ってくれた。教科書検定の撤回を求め、十一万人が集まった昨年九月の県民大会が大きな力になっている」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041300_06.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 1面

軍用地料2億3000万円流用/浦添・小湾地主会

 【浦添】米軍キャンプ・キンザーの軍用地主で構成する浦添市の字小湾共有地地主会(宮平忠一会長、会員数五百二十六人)で二〇〇一年四月、宮平会長と当時の宮城安次郎副会長が、福岡県でゴルフ場社長を務めていた比嘉実氏(現トロピカルテクノセンター=TTC=社長)から融資を頼まれ、同会特別会計から無断で軍用地料二億三千万円を不正流用していたことが四日までに分かった。その後、当該ゴルフ場が民事再生法を申請したため、回収不能になった。現在までに比嘉氏から七千万円の返済があったものの、残金の約一億六千万円は弁済されていない。宮平会長らは六月二十二日の臨時総会で問題を公にするまで、監査委員を説得して虚偽の監査報告書を作成するなど事実を隠していた。

 宮平会長は四日午前、同市宮城の同会で記者会見。「情けをかけ過ぎた。うんと後悔している」と謝罪。比嘉氏とは親同士が兄弟であることを説明し、「いとこであり、地域内でもこれほど能力がある人はほかにいなかったので…」と釈明し「刑事告訴されても仕方ない」としている。

 宮平会長によると、二〇〇〇年四月にゴルフ場社長に就任した比嘉氏から最初の融資依頼があり、特別会計を担保に金融機関から二億円を借り入れ不正流用。同年十二月に全額返済された。

 その後、〇一年四月に、再度の融資依頼を受け、同様に二億三千万円を貸し出したが、ゴルフ場の民事再生手続きで回収できなくなったという。

 宮平会長は融資を行う際、評議委員らからの同意を得ず、不正流用の発覚を免れるため三人いる監査委員のうちの一人に「私が責任を持つ」と頼み込み、虚偽の監査報告書を作成させ、定期総会に提出していた。

 拠出先となった特別会計は同会共有の土地収入などの基金。当時、口座には「三億円くらいあった」(宮平会長)という。

 宮平会長らは今年度、同会の役員改選で交代が決まっており、問題を隠し通せないとの思いから公表に踏み切った。臨時総会で会員を前に融資にかかわった宮平会長ら三人が謝罪。会員からは批判の声が上がった。返済計画を説明したが反対の声が多く、承認されなかったという。

 宮平会長は「私と当時の副会長、比嘉氏は責任を免れることはできない。生きている間は支払う義務がある。返済については責任を持つ」と語り、近く弁護士と弁済法をめぐり協議するとしている。

 字小湾共有地地主会の男性会員は「信じていたのに裏切られたという、強い怒りはある。今後本当に返済が可能なのか見守っていきたい」と不安げに話した。

 浦添市軍用地等地主会の関係者は「それだけの大きな金額を簡単に動かし、役員らの目を免れてきたことが不思議だ。公金の流用は、地主会の存亡にかかわることだ」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

「返せると思った」

融資受けた比嘉実氏


 融資を受けた比嘉氏は「登記上はまっさらなゴルフ場だったので、担保に入れれば二億三千万円は返せると思ったが、知らないうちに抵当に入れられていた。考えが甘かった。地主会や会長などに迷惑を掛けて申し訳ない。道義的責任があるのでTTCの社長の辞任も考えている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_01.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 7面

戦後の一歩 宜野湾活写/暮らしぶり 証言から再現

 終戦直後の宜野湾市の様子を記録した宜野湾市史第八巻「戦後資料編?」が発行された。野嵩収容所からの住民移動や軍作業などの戦後史を証言と戦後行政資料で立体的に記録。市町村史編纂が盛んな県内でも、戦後史着手はまだ少なく、戦後史に新しい一歩を刻む一冊だ。市史編集委員長の仲村元惟さん(71)は「行政文書と合わせて、住民の戦後初期体験を聞き取りで収録した。市民が作り上げた記録だ」と話す。(謝花直美)

 市民七十二人の沖縄戦時の避難、「捕虜」や軍作業の体験を収録。行政文書は、市史編纂委員会の要請を受け約三十年前に保存された一九四六年以降の物が元になっている。

 米軍普天間飛行場に関する記述では基地として接収された元の居住地へ立ち入り、生活の糧を得ていた様子などが分かる。

 四六年八月付の宜野湾村長から各区長に当てた「軍施設内立入ニ禁止厳守ノ件」では、食糧不足のため施設に入り芋掘りなどのため飛行場を通行することが布告違反であると禁止。四八年五月付の沖縄民政府総務部長から村長あての「飛行場内住民立入禁止について」は、米軍が飛行場を使用していないため住民が居住、農耕している実態を指摘し、禁止を通達している。

 住民の証言では基地立ち入りの様子が具体的に分かる。「同級生の男の子が飛行場内を通って宜野湾に向かう途中に轢かれて即死した」「飛行場には金網も何もなかった。(中略)鉄骨のような物資が放置されていた。(中略)滑走路もあって、そこにも入ったが何もなかった」「(五九、六〇年ごろに金網ができた時)当初、何を造っているのか分からなかった。フェンスができた時は異様な光景だった」

 仲村さんは「行政資料からは見えない部分は、住民の証言が当時の状況を語っている」と話した。

 B5判、八百四十八ページ、二千円。購入などの問い合わせは、同市教育委員会文化課市史編集係、電話098(893)4430。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_02.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 1面

コンテナ70個今月搬入/都市型訓練

 【東京】在沖米海兵隊が沖縄防衛局に対し、「宜野座村のキャンプ・ハンセンにある都市型戦闘訓練施設(コンバットタウン)で実施してきた訓練を補完するため、同施設などに(訓練用の)コンテナ約七十個を今月から搬入する」との意向を伝えていたことが四日、分かった。金武町「レンジ4」にある都市型戦闘訓練施設の移設先である「レンジ16」にも搬入する予定。

 米側は、実弾は使用しないとしているが、キャンプ・ハンセンでは、金武町のレンジ3付近でも米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃用射撃場建設が進んでおり、機能の強化に地元の反発が強まりそうだ。

 搬入目的について米側は「コンテナを組み合わせて街並みに模した建物を造ることができ、機動的かつ効果的な訓練環境をつくり出すことが可能」と説明。空き地部分を効率的に活用するとしている。

 日本政府は「米国予算により実施されるもので、このような訓練はこれまでに計画され、実施されてきたものであることから、日米安保条約の目的達成のために必要な訓練の一環と認識している」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_03.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 1面 

普天間代替「県内移設やむを得ず」/県議会で知事答弁

 県議会(高嶺善伸議長)の六月定例会は四日、代表質問二日目を行った。仲井真弘多知事は米軍普天間飛行場の移設について、「これまでの経緯を踏まえると、一刻も早い危険性除去のためには県内移設もやむを得ない。海兵隊のグアム移転や嘉手納以南の大規模な返還、基地負担の軽減、跡地の有効利活用を通じた地域振興に大きく寄与する」と述べ、県民の理解を求めて県内移設を推進していく姿勢を強調した。嘉陽宗儀氏(共産)に答えた。

 県が策定を進める沖縄21世紀ビジョンの進ちょく状況については「県の基本的な考え方を取りまとめ

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_04.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 1面

新鉄軌道導入調査に県前向き

 県議会六月定例会代表質問二日目は四日午後も引き続き質疑が行われた。新型路面電車を含む鉄軌道の導入について、上原良幸企画部長は「新たな交通ネットワークは県土構造の再編につながる。軌道系を含む先進的な交通システムの導入調査に取り組んでいきたい」と、県が前向きに取り組む姿勢を示した。

 上原企画部長は、二〇〇九年度に普天間を含めた大規模駐留軍用地の跡利用等の予算があることを指摘。その活用を視野に調査へ乗り出す方針を打ち出した。

 沖縄の将来展望を示す「沖縄二十一世紀ビジョン」との関連にも触れ、「当然、ビジョンの中で取り上げる」と述べ、「政府と知事が協議する沖縄政策協議会に(議題として)持っていきたい。沖縄の進路を切り開き、国の活路を探るようなビジョンをつくり、実現するための制度を提言したい」との考えを示した。上里直司氏(民主)への答弁。

 後期高齢者医療制度への対応について仲井真弘多知事は「相当な改善が必要だが、国民皆保険制度を堅持し、高齢者の適切な医療を国民全体で支えるために必要な制度と認識している」と語った。嘉陽宗儀氏(共産)に答えた。

 宜野湾市の小学校で慰霊の日を前に行われた創作劇に対するメールでの中傷について、仲村守和教育長は「電話や電子メールによる抗議は遺憾だと言わざるを得ない」と述べた。新垣清涼氏(社大・ニライ)に答えた。

 同定例会は七日から一般質問がスタート。十日までの四日間で、計三十一人が登壇する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_03.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 2面

きょうからコンテナ搬入/都市型施設で在沖米海兵隊

 在沖米海兵隊がキャンプ・ハンセン内の都市型戦闘訓練施設(コンバットタウン)での訓練補完を目的に、五日から訓練用コンテナ七十三個を搬入することが四日、分かった。沖縄防衛局が明らかにした。移送作業は二十三日まで続く見通し。在日米軍基地で同様の訓練用機材が搬入されるのは初めて。

 コンテナは長さ約十二メートルで、幅と高さは共に約二・四メートル。宜野座村のコンバットタウンに六十三個、金武町のレンジ16に十個を搬入する。米側は実弾は使用しないとしているが、ハンセンでは金武町レンジ3付近で米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃用射撃場建設が進むなどの機能強化が進み、地元は反発している。

 宜野座村の東肇村長は「グアムへの海兵隊の移転もまだ具体的に決まっていない中、新たな機能が加えられるのは明らかに負担増だ」と強く不快感を示した。金武町の儀武剛町長は「レンジ16の工事も途中で、住民負担が減らない中、新たな訓練が始まるのは大変遺憾」と危機感を募らせた。

 搬入目的について米側は「コンテナ同士を組み合わせて街並みに模した建物を造ることができ、より機動的かつ効果的な訓練環境をつくり出すことが可能」と説明。現在の空き地部分を効率的に最大限活用する意向という。

 政府は「米国予算で実施されるもので、このような訓練はこれまでにも計画され実施されてきた。日米安保条約の目的達成のため必要な訓練の一環」との認識を示している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_07.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 29面

現金管理、幹部に一任/小湾地主会4億円流用

 【浦添】四億三千万円の巨額不正流用が明らかになった米軍キャンプ・キンザーの軍用地主でつくる浦添市の字小湾共有地地主会(五百二十六人)で、銀行口座など現金の管理が宮平忠一会長ら幹部の裁量に委ねられ、会員を含め外部チェックができなかったことが四日、分かった。同会の規約では、資金運用には評議員会の決議が必要となっているが宮平会長らは無断で流用していた。会員からは失望と怒りの声が上がっている。

 同地主会の会員は戦後、米軍に土地を接収され郷里を失った小湾出身者と子ども、その孫に限られ、個人ではなく住民共有の土地代など基金を管理している。任意団体で、監査委員は地主会の委員から選任されるという。

 会員の無職男性(57)は「八年間も不正に気付かなかったのはおかしい」と外部のチェック機能が働かなかったことを認め、体質改善を訴える。「会長の一存で金の使い道を決めたことが一番悪い。地主会をクリーンにし会員に事実をすべて発表すべきだ」と指摘。

 会員の信頼を裏切った同会幹部に失望と落胆の声も。会員の無職女性(79)は「(不正を)知ったときは驚いた。先祖の土地の地料を勝手に使うのは悪い。お金はもう返ってこないのではないか」と語った。

 六月二十二日の臨時総会で、宮平会長らは返済計画書を提示したが、会員からは反対の声が相次ぎ、承認は得られなかった。

 一方、地縁血縁を巧みに利用し融資を引き出した比嘉実氏(現トロピカルテクノセンター社長)への批判も噴出している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_09.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 29面

来年は航空ショーも/嘉手納基地アメリカフェスト

 【嘉手納】米軍嘉手納基地の第一八航空団は四日、米軍人と家族を対象に同日から始まったアメリカフェストを報道陣に公開した。五日は一般開放される。司令官のブレット・ウィリアムズ准将は、来年の同フェストで規模を拡大する考えで、航空ショーの開催を検討していることを明らかにした。

 航空ショーは二〇〇四年にも計画されたが、「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」などの反発で断念した。

 同司令官は、航空ショー開催は地元の理解が重要との認識を示した上で、「空軍は何百のエアショーを実施し、安全に行われている。地元住民にわれわれの任務や義務を知ってもらえるし、喜んでもらえる」と実現に意欲を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_10.html

 

2008年7月5日(土) 夕刊 4面

県民巻き込む軍命探る講義/大学講師の津多さん

 明治時代の大日本帝国憲法制定からさかのぼり、沖縄戦時下での「軍命」とは何だったのか探る講座「『軍命』の法体系」最終回が四日、那覇市内であった。沖縄平和ネットワーク主催。沖縄国際大学非常勤講師の津多則光さんが講義した。

 津多さんは、一九四四年八月三十一日付の第三二軍司令官牛島満中将の訓示を解説。特に「現地自活に徹すべし」「地方官民が喜んで軍の作戦準備、郷土防衛をするよう指導すべし」などの記述を挙げ、一木一草を戦力化し、沖縄県民すべてを戦争に巻き込む指示だった、と説明した。

 また「防諜に厳に注意すべし」との訓示が県民スパイ視につながった、とした。

 その上で、軍令は軍内部のものだが、戦時下や戒厳下では国民にも適用されるものだったとし、「集団自決(強制集団死)」や住民虐殺などは、当時の法体系と牛島司令官の訓示による、システムの中で起きたと分析した。


