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沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月13日、14日、15日)

2007年12月13日(木) 朝刊 1・27面

2月 アセス調査意向/普天間移設協

政府、北部振興凍結解除を決定/サンゴ採捕許可要望

 【東京】米軍普天間飛行場の移設について政府と地元が話し合う「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」(主宰・町村信孝官房長官)の第五回会合が十二日夕、首相官邸で開かれた。石破茂防衛相は、来年二月初めから環境影響評価(アセスメント)調査を行えるよう、サンゴや藻場の「採捕許可」を県側に求めた。しかし仲井真弘多知事は、アセス方法書の内容に関し、「調査方法や事業内容に納得がいかなければ判断できない」と不備を指摘し明言を避けた。次回協議会は一月下旬に行われる予定だ。

 岸田文雄沖縄担当相は、「凍結」していた本年度の北部振興事業費百億円を近く執行する方針を正式に表明し、了承された。額賀福志郎財務相も、同事業費の二〇〇八年度予算計上に前向きな姿勢を示した。

 仲井真知事と島袋吉和名護市長は、住民生活への影響を最小限に抑える必要性を指摘し、V字形滑走路の沖合移動をあらためて要望。島袋市長は、その上で実際にヘリを飛ばして騒音を調査する必要性を指摘した。

 沖合移動について、石破防衛相は「われわれは何が何でも降りないということではないが、合理的理由なく変更することは困難」と述べた上で、情報公開に努める考えを示した。

 一方、東肇宜野座村長は「村上空を飛行ルートから回避することを念頭に計画し、調査してほしい」と要望。石破防衛相は「緊急時も住宅地上空を飛んではならないとするのは、いくらなんでも現実的ではない。訓練の形によっても飛行することがある」と説明した。

 石破防衛相はそのほか、普天間代替施設の各種施設の配置計画を説明。南側の進入灯の長さが約九百二十メートル、北側が約四百三十メートルになると説明。さらに地元の要望を踏まえ、辺野古集落とキャンプ・シュワブの境界沿いに新たな道路を整備し、ゲートを新設する計画を明らかにした。

 弾薬搭載エリアの場所については、周辺の島や飛行場施設、集落と保安距離との位置関係から設定。「嘉手納基地で行うと運用上の支障を来す」と整備の理由を説明した。

 次回協議会は、一月二十一日に期限を迎える法アセスに基づく方法書に対する知事意見の提出後に開き、アセス調査の着手を確認する見通しだ。


     ◇     ◇     ◇     

法に不満/知事「誠意」求める


 【東京】情報の出し渋りだ―。米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の第五回協議会は十二日、県などが代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書の内容の不備を指摘。協議会後の記者会見で、仲井真弘多知事は方法書について「拙速に作ったためか、とても審査できない状態になっている」と批判。県幹部からも協議会での防衛省の説明に対して、「県が情報開示を求めたもので明らかになったものはない」と不満が噴き出した。

 協議会後の都道府県会館での記者会見。仲井真知事は「どういう基地かという説明をもっとやるべきだ」「審査会の質問に対する回答は回答になっていない」と方法書の内容の不備を次々と訴えた。

 協議会で防衛省が来年二月初めにもアセス調査を実施できるよう、県にサンゴなどを採集する「特別採捕」などの許可への対応を求めたのに対し、仲井真知事は「二月にやりたいと言っても、方法書をきちっとクリアしないことにはやれない」と強調。「今の段階では全然詰まっていない」との認識を示した。

 一方で知事は「実際に協議ができる雰囲気になってきた」と協議会で政府との意見交換が進んでいる状況を歓迎した。

 普天間飛行場の危険性除去のためにも、「(代替施設が)早く完成した方がいいと思っている」との持論を展開。その上で「もともと円満な協議さえ成り立てば(アセス調査は)進むべきものだと思っている。その緒に就いたという気がする」と述べ、防衛省が今後、一定の誠意ある対応を示せば、アセス調査の実施に理解を示す考えもほのめかした。


振興策再開「当然」/地元の賛否割れる


 【名護】十二日に開かれた第五回普天間飛行場の移設に関する協議会。北部振興事業の本年度分の予算執行が決まったことを、移設先の名護市など北部首長らは「当然執行すると考えていた」と話すなど、冷静に受け止めた。住民からは手放しで喜びを表す声がある一方で、移設反対派は「政府の言いなりだ」などと、知事らの姿勢や政府主導の協議の在り方を批判した。

 北部振興事業の凍結解除について、北部振興会長の儀武剛金武町長は協議会終了後、「われわれ北部はそもそも『凍結』という受け止めをしていない。当然出るものだと考えていた。だから評価するべき問題ではない」と冷静に受け止めた。

 ただ、額賀福志郎財務相が二〇〇八年度予算への北部振興費計上を明言しなかったことには、「検討するということだと思うが、われわれとしては計上されるというイメージを持っている」と強調した。

 島袋吉和名護市長は「協議会も円滑に進んでいるので、当然執行できると考えている」との認識を示した。

 市長を支持する荻堂盛秀市商工会長は「よかった」と手放しで喜んだ。「どんどん協議を進めていけば、来年度以降の予算執行も問題ないでしょう。政府と県や名護などがお互いに、悔いを残さないように協議を重ねてほしい」と話した。

 一方、ヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「北部振興策は基地建設にリンクしないとして決まったもの。今になって国が地元へのどう喝の材料に利用していることに怒りを覚える。仲井真知事と島袋市長の政治姿勢は情けない」とあきれ返った。

 また、知事からの事業内容の開示に対して、政府側から明確な回答がなかったことには、「防衛省は県民をばかにしたやり方で環境影響評価を進めようとしている。知事は将来に禍根を残すことがないよう、方法書のやり直しを求めるくらい強い姿勢を示すべきだ」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_01.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 27面

FA18騒音3日連続/名護上空旋回 苦情相次ぐ

 【北部】米軍嘉手納基地に一時移駐している米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が十二日も、断続的に名護市上空を飛行した。三日連続での飛行に市基地対策室は同日、沖縄防衛局を通じて米軍に再度、改善を要請した。

 同室には、上空で旋回する戦闘機に「陸上に落ちたらどうするのか」「戦前を思い出すようだ」などの苦情が市民から寄せられた。キャンプ・シュワブに隣接する豊原区の宮城稔区長は「海がすぐそばにあるのになぜ、民間地上空で旋回訓練するのか。米軍は事前に訓練内容を明らかにすべきだ」と憤った。飛行は断続的に続き市全域で騒音が発生したとみられる。

 金武町、宜野座村役場にも住民から十、十一日騒音の苦情があった。


抗議決議をきょう可決


 【名護】FA18戦闘攻撃機とみられる航空機が名護市上空での飛行を繰り返している問題で、同市議会は十二日午前、軍事基地等対策特別委員会(渡具知武宏委員長)を開き、米軍などに対して民間地上空の訓練の即時中止を求める抗議決議をすることを決めた。

 十三日の市議会十二月定例会で可決する見通し。委員会では、「騒音があまりにもひどい」「市民からの苦情も多い」などの意見が出された。

 同市議会では二〇〇一年三月に、FA18の訓練に対して、「名護市内空域における米軍機の訓練飛行の即時中止を求める決議」を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_02.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 27面

「雪の光」に平和願い/糸満市・21日点灯

 【糸満】沖縄戦終えんの地、糸満から平和の願いを発信する「百三十万県民『平和の光』いとまんピースフルイルミネーション」が二十一日から同市摩文仁の糸満観光農園で開かれる。今年のメーンテーマは「雪の光」。来年一月三日まで。入場料は二百円(中学生以下無料)。

 今年は県立芸大デザイン専攻の教員や学生でつくる「チーム・首里サーカス」がデザインを担当。「慰霊の日」に行われた全戦没者追悼式の祭壇デザイン以来、二作目となる。

 巨大オブジェの中に通路があり、ウミンチュの街にちなんで使用した釣り糸に電球を取り付けた。風でしなると電球が揺れ、雪が舞い落ちるように見える。また、偏光メガネ(二百円で販売)で見ると電球が「雪の結晶」に変わる趣向もある。

 十二日、同園で記者発表があり、同チーム代表の北村義典教授は「雪に希望や安心感を重ね合わせた。優しい光に包まれながら楽しんでほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_05.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 26面

「指針」撤回 国に要請/教科書検定

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定の訂正申請で、教科用図書検定審議会(検定審)が文部科学省を通じて教科書会社に書き直しの方針(指針)を伝達していた問題で、出版労連教科書対策部や「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」など三団体は十二日午後、文科省を訪ね、指針の撤回や日本軍の強制に言及した訂正申請を認めることなどを求めた。

 対応した文科省教科書課の担当者は「指針」の存在を否定。これに対し、出版労連などは「(検定審の)考え方に沿わなければ『不合格』になる。考え方は『指針』に当たると解釈せざるを得ない」と反発している。

 要請後に会見した首都圏の会の呼び掛け人で、教科書の執筆者でもある石山久男さんらは「(指針は)日本軍による誘導・強制・命令で『集団自決』が起こった事実をあいまいにし、責任を免罪するものである」との声明を発表。現行の検定制度の下で、訂正申請後に検定審からこうした考え方が示される事例はないと説明した上で、「教科書を発行する側には大きな重圧になる」と批判した。

 また来春から使用の教科書のため、印刷作業を逆算すれば検定審の結論が今月二十日前後になるとの見通しを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_07.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 26面

「沖縄の心伝わった」/「やーさん―」映文連大賞受賞

 【東京】プロが選ぶ短編映画の優れた作品を顕彰する「映文連アワード2007」(映像文化製作者連盟主催)の表彰式が十二日、都内であり、グランプリに輝いた「やーさん ひーさん しからーさん」を製作したシネマ沖縄の末吉真也社長らが賞状とトロフィーを受け取った。

 同映画は県平和祈念資料館の企画で、沖縄戦で戦時を逃れるために本土へ渡った学童や引率教師らの証言をまとめた。末吉社長は「命の尊さを感じ、培った沖縄の心がグランプリという形として結実した。多くの人に見てほしい」と話した。謝名元慶福監督は「沖縄戦を忘れない映画人の良心が受賞につながった」と喜びを語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_09.html

 

琉球新報 社説

新テロ対策法案 国際貢献の在り方再検討を

 今国会の最大の焦点である新テロ対策特別措置法案を今国会で成立させるため、福田康夫首相と公明党の太田昭宏代表は国会の会期を1月15日ごろまで再延長する方針を確認した。

 越年国会は、野党が参院で多数を占める「ねじれ国会」の結果とも言える。

 11月1日で失効したテロ対策特措法が成立した昨年の臨時国会の委員会審議は衆院で2日、参院ではわずか1日だった。今国会では、新テロ対策法案を衆院通過まで約41時間審議した。

 だが、その内実は、与野党が防衛省不祥事や衆院解散などをめぐって駆け引きに終始。日本の国際貢献の在り方についての議論が深まったとは言い難い。

 再延長も、野党が審議を引き延ばした場合、衆院で再議決できるのは「みなし否決」規定を適用できる参院送付後60日以降とのスケジュールを優先しただけのことである。

 新テロ対策法案成立ありきで、議論を重ねる意図は見えない。

 現状では参院で否決されることは確実である。それを無視し、参院の存在をないがしろにするような再延長はいかがなものか。

 この法案は各党の基本政策にかかわるものであり、時間をかけて審議する必要がある。法案には国会承認条項の省略など、文民統制の担保などの課題もある。

 十分な議論なしに成立を急ぐことは避けるべきだ。日本の集団安全保障への参加に関する議論などを尽くすべきだ。

 福田首相は「国際社会の一員としての務めを果たさなければならない」として、インド洋での海上自衛隊の給油活動の早期再開の必要性を訴えている。

 日本は給油活動でしか、国際貢献を果たせないのだろうか。選択肢は給油活動以外にもあるはずだ。

 日本の国際貢献は「対米追従」との批判がある。平和憲法を持つ日本として可能な国際貢献をあらためて検討することが必要だ。

 米国の意向よりも、肝心の国会論議を優先させなければ、国民の理解を得られるはずはない。

(12/13 11:04)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29699-storytopic-11.html

 

2007年12月13日(木) 夕刊 1面

前那覇施設局長を聴取/前防衛次官汚職

 前防衛事務次官の守屋武昌容疑者(63)が逮捕された収賄容疑事件に関連し、東京地検特捜部が十二日、前次官の側近で那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)の前局長(61)から参考人として事情聴取していることが十三日、関係者の話で分かった。前局長は在日米軍再編事業に深くかかわっており、在沖米海兵隊のグアム移転や米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画などについて事情を聴いたとみられる。聴取の事実について、前局長は「ノーコメント」としている。

 防衛専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者(69)=贈賄容疑で再逮捕=が設立した防衛商社「日本ミライズ」は、米軍再編で決まった在沖米海兵隊約八千人のグアム移転に注目。インフラ整備事業への参入を目指していたとされる。

 特捜部は先月二十九日に防衛省を捜索し、米軍再編に関する多数の資料を押収。複数の防衛省関係者から参考人として事情を聴いている。

 前局長は今年三月、守屋容疑者とともに定年を一年延長されていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131700_01.html

 

2007年12月13日(木) 夕刊 1面

米軍また「F15安全」/広報局長発言

 【中部】米軍嘉手納基地を含む、米空軍のF15戦闘機が機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかり、三度目の飛行停止措置が取られている問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)の中川京貴副議長ら八人は十三日、嘉手納基地を訪れ、同基地配備のF15全五十三機の即時撤去を求めて抗議した。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長らによると、応対したジョン・ハッチソン広報局長は「F15は空軍が運用している戦闘機の中でも安全な戦闘機だ」と述べた。同局長は町議会による十一月十四日の抗議でも「F15は最も安全な戦闘機だ」と発言し、批判を浴びている。

 同局長はF15について「日本の防衛にとっても大事な戦闘機」とし、時期は明らかにしなかったが、いずれ飛行を再開する考えを示した。同基地所属のすべてのF15を点検した結果、ロンジロンの亀裂が見つかったのは現時点で二機という。

 同町議会は、米海兵隊岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加した合同即応訓練についても抗議。

 ハッチソン局長は「即応訓練は重要」と答え、継続する方針を示した。外来機の飛来についても「嘉手納基地は外来機の飛来を想定して運用しており、今後も(飛来は)あり得る」と突っぱねた。

 未明離陸については、「機体更新に伴う未明離陸はあと一回だが、これとは別に本国での訓練参加の場合は行うこともある」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131700_02.html

 

2007年12月14日(金) 朝刊 1面

オスプレイ配備 既定方針 宜野湾市が米情報入手

92年計画に記載

 【宜野湾】米軍普天間飛行場内に海兵隊の垂直離着陸機「MV22オスプレイ」の整備格納庫や駐機場を整備する計画が一九九〇年代初頭に策定されていたことが十三日、分かった。宜野湾市が情報公開法に基づき米政府から入手した九二年六月作成の「同飛行場マスタープラン」に記載されていたもので、オスプレイの配備が同飛行場の移設計画以前から既定方針だった実態があらためて浮き彫りになった。同プランでは、「既存の施設はオスプレイ運用には適さない」とした上で、同飛行場内の北西の森林部分を「オスプレイが配備され駐留する場合に備え、その運用と整備のために確保する」と記述、将来的にオスプレイの配備計画を示した。

 計画場所は同市喜友名のゴルフ練習場近くで、最も近い住宅地まで直線距離で約百五十メートル、普天間中学校まで約七百メートルの距離にある。

 伊波洋一市長は「米軍は当初からオスプレイの配備を狙っており、日本政府も承知しているはずだ。住民にまったく情報が公開されず、市民は不安に感じている」と話した。

 オスプレイの県内配備については、在沖米軍トップのジョセフ・ウェーバー四軍調整官などが昨年夏に「二〇一四年から一六年の間に配備する」と発言しており、オスプレイは名護市辺野古の代替施設に配備される可能性が高い。琉球大学の我部政明教授(国際政治)は「老朽化した(主力ヘリの)CH46の後継機として、オスプレイの県内配備は時間の問題だ。移設作業が難航すれば、『普天間』に配備される可能性もある」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141300_01.html

 

2007年12月14日(金) 朝刊 31面

名護議会が抗議決議/FA18爆音

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘機が十日から名護市上空で飛行を繰り返した問題で、名護市議会(島袋権勇議長)は十三日の市議会十二月定例会で、同戦闘機の民間地域上空での飛行訓練即時中止を求める意見書と抗議決議を全会一致で可決した。

 決議は、「米軍戦闘攻撃機によるごう音が発生し、地域住民を不安に陥れた」と指摘。市民の苦情を受けた名護市当局が、沖縄防衛局に改善を求めたにもかかわらず、訓練飛行が繰り返されたことを「断じて許せるものでない」と批判。

 その上で、「飛行訓練に強く抗議するとともに、民間地上空での飛行訓練などを即時中止するよう強く要求する」と訴えている。

 あて先は、決議は在沖米軍四軍調整官、米国大使館など。意見書は首相、外相、防衛相、県知事など。文書で送付する。


同機の帰還は1週間延期か/防衛局通知


 【中部】米軍嘉手納基地を拠点に三日から七日まで行われた米空軍と米海兵隊の合同即応訓練に参加するため、同基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機について、沖縄防衛局は十三日、周辺自治体に対し「FA18の帰還は十八日か十九日になる」と通知。当初の予定だった十二日から延期する方針を伝えた。

 嘉手納基地は当初、FA18は即応訓練終了後も十二日まで同基地を拠点に訓練すると説明していた。沖縄防衛局から連絡を受けた周辺自治体などによると、延期の理由について説明はなかったという。

 一方、在沖米海兵隊は十三日、沖縄タイムス社の取材に「演習に参加した岩国基地所属の航空機は、明日(十四日)沖縄を飛び立つ」と回答、嘉手納基地から連絡を受けた沖縄防衛局の説明と食い違っている。

 FA18は即応訓練終了後、クラスター爆弾などを装着して訓練していたほか、名護市上空の飛行も確認されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141300_02.html

 

2007年12月14日(金) 朝刊 2面

米軍また「F15安全」/3度目飛行停止

 【中部】米軍嘉手納基地を含む、米空軍のF15戦闘機が機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかり、三度目の飛行停止措置が取られている問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)の中川京貴副議長ら八人は十三日、嘉手納基地を訪れ、同基地配備のF15全五十三機の即時撤去を求めて抗議した。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長らによると、応対したジョン・ハッチソン広報局長は「F15は空軍が運用している戦闘機の中でも安全な戦闘機だ」と述べた。

 同局長は町議会による十一月十四日の抗議でも「F15は最も安全な戦闘機だ」と発言し、批判を浴びている。

 同局長はF15について「日本の防衛にとっても大事な戦闘機」とし、時期は明らかにしなかったが、いずれ飛行を再開する考えを示した。同基地所属のすべてのF15を点検した結果、ロンジロンの亀裂が見つかったのは現時点で二機という。


周辺自治体一斉に反発


 【中部】米軍嘉手納基地のジョン・ハッチソン広報局長が「F15は空軍が運用している戦闘機の中でも安全な戦闘機だ」などと発言したことに対し、周辺自治体の首長や議会は一斉に反発した。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会の会長、野国昌春北谷町長は「多くの問題を起こしているF15をいまだに安全という発言は、県民の生命を脅かすものだ。F15以外にも、外来機の騒音など嘉手納基地周辺の基地被害は絶えない。なぜ沖縄だけに負担を押し付けるのか」と語気を強めた。

 同局長に抗議した嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「F15は誰が見ても欠陥機で、住民意識との温度差を感じた。住民の不安を解消するため、何度でも抗議の声を上げ続けたい」と強調した。

 沖縄市議会基地に関する調査特別委員会は十四日に委員会を開き、次々と明らかになるF15の問題などついて対応を協議する。与那嶺克枝委員長は「現状のまま飛行を再開しても、住民の不安はぬぐえない。県や国も米軍に対し、住民の不安を解消するよう働き掛けてほしい」と訴えた。

 同局長は、即応訓練は「日本の防衛のためにも重要」とし、今後も継続する方針を明かした。北谷町議会基地対策特別委員会の照屋正治委員長は「海兵隊と空軍の合同即応訓練では、F15以外の外来機が騒音をまき散らしていた。F15の撤去と同時に、異常な数の外来機による騒音の負担軽減策が必要だ」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月14日朝刊)

[「普天間」移設協]

方法書への疑問に答えよ

 防衛省主導の強硬路線から官邸主導による対話路線へ。普天間飛行場の移設問題を取り巻く環境は表面上一変したように見える。

 だが代替施設が一体どんな基地になるのか、全容はまだ見えない。とりわけ環境面では数々の問題が指摘され、政府の環境影響評価(アセスメント)方法書に対し識者や市民団体から厳しい批判が噴き出している。

 代替施設をめぐる肝心な問題を脇に置いたまま対話ムードが演出される。そんな印象がぬぐえない。

 普天間移設に関する第五回協議会で政府は北部振興事業の凍結解除を表明し、来年二月から方法書に基づくアセス調査を開始する意向を示した。

 仲井真弘多知事は方法書や情報開示の不備を指摘。「厳しい答申にならざるを得ない」とくぎを刺し、県の方法書審査や知事意見に対する政府側の誠意ある対応を求めた。

 これに対し、石破茂防衛相はアセス法に基づき必要事項を記載しており、方法書としての要件は整っているとの見解を示している。

 だが、方法書をめぐっては、さまざまな不備が指摘されている。

 県環境影響評価審査会は「方法書で示されたアセスの項目や手法が適切なものであるか否かを判断するに足る内容が示されているとは言い難い」と厳しい指摘をしている。

 三十五項目の追加説明を求める質問書を沖縄防衛局長に送付したが、質問の大半について具体的な回答が得られなかったため、審査会は方法書に対する厳しい姿勢を変えていない。

 垂直離着陸機オスプレイの配備、戦闘航空機装弾場や大型護岸の整備、緊急時の住宅地上空飛行など、重要情報が米側の証言や文書で判明し、防衛省の説明は後手に回ってきた。

 説明が不十分な部分があまりにも多い。このような「隠ぺい体質」で移設作業を進めようとする姿勢が地元の不信を招くのである。

 県や名護市が求めている沖合移動については、防衛相は「合理的理由なく変更することは困難」と従来姿勢を繰り返した。今後は沖合移動の問題が焦点になるのは確かだろう。

 しかし、沖合移動が実現すれば、普天間移設をめぐるすべての問題が解決されるわけではない。方法書の種々の不備が指摘される中で、この問題を置き去りにし、アセス調査を強行することは許されない。

 審査会の答申を受け、県は二十一日までに知事意見を提出する。これに対し政府がどのような対応をするのかが大きな焦点になる。方法書の問題に対し、県は厳しい態度で臨むべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071214.html#no_1

 

琉球新報 社説

思いやり予算 「対米譲歩」に歯止め必要

 またも「対米譲歩」で幕である。12日に決着した在日米軍駐留経費負担(おもいやり予算)の特別協定改定問題は、日本側が米側要求をほぼ「丸のみ」して、終わった。外交力の差を見せつけられた日米交渉だった。

 交渉は、現行の特別協定経費負担額1409億円の「大幅減額」が焦点だった。

 だが、結果は米軍基地で使う電気、ガス、水道の光熱水料(現行253億円)を3年間で8億円削減する「微減」にとどまった。

 経費の大半を占める労務費(1150億円)や訓練移転費(5億円)、基地従業員の上限労働者数(2万3055人)も現状維持となった。

 「微減」の背景には、インド洋での海上自衛隊の給油活動中断などへの日本政府の「対米配慮」がある。高村正彦外相は「日米同盟の維持・強化の面で極めて有益」と、対米交渉の結果をむしろ自賛している。いかがなものか。

 今後は「思いやり予算」のうち、地位協定に基づく提供施設整備費の大幅削減の可否に焦点が移る。

 そもそも「思いやり予算」自体、支出を義務付ける規定が、日米地位協定にもない。

 逆に、地位協定(第24条1項)では、在日米軍を「維持することにともなうすべての経費」は、施設区域の提供などを除き「協定の存続期間中日本側に負担をかけないで米側が負担する」こととされている。米軍が直接雇用する基地従業員の労務費もその1つだ。

 さらに「光熱水料」は「米側が負担すべき経費」の「典型的な経費」(機密文書「日米地位協定の考え方」増補版)とまで外務省は明記している。

 それを日本は、ベトナム戦争で財政悪化した米国からの駐留経費の負担要求交渉に屈し、1978年から地位協定の規定を超える駐留経費の負担を始めている。

 地位協定を超える超法規的支出の根拠が、当時の金丸信防衛庁長官が使った「いわゆる思いやりで」である。

 米国の財政難対策で62億円から始まった思いやり予算は、米国の財政改善、景気浮揚後も継続され、91年には光熱水料の負担まで拡大。95年には年間2700億円を超え、本年度も2170億円を超える。

 累計ではすでに6兆6千億円を超え、その他の在日米軍駐留経費も含めると倍の規模になる。

 国の借金は国債など833兆円を超える。その日本が、年間50兆円を軍事費に投入できる米国を「思いやれる」立場にはない。

 伸び悩む税収の中で、年金問題や医療、教育改革など高まる行政ニーズに応えるためにも、論拠無き支出の削減を実現したい。

(12/14 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29718-storytopic-11.html

 

2007年12月14日(金) 夕刊 1面

思いやり予算 包括見直し 日米確認

 【東京】石破茂防衛相と米国のゲーツ国防長官が十一月に会談した際、在日米軍駐留経費(思いやり予算)の在り方について包括的見直しを視野に継続協議する方針を確認していたことが十四日分かった。石破氏が閣議後会見で明らかにした。

