月別アーカイブ: 2007年6月

沖縄タイムス 関連記事・社説(6月8日夕刊、9日)

2007年6月8日(金) 夕刊

 

「軍命あったと思う」/「集団自決」知事が初言及

 

 仲井真弘多知事は八日午前の定例記者会見で、文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に日本軍が関与したとする記述が高校の歴史教科書から削除された問題について、「当時の社会状況から考えると、広い意味での軍命というか、そういうものはあったのではないかというのが個人の率直な気持ち」と述べた。

 

 仲井真知事が、「軍命」の有無に具体的に言及するのは初めて。これまでは、日本軍関与の文言を削除・修正する検定内容に対しては「遺憾」との認識を表明する一方、「軍命」の有無については「専門家の検証が必要だろう」と述べ、コメントを避けてきた。

 

 また、同検定の見直しを求める意見書採択が市町村議会で相次いでいることについては「それぞれの考えでなされているというのは、重く受け止めるべきではないかと考える」と述べた。

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した上、米軍の通報が遅れたことについて、仲井真知事は「対応の鈍さは極めて遺憾」と強い口調で批判した。

 

 七日に県が基地内に立ち入った際、米軍が土壌などのサンプル採取を許可しなかったことについても「言語道断。民間事業者だったら少なくともしばらく、活動停止に値する」と述べ、今後も調査を求める考えを示した。

 

 米海軍の掃海艦が与那国島への寄港を通知していることについて「米軍の艦船はホワイトビーチや那覇軍港など専用の港が決まっており、本来そこを使用すべきだ。民間の目的に応じて造られている港は使用すべきではなく、今回も自粛すべきだ」と主張した。

 

 日米地位協定で管理者の県も寄港拒否できない実情に一定の理解を示した上で、「緊急事態など互いに、やむを得ないという理解が成立するラインというのはある。米軍の都合のいい時にいいように利用するのはいかがなものか」と不快感を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_01.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 1面

 

北谷議会、抗議決議へ/米軍燃料漏れ

 

 【北谷】米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は八日午前、基地対策委員会(照屋正治委員長)を開き、十二日の六月定例会本会議で流出の原因究明と再発防止、地元の立ち入り調査などを求める抗議決議・意見書を提案することを決めた。

 

 委員らは「想像がつかないほどの大量な流出だ。基地内からは住民の使用する地下水が採取されている」など事態の重大性を指摘。七日の県による立ち入り調査が目視にとどまったことに関して「土壌を採取しないと環境汚染は把握できない」など米軍の対応を批判する声が上がった。

 

 照屋委員長は「流出はタンクのシステム上の異常と、気付くのに遅れた人的ミスが重なり起きた。あらゆる面で米軍の安全管理がずさんだったということ。米軍はしっかりとした地元の調査を認めるべきだ」と述べた。

 

 同基地司令官あての抗議文は直接基地を訪れて渡す予定で、抗議行動後の現場立ち入りも求める。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_02.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 1面

 

「象のオリ」消えた/全アンテナ撤去

 

 【読谷】二〇〇六年十二月に全面返還され、地主に引き渡すため撤去作業が進む読谷村の米軍楚辺通信所(約五三・四ヘクタール)のアンテナが八日までに、全て撤去された。同通信所は高さ約四十メートルのアンテナ三十本が直径約二百メートルの円を描くように配置され、その姿から「象のオリ」と呼ばれていた。

 

 地主の一人、知花昌一村議は「象のオリは反基地闘争の象徴だった。五十年以上この場所にあり、風景の一部になっていたこともあり、少しの寂しさもある。跡地利用計画は定まっていないが、今後は平和の象徴となるような場所にしたい」と話した。

 

 同通信所は一九九六年に日米特別行動委員会(SACO)で返還合意された。那覇防衛施設局によると、六月の工期終了までに更地にし、地主に引き渡される。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_04.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 7面

 

戦場の幼い命 悲惨さ伝える/平和祈念資料館で企画展

 

 【糸満】二十三日の慰霊の日を前に、子どもたちが戦争と平和について考える機会にしようと、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館で八日、企画展「子どもたちと沖縄戦」が始まった。七月十七日まで。

 

 沖縄戦で米兵が撮影した写真の中から、子どもをメーンに据えた約三十点をパネル展示。地上戦で傷つき息絶えた少年少女の写真など、幼い命を巻き込んだ戦争の悲惨さを伝えている。

 

 また、沖縄戦を題材にした絵本「つるちゃん」(泡瀬小学校教諭、金城明美さん作)を十七枚のパネルで紹介している。

 

 八日午前には、平和学習などのため沖縄本島を訪れた、渡名喜村立渡名喜小学校の児童十八人が見学。

 

 六年の比嘉輝君(12)は「戦争と関係のない、普通の人たちが犠牲になったなんてかわいそう」と話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_08.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 1・29面

 

自民、結論先送り/「集団自決」意見書

 

 県議会最大会派の自民党は八日、那覇市内で議員総会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書への対応を協議したが、賛否の意見が分かれたため、結論は先送りした。

 

 執行部は全員の同意を得るため、文科省の検定意見の経過や真意を確認する必要があると判断。執行部代表が十三日にも上京し、関係機関で事実確認する。新垣哲司幹事長は「意見の真意などを確認した上、議員総会で協議し、速やかに結論を出したい」と述べた。

 

 総会では、多くの県議が「『集団自決』は事実。修正すべきではない」「採択を見送れば、県民の反発を招く」など賛成する意向を示した。一方で、「軍命の有無に対する事実関係が確かではない」「裁判で争われている。意見書は司法への政治介入になる」など反対意見も根強く、まとまらなかった。

 

 同問題への意見書で、自民内部は賛否の意見が割れ、定例会冒頭の採択に賛成できない方針を固めていた。だが、相次ぐ市町村議会での意見書採択や県民からの反響が大きく、事態を重視した執行部は七日、役員会で「軍の何らかの関与があったのは事実」という認識で一致させ、賛成の方向で調整に入ることを決めた。

 

                    

 

 文部科学省の検定で高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除・修正された問題に抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」(主催・同実行委員会)が九日午後二時から、那覇市の県庁前県民広場で開かれる。

 

 大会決議として、検定意見に抗議し「『集団自決』に関する検定意見を直ちに撤回すること」を求め、文部科学大臣、内閣総理大臣、県知事、県議会議長あてに送る。

 

 実行委には県内の六十三団体が参加。歴史教科書執筆者らでつくる「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し、沖縄の真実を広める首都圏の会」のメンバーも全国から集う。主催者側は五千人の参加を見込んでいる。

 

 一方、五万人を目標に実行委が呼び掛けている署名は八日現在、二万九千三百九十五人となった。大会当日、会場でも署名を受け付ける。

 

 雨天の場合、会場は宜野湾市民会館大ホールに変更されるが、少雨だと県民広場で開催される。

 

 会場の決定は同実行委員会が九日正午までに決定する。問い合わせは実行委事務局、電話098(887)1661。

 

 実行委によると、RBCiラジオで午後零時十分、二十分、三十分の三回、番組中に会場のお知らせを行う。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_04.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 28面

 

ひめゆり説明員 県外から初

 

【糸満】「ひめゆり学徒隊」の生存者が、自らの沖縄戦体験を語る糸満市の「ひめゆり平和祈念資料館」に八日までに、学徒隊に代わり沖縄戦を語り継ぐ「説明員」に、三重県出身の尾鍋拓美さん(26)が就任した。(仲本利之)

 

 二〇〇五年から説明員を務める仲田晃子さん(30)に続き二人目、県外出身者としては初めて。今後、学徒隊の「証言員」との語らいや資料研究などを通じて「ひめゆり」の知識を深め、半年後に展示室に立つことを目指す。

 

 本村つる館長(81)は「私たちのすべてを継承するつもりで平和の後継者になってほしい」と期待する。

 

 尾鍋さんは一九八一年生まれ。地元三重の高校を卒業後、京都文教大学で文化人類学、琉球大学大学院で社会科教育を専攻し、昨年三月に同大学院を修了した。

 

 「ひめゆり」にかかわわるきっかけは、京都文教大二年のフィールドワーク。「沖縄戦の記憶を学ぶ」を研究テーマに選んだ尾鍋さんは、沖縄に足を運び、学徒隊について調査研究。フィールドワークでまとめた報告書を同資料館の学芸員に送付し返事の手紙をもらうなどの交流を深めた。

 

 昨年八月、戦史研究などを通じて親交があった琉大出身の仲田さんの紹介で同資料館の臨時職員に。以来約十カ月間、来館者の感想文を文集にまとめたり、企画会議の事務補助などの業務に当たってきた。

 

 証言員の津波古ヒサさん(79)は「私たちは自ら体験したことしか語れないが、尾鍋さんは証言員みんなの話に耳を傾け、何でも学ぼうとする姿勢がある」と話す。家族のように受け入れる証言員の心の広さに尾鍋さんは「県外出身であることを意識したことはない」と笑う。

 

 「資料館を訪れた人々が地元に帰り、平和の大切さを家族や友人に語り継ぐ、そのきっかけをつくる説明員になりたい」と意欲的だ。

 

 一九八九年の開館当初二十八人でスタートした証言員は現在十五人。年々証言員が少なくなる中、次世代への「語り継ぎ」は一歩一歩進んでいる。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_05.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 29面

 

海自反対派調査「有無」食い違い

 

 【東京】陸上自衛隊の情報保全隊が、イラク派遣活動など自衛隊の活動に批判的な全国の市民団体などの動向を調査していた問題で、社民党の福島瑞穂党首は八日、防衛省に守屋武昌事務次官を訪ね「憲法違反だ」と抗議、同保全隊の収集情報をすべて公開するよう求めた。

 

 福島党首によると、守屋氏は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う周辺海域の現況調査に海上自衛隊を動員したことに反対する動きについて「事後的に、海自の情報保全隊が、任務に従事した隊員がどう評価されているのか、情報収集はしているだろう」と述べたという。

 

 しかし、守屋氏本人は記者団に対し「一般論として『当然海上自衛隊も関心を持っているだろう』と言っただけ。福島氏には『(反対の動きへの情報収集について)報告も受けていない』と何度も伝えた」と語り、両氏の話が食い違っている。

 

 一方、福島氏によると守屋氏は、イラク派遣活動に関する情報収集の事実は認めた上で、隊員士気の堅持、家族の不安を払拭するために必要な活動であったことを強調したという。そのほか、情報保全隊の規模について陸自が六百六十八人、海自が百三人、空自が百五十六人であることも明らかにしたという。

 

 同保全隊の収集情報が記録された「内部文書」の信用性については否定しつつ「これは本来出るべきものではなかった」と語り、文書の存在を事実上認めたという。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月9日朝刊)

 

[米軍燃料流出]

 

「同じ水」を飲みながら

 

 米空軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は同基地内に立ち入り、流出現場の土や水の採取などを求めたが、米軍にあえなく拒否された。

 

 県は、燃料が流出したタンク周辺の土壌や側溝などの水をサンプリングし、揮発性有機化合物などの有無、量などを調べる予定だった。

 

 土や水の採取は、住民が不安を抱いている環境汚染を調べる上で、最低限必要だ。

 

 だが、写真撮影すら拒まれ、目視調査のみに終わっている。これでは、基地外の環境に影響があるのかどうか、結論を出すのは到底困難だ。

 

 米軍は何のために基地内への立ち入りを許可したのか。地元の調査を「一応、受け入れた」というアリバイづくりと疑われても仕方あるまい。

 

 またしても、日米地位協定の「壁」が背景に立ちはだかっている。

 

 同協定三条は、米軍の管理権を認める一方、「立ち入りが軍の運用を妨げることなく行われる限りにおいて、立ち入り申請に対してすべての妥当な考慮を払う」と定めている。

 

 今回、立ち入りは認められたものの、基地内での実質的な調査は拒否された。基地内調査が「米軍の裁量」に委ねられているからにほかならない。

 

 同三条は、その三項で「施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない」とも定めている。

 

 だが、「公共の安全」よりも「基地管理権」や「米軍の裁量」が優先されているのが日米同盟、そして沖縄の現実といえよう。

 

 本土復帰後も過重な基地負担の中で、県民はこの不公平、不平等な地位協定によって苦悩を強いられてきた。

 

 苦悩解消には、政府も本気で取り組んでこなかったし、今後も取り組む気配さえなく、対米従属の姿勢を見せている。

 

 嘉手納基地には、周辺を含め計二十三の「嘉手納井戸群」と呼ばれる地下水源がある。県企業局北谷浄水場が一日約二万トンを取水し、地元など七市町村に給水している。

 

 県内の米軍基地の水道は、そのほとんどが近隣市町村を通じて給水を受けている。広大な嘉手納基地も、主な供給源は北谷浄水場である。

 

