月別アーカイブ: 2007年6月

沖縄タイムス 関連記事・社説(6月21日)

2007年6月21日(木) 朝刊 2面

 

土壌入れ替え着手/嘉手納燃料流出

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、同基地は二十日、土壌の入れ替え作業に十九日から着手していることを明らかにした。

 

 

 「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はない」と判断した根拠については、(1)基地の技術官が地下五フィート(約一・五メートル)より深い部分に燃料が浸透しておらず、地下水より上部に限定されていると判断(2)環境専門官が流出エリア近くの排水システムから水のサンプルを集めた結果、微量の汚染物質も検出されなかった―と説明。「周辺地域に危険を及ぼす可能性はほとんどあり得ない。清掃と進行中の土壌入れ替え作業を経て、さらに長期の環境への影響も排除できる自信がある」としている。

 

 

 いずれも沖縄タイムス社の質問に回答した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706211300_07.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月21日朝刊)

 

 

[改正イラク特措法]

 

対米重視策を国民に問え

 

 改正イラク復興支援特別措置法が成立した。四年間の時限立法で今年七月に期限が切れる同法だったが、改正により航空自衛隊のイラク派遣を二年間延長することが可能となった。

 

 

 政府は当面、二〇〇八年七月末まで一年間延長する方針で、それ以降、延長するかどうかはイラクの治安状況などを見て判断する意向だ。

 

 

 医療や給水など、純粋に人道支援だった陸上自衛隊がイラク南部のサマワから昨年七月に撤収して以降、クウェートを拠点に人員、物資をイラクに輸送する空自の任務は、ほとんどが米軍を中心とした多国籍軍関係で、国連関係はごくわずかとなっている。

 

 

 自衛隊の活動の性格が、人道復興支援から安全確保支援に様変わりし、多国籍軍支援に重点を移していることは明らかだ。

 

 

 イラク政策で苦境に立つ米国を支援し、日米同盟の維持、対米重視政策を象徴しているのが、今回の改正だといえよう。

 

 

 ブッシュ米大統領は今年一月、世論や野党民主党の反対を押し切る形で増派を決定。現在、イラク駐留米兵は計約十六万人に上るが、治安情勢がいつ安定化するかは不透明だ。

 

 

 改正特措法が成立したことに、米国防総省の当局者は、「イラク国民と多国籍軍への支援に感謝する」と日本の支援を評価する立場を強調していることは、ブッシュ政権の置かれた立場からすると、援護射撃となることは間違いない。

 

 

 安倍晋三首相の特措法延長の説明は「潘基文国連事務局長から空輸支援への謝意表明や継続要請が来ている」とし、大義名分に「国連」を掲げ、間近に控えた参院選を意識しているとしか思えない。

 

 

 今、空自をイラクから撤退すれば、間違いなく日米同盟に多大な影響を及ぼす。北朝鮮問題も考慮し、日米同盟を堅持するならば、政府は改正特措法が実態的には対米支援法に変質していることを率直に認め、国民にその信を問うべきだ。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070621.html#no_2

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月21日朝刊)

 

 

[教育3法成立]

 

将来に禍根残しかねない

 

 安倍晋三首相が今国会の「最重要法案」と位置付けた教育改革関連三法が参院で与党の賛成多数で可決、成立した。

 

 

 学校教育の目標などを定めた「学校教育法」、国と地方のかかわりを規定した「地方教育行政法」、新たに免許更新制を盛り込んだ「教員免許法」の三法で、昨年末、約六十年ぶりに改正された「教育基本法」に続き、いずれも公教育の骨格部分に相当する。

 

 

 三法に基づき今後、学校教育や地方教育行政に対する国の関与の道を大きく開いた、といえよう。

 

 

 野党は徹底審議を求めて反対した。国会でどれだけ歯止めがかかるのか注目されたが、結局、与党の「数の力」で押し切られた。

 

 

 有識者からは「教育の管理・統制強化につながる」と指摘され、免許更新制に対しても実効性への不安が教育現場からなお払拭されていない。改革の具体的な効果が不透明だけに、将来に禍根を残しかねないといえる。

 

 

 学校教育法の改正では、改正教育基本法を踏まえ義務教育の目標に「規範意識」「公共の精神」「わが国と郷土を愛する態度」などの理念が新たに盛り込まれた。「歴史について正しい理解に導き」という表現もある。

 

 

 だが、国を愛する態度とは一体何なのか。何が歴史の「正しい理解」であるのか。改正教育基本法の審議から積み残されたこうした疑問にはなお答えていない。

 

 

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定のように、国の解釈を押し付けるようなことがあっては、公教育に国家や政治家個人の意思を持ち込むようなものである。

 

 

 「正しい理解」であると、誰が判断するのか。国の考える歴史観を押し付けるつもりだろうか。

 

 

 地方教育行政法の改正では、教育委員会に対する是正要求を盛り込んだ。「生徒の教育を受ける権利が侵害されていることが明らかな場合」などの要件を示しているが、侵害に当たるかどうかは国の判断一つだ。

 

 

 教員免許更新制を打ち出した教員免許法改正は、終身制の現在の教員免許を二〇〇九年四月一日から有効期間十年の更新制にする。更新前に三十時間以上の講習を条件とした。

 

 

 だが、審議の過程で与党側の参考人が「講習が国主導で画一的となれば、自主性や自律性がおかしくなる」と指摘したように、講習の設計次第で画一的な教師づくりにつながる恐れをはらんでいる。

 

 

 危うい改革との印象は免れない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070621.html#no_1

 

 

 

2007年6月21日(木) 夕刊 1面

 

軍関与削除 批判相次ぐ/自民教育再生委

 

 【東京】自民党の教育再生に関する特命委員会(委員長・中山成彬元文部科学相)が二十一日午前党本部で開かれ、二〇〇八年度から使用する高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与が削除された文部科学省の教科書検定について最終協議した。県関係議員から検定を批判する声が挙がり、中山委員長も「ことさら検定意見をつけるものでもないのではないか」との認識を示したが、委員会の見解はまとめなかった。

 

 

 中山委員長は「沖縄の国会議員から『戦場の実態を分かってほしい』という切々たる訴えがあったが、まさにその通りだと思う」と述べた。

 

 

 その上で、見解を出さない理由について「われわれの思いは文部科学省にもよく伝わったと思うし、(委員会が)検定に文句をつけられる筋合いのものでもない」と説明した。

 

 

 同委員会で、仲村正治氏は「軍にケチをつけたくないとの考えで歴史をつくり、間違いを伝えようとしている。事実は事実としてきちんと教えることが二度と日本が同じ過ちを繰り返さないことになる」と軍命による「集団自決」の記述復活を求めた。

 

 

 嘉数知賢氏は「いま教科書の表現を変えず、現実に戦争を体験した人たちが亡くなったら、強制されてやむなく自決したと言える人が誰もいなくなる」と危機感を表明。「間違った歴史教育がわが国で行われるのは理解できない」と検定結果を疑問視した。

 

 

 西銘恒三郎氏は「沖縄戦から学ぶことは非戦闘員と戦闘員を区別することだ」などと述べた。

 

 

 銭谷眞美初等中等教育局長、布村幸彦審議官ら文科省側は「軍の関与がなかったということではない」と説明したが、嘉数氏は「それならば、なぜ記述を書き換えさせる必要があるのか」と反論した。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

意見書あす可決/県議会

 

 

 県議会議会運営委員会(浦崎唯昭委員長)は二十一日午前、二十二日午前に本会議を開き、高校教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与を削除した文部科学省の教科書検定の撤回、記述の回復を求める意見書案を採決する議事日程を決めた。全会一致で可決される見込み。

 

 

 本会議終了後、県議会代表らが上京し、安倍晋三首相や伊吹文明文部科学相らに要請行動を展開する。

 

 

 意見書案は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしには起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。「今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものだ」とし、「一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた県民にとって、到底容認できない」として、検定意見の撤回、記述の回復を要請している。

 

 

 同問題に対する意見書案は、文教厚生委員会(前島明男委員長)が十九日、全会一致で可決し、「慰霊の日」前日の二十二日の本会議採決を議会運営委員会に要請していた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706211700_01.html

 

 

 

2007年6月21日(木) 夕刊 1面

 

立ち入り拒否 県が遺憾/嘉手納燃料漏れ

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出し、同基地が県の再度の立ち入り調査を拒否した問題で、県文化環境部は遺憾の意を表明するとともに、あらためて立ち入り調査と結果を公表するよう文書で申し入れたことが二十一日、分かった。同部は「県民の理解を得るためにも、客観的で科学的な調査が必要」として、十九日に申し入れ文書を送付した。二十一日まで同基地から回答はなく、県は「正式な回答や情報開示を待つ」との姿勢を強調した。