 石破氏は日米両国の厳しい財政事情を指摘し、「互いに納税者によって成り立っている国であり、より包括的な見直しについて事務レベルのみならず政治レベルにおいても、胸襟を開いた議論が必要」と意義を強調。その上で、「新特別協定が(四月に)発効した後、速やかに日米で協議することになる。不断にやっていかなければならないものだ」と説明した。

 また、特別協定は冷戦時にできたもので前提条件が変わった―とも指摘。安全保障環境の変化や米軍再編を念頭に「抑止力をどう維持するかという観点からも議論されなければならない。政治レベル交渉も含め、日米間で具体的に詰めて合意したい」と意欲を示した。

 一方、日米地位協定に基づく基地従業員の「格差給」廃止をめぐる全駐留軍労働組合(全駐労)との労務交渉については、「労働者の将来の生活設計に思いを致しつつ、厳しい財政事情を勘案しながら一致点を見いだすべく努力する」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141700_01.html

 

2007年12月14日(金) 夕刊 7面 

戦跡114カ所のガイド本発刊/県平和祈念資料館

 【糸満】県平和祈念資料館(宮城智子館長)は戦跡ガイドブック「沖縄の戦争遺跡」(発売元・沖縄学販)を発刊した。平和学習に役立てられるように県内の代表的な戦争遺跡百十四カ所を掲載。資料館によると、公的機関が全県を網羅したガイドブックを発刊するのは全国初という。

 発刊報告会が十三日、同館で開かれ、宮城館長は「親子やグループなど地域で平和学習に活用することができる。県全体のことも分かりやすく伝えており、遺跡の再認識にもつながる」と発刊の意義を語った。

 ガイドブックはオールカラーで、全七十ページ。沖縄本島や周辺離島、宮古、八重山まで県内全域に及ぶ戦跡を紹介している。県立埋蔵文化財センターの調査で報告された県内九百七十九カ所から、平和学習の際の安全面や沖縄戦を考える上で重要とされる遺跡を掲載した。地図や遺物の写真などを盛り込み、家庭や学校でも活用できるように分かりやすい内容を心掛けたという。

 戦争遺跡を研究し、ガイドブックに解説を寄せた吉浜忍沖縄国際大教授は「戦争体験者も少なくなり、戦争遺跡のような『本物』に触れてもらうことが沖縄戦の実相を伝えていく上で重要だ。発刊を機に、資料館ではフィールドワークの企画なども実施してほしい」と話した。

 ガイドブックは県内の小中高校に配布し、来週ごろから県内書店に並ぶ予定。資料館内のミュージアムショップでは、すでに販売を始めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141700_02.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 1面

書き直し明確に要求「普天間」代替アセス方法書

県審査会17日答申 強制力付与が焦点

 米軍普天間飛行場代替施設の建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書について審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十四日、方法書の記載内容が不十分だとして、事業者の沖縄防衛局に方法書を書き直し再提出するよう求める答申案を取りまとめた。書き直し要求をさらに明確にした上で、十七日に仲井真弘多知事に提出する。県条例を根拠に、書き直しに強制力を持たせるか、要望にとどめるかが焦点。防衛局への知事意見提出の締め切りは二十一日。

 答申は方法書の再提出を要求。アセスに着手する前に知事意見や住民意見、事業内容の具体化に基づく書き直しの内容を提示させ、再審査を求めていく。

 今回、沖縄防衛局は審査会に対し新たに、十二日に首相官邸で開かれた「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」で示された建設計画に関する資料を提出。方法書に記載されていない、戦闘航空機装弾場や進入灯の長さ、洗機場など新たな内容が示された。

 これに対し委員らは「審査会はこれらの施設が記載されていない方法書について審議していることになる」と指摘。新たな施設内容は、アセス法や県条例で方法書の書き直しを事業者に強制する「事業内容の大きな変更」に当たるとして、「この方法書がアセス法の要件を満たしていると判断されていることに疑問を感じる」「機が熟していないと判断し、方法書を差し戻し、再審査することは可能か」「審査会の総意としてこの方法書はやり直すべきだ」との意見が相次いだ。

 委員らは協議会で国側が「二月からアセス調査を実施する」としていることにも懸念を表明。方法書の予測評価の中には、「技術的に国が示す工程表通りの進行は絶対に無理な項目もある」として、アセスをないがしろにして進めようとする国の姿勢を批判した。

 津嘉山会長は「現行アセス法上、差し戻しはできない」との見解を示した上で、「委員からの意見を踏まえ、最終答申案を作っていく」と述べた。

 今答申は、県条例で規定された飛行場建設部分に限られ、埋め立て部分についての答申は年明けにずれ込む。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_01.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 27面

秘密主義 強く批判/アセス方法書 書き直し要求

 米軍普天間飛行場の代替施設建設をめぐって、沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)方法書を審議していた県環境影響評価審査会は十四日、八回の議論を経て、書き直し要求の結論に行き着いた。同局の秘密主義を容認すれば「アセス法が死ぬ」と、委員の危機感が噴出した。

 傍聴に詰め掛けた市民らは「画期的」と拍手を送りつつ、答申を受ける県の姿勢を注視する。

 「国であれ民間であれ、故意の情報隠蔽があってはならない」。備瀬ヒロ子委員(都市科学政策研究所代表取締役)は、「米国との協議」を盾に詳細を明らかにしない防衛局の姿勢を批判。「アセス法の精神にのっとった内容かを問わず、項目さえそろえば要件を満たしたと判断するのか。死に法の下の審査会になる」と強い口調で語った。

 委員が代わる代わるマイクを握る。宮城邦治副会長(沖国大教授)は、報道などで情報を知らされる状況に、「審査会そのものが無視されている」と不快感をあらわに。堤純一郎委員(琉大教授)は「洗機場などが入って、かなり大きな変革。修正を強く求めることが必要だ」と求めた。

 うなずきながら聞き入った津嘉山正光会長(琉大名誉教授)も、「オスプレイ配備は方法書を出す時に分かっていたはずだ」。事務局の県環境政策課も「防衛局の情報提供は非常に悪い」と、同意せざるを得なかった。

 審議では市民団体の要請書が紹介され、委員は傍聴席からの発言にも耳を傾けた。ヘリ基地いらない二見以北十区の会の浦島悦子共同代表は「他府県では珍しいようだが、市民の意見を取り入れるのがアセスの本来の姿。答申は、専門家と市民の合作と言えるのではないか」と、高く評価した。

 平和市民連絡会の当山栄事務局長も「科学者が良心に基づき論議した結果」とした上で、「今後は県がどれだけ審査会の考えを尊重するかだ」と、視線を県に向けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_02.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 1面

陸自一混、米で訓練

年明け1―2月「島しょ侵略対応」

 【東京】防衛省陸上幕僚監部は十四日、来年一月二十一日―二月十五日にかけて米カリフォルニア州で実施される日米共同の「島しょ部に対する侵略への対応のための訓練」に陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が初めて参加すると発表した。

 同訓練は二〇〇五年度から行われており、陸幕は「島しょが集中している西部方面隊管内の部隊の能力を優先的に向上させることが必要。特に、多くの離島が所在する第一混成団の能力向上は急務」と説明している。

 その一方で、同訓練について「多様な事態に対処する戦術・戦闘能力を向上するためのもので、先島などの特定地域を念頭に置くものではない」とも話している。

 第一混成団普通科中隊から九十四人が参加。昨年度も参加した西部方面普通科連隊(長崎県)の小銃小隊と合わせ、陸自側は計百七十九人。

 米側は第一海兵遠征軍の部隊が参加、拠点の米カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトンで実施する。

 機関銃や小銃、拳銃、無反動砲を使用するが、陸幕は「実弾を使用した射撃訓練は実施しない」としている。訓練は「ゲリラや特殊部隊による攻撃などへの対応」も想定し、戦術・戦闘能力の向上を目的としている。

 陸幕は「国内に対応できる訓練場がない。米海兵隊の実戦経験に裏付けられたノウハウも学ぶことができる」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_03.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 2面

ハンセン日米使用「受け入れは負担減」/金武町長が認識示す

 【金武】在日米軍再編に基づく米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊の共同使用を受け入れた、儀武剛金武町長は十四日開会した同町議会(松田義政議長)十二月定例会冒頭で、受け入れの経緯を説明し、理解を求めた。

 儀武町長は「現在、町側で行われている不発弾処理が、恩納村側との二カ所になるので負担減だと考えている。射撃戦闘訓練は二百人程度の中規模で、グアムへの移転する(ハンセン内の)海兵隊員数はそれより多いとイメージしている」と答え、負担増にはならないとの認識を示した。仲間昌信議員の質問に答えた。

 しかし、沖縄防衛局からグアムへ移転する海兵隊員数や時期などは知らされていないとした。議員の間からは明確な負担減の根拠が示されない中での受け入れに不満や撤回を求める声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(12月8日から12日)

2007年12月8日(土) 朝刊 27面

文科省、「指針」否定/教科書検定再申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、山内徳信参院議員(社民)は七日、文部科学省に布村幸彦大臣官房審議官を訪ね、同省が教科書会社に示した「指針」を公表することなどを要請した。山内氏らによると、布村審議官は「そういう指針は作っていない」と報道内容を明確に否定したという。

 一方、文科省による「指針」の伝達を公表した関係者は同日、沖縄タイム社の取材に「文科省が文書を読み上げ、口頭で方針を教科書会社に伝えたのは事実だ」と反論し、双方の言い分は真っ向から食い違っている。

 保坂展人衆院議員(社民)も同日、渡海紀三朗文科相と面談し「指針」の事実関係をただした。保坂氏によると渡海氏は「(報道は)極端な書き方をしている」という趣旨の説明をしたという。

 渡海氏は一方で、訂正申請の審議が終了した際の大臣談話の発表については前向きな意向を示したという。

 布村審議官は山内氏らに、六社の訂正申請手続き後、文科省が教科書会社とやりとりをしたことは認めた。ただ、その内容は「これから審議に諮る判断として、何が(訂正申請の理由になった検定規則上の)『学習上の支障』に当たるか根拠を(教科書会社に)聞いた」と述べ、文科省から「指針」に当たる方針を示した事実はないとした。

 その上で「報道されているようなことは一切、していない」「(訂正申請で)記述を書き直した根拠を問うただけだ」などと釈明したという。

 布村審議官はほかに(1)年内には審議結果をまとめたい(2)審議会が意見を聞いている専門家の氏名は、本人の了承があれば審議終了後に公表する(3)意見は幅広い専門家に聞いている―などの現状を明らかにしたという。


「軍強制」の明記求める/仲里議長


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は七日午後、緊急会見し、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する高校歴史教科書検定問題で教科用図書審議会が「指針」をまとめ、教科書会社に「日本軍の命令」を明記しないよう求めたことに対し、「軍の強制」の明記を求める談話を発表した。

 談話は「(指針が)『旧日本軍』という主語や『強制など』の言葉を抜くことで、全体をあいまいな表現に修正しようとするものであれば、県民の体験やこれまでの取り組みをないがしろにするもので許せない」と批判した。

 談話では「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝拓殖大教授などが県民大会の参加者数を主催者の発表よりも少なく伝えたり、仲里議長が沖縄戦時に日本兵から毒の入ったおにぎりを渡されたとする証言を「作り話」と批判していることにも言及。「ぜひ沖縄に来て凄惨を極めた沖縄戦の中で親が子を子が親を殺さなければならなかったという『集団自決』がどうして引き起こされたのか直視してもらいたい」と訴えた。「うそ呼ばわりすることは県民への侮辱」と反発した。


「戦陣訓」を記述へ/教科書会社1社


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定で、文部科学省が教科書会社六社に訂正申請の書き直しを求めていた問題で、新たに一社が「集団自決」の背景に軍官民共生共死の方針の一端を示す「戦陣訓」の教えがあったことを盛り込んで再申請することを決めた。関係者が七日、明らかにした。

 「集団自決」に複合的な要因があったことを記述で説明し、再申請することを教科書会社に求めた文科省の「指針」に沿った記述。文科省幹部は報道内容を否定しているが、教科書会社のこうした対応は「指針」の存在を裏付けるものと言えそうだ。

 「戦陣訓」は戦時中に日本軍が「生きて虜囚の辱めを受けず」として、米軍の捕虜になることを禁じた教え。軍だけでなく住民にも浸透し、沖縄戦で民間人が「集団自決」に追い込まれた要因の一つとされる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_01.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 1面

早期移設へ協議加速/仲井真知事、就任1周年で意欲

 十日で就任一周年となる仲井真弘多知事は七日、本紙など報道各社の合同インタビューに応じた。

 公約に掲げた米軍普天間飛行場の早期移設や同飛行場の「三年を目途とした閉鎖状態」の実現については、予想以上に日米両政府の壁が厚かったと振り返った。その上で、「(協議を)一年やり続けて、ようやく課題解決を前に進めるための(政府との)意見交換が始まりだした感じだ」と述べ、早期移設に向けた政府との協議を今後加速させる考えを強調した。

 また、公約の柱である完全失業率の全国平均並み実現は、現時点で厳しい状況にあることを認めた。今後の取り組みについては、トヨタのような自動車産業の九州工場がアジアの展開基地になっていることを例示し、「(今後)台湾や米国、中国なども回ってみようと思う」と語り、企業誘致に向けたトップセールスに意欲を示した。

 さらに、将来の道州制導入にも言及。「沖縄も一回は、自分で財政を含めてほかの地区と同じ形で、特別な制度でなくやっていく必要がある。経済の自立なくして沖縄の発展はない」と述べた。

 就任一年の公約全般の達成度については、「産業振興や雇用創出・拡大、基地負担の軽減などに取り組んできた。県政全般のほとんどのことに、何らかの形で着手できたものと考えている」と総括した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_02.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 2面

全駐労 団交不調、妥結見送り/第3波スト11日に判断

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の手当廃止を提案した問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千八百人)は七日、防衛省と五回目の団体交渉に臨んだ。全駐労側は、手当廃止分を固定して補償する対案を引き続き求めたが、防衛省側から前向きな回答はなく、妥結は見送られた。

 これを受け、全駐労は十一月三十日以来となる第三波ストライキを十二日に決行する方針を確認した。しかし、来週にも最終決着する日米協議を見据え、スト前日の十一日に三役が防衛省と交渉に臨み、最終判断する考えだ。

 第三波として計画しているのは、十二日の沖縄に始まり十四日の神奈川まで、各地で順次八時間ストを行う「リレーストライキ」。第二波と同様、一般職種の就労時間に合わせた八時間のストで、実質的に二十四時間ストとなる。

 全駐労によると、この日の団体交渉で防衛省は全駐労の対案について「今の段階では難しい」としながらも、「打開に向け一生懸命取り組みたい」と述べ、継続して財務省と折衝する考えを示したという。

 防衛省幹部も同日、「防衛省として一歩も(譲らない)というわけではない」と妥結に前向きな姿勢を示した。


防衛政務官 妥結に意欲


 【東京】政府が基地従業員の手当廃止を提案している問題で、防衛省の寺田稔大臣政務官は七日、「全駐労と誠心誠意妥結を目指し、交渉していく」と早期妥結に意欲を示した。衆院外務委員会で述べた。

 寺田政務官は、手当廃止後の経過措置の在り方をめぐり、全駐労が示している(手当廃止分を固定して補償する)対案を検討していることも明らかにした。


基地従業員の不利益と指摘

駐留軍労政議員懇


 【東京】政府が基地従業員の手当廃止を提案している問題で、国会議員でつくる駐留軍労働政策議員懇談会(会長・横路孝弘衆院議員)は七日、国会に防衛省の寺田稔大臣政務官を訪ね、従業員への配慮を要請した。

 同議員懇談会は、防衛省提案に「労働者と家族の日常生活に影響を及ぼす不利益変更の提案だ」と指摘。(1)廃止分を固定補償額として定年まで支給(2)国家公務員を下回る勤務条件の改善―などを求めた。寺田政務官は「精いっぱい努力したい」などと述べるにとどめたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_04.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 27面

機能強化 住民放置/米軍合同即応訓練終わる

 米軍嘉手納基地を拠点に、三日から行われていた米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練は七日、終了した。第一八航空団に加え、岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊約六百人が参加。有事に備え、実弾を装着して飛行するFA18、爆発音や煙を伴う訓練などが確認された。一方で、基地周辺に住む住民からは騒音被害を訴える苦情が相次いだ。嘉手納基地で米海兵隊と合同で即応訓練を実施するのは初めてで、目に見える形で進む「基地機能強化」が、不安を募らせる住民を置き去りにしている実態が浮かぶ。(中部支社・福里賢矢)

不安な夜


 七日未明、嘉手納町水釜の住宅街は静寂に包まれていた。「エクササイズ、エクササイズ」。午前二時すぎ、突如嘉手納基地から拡声器放送が行われた。内容は聞き取りづらく、数分間にわたって不気味に響いた。嘉手納町に寄せられた九件の苦情のうち、大半は昼夜を問わずに行われたサイレン音や拡声器放送に対するものだった。

 「意味の分からない放送にはもう耐えられない」「睡眠薬を飲んで眠ろうとしても寝れない。せめて夜は静かにしてほしい」。寄せられた苦情からは、不安な夜を過ごす町民の実態が浮き彫りとなった。

 一方で、FA18は日没後も飛行訓練を続けた。嘉手納町が屋良地区に設置している騒音測定器は、三日から六日まで、多くの人が不快に感じる騒音(七〇デシベル以上)を一日平均百六回を計測。飛行停止中のF15戦闘機が通常運用していた十月の一日平均騒音発生回数九十一回を上回った。

 今回の訓練について、米空軍は六日、ホームページ(HP)で「ミサイル攻撃、大規模災害、基地防御、化学攻撃などが含まれる」と、これまで公表しなかった訓練内容の一部を明らかにした。

 同HPで嘉手納基地のブレット・ウィリアムズ司令官は「不測の事態に外来部隊を受け入れ、活用する任務を訓練する素晴らしい機会だ。海兵隊にとっても、合同訓練の成果は大きい」と成果を誇示した。


統合運用


 日米両政府は二〇〇六年、沖縄の基地負担軽減をうたった在日米軍再編に合意。屋良区の島袋敏雄区長は「これで嘉手納も少しは静かになる」と期待した。

 しかし、合意後も嘉手納基地をめぐる動きは活発化。地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備され、SACO(日米特別行動委員会)合意に基づき、伊江島補助飛行場で行われるはずのパラシュート降下訓練も実施された。今回の即応訓練では、米軍の軍種間の垣根を取り払う「統合運用」推進の流れが沖縄でも具体化した。

 負担軽減の目玉とされたF15の本土訓練移転は三月を皮切りに、五機程度が参加し、ほぼ二カ月に一度のペースで実施されるだけ。島袋区長は「政府が優先するのは軍事か住民が安心できる生活か。住民の声を聞いて判断してほしい」と切実な思いを訴えた。


     ◇     ◇     ◇     

北谷町桑江で騒音激増


 【北谷】米軍嘉手納基地で、米空軍と米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が、合同即応訓練を実施した今月三日からの四日間、北谷町桑江地区で九〇デシベル(騒々しい工場内に相当)以上の騒音が、普段の約二倍以上の十八回計測されていたことが分かった。

 同町によると、同地区で十一月に計測された九〇デシベル以上の騒音は、一週間当たり五回前後だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_06.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 2面

「集団自決」修正/知事、撤回要求は堅持

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は七日、二日目の一般質問が行われた。

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題への対応について、仲井真弘多知事は「現在、教科用図書検定調査審議会が行われているが、(教科書検定意見撤回を求める県民大会の)十一万人の集会の背景を忘れず、県民の意向に応えられるようやっていきたい」と述べ、検定意見の撤回と記述回復を求めていく姿勢をあらためて強調した。当山全弘氏(社大・結連合)の質問に答えた。

 米軍再編交付金の交付基準の在り方については、上原昭知事公室長が「再編関連特定周辺市町村の指定について基準が明確に規定されておらず、交付金支給の有無を含め法律運用の大部分が政省令に委任されている。これは県として好ましいものではないと考える」との認識を示した。兼城賢次氏(護憲ネット)への答弁。

 道州制論議を活発化させるため、議員連盟や沖縄道州制懇話会が設立されたことに、仲井真知事は「調査研究や県民視点での論議が進み、道州制問題に関する県民理解が一層深まると期待している」と述べ、県も県民への普及啓発等で連携を図っていく考えを示した。平良長政氏(護憲ネット)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月8日朝刊)

[F15に亀裂]

欠陥機は運用中止せよ

 米国ミズーリ州で墜落事故を起こし飛行停止措置が取られた米空軍のF15戦闘機には、事故機固有の原因ではなく、構造上の欠陥があることが裏付けられた。

 嘉手納基地周辺の住民の懸念は的中した。欠陥機が日常的に離着陸を繰り返し、上空を飛行していた。住民や周辺自治体が怒るのは当然だ。

 嘉手納基地所属のF15は約五十機。三十機の整備点検を済ませたところ、二機について機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかった。整備点検が進めば、さらに増える可能性もある。

 米国で十一月二日に発生したF15の墜落事故の後、米空軍は「構造上の欠陥」の可能性があるとして、飛行停止命令を出した。

 嘉手納基地は、詳細な整備調査のチェックリストと照らし合わせ、一機当たり十五時間以上かけて点検したと説明し、二十六日から飛行を再開した。

 米空軍は二十八日に再停止を発表。今月四日には点検個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性があるとして三回目の飛行停止を決めた。

 詳細な点検でも主原因とされる亀裂は発見できなかった。嘉手納基地所属のF15の飛行再開は、事故原因が確定できない段階で「見切り発車」による決定だったことになる。

 安全性が担保されない中での再開であり、住民軽視にもほどがある。米空軍は住民の安全よりもF15の運用を優先していた。政府はこの問題を重く受け止める必要がある。

 住民の安全にかかわる問題を政府が許容し放置するようでは、周辺住民の怒りと不安は収まらないだろう。

 米空軍は一九七四年からF15の配備を開始した。現在世界各地に約七百機が展開しており、六日までに計五機に亀裂が確認された。六日時点では計七機との報道もある。

 F15は構造検査技術の向上などで耐用期間(距離)が延長されてきたが、専門家らは老朽化の問題があると指摘していた。嘉手納基地所属のF15約五十機の製造年の新しい機体への入れ替えも、老朽化が理由だった。

 米空軍によるコンピューターのシミュレーション結果では、ロンジロンの亀裂が墜落事故につながる構造的問題が発生する可能性が示されたという。

 米軍がF15の欠陥を深刻に受け止めている以上、政府が座視することは許されない。基地周辺住民の安全を最優先する対応を強く求めていくべきだ。

 F15は「最も安全な戦闘機」という神話は崩壊した。欠陥が疑われるF15については運用を即刻中止し、嘉手納基地からの撤去を急ぐしかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071208.html#no_1

 

2007年12月9日(日) 朝刊 1・27面

「軍だけが強制」禁止/文科省指針 全容判明

複合的要因を強調/教科書・再申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、文部科学省が教科書会社に伝達した訂正申請の書き直しの方針(指針)の全容が八日までに分かった。関係者が明らかにした。「集団自決」の背景に複合的な要因があったことを繰り返し強調。「過度に単純化した表現」は「生徒の理解が十分にならない恐れがある」として、日本軍だけが住民に「集団自決」を強制したと読み取れる表現を事実上、禁じている。

 一方で「集団自決」が自発的な死ではなく、住民が「『集団自決』せざるを得ない状況に追い込まれた」ことは認め、その「背景・要因」を詳細に記述するよう促している。このため、「集団自決」を強制した主体(主語)が、軍だけでなく複数にまたがる記述であれば、容認する方針を示しているとみられる。

 指針は教科用図書検定調査審議会の意向を受け、文科省が作成したようだ。

 関係者によると指針は四日、文科省の教科書調査官から、訂正申請した六社の担当者に伝達された。文科省の布村幸彦大臣官房審議官は七日、「そういう指針は作っていない」と否定したが、全文が判明したことによって苦しい説明を迫られそうだ。

 指針は、「沖縄戦」の項目では「軍官民一体となった戦時体制下で、住民を巻き込んだ地上戦が行われた」と指摘。「集団自決」の項目では「太平洋戦争末期の沖縄で、住民が戦闘に巻き込まれるという異常な状況下で起こった」として、一般住民を巻き込んだ沖縄戦の特殊性を強調した。

 その背景として「当時の教育訓練」や「感情の植え付け」があったと述べ、「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓や「死は鴻毛よりも軽しと覚悟せよ」の軍人勅諭との関係性を示唆している。日本軍の命令については「直接的な軍の命令に基づいて行われたということは、現時点では確認できていない」として、記述しないよう求めている。


     ◇     ◇     ◇     

「軍責任のごまかし」/体験者・識者ら懸念


 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、教科用図書検定調査審議会が沖縄戦や「集団自決」の教科書記述について各教科書会社に伝えた「指針」の内容が明らかになった。複合的な要因を記させるとともに、軍による直接の命令を否定する内容に、検定意見の撤回を求めている関係者らは「『軍の強制』をあいまいにしようとしているのではないか」などと懸念している。

