月別アーカイブ: 2007年5月

沖縄タイムス 関連記事(5月18日朝刊)

2007年5月18日(金) 朝刊 1・31面
辺野古移設 海域調査きょう着手
機器設置 海自支援も
 那覇防衛施設局は十八日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)に必要な調査機器を設置する。海底の磁気探査と並行し、六月初めにも始まるサンゴの産卵状況を調べるため、着床具の設置作業を優先させる方針。海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」は同日、同市辺野古沖に停泊し、海自隊員が調査機器の設置作業を支援できる態勢で臨むとみられる。

 一方、辺野古漁港には十七日深夜、市民団体のメンバーら約百人が集まり、緊張感に包まれた。天候や反対する市民グループの動きによっては、ぶんごは十八日未明のうちに調査海域に入り、海自の潜水要員が着床具の設置作業に一部着手する可能性もある。ただ、海自の作業への関与については県民世論の反応も踏まえ、慎重に判断するもようで流動的だ。

 久間章生防衛相は十七日の参院外交防衛委員会で、国家行政組織法上の「官庁間協力」を挙げ、防衛施設庁の要請を受けて海自を動員することを初めて公式に認めた。ぶんごの乗員が調査に参加する可能性についても「それを否定するわけではない」と表明。施設局が委託している民間業者の設置作業をサポートする名目で海自の潜水要員を動員するとみられるが、自衛隊員が災害や国際協力以外の活動に参加する法的根拠については明らかにしていない。

 自衛隊が米軍基地建設に絡む調査活動に協力するのは極めて異例。反対する市民グループらは「海自を派遣し、威圧的に調査を実施するのは民主的なやり方ではない」と反発を強めている。

 海自の支援については仲井真弘多知事も「県民感情を考えるとあまり好ましいとは思わない。誤解を生むようなことは避けた方がいい」と否定的な見解を示している。

 施設局が今回実施するのは海生生物調査と海象調査。海象調査は(1)流向・流速(2)水温・塩分(3)波高・波向(4)濁度(5)補砂器に分類。海生生物調査は、サンゴやジュゴン、海亀などの生態を調べる。

     ◇     ◇     ◇     

市民100人集結

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対する市民団体のメンバーは十七日深夜、同市辺野古区に集結、漁港入り口で座り込みを始めるなど、現場は緊迫度を高めている。

 同飛行場代替施設の建設に伴う海域での現況調査(事前調査)に向けた調査機器設置が十八日にも始まる、という情報を受け、約百人の反対派が座り込みを続けるテントに駆けつけた。

 メンバーは那覇防衛施設局の職員が現地に到着しても漁港へ入るのを阻止するため漁港入り口の道路に座り込んで集会を開いた。非暴力で反対を訴えることなどを確認し合った。

 平和市民連絡会の当山栄事務局長は「自衛隊まで派遣する政府の圧力に屈することなく、平和を訴えたい。そのためにも、絶対に作業を阻止したい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705181300_01.html

2007年5月18日(金) 朝刊 2面
海自動員「将来に禍根」/伊波市長が反対意見
衆院安保委参考人質疑
 【東京】伊波洋一宜野湾市長は十七日、米軍再編に関する衆院安全保障委員会の参考人質疑に出席し、米軍普天間飛行場移設先の周辺海域での現況調査(事前調査)に海上自衛隊が動員されることに「(沖縄には)旧日本軍も含めさまざまな記憶がある。県民と対峙させることは、将来に大きな禍根を残す」と反対した。

 伊波市長は「なぜ普天間飛行場の危険な状況が放置されるのか。米軍は九万人の市民が居住する真上で飛行訓練を続けており、墜落事故が起きれば大惨事になる」と指摘。二〇〇四年八月十三日のヘリ墜落事故による住民の心理的不安や騒音による身体的苦痛を訴えた上で、一期目の公約である「〇八年までの返還」を強調した。

 その上で、普天間飛行場の航空部隊をグアムのアンダーセン空軍基地に移す持論を展開。名護市キャンプ・シュワブ沖に代替施設を造る案について「辺野古の海はジュゴンもすむ本当に美しい海。将来的にも沖縄の大切な財産だ。基地建設で壊さないでいただきたい」と計画の見直しを求めた。