 

 

 ジェット燃料の流出を受け、県は六日に基地内を立ち入り調査した。しかし調査は目視などに限られたため、「十分な調査ができなかった」とし、県は十一日に再度の立ち入り調査を申請していた。

 

 

 同基地は「これ以上の調査は必要ない」と回答、立ち入り調査を拒否している。知念健次部長は「安全性を確認するには、土壌サンプルの分析など県の側でも具体的な調査が必要」と申し入れの趣旨を説明した。

 

 

 米軍は二十日、沖縄タイムスなどの問い合わせに、十九日から燃料で汚染された土壌の入れ替え作業に着手していることを明らかにし、「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はない」と説明している。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706211700_04.html

琉球新報 社説

琉球新報 社説

米軍調査拒否 立ちふさがる地位協定の壁

 

 米軍の対応は県民軽視も甚だしい。嘉手納基地内で起きたジェット燃料漏れ事故で、県が求めていた基地内の土壌採取調査を拒否したからだ。

 嘉手納基地内で約2万リットルの燃料が漏出、約8700リットルが回収できないという事故が5月25日に発生した後、県文化環境部環境保全課、県企業局は6月7日に基地内で現場を確認したが、土壌採取や写真撮影は許可されなかった。

 その後も土壌採取を求めていた県環境保全課に対し、米空軍第18航空団は18日「基地幹部が技術官や環境保全官、上級司令部と協議し、周辺地域への被害、長期にわたる環境への悪影響はないと判断した。地元関係者による、さらなる検査や調査は必要ない」などと、ファクスで回答した。

 米軍が「悪影響はない」といくら繰り返しても額面通り受け取る人が果たして何人いるだろうか。

 「周辺地域への被害はないと判断した」というのは米軍の一方的な見解にすぎず、客観性が欠如している。

 県や地元自治体が詳細な調査を実施した上で「問題ない」という結論が出ない限り安心できない。

 米側は回答文の中で「県内の政府機関、地元自治体関係者に現場への立ち入りを許可し浄化作業や環境保全の手順の情報を提供した」と述べているが、土壌採取による調査を認めない理由などは一切示されていない。

 しかも県に対し一方的にファクスで回答文を送りつけただけで、電話連絡なども一切なかったという。「問答無用」の姿勢が顕著だ。

 これでは県民の不信感は増すばかりである。

 ジェット燃料が時間をかけて地中に浸透し地下水を汚染する恐れはないのか。この間の豪雨で汚染が拡大してはいないか。地元には懸念の声が強い。

 パイプ破損で地下水を汚染した嘉手納基地のジェット燃料が、周辺の井戸に浸出し、くんだ水が燃えるという事態が1967年に起きている。今回の事故で、当時の「燃える井戸」を思い起こした地元住民も少なくない。

 燃料漏れ事故に対しては北谷町議会、嘉手納町議会、沖縄市議会が抗議決議を全会一致で可決し、自治体による立ち入り調査を認めるよう要求している。

 米軍が、県や地元自治体の基地内調査を拒否できるのは日米地位協定第三条(施設・区域内の合衆国の管理権)によるものだ。理不尽で不平等な地位協定を改正する以外にない。立ち入り調査は、危険な基地と隣り合わせに暮らす住民にとって当然の要求だ。

 米軍は、基地内での土壌採取などの調査を直ちに認めるべきである。「よき隣人」を目指すのなら、まず態度で示してもらいたい。

(6/20 10:00)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24769-storytopic-11.html

 

2007年6月20日(水) 夕刊 5面

沖縄市長が検定批判/「集団自決」修正

 【沖縄】東門美津子沖縄市長は二十日の市議会六月定例会本会議で、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定問題について「歴史の真実が政治や政府によってゆがめられることはあってはならない」と厳しく批判した。

 

 「集団自決」の日本軍の関与には「国内で唯一住民を巻き込んだ悲惨な地上戦を生き抜いた県民によって、語られてきた紛れもない歴史の事実だ」と述べ、「歴史の事実を直視し、二度と悲劇を起こしてはならないという反省と誓いから平和な未来は創造される」との見解を示した。

 

 また、自衛隊の情報保全隊による情報収集活動について、「現在の民主国家において、あってはならないことだ」と強調。「監視の目が市民活動、高校生の活動にまで及んでいることに驚きを禁じ得ない。戦前の治安維持法下の憲兵による国民監視をほうふつさせる」と述べた。前宮美津子氏(共産)の一般質問への答弁。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706201700_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(6月19日夕刊、20日)

2007年6月19日(火) 夕刊 1面

 

 

与野党が合意 可決へ/「集団自決」意見書

 

 

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定の撤回などを求める意見書をめぐり、県議会(仲里利信議長)の与野党会派は十九日午前、文案の最終的な調整を行い、全会一致の可決に向けて、大筋で意見が一致した。同日午後に開かれる文教厚生委員会(前島明男委員長)で可決され、二十六日の本会議で可決される見通しとなった。

 

 

 新たな意見書案は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしには起こりえなかったことは紛れもない事実」と指摘。

 

 

 その上で、「今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするもの。一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとって、到底容認できない」とし、検定意見の撤回、記述の回復を要請している。

 

 

 当初の意見書案は「集団自決」の軍命について、「県内のほとんどの資料が灰燼に帰し、今後文書的な証拠が出る可能性は極めて乏しく、事実の検証を厳しい状況」としたことに、野党側は「軍命をあいまいにし、沖縄戦の史実をゆがめる」と反発し、「日本軍による命令・強制・誘導等」を明記した独自案を提出する構えだった。

 

 

 与野党の水面下の調整で、新たな委員長案は「事実の検証が厳しい状況」などの文言を削除。野党側も命令などの明確化を要求したが、検定意見の撤回を全会一致で可決することを重視し、「日本軍による関与」の文言で大筋合意する見込み。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191700_02.html

 

 

 

 

2007年6月19日(火) 夕刊 1面

 

 

文科相、森氏答弁を疑問視/84年「検定、県民感情に配慮」

 

 

 【東京】伊吹文明文部科学相は十九日午前の閣議後会見で、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除された問題に関連し、森喜朗文相(当時)が一九八四年に国会で教科書検定について「県民感情に配慮して検討する」と答弁した趣旨を疑問視する考えを示した。九日に開かれた「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」の実行委員会が、検定撤回の要望書を文科省に提出したことには「不満は受け止めるが、私は介入するつもりはない」と述べ、撤回を働き掛ける考えがないことを強調した。

 

 

 伊吹文科相は「森さんが文部大臣をしていた二十年前から、ずいぶん資料だとか訴訟だとか公判での発言だとか、いろんなことが出てきている」と説明。森元文相の答弁を正確に把握していないと断った上で「その通りであれば、そのとき(八四年当時)問題にならなかったのか」と述べた。

 

 

 教科書を審査する教科用図書検定調査審議会に提出する「調査意見書」の決裁者が文科省の初等中等教育局長で、事務方が検定の審議に関与できる仕組みになっているとの指摘には「少なくとも大臣は決裁していない」と述べるにとどめた。

 

 

 調査意見書を作成する教科書調査官の一人が「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーと共同研究していたことには「調査官は決定権はない。参考意見を審議会に申し述べるが、参考意見の通りになっていない例はたくさんある」とした。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191700_03.html

 

 

 

 

2007年6月19日(火) 夕刊 1面

 

 

23日追悼式 首相参列へ

 

 

 塩崎恭久官房長官は十九日午前の記者会見で、安倍晋三首相が六月二十三日に糸満市で開催される県主催の「沖縄全戦没者追悼式」に参列することを発表した。

 

 

 首相就任後初めての参列となる。小泉純一郎前首相は、国会審議を理由に欠席した二○○三年を除き、毎年参列した。

 

 

高市沖縄相も

 

 

 【東京】高市早苗沖縄担当相は十九日午前の閣議後会見で、二十三日の沖縄全戦没者追悼式に出席するため来県すると発表した。国会日程との調整がつけば二十二日午後に沖縄入りし、旧海軍司令部壕や対馬丸記念館などの視察も視野に入れている。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191700_04.html

 

 

 

 

2007年6月19日(火) 夕刊 4面

 

 

県調査の許可要求/米軍燃料流出

 

 

沖縄市議会が抗議決議

 

 

 【沖縄】 米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は十九日午前の六月定例会本会議で、米軍に事故原因の究明と調査結果の速やかな公表、県による立ち入り調査を認めること、事故に関する情報伝達の徹底などを求める抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。