 「教科書検定意見の撤回を求める県民大会」の玉寄哲永副委員長は、開口一番に「審議委員や教科書調査官は沖縄戦をまったく分かっていない」と非難した。

 指針が「沖縄では軍・官・民一体となった戦時体制の中」としている点を、「県民が沖縄を地上戦の舞台にすることや、軍への協力を自発的に望んだわけではない」と批判。「異常な戦時体制をつくり、教育訓練を施したのは軍だ。沖縄戦全体が軍命によるもので、それを否定すれば、かえって『集団自決』の本質が分からなくなる」と述べた。

 琉球大の高嶋伸欣教授は、「『過度に単純化した表現』は駄目だというのが一番の本音。『軍による強制』は書かせたくないということを示したものだ」と指摘する。

 一方で「背景・要因を書き加えれば考慮する姿勢も見せており、厳しい世論を考慮せざるを得ないという審議会の立場の表れとも読み取れる」とも説明。その上で「こういうもの(指針に隠されている文科省の意図)に対してきちんと原則を守るよう声を上げることが必要だ」と強調した。

 文科省からの要請を受け、「集団自決」教科書検定問題についての意見書を提出した林博史・関東学院大教授は「沖縄戦で起きた『集団自決』の一番の要因である『日本軍の強制』の記述を認めるかどうかが最大のポイントだ」と説明する。

 「『直接的な軍命』を『確認できていない』としているが、検定では、これを理由に軍の強制を削除させた。同じことが繰り返されないか」と懸念する。「前提に日本軍の強制を挙げ、背景としてさまざまな要因を書かせるならいいが、背景だけを書かせて強制を書かせない意図であれば、ごまかしにすぎない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712091300_01.html

 

2007年12月10日(月) 夕刊 1面

防衛局「即応訓練必要」/北谷議会抗議

 北谷町議会(宮里友常議長)は十日午前、外務省沖縄事務所、沖縄防衛局を訪ね、嘉手納基地所属のF15戦闘機の即時撤去と、米海兵隊と米空軍合同の即応訓練などによる基地機能強化への抗議を申し入れた。

 即応訓練について、沖縄防衛局の池部衛次長は「いざというときに、嘉手納の空軍と岩国の海兵隊の航空機が協力し合って対応することは必要」と述べ、有事の際などの統合運用に向けた訓練の意義を強調した。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「現状の抑止力を維持し、即応性を高めることは重要。訓練を実施するなとは言えない」とする一方、米空軍と米海兵隊合同の即応訓練は定期的に実施されるものではない、と説明した。

 また、倉光副所長は在韓米軍機による沖縄周辺海域の射爆撃場での訓練増加の可能性を指摘され、「東アジアの安全にとって在日米軍だけが運用上必要ということではなく、在韓米軍と在日米軍が協調しながら対応する。在韓米軍の訓練が関係ないということではない」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712101700_01.html

 

2007年12月10日(月) 夕刊 6面

米政府提訴の可能性を議論/「普天間」で市がシンポ

 【宜野湾】普天間飛行場問題シンポジウム「米国政府訴訟の可能性」(主催・宜野湾市)が九日、市中央公民館で開かれた。同飛行場は米国の安全基準に違反しているとして、人権侵害などを根拠に米国で米政府を訴える可能性について議論を深めた。

 基調講演で、NPO法人ピースデポ代表の梅林宏道さんが米国海兵隊基地の安全基準について基調講演。飛行場周辺の土地利用が制限された「航空施設整合利用ゾーン(AICUZ)」をめぐり、訴訟の根拠となることなどを説明した。

 パネルディスカッションでは梅林さんのほか、米国ジュゴン訴訟原告の真喜志好一さんや普天間爆音訴訟団弁護団長の新垣勉さん、伊波洋一市長が米国政府訴訟の可能性について議論。高良鉄美琉大教授がコーディネートした。

 梅林さんは米国で訴訟を起こす際、米国外の普天間問題をどの法律に当てはめて提訴するか問題提起。「最初のハードルが高い」としながらも「人権侵害として訴えれば法律の道筋が付けられるのではないか」と話した。

 新垣さんは法治国家の日本で、普天間の運用は法律に基づかない前近代的な状況だと指摘。米国の国家賠償での訴訟や米国外でも適用される法律を探して裁判に持ち込む可能性を示し、「市民運動と裁判が一体となって米国の責任を追及するべきだ」と述べた。

 真喜志さんは米国の国家歴史遺産保護法に基づき、ジュゴンの保護策を示させることで海上基地建設の反対を示した経緯を説明。伊波市長は普天間の騒音被害が深刻化している現状を訴え、「米国内で直接被害を与えては基地は存在し得ず、米国政府訴訟の可能性を探りたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712101700_07.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 1面

北部振興事業 執行へ/政府が方針 あす表明

 【東京】政府は十二日に開かれる米軍普天間飛行場の移設に関する協議会(主宰・町村信孝官房長官)で、本年度分の北部振興事業費(百億円)の執行と、二〇〇八年度分(同額)の計上を表明する方針を固めた。議題の環境影響評価(アセスメント)と建設計画に関する協議終了後、岸田文雄沖縄担当相が本年度分の執行、額賀福志郎財務相が〇八年度分の計上を、それぞれ明らかにする方向で調整している。

 協議会はアセスに関する審議で、方法書への知事意見が今月二十一日に県条例の提出期限を迎えることを踏まえ、年明けからアセス法に基づく正式な手続きに入ることを確認。アセス調査を円滑に進めて早期の移設を実現するため、国と地元が互いに努力するとの趣旨で合意する。

 この合意を経て、北部振興事業費の執行条件である「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」環境が整ったと判断するもようだ。

 ただ、県環境影響評価審査会が方法書に厳しい見解を表明している現状を踏まえ、仲井真弘多知事は防衛省に丁寧な調査や代替施設の機能に関する一層の情報公開を強く求めるとみられる。

 北部振興事業費をめぐっては、二〇〇六年五月の閣議決定で、いったん「廃止」が決定。同年八月の第一回協議会で、小池百合子沖縄担当相(当時)が執行条件を提示し、了承された。

 同年十一月の知事選で仲井真知事が当選したのを機に、北部振興の継続に難色を示していた防衛庁(当時)も執行に同意した。

 しかし、県や名護市が普天間代替施設の沖合移動を強く求めたことから、政府は「協議が円滑に進む状況にない」と判断。例年は八月初旬に執行される同事業費の本年度分を凍結した。地元がV字形滑走路案の建設に協力しない限り、〇八年度予算にも計上しない考えを示していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_01.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 1・2・27面

普天間アセス/審査会が再審査要求

 米軍普天間飛行場代替施設建設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の不備を指摘し、事業者の沖縄防衛局に文書での追加説明を求めていた県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十日、追加説明の内容を審議。「方法書と認めるのは難しい」として、委員から準備書までに再審査の機会を要求する声が上がった。防衛局は「知事意見で指摘があれば検討する」と回答。津嘉山会長は「答申は方法書の不備を指摘していく」とし、答申案を検討する中で再審査の機会を要求する可能性を示唆した。

 方法書から準備書までの段階で、アセス手法について環境影響評価審査会の意見を聞くことは現行法では、想定されておらず、実現すれば極めて異例。

 審査会の委員らは方法書について「現時点で事業計画の熟度が低いために、アセス手法全体が仮定の計画の上に成り立っており、審議に値しない」と指摘。その上で、防衛局が方法書の内容のほとんどについて「準備書までに明らかにする」としていることから、「準備書までの早い時期に、それぞれ事業や計画の内容についてあらためて具体的な情報を出してもらい、意見を述べる機会をつくってもらいたい」と要望した。

 これに対し、同局は「知事からの意見として仮に出れば当然事業者として検討する必要があると思う」と述べた。

 津嘉山会長は「もし答申でそうした指摘があれば、対応を検討していただけるということだと思う」との見解を示した。

 前審査会で追加説明に対する回答を口頭説明にとどめ批判を浴びた沖縄防衛局は今回、あらためて文書で回答した。「美謝川切り替え」「作業ヤード」「護岸用ブロック等」を新たに付記した概略工程表を提示。

 しかし今月からの着手予定が、米側との調整の関係で来年三月に遅れる見通しの「隊舎等の建物の建築工事」の時期については工程表の項目から外れた。

 同局は「二〇〇九年七月末のアセス完了をめどに進めている」と明らかにしたが、審査委員からは「通常のアセスなら三、四年かかる内容だが(設定通りで)大丈夫なのか」とアセスの拙速を指摘する声も出た。

 同方法書については知事意見の提出締め切りが二十一日に迫っている。次回審査会は十一日で、審査会は遅くとも来週初めまでに答申をまとめる方針。


     ◇     ◇     ◇     

住宅地飛行 否定せず


 代替施設での基本的な飛行経路について沖縄防衛局は「北東より」または「南西より」の風を前提に設定。審査会委員から「風の向きが想定と違うときは、内陸部も飛行すると理解していいのか」との指摘が出た。これに対し、同局は「(滑走路に対して)横風とかはあり得るとは思うが、横風の場合は飛ばないということではなく、北東、南西いずれかの方向で離陸もしくは着陸という形になると思う」と歯切れの悪い回答に終始した。

 「基本的に、向かってくる風に離陸、着陸する形を考えている」。沖縄防衛局は、典型的な例として北東の風が吹いているときの離着陸イメージをスライドで示した。

 風向きについては「年間を通して北東よりの風が70%、その他が30%」とのデータ結果を強調。その上で「北東より、あるいは南西よりの風を想定している」と説明し、風向きによってV字形滑走路を使い分け、集落上空飛行を避ける考えを示した。

 しかし、風は常に「北東より」あるいは「南東より」に吹くとは限らない。

 審査会委員からは「北東や南西とは違う向きの風が吹いているときはどうするのか」との質問が出た。

 これに対し、同局は「滑走路に対して極めて強い横風が吹く事態が生じた場合には、離着陸は難しくなるかと思うが、そういった程度でなければいずれかの方向で離着陸する形になる」と回答した。

 審査会委員からは「北東よりの風が70%」とするデータの根拠にも疑問が呈された。

 同局は前回審査会の口頭説明と同様、「基本的には住宅地上空を飛行しない」とした上で、「緊急時などの例外的なケースはあり得るが、その際の飛行コースをあらかじめ示すことは困難」とした。

 防衛省は国会答弁で「訓練形態によっては当然(集落上空を)飛ぶことはあり得る」と表明しているが、これについても前回同様に「個別具体的な飛行コースについては現時点で米側と議論しているものではない」として明示しなかった。

 審査会委員からは騒音コンターや飛行コースの説明不備に苦言が呈されたが、同局は「環境影響評価を行うために必要な航空機騒音コンター図およびそれに関するデータは準備書の段階までに明らかにする」との回答にとどめている。


「審議に値せず」


 米軍普天間飛行場代替施設建設のアセス方法書は審議に値しない―。十日に開かれた県環境影響評価審査会。「現状でできる限りの情報を提供している」と繰り返す沖縄防衛局の説明に対し、同審査会の委員らは「具体的な回答を頂いていない」「方法書の根拠となった最低限の事業内容さえも説明していない」と反論。来週初めに予定されている答申は事実上、審査未了の形で提出される可能性も示唆した。

 審議は予定時間を超過して行われたが、防衛局と審査会の意見は平行線をたどった。方法書の体を成していないと指摘する委員らに対し、同局は「できる限りデータは出している」「準備書までに明らかにする」との回答を繰り返した。

 方法書の不備は、建設事業にかかわる工程で、どれも一方法しか検討されていないことでも明らかになった。作業ヤードは大浦湾を大規模に埋め立てて造るとしていることに、委員からは「埋め立てが環境に与える影響は大きく、当然変更もあり得る。それなのに別の案を検討していない」と述べた。

 飛行場建設の埋め立て土砂の一割を辺野古ダム周辺から採取することについては、「九割をほかから採取するのに、なぜ一割だけダム周辺から採取するのか合理的な説明がない」と疑問視。土砂を採取した跡地に兵舎建設の計画が検討されているとし、「兵舎は方法書で記載されていない。ほかの計画があるならば明確にしてほしい」と指摘した。

 方法書全体について、「飛行場建設に伴う住民生活や環境影響を真に考慮するという事業者の姿勢が見えない」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_02.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 27面

審議会指針「軍強制薄める狙い」/抗議声明相次ぐ

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、文科省が訂正申請をした教科書会社に示した教科用図書検定調査審議会の指針の内容に対して、十日、県内の市民団体から相次いで抗議声明が出された。

 抗議声明は「あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク」(反基地ネット)と「おきなわ教育支援ネットワーク」(教育支援ネット)が単独で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(平和教育をすすめる会)と「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会が共同でそれぞれ発表した。

 いずれも「『軍の強制』をあいまいにするものだ」、「『集団自決』体験者の証言や、県民大会で示された県民の意志を無視したものだ」などと指針を厳しく批判し、文科省に記述回復と検定意見の撤回を求めている。

 沖縄戦体験者の佐久川政一・教育支援ネット共同代表は「県民は軍により死へと追いやられたというのが沖縄戦での実感だ。多くの体験者の証言が『集団自決』への軍命、強制を示している。それ以外の背景を詳述させるのは『軍の強制』を薄めるのが狙いだからだ」と話した。

 平和教育をすすめる会の高嶋伸欣共同代表は「指針では『過度に単純化した表現』などとあいまいな言葉で基準が示されており、文科省に対して立場の弱い教科書会社が過剰反応を起こす恐れもある」と指摘した。

 反基地ネットの當山全治共同代表が「九月の県民大会から時間がたつにつれ、検定意見撤回の動きが後退している」と危機感を募らせるなど、各団体とも今後の対応を急ぐ考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_06.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 27面

クラスター弾搭載/嘉手納FA18

 【嘉手納】米軍嘉手納基地に一時的に移駐している海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が、非人道的兵器として国際的に非難を受けているクラスター爆弾を装着して飛行しているのが十日、確認された。

 目撃者によると、FA18は午前十時すぎ、二機が左翼下にそれぞれ四発のクラスター爆弾を装着して離陸。同爆弾には実弾を示すとみられる黄色い帯状の印が確認された。

 約二時間後、嘉手納基地に着陸した際には計八発の同爆弾はなくなっていたことから、沖縄本島周辺で使用した可能性がある。日没後の午後七時四十五分ごろにも、同様にクラスター爆弾を装着したFA18二機が離陸した。

 FA18は、今月三日から七日まで、嘉手納基地を拠点に行われていた米空軍と米海兵隊合同の即応訓練に参加していた。


     ◇     ◇     ◇     

土曜の騒音 北谷4倍増


 【北谷】嘉手納基地の騒音防止協定で飛行が禁止されている土曜日に当たる八日、同基地に隣接する北谷町砂辺地区で、七〇デシベル以上の騒音が、普段の約四倍に当たる四十回計測されていたことが分かった。この日の平均騒音は一〇六・四デシベル(電車通過時の線路脇に相当)、最大は一一二・九デシベル(二メートル手前からの自動車のクラクションに相当)だった。

 同基地には、今月三日から七日まで行われた米空軍と米海兵隊の合同即応訓練に伴い、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機が飛来。十二日まで駐留し続け、別の訓練を予定している。

 同町によると、嘉手納基地所属のF15戦闘機が、米本国での墜落事故を受けて飛行を停止した十一月の土曜日の平均騒音回数は二十回。F15が通常運行していた十月の平均は十一回だった。

 砂辺地区では八日、沖縄平和運動センターなど四団体が嘉手納基地のF15戦闘機の即時撤去を訴え、同基地第一ゲート前で抗議集会を行っていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_07.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 1面

在沖海兵隊グアム移転12年から/米紙報道

 米軍再編の最終報告(ロードマップ)に盛り込まれた沖縄の第三海兵遠征軍(IIIMEF)の司令部などのグアムへの移転が二〇一二年から開始予定であることが十一日、分かった。司令部はグアム島北部の米海軍通信施設に移転、一四年を目標に全面運用する。マスタープラン(基本計画)案を来年三月、実務レベルの同プランを来年夏までに策定。米国の二〇一〇年会計年度の予算編成が始まる〇九年二月までに、より詳細な実施計画を固める方針という。

 米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」が同日、グアム統合計画室の責任者の見解として報じた。

 在沖米海兵隊八千人のグアム移転は、一四年に名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に完成予定の米軍普天間飛行場代替施設や嘉手納以南の米軍施設返還と「パッケージ」とされている。普天間代替施設の完成を待たずに、司令部移転を前倒しで開始する可能性については、これまでケビン・メア在沖米国総領事が示唆していたが、具体的な移転開始時期が明らかになったのは初めて。

 同紙によると、グアム統合計画室の責任者は「グアムへは第一陣が一二年に到着予定。一四年には完全に運用できる能力を整えたい」と説明。さらに「グアムでは新たな(射撃用、砲撃用)レンジを建設し、民間地との緩衝地帯を設けるため、基地を拡張する可能性がある。グアム周辺のマリアナ諸島でも、大規模訓練場の建設計画がある」としている。

 グアムの軍事強化は在沖海兵隊の移転のほか、米陸軍、米海軍の増強を計画。軍事強化されたグアムでは駐留兵員だけでなく、沖縄、アラスカ、ハワイなどの兵員も訓練を実施する見込みという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_01.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 1面

海自掃海艦 派遣裏付け/今年5月普天間事前調査

 【東京】山内徳信参院議員(社民)は十一日までに、米軍普天間飛行場の移設に向けた名護市キャンプ・シュワブ沿岸部周辺での現況調査(事前調査)で、今年五月に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」が派遣され、調査に協力していたことを裏付ける防衛省の内部資料を入手した。

 ぶんごは五月十一日、海自横須賀基地(神奈川県)を出港して以降、海域で確認されておらず、行動の詳細が明らかになるのは初めて。

 資料は市民が防衛省に対して情報公開請求した。一部は「以後の海自の任務の効果的な遂行に支障を及ぼす恐れがある」などと黒塗りで不開示となっている。

 不開示理由の中には「運用形態等を公にすると、今後の同種作業の能率的な遂行が妨害行動により不当に阻害される恐れがある」との記述もあり、今後の海域調査でも海自が派遣される可能性を示唆している。

 資料によると、五月十一日にぶんごの「環境現況調査協力の実施に関する海上幕僚長指示」などがなされ、六月二十日には「終結に関する海上幕僚長指示」が出されている。その間、「中断に関する自衛艦隊一般命令」も出されているが、日付は明らかにしていない。

 このほか、現場部隊は「掃海隊群司令部(水中処分班を含む)」と明記。海底への機器設置作業に海自の潜水士が参加したことが裏付けられた。

 山内氏は「ぶんご」の再出動の有無などについて、十一日午後の参院外交防衛委員会で政府の対応をただす。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_02.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 5面

FA18名護上空で騒音/米軍、詳細言及せず

 【名護】米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が十日、朝から夜間にかけ、断続的に名護市上空を飛行した。市民からの苦情を受けた名護市基地対策室は同日、沖縄防衛局を通じ米軍に「市民に不安が出るような訓練はやめてほしい」と改善を要請した。

 市役所に連絡した島袋庸雄久志区長によると、同戦闘機は十日朝から夜の九時すぎまで飛行。島袋区長は「これまで単発的な飛行はあったが窓を閉めても聞こえるような騒音が、これだけ長時間続いたのはなかったのではないか。ヘリの音もうるさいが、戦闘機は恐怖感を感じる」と話した。

 同市基地対策室も同日職員を久志地域に派遣、同機二機の飛行を確認した。また、沖縄タイムス北部支社にも、名護市街地に住む女性から午後九時半ごろ、苦情を訴える電話があった。

 FA18は、三日から七日まで嘉手納基地で行われた空軍と海兵隊の大規模な合同即応訓練に参加。十二日まで嘉手納基地に滞在し、別の訓練を続けている。沖縄タイムス社の取材に対し、在沖米海兵隊報道部は「運用上の保安のため、訓練の詳細については言及しない」と回答。飛行コースや具体的な訓練内容を明らかにしていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_03.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 1面

「普天間」アセス方法書見直し要求

県審査会が答申案審議

 県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十一日、米軍普天間飛行場代替施設建設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の答申素案を審議した。事務局の県が作成した素案は「準備書までの段階で事業内容や見直した項目について審査会や県に報告・協議・公表させること」とし、事実上の再審査を求めた。委員からは、答申の趣旨がほごにされないよう方法書の書き直し要求をより明確にすべきだと、実効力ある内容を求める意見が相次いだ。

 今回の素案は二十一日に知事意見の締め切りが迫る飛行場建設に係る事項に限られている。残る埋め立て部分への審査は、知事意見が締め切られる来年一月二十一日まで継続される見通しだ。

 素案は「方法書において示された環境影響評価の項目や手法が適切なものであるかを判断できる内容が十分示されているとは言い難く、審査するに足るものとなっていない」と厳しく不備を指摘。準備書までに決定する事業の具体的内容を考慮し、(1)知事意見や市民の意見に配慮してアセスの項目・手法をあらためて見直す(2)見直した項目を審査会や県に報告・協議し、公表する―ことを求めた。

 委員らは、事業計画が今後明らかになった場合、本来、方法書の変更もあり得るとの観点から、「突っ返せればいいが、手続き上はできない。大きな問題があることを強く言うべきだ」とした。

 アセス法に詳しい桜井国俊沖縄大学学長は、素案で「方法書に係る手続き後、準備書を作成するまでの間に再審査を求める」とする点について、「手続き上、何の効力も示さない点で、前回(二〇〇四年)の辺野古アセス方法書の答申と何ら変わらない」と指摘。

 新石垣空港建設アセス方法書で、審査会がアセス調査前に知事意見や市民意見に基づいた変更を報告・公表を求めた答申を挙げ、「事実上の改訂方法書の提出要求だった。同様の効力を付するべきだ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_01.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 25面 

専門家、評価と懸念/アセス審査会答申案

 米軍普天間飛行場の移設をめぐる環境影響評価(アセスメント)手続きで、県環境影響評価審査会の答申素案が十一日、公表された。専門家からは厳しい姿勢を評価する声の一方で、「この表現では国に逃げ切られる」と、効力を疑問視する意見も。最終的な答申内容に、注目が集まる。地元名護市では、移設への賛否を超えて国に透明性を求める声が上がった。

 沖縄大学の桜井国俊学長は「現行のアセス法は、今回のような全く体をなさない方法書の提出を想定していない」と指摘。「法の趣旨を守る立場から、委員には方法書の改訂要求が知事意見に反映されなければ、辞任するほどの強い意志が求められる」と強調した。

 「アセス法施行後、審査会がこれほど厳しい意見を出した例は全国にもないのではないか」。WWF(世界自然保護基金)ジャパンの花輪伸一さんは、厳格な審議姿勢をこう評価した。

 ただ、「方法書の手続きをいったん進めてしまうと、国は問題点を先送りにして事業を進め、逃げ切ってしまう」と話し、実質的な手続きのやり直し要求を最終的な答申に盛り込むよう求めた。

 移設先の名護市辺野古区出身の島袋権勇同市議会議長は「市長意見も事業内容を具体的に明らかにするよう求めた。地元の意向であり、当然明らかにされるべきだ。できないとなると、基地行政もうまく進まない」と懸念。住民が納得できるような透明性の確保を要望した。

 十一日の審査会を傍聴した「市民アセスなご」の吉川秀樹さんは「日本の今後のアセスを左右する問題。ここでなし崩し的に進めさせては、沖縄が悪い前例を作ることになる」と心配する。その上で、「県は権利・義務として、『不合格』の方法書の差し戻しや撤回を求めるべきだ」と、県の役割を強調した。

 同日の審査会を傍聴し、科学的なアセスを求める要請書を提出した沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団運営委員の真喜志好一さん。「悪影響をひた隠しにする政府に対して、委員の学問的な良心が表れた。答申に当たっては、一人一人が知識に照らして曇りのない、後悔しない判断をしてほしい」と要望した。


「方法書撤回を」

移設反対訴え平和団体集会


 普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する緊急集会が十一日、那覇市の県民広場で開かれ、沖縄防衛局に方法書の撤回などを求める決議を行った。沖縄平和運動センターなどが主催し、約三百人(主催者発表)が参加した。

 ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は「(県環境影響評価審査会が)審査できないという方法書を提出するのはアセス法をないがしろにするものだ」と防衛局などを批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_02.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 1面

きょう1カ月ぶり普天間移設協

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第五回会合が十二日夕、首相官邸で開かれる。先月七日の前回から約一カ月ぶりの開催。アセス調査を円滑に進めて早期移設を実現するため、国と地元が互いに努力する、との趣旨を確認。政府は、北部振興事業費の執行条件である「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実施する」環境が整ったと判断し、本年度分の同事業費(百億円)の執行と、二〇〇八年度分(同額)の計上を表明するとみられる。

 協議会で県は、環境影響評価(アセスメント)方法書に関する県環境影響評価審査会の審査状況を報告。方法書の不備を指摘して沖縄防衛局に追加説明を求めたが、依然として審査会の納得いく回答が得られない状況を説明し、防衛省に誠意ある対応を求める。

 防衛省は飛行ルートや代替施設の付帯設備などを説明するとみられる。

 前回協議会で、県は「滑走路の沖合移動」について、アセスの中で(1)事業者の判断による任意の移動(2)知事意見を踏まえた移動―を求めたが、今回は踏み込んだ要求を控え、「可能な限りの沖合移動」という表現にとどめる。

 十二日の協議会では、「滑走路の沖合移動」や「普天間の危険性除去」に関し、具体的な協議は行われない見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_03.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 25面

米軍機飛行「赤ちゃん眠れない」/名護全域で騒音続く

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘機とみられる航空機が、十一日も断続的に名護市上空を飛行した。

