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沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月28日、29日)

沖縄タイムス 社説(2007年4月28日朝刊)

[戦後補償判決]

償いが信頼回復への道
 中国人の元従軍慰安婦とその遺族が国に損害賠償を求めた訴訟と、中国人の元労働者が西松建設(東京)に強制連行・労働の賠償を求めた訴訟の上告審判決が相次いで言い渡された。

 二つの訴訟で、最高裁は「一九七二年の日中共同声明で中国人個人の賠償請求権は放棄され、裁判では行使できない」との初判断を示し、いずれも原告敗訴の判決を言い渡した。

 日中共同声明では、日本は過去の戦争で中国に与えた損害について「責任を痛感し、深く反省する」と表明。第五項で「中国政府は、両国国民の友好のために日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としている。

 第二次大戦中の従軍慰安婦、南京大虐殺、強制連行などをめぐる戦後補償訴訟は、中国人や韓国人らが一九九〇年代から各地で提訴し、市民団体「戦後補償ネットワーク」のまとめでは計約六十件に上っている。

 これまでに原告勝訴は一審六件、二審は西松建設強制連行・労働訴訟など二件にとどまるが、旧日本軍の不法行為はほぼ認定され、企業側と和解した例もある。

 こうした中で、今回の最高裁判決は、中国側にとって政府のみならず個人にも請求権がないとする初判断であり、今後、中国人らの個人的な請求は退けられる可能性が高くなった。

 この判断は、中国と日本の間に新たなあつれきを生みかねない。中国側の弁護士協会などは「最高裁判決はでたらめだ」と強く抗議。「日本政府や関連企業の責任をあいまいにし、政府や関連企業の責任回避を手助けした」などと反発しているからだ。

 ただ、最高裁は強制連行・労働訴訟の判決の末尾で、被害者らの精神的・肉体的苦痛などを指摘し、関係者の「救済に向けた努力」が期待されると述べている。

 戦争被害を救済できない司法の限界を示し、国や被告企業に自発的解決を促したといえるが、元慰安婦訴訟にはこうした付言はなかった。

 司法による個人救済の道を閉ざした最高裁判決で、戦後補償の問題は司法の手を離れ政治的解決に委ねられる。政府は今後、中国側への新たな対応を迫られるのは必至だ。

 「一日も早く日本政府による謝罪と賠償を実現させたかった」というのが、敗訴が確定した被害者と遺族たちの偽らざる気持ちであろう。

 原告たちへ「償う」意味は、結局、日本の信頼回復につながるといえるのではないか。政府、西松建設などの「誠意」ある対応を期待したい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070428.html#no_1

沖縄タイムス 2007年4月29日(日) 朝刊 1面
憲法改正反対46%/本社世論調査
賛成43%を上回る/9条改正反対は5割超
 施行六十年の憲法記念日を前に、沖縄タイムス社が二十一、二十二の両日に実施した電話による県内世論調査で、憲法改正について「必要ない」と答えた人は全体の46%で、「必要ある」の43%をやや上回った。二〇〇四年四月の前回調査で「必要ない」は29%で、「必要ある」は50%だった。憲法改正の焦点になっている九条については「改正するべきではない」が56%(前回40%)、「改正するべきだ」24%(同29%)。国会で足早に進む改憲論議に、慎重な考えを示す人の割合が増えている現状が浮かび上がった。

 改憲に反対した人に理由を聞くと「平和理念があるから」が最も多く67%、「国民の義務が重くなりそうだから」15%、「生活に根付いているから」13%だった。前回調査は「平和理念」66%、「生活」7%でそれぞれ微増。年代別に見ると、反対は五十代が最も多い。

 改憲に賛成の理由は「新しい権利や制度を加えた方がよいから」は57%(前回26%)、「アメリカの押し付け憲法だから」21%(同38%)、「自衛隊の位置付けを明確にした方がよいから」16%(同28%)。年代別で賛成に最も多かったのは三十代だった。

 改憲容認派の51%が改正は「緊急な課題」と考えている。

 九条について「改正するべきだ」と答えた人のうち、戦争放棄をうたう一項の改正が「必要」の回答は43%、「必要ない」は49%。戦力の不保持を定めた二項は「必要」が69%、「必要ない」は21%だった。

 憲法改正の手続きを定める国民投票法について、「議論が十分でない中で決める必要はない」54%と「憲法改正につながるため、決める必要はない」13%を合わせて、全体の約七割が今国会での同法成立に否定的な意見を持っている。「手続きを定めることは必要」の答えは26%だった。

 内閣支持率は40%で、不支持44%をやや下回った。内閣支持者のうち57%が憲法改正に賛成、逆に不支持の64%が反対だった。

 安倍晋三首相が憲法解釈の見直しを検討している「集団的自衛権」の行使について、「使えない立場を堅持する」が51%でほぼ半数を占めた。一方で「憲法解釈で使えるようにする」(24%)と「九条を改正して使えるようにする」(15%)で行使容認派は約四割に上った。

 調査の方法 県内の有権者を対象に、二十一と二十二の両日、コンピューターで無作為に抽出した番号に電話するRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)により実施し、八百人から回答を得た。回答者の内訳は男性49%、女性51%。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704291300_01.html

沖縄タイムス 2007年4月29日(日) 朝刊 27面
座り込み3年人の鎖/辺野古移設
 【名護】米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する地元住民や市民団体が辺野古漁港近くで始めた座り込み行動が三周年を迎えたことを受け、ヘリ基地反対協議会は二十八日午後、移設予定地の同市キャンプ・シュワブで包囲行動を行った。二十四日から那覇防衛施設局が着手したV字形滑走路案の現況調査(事前調査)に反対し、移設撤回を強く求めた。