 

 

 議案を説明した基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は、県が申請した土壌などのサンプル採取を含む基地内立ち入り調査を、米軍が十八日付で許可しない方針を示したことについて「燃料流出のあった周辺の芝生は茶色に変色しており、地下水や周辺への環境汚染も考えられる。米軍の対応は遺憾だ」と厳しく批判。県に基地への立ち入りを認めるよう求めた。

 

 

 また抗議決議では、事故発生から四日間も燃料の垂れ流しを続ける一方、周辺自治体への連絡も一週間後だったことに対し「米軍の危機管理意識の低さに不信感を抱くとともに、強い憤りを覚える」としている。抗議のあて先は、嘉手納基地司令官、在日米軍司令官、駐日米国大使など。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191700_05.html

 

 

 

 

2007年6月20日(水) 朝刊 25・24面

 

 

史実継承を議会後押し/「集団自決」意見書可決

 

 

 県議会文教厚生委員会(前島明男委員長)が十九日、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定の撤回、記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決したことに、「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会共同代表らは「超党派で賢明な判断をした」と評価した。文厚委終了後には与野党の議員が歩み寄って握手する姿も見られた。日本軍の関与が沖縄戦の特徴の一つだと県民が認識していることを示す象徴的な場面となった。

 

 

 「沖縄はさまざまな困難な場面に直面して、考え方に幅があるのは当然。その中でここまで意見を一致させた努力に敬意を表したい」。実行委共同代表の高嶋伸欣琉大教授は県議らの対応を評価した。県議会代表団が本会議での意見書可決後に、文科省に撤回要請することに触れ、「意見書の内容実現に向け、さらに努力していただきたい。私たちも今まで以上に取り組みたい」と強調。県議会と実行委の歩調がそろったことで検定意見の撤回に決意を新たにした。

 

 

 「待ってましたという気持ちだ」。同じ実行委共同代表の大浜敏夫沖教組委員長の声も弾んだ。その上で「検定意見の撤回、記述回復という二つの目的が盛り込まれた。県議会が市町村議会の意見書可決の流れと、県民の動きを大きなうねりと受け止め、本会議で採択することは大きな意味がある」と指摘した。

 

 

 共同代表の松田寛高教組委員長も「賢明な判断」と評価した上で、県議会が「慰霊の日」の前日の二十二日に本会議で可決する予定であることに、「アピール度はさらに大きくなる。実現してもらいたい」と語った。

 

 

 この日午前、県議会の開会三分前に要請文を仲里利信議長に手渡した県女性団体連絡協議会の安里千恵子会長。「市町村の半分以上で検定意見撤回を求める意見書を可決し県議会も加わってさらに心強い。県民もみんな喜んでいる」と話した。

 

 

 十九日現在、四十一自治体のうち三十一市町村議会が意見書を採択した。実行委によると、検定意見の撤回を求める県内外からの署名は九万九千四百人分を超えた。

 

 

                    

 

 

体験語り歩み寄り 仲里議長

 

 

 検定意見の撤回を求める意見書案を全会一致で可決した文教厚生委員会(前島明男委員長)。委員会終了後、与野党の委員は互いに歩み寄り、固い握手を交わした。

 

 

 意見書案の取り扱いをめぐっては、与野党の主張がぶつかり合い、何度も暗礁に乗り上げた。しかし、この日の委員会では終始、「同じ気持ちで採決したい」「どうしても意見をまとめよう」との声が上がり、政治対立を超えた「県民の意思」が示された。

 

 

 開始から三十分たった午後二時すぎ、着地点が見えないまま議論が進む中、委員の一人で県議会議長の仲里利信氏(自民)が「これまで話したことはないが、参考になれば」と口を開き、自身の沖縄戦体験を語り始めた。

 

 

 「壕から追い出されたり、飛行機から丸見えの岩穴に一日隠れたりした。撃たれる覚悟もしたが撃たれなかった。何も食べられなかった弟は、満一歳で亡くなった。戦争とはこういうもの」と静かに訴えた。

 

 

 午後二時十五分、委員会は終了した。

 

 

 各委員の顔には笑顔が浮かび、安堵感が漂った。

 

 

 自民の伊波常洋政調会長は、共産党県委の前田政明副委員長や社大の比嘉京子書記長らと握手を交わし、談笑する場面も見られた。

 

 

検定意見に風穴を 集会で石山氏

 

 

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(山口剛史事務局長)の集会が十九日、那覇市の教育福祉会館で開かれ、教科書執筆者で歴史教育者協議会の石山久男委員長は、「集団自決」への軍関与を示す記述が削除された検定について、「明らかに一方に立脚して検定意見を出している」と主張。検定意見撤回運動の全国的な拡大と、執筆者と出版社が連携した取り組みを訴えた。

 

 

 参加者約五十人を前に講演した石山委員長は小、中、高校の教科書から沖縄戦の「集団自決」や「住民虐殺」の記述が削減されてきた経緯を紹介。「教科書会社の自主規制でも消えてしまう」と、最近の傾向を説明した。

 

 

 検定意見に対しては「慶良間諸島だけを参考に、元隊長の直接命令の有無だけで判断している」と偏りを指摘。

 

 

 「軍隊は住民を守らない、という沖縄戦の教訓を抹殺して、戦争する国造りをしている」と強調した。

 

 

 石山委員長は「昨年の従軍慰安婦問題では沖縄のように住民が一致して盛り上がらなかった。このチャンスに執筆者と出版社が連携して、状況を改善するための風穴を開けたい」と運動の盛り上がりに期待した。

 

 

 集会では、国会で文部科学省に検定意見の撤回を求めた要請行動や、大阪地裁で元軍人らが沖縄戦の記述をめぐり、岩波書店などを訴えている「集団自決訴訟」の傍聴記録も報告された。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706201300_01.html

 

 

 

 

2007年6月20日(水) 朝刊 2面

 

 

検定撤回へ意見集約/与野党歩み寄り

 

 

 県議会文教厚生委員会(前島明男委員長)が十九日午後、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定の撤回を求めた意見書を全会一致で可決、記述の回復で沖縄戦の実相を正しく伝えることを強く求めた。「軍命」の見解をめぐって一時、対立した与野党が検定撤回を求める全県的な訴えに応える形で意見を集約した。

 

 

 与野党は委員会直前まで、意見書案の「軍命」に対する表現や見解について、水面下で調整を続けた。

 

 

 前島委員長が提起した「日本軍による関与なしに起こりえなかった」とした意見書案に自民が合意。しかし、野党は「日本軍による命令・強制・誘導等なしには起こりえなかった」とし、「軍命」の明記を求めた。

 

 

 自民の議員の中には当初、「軍命があったかどうかははっきりしない」「軍命の有無をめぐり裁判で係争中で、(意見書は)司法への政治介入になる」など強硬な反対があった。三度の議員総会で協議、その間、文部科学省への事実確認や関係者からの証言聞き取りなど独自に調査し、「記述を変更する正当な理由はない」として意見書賛成の方針を決めた。

 

 

 さらに「軍命の検証は厳しい状況」とする文言を削除、軍関与を明記することで歩み寄った。自民の伊波常洋政調会長は「軍命の有無は証言が分かれている。関与は間違いない。これ以上の表現の譲歩はできない」と強調していた。

 

 

 野党側も「命令などの明記にこだわりすぎて、決裂しては意味がない」と判断。「全会一致の可決で、検定意見の撤回を県民の声として文部科学省に訴え、記述回復を優先させるべきだ」と合意した。

 

 

 県議会の意見書可決で、検定意見の撤回を求める県民ぐるみの訴えに弾みがついた。県議会は、文部科学相などへの要請行動にとどまらず、記述の回復実現に向けた県民代表としての取り組みが問われる。(政経部・与那原良彦)

 

 

教科書検定に関する意見書(全文)

 

 

 去る三月三十日、文部科学省は、2008年度から使用される高等学校教科書の検定結果を公表したが、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」との検定意見を付し、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させている。

 

 

 その理由として同省は、「日本軍の命令があったか明らかではない」ことや、「最近の研究成果で軍命はなかったという説がある」ことなどを挙げているが、沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである。

 

 

 また、去る大戦で国内唯一の地上戦を体験し、一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとって、今回の修正等は到底容認できるものではない。

 

 

 よって、本県議会は、沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに、悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにも、今回の検定意見が撤回され、同記述の回復が速やかに行われるよう強く要請する。

 

 

 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、文部科学大臣、沖縄担当相あて。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706201300_02.html

 

 

 

 

2007年6月20日(水) 朝刊 1面

 

 

自衛隊 監視対象は全国民/久間防衛相が答弁

 