 市基地対策室には「うるさくて赤ちゃんが寝付かない」(久志区の女性)、「なんとかしてほしい」(屋部区の女性)などといった苦情が、市民から寄せられた。ヘリによる騒音もあった。

 また、沖縄タイムス北部支社には辺野古区に住む男性から同日午後九時前、「ジェット機が旋回している。通常の訓練ではないのではないか」という訴えがあった。

 市街地でも午後九時ごろまで騒音が確認された。前日に続き市全域で騒音が発生したとみられる。

 同市は十日、沖縄防衛局を通じ米軍に訓練の改善を要請していた。

 在沖米海兵隊報道部は沖縄タイムス社の取材に対し、FA18が十二日まで嘉手納基地に滞在し訓練することを明らかにしているが、飛行コースや具体的な訓練内容については「運用上の保安のため」として、言及していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_04.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 1面

即時撤去求め決議/F15飛行停止

嘉手納町議会「墜落の危険性高い」

 【嘉手納】米空軍F15戦闘機が機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかり、三度目の飛行停止命令が出ている問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十二日の十二月定例会最終本会議で、嘉手納基地所属のF15全五十三機の即時撤去を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 岩国基地(山口県)から海兵隊員約六百人とFA18戦闘攻撃機約三十機が参加し今月三日から七日まで嘉手納基地を拠点に実施された空軍と海兵隊の大規模合同即応訓練にも触れ、今後一切、同訓練や外来機の飛来をやめることを要求している。

 抗議決議などではF15は「機体の点検が終了した」として飛行を再開した十一月二十六日にも緊急着陸したことを指摘し「安全性が厳しく問われる事態」と強調。「構造的欠陥を持ち、墜落の危険性の高いF15の町民上空での飛行を断じて容認することはできない」と即時撤去を訴えている。

 F15は十一月二日に米本国で墜落。嘉手納基地所属のF15は同月四日から飛行停止。二十六日に飛行再開したが、二十八日に再停止。今月四日にはロンジロンに問題がある可能性があるとして三度目の飛行停止措置が取られている。十二日現在、嘉手納基地の二機を含む計八機にロンジロンの亀裂が発見されている。

 あて先は、嘉手納基地第一八航空団司令官、第一海兵航空団司令官、沖縄防衛局長ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_03.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 5面

FA18騒音 抗議決議へ/名護市議会があす訓練中止求める

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機とみられる航空機が十日から名護市上空での飛行を繰り返している問題で、名護市議会は十二日午前、軍事基地等対策特別委員会(渡具知武宏委員長)を開き、米軍などに対して民間地上空の訓練の即時中止を求める抗議決議を行うことを決めた。十三日の市議会十二月定例会で可決する見通し。

 委員会では、「騒音があまりにもひどい」「市民からの苦情も多い」などとの意見が出された。

 同市議会では二〇〇一年三月に、FA18戦闘攻撃機訓練に「名護市内空域における米軍機の訓練飛行の即時中止を求める決議」を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_04.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 5面

琉球王朝から米軍統治下まで 古銭40点 日銀に寄贈

 貨幣史研究家の山内昌尚さん(71)が、那覇市おもろまちに移転する日本銀行那覇支店に琉球王朝時代の銭貨や米軍統治時代の紙幣など約四十点を寄贈する。中でも珍しいのは、一九四五年に八月から十月にかけて久米島の米軍基地内で発行した「久米島代用紙幣金券」。数年前、山内さんが十年がかりで米国の業者を通して入手した逸品という。

 今回寄贈するコレクションは、これまで山内さんが学生時代から少しずつ集めたものの一部。十五世紀ごろ琉球王朝で使用された銭貨や中国からもたらされた渡来銭などの貴重な古銭や、戦後、米軍統治下に県内で流通したA円やB円も保存の良い状態で十五種類がそろっている。

 山内さんが古銭を集めるようになったきっかけは、終戦の翌年の四六年に友人からもらった二枚の天保通宝。穴の開いた楕円形の古銭に強烈な印象を抱き、それ以来古銭に興味を持つようになった。

 山内さんは「お金を見れば時代の変遷が分かる。人間の過去の生きた歴史を資料として保存しておきたい」と寄贈の意義を語った。

 二〇〇四年、山内さんは面識のあった当時の支店長と話しているうちに、おもろまちへ移転後の支店内で琉球王朝時代の貨幣の「歴史展示」構想が持ち上がった。山内さんは長年収集した貨幣の保存も考え、展示の協力を申し出た。

 山内さんは「県内にあまりないお金の資料を残すことは非常に重要。展示を見て、時代に興味を持って調べる人が出てくるかもしれない」と寄贈した貨幣が多くの人の目に触れることを期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月5日から7日)

2007年12月5日(水) 朝刊 1・2・23面

防衛局、大半回答せず/普天間アセス追加説明

「評価不可能」と審査会

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が四日、宜野湾市内で開かれ、沖縄防衛局は緊急時などには住宅地上空を飛行する可能性に言及した上で「例外的な飛行ニーズはあらかじめ示すことは困難」とし、具体的な説明を避けた。

 騒音区域や飛行経路も準備書段階まで提示できないとした。津嘉山会長は「このままで環境影響評価を審査するのは不可能」と指摘。審査会メンバーから追加説明を求める意見が相次ぐ異例の展開となった。

 同審査会が方法書の追加説明を求めた質問書に沖縄防衛局が口頭で回答。三十五項目七十六問の質問の大半で具体的な回答は得られなかった。沖縄防衛局は後日、文書で回答するとしている。

 沖縄防衛局は戦闘航空機装弾場について、滑走路南側の突起部分に検討していることを認めた。大型岸壁については、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行う軍港機能を持つものは建設する予定はない、と回答した。

 使用協定に関しては普天間飛行場と同様、午後十時から午前六時の間の飛行は運用上必要なものに限定する方向で米側と調整する意向を明らかにした。

 代替施設の使用機種については「現在普天間飛行場で運用されているCH53、CH46、UH1、AH1ヘリを想定。固定翼機はC53、C12作戦連絡機を想定している」としたが、垂直離着陸機オスプレイの配備について触れなかった。また、海域のボーリング調査は実施しない方針を明らかにした。沖縄防衛局は代替施設の位置や規模の変更の可能性については「現在の政府案は生活環境や自然環境、実行可能性についてバランスが取れており、最も適切。合理的な理由なくして変更は困難」との認識を強調。

 しかし、審査会メンバーから、名護市辺野古沖を埋め立てる従来計画と比較しても事業内容の説明に不備な点が多いことを指摘され、沖縄防衛局職員が「事業についての熟度は今回よりも(従来計画が)高かったのではないか」と認める場面もあった。


     ◇     ◇     ◇     

[フォローアップ]

背景に過剰な「隠ぺい体質」


 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の県環境影響評価審査会で、沖縄防衛局が審査会からの質問の大半の回答を保留し、審査の空転を招きかねない事態となった背景には、防衛省の過剰な「隠ぺい体質」がある。代替施設の付帯設備や緊急時などの住宅地上空飛行、垂直離着陸機オスプレイ配備については、いずれも米側の関係者の証言や文書で判明した経緯がある。米側との交渉を優先する半面、地元の反応に神経をとがらせ、開示できる情報まで伏せてきた政府の姿勢が問われている。


課題先送り


 代替施設の使用機種について沖縄防衛局は、今回もオスプレイの配備には触れなかったが、米軍関係者は普天間所属ヘリの後継機としての配備を繰り返し明言している。

 また、戦闘航空機装弾場についても沖縄防衛局は方法書で明記せず、今回初めて位置を「滑走路南側の突起部分」と説明。大型岸壁については、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行う軍港機能を持つものは建設する予定はない、と否定する一方、故障機の運搬方法については「今後米側と協議していく」としか回答しなかった。

 しかし、ケビン・メア在沖米国総領事は会見で、故障したヘリなどを運搬するための船舶(バージ船)の接岸場所を確保することを日米で確認していることを明言。接岸場所についても、航空燃料を運搬する給油艦が出入りする桟橋部分とは別に、「直線の防波堤部分」を検討していることを明らかにしている。

 緊急時などの住宅上空飛行の可能性についても、政府が国会答弁で否定していた段階で、メア総領事は認めている。

 普天間代替施設建設を推進したいのは米側も同様だが、米政府関係者には地元に一定の情報は開示し、理解を求めた方が「解決の早道」との認識がある。むしろ日本政府の「課題先送り」体質が、地元との信頼関係を失わせ、事態を混迷、複雑化させているのが実情だ。


県「誠意を」


 仲里全輝副知事は四日、「(審査会の質問に対する回答が)誠意あるものだったのかは確認していないのでコメントできない」としながらも、「現段階で米側と協議中のものや軍事機密の関係で説明できないものもあるだろうが、なぜ情報開示できないかを丁寧に説明することが大切。誠意をもって対応してほしい」と要望。副知事が防衛省の「誠意」の重要性に力点を置く背景には、審査会が厳しい答申を出せば知事意見に反映せざるを得ず、結果的に移設作業が遅れることを懸念するためだ。

 県の立場は、滑走路の沖合移動や「普天間の閉鎖状態」を条件としながらも、沖合移動は「日米合意の範囲内」で要求しており、早期移設という点では政府と一致している。

 県幹部は「次回協議会で県としては審査会で問題になっていることは何かを政府に説明する。これはアセスの進ちょく状況の説明になり、協議としては『前進』の形になる」との見通しを提示。審査会の審議状況が次回協議会の進展ともリンクしている。(政経部・渡辺豪)


委員ら批判・苦言


 沖縄防衛局は四日、アセス方法書の不備について追加説明を求めた県環境影響評価審査会の質問書に「ほぼゼロ回答」で通した。委員からは「このままでは評価不可能だ」「方法書を出す段階ではない」など厳しい意見が相次ぎ、具体的な審議に入れない異例の事態となった。津嘉山正光会長は「正式な文書回答を待って、審議に値するかどうか検討したい」とし、口頭説明を基にした審議は困難と判断、予定終了時間の三十分前に会議を打ち切った。(1面参照)

 質問者に対する沖縄防衛局の口頭説明は約一時間半。ほとんどの項目で「現状では、これ以上具体的に示すことは困難」と繰り返した。

 説明後、津嘉山会長は「各委員とも具体的な回答をいただいていないという印象」と強い懸念を表明。「少なくとも国会で発言されたり、報道で明らかになった部分については説明いただきたい」とし、正式な文書回答での説明を重ねて求めた。

 委員の一人、堤純一郎琉大教授は、飛行場の騒音評価で具体的な数字が明らかにされなかったことを疑問視。「残念ながらこのままでは評価できない」と突き放した。

 宮城邦治副会長(沖国大教授)は、新石垣空港のアセス方法書や二〇〇四年に提出された普天間代替施設の方法書と比較。「あまりに事業や施設内容が分からなさ過ぎる。もう少ししっかりした協議の上で、方法書を出す必要があったのでは」と苦言を呈した。

 備瀬ヒロ子委員(都市科学政策研究所代表取締役)も「このレベルの情報では審議のしようがなく、方法書を提出するタイミングが早いのでは」と話した。

 一部、回答を追加した内容についても「大浦湾を大規模に埋め立てて造る作業ヤードの必要性が十分に説明されなかった」「ヤードや飛行場部分の埋め立て土をどこから持ってくるのか分からない」など厳しい指摘が相次いだ。

 沖縄防衛局は「近日中に文書回答を送る」と説明したが、文書回答は、口頭説明とほぼ同様の内容となる見込み。「それで足りなければ今後できる限り資料を出させていただきたい」とし、具体的な事業や調査内容をどれだけ明かせるかは言及しなかった。

 津嘉山会長は「前回(〇四年に答申した普天間アセス方法書)と比べても後退した感は否めない」と批判。「文書回答を踏まえて審議する」と具体的な審議は次回に持ち越した。


[解説]

揺らぐアセスの信頼性


 米軍普天間飛行場代替施設の建設に伴うアセス方法書の不備について追加説明を求めた県環境影響評価審査会の質問書に、沖縄防衛局は口頭説明にとどめ、ほとんど具体的に回答しなかった。アセス手続きや工期を優先し、方法書の審議を早急に進めようとする意図が垣間見える。今後、審査会は事業内容や施設概要を知らされないまま、審議に入る極めて異例の事態が想定される。沖縄防衛局の対応はアセス手続きの信頼性をも、揺るがしかねない。

 委員らは、代替施設の使用目的や施設規模が明らかにされず、環境調査に必要なデータもないまま、アセス手法の審議を余儀なくされている。

 方法書の在り方を批判する厳しい答申となった前回方法書(二〇〇四年)よりさらに後退したといわれる内容に「このまま通してしまっては審査会が無能化する」(委員)と困惑を隠さない。

 一方で飛行場部分に関する知事意見提出の締め切りが二十一日に迫る。審査会答申は、知事意見の検討時間を考慮すると「来週中にも答申案の検討に入らなければならない」(県環境政策課)。手続き重視の方法書にどのような意見を述べることができるのか。現行アセス法下での審査会の存在意義が問われている。(社会部・黒島美奈子)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_01.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 1面

代替・沖合移動/知事「総合的に判断」

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は四日午後も代表質問が続行された。仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見の中で代替施設の沖合移動を求めていくかについて「生活環境および自然環境への影響を検討し、総合的な観点から判断する」との認識を示した。その上で、「法および条例で、事業者は知事意見を勘案しなければならないと規定されている。事業者の沖縄防衛局は適切に対処されるものと理解している」と述べ、知事意見で沖合移動を要求した場合、政府は地元の意向を尊重するべきだとの考えを表明した。

 また、沖縄にインターネットの国際的相互接続ポイントを整備する沖縄GIX構築事業について、仲井真知事は年内の供用開始を予定しているとし「インターネット接続事業者のほか海外向けビジネスを行う情報通信企業に対し、高品質な通信環境の提供が可能となり、新たな情報通信産業の集積とこれに伴う雇用増が見込まれる」と述べた。いずれも小渡亨氏(自民)への答弁。

 県発注工事をめぐる談合問題で、建設業界が求めている損害賠償金の十年間分割払い方式について、首里勇治土木建築部長は「原則として一括・全納となっているが、県としては、企業の経営状況も勘案した上で、十年間分割払いとすることが可能か、検討していきたい」と答えた。外間盛善氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_02.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 23面

夜も爆音 燃料漏れも/嘉手納基地 訓練2日目

 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点に行われている米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練は四日も引き続き行われ、一時的に岩国基地(山口県)から移駐しているFA18戦闘攻撃機が日没後も飛行訓練を繰り返し、住宅地域に騒音を響かせた。ロケット弾や模擬弾を装着して飛行する機体も確認された。

 飛行したFA18のうち、少なくても六機は日没後に離陸。午後七時四十分ごろを皮切りに、南側滑走路から沖縄市上空に向けて相次いで飛び立った。推力増強装置(アフターバーナー)を使用する機体もあった。

 同日午後七時ごろには、FA18が使用している駐機場で消防車などの緊急車両が出動、一時騒然とした。目撃者によると、FA18は給油中だったことから、燃料が漏れた可能性もある。

 飛行停止中のF15戦闘機が点検を受けている様子も確認された。訓練は岩国基地からFA18約三十機と海兵隊約六百人が参加。七日まで行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_05.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 2面

米軍PACK3 国道横断/読谷

 【読谷】米陸軍の最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊が四日午後、嘉手納弾薬庫地区(読谷村)から同村親志の国道58号を横断、同地区内の「トレーニングエリア・ワン」に移動した。配備後、初めての移動訓練で、車両二十九台と兵員八十人が公道を渡った。

 沖縄防衛局や在沖米陸軍などによると、PAC3部隊は四日、嘉手納弾薬庫地区を東西に分断する国道58号を横断。五日に、トレーニングエリア・ワンから嘉手納弾薬庫地区に戻る、という。

 PAC3は嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に配備されている。移動そのものが訓練で、トレーニングエリア・ワンでは機器の運用に必要な通信環境や障害物の有無などを確認するとみられる。

 当初、PAC3部隊は四日未明、嘉手納基地からトレーニングエリア・ワンに向かう予定だったが変更したもようだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_07.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 22面

「集団自決」修正/撤回否定に批判集中

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定意見の撤回などを文部科学省に要請した市民団体や支援組織が四日午後、参院議員会館内で報告集会と記者会見を開いた。民主、共産、社民の野党国会議員十五人を含む約百人が参加した。文科省の布村幸彦大臣官房審議官が検定意見の撤回を「考えていない」と否定したことに批判が集中。市民の代表は「私たちの税金で働いている人がこんなことを言うのは許せない」と憤りをあらわにした。

 県高教組の松田寛委員長は「(布村審議官は検定意見が)『制度上問題ない』の一点張りだった」と指摘。

 その上で「(審議会での審議という)制度を通過すれば(記述が)間違ってもいいという考え方が全く理解できない」と述べ、手続き論に終始する文科省の姿勢を批判した。

 教科書全国ネット21の俵義文事務局長は「文科省の姿勢は検定意見を絶対に撤回しないが、沖縄が怒っているので訂正申請でけりをつけようとしている。官僚は絶対に過ちを犯さないという前提がある」と述べ、疑義を呈した。

 「沖縄戦教科書検定意見の撤回を求める市民の会―東京―」の阿部ひろみ代表は「審議会で公正な審議がされたという(布村審議官の)考えに本当にびっくりした」と指摘し、教科書調査官の原案を議論がないまま追認した教科用図書検定調査審議会の在り方に警鐘を鳴らした。


検定意見撤回に難色/要請団に文科省審議官


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める市民団体や国会議員などが四日、文部科学省で布村幸彦大臣官房審議官に要請した。出席者によると、布村審議官は「検定意見の撤回は考えていない」とあらためて明言、検定の正当性主張した。一方で、「今回の訂正申請の審議が終わり次第、検定制度全体の在り方について検討したい」と制度の見直しに初めて言及したという。(一部地域既報)

 要請には都内各地で検定意見の撤回を求める「市民の会―東京―」(阿部ひろみ代表)、「沖縄戦首都圏の会」、琉球大の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授が参加し、それぞれが要請書を手渡した。


「自決」記述復活 反対決議を採択/政治介入に反対の会


 【東京】「教科書検定への政治介入に反対する会」(小田村四郎代表)は四日、都内で集会を開き、文部科学省が教科書会社の訂正申請を受け、記述復活することに反対する決議を採択した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_08.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 22面

「ちゅらごん」と呼んで/尾に傷ある辺野古ジュゴン

 WWFJ(世界自然保護基金)と「じゅごんの里」は四日、名護市の辺野古沖と大浦湾などで目撃された尾びれに傷のあるジュゴンの名前が「ちゅらごん」に決まったと発表した。

 全国三千二百四十二点の応募作品から選ばれた。「雄・雌のどちらでも使える」「みんなが呼びやすい」などが理由となった。

 清らかさを意味する「ちゅら」と、ジュゴンの「ごん」を合わせたという。

 両団体が米軍普天間飛行場の移設計画が進む名護市辺野古と、ジュゴンに関心を持ってもらおうと、七月から十月まで募集。「ちゅらごん」には二十九人の応募があったという。

 特別審査員の女優、川原亜矢子さんやミス日本グランプリの萩美香さんなどの意見も踏まえ、決定した。

 「じゅごんの里」の東恩納琢磨代表は「夢のある名前が付いてよかった。より身近な存在に感じることができるのではないか」と期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月5日朝刊)

[大規模即応訓練]

かすんでいく負担軽減

 米軍再編の狙いは何なのか。日米交渉の過程で私たちは政府サイドから「抑止力の維持と沖縄の負担軽減」という決まり文句を耳にたこができるほど聞いてきた。

 だが、昨年五月の日米合意以降に沖縄で顕在化しつつあるのは、負担軽減とはおよそ反対の事態だ。

 嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区には昨年九月、地対空迎撃ミサイル・パトリオット(PAC3)が配備された。

 青森県の航空自衛隊車力分屯基地への移動式レーダー(Xバンド・レーダー)配備やイージス艦「シャイロー」の西太平洋展開とあわせ、弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備が急速に進んだことになる。

 同基地では、F15戦闘機の未明離陸が、地元三自治体の中止要請にもかかわらず強行され、日米特別行動委員会(SACO)で伊江島補助飛行場への訓練移転が合意されたはずのパラシュート降下訓練まで実施された。

 そして今度は、米空軍と米海兵隊による大掛かりな合同即応訓練である。嘉手納基地を拠点に三日から始まった同訓練には山口県・岩国基地からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加するという。

 パトリオット部隊による初の機動展開訓練(移動訓練)も四日から始まっている。

 基地が攻撃されたことを想定した有事即応訓練は恒常的に実施されている。だが、今回の訓練は、これまでの空軍による訓練とは性質が違う。軍の垣根を越えた統合運用の推進、という考えに基づくものだ。

 米軍だけでなく自衛隊も昨年三月から統合運用体制に移行し、陸・海・空自衛隊の一体的な運用を重視するようになった。米軍と自衛隊の一体化の動きも活発だ。

 作戦や部隊の「統合化」という流れの中で今回の訓練が実施されている、とみるべきだろう。

 日米が進める「統合化」と「基地の共同使用」は、沖縄に何をもたらすのか。少なくともそれが負担軽減の取り組みだとは、誰も思わないだろう。

 日米合意によると、厚木基地からFA18戦闘攻撃機の部隊が岩国基地に移駐することになっている。負担軽減の名の下に実施される全国規模の「訓練移転=玉突き再編」は、果たして目的にかなった妥当な政策なのだろうか。

 昨年二月に発表された米国防総省の「四年ごとの国防政策見直し」(QDR)は、テロの脅威だけでなく、中国に対しても警戒感をあらわにした。

 負担軽減がかすんでいく現実に強い危機感を覚えざるを得ない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071205.html#no_1

 

琉球新報 社説

射爆場提供拒否 危険除去は全面返還しかない

 久米島町・鳥島射爆撃場の町有地について、平良朝幸久米島町長が米軍への提供を拒否する方針を打ち出した。同射爆撃場では恒常化している。

 在韓米軍による訓練は、韓国の実弾射撃場が2005年に閉鎖された後、恒常化した。地元の久米島町や県には何の説明もないまま、閉鎖された施設の代替機能を担わされた格好だ。

 住民が知らない間に、在韓米軍の部隊による射爆撃場の利用が進み、事実上、負担が増大したことになる。町長が憤るのは当然だ。

 在韓米軍のホームページによると、鳥島射爆撃場を利用する操縦士は「(爆弾が)実際にどう機能するかを目の当たりにできる」と、その有用性を強調している。

 県民にとっては迷惑この上ない。訓練の頻度が高まれば、事故の危険性も増大するからだ。

 鳥島射爆撃場周辺の海域では1987年7月、夜間訓練をしていた米軍のFA18戦闘機がマレーシア船籍の貨物船「ポメックス・サガ号」に模擬弾を撃ち込み、操舵手(そうだしゅ)が右腕を切断する事故が起きた。

 米軍は当時、模擬弾発射の理由について、船影を島と誤認したと説明していた。

 訓練中のAV8Bハリアー機が95年末から96年初頭にかけて、同射爆撃場で劣化ウランを含む徹甲焼夷(しょうい)弾1520発を誤って使用していたことも、その後明らかになっている。

 射爆撃場を利用する部隊が増えたことで、標的を間違えるような重大事故が再び起きはしないか。懸念は強まる一方だ。

 鳥島射爆撃場は久米島の北方約28キロにあり、約4万1千平方メートルのすべてが町有地だ。にもかかわらず、使用する部隊や訓練の概要など詳細は一切公表されていない。住民は完全に蚊帳の外に置かれている。

 射爆撃場でどんなに危険な兵器が使用されても、現状では知るすべがない。いつ何時、劣化ウラン弾などによって環境が汚染されないとも限らない。

 訓練水域周辺は好漁場として知られ、パヤオ(浮魚礁)も設置されている。ひとたび事故が起きてからでは取り返しがつかない。

 こうした危険を完全に取り除くには射爆撃場の全面返還しか道はない。

 久米島町議会は2005年、06年と鳥島射爆撃場の早期返還を求める抗議決議を可決した。県漁連も昨年から、鳥島と久米島の射爆撃場水域の返還を国に要請している。

 政府は、地元の声に真剣に耳を傾け、鳥島射爆撃場の早期返還を米国に要求すべきだ。

(12/5 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29497-storytopic-11.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 1面

泡瀬埋め立て第2区域は推進困難/沖縄市長

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合を埋め立てる「東部海浜開発事業」について、東門美津子沖縄市長は五日午後、臨時庁議を開き、「第一区域の工事は現行通り進める。土地利用計画は見直す。第二区域については推進は困難。具体的計画の見直しが必要」との方針を市幹部に伝えた。同日中に市議会議員に説明した後、記者会見を開いて正式発表する。

 市はこれまでに、「第一区域(約九十六ヘクタール)は工事が進んでおり、中止は難しい」などと判断。宿泊六施設が予定されている土地利用計画についても、バブル期の一九九二年調査を基に推計されたことから今後、時代に合った見直しを検討するとしていた。二〇一三年ごろ着工予定の第二区域については、一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかり、絶滅危惧種の生息地が含まれることから、人工島の変更や中止も含めて県や国と調整が残るとして、最終結論は市幹部や市議会の与党議員にも伝えていなかった。東門市長は、市議会十二月定例会が始まる六日までに、全市議三十人に説明する考えを示していた。

 東門市長は、推進と中止で市民の意見が割れる同事業について「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ、〇六年四月市長選で推進派候補を破って当選した。