 包囲行動には地元住民のほか、平和、環境、労働団体員ら千人(主催者発表)が参加。降りしきる雨の中、シュワブのフェンス沿いに並んで手を取り合い、「違法な事前調査はやめろ」「辺野古の海を守るぞ」などと気勢を上げた。

 反対協の安次富浩代表委員は「闘いを続けていけば必ず勝利できる」と訴えた。

 夫と子ども三人と参加した二見以北十区の会の渡具知智佳子共同代表は「子どもたちの未来に基地は必要ない。子どもたちが誇りを持てる故郷を残そう」と呼び掛けた。

     ◇     ◇     ◇     

講和55年 決意の炎

 【国頭】平和憲法を発展させることを誓う「四・二八辺戸岬集会」が二十八日、本土復帰運動の象徴、辺戸岬で行われた。沖縄が本土から切り離されたサンフランシスコ講和条約発効から五十五年、復帰三十五年の節目に沖縄平和運動センターなどが開いたもので、世代を超えて平和の発信に決意を新たにした。

 北部地区労の元議長、大城堅靖さん(72)は「国民投票法の制定などアメリカと一緒に戦争ができる国を目指す憲法の改悪が行われようとしている」と指摘。また、高校教諭の良原栄里奈さん(27)は「教科書から集団自決を削除し、何のための、誰のための愛国心なのか。悲惨な沖縄戦を未来に伝えたい」と声をからした。集会では、米軍再編による沖縄の基地機能の強化、固定化を阻止し、戦争放棄と非武装の平和憲法を発展させることを誓う宣言を採択した。

 五年ぶりとなる辺戸岬集会には約二百人が参加した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704291300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月29日朝刊)

[再編合意1年]

政府の欺瞞性浮き彫り
 米軍基地の抑止力向上と住民の負担軽減を盛り込んだ在日米軍再編最終報告の日米合意から間もなく一年を迎える。満一年となる五月一日には、ワシントンで日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれ「再編の着実な実施」を協議する見通しだ。

 これに先立ち、安倍晋三首相とブッシュ大統領は二十七日、日米首脳会談で「かけがえのない日米同盟」の強化を確認した。その上で首相は、米軍再編は両政府間合意の着実な実施が重要とし、普天間飛行場の移設を「合意通り実施する」と述べた。

 合意通りとは、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設する政府案のことである。

 だが、県、名護市が、V字形滑走路の位置を南西沖合へずらすよう求めるなど政府との調整は難航している。現普天間飛行場の危険性除去に伴う「三年内閉鎖」問題も絡んで、協議は宙に浮いた状態だ。

 首相の言う「合意通り実施」できるかどうかはなお不透明であり、政府と県、名護市の双方にとって正念場はこれからといえよう。

 この一年間を顧みると、政府の「二枚舌」とも言えるような不誠実な対応が随所に見られ、住民の負担軽減の欺瞞性を浮き彫りにしている。

 V字形滑走路について、政府は当初「集落上空は飛ばない」と説明していた。V字形はそのための案だったが、「有事に備えた訓練などで双方向飛行や住宅上空の飛行は避けられない」と変化させた。

 普天間代替施設の主力機となるMV22オスプレイの配備計画については「聞いていない」と繰り返してきた。

 しかし、一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告草案にオスプレイの配備が明記されたことが米公文書などで明らかになった。

 嘉手納基地に暫定配備のはずの最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターも、「今後の朝鮮半島情勢次第では再配備の可能性が十分ある」(在日米軍司令官・ライト中将)ことが分かり、地元では常駐化を懸念している。

 一方、負担軽減策の目玉といえる在沖米海兵隊のグアム移転に伴う嘉手納基地以南の六施設返還計画は、再編合意で示された「二〇〇七年三月末」を過ぎてもまだまとまっていない。

 以上の点から見ても、今回の再編が負担軽減より抑止力向上を優先しているのは明白である。

 再編を強引に進めるため、情報開示を遅らせたり、都合の悪いことを隠したりするのは地元軽視であり、県民の不信感を増幅させるだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070429.html#no_1

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月28日)

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 31面
嘉手納100デシベル超記録/25日に町が調査
 【嘉手納】嘉手納基地の運用状況を点検する嘉手納町の「航空機目視調査」の結果が二十七日、まとまった。調査は二十五日午前六時―午後十時に行われ、同町屋良の「道の駅かでな」から離着陸や上空通過など百八十七回の航空機の活動を確認した。爆音最高値は、午後六時四十九分、F15戦闘機の離陸時に記録した一〇〇・六デシベル(電車通過時の線路脇に相当)だった。

 離着陸回数は、F15七十二回、一時配備されているF22ステルス戦闘機二十八回だった。同町は「F22はF15と比べ、機数は少ないが、飛行回数が多い印象を受ける。外来機の飛来で騒音増も懸念される」としている。

 午前六時二十五分―七時三十四分にかけ、F15やFA18戦闘攻撃機など計二十一機が離陸。人が不快に感じる七〇デシベル以上の騒音が十三回発生した。

 航空機活動は、午後九時半のF15の着陸まで続いた。ほかにも同基地のKC135空中給油機やHH60救難ヘリなどが離着陸していた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_03.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 31面
教科書検定「説明責任果たさず」/文科省の姿勢を批判
 【東京】沖縄戦の「集団自決」記述で日本軍関与が削除された歴史教科書検定問題で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の高嶋伸欣共同代表(琉大教授)らは二十七日、衆議院内で文部科学省の布村幸彦審議官と面会した。高嶋代表は検定に関与できないとの立場を繰り返す政府側の姿勢を「説明責任を果たしていない」と批判し、検定の修正意見を撤回するよう求めた。