記述の在り方論議

教科書検定作業部会


 【東京】新しくなる学習指導要領を踏まえた教科書の記述の在り方を話し合う教科書検定審議会の作業部会が四日、都内であった。委員らは質と量両面の充実策などを検討した。沖縄戦に関する論議はなかった。

 中立性や正確性の確保については「通説的見解も使われているが、何が中立・公正か議論が分かれる。社会科はそう単純にいかない」などと慎重な意見が出た。

 イラストや挿絵については「理解のために不可欠なものと、単に子供に興味を持たせるだけのものは区別すべきだ」として、文脈に関係なく多用することに疑問の声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051700_05.html

 

2008年7月6日(日) 朝刊 2面

嘉手納開発 終了祝う/施設活用で町の発展期待

 【嘉手納】沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)を活用した、嘉手納町の「嘉手納タウンセンター開発事業」の終了を記念した式典および祝賀会(主催・同実行委員会)が五日午後、同事業の一環で建設されたロータリープラザで開かれた。関係者が多数出席し、整備された施設を活用することで町がますます発展するよう期待を寄せた。

 実行委員長の宮城篤実町長は「町域の大部分を米軍基地が占め、八方ふさがりの状態だった。各事業の効果は着実に表れている。これまで事業にかかわってきた関係者とともに完成を祝いたい」と感謝した。

 内閣府の原田正司政策統括官は「事業によって町が活性化し、町民の生活が一層向上するよう期待する」とあいさつした。

 同事業の一環で建設されたビルで、四月から業務を行っている沖縄防衛局の真部朗局長は「わたしたちも事業の一部で、町民の一員となった。これからも周辺住民の生活安定、福祉向上に取り組んでいきたい」と述べた。

 式典には仲井真弘多知事をはじめ、島田懇談会座長の島田晴雄氏、元首相補佐官の岡本行夫氏らも出席した。

 「嘉手納タウンセンター開発事業」は、嘉手納町が島田懇談会事業で実施した三事業の総称。総事業費は約二百十八億円で、中心市街地の新町・ロータリー地区の再開発のほか、マルチメディアセンター(同町水釜)や「道の駅かでな」(同町屋良)などを整備、建設した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807061300_04.html

 

2008年7月7日(月) 夕刊 1面

基地内タクシー 年1億5000万円/06年 米軍と208台契約

 県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の一般質問が七日、始まった。米軍基地内に出入りする「ベースタクシー」が基地に支払う営業料について上原昭知事公室長は、直近の二〇〇六年入札で二百八台が米軍基地と契約し、年額約一億五千四百万円を払っていると説明した。AAFES(米陸・空軍エクスチェンジサービス)沖縄エクスチェンジ本部に照会したという。

 一台当たり料金は基地ごとに異なり、〇六年入札は月額最高が八万七千七百七十円、最低三万四千五百円。入札は〇四年十月から始まり、二回行われている。

 上原公室長は営業料の使途について、施設の維持管理や米軍人などの福利厚生費に充てられているとの説明を受けたとした。今年は入札予定はないという。

 営業料支払いの妥当性や県の対応については「契約当事者双方の同意で行われるため、県は関与する立場にない」としつつ、「県としてどのような対応が可能か研究したい」と答えた。

 米軍人・軍属とその家族の私有車両(Yナンバー車)の基地内外それぞれの車庫証明書登録数について、得津八郎県警本部長は「県警は制度上、把握できない」と答えた。いずれも仲村未央氏(社民・護憲ネット)への答弁。

 県が出資するトロピカルテクノセンター(TTC)社長の比嘉実氏が、浦添市の字小湾共有地地主会の特別会計から不正流用した融資を受けていた問題については、仲井真弘多知事が「公的役割を担う第三セクターの社長が事態に関係したことは大変遺憾。比嘉氏は辞任の意向を示しているが、具体的対応は同センター取締役会で協議される」と述べた。新里米吉氏(同)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807071700_01.html

 

2008年7月7日(月) 夕刊 7面

比嘉氏、辞任を表明/地主会預金流用

 【浦添】浦添市の字小湾共有地地主会の宮平忠一会長らが、親類で福岡県のゴルフ場社長を務めていた比嘉実氏(65)=現トロピカルテクノセンター(TTC)社長=から融資を頼まれ、二回にわたり同会特別会計の定期預金から計約四億三千万円を不正流用した問題で、比嘉氏が七日午後、那覇市内のホテルで記者会見を開いた。比嘉氏は「地主会との二度にわたる公的な借用関係はすべて報道の通り。公的機関とも関係するTTCの社長としてこれ以上、重責を全うすることはできず、辞任する。社員、株主などに多大な迷惑を掛けた。心からおわび申し上げる」と語った。

 その上で「伝統ある字小湾共有地地主会の名誉を著しくおとしめたばかりか、返済ができない現状にあり、取り返しがつかないことをしてしまった。私の命ある限り、返済に全力を尽くしたい」と述べ、地主会に除名申請する考えを明らかにした。

 県の仲田秀光観光商工部長は「先週末にTTC側から事情を聞き、関与していたとの報告を受けた。重要事件に社長が関与したのは誠に遺憾。今後の対応は取締役会などで関係者と意見交換して対応したい。TTCには直接関わりないことなので、日常業務に支障のないよう専務には伝えた」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807071700_02.html

 

2008年7月8日(火) 朝刊 25面

道が陥没 地下に旧軍壕/糸満・兼城の狭間線

 【糸満】糸満市兼城の市道狭間線で旧日本軍が掘った壕とみられる空洞が原因で、道路陥没が頻発している。陥没が度重なる地点の民家では、コンクリート壁のはく離やひび割れ、地盤沈下も起きている。市道は小学校への通学路として児童が利用しているほか、車の交通量も多い。付近住民は自然災害時の被害を懸念、抜本的な対応策を求めている。糸満市は「県とも協議して早めに対応したい」としている。(新垣亮)

 現場は市兼城を通る狭間線の一部。以前から市道の地下に旧日本軍が掘ったとされる防空壕の存在が知られていた。二〇〇五年三月の修繕工事では壕とみられる空洞も確認されているが、正確な規模は分からないという。市は陥没する度に補修工事を重ねてきたが、新たなアスファルトの亀裂がみられるなど被害は後を絶たない。

 現場に隣接する高嶺敏雄さん(77)の自宅では、コンクリート壁のはく離やひび割れが激しい。壁や庭に植えたクロキが傾き、ガードレールの基礎がむき出しになっている個所も。

 高嶺さん宅の周辺は県が定める「地滑り危険箇所」。高嶺さんは「台風などの大雨で自宅の壁が倒れたりしないか心配だ。集落にとっては重要な道路で車の行き来も多く、大きな事故につながるかもしれない。応急処置ではなく、きちんと対策を施してほしい」と語った。

 糸満市は県の担当者とともに六月下旬に現場を調査。同市建設部の金城利男都市計画課長は「調査をさらにすすめ、県と協議しながら早急に対応したい」と話した。

 同問題は七日の県議会一般質問で取り上げられた。県の漢那政弘土木建築部長は「糸満市の意向を踏まえ、国に特殊地下壕対策事業の予算要望をしていく」と述べた。玉城ノブ子氏(共産)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807081300_02.html

 

2008年7月8日(火) 朝刊 25面

全21学徒隊の戦禍刻む/ひめゆり平和祈念資料館

初の資料集を刊行

 沖縄戦で動員された全二十一学徒隊の行動記録や証言をまとめた「沖縄戦の全学徒隊」(ひめゆり平和祈念資料館編集)が、このほど刊行された。県内各地にそれぞれの任を受け駆り出された全校の記録を集めることで、学生が動員された戦争の実態を立体的にとらえようと企画。各校同窓会の高齢化が進む中、歴史継承のため、関係者が八カ月かけて編集した。すべての学徒隊の動向を詳細に網羅した資料は初めてという。

 資料集は、各同窓会記念誌や国、県、地域の戦史を基に作成。各学校の動員前の訓練から戦時下での作業と任務、解散命令から避難の様子まで、日時、場所、犠牲者の数や状況を、地図や写図で克明に記録している。解散後に斬込隊参加を命じられたり、八月末まで軍と行動を共にさせられた学校もあった。

 証言では、憲兵が慰安婦に命じ、スパイ容疑をかけた住民を銃剣で突かせた後、自ら日本刀で虐殺した場面や、爆雷を抱え敵戦車に飛び込む「肉迫攻撃命令」、学徒に「自決」を強要した兵隊が投降したこと、野戦病院のむごたらしい様子などが記されている。

 巻頭、巻末には、当時の教育制度や学徒動員に関連する法規、部隊の組織図、専門家による用語や戦況解説も掲載され、資料や証言を補完する内容になった。

 編集を手掛けた同資料館の普天間朝佳学芸員は「慰霊祭ができなくなった会もあり、記録の必要性を感じていた。多くの体験者に協力してもらい、歴史の真実を伝えたいという、強い思いを実感した」。資料提供などで協力した首里高校養秀同窓会(旧制県立一中)展示室担当の岸本政一さん(79)は「体験者が協力し、学徒動員の歴史を風化させないようにしたい。意義深い本ができた」と話した。

 資料集は二千部発行。同資料館で原価販売している。問い合わせは同館、電話098(997)2100。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807081300_08.html

 

2008年7月8日(火) 朝刊 25面

TTC社長 辞任へ/地主会預金流用

 【浦添】浦添市字小湾共有地地主会の宮平忠一会長らが計約四億三千万円を不正流用した問題で、融資を依頼した福岡県のゴルフ場元社長、比嘉実氏(65)=現トロピカルテクノセンター(TTC)社長=が七日、那覇市天久のエッカホテル沖縄で記者会見し、事実関係を認めた上で「公的機関とも関係するTTC社長の重責を全うすることはできず、辞任する」と述べ、辞任する意向を表明した。

 比嘉氏は「地主会との二度にわたる公的な借用関係はすべて報道の通り。社員、株主などに多大な迷惑を掛けた。心からおわびしたい」と陳謝。

 その上で、「背後に大きな問題がある。解明に力を貸してほしい」とし、ゴルフ場を取り巻く資金の流れなどを記した自筆の図解を基に説明。県内金融機関から融資を受ける際の担保設定で、「無断で内容を伏せ取締役に私の代表印を押させていた」と主張。不正融資があるとして経緯を金融庁に報告、裁定を仰ぎたいとしている。県の仲田秀光観光商工部長は「重要事件に社長が関与したのは誠に遺憾。今後の対応は取締役会などで関係者と意見交換して対応したい」と話した。

 宮平会長らは同会特別会計の定期預金を担保に二〇〇〇年四月、金融機関から二億円を借り入れ不正流用。その後、二億円は返済されたが、〇一年四月にも同様に二億三千万円を貸し出し。ゴルフ場の民事再生適用手続きで、担保に保有していた同ゴルフ場株券と約束手形は無価値となり、回収不能になった。比嘉氏から七千万円の返済があったものの、残金の約一億六千万円は弁済されていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807081300_09.html

沖合1310メートル案 国に要望/那覇空港滑走路増設 独軍など北部訓練場視察/米軍機関紙報道 沖縄市長、協定更新せず/泡瀬・保安水域 ハワイ大に沖縄センターなど 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(7月1日、2日、3日)

2008年7月1日(火) 朝刊 1・2面

沖合1310メートル案 国に要望/那覇空港滑走路増設

知事、町村氏と会談

 県は一日までに、那覇空港の滑走路増設について、総合調査ステップ3で示された三案のうち、現滑走路から最も沖合に建設する「千三百十メートル案」を推進する方針を決めた。仲井真弘多知事が六月二十四日に都内で町村信孝官房長官と会談し、同案の実現を要望した。三十日に県庁で沖縄タイムス社の取材に答えた。知事が政府高官に具体的な滑走路位置の支持を伝えたのが判明したのは初めて。(吉田央)

 仲井真知事は那覇空港の沖合展開について、町村官房長官に対し「われわれは『なるべく沖合に』という強い思いがある」と要望。国土交通省から千三百十メートル案に慎重な考えが県に伝えられていることを説明し、「なぜ急にこのような話が出たのか」とも尋ねた。町村官房長官から明確な回答はなかったという。

 那覇空港に関する総合調査ステップ3では、現在の滑走路と新たな滑走路の間隔で(1)二百十メートル(2)九百三十メートル(3)千三百十メートル―の三案が提示された。

 国連経済社会理事会の専門組織・国際民間航空機関(ICAO)は条約三十七条の付則で、二本の滑走路がある空港がそれぞれ同時に離陸と着陸を管制できる「オープンパラレル」の条件として、滑走路の間隔を千三百十メートル以上空けることを義務付けており、県は効率的な運用が図れるとし、同案を支持している。

 会談ではほかに、北海道洞爺湖サミット後の内閣改造の可能性や、米大統領選の見通しなどが話題になったという。二橋正弘官房副長官、仲里全輝副知事も同席した。

 仲井真知事は「慰霊の日」に来県した福田康夫首相とも那覇空港で会談。当初は那覇空港に関して同様の考えを伝える意向だったが、会談の時間が短かったことなどから断念したという。

 一方、那覇空港の沖合展開で仲里副知事は三十日、県庁で沖縄総合事務局の成瀬英冶港湾空港指導官と会談し、「今の滑走路を民間専用にして、沖合を自衛隊と共同使用する議論をすべきかなと思う」と述べ、新設される滑走路を自衛隊が使用する運用形態を提起した。


     ◇     ◇     ◇     

県、複数の利点見込む/国は難色 930メートル案推す


 仲井真弘多知事が那覇空港の沖合滑走路展開で、町村信孝官房長官に千三百十メートル案を要望したのは、同案に複数の利点があるとの判断からだ。二つの滑走路で同時に離陸や着陸ができる「オープンパラレル」実現のほか、自衛隊機の沖合側滑走路使用で騒音軽減、将来的に滑走路の間に旅客ターミナルを建設する際の十分なスペースが確保可能などを想定している。