 就任後は、公募で選んだ市民と学識経験者で組織する東部海浜開発事業検討会議を設置。今年七月には同会議から埋め立て後の企業立地の見込みや環境問題などを精査した報告書を受け取り、「判断材料にして年内に結論を出す」としていた。


[ことば]


 東部海浜開発事業 国と県が中城湾港新港地区の港湾整備のために浚渫した土砂を利用して約187ヘクタールの人工島を造り、その後、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して経済活性化を図る計画。埋め立て造成の総事業費約489億円。沖縄市は土地購入費約184億円とインフラ整備約91億円を見込む。国の埋め立て工事は2002年に始まり、全体の約半分に当たる第1区域は、12年にも埋め立てが完了する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_01.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 1・5面

2カ国語絵本で「集団自決」紹介

 【南風原】南風原高校の英語教師、宮城千恵さん(48)が英語と日本語の二カ国語で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」を語る絵本「A Letter from Okinawa」(沖縄からの手紙)を出版した。渡嘉敷島の「集団自決」で両親を失った千恵さんの母・幸子さん(80)の体験をモチーフに、素朴な絵で島の暮らしぶりや沖縄戦の実相を表現する。千恵さんは「絵本は子どもたちに身近な存在。英語で表現することで、沖縄戦の真実を世界中に伝えていきたい」と希望を託す。(仲本利之)

 二〇〇二年から〇四年にかけ、北アイルランドとハンガリーへ留学し、平和教材を使った英語指導法を研究した千恵さん。世界中の歴史を学ぶ現地小中高校生の指導用に作った「集団自決」を題材にした紙芝居が絵本の原作となった。授業で使うと両国の子どもたちが「なぜ沖縄戦では、愛する家族同士が殺し合わなければならなかったの」と、強い疑問を投げ掛けてきたという。

 物語は千恵さんの母・幸子さんが渡嘉敷島で少女時代を過ごしたことから始まる。その後、進学のため沖縄本島に渡り、瑞泉学徒隊に動員され、悲惨な沖縄戦を体験。その後、両親が「集団自決」で亡くなったことを知らず、戦後何度も手紙を書き続ける。

 外国人が読んでも分かりやすいストーリーを心掛け、沖縄国際大学のピーター・シンプソン准教授から英語表現などの助言を受けた。絵は石垣市立白保中学校の平良亮教頭が描いた。

 絵本には読者の「書き込み」ページもあり、幸子さんになった気持ちで亡くなった両親に手紙を書いたり、戦争の悲惨さを絵で表現することで、主体的に「集団自決」について考えられるよう工夫を凝らした。

 両親を奪った沖縄戦について、多くを語りたがらないという幸子さん。娘の絵本について「千恵が絵本を通じて平和の思いを伝えていこうとするのを、天国にいる私の両親もそっと見守っているはず」と話す。

 絵本は十一月二十三日に発刊。沖縄学販が取り扱い、県内書店や各学校向けに販売するほか、欧州や米国での出版も計画している。問い合わせは同社、電話098(854)1620。


     ◇     ◇     ◇     

「訂正」審議結果「自ら説明する」/文科相が意向


 【東京】渡海紀三朗文部科学相は五日午前の衆院文部科学委員会で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述に関する教科書会社からの訂正申請を受けた審議結果の公表について、教科用図書検定調査審議会の委員が同席した上で自らが公の場で説明する意向を明らかにした。保坂展人氏(社民)への答弁。

 渡海文科相は「ある委員に登場していただける前提の下で、私自身が説明する必要があると考えている。この問題を就任以来、扱ってきた私としてそういう責任があると考えている」と述べた。

 審議会で結論が出た際、首相談話を出すかどうかについては「総理自身が決めることだ」と述べるにとどめた。

 林博史関東学院大教授が、自身のホームページ上で文科省に「著書(『沖縄戦と民衆』)を歪曲して検定意見をつけた」と抗議していることには「検定意見は最近の著書を総合的に判断してつけられた。林氏の著書もそのうちの一つであることは間違いないが、それのみによってではない」と説明した。石井郁子氏(共産)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_02.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 5面

即応訓練 苦情3件/嘉手納基地 緊急着陸も

 【嘉手納】米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練が実施されている米軍嘉手納基地で五日午後一時までに、町民から訓練に伴う三件の苦情が嘉手納町に寄せられていることが分かった。同基地では岩国基地(山口県)から一時的に移駐しているFA18戦闘攻撃機が繰り返し飛行訓練を実施するなど、訓練が活発化している。また、午前十時三十分ごろ、FA18一機が緊急着陸した。

     ◇     ◇     ◇     

PAC3訓練 読谷村で続く/嘉手納弾薬庫


 【中部】米陸軍の最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊の移動訓練は五日も引き続き行われた。目撃者によると、同日午前九時ごろ、嘉手納弾薬庫地区(読谷村)を東西に分断している同村親志の国道58号を、西側から東側に横断する車両数十台が目撃された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_05.html

 

2007年12月6日(木) 朝刊 1面

「事業縮小」決断 泡瀬埋め立て

東門市長、1区容認2区困難視

 【沖縄】国と県が中城湾港泡瀬沖合を埋め立てて人工島をつくり、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して活性化を目指す「東部海浜開発事業」について、東門美津子沖縄市長は五日、市役所で記者会見、人工島(約百八十七ヘクタール)の埋め立て計画のうち「現在工事中の第一区域(約九十六ヘクタール)は推進。第二区域(約九十一ヘクタール)は推進困難」と正式発表した。長年にわたり市民の意見が「推進」と「中止」に割れている同事業に「縮小」の判断を下した。

 東門市長は、第一区域については二〇一二年にも埋め立て完了することなどを挙げ、「工事の進ちょく状況からみて推進せざるを得ない」と判断。「沖縄市の経済活性化へつなげるため、今後二、三年かけて社会経済状況を見据えた土地利用計画にしたい」との方針を示した。

 一三年ごろ着工予定の第二区域は、(1)一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる(2)絶滅危惧種の生息地域であり干潟への影響が大きい│などと説明した上で「推進困難」とした。しかし、沖合に浮かぶ第一区域には陸地と結ぶアクセス道路か、橋建設が必要なことから、第二区域にある干潟部分の一部埋め立てもあるとし、国や県と協力して課題解決当たる考えを強調した。

 市の今後の対応としては、市民参画による会議を設置して土地利用計画を見直し、国と県と事務協議を重ねることで計画の変更を図る。また市財政の負担軽減には「国と県に土地利用への参画と支援を強く要望し、土地利用の円滑な推進により地域経済の活性化を図る」と説明した。

 東門市長は二〇〇六年四月の市長選で、「事業は市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ推進派候補を破って当選。就任後は公募した市民と学識経験者で組織する同事業検討会議を設置し、今年七月には同検討会議から、埋め立て後の企業立地の見込みや環境問題などの情報を精査した報告書を受け取り、「結論の判断材料にする」としていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712061300_01.html

 

2007年12月6日(木) 朝刊 27面

あいまいさ 市民戸惑い/泡瀬埋め立て・市長判断

 【沖縄】「すべてを埋め立ててこそ活性化につながる」「自然環境に配慮するなら、一期工事こそ中止するべきだ」。沖縄市泡瀬沖合に埋め立てた人工島に、大型ホテルなどを誘致して経済活性化につなげる同市の東部海浜開発事業。市民を二分する難題だけに、東門美津子市長が五日発表した決断は「一期区域は推進、二期は推進困難」とあいまいさも残る。

 市民からは賛否とともに戸惑いの声も上がった。

 同市東海岸の活性化を図る「東部海浜開発事業」を強力に推進してきたのは、市泡瀬区の人たちだ。市泡瀬在住で「プライド泡瀬」の當眞嗣蒲会長(67)は「埋め立ては活性化につながる。市長判断は歓迎だ」と喜ぶ。

 バブル景気時代に策定された市の土地利用計画の見直しは必要と指摘しつつ、「経済活性化は人工島のすべてを埋めてこそ成り立つ。中途半端ではいけない」と、二期工事の完全実施を求めた。

 市議三十人のうち、八割に当たる二十四人は推進派。市東部開発事業推進議員連盟の新里八十秀会長は「あの言い方になっただけで、市長は事業推進が妥当と考えたのだろう」と歓迎。「数の横暴で事業を進めたくない。市長と相談しながら二期も進めたい」と話した。

 一方、埋め立て反対派は東門市長の決断に怒りを爆発させた。「泡瀬干潟を守る連絡会」の前川盛治事務局長は「市長は市民の要請に応えていない。抗議すべき内容だ」と言い切った。

 埋め立て容認の一期区域こそクビレミドロなどの貴重種、新種が生息すると指摘。環境に配慮して二期工事を縮小するとの説明に「環境に配慮するなら一期工事は中断するべきだ」という。

 東門市長の肉声を聞こうと記者会見場に駆けつけた市泡瀬の会社員、桑江直哉さん(33)は「東門さんは無責任だ。決断は、賛否両派の意見を聞いた形を取っただけではないか」と戸惑う。

 街頭で市民の声を集め市長に手渡したばかり。その二日後の決断に「本当に市民の声を聞いて判断したのか分からない」と不満を漏らした。


守る会、中断訴え


 【沖縄】沖縄市の東部海浜開発事業で東門美津子市長が「埋め立て容認」の姿勢を表明したことに抗議する集会が五日、同市役所前広場で開かれた。

 泡瀬干潟を守る連絡会の会員らが参加、今後も工事中断を求め活動することを確認。ガンバロー三唱で気勢を上げた。守る会の小橋川共男共同代表は「建設推進派候補を破って東門市長は当選した。決断は市民の意思を反映していない」とあいさつ。

 拡声器を市役所に向け、市職員と市民に泡瀬埋め立ての不当性を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712061300_02.html

 

2007年12月6日(木) 朝刊 27面

「やはり欠陥機だ」/F15飛行停止

 【中部】米空軍がF15戦闘機について、三度目の飛行停止措置を講じていたことが明らかになった五日、五十三機のF15が配備されている米軍嘉手納基地周辺自治体や議会からは「やはり欠陥機だ」などと怒りの声が相次いだ。

 同基地のF15は十一月二十八日に二度目の飛行停止命令が出されて以降、飛行はしていない。

 沖縄、嘉手納、北谷の三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(会長・野国昌春北谷町長)は事故後、米軍側に三度抗議しF15の撤去を訴えた。野国会長は「十一月の飛行再開は完全な見切り発車で、危険な状態で住宅街の上を飛んでいたということになる。米軍は正確な情報を基に運用すべきだ」と語気を強めた。

 沖縄市議会は十五日開会の定例会でF15問題を追及する抗議決議の審議を予定。基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「議会としては劣化している戦闘機を撤去してほしい。何か起きてからでは大変。県も嘉手納基地の状況を把握してほしい」と強調した。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会委員の金城利幸町議は「ここまで欠陥が度重なると、F15だけに限らず、他の航空機に対する不安も募る一方だ」と指摘。日米両政府に対し、町民の不安と危険を解消するよう訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712061300_04.html

 

2007年12月6日(木) 朝刊 27面

64歳比嘉さん 大臣奨励賞/「私の主張」作文コンクール

 通信制高校で学んだことなどを発表する第二十五回「私の主張」作文コンクール(主催・全国私立通信制高等学校協会)で、那覇市の県立泊高校通信制二年の比嘉ひとみさん(64)=沖縄市=が、最高賞の文部科学大臣奨励賞を受賞した。比嘉さんは「家族や先生たち、学校で知り合った友人の協力がなければ楽しい高校生活は送れなかった。コンクールに挑戦する機会を与えてくれた先生方に感謝したい」と喜んでいる。

 比嘉さんのテーマは「チャンスと挑戦」。沖縄戦で父親と離別した比嘉さんは、中学校の卒業式の前日に義父を肺炎で失い、弟二人を進学させるために自身の進学を断念した。その後、結婚して娘が生まれたが、病気のため軽い知的障害が残り、親の会の活動や子育てに悪戦苦闘するうちに三十年余りが過ぎていた。

 進学の夢を捨てられない中、二年前に息子から「今の機会を逃すと、もっと歳を取ってからでは難しいよ」との言葉に後押しされて泊高校通信制に。勉強する機会に恵まれたこと、生徒会活動や友人との出会いなど高校生活の喜びを応募作につづった。

 比嘉さんは「賞を受賞できるとは思わなかったので驚いた。一生涯学び続けたい」と喜んだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712061300_10.html

 

2007年12月6日(木) 夕刊 1面 

F15亀裂 計4機に/3度目飛行停止

欠陥拡大 点検長期化も

 F15戦闘機の三度目の飛行停止措置に関し、米空軍は五日、これまでの点検作業によって計四機で、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が確認されたことを明らかにした。事故調査委員会は、欠陥を抱えた機体が当初想定していたよりも大幅に拡大する可能性を指摘。飛行停止が長期化する見通しを示している。マイケル・ワイン米空軍長官は「航空機部隊の老朽化と亀裂の問題拡大は決して良い兆候ではない」と指摘、今回のF15の欠陥判明を深刻に受け止めている。

 米空軍によると、コンピューターのシミュレーション結果でも、ロンジロンの亀裂によって、墜落事故につながる構造的な問題が発生する可能性が示されたという。

 また、新たな停止措置を受け、検査終了後も結果やデータ分析が義務付けられることから、米空軍は「従来のようにすぐに飛行が再開されることはない」としている。

 ロイター通信によると、ワイン長官はF15について「いずれかの時期に飛行を中止し、新世代の戦闘機を購入しなければならない」と述べ、後継機のF22戦闘機の追加購入の必要性を指摘した。

 欠陥部は機体上部の操縦席風防ガラス付近の「ロンジロン」と呼ばれる縦通材。ロンジロンは、機体にかかる「曲げ荷重」への耐性補強のため胴体を貫く縦通材のうち、特に強度の大きな構造部材。

 飛行停止の発端となった事故は十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。

 事故機はロンジロン付近に問題があるとの見方が強まり、米空軍は同四日以降、全機の飛行を停止。同二十一日には解除を発表し、嘉手納基地でも点検を終えた機が同二十六日から順次飛行を再開した。

 しかし、同二十八日に点検中の別の二機で新たに同部位で亀裂が見つかり、同日以降、E型機を除く飛行を再停止していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712061700_01.html

 

2007年12月6日(木) 夕刊 1面

北部振興策 凍結解除へ/アセス進展へ合意後

 【東京】本年度分の執行が凍結されている北部振興事業費(百億円)について政府は六日までに、十二日に予定されている次回の普天間飛行場移設協議会で「移設に向けた環境影響評価(アセスメント)を円滑に実施すること」を県と確認した上で、協議会終了後に凍結解除の手続きに入る方針を固めた。同時に、内閣府が概算要求している二〇〇八年度の北部振興事業費(同額)を年末の政府予算案内示に計上する方針だ。

 アセスをめぐっては、今月二十一日に県条例に基づく知事意見の提出期限を迎える。政府はこれまでアセス前段階の環境現況調査に着手していたが、知事意見を踏まえ、早ければ来年一月にもアセス法に基づく正式な調査に入る。

 次回協議会で、県と国がアセス手続きの「円滑な」進展に向けて協力する方針を確認することで、政府が「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」とする北部振興事業の執行条件が満たされたと判断するもようだ。

 政府関係者によると、この方針はすでに県にも伝えられ、県側も大筋で了承している。このため本年度分の執行と〇八年度予算計上が実現する可能性が高まっている。

 町村信孝官房長官は五日午後の定例会見で、「〇七年度予算なので(執行を)いつまでも動かさないということではない」と執行に前向きな姿勢を示した。ただ、「現在、何ら関係者間で結論が出たという状態ではない。最終調整中だ」と述べ、協議会を踏まえて正式に決定する考えを示した。


「事業執行は当然」知事 名護市長


 仲井真弘多知事は六日、凍結されている北部振興事業で、政府が普天間飛行場移設にかかるアセス手続きの円滑実施を前提に執行する方針を固めたことについて「(県は事業が)凍結しているという状態を認めているわけではない。(執行は)当然なことで、直ちに解除するべきだ」と述べた。

 また、アセス手続きの「円滑」な進展を前提とすることについて、「防衛省がこちら(地元の)の言い分を聞けば(手続きは)進むし、聞かなければ何も進まないということだ」との認識を示した。

 島袋吉和名護市長は「正式な連絡は受けていないが、市として移設協議会にも参加して協議を進めて(移設作業に)協力している。当然、執行されるべきものだと思っている」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712061700_02.html

 

2007年12月7日(金) 朝刊 1・2・31面

嘉手納F15 2機亀裂/世界で確認の5機中

住民、一層不安と反発

 米本国での墜落事故を受け、機体の点検作業中の米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機二機で、事故原因とみられる機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の亀裂が見つかっていたことが六日、分かった。米空軍が世界各地に展開しているF15で、同部位に亀裂が確認されたのは現段階で計五機。今後も増える可能性がある。墜落事故に直結する欠陥を抱える機体が日常的に嘉手納基地を離着陸していたことが判明し、基地周辺住民の不安と反発がさらに高まっている。

 同基地によると、十一月二十八日の二度目の飛行停止措置を受け、約五十機の所属機のうち三十機の整備点検を済ませた段階で、二機のロンジロン上部に亀裂を確認したという。

 米空軍は相次ぐ欠陥機の報告を受け、「これまで点検を行った個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性を示している」として、三回目となる飛行停止措置を四日(米本国で三日)に決定した。

 米空軍航空戦闘軍司令官のジョン・コルリー大将は既に点検を済ませ、飛行可能となっていた同航空戦闘軍所属のすべてのF15A、B、C、D型機の再停止を指示。さらに、その他すべての米空軍のF15A、B、C、D型機の飛行停止を勧告した。

 嘉手納基地のF15はC型が大半で、一部D型を含んでいる。F15を運用する第18航空団は、二度目に出された整備指導要領に沿って点検を続けている途中だったが、今後は「新たに明確な指示を受け取り次第、それを点検手順に加える」と説明。

 「飛行運用を再開する前に、各機を入念に点検し、問題となる可能性のある部分を特定し、適宜対応する作業に全力で取り組む」としているが、欠陥機の拡大で飛行停止期間が長期化する可能性もある。

 F15戦闘機の三度目の飛行停止措置に関し、米空軍は五日、これまでの点検作業によって計四機でロンジロンの亀裂を確認した、と発表。

 嘉手納基地によると、この四機は嘉手納所属の欠陥機二機のうち一機しかカウントされておらず、少なくとも現段階で計五機のF15に欠陥が判明したことになる。


     ◇     ◇     ◇     

周辺首長、撤退を要求/「住民不安ぬぐえず」


 【中部】嘉手納基地所属のF15戦闘機二機から亀裂が見つかった問題で、同基地周辺の沖縄市、嘉手納町、北谷町の三首長は、F15の「撤退」を強く求めた。

 三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は「米軍の安全な戦闘機という発言や、飛行再開の際に十五時間以上費やした点検は何の意味を持つのか。F15とその後継機を含め、嘉手納基地にこれ以上の戦闘機配備は許されない」と述べた。

 東門美津子沖縄市長は「私たちが危険を指摘していたことが明らかになった。絶対に飛行させてはならず、速やかに撤退すべきだ」と語気を強めた。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「F15はこれまで再三事故を繰り返している。明らかな欠陥機が住宅地上空を飛行していては、住民の不安はぬぐえない。あらためて全面的な撤去を求めたい」と強調した。


住民ら驚き 恐怖に/「点検意味なし」の声も


 【中部】墜落につながる亀裂が見つかったF15戦闘機五機のうち、二機が嘉手納基地所属だったことを知った基地周辺の住民らは六日、驚き、憤った。「いつ事故が起きてもおかしくない」「もう全面撤去しかない」。基地に隣接する一市・二町の議会は米軍と日本政府への怒りを募らせた。

 沖縄市議会(喜友名朝清議長)は六日に、F15の全面撤退を求める抗議決議をしたばかり。基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「やっぱり欠陥機だった。危険な戦闘機が上空を飛んでいたのかと思うと怖い」と米軍を批判。来週に予定される委員会で協議する方針だ。

 嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十二日の十二月定例会最終本会議でF15の即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を審議する。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、「もはや点検の意味もない」と声を荒らげた。

 北谷町議会(宮里友常議長)は三日、抗議決議を全会一致で可決。F15の撤去を求め、十日に外務省沖縄事務所、沖縄防衛局に要請する。基地対策特別委員会の照屋正治委員長は「米軍の情報は信用できない。今後の飛行再開は容認できない」と反発した。

 北谷町砂辺区の松田正二区長は「一番安全な戦闘機と説明するF15で欠陥が見つかったなら、砂辺の上を飛んでいるF15以外の飛行機はもっと危険だ。米軍は事故が起きる前提で基地を運用している」と憤った。

 沖縄市池原自治会の玉城勇会長は「爆音だけでも大変なのに、事故を起こすような飛行機を飛ばすなんてどうなっている」と語気を強めた。「日米安保を盾に沖縄は植民地化されている。政府はしっかりと対応し、飛ばすことを止めさせるべきだ」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071300_01.html

 

2007年12月7日(金) 朝刊 1・31面

文科省、軍命明記回避を要請/再申請指針示す

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で文部科学省が今月四日、訂正申請した教科書会社の担当者を同省に呼び、記述内容をあらためて再申請させるための教科書審議会の「指針」を示し、その中で「軍の命令」を明記しないよう求めていたことが六日、分かった。関係者によると、同省の教科書調査官が各社に「軍から直接、命令した事例は確認できていない」と伝えたという。

 訂正申請した六社のうち一社は六日、「日本軍の強制」を再度明記した上で、「集団自決」の背景に日本軍が住民に米軍の捕虜になることを許さなかった事情があるなどの説明を加え、週明けにも再申請する方針を決めた。ほかに二社は、再申請を決めているという。

 「指針」は軍命の明記を禁じたほか、「集団自決」に複合的な要因があったと明示するよう要望。具体的には(1)天皇中心の国家への忠誠を強いた皇民化教育の存在(2)軍が住民に手榴弾を配った事実(3)沖縄戦は軍官民が一体となった地上戦―などの特殊事情を説明するよう求めたという。

 これらを明記することで「軍の強制」をうかがわせる記述を可能にすることが狙いとみられる。ただ、「軍の強制」や「『日本軍』の主語」を記述していいかどうかは明らかにしておらず強制性を明確に記述できるか不透明だ。

 再申請を受け、教科用図書検定調査審議会は再度、複数回の会合を開く見通し。結論は当初の見通しより遅れ、今月下旬になるとみられる。


     ◇     ◇     ◇     

強制「絶対譲れぬ」/県内反発 記述求める


 「集団自決(強制集団死)」の軍強制が削除された教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が「日本軍の命令」など直接的な関与を避けた表現の範囲内で、教科書会社に記述の再申請をさせる方針を決めたことに、同問題に取り組む団体や研究者、体験者から強い批判が上がった。「軍の強制を認めないなら意味がない」「検定意見の押し付けには変わりがない」と怒りが渦巻いた。一方で、「執筆者は勇気を持って真実を書いて」と支援する声もあった。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「『集団自決』が起きた背景をきちんと書き込めというのであれば『軍の強制』という記述を認めるべきだ。それでなければ文科省は何のために出版社の訂正申請を認めたのか分からない。強制の事実を薄めるようなことがあってはならない」と警戒した。

 沖縄戦研究者として審議会に意見書を提出した林博史・関東学院大学教授は「軍強制の記述が認められないなら、皇民化教育や『軍官民共生共死』について書いても、元の検定と同じで、とても認められない」と指摘する。沖縄戦全般についても「住民が日本軍によって追い詰められたことが沖縄戦の特徴。そこを書かせないのは、『集団自決』を含めて沖縄県民の犠牲の本質を歪曲するものだ」と批判した。

 座間味島の体験者、宮城恒彦さんは「『日本軍が』という主語と『強要』『強制』の表現は絶対に譲れない。まだ心配が続く」とため息をついた。文科省が再度訂正申請を求めたことに、「ここまで執着する背景には、政治的な圧力や意図があるのではないか。教科書会社や執筆者は苦しいだろうが、勇気を持って真実を貫いてほしい。歴史がどちらが正しいか証明する」と力を込めた。

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の共同代表、高嶋伸欣・琉球大学教授は「昨年度の検定で突然、不当な意見をつけたことに対し、沖縄の人々の怒りを正面から受け止めていない」とあきれた。「軍が住民を追い込んだことに疑問の余地はない。検定意見の扱い方は、日本軍の責任を薄めようとしているだけ。検定意見を押し付けている事態は変わらない」と憤った。

 沖縄戦研究者の大城将保さんは「(日本軍の関与を削除するよう求めた検定意見は)完全な事実誤認であり、沖縄の県民世論への配慮や、政治的な落としどころをもってして済む話ではない。検定意見を撤回しなければ抜本的な解決にはならず、あいまいにしておけばまた繰り返される恐れがある」と指摘。

 アジア近現代史への配慮を定めた検定基準の「近隣諸国条項」を念頭に「沖縄戦については本土ではまだまだ知られていない部分があるので、検定意見の撤回と併せ、沖縄条項を設ける必要がある」と話した。


記述訂正申請 書き直し要求


 文部科学省が高校日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が六日までに、教科書会社からの記述訂正の申請に対し、記述の書き直しを求める方針を決めていたことが分かった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071300_02.html

 