 面会は非公開で行われた。これまで政府は国会などで閣僚や官僚が検定に関与できない仕組みを強調していたが、高嶋代表は、教科書検定で住民虐殺が問題となった一九八四年に、当時の森喜朗文相が国会で「十分に県民の感情を配慮しつつ客観的な記述となるように検定において必要な配慮を求めているというふうに指導している」と答弁したことを指摘。

 その上で「政府の答弁は責任逃れだ。今回の措置は(森氏の発言と)明らかに食い違っている。整合性を持たせる意味で今回の検定は撤回されるべきだ」とただした。

 布村審議官は「答える立場ではない」と述べるにとどめたという。

 高嶋代表らは要請後に文科省で会見し「教科書検定は行政処分であり、あいまいな理由付けのまま教科書の記述をゆがめさせたということでは公平性に欠ける。悲惨な体験をした県民の立場から、こういう記述の教科書を全国の学校で使うことになるのは容認できない」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_05.html

F22飛行580回超 司令官「特筆の記録」

 米軍の最新鋭戦闘機F22Aラプターが参加した初めての日米共同訓練で、F22部隊の第27遠征戦闘中隊司令官のウェード・トリバー中佐は27日午後、米空軍嘉手納基地で報道各社の代表取材に応じた。トリバー中佐は今年2月からの沖縄への展開期間中、580回以上の飛行をこなしたことを明らかにし「たった12機で達成した記録としては特筆すべきものだ」と飛行実績を自負した。 F22が嘉手納基地に配備されたのに伴い、飛行場周辺では騒音回数が増加。地元の騒音被害の訴えと逆行する外来機の運用の在り方に、周辺自治体、住民の反発が一層強まりそうだ。
 トリバー中佐は共同訓練の成果について「日米同盟を構築するに当たって、とても良い機会になった。航空自衛隊にとって得たものが大きければと思う」と指摘。今後の訓練計画については「沖縄に滞在する残りの期間中には新たな共同訓練の予定はないが、将来できればいい」と述べた。
 F22部隊の初の海外展開となった嘉手納配備について「たった12機で580回以上の飛行をこなしている。米軍のF15やF18戦闘機、ハリアー攻撃機と一緒に訓練して相互理解を深めることができた」と強調した。配備期間は「5月中だとは聞いているが、詳しいことは知らされていない」と述べるにとどまった。
 27日の共同訓練には空自からF15・4機とF4・4機、米軍からF15・2機、F22・2機が参加した。
(4/28 9:37) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23340-storytopic-3.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 1面
闇に浮かぶ悲劇/南風原病院壕公開
 【南風原】南風原町の城間俊安町長は二十七日会見し、沖縄陸軍病院南風原壕群二十号を六月十八日から一般公開すると発表。報道陣に二十七日、壕内を公開した。

 陸軍第二外科壕群の第二十号壕は、沖縄戦末期に人力で掘られた全長七十メートルの壕で、「ひめゆり学徒隊」が負傷した日本兵らを看護した。

 幅、高さはともに一・八メートルで、九十センチごとに支柱で支える構造。入り口から壕中心までの三十メートルの区間は、できるだけ当時の状態を残し米軍の火炎放射器で焼けた支柱跡や、負傷兵が天井に刻んだとみられる「姜」など三文字が残っている。

 一九九〇年に町は同壕群を「戦争遺跡」として全国で初めて文化財に指定。昨年から一般公開に向け整備工事を進めてきた。城間町長は「平和の大切さを学ぶ県民の財産として活用していきたい」と話した。

 見学は完全予約制で、五月一日から南風原文化センターで受け付ける。問い合わせは同センター、電話098(889)7399。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_10.html

壕に謎の人骨数十柱 糸満市阿波根

 【糸満】糸満市阿波根の壕で1月に、数十柱の人骨が透明のビニール袋やプラスチック製の容器に入れられ、放置されていることが27日までに分かった。住民から通報を受けた糸満署は事件性の低さから静観、市は実態が把握できないため対応に苦慮している。付近の墓の関係者も「他人の人骨を簡単に扱えない」としており、数十柱の人骨は放置状態が続きそうだ。
 人骨は同市阿波根の県道82号沿いの岩山の壕にある。付近は門中の墓が点在。人骨は1カ所の墓の隣の壕に半透明のプラスチック製の衣装ケース4点、プラスチックのバケツ5点、ビニール袋12点、発泡スチロール1点に分けて収納されている。1月に門中の墓を訪れた住民が発見し、糸満署と市役所に通報した。
 調べを進めた同署は柱の保存状態などから「事件性はない」と見ている。阿波根周辺や糸満市内、本島内でも墓荒らしなどの被害届や報告もないという。同署は人骨が放置された現場を確認したが、容器には手掛かりにつながるような記載もないという。ただ丁寧に保存された状況から「悪意を感じるものではない」として鑑定は行わず、現場で保存している。現状保存のため、具体的な柱数は把握できていないが、「古い年代のものであるのは間違いない」と同署。沖縄戦遺骨や土葬された人骨の可能性もあるとしている。
 知らせを受けた糸満市生活環境課は、事件性の有無や事情を把握しないと対応できないとしている。市内で発見された無縁仏などは、市が引き取る場合もあるが、市内2カ所の納骨堂はすでに満杯状態で、引き取るのは難しいという。
 通報した隣の門中の墓の関係者数人によると、9月に墓参りに来た時はなかったという。また「1月に見た時よりも人骨が入った衣装ケースが2、3段分なくなっている」とも話しており、誰が放置し、その後、なぜ一部だけを持ち去ったかいぶかしがる。
 確実な情報がない現時点では糸満署、市ともに対応できないため、墓の中で静かに眠るはずだった人骨は放置状態が続きそうだ。
(4/28 16:02) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23361-storytopic-1.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月28日朝刊)