 米軍岩国基地(山口県岩国市)への空母艦載機移転に反対する井原勝介同市長は、政府が○七年度予算で新市庁舎建設費の補助金を打ち切ったことについて「米軍再編とリンクさせるやり方には納得できない」と批判。協力度に応じて交付金を払う新制度に関しては「アメとムチの手法で、市民の不安をかき立てている」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705181300_02.html

2007年5月18日(金) 朝刊 2面
V字滑走路 米軍機種変更で1600メートルに
 【東京】防衛省の大古和雄防衛政策局長は十七日の参院外交防衛委員会で、米軍普天間飛行場代替施設のV字形滑走路の長さが、辺野古沖を埋め立てる従来案より三百メートル長い千六百メートルに決まった理由に代替施設を使用する固定翼連絡機の機種変更があったことを明らかにした。大古局長は「(SACO以降の)情勢変化で固定翼の連絡機についても(滑走路が)長いものが必要になった(米側から)と聞いている」と説明。機種名は明らかにしなかった。白眞勲氏(民主)への答弁。

 久間章生防衛相は滑走路の長さについて「日本国内における飛行場で千三百メートルというのはなく、みな千五百メートル以上だ。どこかにトラブルがあったときには千五百メートルは最低必要」との認識を示した。

 在日米軍再編に伴う基地返還や在沖米海兵隊のグアム移転後の基地従業員の雇用について、久間防衛相は「(従業員を)全部残すことはできないのではないかと思っている」との見解を示した。

 その上で「(失業の)影響が最小限になるよう努力していかなければならない。職業転換をはじめとしていろいろと配慮していこうと思っている」と述べ、積極的に雇用対策を検討する考えを示した。小泉昭男氏(自民)への答弁。

 大古局長は、在日米軍再編への協力度合いに応じて地方自治体へ支払われる「再編交付金」の算定基準について、今後、住民生活に及ぼす影響を点数化して算定する考えを示した。参考例として(1)防衛施設面積の増加(2)飛行場設置など新たな施設整備の内容(3)戦闘機やヘリ、車両など装備の配備内容(4)人員増加の規模(5)訓練の内容―などを挙げ、「このような点を考慮して基準を設けたいと考えている」と説明した。緒方靖夫氏(共産)への答弁。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705181300_03.html

2007年5月18日(金) 朝刊 31面
東村長一転 容認の意向/ヘリパッド移設
 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、東村の伊集盛久村長は十七日、反対の立場を転換し、移設容認の意向を示した。地元高江区の代議委員会に対し、村長は文書で「住民の生活環境の保全に最大限配慮するよう国に強く要望する」と理解を求めた。

 伊集村長は沖縄タイムス社などの取材に対し、「公約違反は認める。実際に行政を担い、いろんな意見を聴き、最終的にはこういう形にしかできない。区民に申し訳ないと思っている」と語った。村長は選挙公約で移設反対を掲げ、就任後は「移設場所を住宅地から遠ざけるよう、国に建設予定地の変更を求める」としていた。

 村長は同日、仲嶺武夫区長を通し、文書で受け入れを伝えた。この中で「高江区民の要望どおり移設場所を集落から大幅に離すことが望ましい」とする一方で、「米軍との調整や、過年度調査を含めると約十年に及ぶ環境影響評価手続きの経過などを踏まえると、現時点で移設場所の変更は難しいと考える」と理解を求めた。

 代議委員からは「公約と違う」「位置の変更を求める方針が大幅に後退している」と落胆した声が聞かれた。

 伊集村長は同日、就任後初めての移設予定地視察と、地元住民との意見交換会を予定していたが、「急用ができた」として急きょキャンセルした。

 仲嶺区長は「場所の変更を求めないという部分は、これまでとニュアンスが違うと感じたが、ヘリの騒音など住民に影響がある場合はその都度国に申し入れるとあるので、全体的な姿勢は大幅に変わったとはとらえていない」との考えを示した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705181300_04.html