2007年12月7日(金) 朝刊 2面

県、納得いく説明要求/普天間アセス

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は六日、一般質問初日が行われた。

 米軍普天間飛行場の代替施設にかかる環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会が沖縄防衛局に対して、追加説明を求めていることなどへの県の対応について、知念建次文化環境部長は「審査会が事業者に送付した質問書は、建設計画や代替施設の運用形態、アセスの使用などについて具体的に明らかにするよう求めており、近日中に文書で回答が行われることと考えている」と説明した。

 その上で「県としてはその回答も踏まえ、今後とも納得いく回答を求めていく。説明で納得できない場合は、知事意見でしっかり指摘していきたい」と述べた。喜納昌春氏(社大・結連合)の質問に答えた。

 米軍基地内での温室効果ガス排出について、知念文化環境部長は「本県の温室効果ガス排出量に影響を与えていると考えており、その削減を図ることが重要。基地内における削減取り組み要請については、在沖米軍基地環境保全担当者会議等における米軍の対応等も踏まえ、渉外知事会へ提起していけるかどうか検討したい」との考えを示した。

 玉城義和氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月7日朝刊)

[泡瀬埋め立て]

見えない「将来見通し」


「後戻りはできない」


 沖縄市泡瀬の沖合を出島方式に埋め立てる「東部海浜開発事業」について東門美津子市長は、工事が進む第一区域(約九十六ヘクタール)を推進し、第二区域(約九十一ヘクタール)については「困難だ」として見直すことを表明した。

 第一区域は二〇一二年にも埋め立てが終わることになっている。

 工事の進ちょく状況は「後戻りできないほど進んで」(市幹部)おり、「自然保護も政治理念の一つ」とする市長も中止できないと判断したようだ。

 同事業では、議会の三十人中二十四人が推進の立場である。埋め立てについては一時期市民、与野党がともに推進した経緯があり、自然保護を訴えて当選した市長が第一区域を容認したのは苦渋の決断とみていい。

 だが、市長を指示する自然保護団体は周辺海域で約百十種を超える貴重な魚介類や藻の生息を示しながら、「クビレミドロなど貴重種が多いのは第一区域」とし即時中断を求めている。

 市長が会見でこの問題に時間を割かなかったのは残念といわざるを得ない。なぜ、第一区域を容認したのか。具体的な理由について、もっと突っ込んだ説明をすべきであった。

 第二区域についての説明はこうだ。

 まず、約三分の一が米軍泡瀬通信施設の保安水域であり、埋め立てで新たな提供施設はつくりたくない。そして、絶滅危惧種クビレミドロなど貴重な動植物の生息地域で、埋め立てると干潟への影響が大きい。

 この二つが「困難」の理由で、埋め立てを最小限にするには第二区域の変更しかなかったということだろう。

 第二区域が完成すると、周辺の上下水道を含むインフラ整備に九十一億円、用地購入に百八十四億円かかる。

 だが、厳しい財政環境の中で、歳入が確約できない事業への財政拠出が説得力を欠くのは言うまでもない。

 第一区域については、人工ビーチやホテルの数、景観計画、隣接する県総合運動公園と連動した観光・スポーツコンベンション・エリアとしての青写真を描き直す必要があるはずだ。

 将来に禍根を残さぬためにも、何が必要で何がいらないのか。市は情報を開示し、市民の協力を得るとともに議会でも論議を深める必要があろう。


生活排水流さぬ工夫を


 泡瀬干潟には下水溝から生活排水が流れ込んでいる。干潟と連動する比屋根湿地なども例外ではなく、周辺地域からの影響もあるという。

 湿地にはマングローブなどがあり、干潟とともに野鳥の飛来地になっている。だが、近づくとヘドロのにおいが鼻を突くところも多い。つながりのある干潟に浄化作用があるとはいえ、このままでは海域への影響を抑えることはできないのではないか。

 出島は陸域から五十メートル離れているが、埋め立てによる潮流の変化も懸念材料だ。比屋根湿地の真向かいの海域で海水が滞留するという指摘もあるからだ。

 そうなれば湿地を含めた周辺地域の環境が悪化するのは明らかで、運動公園前の海岸線にも負の影響を及ぼしかねない。生息する魚介類、藻などへの影響は一層高まるはずだ。

 反対派が強く訴える点であり、この問題への対処法も市は具体的に示さなければなるまい。

 自然との共生は言葉で言うほど簡単ではない。生活排水を安易に流さずごみも投棄しない。

 市民としての最低限の義務であり、環境に配慮する上での努めだということを忘れてはならない。


開発主義に頼らぬ策で


 市長が第一区域の作業を容認したとはいえ、解決すべき課題は先送りされたままだ。今回の場合、事業を追認したにすぎず、市の将来設計を描くことにはならない。

 これまでも企業誘致など土地利用における十分な見通しがないまま埋め立て、土地を塩漬けにした例は数多い。

 沖縄市は同じ轍を踏んではならず、だからこそ課題を徹底的に洗い出し、市民も参画した論議が重要になる。

 残された自然をどう守っていくか。埋め立て事業が地域の活力につながるのか検証することも重要になる。市民一人一人に求められているのは、この問題への積極的な関与であり、声を上げることで行政を動かすことだ。

 開発主義に頼らず、どう地域を活性化に導いていくか。海という自然を県民の財産としてどう保全していくか。このことも合わせて、市民で考える糧にしたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071207.html#no_1

 

琉球新報 社説

泡瀬埋め立て 市長はもっと語るべきだ

 沖縄市の泡瀬埋め立て事業で、東門美津子沖縄市長は5日、「規模縮小」の方針を打ち出した。環境、財政問題に配慮した判断のようだが、あいまいさは否めず、肝心の同事業への同市のビジョンが見えてこない。市長の指導力と説明不足の印象がぬぐえない。

 事業は沖縄市泡瀬沖合の約187ヘクタールを埋め立ててホテルや人工ビーチ、マリーナなどのリゾート施設や住宅などを整備するものだ。

 埋め立て事業は5つの大きな懸案課題を抱えてきた。

 第1が環境問題。最大の課題だ。泡瀬干潟はトカゲハゼ、クビレミドロなど希少種や絶滅危惧(きぐ)種の宝庫で、サンゴの大群落など海洋生物の貴重な生息域となっている。

 事業は、生態系を含む環境影響評価(アセス)を基にしたはずだが、10年以上経過し「当時のアセスの不備」も指摘されている。

 5日の泡瀬訴訟では、絶滅危惧種の保護で「専門家の意見は聴取していない」との証言も出るなど、事業計画のずさんさも露呈した。

 今回の「縮小」も生態系への影響回避には不十分との声が残る。

 第2が地域振興の課題。沖縄市の中心市街地は「シャッター通り」と呼ばれ、再活性化が課題だ。公共事業削減が続く中で、泡瀬埋め立て事業は沖縄市だけでも290億円の財政投資だ。大型事業への市民の期待は大きい。

 第3が財政問題。活性化の切り札となる事業だが、企業立地や売却益など事業収益が伸び悩めば、逆に財政破たんを招きかねない。

 第4が基地問題。隣接する米軍泡瀬通信施設の保安水域の一部が、埋め立て事業にかかる。このため埋め立て地の一部を、新たに米軍に提供することになる。東門市政にとって米軍への新基地提供は政治姿勢の根幹を揺るがしかねない。

 5つ目が産業振興。泡瀬埋め立て事業を中止すれば、産業立地の中核地・中城湾港新港地区の航路づくりが暗礁に乗り上げる。航路しゅんせつで生じる土砂が行き場を失うからだ。事業縮小は国、県の産業振興政策にも影を落とす。

 課題の中に、基地を抱える自治体の地域活性化の課題が凝縮されている。環境、財政、産業振興の課題克服は、積年の「基地依存経済」の呪縛(じゅばく)を解く鍵ともなる。

 5日の会見で示された「規模縮小」の市長判断は、苦渋の選択かもしれないが環境も破壊し、事業効果も不十分な、両にらみの中途半端な決断に映る。市民を納得させるのは難しいだろう。決断の経緯や根拠など詳細な説明が必要だ。

 市長は一層の指導力と調整力、そして決断力で市民の負託に応える義務がある。同時に、解決の鍵は市民が握る。市政を左右する課題克服と政策決定の場に、市民を大いに引き込んでほしい。

(12/7 10:08)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29552-storytopic-11.html

 

2007年12月7日(金) 夕刊 1面

住民から苦情相次ぐ/大規模即応訓練

 【嘉手納・読谷】米軍嘉手納基地で米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練が行われている米軍嘉手納基地周辺の嘉手納町と読谷村で七日までに、計十件の苦情が寄せられていることが分かった。両町村は同日までに、同基地司令官に対し、訓練の中止を求めて文書で抗議した。

 嘉手納町には即応訓練に伴う深夜、早朝に鳴り響く拡声器放送やサイレン音に対し「睡眠薬を飲んでも眠れない」「無神経な演習はすぐやめさせてくれ」など、不安を訴える苦情が相次いでいる。

 同訓練は米空軍と米海兵隊の合同で行われ、岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加。FA18の離着陸の際の騒音のほか、サイレンや英語での拡声器放送が民間地域にも鳴り響いているのが確認されている。嘉手納町は七日、読谷村は六日に抗議文書を送付した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071700_02.html

 

2007年12月7日(金) 夕刊 1面

文科相「承知していない」/軍命明記回避

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は七日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で教科用図書検定調査審議会が文科省を通じて教科書会社に伝えた「指針」の内容について、「出されたかどうか承知していない」と述べ、言及を避けた。

 同省の教科書調査官は各社に「指針」を示し、「軍から直接命令した事例は確認できていない」と伝え、軍の命令を明記しないよう求めたという。「指針」の妥当性について渡海文科相は「通常の検定の範囲で(審議委員が)学問的、専門的な調査をする中で行われていると理解してほしい」とした。

 審議会が結論を出す時期が遅れていることには「今やっている作業は来年の春の教科書に間に合うようにお願いしており、審議会の先生もそれを念頭に審議していると思っている」と述べた。

 

     ◇     ◇     ◇     

仲里議長、指針を批判


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍強制を削除した教科書検定問題で、教科用図書審議会が「指針」をまとめ、文部科学省が「軍の命令」を明記しないよう教科書会社に求めていたことについて、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は七日午前、「(軍命否定は)戦争を知らない人が言うこと。あのような、今死ぬか殺されるか、あるいは生きるかという、生と死のがけっぷちにある状況の中で、証拠がある。(軍命を明記しないという指示は)ナンセンスでばかげたこととしか言いようがない」と批判した。

 その上で「(軍命を示す)証言ははたくさんある。検定意見の撤回と記述の回復ということは、いささかも揺るぎはないし、その実現に向けて、今後も頑張っていきたい」と話した。

 一方、仲村守和教育長は教科用図書検定調査審議会の指針について、「内容について詳しいことは承知していない」とした上で、「県教育委員会としては検定意見の撤回と記述の回復がなされ、来年度も記述が回復された教科書で高校生が学習できることを期待している」と述べた。同日の県議会一般質問で、兼城賢次氏(護憲ネットワーク)に答弁した。


知事「大変失礼」/藤岡氏の議長批判


 新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝拓殖大教授が先月末、県庁記者クラブで会見し、沖縄戦時に日本兵から毒のおにぎりを渡されたとする仲里利信県議会議長の証言は「作り話」と批判したことについて、仲井真弘多知事は七日午前、県議会の一般質問で見解を問われ、「報道の通りであったとすれば大変失礼で理解不可能。大変疑問に感ずる発言」と批判した。

 仲村守和教育長も「(仲里議長の発言は)『歴史は正しく語り継がなければならない』との強い思いから、自らの沖縄戦体験に基づいて語られたものだと思う。つくる会会長の発言が報道の通りであれば極めて疑問であり、理解し難い」と同様に批判した。当山全弘氏(社大・結連合)への答弁。

 仲里議長はこれまでに「壕の中で泣きやまない幼い妹らを殺すよう、日本軍兵士から毒入りのおにぎりを渡された」と証言している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071700_03.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月1日から4日)

2007年12月1日(土) 夕刊 5面

嘉手納基地 北側滑走路の運用再開

 【嘉手納】今年一月から改修工事のため、使用を中止していた米軍嘉手納基地の北側滑走路の運用が三十日から始まった。目撃者などによると、同日午後に少なくとも二機の空中給油機が同滑走路から離陸する状況が確認された。滑走路は嘉手納町屋良の住宅地に近く、周辺住民は騒音負担の増加を懸念している。

 沖縄防衛局によると、北側滑走路の改修工事は二十七日に終了。同基地渉外部は使用時期については「未定」と説明していたという。

 北側滑走路では三十日午前十一時ごろ、飛行停止中のF15戦闘機を使用して、強制的に機体を停止させるため、滑走路上に設置されたワイヤを点検している様子が確認された。また、午後にはKC130空中給油機、KC135空中給油機が滑走路を使用し、北谷町方向から沖縄市方向に向けて離陸した。

 同基地では、三日から岩国基地(山口県)所属の海兵隊と空軍の合同即応訓練が実施されることに伴い、FA18戦闘攻撃機約三十機が一時的に移駐している。

 同町は「訓練期間中はただでさえ騒音増加が懸念される。この上、北側滑走路を使用すると、住民の騒音負担は増加するのでは」とみている。

 嘉手納町屋良の島袋敏雄区長は「(屋良地区から遠い)南側滑走路を使っていても騒音は激しかった。これ以上の騒音は地域住民の健康にも大きな被害を与える」と不安そうな表情を浮かべた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712011700_04.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 2面

跡利用へ法整備指摘/嘉手納で米軍再編シンポ

 【嘉手納】「米軍再編とどう向き合うか」をテーマにしたシンポジウム(主催・沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会)が一日、嘉手納町中央公民館であり、米軍基地を抱える宜野湾、嘉手納、北谷の三市町首長らが基地返還後の跡地利用などで意見交換した。宮城篤実嘉手納町長は、未明離陸の強行など周辺住民の意思に反して嘉手納基地が運用されるのは、施設管理権が米軍にあるからだと指摘。「管理権が自衛隊に代わることで、問題解決が実現可能になるのではないか」と問題提起した。

 しかし、地元自治体だけでは問題解決できないとして、「抜本的な解決策を持たない私たちができることは抗議行動だ」などと述べた。

 野国昌春北谷町長は、同町が跡地利用の成功自治体と評価される一方で、キャンプ桑江北側部分から米軍が廃棄した銃弾や油送管が相次いで発見されるなど、環境問題が跡地利用の障害になっている現状を報告。三年以内とされる返還給付金の期限延長も国は考慮するべきだ―と訴えた。

 伊波洋一宜野湾市長は米軍の資料を基に、普天間飛行場の航空機と海兵隊員はグアムに移転すると主張。名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設がなくても「普天間」は撤去可能だとの見解を示した。

 パネルディスカッションでは桜井国俊沖大学長が、一九九〇年代にフィリピンで米軍基地の跡地利用にかかわった経験を基に「米軍の情報提供がなければ、どこに何が埋まっているのか分からず、手も足も出ない」と報告。日米地位協定の改定などを通して「嘉手納以南」の大規模返還に備えるべきだと指摘した。

 仲地博琉大教授は、普天間飛行場やキャンプ・キンザーなどの大規模返還を実現するためにも「新たな法整備が必要だ」として、市町村から強力に働き掛けることを呼び掛けた。

 「跡地開発によっては軍用地料よりも高額な経済効果が得られる」と指摘したのは照屋寛之沖国大教授。また、我部政明琉大教授は日本のねじれ国会、米大統領選、イラク戦争の泥沼化で「米軍再編の先行きは不透明だ」と現状を分析した。

 シンポジウムには、本島中部の自治体職員や議会議員、市民らが多数参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_03.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 2面

「普天間」着地点見えず/SACO最終報告11年

 在沖米軍基地の整理・縮小を目的とした日米特別行動委員会(SACO)最終報告から、二日で十一年を迎えた。SACO事案は今年六月、地元合意が唯一得られていなかった金武町のギンバル訓練場の返還に関連し、同町がヘリパッドをブルービーチ訓練場へ移設する条件を受け入れたことで道筋をつけた。ただ、「五―七年以内」とされた普天間飛行場の返還は、在日米軍再編へ移行したものの、代替施設案(V字案)の沖合移動をめぐって政府と地元の調整が難航し、解決のめどが立っていない。(東京支社・島袋晋作)

地元は同意


 SACOと米軍再編がすべて実現すれば、返還規模は五千二百五十ヘクタール以上になり、在日米軍専用基地に占める在沖米軍基地の割合は約70%になる見込みだ。

 SACO事案のうち返還規模が最大で、二〇〇二年度末までを予定していた北部訓練場の部分返還(約三千九百八十七ヘクタール)について、日米は今年三月までにヘリパッドの移設数を七カ所から六カ所に減らすなどして、南側三カ所(東村、国頭村)の着工に合意した。

 移設反対を主張し、今年四月に当選した伊集盛久東村長も就任後の五月に容認姿勢に転じた。これらを受けて政府は七月から工事に着手。残り三カ所(国頭村)も含め、〇八年度中の完了を目指す。

 ギンバル訓練場(約六十ヘクタール)の返還については、跡地利用の大きな財源となる「米軍基地所在市町村活性化特別事業」(島田懇談会事業)が本年度末に期限を迎えることを踏まえ、儀武剛金武町長は〇八年度予算概算要求直前の六月定例会で受け入れを表明。防衛省は「SACO事案は地元同意がすべて得られたことになる」と歓迎した。


返還計343ヘクタール


 SACO事案は,これまで一九九八年に安波訓練場(約四百八十ヘクタール)の共同使用を解除した。

 〇三年にはキャンプ・桑江北側部分(三十八・四ヘクタール)返還を実現。〇六年は瀬名波通信施設(約六十一ヘクタール)、楚辺通信所(約五十三ヘクタール)、読谷補助飛行場(約百九十一ヘクタール)が全面返還され、返還面積は合計で約三百四十三ヘクタールになる。

 瀬名波通信施設はトリイ通信施設に、楚辺通信所はキャンプ・ハンセンにそれぞれ移設され、どちらも県内の既存米軍基地内に収容された。読谷補助飛行場のパラシュート降下訓練は、伊江島補助飛行場に移転した。

 那覇港湾施設(約五十五ヘクタール)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖への移設は米軍再編に移行。国、県、地元などでつくる移設協議会は今年八月、追加整備される集積場を含む代替施設の位置や形状、面積について、浦添埠頭地区の沖合に隣接する逆L字形(四十九ヘクタール)とすることで合意した。


こう着続く


 普天間飛行場(約四百八十ヘクタール)の返還は米軍再編に移行。日米は、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部にV字形の滑走路を建設することで合意したが、県や名護市は滑走路を沖合に移動するよう要求し続けている。政府は今年十月、地元の反対を押し切って、移設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書を提出。こう着状態が続く。

 米軍再編ではこのほか、牧港補給地区(約二百七十ヘクタール)、キャンプ桑江(約六十八ヘクタール)、第一桑江タンクファーム(約十六ヘクタール)を全面返還する。キャンプ瑞慶覧(約六百四十ヘクタール)は部分返還だが面積は決まっていない。

 これら「嘉手納以南」の返還で、日米は米軍再編最終報告(ロードマップ)に基づき、返還の「詳細な計画」を今年三月末までに作成する予定だったが、キャンプ瑞慶覧の返還交渉が難航し、見通しが立っていない。

 キャンプ瑞慶覧については、石破茂防衛相が十一月八日に会談したゲーツ米国防長官に対し、「県民にとって、目に見えるものとして、きちんと示さなければならない。長官のリーダーシップをお願いしたい」と最大規模の返還と早期解決を求めている。

 日米は普天間飛行場を一四年までにシュワブに移設した後に返還する方針。ほかの五基地の返還時期は、早ければ同年までに完了する在沖米海兵隊八千人のグアムへの移転後になる見通しだ。返還に伴い、第一桑江タンクファームの機能は普天間代替施設に併設。キンザーの倉庫機能は、嘉手納弾薬庫地区などに移設する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_04.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 27面

レノン命日合わせ 沖縄から平和発信へ共感の輪

 元ビートルズのジョン・レノンの命日に当たる十二月七日二十四時(八日午前零時)に時を合わせ「平和への思いを共有しよう」。那覇市でイベント関係の仕事をしている新城義満さん(54)の呼び掛けに共感の輪が広がっている。千五百枚のビラ=写真=を世界各地に配布。新城さんは、自分のいる場所で「電気を消して暗くしたり、ろうそくを灯したり自分のやり方で平和を考えてほしい」と話している。

 平和を訴えたレノンは一九八〇年十二月八日にニューヨークの自宅前で射殺された。レノンファンの新城さんは、以前から命日には、自然に友人たちと彼をしのんで曲を聴いたり演奏したりしていたという。ミニライブを何年も続けている友人たちもいた。「思いを一つにできないか」と考えて呼び掛けた。

 千五百枚作ったビラを、十一月半ばごろから県内各地だけでなく、東京や大阪、米国サンフランシスコの友人らにも郵送。「面白い」「無理なくできる」と好意的に受け止められているという。ビラには「この呼び掛けは沖縄から始まっています」とも書かれている。新城さんは「沖縄は(平和を求める)大きな声を出す資格がある」と話している。

 新城さん自身は、その時は「いつものミュージックバーで、いつもの仲間と過ごすと思う」。どれだけの人の思いが重なるのか楽しみという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月2日朝刊)

[アセス方法書]

そのままでは通らない

 米軍普天間飛行場の代替施設建設のため沖縄防衛局が県に提出した環境影響評価(アセスメント)方法書に対し、市民団体や自然保護団体だけでなく、地元自治体や県の諮問機関からも、厳しい意見や批判が相次いでいる。

 アセス方法書は、法律に基づいて移設先で実施する環境影響評価の調査方法などを記したものである。

 名護市は、航空機騒音に関して、事細かに方法書の疑問点をまとめ、県に意見書を提出した。

 政府案よりもさらに沖合での航空機騒音の予測・評価、米軍大型ヘリによる試験飛行、装弾場など関連施設の情報開示―などを求めている。

 その上で、住民生活への影響を最小限に抑えるため「可能な限り沖合に移動する必要がある」と、沖合移動を強調しているのが特徴だ。

 県環境影響評価審査会は、方法書の不備を指摘し、沖縄防衛局に追加説明を求める質問書を提出した。疑問点は代替施設の運用形態など三十五項目七十六問に及ぶ広範なものだ。

 国がまとめたアセス方法書は、たとえて言えば、出来の悪い答案みたいなものである。とても及第点は与えられない。

 方法書をめぐって、なぜ、こうした事態が生じているのか。私たちは、地元を無視した日米合意が必然的に招いた結果、だと受け止めている。

 橋本竜太郎元首相が「(普天間移設は)地元の頭越しには進めない」と明言して以来、地元の合意、了解を前提にして作業を進めることが政府の基本姿勢だった。

 ところが、あらたに日米が合意したV字形滑走路案は、地元への相談もなく、事後的に地元合意の形式を無理に整えただけの、実質的には不合意といっていい代物だった。

 強引さとあいまいさが当初からつきまとっていたのだ。問題はそれだけにとどまらない。

 代替施設建設をめぐって、情報開示を阻む二つの壁の存在が明らかになった。一つは作戦運用に絡む軍事機密という壁。もう一つは地元の反発を招きかねない「不都合な事実」を公表しないという隠ぺい体質の壁だ。

 アセス方法書に対して「知りたいことが盛り込まれていない。判断のしようがない」という厳しい意見が相次いでいることを政府はどう考えているのか。

 代替施設の建設スケジュールは日米が決めたもので、これにも地元はかかわっていない。計画表にこだわるあまり、無理を重ねれば、ひずみはますます大きくなるだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071202.html#no_1

 

2007年12月3日(月) 朝刊 1面

きょうから即応訓練/米空軍・海兵隊

 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点にした米空軍と米海兵隊の合同即応訓練が三日、始まる。岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と六百人の海兵隊員が参加する。嘉手納基地が大規模な部隊を受け入れ、合同で即応訓練を実施するのは今回が初めて。同基地によると七日まで行われる。周辺自治体は「基地の機能強化だけが進んでいる」などと反発している。

 参加するFA18戦闘攻撃機や要員は、二日までにほとんどが嘉手納基地に到着したとみられる。

 四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などを使用するという。

 即応訓練は有事の対応を確認する訓練。嘉手納基地では従来、同基地兵士が他基地からの部隊役となり、実施してきた。

 訓練について、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備、F15戦闘機や外来機による未明離陸など、負担軽減に逆行しているとして、訓練の中止を求め、四日に同基地司令官に直接抗議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031300_04.html

 

2007年12月3日(月) 夕刊 1面

嘉手納で大規模訓練/米空軍・海兵隊合同即応

 【中部】米軍嘉手納基地を拠点に、米空軍と米海兵隊合同の即応訓練が三日午前、始まった。海兵隊岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊約六百人が参加。同機は午後一時までに十七機が飛行し、このうち二機が緊急着陸した。嘉手納町屋良の騒音測定器は最高値九一・一デシベル(騒々しい工場内に相当)を計測。「機能強化ばかりが進んでいる」として訓練に反対していた周辺自治体は、強行した米軍に反発を強めている。訓練に反対する市民団体は「安保の見える丘」で抗議集会を開き、シュプレヒコールを繰り返した。

 同日午前に緊急着陸した機体は、滑走路のワイヤにフックを掛けて停止したため、緊急性が高かったとみられるが、同基地報道部は「機体にトラブルはなかった」としている。

 当初、普天間飛行場も使用するとしていたが、同日午後一時現在、目立った動きはない。

 FA18は午前八時三十分ごろ、一機が同基地南側滑走路から離陸したのを皮切りに、十七機が相次いで飛行。沖縄本島周辺の訓練区域で訓練を実施したとみられる。嘉手納町屋良では、同日午後一時までに、多くの人が不快に感じる70デシベル以上の騒音を七十三回計測した。