[55回目の4・28]

変わらぬ「基地オキナワ」
 きょう四月二十八日(4・28)は一九五二年に対日講和条約(サンフランシスコ平和条約)が発効し、その第三条によって沖縄・奄美を含む北緯二九度以南の施政権が米国に委ねられた日である。

 あれから五十五年。沖縄の米軍基地は動かず、過重な基地負担から派生する不平等・不条理は変わらぬままだ。改憲の動きと米軍再編の大きな流れの中で沖縄は揺れ動き、憲法の定めた「平和的生存権」とはほど遠い状況に追い込まれている。一体いつになったら「基地オキナワ」から基地のない「平和な島・沖縄」に脱却できるのか。

 復帰前の沖縄で4・28は「屈辱の日」と呼ばれていた。施政権が日本に返還されるまでの二十七年間、沖縄の住民は米国人でもなく日本人でもない立場に置かれた。その始まりの日が4・28だったからである。

 米軍基地は増強・拡大の一途をたどり、米軍基地あるがゆえの事件・事故は後を絶たず、基本的人権は蹂躙され、安寧に暮らす生活権さえ保障されなかった。

 今年は復帰して三十五年。復帰運動のよりどころとされた憲法の改正の手続きを定める国民投票法案がやじと怒号の中、今国会の衆院特別委で可決された。

 基地の整理・縮小の焦点である米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、仲井真知事は環境影響評価(アセスメント)の前段となる現況調査のための海域使用に同意した。

 普天間飛行場の「三年内閉鎖状態」などの見通しも立たない中で同意に踏み切った。このことはV字形案について現行のままでは賛成できないとしていた公約に矛盾する。知事選、参院補選で辺野古移設を推進する候補が連続当選したが、宜野湾市長選では国外移設を唱える候補が大差で勝った。知事は県益に立った慎重な判断をすべきだ。

 4・28を知る世代が減少する中、4・28の持つ「沖縄からの問い」を忘れてはならない。子々孫々のためにも…。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070428.html#no_2

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月27日、28日)

沖縄タイムス 社説(2007年4月27日朝刊)

[集団的自衛権]

なぜ自衛隊を戦わすのか
 政府は、憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使を一部容認するため、解釈変更に向けた有識者会議を設置した。

 安倍晋三首相の意向を受けたもので、集団的自衛権を認めて有事の際、日本が米軍に協力できるようにするのが目的である。

 集団的自衛権は、国連憲章がどの国にも認めた権利だが、日本国憲法(第九条)は国際紛争解決の手段としての「武力による威嚇、または武力の行使」を禁じている。

 このため、政府はこれまで集団的自衛権は認められないとの立場をとってきた。

 だが、米国は朝鮮半島、台湾海峡などでの米軍の作戦に自衛隊を参加させるため、集団的自衛権の行使に関する規制(憲法九条)を取り払わせたい考えだ。

 米軍再編中間報告には、自衛隊は米軍に「追加的かつ補完的な能力を提供する」と明記されている。つまり、自衛隊に海外で「武器使用」や「反撃」ができるようになれば、「米軍と自衛隊の軍事一体化」が実現するからだ。

 安倍首相は「日米同盟は日本外交、安全保障の基軸だ」として米国の要求に応える姿勢だが、果たして憲法九条を改定せずに、解釈の変更だけで集団的自衛権の行使がどこまで許されるのか。

 その延長線上にあるのは、結局「改憲」を意図した行為、と言わざるを得ない。

 政府が目指しているのは(1)日本のミサイル防衛(MD)システムで米国を狙った弾道ミサイルの迎撃(2)公海上で自衛隊艦船と並走する艦船が攻撃された場合の反撃(3)共通の目的で活動する多国籍軍への後方支援(4)国連平和維持活動(PKO)などで、ともに活動する他国軍への攻撃に反撃するための武器使用―の四つの実現だ。

 塩崎恭久官房長官は「国民の生命、身体、財産を守るために日米同盟が効果的に機能することがこれまでにも増して重要だ」と指摘している。

 だが、四つの目標はいずれも第一義的に米軍や多国籍軍を支援するのが目的であり、必ずしも「国民を守る」ためではない。

 自衛隊の活動は、元来「純粋に自衛のための行動(個別的自衛権)」であり、この個別的自衛権を拡大解釈して迎撃や反撃を可能ならしめることも予想されよう。

 日米安保条約は、米国が日本を防衛する代償として、日本は米軍への「基地提供」義務を負っている。

 その上なぜ、自衛隊を海外で「戦わす」のか。大いに議論が必要だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070427.html#no_1

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 夕刊 1面
F22、初の共同訓練/空自と模擬空中戦
 嘉手納基地に暫定配備中の米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが参加する初の日米共同訓練が二十七日午前、沖縄周辺空域で始まった。沖縄の南西航空混成団のF4戦闘機などの航空自衛隊機とF22などの米軍機が模擬空中戦を展開した。一方、同基地では正午前後に相次いでF22とF15の各一機が緊急着陸。同基地報道部によると、二機ともに共同訓練の参加機ではないという。緊急着陸の原因などは明らかにしていない。