 

 【東京】久間章生防衛相は十九日の参院外交防衛委員会で、自衛隊の情報保全隊による情報収集活動について「国民として皆、平等に情報収集の対象になり得る」と述べ、自衛隊が必要と判断した場合、全国民が調査対象になり得るとの認識を示した。共産党が入手した情報保全隊の内部文書で、自衛隊のイラク派遣に反対したとして「反自衛隊活動」と分類された欄に記載された増子輝彦氏(民主)、緒方靖夫(共産)への答弁。

 

 

 久間氏は「国会議員でも差別する必要はない。私が対象となっても構わない」と述べた。情報収集の指揮命令は「情報保全隊長が出すものだ」とし、自衛隊の判断とした。

 

 

 内部文書に「年金改悪反対」の国会請願を集める街頭活動が記録されていたことについて「付随的に入れてもいいのではないか。むきになって、自分たちと自衛隊の関係を調べられるのは嫌だと言うところに不自然さを感じる」と語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706201300_03.html

 

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月20日朝刊)

 

 

[流出燃料調査拒否]

 

 

なぜ「安全」と言えるのか

 

 

 またしてもと言うべきか。米空軍嘉手納基地内で約二千三百ガロン(約八・七キロリットル)ものジェット燃料が流出した問題で、空軍当局は県が求めている土壌などのサンプル調査を拒否した。

 

 

 理由は「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はないと判断した」からだという。

 

 

 どのような調査をしたから、環境への影響がないと断言するのか疑問と言うしかない。安全と言い張るのなら、それだけの調査資料を提示すべきではないのか。

 

 

 これまでにも触れたが、嘉手納基地内と周辺には地下水源があり、県企業局北谷浄水場が基地内外にある二十三の「嘉手納井戸群」から一日約二万トンの水をくみ上げている。浄化した水は嘉手納町、北谷町、沖縄市、那覇市を含む七市町村に給水されている。

 

 

 つまり、水は県民の飲み水などに使用されているのである。もちろん嘉手納基地にも同じ水が供給されているのは言うまでもない。

 

 

 その「命の水」をきちんとした調査に基づく科学的データを示さず、ただ「大丈夫だ」と言われても県民が納得できないのは当然だろう。

 

 

 裏を返せば、県民には知られてはならない「環境への悪影響」があるために調査を許可しないのではないか。さらに言えば、調査する考えは全くない。米軍当局の態度を見ると、そう考えたくなる。

 

 

 私たちが「安全」にこだわるのは、かつて基地内から漏れ出た航空機燃料がそのまま地下に染み込み屋良区などの井戸を汚染した歴史があるからだ。

 

 

 油の匂いがする井戸水を汲んで火を近づけると、真っ赤な炎を出して燃え上がったという恐怖はまだ地域の人たちの脳裏から消え去ってはいない。

 

 

 県民に迷惑を掛けておいて、いざと言うときには日米安保条約における地位協定を盾に逃げる。これが「良き隣人」のすることなのであれば何をかいわんやだ。県もそのまま引き下がってはならず、県民の健康のためにも土壌調査を実施してもらいたい。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070620.html#no_2

 

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月20日朝刊)

 

 

[「集団自決」意見書]

 

 

党派超えた対応が大切

 

 

 県議会がやっと高校歴史教科書の「集団自決(強制集団死)」の記述から旧日本軍が関与したとする文言の削除を求めた文部科学省の教科書検定意見について、撤回を求める意見書案をまとめた。

 

 

 沖縄全戦没者追悼式の前日、二十二日の本会議で採択する予定だ。

 

 

 「集団自決」に「軍命」や「軍の関与」があったことは、多くの戦争体験者の証言から明らかになっている。

 

 

 それが太平洋戦争末期の沖縄における実相であり、歴史的事実として忘れてならない沖縄戦の真実なのである。

 

 

 問題に危機感を抱き素早く反応したのは市町村だ。その多くが「「日本軍による命令、強制、誘導などなしに『集団自決』は起こり得なかった」とする意見書を採択している。

 

 

 だが、与党内部に意見の相違があったとはいえ、県議会は文科省の検定意見を撤回させることに逡巡し、きちんとした対応が取れなかった。

 

 

 少なくとも「この問題が政治的な主義主張の問題ではなく、実際に沖縄で起こった歴史的事実の問題」であることは誰の目にも明らかではないか。

 

 

 であれば、県議会が率先して動くべきであったのであり、その意味で対応の遅れには疑問を覚える。

 

 

 言うまでもないが、この問題を政治化させたのは、教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に軍命がなかったかのような記述を調査意見書で求めた文科省側にある。

 

 

 軍命や軍による誘導、強制があったのに、それをなかったかのようにあいまいな表現にするのは恥ずべき行為であり、歴史に学ぶ謙虚な姿勢とは言えまい。

 

 

 それが安倍晋三首相の思想信条と軌を一にする流れであるなら、なおさらのことだ。史実をねじ曲げる動きを諌め、真実に目を向けるよう求めていくのは私たちの責務と受け止めたい。

 

 

 沖縄戦では、避難先の壕から兵士に追い出された住民は多い。方言しか話せなかったためにスパイの嫌疑をかけられた住民もいた。

 

 

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(6月18日、19日朝刊)

2007年6月18日(月) 夕刊 1面

 

自民、意見書案合意へ/「集団自決」修正撤回

 

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定の撤回などを求める意見書への賛成方針を決めた県議会最大会派の自民党は十八日、議員総会を開き、文教厚生委員会の前島明男委員長から提示された意見書案を協議、合意する方針を決定した。

 

 一方、野党側は「集団自決」の軍命に対する意見書案の見解で、「沖縄戦の史実を自ら否定する表現になっている」と反発。野党会派は十八日午後に対応を協議し、独自の意見書案を提示する構え。文厚委員会は意見書案をめぐり、与野党の激しい議論が予想される。

 

 文厚委員会で可決された後、代表質問が始まる二十六日の本会議冒頭で可決される見通しだ。

 

 意見書案は、「集団自決」の軍命について「県内のほとんどの資料が灰じんに帰し、今後文書的な証拠が出る可能性は極めて乏しく、事実の検証は厳しい状況」と指摘。

 

 投降が許されなかった極限状態にあったとした上で、「軍しか持ち得ない手りゅう弾が配られ、多くの住民が自決に追いやられたこと多くの証言から紛れもない事実」とし、「今回の修正は到底容認できない」と検定意見の撤回、記述の回復を要請している。

 

 だが、野党側は「軍命については生き証人がいる。『検証が厳しい』とするのは、沖縄戦の史実を自ら否定している」「軍の命令なくして、起こり得なかったのは事実」と委員長案を批判した。

 

 自民の伊波常洋政調会長は「合意できるぎりぎりの線。意見書合意に向けて譲れない」と強調。前島委員長も「全会派が折り合いがつけられる内容を検討した。決裂させるわけにはいかない」と述べた。

 

     ◇     ◇     ◇     

 

本部議会決議

 

 【本部】教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が高校の歴史教科書から削除された問題で、本部町議会(小浜利秀議長)は十八日開幕した六月定例会冒頭、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。

 

 意見書では「係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文科省自らが課す検定基準を逸脱するばかりか体験者の証言や沖縄戦の実相を再び否定しようとするもの」として、文科省の検定意見を批判している。あて先は内閣総理大臣、文部科学大臣、沖縄担当大臣。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706181700_02.html

 

 

2007年6月18日(月) 夕刊 7面

 

南風原病院壕を公開/150人集い式典

 

 【南風原】平和の拠点「南風原」の第一歩へ―沖縄陸軍病院南風原壕群二十号が十八日、一般公開された。これに先立ち十七日、同町喜屋武の同壕入り口で関係者ら約百五十人が参加して記念式典が開かれた。黄金森一帯で犠牲となったみ霊に全員で黙とうをささげた後、町や元ひめゆり学徒隊ら関係者がテープカットした。

 

 奉納の踊りとして公民館サークル「ユーアンドアイ」による手話ダンス「さとうきび畑」が披露され、公開を祝した。

 

 直前に降りだした雨が、式典開始とともにたたきつけるような激しい雨となったが、元学徒隊の関係者らが「雨音が響き渡る様子は、まるで壕にいたころのようだ」と当時を思い返す式典となった。

 

 沖縄戦当時、第三外科壕で軍医をしていた陸軍病院慰霊会の長田紀春会長(86)は「壕の中で亡くなった人々の無念の思いが今でも思い浮かぶ」と語り、平和への強い思いを示した。

 