 また、FA18に実弾を装着している様子も確認された。在沖海兵隊は沖縄タイムス社の取材に対し、FA18は実弾を使用した訓練を実施することを明らかにしたが、爆弾の種類については「運用上の保安のため」公表していない。

 岩国基地の所属機は今年九月にも、非人道的兵器として国際的に非難を受けているクラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使用した訓練を実施している。

 訓練の中止を求め、四日に同基地司令官に直接抗議する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「外来機が参加する大規模訓練が県外で行われれば、大問題になるはずだ。容認できない。沖縄だけが基地負担を押し付けられている。嘉手納基地の使用協定見直しを国レベルで協議しなければ、根本的な解決にならない」と述べた。

 即応訓練は有事の対応を確認する訓練。嘉手納基地では従来、同基地の兵士が他基地からの部隊役となり、実施してきた。同基地が大規模な部隊を受け入れ、合同で即応訓練を実施するのは今回が初めて。四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などを使用。訓練は七日まで行われる。


     ◇     ◇     ◇     

北谷議会が抗議決議


 【北谷】米軍空軍と海兵隊による大規模な合同即応訓練が始まった三日午前、北谷町議会(宮里友常議長)は臨時会を開き、訓練に対する抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。海兵隊岩国基地(山口県)の隊員約六百人とFA18戦闘攻撃機約三十機が参加するなど、嘉手納基地での初の大規模合同訓練を、「基地機能強化につながる」と問題視し、訓練の中止を求めている。嘉手納基地司令官などへの直接抗議を予定している。

 抗議決議は、基地負担軽減が掲げられた二〇〇六年の日米再編協議以降の嘉手納基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)配備、未明離陸やパラシュート降下訓練の強行を指摘し、「基地負担の軽減とは程遠い状況にある」と米軍を批判している。

 合同訓練については、「明らかに一方的な基地機能の強化につながる。度重なる訓練に強い憤りを覚えている」と強く反発。基地負担軽減の実行、地位協定の改善・見直し、騒音防止協定の抜本的な見直しを訴えた。

 また、米本国の墜落事故を受けて飛行中止している嘉手納基地所属のF15戦闘機についても、事故原因の公表とF15の即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。


嘉手納も中止要求へ


 【嘉手納】嘉手納町議会(伊礼政吉議長)の基地対策特別委員会が三日午前開かれた。同日始まった米軍の大規模即応訓練について「町民の騒音被害の増大が考えられる」として、十日開会の町議会十二月定例会冒頭に、訓練中止などを求める抗議決議と意見書の両案を提出することを決めた。

 基地特委では「空軍の通常訓練だけでも騒音被害は大きい。さらに海兵隊が加わっては大変だ」「住民地域に近い北側滑走路の修復工事も終了したようだ。騒音被害増大が考えられ、即応訓練は中止するべきだ」などの意見が相次いだ。

 十二日以降に嘉手納基地への抗議行動および県選出国会議員に対する要請活動を行い、同様の大規模訓練が今後行われないよう求める方針だ。

 また、米国でのF15戦闘機墜落事故を受け、嘉手納基地のF15が二度にわたり飛行停止措置を講じた問題も協議。即応訓練の中止と併せ、F15の飛行停止と即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案提出も決めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031700_01.html

 

2007年12月3日(月) 夕刊 5面

墜落の恐怖 住民怒り/FA18緊急着陸

 【中部】嘉手納基地を拠点に大規模な合同即応訓練が始まった三日早朝、飛行ルートにある北谷町では戦闘機の騒音が響いた。訓練中のFA18戦闘攻撃機一機が離陸後、緊急着陸する事態も発生。例を見ない合同訓練のスタートに、危険と隣り合わせの生活を強いられる住民の不安は高まっている。

 「わじわじーして、落ちたらどうするのか」。北谷町砂辺区の松田正二区長はFA18一機が緊急着陸したと聞き、憤りを隠せない。「欠陥機というのははっきりしている。やりたい放題だ」と語気を強めた。「政府は沖縄、特に砂辺に負担を押し付け、切り捨てているとさえ思う。何の対応もしない政府の姿勢は爆音よりも腹立たしい」と語った。同区公民館の女性職員(47)は「電話が中断するほどの騒音。訓練とはいえ、住民のことを考えてほしい。他市町村から来る子どもも怖がっている。訓練は無人島にでも持って行ってもらいたい」と訴えた。

 同じく砂辺区の松田文子さん(73)は「本当にやかましい。うるさいときは電話も聞こえないし、テレビもジリジリして見えない。夫婦一緒に住んでいるが、訓練を早くやめてほしい」と強調した。

 宜野湾市の普天間飛行場では同日午前十一時までに戦闘機の離着陸はなかった。しかし、嘉手納基地同様、即応訓練の「拠点」として挙げられており、七日までの期間中に訓練が行われる可能性もある。

 喜友名地区の知念参雄自治会長は「今のところ目に見える被害はないが、何で沖縄ばかりなのかという気持ち」と批判。「米軍は全く無神経。沖縄で集中的にやって来るんじゃないかと心配だ」と訓練の恒常化を警戒した。

 嘉手納町屋良区では早朝に飛行機の騒音はほとんどなかった。屋良小学校の近くに住む主婦(42)は「区民は訓練の実施に敏感になっている。近くに学校もある。いつ飛行機が落ちるか分からない状況の中で生活するのは大変だ。訓練などすぐにやめてほしい」と話していた。


     ◇     ◇     ◇     

「有事想定許さない」/市民団体 即応訓練に抗議


 【嘉手納】米海兵隊岩国基地(山口県)のFA18戦闘攻撃機約三十機と要員約六百人が参加し、米軍嘉手納基地で三日午前始まった「即応訓練」に反対する集会が同日午後、通称「安保の見える丘」で開かれた。参加者らは「嘉手納基地での演習は許さないぞ」「欠陥機F15戦闘機は出てゆけ」とシュプレヒコールを繰り返し、抗議の意思を示した。

 沖縄平和運動センター、中部地区労などが主催、市民団体や県議ら約百十人が参加した。

 沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「即応訓練は、沖縄における有事を想定し嘉手納基地を出撃拠点とする大規模なもの。訓練は絶対許されない」と語気を強めた。

 中部地区労の金城広郁事務局長は「海兵隊ヘリコプターは沖国大に墜落したが、今度は欠陥機のF15を私たちの屋根の上に落とすつもりなのか」と批判した。

 一行は午後五時まで監視行動を続ける予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031700_02.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 1面

PAC3初の機動訓練/車両、国道58号移動

 嘉手納基地に配備されている米陸軍の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊は四、五の両日、初の機動展開訓練(移動訓練)を嘉手納弾薬庫地区内で実施する。四日未明、機器などを搭載した米軍車両二十九台、兵員八十人が次々と嘉手納基地を出発。国道58号を北上し、嘉手納弾薬庫地区に向かう。同弾薬庫地区内で機器の運用上必要な通信環境や障害物の有無などを確認するとみられる。

 公道を使った部隊移動について、外務省は「日米地位協定五条で認められた『施設間移動』に当たり問題ない」としているが、周辺自治体は米軍の訓練が活発化する現状に、「基地機能強化」「負担増」と反発を強めている。

 沖縄防衛局は三日、嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に隣接する嘉手納町、北谷町、沖縄市、読谷村、恩納村と県に通知。県基地対策課は同日、訓練で周辺住民に著しい影響を与えないよう配慮するとともに、国道58号を移動する際は交通渋滞などの支障や影響を与えないよう、口頭で沖縄防衛局を通じて米軍に申し入れた。沖縄防衛局によると、車両に弾薬は搭載せず、訓練は模擬弾を使用する。嘉手納基地で三日から始まった米空軍と米海兵隊の合同即応訓練とは「関連しない」としている。

 政府関係者によると、PAC3は射程が約二十キロと短く、特定の基地を守る場合は対象の近くに展開する必要があるため、平時に機動展開訓練を実施する必要があるとしている。昨年七月に北原巌男防衛施設庁長官(当時)が県に説明した際、公道を使用した移動訓練が行われる可能性に触れた上で「頻繁ではない」と説明していた。今後、キャンプ・ハンセンなど県内の他の米軍基地にも定期的に展開訓練を実施する可能性がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_03.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 27面

負担軽減「感じない」/米軍即応訓練

 【中部】「負担軽減など一度も感じたことがない」。米海兵隊FA18戦闘攻撃機の爆音とともに三日、嘉手納基地で始まった即応訓練に、周辺住民の政府不信が高まっている。四日には「即応」に加え、同基地パトリオット部隊が国道58号で移動訓練を実施、隣接する嘉手納弾薬庫地区では爆発装置を使用した訓練も行われる。住民の怒りの声をよそに、訓練の集中・激化はさらに続く気配だ。

 岩国基地(山口県)のFA18が爆音をまき散らした北谷町砂辺に住む渡慶次保さん(74)は、「米軍機の爆音にさらされ、毎日が苦しい。政府は沖縄の『負担軽減』を口にするが、そんなの一度も感じたことがない。訓練が重なっている今だからこそ、国レベルで対応してほしい」と訴えた。同区の伊礼勇さん(70)は知人から「砂辺は人が住む場所ではない」と言われた経験がある。「ベトナム戦争や湾岸戦争では、嘉手納から離陸する飛行機が昼夜を問わず爆音を響かせた。住民は無視されっぱなしだ」と話した。

 嘉手納町屋良の沢岻安一さん(67)は相次ぐ訓練に「抗議の声が届かないのか。しかし、黙るわけにはいかない」と話した。「相次ぐ訓練は戦争の前触れではないか」と話す沖縄市知花の島袋善祐さん(72)は「米軍の『訓練』は、平和のためではなく人殺しのためだ。沖縄戦を経験した一人として、最近の米軍の行動には怒りがわいてくる」と声を荒らげた。


沖縄近海に実弾投下か


 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点に、米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練が始まった三日、FA18戦闘攻撃機は約三十機が離陸、このうち、少なくとも四機が実弾を装着して飛行した。実弾を装着した四機は、いずれも二時間以内に嘉手納基地に帰還。着陸時に実弾がなくなっていたことから、沖縄本島周辺で投下したとみられる。

 嘉手納町屋良では最高値で九一・一デシベル(騒々しい工場内に相当)の騒音を計測した。同町が屋良地区に設置している騒音測定器は、三日午前零時から午後五時までの十七時間で、七〇デシベル以上の騒音を百回計測した。

 同町屋良の通称「安保の見える丘」で同日午後、開かれた緊急の抗議集会で、主催した沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「即応訓練は沖縄での有事を想定し、嘉手納基地を出撃拠点とする大規模なものだ。訓練を許すことはできない」と米軍を非難した。

 同基地によると、訓練は七日まで。サイレン音や地上爆発模擬装置(GBS)などを使用する訓練は四日から行われる。


きょう爆発装置訓練


 【嘉手納】在沖米空軍は四日午前七時半から昼ごろまで、米軍嘉手納弾薬庫地区内の通称シルバーフラッグサイトで、「エックスプローセブ・シミュレーター」(模擬爆発装置)を使用した訓練を実施する。沖縄防衛局から三日午後、連絡を受けた嘉手納町によると、模擬爆発装置約二十発や発煙筒を使用する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_04.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 26面

教科書検定 撤回求め東京で集会

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める全国集会(主催・東京沖縄県人会、沖縄戦首都圏の会)が三日夜、都内の九段会館で開かれ、関東・関西など各地から約一千人(主催者発表)が参加した。

 文部科学省に(1)検定意見の撤回を可能にする検定規則の制定(2)教科用図書検定調査審議会で審議中の教科書会社六社による訂正申請を認めて記述を回復―などを求めるアピールを全会一致で採択した。

 渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明さん(沖縄キリスト教短大名誉教授)は「日本軍が天皇から授かった武器である手榴弾を配ったのは、住民への死の強要にほかならない」と自決の強制性を訴えた。

 一九九一年度の公民教科書検定で引用されたコラムに検定意見が付き、九六年度に文部省、厚生省(ともに当時)の謝罪を勝ち取った暉峻淑子埼玉大名誉教授は、検定意見の根拠が厚生省社会局長の国会答弁だったことを説明。

 「孤独な闘いだったが、私が引き下がったら日本の民主主義と科学的な真実が後退すると思った。文部省の課長に抗議して『外に雨がザーザー降っていても局長が晴れと言えばその通りですか』と聞くと『はい、そうです』と言われた」と述べ、検定意見に固執する国の姿勢を批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_07.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 26面

カメさんの闘いコントに 生誕100年でFEC

 「カメさん」の愛称で親しまれ、那覇市長や衆院議員を務めた故瀬長亀次郎さん(一九〇七―二〇〇一年)の生誕百周年を記念した「カメジローからのメッセージ 講演と文化の夕べ」が三日、浦添市てだこホールで開かれ、約七百人が訪れた。

 演芸集団FEC(山城智二代表)は「お笑いカメジロー」で、瀬長さんの演説や、獄中から出所する場面などを描いた五つのコントを披露。沖縄のため、米側の圧政と戦った瀬長さんをコミカルに表現し、会場から大きな笑い声が起こった。

 山城代表は瀬長さんが両親の仲人を務めたことや、自身が瀬長さんをテーマにした映画に出演したエピソードを紹介。「コント制作のために資料などを読み直し、あらためて偉大さを感じた。上の世代から渡されたバトンを若い世代につないでいきたい」と語った。

 瀬長さんの二女・内村千尋さんは「基地のない沖縄を目指した父のメッセージを多くの方に受け取ってほしい」とあいさつした。

 琉球大学の比屋根照夫名誉教授が「瀬長亀次郎と私たち」をテーマに講演したほか、ロビー内には瀬長さんの遺品や那覇市長時代などの写真、新聞などが展示された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_12.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月4日朝刊)

[防衛省改革会議]

癒着の病巣にメスを

 収賄容疑で守屋武昌前事務次官が逮捕される中、防衛省の抜本改革に向けた有識者による「防衛省改革会議」が開かれた。

 官邸主導にしたのは、もはや防衛省には自らの手で組織を洗い出し、立て直す能力がないとみたからだろう。

 一九九八年の装備品調達をめぐる汚職や二〇〇五年の談合を含めた一連の事件を思い起こせば、同省にはびこる病巣はあまりにも根深い。

 中間報告は来年二月に出るが、国防を担う組織としてどうあるべきか。抜本的な改革案の提示を期待したい。

 論議する柱は(1)装備品調達の透明性(2)情報保全体制の確立(3)文民統制(シビリアンコントロール)の三つだ。

 防衛省の武器から制服に至る装備品の予算は年間約二兆円規模に上る。

 最大の課題はその契約の在り方といっていい。武器を含め自衛隊だけが使用する特殊なものが多いだけに約七割が随意契約になっているからだ。

 装備品に軍事機密が絡むなど、他省庁の契約と異なるのは確かである。だが、それが業者との癒着の温床になっているのなら、競争入札によって透明性を高めるのは当然であり、それが国の責任だといえよう。

 商社「山田洋行」が対潜哨戒機の装備品納入の際に行った水増し請求もそれによって派生した問題だ。

 増田好平事務次官は、今後は商社の見積書をメーカー側に照会することを明らかにしたが、基本的な作業をしていなかったのであれば由々しき問題であり、あきれ果てるしかない。

 発注から納入まで業者にまる投げしてきた“つけ”は明らかだ。防衛省は事後的なチェックも含め、対応を強化する必要がある。

 在沖米海兵隊のグアム移転で米側は約百億ドルの拠出を要求している。本当に必要な額なのか、査定根拠など詳細な情報開示が欠かせない。

 海上自衛隊の補給艦がインド洋で展開していた米艦船などへの燃料補給活動では、海上幕僚幹部の課長(当時)が補給量の誤りに気付きながら上司に報告。誤った数量を石破茂防衛相が国会答弁している。

 給油問題では保管すべきデータの廃棄もあった。情報の保全の在り方とともに文民統制の問題とも深くかかわる問題といっていい。

 文民統制は憲法の機軸だ。自衛隊を統制するのは文民であり、制服組ではないということを忘れてはなるまい。

 装備品調達の在り方を含めて防衛省の組織図をどう見直していくのか。構造的な弊害を一掃するためにも大胆にメスを入れるべきだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071204.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍即応訓練 これ以上の負担はノーだ

 日々を安穏に過ごしたい。当然の欲求や願いである。何はさておき優先されねばならない。

 米空軍第18航空団は3日、嘉手納基地を拠点に海兵隊岩国基地所属のFA18戦闘機との合同即応訓練を開始した。訓練のため岩国から移動してきた海兵隊員は約600人。FA18戦闘機は30機に上る予定だ。

 基地への攻撃を想定した異例の大規模訓練に伴い、嘉手納近辺では午前8時半ごろからFA18戦闘機が立て続けに離陸し、爆音をまき散らした。

 野放図な訓練が繰り返される中で、欠陥機の疑いの濃い危険な飛行や未明離陸などの中止を求める地元の切実な声は、一顧だにされない。米軍再編のお題目であるはずの「負担軽減」は、かけらすら実感されない。

 一方で昨年10月に地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)が初めて配備されたのを皮切りに、最新鋭戦闘機F22 12機が一時配備され、日米特別行動委員会(SACO)合意に反してパラシュート降下訓練が強行される。逆行した動きばかりが目立つ現状のひどさは、誰の目にも明らかである。

 大規模即応訓練によって地元の怒りや不安が沸点に達していることは、次のようなコメントが明確に物語っている。

 「沖縄の基地から派兵され、本土の基地で大規模な訓練が実施されるとしたらこんなローカルな問題では済まないはずだ」(野国昌春北谷町長)

 地元にこれ以上、負担や犠牲を強いるのは認めるわけにはいかない。即応訓練を7日まで継続する構えでいるが、きょう以降、即応訓練を即刻中止すべきだ。

 懸念されるのは、大規模即応訓練が常態化することだ。県民の恐れや地元の懸念が、一過性に終わらず常態化の気配を見せているのが腹立たしい。

 伊江島に限定されるはずのパラシュート降下訓練にしろ、「運用上の所要のため」を理由に、航空機騒音の規制措置を有名無実化させる未明離陸の問題もしかりである。

 即応訓練に対しても、米軍は常態化の機をうかがっていると見るべきだろう。

 米軍には地元の訴えに耳を傾けたり、訓練への影響に配慮するなど抑制的な姿勢はまったく見られない。それどころか、嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会などの抗議や要請、地元議会の抗議決議可決をやり過ごせば、後は思いのままに基地を運用できる。そんな姿勢さえうかがえる。

 であれば、抗議や要請にも工夫が必要ではないか。県との緊密な連携を含め、取り組みを一段と強化し、日米政府を動かす方法を検討したい。

(12/4 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29458-storytopic-11.html

 

2007年12月4日(火) 夕刊 5面

検定制度見直し言及/撤回要請に文科省審議官

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める都内在住の市民団体や県関係の国会議員などが四日午前、文部科学省で布村幸彦大臣官房審議官に要請した。出席者によると、布村審議官は「検定意見が間違っているとは思わない」と反論する一方、「検定制度の見直しは考えている」と制度見直しに初めて言及したという。

 要請には都内各地で検定意見の撤回を求める「市民の会―東京―」(阿部ひろみ代表)、「沖縄戦首都圏の会」、琉球大学の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授が参加し、それぞれが要請書を手渡した。県関係の野党国会議員四人も参加した。

 文科省が今回の検定の責任を認めて謝罪することや、検定意見が誤っていた場合の是正措置を検定規則に明記するよう求める声が相次いだ。

 布村審議官の「見直し」発言を受け、高嶋教授が「審議会の透明性向上だけでなく制度全体の見直しなのか」とただしたところ、同審議官は否定しなかったという。

 照屋寛徳衆院議員(社民)は「文科省は検定の責任を率直に認めて謝罪してほしい。このようなおろかなこと(検定)を繰り返してはならない」と述べ、謝罪や記述の完全な回復を求めた。

 「市民の会」の阿部代表は、訂正申請の内容の公開や教科用図書検定調査審議会委員の選任を見直すよう求めた。

 一方、同時刻に文科省前で「市民の会」と「新しい歴史教科書をつくる会」が集会を開き、現場は一時、騒然とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月29日、30日)

2007年11月29日(木) 朝刊 1・27面

嘉手納F15飛行再停止/墜落事故に新情報

周辺住民の不安高まる

 【嘉手納】米軍嘉手納基地報道部は二十八日夕、同基地所属のF15戦闘機全五十三機の飛行を再停止すると発表した。米国で起きた墜落事故に伴い、事故調査当局が発見した「新たな情報」に基づき、太平洋空軍司令官が指示した。停止期間は明らかにしていない。同基地のF15は、事故原因を公表しないまま二十六日に三週間ぶりに飛行再開を強行したばかり。事故に起因する度重なる飛行停止に、周辺住民の不安は高まっている。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は二十六日に同機の撤去、飛行中止を求めて同基地司令官らに抗議していた。野国会長は「F15の危険性が明らかになった。嘉手納基地からの撤去と同時に、日本政府にも、安全性が検証されないまま飛行を再開した米軍の責任を追及するよう求めたい」と述べた。

 嘉手納基地は「新たな情報の分析が終了後、飛行停止期間や事故に関連した機体整備を受けることになるだろう」と説明している。外務省は駐日米大使館に飛行停止の原因などを照会したが、回答はないという。

 嘉手納基地のF15は、来月三日から同基地を拠点に行われる空軍と海兵隊の合同即応訓練に参加予定だったが、飛行停止措置が解除されなければ参加しないとみられる。


     ◇     ◇     ◇     

「またか」住民憤り/安全性に深まる疑問


 【中部】「米軍はいいかげんな判断で、飛行再開したのか」―。飛行開始からわずか三日目、嘉手納基地は二十八日、F15戦闘機を再び飛行停止にした。同基地は、飛行停止措置を解除する際に、「空軍は安全な飛行運用を最重要視している」と発表したばかり。F15の安全性に、基地周辺住民の疑問は深まる一方だ。

 飛行ルート下で、ごう音にさらされる北谷町砂辺区の松田正二区長は「今回、停止措置を取った原因も明らかにされていない。飛行機が落ちてからでは、どうにもならない」と指摘する。「もう抗議文だけでは解決できない。区民として声を上げるしかない」と憤った。

 砂辺区の主婦、中村喜江子さん(71)は「また飛行中止するということは、ここ数日は危険な状態で飛行していた、ということ。いつ事故が起きてもおかしくないのでは」と話した。

 嘉手納町基地対策協議会評議員の宮城清記さん(82)は「県や市町村の幹部、議会はもっと真剣に考えなければならない。万が一の事が起きてからでは遅い」と強調した。


米2機が緊急着陸

嘉手納基地


 【嘉手納】米軍嘉手納基地で二十八日午前十一時すぎ、同基地所属のF15戦闘機二機が相次いで緊急着陸した。二機は北谷町方向から同基地南側滑走路に午前十一時十五分ごろから三十分にかけて相次いで着陸。一時騒然とした。

 同基地報道部は「予防のための着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711291300_01.html

 

2007年11月29日(木) 朝刊 2面

ヘリ輸送船の接岸確認/普天間代替

 ケビン・メア在沖米国総領事は二十八日の定例記者会見で、米軍普天間飛行場代替施設について、故障したヘリなどを運搬するための船舶(バージ船)接岸場所の確保を日米で確認していたことを明らかにした。接岸場所については、航空燃料を運搬する給油艦が出入りする桟橋部分とは別に、「直線の防波堤部分」を検討。メア総領事は「(日本政府は)だいたい(接岸位置を)決めていると思う」との認識を示した。

 代替施設の港湾機能をめぐっては、石破茂防衛相が衆院安全保障委員会で、ヘリが故障した際の船舶を使った移送について「それによって港湾施設というか、船舶に関する施設の所要も異なる」と述べ、検討する考えを示唆していた。

 メア総領事は「石破防衛相の言ったことはもちろん否定しない」とした上で、「飛行機が故障したらトラックで運ぶことは難しいので、修理するために代替施設からバージ船で別の場所へ運ぶ必要がある、というのは(日米で)検討していた」と説明した。

 接岸場所については「たぶん燃料用の桟橋とは別の所。マスタープランの中で検討している。特別の施設ではなくて場所が必要。例えば普通は防波堤は傾斜しているが、真っすぐだったらそこにバージ船が(接岸)できるという話」と述べた。

 一方で、「港や岸壁を造るという話ではない」とし、恒常的に貨物などを積み降ろしする船舶の利用は想定していないことを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711291300_04.html

 

2007年11月29日(木) 朝刊 2面

嘉手納即応訓練/在沖海兵隊も参加

 米空軍嘉手納基地報道部は二十八日、岩国基地(山口県)の米海兵隊とともに、来月三日から実施予定の即応訓練について、嘉手納基地所属の空軍要員と在沖海兵隊員すべてが参加することを明らかにした。嘉手納基地の輸送機も訓練に加わる。嘉手納基地で米海兵隊と合同で即応訓練を実施するのは今回が初めてという。

 同報道部は「嘉手納基地は前方展開基地として、他の基地から来る部隊を受け入れ、紛争地や被災地に派遣する任務も持つ」と説明。有事や人道支援の際の経由基地として、他基地からの支援部隊の受け入れ態勢を確認するのが、今回の訓練の主目的だという。