 午前十一時四十五分ごろ、F22一機が着陸後に滑走路端で停止。消防車両や緊急車両約十台が取り囲み、約十五分後に駐機場へけん引された。消防車両からの放水はなかったが、一時緊迫した雰囲気に包まれた。

 午後零時二十分ごろにはF15一機が同基地に緊急着陸した。同基地報道部は「機体や基地施設、周辺地域に影響はなかった」と説明している。

 在日米軍トップのブルース・ライト司令官は今後の朝鮮半島情勢次第ではF22の嘉手納基地への再配備の可能性を指摘しており、地元からは基地機能強化と相次ぐトラブルへの反発も出ている。

 共同訓練は嘉手納基地で同日午前八時半ごろ、米軍機のF22やF15が相次いで離陸。那覇基地からは空自のF4やF15が次々に飛び立った。訓練は午前と午後の二回行われる。

 日米共同訓練は二十六、二十七日の二日間。二十六日は那覇基地内で日米のパイロットらが訓練内容を確認、米側からF22の特性についても説明を受けた。

 空自は南西航空混成団のF4戦闘機四機のほか、小松基地(石川県)の第六航空団のF15戦闘機四機、浜松基地(静岡県)の早期警戒管制機一機が参加。

 米軍は嘉手納基地に展開中の米ラングレー基地所属の第二七遠征戦闘飛行隊のF22戦闘機二機のほか、嘉手納基地の第一八航空団のF15戦闘機二機、早期警戒管制機が参加した。午前の訓練を終えた第六航空団の芳賀和典飛行隊長は「F22は機動性がいいと感じた」と感想を話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271700_01.html

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 夕刊 1面
V字滑走路 沖合移動言及せず/日米協議で防衛省方針
 【東京】防衛省は二十七日午前までに、ワシントンで三十日と五月一日に開かれる日米防衛相会談や日米安全保障協議委員会(2プラス2)の席で、県や名護市が求めている米軍普天間飛行場代替施設のV字形滑走路の沖合移動について言及しない方針を固めた。政府案を基本に取り組む従来の方針を確認するにとどめるとみられる。

 防衛省首脳は同日午前、「こちらからは(米側に)言わない。(沖合移動の)決定権者は知事だ。こちら(国)にお願いするものでもない」と述べ、V字形滑走路の沖合移動は、環境影響評価(アセスメント)の知事意見で対応するしかないとの考えを強調。沖合移動はあくまで地元が決定する問題で、日米協議のテーマにはならないとの見方を示した。その上で県のアセス受け入れについては「理解してもらえると思う。(沖合に移動するかどうかは)知事がはんこを押して決まる」と述べ、沖合移動を実現するためには県がアセスを受け入れざるを得ないとの認識も示した。

 ただ、アセスをめぐって県は「公共用財産使用協議書」に同意し、事前調査については黙認しているものの、政府案を前提としたアセス手続きについては拒否しており、先行きは不透明だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271700_02.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 1面
移設難航負担なお 米軍再編合意1年
 「沖縄の負担軽減」をテーマの一つに据えた米軍再編最終報告の日米合意から間もなく一年を迎える。満一年となる五月一日には、日米両政府の外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開催され、「再編の着実な実施」を確認する見通しだ。だが、懸案の米軍普天間飛行場移設問題は、V字形滑走路の詳細な位置をめぐって県、名護市と政府の調整が難航。移設協議会は一月の第三回会合以降、開催のめどが立たない状況が続いている。

 一方で普天間移設に向けた作業は着々と進む。那覇防衛施設局は県の同意を得て海域調査に着手。環境影響評価(アセスメント)手続きに入るタイミングを模索している。

 また、在沖海兵隊のグアム移転に伴う嘉手納基地以南の六基地返還に向けた詳細計画は、再編合意で示された「三月」を過ぎてもまとまらず、地元説明が遅れている。

 最終報告に盛り込まれた嘉手納基地のF15の一部訓練の本土移転は三月からスタートしたが、周辺住民の負担軽減の実感は乏しい。同基地には最終報告に基づき、昨年十月に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備された。米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22も暫定配備され、基地機能強化が際立っている。

 国会では、再編に協力した度合いに応じて交付金を支払うことを柱とした米軍再編推進法案の審議が最終局面に入る。「出来高払い」で基地の再編を進める手法は、安全保障政策に対する国の意識の転換を印象付ける。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_01.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 2面
F22共同訓練「同盟構築の好機」/米司令官強調
 【嘉手納】米軍嘉手納基地に暫定配備中の米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが参加した初の日米共同訓練は二十七日午後も引き続き沖縄周辺空域で行われ、南西航空混成団のF4戦闘機など航空自衛隊機とF22などの米軍機が模擬空中戦を展開した。

 同基地にはF22とF15が同日、相次いで緊急着陸。緊急車両が出動するなど一時緊迫した。同基地によると二機とも共同訓練の参加機ではなく、「機体や基地施設、周辺地域に影響はなかった」と説明している。

 訓練終了後、F22に搭乗した第二七遠征戦闘中隊司令官のウェード・トリバー中佐は嘉手納基地内で会見し「同盟関係を構築するに当たって、とてもいい機会になった」と述べた。その上で「お互いのことを知り、どう戦うかを学ぶことが国益のため必要だ」と訓練の意義を強調した。同機の配備期間中に新たな共同訓練は予定されていないが、「将来(また)できればいい」と意欲を示した。