 「同じ水」を飲みながら、なぜ、ジェット燃料の流出事故を県民と米軍が共通の問題として対処できないのか。

 

 憲法で保障された「平和的生存権」がいかに米軍基地によって脅かされているか、地位協定の理不尽さをあらためて考えざるを得ない。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070609.html#no_2

 

2007年6月10日(日) 朝刊 1面

 

歴史歪曲 3500人抗議/「集団自決」修正

 

63団体が県民大会/検定意見撤回求め決議

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除、修正されたことに抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」(主催・同実行委員会)が九日、那覇市の県民広場で開かれた。約三千五百人(主催者発表)が参加。文科省に対し、検定意見の撤回を求める大会決議を採択した。

 

 六十三団体でつくる実行委員会を代表し、あいさつした高嶋伸欣琉球大学教授は「生徒がこの教科書を使う来年四月までまだ時間がある。県民の声を文科省にぶつけて検定意見を撤回させることは一九八二年の前例もあり、十分可能だ」と強調。「会場の熱気に勇気づけられた。来週予定している伊吹文明大臣との交渉では、過去の経緯などを含めて厳しく追及し、成果につなげたい」と力を込めた。

 

 沖教組の大浜敏夫委員長は「日本軍の命令がなかったことにされれば、住民自ら死を選んだことになり、軍国美談にされかねない。文科省による歴史歪曲に対し、県民の怒りは頂点に達している。大きなうねりを全国の世論へとつなげていこう」と呼び掛けた。

 

 「文科省による教科書検定意見を撤回させる」「県議会に民意を踏まえた意見書をただちに採択させる」「沖縄戦の実相を子どもたちに伝えていく」の三項目を掲げたスローガンを採択。県政野党各党や労組、市民団体が連帯あいさつをしたほか、県外から出版関係者や日教組の代表らも駆け付けた。

 

 参加者らは「ガンバロー三唱」で気勢を上げた後、「子どもたちに戦争の実相を伝えよう」「県民は沖縄戦の歪曲を許さない」などと訴え、国際通りをデモ行進した。

 

 大会決議は文科相、首相、知事、県議会議長あてに送付する。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706101300_01.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(6月7日夕刊、8日)

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

自民、意見書採択へ調整/「集団自決」修正

 

 県議会最大会派の自民党は七日、県議会内で役員会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書採択に向けた調整に入る方針を決めた。八日に議員総会を開き、協議する。同党は五月三十日の議員総会で賛否が割れ、六月定例会での採択に賛成できない方針を確認していた。役員会では「軍の何らかの関与があったのは事実」という認識を一致させ、議員総会で結論を出す方針を固めた。一部には反対論もあり、総会の議論に注目が集まる。

 

 役員会後、新垣哲司幹事長は「問題の重要性を踏まえ、自民党としての意見集約を図りたい」と述べた。伊波常洋政調会長は「文科省の検定意見の趣旨など事実確認し、戦争体験者や国会議員ら幅広い意見を聴き、結論を出す」と説明した。

 

 議員総会で採択に向けた意見集約後は、文案などの調整を進める見込みだ。

 

 三十日の議員総会では、「『集団自決』は歴史的な事実であり、多くの証言がある。記述を修正すべきではない」という賛成意見が出た一方、「軍命の有無が係争中の裁判で焦点になっている段階での意見書は、司法への政治介入になる」という反対があった。

 

 中には「司法の判断が出ていない段階で、従来の記述を修正すべきではない」との賛成意見もあった。総会で、意見がまとまらず、意見書に賛成できない状況になっていた。

 

 検定意見書に抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない県民大会実行委員会」は六月五日、県庁内で会見し、意見書に賛成しない方針を固めた自民党県連に対し、賛成するように再考を求める要望書を手渡す意向を表明している。新垣幹事長は「日程調整し、対応する」と述べた。

 

 要望書では、各市町村議会が「集団自決」に対する軍関与を不明瞭にした修正意見の撤回を求め、意見書を採択していることについて、「保革を超えた大きな県民の声だ」と指摘。その上で「意見書に対する態度の再考を自民党に求め、県民の代表者として県民の声に応える議会の発言と働きを強く求める」とした。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_01.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

東門市長「容認できぬ」/米軍燃料漏れ

 

 【沖縄】米軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出して土壌に浸透した問題について、沖縄市の東門美津子市長は七日開会した市議会六月定例会の冒頭あいさつで、「米軍と国の対応については大変遺憾であり、とても容認できるものではない」と厳しく批判し、「地元への連絡が一週間遅れた上、各自治体への説明も異なっているなど米軍と国の連絡体制のずさんさが露呈した」と指摘した。

 

 今後の対応は沖縄市嘉手納町北谷町の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」で八日に、米軍に対し(1)原因究明とその対策(2)事故の再発防止(3)速やかな情報提供(4)具体的な環境汚染対策を求めて抗議する方針を示した。

 

周辺水質異常なし

 

 【中部】米軍嘉手納基地のジェット燃料流出を受け、基地内や周辺の十九井戸で水質調査を実施した県は七日、ベンゼンなどの揮発性有機化合物(VOC)は、厚生労働省が定める水道水質基準の基準値の十分の一以下で、異常はなかったとの分析結果をまとめた。県は五日に取水、VOC十九項目などについて調査した。

 

現状確認で県 午後立ち入り

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は七日午後、現状確認のため基地内に立ち入り、米軍から説明を受ける。

 

 県はサンプル採取など流出現場での調査についても米軍に要請しているが、同日午前の段階で米軍は許可しておらず、調整を続けている。

 

 県は同日午後、花城順孝企業局長らが同基地を訪ね、同基地司令官に原因究明と公表、再発防止と安全管理の徹底を申し入れる。那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所にも同様の申し入れをする予定。

 

                    

 

嘉手納町、現場確認/三連協あす立ち入り

 

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で先月二十五日から四日間にわたってジェット燃料が流出した問題で、嘉手納町は七日までに流出が起きた燃料タンクを確認した。同町基地渉外課は、那覇防衛施設局が示した地図や航空写真などを照らし合わせた上で「流出のあったタンクに間違いない」としている。

 

 燃料タンクの位置は同町役場から南へ六百二十メートルの地点。同基地北側滑走路に隣接し、土に覆われたタンクが二基(高さ約二メートル)並んでいる。滑走路に近い一基は、表面の芝生が茶色に変色している。

 

 「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は八日、同基地への抗議後に現場を確認することになった。嘉手納基地から七日午前、立ち入りを認めるとの連絡があった。これまでに日本側が現場確認したのは一日の那覇防衛施設局のみ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_02.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

読谷飛行場跡にフッ素/鉛検出問題

 

 【東京】二〇〇六年七月末と同年九月にそれぞれ返還された読谷村の米軍読谷補助飛行場跡地、瀬名波通信施設跡地の土壌から基準値を超える鉛などが検出された問題で、防衛施設庁は七日までに詳細な調査結果をまとめた。読谷補助飛行場跡地では、南側地域で鉛のほかに特定有害物質のフッ素も検出されたことが明らかになった。同飛行場では油分も含め、土壌の汚染は全体で約五千七百立方メートルに及んだ。瀬名波通信施設跡地では鉛、油臭による汚染土量が約四百立方メートルと確認された。

 

 施設庁は今後、調査結果に基づいて原状回復作業を行う予定。七日午後に読谷村に説明する。

 

 読谷飛行場ではこれまでに、土壌一キロ当たりの含有量で、基準値の八十倍、溶出量で基準値の約二十倍の鉛などが検出されていた。今回の詳細な調査では汚染場所を解体業者の廃車置き場や作業場、冷蔵庫などの不法投棄場所、水道工事業者作業場付近と特定。

 

 範囲は面積約四千六百平方メートル、地下三メートルに及び、約五千七百立方メートルの汚染土壌のうち、約五千立方メートルが鉛、フッ素を含んでいたことが分かった。

 

 一方、瀬名波通信施設でもこれまでに、土壌一キロ当たりの含有量で基準値の一・九倍に当たる鉛が見つかっていた。汚染が確認されたのはガソリンスタンド跡地、自家発電施設跡地で、面積約三百平方メートル、地下二メートルに及ぶ範囲で、約四百立方メートルの汚染土壌のうち、約百立方メートルが鉛によるものだった。〇三年に返還された北谷長のキャンプ桑江北側部分でこれまでに見つかった汚染土壌は約四万九千立方メートルで、そのうち鉛、ヒ素、六価クロムの特定有害物質を含む土壌は約八百立方メートルだった。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_03.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 4面

 

戦語る864人 迫力の写真展/佐喜眞美術館

 

 比嘉豊光写真展「わったー『島クトゥバで語る戦世』684」(主催・佐喜眞美術館)が六日から、宜野湾市の同美術館で始まった。入場無料。七月二日まで。会場には、自らの戦争体験を語る高齢者八百六十四人の写真を展示。来場者は作品を通して沖縄戦の記憶を継承することの重要性を再認識していた。

 

 写真展は、一九九七年から沖縄戦を地域の方言(島クトゥバ)で体験者に語ってもらい、映像と写真で記録する活動を継続している写真家、比嘉豊光さんの作品を展示した。

 

 二十三、二十四日の午後には同美術館でシンポジウムがある。問い合わせは同美術館、電話098(893)5737。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_07.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 1面

 

米軍、土壌・水の採取拒否/嘉手納・燃料流出

 

県の立ち入り調査難航

 

 【嘉手納】嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は七日、基地内に立ち入り、環境への影響を調査した。県は流出現場の土壌や水の採取などを求めたが、米軍に拒否された。理由は説明しなかったという。県は「土壌や水が採取できず、基地外の環境に影響があるのか結論を出すことは難しい」としている。一方、県の花城順孝企業局長らは同日、同基地と那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所に原因究明と再発防止を申し入れた。花城局長によると、同基地第一八施設大隊のマイケル・ハス司令官は、米軍の調査結果の公表について「上部機関と相談する」との回答にとどめたという。

 

 立ち入り調査で、県は燃料が流出したタンク周辺の土壌や側溝などの水を採取し、揮発性有機化合物(VOC)の有無や量などを調べることにしていた。

 

 県によると、米軍は燃料流出の経緯や量などを説明した。

 

 燃料が浸透した土壌の範囲や深さなどについて「作業の中で判明するだろう」とし、把握していなかった。取り除いた土壌を基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング」と呼ばれる手法で浄化すると説明。早ければ今月中旬に着工する。

 

 調査には県職員約十人ほどが立ち会った。芝生の枯れていた給油用タンクで、わずかに燃料のにおいがしたという。

 

 一方、花城局長は、ハス司令官に対し、嘉手納基地と周辺地域の地下水を水源とした「嘉手納井戸群」が県民の重要な水道水源であることから、「地域の生活環境の保全に支障が生じることが懸念される」と指摘。県などが流出事故の連絡を受けたのは発生から七日後だったことについても、「米軍の施設の管理運用体制に疑念を抱かせるもので誠に遺憾」と訴えた。

 

 施設局の岡田康弘施設部長や外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は、県の基地内への立ち入り調査が継続できるよう米軍に協力を働き掛ける意向を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_01.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 31面

 

抗議署名2万8177人に/「集団自決」修正

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定への抗議の輪が沖縄から全国へ広がっている。「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会が県内外の関係団体に署名を呼び掛けたところ、七日現在で二万八千百七十七人分が集まった。実行委は五万人を目標に置いているが、「これを超えると期待している」と話している。

 

 そのうち約一万八千人分は全国の分。日教組が第一次分として集約したものが大半で各県の教員が署名した。実行委は「実際に教科書を手に取る先生の署名が多いのはありがたい。今、何が起きているのかを学校現場でも知ってもらいたい」と語る。

 

 日本史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の部分から日本軍の関与部分の記述を削除・修正した今回の検定問題が逆に、戦後六十二年を経て、埋もれがちだった沖縄戦に対する全国の関心をあらためて呼び起こす機会になれば、と期待している。

 

 一方、県内分は約一万人だが、実行委に参加している六十三団体のうち提出したのは二団体にとどまっているため、最終集計予定日の十三日には「まとまった数になる」(実行委)と話している。

 

 実行委は、九日午後二時から那覇市の県庁前の県民広場で開く県民大会の会場でも署名を呼び掛けることにしている。集まった署名は十五日に実行委代表らが文部科学省側に大会決議とともに手渡すことにしている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_03.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 1面

 

自民、きょう意見集約/「集団自決」修正

 

県議会意見書採択へ調整

 