 町文化財保護委員長を務めるなど二十四年間、同壕群の整備にかかわった沖縄国際大学の吉浜忍教授(57)は「戦争体験者は、いまや県民人口の二割しかいない。年々少なくなる生存者に代わり、歴史を語る生き証人として壕は貴重な存在だ」とし、二十号壕の公開を機に、残りのすべての壕を整備し公開する決意を示した。

 

 式典の後、町が養成した「南風原平和ガイド」の案内で希望者らが壕を見学し、当時の様子を追体験した。

 

 一般公開は十八日午後一時から。見学は完全予約制。問い合わせは南風原文化センター、電話098(889)7399。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706181700_04.html

 

 

2007年6月19日(火) 朝刊 1面

 

米軍、県の調査拒否 嘉手納燃料流出

 

根拠不明 県は困惑 原因公表も不透明

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、同基地は十八日、県が申請した土壌などのサンプル採取を含む基地内立ち入り調査について「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はないと判断した」とし、許可しない方針を明らかにした。周辺地域への被害などはない、と判断した具体的根拠は不明。一方で、燃料漏れの原因に関する調査は継続中とし、終了後に「調査結果を地元関係者に提供する」としたが時期は明示せず、内容も「公表可能な」範囲内としている。

 

 水道を管理する県企業局の花城順孝局長は「今後の対応を決める上で県の立ち入り調査は重要で、認められないと困る。米軍の調査結果がいつ公表されるのかも分からず、時間がかかることも予想される」と懸念を示した。

 

 同基地は「基地幹部が技術官や環境保全官、上級司令部と協議した」とし、「今回の燃料漏れに関し、地元関係者によるさらなる検査や調査は必要ないと判断した」と結論付けている。

 

 原状回復に向けては「厳密な環境ガイドラインに基づき、燃料が漏れた場所の浄化のため、あらゆる措置が取られる」と説明。取り除いた土壌を基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング法」による浄化作業に備え、今週中にも燃料の混入した土壌の除去作業を行う、としている。

 

 県環境保全課は七日に米軍から基地内立ち入りを認められたが、土壌などのサンプル採取を拒否され、目視確認にとどまった。このため、土壌や水のサンプル採取を含む基地内調査を十一日に再申請していた。

 

 同課は「仮に周辺排水で異常を検出した際、流出燃料の影響によるのかは、実際に燃料を採取し、厳密に成分をチェックした上で比較しないと断定できない」と指摘。「土壌の入れ替えなど今後の米軍の作業の進ちょくを見て、嘉手納町などと相談しながら周辺排水の監視を継続する」としている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191300_01.html

 

 

2007年6月19日(火) 朝刊 1面

 

軍命めぐり与野党対立/「集団自決」意見書案

 

 県議会最大会派の自民党は十八日の議員総会で、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定をめぐり、文教厚生委員会の前島明男委員長から提示された検定撤回を求める意見書案について協議、合意する方針を決定した。一方、野党側は意見書案の「集団自決」の軍命に対する文言について「軍命の史実をあいまいにし、沖縄戦の実相を自ら否定する表現になっている」と反発している。

 

 護憲ネットと共産党の代表が社大・結連合、維新の会と協議し、野党案として提示する。与野党の激しい論戦が予想され、一致点が見いだせなければ意見書可決が見送られる可能性も出てきた。

 

 意見書案は「集団自決」の軍命について、「県内のほとんどの資料が灰じんに帰し、今後文書的な証拠が出る可能性は極めて乏しく、事実の検証も厳しい状況」と指摘。その上で、虜囚の辱めの教えで投降が許されなかった極限状態にあったことを挙げ、「軍しか持ち得ない手投げ弾が配られ、多くの住民が自決に追いやられたことは多くの証言から紛れもない事実」とし、「今回の修正は到底容認できない」と検定意見の撤回、記述の回復を要請している。

 

 一方、野党案は「『集団自決』は日本軍の命令・強制・誘導等なしに起こり得なかった」と明記。「紛れもない事実がゆがめられることは悲惨な地上戦で筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとって、到底容認できない」と強調し、検定意見の撤回、記述の回復を要請している。

 

 自民の伊波常洋政調会長側は「合意できるぎりぎりの線。容易には譲れない」と述べた。前島委員長も「全会派が一致できる内容を示した。決裂させるわけにはいかない」と述べた。

 

 護憲ネットの狩俣信子氏は「到底受け入れられない。訴えが弱く、文科省寄りだ」と批判。野党案を作成した前田政明氏(共産)は「軍命は多くの人々が証言している。最も重要な点をあいまいにするのは許されない」と主張した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191300_02.html

 

 

2007年6月19日(火) 朝刊 1面

 

「集団自決」削除 文科省が要求 意見書決裁は局長

 

 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除された問題で、教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に提出する「調査意見書」の決裁者は文科省の初等中等教育局長だったことが十八日、分かった。伊吹文明文科相は教科書検定について「文科省の役人も私も一言も容喙(口出し)できない仕組みで行われている」と答弁していた。一方、意見書を取りまとめた日本史・沖縄戦担当の教科書調査官(文科省職員)が、以前に「新しい歴史教科書をつくる会」の発足に携わった歴史学者と共同研究していたことも明らかになった。

 

 同日の衆院沖縄・北方特別委員会で布村幸彦審議官が、川内博史氏(民主)の質問に答えた。

 

 川内氏は「局長が決裁するということは、中身を見てまずかったら『もう一度やり直せ』と言える権限を持っている」と強調。「役人が口出しできる仕組みそのものだ」と批判した。布村審議官は「検定結果はあくまでも審議会の判断」との見解を繰り返した。

 

 調査官は、二〇〇一年に「つくる会」が主導した扶桑社版中学歴史教科書を監修・執筆した、伊藤隆東京大名誉教授と一九九九年ごろ共同研究した。文科省の内部資料によると、日本学術振興会に提出された「日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究」(代表者・伊藤教授)の九九年度収支決算報告書に、調査官が「研究分担者」として記載されていた。

 

 この研究には文科省の科学研究費補助金が拠出され、調査官は二〇〇〇年四月から現職にある。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191300_03.html

 

 

2007年6月19日(火) 朝刊 27面

 

「集団自決」次代へ継承/座間味村構想

 

 【座間味】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」で二百人を超える住民が犠牲になった座間味村は、「集団自決」が起きた防空壕などの戦跡を整備し、島の戦争体験を継承する構想を進めている。併せて平和ガイドを養成し、修学旅行生らの平和学習にも当てる計画だ。現在、平和学習用のガイド本の編集作業に取り組んでいる。村教育委員会の仲地勇教育長は「戦争はすべてを破壊するという教訓を次世代に伝えたい」と話す。(高橋拓也)

 

 沖縄戦当時、座間味村には日本軍の海上挺進隊(海上特攻隊)が駐屯。米軍の空襲や艦砲射撃にさらされ、一九四五年三月二十六日に米軍が上陸すると、住民が追われた防空壕などで「集団自決」が起きた。

 

 村内の座間味、阿嘉、慶留間島などには、住民が避難した場所や海上特攻隊の陣地跡が残っているが、草木に覆われたり傾斜地にあって容易に近づけない所が多い。

 

 平和学習のガイド本の編集作業は二〇〇六年十二月に開始。各地区ごとに委員を委嘱し、沖縄戦の村民の足取りを現地調査や体験者の聞き取りで明らかにする。同時に、住民の避難経路や壕などの位置を地図にまとめる考えだ。

 

 平和学習の際、この地図とガイド本を活用しながら、地図に示された避難壕への通路や表示板を設けたり、内部をのぞけるように整備。「集団自決」の犠牲者らを祭る「平和之塔」なども整備し直したい計画としている。

 

 阿嘉島出身で日本軍が駐屯した当時五歳だった仲地教育長は「軍隊が島の人を守らず、軍隊に食糧を取り上げられたり、殺された人がいるのも確かだ」と話す。教科書検定で「集団自決」への日本軍関与の記述が削除されるような現状に、沖縄戦の教訓が風化してしまう危機感がある、という。

 

 村には年間八万人の観光客が訪れ、修学旅行生も多いため、養成した平和ガイドに案内してもらう。ガイド対象者など構想段階だが「冊子が完成すれば、すぐにでも着手したい」

 

 構想について、仲村三雄村長は「歴史事実を風化させてはいけない。平和ガイドを養成することで、座間味の歴史を次世代にきちんと語り継いでいきたい」と語った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191300_04.html

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月19日朝刊)

 

[ヘリパッド]

 

オスプレイ配備も視野に

 

 米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、東村の伊集盛久村長が選挙公約を翻し、移設容認の意向を示した。

 