 共同訓練には米軍のF22二機とF15二機、空自のF4四機とF15四機が参加。空中での攻撃や防御など対戦形式の訓練を実施した。F22が米軍以外と共同で訓練するのは今年二月に米本国でイギリス軍とオーストラリア軍と実施して以来二度目。国外では初めて。

 同中佐によると、F22十二機は今年二月に嘉手納基地配備後、五百八十回以上の飛行訓練を実施。米軍のF15やF18戦闘機、AV8ハリアー垂直離着陸攻撃機と共同で訓練も行った。

 在日米軍トップのブルース・ライト司令官は今後の朝鮮半島情勢次第ではF22の嘉手納基地への再配備の可能性を指摘しており、地元からは基地機能強化と相次ぐトラブルに反発が出ている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_02.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月26日、27日)

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 夕刊 5面
原告、健康被害訴え/普天間爆音訴訟
 【沖縄】米軍普天間飛行場周辺住民が国に夜間飛行差し止めと損害賠償を求めた普天間爆音訴訟の第十九回口頭弁論が二十六日、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)であり、原告住民五人への本人尋問が行われた。原告本人尋問は十二日に続いて二度目。

 宜野湾市議会議員の桃原功さん(48)=同市普天間=は「議会や個人で騒音被害を訴えても、米軍からの反応はない。住民への配慮がなされていない」と指摘した。

 自身がヘリや航空機からの騒音によるストレス性の不整脈と診断されたことや、妻が耳鳴りを感じ、娘がピアノの習い事に集中できないなど家族の被害を証言。「米軍はこれ以上宜野湾市民に被害を与えないでほしい。裁判所も爆音から私たちを守るような判断をしてもらいたい」と求めた。

 前底伸幸さん(37)=同市上原=は「騒音被害のために自分のペースで生活が送れない。なぜ住宅の上で軍事訓練が行われ、市民の人権が守られないのか」と涙ながらに訴えた。

 午後は別の住民三人への本人尋問が行われる。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261700_04.html

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 朝刊 2面
「可能な限り早期」/「普天間」アセス手続き
防衛施設局長が意向
 那覇防衛施設局の佐藤勉局長は二十六日の定例記者懇談会で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きについて、可能な限り早期に方法書を県に提出したい、との考えを示した。

 佐藤局長は「本来なら環境アセスの法律にのっとった手続きで進めたいが、県、名護市との間で政府案の形状はともかく位置については十分合意に達していない」と指摘。その上で「可能な限り早く(アセス手続きに)入れるよう県と調整したい」と述べた。

 県が求めるアセス前の滑走路の位置の移動については「政府案は自然環境や騒音、危険といった生活環境、事業の実行性といった三つの要素を絶妙にバランスよく配置し、なおかつ地元名護市、宜野座村の要望を踏まえた最良の案。それを変えるような合理的理由がなければなかなか修正は困難」と指摘。一方で「アセス手続きを進める中で、仮に必要があれば修正を検討していくことが必要ではないか」とし、アセス着手後の修正には柔軟姿勢をにじませた。

 海域の現況調査については「調査機器が設置されてから現況調査に入る」と述べ、調査機器設置後にデータ収集を開始した時点で調査着手との見解を表明。調査機器の設置完了時期については「六月初旬ごろのサンゴの産卵時期までにサンゴ着床具を設置しなければならない」との見解にとどめた。

 また、潜水作業に着手する前日の二十三日付で、県警と第十一管区海上保安本部に警備要請していたことを明らかにした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271300_04.html

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 朝刊 27面
目視確認は終了/辺野古調査
GW明けに作業再開
 【名護】米軍普天間飛行場の代替施設建設計画で、那覇防衛施設局は二十六日午後も現況調査(事前調査)に向けた名護市辺野古海域周辺での確認作業を継続。作業の進ちょく状況などから、同日までにダイバーの目視と写真撮影による調査ポイントの確認作業は終了したとみられる。収集資料の分析後、ゴールデンウイーク明けに、作業を再開する見通し。

 反対派は船とボート、カヌーの計十一隻で阻止行動を行い、けん制する第十一管区海上保安本部の船舶との間で、緊迫した状況が続いた。

 ダイバーが目視や写真撮影などによる現場確認をしたのに対し、反対派メンバーも潜り作業を監視した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271300_05.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月27日朝刊)

[F22A再配備]

負担増では反発が高まる
 在日米軍トップのライト司令官(空軍中将)は、嘉手納基地から来月までに離れる予定の米軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターについて、今後の朝鮮半島情勢次第では再配備の可能性が十分あるとの認識を示した。

 司令官は北朝鮮の弾道ミサイル再発射に備え、警戒態勢を堅持する姿勢を強調してきた。今回、核問題の展開次第ではF22A再配備による抑止力強化に踏み切る意向を明確にした。

 F22A十二機が暫定配備されたのは二月。米空軍は「太平洋地域への定期的ローテーション配備の一環」と説明し、外務省は「東アジア地域の抑止力低下を補うため」と説明していた。

 地元の嘉手納町などでは、当初からなし崩しの常駐化を懸念する声が上がっていた。F22Aが緊急着陸する事態も生じており、周辺住民が不安をかき立てられるのは当然である。

 航空自衛隊那覇基地所属の戦闘機の嘉手納基地共同使用が日米間で合意されている。嘉手納基地のF15の一部訓練の本土移転が始まったが、目に見える負担軽減にはつながっていない。