 県議会最大会派の自民党は七日、県議会内で役員会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書採択に向け調整に入る方針を決めた。八日の議員総会で協議する。自民党は五月三十日の議員総会で賛否が割れ、六月定例会での採択に賛成できない状況だった。役員会では「軍の何らかの関与があったのは事実」との認識を一致させ、議員総会で所属県議に考えを示し、再度協議、結論を出すとしている。一部には慎重論や反対論も根強く、議員総会の協議の行方が注目される。

 

 役員会後、新垣哲司幹事長は「問題の重要性を踏まえ、自民党としての意見集約を図りたい」と述べた。伊波常洋政調会長は「文科省の検定意見の趣旨など事実確認し、戦争体験者や国会議員ら幅広い意見を聴き、結論を出す」と説明した。

 

 議員総会でまとまれば、所管する文教厚生委員会(前島明男委員長)を中心に、文案などの調整を進める見込みだ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_04.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 31面

 

久間防衛相「反自衛隊」分類 不適切/陸自市民監視

 

 【東京】共産党が自衛隊関係者から入手した「内部文書」で、自衛隊のイラク派遣に反対する国会議員の発言などを「反自衛隊活動」と分類していたことについて、久間章生防衛相は七日午後の参院外交防衛委員会で、「反自衛隊というレッテルを張るわけにはいかない」と述べ、好ましくないとの見解を示した。白眞勲氏(民主)への答弁。

 

 久間氏は「記入した人の私見にかかわるものだ。評価を省として下していれば問題だが、そういう判断を下しているわけではない。上がってきた事実を束ねているだけだ」と述べ、問題にはならないとの認識を示した。

 

 「反自衛隊」の分類の中に、騒音に関する基地への苦情も含まれていたことについて「それを親自衛隊か、反自衛隊かという二つを選択するとなると、そちら(反自衛隊)の方に書いたとしてもやぶさかではない」と述べつつ、「苦情は苦情だ」と述べ、「反自衛隊」とするべきでないとの認識を示した。

 

 一方、「内部文書」について「全く根も葉もないということではないと思う」と述べ、一定の信ぴょう性があるとの認識を示したが、「全部本物かチェックできないので分からない」と述べた。

 

 今後本物かどうかを調査するかについては、保存義務がない類であることを強調した上で「内部(報告書)の話ですから、調査する必要はないと思っている」と語った。

 

 「反自衛隊」の分類については、守屋武昌防衛次官も同日の定例会見で「(反自衛隊と)決め付けることに目的があったのではない」とし、隊員士気の堅持、家族の不安を払しょくするための必要性を強調した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_05.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 2面

 

与那国寄港 自粛を要請/県、米海軍司令官に電話

 

 米軍艦船二隻が与那国町への寄港を検討している問題で、県の上原昭知事公室長は七日、在日米海軍司令官のジェームズ・ケリー少将あてに、寄港の自粛を口頭で申し入れた。

 

 上原公室長は政務補佐官を通じ電話で「民間港湾および漁港は、民間船舶の運航や漁業の施設として設置されたもので、緊急時以外、米軍艦船の使用は自粛してもらいたいというのが県の一貫した方針。久部良漁港および祖納港の使用自粛を要請する」と伝えた。

 

 石垣海上保安部から六日、県八重山支庁あてに米軍艦船二隻が与那国町の祖納港および久部良漁港を使用するとの通知を受けて要請した。

 

 通知によると、使用期間は二十四日午前九時入港、二十六日午前九時出港となっている。入港するのは米海軍佐世保基地(長崎県)所属の掃海艦「パトリオット」と「ガーディアン」(いずれも排水量一三一二トン)。寄港目的は「親善・友好訪問および乗組員の休養」となっている。上原公室長は七日、社民党県連の新里米吉書記長らが与那国への寄港を拒否するよう求めたことに、「日米地位協定の問題もある。控えてほしいと考えているが、ノーと言えるかは別問題」と語った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月8日朝刊)

 

[陸自市民監視]

 

この人権感覚は問題だ

 

 共産党の志位和夫委員長は、陸上自衛隊の情報保全隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体のほか政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向をまとめた「内部文書」を入手した。

 

 調査リストには自衛隊のイラク派遣に反対する集会やデモなどの関連だけで四十一都道府県の二百八十九団体・個人に上り、高校生も含まれている。

 

 県内ではイラク戦争に反対した市民団体ら十三団体のデモ行進やビラ配りなど十五件も入っていた。

 

 そもそも自衛隊のイラク派遣に反対する市民運動は、監視が必要な異常な行為なのか。政府批判、自衛隊批判は「言論の自由」「報道の自由」によって保障された人権の一つではないか。

 

 今回リストアップされた個人や団体のメンバーらはさぞ驚き、自衛隊への不信感を募らせたことだろう。

 

 文書は百六十六ページ。陸自東北方面情報保全隊がまとめた「情報資料」(二〇〇四年一二月)と、情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(〇三年十一月〇四年二月)の二種類。

 

 志位氏は「個人のプライバシーに対する侵害行為で憲法違反だ」と鈴木政二官房副長官に中止を要請したが、塩崎恭久官房長官は記者会見で「法律にのっとって行われる調査活動や情報収集は当然、受け入れられるべきだ」と述べ、許容範囲との認識を示した。

 

 久間章生防衛相は「自衛隊が情報収集活動をするのは当然」とした。防衛省の守屋武昌事務次官は、反対集会などの情報を集めていたことを認めた上で「自衛隊法に基づく調査研究で違法性はない」と説明している。

 

 しかし、自衛隊の調査・情報収集に何の限定も加えない発言はおかしい。「自衛」の名目であれば何をしても許されるというわけでもあるまい。調査にもおのずから限界があるはずだ。

 

 集会の自由、デモ行進の自由などを含む「表現の自由」は、民主主義社会では最も尊重されるべき人権である。写真撮影などで市民のプライバシーを脅かし、市民運動を委縮させるようなことがあってはならない。

 

 シビリアン・コントロール(文民統制)の原則を忘れるべきではない。このような調査は自衛隊による民の統制につながる本末転倒の発想で、自衛隊の市民監視と批判されるゆえんだ。

 

 特に沖縄は広大な基地を抱え、歴史的体験を踏まえればイラク派遣への反対運動が起きるのも当然ではないか。

 

 約五年前、自衛隊で情報公開請求者の個人情報リストを作成していたことが問題になったが、プライバシーを軽視する自衛隊の人権感覚はおかしい。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070608.html#no_1

 

琉球新報 社説

 

自衛隊の国民監視 矛先の向かう先が違う

 いつから自衛隊は国民に矛先を向けるようになったのだろうか。陸上自衛隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体や政党、労組、ジャーナリストなどの動向を調査した内部文書の存在が6日、明らかになった。国民を守るべき自衛隊が、自衛隊を守るために国民を監視する。本末転倒だ。

 共産党が入手・公表した自衛隊の「内部文書」は2種。「イラク派遣に対する国内情勢の反対動向」(2003年11月04年2月)と「一般情勢」(04年12月)で、いずれも陸上自衛隊の情報保全隊が作成したものだ。

 文書にはイラク派遣に反対する集会やデモ、ビラ配布などを行った289の団体・個人の動きが詳細に記録されている。

 県内でも沖縄弁護士会や沖縄平和運動センターなど15団体、5個人の活動が「監視対象」となっていた。

 7日の参院外交防衛委員会で、久間章生防衛相は、「監視活動」が陸上自衛隊に限らず、海上、航空自衛隊でも行われていた可能性を認めている。

 反対集会への参加者の撮影も行われていた。「撮影は違法」との野党の指摘に久間防衛相は、マスコミ取材を例に「取材が良くて自衛隊が駄目だという法律の根拠はない」と反論している。マスコミの取材と自衛隊の監視を同列に並べる感覚も、いかがなものか。

 自衛隊による「国民監視」の事実を内部文書で暴露された防衛省は「部隊の保全のために必要な情報活動」「情報収集はイラク派遣時に限ったこと」と釈明している。

 これに対し野党は「個人のプライバシーに対する侵害行為で、憲法違反」(共産党)「シビリアンコントロール(文民統制)が全く効いていない」(民主党)「税金を使った憲法違反の行為で言語道断」(社民党)と批判している。

 戦前、戦中は特高警察が国民を監視し、発言によっては逮捕・拘留し、反戦の声を抑えた。加えて、負け戦すら勝ち戦にすり替える軍の「大本営発表」で情報操作し、国民を戦争に駆り立て、多くの国民を死に追いやった歴史がある。

 自衛隊による「国民監視」に、市民からは「戦前の特高警察の復活を思わせる」「戦前回帰に身震いする」などの声が上がっている。

 自衛隊は、存在自体が憲法違反との意見もある。改憲論争の焦点の一つに「9条改正」による自衛隊の軍隊化もある。

 国の平和と独立を守り、直接・間接侵略に対処するのが自衛隊の主任務のはずだ。しかし実態が、戦前の特高警察を想起させる国民の監視機関だとするならば、やがて矛先を国民に向ける軍隊に変わりかねない。そんな自衛隊なら、民主国家・日本には不要だ。

 

(6/8 9:49)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24442-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(6月6日夕刊、6月7日)

2007年6月6日(水) 夕刊 1面

 

 

 

処理・量把握に時間/米軍油漏れ通報遅れ

 

 

 

 【東京】米軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した事故の地元への通報が一週間遅れた問題で、米側が五月二十九日の時点で事故を確認していたにもかかわらず、「流出の事後処理、流出した燃料の量の把握に時間を要したことから日本側への通報が三十一日になった」と説明していることが六日午前の衆院外務委員会で明らかになった。照屋寛徳氏(社民)に外務省北米局の梅本和義審議官が答えた。

 

 

 

 梅本審議官によると、五月三十一日午後七時半ごろ、米国大使館から外務省に連絡があった。

 

 

 

 同省は通報の遅れを問題視した上で「国民に実質的な損害または障害を与えうる相当の蓋然性がある事故等が発生した場合は、できるだけ速やかに日本側に通報を行うこと」とした一九九七年三月の日米合同委員会合意に基づき、米側に対し「速やかな通報をすべきだった。努力してほしい」と申し入れたという。

 

 

 

 北原巖男防衛施設庁長官も六月一日、在沖米軍に再発防止の徹底を求め、四日には在日米軍に同様の申し入れをしたことを明らかにした。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706061700_03.html

 

 

 

2007年6月6日(水) 夕刊 5面

 

 

 

平和の心 シーサーに込め/8日から浦添市で個展

 

 

 

 【東京】沖縄戦で亡くなった人の魂を慰め、平和への願いを込めた陶版シーサーを作り続けている陶芸家で作家の出口富美子さん(66)=目黒区在住=の作品がもうすぐ一万五千点に届く。沖縄旅行を契機に「沖縄問題」への関心を強くし、売上金は沖縄のためにと、沖縄平和祈念堂へ寄付している。「本土と沖縄の双方が互いを知らないと溝は埋まらない。今の時代だからこそ、沖縄が平和を発信できる」と話す。八日からは浦添市で個展が始まる。(石川達也)

 

 

 

 北海道出身の出口さんが最初に沖縄を訪れたのは二十数年前。広大な米軍基地を抱え、戦後も変わらぬ負担が続く現状に衝撃を受けたという。「無知や無関心が一番いけない」と、沖縄の人たちの思いを本土の人たちに伝える手段としてシーサー作りを考えた。

 

 

 

 特に師匠もなく、制作はすべてオリジナル。自宅に窯を購入し、十八センチ四方の陶版に、表情豊かにとっくりを持ったシーサーや、子を抱いたシーサーなどが色鮮やかに表現されている。「陶版であれば置くことも壁掛けにもいろんな使い方ができる」という。

 

 

 

 試行錯誤の末に十八年で作り上げた作品は一万四千五百点。沖縄を含め全国各地で個展を開き、固定客も増えているという。その売り上げは平和活動に役立ててほしいと寄付している。

 

 

 

 出口さんは「沖縄戦で亡くなった約二十三万人のシーサーを作りたいが、それは無理なので、せめて二万三千体を目指したい」と笑う。

 

 

 

 個展「いのちかがやけ!」は慰霊の日を挟む八日から二十七日まで、浦添市安波茶の「キャフェ・ギャルリー・パレ」で行われる。問い合わせは、電話098(877)3901。

 

 

 

 七月からは都内でも開かれる。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706061700_04.html

 

 

 

 

 

 

2007年6月7日(木) 朝刊 1・27面

 

 

 

陸自、市民を監視・調査/全国289団体対象

 

 

 

県内13団体15件含む/共産党が「文書」公表

 

 

 