 ただ、県が千三百十メートル案の支持を明確化するのに伴い、国土交通省は沖縄総合事務局などを通じて九百三十メートル案を推す意向を県に伝えているという。

 仲井真知事や幹部に戸惑いが広がっており、三案の絞り込みに向けた火種になりそうだ。

 仲里副知事は三十日、沖縄総合事務局の成瀬英冶港湾空港指導官に「なるべく(滑走路間の)距離が短いのを選ぼうという動きもあるようで心配している」と苦言を呈した。

 県が国の姿勢に違和感を持つ理由は、九百三十メートル案の概算事業費が二千五百億円で、千三百十メートル案の二千四百億円より高いことだ。歳出削減基調で大型公共工事を実施する際、経費は重要な判断材料になるが、今回は逆行していると映る。

 ある県幹部が国にこの点を指摘すると、「案には複数のバリエーションがあり、最終的な経費はまだ分からない」という趣旨の返答があったという。この幹部は「いまさら計算間違いだと言われても困る。本音はどこにあるのか」と困惑する。

 国は表向き「現時点で何ら方向性は出していない」(国交省)との姿勢だが、仲井真知事は「国交省も当初はなるべく外(沖合)という姿勢だった。急に変わった」と受け止めている。

 オープンパラレルが実現すれば、二つの滑走路に同時に着陸機が近づいた場合、一機が空中で旋回しながら待機する必要がなくなる。沖合側の滑走路を自衛隊が使用した場合の騒音も、滑走路の間隔が広いほど軽減されることが見込まれる。

 県関係者の間では「那覇空港は本土とつなげない国道58号に代わる空の国道だ。国交省は目先の空港特会(空港整備特別会計)ではなく、五十年、百年先の沖縄振興を考え、大局的に判断してほしい」(経済界)などの意見も挙がっている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_01.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 27面

教科書問題「関係ない」/新指導要領で文科省が見解

 【東京】文部科学省は三十日、二〇一一年度から完全実施される小学社会科の新学習指導要領の解説書に「沖縄戦」を明記することについて、「沖縄戦をしっかり教えることを明確に示した」としつつも「教科書検定意見をめぐる議論には直接関係ない」との見解を示した。沖縄タイムス社の取材に答えた。

 解説に「沖縄戦」が明記される影響として(1)教諭が多くの場合、授業で取り上げるようになる(2)教科書会社がさらに記述を充実させる可能性がある―などと指摘。その上で、「これまで教科書会社の判断で記述されていたものが、国として取り上げよう、と示したものであり、(沖縄戦の)学習が進むのではないか」と述べた。一方で「どう教えるかは別問題。取り上げ方には触れていない」とした。

 「集団自決」と軍とのかかわりについては「新指導要領に基づいた教科書を見て、もう一度事実はどうだったか、学説などを踏まえて次の検定で判断する」との考えを示した。

 新指導要領では「第六学年の目標と内容」で、歴史学習の例として第二次世界大戦を明記。解説書は「我が国が連合国と戦って敗れたことを調べ、各地への空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下など、国民が大きな被害を受けたことが分かるようにする」との指針を示している。

 文科省は同日、都内で、関東を中心とした自治体の代表らに解説書を説明した。沖縄は十、十一の両日、福岡市内での説明会に参加する予定。


     ◇     ◇     ◇     

検定撤回こそ重要/「実相ゆがむ」関係者懸念


 「沖縄戦の実相をゆがめる恐れがある」「まず検定意見撤回を」。文科省の小学社会科の新学習指導要領解説書に、他の国内の戦争被害と併記して「沖縄戦」が盛り込まれたことに、県内で懸念が広がっている。

 沖縄歴史教育研究会の新城俊昭代表(宜野湾高校教諭)は、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制を削除させた二〇〇六年度の高校教科書検定意見が撤回されていないと指摘。「文科省のスタンスに従えば『日本軍による住民殺害』という沖縄戦の大きな特徴を教えられず、被害だけを教えることになる。これでは正確な歴史を学習できない。まずは検定意見を撤回するべきだ」と話した。

 沖教組の大浜敏夫委員長も、「特に他県の教師は、きちんと学ばなければ、沖縄戦の特質が分かならくなる」と危惧。実際の教科書で正しく記述されるよう、県民が監視し、執筆者や教科書会社を支えることが必要だと訴えた。

 「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」の玉寄哲永副委員長は「私たちが求めたのは、県民が日本軍によって殺されたり『集団自決』させられた事実を隠さないこと。文科省は県民の要求に応えず、『関与』程度の言葉に置き換えたまま、定着させようとしている」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_02.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 2面

基地外居住 1491人増

 【東京】防衛省は三十日、今年二月の米兵暴行事件を受けた再発防止策の一環として、基地外に居住する米軍人・軍属やその家族の数(二〇〇八年三月末時点)を発表した。県内では前年比千四百九十一人増の一万一千八百十人が居住。基地内も含めた総居住者数が千九十四人増えている一方で、基地内居住者は三百九十七人減っており、人口分布が基地内から基地外へ移動している傾向が浮き彫りとなった。

 県内の米軍基地内には現在、約一割の空き家があることが分かっているが、日本政府が費用を負担して整備している基地内住宅への居住の在り方があらためて問われそうだ。

 米軍人らの基地外居住者は全国で二万四千八百八人。その約半分を沖縄が占めている。自治体別では、神奈川県横須賀市が三千五百三十二人で最も多かった。県内では北谷町が三千二百二十三人(前年比三百三十人増)、次いで沖縄市(同三百七十六人増)が三千八十一人だった。

 前年比で最も増えたのは読谷村で、六百五十八人増の千八百八十一人。減少した自治体もあり、うるま市では五人減の千三百二十九人だった。

 人数は在日米軍司令部が提供し、防衛省がまとめた。米兵暴行事件を受け政府は、再発防止策の一環として、米側が年に一度、基地内外の居住者数を日本側に提供し、日本政府が自治体と共有すると発表していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_03.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 2面

普天間移設で論戦へ/県議会代表質問

 開会中の県議会六月定例会は三、四の両日、代表質問で六会派の八氏が登壇する。質問通告が六月三十日、締め切られた。十二年ぶりに与野党逆転を果たした野党は、県議選の結果が県政への評価との認識を示していた仲井真弘多知事に、与党敗北の見解を求めるほか、追い風になった後期高齢者医療制度への認識も追及する構えだ。

 一方の与党会派は仲井真知事の公約でもある自立型経済構築に向けた取り組みを中心に、県のスタンスをただす。与野党とも米軍基地問題では普天間飛行場の移設問題、日米地位協定の見直しなどに質問が集中しており、論戦は熱を帯びそうだ。

 代表質問の日程、質問者は以下の通り。

 【3日】翁長政俊氏(自民)、新垣良俊氏(同)、渡嘉敷喜代子氏(社民・護憲ネット)、当銘勝雄氏(同)

 【4日】嘉陽宗儀氏(共産)、金城勉氏(公明県民会議)、上里直司氏(民主)、新垣清涼氏(社大・ニライ)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_07.html

 

琉球新報 社説

新指導要領解説書 史実を正しく継承してこそ 2008年7月1日

 文部科学省が、2011年度から完全実施される小学社会科の新学習指導要領の解説書に、「集団自決」(強制集団死)など多くの犠牲者を出した沖縄戦や連合国軍(米軍)の無差別爆撃、原爆投下といった事例を初めて明記することが分かった。正しい史実の継承へ向けて一歩前進であり、歓迎したい。

 文科省はこれまで、第2次世界大戦の被害などを小学校の授業でどのように教えるかは一定程度現場の裁量に任せていた。

 学習指導要領は、学校が児童・生徒に教えなければならない学習内容など教育課程の最低基準で、ほぼ10年ごとに改定されている。新学習指導要領で日本国民が受けた被害について、学習する機会を充実させるとしている。

 昨年3月、文科省は高校歴史教科書から沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)を日本軍が強制したとする記述を削除した検定意見を公表。これに納得しない県民は11万6000人(主催者発表)が9月29日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に参加し抗議した。

 県民大会実行委員会などの要請に対し、渡海紀三朗文科相が「沖縄戦に関する学習がより一層充実するよう努めたい」としていたことの具体的な表れだろう。

 学習指導要領の内容を補足する解説書は、文科省が各教科ごとに編集している。教諭の授業指導の指針になっており、教科書もそれを参考に作成されることから、学校現場に与える影響は大きい。

 先の大戦で米軍は、沖縄の10・10空襲をはじめ、東京や名古屋などで国際法に反する無差別爆撃を展開。東京空襲では約10万人の市民が死亡したといわれる。広島と長崎に「悪魔の申し子」と言うべき原子爆弾を投下した。これら歴史的事実は、思想的解釈などはひとまず脇に置いて、正確に後世へ伝えていかねばならない。

 望むべきは、解説書にとどまらず、小中高校の社会科(日本史)に正確な史実を掲載してほしいということだ。特に「集団自決」に関しては、昨年の教科書検定をきっかけに、危機感を覚えた体験者が重い口を開き「正しい事実を残したい」と体験を語り、手記を残すなどの行動に出た。

 教科書検定審議会は、沖縄戦の体験者や研究者の意見を求めることはもとより、沖縄戦の記録を記した県史や市町村史、住民の体験記なども参考にしてほしい。

 むろん被害ばかりでなく、日本が行った中国や朝鮮半島などへの戦争加害の事実もきっちりと伝えたい。

 きょうという日は過去の上に成り立ち、あすはきょうの結果という。史実は正しく継承されてこそ、確かな未来は約束される。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133717-storytopic-11.html

 

2008年7月1日(火) 夕刊 1・5面

独軍など北部訓練場視察/米軍機関紙報道

 自衛隊、ドイツ、イスラエル、オランダの四軍幹部が、将来の訓練を視野に入れて米軍北部訓練場(国頭村、東村)を視察していたことが、一日までに分かった。在沖米海兵隊の機関紙「オキナワマリーン」が報じた。日米以外の外国軍が在沖米軍基地使用を検討していることが明らかになったのは初めて。自衛隊の視察について、防衛省は事実関係を確認中としている。基地の過重負担に苦しむ県民の反発は必至で、政府の対応が注目される。

 在沖米軍基地は在日米軍の再編に伴い、キャンプ・ハンセンで自衛隊との共同使用が今年三月から始まった。嘉手納基地の使用も予定されているが、北部訓練場は対象になっていない。

 同紙によると、視察は今年五月二十一日。米バージニア州クワンティコ基地の海兵隊戦闘開発指揮(MCCDC)に出向する四軍の連絡担当将校が参加し、海兵隊のジャングル戦闘訓練を見学した。ジャングル戦闘訓練技術のカリキュラムや、性別に関係なくすべての海兵隊員が訓練に参加していることなどが説明されたという。

 同行した米MCCDCのマーク・ギブソン少佐は目的について、第三海兵遠征軍(?MEF)と将来の連携のためだと説明し、「今回の訪問は今後の長期的な目標へのステップとなった」と述べた。在沖米海兵隊は、米軍以外の施設使用は最初に日本政府の許可が必要だと言及したという。

 ドイツ陸軍連絡官ジョージ・エーレット先任上級曹長は「とても素晴らしいプレゼンテーション。ここで訓練を試みることを楽しみにしている」と話したという。


     ◇     ◇     ◇     

現場に作業車 住民抗議/高江ヘリパッド移設


 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、工事中断期限の切れた一日午前、沖縄防衛局員や業者、作業車が現場を訪れた。警戒中の反対派住民や支援者数人が立ちふさがり、局員らと激しく口論、一時騒然とした。

 局員らが去った約十分後、作業員七人が別ゲートから現場へ入り、うち二人が環境調査などを行ったもよう。北部訓練場を自衛隊と、独など四カ国軍が視察したことも明らかになり、反対派は危機感を強めている。

 午前十時、N―4ゲートに、クレーン車など大型車二台と局員らが現れ、「提供施設内です。不法占拠はやめなさい」と立ち退きを要求。ゲート前に待機していた反対派住民や支援者らは、街宣車の上から「米軍基地は造らせない。あなたたちこそ帰れ」などと激しく抗議し、約五分間、にらみ合った。

 局員らはビデオカメラで反対派の動向を記録した後、「必ず工事はします」と言い残し、現場を後にした。約十分後、作業員数人が、ほとんど未着工とみられるG地区付近に入り、約二時間後に外へ出た。「環境調査か」との問いに「はい」と答え、足早に車に乗り込んだ。

 作業員七人が入っていったのを確認したヘリパッドいらない住民の会の伊佐真次共同代表は「一日から来るとは、相手の本気さを感じる」とし「もっと多くの人数で阻止行動を展開しなければ」と危機感を抱いた。

 同訓練場で自衛隊と、三外国軍がジャングル戦闘訓練計画を検討していることについて、同会の安次嶺現達共同代表は「まったくひどい話だ。どうしてこの時期にこんな話が進んでいるのか。現実となれば米軍による事件・事故だけでは済まされない」と話した。

 応援に駆け付けた平和運動センターの山城博治事務局長は「多数の国が北部訓練場を視察していたことで、負担軽減が真っ赤なうそだと証明された。機能強化のためにこの小さな集落にヘリパッドを移設することは許さない」と語気を強めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011700_02.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 1面

沖縄市長、協定更新せず/泡瀬・保安水域

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業のため、沖縄市と米軍が締結している米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定について、沖縄市が今後の協定更新について「新たな基地の提供につながるため署名できない」と事業者の国と県に四月末に通知していたことが一日、分かった。

 これを受け、県は市長に代わって県知事を署名者とする文書を沖縄防衛局長あてに送っているが、米軍からの回答はないという。

 同日の市議会六月定例会で東門美津子市長は「昨年九月に一年期限で更新したが、(埋め立て後は)新たな基地の提供になり、土地利用の制限もある」と説明。「推進せざるを得ない(工事中の)第一区域は保安水域にかからないので影響はない」と述べた。