 朝鮮半島危機に連動して、嘉手納基地には地対空誘導弾パトリオット(PAC3)も配備された。

 F22Aの暫定配備にとどまらず、米空軍はF16戦闘機の後継機となる次世代戦闘攻撃機F35Aを海外では唯一、嘉手納基地に配備することを検討していることを明らかにしている。

 米軍再編による米軍と自衛隊の一体化が今後さらに進み、嘉手納基地については、負担の軽減どころか、ますます重くなるだけではないのか。

 周辺自治体の首長らで構成する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会はF22A配備に反対を表明した。「爆音被害は増大こそすれ、減少しない。これ以上の負担増は限界だ」と、嘉手納町議会は配備中止を求める抗議決議を全会一致で可決している。

 政府は住民の悲鳴を真摯に受け止めるべきだ。抑止力の強化というのなら負担軽減も同時に実現していかなければ住民の反発は高まるばかりだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070427.html#no_2

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月26日)

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 2面
知事・市長・防衛相会談10分 進展なし
移設、政府ペース
 米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、二十五日に防衛省内で行われた仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長と久間章生防衛相の会談は、わずか十分間で終了した。日米首脳会談や、外務、防衛閣僚の日米安全保障協議委員会(2プラス2)前の事態打開を模索した県は、逆に政府内の「壁の厚さ」を思い知らされる形となった。

 一方で政府は、海域の事前調査着手や公共用財産使用協議書への県の同意など、移設進ちょくの「実績」を着々と積み上げており、政府のペースでなし崩し的に移設が進むことも懸念される。

読み違え

 公式会談の約三時間前。会談を控えた仲井真知事らが滞在する都内のホテルを久間防衛相が訪ねた。

 意見交換の中身は明らかでないが、防衛省幹部はこの面談に着目し、久間防衛相が環境アセスメント後の滑走路の移動に関し、何らかの「口約束」をした可能性を指摘。「アセス後の修正なら『政治的配慮』はあるかもしれないが、アセス前の修正はない」との認識を示す。

 同幹部は知事らの上京前から「安倍(晋三)総理はぶれていない。知事は読み間違えている」と繰り返し、アセス前の滑走路の位置修正にこだわる仲井真知事のスタンスに疑問符を付けていた。

 同幹部は、沖縄の政府中枢への影響力低下を指摘。主要政治家の力を頼りに、県の意思を通そうとする歴代の保守県政の手法が現状では通用しないことを強調する。

 仲井真知事は参院補選中、中川秀直自民党幹事長らを介し、安倍首相に滑走路の沖合移動を求める名護市の意向を伝えていた。

 久間防衛相は周辺に「実施段階で設計を変える分には修正とはいえない」などと柔軟姿勢を示していたという。

 知事、市長、防衛相の思惑は一致していたが、水面下では防衛省の事務方が、安倍首相周辺にV字形滑走路の沖合移動に応じないよう強く働き掛けていた経緯がある。

 今月下旬から来月初めにかけ、日米首脳会談や2プラス2など日米の重要会議が続く。自民党国防族は「(V字形滑走路の)修正はできない。日米首脳会談にも影響する」とタイミングの悪さも指摘する。

長期戦?

 「総理も大臣も事務方に洗脳され、米側とも共同戦線を張っている。それを打ち破るのは並大抵ではない」。県首脳は久間防衛相との会談結果をこう振り返る。

 県首脳は今回の会談で、地元が求める滑走路の沖合移動や普天間飛行場の危険除去策で具体的な成果は得られなかったことを示唆した上で、今後の移設問題への取り組みについて「時間がかかるかもしれない。長期戦に持ち込んだ方が沖縄にとってはいいのでは」と主張。

 一方で「アセス前の修正」にこだわり、アセス方法書の提示も拒んできたこれまでのスタンスについて「いろいろ戦略はあると思う。戦略をどうつくるかだ」と言及。今回の会談結果を受け、政策実現を図る手法の転換も示唆する。

 国側は2プラス2後に、アセス方法書提示のタイミングを模索するとみられるが、滑走路の位置の移動にこだわる名護市のスタンスの行方も焦点になりそうだ。(東京支社・島袋晋作、政経部・渡辺豪)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_03.html

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 27面
「海域使用 同意撤回を」/辺野古調査
アセス監視団、県に抗議
 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う名護市キャンプ・シュワブ沿岸海域の現況調査で、県が那覇防衛施設局の海域使用に同意したことについて、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団(東恩納琢磨団長)は二十五日、県環境政策課に抗議するとともに撤回するよう要請した。

 土田武信副団長は「アセス手続きに入る前の現況調査は脱法行為だ」と指摘、県の見解をただした。また、県が同意文書の内容を一部開示しなかったことに対し、異議を申し立てた。

 これに対し、下地寛課長は「海域の使用は要件がそろっておれば認めざるを得ない」などと答えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_04.html

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 2面
「住民感情踏まえ対応」/F22沖縄常駐化に外相
 【東京】麻生太郎外相は二十五日の衆院外務委員会で、米軍嘉手納基地に一時配備されている最新鋭ステルス戦闘機F22Aの常駐化について「恒常化されるとは聞いていない。(周辺住民の)気持ちは理解できるので、それを踏まえて対応したい」との認識を示した。照屋寛徳氏(社民)の質問に答えた。

 同機の配備をめぐっては二十四日、在日米軍トップのライト司令官(空軍中将)が今後の朝鮮半島情勢次第で、再配備の可能性は十分あるとの認識を示していた。

 照屋氏は同機の常駐化が、基地周辺住民の負担増になると指摘し、外相の姿勢をただした。麻生外相は「(配備は)五月末に終わると承知している。仮定の問題には答えられない」とも述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_05.html