 【東京】共産党の志位和夫委員長は六日、国会内で記者会見し、陸上自衛隊の情報保全隊が、自衛隊の活動に批判的な全国の市民団体や政党、労組、宗教団体、ジャーナリスト、個人(高校生含む)などの動向を調べた「内部文書」を入手したと発表した。調査リストにはイラク自衛隊派遣に関連して、二百八十九団体・個人が監視対象となっており、全国四十一都道府県に及ぶ。県内でイラク戦争に反対した市民団体ら十三団体のデモ集会やビラ配りなど十五件も含まれている。

 

 

 

 久間章生防衛相は、同文書について「本物かどうか分からない」としつつ、調査、情報収集の事実は認めた。守屋武昌防衛事務次官は、調査の法的根拠について、「所掌事務の遂行に必要な調査研究を行うこと」(防衛省設置法第4条第18号)とした。

 

 

 

 文書は計十一部。百十六ページ。陸自東北方面情報保全隊が収集した情報を週単位でまとめた一覧表(二〇〇四年一二月)と、情報保全対本部が作成した「イラク派遣に対する国内勢力の反対動向」(〇三年十一月〇四年二月)の二種類。

 

 

 

 それぞれ一週間ごとに、全般情勢のほか「革新政党」「新左翼等」「諸派および反戦市民」「マスコミ」「労組」などの活動状況を要約。

 

 

 

 県内関係は「イラク派遣に対する国内勢力の反対動向」で、「平和運動センター」「平和市民連絡会」「沖縄弁護士会」などの団体名とともに、主催者名、反対活動の内容や日時、場所など詳細を記述している。

 

 

 

 このほか、一覧表には「反自衛隊活動」の分類を設け、隊員を取材した「自称『朝日新聞社記者』を名乗る」個人や自衛隊のイラク派遣に反対の発言をした民主党の益子輝彦衆院議員(当時)らの言動を記載。

 

 

 

 ジャーナリストらに関しては取材状況や報道内容、市町村議会の決議の経緯なども分析している。

 

 

 

 情報保全隊は、部隊を外部の働き掛けから防護するために必要な情報収集を主な任務としている。

 

 

 

 志位氏は「国民のあらゆる運動を監視し、詳細に記録していたことを示している。個人のプライバシーに対する侵害行為で憲法違反だ」と強調、中止を訴えた。

 

 

 

 共産党は「自衛隊関係者」から同文書を直接入手、記載内容に基づき調査した結果、信ぴょう性が高いと判断した、と説明している。

 

 

 

[ことば]

 

 

 

 情報保全隊 自衛隊が持つ秘密情報を守るため、陸海空3自衛隊にそれぞれ編成されている部隊。いずれも防衛相直轄で要員は計約9百人。任務は自衛隊法施行令に基づく各自衛隊の訓令で規定されており、隊員と外部の不審者との接触などを監視する。自衛隊施設に対する襲撃や業務の妨害などを防ぐための情報収集も含まれるが、民間の情報収集対象については、防衛庁長官(当時)が「防衛秘密を取り扱う者として指定をした関係者に限定」と明言した国会答弁がある。

 

 

 

                    

 

 

 

「軍暴走の兆候だ」/県内「監視対象」者

 

 

 

 「軍」が暴走を始めた。陸上自衛隊に監視されていたことが明らかになった県内の市民団体に六日、戦慄が走った。「ファシズムの再来だ」「市民に敵意をむき出しにした」。イラク派遣反対などの「ブラックリスト」には、県内の十三団体が政治的に色分けして列挙され、個人の実名も記録された。情報保全隊は、陸自那覇駐屯地でも活動する。実態について、県内や九州の陸自は「コメントする立場にない」とした。

 

 

 

 暴露された陸自の文書には、作成した二〇〇四年に沖縄弁護士会長だった新垣勉弁護士の名前があった。同会が街頭でビラ配りをしたことを記録。新垣弁護士は「憲法と基本的人権を擁護する弁護士会の監視は、法体系全体への挑戦だ。軍の暴走の兆候で、自衛隊支持の国民にさえ不信感を生むだろう」と警告した。

 

 

 

 平和市民連絡会の平良夏芽代表も、名前が書かれていた。「背筋が凍る思い」としつつ、「国に反対すればブラックリストに載せる、というような圧力を国民が許してはならない」と強調した。

 

 

 

 〇四年当時中部地区労議長だった松田寛高教組委員長も実名が記載され、「私たちの国はいつから特高が暗躍するようになったのか」と絶句。現在は教科書検定問題に取り組んでおり、「日本軍と自衛隊に都合の悪い今の活動も監視されているはずだ」と指摘した。

 

 

 

 デモ行進が監視されていた統一連。大久保康裕事務局長は「自衛隊に物を言う組織に、いよいよ敵意をむき出しにしてきた。県民のさまざまな運動を監視しているのではないか」と疑った。

 

 

 

 「戦前の再来のようで戦慄が走る。反対者を力でねじ伏せる時代になってきた」。抗議集会が報告された沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は、「法治国家としてあり得ない」と吐き捨てた。

 

 

 

 自治労北部総支部とともに開催した集会が監視されていた北部地区労の仲里正弘議長は「表現の自由は憲法で認められているのに、まるでファシズム体制だ。警察を飛び越え、自衛隊が監視するなどもってのほかだ」と憤った。

 

 

 

 一方、県内を管轄する陸自の第一混成団、九州全体を管轄する西部方面総監部は共に、県内に駐留する情報保全隊の人数や活動内容について「大臣直轄の部隊で、コメントのしようがない」と答えた。

 

 

 

県内の主な自衛隊の「監視対象」

 

 

 

 沖縄平和運動センター、統一連、平和市民連絡会、北部地区労、中部地区労、浦添地区労、自治労北部総支部、沖教組国頭支部、沖縄弁護士会、イラク国際戦犯民衆法廷沖縄公聴会

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071300_01.html

 

 

 

2007年6月7日(木) 朝刊

 

 

 

基地内立ち入り県がきょう申請/「嘉手納」燃料流出

 

 

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は六日、庁内で対応を協議し、七日に基地内への立ち入り調査を同基地司令官に申請する方針を決めた。県環境保全課は六日、「流出状況などを米軍の説明も受けながら確認する方向で調整している」とし、なるべく早期の立ち入りを米側に求める考えを明らかにした。

 

 

 

 県基地対策課は一日、那覇防衛施設局から口頭で燃料流出の報告を受けたが、この際、「適切な燃料管理と速やかな通報」を施設局を通じ米軍に要請するのにとどめていた。その後、五日になって、米軍が土壌入れ替えを実施する方針を示すなど土壌汚染への懸念が表面化したことから事態を重視。県は六日、環境保全課や基地対策課、企業局が対応を協議し、基地内立ち入り調査が必要と判断した。

 

 

 

 県が環境関連で米軍基地内への立ち入りを申請したのは一九九六年十二月以降、二十七件。このうち認められたのは十七件、未回答が二件、不許可は八件。不許可の理由は「米軍が既に調査している」「基地の管理運営上、支障が出る」など。

 

 

 

                    

 

 

 

3週間内に工事発注/汚染土壌入れ替え

 

 

 

 【北谷】五月二十五日に米軍嘉手納基地駐機場のタンクからジェット燃料が流出し、周辺の土壌へ浸透した問題について同基地は六日までに那覇防衛施設局に対し、「三週間以内に土壌入れ替え工事を発注し、その後約二週間で完了予定」と連絡していたこことが分かった。費用は米軍が負担するという。

 

 

 

 一方、北谷町議会(宮里友常議長)は八日の基地対策委員会で対応を協議、米軍に対する再発防止や原因究明を求める抗議などについて話し合う。

 

 

 

 同委員会の照屋正治委員長は、燃料流出について「燃料が地下に浸透したなら、周辺の水質汚染が心配だ。発生から四日間流出に気が付かないのは米軍の管理体制のずさんさの表れだ」と批判した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071300_02.html

 

 

 

2007年6月7日(木) 朝刊 1面

 

 

 

戦没者追悼式の祭壇一新/県立芸大チーム制作

 

 

 

 県は二十三日の「慰霊の日」に糸満市摩文仁で行われる二〇〇七年沖縄全戦没者追悼式(主催・県)の式典会場に設置する新しい祭壇のデザインを六日、県庁で発表した。県から依頼を受けた県立芸術大学デザイン専攻のプロジェクトチーム「首里サーカス」(代表・北村義典教授ら四人)が制作した。

 

 

 

 今年が五十回目の節目の式典となることを記念し、慰霊と平和へのメッセージを込め、初めて新しいデザインを採用した。

 

 

 

 デザインは「サトウキビ畑」をイメージし、三百四十本の紙管を平和祈念公園広場の「平和の丘モニュメント」前の芝生上に配置。従来の菊花の祭壇と違い、参加者はモニュメントを目の前にしながら参列できる。

 

 

 

 環境デザインを専門とする北村教授は、「飢えや戦火から身を守った、体験者にとって思い入れの深いサトウキビ畑をテーマにした。空、風、森など周囲の自然との調和を図った」と話した。県は来年の式典も同じ祭壇で行うとしている。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071300_03.html

 

 

 

2007年6月7日(木) 朝刊 27面

 

 

 

平和の礎 235人追加刻銘

 

 

 

 県文化環境部は六日、糸満市摩文仁の「平和の礎」に、本年度新たに二百三十五人を刻銘すると発表した。総数は二十四万六百九人となる。昨年度過去最高の二百六十二人が刻銘されたハンセン病患者は六人。一方、韓国の新聞二紙に県が年一回掲載している広告を見た遺族から申請があり、広告掲載三年目で初めて同国出身の戦没者一人が判明した。二十二日までに追加刻銘される。

 

 

 

 本年度は昨年度と比べ三百五十三人減った。知念建次部長は「刻銘対象者の拡大で、これまで増えてきていたが、落ち着きを見せてきている。今後、大幅に増えることはないと思う」と説明。差別や偏見で遅れていたハンセン病患者の刻銘は「今回でほぼ完了したと思われる」と強調した。

 

 

 

 内訳は国内二百三十人(うち県内六十四人、県外百六十六人)。国外は韓国出身者の五人。

 

 

 

 県内のうち最も多かったのは戦没者遺族四十六人。次いで県原爆被爆者協議会から申請のあった十二人、宮古南静園のハンセン病患者六人の順。県外では、戦艦大和の乗組員六十三人、輸送船富山丸の十一人、神風特別攻撃隊の七十六人などが含まれている。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071300_04.html

 

 

 

2007年6月7日(木) 朝刊 27面

 

 

 

首都圏で会結成/「集団自決」問題

 

 

 

 【東京】「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し、沖縄の真実を広める首都圏の会」の結成総会が六日夜、都内で開かれ、約百五十人が参加した。沖縄戦時に慶良間諸島で起きた「集団自決」への日本軍による命令の有無をめぐり係争中の被告、作家大江健三郎さんと岩波書店側を支援する。日本軍の関与を指摘する記述を削除・修正した、高校歴史教科書の検定の撤回も求めていく。

 

 

 

 呼び掛け人は歴史教科書執筆者や弁護士、大学教授、ジャーナリストら十六人。会則に「沖縄戦の史実の歪曲を許さず、真実を子どもや市民に知らせていく」(一条)などの目的を明記し、満場一致で承認された。

 

 

 

 総会では沖縄国際大の石原昌家教授が講演し、政府が教科書から軍の関与を削除した理由を「有事法制と密接に関係している」と指摘した。

 

 

 

 「軍隊は住民を守らず、逆に殺害することもあるのが沖縄戦を通じた認識。国内戦を想定して国民総動員を狙う場合は、こうした認識が一番の障害になる」と説明した。

 

 

 

 「集団自決」について「政府はこの言葉に靖国思想を意味する『殉国死』のニュアンスを込めている」と強調。「強制集団死」などに改めるべきとの認識を示した。

 

 

 

 呼び掛け人の一人で、子どもと教科書全国ネット21事務局長の俵義文さんは「今回の教科書検定には文部科学省だけでなく政府筋の介入を感じる」と強調。下村博文官房副長官が昨年夏に「自虐史観に基づいた歴史教科書は官邸のチェックで改めさせる」と発言していたことなどを紹介した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071300_05.html

 

 

 

2007年6月7日(木) 朝刊 26面

 

 

 

KC130新型機を導入/普天間に9機配備予定

 

 

 

 【宜野湾】米海兵隊の新型空中給油機KC130Jが普天間飛行場に導入されたことが六日、分かった。同日付の「星条旗」が報じた。今後十八カ月間で九機が配備されるといい、うち一機が四日に到着した。

 

 

 

 同紙によると、これまで運用していたのはF型で一九六〇年代に製造。老朽化が指摘されていた。新型のJ型は空中給油機能が大幅に向上するほか、飛行速度や航続距離が延びる。暗視能力も備える。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071300_09.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月7日朝刊)

 

 

 

[2閣僚の発言]

 

 

 