 東門市長は昨年十二月、同事業について「第一区域は推進、第二区域は推進困難」との考えを正式に表明した。

 市は保安水域にかかる部分については、完成後の土地利用を検討する範囲に入れないとしている。

 知事が署名者となることについて県港湾課は「県にも臨港道路や緑地利用の計画がある。共同使用を継続しなければ埋め立て工事ができなくなる恐れがあり、事業を円滑に進める必要がある」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_02.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 31面

新嘉手納爆音訴訟控訴審/10月結審

 米軍嘉手納基地の周辺住民五千五百四十人が、日米両政府に夜間と早朝の飛行差し止めと、損害賠償などを求めている新嘉手納爆音訴訟控訴審の口頭弁論が一日、福岡高裁那覇支部(河邉義典裁判長)であった。うるささ指数(W値)八五―九五の原告三人が本人尋問で、日米の騒音防止協定が形骸化している点を強調。墜落への不安や生活・睡眠妨害などを訴え、「せめて夜間の飛行の差し止めを」などと求めた。

 控訴審は十月一日の次回弁論で結審し、来年三月ごろに判決が出る見通し。

 うるま市栄野比(=W値八五)のタクシー乗務員、兼島兼俊さん(63)は「旧訴訟から爆音は一向に改善されていない。静かな夜を返してほしいという、ささやなか願いをかなえてほしい」と証言。嘉手納町屋良(=W値九〇)の町議会議員、田仲康栄さん(63)は、飛行経路の変化で自宅上空を戦闘機が旋回するようになり、騒音被害が増していると主張した。

 北谷町砂辺(=W値九五)のタクシー乗務員、国場幸吉さん(57)は「睡眠不足が仕事に影響するなど、精神的にも肉体的にも耐えられない」と述べた。

 原告側は、国が採用している騒音の測定方法は、県の測定結果と大きな食い違いがあり、騒音の実態を過小評価しているとあらためて主張した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_04.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 30面

住民阻止行動で工事再開中止/高江区ヘリパッド

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の東村高江区周辺への移設問題で一日、沖縄防衛局は住民らの阻止行動で立ち入りを自主的に中止した、と説明した。

 同局によると、N―4地区では、仮設事務所を設置するため、工事現場に資材を搬入しようとしたが、妨害のため入ることができなかったという。G地区では、測量調査のため工事現場へ入ったが、反対派住民らが集結したため、危険回避の観点から自主的に中止したとしている。二日以降も工事再開への理解を求めていくという。

 ヘリパッドいらない住民の会は六月三十日から二十四時間の監視態勢を続けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_09.html

 

琉球新報 社説

外国軍の訓練 演習のメッカなどご免だ 2008年7月2日

 ドイツ、イスラエル、オランダの軍隊が米軍北部訓練場でジャングル戦闘訓練を検討していることが明らかになった。

 海兵隊が管理する北部訓練場は米軍が有する唯一のジャングル訓練施設だ。海兵隊、陸、海、空軍各部隊による歩兵演習、ヘリコプター演習、脱出生還訓練などが行われている。

 この上、他国の軍隊が使用するのは基地機能の強化にほかならず、断じて容認できる話ではない。

 沖縄は復帰後36年が経過した現在も、国土のわずか0・6%にすぎない県土に在日米軍専用施設面積の4分の3が集中している。

 米軍基地と隣り合わせの生活を余儀なくされた県民は、米軍機の発着による耐え難い騒音被害に加え、基地から派生する事件・事故の脅威にさらされている。

 過重な基地負担を少しでも軽減させるため米軍の演習はできるだけ減らすべきであって、他国の軍隊に訓練させるなど言語道断だ。

 米海兵隊は、米国以外の軍隊が訓練場を使用するには日本政府の了承が必要と説明している。

 まかり間違っても日本政府が承諾することがないよう、県の側から、あらかじめ強くくぎを刺しておく必要がある。

 米海兵隊のホームページによると、ドイツ、イスラエル、オランダの各軍隊と自衛隊の連絡官が5月21日に北部訓練場を視察した。ドイツ陸軍の連絡官は「ここで訓練できることを楽しみにしている」などと感想を語っている。

 各国軍隊は、北部訓練場で有意義な訓練ができると期待しているかもしれないが、地元にとっては招かれざる客でしかない。

 ひとたび他国の軍隊が訓練場を使用すれば、これをきっかけとして沖縄の米軍基地に世界中から軍隊が集まるようになるだろう。演習のメッカと化したのではたまったものではない。

 北部訓練場では6月9日から13日にかけて120人以上の海兵隊予備歩兵隊(米ミシガン州)が訓練を実施していた。

 沖縄駐留の部隊以外にも使用が拡大されていることは、県民が求める基地負担の軽減に明らかに逆行している。

 日米安全保障条約は、米国に対する施設・区域の提供義務を規定し、その使用目的を「日本国の安全」「極東における国際の平和および安全の維持」に寄与することと定めているが、他国の軍隊が使用していいとはどこにも書いていないのである。

 第三国の軍隊による戦闘訓練は日米地位協定上も認められていない。米軍が、将来的な訓練実施を視野に、他国の軍関係者に訓練場を視察させたこと自体、本来、許されるべきことではない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133743-storytopic-11.html

 

2008年7月3日(木) 朝刊 2面

情報伝達体制を確認/総事局が防災訓練 海保・陸自も参加

 沖縄総合事務局は二日、那覇市の第二地方合同庁舎で、災害時の情報伝達体制の強化を目指す「二〇〇八年度防災訓練(風水害)」を実施した。海上保安庁、陸上自衛隊の担当者ら約六十人が災害対策室に集まり、被災を想定した現場の各事務所などを含め約百人が訓練に参加した。三年前から年に二回、各部で実施しており、同局全体での訓練は初めて。

 同局の福井武弘局長は「災害時においては迅速かつ的確な情報の伝達と、関連機関との防災情報の共有が極めて重要。災害対策室の機材を使いこなし、的確な行動を取ってほしい」とあいさつした。

 訓練は集中豪雨の影響で本島全域と石垣島に大雨洪水警報、宮古島に大雨警報が発令されたと想定。現場の被災情報を道路管理班や河川班などの担当者が集約し、災害対策本部(本部長・福井局長)に報告した。

 同局と海上保安庁からヘリコプター二機が出動し、上空からの映像を配信したほか、北部ダム統合管理事務所などとテレビ会議を実施した。九月には地震を想定した防災訓練を予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031300_05.html

 

2008年7月3日(木) 朝刊 25面

大型輸送機また飛来/CH53D積み 飛び立つ

 【宜野湾】二日午前九時半ごろ、米軍普天間飛行場に米空軍の超大型長距離輸送機C5ギャラクシー一機が飛来した。二〇〇四年八月に沖縄国際大学に墜落したヘリと同型のCH53D大型輸送ヘリ二機を積み込み、同日午後三時ごろ飛び立った。

 ギャラクシーは六月に同飛行場に四回飛来し、CH53D十機のうち、八機を輸送していた。今回の輸送で、同飛行場に配備されるCH53Dはゼロとなった。

 この日の輸送で全十機が別の基地へ運ばれたが、在沖米海兵隊は行き先を明らかにしていない。CH53D再配備の可能性についても、「保安上の理由で訓練や配備の計画は公表できない」と回答した。

 CH53Dは沖国大での事故後、〇七年十一月から〇八年一月にかけて同飛行場に再配備された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031300_06.html

 

琉球新報 社説

泡瀬埋め立て 署名人変更は時代に逆行 2008年7月3日

 中城湾港泡瀬沖合埋め立て(沖縄市東部海浜開発)事業で、米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる第2区域の共同使用協定書に署名しない方針を打ち出した東門美津子沖縄市長に代えて、署名人を仲井真弘多知事にすることを沖縄総合事務局と県が決めた。

 東門市長は昨年12月、第2区域現行計画の「推進は困難と判断した」と表明。ことし4月には署名しないことを国と県に通知している。

 第2区域の土地利用の主体である沖縄市長の考えを国と県が無視する形で、埋め立てを推し進めていくのはいかがなものか。

 目的を達成するためには「手段を選ばず」という手法はあまりにも乱暴である。

 自治体の主体性を奪うような署名人変更は、地方の時代に逆行する行為と言わざるを得ない。

 東門市長は泡瀬沖合埋め立て事業を(1)沖縄市の経済発展につながるのか(2)干潟等の自然環境は守れるのか―の観点を基本に検討したという。

 その結果「新たな基地提供になり得るとともに、土地利用に制約が生じる」ことや「(絶滅危惧(きぐ)種の)クビレミドロが生息していることや残余の部分は大半が干潟にかかる」ことなどを理由に「推進は困難」との判断に至った。

 県は「(第2区域の)埋め立て地には、県が計画している臨港道路や外周緑地帯の整備が含まれる。事業を円滑に推進するためには、共同使用協定の継続が必要だ」としている。

 県の意向よりも、市長の責任で判断した結果の方が軽いということにはならないはずである。

 国と県が決まりを変えてまで自らの考えを押し付けることは地方分権に反する。署名人が容易に差し替えられるということは、協定書が単なる形式にすぎないということにもなりかねない。

 泡瀬沖合埋め立て事業については、賛否があるだけにより慎重な対応が必要だ。

 強行姿勢とも受け取られかねない署名人変更は問題解決をさらに難しくするばかりか、対立を深刻化させる懸念がある。

 地元の代表である沖縄市長が共同使用協定書の署名人となることが自然な形である。露骨な「沖縄市長外し」は市だけでなく、賛否に揺れる市民までをも無視することにつながる。

 東門市長は昨年12月の会見で「国・県と協力して解決しなければならない課題がある」として、国・県と協議する姿勢も示していた。

 国と県、沖縄市の三者が東門市長の計画見直し要求について市民にも内容が分かる形で、まずは話し合うべきである。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133797-storytopic-11.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 1面

知事、「沖合」要求を堅持/普天間飛行場移設/県議会答弁

 県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の代表質問が三日午前から始まった。仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場移設問題で、名護市や県が求めている代替施設の沖合移動で政府との交渉が難航していることについて「政府が地元の意向に十分配慮することで、移設はより円滑に進むと考えている」と述べ、沖合への移動が早期移設の前提となるとの認識を示した。

 知事が認可権限を持つ移設先の公有水面埋め立てへの対応について漢那政弘土木建築部長は「国が承認願書を出す前に、代替施設の位置などについて、国、県、関係市町村が合意する必要がある」と述べ、合意前の認可には応じない姿勢を示した。最初に登壇した翁長政俊氏(自民)への答弁。

 普天間飛行場の三年めどの閉鎖状態の実現や可能な限りの沖合移動について「今後の取り組む方向性について協議会の場で確認する必要がある」と述べ、次回の普天間移設協議会で政府に求めていく姿勢を示した。同飛行場の危険性除去については「基地の提供責任者である政府が示す必要がある」と指摘した。

 県発注工事の談合問題に伴う県の損害賠償請求で、公正取引委員会の違反認定を受けていない共同企業体構成員(Aランク業者)の免除について「規定の趣旨、国の事例等を検討し、複数の法律専門家の意見を聴いた上で、(共同企業体の)各構成員に連帯責任を問うことにした」と否定的な考えを示した。

 業者が損害賠償の減免などを求める調停を申し立てる準備を進めていることについて漢那部長は「仮に県が(減免などの)勧告を受け入れた場合、国は独自の判断で県に対し、国庫補助金の返還を求める可能性は否定できない」との見解を示した。

 那覇空港滑走路増設で最も沖合に建設する「千三百十メートル案」の推進を町村信孝官房長官に先月、要望したことについて仲井真知事は「意見交換の中で申し上げた。県の方針としてはもう少し時間をいただきたい」とした上で、「一番外側の案が望ましいと考えている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_01.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 1面

ハワイ大に沖縄センター/文化・歴史など研究

 【ホノルル=山城リンダ通信員】ハワイ大学は一日(日本時間二日)、「沖縄研究センター」を開設した。海外の大学で沖縄を単独テーマにしたセンター設置は初となる。英語での学術発表が飛躍的に増加するとみられ、沖縄研究の国際化が期待されている。

 大学構内で同日、開設式典が開かれた。リンダ・リングルハワイ州知事は「全米初となる沖縄研究センターの開設は、ハワイの沖縄社会で大事にされてきた価値観や尊敬の心、ハワイ特有の多民族性を反映している」と祝辞を述べた。センター発足のけん引役となったウチナー県系人らも駆け付け、「沖縄研究に広がりが出る」と喜んだ。

 沖縄センターは同大学にある国別の日本、中国、韓国センターと同等機関に位置付けられ、約二十人の教授らを配置。言語、文化、歴史やハワイにおける県系移民の社会学講義を予定している。

 また、在沖米軍基地の法的問題(地位協定など)と日本国内法との関係分析、鎖国時代の沖縄の役割など日本史の中の沖縄の位置付けを探る研究構想もある。

 レオン・セラフィンセンター長は「琉球・沖縄の歴史や移民に加え、沖縄時事問題にも焦点を当てる。琉球大学や南米の大学とも連携していきたい。組踊『二童敵討』の英訳も計画されている」と話した。

 沖縄側からは琉大の大城肇副学長や山里勝己教授(学長補佐、アメリカ研究センター長)らが参加。山里教授が「共同研究、連携強化を図ることにより、アジア・太平洋地域における学術パラダイム(枠組み)の構築に貢献したい」とする岩政輝男学長のメッセージを読み上げた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_02.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 5面 

その後の対馬丸 追う/早乙女さん、岩波から出版

「体験者の人生知って」

 一九四四年八月に、米潜水艦に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の悲劇を、遭難した子どもたちの目線で書いた、「海に沈んだ対馬丸―子どもたちの沖縄戦」(岩波ジュニア新書)がこのほど、発刊された。著者は、那覇市在住の早乙女愛さん(36)=東京都出身。「何も知らない子どもたちが事件に巻き込まれた。彼らの人生を描くことで、不条理な戦争を考え直してほしかった」と思いを語る。