 金武町の米軍ギンバル訓練場の全面返還に伴う儀武剛町長のブルービーチへのヘリパッド受け入れに続く移設容認である。

 

 いずれも、一九九六年十二月の日米特別行動委員会(SACO)で返還合意されたが、北部訓練場の場合は既存のヘリパッド六つを移すことが条件となった。ここでも同じ自治体内への「タライ回し」が基地の整理・縮小の大きな足かせとなっている。

 

 新たな六つのヘリパッドは、人口百五十人余の東村高江区を取り囲むように造られようとしている。一番近い住宅までの距離は約四百メートルだ。

 

 周辺には福地ダムや新川ダムなど県民の「水がめ」があり、ヘリの騒音や事故の危険性のほかに、訓練などに伴う飲料水汚染も懸念されている。

 

 福地ダムでは今年一月、米軍のペイント弾が相次いで発見され、照明弾や手りゅう弾まで見つかったのは記憶に新しい。

 

 そもそも、政府が水がめを米軍演習場として提供していること自体、県民にとっては許しがたい屈辱である。ヘリパッド問題は、その意味で決して地域だけの問題ではないはずだ。

 

 村議会で、移設受け入れを表明した伊集村長は「住宅、学校上空や早朝、夜間飛行はさせない。その都度、那覇防衛施設局に要請する」と、生活環境への配慮を示したが、当然である。

 

 しかし、訓練優先の現場の米兵がそれを守れるのか、大いに疑問と言わざるを得ない。

 

 十七日、「やんばるへのヘリパッド建設やめよう!集会」で、あらためて移設阻止を確認した住民自身がそのことを身に染みて知っているといえよう。

 

 やんばるの森は、国立公園や世界自然遺産の候補地であり「自然度」が極めて高い。特別天然記念物のヤンバルクイナやノグチゲラなど希少生物を守るためにも、ヘリパッド建設の在り方が問われてきた。

 

 移設後は、海兵隊や特殊部隊のサバイバル訓練などの増加も懸念され、貴重な自然環境を破壊し、その価値をますます失わせるだけである。

 

 米軍普天間飛行場のCH46、CH53輸送ヘリは、近い将来、垂直離着陸の機能を備えたMV22オスプレイに更新される計画だ。

 

 北部訓練場とブルービーチのヘリパッドは、米軍がいずれ「オスプレイ・パッド」として使う予定であることも視野に入れる必要がある。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070619.html#no_1

 

 

琉球新報 社説

 

ヘリパッド建設 地域を分断する国施策

 

 国の施策が首長、住民に苦渋の決断を強いて、地域住民を分断、混乱させている。米軍のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐる金武町東村での動きだ。

 いずれも10年前の日米特別行動委員会(SACO)の合意に基づくもので、基地の返還条件に、ヘリパッド移設が盛り込まれた。狭い沖縄での基地のたらい回し、県内移設の難しさを見せつけている。

 17日には東村で、「やんばるへのヘリパッド建設7月着工やめよう集会」(同村民有志主催)が開かれた。移設による騒音被害、墜落の危険性、自然環境の破壊などを指摘し、「安心・安全で、静かなやんばるの暮らしを要求する反対決議」を行った。

 米軍北部訓練場の一部返還に伴いヘリパッドの移設計画が進められてきた。移設予定地の東村高江区では、生活環境の悪化が懸念される―などと反対を表明してきた。

 この4月の村長選挙で無投票当選した伊集盛久村長は当選当初は「移設予定地は民間地にあまりにも近く危険。変更の可能性は低いかもしれないが、住民の意思の先頭に立つことが村長の務め」と述べていた。が、5月17日になって「これまでの手続きの経緯を踏まえると移設場所の変更は難しい」とした上で、自然・生活環境の保全、住宅や学校上空の飛行回避を求めるとの方針になった。

 伊集村長の「移住場所の変更は難しい」との苦渋の決断の背景には、何があったのだろうか。政府の圧力はどうだったのだろうか。

 金武町のヘリパッド建設は、米軍ギンバル訓練場の返還条件として、ブルービーチ訓練場への移設が条件付けられたものだ。

 移設場所に近い並里区が反対する中、儀武剛町長が町議会で受け入れを表明。議会も「跡地利用計画の推進を促す宣言決議」を賛成多数で可決した。

 町では、ギンバル訓練場の跡地にがんの早期発見を可能にする先端医療機器などを備えた医療施設を計画。跡地に隣接する場所には「ネイチャーみらい館」(仮称)を島田懇談会事業として取り組んでいる。

 島袋純琉大教授は「振興策と基地のあからさまのリンクを地元自ら受け入れた」と問題視する。

 政府は、在日米軍再編の協力度合いに応じて関係する地方自治体に再編交付金を支給することを柱にした米軍再編推進法を成立させるなど、「アメとムチ」の政策がより露骨になってきている。

 どの地方自治体も財政状況は厳しい。その足元を見透かして交付金をちらつかせる手法は、地元自治体を混乱させ、住民を賛否両論で分断するようなやり方、といえよう。根本的な解決にはつながりそうもない。

 

(6/19 9:45)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24730-storytopic-11.html

 

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(6月16日、17日)

2007年6月16日(土) 朝刊 1面

 

県政与野党 文科省批判/「集団自決」削除指示

 

「検定制度ゆがめる」

 

 来年度から使用される高校の教科書検定で文部科学省が、教科書を審査する「教科図書検定調査審議会」に、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述について、日本軍関与の削除を求める意見書を提出していたことが明らかになった十五日、県内では反発や危惧の声が広がった。県内各政党は「文科省が『集団自決』の歴史を変え、審議会の中立性を損ない、検定制度の在り方をゆがめる」と批判、検定意見の撤回を求めた。

 

 十三日に文科省の審議官と面談した自民党県連の伊波常洋政調会長は「事実であれば遺憾。審議官は文科省の関与を否定していた。結論ありきでは、検定そのものの在り方が問われる」と厳しく指摘した。

 

 社民党県連の照屋寛徳委員長は「沖縄戦の実相を歪曲し、犠牲者を冒涜している」と批判。「文科相の責任で検定を撤回すべきだ。撤回がなければ首相は、慰霊の日に来県する資格はない」と訴えた。

 

 公明党県本の糸洲朝則代表は「政府の介入があってはいけない。審議会の中立性を損なう」とし、「省や審議会は沖縄戦の実態を調査し、生の声を真摯に聞くべきだ」と述べた。

 

 社大党の喜納昌春委員長は「自公政権ぐるみで、沖縄戦の歴史を改ざんする行為は明らか」と反発。「今回の問題を機に、先の大戦の歴史や日本軍の行為を問い直す国民論議が必要」とした。

 

 共産党県委の赤嶺政賢委員長は「文科省主導で日本軍の関与削除を行った事実が明白となった。検定を撤回すべきだ」と憤った。その上で「戦前回帰を狙う安倍政権の本質を露呈した」と述べた。

 

 政党「そうぞう」の下地幹郎代表は「沖縄戦に対する認識を変更させようとする重大な問題だ」と強調。「意見書通りでは審議会は同省の下請け機関になる。撤回すべきだ」とした。

 

 民主党県連の喜納昌吉代表は「歴史の歪曲は断じて許せない」と反発、検定の撤回を訴えた。「文科省と安倍政権が一体となった改ざんで、沖縄に対する巧妙な政治的暴力だ」と述べた。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_01.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 27面

 

「自決」せず生きた祖父へ/戦没者追悼式 思い込め「平和の

 

詩」朗読

 

「『集団自決』せず、生きてくれた祖父の心を伝えたい」。二十三日の沖縄全戦没者追悼式で朗読する「平和の詩」に、沖縄尚学高校附属中学校二年の匹田崇一朗君(13)=浦添市=の「写真の中の少年」が選ばれた。沖縄戦で座間味島に上陸した米軍が撮影した写真、そこに写った祖父のまなざしから、平和のイメージを膨らませた。

 

 祖父の松本忠芳さん=二〇〇五年死去=は母の八重さんらと避難していたガマから、米兵の呼び掛けに応じて出た直後にこの写真を撮られた。

 

 「お母さんと死ぬならいいと思って出た」。写真集を見た匹田君に、松本さんは震える声で語ったという。恐怖にうずくまる姿、直接聞いた体験談が、おじいちゃん子だった匹田君が詩を書くきっかけになった。

 

 「自分が生きているのは、祖父母が頑張って生き抜いた印。戦争は恐ろしいが、命の大切さを気付かせるものでもある。自殺や殺人が多いが、簡単に命を落としてはいけないと思う」。時折涙ぐみながら語った。

 