これ以上詭弁を弄するな

 

 

 

 「例えば沖縄が隣国から爆撃された(場合)。どことは言わないが、沖縄の米軍基地から攻撃するというときにはあり得るのではないか」

 

 

 

 参院外交防衛委員会で、日米安全保障条約の合意事項である「事前協議制度」について質問した大田昌秀議員に対する麻生太郎外相の答弁だ。

 

 

 

 実に想像力に欠けた不謹慎極まりない発言と言うしかない。

 

 

 

 「沖縄が仮に侵略されたというのならばあり得るのではないか」という表現を、外相の口の軽さ、単なる言葉遊びと受け止めるわけにはいかない。

 

 

 

 なぜならば、言論の府と呼ばれる国会の答弁に立つべき人の資質にかかわる問題と思わざるを得ないからだ。

 

 

 

 そもそも、在沖米軍がイラク戦争に出撃したことを、なぜ「派遣された」と言うのだろう。これには、沖縄の基地から武器弾薬、兵士を送り込み死者も出している米軍自体が戸惑っているのではないか。「なぜ、日本政府は訳の分からぬことを言うのか」と。

 

 

 

 条約上、本来やらなければならない「事前協議」をやらないで済むようにしたのは日本政府ではないか。このことは、既に米国の公文書で明らかになっている。

 

 

 

 これ以上、詭弁を弄するのは止めてもらいたい。認めるべきものを認めないから、答弁もつじつまが合わなくなる。国民、県民を欺き通すことができないことを、なぜ政府は認識できないのだろうか。疑問と言うしかない。

 

 

 

 さらにあきれるのは、将来的に嘉手納基地への駐留が取りざたされ、より以上の騒音被害が予想される最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターを「確かにいい戦闘機だなというのは分かりました」と述べた久間章生防衛相である。

 

 

 

 自衛隊の主力戦闘機F15の代替機にする案があるからであろうが、これこそ想像力に欠ける答弁と言っていい。

 

 

 

 防衛相は、基地からの騒音、爆音被害に脅かされ、未明の離陸に安眠を妨げられている周辺住民の怒りが想像できないのだろうか。これでは、いくら基地被害を訴えても暖簾に腕押しだということがよく分かる。

 

 

 

 「言葉をあげつらう」のは、もちろんいいことではない。だが、今回の両大臣の発言は無視できるものでないのは明白だろう。

 

 

 

 政治の要諦は「言葉」にあるのに、その政治家の発言がただ軽いだけでなく、哲学も感じられず思いやりに欠けるのでは何をか言わんやだ。

 

 

 

 言葉の裏には本音が隠されているのであり、そのことは厳しく検証されてしかるべきだ。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070607.html#no_1

沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報社説(6月5日、6日)

2007年6月5日(火) 朝刊 1・23面 

嘉手納基地で燃料流出/ドラム缶43本相当

外部に影響米軍「なし」/地元通報1週間後


 【中部】先月二十五日、米軍嘉手納基地の北側滑走路そばの駐機場周辺で、二百リットルドラム缶の四十三本分にあたる約二千三百ガロン(約八・七キロリットル)のジェット燃料が駐機場路面に流出していたことが四日、分かった。那覇防衛施設局によると、米軍は基地外への流出はないと説明しているという。燃料流出六日後の五月三十一日に外務省から燃料漏れの報告を受けた施設局が、六月一日に嘉手納、北谷、沖縄の三市町に連絡した。「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は「基地外への影響は本当にないのか。事故の原因究明とともに、環境の調査、検証も必要だ。連絡体制にも問題がある」と憤った。


 施設局によると燃料が流出したのは嘉手納町役場の南八百メートルにあるKC135空中給油機、MC130特殊作戦機などの駐機場。


 五月二十五日午後八時三十分ごろ、燃料タンクから航空機への燃料補給中、タンクのシステムが正常に作動しなかったためにタンク外へ計五千三百ガロン漏れた。


 このうち、三千ガロンはタンク外側のピットという空洞部分にたまり、米軍が回収。駐機場のコンクリート上に流れ出た二千三百ガロンも回収された。米軍は、排水溝への流出は確認されず、基地外への被害はないと説明しているという。


 施設局によると基地内で環境に悪影響を及ぼす恐れのある問題が起こった場合、米軍は大使館を通して外務省に通報し、外務省が施設局へ連絡する。


 今回の燃料流出後、施設局に連絡が入ったのは五月三十一日午後七時半だった。


 県の仲里全輝副知事は「地域住民や地権者の安全安心を守るため、適切に処理されているか日本側も確認する必要がある。再発防止の観点から、基地の提供責任者である政府に米側への確認を求めるとともに、県としてもうやむやにさせないよう対応していく」と述べ、基地内の立ち入り調査を求めていく考えを示した。


                    


連絡遅れ「地元軽視」/環境影響も懸念 反発


 【中部】米軍嘉手納基地で起きた約八・七キロリットルの大量燃料流出について、那覇防衛施設局から地元自治体に説明があったのは五月二十五日の発生から一週間後の六月一日。連絡の遅れに、首長や住民らは「地元軽視だ」と一斉に反発、米軍の危機管理意識の低さを厳しく批判した。米軍が「問題ない」とした環境への悪影響を懸念する声も相次いでいる。


 県企業局北谷浄水場では、嘉手納基地内にある二十の井戸から地下水を一時間当たり計八百トンを取水して浄化。北谷や沖縄、北中城、中城、宜野湾、浦添、那覇の七市町村に給水している。同局には四日現在、汚染の情報は寄せられていないという。


 嘉手納町の宮城篤実町長は「住民地域への被害がなかったことが不幸中の幸い。今後、米軍は地下水など環境に影響がないよう後処理をしっかりしてほしい」と訴えた。沖縄市の東門美津子市長は「米軍から詳細な説明を聞いた上で、きちんとコメントしたい」と話した。嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「最悪の場合、爆発する可能性もあった。連絡が遅れたのは地元を軽視している証拠だ。米軍には速やかな情報開示を求めたい」と憤った。


 「米軍は住民に怒りと不安を与えるばかりで、きちんとした情報は全くない」。マスコミからの問い合わせで四日に燃料漏れの事故について知った嘉手納町屋良地区の島袋敏雄区長は激怒した。復帰前に米軍の航空機燃料が流出し、付近の井戸が燃えた事件を挙げた上で「環境が心配だ。万が一、土壌や水源に漏れているのであれば許さない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706051300_01.html

 

 

2007年6月5日(火) 朝刊 1面 

米艦船、与那国入港を検討/政府関係者非公式打診

 米海軍の掃海艇が石垣港への入港を予定していた問題で、県管理の与那国町の港湾が新たな入港先として日米で検討されていることが四日、分かった。同町の外間守吉町長は同日、沖縄タイムス社の取材に「(政府などから)正式に聞いたわけではないのでコメントできない」とする一方、「なぜうち(与那国町)なのか。理由ははっきり聞いていない」と述べ、政府関係者から非公式に打診を受けたことは認めた。関係者によると、今月二十四日ごろに入港する方向で調整が進んでいる。


 外務省関係者が近く県と与那国町に入港目的などを説明し、理解を求めるとみられる。


 与那国町には祖納港と久部良漁港があるが、米軍がどちらの港を使用するか不明。


 石垣港への米艦船入港に関しては、五月十一日、ケビン・メア在沖米国総領事が石垣市内で大浜長照市長と面談した際、「六月に石垣港に米軍艦船を入港させたい」との意向を伝えた。大浜市長はその場で拒否姿勢を示したが、米側は民間空港や港湾の米軍使用を認めた日米地位協定五条を根拠に、強行する姿勢を示していた。


 県幹部は四日、与那国町の港湾への米軍艦船の入港について政府から説明を受けていない、とした上で「石垣港はクリアランス船などで過密状態にあり、米軍艦船の入港はできないのでは」との認識を示した。


 米軍が石垣港入港を断念した理由は明らかではないが、石垣市の反発が予想以上に強かったことが背景要因にあるとみられる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706051300_02.html

 

 2007年6月5日(火) 朝刊 23・22・2面 

 

「『集団自決』軍命は歴史的事実」/県民大会実行委

 文部科学省の教科書検定で沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」が削除されたことに抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない! 県民大会」の第二回実行委員会が四日、那覇市の教育福祉会館で開かれた。県議会最大会派の自民党が検定意見に対する意見書に賛成しない方針を固めたことに対し、再考を求めていくことを決めた。近日中に実行委代表が県連を訪れ要望書を手渡し、意見書採択への協力を求めることにした。意見書採択は全会一致が原則となっている。


 実行委に出席した県議会野党議員から「自民党議員の中にも『集団自決』は歴史的事実だと認めている人は多い。全員が意見書に反対ではなく、ごく一部だ」と報告した。出席者らは「県連への抗議より再考を促すべきだ」との意見で一致した。


 要望書では、各市町村議会が「集団自決」に対する軍関与を不明瞭にした修正意見の撤回を求め、意見書を採択していることについて「保革を越えた大きな県民の声だ」と指摘した。その上で「意見書に対する態度の再考を自民党に求め、県民の代表者として県民の声に応える議会での発言と働きを強く求める」とした。


 実行委によると、四日現在で県内四十一市町村議会のうち、十七議会が意見書を採択。最終的に三十八議会が採択する予定だという。


 自民党は二日、「会派内で賛否が分かれ意見が一致しなかった」として意見書採択に賛成しない方針を固めた。このため、文教厚生委員会の開会が見送られ、六月定例会での意見書採択が厳しい状況だ。


 県議会は一九八二年に今回と同様に、文部省(当時)が「住民虐殺」記述を削除しようとしたことに対し、全会一致で撤回意見書を採択。記述を復活させた原動力となった。このため実行委は、県民大会と県議会の全会一致による意見書採択を「県民の総意」として文科省に示し、検定意見を撤回、「軍命」記述の復活を求めることにしている。


 一方、実行委はこの日、県民大会の決議文やスローガンなどを決めた。大会は九日午後二時から県庁前の県民広場で開かれる。


                    


中学生が村議会要請/東中3年生14人


 【東】教科書検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍関与の記述が削除された問題で、東中学校(島袋きよみ校長)の三年の生徒らが四日、検定意見の撤回を求める意見書を可決するよう東村議会(安和敏幸議長)に請願書を提出した。生徒らは「教科書で事実が変えられたら、沖縄戦の真実を次の人に伝えられなくなる」と訴えた。安和議長は「関係機関と調整し、判断をしたい」と話し、受理した。


 請願書を提出したのは三年生全十四人。「日本軍や学校の先生からの『敵兵に殺されるより国や天皇のために立派に死ね』という教えが強かったから、みんな『集団自決』していったのだと思う」「体験者がどんどん少なくなっているからこそ、沖縄戦の真実を教科書に載せる必要がある」と、「集団自決」について学習した中で、それぞれが感じた意見を記載した。


 代表で請願書を読み上げた玉城ありささん(14)は「請願権は未成年にもあると勉強し、みんなでやってみようと話し合った。大人の人たちに聞いてほしい」。仲村ハンナさん(14)は「以前は『集団自決』のことを全然知らなかったけど、学習して、親が子を殺すって本当に怖いと思った」と話した。


文厚委開会見送り/県議会


 県議会最大会派の自民党が、文部科学省の教科書検定で高校の教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述を削除した問題に対する意見書に賛成しない方針を固めたことを受け、六日を軸に調整していた文教厚生委員会(前島明男委員長)の開会は見送られることになった。


 前島委員長は「自民の意見がまとまらず、全会一致での可決は不可能な状況。六日の開会を見送り、六月定例会で可決に向けてじっくりと協議していきたい」と述べた。


 前島委員長が再検討を求め、自民は四日、執行部で協議したが、「意見の一致ができない状況は変わらない」として意見書に合意できない方針を再度、前島委員長に伝えた。同問題に対する意見書は、自民を除く県議会全会派が賛成する意向を示している。   

 

実行委員会が開かれた会場には教科書の白表紙本や見本本が並べられた=4日、那覇市古島・教育福祉会館

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706051300_03.html

 

 

 

琉球新報 社説

県議会・検定意見書 世論は撤回求める方向だが


 県内の市町村議会では、高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に日本軍の強制・命令があったとする記述が修正・削除された問題で、検定意見の撤回を求める意見書の可決が広がっている。


 4日にも宮古島市と南城市などの議会で検定意見の撤回を求める意見書が可決された。「集団自決が日本軍による命令・強制・誘導なしに起こりえなかったことは紛れもない真実であり、そのことがゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、多くの犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって到底容認できるものではない」などと、検定意見の撤回を求めている。