核情報を収集か 米偵察機が飛来

放射能測定の機能を持った電子情報偵察機RC135U=25日、米空軍嘉手納基地

 【嘉手納】米空軍嘉手納基地に放射能測定の特殊な機能を持った電子情報偵察機RC135Uが3月中旬から飛来していたことが25日、確認された。同機は米国ネブラスカ州・オファット空軍基地の所属。核関連の情報収集を行う専門の偵察機として米国にも2機しかない。昨年10月にも嘉手納基地への飛来が確認されている。一時配備されているF22戦闘機を含め嘉手納基地へ米空軍の最新鋭機飛来が相次いでいる。
(4/26 9:52) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23285-storytopic-3.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月26日朝刊)

[米軍用地訴訟]

基地被害も判断すべき
 米軍嘉手納基地内にある軍用地の強制使用で、土地を共有して基地への提供を拒否している新崎盛暉氏ら一坪反戦地主会のメンバーらが防衛相に対し、米軍用地特措法に基づく使用認定の取り消しを求めた訴訟で、那覇地裁(大野和明裁判長)は二十四日、原告の訴えを棄却した。

 判決は、土地の強制使用が適正かどうかを判断する使用認定について「首相の政策的・技術的な裁量にゆだねられている」と指摘。認定の際、考慮すべき事情として(1)わが国の安全と極東などの国際情勢(2)所有者や周辺地域の住民の負担や被害の程度(3)代替地等の提供の可能性―などを列挙している。

 嘉手納飛行場については「わが国が提供する米軍基地のなかでも、最重要で代替地を提供する可能性も極めて乏しい」としている。その上で「首相がした使用認定に裁量の逸脱、乱用があるとまではいえない」と結論付けた。

 住民の基地被害や負担について直接的な言及はなく、「基地が集中していることによって生じているとされる種々の問題」あるいは「原告の主張する諸事情」と記述している。

 裁判所は、判決言い渡しにあたって日夜激しい爆音被害に苦しんでいる嘉手納基地周辺の住民についてどこまで考えたことがあるだろうか。

 使用認定の際、考慮すべき事情として「住民の負担や被害の程度」を挙げながら、基地負担や被害について何の判断も示していない。判決は基地被害を無視していると言っていい。

 県内の米軍用地をめぐっては、一九九五年に代理署名を拒否した大田昌秀知事(当時)を相手に、国が職務執行命令訴訟を提起。最高裁大法廷は九六年八月、強制使用手続きを定めた米軍用地特措法を合憲と判断した。那覇地裁は、こうした最高裁判決を踏襲。住民の負担と被害に関する文言など引用部分も多い。

 もともとある判例に沿った判断だ。これでは結論ありきの感はぬぐえない。司法はもっと積極的に沖縄の実態に照らして判断すべきではないか。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070426.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年4月26日朝刊)

[「海域調査」同意]

基本姿勢をなぜ崩すのか
 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、仲井真弘多知事と島袋吉和名護市長が防衛省内で久間章生防衛相と会談した。

 仲井真知事は、環境影響評価(アセスメント)の前段となる現況調査(事前調査)のための海域使用に同意したことを伝えた。久間防衛相は謝意を示し、今後の手続きへの協力を求めた。

 県や名護市が求めているV字形滑走路の修正について、久間防衛相は「いろいろな経緯を経て今のV字形になっており、最良のものだ」との認識を示し、V字形を基本に作業や手続きを進めていく必要性を強調した。

 普天間飛行場の危険性除去については「移設を早く進めないといけない。(移設完了までの間)いろいろな工夫を考えていきたい」と述べた。

 県は、V字形滑走路を沖合南西に移動させる名護市の修正案や、普天間飛行場の「三年内閉鎖状態」の見通しもたたない中で、同意に踏み切った。

 V字形案について、仲井真知事は現行のままでは賛成できないと何度も明言してきた。これが選挙公約の大きな柱ではなかったのか。今回の調査をどのように位置付けているのか、県民にきちんと説明すべきだ。

 政府はアセス前の滑走路の位置修正には応じないとの姿勢を示してきた。このままでは地元の意向が反映されないまま外堀が着々と埋められ、なし崩しの移設作業が進むことになる。

 県は当初、事前調査について「次の段階の環境アセスにつながるもので、V字形案などについて地元の意向も踏まえて協議した後にやるべき」との立場だった。基本姿勢をなぜ崩すのか。

 同意した背景には、早期移設が普天間の最大の危険性除去につながるとの考えが基本にあるようだ。現況調査の範囲も広く、あえて拒否する理由もないというのであれば問題だろう。

 県政にとってはジレンマだ。しかし何の担保もないまま危険性除去や政府案修正に淡い期待を抱くのは危うい。県が追い詰められ、現行案の既成事実化に手を貸す結果を招きかねない。

 日米首脳会談や日米安全保障協議委員会(2プラス2)を目前に控え、政府は米軍再編推進法案の成立などを含め、普天間移設の着実な進展を米側にアピールする狙いもあるだろう。

 知事選、参院補選で辺野古移設を推進する候補が連続当選し、政府も気をよくしているはずだ。

 だが、宜野湾市長選で伊波洋一氏が大差で当選したように、県内移設を根本から疑問視する声は決して小さくはない。県民世論を読み誤り、強硬姿勢で臨めば県民の反発を買うだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070426.html#no_1