2007年5月18日(金) 朝刊 30面
原告住民ら戸惑い/普天間・爆音検証
「いつもより高度高く回数少ない」
 【宜野湾】米軍普天間飛行場の周辺住民が国に夜間飛行差し止めと損害賠償を求めた普天間爆音訴訟で、那覇地裁沖縄支部による初めての現場検証は十七日午後も続行された。検証現場上空ではCH46輸送ヘリなどの旋廻が確認されたが、現場で被害を説明した原告住民からは「いつもより飛行の高度が高い。回数も普段より少ない」と戸惑いの声も聞かれた。

 同支部の河合芳光裁判長らは午前の飛行場南側地域に続き、午後は北側に位置する宜野湾市野嵩、普天間の二カ所で検証を実施。飛行場に隣接する沖縄国際大学では二〇〇四年八月に同大学で発生した米海兵隊のCH53大型輸送ヘリの墜落事故現場を視察した。

 飛行場滑走路の横、同市普天間に暮らす新垣清涼さん(57)の住宅屋上からはCH46輸送ヘリやAH1攻撃ヘリがタッチ・アンド・ゴーを繰り返す様子が確認された。

 住民らは「飛行回数が普段より少なく、被害実態が分からない」と訴えた。裁判官に飛行ルートなどを指さしながら騒音被害を説明した新垣さんは「いつもはもっと低く飛ぶ。米軍は検証の日に限って住民に配慮をしているような飛び方をしている」と語った。

 滑走路南側、同市佐真下で駐機場からのエンジン調整音や排ガスの被害を訴えた久場たつのさん(46)も「裁判官に現状を知ってもらいたかったのに、今日はそんなに音がしなかった」と憤った。

 原告団団長の島田善次さん(66)は「提訴から四年、やっと裁判官に『普天間』の現状を現場で説明することができてよかった。騒音は少なかったが、別の日に測定された市や県のデータを提出することで日常的な騒音被害を訴える」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705181300_08.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(5月17日)

2007年5月17日(木) 朝刊 1面
跡地経済効果1兆円/基地再編返還予定地
生産誘発1兆7000億円/地代収入1900億円損失に
 在日米軍再編で合意した嘉手納基地より南の米軍基地・施設の返還に伴う地域経済への影響などについて、県が二〇〇六年度に実施した調査で、返還予定地の跡地整備における建築・土木費などの直接経済効果は約一兆円に上り、生産誘発額は約一兆七千億円規模、約千三百億円の税収が見込まれることが十六日、分かった。

 跡地での立地企業による販売活動などに伴う直接経済効果(年間販売額)は約八千七百億円で、生産誘発額を年間約七千百億円と推計。一方、返還に伴う損失として地代収入などマイナス面も指摘。県は近く報告書をまとめ、今後の大規模跡地利用策や沖縄振興、経済展望などについて検討作業に入る。

 同調査は「駐留軍用地跡地利用に伴う経済波及効果等検討調査」。普天間飛行場、キャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)、那覇港湾施設(那覇軍港)の五カ所について、那覇新都心地区の土地利用構成などを基にそれぞれの地区の土地利用を想定。その上で、同地区の平方メートル単価などを用いて算出した。

 こうした結果から、嘉手納基地以南の大規模返還に伴う開発は、税収増や地域経済にプラスの効果がある―と分析。ただ、周辺地域の既存商店街への影響や開発事業に伴う財政負担などを挙げ、今後の跡地利用には「新たな開発事業方式の導入、周辺との共生による推進が必要」としている。

 また、土地の供給・需要面から跡地利用計画策定以前に、中南部圏全体の土地利用の最適化計画(仮称)の策定を提起。商業・住宅等の需要予測の必要性を挙げた。

 中南部圏全体における軍用地・施設などが返還された場合に失われる経済効果は、地代収入など年間で約千九百億円とした。

 このほか、那覇市新都心地区や北谷町美浜地区など、既に返還された基地跡地における地域への経済効果を推計。那覇新都心地区(二百十四ヘクタール)では、地区整備によってもたらされる商業・サービス等の活動による波及効果は生産誘発額(年額)約六百二十九億円と大きな影響がある一方で、周辺地域の商店街などへの売り上げ減少の影響なども指摘。また、周辺地域からの人口流入や周辺地区への地価への影響なども挙げた。