 早乙女さんは幼少時から作家の父・勝元さんの影響で、国内外の戦跡を訪ねて育った。広島、沖縄やポーランドのアウシュビッツ強制収容所などを訪れては自分の考えを文章にまとめてきたが、高校生になると「自分が生きる豊かな現実とのギャップに苦しくなり、戦跡を見に行けなくなった」。

 大学生になって再び戦跡を巡り始めるものの、思いや史実を書き表すことはできなかったという。しかし、二〇〇二年に県内移住後、沖縄戦の体験者から当時の様子を聞いたりするうちに、「次世代に戦争を語り継がなければならない」と筆を執る決意をした。

 対馬丸を題材にしようと考えたのは、「戦争という自覚もないまま船に乗せられて遭難した子どもたちは、体験の記憶を背負ってどんな人生を送っているのか」を知りたかったから。事件当時九―十九歳だった七人を取材。対馬丸に乗船した経緯や漂流時の様子を、証言に沿って子どもの視点で表した。

 「体験者の人生を描くことで、歴史として対馬丸事件を知ってもらいたかった」と早乙女さん。「戦争は人類の歴史の中で起こっており、私たちもその歴史の中に存在していることを多くの人に意識してもらいたい。みんなが伝えるという役割を担う時代になっている」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_05.html

ホテル・ルワンダ

先日、映画「ホテル・ルワンダ」を見ました。

 部族同士が殺し合う、映画では「100万人の死体が残された」となっています。

植民地主義が残した部族対立といわれます。浅学にしてその関連の詳細は今後勉強するしかありません。

 しかし、この「悲惨」を見るとき、慟哭したい思いに、駆られるのです。今は亡き牧師の父平山照次が言っていたように、もしイエスが現代に生きていたら、きっと慟哭していたでしょう。

 こういう部族対立による虐殺に加え、飢えに苦しみ死んでいく子どもたちや人びとがいます。人類発祥の地といわれるアフリカの地での、この悲惨さは、人類的な協力で解決を図るしかないのでしょう。

 天文学的な合衆国と世界の軍事費、食料価格、オイル価格を暴騰させている投機マネーどうして人類はアフリカを救うことができないのか。

 本当に考えさせる映画でした。

 多くの人生を破壊する国内における「格差」に加えて、多くの命を奪う世界的な「格差」を解決しなくては、人類の進歩も空しい感じがします。

 しかし、絶望することなく、なすべきことをなしていくことだと思うのです。

G8サミット以上警備!サウンドデモ参加者が被害


多彩な企画が行われています。写真は北海道に生息する氷河期の生き残り(遺存種=レリック)に関する展示。

 市民サミットに参加するため訪道しています。北海道もなかなか暑いです。こちらにお住まいの方によると今年は気温の変化がいつもの年となにかちがうとのことです。

 今夜北海道の知人たちの集まりで、7月5日のピースウォークに参加した何人かの人から、ピースウォーク対する道警察の警備が、まさに過剰であったことが話されました。道警は、ウォークに参加しようとした市民が参加することを阻止するという違法な行動を行ったが、警官の目が血走っており、抗議することができる雰囲気ではなかった。沿道にびっしりと、盾をウォークに向けて並んでいた。外国から参加した人の話では、こういう「警備」はヨーロッパやアメリカでは見られない、独裁国の警察ではそうするけれど。ということでした。

 まさに道警察は、刑法193条の「職権乱用罪」を犯し、憲法に保障された国民の基本的人権である、ピースウォークに参加するという「表現の自由」を暴力を持って侵害したといわなければなりません。これは2年以下の懲役に当たる犯罪行為です。

 しかも問題は、報道です。きわめて平和的なウォークに対する警察の犯罪行為をまるで逆に描き、ウォークが違法で暴力的であったかのような印象を与えるものとなっています。ウォークが怖いものというように描いて市民が参加することを阻止している点では、公安警察の思惑通りに報道する「権力の下僕」に成り下がっていることは、非常に危険です。沿道の人が「こわいですね」と言ったが、「警察は」と言う主語がついていたようであったが、「ウォークが」といっていたようにすりかえて報道していた、ということも言われていました。

 6月末、韓国のウォークに参加しました。キャンドルをもち、ベビーカーに赤ちゃんを連れた若いご夫婦や、小学生中学生高校生大学生が、多数参加していました。こういうことを阻止し、市民・国民とを切り離すことが彼らの最大の狙いです。今回の警察が作り上げた「事件」の真相をねばりづよく広く市民・国民に知らせることが大事です。

 救援会の設立を大いに歓迎するとともに、できる限り多数の方のご支援ご参加を私も訴えるものです。(2008/7/7)

ーーーーー以下、転載です。転送可ーーーーー

札幌サウンドデモ7・5救援会設立とカンパのお願い

 2008年7月5日、札幌市大通公園で開催されたチャレンジ・ザG8サミットのピースウォークで、「サウンドデモ」部分に対して不当な弾圧がくわえられました。荷台に音響機材を積んだ「サウンドトラック」を公安警察が襲った経緯などで、マスコミ記者も含め最終的に4人の方々が逮捕されました。

 すでに様々なマスコミの報道がありますが、この弾圧は機動隊の過剰警備と公安警察の暴力的な介入によって引き起こされたものです。札幌中央署は被疑事実を「道交法違反」「公安条例違反」「公務執行妨害」としていますが、もちろんピースウォークは事前に申請され、北海道公安委員会に許可されたものです。「サウンドデモ」スタイルによる荷台乗車も、許可された行進形態に含まれていました。

 DJをしていただけで逮捕、あるいは運転席の窓ガラス割った上で運転手を引きずり出して逮捕、などという暴力的なふるまいに対して、現在、有志による救援活動が続けられています。 救援活動に際しては、差入など様々な出費が必要になるため、多くの皆さんに衷心よりカンパを呼びかけます。よろしくお願い申し上げます。

 札幌サウンドデモ7・5救援会

  
 【連絡先】   080-3538-7596   j5sapporo@yahoo.co.jp
 【カンパ振込先】   郵便振替口座:00200-5-38572 名義:S-16   ※札幌救援カンパとご明記ください

原告の証人申請却下/「集団自決」訴訟 普天間爆音に賠償命令/国へ総額1億4000万円 など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(6月25日から30日) 

2008年6月25日(水) 朝刊 1面

きょう控訴審開始/「集団自決」訴訟

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、書籍に命令を出したと記され名誉を傷つけられているとして、座間味島と渡嘉敷島に駐屯していた旧日本軍の元戦隊長やその遺族が、「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎氏(73)と発行元の岩波書店に、慰謝料や出版の差し止めなどを求めている訴訟の控訴審の第一回口頭弁論が二十五日、大阪高裁で開かれる。

 今年三月の一審・大阪地裁判決は、住民の「集団自決」に対する日本軍の深い関与を認定。座間味と渡嘉敷の両島が、戦隊長を頂点とする上意下達の組織だったことを踏まえ、両戦隊長の「集団自決」への関与を「十分に推認できる」と導いた。

 両戦隊長による自決命令は伝達経路がはっきりとせず、書籍に記載されている通りの自決命令の認定には「躊躇を禁じえない」としたが、二〇〇五年度までの教科書検定や学説、文献などを踏まえ、各書籍の記載には合理的な資料や根拠があると指摘。大江氏や「太平洋戦争」の著者の故家永三郎氏が、記した事実を真実と信じる十分な理由があったとして、元戦隊長らの請求を退けた。訴えているのは、座間味島の元戦隊長の梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(75)。一審・大阪判決について、法解釈や事実認定の誤りを主張し全面的に争う方針で、岩波側は控訴の棄却を求める。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806251300_03.html

 

2008年6月25日(水) 朝刊 2面

政府、議事録公表せず/地位協定「公務」範囲拡大

 【東京】政府は二十四日、日米地位協定に基づいて日本側に第一次裁判権がないとされる「公務中」の範囲を、通勤や職場での飲酒にまで拡大した一九五六年三月の日米合同委員会合意に至る日米協議の議事録公表について、「日米両政府の合意なしには公表しない」とする答弁書を閣議決定した。照屋寛徳衆院議員(社民)の質問主意書に対する答弁書で見解を示した。

 地位協定に基づく「公務中」の範囲拡大に関する合同委合意をめぐっては、五六年四月に法務省刑事局長が全国の検事正らにあてた通達で、勤務地への往復時の交通事故を公務中として処理するよう指示している。

 その際には、参考資料として、合意までの協議内容を記した前年(五五年)十一月の合同委刑事裁判権分科委員会議事録を添付していた。

 これらの経緯は、機密解除された米側公文書などで明らかになっているが、政府は今回の答弁書で、「(全国の検事正らにあてた)通達を発出したかどうかを含め、これを公にすることにより、米国政府との信頼関係が損なわれるおそれ、および公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす」として、公表に難色を示している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806251300_05.html

 

2008年6月25日(水) 朝刊 2面

平和運動拡大へ連合集会・デモ/県庁前

 連合は二十四日、県庁前広場で「米軍の整理・縮小と日米地位協定の改正を求める集会」を開き、基地問題の解決に向けて全国で平和運動を続けようと訴えた。

 主催者を代表してあいさつした連合本部総合組織局の大塚敏夫局長は「戦争は六十三年前に終わったが、その傷跡は残っており、問題は解決していない。米軍基地の整理・縮小と日米地位協定の抜本見直しを求めて、全国的な運動をさらに広げていこう」と訴えた。

 そのほか、連合沖縄の仲宗根清和事務局長や民主党県連の喜納昌吉参院議員らがあいさつした。

 全国の地方連合会の会員と構成組織の組合員ら九百人が参加。集会後は国際通りをデモ行進した。

 参加者は集会前には糸数壕や嘉手納基地、普天間飛行場なども視察した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806251300_06.html

 

2008年6月25日(水) 朝刊 26面

仲里議長が勇退/教科書検定撤回9・29実行委員長

 「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長が二十四日、玉寄哲永、小渡ハル子両副委員長に対し、委員長の辞任を伝えた。この日で県議の任期を終えて勇退するため。仲里委員長は「十一万人が集まったあの大会は快挙だった。今後は一個人として協力していきたい」と話した。

 三人は議長室で会談。「多くの方からお引き留めをいただいたが、『議長』として引き受けた以上、辞職が筋と考えた」と説明した。また、教科書出版社でつくる教科書協会が今月の文科省作業部会で「検定審議の非公開」と「執筆者の守秘義務」を主張したことには「要請時には前向きなことを言っていたのにだまされた思いだ」と怒りをあらわにし、両副委員長の手を取って「思いは半ばだが、後をよろしくお願いします」と頭を下げた。

 玉寄副委員長は「仲里さんが委員長だったから『県民党』として団結できた。後任の委員長も、あくまで超党派を組める方を前提に各方面と協議したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806251300_07.html

 

2008年6月25日(水) 朝刊 2面 

07年度不発弾処理781件

 沖縄不発弾等対策協議会(会長・木下誠也沖縄総合事務局次長)が二十四日、沖縄総合事務局であり、二〇〇七年度の不発弾処理件数は七百八十一件、重量は二十五・四トンだったことが報告された。一九七二年からの合計処理件数は三万二十四件、千七百五十七・九トンとなった。

 同協議会は〇八年度事業計画も策定。埋没情報に基づく探査発掘事業は南城市と南風原町で実施する。百平方メートルを超える広域地区探査発掘事業は中南部地区、西原地区など五地区で、市町村が事業主体となって発掘作業をする市町村支援事業は五市三町一村が実施する。全体の経費予算額は四億四千万円。

 同局は〇六年度から〇七年度にかけて、地理情報システム(GIS)を利用した「不発弾等情報地図検索システム」を構築。これまでに不発弾を発見した場所と砲弾の種類、聞き込み調査で得た証言などを管理し、探査している。

 探査を伴わない発見弾の処理費用のうち、二分の一が市町村負担となっている問題については、件数や重量の調査がまとまり次第、内閣府に提出するという。

 協議会には沖縄防衛局や海上保安庁、陸上自衛隊の代表者ら二十人が参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806251300_10.html

 

2008年6月25日(水) 夕刊 5面

史実確定へ全国で動き/「集団自決」控訴審開始

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、座間味島と渡嘉敷島に駐屯していた旧日本軍の元戦隊長やその遺族が、「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎氏(73)と発行元の岩波書店に慰謝料や出版の差し止めなどを求めている訴訟の控訴審が25日午後、大阪高裁で始まる。県内外の歴史研究者や被告支援者たちは「高裁で真実を決定づけてほしい」と期待を込めた。

 一審の大阪地裁は元戦隊長が「集団自決」へ関与したことを「十分に推認できる」と認め、元戦隊長らの請求を退けた。

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず平和教育をすすめる会」の山口剛史琉球大学准教授は「私たちとしては、『軍命』の認定に向けて再び努力するだけだ」と決意を語る。「一審同様、反論すべきは丁寧に反論する。それを沖縄から発信していくことが大切であり、県民の声を法廷に届けるのが私たちの役目。油断せず、控訴審もしっかり支援したい」

 教科書執筆者の一人で歴史教育者協議会の石山久男事務局長は「一審で住民の声が丁寧に検証され、事実認定はもうけりがついている。原告は新しい論点を示せないだろう。高裁には歴史の真実をあらためて示してほしい」と期待を寄せた。

 大阪の支援団体「大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会」の小牧薫事務局長は「一審判決は『集団自決』の体験者の証言や文献を丁寧に受け止めた。支援団体としては、審理の過程で明らかになった『集団自決』の事実と背景を特に若者に広める努力を重ねていきたい」と話した。

 沖縄戦研究で知られる琉球大学の高嶋伸欣名誉教授は「裁判官がまっとうなら、結論はひっくり返りようがない。むしろ高裁が司法の独立を守れるかがポイントであり、法廷審議をチェックしていきたい」という。