 追悼式では、知事の平和宣言に続いて詩を読み上げる。「無理。気を失うと思う」と笑う匹田君。母の尚美さん(44)は「同じ世代の子どもたちに、命を思う気持ちが伝われば」と期待を寄せた。

 

入選作品決定

 

 県平和記念資料館は十五日、慰霊の日に合わせて募集した「児童・生徒の平和メッセージ」審査結果を発表した。百六十校、三千八百八十三点の応募の中から、各部門の入選作品が決まった。作品は県平和記念資料館(二十三日七月十日)を皮切りに、県内四会場で展示される。

 

 各部門の最優秀賞は次の通り。(敬称略)

 

 【図画】山下あかね(さつき小六年)仲間清香(高嶺中三年)金城愛香(普天間高三年)【作文】嘉納佳子(読谷小六年)與儀かれん(那覇中一年)【詩】嘉納英佑(読谷小三年)匹田崇一朗(沖縄尚学高附属中二年)仲地愛(球陽高一年)

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_02.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 26面

 

「海鳴りの像」に1438人の刻銘板/戦時遭難船舶遺族会

 

 太平洋戦争中に遭難した船舶犠牲者の碑「海鳴りの像」の台座の上に、十五日現在判明した犠牲者千四百三十八人の名前が刻銘されることになった。慰霊の日の二十三日に除幕式を行う。戦時遭難船舶遺族会は、遺族からの申し出があれば、刻銘を常時追加する。

 

 刻銘板には、赤城丸、開城丸、台中丸、嘉義丸、湖南丸の犠牲者の名前が刻まれる。

 

 喜屋武隆徳さん(82)は、「嘉義丸」の沈没で父と弟の家族四人を失った。大阪に弟の遺骨を受け取りに出た家族を約一カ月、那覇港で待ち続けたが、四人は帰らぬ人となった。生き残った人から家族の死を聞いたが、なかなか実感がわかなかったという。碑の建立から二十年目の今年、刻銘の実現に「やっと家族に日の目が当たり、うれしい」と喜びをかみしめた。

 

 湖南丸で叔父を亡くした大城敬人会長代行(66)は「亡くなった遺族も多く、刻銘の確認しようがない人もいた。追加があれば申し入れてほしい」と話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_03.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 2面

 

土壌入れ替え入札へ/米軍燃料漏れ

 

施設庁長官 立ち入り再要請

 

 【東京】北原巖男防衛施設庁長官は十五日の定例会見で、米軍嘉手納基地で大量の航空機燃料が流出したことを受け、米軍が来週、汚染土壌の入れ替え工事に関する入札を予定していることを明らかにした。一方、儀武剛金武町長が米軍ギンバル訓練場の返還条件となっているブルービーチ訓練場へのヘリパッド移設受け入れを表明したことに「心から感謝申し上げる」と述べた。

 

 県が現場の土壌や水のサンプル採取を含む基地内での立ち入り調査を再要請していることについては、「十三日に同基地第一八航空団司令官に県の申請に配慮するよう文書で要請した」と明かした上で「引き続き働き掛けを進めてまいりたい」と述べた。

 

 現段階で「基地の外の排水溝に油が漏れているのは確認していない」と説明した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_05.html

 

 

2007年6月16日(土) 朝刊 2面

 

与那国町長が反対表明/米艦船寄港

 

 【八重山】在日米海軍は十五日までに、米海軍掃海艦二隻の与那国寄港について、「ガーディアン」と「パトリオット」が祖納、久部良の両港を二十四日から二十六日まで使用すると、石垣海上保安部を通し県八重山支庁に通知した。一方、外間守吉与那国町長は「米海軍掃海艇の寄港に反対する」との文書をケビン・メア在沖米国総領事に送付、正式に寄港反対の意思を示した。県八重山支庁も使用の自粛を求める文書をあらためて石垣海上保安部に送った。

 

 外間町長は、米側が求めている公式行事や交流行事に協力することはないとしている。理由として、(1)住民感情への配慮(2)三市町(石垣市竹富町与那国町)との整合性の保持(3)CIQ(出入国管理)が常駐していない中で米海軍掃海艇が寄港することへの懸念など四点を挙げている。

 

 メア総領事は七日付で与那国町に対し、寄港した際の公式行事として「掃海艇内での昼食会」「町主催の歓迎会」、交流行事として「ビーチ清掃」「ホームステイ」「米軍と地元住民とのハーリー競漕」などを提案、協力を求めた。乗組員の活動として、島での観光、ダイビング、サイクリングなども考えているという。

 

 掃海艦の使用は「ガーディアン」が二十四日午後一時から二十六日午前七時半、「パトリオット」が二十四日午後二時から二十六日午前七時としている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706161300_06.html

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月16日朝刊)

 

[文科省意見書]

 

「削除」の根拠が薄弱だ

 

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる記述の中から日本軍の関与を示す記述が教科書検定で削除された問題で、文部科学省が教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に提出した意見書で削除を求めていたことが明らかになった。

 

 出版社五社七冊の日本史教科書に対する指摘の中で、「日本軍に『集団自決』を強いられたり」などの記述に対し「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現」と指摘するなど、検定意見と同様の記述になっており、文科省が主導した形跡もうかがえる。

 

 伊吹文明文部科学相は「意見書はあくまで第三者である審議会委員の判断の資料」と強調し影響力を否定したが、とても額面通りには受け取れない。

 

 自民党県議の代表と面談した布村幸彦審議官によると、審議会では「渡嘉敷、座間味の両島で部隊長の直接の命令があったかどうかは断定できない」との意見で一致した。「『集団自決』のすべてに軍命があったとは言い切れないという判断から、軍命を削除する検定意見に至った」としている。

 

 しかし、生き残った住民の証言から日本軍の命令・強制・誘導などがあったことは明白だ。軍の関与を認めつつ記述を削除するやり方はおかしい。

 

 渡嘉敷島などで直接の軍命があったかどうかを疑い、揺さぶることにより沖縄戦で起きた「集団自決」への軍の関与をすべて否定しようとしている。

 

 住民は自分の判断だけで死を選んだというのか。軍関与の削除は「集団自決」に関する日本軍の責任を免除し、住民の死を殉国美談に変えてしまう。

 

 数々の住民証言や沖縄戦研究によって積み上げられてきた「沖縄戦」像を根本から覆すものであり、その政治的な意味を軽視することはできない。

 

 沖縄戦では住民を巻き込んだ地上戦が展開された。沖縄戦を考える場合、「集団自決(強制集団死)」はまさに核心的な問題なのである。

 

 安倍政権登場後、靖国神社参拝や従軍慰安婦、東京裁判など、歴史認識の在り方が問われるようになった。こうした政治的文脈の中に今回の問題を位置づけてみていく必要がある。

 

 検定意見が大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟を取り上げ、ことさら原告側の日本軍元戦隊長の証言や最近の学説状況の変化を根拠として挙げるのは一方的であり、とても中立・公正とはいえない。文科省や審議会側と原告らとの人的つながりも垣間見える。

 

 沖縄の歴史を振り返ると、安易な沖縄戦の書き換えを許すわけにはいかない。文科省はどのような根拠で削除を求めたのか明らかにすべきだ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070616.html#no_1

 

 

琉球新報 社説

 

米掃海艇寄港 押し付けの友好・親善は迷惑

 

 在日米海軍が掃海艇2隻を与那国島に寄港させると通知していた問題で、外間守吉与那国町長は11日、寄港反対を表明した文書をケビン・メア在沖米国総領事に送った。住民感情への配慮、住民の安心・安全の確保などを反対理由に挙げているが、外間町長の判断は極めて妥当だと考える。6月は慰霊の日もあり、県民にとって厳粛な月。よりによって、この月に寄港というのも無神経にすぎないか。

 米海軍はどうしても八重山諸島に「拠点」を確保したいのか、石垣市に拒否された後、与那国に寄港を申し入れていた。それによると、慰霊の日の翌24日から3日間、長崎県佐世保基地所属の掃海艇2隻を寄港させるという。目的は「親善・友好訪問および乗組員の休養」だという。

 米軍は総領事を通じて町に対し「町長宅での歓迎パーティー」「米軍兵士とのバーベキュー大会への小中学生の参加」「艦長の記者会見」|などを要請している。押し掛ける方が、歓迎パーティーを求める神経にはあきれてしまう。「友好・親善」の押し付け、と言われても仕方がない。

 米艦船の民間港への寄港は県内だけでなく全国的に増えている。外務省によると2006年には28回にもなる。ソ連崩壊(1991年)以降、最も多い。背景には05年の在日米軍再編に関する合意で、日米軍事協力を向上させようと「港湾・空港の使用」を明記していることがある。その後、寄港回数が増加している。また、寄港の際、米軍は港の形状、水深などを詳しく調査、データを蓄積している。まさに「有事」に備えての事前調査を全国的に進めていることになる。