 北谷町美浜地区では同生産誘発額(年額)は約五百六十八億円と試算、経済効果が高いことを示した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705171300_01.html

社説(2007年5月17日朝刊)

[復帰35年・日米密約]

対米従属からの脱却を

使途不明の軍用地補償費

 沖縄の返還交渉に絡む日米両政府の密約が米公文書から新たに明らかになった。

 一つは、一九七二年五月の返還を前に米政府が支払うはずの軍用地復元補償費四百万ドルを肩代わりする密約の発覚を恐れ、日本政府が軍用地主らへの補償費支払い業務を延期するよう米側に働き掛けていたというものだ。

 米側は財務、国務、陸軍の三省間で検討を重ね、支払い業務開始を七三年に先送りした。

 また、実際に地主に支払われた補償費は百万ドルを下回り、一部は支払い業務を担当した米陸軍工兵隊の経費にも充てられていたことが分かった。

 復帰前、米政府がドル建てで支払っていた軍用地料は、年間総額約八百六十一万ドル(七一年度、当時の一ドル三百六十円換算で約三十一億円)で、軍用地復元補償費はその約半分に相当する額だ。

 駐沖縄米総領事は七五年七月二十九日付の国務省あての公電で、残りの三百万ドル余りについて「(日本政府向けに)問題を引き起こさない使途の説明が必要になる」と指摘しているが、使途は明らかになっていない。

 同密約をめぐっては、元毎日新聞記者の西山太吉氏が入手した外務省の極秘公電を基に社会党が七二年に国会で追及したが、政府は今日に至るまでその存在を否定している。

 もう一つは、いわゆる「思いやり予算」の原型になったとされている「米軍基地改善費」と称する対米支出の問題だ。それに絡む密約の動きも米公文書などから浮かび上がっている。

 日米地位協定(第二四条)では、施設の維持・整備は米側の負担と定められている。

 同協定がまだ適用されない復帰前の沖縄では、当然ながら、米政府自身が沖縄基地の維持・整備費を全額支出していた。

 そんな中で七三年二月、社会党は沖縄返還協定で規定された米資産買い取りなどの対米支払い三億二千万ドルとは別に、米軍基地改善費六千五百万ドルを支払う密約があったと追及した。

地位協定の解釈を変更

 政府は密約を否定したが、七二―七三年の米太平洋軍年次報告書は、国会紛糾の影響で那覇空港返還に向けた米海軍の対潜哨戒機移転先の工事が一年以上遅れた経緯に言及した上で、六千五百万ドルは那覇空港の返還に伴う移転関連基金に充てられたとしている。

 復帰前の米軍の全面占領下では、那覇空港も那覇海軍航空施設、那覇空軍・海軍補助施設として使われていた。

 復帰直後の七三年一月に開かれた第十四回日米安全保障協議委員会(2プラス2)で初めて在沖米軍基地の整理統合計画が協議され、那覇空港の米軍施設は嘉手納基地への統合が合意されている。

 こうした経緯から見ると、米軍基地改善費六千五百万ドルは日米地位協定の枠外で那覇空港の米軍施設の移転費に充てられたと読み解けよう。

 在日米大使館は七五年十二月二十四日付の国務省あての文書で、その使途について地位協定が適用できない案件だったとした上で「今後は協定の緩やかな解釈を求めることが困難」と報告。施設改善で日本側から新たな財政支援を引き出す方法を考える必要性を示している。

 これに、日本政府は地位協定第二四条の解釈変更による「思いやり予算」で応じることになる。

突出する「思いやり予算」

 七八年、まず基地従業員の労務費のうち社会保険料を初めて思いやり予算として負担。軍用地料の全額、新規の提供施設についても「可能」との解釈を打ち出し、過去の実態も追認して予算措置で対応するようになった。

 今や、嘉手納基地ではF15戦闘機用シェルターが思いやり予算で造られ、米軍住宅建設費や基地の再建設費の日本側への肩代わり負担にほかならない移設費なども含まれている。