 ところが、県議会最大会派・自民党は教科書検定の撤回を求める意見書案に同意しない方向にある。


 同党内には「歴史の事実であり、検定意見は問題」との意見がある一方、「裁判で係争中の問題であり、判決前に政治が介入すべきでない」などとの慎重な意見も根強く、「意見の一致を見いだせない」として同意しない方針という。


 既に可決した市町村議会では、全会一致でスムーズに可決されてきた。だが県議会では、自民党が同意しない方向にあるため、19日にも開会予定の6月定例会の冒頭での提案は見送りになりそう。


 冒頭での提案見送りが、果たして民意を踏まえた選択肢といえるのだろうか。冒頭ではなくとも、会期中の提案はあるのだろうか。全会一致になるのかも含め、県民は注視している。


 集団自決をめぐる教科書検定では、琉球新報社が実施した県内市町村長アンケート調査で、回答者36人のうち、35人が「妥当ではない」「どちらかといえば妥当ではない」と答え、検定意見に批判的だ。


 その理由として、「日本軍から捕虜になるより死ぬようにと手榴(しゅりゅう)弾を手渡され、集団自決を強要されたのは紛れもない事実」「事実を葬るのではなく、将来に継承しなくてはならない」などだ。


 県議会議員を対象にした5月の緊急アンケート調査でも、回答した47人のうち、87%に当たる41人が「妥当ではない」などと検定を疑問視する回答だった。県議会でも検定意見撤回を求める意見が大勢だが


 県議会は、教育関係者らの「住民虐殺に関する意見書が全会一致で可決(1982年)できて、なぜ集団自決ではできない」との疑問にもぜひ答えてほしい。


 本社の復帰35年県民世論調査でも、検定意見賛成の7.7%に対し、76.2%は批判的だった。県民世論も検定意見撤回を求める方向にある。


 県民は、県議会の与野党が世論の動向にもしっかりと目配り、対応するかに注目している。


(6/5 10:44)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24362-storytopic-11.html

 

 

 

2007年6月5日(火) 夕刊 1面 

 

米軍、祖納入港を想定/与那国

 米海軍の艦船が与那国町の港湾への入港を検討している問題で、今月二十四日を軸に入港予定の艦船は掃海艇二隻で、計百六十人規模であることが五日分かった。関係者によると、同町の祖納港への入港を想定し、寄港目的は友好親善や文化交流、乗組員の休養と物資の補給を兼ねた「通常の訪問」という。米海軍は同町の受け入れ態勢を見極めた上で、五日にも米艦船の祖納港への入港を日本側の関係機関に正式通知する。同町の港湾は県管理のため、県にも近く使用通知が行われる見通し。


 八重山への米艦船入港に関しては、先月十一日、ケビン・メア在沖米国総領事が石垣市内で大浜長照市長と面談した際、「六月に石垣港に米軍艦船を入港させたい」との意向を伝えた。大浜市長は港の混雑などを理由に、拒否姿勢を表明。


 その後、寄港先を与那国町の港湾に変更する方向で日米が調整。同町の外間守吉町長は四日、沖縄タイムス社の取材に対し、「(政府などから)正式に聞いたわけではないのでコメントできない」とする一方、「なぜうち(与那国町)なのか。理由ははっきり聞いていない」と述べ、政府関係者から非公式に打診を受けたことを認めている。


 米海軍は今回、石垣港の使用は見送るが、今後も米艦艇の入港機会をうかがうとみられる。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706051700_02.html

 

 

 

2007年6月5日(火) 夕刊 1面 

 

立ち入り調査を要求/嘉手納基地燃料漏れ

 【中部】米軍嘉手納基地で五月二十五日に、二百リットルドラム缶四十三本分に当たる約八・七キロリットルのジェット燃料が流出し地元への連絡が一週間もたった問題で、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は五日午前、会見し「環境への悪影響が懸念される。地元として、基地内への立ち入り調査を求めたい」と述べた。同協議会は同日午前、幹事会を開き、米軍に抗議する方針で今後の対応を調整。嘉手納町議会は七日午前、基地対策特別委員会を開くことを決めた。


 野国会長は流出から一週間後に近隣の嘉手納、北谷、沖縄の一市二町に流出の報告が来たことを問題視し「これほど遅れたのは許されないことだ。各自治体への説明も異なっている」と指摘。那覇防衛施設局に対し、正確な情報開示を求めた。


 一方、嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「米軍は原因究明を急ぎ、情報を速やかに開示すべきだ」と批判。委員会では、町議会として立ち入り調査の是非についても検討するとしている。沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「環境への影響が心配。事故の原因究明が必要だ」として、七日にも委員会を開く方針だ。


 北谷町議会の基地対策特別委員会(照屋正治委員長)は五日、委員会招集について調整中。渡久地政志副委員長は「これまで多くの事件・事故を起こした米軍が、基地外への影響はないと説明しても信用できない。米軍の発表だけでは住民が納得しない」と話した。


県が調査


 【中部】県環境保全課は五日午前、燃料流出の調査のため、嘉手納基地に隣接する嘉手納町屋良、同町兼久など三カ所の排水溝などから水を採取した。三地点でそれぞれ一・二リットルを採取、揮発性有機化合物のベンゼンなど二十六項目が含まれているかどうか調査する。


 採取したのは、同町「屋良メーガー」東方数十メートルほどの黙認耕作地内のわき水、同町兼久の大型商業施設から南方の排水溝、米軍嘉手納マリーナの河川の三地点。水温など基礎情報を調べた後、百ミリリットルの小瓶二つ、一リットルの大瓶一つに入れた。


 県衛生環境研究所が分析、一週間ほどで調査結果が出るという。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706051700_03.html

 

 

 

2007年6月5日(火) 夕刊 5面 

 

中城議会も意見書/「集団自決」修正

 【中城】来年度から使用される高校の歴史教科書検定で、文部科学省が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関して日本軍の関与を削除させた問題で、中城村議会(新垣善功議長)は五日午前、臨時会を開き、「『集団自決』はまぎれもない事実であり容認できない。修正指示を撤回するよう要求する」とした意見書案を全会一致で可決した。


 意見書は、日本軍関与の記述削除について「一方の当事者の主張のみを取り上げることは検定基準の逸脱」であり、「体験者の証言や、歴史的事実を否定するものだ」と批判。その上で「沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起きることがないようにするため、文科省は修正指示を撤回するべきだ」としている。


 意見書は、首相や文科相、衆参両院議長にあて送付する。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706051700_05.html

 

 

 

2007年6月6日(水) 朝刊 1面 

 

一部燃料 土壌に浸透/嘉手納基地

施設局、芝生枯れ確認/4日間流出 米軍見逃す


 【中部】米軍嘉手納基地内で五月二十五日に大量流出したジェット燃料の一部が、燃料タンク周辺の土壌に浸透していることが五日、分かった。一日、基地内の現場を確認した那覇防衛施設局によると、タンク周辺の芝生の一部は枯れていたという。米軍は燃料流出を四日後の五月二十九日に確認、その間流出を見逃していたことも明らかになった。嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は「事実なら、(ジェット燃料は)地下水を通じて基地外に流出した可能性もあり環境汚染が懸念される」と危機感を表明。「基地内への立ち入り調査を求めたい」と強調した。


 施設局によると、流出現場には、給油に使用する給油用タンクと備蓄用タンクの計二基があり、盛り土で覆われている。


 五月二十五日から四日間、備蓄用タンクから給油用タンクに燃料を補給する際、システムの不具合で給油用タンクの容量を超える燃料が送油されてあふれ、流出した。


 路面に流出した燃料の多くは米軍が回収したが、一部はタンク周辺の土壌に染み込み所々、芝生が枯れている状況を立ち入った施設局職員が確認した。米軍は基地外への影響はなく、燃料が染み込んだ土は全て入れ替えると説明したという。


 嘉手納基地や駐日米国大使館などによると、米軍要員が二十九日午前九時半ごろ、燃料の流出を確認。三十一日に米軍横田基地を通して米大使館に連絡された。その後、同日中に大使館から外務省日米地位協定室を経由し、那覇防衛施設局に連絡されたという。


 施設局から地元自治体への説明は、発生から一週間が経過した今月一日だった。三連協は五日に幹事会を開き、八日に同基地を訪ね、原因究明や再発防止、早期の情報提供などを求め、抗議することを決定した。


 燃料の流出や影響を分析する、県環境保全課による水質調査も行われ、同基地周辺の河川や排水溝など三カ所でそれぞれ水一・二リットルを採取した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706061300_01.html

 

 

 

2007年6月6日(水) 朝刊 25面 

 

麻生・久間氏、不用意発言/参院外交防衛委で

 【東京】日米安全保障条約で在日米軍出撃などの際に求められている「事前協議制度」の適用例について、麻生太郎外相は五日の参院外交防衛委員会で「沖縄が爆撃されたことに対し、沖縄の米軍基地から攻撃するというときにはあり得るのではないか」と述べ、他国軍による沖縄侵略を挙げた。一方、久間章生防衛相は二月から五月にかけて嘉手納基地に一時配備された最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターについて「いい戦闘機」と性能を評価するなど、県民への配慮を欠いた閣僚の不用意な発言が相次いだ。大田昌秀氏(社民)への答弁。


 事前協議制度は一九六〇年の日米安保条約改定の際に交わした交換公文で決まり、(1)日本への米軍配置の重要な変更(2)米軍装備の重要な変更(3)日本から行われる戦闘行動のための基地使用が対象。過去に事前協議は一度も行われていない。


 麻生外相は、在沖米軍のイラク戦争派遣については事前協議の対象にならないとの考えを示した上で、対象となる例について「例えば沖縄が隣国から爆撃された(場合)。どことは言わないが、沖縄の米軍基地から攻撃するというときにはあり得るのではないか。沖縄が仮に侵略されたというのならばあり得るのではないか」と説明した。


 F22の嘉手納基地配備の経緯について、久間防衛相は「いい飛行機だということをPRもしたかったんじゃないかという思いもしている。その内容についてはつまびらかではないが、確かにいい戦闘機だなというのは分かりました」と述べた。


 久間防衛相は四月末にワシントンで開かれた日米防衛相会談で、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の最有力候補に挙げている同戦闘機について、詳細な情報を提供するよう要求した経緯がある。


 しかし、同戦闘機の配備には当初から地元の反発があったほか、米本国に帰還する際には未明離陸を強行し、地元議会の抗議決議も相次いだ。


 参院外交防衛委員会で五日、麻生太郎外相が「沖縄の爆撃」に言及し、久間章生防衛相は騒音被害をもたらしたF22を「いい戦闘機」と発言した。閣僚の言葉は県民意識から遠く懸け離れ、関係者から憤りと失望の声が上がった。


 同日開かれた海自艦派遣への抗議集会。会場にいた平和市民連絡会の城間勝代表世話人は「発言も自衛艦派遣も、沖縄に対する歴史的な差別の延長線上にある。沖縄の体験にふそん、乱暴な言い方だ」と怒った。


 新崎盛暉沖大名誉教授は「安保条約の解釈もいいかげんで、まず日米同盟強化ありき。それにしても、沖縄への攻撃を平気で口にする政治センスには驚く」とあきれた。


 久間防衛相がF22を「いい戦闘機」と評したことについて、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は「常駐化に向けた布石ともとらえられる。(沖縄を)守ってあげている、という意味なのだろうか。中央との温度差を感じる」と憤る。


 防衛相はF22配備を「テストを含めたフライト」とも表現した。嘉手納基地に隣接する嘉手納町屋良地区に住む宮城清記さん(82)は「地元は常に騒音に悩まされている状況で、大臣がテストを容認していたのであれば、米軍ではなく、日本人が日本人を苦しめていることになる」と語る。「住民の受けている被害を軽視されているようでショックだ」と、動揺を隠せなかった。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706061300_04.html

 

 

 

2007年6月6日(水) 朝刊 25面 

 

きょう自民に要望書/「集団自決」修正

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない沖縄県民大会実行委員会」は六日午後に自民党県連を訪れ、県議会で自民党が検定意見に対する意見書に賛成するよう再考を求める要望書を手渡すことを明らかにした。実行委が五日、那覇市の県庁記者クラブで会見した。


 会見で、実行委代表呼び掛け人の高嶋伸欣琉大教授は、米軍基地の整理・縮小などを求めて超党派で開催された一九九五年十月の県民総決起大会が、小学校六年生の社会科教科書に掲載されている事例を紹介。その上で、自民党が意見書に賛成しない方針を固めたことで県議会六月定例会での意見書採択が厳しい状況になっていることに、「県議会で意見がまとまらなかったことが将来、教科書に載る可能性もあるが、それでいいのだろうか。県民として残念だ。『集団自決』軍命は歴史的事実だ」と指摘。県連に再考を求めていく考えを強調した。