 一方で、「原告らが裁判を続けるおかげで、この問題への全国的な関心を維持できる。沖縄の人たちはそのぐらいのたくましさで見守ってもいい」とも語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806251700_02.html

 

2008年6月26日(木) 朝刊 1面

普天間爆音きょう判決/低周波影響が争点

ヘリ墜落苦痛どう判断

 【中部】米軍普天間飛行場の周辺住民三百九十六人が、ヘリコプター部隊を中心とする米軍機の騒音によって健康被害を受けたとして、国に米軍機の夜間・早朝飛行差し止めや四億五千万円余りの損害賠償を求めた普天間爆音訴訟の判決が二十六日午前、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で言い渡される。騒音とヘリ特有の低周波音による健康被害の因果関係や沖縄国際大学へのヘリ墜落事故が精神的苦痛の増大に影響しているかなどが争点で、司法判断が注目される。

 同飛行場は国内唯一のヘリ基地で在沖米海兵隊の拠点。「世界一危険」といわれる同飛行場の騒音に司法が初めて判断を下す。二〇〇二年十月の提訴から五年八カ月が経過した。

 住民は同飛行場のヘリから発生する騒音がW値(うるささ指数)七五以上の地域で受忍限度を超え違法と訴えた。〇四年には同飛行場に隣接する沖縄国際大学構内に大型輸送ヘリが墜落する事故が発生した。

 原告は違法な騒音を発生させないよう根源から防止するため午後七時から午前七時までの離着陸禁止など飛行の差し止めを求めている。

 しかし、全国の基地騒音訴訟では差し止め請求が棄却され続けていることから、普天間訴訟団は、新たに国へ騒音測定を義務付け、軽減措置を図るよう求めた。

 国は低周波音と騒音が複合した場合の見識が確立されていないとして、健康被害との因果関係を否定。騒音測定義務の請求については、侵害予防効果に直結しないと訴えている。

 周囲に百二十一カ所以上の公共施設があり、約九万人の市民が危険と隣り合わせの生活を余儀なくされている普天間飛行場の騒音に、司法はどのような判断を下すか、注目が集まっている。


こぶしに期待込め

訴訟団が前夜集会


 【宜野湾】判決の言い渡しを翌日に控えた普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団は25日、宜野湾市内で前夜集会を開き、米軍普天間飛行場を離着陸するヘリなどの騒音が違法と認められるよう判決に期待を寄せた。

 原告や弁護団、そのほかの支援団体など約50人が参加。

 訴訟の経緯を振り返った後、全員で「勝利のため頑張ろう」とこぶしを突き上げた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806261300_01.html

 

2008年6月26日(木) 朝刊 27面

父も勝利を期待/桃原元市長の長男・純さん原告継ぐ

 普天間爆音訴訟の地裁判決を二十六日に控え、元宜野湾市長の故・桃原正賢さんから訴訟団の原告を引き継いだ長男の純さん(59)=宜野湾市野嵩、那覇工業高教諭=が二十五日、「父も勝利を期待して待っていると思う。宜野湾市民の生命と安全のため、飛行差し止め、基地撤去まで闘い続ける」と、強い決意を語った。

 桃原正賢さんは普天間飛行場の即時撤去を訴え、一九八五年に第八代宜野湾市長に当選。九七年まで三期十二年務め、同飛行場の全面返還に向け尽力した。市長を勇退後は、原告団に加わり二〇〇二年提訴したが、〇四年六月に肝臓がんで亡くなった。

 純さんは普天間小学校六年の時に、当時の宜野湾村議会を見学。議長として登壇する正賢さんの姿を見て政治に打ち込む父親の熱意に感激したという。市長に当選してからは、「正月も休めないような激務。基地返還と市民の利益のために熱意を持って取り組む姿に感動を覚えた」と、しみじみ振り返った。

 一九九六年、橋本龍太郎首相とモンデール駐日米大使が、普天間飛行場の五―七年以内の全面返還を発表した際には、正賢さんは家族に対し、「返還への道筋をつくった」とうれしそうに話したという。市長引退後も、基地問題にかかわる新聞記事のスクラップを欠かさず、米兵による事件や事故を残念がっていた。

 父親の遺志を継ぎながら、「宜野湾市民」としても憤る純さん。二階のベランダから、パイロットの顔が見えるほどの低空を飛ぶ大型ヘリ。「墜落しないかという不安から、騒音が激しいと家を飛び出すこともある」と顔をしかめる。

 純さんは「現実として、米軍機による騒音は『公害』なんです」ときっぱり。仕事で判決の場には立ち会えないが、「勝利」を心して待つという。


基地撤去まで闘う

前夜集会


 【宜野湾】「良識ある判断を」。宜野湾市の「ぎのわんセミナーハウス」で二十五日に開かれた、普天間爆音訴訟団の前夜集会。「抗議の声を上げ続けたい」という女性。事務局として裏方で奮闘した男性。判決前夜、さまざまな思いを胸に、出席した原告や弁護団、支援者ら約五十人はガンバロー三唱で団結し、最後まで闘い抜くことを誓い合った。

 一人で始めた座り込みから判決までの道のりを振り返った島田善次訴訟団長は「爆音漬けの生活を強いているのは誰かはっきりさせてほしい」と司法へ期待を寄せた。

 新垣勉弁護団長は「判決は、長い間爆音にさらされてきた周辺住民にとって大きな一歩となる。ぜひ勝って今後の訴訟のステップにしたい。基地撤去まで闘おう」と呼び掛けた。

 訴訟団事務局次長の仲村渠永昭さん(53)=普天間=は、書類の提出などで何度も裁判所に通ったほか、裁判の経過や日程を告知するチラシを発行するなど、裁判闘争を裏方で支えた。

 仲村渠さんは「飛行差し止めと原告全員の救済が認められれば、これまでの苦労も報われる。静かに暮らしたいという願いは決してぜいたくではないはずだ」と訴えた。

 砂川正子さん(65)=大謝名=は一九九一年に那覇市から引っ越してきた。「国が危険への接近を主張するということは、危険性を国自身が認めているということだ」と国への怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806261300_02.html

 

2008年6月26日(木) 朝刊 1面

原告の証人申請却下/「集団自決」訴訟

 沖縄戦時に座間味島と渡嘉敷島に駐屯していた旧日本軍部隊の元戦隊長やその遺族が、「沖縄ノート」などの書籍で住民に「集団自決(強制集団死)」を命じたと記され、名誉を傷つけられているとして、著者の大江健三郎氏と発行元の岩波書店に慰謝料や出版の差し止めなどを求めている訴訟の控訴審の第一回口頭弁論が二十五日、大阪高裁であった。元戦隊長側は「命令を断定できないことは日本現代史研究者や文科省にとって明らか」として、現代史家の秦郁彦氏を証人申請したが、小田耕治裁判長は却下した。

 元戦隊長側は、旧日本軍の「集団自決」に対する深い関与を認め、両戦隊長による命令を「十分推認できる」とした一審・大阪地裁判決について、「証拠の評価と事実認定が全く恣意的で、到底容認できない」などと批判。

 判決が正当だとしても、隊長命令に真実性が認められなかった一審判決以降、「沖縄ノート」の増刷は違法と主張した。

 日本兵による住民への手榴弾配布をめぐっても、戦隊長命令を否定する根拠になる話があるほか、日本軍が駐屯していなかった屋嘉比島でも「集団自決」は発生している、とした。

 岩波・大江氏側は、一審判決は隊長命令に合理的な資料や根拠があるとして、出版の適法性を明確に認めていると指摘。

 戦隊長側が指摘する日本兵による住民への手榴弾配布は、米軍の捕虜にならないように渡しており、屋嘉比島で二家族が「集団自決」したことが日本軍の関与否定にはならないと反論した。

 第二回口頭弁論は九月九日午後二時から。原告と被告双方の代理人は、今後の証人申請はないとしており、次回の弁論で結審する可能性もある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806261300_03.html

 

2008年6月26日(木) 朝刊 2面

米兵犯罪「抑止具体策を」/連合沖縄 県に働き掛けを要請

 連合沖縄の仲村信正会長らは二十五日、県庁に仲里全輝副知事を訪ね、米兵による一連の事件・事故について米軍内部の管理責任を追及するよう求めた。

 仲村会長は「再発防止策といっても何をするか具体的に見えてこない。せめて凶悪犯罪を犯した米兵を沖縄に入れないなど具体的な対策を日米両政府に求めてほしい」と述べた。

 仲里副知事は「事件が起きるたびに、日米両政府に対して強く抗議、要請しているが、なかなからちが明かない。稲嶺県政の時に提示した十一項目の要請について実態と兼ね合わせて議論し、粘り強く日米両政府に訴えていく」とした。

 また、犯罪歴のある米兵については「日本に駐留する米兵の中から除くように県として求めていきたい」との見解を示した。

 そのほか、在沖米軍四軍調整官の解任や日米地位協定の抜本見直しを日米両政府に強く求めるよう要請した。連合は四月に横浜市で開催した地位協定の見直しに向けた全国集会について、毎年実施する方針としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806261300_04.html

 

琉球新報 社説

海自艦の初訪中 成熟関係構築は非軍事から 2008年6月26日

 海上自衛隊護衛艦「さざなみ」が24日、自衛隊の艦艇として初めて中国を訪れた。昨年11月に中国海軍のミサイル駆逐艦が初来日したのを受けた日中防衛交流の一環である。

 不毛な軍拡競争に陥らないためにも、防衛交流を通して安全保障分野の相互信頼関係を構築することは意義がある。

 石破茂防衛相は自衛艦の初訪中で、日中関係強化に弾みがつくことに期待感を示した。

 国レベルではそうかもしれない。だが、中国国民の反応は関係強化に程遠いと言わざるを得ない。

 自衛艦の訪中は中国国民の感情を刺激した。中国国内のサイトは「何を口実にしようとも、日本軍が中国の土を踏むことに強烈に反対する」など、自衛艦の入港に猛反発する書き込みであふれた。

 中国国内では今も旧日本軍に対する怒りがあり、反発は十分予想されたことである。自衛艦の訪中は時期尚早ではなかったか。冷静に分析する必要がある。

 「さざなみ」が入港した広東省湛江市の軍港に一般市民は入れず、出迎えたのは地元政府関係者ら数十人だけである。国民感情に配慮した結果とも言えるが、それでも配慮が足りない。

 自衛隊は旧日本軍とは違う、と日本が主張しても「さざなみ」の艦上に翻った旧日本軍の「旭日旗」と同じデザインの海自艦旗は、中国国民にとって「侵略」と「屈辱」のシンボルでしかない。

 一般市民が入れない場所とはいえ、反日世論を再燃させかねず、慎重さを求めたい。

 四川大地震の際、物資輸送支援のために自衛隊機の派遣が可能か、中国政府から打診を受けた日本政府は、中国国内の反発などを理由に派遣を見送った。

 「さざなみ」は要請に基づかない被災者への見舞品として毛布や非常用食料を中国側に渡し、自衛隊による初の支援物資輸送となった。

 人道支援は重要であり、今後とも推進するべきである。そのような地道な活動を継続することで、中国国民の理解も得られよう。

 経済関係では日中とも、互いに欠かせない重要な存在となっている。経済関係の次は、両国政府の協力・協調関係づくりである。

 防衛省は自衛隊と人民解放軍による制服同士の信頼醸成を進めるとともに、早ければ今夏に石破防衛相が訪中して防衛交流を加速させたい意向である。

 だが、その前にクリアすべき課題がある。歴史問題では、中国と日本で認識の違いがある。まずはその溝を埋めることが成熟した日中関係構築の出発点である。

 日中交流は非軍事から始めなければ、両国国民を含めた成熟した友好関係構築は望めない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133519-storytopic-11.html

 

2008年6月26日(木) 夕刊 1面

普天間爆音に賠償命令/国へ総額1億4000万円

飛行差し止めは認めず/那覇地裁支部判決

 米軍普天間飛行場の周辺住民三百九十二人が、ヘリコプターなどの騒音に伴う健康・生活被害を訴え、国に夜間と早朝の飛行の差し止めと、計四億五千五百四十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)は二十六日、すべての原告が居住するうるささ指数(W値)七五以上の地域住民に生活・睡眠妨害に伴う精神的被害を認め、国に総額一億四千六百七十万円の支払いを命じた。

 河合裁判長は、訴訟係属中の二〇〇四年八月に起きた沖縄国際大学へのヘリ墜落など、施政権返還後に同飛行場所属の軍用機の事故が七十七件発生していると指摘。住民の墜落に対する不安・恐怖感を精神的な被害として認めた。

 国側が主張した「危険への接近」に伴う免責は、本島中部で騒音の影響を受けない地域が限られていることや、沖縄の人の地元回帰意識が強いことを踏まえた上で、「少なくとも返還が合意された九六年以降はやむをえない」と判断。国側の主張を全面的に退けた。

 ヘリ部隊を中心に大型輸送機や戦闘機が飛来する、同飛行場の騒音の違法性が問われた初めての司法判断。

 住民側が最大の争点に位置付けた低周波音による被害は、難聴や耳鳴りといった健康被害との因果関係を否定。

 騒音発生の責任を明確にするため、住民側が求めた国による継続的な騒音測定についても「国は被害防止の措置をとる法的立場にはない」などとして、認めなかった。

 将来分の賠償と飛行の差し止め請求についても退けた。

 慰謝料の認定額は、W値七五が一日当たり百円。W値八〇は同二百円。国の防音工事助成は、「室内で窓を閉め切り生活するのは一定の限度にとどまる」などとして、施工一室で10%の減額とした。

 河合裁判長は、日米安保条約に基づく普天間飛行場の公共・公益性を認める一方、「周辺住民という一部の限られた犠牲の上でのみ、公共的利益の実現が可能なら、そこには看過できない不公平が存する」などと述べた。