 思いやり予算で負担している在日米軍の駐留経費は、軍用地料や基地周辺対策費などを含めスタート時の七八年の千七百五十九億円から二〇〇五年には六千四百七十九億円に膨張、この二十七年間で約十三兆円もの税金が投入されている。

 日本の思いやり予算は、米軍が駐留する世界二十七カ国=北大西洋条約機構(NATO)十八、太平洋三、湾岸六=の中でも突出しており異常だ。

 米国との関係強化の前に、まずこの対米従属からの脱却を図るべきだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070517.html#no_1

2007年5月17日(木) 夕刊 1面
未明離陸に抗議決議/北谷町議会
 【北谷】米軍嘉手納基地に一時配備されていた米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター十機が米本国への帰還時に未明離陸を強行したことについて北谷町議会(宮里友常議長)は十七日午前、未明離陸の禁止を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。近日中に在日米国大使、在日米軍沖縄地域調整官、在沖米国総領事、外務省沖縄担当大使、那覇防衛施設局長らに抗議と要請を行う。

 抗議決議、意見書では「幾度となく未明離陸中止の要請を行ってきたが、米軍の姿勢は基地周辺住民を軽視している」と厳しく批判。整備上の理由で二機が午前十時二十五分に離陸したことを指摘し、「他の基地を経由して帰還することが十分可能と考えられる」として、未明離陸を回避する運用改善を求めている。

 また、教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍の関与が高校の歴史教科書から削除された問題について、検定意見の撤回を求める意見書を可決。首相、文部科学大臣、衆参両院議長らに要請する。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705171700_05.html

琉球新報 社説(5月16日)

沖縄返還密約・繰り返された隠蔽工作

 沖縄返還に絡む日本政府の欺瞞(ぎまん)がまたしても明るみに出た。返還に伴う軍用地復元補償費400万ドルを米国に代わって日本が負担するという密約の発覚を恐れ、日本政府が米側に働き掛けて補償費支払いを延期させていたのだ。
 米国側は財務、国務、陸軍三省が協議し、支払い業務開始を1972年から翌73年に延期した。日米両政府が国家ぐるみで隠蔽(いんぺい)工作を行っていたわけだ。
 しかも、日本側から提供された400万ドルのうち米国が実際に沖縄の地権者に支払ったのは100万ドルを下回っていた。積算根拠に乏しい中で、米国の言うがままの金額を支払っていた疑いが強い。
 沖縄の地主らに支出するため使われるはずだった残りの300万ドル余は米国がちゃっかり懐に入れていたのだから驚く。一部は米陸軍工兵隊の経費にも充てられていた。
 地権者に渡らなかったのなら日本政府に返すべきだろうが、使途は明らかになっていない。
 米国の当初の予定では、返還に伴う米資産買い取り費用などとして日本側から支払われる3億2000万ドルの中から400万ドルを信託基金設立に充て、72年中に復元補償費の支払い業務を始めることになっていた。これに対し日本政府が「信託基金設立は(肩代わりの)取り決めを公に認めることになる」と待ったをかけたのだ。
 国務省内には支払い遅延への沖縄側からの反発を懸念する声もあったが、国会で追及されるリスクを回避することを優先したという。
 日本政府は、国民に説明できない不適切な対米支出を覆い隠すため米国との裏交渉に奔走した結果、地主への補償を遅らせた。国民を欺いた上に、地権者に不利益を与えたことになる。まるで背信行為ではないか。
 これらは米国立公文書館に所蔵されている一連の公文書によって新たに判明した事実だが、日本政府は密約の存在そのものを一貫して否定し続けている。
 71年当時、外務省アメリカ局長として対米交渉を担当した吉野文六氏が、2006年になって「返還時に米国に支払った総額3億2千万ドルの中に原状回復費用400万ドルが含まれていた」と密約の存在を認めた後も、その姿勢は変わらない。
 主権者である国民に背を向ける極めて不誠実な態度と言わざるを得ない。
 国民には真実を知る権利があり、政府には事実を明らかにする責任がある。政府にとって都合が悪いからといって、真実を闇に葬ることは決して許されない。
 72年の本土復帰から既に35年が経過した。国民を欺いていたのなら潔く認め、密約の全容を速やかに公表すべきだ。