 一方、教科書検定問題の意見書を採択した那覇市議会が、十一日から市議会ロビーで教科書展示会を自主開催することも発表された。実行委が集めた、検定前の「白表紙本」や検定後の「見本本」、文科省の修正表のパネルなどが展示される。十五日まで。実行委によるとほかの議会でも開催に向けた動きがあるという。


 また、実行委は九日午後二時から那覇市の県民広場で開く同県民大会での、高校生の意見発表者を募っている。「高校教科書から歴史的事実が削除されようとしていることに意見を述べてもらいたい」と話している。


 問い合わせは高教組内の実行委事務局まで。電話098(887)1661。   

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706061300_05.html

 

 

 

2007年6月6日(水) 朝刊 25面 

 

辺野古調査 海自動員に350人抗議

 政府が米軍普天間飛行場の移設に伴う海域の現況調査に海上自衛隊を動員したことをめぐり、「県民に銃口を向けた政府の辺野古『事前調査』抗議集会」が五日、那覇市の教育福祉会館で開かれた。約三百五十人(主催者発表)が参加、「憲政の在り方を覆し、歴史の転換点になる」と強く批判した。


 基地の県内移設に反対する県民会議が主催。講演した佐藤学沖国大教授は「軍事力の使用に歯止めがなくなる。このまま声を上げなければ、紛争に自衛隊を動員する前例とされる」と指摘。問題視しない全国的な風潮に、危機感を強調した。


 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「軍艦の派遣は反対運動だけでなく名護市長、知事を含めた沖縄全体に対する威嚇だ」と批判。カヌーで阻止行動を続ける市民ら十人余りが、「辺野古にもっと多く来てほしい」と訴えた。


 採択された決議文は「自衛艦派遣は基地負担にあえぐ県民を足げにする暴挙。なりふり構わぬ不法で不当な行動に抗議し、説明を強く求める」と要求した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706061300_06.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月6日朝刊)

[米軍燃料流出]


地元無視の通報遅れだ


 米軍嘉手納基地の北側滑走路そばの駐機場に、大量のジェット燃料が流出した。二百リットルドラム缶に換算すると、四十三本分に相当する約二千三百ガロン(約八・七キロリットル)という。


 生半可な量でないが、問題はそればかりでない。那覇防衛施設局を通じて地元へ連絡が入ったのは発生から一週間、米軍が覚知してからも数日たっている。地元をないがしろにするもので怒りを通り越してあきれてしまう。


 現場は嘉手納町役場の南八百メートルにあるKC135空中給油機、MC130特殊作戦機などの駐機場。施設局の当初の説明によると、五月二十五日午後八時半ごろ、航空機への燃料補給中に燃料タンクのシステムが正常に作動しなかったため計五千三百ガロンが漏れた。


 三千ガロンはピットと呼ばれる空洞部分にたまり米軍が回収。駐機場のコンクリート上に流れた二千三百ガロンも回収し排水溝から基地外への流出は確認されなかったという。


 県企業局北谷浄水場は、嘉手納基地内にある二十の井戸から地下水を一時間当たり計八百トンを取水して浄化。地元や那覇など七市町村に給水している。地下水への影響がないか心配だ。


 嘉手納基地周辺で復帰前、航空機燃料が地下に染み込み「燃える井戸」が出現したことは地域の記憶から消え去ることはない。米軍の言い分をそのまま受け取ることはできないのだ。


 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は「環境への悪影響が懸念される」として、基地内立ち入り調査を求めた。地元住民の生命と安全を守る立場にある首長としては当然の要求であり、米軍が基地外への流出がないというのであれば基地内の調査に応じてしかるべきだ。


 県環境保全課は独自に嘉手納基地周辺の三カ所で、河川や排水溝、わき水から取水し基地外への有害物質の流出がないか調査を始めた。


 米軍基地内で環境に悪影響を及ぼす恐れのある問題が起きた場合、米軍は大使館を通して外務省に通報し、外務省が施設局へ連絡する。


 米軍はその後、五月二十五二十八日は航空機が飛ばず、流出に気付いたのは二十九日と事実関係を修正してきている。施設局の当初の説明と大幅に食い違い不可解だが、それでも二十五日から四日間流れっ放しだったわけで、施設管理のずさんさが問われる。


 外務省沖縄事務所、那覇防衛施設局は、米軍にもっと毅然とした態度で臨んでもらいたい。米軍の代弁者ではなく、県民の声を米軍に届けるのが本来の役割のはずだからだ。


http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070606.html#no_1

 

 

琉球新報 社説

航空燃料漏出 環境への悪影響が心配だ

 米空軍嘉手納基地内で環境汚染が懸念される大量の航空機燃料漏れ事故が起きた。北側格納庫で約2万リットル(ドラム缶100本分)の燃料が漏出、約1万1000リットルを回収したが約8700リットルは回収できなかった。

 基地外への燃料漏れはなかったというが、地中に浸透し周辺の環境に悪影響を及ぼす可能性も否定できない。

 1967年には嘉手納基地のジェット燃料がパイプ破損で地下水を汚染。周辺の井戸に浸出し、くんだ水が燃えるという深刻な事態を招いた。「燃える井戸」と呼ばれ大きな問題になった。

 基地の外に漏出しなかったからといって、決して安心はできない。

 事故が起きたのは5月25日だが、米軍は6日後の5月31日になるまで那覇防衛施設局に報告していない。施設局が県や地元自治体に連絡したのは発生から1週間後の6月1日のことである。

 基地の中でどんなに深刻な問題が起きても、県民は蚊帳の外だ。これでは基地周辺の住民は安心して生活できない。

 県の対応にも問題がある。1日に報告を受けていながら即座に公表しなかった。4日になって、報道機関の問い合わせに対し初めて事故発生の連絡があったことを認めている。

 県民の生命・財産を守るべき立場の県が、基地内の事故発生を知りながら公表を控えるというのでは、米軍のずさんな基地運用を助長しかねない。

 県は5日に初めて嘉手納基地のフェンス沿いで水質調査を実施しており、対応の遅れは否めない。

 嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会は米軍に抗議することを決定。北谷町長からは基地内立ち入り調査を求める声も出ている。

 県は、米軍に対し再発防止を強く申し入れると同時に、燃料漏出がどの程度環境を汚染したかを把握するため、県や周辺自治体による立ち入り調査の実施を要求すべきである。米軍の事故に対しては、及び腰になるのではなく、毅然(きぜん)とした態度で臨んでもらいたい。

 事故が起きても地元はそっちのけという状態がまかり通る背景には不平等な日米地位協定の存在がある。協定を見直し、米軍関係の事件、事故があれば速やかに関係自治体に通報することを盛り込むとともに、基地内への立ち入り調査についても明文化すべきだ。

 今回の事故に対し地元自治体の議会では抗議決議に向けた動きが出ている。再発防止のためには知事や県議会を含め、住民代表である首長や議会が怒りの声を上げることが重要である。

 米軍は本当に「よき隣人」を目指すのなら、県民の懸念に真剣に耳を傾け、事故が2度と起きないよう抜本的な対策を講じるべきだ。

 

(6/6 10:05)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24393-storytopic-11.html

 

沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報社説(6月3日、4日)

2007年6月3日(日) 朝刊 1面 

「軍命が死を強要」/「集団自決」シンポ

体験者、再び証言/検定の問題点を論議


 文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」の記述から「軍命」削除を求める検定意見がついた問題をテーマに、シンポジウム「挑まれる沖縄戦『集団自決』検定を問う」(主催・沖縄タイムス社)が二日、那覇市の県青年会館で開かれた。「集団自決」体験者の金城重明さん(沖縄キリスト教短期大学名誉教授)が「軍の命令以外に住民の死はありえない」とあらためて軍命があったことを証言した。続くシンポジウムで研究者らが検定の問題点について論議。約二百七十人の参加者からは戦争体験を正しく引き継ぐ大切さが指摘された。


 講話した金城さんは、一九四五年三月、渡嘉敷島の「集団自決」を体験。「米軍上陸の一週間前に手りゅう弾が日本軍から住民に渡された。一木一葉まで日本軍の指揮下だった。村長といえど、住民に死を強要することなどできなかった」と語り、軍命による悲劇であることを強調した。


 金城さんは当時十六歳。「スパイ容疑で日本軍が住民や朝鮮人軍夫を処刑した。島に日本軍がいる中、米軍が上陸し、離島の狭い空間で精神的にも追い詰められていき、死につながった。軍隊のいたところでしか集団死は起きていない」と語った。


 講話後のパネルディスカッションでは高嶋伸欣琉球大学教授、安仁屋政昭沖縄国際大学名誉教授、屋嘉比収沖縄大学准教授らが教科書検定の実態や沖縄戦の「集団自決」について議論を深めた。諸見里道浩沖縄タイムス社編集局長がコーディネートした。


 高嶋教授は「沖縄がしっかり意思表示すれば、検定意見を変えさせることは可能だ」と述べ、検定撤回に向けた取り組みの必要性を訴えた。


 フロアからの意見で、現職教員が「戦争体験に全く興味を示さない子どもたちがいる」と語るなど、風化が叫ばれる沖縄戦を継承する難しさがあらためて指摘された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706031300_01.html

 

 

2007年6月3日(日) 朝刊 21・20面 

厳しい真実証言/「歪曲」に危機感

 「軍命がなければ住民は集団死を選ぶことはなかった」。体験者は静かに語り、「過去の歴史やいまの教育行政に対するうそを見逃さしてはいけない」と研究者が力強く呼び掛けた。二日、那覇市の県青年会館で開かれたシンポジウム「挑まれる沖縄戦『集団自決』検定を問う」では熱心な意見が交わされ、会場からは「まだ間に合う。沖縄戦の正しい姿を教科書に取り戻そう」との声も上がった。


 「私が体験した時は十六歳の少年だった。あの生き地獄から六十二年間、今日まで生かされている」。渡嘉敷島でいわゆる「集団自決」を体験した金城重明・沖縄キリスト教短大名誉教授は、訥々と話した。


 「兄と二人で母や弟、妹に手をかけ、自分たちの順番を待った」。重く、厳しい真実をどう話せばいいのか。考えが行きつ戻りつする。「決して自発的な死ではない。日本軍の命令、強制、抑圧によって死に追い込まれたんです」。一番伝えたい思いが、何度も口をついた。


 パネルディスカッションでは高嶋伸欣琉大教授が、なぜ今年の検定で歴史教科書の「集団自決」の記述から「軍命による」の主語が消されたのか、背景を解いた。


 文科省は「集団自決」訴訟を理由に挙げているが「訴訟は二年前に提訴された。安倍内閣の方針におもんぱかったのでは」と指摘、「教科書が印刷されるのは年末。県民が声を上げ、全国を動かせばまだ修正させることは可能」と呼び掛けた。


 安仁屋政昭沖国大名誉教授は「合囲地境(自陣が陸海空ともに敵軍に囲まれている状態)」という言葉を引き合いに、軍命の存在を裏付けた。「『合囲地境の状況で、民政は存在しない』のが日本軍の常識だ。渡嘉敷、座間味はまさにこの状況だった。大局から見ればすべて軍命だった」と語った。


 一九八二年の教科書検定でも、日本軍による沖縄戦での住民虐殺の記述が削られた。屋嘉比収沖縄大准教授は当時と現在の違いとして「戦争体験者が減少した沖縄社会の変化」を挙げた。


 「非体験者がその次の世代にいかに沖縄戦を伝えるかが課題」と述べ、「八二年当時は教科書検定をきっかけに、県史が売り切れた。今回の危機も、沖縄戦を学び直す機会に」と提案した。


                    


聴衆「全国に届く機運を」


 「この流れを止めなければ」「若い世代につなぐ教育とは」。フロアの参加者からは、高校の歴史教科書から「軍関与」が消されたことへの憤りや、沖縄戦の事実を語り継ぐという重い課題について、さまざまな意見が聞かれた。


 「沖縄戦に関心を持つ生徒と、そうでない生徒の二極化が進んでいる」。うるま市の高校教諭知念勝美さん(37)は語気を強めた。


 学校現場で感じるのは、格差社会が進む中で、親に大事にされず、人とのかかわりが希薄な生徒が増えたことだ。「そんな子どもたちに沖縄戦の背景や証言者の話を聞かせても心に入ってこない。証言者が減っているという量の変化と同時に、若い世代の質の変化という現実を認識して対応することが大事だと思う」


 バスガイドの仲間静香さん(32)=宜野湾市=は、県外の修学旅行生を戦跡に案内するときに金城重明さんの体験談を紹介する。「県外の子は沖縄戦を熱心に勉強しているが、県内での平和教育はどの程度行われているのか。戦争体験者がいなくなった後、誰がどう伝えていくのか危機感を感じる」