 これまでの即応訓練では、嘉手納基地の部隊が、他の基地からの派遣部隊役を演じていたが、今回はより現実に近い形で実施するため、実際に岩国基地の部隊を受け入れることにしたという。

 嘉手納基地の部隊や戦闘機が普天間飛行場に展開することはない、としている。


     ◇     ◇     ◇     

三連協など抗議へ


 【中部】嘉手納基地周辺自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十八日、北谷町役場で幹事会を開き、嘉手納基地などで予定されている大規模な即応訓練に抗議することを決めた。訓練期間中の来月四日に嘉手納基地を訪ね、同基地司令官に直接抗議する。

 同協議会事務局によると、抗議では嘉手納基地の負担軽減がうたわれた二〇〇六年の在日米軍再編以降も、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備や、F15戦闘機や外来機による未明離陸などで負担軽減に逆行している現状を指摘し、訓練の中止を訴える。外務省沖縄事務所、沖縄防衛局も訪れる予定だ。

 また、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は二十八日、基地に関する調査特別委員会を開いて、即応訓練とF15戦闘機の飛行再開問題について対応を協議した。来月四日に再度、基地特委を開き、抗議決議と意見書の両案を市議会十二月定例会に提案する方向で調整することが決まった。北谷町議会(宮里友常議長)は二十九日午後、基地対策特別委員会を開き抗議する方向で対応を協議する。

 即応訓練は、米軍嘉手納基地を拠点に、第一八航空団と海兵隊岩国基地(山口県)の部隊などが十二月三日から七日まで予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711291300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月29日朝刊)

[守屋前次官逮捕]

防衛利権にメス入れよ


業者とずぶずぶの関係

 この役所は、どこか変だ。背任、汚職、談合といった臭気漂う事件が後を絶たない。

 一九九八年九月、防衛庁調達実施本部の背任・汚職事件で元調達実施本部長ら幹部が逮捕され、昨年一月には防衛施設庁の官製談合事件で同庁の技術審議官が逮捕され、そして今回である。

 再発防止のため倫理規程を設け、部下に対して李下に冠を正さずの教えを説いた当の幹部が、その裏で業者から過剰なゴルフ接待を受けていたことが発覚し、妻とともに収賄容疑で逮捕された。

 防衛庁が「省」に昇格したのは一月のことだ。だが、「省」にふさわしい風格を備えているかといえば、はなはだ疑問だ。

 逮捕された守屋武昌前事務次官は、贈賄容疑で再逮捕された防衛商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者から、今年四月までに三百回以上ゴルフ接待を受けていたという。

 業者丸抱えの、北海道や九州へのゴルフ旅行。還暦祝いの現金二十万円。守屋容疑者はゴルフ接待にたびたび妻を同伴。宮崎容疑者から夫婦そろってゴルフセットを贈られたこともある。

 収賄罪の公訴時効に掛からない五年間に限っても、接待の総額は五百万円に上るという。なぜ、これほどまでに過剰な接待が繰り返されたのか。

 東京地検特捜部は、航空自衛隊の次期輸送機(CX)のエンジン納入などで有利に取り計らってもらうことを期待して接待を繰り返したとみている。

 守屋容疑者は二回の証人喚問で便宜供与を否定した。だが、接待を受けるだけの関係というのは常識的にも考えにくい。

 山田洋行は対潜哨戒機の装備品納入の際、見積書を偽造して水増し請求をしたにもかかわらず処分を受けなかったことも明らかになっている。

 防衛装備品の調達は、防衛秘密という名のベールに包まれ、外部からはうかがい知れないことが余りにも多い。

 宮崎容疑者が着服したとされる約一億円の資金はどこに流れたのか。この際、防衛利権をめぐる疑惑に徹底してメスを入れてもらいたい。


「普天間」を取り仕切る


 歴代の防衛庁幹部の中で、守屋容疑者ほど沖縄と縁の深い人はいない。

 日米両政府が米軍普天間飛行場の返還に合意した一九九六年から、今年八月に退職するまで、十一年余りもこの問題にかかわり続けてきた。

 沖縄通を自称し、県選出の国会議員や市町村長、建設業者とも太いパイプを築いた。

 九六年の日米合意を主導したのは外務省だったが、米軍再編をめぐる日米交渉で普天間代替施設の新たな合意案をまとめたのは防衛庁である。その中心にいたのが守屋容疑者だった。

 自民党の防衛族に食い込み、政治家の力を上手に利用して問題を処理する能力にたけていた。その種の実行力が評価され、「守屋さんがいないと米軍再編は難しい」という守屋頼みの風潮が省内に広がった。

 だが、豪腕ぶりの裏で、どのようなことが行われていたのか。

 普天間代替施設の沖合移動を求める地元名護市に対して、「名護の主張は地元業者の埋め立て利権」だと言い放ったのは守屋容疑者である。

 国会の証人喚問で県選出の議員は、米軍再編にからむ沖縄の防衛利権問題を取り上げた。追及は不発に終わったが、本人が逮捕された以上、普天間代替施設をめぐる日米の方針転換の背景に政官業のどのような動きがあったのか、詳細な検証が必要だ。


国会運営が視界不良に


 福田康夫首相は、二十八日に開かれた自衛隊高級幹部会同で「国民の信頼が大きく揺らいでおり、本当に残念だ」と述べ、綱紀粛正を指示した。

 石破茂防衛相は、逮捕を受けて会見し、装備品調達の在り方を再検討する考えを示した。当然だろう。

 なぜ、この種の事件が繰り返し起きるのか。防衛省は今回の事件を守屋容疑者個人の問題に押し込めてはならない。病巣を摘出するための徹底した組織点検が求められており、抜本的な改革案を示さなければならない。

 前次官の逮捕は、国会運営にも大きな影響を与えずにはおかないだろう。

 国会を再延長し、新テロ対策特別措置法案を衆院で再議決するという選択肢はもはや消えたとみるべきだ。もし強行すれば国会は収拾がつかないほど混乱し、ハプニング解散が一気に現実味を帯びることになるだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071129.html#no_1

 

琉球新報 社説

大規模米軍訓練 これが地元の負担軽減か

 米空軍嘉手納基地の第18航空団が、海兵隊岩国基地所属のFA18戦闘機30機、岩国所属の海兵隊員約600人と合同で12月3日から7日まで嘉手納、普天間両基地を拠点に即応訓練を実施する。

 沖縄以外の基地から30機もの戦闘機が参加するのは、県基地対策課も「聞いたことがない」とする異例な大規模訓練である。

 合同訓練は日常的に米軍機の騒音にさらされている基地周辺住民に、さらなる苦痛を強いるものであり、断じて容認できない。

 在日米軍再編の目的の1つは「地元の負担軽減」である。しかしながら、嘉手納基地での未明離陸の強行やパラシュート降下訓練など、それと逆行する動きが相次いでいる。

 それに加え、県外基地との大規模な合同訓練である。これが地元の負担軽減の実態なのか。基地機能や訓練強化は、県民への裏切り行為と言わざるを得ない。

 嘉手納基地は合同訓練に当たって「地元への影響を可能な限り抑える」などとしているが、訓練を実施する以上、限界はある。同基地の話をそのまま受け取るわけにはいかない。10月の訓練では午後10時から午前6時まではサイレンを鳴らさないと嘉手納町に伝えながら、午前5時前から大音量でサイレンを使用した。F15は午前6時台から爆音をまき散らし、住民生活に大きな影響を与えたのである。

 政府の対応も疑問だ。沖縄防衛局は嘉手納基地に対して機体の整備や点検、安全管理の徹底をあらためて求めただけである。

 基地周辺住民の生活を守るとの考えが、政府にあるのだろうか。

 岩国基地を監視するリムピースの田村順玄さんは「米軍再編で沖縄からの訓練移転先には補償があるのに、30機分に見合う迷惑補償料もない」と指摘している。

 岩国基地所属のFA18戦闘機は恒常的に嘉手納基地を使用しており、沖縄の負担は軽減されるどころか、増す一方である。

 「沖縄の負担軽減」を目に見える形で実現することに、政府は本腰を入れるべきだ。

(11/29 9:41)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29315-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

守屋前次官逮捕 行政への信頼回復を急げ

 前防衛事務次官の守屋武昌容疑者が収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。防衛商社「山田洋行」元専務宮崎元伸容疑者からゴルフなどの過剰な接待を受けた見返りに装備品調達などで便宜を図った疑いである。

 守屋容疑者は国会の証人喚問で、頻繁にゴルフ接待などを受けたことは認めたものの「便宜を図ったことはない」と否定している。

 だが、山田洋行の不正経理事件で、有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕された元執行役員今治友成容疑者は特捜部の調べに、今年4月の守屋容疑者へのゴルフ接待は「装備品の受注で恩恵を受けたいとの趣旨だった」と、わいろ性を認めているという。

 航空自衛隊次期輸送機のエンジン発注をめぐって、守屋容疑者は宮崎容疑者側に有利な発言を繰り返したとの証言もある。守屋容疑者がいくら便宜供与を否定しても、疑念を持つ国民は多い。事件の全容解明を急いでもらいたい。

 膨大な防衛予算をめぐっては、激しい商社間の競争があるとされる。「億単位の交際費を武器にした防衛省や政治家への食い込み工作はすさまじかった」との関係者の指摘もある。

 特捜部は2006年、防衛施設庁発注工事の官製談合を摘発。複数の国会議員や防衛官僚の周辺も極秘裏に捜査したが、立件には至らなかった。

 守屋容疑者らの逮捕を突破口に、防衛利権で私腹を肥やした政治家はいないのかについても解明してもらいたい。

 守屋容疑者は米軍普天間飛行場の代替施設建設計画などで、中心的な役割を果たした。在日米軍再編に関して不明朗な部分がなかったか、政府として検証する必要がある。

 不正を防止するため、装備品調達の方法も改善が必要だ。商社を介さずにメーカーと直接取引することも検討すべきだ。

 接待を禁止する自衛隊員倫理規定(2000年施行)は、官房長だった守屋容疑者が中心になって作成した。にもかかわらず自ら倫理規定に違反し、業者と癒着し続けていたのである。

 取引業者からそのような接待や金品を受け取ることの異常さを、防衛事務次官まで上り詰める人物が認識できないはずはない。

 自らを律することのできない人物を異例の長さの4年余も、旧防衛庁、防衛省の事務方トップに据えた歴代内閣の責任も大きい。

 大物次官として君臨した守屋容疑者の逮捕で、福田康夫首相が掲げる「政治と行政への信頼回復」はさらに厳しさを増した。

 信頼回復に今後、どう道筋をつけるのか。新テロ対策特別措置法案以前に、福田政権が取り組むべき問題である。

(11/29 9:43)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29316-storytopic-11.html

 

2007年11月30日(金) 朝刊 1面

全駐労きょう再スト

防衛省、譲歩で来週妥結か

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の手当削減を提案している問題で、全駐労(約一万六千八百人)の山川一夫委員長ら三役は二十九日、防衛省を訪れ、手当削減分の補償を引き続き求めた。全駐労によると、防衛省側は具体的な回答を避けつつも、「来週には双方が歩み寄って決着したい」と述べ、防衛省も譲歩する形で来週に妥結する可能性を明らかにしたという。

 同三役は「政府が努力している姿勢は見えたが、具体的な回答はなく、ストを回避する理由がない」と判断した。

 三十日に第二波の全国統一ストライキを決行することを正式決定し、全国の地区本部に伝達した。

 前回は始業時から四時間だったが、三十日のストは一般職種の就労時間となる八時間に延長。実質的に終日二十四時間のストになる。


沖縄地区本部6400人がストへ/ゲート40カ所でピケ


 全駐労中央本部の第二波スト決定を受け、県内では沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)の組合員約六千四百人が、三十日の始業から八時間のストに入る。

 今回は、第一波のストで対象外だった警備関係の組合員もストに参加するため、米軍自身が基地内警備を行う必要が生じるが、地区本部の座間味寛書記長は「台風時にも米軍自ら警備を行うことはあり、基地機能への影響は最小限にとどまる」としている。消防部門の組合員は今回も対象外。

 このほか、通常使用されるゲート四十カ所で組合員がピケを張り、非組合員にも参加を呼び掛ける。

 牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の城間ゲートでは午前と午後の二回決起集会を行い、諸手当削減分の補償などを訴える予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301300_02.html

 

2007年11月30日(金) 朝刊 2面

着手 3月以降に遅れ/シュワブ内・施設移築工事

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴い、沖縄防衛局が十二月から着手を予定していた名護市キャンプ・シュワブ内の隊舎や管理棟、倉庫など既存施設の移築工事が、来年三月以降にずれ込む見通しであることが二十九日、分かった。沖縄防衛局は十一月末の設計業務の履行期限を来年二月末に延長。延長理由について防衛省は「実施設計の調整を進める中で、米側との調整で時間を要している」と説明している。

 キャンプ・シュワブの代替施設予定地付近にある倉庫や工場、管理棟などの既存施設は、普天間代替施設建設に伴って、シュワブ内の内陸部分に移築予定。

 沖縄防衛局は今年三月、シュワブ内の移築に関する建築・設備・土木設計や、下士官宿舎の新設工事にかかる建築・土木設計の入札を実施。履行期限を十一月末までとする契約を業者と締結していた。

 既存施設の移築にかかる建設工事の着手時期について防衛省は「設計が終わらないと着手できない。設計業務の終了後、適切に着手していきたい」とし、来年三月以降にずれ込む可能性を示した。

 防衛省が作成した普天間代替施設事業の概略工程表は「隊舎等の建物の建設工事」は十二月からの着手を明示している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301300_03.html

 

2007年11月30日(金) 朝刊 2面

首長反発「欠陥機証明」/「これ以上飛行許さぬ」

 【中部】米国ミズーリ州で今月二日に墜落したF15戦闘機に関して、ロンジロンと呼ばれる主要構造物の亀裂が事故原因と判明した件で、嘉手納基地周辺の嘉手納、北谷、沖縄の三自治体の首長らは「F15は欠陥機との指摘が証明された」と反発している。

 三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は事故後に三度、米側にF15撤去を求めた。会長を務める野国昌春北谷町長は「具体的な原因が明らかになり、F15が欠陥機という私たちの指摘が証明された。これ以上の飛行は許されない」と訴えた。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、事故原因が特定されないまま、一度は飛行再開したことに「不安を抱えたまま住宅地上空を飛行したことは断じて許せない。構造的な欠陥が生じた機体は、今すぐにでも撤去を求めたい」と述べた。

 沖縄市議会「基地に関する調査特別委員会」の与那嶺克枝委員長は「米軍は、専門家が指摘する“背骨が折れるような”老朽化した機体を飛行させたのか。米軍は安全だと言うが、他の部分にも問題があるかもしれない」と懸念した。


飛行再停止 北谷議会、抗議へ


 【北谷】北谷町議会(宮里友常議長)は二十九日、基地対策特別委員会(照屋正治委員長)を開き、米国での墜落事故を受けて飛行を中止している嘉手納基地所属のF15戦闘機に関する問題への対応を協議した。同基地が二十六日のF15飛行再開後、米国の事故調査当局の情報に基づき、二十八日から二度目の飛行停止を講じたことを問題視。十二月三日の臨時会へF15の即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を提出することを決めた。

 また、同委員会では十二月三日から同基地で予定されている、空軍と海兵隊による大規模な即応訓練に対する抗議決議、意見書の両案を提出することも決まった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月30日朝刊)

[F15飛行再停止]

事故への対応が異常だ

 在沖米空軍が嘉手納基地に配備するF15戦闘機の飛行を再び停止した。

 米本国で起きた墜落事故を調査した事故調査当局の「新たな情報」に基づく措置だが、明らかにされた事故原因が操縦席付近の金属性構造部材の亀裂だというから言葉を失う。

 米ミズーリ州でF15が飛行中に空中分解したのは今月二日のことだ。それを受けて、米空軍は嘉手納基地所属の五十三機を三週間飛行停止にした。地元住民の怒りを無視して飛行を再開したのは二十六日。再停止はそれから二日しかたっていない。

 事故原因が確定せず再発防止も施されないままでは、リスクを負いながら訓練を続けるのに等しく、それ自体が異常といっていい。

 民間では事故原因が明確に確定されぬ場合は、明らかになるまで同型機の飛行を差し止めるのが常識である。その間の飛行再開はあり得ない。

 軍の論理では通っても民間の論理では絶対に許されるものではない。危険性を承知で飛行を再開させた米軍の手法は非常識と言わざるを得ない。

 F15戦闘機はまた、航空自衛隊の主力機でもある。事故原因は自衛隊機とも深くかかわっているはずであり、事故原因を自衛隊がどう分析するのか。防衛省は説明する責任があろう。

 もう一つ、嘉手納基地のF15に政府がどう注文を付けるのか。危険性が明らかになった以上、県民が厳しい目で見ていることを忘れてはなるまい。

 この問題とともに懸念されるのは、十二月三日から七日まで嘉手納基地と普天間飛行場を拠点に行われる海兵隊と空軍の合同即応訓練である。

 嘉手納飛行場では給油機や偵察機、F15などが凄まじい爆音を日常的にまき散らし、周辺住民の暮らしを脅かしている。

 それが、山口県岩国基地からFA18戦闘攻撃機約三十機が飛来し、海兵隊員約六百人と嘉手納基地の第一八航空団が大規模な即応訓練を実施するというのである。

 爆音やエンジン調整音に加えて、早朝からサイレンを鳴らし、拡声器による放送、地上爆発模擬装置を使用すれば、周辺住民が我慢の限度を超えるのは火を見るより明らかだろう。

 事故機と同型機の扱いをめぐって住民の不安が高まる中で大規模な訓練を実施していいものか。政府には米軍の基地使用についてもっと声を上げてもらいたい。

 FA18戦闘攻撃機は即応訓練を終えた後も十二日まで居残るというが、地域住民を軽視した訓練は許されないことを肝に銘じるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071130.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15飛行再停止 米軍も認めた「欠陥機」

 米軍は28日、主力戦闘機F15の飛行再停止を決めた。再停止は、嘉手納基地にも配備されているF15C型機の点検で、機体の骨格となる「縦通材」に2カ所の亀裂が見つかったのが理由だ。

 県民の不安と批判を無視し、「点検による安全確保」を強調し、飛行再開の決定からわずか7日後の再停止だが、この間欠陥機の飛行は再開され、再停止までの2日間、米軍は県民を危険にさらしたことになる。重大な判断ミスである。

 実戦配備を除くF15戦闘機が、全機飛行停止となったのは、今月2日のミズーリ州空軍所属の同機の墜落事故が理由だった。

 同事故は、僚機と空戦演習中に操縦席の後部で胴体が破断し、墜落している。幸いにも操縦士は、脱出し難を逃れている。

 訓練中に空中分解する異常事態を重視した米軍は、全機飛行停止措置を取り、事故原因の究明に当たった。

 その結果、経年劣化や構造疲労破壊の疑いが指摘された。だが、確たる原因は未解明のまま。事故原因の十分な分析や解明を待たず、米軍は「欠陥機」との指摘にも耳をふさぎ、飛行再開の暴挙に出た。

 安全が確保されるまで飛行停止を求める県民の訴えは、「アジア太平洋地域における平和と安定の維持に引き続き貢献する」との米軍の空虚な論理に踏みにじられた。

 墜落の危険が指摘される欠陥機で、アジアの平和と安定など守れるはずもない。それどころか、嘉手納基地を含め、周辺に住民がひしめく住宅地の上空を、欠陥機が飛行する恐怖こそが、平和と安定を脅かす元凶である。

 今回見つかった「縦通材」の亀裂は、飛行中に空中分解を引き起こす原因につながる可能性が指摘されている。

 21日の飛行再開決定に当たり、米軍は「米空軍は安全な飛行を常に最重要視している」(嘉手納基地)と強調した。だが、県統計では米軍機の事故は、復帰後34年間で422件発生し、うち151件がF15戦闘機によるものだ。事故の36%を占める。爆音禍の主原因もF15戦闘機である。

 F15戦闘機も含め、米軍機の墜落事故は昨年1件だが、重大事故につながる米軍機の「不時着事故」は昨年も24件、一昨年は57件も起きている。

 基地を抱える沖縄は、米軍が引き起こす事件、事故に巻き込まれる危険と常に隣り合わせている。

 米軍は、事故を起こすたびに再発防止と綱紀粛正を約束してきたが、米軍の事件・事故が「ゼロ」となった年は、復帰後35年間、一度もない。

 日米両政府は事態の重大さを認識し、県民を危険にさらす欠陥機の撤去を真剣に検討すべきである。

(11/30 9:50)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29348-storytopic-11.html

 

2007年11月30日(金) 夕刊 1面

全駐労、実質終日スト

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)特別協定協議で日本側が基地従業員の手当削減を提案している問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千人)は三十日、全国の米軍施設で始業から八時間の第二波ストライキを始めた。一般職種の就労時間は八時間で、実質的に二十四時間ストとなる。

 このうち沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)は組合員約六千四百人を対象にストを指令。浦添市の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)城間ゲート前では同日午前、組合員のほか、連合沖縄など関係労組代表など、組合発表で千二百人が集まり気勢を上げた。與那覇委員長は「防衛省は『政府案に理解を』との一方的姿勢から『早期解決のため汗をかきたい』と変化してきた」と交渉経過を報告。また「交渉は来週がヤマ場。さらに前進するためにストを決行する」と結束を呼び掛けた。

 同ゲートを含め県内四十カ所のゲートでピケが張られた。今回は警備関係の組合員もストに入ったが、同本部によると、同日午前の段階で県内各米軍施設に大きな混乱は起きていないという。

 全駐労は、今後の政府の対応次第では、十二日の沖縄に始まり十四日の神奈川まで各地で順次八時間のストを行う第三波リレーストも行うとしており、週明けからの交渉が注目される。


「誠心誠意対応」

防衛相、譲歩を示唆


 【東京】石破茂防衛相は三十日午前の閣議後会見で、全駐労が第二波の全国統一ストライキを実施していることについて「(従業員の)不利益をいかに極小化するかということについて誠心誠意やっている。歩み寄れるところは何なのかということは、当事者として関心を持っている」と述べ、全駐労との交渉で譲歩する可能性を示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301700_01.html

 

2007年11月30日(金) 夕刊 1面

知事「予想より遅れ」普天間移設

就任1年控え 膠着打開に期待

 仲井真弘多知事は三十日午前の定例記者会見で、県政の最重要課題である米軍普天間移設問題について「予想よりも遅れている。地域の納得、協力、理解はどうしても必要。ここがなかなか(政府側に)通じない」と指摘。一方で「われわれの気持ちはそれなりに政府も受け止め始めていると思う」と述べ、膠着状態の打開に期待感を示した。来月十日の就任一年を前に感想を語った。普天間問題については当初、就任から数カ月で政府との協議が軌道に乗る、との認識があったと話した。

 県政全般について仲井真知事は「十四の柱からなる私の政策の(実現に向け)ほとんどのことに一応勉強、研究、種まきなりのウオーミングアップに手を付けてきたと考えている。財政がタイト(厳しい)な中で、一つ一つ丁寧に手を付けてこれたのではないかと思う」と語った。

 普天間移設問題で、沖縄側が要求してきた政府案の沖合移動を拒否し続けてきた防衛省の守屋武昌前次官が収賄容疑で逮捕されたことについては「知事としても、個人的にもいろんな感想があるがノーコメントにしたい」と具体的な言及は避け、「(守屋前次官とは)考えがぴたっと一緒でないと感じたこともままあった」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301700_02.html

 

2007年11月30日(金) 夕刊 1面

普天間協 来月12日有力

 【東京】政府は三十日までに、次回の米軍普天間飛行場移設に関する協議会について、十二月十二日夕を軸に開く方向で調整を始めた。関係閣僚の日程が整わない場合、十二―十四日の範囲で検討する。仲井真弘多知事が登壇する県議会十一月定例会の一般質問が十二月十一日に終了するため、県は十二日以降であれば知事の出席が可能と内閣府に伝達していた。

 政府は、十二月第四週(十七―二十一日)の半ばに二〇〇八年度予算案の内示を予定している。〇八年度の北部振興事業費の計上や本年度分の執行を判断するためには、予算案の確定前に協議会を開き、「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況」との条件が整っているかどうかを見極める必要があるとして、第三週の開催で調整していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301700_03.html

 

2007年12月1日(土) 朝刊 2面

普天間協12日軸に調整/政府、北部振興最終判断へ

 【東京】政府は三十日までに、次回の米軍普天間飛行場移設に関する協議会を十二日夕を軸に開く方向で調整を始めた。関係閣僚の日程が整わない場合は、十二―十四日の範囲で検討する。

 仲井真弘多知事が登壇する県議会定例会の一般質問が十一日に終了するため、県は十二日以降であれば知事の出席が可能と内閣府に伝達していた。政府は今後、県や名護市との議題調整などを通じ、凍結されている北部振興事業費の執行に踏み切るかどうかを最終判断する。

 政府は、十二月第四週(十七―二十一日)の半ばに二〇〇八年度予算案の内示を予定している。

 〇八年度の北部振興事業費の予算計上や本年度分執行を判断するためには、予算案の確定前に協議会を開き、「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況」との条件が整っているかを見極める必要があるとして、第三週の開催で調整していた。普天間移設は、環境影響評価(アセスメント)の妥当性をめぐって、県環境影響評価審査会がアセス方法書の不備とみなされた項目について、事業者の沖縄防衛局に追加説明を求める質問書を提出。

 事実上の方法書書き直し要求に当たる異例の措置を取っており、協議会でも焦点になりそうだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712011300_06.html