(5/16 10:36)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23803-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事(5月16日夕刊)

2007年5月16日(水) 夕刊 5面
辺野古調査/反対派100人超集結
 【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設予定地の名護市辺野古の反対派座り込みテントで十六日、市民団体のメンバーらによる集会が開かれた。代替施設建設に伴う事前調査が同日にも開かれるのではないかとの情報で百人以上が集まった。海上自衛隊の艦船が投入されるとの報道もあり、現場は緊張感が高まっている。

 座り込みテントには、調査開始を阻止しようと、同日午前四時から市民団体のメンバーらが集まり始めた。午前八時からの集会で参加者は「自衛隊の介入を許さない」「違法な調査を止めるぞ」とシュプレヒコール。その上空を海上自衛隊所属とみられるヘリが旋回した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705161700_02.html

2007年5月16日(水) 夕刊 1面
知事、防衛協会長続投へ/「辞任」一転 来年5月まで
 仲井真弘多知事は十六日までに、兼務する県防衛協会の会長職を来年五月の任期まで続投する意向を固めた。仲井真知事は県議会二月定例会の一般質問で、多忙を理由に五月の総会をめどに会長職を辞任する考えを示唆していたが、自衛隊を容認する県政のスタンスなどを踏まえて続投を最終判断した。

 仲井真知事は、那覇商工会議所会頭だった昨年五月に会長に就任。任期は二年。同十一月の知事選への立候補に備え、兼職していた五十団体の役職のうち、沖縄・台湾財界関係者の交流組織である中琉協会と県防衛協会の会長職だけを続けていた。

 先月中旬にあった防衛協会の理事会で、仲井真知事が会長職を続投することに異論はなかったという。

 県防衛協会は自衛隊活動の支援や防衛思想の普及高揚などを目的に活動している。全国防衛協会連合会(東京都)によると、各都道府県に設置されており、今年一月時点で、他府県で現職知事が会長職を務めるのは鹿児島、熊本、長崎、新潟の四県。静岡県知事は名誉会長となっている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705161700_03.html

2007年5月16日(水) 夕刊 1面
副知事「残念だ」/総領事「普天間 特別に危険でない」
 仲里全輝副知事は十六日、ケビン・メア在沖米国総領事が十四日の講演会で「普天間(飛行場)は特別に危険ではない」と発言したことについて、「残念。総領事として地域の実情を把握して(ほしい)」と述べた。同日午前、県庁で伊波洋一宜野湾市長と面談した際に語った。

 普天間飛行場の移設問題について、仲里副知事は「市のど真ん中にあり、日米双方も危険との認識があるので移設する。グアム、県外移設などが一番いいが、枠組みが決まっている。その中で可能な限り地域にプラスになるようどう収めていくかが課題だ」と危険性の除去に向けて努力する考えを改めて強調した。

 伊波市長は「力を合わせて早期返還を実現していきたい」と述べ、跡地利用対策に向け協力して取り組むことを確認した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705161700_04.html

2007年5月16日(水) 夕刊 4面
復帰っ子、沖縄自立訴え/議員らシンポ
 復帰っ子が集い、沖縄の今を考え未来を展望するシンポジウム「ぶっちゃけどーよ!復帰っ子議員と語る沖縄のこれから」が15日、浦添市内で開かれた。

 一九七二年の「復帰っ子」世代で現在は県議や市議を務める四氏が、いまだ実現が遠い沖縄の「自立」について議論した。

 前泊美紀さん(35)を代表とする県復帰っ子連絡協議会が主催。復帰世代の國場幸之助県議、仲村未央沖縄市議、島袋大豊見城市議、上里直司那覇市議がパネリストとして参加した。四氏とも周囲に「復帰世代」を意識されることが多かったと説明。意識し始めたのは、ことあるごとに大きく伝えられる新聞報道や、進学先の本土で言われた何げない一言だったという。