 これで、八重山諸島に米海軍がこだわる理由も見えてくる。やはり、台湾海峡への備えであり、軍港化を目指すものとみるのが自然だろう。とはいえ、与那国町長が反対し、県が自粛要請しても、日米地位協定第5条で寄港が認められている。政府は米側の要請を機械的に伝えるだけでなく、与那国町や県の意をくみ、寄港の自粛要請はできないのだろうか。

 

(6/16 10:02)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24665-storytopic-11.html

 

 

2007年6月17日(日) 朝刊 27面

 

教育3法案・教科書検定/370人集いシンポ

 

 「6・16教育の危機を考えるシンポジウム」が十六日、うるま市民芸術劇場で開かれた。琉球大学の佐久間正夫教授が「全国一斉学力テストと格差社会」、小説家の目取真俊さんが「高校教科書・沖縄戦歪曲の狙い」と題して発表。教員免許更新制などを盛り込んだ教育三法案改正への反対と、教科書検定で高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとの記述が削除されたことについて、検定意見の撤回を求める決議も採択された。

 

 シンポは、退職教員らでつくる実行委員会(呼び掛け人代表・佐久川政一沖大名誉教授ら)が主催。教員ら約三百七十人が集まった。

 

 目取真さんは、教科書検定で日本軍の関与が削除された背景には、「有事の際の国民の動員体制を確立するため、軍への否定感や疑問を抱かせる沖縄戦の記憶を暗殺したい政府の狙いがある」と指摘。「『軍命』がないことになってしまう前に危機感を持って、全国にこの問題を発しなければならない」と訴えた。

 

 佐久間教授は、全国学力テストや就学援助の需給率、教育三法案などの課題を新聞記事を基に解説。「教育三法が成立してしまうと、教師たちは三法と全国学力テストの体制の下で、成果主義に駆り立てられるだけでなく、人事管理の厳格化などで身分を不安定にさせられる危険性が出てくる」と警鐘を鳴らした。

 

 教職員代表として、中学校教諭の米須朝栄さんも登壇。「学校の方針に抵抗すれば『不適格教員』と言われるなど、多忙と管理強化で精神的に追い詰められている教員が多い」実情を吐露した。

 

軍関与削除 撤回を訴え/県子ども会育成連

 

 教科書検定問題で、県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)は十六日、那覇市内のパレットくもじ前で撤回を求めるチラシを配布した。「史実から目をそらしてはいけない」と急きょ活動を決定した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706171300_03.html

 

 

2007年6月17日(日) 朝刊 26面

 

壕公開プレイベント/沖縄戦・「松代」テーマに劇

 

 【南風原】沖縄戦と長野県松代市の松代大本営をテーマに、語りと三線で演出する朗読劇「ふたつの壕」(原題「肝苦りさぁ沖縄」)が十六日、南風原町兼城の南風原文化センターで開かれた。

 

 同劇は「沖縄陸軍病院南風原壕群」が十八日に一般公開を迎えることを記念し沖縄で初めて開催された。京都、大阪などで公演活動を展開する演劇集団「まぶいの会・京都」(佐々木しゅう代表)が制作、出演した。

 

 六人の語り手は、沖縄戦体験や松代大本営に関する本から一節ずつ朗読で紹介。渡嘉敷島で起こった「集団自決(強制集団死)」で、手榴弾や小刀などで家族同士が殺し合う場面を朗読すると観客らは目頭を押さえながら聞き入っていた。

 

 出演者の中田達幸さん(37)は「観客の熱気が舞台まで伝わってきた。京都の私たちが演じる舞台が沖縄の人々に受け入れられるか心配だったが、しっかりと気持ちが伝わったようだ」と喜んだ。

 

 観客で琉球大学大学院二年の赤嶺玲子さん(24)は「本を読むのと、感情を込めて語る朗読ではまったく違う感動があった」と話した。

 

 会場には立ち見客も含め百五十人が来場。感情を込めた語り手の言葉の世界に引き込まれた。「ふたつの壕」は十七日午後三時から沖縄市安慶田の「くすぬち平和文化館」でも開催される。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706171300_04.html

 

 

2007年6月17日(日) 朝刊 26面

 

ヘリパッド阻止へ決意/きょう反対集会

 

【東】「子どもたちに基地の負担を負わせたくない」。米軍北部訓練場の一部返還に伴い、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)が東村高江区周辺に移設される計画が進む中、十七日午後二時半から「やんばるへのヘリパッド建設やめよう!集会」(主催・東村民有志)が同村平良の村営グラウンドで開かれる。主催者として集会の準備を進める区民の安次嶺現達さん(48)は「北部にはダムがたくさんあり、県民の水がめを守るためにも一緒に考えてほしい」と話し、村内外から多くの参加を呼び掛けている。

 

 安次嶺さんは、妻の雪音さん(36)と同区で喫茶店を営みながら、五人の子どもを育てている。

 

 一九九九年に村が受け入れを表明したヘリパッド移設計画は、昨年二月ごろ着工に向けた動きが再び表面化。

 

 新聞で具体的な計画案を知った安次嶺さんのそれまでの穏やかな生活は一変した。移設に反対し豊かな自然環境を守ろうと、仕事の合間にビラを配ったり、区民で勉強会を開いたりしている。

 

 移設後は騒音問題だけでなく、着陸帯に伴うサバイバル訓練の増加も懸念される。「今もこの森で、食糧なしに一週間過ごすサバイバル訓練が行われている。森で食べる物が取れなかった米兵が、民間地に下りてきて、区民に食糧を要求したこともある。過酷な環境で、精神的に極限に達している兵士もいるかもしれない」

 

 区内には、「国のやることを本当に止められるのか」という意見もある。安次嶺さんは「僕自身もそうだし、みんな目の前の生活で精いっぱい。でも住民が地道に訴えていけば、国の方針はきっと変わる」と信じている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706171300_05.html

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月17日朝刊)

 

[安倍首相の発言]

 

追悼式で真意を聞きたい

 

 「沖縄戦は大変な悲惨な戦いだった。地域の住民を巻き込んだ激戦があった中、そういう気持ちになることについてよく理解できる」

 

 教科書検定で高校日本史の教科書から「集団自決(強制集団死)」に旧日本軍が関与したとされる文言が削除されたことについて安倍晋三首相はこう答えている。

 

 それにしても「そういう気持ちになる」とは、一体何を指すのだろうか。

 

 「自分たちで自決したとは考えたくなくて、軍命があったと思い込もうとしている」とでも言いたいのだろうか。この表現からは、どうしてもそういう空気が伝わってくる。

 

 もし、言葉の背後に「戦争中のことであり、戦後生まれの自分には関係ない」という気持ちが隠されているとしたら、一国の首相としてその歴史認識を疑わざるを得ない。

 

 検定問題が発覚した三月には「教科書検定の個々のケースについては知らないが、検定制度にのっとって適切に行われていると思う」と述べていた。

 

 だが、ここにきて文科省が教科用図書検定調査審議会に、沖縄戦の「集団自決」から旧日本軍の関与を示す記述の削除を求める意見書を提出していたことが明らかになっている。

 

 これは検定制度が適切に行われていなかったことの証しであり、そのことをどう受け止めるか国民の前にきちんと示す責任があるのではないか。

 

 さらに言えば、先の大戦で最後の激戦地になった沖縄の実態をどの程度認識しているのかも県民が知りたいことの一つといっていい。

 

 沖縄全域が軍部の下に組み込まれ、軍隊と「共死共生」の異常な状況に置かれたことしかり。そのことが持つ意味を理解しているのかどうか。これは「戦後生まれだから分からない」で済まされる問題ではあるまい。

 

 歴史認識について首相はよく「歴史家に任せればいい」と言う。だが、一国を担う総理大臣にはその任に伴う歴史認識と哲学が必要だろう。

 

 国民には「一人一人が頂く宰相」の思想的スタンスを知る権利があり、首相にはそれを明らかにする義務があると思うがどうか。

 

 首相が進める「美しい国」づくりのための教育再生の根幹にあるのは何なのか。首相が言う「愛国心」とは何を指すのか。沖縄戦の惨劇から県民がつかみ取った「命どぅ宝」という理念との整合性はあるのかどうか。

 

 二十三日には沖縄全戦没者追悼式が糸満市である。首相にはぜひ出席していただき、沖縄戦の知識、「集団自決」への認識を県民に示してもらいたい。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070617.html#no_1