 原告側は控訴に向けて検討するとしている。

 防衛省・中江公人大臣官房長 飛行差し止め請求および将来分の損害賠償請求について、国の主張が認められたことは、妥当な判断が示されたものと評価している。しかし、過去分の損害賠償請求の一部が容認されたことについては、裁判所の理解が得られず残念だ。

 外務省沖縄事務所 司法の判断にコメントすることは差し控えたい。政府は米軍飛行場における航空機騒音問題は、周辺地域住民に大変深刻な問題と認識し、従来より普天間はじめ米軍飛行場周辺住民の負担軽減のため、航空機騒音規制措置を米側と合意するなど対応に努めている。


     ◇     ◇     ◇     

知事「騒音減へ努力を」


 仲井真弘多知事は二十六日、判決を受けて文書でコメントを発表した。

 訴訟について「県としても大きな関心を持って見守ってきた」と述べ、騒音被害に苦しむ原告の主張を一部認める判決は、これまで県が主張してきた危険性と騒音被害が示されたと一定の評価を示した。

 日米両政府に「この判決を踏まえ、普天間飛行場の騒音軽減に努力すべきだ」と求めるとともに、県として「引き続き普天間飛行場の早期移設と、移設までの間の危険性除去、騒音の軽減を粘り強く働き掛ける」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806261700_01.html

 

2008年6月26日(木) 夕刊 4・5面

ヘリの恐怖 なお/差し止め否定不満噴出

 【中部】「この判決では30%(の評価)だ」。二十六日午前、那覇地裁沖縄支部で言い渡された普天間爆音訴訟の判決。騒音W値(うるささ指数)七五以上を「違法」とし、原告全員への賠償を命じた。一方で、普天間飛行場周辺の米軍機の飛行差し止めは棄却し、国の騒音軽減義務を認めなかったことに、原告らは「今後大きな問題を残す」と不満をぶちまけ、控訴を検討する方針を示した。

 「普天間初の被害認定」「米軍の爆音断罪」―。判決直後、二種類の垂れ幕を持った島田善次原告団長らが裁判所から駆け出した。騒音による苦痛など一定の被害を認めた司法の判断に、集まった約二十人の原告や支援者からは、拍手がわき起こった。

 一方、同日午後の沖縄市農民研修センターでの会見では原告団と弁護団から厳しい指摘が相次いだ。

 島田原告団長は「(W値七五以上の)被害が認められたが、差し止めが否定されたことは今後、被害をずっと受け続けなければならないということ」と指摘。さらに「個人的には30%(の判決)だ。カネだけ払えばいいという論理は原告として受け入れられない」と課題を強調した。

 新垣勉弁護団長は「国に騒音軽減義務がないとしたのは問題。どういう理屈で免責されるのか理解できない」と批判。「差し止めができなければ被害軽減義務があるというのが当然の法理論として通るものと思っている。大きな課題を背負ったと言わざるを得ない」と指摘した。一方で、低周波被害については「住民共通の被害の要因として認めなかったことは残念」としつつ、「ヘリ固有の問題として低周波被害が存在すると指摘したのは、今後の足掛かりになる」と一定評価した。

 判決の時間を待ちきれず、午前七時半に裁判所を訪れた原告の知花トシ子さん(73)=宜野湾市嘉数=は「慰霊の日の前日に戦争で亡くなった兄弟に全面勝訴するよう祈ってきた。普天間の爆音に苦しめられて四十六年。基地がなくならない限り、私にとって戦後は終わらない」と話した。


手堅い判決評価


 全国公害弁護団連絡会議の中杉喜代司事務局長の話 睡眠妨害や身体的被害など最近国の訴訟で認められた事が、手堅く判決に表れた事は評価できる。新嘉手納爆音訴訟のW値八五以上が違法と判断した判決がより特異だと証明できた。


勇気の出る判断


 新嘉手納爆音訴訟団の仲村清勇団長 W値七五以上を違法と認めたことは、来年春の新嘉手納爆音訴訟の高裁判決に大きな影響を与える。われわれにとって勇気の出る判決だ。ただ飛行差し止めについては司法の限界を感じた。


一歩踏み込んだ


 松井利仁京都大准教授(環境衛生学)の話 睡眠妨害や、騒音で高血圧や頭痛などの身体的被害が生じる危険性が相当高いと認めるなど、これまでの騒音訴訟判決より一歩踏み込んだ判断で、地域類型の区分によって差を設けなかったことも評価できる。低周波音の影響については、うるささ指数算出の基になる騒音計による測定で過小評価される傾向にあり、精神的被害を算定する際、もっと上乗せするよう考慮すべきだったのではないか。


     ◇     ◇     ◇     

「住民被害認められた」伊波市長


 【宜野湾】普天間爆音訴訟の判決を受け、普天間飛行場を抱える宜野湾市の伊波洋一市長は二十六日午後、同市役所で会見し「W七五区域から慰謝料を認定したことは、普天間飛行場が多くの市民の生活に直接的に被害を与え続けたことを認定するものだ」と評価した。

 一方で、将来分の損害賠償と、夜間から早朝までの米軍機の飛行差し止め要求が却下されたことに「他の爆音訴訟判決を踏襲するもで、却下は残念だ」と厳しい表情を見せた。

 同飛行場の設置や管理についての瑕疵が認められ、住民の「危険性への接近」が否定されたことに「住民の被害が司法の場で認められた」と述べながらも、低周波音による健康被害や騒音の測定請求が認められなかったことには「住宅地上空を飛行するという点で(測定義務について)国に未然防止策を求めるべきだ」と訴えた。


評価・不満 反応は複雑


 「世界一危険」といわれる米軍普天間飛行場の爆音訴訟の判決に、移設先の名護市や県外で同様の訴訟を提起した関係者らは、評価と不満の複雑な反応を見せた。

 名護市のキャンプ・シュワブに隣接する辺野古区に住む島袋権勇市議会議長は「国民は騒音に苦しまずに生活する権利があり、賠償を認めたのは当然」とし、その上で「移設受け入れ側としては、夜間や住宅地上空の飛行禁止を求めて基地使用協定の締結を働き掛けていく」と強調した。

 一方、移設に反対する平和市民連絡会の当山栄事務局長は「『危険への接近』を退けたことは有意義だが、飛行差し止めが認められなかったのは残念。基地を持ってきたら同じような騒音被害を受ける。基地撤去しか被害をなくすことはできない」と話した。

 神奈川県の厚木爆音訴訟原告団副団長の金子豊貴男・相模原市議は「事故の影響にも踏み込んだ点は評価できるが、その他は後退もないが前進もない。司法はこの手の損害賠償訴訟での逃げ方を固定化してきており、打破する方法を考えていきたい」と話した。

 石川県の第五次小松基地爆音訴訟連絡会事務局の長田孝志さんは、「W値七五以上地域の賠償請求権の認定、『危険への接近』の免責否定で、一定のラインが引かれた」と評価。一方で、低周波による健康被害や飛行差し止めの棄却に、「全国基地訴訟連絡会で、普天間の訴訟団とも情報交換し、声を上げていきたい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806261700_02.html

 

2008年6月27日(金) 朝刊 1面 

米と協議再開方針/普天間移設

町村氏、危険性除去向け

 【東京】町村信孝官房長官は二十六日の普天間爆音訴訟判決を受け、同飛行場の危険性除去に向けた米側との協議を再開する考えを初めて示した。同長官は四月の普天間飛行場の移設協議会で、政府が危険性除去策の取り組みを再検討する方針を示していたが、「移設するまでの間、米側と交渉するなど努力したい」とさらに踏み込んだ発言で、県側の要望に応じる姿勢を示した。同日午後の会見で述べた。

 二〇〇四年、沖縄国際大学へのヘリ墜落事故を受け、日米両政府は昨年八月までに、民間地域への墜落事故を防ぐための航空機の場周経路設定など、危険性除去策をまとめていたが、今回の発言は官房長官自身が従来の対応が万全ではないと認めた格好だ。

 また、同長官は「普天間飛行場が危険な状態だからこそ、北部への早期移設が重要。だが一、二年で移設が完了するわけではない」との認識を示し、危険性除去を求め続ける仲井真弘多知事の要望にも言及。「政府も誠実に受け止め、米側と交渉するなど、できるだけ県民の負担を軽減できるよう努力したい」と述べた。

 ただ、日米間の具体的な交渉の在り方については「普天間協議会の場でよく議論しながら、地元の期待に応えられるよう努力したい」とし、明言を避けた。また、「特にこの対策で米側とこういう交渉をしているといったような状態にはない」と現状を説明した。

 普天間飛行場の爆音訴訟判決の結果について、沖縄防衛局の真部朗局長は同日午後の定例懇談会で、「控訴するかどうかも含め、判決内容を熟読し、国の関係機関と調整した上で、対処を考えたい」と述べるにとどまった。


     ◇     ◇     ◇     

基地撤去へ控訴の覚悟/普天間爆音訴訟原告団


 普天間爆音訴訟の判決が言い渡されたことを受け、同原告団は二十六日午後、沖縄市農民研修センターで原告説明会を開いた。島田善次団長は、米軍機の飛行差し止めが棄却されたことに不満を示した上で、「国より先に、われわれが控訴すべきだ」と集まった原告や支援者約二十人に呼び掛け、原告団の結束と今後の運動拡大を確認した。原告は近く控訴する方針。

 説明会では「判決の30%しか評価できない」と厳しい表情を見せる島田団長の姿に、他の原告も同調。会場では「身体的被害を認めたことは一歩踏み込んでいるがリップサービスにすぎない」「W値75以上が認められた今回の判決を前提に、運動を拡大すべきだ」などの声が上がった。

 原告の石川吉子さん(72)=宜野湾市愛知=は「国と闘う私たちの思いをどれだけの国民が知っているのか疑問もある。裁判で沖縄の現状を全国に伝えるとともに、最大の目的である飛行差し止めに向け、普天間飛行場撤去が現実になるまで戦いたい」と語気を強めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806271300_01.html

 

2008年6月27日(金) 朝刊 2面

米、「日本に責任」主張/米軍機訴訟賠償金分担

 【東京】「嘉手納爆音訴訟」など、確定している過去八件の米軍機騒音訴訟の損害賠償をめぐり、米国政府が分担金の支払いに応じていない理由として、「(騒音被害を引き起こす)瑕疵のある施設を(米軍に)提供している日本側に責任がある」と反論し、日本側の支払い請求に応じていないことが二十六日、関係者の話で分かった。損害賠償の一部を容認した同日の「普天間爆音訴訟」判決が、今後確定した場合でも米側が同様の主張を繰り返し、分担金支払いに応じない可能性が高い。

 日米地位協定(一八条五項)では、公務中の米軍による損害の賠償について「合衆国のみが責任を有する場合、裁判により決定された額は、その25%を日本国がその75%を合衆国が分担する」と規定している。

 確定している八件の訴訟の損害賠償額は総額百二十二億円に上り、これまで、日本側が全額を支払った後、米側に75%の負担分を請求している。しかし、交渉が難航し、米側が支払いを免れている状況が続いている。

 「普天間爆音訴訟」弁護団の新垣勉団長は判決後の記者会見で、「米国に請求したが拒絶され、そのまま宙に浮いた状態が続いているという非常に残念な状況がある。問題は非常に深刻だ」と指摘。その上で「日米両政府が共同の加害者であり、それぞれの責任を背負ってその血税で賄うべきだ」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806271300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年6月27日朝刊)

[普天間爆音訴訟]

事態の改善促す判決だ

 一九九六年三月六日、日米両政府の高官が米軍ヘリ三機に分乗し、空から普天間飛行場を視察した。日米両政府が普天間飛行場の危険性や住民負担を認め、返還を発表したのはその一カ月後である。

 返還合意から十二年。一向に改善されない現実を司法はどう判断したのだろうか。

 普天間爆音訴訟の判決で那覇地裁沖縄支部は、「うるささ指数(W値)」七五以上の地域に住む原告について、睡眠妨害などの身体的、精神的苦痛を受けていることを認め、国に約一億四千六百万円の賠償を命じた。

 米軍のヘリ騒音に対し、W値七五以上の違法性が初めて認められた意義は決して小さくない。

 判決は「消音装置の設置や運航対策も現実的な効果が十分とは認められない」と指摘。沖縄国際大学構内へのヘリ墜落事故にも触れ、「墜落の不安や恐怖で精神的被害を著しく増大させている」と指弾している。

 周辺住民の悲痛な叫びを一部くみ取った判決であることは間違いない。国側が主張した「危険への接近」を退けたことも、沖縄の事情を踏まえた妥当な判断だといえる。

 ただ、判決の全体は、決して満足できるものではない。

 深夜・早朝の飛行差し止めについて判決は「第三者行為論」を採用し、原告の要求を退けた。政府は米軍の活動を制限できる立場にないという理屈である。これまでの爆音訴訟の流れに沿ったものだ。逆に言えば、今回も、そこから一歩も踏み出すことができなかったのである。

 裁判の中で原告は、騒音測定を義務付けることを国に求めた。

 実効性のある騒音対策を進めるには、その前提として、きちんとした騒音測定が必要なのは言うまでもない。騒音測定の義務化を盛り込んだことは、普天間爆音訴訟の大きな特徴でもあった。

 だが、判決は、請求の理由がない、とこれを退けている。その理由がとても分かりづらい。W値七五以上の違法性を認めながら、騒音測定の義務付けを認めないというのは、そもそも矛盾した判断ではないのか。

 ヘリ特有の低周波音による健康被害については、不快感などの精神的苦痛を受けている者が多数いることを事実上認めた。

 ただ、住民全体に共通する被害要因としては認めていない。精神的被害をどう算定するか、大きな課題を残したといえる。

 仲井真弘多知事が判決前に語った言葉は問題の核心を突いている。産業プラントに例えて知事は「普通なら問題があると分かれば止めるか、運転レベルを落とす」と指摘した。実際はどうか。