 國場県議は大阪の予備校で、同じ浪人生から「普段は英語を話しているんですか」と聞かれ、「強烈に沖縄のことを意識するようになった」と説明。

 島袋市議は高校入試の朝、復帰世代の受験を報じる新聞の大見出しに驚かされたと話した。

 四氏とも復帰を評価。仲村、上里両市議は米軍の圧政で著しく人権が阻害されていた歴史を踏まえると、「復帰は当然評価すべきだ」と話した。

 沖縄の自立について、國場県議は「本土と同じ土俵でなければ自立に当たらない」と指摘。三市議も復帰特別措置に頼る業界を批判し、「自立を訴えながら補助金を要求する態度は『大義が違う』と疑問がある」などと話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705161700_05.html
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沖縄タイムス 関連記事(5月16日朝刊)

2007年5月16日(水) 朝刊 1・29面
沖縄返還交渉「基地削減 議題ならず」/外務省吉野元局長
 沖縄の施政権返還から三十五年を迎えるに当たり、外務省アメリカ局長として返還交渉に当たった吉野文六氏(88)が十五日までに、本紙の取材に「日本は返還の時にもっと沖縄の基地削減を主張するべきだった。日本の安全保障政策に中長期的な将来像がないまま、沖縄の基地は三十五年間、放置されたことになる」と語った。当時の佐藤栄作首相が掲げた“本土並み”の形式を整えることありきで、返還交渉で沖縄の米軍基地削減が議題になることは一度もなかったことを指摘した。米軍再編で在沖海兵隊のグアム移転費に支出する日本政府については「基地問題を金で解決するやり方は当時からあまり変わっていない」と話した。

 吉野氏は一九七一年一月、アメリカ局長に就任。OECD大使、ドイツ大使などを歴任した。

 沖縄返還の背景について、吉野氏は「ベトナム戦争で米国の景気が悪化の一途をたどる中で、日本は対米貿易を大幅に伸ばしていた。米国の議会が不満を募らせて沖縄返還に反対するようになる前に、早く交渉をまとめてしまおうということだった」と語った。

 その上で、「返還当時から現在まで日本の安全をどう守っていくのかという根本的な議論がない。日米安保に基づいて沖縄の基地をどう位置付けていくのか。あるいは永久に安保なのか。戦略的な見通しがないまま、果たしてこれだけの基地が必要なのか、分からない」と指摘した。

 七一年の当時の国会は沖縄から核が撤去されるかどうかに野党の追及が集中。議論するべき安全保障政策には及ばなかったという。「安保騒動からまだ十年という時代ですから、機が熟していなかったということでしょう」と振り返った。

 吉野氏は、同じ敗戦国だったドイツを引き合いに対米寄りの日本に懸念を示す。「冷戦の崩壊後、米国の一極支配と経済のグローバル化を背景に、日本が軍事も経済も米国に頼り過ぎてきた結果ですね」と語った。(粟国雄一郎)

     ◇     ◇     ◇     

「協定違反」最後まで反対

 吉野文六さん(88)が外務省アメリカ局長として担った沖縄返還交渉の一つは、日本が秘密裏に支払う六千五百万ドル(一ドル三百六十円で二百三十四億円)を米側がどう使うかだった。返還交渉の内幕を記した米国の公文書に、吉野さんが登場する興味深い一枚がある。公文書によると、基地の修繕・維持費に充てたい米側の要求を日本側が受け入れる場面で、吉野さんら事務方は日米地位協定に違反するとして最後まで反対していた。日本側が認めたこの「密約」は後に「思いやり予算」として表面化する。

 返還協定調印を八日後に控えた一九七一年六月九日、パリで行われた愛知揆一外相とロジャース国務長官による日米会談。その模様について、我部政明・琉球大教授が発掘した米国の公文書はこうつづる。

 「吉野局長ら日本側は、米側の要求に応えることが明らかに地位協定に違反し、発覚する危険性があるとして、反対していた。愛知外相は部下の反対を押し切り、『私が責任を持って』と答えた」。愛知外相は口頭の約束であることを念押ししていた。