 宜野湾市の会社員池田紘子さん(23)も「体験者がいなくなる十年後、二十年後には『軍命がなかった』が当然になってしまう。教科書から事実を削らせてはいけない」と話した。


 「教科書検定はすきをつかれた」と指摘する恩納村の造園業伊波保人さん(51)は「こうしたシンポも自己満足に終わってはいけない。知らない人、無関心な人の目も引く伝え方を考えなければいけない」と訴えた。


 高校の社会科教員を目指す琉球大学四年の松田浩史さん(24)は「体験者の話で分からないことも多かった。疑問をきちんと自分なりに調べ、伝えることを常に意識していきたい」と語った。


 名護市の金治明(キム・チンミョン)さん(56)=在日朝鮮二世=は、政府が歴史を書き換えようとする現状に「ぜひこの流れを止めなきゃ」との思いで駆けつけた。「県内の盛り上がりが弱い感じがして気になる。この問題が全国に届いてほしい」と話した。


市民団体、撤回へ意欲


 文部科学省は二〇〇八年度から使用される五社七冊の日本史A、Bで「集団自決」について、日本軍の関与を記した申請段階の表現の削除・修正を教科書会社に求めた。


 これまでは日本軍の関与を明記してきた教科書会社側も今回は、文科省の修正に応じた。


 これに対し県内では反発が強まっている。仲井真弘多知事が「軍命」削除に疑義を唱え、県内の市町村議会では検定意見の撤回を求める意見書の採択が相次いでいる。公明党県本部も文科省を訪れ、検定意見の見直しを訴えた。


 市民団体や労組は「沖縄戦の実相をゆがめる行為だ」と抗議。「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」や沖教組、高教組が中心となって、軍関与を記した申請時の表現に戻すよう求めた。


 「すすめる会」などは九日に五千人規模の「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会」(主催・同実行委員会)を県庁前の県民広場で計画。


県議会に対し検定撤回の意見書決議を求めていく方針だ。


 県議会は一九八二年に文部省(当時)が今回と同様に「住民虐殺」記述を削除しようとしたことに対し、全会一致で意見書を採択。記述を復活させた経緯がある。このため同実行委は県議会の動きに強い期待を寄せている。


 市民団体などは、教科書が印刷され始める秋口まで「二段、三段構えで」運動を強め、「軍命」関与の記述の復活を目指していく。   

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706031300_02.html

 

 

2007年6月3日(日) 朝刊 1面 

自民、意見書賛成せず/県議会での採択困難に

 県議会最大会派の自民党は二日、文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が、高校の歴史教科書から削除された問題に対する意見書で、「会派内で賛否が分かれ、意見が一致しなかった」として六月定例会で賛成しない方針を固めた。意見書採択は、全会一致が原則。最大会派が合意しないことで、六月定例会での意見書採択は厳しい状況になった。


 五月三十日に開かれた自民党の議員総会では「集団自決は歴史的な事実であり、多くの証言がある。記述を修正すべきではない」という賛成意見が出た一方、「軍命の有無が係争中の裁判で焦点になっている段階での意見書は司法への政治介入になる」という反対があった。


 中には「司法の判断が出ていない段階で、従来の記述を修正すべきではない」などとの賛成意見もあった。


 総会で賛否が分かれたことで、伊波常洋政調会長が県連役員らの意見を聞き取った結果、「議員総会で意見が一致できない状況では、意見書採択に合意できない」と判断した。


 同問題には、護憲ネット、社大結連合、共産党の野党会派は修正検定意見を批判。意見書採択を五月二十九日、具志孝助副議長に要請した。公明県民会議も賛成の意向だった。


 意見書を審議、採決するため今月六日を軸に調整されていた文教厚生委員会(前島明男委員長)の臨時委員会も見送られる可能性があり、開会を求めていた野党の反発は必至だ。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706031300_03.html

 

 

2007年6月3日(日) 朝刊 20面 

憲法守る決意 強くアピール/「9条の会・首里」1周年

 九条の会・首里(代表世話人・垣花豊順弁護士ら)は二日、那覇市の首里農協ホールで一周年記念集会を開いた。約九十人が出席し、「平和を守り抜くことを強く訴える」とするアピール文を採択、決意を示した。


 集いでは映画「戦争をしない国日本」の上映後、奈良市在住の岡谷よし子さん(54)が「平和のためにできること」と題し報告。昨年四月、平和美術展を開催し平和を訴える美術品を募集した活動を説明、「平和の大切さに気づいてもらえる展覧会だった」と話した。


 代表世話人の垣花さんは「今後もあらゆる機会に手を取り合い、息の長い活動をして行こう」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706031300_08.html

 

 

琉球新報 社説

低周波音被害 元凶はほかにもあった


 那覇地裁沖縄支部が実施した普天間爆音訴訟の現場検証で測定された低周波音は、環境省の参照値を超える数値が測定されていたことが明らかになった。


 低周波音については、原告らをはじめ普天間飛行場の付近住民らが以前から指摘し、訴えてきた基地被害だ。住民を苦しめている爆音被害は、航空機騒音の環境基準であるWECPNL(うるささ指数)に加え、低周波音も恒常的に影響していることが科学的に裏付けられたことになる。


 現場検証は、年度末に予定されている訴訟の判決に向け5月に実施された。測定ポイントは、宜野湾市大謝名、佐真下、野嵩、喜友名の4カ所。いずれも普天間飛行場にほど近い。


 検証では原告と被告である国の双方が同じ種類の測定機器を用いて騒音や低周波音を計測。その結果、低周波音は4カ所のうち3カ所で92デシベルを超えていた。最大で97.5デシベルに達した。


 低周波音は、人間の耳には聞こえにくいが、音は感じなくても頭痛や吐き気のほか、耳鳴りやイライラ、不眠など人体に影響を与えるとされる。環境省の「低周波音への苦情のための参照値」によると、心身に苦痛をもたらす低周波音のレベルは92デシベルである。この数値のほかにも周波数ごとに設定された参照値があり、4カ所すべてで参照値を上回っていた。


 普天間飛行場の周辺地域のほとんどの人々は、日常的に深刻な被害にさらされているのである。


 実際に一度でも体験すればすぐに分かることだが、ヘリ部隊が普天間基地周辺にまき散らす騒音は尋常ではない。


 体を震わせるほどの重く低い音が屋内に響き、時に激しい騒音を発しながら離着陸や旋回が繰り返される。この異常さには何十年住んでも慣れることがない。


 窓を閉めても屋内にこもるヘリの低周波音に襲われる。理不尽この上ない。住民を苦しめる元凶の排除は政治の責任だ。また司法はどう判断するのか、判決の行方も注視したい。


(6/3)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24299-storytopic-11.html

 

 

2007年6月4日(月) 朝刊 18面 

ジュゴンの会 目視調査/名護市辺野古沖

米大学博士らが指導


 【名護】米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沖周辺に生息する国の天然記念物ジュゴンの生息環境調査を行っている市民団体「北限のジュゴンを見守る会」(鈴木雅子代表)が三日、ジュゴンの餌である藻場の目視調査を実施した。同会は今後、年四回程度で調査を続けていく。


 同会では昨年十一月から辺野古周辺海域で実施している調査の試行で、数カ所のジュゴンの海草の食み跡を確認している。同日はボランティアダイバーを募集し、「マンタ法」と呼ばれる時速三キロ程度で進む船からダイバーをえい航して、ジュゴンの餌である藻場の目視によるモニタリング調査を実施。米サンフランシスコ州立大学のエレン・ハインズ博士らが指導した。


 中城村から初めて参加したという会社員の男性(46)は「このような貴重できれいな自然が壊されるのは残念で、なくしてほしくない」と話した。


 鈴木代表は「市民の手で具体性のある科学的な調査をしないと、ジュゴンを保護できない。これまでの試行の結果なども踏まえて専門家と協議し、今後の方針を決めていきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706041300_04.html

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月4日朝刊)

[「集団自決」と軍命]


「魂の叫び」に応えたい


「軍が駐留した島で起きた」


 「あの悲劇は、決して自発的な死ではない。軍隊が駐留していた島でしか起きていない。日本軍の命令、強制、抑圧によって死に追い込まれたのです」


 十六歳の時、生まれ故郷の渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明氏(沖縄キリスト教短期大学名誉教授)は、言葉を一つずつかみしめるように静かに語った。


 文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」削除を求める検定意見がついた問題で二日、那覇市内で開かれたシンポジウム「挑まれる沖縄戦『集団自決』検定を問う」(主催・沖縄タイムス社)。


 金城氏は「皇軍の支配は一木一葉に至るまで及んだ。軍の命令以外に住民の死はあり得なかった」と、あらためて軍命があったことを証言した。


 沖縄戦の悲劇の極みとも言うべき「集団自決」は、米軍が上陸した一九四五年三月二十七日をはさんで、二十六日に慶良間諸島の座間味島と慶留間島で、二十八日に渡嘉敷島で起きた。


 三つの島々で約七百人の住民が犠牲になったが、金城氏は日本軍の海上挺身隊が配備された島々でしか、集団自決が起こっていないことを強調している。


 日本軍の命令があったかどうかについては、大阪地裁で係争中の訴訟で元戦隊長から軍命を否定する意見陳述がなされている。


 しかし、軍命の物的証拠がないからといって「強制はなかった」と言い切れるのかどうか。


 集団死には、当時の住民が軍や官と運命を共にする「共生共死」や「鬼畜米英」への恐怖心、「生きて虜囚の辱めを受けず」(戦陣訓)の軍国思想などさまざまな要因が複雑に絡んでいる。


 沖縄戦では、方言を使っただけでスパイ行為をした者として死刑になるなど虐殺された住民も少なくない。


 軍の命令があったかなかったかは、必ずしも言葉による命令があったかなかったかだけで決められるものではないことを見落としてはなるまい。


強制された「軍民共生共死」


 軍は「米軍の捕虜になるな」と命令するとともに、「いざという時」のために、住民に手りゅう弾を配っていたという証言が数多くある。


 そうした状況下で米軍が上陸し、住民が手りゅう弾などで自決したことは、まさに日本軍の強制、誘導があったと言ってしかるべきだ。


 安仁屋政昭・沖縄国際大学名誉教授は「合囲地境」という旧戒厳令の用語を使って、軍命の存在を指摘した。


 陸海空ともに敵の包囲、攻撃などに直面した状態で、「軍民共生共死の一体化が強制された」と指摘している。


軍の圧力や誘導がなければ、集団死も起こらなかったとみることができる。


 高嶋伸欣琉球大学教授は「沖縄がしっかり意思表示すれば、検定意見を変えさせることは可能だ」と述べ、検定撤回に向けた取り組みの必要性を訴えた。


 県内の市町村議会では「軍命」削除に異議を唱え、検定意見の撤回を求める意見書の採択が十市町村を上回り、今後も増える見通しだ。


 四日には、東村の東中学校三年生全員が同村議会に検定意見の撤回を求めて請願書を提出する。


 「教科書から歴史的事実を削らせてはいけない」という子どもたちのけなげな訴えに、土砂降りの雨が上がり、明るい日が差したような安堵感がわいてくる。


「政治介入」と自民反対


 だが、県議会最大会派の自民党は「会派内で賛否が分かれ意見が一致しなかった」として六月定例会で検定意見の撤回には賛成しない方針だ。


 「軍命の有無が係争中の裁判で焦点になっている段階での意見書は、司法への政治介入になる」と、反対意見があったという。


 県議会は、八二年に文部省(当時)が今回と同様に「住民虐殺」の記述を削除しようとした際、全会一致で意見書を採択、記述を復活させた経緯がある。


 県民の自治に関する意思決定機関であり、県民意思を代弁し、行動する意味は重い。


 屋嘉比収沖縄大学准教授は「今回の教科書検定を「沖縄戦を学び直す機会にしたい」と提案した。


 軍命関与の真実を究明し、無残にも自決した人たちの「魂の叫び」に応えたい。


http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070604.html#no_1

 

 

2007年6月4日(月) 夕刊 5面 

南城・宮古島議会 決議/「集団自決」軍関与削除

 【南城・宮古島・久米島】南城市議会(川平善範議長)は四日午前、六月定例会初日の本会議で、文部科学省の検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除された問題に対して、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。


 宮古島市議会(友利恵一議長)も同日午後、全会一致で可決した。県議会最大会派の自民党は会派内で賛否が分かれているとして賛成しない方針とされるが、同市議会最大会派の自民党七人は賛成した。


 また、久米島町議会(仲地宗市議長)も同日午後臨時会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決する見通し。


 南城市議会は、沖縄戦の「集団自決」について「日本軍による命令、強制、誘導などなしに起こり


得なかったことは紛れもない事実だ」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706041700_04.html