 国は二〇〇七年八月、米軍と協議し、住宅密集地をなるべく通らない新たな飛行ルート案を決めたが、「ほとんど守られていない」(宜野湾市の担当者)という。

 危険性の除去という切実な課題は手つかずの状態だ。政府は判決を真摯に受け止め、「騒音対策」や「危険性の除去」にこれまで以上に力を入れなければならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080627.html#no_1

 

琉球新報 社説

普天間爆音判決 「静かな日々」戻らず/安心できる環境改善望む 2008年6月27日

 安心して暮らせる、静かな日々を求める訴訟は、最大争点の深夜や早朝の飛行差し止め請求が棄却された。これまでの騒音訴訟と同様、国の支配が及ばない「第三者行為論」を理由に退け、「危険の除去」を求めた住民の願いはかなわなかった。

 宜野湾市の中心部にあり、住宅地と隣接する米軍普天間飛行場は、2003年に当時の国防長官、ラムズフェルド氏すら危険性を指摘した沖縄の過重な基地負担の象徴だ。提訴から5年8カ月の歳月は、訴訟を起こした住民約400人のみならず、爆音下に暮らすそのほかの宜野湾市民や、同飛行場への進入路延長線上にある浦添、沖縄、北谷各市町の住民にとっても長すぎる日々だったに違いない。

守られない場周経路

 一方、騒音に対する我慢の限度を超えているとして、うるささ指数(WECPNL、W値)75以上に対しては、過去分で総額約1億4000万円の損害賠償を国に命じた。市街地に立地する普天間飛行場の騒音を裁判所として初めて違法と認めたことは、評価できる。

 04年の沖縄国際大へのヘリコプター墜落事故を契機に、国は飛行ルートについて住宅密集地をなるべく通らないよう米側と合意した。しかし、場周経路は守られず、

市全域を米軍機が飛ぶ現実が続く。

 判決では「消音装置の設置や運航対策も現実的な効果が十分とは認められない」と指摘し、一層の対策を求める。静かな生活を求める住民に対し、より現実的な効果をもたらす対策は重要だ。

 現行の爆音被害の基準はW値のみだ。その指数についても、これまで訴える側が測定し、証明してきた。訴訟では、騒音測定を国に義務付けるよう求めたが、司法は騒音測定の義務化は命じなかった。

 W値については、新嘉手納爆音訴訟で75、80が被害認定から外された。騒音測定で国と県の違いが明らかになり、より多角的で正確な騒音調査の必要性が求められる。

 被害認定で、焦点となっていたヘリコプター特有の低周波音被害については認めなかった。「低周波音によりイライラ感、不快感の精神的苦痛を受けている者が多数いると推認できる」としながらも「原告全員が最低限等しくこのような精神的苦痛を受けていると認めることまではできない」とした。

 07年6月に裁判所が行った現場検証で測定された低周波音は、環境省の参照値を超える数値が測定された。低周波音は、人間の耳には聞こえにくいが、音を感じなくても頭痛や吐き気、耳鳴りでイライラや不眠など人体に影響を与えるとされる。

 環境省の「低周波音への苦情のための参照値」によると、心身に苦痛をもたらす低周波音レベルは92デシベル。現場検証では、調査地点4カ所のうち、3カ所で92デシベルを超え、最大では97・5デシベルだった。

低周波音被害明確に

 現場検証を踏まえ、司法は低周波音について精神的苦痛を受けている住民が「多数いると推認できる」として、その問題点を認めたことは一歩前進だ。科学的に被害を明確にする契機にしたい。

 狭い県土の上、基地があるため居住区域は限られている。国が主張した「危険への接近」法理について司法は「沖縄本島において居住地を選択する幅が限られている事情があり、普天間飛行場周辺の歴史的事情が地元回帰意識を強いものとしている」として退けた。「転居の理由、周辺に存在していることによって得られる利益を期待しているとはいえない」とする司法の判断は、当を得ている。

 「普天間飛行場の設置または管理に瑕疵(かし)がある」として爆音による精神的被害を認めた判決だが、原告団は「飛行差し止めがされなかったことは、被害をずっと受けるということ。差し止めをせず、単に金を払えばいいという考えは原告団として受け入れられない」と控訴を検討する。

 精神的苦痛を認めた判決は、一定の評価ができる。が、住民が耐えてきた最低限の要求が認められたにすぎない。日米両政府が普天間飛行場の返還に合意して12年。移設先の滑走路建設位置をめぐり、政府と県が対立し、14年の移設完了は厳しい。ヘリ墜落事故への不安は一向に解消されない中、返還が先延ばしになれば、住民の安全な暮らしは遠のくばかりだ。この現実を日米両政府はしっかり受け止めてもらいたい。安心できる環境改善に向け、日米の協議を望む。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133549-storytopic-11.html

 

2008年6月27日(金) 夕刊 6面

沖合移動案に難色/西銘議員にヒル米部長

 【東京】訪米中の西銘恒三郎衆院議員(自民)は現地時間の二十六日午後(日本時間二十七日未明)、米国防総省でジョン・ヒル東アジア担当筆頭部長らと面談し、米軍普天間飛行場の移設問題などで意見を交換した。

 西銘氏は面談で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設をめぐり、仲井真弘多知事が代替施設案(V字案)の沖合移動を求めていることなどを伝えた。

 西銘氏によると、ヒル部長は「日米両政府で合意したものを動かそうとすると、さまざまな問題が出てきかねない」と述べ、合意案の修正に難色を示したという

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806271700_06.html

 

2008年6月28日(土) 朝刊 2面

県「最も沖合」案推進/那覇空港滑走路

2本間隔1310メートル以上

 那覇空港拡張整備促進連盟(会長・知念榮治県経営者協会長)の二〇〇八年度総会が二十七日、那覇市内のホテルで開かれた。県の上原良幸企画部長は、那覇空港の滑走路増設について「(現在の滑走路から沖合に)千三百十メートル以上を確保したい、というスタンスだ」と述べ、那覇空港の将来の方策を検討する総合調査ステップ3で示された三案のうち、最も沖合に建設する案を推進する考えを明言した。

 国際民間航空機関(ICAO)は、二本の平行滑走路を持つ空港が同時離陸・同時着陸の独立した飛行管制をする場合、滑走路の間隔を一千三百十メートル以上開ける「オープンパラレル」にすることを義務付けている。上原部長の発言は、オープンパラレル滑走路の必要性を念頭に置いたものだ。

 仲里全輝副知事も「国には、『なるべく経費が安い案で』という意見もあるようだが、二十年、三十年、百年先を見据えた空港の在り方が求められる」と述べた。

 知念会長は、滑走路増設が調査段階から具体案の絞り込みを目指す構想・施設計画段階に移ったことを「私どもの活動の大きな成果だ」と評価。〇八年度の活動では「シンポジウムやPRで県民の意識と機運を高め、国への要請も積極的に行いたい」と意欲を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806281300_01.html

 

2008年6月28日(土) 朝刊 27面

「政府は米国意識」/米兵事件抗議

実行委、回答を批判

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会(玉寄哲永委員長)は二十七日、県選出の野党国会議員が連名で提出した質問主意書への政府回答についての報告会見を県庁で開いた。

 質問主意書は、衆院の照屋寛徳(社民)、赤嶺政賢(共産)、下地幹郎(無所属)、参院の山内徳信(社民)、喜納昌吉(民主)、糸数慶子(無所属)の六氏が今月、連名で提出。三月の県民大会で決議された「日米地位協定の抜本改正」などについて、「実行委が求めた政府からの回がない」などとただした。

 これに対し、政府は「運用改善で機敏に対応していく」との従来見解を閣議決定して回答した。

 玉寄委員長は「回答の内容は相変わらず。県民ではなく米国を向いて仕事をしていることがあらためてはっきりした」と政府を批判。一方で「野党議員の共闘により、これまでは『伝えて終わり』だった要請行動で、政府からきちんと回答を得ることができた」と笑顔も見せた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806281300_04.html

 

2008年6月29日(日) 朝刊 2面

「集団自決」継承に危機感/東京でシンポ

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」訴訟やNHK番組改変訴訟を通し、メディアと権力の問題点を考えるシンポジウム(主催・日本ペンクラブ女性作家委員会など)が28日、都内であった。女性史家の宮城晴美さんや関東学院大の林博史教授(現代史)らが表現の在り方などについて意見交換した。

 宮城さんは「『集団自決』や慰安婦の問題も、私たちが映像や活字できちんと伝えていかないと十年後はどうなるのか」と危機感を訴え、若い世代への継承の重要性を指摘した。

 研究分野の現状について林教授は「問題意識を持って膨大な資料を調べる人がいない。学会でも取り上げられず、専任教員のポストもない。後継者が育っていない」とし、教育現場でも将来的な不安があるとの認識を示した。

 宮城さんは「『集団自決』に大きな影響を与えたと思う家父長制度の論理は、皇民化教育の中で育ったのか」と林教授に質問。林教授は「中等教育を受けた十代の女性層の意識は皇民化教育と言っていい。しかし『集団自決』を受け入れる心情は階層、年代、教育歴などによって異なり、丁寧に検証すべきだ」とした。

 「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの西野瑠美子共同代表も、権力の圧力と自己規制について意見を述べ、放送現場の「表現の自由」と「市民の知る権利」が侵害されたと訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806291300_04.html

 

2008年6月30日(月) 朝刊 19面

ヘリパッド移設阻止誓う/東村高江区 座り込み1年

 【東】北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事に反対する東村高江区の住民らによる「座り込み一周年報告会」(主催・ヘリパッドいらない住民の会)が二十九日、村農民研修施設で開かれた。村内外から約三百五十人(主催者発表)が集まり、阻止行動の継続と支援を誓った。座り込みを始めて七月二日で一年となるのを前に行われた。

 同会の安次嶺現達共同代表は「わずか百六十人の集落をヘリパッドが取り囲むと、高江が消えてしまう。私たちが今必要としているのは人。皆さんと力を合わせたい」と呼び掛けた。座り込み参加者らによるリレートークでは「高江の心を伝えきれずに沖縄の心は伝えきれない」「子どもたちにヘリが飛び交う森を残したくない」などの意見が相次いだ。会では、座り込み参加者が延べ人数で七千人を超えたこと、ヘリパッドの建設即時中止を求める署名が約二万四千人分集まったことも報告された。

 沖縄防衛局は、三―六月は希少鳥類の繁殖期に当たるとし、工事を中断しており、七月に再開する見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806301300_01.html

 

2008年6月30日(月) 朝刊 19面

基地・検定問題 県民の協力訴え/宜野湾で6・29連帯の集い

 新基地建設反対や教科書検定意見撤回を求める「6・29連帯の集い」(主催・同実行委員会)が二十九日、宜野湾市内で開かれ、基地移設先の住民や、「集団自決(強制集団死)」体験者が登壇し、思いを語った。

 七月にヘリパッド移設工事の再開が予定される東村高江区の住民は「区民で賛成者はいないが、同じ反対でも、手法や考え方で温度差があり、公に話すのが難しくなった」と、小さな集落の複雑な住民感情を吐露した。一方で、集落から最短四百メートル、周辺六カ所にヘリパッドが移設されることを挙げ、「辺野古の新基地と連動して使用されれば、住めなくなってしまう。どうすればいいか本当に困っている」と訴えた。

 北谷町砂辺区の松田正二区長は、「基地外住宅」について、砂辺区民九百七十七世帯に対し、米軍関係者は新築分を含め千世帯を超える可能性もあると説明。「子どもたちに負の遺産を残してはいけない。区民が怒り、声を上げたことで、国会でも取り上げられている。今後も県民の力を貸してほしい」と要望した。

 また「集団自決」体験者の與儀九英さん(79)が「体験者が語ることこそが事実。そこから本質を見なければならない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806301300_02.html

 

2008年6月30日(月) 朝刊 18面

島田元知事の顕彰碑を建立/母校が創立100周年で

 戦時下最後の沖縄県知事、故・島田叡さんの母校旧制神戸二中(現・県立兵庫高校)創立百周年事業で建てられた「島田叡氏顕彰碑」の除幕式が二十八日、糸満市の平和祈念公園内で行われた。兵庫、沖縄両県の関係者約八十人が出席した。顕彰碑は戦没県職員を祭った島守の塔前に建立。同校同窓会有志が中心となり、実現した。

 兵庫沖縄友愛運動県民の会も寄付金集めなどに協力した。

 除幕式で仲井真弘多県知事(仲里全輝副知事代読)は「両県民の平和への思いが一つであることを再確認できて、感慨深い」とあいさつ。兵庫県の齋藤富雄副知事は「戦争を知らない世代が増えている中で、意義深い。島田元知事の功績を美化するのではなく、世界平和を一緒に考える機会にしたい」と述べた。

 同窓生で発起人代表の富田和雄さんは、戦時下で食糧確保や住民の疎開に尽力した島田さんの功績を紹介した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806301300_07.html

 

2008年6月30日(月) 夕刊 1面

500人が追悼 平和の鐘響く/宮森小 米軍ジェット機墜落から49年

 【うるま】児童十一人を含む計十七人が犠牲になった旧石川市立宮森小学校の米軍ジェット機墜落事故から四十九年目の六月三十日午前、犠牲者のみ霊を慰める追悼集会がうるま市石川の同校で開かれ、同校の児童や関係者ら約五百人が参加した。

 参加者は、事故で亡くなった十一人の児童をまつる「仲よし地蔵」の前に花と千羽鶴を手向けて、手を合わせた。

 事故の再発防止と世界平和を願う平和の鐘を鳴らした後、静かに黙とう。六年生が「平和な沖縄をつくり、平和の心を磨きたい」と誓いを立てた。

 米軍ジェット機の墜落事故は、一九五九年六月三十日午前十時半ごろ、児童が給食のミルクを飲もうと準備している最中に発生した。

 宮森小学校の卒業生で、二年生の時に墜落事故を体験した平良嘉男校長(56)は「今でも世界では戦争で多くの人が亡くなっている。戦争のない、平和をつくる人になってほしい」と全児童に呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806301700_07.html