 吉野さんはこの公文書のコピーを手に「これは興味深い」と目を走らせた。

 短いため息の後、「当時のことはよく覚えていない」とした上で「明らかに地位協定違反ですから事務方としては当然反対しますね。六千五百万ドルですから(西山太吉・元毎日新聞記者が『密約』と指摘した)四百万ドルよりもずっと大きい」と苦笑した。

 愛知外相の対応には「米側にいい顔をしたいと思ったのが大半でしょうが、交渉期限も迫り、金で解決がつくならと考えたのでしょう」と述べた。

 日米地位協定には基地の維持経費は米側の負担とある。日本がその枠組みを踏み出して基地の修繕・維持費を負担するこの「密約」を、我部教授は後の「思いやり予算」と指摘する。米軍の駐留を後押しする原点になったとの問いに、吉野さんは「そういうことです」とうなずいた。

 復帰前の沖縄視察では、基地内だけが別天地のように小ぎれいで「早く交渉をまとめて沖縄を“本土並み”にしなければと思った」という。一方で、当時は「密約」の一端が明らかになり国会は大波乱だった。

 吉野さんは当時、国会答弁などで「密約」を否定し続けた。「『記憶にありません、記憶にありません』と言って本当に忘れようとしたんです」(粟国雄一郎)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705161300_02.html

2007年5月16日(水) 朝刊 2面
再編交付金支給を主張/参院外交委に仲里副知事
 米軍再編推進法案の審議の参考にするため来県中の参院外交防衛委員会のメンバーが十五日、県庁で仲井真弘多知事らと意見交換した。米軍普天間飛行場移設問題と同法案との関連で仲里全輝副知事は「(地元の)合意がないから交付金の支給対象にならないと発言する関係者もいるが、それはおかしい」と主張、名護市や県が代替施設の滑走路の沖合移動を求めていることを理由に、交付金の不払いを示唆する一部政府関係者をけん制した。

 普天間移設問題へのスタンスについて、仲里副知事は「名護市や周辺市町村、現県政を含め、現実的な枠組みを踏まえ、基本的にはV字形案はやむを得ないと思っている。しかし、住民生活への影響を考え、可能な限り沖合へと求めている」と説明。その上で「負担を強いられるのであれば、それに対する補償的意味合いもある。(交付金は)当然交付すべき」と述べ、在日米軍再編への協力度合いに応じた地方自治体への交付金支給を柱とする同法案への見解を表明した。

 仲井真知事は普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設について「名護市が受け入れるとなればその方向に行かざるを得ないと思っている。しかし、(名護市は)なるべく海へ出してもらいたいというのがある」と述べ、滑走路の沖合移動を重ねて要請。さらに、普天間飛行場については「返還までに全体の運用を下げていくことが必要」と強調、三年をめどにした閉鎖状態の確保を求めた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705161300_06.html

2007年5月16日(水) 朝刊 29面
改憲反対350人訴え/5・15県民集会
 復帰三十五年を迎えた十五日、「憲法の改悪を許さない5・15県民集会」(主催・沖縄平和運動センター)が那覇市の県庁前県民広場であり、約三百五十人(主催者発表)が参加した。十四日に成立した国民投票法に対し「平和憲法を守る」「戦争反対」と声を上げ抗議、改憲反対を訴えた。

 同センターの崎山嗣幸議長は「復帰から三十五年を迎えたが、県民が願った、基地も核もない復帰はいまだに実現されていない。これからも沖縄の軍事強化を許さない活動に取り組む」とあいさつした。

 大学人九条の会沖縄代表の高良鉄美琉大法科大学院教授は「復帰によって沖縄が得たのは憲法だけだが、その中身は十分に勝ち取られたものではない。次世代に伝えるためにも、もう一度憲法の原点に返るべきだ」と語気を強めた。

 帰宅途中に集会に参加した芝田真弓さん(27)=那覇市、会社員=は「基地や教科書問題など、沖縄のことなのに、県民の声が政治に反映されていないことにいら立ちを感じる」と話した。

 集会後、参加者は改憲反対などを訴えながら国際通りをデモ行進した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705161300_07.html